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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】搬送パレット
(51)【国際特許分類】
   B65D 19/44 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B65D19/44 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021029430
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022130811
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】391012796
【氏名又は名称】ヨシワ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591006944
【氏名又は名称】三甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】川元 健嗣
(72)【発明者】
【氏名】日高 和彦
(72)【発明者】
【氏名】中尾 和活
(72)【発明者】
【氏名】吉野 正弘
(72)【発明者】
【氏名】隅田 晃雄
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-095339(JP,A)
【文献】特開2016-030526(JP,A)
【文献】特開2006-327660(JP,A)
【文献】特開2006-143275(JP,A)
【文献】特開平05-042948(JP,A)
【文献】特開2007-153414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 19/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側に開口する一方、他端中央に貫通孔が形成され、外周面が中心線周りに環状に延びる円形盆状のホイール取付部及び当該ホイール取付部の一側開口周縁から径方向外側に延出するフランジ状の摺動板部を有する複数のディスクロータを収容可能なロータ収容体を備えた搬送パレットであって、
前記ロータ収容体には、前記各ディスクロータを収容した際、前記ホイール取付部の外周面を下方から支持することにより、前記各ディスクロータを各々の中心線が水平方向に延びて互いに一致するか、或いは、接近する姿勢で位置決めする位置決め支持部が複数並設され
前記位置決め支持部は、前記ロータ収容体に収容状態の前記ディスクロータの中心線方向から見てV字状をなし、前記ホイール取付部の外周面を2箇所で支持する一対の傾斜支持面を備え、
前記ロータ収容体は、水平方向に並設された同形状をなす複数の収容トレイで構成され、
該収容トレイのトレイ並設方向一側面には、前記トレイ並設方向他側に向かって段差状に窪むとともに上方に開放し、且つ、隣り合う前記収容トレイのトレイ並設方向他側面との間に前記ディスクロータを上方から出し入れ可能な収容空間を形成する段差面部が設けられ、
前記位置決め支持部は、前記収容トレイの前記段差面部に対応する領域においてトレイ並設方向に貫通するとともに上方に開放する切欠凹部であり、
前記両傾斜支持面は、前記切欠凹部の内周面に設けられ、
前記切欠凹部の内周面におけるトレイ並設方向一側には、当該切欠凹部の内側に向かって突出する少なくとも1つの板状部が設けられていることを特徴とする搬送パレット。
【請求項2】
請求項に記載の搬送パレットにおいて、
上方に開口するボックス形状をなし、前記各収容トレイを上方開口から着脱可能なトレイケースを備え、
該トレイケースの外周壁の前記切欠凹部に対応する位置には、前記トレイケースの内側に連通するとともに上方にも開放する開口部が形成されていることを特徴とする搬送パレット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の搬送パレットにおいて、
前記段差面部と前記収容トレイにおけるトレイ並設方向他側面の前記段差面部に対応する領域とには、それぞれ複数の弾性部材が取り付けられていることを特徴とする搬送パレット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の搬送パレットにおいて、
前記板状部におけるトレイ並設方向他側面には、弾性部材が取り付けられていることを特徴とする搬送パレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキを構成するディスクロータを搬送する際に用いる搬送パレットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、物流過程では、複数の被搬送物を効率良く搬送するために搬送パレットが用いられる。例えば、特許文献1に開示されている搬送パレットは、円盤形状をなす被搬送物の搬送時に使用するものであり、水平方向に延びるパネル状をなす収容トレイと、該収容トレイを載置可能なパレット本体とを備え、収容トレイの上面には、上方に開口する底の浅い円形凹部が複数形成されている。該円形凹部の内周面は、断面が階段状になっていて、外径が異なる複数種の被搬送物を中心線が上下方向に向く姿勢でそれぞれ位置決め可能になっている。そして、収容トレイの各円形凹部に位置決めした各被搬送物の上に他の収容トレイを載せてその上に各被搬送物を複数位置決めするというように、各被搬送物と収容トレイとを順に複数段積み重ねた状態でパレット本体に載置して次工程に搬送するようになっている。
【0003】
ところで、多くの産業用ロボットが作業する自動車等の生産ラインにおいて、ディスクブレーキを構成するディスクロータの搬送に特許文献1の如き搬送パレットを用いようとすると、各ディスクロータと収容トレイとが上下に重なった状態になるので、産業用ロボットによるディスクロータの収容作業及び取出作業が搬送パレットに対して困難であるという問題が生じる。
【0004】
これに対応するために、例えば、特許文献2の如きコンテナの構造を搬送パレットに適用し、当該搬送パレットに各ディスクロータをその中心線が水平方向に向く姿勢で、且つ、ディスクロータの中心線に沿って複数並設させた状態で収容することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-39531号公報
【文献】特表2002-505641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、生産ラインにおける産業用ロボットは、ディスクロータを搬送する際、当該ディスクロータの中央に形成された貫通孔を利用してディスクロータを把持する場合がある。
【0007】
しかし、搬送パレットを特許文献2の如き収容構造にすると、搬送パレットの底面で各ディスクロータの外周縁部を支持するようになるので、搬送パレットに外径の異なる複数種のディスクロータを収容する場合、中心位置がそれぞれ上下に大きくずれた状態になってしまう。そうすると、ディスクロータの貫通孔を利用した産業用ロボットの搬送パレットに対する収容作業及び取出作業の動作をディスクロータ毎に大きく変更する必要が生じるので、産業用ロボットへの教示作業が煩雑になるだけでなく、産業用ロボットの動作が複雑になって作業効率の悪い生産ラインになってしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、産業用ロボットによるディスクロータの収容作業及び取出作業を効率良く行うことができ、さらには、産業用ロボットにおける収容動作及び取出動作の教示作業が簡単になる搬送パレットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、搬送パレットに各ディスクロータを収容した際の支持の仕方に工夫を凝らしたことを特徴とする。
【0010】
具体的には、一側に開口する一方、他端中央に貫通孔が形成され、外周面が中心線周りに環状に延びる円形盆状のホイール取付部及び当該ホイール取付部の一側開口周縁から径方向外側に延出するフランジ状の摺動板部を有する複数のディスクロータを収容可能なロータ収容体を備えた搬送パレットを対象とし、次のような対策を講じた。
【0011】
すなわち、第1の発明では、前記ロータ収容体には、前記各ディスクロータを収容した際、前記ホイール取付部の外周面を下方から支持することにより、前記各ディスクロータを各々の中心線が水平方向に延びて互いに一致するか、或いは、接近する姿勢で位置決めする位置決め支持部が複数並設され、前記位置決め支持部は、前記ロータ収容体に収容状態の前記ディスクロータの中心線方向から見てV字状をなし、前記ホイール取付部の外周面を2箇所で支持する一対の傾斜支持面を備え、前記ロータ収容体は、水平方向に並設された同形状をなす複数の収容トレイで構成され、該収容トレイのトレイ並設方向一側面には、前記トレイ並設方向他側に向かって段差状に窪むとともに上方に開放し、且つ、隣り合う前記収容トレイのトレイ並設方向他側面との間に前記ディスクロータを上方から出し入れ可能な収容空間を形成する段差面部が設けられ、前記位置決め支持部は、前記収容トレイの前記段差面部に対応する領域においてトレイ並設方向に貫通するとともに上方に開放する切欠凹部であり、前記両傾斜支持面は、前記切欠凹部の内周面に設けられ、前記切欠凹部の内周面におけるトレイ並設方向一側には、当該切欠凹部の内側に向かって突出する少なくとも1つの板状部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
の発明では、第の発明において、上方に開口するボックス形状をなし、前記各収容トレイを上方開口から着脱可能なトレイケースを備え、該トレイケースの外周壁の前記切欠凹部に対応する位置には、前記トレイケースの内側に連通するとともに上方にも開放する開口部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
の発明では、第1又は2の発明において、前記段差面部と前記収容トレイにおけるトレイ並設方向他側面の前記段差面部に対応する領域とには、それぞれ複数の弾性部材が取り付けられていることを特徴とする。
【0014】
の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、前記板状部におけるトレイ並設方向他側面には、弾性部材が取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明では、種類の異なるディスクロータであっても形状の変化が少ないホイール取付部の外周面を支持することによりディスクロータを位置決めするので、搬送パレットに収容された各ディスクロータの貫通孔が水平方向に同じ位置か、或いは、ほとんど同じ位置になる。したがって、ディスクロータの貫通孔を利用した産業用ロボットの把持動作が簡単になって搬送パレットに対するディスクロータの収容作業及び取出作業を効率良く行うことができるようになるとともに、産業用ロボットの搬送パレットに対する動作を種類の異なるディスクロータ毎に大きく変更することが無くなるので、産業用ロボットへの教示作業を簡単に行うことができる。また、第1の発明では、搬送パレットにディスクロータを収容すると、ディスクロータの種類に関わらず位置決め支持部がホイール取付部の外周面を必ず2箇所で支持するようになる。したがって、搬送パレットに収容する各ディスクロータの搬送パレットに対する位置がディスクロータの種類に関わらずに当該ディスクロータの中心線と直交する上下方向と水平方向との両方において決まるようになるので、各ディスクロータを収容した搬送パレットを移動させる際に当該搬送パレット内で各ディスクロータが動いてしまい、それを起因としてディスクロータに傷や変形が生じたり、或いは、塗装が剥げるといったことを防ぐことができる。また、第1の発明では、各ディスクロータを支持するロータ収容体が、比較的形状がシンプルな同形状の収容トレイを複数形成するとともに当該各収容トレイを並べるだけで作られるので、加工コスト及び組立コストを抑えた低コストな搬送パレットにすることができる。また、第1の発明では、ロータ収容体にディスクロータを収容する際、隣り合う2つの収容トレイのうち一方の収容トレイの段差面部にディスクロータの摺動板部を位置させる一方、他方の収容トレイの切欠凹部にホイール取付部を位置させることができるようになる。したがって、ロータ収容体に全てのディスクロータを収容すると、ロータ収容体の一方の端部に位置する収容トレイの段差面部及びロータ収容体の他方の端部に位置する収容トレイの切欠凹部には、ディスクロータが位置しなくなり、ロータ収容体に収容された全てのディスクロータが搬送トレイの外周壁から離れた位置になるので、搬送パレットを移動させる際に当該搬送パレットの外周壁に各ディスクロータが接触して傷や変形等が生じるといったことを確実に防ぐことができる。また、第1の発明では、搬送パレットに摺動板部の厚みが大きく異なる複数種のディスクロータを収容する場合、収容する板厚が最も厚い寸法のディスクロータに対応する寸法に設定した段差面部に対して摺動板部の板厚が薄い寸法のディスクロータを収容した際において、当該ディスクロータがその板厚方向に不意に傾いたとしても、ホイール取付部が板状部に接触するので、ディスクロータの傾きが小さくなる。したがって、搬送パレットに摺動板部の厚みが大きく異なる複数種のディスクロータを収容しても、各ディスクロータを大きく傾かせることなく搬送パレットを移動させることができる。
【0016】
の発明では、トレイケースの開口部を介して産業用ロボットの把持部を収容トレイの切欠凹部に接近させ易くなるので、産業用ロボットによる各ディスクロータの貫通孔を利用した搬送パレットへの各ディスクロータの収容作業又は搬送パレットからの各ディスクロータの取出作業を効率良く行うようにすることができる。
【0017】
及び第の発明では、ロータ収容体に収容されたディスクロータがその板厚方向に不意に傾いたとしても、各弾性部材に接触してその際に発生する衝撃を吸収するようになる。したがって、搬送パレットを移動させた際に当該搬送パレットが大きく揺れたとしても、搬送パレットに収容した各ディスクロータのホイール取付部や摺動板部に傷や変形等が生じるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態1に係る搬送トレイに対して産業用ロボットがディスクロータを収容する、或いは、取り出す作業を行っている工程を示す斜視図である。
図2図1の一部断面視を含むII矢視図である。
図3】本発明の実施形態1に係る収容トレイを一方側から見た斜視図である。
図4】本発明の実施形態1に係る収容トレイを他方側から見た斜視図である。
図5図1において搬送パレットに複数種のディスクロータを収容した状態のV-V線における断面図である。
図6】実施形態2の図3相当図である。
図7】実施形態2の図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0020】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る搬送パレット1を示す。該搬送パレット1は、自動車等のフロント側のディスクブレーキ(図示せず)を構成するディスクロータ10を搬送する際に用いるものであり、該ディスクロータ10は、6軸多関節ロボット(産業用ロボット)のアーム先端11に取り付けられたディスク把持ユニット12に把持されて搬送パレット1に収容されるか、或いは、搬送パレット1から取り出されるようになっている。
【0021】
ディスクロータ10は、図2に示すように、側面視でハット形状をなしており、一側に開口するとともに外周面10bが中心線C1周りに環状に延びる円形盆状のホイール取付部10aと、該ホイール取付部10aの一側開口周縁から径方向外側に延出するフランジ状の摺動板部10cとを備え、ホイール取付部10aの他端中央には、貫通孔10dが形成されている。
【0022】
尚、ディスクロータ10は、図5に示すように、摺動板部10cの外径が異なる複数種が存在するが、ホイール取付部10aの外周面10bの外径は概ね同じとなっている。
【0023】
ディスク把持ユニット12は、図2に示すように、アーム先端11に取り付けられた断面略L字状をなす取付ブラケット13を備え、該取付ブラケット13には、ディスクロータ10を把持する爪機構14が水平方向に所定の間隔をあけて一対取り付けられている。
【0024】
爪機構14は、取付ブラケット13から下方に延びる板状の支持フレーム15を備え、該支持フレーム15下端の前面側には、当該支持フレーム15の幅方向全域に亘って延びる第1爪部15aが突設されている。
【0025】
支持フレーム15の下端側裏面には、上下に延びるスライドレール16が取り付けられ、該スライドレール16には、下方に延びる板状のスライドフレーム17が上下にスライド可能に取り付けられている。
【0026】
スライドフレーム17下端の前面側には、当該スライドフレーム17の幅方向全域に亘って延びる第2爪部17aが突設され、該第2爪部17aは、第1爪部15aに対向する位置となっている。
【0027】
支持フレーム15の上端側裏面には、ピストンロッド18aが下方に向かって伸縮する流体圧シリンダ18が取り付けられ、ピストンロッド18aの先端には、スライドフレーム17が固定されている。
【0028】
そして、ディスク把持ユニット12は、ディスクロータ10の貫通孔10dに第1爪部15a及び第2爪部17aを挿入し、且つ、流体圧シリンダ18のピストンロッド18aを伸長させて第1爪部15aと第2爪部17aとをそれぞれ貫通孔10dの内周縁部に圧接させることにより、ディスクロータ10を把持するようになっている。
【0029】
搬送パレット1は、図1に示すように、上方に開口するボックス形状をなすトレイケース2を備え、該トレイケース2の長手方向両端に位置する外周壁には、トレイケース2の内側に連通するとともに上方にも開放する開口部2aがそれぞれ形成されている。
【0030】
トレイケース2の内側には、複数のディスクロータ10を収容可能なロータ収容体3が取り付けられている。
【0031】
ロータ収容体3は、射出成形により一体成形された複数の同形状をなす収容トレイ4で構成され、該収容トレイ4は、搬送パレット1の長手方向に直交する水平方向に延びる略帯板状をなしている。
【0032】
収容トレイ4は、トレイケース2の内側に当該トレイケース2の上方開口から着脱可能になっていて、トレイケース2の内側に取り付けると、当該トレイケース2の長手方向に沿って並設した状態となるよう構成されている。
【0033】
収容トレイ4におけるトレイ並設方向一側面には、図3に示すように、トレイ並設方向他側に向かって段差状に窪むとともに上方に開放する段差面部5が収容トレイ4の長手方向に所定の間隔をあけて一対設けられ、各段差面部5は、トレイ並設方向に見て略半円形状をなしている。
【0034】
収容トレイ4の各段差面部5に対応する領域には、トレイ並設方向に貫通するとともに上方に開放する切欠凹部6(位置決め支持部)がそれぞれ形成され、ロータ収容体3の両端に位置する各収容トレイ4の両切欠凹部6は、トレイケース2の外周壁の各開口部2aに対応する位置になっている。
【0035】
切欠凹部6の内周面は、上部開放部分から垂直に下方に延び、且つ、互いに対向する一対の垂直面6aと、該各垂直面6aの下端から下方に行くにつれて互いに接近するように傾斜する一対の傾斜支持面6bと、該両傾斜支持面6bの下端同士を繋ぐ水平面6cとで構成され、両傾斜支持面6bは、トレイ並設方向に見てV字形状をなしている。
【0036】
各傾斜支持面6bは、水平面に対して35度の傾斜に設定されていて、その表面には、矩形板状をなす熱可塑性エラストマーからなる第1弾性部材7がそれぞれ取り付けられている。
【0037】
収容トレイ4上面の中央と長手方向各端部とには、トレイ並設方向一側と上方とに連続して開放する平面視で三角形状をなす3つの目印部4aが凹陥形成され、該各目印部4aは、ディスク把持ユニット12でディスクロータ10を搬送パレット1に収容する際にディスク把持ユニット12に取り付けられた位置検出センサ(図示せず)で収容トレイ4に対するディスク把持ユニット12の位置ずれ量を検出する際に使用されるようになっている。
【0038】
段差面部5における各垂直面6a近傍と水平面6c近傍とには、それぞれ矩形板状をなす熱可塑性エラストマーからなる3つの第2弾性部材8が取り付けられている。
【0039】
一方、図4に示すように、収容トレイ4のトレイ並設方向他側面における段差面部5に対応する領域の各切欠凹部6の下方には、矩形板状をなす熱可塑性エラストマーからなる2つの第3弾性部材9がそれぞれ取り付けられている。
【0040】
そして、段差面部5は、図5に示すように、隣り合う収容トレイ4のトレイ並設方向他側面との間にディスクロータ10を上方から出し入れ可能な収容空間S1を形成するようになっていて、産業用ロボット(図示せず)のアーム先端11に取り付けられたディスク把持ユニット12によって各収容空間S1に複数種のディスクロータ10をそれぞれ収容した際、ホイール取付部10aの外周面10bを一対の傾斜支持面6bが下方から各第1弾性部材7を介して2箇所で支持することにより、各ディスクロータ10が各々の中心線C1が水平方向に延びて互いに一致するか、或いは、接近する姿勢で位置決めされるようになっている。このとき、隣り合う2つの収容トレイ4のうち一方の収容トレイ4の段差面部5にディスクロータ10の摺動板部10cを位置させる一方、他方の収容トレイ4の切欠凹部6にホイール取付部10aを位置させて各ディスクロータ10をロータ収容体3に収容している。
【0041】
また、各段差面部5の内周面5aは、収容空間S1にディスクロータ10を収容した際に、収容予定のどの種類のディスクロータ10を収容したとしても摺動板部10cの外周部分が接触しない位置に設定されている。
【0042】
尚、本発明の実施形態1では、後工程においてディスク把持ユニット12と同様のユニットを用いて搬送パレット1の長手方向一端側の収容空間S1に収容されたディスクロータ10から順に取り出して複数種のディスクブレーキを順に組み立てるようになっている。したがって、前工程である搬送パレット1への各ディスクロータ10の各収容空間S1への収容作業は、ディスク把持ユニット12の収容動作が既に収容空間S1に収容された状態のディスクロータ10に接触するのを回避するために、後工程におけるディスクブレーキの組立順とは反対の順番で搬送パレット1の長手方向他端側の収容空間S1から順に行うようになっている。
【0043】
以上より、本発明の実施形態1によると、搬送パレット1にディスクロータ10を収容する際、種類の異なるディスクロータ10であっても形状の変化が少ないホイール取付部10aの外周面10bを支持することによりディスクロータ10を位置決めするので、搬送パレット1に収容された各ディスクロータ10の貫通孔10dが水平方向に同じ位置か、或いは、ほとんど同じ位置になる。したがって、ディスクロータ10の貫通孔10dを利用した産業用ロボットの把持動作が簡単になって搬送パレット1に対するディスクロータ10の収容作業及び取出作業を効率良く行うことができるようになるとともに、産業用ロボットの搬送パレット1に対する動作を種類の異なるディスクロータ10毎に大きく変更することが無くなるので、産業用ロボットへの教示作業を簡単に行うことができる。
【0044】
また、搬送パレット1にディスクロータ10を収容すると、ディスクロータ10の種類に関わらず切欠凹部6がホイール取付部10aの外周面10bに必ず2箇所で接触するようになる。したがって、搬送パレット1に収容する各ディスクロータ10の搬送パレット1に対する位置がディスクロータ10の種類に関わらずに当該ディスクロータ10の中心線C1と直交する上下方向と水平方向との両方において決まるようになるので、各ディスクロータ10を収容した搬送パレット1を移動させる際に当該搬送パレット1内で各ディスクロータ10が動いてしまい、それを起因としてディスクロータ10に傷や変形が生じたり、或いは、塗装が剥げるといったことを防ぐことができる。
【0045】
また、各ディスクロータ10を支持するロータ収容体3が、比較的形状がシンプルな同形状の収容トレイ4を複数形成するとともに当該各収容トレイ4を並べるだけで作られるので、加工コスト及び組立コストを抑えた低コストな搬送パレット1にすることができる。
【0046】
また、ロータ収容体3にディスクロータ10を収容する際、隣り合う2つの収容トレイ4のうち一方の収容トレイ4の段差面部5にディスクロータ10の摺動板部10cを位置させる一方、他方の収容トレイ4の切欠凹部6にホイール取付部10aを位置させることができるようになる。したがって、ロータ収容体3に全てのディスクロータ10を収容すると、ロータ収容体3の一方の端部に位置する収容トレイ4の段差面部5及びロータ収容体3の他方の端部に位置する収容トレイ4の切欠凹部6には、ディスクロータ10が位置しなくなり、ロータ収容体3に収容された全てのディスクロータ10がトレイケース2の外周壁から離れた位置になるので、搬送パレット1を移動させる際にトレイケース2の外周壁に各ディスクロータ10が接触して傷や変形等が生じるといったことを確実に防ぐことができる。
【0047】
また、トレイケース2の長手方向両端には、開口部2aが形成されているので、各開口部2aを介して産業用ロボットのディスク把持ユニット12を収容トレイ4の切欠凹部6に接近させ易くなる。したがって、産業用ロボットによる各ディスクロータ10の貫通孔10dを利用した搬送パレット1への各ディスクロータ10の収容作業又は搬送パレット1からの各ディスクロータ10の取出作業を効率良く行うようにすることができる。
【0048】
さらに、各収容トレイ4には、複数の第2弾性部材8及び第3弾性部材9が取り付けられているので、ロータ収容体3に収容されたディスクロータ10がその板厚方向に不意に傾いたとしても、各第2及び第3弾性部材8,9に接触してその際に発生する衝撃を吸収するようになる。したがって、搬送パレット1を移動させた際に当該搬送パレット1が大きく揺れたとしても、搬送パレット1に収容した各ディスクロータ10のホイール取付部10aや摺動板部10cに傷や変形等が生じるのを防ぐことができる。
【0049】
《発明の実施形態2》
図6及び図7は、本発明の実施形態2の収容トレイ4を示す。この実施形態2では、収容トレイ4の一部構造が実施形態1と異なっている以外は実施形態1と同様であるので、実施形態1と同様の部分には同じ符号を付し、その他、異なる部分のみを説明する。
【0050】
実施形態2の収容トレイ4は、自動車等のリア側のディスクブレーキ(図示せず)を構成するディスクロータ10を搬送する際に用いる搬送パレット1に取り付けられるものであり、各切欠凹部6の各垂直面6aにおけるトレイ並設方向一側には、図6に示すように、切欠凹部6の内側に向かって突出する一対の板状部6dが互いに対向するように設けられている。
【0051】
各板状部6dにおけるトレイ並設方向他側面には、図7に示すように、矩形板状をなす熱可塑性エラストマーからなる2つの第3弾性部材9がそれぞれ取り付けられている。
【0052】
以上より、本発明の実施形態2によると、搬送パレット1に摺動板部10cの厚みが大きく異なる複数種のディスクロータ10を収容する場合、収容する板厚が最も厚い寸法のディスクロータ10に対応する寸法に設定した段差面部5に対して摺動板部10cの板厚が薄い寸法のディスクロータ10を収容した際において、当該ディスクロータ10がその板厚方向に不意に傾いたとしても、ホイール取付部10aが板状部6dに接触するので、ディスクロータ10の傾きが小さくなる。したがって、搬送パレット1に摺動板部10cの厚みが大きく異なる複数種のディスクロータ10を収容しても、各ディスクロータ10を大きく傾かせることなく搬送パレット1を移動させることができる。
【0053】
また、各板状部6dには、第3弾性部材9が取り付けられているので、搬送パレット1を移動させた際に当該パレット1が大きく揺れたとしても、搬送パレット1に収容した各ディスクロータ10のホイール取付部10aや摺動板部10cに傷や変形等が生じるのを防ぐことができる。
【0054】
尚、本発明の実施形態1,2では、同形状の複数の収容トレイ4を並設することでロータ収容体3を形成しているが、これに限らず、ホイール取付部10aの外周面10bを下方から支持してディスクロータ10を収容できるのであれば、ロータ収容体3は一体構造であってもよいし、その他の分割構造であってもよい。
【0055】
また、本発明の実施形態1,2では、搬送パレット1の長手方向に並ぶ各ディスクロータ10を搬送パレット1の長手方向と直交する水平方向に2列に収容可能になっているが、1列だけ収容可能な構成であってもよいし、3列以上に収容可能な構成であってもよい。
【0056】
また、本発明の実施形態1,2では、傾斜支持面6bの水平面に対する角度が35度に設定されているが、その他の角度で設定されていてもよい。
【0057】
また、本発明の実施形態1,2態では、隣り合う2つの収容トレイ4のうち一方の収容トレイ4の段差面部5にディスクロータ10の摺動板部10cを位置させる一方、他方の収容トレイ4の切欠凹部6にホイール取付部10aを位置させて各ディスクロータ10をロータ収容体3に収容しているが、各収容トレイ4の段差面部5と切欠凹部6とにそれぞれ各ディスクロータ10の摺動板部10cとホイール取付部10aとを位置させて各ディスクロータ10をロータ収容体3に収容するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、ディスクブレーキを構成するディスクロータを搬送する際に用いる搬送パレットに適している。
【符号の説明】
【0059】
1 搬送パレット
2 トレイケース
2a 開口部
3 ロータ収容体
4 収容トレイ
5 段差面部
6 切欠凹部(位置決め支持部)
6b 傾斜支持面
8 第2弾性部材
9 第3弾性部材
10 ディスクロータ
10a ホイール取付部
10b ホイール取付部の外周面
10c 摺動板部
10d 貫通孔
C1 中心線
S1 収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7