(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ゴム補強用繊維処理剤、ゴム補強用繊維処理剤キット、ゴム補強用繊維の製造方法、ゴム補強用繊維及びゴム製品
(51)【国際特許分類】
D06M 15/263 20060101AFI20240920BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20240920BHJP
C08K 5/357 20060101ALI20240920BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20240920BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20240920BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240920BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240920BHJP
C09J 121/00 20060101ALI20240920BHJP
C09J 133/02 20060101ALI20240920BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20240920BHJP
D06M 15/267 20060101ALI20240920BHJP
D06M 15/427 20060101ALI20240920BHJP
D06M 15/55 20060101ALI20240920BHJP
D06M 15/564 20060101ALI20240920BHJP
D06M 15/693 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
D06M15/263
C08K5/29
C08K5/357
C08L15/00
C08L33/02
C08L63/00 A
C09J11/06
C09J121/00
C09J133/02
C09J175/04
D06M15/267
D06M15/427
D06M15/55
D06M15/564
D06M15/693
(21)【出願番号】P 2024507917
(86)(22)【出願日】2023-07-11
(86)【国際出願番号】 JP2023025560
(87)【国際公開番号】W WO2024014452
(87)【国際公開日】2024-01-18
【審査請求日】2024-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2022112505
(32)【優先日】2022-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591018051
【氏名又は名称】明成化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】西村 宏
(72)【発明者】
【氏名】橋本 貴史
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 優
(72)【発明者】
【氏名】柏原 宮人
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02955268(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03992357(EP,A1)
【文献】特開2013-064037(JP,A)
【文献】特開2011-026743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
C09J1/00-5/10
9/00-201/10
D06M10/00-16/00
19/00-23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾルシン及びホルムアルデヒドを含まないゴム補強用繊維処理剤であって、下記ポリカルボン酸系重合体1、ポリカルボン酸系重合体2、ポリカルボン酸系重合体3、ポリカルボン酸系重合体4、ポリカルボン酸系重合体5及びポリカルボン酸系重合体6から選択される少なくとも1種であるポリカルボン酸系重合体と、エポキシ化合物と、ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックスと、ブロックイソシアネート化合物を含有するゴム補強用繊維処理剤。
ポリカルボン酸系重合体1:
架橋構造を有さず、不飽和カルボン酸系単量体に由来する構造単位とその他の単量体に由来する構造単位の合計100モル%に対して、アクリル酸又はアクリル酸塩に由来する構造単位を、50モル%以上100モル%以下含むポリカルボン酸系重合体。
ポリカルボン酸系重合体2:
架橋構造を有さず、重量平均分子量が、500以上100,000以下であるポリカルボン酸系重合体。
ポリカルボン酸系重合体3:
架橋構造を有さず、重合体に含まれるカルボキシ基の一部又は全部がカルボキシ基の
有機アミン塩となっており、水溶液
(25℃)の
ガラス電極法によるpHが3.5~10.0であるポリカルボン酸系重合体。
ポリカルボン酸系重合体4:
架橋構造を有さず、不飽和カルボン酸の有機アミン
塩に由来する構造単位を含むポリカルボン酸系重合体。
ポリカルボン酸系重合体5:
架橋構造を有さず、不飽和カルボン酸系単量体に由来する構造単位とその他の単量体に由来する構造単位の合計100モル%に対して
、不飽和カルボン酸の有機アミン
塩に由来する構造単位
を50モル%以上100モル%以下含むポリカルボン酸系重合体。
ポリカルボン酸系重合体6:
架橋構造を有し、ポリカルボン酸系重合体粒子に含まれるものであるポリカルボン酸系重合体。
【請求項2】
更に、オキサゾリン基を有する高分子化合物を含有する請求項1に記載のゴム補強用繊維処理剤。
【請求項3】
前記ポリカルボン酸系重合体がポリカルボン酸系重合体4又はポリカルボン酸系重合体5であり、前記有機アミン塩が、メチルアミン、n-ブチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジプロパノールアミン、エチレンジアミン及びジエチレントリアミンからなる群から選ばれる有機アミンの塩である請求項1又は2に記載のゴム補強用繊維処理剤。
【請求項4】
前記ポリカルボン酸系重合体がポリカルボン酸系重合体6であり、前記ポリカルボン酸系重合体粒子が、体積平均粒子径が10nm~10μmの微粒子である請求項1又は2に記載のゴム補強用繊維処理剤。
【請求項5】
レゾルシン及びホルムアルデヒドを含まないゴム補強用繊維処理剤キットであって、エポキシ化合物と、ブロックイソシアネート化合物とを含有する処理剤1、及び、ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックスと、下記ポリカルボン酸系重合体1、ポリカルボン酸系重合体2、ポリカルボン酸系重合体3、ポリカルボン酸系重合体4、ポリカルボン酸系重合体5及びポリカルボン酸系重合体6から選択される少なくとも1種であるポリカルボン酸系重合体と、オキサゾリン基を有する高分子化合物を含有する処理剤2を含むゴム補強用繊維処理剤キット。
ポリカルボン酸系重合体1:
架橋構造を有さず、不飽和カルボン酸系単量体に由来する構造単位とその他の単量体に由来する構造単位の合計100モル%に対して、アクリル酸又はアクリル酸塩に由来する構造単位を、50モル%以上100モル%以下含むポリカルボン酸系重合体。
ポリカルボン酸系重合体2:
架橋構造を有さず、重量平均分子量が、500以上100,000以下であるポリカルボン酸系重合体。
ポリカルボン酸系重合体3:
架橋構造を有さず、重合体に含まれるカルボキシ基の一部又は全部がカルボキシ基の
有機アミン塩となっており、水溶液
(25℃)の
ガラス電極法によるpHが3.5~10.0であるポリカルボン酸系重合体。
ポリカルボン酸系重合体4:
架橋構造を有さず、不飽和カルボン酸の有機アミン
塩に由来する構造単位を含むポリカルボン酸系重合体。
ポリカルボン酸系重合体5:
架橋構造を有さず、不飽和カルボン酸系単量体に由来する構造単位とその他の単量体に由来する構造単位の合計100モル%に対して
、不飽和カルボン酸の有機アミン
塩に由来する構造単位
を50モル%以上100モル%以下含むポリカルボン酸系重合体。
ポリカルボン酸系重合体6:
架橋構造を有し、ポリカルボン酸系重合体粒子に含まれるものであるポリカルボン酸系重合体。
【請求項6】
前記ポリカルボン酸系重合体がポリカルボン酸系重合体4又はポリカルボン酸系重合体5であり、前記有機アミン塩が、メチルアミン、n-ブチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジプロパノールアミン、エチレンジアミン及びジエチレントリアミンからなる群から選ばれる有機アミンの塩である請求項5に記載のゴム補強用繊維処理剤。
【請求項7】
前記ポリカルボン酸系重合体がポリカルボン酸系重合体6であり、前記ポリカルボン酸系重合体粒子が、体積平均粒子径が10nm~10μmの微粒子である請求項5に記載のゴム補強用繊維処理剤キット。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか一項に記載のゴム補強用繊維処理剤キットを使用し、繊維に、前記処理剤1を含む加工液を付着させる処理を行い、その後、前記処理剤2を含む加工液を付着させる処理を行う工程を有する、ゴム補強用繊維の製造方法。
【請求項9】
繊維表面に、下記ポリカルボン酸系重合体1、ポリカルボン酸系重合体2、ポリカルボン酸系重合体3、ポリカルボン酸系重合体4、ポリカルボン酸系重合体5及びポリカルボン酸系重合体6から選択される少なくとも1種であるポリカルボン酸系重合体と、エポキシ化合物と、ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックスと、ブロックイソシアネート化合物を含有する組成物を加熱処理して得た接着性組成物が付着したゴム補強用繊維。
ポリカルボン酸系重合体1:
架橋構造を有さず、不飽和カルボン酸系単量体に由来する構造単位とその他の単量体に由来する構造単位の合計100モル%に対して、アクリル酸又はアクリル酸塩に由来する構造単位を、50モル%以上100モル%以下含むポリカルボン酸系重合体。
ポリカルボン酸系重合体2:
架橋構造を有さず、重量平均分子量が、500以上100,000以下であるポリカルボン酸系重合体。
ポリカルボン酸系重合体3:
架橋構造を有さず、重合体に含まれるカルボキシ基の一部又は全部がカルボキシ基の
有機アミン塩となっており、水溶液
(25℃)の
ガラス電極法によるpHが3.5~10.0であるポリカルボン酸系重合体。
ポリカルボン酸系重合体4:
架橋構造を有さず、不飽和カルボン酸の有機アミン
塩に由来する構造単位を含むポリカルボン酸系重合体。
ポリカルボン酸系重合体5:
架橋構造を有さず、不飽和カルボン酸系単量体に由来する構造単位とその他の単量体に由来する構造単位の合計100モル%に対して
、不飽和カルボン酸の有機アミン
塩に由来する構造単位
を50モル%以上100モル%以下含むポリカルボン酸系重合体。
ポリカルボン酸系重合体6:
架橋構造を有し、ポリカルボン酸系重合体粒子に含まれるものであるポリカルボン酸系重合体。
【請求項10】
繊維表面に、下記ポリカルボン酸系重合体1、ポリカルボン酸系重合体2、ポリカルボン酸系重合体3、ポリカルボン酸系重合体4、ポリカルボン酸系重合体5及びポリカルボン酸系重合体6から選択される少なくとも1種であるポリカルボン酸系重合体と、エポキシ化合物と、ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックスと、ブロックイソシアネート化合物と、オキサゾリン基を有する高分子化合物を含有する組成物を加熱処理して得た接着性組成物が付着したゴム補強用繊維。
ポリカルボン酸系重合体1:
架橋構造を有さず、不飽和カルボン酸系単量体に由来する構造単位とその他の単量体に由来する構造単位の合計10
0モル%に対して、アクリル酸又はアクリル酸塩に由来する構造単位を、50モル%以上100モル%以下含むポリカルボン酸系重合体。
ポリカルボン酸系重合体2:
架橋構造を有さず、重量平均分子量が、500以上100,000以下であるポリカルボン酸系重合体。
ポリカルボン酸系重合体3:
架橋構造を有さず、重合体に含まれるカルボキシ基の一部又は全部がカルボキシ基の
有機アミン塩となっており、水溶液
(25℃)の
ガラス電極法によるpHが3.5~10.0であるポリカルボン酸系重合体。
ポリカルボン酸系重合体4:
架橋構造を有さず、不飽和カルボン酸の有機アミン
塩に由来する構造単位を含むポリカルボン酸系重合体。
ポリカルボン酸系重合体5:
架橋構造を有さず、不飽和カルボン酸系単量体に由来する構造単位とその他の単量体に由来する構造単位の合計100モル%に対して
、不飽和カルボン酸の有機アミン
塩に由来する構造単位
を50モル%以上100モル%以下含むポリカルボン酸系重合体。
ポリカルボン酸系重合体6:
架橋構造を有し、ポリカルボン酸系重合体粒子に含まれるものであるポリカルボン酸系重合体。
【請求項11】
前記ポリカルボン酸系重合体がポリカルボン酸系重合体4又はポリカルボン酸系重合体5であり、前記有機アミン塩が、メチルアミン、n-ブチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジプロパノールアミン、エチレンジアミン及びジエチレントリアミンからなる群から選ばれる有機アミンの塩である請求項9又は10に記載のゴム補強用繊維処理剤。
【請求項12】
前記ポリカルボン酸系重合体がポリカルボン酸系重合体6であり、前記ポリカルボン酸系重合体粒子が、体積平均粒子径が10nm~10μmの微粒子である請求項9又は10に記載のゴム補強用繊維。
【請求項13】
前記繊維が、ポリエステル、ナイロン及びアラミドのいずれかを含む請求項9又は10に記載のゴム補強用繊維。
【請求項14】
請求項9又は10に記載のゴム補強用繊維を含有するゴム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルシン及びホルムアルデヒドを含まないゴム補強用繊維処理剤、レゾルシン及びホルムアルデヒドを含まないゴム補強用繊維処理剤キットとそれを用いたゴム補強用繊維の製造方法、それらを用いて得られたゴム補強用繊維及びゴム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤや動力伝達ベルト等の高強度が要求されるゴム製品において、ポリエステル繊維等からなる繊維の表面に、レゾルシンや、レゾルシンとホルムアルデヒドを縮合させたレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物と、ホルムアルデヒド及びゴムラテックスを含む接着性組成物を付着させたゴム補強用繊維を用いることにより、ゴム補強用繊維とゴム組成物との接着性に優れた高強度のゴム製品を得られることが知られている。
【0003】
このようなレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物とゴムラテックスを含む接着性組成物に、他の接着性組成物を組み合わせて用いることも知られている。例えば、特許文献1、2には、レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物とゴムラテックスを含む接着性組成物を繊維に付着させる前に予め繊維に付着させておく接着剤組成物として、水溶性高分子と有機ポリイソシアネート類と水性ウレタン化合物と架橋性の官能基を有する熱可塑性重合体とエポキシド化合物を含んでなる接着剤組成物が開示されている。
【0004】
しかしながら、ホルムアルデヒドは、レゾルシンを架橋させるために有効な原材料ではあるものの、人体への有害性が懸念されることから使用量の削減が求められており、ゴム補強用繊維に用いる接着性組成物においても、レゾルシン及びホルムアルデヒドを用いない種々の試みがなされている(特許文献3~6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-98245号公報
【文献】特開2010-254928号公報
【文献】国際公開第2014/091376号
【文献】国際公開第2014/175844号
【文献】国際公開第2015/188939号
【文献】国際公開第2019/015792号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物を用いないことも含めて、レゾルシン及びホルムアルデヒドを用いない試みとして、特許文献3~6には、アクリル系ポリマー、エポキシ化合物、ブロックイソシアネート化合物及びゴムラテックスを含む浸漬用組成物が開示されている。
【0007】
しかしながら、これらのレゾルシン及びホルムアルデヒドを用いない試みでは、レゾルシンや、レゾルシンとホルムアルデヒドを縮合させたレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物と、ホルムアルデヒド及びゴムラテックスを含む接着性組成物を付着させたゴム補強用繊維を用いる場合と同等の、ゴム補強用繊維とゴム組成物との接着性に十分優れた高強度のゴム製品は得られなかった。
【0008】
そこで本発明は、レゾルシン及びホルムアルデヒドを含まないゴム補強用繊維処理剤及びゴム補強用繊維処理剤キットと、ゴム組成物との接着性に優れたゴム補強用繊維及びゴム製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、レゾルシン及びホルムアルデヒドを含まないゴム補強用繊維処理剤であって、ポリカルボン酸系重合体と、エポキシ化合物と、ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックスと、ブロックイソシアネート化合物を含有するゴム補強用繊維処理剤により解決される。ここで、ゴム補強用繊維処理剤は更に、オキサゾリン基を有する高分子化合物を含有することが好ましい。ゴム補強用繊維処理剤が含有するポリカルボン酸系重合体は、架橋構造を有し、ポリカルボン酸系重合体粒子に含まれるものであるか、架橋構造を有しない重合体であることが好ましい。上記ポリカルボン酸系重合体粒子は、体積平均粒子径が10nm~10μmの微粒子であることが好ましい。
【0010】
また、上記課題は、レゾルシン及びホルムアルデヒドを含まないゴム補強用繊維処理剤のキットであって、エポキシ化合物と、ブロックイソシアネート化合物とを含有する処理剤1、及び、ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックスと、ポリカルボン酸系重合体と、オキサゾリン基を有する高分子化合物を含有する処理剤2を含むゴム補強用繊維処理剤キットによっても解決される。また、このゴム補強用繊維処理剤キットを用い、繊維に、該処理剤1を含む加工液を付着させる処理を行い、その後、該処理剤2を含む加工液を付着させる処理を行う工程を有する、ゴム補強用繊維の製造方法によっても解決される。ここで、処理剤2が含有するポリカルボン酸系重合体は、架橋構造を有し、ポリカルボン酸系重合体粒子に含まれるものであるか、架橋構造を有しない重合体であることが好ましい。上記ポリカルボン酸系重合体粒子は、体積平均粒子径が10nm~10μmの微粒子であることが好ましい。
【0011】
更には、上記課題は、繊維表面に、ポリカルボン酸系重合体と、エポキシ化合物と、ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックスと、ブロックイソシアネート化合物を含有する組成物を加熱処理して得た接着性組成物が付着したゴム補強用繊維によっても解決される。あるいは、繊維表面に、ポリカルボン酸系重合体と、エポキシ化合物と、ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックスと、ブロックイソシアネート化合物と、オキサゾリン基を有する高分子化合物を含有する組成物を加熱処理して得た接着性組成物が付着したゴム補強用繊維によっても解決される。また、上記のゴム補強用繊維を含有するゴム製品によっても解決される。ここで、ポリカルボン酸系重合体は、架橋構造を有し、ポリカルボン酸系重合体粒子に含まれるものであるか、架橋構造を有しない重合体であることが好ましい。上記ポリカルボン酸系重合体粒子は、体積平均粒子径が10nm~10μmの微粒子であることが好ましい。上記繊維はポリエステル、ナイロン及びアラミドのいずれかを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、レゾルシン及びホルムアルデヒドを含まないゴム補強用繊維処理剤及びゴム補強用繊維処理剤キットと、ゴム組成物との接着性に優れたゴム補強用繊維及びゴム製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のゴム補強用繊維処理剤(以下、「本発明の処理剤」とも言う。)は、ポリカルボン酸系重合体と、エポキシ化合物と、ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックスと、ブロックイソシアネート化合物を含有し、レゾルシン及びホルムアルデヒドを含まない。
本発明の処理剤は、更に、オキサゾリン基を有する高分子化合物を含有することが好ましい。
本発明の処理剤が含有するポリカルボン酸系重合体は、架橋構造を有し、ポリカルボン酸系重合体粒子に含まれるものであるか、架橋構造を有しない重合体であることが好ましい。上記ポリカルボン酸系重合体粒子は、体積平均粒子径が10nm~10μmの微粒子であることが好ましい。
【0014】
本発明の処理剤は、さらに液状媒体を含有することが好ましい。また、液体状であることが好ましい。
本発明の処理剤を用いた繊維表面の付着処理によりゴム補強用繊維を得ることができる。
【0015】
また、本発明の処理剤が、更にオキサゾリン基を有する高分子化合物を含有する場合、2種の処理剤がセットとなった処理剤キットとすることもできる。
本発明のゴム補強用繊維処理剤キット(以下、「本発明の処理剤キット」とも言う。)は、エポキシ化合物と、ブロックイソシアネート化合物とを含有する処理剤1、及び、ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックスと、ポリカルボン酸系重合体と、オキサゾリン基を有する高分子化合物を含有する処理剤2を含み、レゾルシン及びホルムアルデヒドを含まない。
処理剤2が含有するポリカルボン酸系重合体は、架橋構造を有し、ポリカルボン酸系重合体粒子に含まれるものであるか、架橋構造を有しない重合体であることが好ましい。上記ポリカルボン酸系重合体粒子は、体積平均粒子径が10nm~10μmの微粒子であることが好ましい。
処理剤1及び2は、それぞれさらに液状媒体を含有することが好ましい。
【0016】
本発明のゴム補強用繊維処理剤及びゴム補強用繊維処理剤キットは、レゾルシン及びホルムアルデヒドを含まない。本発明において「レゾルシン及びホルムアルデヒドを含まない」とは、レゾルシン又はホルムアルデヒド、あるいはその両方を実質的に含まないことに加えて、レゾルシンとホルムアルデヒドを縮合させたレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物も実質的に含まないことを意味する。これらの化合物を「実質的に含まない」とは、各化合物の含有量が0.1質量%未満であることを意味する。該含有量は、0.01質量%未満であることが好ましく、0質量%(検出不可)であることが最も好ましい。
レゾルシン、ホルムアルデヒド及びレゾルシンとホルムアルデヒドを縮合させたレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物を実質的に含まない処理剤及び処理剤キットは、レゾルシン、ホルムアルデヒド及びレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物を実質的に含まない、又は、製造工程において生じない原材料を使用することにより、製造することができる。
【0017】
液状媒体は水性媒体であることが好ましい。水性媒体とは、水を50質量%以上含有する液状媒体のことであり、使用する水としては、不純物を除いて精製した水を使用することが好ましいが、本発明の効果を生じる限りにおいて、工業用水や水道水等を用いてもよい。水性媒体は、水に加えて他の液状媒体を含有していてもよい。液状媒体は、水以外に、モノアルコール、多価アルコール、グリコールエーテル、グリコールエステル等の水溶性有機溶媒を含有してもよく、有害性が低く、揮発蒸気などによる作業環境の悪化が起こり難いものから必要に応じて選ぶことができる。
【0018】
ポリカルボン酸系重合体
本発明で使用するポリカルボン酸系重合体とは、不飽和カルボン酸系単量体に由来する構造単位を含む重合体である。
不飽和カルボン酸系単量体とは、カルボキシ基(-COOH)、その塩又は、カルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)と、重合性の炭素-炭素二重結合とを含む単量体であり、本発明においては、不飽和カルボン酸、その塩及び不飽和カルボン酸無水物を指す。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α-ヒドロキシアクリル酸、α-ヒドロキシメチルアクリル酸等の、不飽和モノカルボン酸及びこれらの塩;フマル酸、マレイン酸、メチレングルタル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩(一塩であっても二塩であっても良い);無水マレイン酸やイタコン酸無水物等の不飽和カルボン酸無水物;等が例示される。
上記塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が例示される。金属塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属;鉄、アルミニウム等の遷移金属;等との塩が例示される。有機アミン塩としては、メチルアミン、n-ブチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジプロパノールアミン等のアルカノールアミン;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のポリアミン;等との塩が例示される。アンモニウム塩は、アンモニアとの塩である。
【0019】
本発明で使用するポリカルボン酸系重合体において、不飽和カルボン酸系単量体に由来する構造単位とは、不飽和カルボン酸系単量体が重合して形成される構造単位であり、具体的には、不飽和カルボン酸系単量体の重合性の炭素-炭素二重結合が単結合になった構造である。例えば、不飽和カルボン酸系単量体がアクリル酸(CH2=CHCOOH)である場合、不飽和カルボン酸系単量体に由来する構造単位は、-CH2-CH(COOH)-、で表すことができる。
なお、本発明において、不飽和カルボン酸系単量体に由来する構造単位と同じ構造を有していれば、不飽和カルボン酸系単量体を重合する以外の方法で形成した構造単位も不飽和カルボン酸系単量体に由来する構造単位に含まれる。本発明で使用するポリカルボン酸系重合体は、不飽和カルボン酸系単量体に由来する構造単位を、1種含んでいても、2種以上含んでいても良い。
上記ポリカルボン酸系重合体は、カルボキシ基及び/又はその塩を1分子中に合計2個以上含むか、カルボン酸無水物基を1分子中に2個以上含むものであればよい。
【0020】
本発明で使用するポリカルボン酸系重合体は、不飽和カルボン酸系単量体以外の単量体(以下、「その他の単量体」とも言う)に由来する構造単位を有してもよい。
その他の単量体としては、特に制限はないが、具体的には、3-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸及びこれらの塩等のスルホン酸系単量体;ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、アミノエチルメタクリレート、ジアリルアミン、ジアリルジメチルアミン、およびこれらの4級化物や塩等のアミノ基含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等の窒素原子含有単量体;N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-N-メチルホルムアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニルオキサゾリドン等のN-ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系単量体;3-(メタ)アリルオキシ-1,2-ジヒドロキシプロパン、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の不飽和アルコール系単量体;上記不飽和アルコール系単量体にアルキレンオキシドを付加した構造を有するポリアルキレングリコール系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体[中でも、(メタ)アクリル酸C1-10アルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸C1-5アルキルエステルがより好ましい];2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル[中でも、(メタ)アクリル酸C1-8ヒドロキシアルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸C1-4ヒドロキシアルキルエステルがより好ましい。];エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート等の多価メタクリル酸エステル類;(メタ)アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の不飽和グリシジル化合物;1-アリロキシ-3-ブトキシプロパン-2-オール等の、不飽和グリシジル化合物にアルコールを付加させた構造を有する単量体;ジビニルエーテル;ジアルキレングリコールジアリルエーテル(ジエチレングリコールジアリルエーテル、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、ジブチレングリコールジアリルエーテル等)、ポリアルキレングリコールジアリルエーテル(ポリエチレングリコールジアリルエーテル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル、ポリブチレングリコールジアリルエーテル等)等のジアリルエーテル類;スチレン、アルキルスチレン類(o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、p-t-ブチルスチレン等)、ハロゲン基含有スチレン類(o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等)、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、インデン、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体;イソブチレン、1,3-ブタジエン、オクテン、トリビニルシクロヘキサン等のアルケニル基含有炭化水素類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニル類(中でも、飽和脂肪酸とビニルアルコールとのエステルが好ましく、炭素数1~5の飽和脂肪酸とビニルアルコールとのエステルがより好ましい);アルコキシシリル基含有シランカップリング剤[ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2-スチリルエチルトリメトキシシラン等]、ハロゲン化シリル基含有シランカップリング剤[ビニルトリクロロシラン等]、シラノール基含有シランカップリング剤[γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルヒドロキシシラン等]、メタクリル変性ポリジメチルシロキサン等のケイ素原子含有単量体;等が挙げられる。また、上記他の単量体は、1種を単独で使用してもあるいは2種以上を併用しても良い。
【0021】
本発明で使用するポリカルボン酸系重合体において、その他の単量体に由来する構造単位とは、その他の単量体が重合して形成される構造単位であり、具体的には、その他の単量体が有する重合性の炭素-炭素二重結合が単結合になった構造である。例えば、その他の単量体がアクリル酸ブチル(CH2=CHCOOC4H9)である場合、その他の単量体に由来する構造単位は、-CH2-CH(COOC4H9)-、で表すことができる。
【0022】
本発明で使用するポリカルボン酸系重合体は、架橋構造を有し、ポリカルボン酸系重合体粒子に含まれるものであってもよく、架橋構造を有しない重合体であってもよい。架橋構造を有しない重合体は、架橋構造を有するポリカルボン酸系重合体粒子に含まれるものであってもよい。なお、本明細書では、ポリカルボン酸系重合体を含有する粒子を「ポリカルボン酸系重合体粒子」ともいう。架橋構造を有するポリカルボン酸系重合体を含有するポリカルボン酸系重合体粒子は、当然架橋構造を有する。
【0023】
上記ポリカルボン酸系重合体が架橋構造を有しない重合体である場合、不飽和カルボン酸系単量体に由来する構造単位とその他の単量体に由来する構造単位の合計100モル%に対して、不飽和カルボン酸系単量体に由来する構造単位を、50モル%以上100モル%以下含むことが好ましく、70モル%以上100モル%以下含むことがより好ましく、90モル%以上100モル%以下含むことがさらに好ましい。上記範囲であることにより、ゴム補強用繊維処理剤の配合安定性が向上する傾向にある。
上記ポリカルボン酸系重合体が架橋構造を有しない重合体である場合、不飽和カルボン酸系単量体に由来する構造単位とその他の単量体に由来する構造単位の合計100モル%に対して、アクリル酸もしくはアクリル酸塩に由来する構造単位を50モル%以上100モル%以下含むことが好ましく、70モル%以上100モル%以下含むことがより好ましく、90モル%以上100モル%以下含むことがさらに好ましい。上記範囲であることにより、ゴム補強用繊維処理剤の配合安定性が向上する傾向にある。アクリル酸塩における塩とは、上記塩と同様の塩が例示される。アクリル酸もしくはアクリル酸塩に由来する構造単位は、アクリル酸に由来する構造単位かアクリル酸塩に由来する構造単位のいずれかのみを含んでも良く、両方を含んでも良く、アクリル酸塩に由来する構造単位を1種又は2種以上含んでも良い。
【0024】
本発明で使用するポリカルボン酸系重合体は、中和されたカルボキシ基を含むことが好ましい。すなわち、重合体に含まれるカルボキシ基の一部又は全部がカルボキシ基の塩となっていることが好ましい。
重合体の水溶液のpHは3.5~10.0であることが好ましく、5.0~9.5であることがより好ましく、6.0~9.0であることがさらに好ましい。上記範囲であることにより、ゴム補強用繊維処理剤の配合安定性が向上する傾向にある。なお、pHはガラス電極法により測定した値である。
なお、上記カルボキシ基の塩における「塩」とは、上記不飽和カルボン酸系単量体における塩と同様の塩が例示される。
【0025】
上記ポリカルボン酸系重合体は、不飽和カルボン酸の金属塩に由来する構造単位および/又は不飽和カルボン酸の有機アミン塩および/又は不飽和カルボン酸のアンモニウム塩に由来する構造単位を含むことが好ましい。本発明において、「不飽和カルボン酸の金属塩に由来する構造単位を含む」とは、不飽和カルボン酸に由来する構造単位に含まれる少なくとも1つのカルボキシ基が金属との塩(例えば-COO-X+。X+は金属カチオンを表す。)を形成している状態を表す。金属塩としては、上記の金属塩が例示される。同様に、「不飽和カルボン酸の有機アミン塩に由来する構造単位を含む」とは、不飽和カルボン酸に由来する構造単位に含まれる少なくとも1つのカルボキシ基が有機アミン化合物との塩(例えば-COO-X+。X+は有機アンモニウムカチオンを表す。)を形成している状態を表す。有機アミン塩としては、上記の有機アミン塩が例示される。また、1級アミンとの塩、2級アミンとの塩、3級アミンとの塩、4級アンモニウム塩等、特に限定されず、アミノ基を1つだけ有するアミンとの塩であっても良く、2以上のアミノ基を有するアミンとの塩、例えば、ジアミンとの塩、トリアミンとの塩、およびポリアミンとの塩等であっても良い。上記有機アミン塩におけるXとしては、窒素原子と炭素原子とのモル比が、1:1~1:20であることが好ましく、1:1~1:10であることがより好ましい。同様に、「不飽和カルボン酸のアンモニウム塩に由来する構造単位を含む」とは、不飽和カルボン酸に由来する構造単位に含まれる少なくとも1つのカルボキシ基がアンモニアとの塩を形成している状態を表す。
上記ポリカルボン酸系重合体は、不飽和カルボン酸系単量体に由来する構造単位とその他の単量体に由来する構造単位の合計100モル%に対して、不飽和カルボン酸の金属塩に由来する構造単位と不飽和カルボン酸の有機アミン塩と不飽和カルボン酸のアンモニウム塩に由来する構造単位とを合計で、50モル%以上100モル%以下含むことが好ましく、70モル%以上100モル%以下含むことがより好ましく、90モル%以上100モル%以下含むことがさらに好ましい。不飽和カルボン酸の金属塩に由来する構造単位および/又は不飽和カルボン酸の有機アミン塩および/又は不飽和カルボン酸のアンモニウム塩に由来する構造単位はいずれかを1種もしくは2種以上含んでいても良く、それぞれを1種もしくは2種以上含んでいても良い。不飽和カルボン酸の有機アミン塩に由来する構造単位を含むことがより好ましい。上記範囲であることにより、ゴム補強用繊維処理剤の配合安定性が向上する傾向にある。
【0026】
本発明で使用するポリカルボン酸系重合体が架橋構造を有しない重合体である場合、ゴム補強用繊維処理剤の配合安定性が向上することから、重量平均分子量が、500以上、100,000以下であることが好ましく、1,500以上、80,000以下であることが好ましく、2,000以上、50,000以下であることがより好ましい。上記重量平均分子量は後述する測定方法により測定した値である。
なお、架橋構造を有するポリカルボン酸系重合体粒子は、水不溶性・水分散性の微粒子であるため、ポリカルボン酸系重合体の分子量を測定することができない。ここで、水不溶性とは、液温25℃の水中で、固形分が20%以下の濃度で、ポリカルボン酸系重合体粒子が粒子形状を保持できることを意味する。
【0027】
本発明で使用するポリカルボン酸系重合体における各構成単位は、ランダムに存在していても、ブロック状等、規則的に存在していても構わない。
【0028】
ポリカルボン酸系重合体粒子は、粒子全体が均一な組成のものでもよいし、部分的に組成が異なるもの、例えば、コア部とその表面に設けられたシェル部を含むコアシェル構造を有する粒子(コアシェル粒子)でもよい。
コアシェル粒子におけるシェル部の含有割合は、コアシェル粒子100質量%中、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、50質量%以上が特に好ましい。
ポリカルボン酸系重合体粒子は、少なくとも表面層がポリカルボン酸系重合体を含むことが好ましい。コアシェル粒子の場合は、少なくともシェル部がポリカルボン酸系重合体を含むことが好ましい。シェル部が複数の層を有する場合は、少なくともその最外層(粒子の表面側に位置する層)がポリカルボン酸系重合体を含むことが好ましい。
【0029】
ポリカルボン酸系重合体粒子中のポリカルボン酸系重合体の含有割合は、粒子100質量%中、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がさらにより好ましく、50質量%以上がいっそう好ましく、70質量%以上がよりいっそう好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
コアシェル粒子の場合は、シェル部におけるポリカルボン酸系重合体の含有割合は、シェル部100質量%中、50質量%以上が好ましく、60質量%がより好ましく、80質量%がさらに好ましく、90質量%が特に好ましい。
【0030】
ポリカルボン酸系重合体粒子は、体積平均粒子径が10nm~10μmであることが好ましく、50nm~5μmであることがより好ましく、100nm~1μmであることがさらに好ましく、150~500nmであることが特に好ましい。体積平均粒子径が10nm~10μmであると、高温環境下でのゴム補強用繊維とゴム組成物との接着性が顕著に向上する傾向がある。
本発明において、体積平均粒子径は、動的光散乱粒度分布測定装置を用いて粒子分散液の粒度分布を測定し、ガウシアン分布に基づく解析により求めた値である。
【0031】
上記ポリカルボン酸系重合体を製造する方法としては、例えば従来公知の種々の方法もしくはそれらの組み合わせ等が挙げられ、特に制限されないが、例えば、上記不飽和カルボン酸系単量体を必須とする単量体成分を重合する工程(以下、単量体成分を重合する工程を「重合工程」ともいう)を含む方法で製造することができる。
また、加水分解によりカルボキシ基を生成し得る重合性単量体を必須とする単量体成分を重合する工程、及び、それにより得られた重合体の前駆体を加水分解する工程を含む方法で製造することもできる。この方法でポリカルボン酸系重合体粒子を製造する場合は、重合工程において重合体の前駆体を含有する粒子を製造した後、加水分解を行えばよい。
重合工程における重合方法は、特に限定されないが、例えば、溶液重合法、バルク重合、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、或いは注型重合法、薄膜重合法、噴霧重合法等を採用することができる。ポリカルボン酸系重合体粒子を製造する場合、従来公知の樹脂粒子の製造方法、例えば懸濁重合法や乳化重合法を採用することができる。それ以外の場合は、溶液重合法が好ましい。また、上記重合工程は、回分式でも連続式でも行うことができる。
【0032】
上記加水分解によりカルボキシ基を生成し得る重合性単量体としては、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸無水物等が挙げられる。
不飽和カルボン酸エステルとしては、上記不飽和カルボン酸のエステル(上記不飽和モノカルボン酸のエステル、上記不飽和ジカルボン酸のモノエステル及びジエステル)等が挙げられる。前述のその他の単量体として挙げたものを使用してもよい。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α-ヒドロキシアクリル酸、α-ヒドロキシメチルアクリル酸等の不飽和モノカルボン酸のエステル;フマル酸、マレイン酸、メチレングルタル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸のエステル(モノエステル、ジエステル);等が例示される。より具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸グリシジル;多価メタクリル酸エステル類;γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルヒドロキシシラン、メタクリル変性ポリジメチルシロキサン等のケイ素原子含有単量体;等が例示される。
不飽和カルボン酸無水物としては、前述の無水マレイン酸やイタコン酸無水物等が例示される。
これらの中でも、得られる重合体が加水分解されやすいことから、上記不飽和カルボン酸のアルキルエステル[不飽和モノカルボン酸のアルキルエステル、不飽和ジカルボン酸のアルキルエステル(モノアルキルエステル及びジアルキルエステル)]及び不飽和カルボン酸無水物が好ましく、上記不飽和カルボン酸の炭素数1~10のアルキルエステルがより好ましく、上記不飽和カルボン酸の炭素数1~5のアルキルエステルがさらに好ましく、上記不飽和カルボン酸の炭素数1~4のアルキルエステルがさらにより好ましく、上記不飽和カルボン酸の炭素数1又は2のアルキルエステルがいっそう好ましく、上記不飽和カルボン酸の炭素数1のアルキルエステルが特に好ましい。
また、同様の理由から、α-ヒドロキシアクリル酸、α-ヒドロキシメチルアクリル酸等のように分子内に水酸基等の親水性基を有する不飽和カルボン酸のエステルも好ましい。
【0033】
ポリカルボン酸系重合体において、上記不飽和カルボン酸系単量体及び上記加水分解によりカルボキシ基を生成し得る重合性単量体に由来する構造単位の合計含有量は、重合体100質量%中、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がさらにより好ましく、50質量%以上がいっそう好ましく、70質量%以上がよりいっそう好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
【0034】
ポリカルボン酸系重合体粒子を製造する場合は、前述のジビニルベンゼン、1,3-ブタジエン、ジアリルエーテル類及び多価メタクリル酸エステル類からなる群より選ばれる少なくとも1種の架橋性の単量体を使用することが好ましい。これらの中でも、ジビニルベンゼン及び1,3-ブタジエンがより好ましく、ジビニルベンゼンがさらに好ましい。
ポリカルボン酸系重合体粒子におけるポリカルボン酸系重合体の具体例としては、(メタ)アクリル酸-エチレングリコールジメタクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸-トリエチレングリコールジメタクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸-トリメチロールプロパントリメタクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸-ポリエチレングリコールジアリルエーテル共重合体、(メタ)アクリル酸-ジビニルベンゼン共重合体、メチルアクリレート-エチレングリコールジメタクリレート共重合体の加水分解物、メチルアクリレート-トリエチレングリコールジメタクリレート共重合体の加水分解物、メチルアクリレート-ポリエチレングリコールジアリルエーテル共重合体の加水分解物、メチルアクリレート-ジビニルベンゼン共重合体の加水分解物、α-ヒドロキシアクリル酸メチル-トリメチロールプロパントリメタクリレート共重合体の加水分解物、α-ヒドロキシメチルアクリル酸メチル-ジビニルベンゼン共重合体の加水分解物、等が例示される。
ポリカルボン酸系重合体粒子がコアシェル粒子である場合は、シェル部の最外層に前述のポリカルボン酸系重合体を含むことが好ましい。コア部を構成する重合体は特に制限されず、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリスチレン、メタクリル酸-スチレン共重合体、メタクリル酸-ブチルアクリレート共重合体等が挙げられる。
【0035】
上記重合工程においては、重合を行う際には、重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)二塩酸塩等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が好適である。これらの重合開始剤のうち、過酸化水素、過硫酸塩が好ましく、過硫酸塩が最も好ましい。これらの重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上の混合物の形態で使用してもよい。上記重合開始剤の使用量としては、単量体(全単量体)の使用量1モルに対して、0.1g以上、25g以下であることが好ましく、0.1g以上、20g以下であることがより好ましく、0.1g以上、12g以下であることがさらに好ましい。
【0036】
上記重合工程においては、必要に応じて連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤としては、具体的には、メルカプトエタノール、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、n-ドデシルメルカプタン等の、チオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等の、ハロゲン化物;イソプロパノール、グリセリン等の、第2級アルコール;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸(塩)(これらの水和物を含む);亜リン酸、亜リン酸ナトリウム等の亜リン酸(塩);亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム等の亜硫酸(塩);亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等の重亜硫酸(塩);亜ジチオン酸ナトリウム等の亜ジチオン酸(塩);ピロ亜硫酸カリウム等のピロ亜硫酸(塩);などが挙げられる。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
連鎖移動剤の使用量としては、単量体(全単量体)の使用量1モルに対して、0g以上、20g以下であることが好ましく、0g以上、15g以下であることがより好ましく、1g以上、7g以下であることがさらに好ましい。
【0037】
上記重合工程においては、反応促進等を目的として、重金属イオンを使用しても良い。本発明で重金属イオンとは、比重が4g/cm3以上の金属のイオンを意味する。重金属イオンを使用することで、重合開始剤の使用量を低減することが可能となる。上記重金属イオンは、イオンの形態として含まれるものであれば特に限定されないが、重金属化合物を溶解してなる溶液を用いると、取り扱い性に優れるため好適である。上記重金属化合物としては、硫酸鉄(II)アンモニウム六水和物、硫酸第一鉄・七水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化マンガン等が例示される。上記重金属イオンの使用量としては、重合反応液全量に対して、0ppm以上、100ppm以下であることが好ましく、0ppm以上、50ppm以下であることがより好ましい。
【0038】
上記重合工程においては、溶媒を使用することが好ましい。溶媒としては、水を含むことが好ましく、溶媒全量に対して、水を50質量%以上、100質量%以下含むことがより好ましく、80質量%以上、100質量%以下含むことがさらに好ましい。上記重合工程で使用可能な溶媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
溶媒の使用量としては、単量体100質量%に対して40~400質量%が好ましい。より好ましくは、45質量%以上であり、更に好ましくは、50質量%以上である。また、より好ましくは、350質量%以下であり、更に好ましくは、300質量%以下である。溶媒の使用量が40質量%未満であると、得られる重合体の分子量が高くなるおそれがあり、400質量%を超えると、得られる重合体の濃度が低くなり、保管等のコストが高額になるおそれがある。
【0039】
上記重合工程において、重合温度は、特に限定されるものではないが、0℃以上で行われることが好ましく、また、150℃以下で行われることが好ましい。より好ましくは、40℃以上であり、更に好ましくは、60℃以上であり、特に好ましくは、80℃以上である。また、より好ましくは、120℃以下であり、更に好ましくは、110℃以下である。上記重合温度は、重合反応において、常にほぼ一定に保持する必要はなく、例えば、室温から重合を開始し、適当な昇温時間又は昇温速度で設定温度まで昇温し、その後、設定温度を保持するようにしてもよいし、単量体成分や開始剤等の滴下方法に応じて、重合反応中に経時的に温度変動(昇温又は降温)させてもよい。
【0040】
上記重合工程における重合時間は特に制限されないが、例えば回分式で実施する場合には、30~500分であることが好ましい。
【0041】
上記重合工程における反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下の何れであってもよいが、得られる重合体の分子量の点で、常圧下、又は、反応系内を密閉し、加圧下で行うのが好ましい。また、加圧装置や減圧装置、耐圧性の反応容器や配管等の設備の点で、常圧(大気圧)下で行うのが好ましい。反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気でもよいが、不活性雰囲気であっても良く、例えば、重合開始前に系内を窒素等の不活性ガスで置換しても良い。
【0042】
本発明で使用するポリカルボン酸系重合体は、任意であるが、上記重合工程以外の工程を含んで製造しても構わない。例えば、熟成工程、中和工程、重合開始剤や連鎖移動剤の失活工程、希釈工程、乾燥工程、濃縮工程、精製工程等が挙げられる。
【0043】
ポリカルボン酸系重合体粒子に含まれる、架橋構造を有するポリカルボン酸系重合体を使用すると、ポリカルボン酸系重合体が不飽和カルボン酸系単量体に由来する構造単位に加えて、架橋構造を有することにより、ゴム補強用繊維とゴム組成物との接着性がより向上すると共に、高温環境下でのゴム補強用繊維とゴム組成物との接着性が顕著に向上するという秀逸な効果が得られる。
【0044】
ポリカルボン酸系重合体は、親水性の不飽和カルボン酸系単量体が重合して形成される構造単位を含有するものであることから、通常は水溶性の重合体である。
一方、架橋構造を有するポリカルボン酸系重合体や架橋構造を有するポリカルボン酸系重合体粒子は、水不溶性の微粒子である。
【0045】
架橋構造を有するポリカルボン酸系重合体や架橋構造を有するポリカルボン酸系重合体粒子は、例えば、重合体又は粒子を構成する構造単位中に占める、架橋構造を構成する構造単位の割合を調整することにより、水不溶性にすることができる。
【0046】
エポキシ化合物
エポキシ化合物としては、エチレングリコールグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、ブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル;ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル;トリグリシジルイソシアヌレート、グリシジルヒダントイン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、ジグリシジルトリブロムアニリン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン;3,4-エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の脂環族あるいは脂肪族エポキサイド等、が挙げられる(本発明で使用するポリカルボン酸系重合体を除く)。これらの中では、水性媒体への溶解性が良好な化合物である、エチレングリコールグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルが好ましく、市販品としては、ナガセケムテックス株式会社製のデナコール(登録商標)シリーズなどを好ましく用いることができる。また、これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックス
ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックスは、ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴム成分(本発明で使用するポリカルボン酸系重合体及びエポキシ化合物を除く)が水性媒体中で乳化分散した性状を有するものである。
【0048】
ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴム成分は、ゴムを形成するモノマーとビニルピリジンとの共重合体であるポリマー分子を含有するものであり、ゴムを形成するモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン、スチレン等が挙げられる。共重合体の中でも、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン系共重合体が好ましい。
【0049】
本発明において好ましく用いられるビニルピリジン-スチレン-ブタジエン系共重合体としては、重合に用いる単量体の含有率で、ビニルピリジンが0.5~30質量%、スチレンが10~60質量%、ブタジエンが30~80質量%であるものが好ましい。ビニルピリジン含有率0.5~15質量%、スチレン含有率30~60質量%、ブタジエン含有率60質量%未満で構成される単量体混合物を重合させた後、続いて、ビニルピリジン含有率5~20質量%、スチレン含有率10~40質量%、ブタジエン含有率45~75質量%で構成される単量体混合物を重合させて得られる、二重構造を有するビニルピリジン-スチレン-ブタジエン系共重合体のラテックスも好ましく用いることができる。また、ビニルピリジン、スチレン、ブタジエン以外の単量体を更に重合させた共重合体のラテックスであってもよい。
【0050】
ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックスと、ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有さないゴムラテックスを併用して用いることもできる。ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有さないゴムラテックスとしては、天然ゴムラテックス、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムラテックス、カルボキシル基変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムラテックス、ニトリルゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス等が挙げられる。これらの中では、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムラテックス、カルボキシル基変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムラテックス等が好ましい。2種併用して用いる場合、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ゴムラテックスとスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスを用いることが好ましい。この場合、2種のラテックスの配合割合は特に限定はなく、例えば、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ゴムラテックスとスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスの固形分質量比で40:60~95:5であることが好ましく、60:40~90:10であることがより好ましい。
【0051】
ブロックイソシアネート化合物
ブロックイソシアネート化合物は、分子中にブロックイソシアネート基を有する化合物であり(本発明で使用するポリカルボン酸系重合体、エポキシ化合物及びポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴム成分を除く)、例えば、公知のポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に公知のブロック化剤を付加反応させることで得られる。具体的には、例えば以下の原料成分(a)、(b)、及び、必要に応じて(c)を反応させることにより合成することができる。
(a)ポリイソシアネート化合物
(b)ブロック化剤
(c)活性水素基含有化合物(ただし、上記の成分(a)及び(b)は除く)
該ブロックイソシアネート化合物は、分子中に複数のブロックイソシアネート基を有することが好ましい。
【0052】
以下に、各原料成分を更に詳細に説明する。
(a)ポリイソシアネート化合物(以下、「ポリイソシアネート化合物(a)」と言う。)
ポリイソシアネート化合物(a)としては、特に限定はなく、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートの誘導体を含むポリイソシアネート誘導体などが挙げられる。
【0053】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4-又は、2,6-トリレンジイソシアネート又はこれらの混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m-、p-フェニレンジイソシアネート又はこれらの混合物)、4,4’-ビフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-、2,4’-又は、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート又はこれらの2種以上の混合物)(MDI)、o-トリジンジイソシアネート(TODI)、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどが挙げられる。
【0054】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(1,3-又は、1,4-キシリレンジイソシアネート又はこれらの混合物)(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3-又は、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート又はこれらの混合物)(TMXDI)、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンなどが挙げられる。
【0055】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート又は1,3-ブチレンジイソシアネート)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエートなどが挙げられる。
【0056】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4-シクロヘキサンジイソシアネート又は1,3-シクロヘキサンジイソシアネート)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4’-、2,4’-又は、2,2’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、これらのtrans,trans-体、trans,cis-体、cis,cis-体、これら2種以上の混合物)(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート又はメチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体又はこれら2種以上の混合物)(NBDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3-又は、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン又はこれらの混合物)(H6XDI)などが挙げられる。
【0057】
ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート(単量体)の多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体など)、アロファネート変性体(例えば、上記したポリイソシアネート(単量体)と、後述する低分子量ポリオールとの反応より形成されたウレタン基に更にポリイソシアネート(単量体)のイソシアネート基が付加することにより生成するアロファネート変性体など)、アダクト体(例えば、ポリイソシアネート(単量体)と後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するアダクト体(アルコール付加体)など)、ビウレット変性体(例えば、上記したポリイソシアネート(単量体)と、水又はアミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、ウレア変性体(例えば、上記したポリイソシアネート(単量体)とジアミンとの反応により形成されたウレア基に更にポリイソシアネート(単量体)のイソシアネート基が付加することにより生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、上記したポリイソシアネート(単量体)と炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(上記したポリイソシアネート(単量体)の脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。更に、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)なども挙げられる。
【0058】
ポリイソシアネート化合物(a)は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ポリイソシアネート化合物(a)を2種以上併用する場合には、例えば、ブロックイソシアネートの製造時において、2種以上のポリイソシアネート化合物を同時に反応させてもよく、また、各ポリイソシアネート化合物を個別に用いて得られたブロックイソシアネートを混合してもよい。
【0059】
ゴム補強用繊維とゴム組成物との間の接着力に優れたゴム補強用繊維処理剤が得られることから、ポリイソシアネート化合物(a)としては、脂肪族ポリイソシアネート及びその誘導体、脂環族ポリイソシアネート及びその誘導体、芳香族ポリイソシアネート及びその誘導体が好ましい。
【0060】
(b)ブロック化剤(以下、「ブロック化剤(b)」と言う。)
ブロック化剤とは、付加反応によりイソシアネート基に付加することによりイソシアネート基を不活性化(保護)してブロックイソシアネート基を形成し、一方、加熱などによってブロックイソシアネート基から脱離(脱保護)することにより、イソシアネート基を再形成し、反応活性を再生させる機能を有する化合物のことである。ブロック化剤(b)としては、例えば、アルコール系化合物、アルキルフェノール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、メルカプタン系化合物、酸アミド系化合物、酸イミド系化合物、イミダゾール系化合物、イミダゾリン系化合物、ピリミジン系化合物、グアニジン系化合物、トリアゾール系化合物、カルバミン酸系化合物、尿素系化合物、オキシム系化合物、アミン系化合物、イミド系化合物、イミン系化合物、ピラゾール系化合物、重亜硫酸塩等が挙げられる。中でも、酸アミド系化合物、活性メチレン系化合物、オキシム系化合物、ピラゾール系化合物が好ましく、ε-カプロラクタム、アセチルアセトン、マロン酸ジエチル、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール等がより好ましい。ブロック化剤(b)は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
(c)活性水素基含有化合物(以下、「活性水素基含有化合物(c)」と言う。)
活性水素基含有化合物(c)としては、特に限定はなく、活性水素基を含有する各種アルコール類、ポリオール類、アミン類が挙げられる。
【0062】
活性水素基含有アルコール類としては、特に限定はなく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール等に、アルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)を付加したポリエーテルモノオール等が挙げられる。これらの活性水素基含有アルコールは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
活性水素基含有ポリオールとしては、特に限定はなく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、アルカン(C7~20)ジオール、1,3-又は、1,4-シクロヘキサンジメタノール又はこれらの混合物、1,3-又は、1,4-シクロヘキサンジオール又はこれらの混合物、水素化ビスフェノールA、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの3価アルコール;テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール;キシリトールなどの5価アルコール;ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール;ペルセイトールなどの7価アルコール;ショ糖などの8価アルコール;ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレントリオール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドとのランダム及び/又はブロック共重合体(例えば、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンコポリマージオールあるいはトリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロックポリマージオールあるいはトリオール、ポリプロピレングリコールの末端にエチレンオキサイドを付加重合させたプルロニック(登録商標)タイプのポリプロピレングリコールあるいはトリオールなど)、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル、ポリオキシプロピレントリメチロールプロパンエーテル、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなどのポリエーテルポリオール;アジピン酸系ポリエステルポリオール、フタル酸系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオールなどのポリエステルポリオール;ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール(ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどをポリイソシアネートによりウレタン変性したポリオール)、エポキシポリオール、植物油ポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどが挙げられる。これらの活性水素基含有ポリオールは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
活性水素基含有アミンとしては、特に制限はされないが、具体的にはジアミンやポリアミンが使用できる。ジアミンとしては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ピペラジン、イソホロンジアミンなどを例示することができ、ポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等を例示することができる。これらの活性水素基含有アミンは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
これらの活性水素基含有化合物の中で、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール等にエチレンオキサイドを付加したポリエーテルモノオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレントリオール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドとのランダム及び/又はブロック共重合体(例えば、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンコポリマージオールあるいはトリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロックポリマージオールあるいはトリオール、ポリプロピレングリコールの末端にエチレンオキサイドを付加重合させたプルロニック(登録商標)タイプのポリプロピレングリコールあるいはトリオールなど)などの親水性化合物は、ブロックイソシアネート化合物の分子構造中に親水性基(オキシエチレン基など)を導入することができ、自己乳化性(水への分散性)を付与することができるため、好ましい。また、親水性基はアニオン性、カチオン性のものを用いることもできる。これらの親水性化合物の数平均分子量は、300~5000であることが好ましい。これらの親水性化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。自己乳化性を付与するためのこれらの化合物の導入量は、反応に供するイソシアネート基の総量に対して、下限については好ましくは1mol%以上、また、上限については好ましくは50mol%以下、より好ましくは40mol%以下、さらに好ましくは30mol%以下である。
【0066】
ブロックイソシアネート化合物の合成時の反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下や加圧条件下や不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)の雰囲気下などで、0℃以上150℃以下、好ましくは30℃以上100℃以下の反応温度で、合成することができる。また、反応時間は、例えば、0.5時間以上120時間以下、好ましくは1時間以上72時間以下である。
【0067】
合成時には無溶剤下において反応させることもできるが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;アセトニトリルなどのニトリル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのアルキルエステル類;n-ヘキサン、n-ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類;トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類;塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類;N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの極性非プロトン性溶媒類;さらには、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタートなどの公知の溶剤の存在下において反応させることもできる。また、必要に応じ合成触媒を用いることもできる。
【0068】
このような条件で原料成分を反応させることにより、ポリイソシアネート化合物(a)のイソシアネート基の一部が必要に応じて用いる活性水素基含有化合物(c)と反応し、未反応のイソシアネート基が残存しているプレポリマーを得ることができる。その後、得られたプレポリマーに、残存しているイソシアネート基が不活性化するように、ブロック化剤(b)を付加反応させることにより、ブロックイソシアネートを得ることができる。また、反応順序は前記に限定されず、例えば、まず、ポリイソシアネート化合物(a)にブロック化剤(b)を、未反応のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、必要に応じて用いる活性水素基含有化合物(c)を反応させることによっても、ブロックイソシアネート化合物を得ることができる。なお、反応の終了は、例えば、JIS K 1603-1:2007のA法に準拠して測定した反応液のイソシアネート基の濃度を確認することによって、判断することができる。
【0069】
前記したように、活性水素基含有化合物(c)として親水性化合物を用いると、ブロックイソシアネート化合物の分子構造中に親水性基を導入することができ、自己乳化性(水への分散性)を付与することができる。このような自己乳化性のブロックイソシアネート化合物は、必要により乳化剤などの存在下で、前記の水性媒体中で分散する方法などを用いて、水分散型ブロックイソシアネートとすることができる。また、ブロックイソシアネート化合物を、必要により乳化剤などの存在下で、機械的剪断力を加えることにより水性媒体中に分散させて、水分散型ブロックイソシアネートを得ることもできる。なお、分散質であるブロックイソシアネート化合物はその化学構造により常温で固体であるものや、常温で液体であるものが存在することから、一般的にはそれらの水性媒体中での分散態様の名称として「懸濁液(サスペンジョン)」や「乳化液(エマルション)」が用いられるが、本発明においては、それらを区別することなく「水分散型ブロックイソシアネート」と称する。水分散型ブロックイソシアネートを得る方法としては、特に限定はなく、例えば、ブロックイソシアネート化合物と、水あるいは前記の水性媒体とを、ホモミキサー、ホモディスパー、ホモジナイザー、マグネチックスターラーなどの攪拌機を用いて攪拌及び混合する方法や、ボールミル、横型サンドミル、縦型サンドミル、アトライター、ビーズミルなどの分散機にガラスビーズやジルコニアビーズなどを充填し、高速攪拌して分散させる方法などを用いることができる。その後、水分散型ブロックイソシアネートに不要な揮発性の有機溶剤が含有されている場合には、必要により、水分散型ブロックイソシアネートを、例えば、減圧する、又は、減圧下で加熱することにより、有機溶剤を揮発除去することもできる。
【0070】
このようにして得られた水分散型ブロックイソシアネートにおいて、ブロックイソシアネート化合物の分散粒子の粒子径は特に限定はなく、例えば、体積平均粒子径で10000nm以下、好ましくは1000nm以下、より好ましくは700nm以下、さらに好ましくは500nm以下であり、通常、50nm以上である。ブロックイソシアネート化合物の分散粒子の粒子径がこの範囲内であれば、優れた分散安定性を確保することができる。
また、水分散型ブロックイソシアネートには、必要により、分散剤、消泡剤などの添加剤を適宜添加することができる。
また、ブロックイソシアネート化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
オキサゾリン基を有する高分子化合物
本発明の処理剤キットは、オキサゾリン基を有する高分子化合物を含有する。本発明の処理剤においても、ポリカルボン酸系重合体と、エポキシ化合物と、ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックスと、ブロックイソシアネート化合物に加えて、更に、オキサゾリン基を有する高分子化合物を含有することが好ましい。
オキサゾリン基を有する高分子化合物は、高分子鎖の側鎖にオキサゾリン基を有する化合物である(本発明で使用するポリカルボン酸系重合体、エポキシ化合物、ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴム成分、及び、ブロックイソシアネート化合物を除く)。該化合物は、オキサゾリン基の反応性を利用する架橋剤として作用する。高分子鎖としては、アクリル系重合体やスチレン-アクリル系共重合体や、更にポリアルキレンオキサイドの構造がグラフト重合された共重合体等が挙げられ、数平均分子量は5千~30万程度であることが好ましい。オキサゾリン基を有する高分子化合物としては市販や公知のものを好ましく用いることができ、市販品としては株式会社日本触媒製のエポクロス(登録商標)シリーズが挙げられる。
【0072】
本発明の処理剤は、例えば、水性媒体に、ポリカルボン酸系重合体と、エポキシ化合物と、ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックスと、ブロックイソシアネート化合物と、必要に応じてオキサゾリン基を有する高分子化合物を混合し、更に必要に応じて下記の添加剤等を添加し、水性媒体を追加添加するなどして得ることができる。これらの混合順序や添加順序は適宜調整することができる。本発明の処理剤は、そのまま繊維に付着処理を行う際に使用する加工液としても良いし、高濃度のストック液の状態から付着処理を行う際に適宜希釈するなどして加工液としても良い。
【0073】
本発明の処理剤を、繊維に付着処理を行う際に使用する加工液とする場合に、その固形分(水性媒体以外の不揮発性成分)濃度は、加工方法や繊維に対する所望の固形分付着量に応じて適宜調整することができ、例えば0.1~50質量%程度であり、好ましくは1~30質量%、更に好ましくは5~25質量%である。本発明の処理剤に含まれる固形分中での各構成成分の含有割合は、用いる繊維の種類やゴム組成物の組成、得られる接着性などに応じて適宜調整することができ、例えば、固形分中でのポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックス(固形分)の量は50~95質量%であることが好ましく、エポキシ化合物(固形分)、ブロックイソシアネート化合物(固形分)の各々の量は、0.1~30質量%であることが好ましい。
【0074】
本発明の処理剤が含有するポリカルボン酸系重合体の固形分の含有割合は、接着性の観点から、処理剤に含まれる全固形分中0.1~20質量%であることが好ましい。より好ましくは0.5~10質量%であり、更に好ましくは1.0~5.0質量%である。
【0075】
本発明の処理剤がオキサゾリン基を有する高分子化合物を含有する場合、その固形分の含有割合は、接着性の観点から、処理剤に含まれる全固形分中0.01~5.0質量%であることが好ましい。より好ましくは0.05~3.0質量%、更に好ましくは0.1~1.0質量%である。
【0076】
本発明の処理剤キットが含む処理剤1は、例えば、水性媒体に、エポキシ化合物と、ブロックイソシアネート化合物を混合し、更に必要に応じて下記の添加剤等を添加し、水性媒体を追加添加するなどして得ることができる。本発明の処理剤キットが含む処理剤2は、例えば、水性媒体に、ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックスと、ポリカルボン酸系重合体と、オキサゾリン基を有する高分子化合物を混合し、更に必要に応じて下記の添加剤等を添加し、水性媒体を追加添加するなどして得ることができる。これらの混合順序や添加順序は適宜調整することができる。本発明の処理剤キットが含む処理剤1及び処理剤2は、そのまま繊維に付着処理を行う際に使用する加工液としても良いし、高濃度のストック液の状態から付着処理を行う際に適宜希釈するなどして加工液としても良い。
【0077】
処理剤1を繊維に付着処理を行う際に使用する加工液とする場合に、その固形分(水性媒体以外の不揮発性成分)濃度は、加工方法や繊維に対する所望の固形分付着量に応じて適宜調整することができ、例えば0.1~20質量%程度であり、好ましくは1~5質量%である。処理剤1に含まれる固形分中での各構成成分の含有割合は、用いる繊維の種類やゴム組成物の組成、得られる接着性などに応じて適宜調整することができ、例えば、固形分中でのエポキシ化合物(固形分)の量は10~90質量%であることが好ましく、ブロックイソシアネート化合物(固形分)の量は10~90質量%であることが好ましい。
【0078】
処理剤2を繊維に付着処理を行う際に使用する加工液とする場合に、その固形分(水性媒体以外の不揮発性成分)濃度は、加工方法や繊維に対する所望の固形分付着量に応じて適宜調整することができ、例えば0.1~50質量%程度であり、好ましくは10~30質量%である。処理剤2に含まれる固形分中での各構成成分の含有割合は、用いる繊維の種類やゴム組成物の組成、得られる接着性などに応じて適宜調整することができ、例えば、固形分中でのポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックス(固形分)の量は70~99質量%であることが好ましい。
【0079】
本発明の処理剤キットにおいて、ポリカルボン酸系重合体の固形分の含有割合は、処理剤2に含まれる全固形分中0.1~30質量%であることが好ましい。より好ましくは0.5~20質量%、更に好ましくは1.0~15質量%である。
【0080】
また、本発明の処理剤キットにおいて、オキサゾリン基を有する高分子化合物の固形分の含有割合は、処理剤2に含まれる全固形分中0.01~5.0質量%であることが好ましい。より好ましくは0.05~5.0質量%、更に好ましくは0.1~4.0質量%である。
【0081】
本発明の処理剤や処理剤キットの処理剤1、処理剤2は、本発明の効果を生じる限りにおいて任意の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、本発明の必須構成成分以外の樹脂成分や架橋剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、金属粉顔料、レオロジーコントロール剤、硬化促進剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、消臭剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0082】
本発明のゴム補強用繊維は、繊維表面に、ポリカルボン酸系重合体と、エポキシ化合物と、ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックスと、ブロックイソシアネート化合物を含有する組成物を加熱処理して得た接着性組成物が付着している。本発明のゴム補強用繊維の別の態様においては、繊維表面に、ポリカルボン酸系重合体と、エポキシ化合物と、ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックスと、ブロックイソシアネート化合物と、オキサゾリン基を有する高分子化合物を含有する組成物を加熱処理して得た接着性組成物が付着している。なお、本発明において「接着性組成物」とは、最終的なゴム製品としたときにゴム補強用繊維とゴム組成物との間の良好な接着性の発現に寄与する組成物のことであって、それ自体が接着剤や粘着剤のような粘着性を有していることは、必ずしも必要ではない。また、ゴムラテックスは、前記の通りゴム成分が水性媒体中で乳化分散した性状を有するものであるが、加熱処理して得た接着性組成物において水性媒体は揮発し除去されているため、接着性組成物中でゴムラテックスは、そのような性状を維持している必要はない。加熱処理前の組成物がポリカルボン酸系重合体粒子を含有する場合においても、加熱処理して得た接着性組成物中で、ポリカルボン酸系重合体粒子が粒子形状を維持している必要はない。加えて、現時点では「接着性組成物」の構造を完全に特定することが不可能又はおよそ実際的ではない程度に困難であるため、製造方法によってゴム補強用繊維の発明を特定している。
また、本発明のゴム補強用繊維は、本発明の処理剤や処理剤キットも含めて、その製造過程に用いるすべての処理剤がレゾルシン及びホルムアルデヒドを含まず、それが有する接着性組成物がレゾルシン、ホルムアルデヒド及びこれらに由来する成分を含有しないことが好ましい。
【0083】
本発明のゴム補強用繊維に用いる繊維としては、タイヤや動力伝達ベルトや高圧ホース等の高強度が要求されるゴム製品に使用される場合には、有機繊維が撚糸されたコード状の形状であることが好ましい。また、建造物用ゴムシート等のシート状のゴム製品に使用される場合には、コードをメッシュ状に配置した形状や、布帛状の形状を用いることができる。有機繊維の材質としては特に限定はないが、ナイロン、ポリエステル、アラミド(芳香族ポリアミド)、レーヨン、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフイン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、繊維がポリエステル、ナイロン及びアラミドのいずれかを含むことが好ましく、これらの内、通常の方法ではゴム組成物との接着が比較的困難なポリエステル又はアラミドを用いる場合には、本発明の効果がより顕著に奏される。また、本発明のゴム補強用繊維に用いる繊維がアラミドを含む場合には、本発明の処理剤や、処理剤キットの処理剤1、処理剤2が含む添加剤として、特開平9-21073号公報に記載される合成スメクタイトや、特開2009-127149号公報に記載されるカーボンブラックを用いることにより、本発明の効果がより顕著に奏される。
【0084】
本発明のゴム補強用繊維は、本発明の処理剤を含む加工液を繊維に付着させる処理を行い、その後、乾燥処理及び加熱処理を施すことにより製造することができる。付着処理方法としては、例えば、浸漬、はけ塗り、流延、噴霧、ロール塗布、ナイフ塗布等を挙げることができ、中でも浸漬処理を用いることが好ましい。乾燥処理時の温度は60~200℃であることが好ましく、80~150℃であることがより好ましい。乾燥時間は20秒~10分であることが好ましく、30秒~5分であることがより好ましい。加熱処理時の温度は100~280℃であることが好ましく、150~260℃であることがより好ましい。加熱時間は20秒~10分であることが好ましく、30秒~5分であることがより好ましい。乾燥処理と加熱処理を兼ねる一度の処理を行うこともできる。乾燥処理や加熱処理に用いる装置としては、特に限定されず、温風や赤外線や高周波を用いた加温装置等を用いることができる。
【0085】
このようにして本発明のゴム補強用繊維を製造することにより、繊維表面には本発明の処理剤の構成成分に由来して生成した接着性組成物が付着した状態になる。繊維への接着性組成物の固形分付着量は、用いる繊維の種類やゴム組成物の組成、所望の接着性などに応じて適宜調整することができ、付着率(処理前の繊維の質量に対する、付着した接着性組成物固形分の質量の割合)で表すと、例えば1~20質量%が挙げられる。
【0086】
本発明の処理剤キットを用いる場合には、本発明のゴム補強用繊維の製造方法は、まず、繊維に処理剤1を含む加工液を付着させる処理を行い、その後、処理剤2を含む加工液を付着させる処理を行う2段階の工程を有する。処理剤1を含む加工液を付着させる処理の後、処理剤2を含む加工液を付着させる処理を行う前に、乾燥処理及び加熱処理を施し、処理剤2を含む加工液を付着させる処理の後にも、乾燥処理及び加熱処理を施すことが好ましい。付着処理や乾燥処理や加熱処理の方法や装置、条件などに関しては前記と同様である。
【0087】
本発明のゴム製品は、本発明のゴム補強用繊維を含有している。このようなゴム製品は、例えば、本発明のゴム補強用繊維を未加硫ゴムに埋設し、未加硫ゴムを加硫処理してゴム組成物とすることで得られ、ゴム組成物とゴム補強用繊維との接着性に優れる。このようなゴム製品は、それ自体がタイヤや動力伝達ベルトやホースや建造物用ゴムシート等の最終製品であってもよいし、ゴム補強用繊維表面にゴム組成物が付着してコード状やシート状となった、最終ゴム製品を補強するための部材であってもよい。
【0088】
ゴム組成物が含有するゴム成分としては特に限定はなく、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)等の共役ジエン系合成ゴム、エチレン-プロピレン共重合体ゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム(EPDM)、ポリシロキサンゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0089】
未加硫ゴムの加硫処理に用いる加硫剤としては、例えば、硫黄、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラサルファイド等のチウラムポリサルファイド化合物、4,4-ジチオモルフォリン、p-キノンジオキシム、p,p’-ジベンゾキノンジオキシム、環式硫黄イミド、過酸化物等が挙げられる。更に、ゴム組成物には、カーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム等の充填剤、着色剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤等の各種配合剤を適宜配合することができる。
【0090】
本明細書には以下の事項が開示されている。
本開示(1)は、レゾルシン及びホルムアルデヒドを含まないゴム補強用繊維処理剤であって、ポリカルボン酸系重合体と、エポキシ化合物と、ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックスと、ブロックイソシアネート化合物を含有するゴム補強用繊維処理剤である。
本開示(2)は、更に、オキサゾリン基を有する高分子化合物を含有する本開示(1)に記載のゴム補強用繊維処理剤である。
本開示(3)は、前記ポリカルボン酸系重合体が、架橋構造を有し、ポリカルボン酸系重合体粒子に含まれるものであるか、架橋構造を有しない重合体である本開示(1)又は(2)に記載のゴム補強用繊維処理剤である。
本開示(4)は、前記ポリカルボン酸系重合体粒子が、体積平均粒子径が10nm~10μmの微粒子である本開示(3)に記載のゴム補強用繊維処理剤である。
【0091】
本開示(5)は、レゾルシン及びホルムアルデヒドを含まないゴム補強用繊維処理剤のキットであって、エポキシ化合物と、ブロックイソシアネート化合物とを含有する処理剤1、及び、ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックスと、ポリカルボン酸系重合体と、オキサゾリン基を有する高分子化合物を含有する処理剤2を含むゴム補強用繊維処理剤キットである。
本開示(6)は、前記ポリカルボン酸系重合体が、架橋構造を有し、ポリカルボン酸系重合体粒子に含まれるものであるか、架橋構造を有しない重合体である本開示(5)に記載のゴム補強用繊維処理剤キットである。
本開示(7)は、前記ポリカルボン酸系重合体粒子が、体積平均粒子径が10nm~10μmの微粒子である本開示(6)に記載のゴム補強用繊維処理剤キットである。
【0092】
本開示(8)は、本開示(5)~(7)のいずれかに記載のゴム補強用繊維処理剤キットを使用し、繊維に、前記処理剤1を含む加工液を付着させる処理を行い、その後、前記処理剤2を含む加工液を付着させる処理を行う工程を有する、ゴム補強用繊維の製造方法である。
【0093】
本開示(9)は、繊維表面に、ポリカルボン酸系重合体と、エポキシ化合物と、ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックスと、ブロックイソシアネート化合物を含有する組成物を加熱処理して得た接着性組成物が付着したゴム補強用繊維である。
本開示(10)は、繊維表面に、ポリカルボン酸系重合体と、エポキシ化合物と、ポリマー分子中にビニルピリジンに由来する構造を有するゴムラテックスと、ブロックイソシアネート化合物と、オキサゾリン基を有する高分子化合物を含有する組成物を加熱処理して得た接着性組成物が付着したゴム補強用繊維である。
本開示(11)は、前記ポリカルボン酸系重合体が、架橋構造を有し、ポリカルボン酸系重合体粒子に含まれるものであるか、架橋構造を有しない重合体である本開示(9)又は(10)に記載のゴム補強用繊維である。
本開示(12)は、前記ポリカルボン酸系重合体粒子が、体積平均粒子径が10nm~10μmの微粒子である(11)に記載のゴム補強用繊維である。
本開示(13)は、前記繊維が、ポリエステル、ナイロン及びアラミドのいずれかを含む本開示(9)~(12)のいずれかに記載のゴム補強用繊維である。
【0094】
本開示(14)は、本開示(9)~(13)のいずれかに記載のゴム補強用繊維を含有するゴム製品である。
【実施例】
【0095】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。なお実施例において、特に断りがない限り「部」は質量部を意味し、「%」は質量%を意味する。
【0096】
<原材料の説明>(固形分濃度を示していないものは濃度100%である。)
・デナコール(登録商標)EX-313:グリセロールポリグリシジルエーテル、エポキシ当量141g/eq、ナガセケムテックス株式会社製
・デナコール(登録商標)EX-614:ソルビトールポリグリシジルエーテル、エポキシ当量167g/eq、ナガセケムテックス株式会社製
・PYRATEX(登録商標)-LB:ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ゴムラテックス、固形分濃度38.8%、日本エイアンドエル株式会社製
・ニポール(登録商標)LX-112:スチレン-ブタジエン共重合体ゴムラテックス、固形分濃度41%、日本ゼオン株式会社製
・エポクロス(登録商標)K-2035E:スチレン-アクリル系共重合体をポリマー主鎖とするオキサゾリン基を側鎖に有する高分子化合物の水系乳化物、固形分濃度40%、株式会社日本触媒製
・エパン(登録商標)680:プルロニック(登録商標)型非イオン界面活性剤、数平均分子量8750、エチレンオキシド重量分率80%、第一工業製薬株式会社製
・ネオコール(登録商標)P:ジオクチルスルホコハク酸エステル塩、第一工業製薬株式会社製
・スミカノール(登録商標)700S:レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物、固形分濃度65%、住友化学株式会社製
・DM-6400:MDI型の水分散型ブロックイソシアネート、固形分濃度42%、再生イソシアネート基(水分散型ブロックイソシアネートからブロック化剤を脱離させた場合のイソシアネート基)濃度7.90%、明成化学工業株式会社製
・スメクトン(登録商標)-ST:合成スメクタイト、クニミネ工業株式会社製
・FUJI SP BLACK 203:カーボンブラック分散液、固形分濃度23.5%、冨士色素株式会社製
【0097】
<ポリカルボン酸系重合体の重量平均分子量の測定条件>
重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下の条件で測定した。
装置:東ソー株式会社製HLC‐8320GPC
検出器:RI
カラム:東ソー株式会社製 TSKgel guardcolumn,G3000PWXL(2本)をサンプルの入り口からこの順に連結。
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/min
校正曲線作成用標準物質:American Polymer Standards社製のポリアクリル酸ナトリウム標準サンプル(ピークトップ分子量(Mp)=900~475,000の間で7種)
校正曲線:上記標準物質のMp値と溶出時間とを基礎にした3次式
溶離液:0.08Mリン酸緩衝液
【0098】
<ポリカルボン酸系重合体のpH測定>
重合体のpHは以下の条件にて測定した。
装置:株式会社堀場製作所製 pH METER D-52
電極:ガラス電極
温度:25℃
【0099】
<ポリカルボン酸系重合体の体積平均粒子径の測定>
ポリカルボン酸系重合体粒子の水分散体を、重合体粒子の濃度が0.01~0.05質量%となるようにイオン交換水で希釈し、光散乱粒度分布測定機(スペクトリス社製「Zetasizer Ultra」)を用いて、動的光散乱法により、重合体粒子の体積平均粒子径(nm)を求めた。
【0100】
<ポリカルボン酸系重合体組成物の作製>
製造例1
重量平均分子量10,000のポリアクリル酸水溶液にモノエタノールアミン及びトリエチルアミンを投入し、pH7.0に調整後、純水で調整することによりポリカルボン酸系重合体(1)を含む固形分濃度53.0%の、製造例1のポリカルボン酸系重合体組成物を得た。なお、得られたポリカルボン酸系重合体は架橋構造を有しない重合体であり、液温25℃の組成物中に未溶解物が確認できなかったことから、ポリカルボン酸系重合体(1)は水溶性である。
【0101】
製造例2
重量平均分子量10,000のポリアクリル酸水溶液にジエチルアミン及びトリエチルアミンを投入し、pH7.0に調整後、純水で調整することによりポリカルボン酸系重合体(2)を含む固形分濃度53.5%の、製造例2のポリカルボン酸系重合体組成物を得た。なお、得られたポリカルボン酸系重合体は架橋構造を有しない重合体であり、液温25℃の組成物中に未溶解物が確認できなかったことから、ポリカルボン酸系重合体(2)は水溶性である。
【0102】
製造例3
製造例1においてトリエチルアミンの代わりにジエタノールアミンを使用し、pHを7.2に調整後、純水で調整することによりポリカルボン酸系重合体(3)を含む固形分濃度40.9%の、製造例3のポリカルボン酸系重合体組成物を得た。なお、得られたポリカルボン酸系重合体は架橋構造を有しない重合体であり、液温25℃の組成物中に未溶解物が確認できなかったことから、ポリカルボン酸系重合体(3)は水溶性である。
【0103】
製造例4
製造例1のポリカルボン酸系重合体組成物に更にトリエチルアミンを添加しpHを7.2に調整後、純水で調整することによりポリカルボン酸系重合体(4)を含む固形分濃度41.7%の、製造例4のポリカルボン酸系重合体組成物を得た。なお、得られたポリカルボン酸系重合体は架橋構造を有しない重合体であり、液温25℃の組成物中に未溶解物が確認できなかったことから、ポリカルボン酸系重合体(4)は水溶性である。
【0104】
製造例5
製造例1においてトリエチルアミンの代わりにアンモニア水を使用し、pHを7.2に調整後、純水で調整することによりポリカルボン酸系重合体(5)を含む固形分濃度45.1%の、製造例5のポリカルボン酸系重合体組成物を得た。なお、得られたポリカルボン酸系重合体は架橋構造を有しない重合体であり、液温25℃の組成物中に未溶解物が確認できなかったことから、ポリカルボン酸系重合体(5)は水溶性である。
【0105】
製造例6
重量平均分子量10,000のアクリル酸-マレイン酸共重合体水溶液にモノエタノールアミン及びジエタノールアミンを添加しpHを7.2に調整後、純水で調整することによりポリカルボン酸系重合体(6)を含む固形分濃度36.7%の、製造例6のポリカルボン酸系重合体組成物を得た。なお、得られたポリカルボン酸系重合体は架橋構造を有しない重合体であり、液温25℃の組成物中に未溶解物が確認できなかったことから、ポリカルボン酸系重合体(6)は水溶性である。
【0106】
製造例7
架橋構造を有するポリカルボン酸系重合体(7)(α-ヒドロキシメチルアクリル酸メチル-ジビニルベンゼン共重合体の加水分解物)のみからなるポリカルボン酸系重合体粒子(株式会社日本触媒製RX-6-AQ-WA-2210)を含有する、固形分濃度16.6%の、製造例7のポリカルボン酸系重合体組成物を得た。なお、当該粒子は全体が均一な組成で体積平均粒子径は397nmであり、液温25℃の水分散液中で粒子形状を保持していた。
【0107】
製造例8
コア部として架橋構造を有しないアクリル系重合体(本発明におけるポリカルボン酸系重合体には該当しない)、シェル部として架橋構造を有するポリカルボン酸系重合体(7)(α-ヒドロキシメチルアクリル酸メチル-ジビニルベンゼン共重合体の加水分解物)からなるポリカルボン酸系重合体粒子(株式会社日本触媒製RX-6-AQ-WA-11210)を含む固形分濃度12.9%の、製造例8のポリカルボン酸系重合体組成物を得た。なお、得られたポリカルボン酸系重合体粒子はシェル部に架橋構造を有し、平均粒子径は450nmであり、液温25℃の水分散液中で粒子形状を保持していた。
【0108】
製造例9
コア部として架橋構造を有するアクリル系重合体(本発明におけるポリカルボン酸系重合体には該当しない)、シェル部として架橋構造を有するポリカルボン酸系重合体(7)(α-ヒドロキシメチルアクリル酸メチル-ジビニルベンゼン共重合体の加水分解物)からなるポリカルボン酸系重合体粒子(株式会社日本触媒製RX-6-AQ-WA-51310)を含む固形分濃度18.1%の、製造例9のポリカルボン酸系重合体組成物を得た。なお、当該ポリカルボン酸系重合体粒子はコア部とシェル部に架橋構造を有し、平均粒子径は349nmであり、液温25℃の水分散液中で粒子形状を保持していた。
【0109】
<水分散型ブロックイソシアネートの作製>
製造例10
攪拌機、冷却管及び温度計を備えたセパラブルフラスコに、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを100部(イソシアネート基の量0.800mol)、ε-カプロラクタムを100部(NH基の量0.884mol)、ジオキサンを200部仕込み、攪拌を続けながら徐々に昇温して85℃に保持し、120分間反応させた後ジオキサンを除去し、ブロックイソシアネート化合物を得た。次に、水94.3部にブロックイソシアネート化合物を100部、エパン680を10.7部加え、湿式微分散機で微分散し、固形分濃度54%の、製造例10の水分散型のブロックイソシアネートを得た。製造例10の水分散型ブロックイソシアネートにおける再生イソシアネート基(水分散型ブロックイソシアネートからブロック化剤を脱離させた場合のイソシアネート基)の濃度は8.60%であった。
【0110】
<ゴム補強用繊維処理剤及びゴム補強用繊維の作製>
実施例1-1
水582.3部にデナコールEX-313を11.6部添加し、均一に溶解した。次に、製造例10の水分散型ブロックイソシアネートを36.3部(固形分19.6部)添加し均一に混合した。次に、PYRATEX-LBを360.8部(固形分140.0部)添加し均一に混合した。次に、製造例1のポリカルボン酸系重合体組成物を7.17部(固形分3.8部)添加し均一に混合した。最後に、エポクロスK-2035Eを1.80部(固形分0.56部)ゆっくりかきまぜながら加え、均一に混合して、固形分濃度17.6%の実施例1-1のゴム補強用繊維処理剤を得た。
【0111】
この様にして得た実施例1-1のゴム補強用繊維処理剤をそのまま加工液として用い、繊維(ポリエステルコード、HL糸、1670dtex、二本撚り)を浸漬処理し、130℃で2分間乾燥処理し、続いて240℃で2分間加熱処理を行って、繊維表面に接着性組成物が付着した実施例1-1のゴム補強用繊維を得た。繊維への接着性組成物の固形分付着量は、付着率(処理前の繊維の質量に対する、付着した接着性組成物固形分の質量の割合)で10.4%であった。
【0112】
実施例1-2~1-14、比較例1-1~1-4
ゴム補強用繊維処理剤に使用する原材料、繊維(ポリエステルコードは「PET」、ナイロンコード(1400dtex、二本撚り)は「Ny」と表記)を表1及び表2に記載するもの及び量に変えた以外は実施例1-1と同様にして、実施例1-2~1-14、比較例1-1~1-4の各々のゴム補強用繊維処理剤及びゴム補強用繊維を得た。
【0113】
参考例1
水384.7部にPYRATEX-LBを300.7部(固形分116.7部)と、ニポールLX-112を125.0部(固形分51.3部)添加し均一に混合してラテックス希釈液とした。一方、水126.5部に濃度10%水酸化ナトリウム水溶液を7.0部加えて混合し、スミカノール700Sを45.0部(固形分29.3部)添加して、均一に溶解してレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物溶液とした。次に、ラテックス希釈液にレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物溶液をゆっくりかきまぜながら加え、更にホルマリン(濃度37%水溶液)を11.1部添加し、均一に混合して、固形分濃度20.0%のゴム補強用繊維処理剤を得た。このゴム補強用繊維処理剤をそのまま加工液として用い、繊維(ナイロンコード、1400dtex、二本撚り)を浸漬処理し、130℃で2分間乾燥処理し、続いて240℃で2分間加熱処理を行って、繊維表面に接着性組成物が付着したゴム補強用繊維を得た。繊維への接着性組成物の固形分付着量は、付着率で7.2%であった。
【0114】
<ゴム製品の作製と評価>
天然ゴム70部、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム30部、カーボンブラック粉末60部、酸化亜鉛粉末4部、ステアリン酸1.5部、アロマオイル8部、硫黄2.5部、加硫促進剤(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)1.1部をよく混錬した後、シート状に形成し未加硫ゴムシートとした。未加硫ゴムシートの表面近くに実施例1-1のゴム補強用繊維を7本埋設し、4.7MPaのプレス圧力で、150℃で30分間加硫することにより、ゴム補強用繊維表面にゴム組成物が付着してシート状となった実施例1-1のゴム製品を得た。実施例1-2~1-14、比較例1-1~1-4、参考例1の各ゴム補強用繊維についても、同様にしてゴム製品を得た。
【0115】
接着力の評価
得られた各々のゴム製品について、精密万能試験機(オートグラフ(登録商標)AG-X、株式会社島津製作所製)を用い、平面つかみ具を使用して、両端のコードを残し5本のコードを保持し、ゴムシート面に対し90度の方向へ300mm/分の速度で剥離し、その際に要する力を測定した。測定値を5で割った値(コード1本あたりの力)を接着力とした。接着力は、17N以上であると実用に供することができる。結果を表1及び表2に示す。
【0116】
ゴム付着量の評価
上記の接着力の評価において、ゴムシートから剥離されたゴム補強用繊維の表面を目視で観察し、下記の基準で評価した。ゴム付着量は、「○」又は「◎」であると実用に供することができる。結果を表1及び表2に示す。
◎:付着した黒色のゴム組成物の量が多く、コードの見えている部分がない。
○:付着した黒色のゴム組成物の量は多いが、一部にコードが見えている部分がある。
△:全体的に付着した黒色のゴム組成物の量が少なく、コードが見えている部分が多い。
×:黒色のゴム組成物が付いていない、又はほとんど付いていない。
【0117】
耐熱接着力の評価
実施例1-7、1-10、比較例1-1のゴム補強用繊維を再度作製し、繊維への接着性組成物の固形分付着量を再度評価した。
各ゴム補強用繊維から上記と同様に得たゴム製品について、120℃の加温庫で5分間加熱した後に、120℃の環境下で測定を行った以外は上記の接着力の評価と同様にして、耐熱接着力を評価した。耐熱接着力は、4.5N以上であると実用に供することができる。結果を表3に示す。
【0118】
耐熱ゴム付着量の評価
上記の耐熱接着力の評価において、ゴムシートから剥離されたゴム補強用繊維の表面を目視で観察した以外は上記のゴム付着量の評価と同様にして、耐熱ゴム付着量を評価した。耐熱ゴム付着量は、「△」、「○」、「◎」のいずれかであると実用に供することができる。結果を表3に示す。
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
<ゴム補強用繊維処理剤キット及びゴム補強用繊維の作製>
実施例2-1
水973.6部にデナコールEX-614を13.3部と、ネオコールPを0.7部添加し、均一に溶解した。次に、製造例10の水分散型ブロックイソシアネートを12.4部(固形分6.7部)添加し、均一に混合して、固形分濃度2.07%の処理剤1を得た。これとは別に、水484.3部にPYRATEX-LBを484.5部(固形分188.3部)添加し均一に混合した。次に、製造例3のポリカルボン酸系重合体組成物を23.72部(固形分9.7部)添加し均一に混合した。最後に、エポクロスK-2035Eを7.40部(固形分2.96部)ゆっくりかきまぜながら加え、均一に混合して、固形分濃度20.1%の処理剤2を得た。得られた処理剤1と処理剤2で、実施例2-1のゴム補強用繊維処理剤キットとした。
【0123】
この様にして得た実施例2-1のゴム補強用繊維処理剤キットの処理剤1をそのまま加工液として用い、繊維(ポリエステルコード、HL糸、1670dtex、二本撚り)を浸漬処理し、130℃で2分間乾燥処理し、続いて240℃で2分間加熱処理した。次に、実施例2-1のゴム補強用繊維処理剤キットの処理剤2をそのまま加工液として用いて、この処理剤1で処理済みの繊維を浸漬処理し、130℃で2分間乾燥処理し、続いて240℃で2分間加熱処理して、繊維表面に接着性組成物が付着した実施例2-1のゴム補強用繊維を得た。繊維への接着性組成物の固形分付着量は、付着率で7.1%であった。
【0124】
実施例2-2~2-8、比較例2-1
ゴム補強用繊維処理剤に使用する原材料を表4に記載するもの及び量に変えた以外は実施例2-1と同様にして、2-2~2-8、比較例2-1の各々のゴム補強用繊維処理剤キット及びゴム補強用繊維を得た。繊維は全てポリエステルコードを用いた。
【0125】
参考例2
水973.6部にデナコールEX-614を13.3部と、ネオコールPを0.7部添加し、均一に溶解した。次に、製造例10の水分散型ブロックイソシアネートを12.4部(固形分6.7部)添加し、均一に混合して、固形分濃度2.07%の前処理剤を得た。これとは別に、水384.7部にPYRATEX-LBを300.7部(固形分116.7部)と、ニポールLX-112を125.0部(固形分51.3部)添加し均一に混合してラテックス希釈液とした。一方、水126.5部に濃度10%水酸化ナトリウム水溶液を7.0部加えて混合し、スミカノール700Sを45.0部(固形分29.3部)添加して、均一に溶解してレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物溶液とした。次に、ラテックス希釈液にレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物溶液をゆっくりかきまぜながら加え、更にホルマリン(濃度37%水溶液)を11.1部添加し、均一に混合して、固形分濃度20.0%の後処理剤を得た。得られた前処理剤と後処理剤で、参考例2のゴム補強用繊維処理剤キットとした。ポリエステルコードへの加工条件は、実施例2-1と同様にして(処理剤1に代えて前処理剤、処理剤2に代えて後処理剤を使用)実施し、ゴム補強用繊維を得た。
【0126】
実施例2-9、2-10、参考例3、4
ゴム補強用繊維処理剤に使用する原材料を表6に記載するもの及び量に変えた以外は実施例2-1あるいは参考例2と同様にして、実施例2-9、2-10、参考例3、4の各々のゴム補強用繊維処理剤キット及びゴム補強用繊維を得た。繊維はアラミドコード(1110dtex、二本撚り、表中「Ara」と表記)を用いた。
【0127】
<ゴム製品の作製と評価>
得られた各々のゴム補強用繊維を用いて、実施例1-1と同様にしてゴム製品を作製し、実施例1-1と同様にして接着力とゴム付着量を評価した。結果を表4及び表6に示す。実施例2-1、2-6、比較例2-1、参考例2の各ゴム補強用繊維及び各ゴム製品については、実施例1-7、1-10、比較例1-1と同様にして繊維への接着性組成物の固形分付着量、耐熱接着力と耐熱ゴム付着量を評価した。結果を表5に示す。
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
表1~6の結果より、実施例と比較例を対比すると、本発明のゴム補強用繊維処理剤あるいはゴム補強用繊維処理剤キットを用いて得られたゴム補強用繊維を含有するゴム製品は、ゴム補強用繊維とゴム組成物との間の接着力に優れ、ゴム補強用繊維とゴム組成物との界面の強靭さを反映するゴム付着量も多いことが分かる。更には、表3及び表5の結果より、本発明のゴム補強用繊維処理剤あるいはゴム補強用繊維処理剤キットが含有するポリカルボン酸系重合体が、架橋構造を有し、ポリカルボン酸系重合体粒子に含まれるものであることにより、これらを用いて得られたゴム補強用繊維を含有するゴム製品は、高温環境下でのゴム補強用繊維とゴム組成物との間の接着力に優れ、ゴム補強用繊維とゴム組成物との界面の強靭さを反映するゴム付着量も多いことが分かる。