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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/048 20060101AFI20240920BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20240920BHJP
   H01G 9/012 20060101ALI20240920BHJP
   H01G 9/10 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01G9/048 F
H01G9/15
H01G9/012 301
H01G9/10 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020212852
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022099091
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 正理
(72)【発明者】
【氏名】廣田 兄
(72)【発明者】
【氏名】上中 敬太
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/084243(WO,A1)
【文献】特開昭60-066807(JP,A)
【文献】特開2019-140256(JP,A)
【文献】特開平03-292716(JP,A)
【文献】国際公開第2019/167774(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/103569(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/048
H01G 9/15
H01G 9/012
H01G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンデンサ素子と、
前記複数のコンデンサ素子に電気的に接続された陽極リード端子および陰極リード端子と、
前記複数のコンデンサ素子を封止する外装体であって外装樹脂を含む外装体と、を含む固体電解コンデンサであって、
前記陽極リード端子および前記陰極リード端子はそれぞれ、前記外装体の下面において露出している陽極端子部および陰極端子部を含み、
前記外装体は、前記下面とは反対側の上面を有し、
前記複数のコンデンサ素子は、前記下面と前記上面とを結ぶ方向に積層されており、
前記下面に最も近い前記コンデンサ素子、前記上面に最も近い前記コンデンサ素子、および、他の前記コンデンサ素子を介さずに前記陰極リード端子に接続されている部分の面積が最も大きい前記コンデンサ素子からなる群より選択される少なくとも1つの第1のコンデンサ素子の構成は、前記第1のコンデンサ素子以外の前記コンデンサ素子である第2のコンデンサ素子の構成とは異なり、
前記複数のコンデンサ素子はそれぞれ、陰極引出層を含み、
前記第1のコンデンサ素子の前記陰極引出層の平均厚さは、前記第2のコンデンサ素子の前記陰極引出層の平均厚さよりも厚い、固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記第1のコンデンサ素子は、前記面積が最も大きい前記コンデンサ素子である、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記第1のコンデンサ素子は、前記下面に最も近い前記コンデンサ素子、および/または、前記上面に最も近い前記コンデンサ素子である、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
固体電解コンデンサは、固体電解質層を含むコンデンサ素子と、コンデンサ素子に電気的に接続されたリード端子と、コンデンサ素子を封止する外装体とを含む。
【0003】
特許文献1(特許第6702427号)は、「並列に積層された複数のコンデンサ素子と、前記複数のコンデンサ素子を封止する外装樹脂とを備える固体電解コンデンサであって、前記複数のコンデンサ素子は、それぞれ、弁作用金属基体と、前記弁作用金属基体の表面に設けられた酸化膜からなる誘電体層と、前記誘電体層の表面に設けられた陰極層とを有し、前記複数のコンデンサ素子のうち、少なくとも1個のコンデンサ素子の前記酸化膜は、他のコンデンサ素子の前記酸化膜よりも厚いことを特徴とする固体電解コンデンサ。」を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6702427号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、固体電解コンデンサのさらなる特性向上が求められている。このような状況において、本開示は、特性が高い固体電解コンデンサを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面は、固体電解コンデンサに関する。当該固体電解コンデンサは、複数のコンデンサ素子と、前記複数のコンデンサ素子に電気的に接続された陽極リード端子および陰極リード端子と、前記複数のコンデンサ素子を封止する外装体であって外装樹脂を含む外装体と、を含む固体電解コンデンサであって、前記陽極リード端子および前記陰極リード端子はそれぞれ、前記外装体の下面において露出している陽極端子部および陰極端子部を含み、前記外装体は、前記下面とは反対側の上面を有し、前記複数のコンデンサ素子は、前記下面と前記上面とを結ぶ方向に積層されており、前記下面に最も近い前記コンデンサ素子、前記上面に最も近い前記コンデンサ素子、および、他の前記コンデンサ素子を介さずに前記陰極リード端子に接続されている部分の面積が最も大きい前記コンデンサ素子からなる群より選択される少なくとも1つの第1のコンデンサ素子の構成は、前記第1のコンデンサ素子以外の前記コンデンサ素子である第2のコンデンサ素子の構成とは異なる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、特性が高い固体電解コンデンサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の固体電解コンデンサの一例を模式的に示す断面図である。
図2】実施形態の固体電解コンデンサに用いられるコンデンサ素子の一例を模式的に示す断面図である。
図3】実施形態の固体電解コンデンサに用いられるコンデンサ素子の他の一例を模式的に示す断面図である。
図4】実施形態の固体電解コンデンサの他の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態の例について説明する。なお、以下の説明では、本開示の実施形態について例を挙げて説明するが、本開示は以下で説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や他の材料を適用してもよい。この明細書において、「数値A~数値B」という場合、当該範囲には数値Aおよび数値Bが含まれる。
【0010】
(固体電解コンデンサ)
本実施形態に係る固体電解コンデンサは、複数のコンデンサ素子と、複数のコンデンサ素子に電気的に接続された陽極リード端子および陰極リード端子と、複数のコンデンサ素子を封止する外装体であって外装樹脂を含む外装体と、を含む。陽極リード端子および陰極リード端子はそれぞれ、外装体の下面において露出している陽極端子部および陰極端子部を含む。外装体は、下面とは反対側の上面を有する。以下では、外装体の下面および上面をそれぞれ、「下面(B)」および「上面(T)」と称する場合がある。
【0011】
複数のコンデンサ素子は、下面(B)と上面(T)とを結ぶ方向に積層されている。下面(B)に最も近いコンデンサ素子、上面(T)に最も近いコンデンサ素子、および、他のコンデンサ素子を介さずに陰極リード端子に接続されている部分の面積が最も大きいコンデンサ素子からなる群より選択される少なくとも1つの第1のコンデンサ素子の構成は、第1のコンデンサ素子以外のコンデンサ素子である第2のコンデンサ素子の構成とは異なる。
【0012】
「他のコンデンサ素子を介さずに陰極リード端子に接続されている部分(以下、「部分X」と称する場合がある)の面積」とは、コンデンサ素子(具体的には陰極部)が陰極リード端子と直接接触している場合には、コンデンサ素子のうち陰極リード端子と接触している部分の面積を意味する。コンデンサ素子が、導電性部材(例えば導電性接着剤層)によって陰極リード端子と接続されている場合には、部分Xは、導電性部材がコンデンサ素子および陰極リード端子の両方に接触している領域における、コンデンサ素子と導電性部材との接触面積を意味する。
【0013】
第1のコンデンサ素子は、構造の点で第2のコンデンサ素子と異なってもよい。例えば、第1のコンデンサ素子を構成する特定の層の厚さが、第2のコンデンサ素子における当該層の厚さよりも厚くてもよい。あるいは、第1のコンデンサ素子は、構成部材の組成の点で、第2のコンデンサ素子とは異なってもよい。例えば、第1のコンデンサ素子を構成する特定の層の組成が、第2のコンデンサ素子における当該層の組成とは異なってもよい。
【0014】
本実施形態の固体電解コンデンサの第1の例(E1)では、第1のコンデンサ素子は、他のコンデンサ素子を介さずに陰極リード端子に接続されている部分の面積が最も大きいコンデンサ素子である。本実施形態の固体電解コンデンサの第2の例(E2)では、第1のコンデンサ素子は、下面(B)に最も近いコンデンサ素子、および/または、上面(T)に最も近いコンデンサ素子である。なお、他のコンデンサ素子を介さずに陰極リード端子に接続されている部分の面積が最も大きいコンデンサ素子が、下面(B)に最も近いコンデンサ素子、または、上面(T)に最も近いコンデンサ素子となる場合がある。
【0015】
外部からの酸素や水分の侵入は、リード端子と外装樹脂との界面を通して起こりやすい。そのため、コンデンサ素子を介さずに陰極リード端子に接続されている部分の面積が最も大きいコンデンサ素子では、酸素や水分の侵入を抑制することが特に重要になる。下面(B)に最も近いコンデンサ素子、および、上面(T)に最も近いコンデンサ素子も、外部との距離が近いため、外部からの酸素や水分の侵入の影響を受けやすい。そのため、これらの素子でも、酸素や水分の侵入を抑制することが特に重要になる。そのため、第1のコンデンサ素子の構成を、他のコンデンサ素子の構成よりもバリア性が高い構成とすることによって、酸素や水分の侵入による影響を効率的に低減できる。その結果、固体電解コンデンサの長期的な特性の低下を抑制でき、信頼性を向上できる。また、酸素や水分の侵入による影響を受けやすい部分のコンデンサ素子のみを特別な構成とすることによって、固体電解コンデンサの製造コストの上昇を抑制できる。
【0016】
本実施形態の固体電解コンデンサの例として、第1~第5の固体電解コンデンサについて説明する。以下の第1~第5の固体電解コンデンサは、特に除外する記載がない限り、上記第1の例(E1)の固体電解コンデンサであってもよいし、上記第2の例(E2)の固体電解コンデンサであってもよい。
【0017】
(第1の固体電解コンデンサ)
第1の固体電解コンデンサでは、第1のコンデンサ素子の厚さが、第2のコンデンサ素子の厚さよりも厚い。第1の固体電解コンデンサは、上述した第1の例(E1)であってもよいし、第2の例(E2)であってもよい。第2の例(E2)の第1のコンデンサ素子は、他のコンデンサ素子よりも外装体の表面に近いため、コンデンサの外部から侵入した酸素ガスや水分の影響を受けやすい。そのため、第1のコンデンサ素子を厚くすることによって、酸素ガスや水分の侵入による第1および第2のコンデンサ素子の特性の低下を抑制できる。第1の固体電解コンデンサによれば、酸素ガスや水分の侵入による特性の低下を抑制できる。なお、コンデンサ素子の厚さとは、下面(B)と上面(T)とを結ぶ方向におけるコンデンサ素子の最大の厚さである。
【0018】
第1の固体電解コンデンサにおいて、第1のコンデンサ素子の厚さは、第2のコンデンサ素子の厚さの1倍よりも大きく、1.1倍以上や1.2倍以上であってもよい。第1のコンデンサ素子の厚さは、第2のコンデンサ素子の厚さの1.5倍以下であってもよく、1.3倍以下であってもよい。これらの下限と上限とは任意に組み合わせることができる。
【0019】
(第2の固体電解コンデンサ)
第2の固体電解コンデンサにおいて、複数のコンデンサ素子はそれぞれ、陰極引出層を含む。そして、第1のコンデンサ素子の陰極引出層の平均厚さは、第2のコンデンサ素子の陰極引出層の平均厚さよりも厚い。陰極引出層の厚さの違いによって、第1のコンデンサ素子が、第2のコンデンサ素子よりも厚くなってもよい。陰極引出層を厚くすることによって、コンデンサの外部から侵入した酸素ガスや水分が固体電解質層を劣化させることを抑制できる。
【0020】
陰極引出層の平均厚さは、例えば、以下の方法で求めることができる。まず、陰極引出層の断面の画像を取得し、陰極引出層の任意の5点を選択してその部分の陰極引出層の厚さを測定する。測定された5点の厚さの算術平均を、陰極引出層の平均厚さとすることができる。
【0021】
第2の固体電解コンデンサにおいて、第1のコンデンサ素子の陰極引出層の平均厚さは、第2のコンデンサ素子の陰極引出層の平均厚さの1倍よりも大きく、1.5倍以上や2.0倍以上であってもよい。第1のコンデンサ素子の陰極引出層の平均厚さは、第2のコンデンサ素子の陰極引出層の平均厚さの5.0倍以下であってもよく、3.0倍以下であってもよい。これらの下限と上限とは任意に組み合わせることができる。例えば、第1のコンデンサ素子の陰極引出層の平均厚さは、第2のコンデンサ素子の陰極引出層の平均厚さの1.5倍~3.0倍の範囲にあってもよい。
【0022】
(第3の固体電解コンデンサ)
第3の固体電解コンデンサにおいて、第1のコンデンサ素子は、表面に配置された樹脂であって外装樹脂とは異なる所定の樹脂(別の観点では高分子)を含む点で、第2のコンデンサ素子とは異なる。第1のコンデンサ素子の表面に配置された所定の樹脂を、以下では、「樹脂(R)」と称する場合がある。樹脂(R)の例には、酸素透過性が低い樹脂や、耐熱性が高い樹脂が含まれる。陰極部の表面以外の表面に配置される樹脂(R)は、通常、絶縁性である。陰極部の表面に配置される樹脂(R)は、通常、導電性であっておよいし、絶縁性であってもよい。酸素透過性が低い樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよいし熱硬化性樹脂であってもよい。酸素透過性が低い樹脂の例には、エポキシ樹脂、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、およびそれらの誘導体などが含まれる。特に、架橋点の多い樹脂(架橋密度が高い樹脂)ほど酸素透過性が低いことが知られている。例えば、エポキシ樹脂と2官能以上を有するチオール系硬化剤などとを用いた樹脂は、酸素透過性が低い。耐熱性が高い樹脂の例には、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、およびそれらの誘導体などが含まれる。
【0023】
樹脂(R)は、陰極部で覆われていない陽極部の少なくとも一部、陰極部で覆われていない誘電体層の少なくとも一部、および、陰極引出層で覆われていない固体電解質層の少なくとも一部からなる群より選択される少なくとも1箇所を覆うように配置されてもよい。樹脂(R)は、第1のコンデンサ素子のうち、樹脂(R)がなければ外装体(外装樹脂)と接触する部分を覆うように配置されてもよい。樹脂(R)は、他の物質(無機フィラーなど)を含む樹脂組成物の形で第1のコンデンサ素子の表面に存在してもよい。樹脂(R)は、陰極引出層に含まれてもよく、金属含有層(例えば銀含有層)に含まれてもよい。
【0024】
第3の固体電解コンデンサは、上述した第1の例(E1)であってもよいし、第2の例(E2)であってもよい。第2の例(E2)の第1のコンデンサ素子は、他のコンデンサ素子よりも外装体の表面に近いため、コンデンサの外部から侵入した酸素ガスや水分の影響を受けやすい。そのため、第1のコンデンサ素子の表面に酸素透過性が低い樹脂(R)を配置することによって、酸素ガスや水分の侵入による特性の低下を効率よく抑制できる。第1のコンデンサ素子の表面のみに樹脂(R)を配置し、第2のコンデンサ素子の表面に樹脂(R)を配置しないことによって、コストを低減することが可能である。
【0025】
樹脂(R)は、ビニルアルコール単位と他の単位とを含む共重合体であってもよい。例えば、樹脂(R)は、エチレン単位とビニルアルコール単位とを含む共重合体、および/または、ブテンジオール単位とビニルアルコール単位とを含む共重合体であってもよい。樹脂(R)は、エチレン-ビニルアルコール共重合体および/またはブテンジオール-ビニルアルコール共重合体であってもよい。
【0026】
第4の固体電解コンデンサにおいて、第4の固体電解コンデンサに含まれる複数のコンデンサ素子はそれぞれ、陰極引出層を含み、陰極引出層は、カーボンを含有するカーボン含有層を含む。第4の固体電解コンデンサにおいて、第1のコンデンサ素子のカーボン含有層の酸素透過度は、第2のコンデンサ素子のカーボン含有層の酸素透過度よりも低い。この構成によれば、外部から侵入した酸素などによるコンデンサ素子の特性の低減を抑制でき、信頼性が高い固体電解コンデンサが得られる。
【0027】
第1のコンデンサ素子のカーボン含有層中のカーボンとして、第2のコンデンサ素子のカーボン含有層中のカーボンよりも、酸素を透過させにくいカーボンを用いてもよい。あるいは、第1のコンデンサ素子のカーボン含有層において、カーボン全体に占める酸素を透過させにくいカーボンの割合を増やしてもよい。
【0028】
酸素透過度が低いカーボン含有層の例には、鱗片状のカーボン粒子を含むカーボン含有層が含まれる。鱗片状のカーボン粒子は、層状に重なり合った状態で配置されやすい。そのため、鱗片状のカーボン粒子を用いることによって、酸素透過度を低減できる。すなわち、鱗片状のカーボン粒子は、酸素を透過させにくいカーボンの一例である。鱗片状の形態であれば粒子を構成するカーボンの種類は特に制限されないが、黒鉛、グラフェンなどは、鱗片状の形態をとり易く、鱗片状粒子の入手が容易である。カーボン含有層に含まれる他のカーボン粒子の例には、球状のカーボン粒子が含まれる。
【0029】
鱗片状のカーボン粒子の平均アスペクト比は、2以上であってもよく、3以上であってもよい。カーボン粒子の平均アスペクト比がこのような範囲である場合、鱗片状粒子などの扁平な粒子が多く含まれ、カーボン含有層においてカーボン粒子を積み重ねた状態で充填させ易くなる。よって、緻密に形成されたカーボン含有層により、カーボン含有層における空気の透過が抑制され易い。カーボン粒子が鱗片状粒子を含む場合、カーボン粒子の平均アスペクト比は、2000以下であってもよい。
【0030】
カーボン粒子の平均アスペクト比は、以下のようにして求めることができる。まず、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてカーボン含有層の断面またはカーボン粒子の画像を得る。得られたSEM画像において任意の複数個(例えば10個)のカーボン粒子を選択する。次に、選択したカーボン粒子について、最大径D1を計測し、さらに、最大径D1と直交する方向における最大径D2を計測する。各カーボン粒子について、D2に対するD1の比D1/D2をアスペクト比として求め、これらを算術平均することによって平均アスペクト比が求められる。
【0031】
第4の固体電解コンデンサの第1のコンデンサ素子の陰極引出層は、厚さが10μmのときの酸素透過度が7cm/m・day・atm以下の層であってもよい。この場合、第2のコンデンサ素子の陰極引出層は、厚さが10μmのときの酸素透過度が7cm/m・day・atmよりも大きくてもよい。
【0032】
(第5の固体電解コンデンサ)
第5の固体電解コンデンサの複数のコンデンサ素子はそれぞれ、陰極引出層を含む。当該陰極引出層は、銀(例えば銀粒子)と樹脂とを含有する銀含有層を含む。第5の固体電解コンデンサの第1のコンデンサ素子の銀含有層における樹脂の含有率は、第2のコンデンサ素子の銀含有層における樹脂の含有率よりも高い。第5の固体電解コンデンサの第1のコンデンサ素子の銀含有層における樹脂の含有率を高くすることによって、当該銀含有層のバリア性を高めることができる。すなわち、第5の固体電解コンデンサでは、バリア性が重要になる第1のコンデンサ素子のバリア性が、第2のコンデンサ素子のバリア性よりも高い。一方、第2のコンデンサ素子の銀含有層における樹脂の含有率を低くし、その分だけ銀の含有率を高くすることによって、当該銀含有層の導電性を高めることができる。その結果、固体電解コンデンサの等価直列抵抗(ESR)を低減できる。ESRを低減するためにすべてのコンデンサ素子の銀含有層の樹脂の含有率を低減すると、外装樹脂の線膨張係数と銀含有層の線膨張係数との差が大きくなる場合がある。その結果、最も外側のコンデンサ素子の銀含有層と外装樹脂との間で、高い応力が発生し剥離が生じやすくなる。第5の固体電解コンデンサによれば、そのような剥離を抑制できる。
【0033】
第1のコンデンサ素子の銀含有層における樹脂の含有率CR(1)は、5質量%以上であってもよく、5質量%~25質量%の範囲にあってもよい。銀含有層に含まれる樹脂は、例えば、銀ペーストに含まれる樹脂であってもよい。第2のコンデンサ素子の銀含有層における樹脂の含有率CR(2)は、10質量%未満(例えば5質量%未満)であってもよく、0.1質量%~10質量%(例えば0.1質量%以上で5質量%未満)の範囲にあってもよい。含有率CR(1)は、含有率CR(2)の1.1~10倍の範囲にあってもよい。
【0034】
本実施形態の固体電解コンデンサ(上述した固体電解コンデンサ)に共通する構成部材の例について、以下に説明する。ただし、上述した固体電解コンデンサに固有の構成については、上述の記載に従う。本実施形態の固体電解コンデンサの構成部材には、本開示に特徴的な部分を除いて、公知の固体電解コンデンサの構成部材を適用してもよい。
【0035】
本実施形態に係る固体電解コンデンサは、複数のコンデンサ素子を含む。複数のコンデンサ素子は、通常、並列に接続されている。固体電解コンデンサに含まれるコンデンサ素子の数は、3~20の範囲(例えば、4~20の範囲や5~20の範囲)にあってもよい。本実施形態に係る固体電解コンデンサに含まれるコンデンサ素子は、陽極部、陰極部、および誘電体層を含む。陰極部は、固体電解質層を含み、陰極引出層をさらに含んでもよい。
【0036】
積層された複数のコンデンサ素子の陽極部は、通常、互いに電気的に接続される。例えば、それらの陽極部の端部が、溶接によって接合されていてもよい。そして、少なくとも1つの陽極部に、陽極リード端子が接合されてもよい。
【0037】
積層されたコンデンサ素子の陰極引出層同士は、通常、電気的に接続されている。少なくとも1つのコンデンサ素子の陰極引出層に、陰極リード端子が接続されてもよい。陰極リード端子は、導電性接着剤やはんだを介して陰極引出層に接続されてもよい。あるいは、陰極リード端子は、溶接(抵抗溶接やレーザ溶接など)によって陰極引出層に接続されてもよい。導電性接着剤は、硬化性樹脂と導電性粒子(カーボン粒子や金属粒子など)との混合物であってもよい。
【0038】
(陽極部)
陽極部は、陽極体を含む。陽極体は、弁作用金属を含む金属を用いて形成される。陽極体には、弁作用金属を含む箔(金属箔)を用いてもよい。弁作用金属の例には、チタン、タンタル、アルミニウム、およびニオブなどが含まれる。陽極体は、1種または2種以上の弁作用金属を含む。陽極体は、弁作用金属を、合金または金属間化合物の形態で含んでもよい。陽極体の厚さは特に限定されない。薄肉部以外における陽極体の厚さは、例えば、15μm以上300μm以下であり、80μm以上250μm以下であってもよい。
【0039】
陽極体の少なくとも一部の表面は、電解エッチング等によって粗面化処理されていてもよい。その場合、陽極体は、その表面に多孔質部を備える。陽極体全体が多孔質であってもよい。
【0040】
(誘電体層)
誘電体層は、陽極体の表面の少なくとも一部に形成される。誘電体層は、例えば、陽極体の表面を、陽極酸化(例えば化成処理による陽極酸化)することによって形成してもよい。その場合、誘電体層は、弁作用金属の酸化物を含む。例えば、弁作用金属としてアルミニウムを用いた場合、誘電体層は、酸化アルミニウムを含んでもよい。なお、誘電体層はこれに限らず、誘電体として機能するものであればよい。誘電体層は、陽極体の多孔質部の表面の少なくとも一部に形成されてもよい。
(固体電解質層)
固体電解質層は、誘電体層の少なくとも一部を覆うように配置されている。固体電解質層は、誘電体層の表面全体を覆うように配置されてもよい。
【0041】
固体電解質層は、例えば、マンガン化合物や導電性高分子を含む。導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリチオフェンビニレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上のモノマーの共重合体でもよい。
【0042】
なお、本明細書では、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン等は、それぞれ、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン等を基本骨格とする高分子を意味する。したがって、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン等には、それぞれの誘導体も含まれ得る。例えば、ポリチオフェンには、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)等が含まれる。
【0043】
導電性高分子は、ドーパントとともに固体電解質層に含まれていてよい。ドーパントは、単分子アニオンであってもよいし、高分子アニオンであってもよい。単分子アニオンの具体例としては、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。高分子アニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらは単独モノマーの重合体であってもよく、2種以上のモノマーの共重合体であってもよい。なかでも、ポリスチレンスルホン酸由来の高分子アニオンが好ましい。固体電解質層の好ましい一例は、ポリスチレンスルホン酸(PSS)がドープされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)である。
【0044】
導電性高分子を含む固体電解質層は、公知の方法で形成してもよい。例えば、まず、誘電体層が形成された陽極体に、モノマーやオリゴマーを含浸させる。次に、化学重合や電解重合によってモノマーやオリゴマーを重合させることによって、固体電解質層を形成できる。あるいは、誘電体層が形成された陽極体を、導電性高分子の溶液または分散液に接触させた後に乾燥させることによって、固体電解質層を形成してもよい。
(陰極引出層)
陰極引出層は、固体電解質層の少なくとも一部を覆うように形成されていればよく、固体電解質層の表面全体を覆うように形成されていてもよい。
【0045】
陰極引出層の構成に限定はなく、固体電解質層と他の部材(陰極リード端子や、他のコンデンサ素子の陰極部)と、電気的に良好な接続を可能にする導電層であればよい。陰極引出層は、固体電解質層上に形成されたカーボン含有層と、カーボン含有層上に形成された金属含有層(例えば、銀含有層)と、を含んでもよい。
【0046】
(カーボン含有層)
カーボン含有層はカーボン材料を含み、導電性を有する。カーボン材料は特に限定されない。カーボン材料としては、例えば、グラファイト、カーボンブラック、グラフェン片、カーボンナノチューブが挙げられる。
【0047】
カーボン含有層は、必要に応じて、バインダ樹脂および/または添加剤などを含んでもよい。バインダ樹脂は特に制限されず、一般的なコンデンサ素子の作製に用いられる公知のバインダ樹脂が挙げられる。バインダ樹脂としては、例えば、上記の熱可塑性樹脂または硬化性樹脂が挙げられる。添加剤としては、例えば、分散剤、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、塩基、および/または酸などが挙げられる。
【0048】
(金属含有層)
金属含有層は、金属材料を含む。金属材料は特に限定されない。導電性の観点から、金属材料は銀を含んでもよい。すなわち、金属含有層は、銀含有層であってもよい。金属含有層は、例えば、金属粒子(例えば銀粒子)を含む金属ペースト(例えば銀ペースト)を用いて形成してもよい。
【0049】
金属材料の形状は特に限定されない。金属材料は、球状および/または鱗片状の金属粒子を含んでいてよい。球状の金属粒子(以下、球状粒子と称す。)の平均アスペクト比は、例えば、1.5未満である。鱗片状の金属材料の平均アスペクト比は、例えば、1.5以上であり、2以上である。
【0050】
金属含有層における金属材料の割合は特に限定されない。抵抗が小さくなり易い点で、上記割合は、60体積%以上、70体積%以上、または80体積%以上であってもよい。
【0051】
金属含有層は、バインダ樹脂をさらに含んでもよい。金属含有層おけるバインダ樹脂の割合は、特に限定されない。電気抵抗の観点から、金属含有層におけるバインダ樹脂の割合は、60体積%以下、20体積%以下、10体積%以下、または0体積%であってもよい。上記割合は、0.1体積%以上であってもよい。金属含有層における各成分の体積割合は、例えば、エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)によって分析できる。
【0052】
金属含有層の厚さは特に限定されない。金属含有層の厚さは、0.1μm以上で50μm以下であってよく、1μm以上で20μm以下であってもよい。金属含有層の厚さは、金属含有層の厚さ方向の断面における任意の5点の平均値である。
【0053】
陰極引出層は公知の方法で形成してもよい。例えば、陰極引出層の材料を塗布し、必要に応じて乾燥および/または熱処理すればよい。
【0054】
(外装体)
外装体は外装樹脂を含む。外装樹脂の例には、硬化性樹脂やエンジニアリングプラスチックなどが含まれる。硬化性樹脂(例えば熱硬化性樹脂)としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステルが挙げられる。エンジニアリングプラスチックには、汎用エンジニアリングプラスチックおよびスーパーエンジニアリングプラスチックが含まれる。エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミドが挙げられる。
【0055】
外装体は、外装樹脂に加えて、無機フィラーなどの他の添加剤を含んでもよい。すなわち、外装体の少なくとも一部は、樹脂組成物で構成されてもよい。無機フィラーの例には、シリカ(溶融シリカなど)、タルク、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0056】
(リード端子)
リード端子(陽極リード端子および陰極リード端子)の材質は、電気化学的および化学的に安定であり、導電性を有するものであれば特に限定されない。リード端子の材質は、好ましくは金属(例えば、銅、銅合金など)である。リード端子の厚さは、25μm~200μmの範囲(例えば25μm~100μmの範囲)にあってもよい。
【0057】
(固体電解コンデンサの製造方法の一例)
本実施形態に係る固体電解コンデンサの製造方法に特に限定はない。それらの製造方法には、公知の製造方法を適用してもよいし、本実施形態の固体電解コンデンサの構成に応じて公知の製造方法の一部を修正して適用してもよい。固有の構成を有するコンデンサ素子は、その構成に応じて製造すればよい。例えば、コンデンサ素子が固有の組成を有する構成部材を含む場合、当該組成を有するように構成部材を形成すればよい。例えば、当該組成を有するように材料を混合して当該構成部材を形成すればよい。また、コンデンサ素子が所定の厚さを有する層を含む場合には、そのような厚さになるように当該層を形成すればよい。例えば、層を形成するための材料を塗布する厚さを変えることによって、当該層の厚さを変えればよい。
【0058】
一例の製造方法では、まず、上述した方法によって、陽極体(陽極部)、誘電体層、および陰極部を含むコンデンサ素子を製造する。次に、コンデンサ素子に陽極リード端子および陰極リード端子を接続する。次に、それらを外装体で封止する。このようにして、固体電解コンデンサが製造される。
【0059】
本開示に係る実施形態の例について、図面を参照して以下に具体的に説明する。以下で説明する例の構成要素には、上述した構成要素を適用できる。また、以下で説明する例は、上述した記載に基づいて変更できる。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。また、以下で説明する実施形態において、本開示の固体電解コンデンサに必須ではない構成要素は省略してもよい。以下で説明する固体電解コンデンサは、上述した方法で製造してもよい。なお、理解を容易にするために、以下の図では、一部の部材の図示を省略する場合がある。
【0060】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る固体電解コンデンサ10を模式的に示す断面図である。固体電解コンデンサ10は、複数のコンデンサ素子100a~100dと、複数のコンデンサ素子100a~100dに電気的に接続された陽極リード端子21および陰極リード端子31と、複数のコンデンサ素子100a~100dを封止する外装体40とを含む。
【0061】
コンデンサ素子100a、100b、100c、および100dは、外装体40の下面40bと上面40tとを結ぶ方向Dsに積層されている。以下では、コンデンサ素子100a~100dの汎用的な名称として、「コンデンサ素子100」という名称を用いる場合がある。複数のコンデンサ素子100はそれぞれ、陽極体110と陰極部130とを含む。なお、図1では、誘電体層の図示を省略している。
【0062】
外装体40は、下面40bと、下面40bとは反対側の上面40tを有する。下面40bは、陽極端子部21aおよび陰極端子部31aが露出している面である。さらに、外装体40は、図1に示す前面40fと後面40rとを有する。前面40fおよび後面40rは、それぞれ下面40bと上面40tとを結ぶ側面である。陽極体110の一端には、陽極リード端子21が接続される。前面40fは、陽極体110の当該一端が延びる方向に存在する面である。後面40rは、前面40fとは反対側の面である。
【0063】
陽極リード端子21は、外装体40の下面40bにおいて露出している陽極端子部21aと、陽極リード端子21に接続される接続部21bとを含む。陰極リード端子31は、外装体40の下面40bにおいて露出している陰極端子部31aと、コンデンサ素子100の陰極部130(例えば陰極引出層)に接続される接続部31bとを含む。図1に示すように、接続部31bは、導電性接着剤層41を介して陰極部130に接続されてもよい。あるいは、接続部31bは、陰極部130に直接接続されてもよい。
【0064】
図1に示す一例では、陰極リード端子31は、下面40bに最も近いコンデンサ素子100aに接続されている。陰極リード端子31は、上面40tに最も近いコンデンサ素子100aに接続されてもよい。あるいは、陰極リード端子31は、図4に示すように、コンデンサ素子100aおよび100d以外のコンデンサ素子100に接続されてもよい。
【0065】
図1に示す一例の場合、他のコンデンサ素子100を介さずに陰極リード端子31に接続されている部分の面積が最も大きいコンデンサ素子は、コンデンサ素子100aである。図1に示すように、コンデンサ素子100(具体的には陰極部130)が導電性接着剤層41によって陰極リード端子31に接続されている場合には、「他のコンデンサ素子100を介さずに陰極リード端子31に接続されている部分の面積」は、導電性接着剤層41がコンデンサ素子100および陰極リード端子31の両方に接触している領域SAにおける、コンデンサ素子100と導電性接着剤層41との接触面積を意味する。
【0066】
図1に示す一例の場合、下面40bに最も近いコンデンサ素子100は、コンデンサ素子100aであり、上面40tに最も近いコンデンサ素子100は、コンデンサ素子100dである。この一例では、他のコンデンサ素子100を介さずに陰極リード端子31に接続されている部分の面積が最も大きいコンデンサ素子100と、下面40bに最も近いコンデンサ素子100とが、共にコンデンサ素子100aとなる。
【0067】
コンデンサ素子100の一例の断面図を図2に模式的に示す。コンデンサ素子100は、陽極体(陽極部)110と、陽極体110の少なくとも一部を覆う誘電体層120と、誘電体層120の少なくとも一部を覆う陰極部130とを含む。陰極部130は、誘電体層120の少なくとも一部を覆う固体電解質層131と、固体電解質層131上に形成された陰極引出層132とを含む。陰極引出層132は、固体電解質層131側から順に積層されたカーボン含有層132aと銀含有層132bとを含む。コンデンサ素子100は、図3に示す分離部材141を含んでもよい。
【0068】
コンデンサ素子100の他の一例の断面図を図3に示す。図3のコンデンサ素子100は、絶縁性の分離部材141および絶縁性の樹脂層142を含む点で図2のコンデンサ素子100とは異なる。樹脂層142は、上述した樹脂(R)を含むか、樹脂(R)からなる。分離部材141は、陽極体110上(または誘電体層120上)であって陰極部130が形成されていない領域に配置される。分離部材141は、当該領域のうち、陰極部130に近い領域に配置されている。分離部材141によって、陽極体110と陰極部130との短絡を抑制できる。樹脂層142は、陰極部130で覆われていない誘電体層120の少なくとも一部を覆うように配置されている。樹脂層142によって、酸素や水分が侵入しやすい箇所からのそれらの侵入を抑制できる。なお、樹脂層142は、コンデンサ素子100の表面のうち、リード端子または他のコンデンサ素子100と接続される部分を除く全体、またはほぼ全体を覆うように配置されてもよい。
【0069】
一例の固体電解コンデンサでは、第1のコンデンサ素子のみが樹脂層142を含み、第2のコンデンサ素子は樹脂層142を含まない。この構成によれば、製造コストの上昇の抑制と、固体電解コンデンサの特性の向上とを両立できる。
【0070】
(実施形態2)
図4は、実施形態2に係る固体電解コンデンサを模式的に示す断面図である。図4の固体電解コンデンサ10aは、コンデンサ素子100の配置、および、リード端子の接続方法が異なる点で、図1に示した固体電解コンデンサ10とは異なる。コンデンサ素子100には、実施形態1で説明したコンデンサ素子を用いることができる。
【0071】
コンデンサ素子100a、100b、100c、および100dは、外装体40の下面40bと上面40tとを結ぶ方向Dsに積層されている。図4では、接続部31bが陰極部130に直接接続されている一例を示しているが、図1に示すように、導電性接着剤層によって接続部31bが陰極部130に接続されていてもよい。
【0072】
図4に示す一例の場合、下面40bに最も近いコンデンサ素子100は、コンデンサ素子100aであり、上面40tに最も近いコンデンサ素子100は、コンデンサ素子100dである。他のコンデンサ素子100を介さずに陰極リード端子31に接続されている部分の面積が最も大きいコンデンサ素子100は、コンデンサ素子100bおよび100cである。
【0073】
図4に示すように、コンデンサ素子100(具体的には陰極部130)が陰極リード端子31に直接接続されている場合には、「他のコンデンサ素子100を介さずに陰極リード端子31に接続されている部分の面積」は、コンデンサ素子100と陰極リード端子31との接触面積を意味する。
【0074】
実施形態1および2の固体電解コンデンサ10および10aにおいて、下面40bに最も近いコンデンサ素子100、上面40tに最も近いコンデンサ素子100、および、他のコンデンサ素子100を介さずに陰極リード端子31に接続されている部分の面積が最も大きいコンデンサ素子100からなる群より選択される少なくとも1つのコンデンサ素子が、第1のコンデンサ素子として選択される。そして、第1のコンデンサ素子以外のコンデンサ素子100が、第2のコンデンサ素子である。固体電解コンデンサ10および10aにおいて、第1のコンデンサ素子の構成は、第2のコンデンサ素子の構成とは異なる。例えば、上述した第1の固体電解コンデンサの場合、第1のコンデンサ素子の厚さは、第2の固体電解コンデンサの厚さよりも厚い。他の固体電解コンデンサでも、同様に、第1のコンデンサ素子の構成は第2のコンデンサ素子の構成とは異なる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本開示は、固体電解コンデンサに利用できる。
【符号の説明】
【0076】
10、10a :固体電解コンデンサ
21 :陽極リード端子
21a :陽極端子部
31 :陰極リード端子
31a :陰極端子部
40 :外装体
40b :下面
40t :上面
100、100a~100d :コンデンサ素子
132 :陰極引出層
132a :カーボン含有層
132b :銀含有層
Ds :方向
図1
図2
図3
図4