(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
H02N 2/18 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H02N2/18
(21)【出願番号】P 2021003699
(22)【出願日】2021-01-13
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀山 泰明
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 清仁
(72)【発明者】
【氏名】清水 優作
(72)【発明者】
【氏名】橘田 康平
(72)【発明者】
【氏名】野田 雅明
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-170844(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107464714(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102693854(CN,A)
【文献】国際公開第2020/080114(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部が上下方向に振動可能である第1振動体と、
前記第1振動体に設けられ、前記第1振動体の振動エネルギを電気エネルギに変換する第1発電体と、
前記第1振動体の前記端部と接触し、磁気吸引力によって前記第1振動体の前記端部を下方向に移動させる可動部と、
前記第1振動体の前記端部の下方向への移動を規制する第1ストッパと、
下方向に移動する移動体と、
前記移動体と前記可動部とをつなぎ、前記移動体とともに前記可動部を下方向に移動させる第1ばねと、
を備え、
前記移動体が下方向に移動することで、前記第1振動体の前記端部が前記第1ストッパに接触し、
前記可動部は、前記第1振動体の前記端部が前記第1ストッパに接触している状態から更に下方向へと移動することで、前記可動部が前記第1振動体の前記端部から離れ、
前記可動部が前記第1振動体の前記端部から離れたときに、前記可動部は前記第1ばねによって下方向へ移動する、
発電装置。
【請求項2】
前記第1ばねは、上面視で前記第1振動体を囲むように配置される、
請求項1記載の発電装置。
【請求項3】
前記第1ばねは、
前記移動体とつながる第1接続部と、
前記可動部とつながる第2接続部と、
を有し、
前記第1ばねの前記第1接続部と前記第1ばねの前記第2接続部との間の部位が前記可動部と接触した後、前記第1ばねが前記部位を支点として変形することで前記可動部と前記第1振動体の前記端部が離れる、
請求項2記載の発電装置。
【請求項4】
前記第1ばねの前記可動部と接触する位置を接触位置とし、
前記第1ばねの前記接触位置から前記第1ばねの前記第1接続部までの長さが、前記第1ばねの前記接触位置から前記第1ばねの前記第2接続部までの長さよりも短い、
請求項3記載の発電装置。
【請求項5】
下方向に移動する前記移動体によって変形し、前記移動体を上方向に付勢する第2ばねを更に備える、
請求項1-4のいずれか1項に記載の発電装置。
【請求項6】
磁性体で形成され、前記第1振動体を支えるボディと、
磁性体で形成され、前記第1振動体よりも下方に位置し、前記ボディから突出するコアと、
前記コアに巻回されたコイルと、
を更に備え、
前記第1振動体は、少なくとも一部が磁性体であり、
前記可動部は、
前記第1振動体の前記端部が前記第1ストッパに接触しているときに、
前記第1振動体の下面と接触可能に構成されている第1部位と、
前記コアの先端面と向かい合うように構成されている第2部位と、
を含み、
前記可動部は、永久磁石を有し、
前記永久磁石は、前記第1部位が第1極となり、前記第2部位が前記第1極と極性の異なる第2極となるように配置されている、
請求項1-5のいずれか1項に記載の発電装置。
【請求項7】
前記第1振動体の前記端部は磁性体であり、
前記第1ストッパは、磁性体で形成されて前記ボディに支持されている、
請求項6記載の発電装置。
【請求項8】
前記第1振動体の下方に設けられ、端部が上下方向に振動可能である第2振動体と、
前記第2振動体に設けられ、前記第2振動体の振動エネルギを電気エネルギに変換する第2発電体と、
前記第2振動体の前記端部の上方向への移動を規制する第2ストッパと、
を更に備え、
下方向に移動した前記可動部は、前記第1振動体の前記端部から離れた後、前記第2振動体の前記端部と接触し、
下方向に移動した前記移動体は、上方向に移動可能に構成されており、
前記第1ばねは、前記移動体が上方向に移動するとき、前記移動体とともに前記可動部を上方向に移動させ、
前記第2振動体と接触している前記可動部は、前記可動部の磁気吸引力によって前記第2振動体の前記端部を上方向に移動させ、
前記第2振動体の前記端部は、前記可動部とともに上方向に移動して前記第2ストッパに接触し、
前記可動部は、前記第2振動体の前記端部が前記第2ストッパに接触している状態から更に上方向へと移動することで、前記可動部が前記第2振動体の前記端部から離れ、
前記可動部が前記第2振動体の前記端部から離れたときに、前記可動部は前記第1ばねによって上方向へ移動する、
請求項1-7のいずれか1項に記載の発電装置。
【請求項9】
端部が上下方向に振動可能である振動体と、
前記振動体に設けられ前記振動体の振動エネルギを電気エネルギに変換する発電体と、
前記振動体の前記端部と接触し、磁気吸引力によって前記振動体の前記端部を下方向に移動させる可動部と、
下方向に移動する移動体と、
前記移動体と前記可動部とをつなぎ、前記移動体とともに前記可動部を下方向に移動させるばねと、
を備え、
前記可動部は、前記振動体の前記端部と接触している状態で下方向に移動した後、前記振動体の前記端部から離れ、
前記ばねは、前記移動体が下方向に移動するときに下向きの力を前記可動部に加え、
前記可動部が前記振動体の前記端部から離れたときに、前記可動部は前記ばねによって下方向へ移動する、
発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発電装置に関し、より詳細には、いわゆる環境発電(エナジーハーベスティング)を行う発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来例として、特許文献1記載の発電装置を例示する。特許文献1記載の発電装置は、弾性変形して機械的に振動する振動体と、圧電素子を含み、振動体の振動エネルギを電気エネルギに変換する発電部と、振動体の端部に接離可能に吸着する磁石と、磁石を振動方向に移動させる可動部とを備えている。
【0003】
振動体は、一端が固定された片持ち梁状の磁性体と、磁性体の自由端に設けられたおもりとを有している。発電部は、磁性体の上面及び下面に設けられた圧電素子を有している。可動部は、軸の回りに回転可能であり、かつ、ばね(ねじりコイルばね)によって一方向に弾性付勢されている。
【0004】
しかして、外力を受けて可動部が回転すると磁石に吸引された振動体が撓み、やがて振動体の復帰力(弾性力)が磁石の吸引力を上回ると、振動体が磁石から離れて振動を開始する。そして、振動体が振動を開始することにより、発電部が発電する。また、可動部は、外力を受けなくなるとばねの復帰力によって元の位置に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来例において、振動体は、磁石と切り離された後も磁石から磁気吸引力を受ける。そして、磁石と切り離された直後の振動体の復帰力(弾性力)と磁石の磁気吸引力の向きが逆向きであるため、振動体の振動が磁気吸引力によって弱められることとなり、発電部の発電量を増やすことが難しかった。
【0007】
本開示の目的は、磁気吸引力による発電量低下の抑制を図ることができる発電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る発電装置は、第1振動体と、第1発電体と、可動部と、第1ストッパと、移動体と、第1ばねとを備える。前記第1振動体は、端部が上下方向に振動可能である。前記第1発電体は、前記第1振動体に設けられ、前記第1振動体の振動エネルギを電気エネルギに変換する。前記可動部は、前記第1振動体の前記端部と接触し、磁気吸引力によって前記第1振動体の前記端部を下方向に移動させる。前記第1ストッパは、前記第1振動体の前記端部の下方向への移動を規制する。前記移動体は、下方向に移動する。前記第1ばねは、前記移動体と前記可動部とをつなぎ、前記移動体とともに前記可動部を下方向に移動させる。前記移動体が下方向に移動することで、前記第1振動体の前記端部が前記第1ストッパに接触する。前記可動部は、前記第1振動体の前記端部が前記第1ストッパに接触している状態から更に下方向へと移動することで、前記可動部が前記第1振動体の前記端部から離れる。前記可動部が前記第1振動体の前記端部から離れたときに、前記可動部は前記第1ばねによって下方向へ移動する。
【0009】
本開示の一態様に係る発電装置は、振動体と、発電体と、可動部と、移動体と、ばねとを備える。前記振動体は、端部が上下方向に振動可能である。前記発電体は、前記振動体に設けられ前記振動体の振動エネルギを電気エネルギに変換する。前記可動部は、前記振動体の前記端部と接触し、磁気吸引力によって前記振動体の前記端部を下方向に移動させる。前記移動体は、下方向に移動する。前記ばねは、前記移動体と前記可動部とをつなぎ、前記移動体とともに前記可動部を下方向に移動させる。前記可動部は、前記振動体の前記端部と接触している状態で下方向に移動した後、前記振動体の前記端部から離れる。前記ばねは、前記移動体が下方向に移動するときに下向きの力を前記可動部に加える。前記可動部が前記振動体の前記端部から離れたときに、前記可動部は前記ばねによって下方向へ移動する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の発電装置は、磁気吸引力による発電量低下の抑制を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る発電装置の概略図である。
【
図3】
図3は、同上の発電装置の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、同上の発電装置におけるハーベスタモジュールの分解斜視図である。
【
図11】
図11は、同上の発電装置において、可動ブロックが上限位置にあるときの一部省略した正面図である。
【
図12】
図12は、同上の発電装置において、可動ブロックが上限位置にあるときの断面図である。
【
図13】
図13は、同上の発電装置において、可動ブロックが上限位置から下向きに移動しておもりがストッパ片に当たった状態の一部省略した正面図である。
【
図14】
図14は、同上の発電装置において、可動ブロックが上限位置から下向きに移動しておもりがストッパ片に当たった状態の断面図である。
【
図15】
図15は、同上の発電装置において、おもりがストッパ片に当たった状態で可動ブロックが更に下向きに移動したときの一部省略した正面図である。
【
図16】
図16は、同上の発電装置において、おもりがストッパ片に当たった状態で可動ブロックが更に下向きに移動したときの断面図である。
【
図17】
図17は、同上の発電装置において、おもりがストッパ片に当たった状態で可動ブロックが更に下向きに移動したときの一部省略した正面図である。
【
図18】
図18は、同上の発電装置において、おもりがストッパ片に当たった状態で可動ブロックが更に下向きに移動したときの断面図である。
【
図19】
図19は、同上の発電装置において、可動ブロックが上方の発電ブロックと切り離されたときの一部省略した正面図である。
【
図20】
図20は、同上の発電装置において、可動ブロックが上方の発電ブロックと切り離されたときの断面図である。
【
図21】
図21は、同上の発電装置において、可動ブロックが上方の発電ブロックと切り離された後、可動ブロックが更に下向きに移動したときの一部省略した正面図である。
【
図22】
図22は、同上の発電装置において、可動ブロックが上方の発電ブロックと切り離された後、可動ブロックが更に下向きに移動したときの断面図である。
【
図23】
図23は、同上の発電装置において、可動ブロックが上方の発電ブロックと切り離された後、可動ブロックが更に下向きに移動して下方の発電ブロックと接触したときの一部省略した正面図である。
【
図24】
図24は、同上の発電装置において、可動ブロックが上方の発電ブロックと切り離された後、可動ブロックが更に下向きに移動して下方の発電ブロックと接触したときの断面図である。
【
図25】
図25は、同上の発電装置において、可動ブロックが下限位置にあるときの一部省略した正面図である。
【
図26】
図26は、同上の発電装置において、可動ブロックが下限位置にあるときの断面図である。
【
図27】
図27は、同上の発電装置において、操作部材の移動距離と操作反力の関係を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態に係る発電装置について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、下記の実施形態において説明する各図は模式的な図であり、各構成要素の大きさ及び厚さのそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。なお、以下の実施形態で説明する構成は本開示の一例にすぎない。本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の効果を奏することができれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0013】
(1)本開示の実施形態に係る発電装置の概要
本開示の実施形態に係る発電装置A1は、第1振動体A11と、第1発電体A12と、可動部A13と、移動体A14と、第1ばねA15と、第1ストッパA16とを備える(
図1参照)。
【0014】
第1振動体A11は、端部A17(
図1における右側の端部)が上下方向に振動可能である。第1発電体A12は、第1振動体A11に設けられる。第1発電体A12は、第1振動体A11の振動エネルギを電気エネルギに変換する。可動部A13は、第1振動体A11の端部A17と接触し、磁気吸引力によって第1振動体A11の端部A17を下方向に移動させる。第1ストッパA16は、第1振動体A11の端部A17の下方向への移動を規制する。移動体A14は、下方向に移動する。第1ばねA15は、移動体A14と可動部A13とをつなぐ。第1ばねA15は、移動体A14とともに可動部A13を下方向に移動させる。
【0015】
移動体A14が下方向に移動することで、第1振動体A11の端部A17が第1ストッパA16に接触する。可動部A13は、第1振動体A11の端部A17が第1ストッパA16に接触している状態から更に下方向へと移動する。これにより、可動部A13は、第1振動体A11の端部A17から離れる。可動部A13は、第1振動体A11の端部A17から離れたときに、第1ばねA15によって下方向へ移動する。
【0016】
例えば、移動体A14は、人の指で下向きに押されると、第1ばねA15を撓めながら(圧縮しながら)下向きに移動する。可動部A13は、圧縮された第1ばねA15から下向きの弾性力が加えられるため、移動体A14とともに下向きに移動する。第1振動体A11は、端部A17が磁気吸引力により可動部A13に吸着されているため、可動部A13が下向きに移動することによって下向きに撓められる。そして、第1振動体A11の端部A17が第1ストッパA16に接触すると、第1振動体A11の撓みが第1ストッパA16によって規制される。このとき、可動部A13は、撓められた第1振動体A11から上向きの弾性力を受ける。そして、可動部A13は、第1ばねA15から受ける下向きの弾性力が第1振動体A11から受ける上向きの弾性力を上回ったときに第1振動体A11から切り離される。すると、第1振動体A11の端部A17は、第1振動体A11の弾性力によって上向きに移動して振動を開始する。第1振動体A11が振動すると、第1振動体A11に設けられている第1発電体A12が、第1振動体A11の振動エネルギを電気エネルギに変換して発電する。なお、第1発電体A12の発電量は、第1振動体A11の振動の大きさ(振幅)が大きいほど、多くなる。一方、可動部A13は、第1振動体A11と切り離されると、第1ばねA15の下向きの弾性力によって、移動体A14が下向きに移動するよりも速く下向きに移動する。
【0017】
しかして、本開示の実施形態に係る発電装置A1は、従来例と比べて、第1振動体A11の振動が可動部A13の磁気吸引力によって弱められにくくなる。その結果、本開示の実施形態に係る発電装置A1は、磁気吸引力による発電量低下の抑制を図ることができる。
【0018】
ただし、本開示の実施形態に係る発電装置A1において、第1ストッパA16を省略しても構わない。第1ストッパA16を省略した場合においても、可動部A13は、第1ばねA15から受ける下向きの弾性力が第1振動体A11から受ける上向きの弾性力を上回ったときに第1振動体A11から切り離される。そして、可動部A13は、第1振動体A11と切り離されると、第1ばねA15の下向きの弾性力によって、移動体A14が下向きに移動するよりも速く下向きに移動する。
【0019】
しかして、本開示の実施形態に係る発電装置A1は、第1ストッパA16を省略した構成であっても、第1振動体A11の振動が可動部A13の磁気吸引力によって弱められにくくなり、磁気吸引力による発電量低下の抑制を図ることができる。
【0020】
(2)実施形態に係る発電装置の構成
実施形態に係る発電装置A1(以下、発電装置A1と略す。)は、いわゆる環境発電(エナジーハーベスティング)を行う発電装置(エナジーハーベスタと呼ばれる。)である。発電装置A1は、ハーベスタモジュールB1と、ベースブロックC1とを有する(
図2及び
図3参照)。なお、以下の説明においては、特に断りのない限り、
図2に矢印で示す上下、左右及び前後の各方向を発電装置A1の上下、左右及び前後の各方向と規定する。ただし、これらの方向は、説明のために便宜上規定した方向であり、発電装置A1が実際に使用される際の方向を規定するものではない。
【0021】
(2-1)ハーベスタモジュール
ハーベスタモジュールB1は、2つの発電ブロック1と、可動ブロック2と、磁気発電ブロック3と、第1ばね4と、2つのストッパブロック5とを備える(
図4参照)。
【0022】
(2-1-1)発電ブロック
2つの発電ブロック1は共通の構成を有している。すなわち、各発電ブロック1は、振動体10と、発電体11と、おもり12とを有している。なお、以下の説明においては、2つの発電ブロック1のうち、上方に位置する発電ブロック1を発電ブロック1Aと表記し、下方に位置する発電ブロック1を発電ブロック1Bと表記する場合がある。
【0023】
(2-1-1-1)振動体
振動体10は、台形状の振動片100と、略T字状の固定片101とを有する。固定片101は、振動片100の幅広の端(左端)とつながっている。振動片100と固定片101は、弾性を有する軟磁性体の板材、例えば、ステンレス鋼板によって一体に形成されている。なお、固定片101には2つの丸穴102が設けられている。これら2つの丸穴102は、前後方向に間隔を開けて並び、かつ、上下方向(固定片101の厚み方向)に固定片101を貫通している。
【0024】
(2-1-1-2)おもり
おもり12は、軟磁性材料によってT字の板状に形成されている。おもり12は、振動片100の幅細の端部(右側の端部)に、接着などの適宜の方法で固定されている。おもり12の中央の突片120は、振動片100の先端(右端)から先(右)に突出している。なお、おもり12は、例えば、振動片100の幅狭の端(右端)の厚みが大きくされることにより、振動体10と一体に形成されても構わない。
【0025】
(2-1-1-3)発電体
発電体11は、振動体10の上下両面に1つずつ設けられている。発電体11は、圧電素子(発電素子)、圧電素子から電気エネルギ(電力)を取り出すための複数の電極及び複数の端子110などを有する(
図4参照)。圧電素子を形成する材料は、圧電セラミックス、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr・Ti)O
3)が好適である。ただし、圧電素子を形成する材料は、チタン酸鉛(PbTiO
3)、メタニオブ酸鉛(PbNb
2O
6)、チタン酸ビスマス(Bi
4Ti
3O
12)などの圧電セラミックスであっても構わない。複数の端子110は、振動体10の固定片101に設けられている。なお、固定片101の両面(上面及び下面)には、端子110を保護するための保護テープが貼り付けられている。保護テープは、例えば、耐熱性及び電気絶縁性に優れるポリイミド樹脂で形成されることが好ましい。
【0026】
(2-1-2)可動ブロック
可動ブロック2は、永久磁石20と、一対のヨーク21と、ホルダ22とを有している。
【0027】
(2-1-2-1)永久磁石
永久磁石20は、例えば、直方体状のネオジム磁石である。ただし、永久磁石20は、ネオジム磁石以外の磁石、例えば、サマリウムコバルト磁石などであっても構わない。永久磁石20は上下方向に着磁されており、例えば、上部がN極となり、下部がS極となっている。
【0028】
(2-1-2-2)ヨーク
一対のヨーク21は同一の形状及び寸法に形成されている。ただし、以下の説明においては、一対のヨーク21のうち、上方に位置するヨーク21をヨーク21Aと表記し、下方に位置するヨーク21をヨーク21Bと表記する場合がある。
【0029】
各ヨーク21は、第1ヨーク片211、第2ヨーク片212、当接部213及び一対の突部214を有している(
図4参照)。なお、第1ヨーク片211、第2ヨーク片212、当接部213及び一対の突部214は、軟磁性材料によって一体に形成されている。
【0030】
第1ヨーク片211は、四角形の平板状に形成されている。第2ヨーク片212は、矩形の平板状に形成されている。第2ヨーク片212は、第1ヨーク片211の左端から第1ヨーク片211の厚み方向(上下方向)に突出している。
【0031】
当接部213は、円柱をその軸と平行な平面で切り取った形状に形成されている。当接部213は、第1ヨーク片211の表面(上方のヨーク21Aにおける上面及び下方のヨーク21Bにおける下面)の右端から第2ヨーク片212と逆向きに突出している。
【0032】
一対の突部214はそれぞれ、細長い角柱状に形成されている。一対の突部214は、第1ヨーク片211の前面及び後面から前方及び後方にそれぞれ1つずつ突出している。
【0033】
(2-1-2-3)ホルダ
ホルダ22は、第1軸受部221、第2軸受部222、第1梁部223、第2梁部224及び一対の接触部225を有している(
図4参照)。なお、第1軸受部221、第2軸受部222、第1梁部223、第2梁部224及び一対の接触部225は、非磁性材料、例えば、アルミニウム又は合成樹脂によって一体に形成されている。
【0034】
第1軸受部221と第2軸受部222は、前後方向に間隔を空けて対向し、第1梁部223と第2梁部224によって連結されている。そして、ホルダ22は、第1軸受部221、第2軸受部222、第1梁部223及び第2梁部224に囲まれた長方形の空間に永久磁石20を収容して保持する。
【0035】
また、第1軸受部221及び第2軸受部222のそれぞれの上面及び下面には、凹部226が1つずつ設けられている。これらの凹部226には、2つのヨーク21の突部214が1つずつ嵌まり込む。そして、ホルダ22は、第1軸受部221及び第2軸受部222のそれぞれの凹部226にヨーク21を嵌め込み、永久磁石20を2つのヨーク21で上下方向から挟むようにして、永久磁石20と2つのヨーク21を保持する。なお、各ヨーク21は、接着などの適宜の方法によって第1軸受部221及び第2軸受部222に固定される。
【0036】
ここで、各ヨーク21の第2ヨーク片212は、第1梁部223を挟んで上下方向に対向している(
図12参照)。すなわち、2つのヨーク21の第2ヨーク片212は、非磁性材料で形成された第1梁部223によって離間されている。つまり、2つのヨーク21A、21Bは、一方のヨーク21Aの第1ヨーク片211から第2ヨーク片212を通って第2ヨーク片212から漏れ出し、他方のヨーク21Bの第2ヨーク片212と第1ヨーク片211を通って永久磁石20に戻る磁路を形成する。可動ブロック2は、2つのヨーク21A、21Bのそれぞれの第2ヨーク片212から磁束を漏れ出させることにより、磁性体に対して磁気吸引力を作用させることができる。
【0037】
また、第1軸受部221の一部は、上下方向を軸方向とする角柱状に形成されている(
図4参照)。そして、第1軸受部221は、角柱状に形成されている一部を上下方向に貫通する軸受穴227を有している。さらに、第1軸受部221は、第1軸受部221を前後方向に貫通する穴2210を有している(
図6参照)。この穴2210は、前後方向から見て長穴状に形成されている。
【0038】
一方、第2軸受部222の前面には、半円筒形の軸受溝228が設けられている(
図4及び
図5参照)。軸受溝228の軸方向は、上下方向に一致している。さらに、第2軸受部222の前面において、軸受溝228の左隣に一対の接触部225が設けられている。各接触部225は、直方体状に形成され、第2軸受部222の前面における上端と下端からそれぞれ1つずつ前方へ突出している(
図4参照)。
【0039】
(2-1-3)磁気発電ブロック
磁気発電ブロック3は、ボディ30、コア(鉄心)31、コイル32及びねじ33を有する(
図4参照)。
【0040】
(2-1-3-1)ボディ
ボディ30は、軟磁性材料により、おおよそ直方体状に形成されている。ボディ30の前面及び後面のそれぞれに、左右の側面に跨がった凹所300が設けられている(
図4-
図6参照)。ただし、前面の凹所300の上下方向の幅は、後面の凹所300の上下方向の幅よりも狭くなっている。
【0041】
また、ボディ30の左側面における上下方向の中央に、ばね受け部34が設けられている(
図4-
図6及び
図8参照)。ばね受け部34は、ボディ30の左側面において、ボディ30の前面と後面に跨がった半円筒形の溝状に形成されている。
【0042】
さらに、ばね受け部34の前後方向の中央に、円筒形の凹所35が設けられている(
図8参照)。凹所35の内径は、ねじ33の頭部330の直径よりも大きい。そして、凹所35の底には、ボディ30の厚み方向(左右方向)にボディ30を貫通する円筒形の穴350が形成されている(
図4参照)。この穴350の内径は、ねじ33の頭部330の直径よりも小さく、かつ、ねじ33のねじ部331の直径よりも大きい。なお、ボディ30の右側面において、穴350が貫通している中央部分に、円筒形の凹所301が設けられている。この凹所301の底面の中心に穴350が開口している。
【0043】
また、ボディ30の左側面における凹所35の真下にめねじ部36が設けられている(
図4参照)。めねじ部36は、ボディ30を厚み方向(左右方向)に貫通している。
【0044】
ボディ30の上面と下面には、発電ブロック1をねじ止めするためのねじ穴37が2つずつ設けられている(
図4参照)。これらのねじ穴37は、ボディ30の上面及び下面において、間隔を空けて前後方向に並んでいる。
【0045】
さらに、ボディ30の上面及び下面において、前後方向の両端には、上面視でT字型の凹部38がそれぞれ1つずつ設けられている(
図4参照)。
【0046】
(2-1-3-2)コイル
コイル32は、コイルボビンに巻線(エナメル線)が巻回されて円筒状に形成されている。ただし、コイル32は、自己融着性を有する絶縁体で導体を被覆した電線が、螺旋状に巻回されたボビンレスのコイルであっても構わない。
【0047】
(2-1-3-3)コア
コア31は、円柱状の胴部310と、角柱状の腕部311とを有する(
図4参照)。なお、胴部310と腕部311は、純鉄又は磁性ステンレス鋼などの軟磁性材料によって一体に形成されている。
【0048】
腕部311は、胴部310の先端(右端)から胴部310の径方向(前後方向)に突出している。なお、腕部311の上面と下面は、先端(右端)に向かって互いに近付くように傾斜している(
図4及び
図5参照)。
【0049】
また、胴部310にはねじ穴312が設けられている(
図12参照)。このねじ穴312は、胴部310の底面(左側の底面)に開口している。
【0050】
(2-1-3-4)磁気発電ブロックの組立て
磁気発電ブロック3は、以下のような手順で組立てられる。
【0051】
まず、コイル32の中心の穴にコア31の胴部310が挿通される。そして、胴部310の後端部分(左端部分)が、ボディ30の右側面の凹所301に収容される。それから、ボディ30の穴350にねじ33のねじ部331が挿通され、胴部310のねじ穴312にねじ込まれる。その結果、コア31とボディ30が機械的に結合されて磁気発電ブロック3の組立てが完了する(
図12参照)。ここで、ねじ33は、軟磁性材料で形成されている。そのため、ボディ30とコア31は、ボディ30とコア31の当接面及びねじ33を介して磁気的にも結合される。
【0052】
(2-1-4)第1ばね
第1ばね4は、線細工ばねである。具体的には、第1ばね4は、線状の材料により、下から見た形状が略G字形状に形成されている(
図4参照)。ただし、第1ばね4は、板ばね又は複数枚の板ばねを重ね合わせて構成される重ね板ばねなどの線細工ばね以外のばねであっても構わない。
【0053】
第1ばね4は、第1接続部41、第2接続部42、第1ばね片43、第2ばね片44、第3ばね片45及び第4ばね片46を有する(
図4参照)。なお、第1接続部41、第2接続部42及び複数のばね片43-46は、例えば、ステンレス鋼などのばね材料に適した金属材料によって一体に形成されることが好ましい。
【0054】
第1ばね片43の一方の端部(後端部)が第1接続部41となる。第1ばね片43の他方の端部(前端部)は、第2ばね片44の一方の端部(右端部)とほぼ直角に交わるようにつながっている。第2ばね片44の他方の端部(左端部)は、第3ばね片45の一方の端部(前端部)とほぼ直角に交わるようにつながっている。第3ばね片45の他方の端部(後端部)は、第4ばね片46の一方の端部(左端部)とほぼ直角に交わるようにつながっている。第2接続部42は、真っすぐな棒状に形成され、第4ばね片46の他方の端部(右端部)とほぼ直角に交わるようにつながっている。
【0055】
(2-1-5)ストッパブロック
一対のストッパブロック5は同一の構成を有している。ただし、以下の説明においては、一対のストッパブロック5のうち、上方に位置するストッパブロック5をストッパブロック5Aと表記し、下方に位置するストッパブロック5をストッパブロック5Bと表記する場合がある(
図4参照)。
【0056】
各ストッパブロック5は、主片50、ストッパ片51、固定片52、及び一対の嵌合片53を有する。なお、主片50、ストッパ片51、固定片52、及び一対の嵌合片53は、軟磁性材料によって一体に形成される。
【0057】
主片50は、長方形の平板状に形成されている。固定片52は、直方体状に形成されている。ストッパブロック5Aの固定片52は、主片50の左端の下面から下向きに突出し、ストッパブロック5Bの固定片52は、主片50の左端の上面から上向きに突出している。
【0058】
また、主片50及び固定片52には、2つのねじ挿通穴520が、前後方向に間隔を開けて並ぶように上下方向に貫通している。さらに、固定片52の前後両端に嵌合片53が1つずつ設けられている。
【0059】
各嵌合片53は、上面視でT字状に形成されている。各嵌合片53は、磁気発電ブロック3のボディ30に設けられている凹部38と嵌合可能な形状及び寸法に形成されている。
【0060】
ストッパ片51は、長方形の平板状に形成されている。ストッパ片51の前後方向の中央に、四角形の窓510が開口している(
図4参照)。ストッパブロック5Aのストッパ片51は、主片50の右端の下面から下向きに突出し、ストッパブロック5Bのストッパ片51は、主片50の右端の下面から上向きに突出している。
【0061】
また、主片50の右側の端部における前後両端に、丸穴500が1つずつ設けられている。これら2つの丸穴500は、主片50を厚み方向(上下方向)に貫通している。
【0062】
(2-2)ハーベスタモジュールの組立て
次に、ハーベスタモジュールB1の組立ての手順を説明する。ただし、以下に説明する組立ての手順は一例であり、一部の手順の順番が入れ替わっても構わない。なお、組立て作業の一部又は全部は、組立て用の機械(組立て装置)によって自動化される場合がある。
【0063】
まず、組立てを行う作業者は、下側の発電ブロック1Bと磁気発電ブロック3のボディ30を下側のストッパブロック5Bの固定片52の上に載せる。このとき、作業者は、発電ブロック1Bのおもり12の突片120を、ストッパブロック5Bのストッパ片51の窓510に差し込む(
図3参照)。そして、作業者は、ストッパブロック5Bの下から固定片101の2つの丸穴102にねじ54を1本ずつ挿入する。さらに、作業者は、発電ブロック1Bの振動体10の2つの丸穴102を通して、ボディ30の下面の2つのねじ穴37にねじ54を1本ずつねじ込むことにより、ストッパブロック5Bと発電ブロック1Bをボディ30に結合する。ただし、2本のねじ54は、軟磁性材料で形成されたねじである。
【0064】
続いて、作業者は、ストッパブロック5Bの主片50に設けられている2つの丸穴500に、2本のポール23の下側の先端部を1つずつ差し込む。ポール23は、アルミニウム合金などの非磁性材料によって円柱状に形成されている。ただし、ポール23の両側の先端部の径は、先端部以外の部分の径よりも細くなっている。
【0065】
それから、作業者は、2本のポール23のうち、後方のポール23をホルダ22の第2軸受部222の軸受穴227に挿通する(
図6参照)。さらに、作業者は、前方のポール23をホルダ22の第1軸受部221の軸受溝228に嵌める(
図5参照)。このようにして、作業者は、可動ブロック2を2本のポール23に取り付ける。
【0066】
続いて、作業者は、上側の発電ブロック1Aとストッパブロック5Aの固定片52を磁気発電ブロック3のボディ30の上面に載せるとともに、2本のポール23の上側の先端部を、ストッパブロック5Aの主片50の2つの丸穴500に1つずつ差し込む。このとき、作業者は、発電ブロック1Aのおもり12の突片120を、ストッパブロック5Aのストッパ片51の窓510に差し込む(
図3参照)。そして、作業者は、ストッパブロック5Aの上から固定片101の2つの丸穴102にねじ54を1本ずつ挿入する。さらに、作業者は、発電ブロック1Aの振動体10の2つの丸穴102を通して、ボディ30の上面の2つのねじ穴37にねじ54を1本ずつねじ込むことにより、ストッパブロック5Aと発電ブロック1Aをボディ30に結合する。ただし、2本のねじ54は、軟磁性材料で形成されたねじである。
【0067】
次に、作業者は、ボディ30の左側面のばね受け部34に、第1ばね4の第3ばね片45を収容する(
図5、
図6及び
図8参照)。それから、作業者は、押さえ板47の穴470に挿通したねじ48を、ボディ30の左側面に設けられているめねじ部36にねじ込むことで押さえ板47をボディ30の左側面に固定する(
図12参照)。押さえ板47は、リン酸銅などの有用なばね材によって四角形の平板状に形成されている(
図4及び
図8参照)。押さえ板47は、ボディ30の左側面に固定された状態において、ボディ30のばね受け部34の一部を塞ぐことにより、第1ばね4の第3ばね片45がばね受け部34の外に出ることを阻止している(
図5、
図6及び
図8参照)。
【0068】
続いて、作業者は、ホルダ22の第1軸受部221に設けられている穴2210に、第1ばね4の第2接続部42を差し込む(
図6参照)。最後に、作業者は、ホルダ22の第2軸受部222に設けられた一対の接触部225の間に、第1ばね4の第2ばね片44を収容する(
図5参照)。しかして、第1ばね4は、上面視で発電ブロック1、可動ブロック2及び磁気発電ブロック3を囲むように配置される(
図5-
図10参照)。
【0069】
以上により、ハーベスタモジュールB1の組立てが完了する。
【0070】
(2-3)ベースブロック
ベースブロックC1は、ベース部6と、移動体に相当する操作部材7と、支柱8と、第2ばね9とを有する(
図2及び
図3参照)。
【0071】
(2-3-1)ベース部
ベース部6は、ベース板60、ガイド部61、固定部62及びばね取付部63を備える(
図3参照)。ベース板60は、略長方形の平板状に形成されている(
図9参照)。ガイド部61は、略直方体状に形成され、ベース板60の上面における右端の前方から上向きに起立している。なお、ガイド部61の後方の側面は、前方に凸となる円筒面状に湾曲している(
図10参照)。固定部62は、円筒状に形成され、ベース板60の上面における右端の後方から上向きに起立している。ばね取付部63は、円すい台状に形成されている。ばね取付部63は、ベース板60の上面において、ガイド部61の後方の側面に沿うように上向きに起立している。なお、ベース板60、ガイド部61、固定部62及びばね取付部63は、例えば、合成樹脂材料によって一体に形成される。
【0072】
(2-3-2)第2ばね
第2ばね9は、コイルばねで構成されている(
図3参照)。第2ばね9は、一端からばね取付部63が差し込まれることにより、起立した状態でベース板60に取り付けられる(
図7参照)。
【0073】
(2-3-3)支柱
支柱8は、例えば、金属材料によって円柱状に形成されている。支柱8は、一端が固定部62に差し込まれることにより、起立した状態でベース板60に取り付けられる(
図7参照)。
【0074】
(2-3-4)操作部材
操作部材7は、本体70、操作ボタン71、一対の支持片72及びばね受け部73を有する(
図3参照)。本体70は、直方体状に形成されている。本体70の前方の側面は、後方に凸となる円筒面状に湾曲している(
図3参照)。操作ボタン71は、円柱状に形成され、本体70の上面における後端から上向きに突出している。本体70及び操作ボタン71の内部に、円筒形状の穴が設けられている。また、本体70の底面に円筒形の凹所が設けられている。この凹所の中央に、穴が開口している。
【0075】
一対の支持片72はそれぞれ、柱状に形成され、本体70の右側面における上端と下端から1つずつ右向きに突出している(
図3参照)。ばね受け部73は、半円柱状に形成され、本体70の前方の側面における上端から前方へ突出している。
【0076】
(2-4)発電装置の組立て
次に、発電装置A1の組立ての手順を説明する。ただし、以下に説明する組立ての手順は一例であり、一部の手順の順番が入れ替わっても構わない。なお、組立て作業の一部又は全部は、組立て用の機械(組立て装置)によって自動化される場合がある。
【0077】
組立てを行う作業者は、2つのストッパブロック5と第1ばね4の第1ばね片43の間にガイド部61を配置するように、ベース部6のベース板60の上にハーベスタモジュールB1を載せる。そして、作業者は、ハーベスタモジュールB1の下側のストッパブロック5Bをベース板60に固定する。なお、ストッパブロック5Bとベース板60は、接着などの適宜の方法で固定される。
【0078】
続いて、作業者は、第2ばね9の一端(下端)にばね取付部63を差し込むことにより、ベース板60に第2ばね9を取り付ける。さらに、作業者は、支柱8の一端(下端)を固定部62に差し込むことにより、ベース板60の固定部62に支柱8を固定させる。それから、作業者は、支柱8の他端(上端)を操作部材7の本体70の底面に開口した穴に差し込むとともに、第2ばね9の他端(上端)に操作部材7のばね受け部73を載せる。そして、作業者は、操作ボタン71を指で押して操作部材7を下向きに移動させ、操作部材7の一対の支持片72の間に第1ばね4の第1接続部41を挿入した後、操作部材7から指を離す。すると、第2ばね9の弾性力によって操作部材7が上向きに移動するとともに、第1ばね4で操作部材7と連結された可動ブロック2も上向きに移動する。そして、可動ブロック2のホルダ22の上端(第2軸受部222の上端)が上方のストッパブロック5Aの主片50に当たった状態で操作部材7が静止する(
図6参照)。つまり、操作部材7の一対の支持片72に第1ばね4の第1接続部41がつながれる(
図5-
図7参照)。
【0079】
以上により、発電装置A1の組立てが完了する。
【0080】
(3)実施形態に係る発電装置の動作
次に、
図11-
図26を参照して発電装置A1の動作を説明する。なお、以下の説明において、ホルダ22が上方のストッパブロック5Aに当たって可動ブロック2が停止する位置を可動ブロック2の上限位置と呼ぶ(
図11、
図12参照)。また、操作部材7が押操作されることで可動ブロック2が下向きに移動し、下方のストッパブロック5Bに当たって可動ブロック2が停止する位置を可動ブロック2の下限位置と呼ぶ(
図25、
図26参照)。ただし、
図11-
図26においては、2本のポール23のうち、前方のポール23の図示を省略している。
【0081】
(3-1)操作部材の動作
(3-1-1)操作ボタンが押されたときの動作
操作部材7は、人の指で操作ボタン71が下向きに押されることにより、下向きの外力(以下、操作力と呼ぶ。)を受ける。操作部材7は、操作力を受けている間、可動ブロック2が下限位置に達するまで、支柱8にガイドされて下向きに移動する(
図11-
図26参照)。なお、下向きに移動する操作部材7は、第1ばね4、上方の発電ブロック1A及び第2ばね9から操作力と逆向き(上向き)の力を受ける。操作部材7が受ける上向きの力は、操作ボタン71を下向きに押している人の指に加わる。以下の説明では、操作ボタン71を下向きに押している人の指に加わる力を、操作反力と呼ぶ。
【0082】
(3-1-2)操作ボタンが押されなくなったときの動作
可動ブロック2が下限位置に達した後、人の指が操作ボタン71から離れる(操作力がなくなる)と、操作部材7は、第2ばね9から上向きの弾性力(以下、復帰力と呼ぶ。)を受ける。操作部材7は、復帰力を受けて上向きに移動し、可動ブロック2が上限位置に達すると停止する。
【0083】
なお、移動中の操作部材7が支柱8から受ける動摩擦力は、操作力及び復帰力に比べて十分に小さいために無視する。
【0084】
(3-2)第1ばね及び可動ブロックの動作
第1ばね4は、ボディ30のばね受け部34に第3ばね片45が収容されているため、第3ばね片45を軸としてボディ30に対して回転可能である。つまり、第1ばね4は、操作部材7が下向きに移動する際、前方から見て時計回りに回転し、操作部材7が上向きに移動する際に反時計回りに回転する。そして、第1ばね4が時計回りに回転することにより、可動ブロック2が下向きに移動し、第1ばね4が反時計回りに回転することにより、可動ブロック2が上向きに移動する(
図11-
図26参照)。
【0085】
しかして、可動ブロック2は、操作部材7が下向きに移動するときに下向きに移動し、操作部材7が上向きに移動するときに上向きに移動する。
【0086】
ここで、第1ばね4は、上面視で発電ブロック1を囲むように配置されている。そのため、全長の長い第1ばね4を用いながら、発電装置A1の小型化を図ることができる。なお、第1ばね4の全長を長くすることにより、力点(第1接続部41)、支点(第3ばね片45)及び作用点(第2接続部42)の各点間の距離を長くできる。その結果、操作ボタン71が押されたときの操作反力の低減を図ることができる。
【0087】
(3-3)発電ブロックの動作
(3-3-1)上方の発電ブロックの動作
上方の発電ブロック1Aは、可動ブロック2が上限位置にあるとき、可動ブロック2の上方のヨーク21Aの当接部213におもり12が接触し、コア31の腕部311が下方のヨーク21Bの第2ヨーク片212と対向している。ここで、コア31の腕部311と第2ヨーク片212との間隔は、0.5mmから0.05mm程度である。したがって、上方のヨーク21A、上方の発電ブロック1Aのおもり12及び振動体10、ボディ30、コア31及び下方のヨーク21を通る磁路が形成される。その結果、永久磁石20の磁気吸引力によって上方の発電ブロック1Aの端部(おもり12)が可動ブロック2に吸着されている(
図11及び
図12参照)。
【0088】
可動ブロック2が上限位置から下向きに移動すると、可動ブロック2に吸着されているおもり12が下向きに移動することにより、発電ブロック1Aの振動体10及び発電体11が下向きに撓む。このとき、おもり12の突片120は、上方のストッパブロック5Aにおけるストッパ片51の窓510内を下向きに移動し、窓510の下側の縁に当たった時点で停止する(
図13及び
図14参照)。すなわち、上方の発電ブロック1Aの振動体10が第1振動体に相当し、上方のストッパブロック5Aにおけるストッパ片51が第1ストッパに相当する。
【0089】
また、上方のヨーク21Aの当接部213が、円柱をその軸と平行な平面で切り取った形状に形成されているので、当接部213のおもり12との接触面積がほぼ一定に保たれている。その結果、可動ブロック2がおもり12を吸着する磁気吸引力を安定させ、おもり12が不用意にヨーク21Aから離れてしまうことを防ぐことができる。
【0090】
発電ブロック1Aの振動体10及び発電体11の下向きの撓みがストッパブロック5Aのストッパ片51によって規制されると、おもり12に吸着している可動ブロック2の下向きの移動も規制される。しかしながら、操作力を受けている操作部材7が引き続いて下向きに移動するので、第1ばね4の第1接続部41、第1ばね片43及び第2ばね片44が、第3ばね片45を周方向にねじりながら時計回りに回転する。そして、第1ばね4の第2ばね片44が、ホルダ22の下側の接触部225に当たることにより、第1ばね4の第1接続部41、第1ばね片43及び第2ばね片44の時計回りの回転が停止する(
図15及び
図16参照)。
【0091】
操作部材7が更に下向きに移動すると、第1接続部41も下向きに移動する。このとき、第1ばね4は、接触部225に当たっている第2ばね片44の部位から第1接続部41に近い側の第2ばね片44の一部分が変形する(下向きに撓む)。つまり、第2ばね片44のばねとして有効な長さが短くなることでばね特性が変化する。その結果、第1ばね4から可動ブロック2に加わる下向きの力が増大する(
図17及び
図18参照)。このとき、可動ブロック2は、第1ばね4の第2接続部42と第2ばね片44によって前方と後方から同時に下向きに押される。つまり、可動ブロック2は、第2接続部42のみに押されて下向きに移動する場合に比べて、ホルダ22を支持している2本のポール23に対する傾きが低減される。その結果、ホルダ22が2本のポール23から受ける摩擦力が減少するので、可動ブロック2をスムーズに移動させることができる。
【0092】
そして、可動ブロック2に加わる下向きの力が、おもり12に加わる上向きの力(振動体10及び発電体11の上向きの弾性力)を上回ると、おもり12(発電ブロック1Aの振動体10)が可動ブロック2から切り離される(
図19及び
図20参照)。
【0093】
しかして、おもり12が可動ブロック2から切り離されることにより、振動体10及び発電体11が、磁気発電ブロック3のボディ30に支持されている端部(左端部)を支点として上下方向に振動する。このとき、上方のストッパ片51における窓510の上側の縁に振動体10の端部(右端部)が当たらないように窓510の上下方向の幅が決められている。その結果、発電ブロック1Aは、振動体10及び発電体11の振動の振幅に比例した電圧振幅をもち、かつ、振動の周波数と同じ周波数の交番電圧(交流電圧)を発生(発電)する。ただし、発電ブロック1Aの発電量(電圧振幅)は、振動体10及び発電体11の振動の減衰に伴って減少する。
【0094】
一方、可動ブロック2は、おもり12と切り離されると、第2ばね片44及び第3ばね片45のねじれが元に戻る際の弾性力により、第2接続部42から下向きの力を受ける。その結果、可動ブロック2は、操作部材7が外力(操作力)によって下向きに移動するよりも速く、下向きに移動する(
図21-
図24参照)。そのため、おもり12に対する可動ブロック2の磁気吸引力が急速に低下するので、発電ブロック1Aの振動が可動ブロック2の磁気吸引力によって弱められにくくなる。ゆえに、発電装置A1は、磁気吸引力による発電量低下の抑制を図ることができる。
【0095】
そして、可動ブロック2が下限位置に達すると、操作部材7の下向きの移動が規制される(
図25及び
図26参照)。
【0096】
(3-3-2)下方の発電ブロックの動作
下方の発電ブロック1Bは、可動ブロック2が下限位置に到達する前に、永久磁石20の磁気吸引力によっておもり12が引っ張られて上向きに撓められる(
図23及び
図24参照)。そして、可動ブロック2が下限位置にあるとき、下方の発電ブロック1Bのおもり12は、可動ブロック2の下方のヨーク21Bの当接部213に接触し、永久磁石20の磁気吸引力によって可動ブロック2に吸着される(
図25及び
図26参照)。
【0097】
可動ブロック2が下限位置から上向きに移動すると、可動ブロック2に吸着されているおもり12が上向きに移動することにより、発電ブロック1Bの振動体10及び発電体11が上向きに撓む。このとき、おもり12の突片120は、下方のストッパブロック5Bにおけるストッパ片51の窓510内を上向きに移動し、窓510の上側の縁に当たった時点で停止する。すなわち、下方の発電ブロック1Bの振動体10が第2振動体に相当し、下方のストッパブロック5Bにおけるストッパ片51が第2ストッパに相当する。
【0098】
また、下方のヨーク21Bの当接部213も、円柱をその軸と平行な平面で切り取った形状に形成されているので、当接部213のおもり12との接触面積がほぼ一定に保たれている。その結果、可動ブロック2がおもり12を吸着する磁気吸引力を安定させ、おもり12が不用意にヨーク21Bから離れてしまうことを防ぐことができる。
【0099】
発電ブロック1Bの振動体10及び発電体11の上向きの撓みがストッパブロック5Bのストッパ片51によって規制されると、おもり12に吸着している可動ブロック2の上向きの移動も規制される。しかしながら、復帰力を受けている操作部材7が引き続いて上向きに移動するので、第1ばね4の第1接続部41、第1ばね片43及び第2ばね片44が、第3ばね片45を周方向にねじりながら反時計回りに回転する。そして、第1ばね4の第2ばね片44が、ホルダ22の上側の接触部225に当たることにより、第1ばね4の第1接続部41、第1ばね片43及び第2ばね片44の反時計回りの回転が停止する。
【0100】
操作部材7が更に上向きに移動すると、第1接続部41も上向きに移動する。その結果、第2ばね片44が周方向にねじれ、かつ、第3ばね片45が更にねじれることにより、可動ブロック2に加わる上向きの力が増大する。可動ブロック2に加わる上向きの力が、おもり12に加わる下向きの力(振動体10及び発電体11の下向きの弾性力)を上回ると、おもり12(発電ブロック1Bの振動体10)が可動ブロック2から切り離される。
【0101】
しかして、おもり12が可動ブロック2から切り離されることにより、振動体10及び発電体11が、磁気発電ブロック3のボディ30に支持されている端部(左端部)を支点として上下方向に振動する。このとき、下方のストッパ片51における窓510の下側の縁に振動体10の端部(右端部)が当たらないように窓510の上下方向の幅が決められている。その結果、発電ブロック1Bは、振動体10及び発電体11の振動の振幅に比例した電圧振幅をもち、かつ、振動の周波数と同じ周波数の交番電圧(交流電圧)を発生(発電)する。ただし、発電ブロック1Bの発電量(電圧振幅)は、振動体10及び発電体11の振動の減衰に伴って減少する。
【0102】
一方、可動ブロック2は、おもり12と切り離されると、第2ばね片44及び第3ばね片45のねじれが元に戻る際の弾性力により、第2接続部42から上向きの力を受ける。その結果、可動ブロック2は、操作部材7が外力(復帰力)によって上向きに移動するよりも速く、上向きに移動する。そのため、おもり12に対する可動ブロック2の磁気吸引力が急速に低下するので、発電ブロック1Bの振動が可動ブロック2の磁気吸引力によって弱められにくくなる。ゆえに、発電装置A1は、磁気吸引力による発電量低下の抑制を図ることができる。
【0103】
(3-4)磁気発電ブロックの動作
磁気発電ブロック3は、コイル32(磁気発電体)と鎖交する磁束の時間的な変化に比例した誘導起電力をコイル32に発生(発電)させるように構成されている。コイル32と鎖交する磁束は、可動ブロック2の永久磁石20から発電ブロック1及び磁気発電ブロック3のボディ30を介してコア31を通る磁束に等しい。そして、コイル32に発生する誘導起電力の大きさ(誘導起電圧)は、コア31を通る磁束の時間的な変化の大きさに比例する。また、コイル32に発生する誘導起電力の向きは、コア31を通る磁束の向きに応じて変化する。
【0104】
操作部材7が上限位置及び下限位置に停止しているとき(
図11、
図12、
図25及び
図26参照)、コア31を通る磁束は時間的に変化しない。ゆえに、磁気発電ブロック3のコイル32に誘導起電力が発生しない(磁気発電ブロック3が発電しない)。また、外力(操作力及び復帰力)によって操作部材7が上向き又は下向きに移動し始めても、可動ブロック2が発電ブロック1のおもり12に吸着しているとき、おもり12が吸着している発電ブロック1と反対側のヨーク21とコア31が対向している。具体的には、可動ブロック2が上方の発電ブロック1Aのおもり12と吸着しているときは、コア31と下方のヨーク21Bが対向している。また、可動ブロック2が下方の発電ブロック1Bのおもり12と吸着しているときは、コア31と上方のヨーク21Aが対向している。ゆえに、可動ブロック2が発電ブロック1のおもり12に吸着しているとき、コア31を通る磁束がほとんど変化しないため、磁気発電ブロック3のコイル32に誘導起電力が発生しない。
【0105】
そして、操作部材7の移動に伴って可動ブロック2が発電ブロック1のおもり12と切り離されると、コア31を通る磁束が急激に減少するので、磁束の減少を妨げる向きの誘導起電力がコイル32に発生する。
【0106】
さらに、可動ブロック2は、発電ブロック1から切り離された後、第1ばね4の弾性力によって発電ブロック1から離れる速度が、操作部材7の移動速度よりも速くなる。その結果、コア31を通る磁束の時間的な変化が大きくなり、磁気発電ブロック3の発電量が増加する。
【0107】
発電ブロック1は、可動ブロック2と切り離された直後から発電する。つまり、磁気発電ブロック3が発電する期間と発電ブロック1が発電する期間が重複する期間を長くすることができる。そのため、発電装置A1は、発電ブロック1が発電する期間と磁気発電ブロック3が発電する期間が重複しないか、あるいは重複する期間が短い場合に比べて、外部に供給可能な最大電力を増やすことができる。
【0108】
ここで、ストッパブロック5が軟磁性材料で形成された磁性体であるので、振動体10及びおもり12から漏れる磁束がストッパブロック5に回収され、ストッパブロック5からボディ30を介してコア31を通る磁束が増大する。その結果、発電装置A1は、ストッパブロック5が非磁性体である場合に比べて、磁気発電ブロック3の発電量の増加を図ることができる。
【0109】
(4)実施形態に係る発電装置の応用例
上述した発電装置A1は、例えば、電源回路及び無線通信回路と組み合わされて、電池レス(バッテリレス)の送信機を実現することができる。
【0110】
電源回路は、コイル32を構成する巻線の端末、及び2つの発電ブロック1A、1Bのそれぞれが有する複数の端子110と電気的に接続される。電源回路は、発電装置A1で発電される電力(交流電力)を直流電力に変換するように構成される。例えば、電源回路は、整流回路、平滑コンデンサ及び電圧レギュレータなどを有する。電源回路で変換された直流電力が無線通信回路に供給される。
【0111】
無線通信回路は、電源回路から直流電力が供給されることで無線信号を送信する。無線信号は、例えばBluetooth(登録商標)の規格に準拠した無線信号であり、特に、Bluetooth(登録商標) Low Energyの規格に準拠した無線信号であることが好ましい。
【0112】
電源回路と無線通信回路は、例えば、1枚のプリント配線板に複数の電子部品が実装されることで1つのプリント回路として構成されることが好適である。このプリント配線板(プリント回路)は、例えば、上方のストッパブロック5Aの上に配置されることが好ましい。ただし、プリント配線板が上方のストッパブロック5Aの上に配置される場合、上方のストッパブロック5Aは、電気絶縁性を有する材料、例えば、合成樹脂で形成されることが好ましい。上方のストッパブロック5Aが電気絶縁性を有する材料で形成されることにより、プリント配線板とストッパブロック5Aの絶縁距離を取る必要がなくなる。その結果、プリント配線板におけるアンテナのレイアウトの自由度の向上及び無線通信回路の無線通信性能の向上を図ることができる。
【0113】
この送信機は、電池を搭載せずに、操作ボタン71が操作されたときに操作ボタン71が操作されたことを通知するための無線信号を送信することができる。ただし、操作ボタン71は、必ずしも人の指で操作されなくても構わない。例えば、送信機が床下に設置され、床板が踏まれたときに操作ボタン71が押されても構わない。あるいは、アクチュエータなどの人以外の操作体によって操作ボタン71が操作されても構わない。
【0114】
ただし、発電装置A1は、送信機以外の装置であって、短時間だけ電池レスで動作させることが必要となる装置と組み合わされてもよい。
【0115】
(5)実施形態に係る発電装置の利点
(5-1)発電量に関する利点
上述のように発電装置A1では、可動ブロック2が発電ブロック1の端部(おもり12)と切り離されると、第1ばね4の弾性力によって操作部材7の移動する向きと同じ向きの力を受ける。ゆえに、発電装置A1は、外力によって操作部材7が移動するよりも速く、可動ブロック2を操作部材7と同じ向きに移動させることができる。そのため、発電ブロック1の端部(おもり12)に対する可動ブロック2の磁気吸引力が急速に低下するので、発電ブロック1の振動が可動ブロック2の磁気吸引力によって弱められにくくなる。ゆえに、発電装置A1は、磁気吸引力による発電量低下の抑制を図ることができる。
【0116】
(5-2)操作ボタンの操作感触に関する利点
ところで、人の指で操作ボタン71を操作して操作部材7を上限位置から下限位置まで移動させる場合、人の指に加わる操作反力によって操作ボタン71の操作感触が決まる。
図27は、発電装置A1における操作部材7の位置と操作反力(実線α)の関係を示している。
図27における横軸(x軸)は、上限位置を原点(x=0)としたときの上限位置から下限位置までの操作部材7の移動距離を示している。また、
図27における縦軸(y軸)は、操作反力の大きさを示している。なお、
図27における一点破線βは、第2ばね9による操作反力(弾性力)を示している。
【0117】
操作部材7が上限位置(x=0)から第1位置(x=x1)に移動するまでの第1区間W1では、第2ばね9の弾性力、上方の発電ブロック1Aの弾性力及び第1ばね4の弾性力の和(ベクトル和)が操作反力となる。なお、第1位置は、発電ブロック1Aのおもり12の突片120が、上方のストッパブロック5Aのストッパ片51における窓510の下端に当たるときの位置である。
【0118】
操作部材7が第1位置から第2位置(x=x2)に移動するまでの第2区間W2では、第2ばね9の弾性力、上方の発電ブロック1Aの弾性力及び第1ばね4の弾性力の和(ベクトル和)が操作反力となる。なお、第2位置は、可動ブロック2が発電ブロック1Aを吸着したままで第1ばね4の第2ばね片44が可動ブロック2の下側の接触部225に当たるときの位置である。第2区間W2においては、第1ばね4の第3ばね片45のねじれにより、第1区間W1よりも操作反力の増加率が大きくなっている。
【0119】
操作部材7が第2位置から第3位置(x=x3)に移動するまでの第3区間W3では、第2ばね9の弾性力、上方の発電ブロック1Aの弾性力及び第1ばね4の弾性力の和(ベクトル和)が操作反力となる。なお、第3位置は、可動ブロック2が発電ブロック1Aと切り離されるときの位置である。第3区間W3では、第2ばね片44から接触部225にはたらく下向きの力(第2ばね片44の弾性力)が加わる。そのため、第3区間W3における操作反力の増加率は、第2区間W2における操作反力の増加率よりも大きくなっている。
【0120】
操作部材7が第3位置から第4位置(x=x4)に移動するまでの第4区間W4では、第2ばね9の弾性力のみが操作反力となる。なお、第4位置は、第1ばね4の第2ばね片44のねじれがなくなるときの位置である。第4区間W4においては、上方の発電ブロック1Aの弾性力が操作反力に含まれず、かつ、第1ばね4の弾性力が下向きにはたらくので、操作反力が急激に低下する。この第3区間W3から第4区間W4に切り替わるときの操作反力の急激な減少により、操作ボタン71を操作する人にクリック感を感じさせることができる。さらに、第3区間W3と第4区間W4がそれぞれ短くなることにより、上方の発電ブロック1Aによる発電が開始するタイミング(操作部材7が第3位置に到達するタイミング)のばらつきの抑制を図ることができる。
【0121】
操作部材7が第4位置から第5位置(x=x5)に移動するまでの第5区間W5では、第2ばね9の弾性力から、永久磁石20の磁気吸引力で撓められた下方の発電ブロック1Bの下向きの弾性力を差し引いた上向きの力が操作反力となる。なお、第5位置は、可動ブロック2の下方のヨーク21Bの当接部213に、下方の発電ブロック1Bのおもり12が接触する位置である。第5区間W5においては、下方の発電ブロック1Bの弾性力が下向きにはたらくので、操作反力が第2ばね9の弾性力よりも低下した後、下方の発電ブロック1Bのおもり12が可動ブロック2の当接部213に吸着された時点で操作反力が第2ばね9の弾性力と等しくなる。
【0122】
操作部材7が第5位置から下限位置(x=x6)に移動するまでの第6区間W6では、第2ばね9の弾性力のみが操作反力となる。
【0123】
ここで、操作部材7の上限位置及び下限位置において、可動ブロック2がコア31と接触し、永久磁石20の磁気吸引力によって可動ブロック2がコア31と吸着している場合を想定する。この場合、操作反力は、永久磁石20の磁気吸引力に逆らって可動ブロック2がコア31から切り離されるときと、可動ブロック2が発電ブロック1Aから切り離されるときの2つのピークを持つことになる。操作反力が2つのピークを持った場合、操作ボタン71を操作する人が最初のピーク(可動ブロック2がコア31から切り離されるときのピーク)を本来の操作反力のピーク(可動ブロック2が発電ブロック1Aから切り離されるときのピーク)と誤認識する可能性がある。
【0124】
これに対して、発電装置A1は、操作部材7が上限位置と下限位置の間を移動する際、可動ブロック2とコア31が接触しないので、操作反力のピークが1つ(第3位置x=x3)だけとなり、操作ボタン71を操作する人が誤認識する可能性がほとんどなくなる。
【0125】
ゆえに、発電装置A1は、操作部材7を人が操作する際の操作感触の向上を図ることができる。
【0126】
(6)変形例
次に、実施形態に係る発電装置A1の変形例を説明する。なお、変形例の発電装置A1の基本構成は、上述した実施形態に係る発電装置A1の基本構成と共通である。したがって、変形例の発電装置A1において、実施形態に係る発電装置A1と共通の構成については、図示並びに説明を省略する。
【0127】
変形例の発電装置A1は、ストッパブロック5が磁性体で構成され、発電ブロック1の振動体10の振動片100及び固定片101が非磁性体で形成され、振動体10の端部(おもり12)のみが磁性体で形成されていることを特徴とする。
【0128】
変形例の発電装置A1において、永久磁石20から出た磁束は、一方のヨーク21からおもり12、ストッパブロック5、ボディ30、コア31、他方のヨーク21を介して永久磁石20に戻る磁路を通る。つまり、振動体10の端部(おもり12)を除く部分が非磁性材料(例えば、合成樹脂)で形成されていても、永久磁石20の磁気吸引力によって振動体10の端部(おもり12)を可動ブロック2に吸着することができる。ゆえに、変形例の発電装置A1は、実施形態に係る発電装置A1と同様に操作部材7の操作に応じて発電することができる。
【0129】
しかして、変形例の発電装置A1は、発電ブロック1の振動体10の少なくとも一部(振動片100及び固定片101)を非磁性体とすることにより、振動体10を磁性体とする場合に比べて、振動体10の材料、形状などの選択の自由度を高めることができる。
【0130】
(7)まとめ
本開示の第1の態様に係る発電装置(A1)は、第1振動体(A11;上方の振動体10)と、第1発電体(A12;上方の発電体11)と、可動部(A13;可動ブロック2)と、第1ストッパ(A16;上方のストッパ片51)と、移動体(A14;操作部材7)と、第1ばね(A15;4)とを備える。第1振動体は、端部(A17)が上下方向に振動可能である。第1発電体は、第1振動体に設けられる。第1発電体は、第1振動体の振動エネルギを電気エネルギに変換する。可動部は、第1振動体の端部と接触し、磁気吸引力によって第1振動体の端部を下方向に移動させる。第1ストッパは、第1振動体の端部の下方向への移動を規制する。移動体は、下方向に移動する。第1ばね(A15;4)は、移動体と可動部とをつなぎ、移動体とともに可動部を下方向に移動させる。移動体が下方向に移動することで、第1振動体の端部が第1ストッパに接触する。可動部は、第1振動体の端部が第1ストッパに接触している状態から更に下方向へと移動する。これにより、可動部が第1振動体の端部から離れる。可動部が第1振動体の端部から離れたときに、可動部は第1ばね(A15;4)によって下方向へ移動する。
【0131】
第1の態様に係る発電装置(A1)は、従来例と比べて、第1振動体の振動が可動部の磁気吸引力によって弱められにくくなるので、磁気吸引力による発電量低下の抑制を図ることができる。
【0132】
本開示の第2の態様に係る発電装置(A1)は、第1の態様との組合せにより実現され得る。第2の態様に係る発電装置(A1)において、第1ばね(4)は、上面視で第1振動体を囲むように配置されることが好ましい。
【0133】
第2の態様に係る発電装置(A1)は、全長の長い第1ばね(4)を用いながら小型化を図ることができる。
【0134】
本開示の第3の態様に係る発電装置(A1)は、第2の態様との組合せにより実現され得る。第3の態様に係る発電装置(A1)において、第1ばね(4)は、移動体(操作部材7)とつながる第1接続部(41)と、可動部(可動ブロック2)とつながる第2接続部(42)とを有することが好ましい。第1ばね(4)の第1接続部(41)と第1ばね(4)の第2接続部(42)との間の部位が可動部と接触した後、第1ばね(4)が部位(接触部225と接触する部位)を支点として変形することで可動部と第1振動体(上方の発電ブロック1Aの振動体10)の端部が離れることが好ましい。
【0135】
第3の態様に係る発電装置(A1)は、可動部の移動の途中で第1ばね(4)の弾性特性を変化させる(硬くする)。その結果、第3の態様に係る発電装置(A1)は、例えば、移動体が人の操作によって下向きに移動する場合において、移動体を操作する人の操作感触により、第1振動体の端部が可動部と離れたことを認知しやすくできる。
【0136】
本開示の第4の態様に係る発電装置(A1)は、第3の態様との組合せにより実現され得る。第4の態様に係る発電装置(A1)において、第1ばね(4)の可動部と接触する位置(第2ばね片44が接触部225と接触する位置)を接触位置とする。第1ばね(4)の接触位置から第1ばね(4)の第1接続部(41)までの長さが、第1ばね(4)の接触位置から第1ばね(4)の第2接続部(42)までの長さよりも短いことが好ましい。
【0137】
第4の態様に係る発電装置(A1)は、第1ばね(4)が接触位置で可動部と接触した後に第1ばね(4)から可動部にはたらく下向きの力を増大させることができる。その結果、第4の態様に係る発電装置(A1)は、可動部と第1振動体が離れるタイミングのばらつきを抑制することができる。
【0138】
本開示の第5の態様に係る発電装置(A1)は、第1-第4のいずれか1つの態様との組合せにより実現され得る。第5の態様に係る発電装置(A1)は、下方向に移動する移動体によって変形し、移動体を上方向に付勢する第2ばね(9)を更に備えることが好ましい。
【0139】
第5の態様に係る発電装置(A1)は、第2ばね(9)に付勢されることで移動体を自動的に上向きに移動させることができる。
【0140】
本開示の第6の態様に係る発電装置(A1)は、第1-第5のいずれか1つの態様との組合せにより実現され得る。第6の態様に係る発電装置(A1)は、ボディ(30)と、コア(31)と、コイル(32)とを更に備えることが好ましい。ボディ(30)は、磁性体で形成され、第1振動体(上方の振動体10)を支えることが好ましい。コア(31)は、磁性体で形成され、第1振動体よりも下方に位置し、ボディ(30)から突出することが好ましい。コイル(32)は、コア(31)に巻回されることが好ましい。第1振動体は、少なくとも一部(おもり12)が磁性体であることが好ましい。可動部は、第1部位(上方のヨーク21A)と、第2部位(下方のヨーク21B)とを含むことが好ましい。第1部位は、第1振動体の端部が第1ストッパ(上方のストッパ片51)に接触しているときに、第1振動体の下面と接触可能に構成されていることが好ましい。第2部位は、第1振動体の端部が第1ストッパに接触しているときに、コア(31)の先端面と向かい合うように構成されていることが好ましい。可動部(可動ブロック2)は、永久磁石(20)を有することが好ましい。永久磁石(20)は、第1部位が第1極(例えば、N極)となり、第2部位が第1極と極性の異なる第2極(例えば、S極)となるように配置されていることが好ましい。
【0141】
第6の態様に係る発電装置(A1)は、第1振動体の端部と可動部が離れた後に第1発電体に発電させるとともに、コア(31)を通ってコイル(32)に鎖交する磁束が変化し、コイル(32)に誘導起電力を発生(発電)させることができる。
【0142】
本開示の第7の態様に係る発電装置(A1)は、第6の態様との組合せにより実現され得る。第7の態様に係る発電装置(A1)において、第1振動体の端部は磁性体であることが好ましい。第1ストッパは、磁性体で形成されてボディ(30)に支持されていることが好ましい。
【0143】
第7の態様に係る発電装置(A1)は、永久磁石(20)から出た磁束が第1ストッパとボディ(30)からコア(31)を通って永久磁石(20)に戻る磁路を形成している。その結果、第7の態様に係る発電装置(A1)は、コア(31)を通る磁束を増やすことでコイル(32)に生じる誘導起電力の増大を図ることができる。
【0144】
本開示の第8の態様に係る発電装置(A1)は、第1-第7のいずれか1つの態様との組合せにより実現され得る。第8の態様に係る発電装置(A1)は、第2振動体(下方の振動体10)と、第2発電体(下方の発電体11)と、第2ストッパ(下方のストッパ片51)とを更に備えることが好ましい。第2振動体は、第1振動体の下方に設けられ、端部が上下方向に振動可能である。第2発電体は、第2振動体に設けられ、第2振動体の振動エネルギを電気エネルギに変換することが好ましい。第2ストッパは、第2振動体の端部の上方向への移動を規制することが好ましい。下方向に移動した可動部は、第1振動体の端部から離れた後、第2振動体の端部と接触することが好ましい。下方向に移動した移動体は、上方向に移動可能に構成されていることが好ましい。第1ばね(4)は、移動体が上方向に移動するとき、移動体とともに可動部を上方向に移動させることが好ましい。第2振動体と接触している可動部は、可動部の磁気吸引力によって第2振動体の端部を上方向に移動させることが好ましい。第2振動体の端部は、可動部とともに上方向に移動して第2ストッパに接触することが好ましい。可動部は、第2振動体の端部が第2ストッパに接触している状態から更に上方向へと移動することで、可動部が第2振動体の端部から離れることが好ましい。可動部が第2振動体の端部から離れたときに、可動部は第1ばね(4)によって上方向へ移動することが好ましい。
【0145】
第8の態様に係る発電装置(A1)は、第1発電体と第2発電体の2つの発電体を備えることにより、発電量の増大を図ることができる。
【0146】
本開示の第9の態様に係る発電装置(A1)は、振動体(第1振動体A11)と、発電体(第1発電体A12)と、可動部(A13)と、移動体(A14)と、ばね(第1ばねA15)とを備える。振動体は、端部(A17)が上下方向に振動可能である。発電体は、振動体に設けられ振動体の振動エネルギを電気エネルギに変換する。可動部(A13)は、振動体の端部(A17)と接触し、磁気吸引力によって振動体の端部を下方向に移動させる。移動体(A14)は、下方向に移動する。ばねは、移動体(A14)と可動部(A13)とをつなぎ、移動体(A14)とともに可動部(A13)を下方向に移動させる。可動部(A13)は、振動体の端部(A17)と接触している状態で下方向に移動した後、振動体の端部(A17)から離れる。ばねは、移動体(A14)が下方向に移動するときに下向きの力を可動部(A13)に加える。可動部(A13)が振動体の端部から離れたときに、可動部(A13)はばねによって下方向へ移動する。
【0147】
第9の態様に係る発電装置(A1)は、従来例と比べて、第1振動体の振動が可動部の磁気吸引力によって弱められにくくなるので、磁気吸引力による発電量低下の抑制を図ることができる。
【符号の説明】
【0148】
A1 発電装置
A11 第1振動体
A12 第1発電体
A13 可動部
A14 移動体
A15 第1ばね
A16 第1ストッパ
A17 端部