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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】分離装置及び分離システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 45/12 20060101AFI20240920BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20240920BHJP
   B04B 5/12 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B01D45/12
A61L9/16 Z
B04B5/12
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021554154
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2020034557
(87)【国際公開番号】W WO2021079648
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2019192108
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴居 将大
(72)【発明者】
【氏名】早崎 嘉城
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 將有
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第02648361(FR,A1)
【文献】国際公開第2016/163075(WO,A1)
【文献】実開平07-031118(JP,U)
【文献】特開昭60-084172(JP,A)
【文献】特開2017-192925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 45/12
B04B 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体の流入口と気体の流出口と固体の排出口とを有するケーシングと、
前記ケーシングの内側に配置されており、前記ケーシングの軸方向に沿った回転中心軸を中心として回転可能な回転体と、
前記ケーシングと前記回転体との間に配置されており、前記回転体と一緒に回転する複数の羽根と、を備え、
前記回転体は、前記流入口側の第1端と前記流出口側の第2端とを有し、
前記複数の羽根の各々は、前記流入口側の第1端と前記流出口側の第2端とを有し、
前記ケーシングは、前記軸方向において、前記複数の羽根の各々の前記第2端よりも前記排出口側に空間を有し、
前記ケーシングの前記軸方向において前記回転体の前記第1端及び前記第2端が前記ケーシングから離れており、
前記ケーシングの前記軸方向における前記複数の羽根の各々の長さをL4とし、前記ケーシングの前記軸方向における前記空間の長さをL25とするとき、
L25/(L4+L25)が0.2以上0.8以下である、
分離装置。
【請求項2】
前記排出口は、前記ケーシングの外周縁に沿って形成されている、
請求項1に記載の分離装置。
【請求項3】
前記排出口は、前記ケーシングの外周面に形成されている、
請求項2に記載の分離装置。
【請求項4】
前記ケーシングは、前記空間内において前記排出口と前記流出口との間を仕切る仕切壁を更に有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項5】
前記排出口は、前記回転中心軸に直交する方向において前記複数の羽根と重複しない位置にある、
請求項1~4のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項6】
前記ケーシングの内側において前記流入口と前記回転体との間に位置しており、前記流入口内に流入する気体の流れを整流する整流構造を更に備える、
請求項1~5のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項7】
前記流入口は、前記軸方向に交差する方向に貫通している、
請求項1~6のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項8】
前記回転体の前記回転中心軸に沿って配置されている回転軸を更に備え、
前記回転軸の少なくとも一部が、前記空間内に配置されている、
請求項1~7のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項9】
前記ケーシングは、出口ダクト部を含み、
前記流入口及び前記流出口は、前記ケーシングの側方に開放されており、
前記ケーシングの前記軸方向において、前記排出口は、前記流入口と前記流出口との間にあり、
前記出口ダクト部は、固体が分離された気体を前記ケーシングの外側に送るためのダクトであり、
前記出口ダクト部は、前記ケーシングの前記軸方向から見て、前記ケーシングの外周面から前記外周面の一接線方向に沿った方向に延びている、
請求項1又は2に記載の分離装置。
【請求項10】
前記ケーシングは、ケーシング本体と、第1エンド部と、第2エンド部と、出口ダクト部と、を含み、
前記ケーシングでは、前記ケーシングの軸方向において、前記第1エンド部、前記ケーシング本体及び前記第2エンド部が、前記第1エンド部、前記ケーシング本体及び前記第2エンド部の順に並んでおり、
前記ケーシングでは、
前記第1エンド部が前記流入口を有し、
前記出口ダクト部が前記流出口を有し、
前記ケーシング本体が前記排出口を有し、
前記第2エンド部の内側空間は、前記ケーシング本体の内側空間につながっており、
前記第2エンド部は、円板状の底部と円筒状の周壁とを有する有底円筒状であり、
前記第2エンド部の前記周壁には、気体を流出させる開口が形成されており、
前記出口ダクト部は、前記第2エンド部の外周面において開口の周縁につながっており、
前記第1エンド部は、前記流入口を有する有底円筒状の小径部と、前記小径部及び前記ケーシング本体とつながっている拡径部と、を有し、
前記小径部の外径及び内径は、それぞれ、前記ケーシング本体の外径及び内径よりも小さく、
前記流入口は、前記小径部に形成されており、
前記拡径部は、前記ケーシングの前記軸方向において前記小径部から離れて前記ケーシング本体に近づくにつれて外径及び内径が漸増するテーパ円筒状である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の分離装置。
【請求項11】
前記ケーシングは、ケーシング本体と、第1エンド部と、第2エンド部と、出口ダクト部と、を含み、
前記ケーシングでは、前記ケーシングの軸方向において、前記第1エンド部、前記ケーシング本体及び前記第2エンド部が、前記第1エンド部、前記ケーシング本体及び前記第2エンド部の順に並んでおり、
前記ケーシングでは、
前記第1エンド部が前記流入口を有し、
前記出口ダクト部が前記流出口を有し、
前記ケーシング本体が前記排出口を有し、
前記第2エンド部の内側空間は、前記ケーシング本体の内側空間につながっており、
前記第2エンド部は、円板状の底部と円筒状の周壁とを有する有底円筒状であり、
前記第2エンド部の前記周壁には、気体を流出させる開口が形成されており、
前記出口ダクト部は、前記第2エンド部の外周面において開口の周縁につながっており、
前記第1エンド部は、前記流入口を有する有底円筒状の小径部と、前記小径部及び前記ケーシング本体とつながっている拡径部と、を有し、
前記小径部の外径及び内径は、それぞれ、前記ケーシング本体の外径及び内径よりも小さく、
前記流入口は、前記小径部に形成されており、
前記拡径部は、前記ケーシングの前記軸方向において前記小径部から離れて前記ケーシング本体に近づくにつれて外径及び内径が漸増するテーパ円筒状であり、
前記整流構造は、円錐台状であり、前記小径部と前記ケーシング本体との間で前記拡径部の内側に、前記整流構造の中心軸が前記ケーシングの中心軸と揃うように配置されている、
請求項6に記載の分離装置。
【請求項12】
前記排出口を複数有し、
前記複数の排出口は、前記ケーシングの外周縁に沿った周方向に並んでいる、
請求項1~11のいずれか一項に記載の分離装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の分離装置と、
前記回転体を回転駆動する駆動装置と、を備える、
分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離装置及び分離システムに関し、より詳細には、気体に含まれている固体を気体から分離する分離装置、及びそれを備える分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外筒体と、回転体と、羽根と、を備える分離装置が記載されている。
【0003】
外筒体は、第1端に気体の流入口を有し、第2端に気体の流出口を有する。回転体は、外筒体の内側において、回転体の回転中心軸が外筒体の中心軸と揃うように配置されている。複数の羽根は、回転体と外筒体との間で回転体の外周方向において離れて配置されている。複数の羽根は、回転体に連結されている。外筒体は、第1端と第2端との間において外筒体の内外を繋ぐ排出孔を有している。
【0004】
特許文献1に記載された分離装置では、分離対象の固体の粒径によっては気体から固体を分離する分離性能が低下してしまうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-140383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、気体に含まれる固体を気体から分離する分離性能の向上を図ることが可能な分離装置及び分離システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る分離装置は、ケーシングと、回転体と、複数の羽根と、を備える。前記ケーシングは、気体の流入口と気体の流出口と固体の排出口とを有する。前記回転体は、前記ケーシングの内側に配置されており、前記ケーシングの軸方向に沿った回転中心軸を中心として回転可能である。前記複数の羽根は、前記ケーシングと前記回転体との間に配置されており、前記回転体と一緒に回転する。前記回転体は、前記流入口側の第1端と前記流出口側の第2端とを有する。前記複数の羽根の各々は、前記流入口側の第1端と前記流出口側の第2端とを有する。前記ケーシングは、前記軸方向において、前記複数の羽根の各々の前記第2端よりも前記排出口側に空間を有する。前記ケーシングの前記軸方向において前記回転体の前記第1端及び前記第2端が前記ケーシングから離れている。前記ケーシングの前記軸方向における前記複数の羽根の各々の長さをL4とし、前記ケーシングの前記軸方向における前記空間の長さをL25とするとき、L25/(L4+L25)が0.2以上0.8以下である。
【0008】
本開示の一態様に係る分離システムは、前記分離装置と、駆動装置と、を備える。前記駆動装置は、前記回転体を回転駆動する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る分離装置の斜視図である。
図2図2は、同上の分離装置の横断面図である。
図3図3は、同上の分離装置の縦断面図である。
図4図4は、同上の分離装置を備える分離システムの概略構成図である。
図5図5は、実施形態の変形例1に係る分離装置の斜視図である。
図6図6は、比較例に係る分離装置の斜視図である。
図7図7は、実施形態に係る分離装置、実施形態の変形例1に係る分離装置及び比較例に係る分離装置それぞれの分離特性を示すグラフである。
図8図8Aは、実施形態に係る分離装置での粒径2μmの粒子の軌跡のシミュレーション結果を示す図である。図8Bは、同上の分離装置での粒径5.48μmの粒子の軌跡のシミュレーション結果を示す図である。図8Cは、同上の分離装置での粒径8.94μmの粒子の軌跡のシミュレーション結果を示す図である。
図9図9Aは、実施形態の変形例に係る分離装置での粒径2μmの粒子の軌跡のシミュレーション結果を示す図である。図9Bは、同上の分離装置での粒径5.48μmの粒子の軌跡のシミュレーション結果を示す図である。図9Cは、同上の分離装置での粒径8.94μmの粒子の軌跡のシミュレーション結果を示す図である。
図10図10Aは、比較例に係る分離装置での粒径2μmの粒子の軌跡のシミュレーション結果を示す図である。図10Bは、同上の分離装置での粒径5.48μmの粒子の軌跡のシミュレーション結果を示す図である。図10Cは、同上の分離装置での粒径8.94μmの粒子の軌跡のシミュレーション結果を示す図である。
図11図11は、実施形態の変形例2に係る分離装置の要部構成図である。
図12図12は、実施形態の変形例3に係る分離装置の要部構成図である。
図13図13は、実施形態の変形例4に係る分離装置の要部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
下記の実施形態等において説明する図1~3、5、6、8A~13は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0011】
(実施形態)
以下、実施形態に係る分離装置1及びそれを備える分離システム10について、図1~4に基づいて説明する。
【0012】
(1)概要
分離装置1は、例えば、送風機能を有する空調設備の上流側に設けられ、空気(気体)中の固体を分離する。分離装置1は、例えば、平らな屋根を有する施設(住居等)の屋上、又は地面に設置される。空調設備は、例えば、上流側から下流側へ空気を送風する送風装置である。送風装置は、例えば、電動ファンである。空調設備は、送風装置に限らず、例えば、換気装置、エアコンディショナ、給気キャビネットファン、送風装置と熱交換器とを備える空気調和システムでもよい。空調設備により分離装置1に流す空気の流量は、例えば、50m3/h~500m3/hである。分離装置1から空調設備側への空気の流出量は、空調設備を流れる空気の流量と略同じである。
【0013】
図1~3に示すように、分離装置1は、ケーシング2と、回転体3と、羽根4と、を備える。また、分離システム10は、図4に示すように、分離装置1と、駆動装置6と、を備える。
【0014】
ケーシング2は、気体の流入口21と気体の流出口22と固体の排出口23とを有する。回転体3は、ケーシング2の内側に配置されている。回転体3は、ケーシング2の軸方向に沿った回転中心軸30(図2及び3参照)を中心として回転可能である。羽根4は、ケーシング2と回転体3との間に配置されている。羽根4は、回転体3と一緒に回転する。羽根4は、流入口21側の第1端41と流出口22側の第2端42とを有する。ケーシング2は、ケーシング2の軸方向において、羽根4の第2端42よりも排出口23側に空間25を有する。
【0015】
排出口23は、例えば空気に含まれている固体をケーシング2の外側に排出するための孔である。排出口23は、ケーシング2の内側空間とケーシング2の外側空間とをつないでいる。言い換えれば、排出口23は、ケーシング2の内外を連通させる。分離装置1は、回転体3の回転時に、ケーシング2内にケーシング2内を旋回する気流を発生させる。分離装置1では、ケーシング2と回転体3との間に、流入口21から流出口22に向かう流路の一部が形成されている。
【0016】
分離装置1は、上流側からケーシング2に流入した空気を、回転体3のまわりで螺旋状に回転させながら、下流側に流すことができる。ここにおける「上流側」は、空気の流れる方向でみたときの上流側(一次側)を意味する。また、「下流側」は、空気の流れる方向でみたときの下流側(二次側)を意味する。分離装置1は、例えば、流出口22が流入口21よりも上方に位置する状態で使用される。この場合、分離装置1では、ケーシング2の流入口21から流路に流入した空気を、回転体3のまわりで螺旋状に回転させながら上昇させ、流出口22に流すことができる。
【0017】
分離装置1のケーシング2は、空気に含まれている固体をケーシング2の外側に排出するために、上述の排出口23を有している。これにより、ケーシング2の流入口21からケーシング2内に流入した空気に含まれている固体の少なくとも一部は、流路を通過する途中で、排出口23からケーシング2の外部に排出される。
【0018】
また、分離システム10は、上述のように、分離装置1に加えて、駆動装置6を備える。駆動装置6は、回転体3を回転駆動する。つまり、駆動装置6は、回転中心軸30を中心として回転体3を回転させる。駆動装置6は、例えば、モータを含む。
【0019】
空気中の固体としては、例えば、微粒子、塵埃等が挙げられる。微粒子としては、例えば、粒子状物質等を挙げることができる。粒子状物質としては、微粒子として直接空気中に放出される一次生成粒子、気体として空気中に放出されたものが空気中で微粒子として生成される二次生成粒子等がある。一次生成粒子としては、例えば、土壌粒子(黄砂等)、粉塵、植物性粒子(花粉等)、動物性粒子(カビの胞子等)、煤等が挙げられる。粒子状物質は、大きさの分類として、例えば、PM1.0、PM2.5(微小粒子状物質)、PM10、SPM(浮遊粒子状物質)等を挙げることができる。PM1.0は、粒子径1.0μmで50%の捕集効率を持つ分粒装置を透過する微粒子である。PM2.5は、粒子径2.5μmで50%の捕集効率を持つ分粒装置を透過する微粒子である。PM10は、粒子径10μmで50%の捕集効率を持つ分粒装置を透過する微粒子である。SPMは、粒子径10μmで100%の捕集効率を持つ分粒装置を透過する微粒子であり、PM6.5-7.0に相当し、PM10よりも少し小さな微粒子である。
【0020】
(2)詳細
上述のように、分離装置1は、ケーシング2と、回転体3と、羽根4と、を備える。また、分離システム10は、分離装置1と、駆動装置6と、を備える。
【0021】
ケーシング2の材料は、例えば、金属であるが、これに限らず、樹脂(例えば、ABS樹脂)であってもよい。また、ケーシング2は、金属により形成されている金属部と、樹脂により形成されている樹脂部と、を含んでいてもよい。
【0022】
ケーシング2は、ケーシング本体200と、第1エンド部201と、第2エンド部202と、出口ダクト部203と、を有する。ここにおいて、ケーシング2では、ケーシング2の軸方向において、第1エンド部201、ケーシング本体200及び第2エンド部202が、この順に並んでいる。ケーシング2では、第1エンド部201が流入口21を有し、出口ダクト部203が流出口22を有し、ケーシング本体200が排出口23を有している。流入口21、流出口22及び排出口23は、ケーシング2の側方に開放されている。ケーシング2の軸方向において、排出口23は、流入口21と流出口22との間にある。ケーシング2の軸方向において、排出口23と流出口22との距離は、排出口23と流入口21との距離よりも短い。
【0023】
ケーシング本体200は、底部2001と円筒部2002とを有する有底円筒状であり、回転体3を囲んでいる。底部2001は、ケーシング2の軸方向において貫通した円形状の開口2003を有する。ケーシング2の軸方向は、ケーシング本体200の中心軸に沿った方向(ケーシング本体200の軸方向)である。ケーシング2では、ケーシング本体200の中心軸が、ケーシング2の中心軸20(図3参照)になる。ケーシング2の軸方向において、ケーシング本体200の長さは、回転体3の長さよりも長い。ケーシング本体200の内径及び外径は、ケーシング本体200の軸方向の全長にわたって、それぞれ一定である。排出口23は、ケーシング2の外周縁に沿って形成されている。ここにおいて、排出口23は、ケーシング2の外周面28(ここでは、ケーシング本体200の外周面)に形成されている。排出口23は、ケーシング本体200の円筒部2002において底部2001の近くに形成されている。
【0024】
ケーシング本体200は、複数(図示例では、4つ)の排出口23を有する。ケーシング2の軸方向から見て、複数の排出口23の各々は、例えば、略4分の1円弧状であり、ケーシング本体200の外周縁に沿った周方向に並んでいる。4つの排出口23の各々の開口範囲は、ケーシング本体200の中心軸を中心として、90度より若干小さい。分離装置1では、ケーシング2の内周面27(ここでは、ケーシング本体200の内周面)付近を通っている固体を、各排出口23から排出することが可能となる。ケーシング2では、排出口23を1つとして、この1つの排出口23が、ケーシング本体200の周方向の全周にわたって形成された環状であってもよい。この場合、ケーシング本体200は、例えば、ケーシング2の軸方向において排出口23を介して対向する2つの部材に分割されている。
【0025】
第1エンド部201は、ケーシング2の軸方向においてケーシング本体200の上流側に設けられている。第1エンド部201は、ケーシング本体200とつながっている。第1エンド部201の内側空間は、ケーシング本体200の内側空間につながっている。第1エンド部201は、流入口21を有する有底円筒状の小径部211と、拡径部212と、を有する。小径部211の外径及び内径は、それぞれ、ケーシング本体200の外径及び内径よりも小さい。流入口21は、小径部211において小径部211の底部2111の近くに形成されている。拡径部212は、ケーシング2の軸方向において小径部211から離れてケーシング本体200に近づくにつれて外径及び内径が漸増するテーパ円筒状である。拡径部212は、小径部211側の第1端と、ケーシング本体200側の第2端と、を有する。拡径部212の第1端は、小径部211とつながっている。拡径部212の第2端は、ケーシング本体200とつながっている。拡径部212の外径及び内径は、それぞれ、ケーシング2の軸方向における小径部211側の端で小径部211の外径及び内径と同じである。拡径部212の外径及び内径は、それぞれ、ケーシング2の軸方向におけるケーシング本体200側の端でケーシング本体200の外径及び内径と同じである。つまり、拡径部212では、ケーシング2の軸方向において流入口21から離れるにつれて開口面積が漸増している。
【0026】
第2エンド部202は、ケーシング2の軸方向においてケーシング本体200の下流側に設けられており、ケーシング本体200の底部2001の開口2003を覆っている。第2エンド部202は、ケーシング本体200とつながっている。第2エンド部202の内側空間は、ケーシング本体200の内側空間につながっている。第2エンド部202は、円板状の底部221と円筒状の周壁222とを有する有底円筒状である。第2エンド部202の周壁222には、気体を流出させる開口223が形成されている。開口223は、ケーシング2の軸方向に直交する方向に貫通している。周壁222の内径φ2(図3参照)及び外径は、ケーシング本体200の軸方向の全長にわたって、それぞれ一定である。周壁222の内径φ2は、例えば、ケーシング本体200の底部2001の開口2003の直径と同じである。
【0027】
出口ダクト部203は、第2エンド部202につながっている。出口ダクト部203の内側空間は、第2エンド部202の内側空間につながっている。
【0028】
出口ダクト部203は、例えば、第2エンド部202の外周面227において開口223の周縁につながっている。出口ダクト部203は、固体が分離された気体をケーシング2の外部へ供給するためのダクトである。出口ダクト部203は、ケーシング2の軸方向から見て、第2エンド部202の外周面227から外周面227の一接線方向に沿った方向に延びている。ここにおいて、一接線方向は、回転体3の回転方向R1(図2参照)に沿った方向である。流出口22は、出口ダクト部203において第2エンド部202の開口223側とは反対側に形成されている。出口ダクト部203は、角筒状である。流出口22の開口形状は、例えば、正方形状である。
【0029】
回転体3は、ケーシング2の内側でケーシング2と同軸的に配置されている。「ケーシング2と同軸的に配置されている」とは、回転体3が、回転体3の回転中心軸30(図3参照)をケーシング2の中心軸20(図3参照)に揃えるように配置されていることを意味する。回転体3は、例えば、円柱状である。回転体3の材料は、例えば、ポリカーボネート樹脂である。
【0030】
回転体3の回転中心軸30に沿った方向において、回転体3の長さは、ケーシング2の軸方向におけるケーシング本体200の長さよりも短い。
【0031】
回転体3は、流入口21側の第1端31と、流出口22側の第2端32と、を有する。回転体3は、ケーシング2の軸方向において、第1エンド部201の近くに配置されている。より詳細には、ケーシング2の軸方向において、回転体3と第1エンド部201との距離は、回転体3と第2エンド部202との距離よりも短い。
【0032】
分離装置1では、ケーシング2と回転体3との間には、複数(ここでは、24枚)の羽根4が配置されている。つまり、分離装置1は、複数の羽根4を備えている。複数の羽根4は、回転体3につながっており、ケーシング2からは離れている。複数の羽根4は、回転体3と一緒に回転する。
【0033】
複数の羽根4は、ケーシング2の軸方向に沿った方向において回転体3の全長に亘って回転体3に設けられている。つまり、複数の羽根4は、回転体3の第1端31から第2端32に亘って設けられている。複数の羽根4の材料は、例えば、ポリカーボネート樹脂である。分離装置1では、回転体3の材料と複数の羽根4の材料とが同じであるが、これに限らず、異なってもよい。複数の羽根4は、回転体3と一体に形成されていてもよいし、回転体3と別部材として形成され回転体3に固定されることで回転体3に連結されていてもよい。
【0034】
複数の羽根4の各々は、ケーシング2の軸方向から見て各羽根4とケーシング2との間に隙間が形成されるように配置されている。言い換えれば、分離装置1では、複数の羽根4の各々とケーシング2の内周面27との間に隙間がある。回転体3の径方向において、複数の羽根4の各々の突出先端と回転体3の外周面37との間の距離は、回転体3の外周面37とケーシング2の内周面27との距離よりも短い。
【0035】
複数の羽根4の各々は、回転体3の外周面37とケーシング2の内周面27との間の空間(流路)において回転体3の回転中心軸30と平行に配置されている。複数の羽根4の各々は、平板状である。複数の羽根4の各々は、その厚さ方向から見て回転体3の回転中心軸30に沿った方向に長い長方形状である。複数の羽根4の各々は、ケーシング2の軸方向に沿った方向において第2エンド部202側から見て、回転体3の一径方向に対して所定角度(例えば、45度)だけ傾いている。ここにおいて、複数の羽根4の各々では、回転体3からの突出方向におけるケーシング2側の先端が、回転体3側の基端よりも、回転体3の回転方向R1(図2参照)において後方に位置している。つまり、分離装置1では、複数の羽根4の各々が、回転体3の一径方向に対して回転体3の回転方向R1に所定角度(例えば、45度)だけ傾いている。所定角度は、45度に限らず、0度よりも大きく90度以下の角度であってもよい。例えば、所定角度は、10度以上80度以下の範囲内の角度であってもよい。複数の羽根4の各々は、回転体3の一径方向に対して回転体3の回転方向R1に所定角度だけ傾いている場合に限らず、例えば、回転体3の一径方向とのなす角度が0度であってもよい。つまり、複数の羽根4が回転体3から放射状に延びていてもよい。複数の羽根4は、図2に示すように回転体3の周方向において等角度間隔で離れて配置されている。ここでいう「等角度間隔」とは、厳密に同じ角度間隔である場合だけに限らず、例えば、規定の角度間隔に対して所定の誤差範囲(例えば、規定の角度間隔の±10%)内の角度間隔であってもよい。
【0036】
ケーシング2の軸方向において、複数の羽根4の各々の長さは、回転体3の長さと同じである。ここにおいて、複数の各々の羽根4の長さは、回転体3の長さと同じである場合に限らず、回転体3よりも長くてもよいし、短くてもよい。
【0037】
ケーシング2の軸方向において、複数の羽根4の各々の長さは、ケーシング本体200の長さよりも短い。回転体3の回転中心軸30に沿った方向において、複数の羽根4の各々の長さは、ケーシング2の第1エンド部201と排出口23との間の距離よりも短い。
【0038】
複数の羽根4の各々は、ケーシング2の軸方向において、流入口21側(ここでは、第1エンド部201側)の端である第1端41と、流出口22側(ここでは、第2エンド部202側)の端である第2端42と、を有する。複数の羽根4の各々における第1端41は、ケーシング2の軸方向における第1エンド部201側の端(上流端)である。複数の羽根4の各々における第2端42は、ケーシング2の軸方向における第2エンド部202側の端(下流端)である。
【0039】
ケーシング2は、その軸方向において、各羽根4の第2端42よりも排出口23側に空間25を有する。分離装置1では、排出口23は、回転体3の回転中心軸30に直交する方向において空間25と重なる位置にある。つまり、排出口23は、ケーシング2の軸方向に直交する方向において空間25と重なる位置にある。また、分離装置1では、排出口23は、回転体3の回転中心軸30に直交する方向において各羽根4と重複しない位置にある。つまり、排出口23は、ケーシング2の軸方向に直交する方向において各羽根4と重複しない位置にある。言い換えれば、ケーシング2を側方から見たときの排出口23の投影領域には、各羽根4がない。
【0040】
分離装置1では、ケーシング2の軸方向における羽根4の長さL4(図3参照)と空間25の長さL25(図3参照)との合計(L4+L25)に対する空間25の長さL25(図3参照)の比率(L25/(L4+L25))は、例えば、0.4である。
【0041】
分離装置1では、ケーシング2は、空間25内において排出口23と流出口22との間を仕切る仕切壁26(図3参照)を更に有する。ケーシング2の軸方向において、仕切壁26の長さL26は、排出口23の長さL23と同じであるが、これに限らず、排出口23の長さL23と異なっていてもよい。仕切壁26は、例えば、円環状である。仕切壁26の内径φ3は、第2エンド部202の周壁222の内径φ2と同じであるが、これに限らず、第2エンド部202の周壁222の内径φ2と異なってもよい。
【0042】
図4に示すように、分離システム10は、分離装置1と、分離装置1の回転体3を回転駆動する駆動装置6と、を備える。駆動装置6は、例えば、回転体3を回転駆動させるモータを含む。駆動装置6は、モータの回転軸を回転体3に直接又は間接的に連結してあってもよいし、モータの回転軸の回転をプーリ及び回転ベルトを介して回転体3に伝達するようにしてあってもよい。モータは、ケーシング2の内側に配置されていてもよいし、ケーシング2の外側に配置されていてもよい。駆動装置6によって回転駆動される回転体3の回転数は、例えば、1500rpm~3000rpmである。
【0043】
分離システム10は、駆動装置6を制御する制御装置7を更に備える。制御装置7は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、制御装置7としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0044】
(3)分離装置及び分離システムの動作
実施形態に係る分離装置1では、回転体3の回転方向R1(図2参照)は、例えば、ケーシング2の軸方向において第2エンド部202側から回転体3を見たときに、時計回り方向である。分離システム10は、駆動装置6によって回転体3を回転駆動する。
【0045】
分離装置1では、羽根4を有する回転体3が回転することで、ケーシング2の内側空間(流路)に流入した空気に対して回転中心軸30のまわりの回転方向の力を与えることが可能となる。分離装置1では、回転体3が回転することにより、回転体3と一緒に複数の羽根4が回転し、ケーシング2の内側空間を流れる空気の速度ベクトルが、回転中心軸30に平行な方向の速度成分と、回転中心軸30のまわりの回転方向の速度成分と、を有することになる。要するに、分離装置1では、回転体3及び各羽根4が回転することにより、ケーシング2内に旋回する気流を発生させることができる。旋回する気流は、3次元の螺旋状に回転する気流である。
【0046】
分離装置1では、ケーシング2に流入した空気に含まれていた固体は、ケーシング2の内側空間において螺旋状に回転するときに回転体3の回転中心軸30からケーシング2の内周面27に向かう方向の遠心力を受ける。遠心力を受けた固体は、ケーシング2の内周面27へ向かい、ケーシング2の内周面27付近を内周面27に沿って螺旋状に回転する。そして、分離装置1では、空気中の固体の一部が、ケーシング2の内側空間を通過する途中で排出口23から排出される。固体に作用する遠心力は、固体の質量に比例する。したがって、相対的に質量が大きな固体は、相対的に質量が小さな固体よりも先に、ケーシング2の内周面27付近に到達しやすい。
【0047】
分離装置1では、ケーシング2の内側空間において旋回している気流(旋回流)が発生するので、ケーシング2の流入口21からケーシング2内に流入した空気中の固体(例えば、砂塵)の一部が、排出口23を通して排出され、固体が分離(除去)された空気(清浄化された空気)の一部が、ケーシング2の流出口22から流出する。
【0048】
分離装置1は、ケーシング2において空間25を有しているので、例えば、回転体3の外周面37とケーシング2の内周面27との間において回転体3の回転方向R1で隣り合う2つの羽根4の間の空間に渦流が発生した場合でも各羽根4よりも下流側の空間25において螺旋状の気流に整流されやすい。粒径が大きい粒子は遠心力を受けると気流から逸脱しやすくケーシング2の内周面27に近づいて排出口23から排出されやすい。これに対して、粒径が小さい粒子は気流に乗ってしまう傾向が強いが、分離装置1では、各羽根4よりも下流側の空間25において気流をケーシング2の内周面に沿って旋回する螺旋状の気流に整流しやすくなり、粒径の小さな粒子が排出口23から排出されやすくなる。
【0049】
分離装置1の分離特性に関しては、回転体3の回転速度が速くなるにつれて分離効率が高くなる傾向にある。また、分離装置1の分離特性に関しては、分粒径が大きくなるにつれて分離効率が高くなる傾向にある。分離装置1では、例えば、規定粒径以上の微粒子を分離するように回転体3の回転速度が設定されているのが好ましい。規定粒径の微粒子としては、例えば、空気動力学的粒子径が、2μmの粒子を想定している。「空気動力学的粒子径」とは、空気動力学的挙動が、比重1.0の球形粒子と等価になるような粒子の直径を意味する。空気動力学的粒子径は、粒子の沈降速度から求められる粒径である。分離装置1で分離されずに空気中に残る固体は、例えば、分離装置1で分離することを想定している微粒子よりも粒径の小さな微粒子(言い換えれば、分離装置1で分離することを想定している微粒子の質量よりも小さな質量の微粒子)を含む。
【0050】
(4)分離装置の分離性能
以下では、実施形態に係る分離装置1の分離性能を説明する前に、実施形態の変形例1に係る分離装置1Aについて図5に基づいて説明し、比較例に係る分離装置1Rについて図6に基づいて説明する。変形例1に係る分離装置1A及び比較例に係る分離装置1Rの各々に関し、実施形態に係る分離装置1と同様の構成要素については、同一の符合を付して説明を適宜省略する。
【0051】
変形例1に係る分離装置1Aでは、ケーシング2の軸方向における羽根4の長さL4と空間25の長さL25との合計(L4+L25)に対する空間25の長さL25の比率(L25/(L4+L25))は、0.7である。
【0052】
また、変形例1に係る分離装置1Aでは、ケーシング2における第2エンド部202の周壁222の内径が、実施形態に係る分離装置1のケーシング2における第2エンド部202の周壁222の内径φ2よりも小さい。
【0053】
比較例に係る分離装置1Rは、空間25を有していない点で、実施形態に係る分離装置1と相違する。比較例に係る分離装置1Rでは、ケーシング2の軸方向における羽根4の長さが、実施形態に係る分離装置1の羽根4の長さL4よりも長い。また、比較例に係る分離装置1Rでは、複数の排出口23がケーシング2の軸方向において並んでいる。
【0054】
図7は、実施形態に係る分離装置1、変形例1に係る分離装置1A及び比較例に係る分離装置1Rそれぞれの分離特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【0055】
図7の横軸は、粒子径である。図7の縦軸は、分離効率である。図7では、ひし形でプロットされたデータが、実施形態に係る分離装置1の分離特性である。また、図7では、丸でプロットされたデータが、変形例1に係る分離装置1Aの分離特性である。また、図7では、四角でプロットされたデータが、比較例に係る分離装置1Rの分離特性である。
【0056】
図7から、実施形態に係る分離装置1は、1μm~7μmの粒子径を有する微粒子に関して、比較例に係る分離装置1Rよりも分離効率を向上できることが分かる。また、変形例1に係る分離装置1Aは、2.6μm~5μmの粒子径を有する微粒子に関して、比較例に係る分離装置1Rよりも分離効率を向上できることが分かる。
【0057】
また、図7から、実施形態に係る分離装置1は、1μm~5μmの粒子径を有する微粒子に関して、変形例1に係る分離装置1Aよりも分離効率を向上できることが分かる。
【0058】
各分離装置1、1A及び1Rそれぞれにおけるケーシング2内での気流については、例えば、流体解析ソフトウェアを用いたシミュレーションの結果により推測することが可能である。流体解析ソフトウェアとしては、例えば、ANSYS(R) Fluent(R)を採用することができる。シミュレーションの結果、本願発明者らは、比較例に係る分離装置1Rでは、回転体3と回転体3の周方向において隣り合う2つの羽根4とケーシング2とで囲まれた空間において渦流等の乱流が発生しやすいという知見を得た。これに対して、本願発明者らが提案した実施形態に係る分離装置1及び変形例1に係る分離装置1Aのように羽根4の下流側に空間25を有する構造では、乱流の発生を抑制できることが確認された。
【0059】
また、本願発明者らは、各分離装置1、1A及び1Rのそれぞれについて、上述の流体解析ソフトウェアを用いたシミュレーション結果に対して、粒子軌跡解析ソフトウェアを用いたシミュレーションを行った。粒子軌跡解析手法としては、例えば、DPM(Discrete Phase Model)を採用することができる。図8A~8Cは、実施形態に係る分離装置1のケーシング2内での粒子の軌跡の例を太線で示している。図9A~9Cは、変形例1に係る分離装置1Aのケーシング2内での粒子の軌跡の例を太線で示している。図10A~10Cは、比較例に係る分離装置1Rのケーシング2内での粒子の軌跡の例を太線で示している。図8A、9A及び10Aは、粒径2μmの粒子の軌跡である。図8B、9B及び10Bは、粒径5.48μmの粒子の軌跡である。図8C、9C及び10Cは、粒径8.94μmの粒子の軌跡である。例えば、図8A及び9Aと、図10Aとの比較から、粒径2μmの粒子について見れば、実施形態に係る分離装置1及び変形例1に係る分離装置1Aは、比較例に係る分離装置1Rと比べて、ケーシング2の内周面27に沿って旋回しやすく、排出口23から排出されやすいことが分かる。また、図8B及び9Bと、図10Bとの比較から、粒径5.48μmの粒子について見れば、実施形態に係る分離装置1及び変形例1に係る分離装置1Aは、比較例に係る分離装置1Rと比べて、ケーシング2の内周面27に沿って旋回しやすく、排出口23から排出されやすいことが分かる。図8C及び9Cと、図10Cとの比較から、粒径8.94μmの粒子について見れば、実施形態に係る分離装置1、変形例1に係る分離装置1A及び比較例に係る分離装置1Rのいずれでも、ケーシング2の内周面27に沿って旋回しやすく、排出口23から排出されやすいことが分かる。
【0060】
ケーシング2の軸方向における羽根4の長さL4と空間25の長さL25との合計に対する空間25の長さL25の比率(L25/(L4+L25))は、例えば、分離効率を高める観点及び圧力損失を抑制する観点から0.2以上であるのが好ましい。
【0061】
また、上記比率(L25/(L4+L25))は、例えば、より粒径の小さな微粒子を分離する観点から0.8以下であるのが好ましい。
【0062】
分離装置1の構造パラメータとしては、図3に示すように、第1エンド部201の小径部211の内径φ1、羽根4の長さL4、ケーシング本体200の内周面と開口2003との距離B0、及び第2エンド部202の周壁222の内径φ2及び流出口22の面積等がある。ケーシング本体200の内周面と開口2003との距離B0は、ケーシング本体200の内径と第2エンド部202の周壁222の内径φ2との差分の2分の1の距離である。分離装置1の構造パラメータに関して、羽根4の長さL4、第1エンド部201の小径部211の内径φ1、ケーシング本体200の内周面と開口2003との距離B0及び第2エンド部202の周壁222の内径φ2のうちいずれか1つを変化させた場合の分離装置1の分離効率についてシミュレーションした結果を下記表1~4に示す。なお、流出口22から流出する気体の流量は、100m/hとした。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
表1からは、羽根4の長さL4を70mmから150mmに長くしたほうが、分離効率が高くなっていることが分かる。これにより、分離装置1の分離効率を高める観点では、羽根L4の長さを長くしたほうが好ましいと推考される。ただし、分離装置1では、羽根L4の長さを長くしすぎると、隣り合う羽根4の間で渦流が発生しやすくなる傾向がある。また、分離装置1では、羽根L4の長さを長くすると、圧力損失が小さくなる傾向にある。
【0068】
また、表2からは、分離装置1では、小径部211の開口面積を55mm~65mmの範囲で変えても分離効率がほとんど変わらないことが分かる。
【0069】
また、表3からは、分離装置1では、ケーシング本体200の内周面と開口2003との距離B0を50mmから80mmに長くしたほうが、分離効率が高くなっていることが分かる。これにより、分離装置1の分離効率を高める観点では、距離B0を長くしたほうが好ましいと推考される。ただし、距離B0については、第2エンド部202の周壁222の内径φ2が大きくなるほど小さくなる。
【0070】
また、表4からは、分離装置1では、第2エンド部202の周壁222の内径φ2を120mm~300mmの範囲において大きくしたほうが、分離効率が高くなっていることが分かる。これにより、分離装置1の分離効率を高める観点では、内径φ2を大きくしたほうが好ましいと推考される。また、表4からは、分離装置1では、第2エンド部202の周壁222の内径φ2を120mm~300mmの範囲において大きくしたほうが、圧力損失が小さくなっていることが分かる。これにより、分離装置1での圧力損失を小さくする観点では、内径φ2を大きくしたほうが好ましいと推考される。
【0071】
分離装置1では、構造パラメータに関し、複数のパラメータを個別に最適化しているのではなく複数のパラメータの相関を考慮して最適化を行っている。ここにおいて、分離装置1では、例えば、羽根4の長さを変えると、分離効率が変わるが、圧力損失も変わる。分離装置1では、構造パラメータの最適化を行うにあたり、分離効率が高くなるように羽根4の長さL4を調整する際に、圧力損失が所望の圧力損失に収まるように羽根4の長さ及び第2エンド部202の周壁222の内径φ2を調整している。また、分離装置1では、羽根4の長さL4、第2エンド部202の周壁222の内径φ2、及び小径部211の開口面積の面積を適宜調整することで圧力損失を小さくしつつ分離効率の向上を図っている。
【0072】
(5)利点
実施形態に係る分離装置1は、ケーシング2と、回転体3と、羽根4と、を備える。ケーシング2は、気体の流入口21と気体の流出口22と固体の排出口23とを有する。回転体3は、ケーシング2の内側に配置されており、ケーシング2の軸方向に沿った回転中心軸30を中心として回転可能である。羽根4は、ケーシング2と回転体3との間に配置されており、回転体3と一緒に回転する。羽根4は、流入口21側の第1端41と流出口22側の第2端42とを有する。ケーシング2は、軸方向において、羽根4の第2端42よりも排出口23側に空間25を有する。
【0073】
以上の構成により、実施形態に係る分離装置1は、分離性能の向上を図ることが可能となる。
【0074】
(6)分離装置の適用例
分離装置1は、例えば、住宅等に設置する空気浄化システムにおいて、空調設備の上流側に配置されたHEPAフィルタ(high efficiency particulate air filter)等のエアフィルタよりも上流側に配置して使用する。「HEPAフィルタ」とは、定格流量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能をもつエアフィルタである。エアフィルタは、100%の粒子捕集効率を必須の条件とはしない。空気浄化システムは、分離装置1を備えることにより、空気中に含まれる砂塵等の微粒子がエアフィルタへ到達するのを抑制することが可能となる。よって、空気浄化システムでは、分離装置1よりも下流側にあるエアフィルタ等の長寿命化を図ることが可能となる。例えば、空気浄化システムでは、エアフィルタに捕集される微粒子等の総質量が増加することによる圧力損失の上昇を抑制することが可能となる。これにより、空気浄化システムでは、エアフィルタの交換頻度を少なくすることが可能となる。空気浄化システムは、エアフィルタと空調設備とが互いに異なる筐体に収納された構成に限らず、空調設備の筐体内にエアフィルタを備えていてもよい。言い換えれば、空調設備が、送風装置に加えてエアフィルタを備えていてもよい。
【0075】
(7)実施形態のその他の変形例
実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0076】
例えば、実施形態の変形例2では、図11に示すように、整流構造8を更に備えていてもよい。整流構造8は、ケーシング2の内側において流入口21と回転体3との間に位置しており、ケーシング2に流入する気体の流れを整流する。整流構造8は、例えば、円錐台状であり、小径部211とケーシング本体200との間で拡径部212の内側に配置されている。整流構造8は、その中心軸がケーシング2の中心軸20(図3参照)と揃うように配置されている。これにより、分離装置1では、流入口21からケーシング2内に流入した気体を回転体3の径方向において回転体3の外周面37から遠くケーシング2の内周面27に近いところへ導入しやすくなる。図11では、拡径部212内の気体の流れを矢印F1で模式的に示してある。整流構造8は、例えば、ケーシング2に1又は複数の梁を介して支持されていてもよいし、回転体3に連結されていてもよい。
【0077】
また、実施形態の変形例3では、図12に示すように、回転体3の回転中心軸30に沿って配置されている回転軸9を更に備えていてもよい。ここにおいて、回転軸9の少なくとも一部は、空間25内に配置されている。回転軸9は、回転体3と連結されていてもよいし、連結されていなくてもよい。また、回転軸9は、回転体3と一緒に回転してもよいし、回転体3とは別に回転してもよい。
【0078】
また、実施形態の変形例4では、分離装置1は、図13に示すように、回転体3に連結されている複数の羽根4の各々からなる複数の第1羽根とは別に、変形例3で説明した回転軸9に連結されている複数の第2羽根11を備えていてもよい。複数の第2羽根11は、ケーシング2の軸方向において回転体3から離れるほど回転軸9からの突出寸法が小さくなっている。複数の第2羽根11の各々は、ケーシング2の軸方向に沿った方向において第2エンド部202側から見て、回転体3の一径方向に対して傾いていてもよいし、傾いていなくてもよい。また、複数の第2羽根11の各々は、回転軸9からの突出寸法が回転体3からの第1羽根の突出寸法よりも小さく、その厚さ方向から見て回転軸9の軸方向に長い長方形状であってもよい。
【0079】
また、排出口23は、ケーシング2の外周縁に沿って形成されている場合、ケーシング2の外周面28に形成されている場合に限らず、ケーシング本体200の底部2001に形成されていてもよい。排出口23は、回転体3の回転中心軸30に直交する方向において羽根4と重複しない位置にある場合に限らず、回転中心軸30に直交する方向において羽根4と少なくとも一部が重複する位置にあってもよい。また、分離装置1のケーシング2は、回転中心軸30に直交する方向において羽根4と重複しない位置にある排出口23と、回転中心軸30に直交する方向において羽根4と重複する位置にある排出口と、を有していてもよい。
【0080】
また、ケーシング2の有する排出口23の数は、複数に限らず、1つであってもよい。排出口23の数が1つの場合、排出口23は、ケーシング2の軸方向から見て円弧状であってもよいし、例えば、ケーシング2の周方向(ケーシング2の外周に沿った方向)の全周にわたって形成された円環状であってもよい。
【0081】
また、複数の排出口23の形状は、互いに同じである場合のみに限らず、異なっていてもよい。
【0082】
また、複数の羽根4の各々は、回転体3からの突出方向におけるケーシング2側の先端が、回転体3側の基端よりも、回転体3の回転方向R1において前方に位置していてもよい。
【0083】
また、複数の羽根4の各々は、1つ以上の円弧状等の曲線状の部分を含む形状でもよい。
【0084】
また、複数の羽根4の各々は、回転体3の回転中心軸30のまわりで螺旋状に形成されていてもよい。ここにおいて「螺旋状」とは、回転数が1以上の螺旋形状に限らず、回転数が1の螺旋形状の一部の形状も含む。
【0085】
また、回転体3は、複数の回転部材を含んでいてもよい。この場合、回転体3では、例えば、ケーシング2の中心軸20に沿った方向において並んでいる回転部材同士が結合されている。
【0086】
また、分離装置1におけるケーシング2は、流出口22を複数有していてもよい。この場合、ケーシング2は、出口ダクト部203を複数有していてもよい。複数の出口ダクト部203は、ケーシング2の周方向に並んでいてもよいし、ケーシング2の軸方向において互いに異なる位置にあってもよい。また、分離装置1は、出口ダクト部203を備えていない構成であってもよい。
【0087】
また、ケーシング2の流入口21からケーシング2に流入する気体は、空気に限らず、例えば、排気ガス等であってもよい。
【0088】
また、仕切壁26は、円環状に限らず、ケーシング2の軸方向から見て円弧状であってもよい。この場合、仕切壁26の数は、1つでもよいし、複数であってもよい。
【0089】
(態様)
本明細書には、以下の態様が開示されている。
【0090】
第1の態様に係る分離システム(1;1A)は、ケーシング(2)と、回転体(3)と、羽根(4)と、を備える。ケーシング(2)は、気体の流入口(21)と気体の流出口(22)と固体の排出口(23)とを有する。回転体(3)は、ケーシング(2)の内側に配置されており、ケーシング(2)の軸方向に沿った回転中心軸(30)を中心として回転可能である。羽根(4)は、ケーシング(2)と回転体(3)との間に配置されており、回転体(3)と一緒に回転する。羽根(4)は、流入口(21)側の第1端(41)と流出口(22)側の第2端(42)とを有する。ケーシング(2)は、軸方向において、羽根(4)の第2端(42)よりも排出口(23)側に空間(25)を有する。
【0091】
第1の態様に係る分離システム(1;1A)は、気体に含まれる固体を気体から分離する分離性能の向上を図ることが可能となる。
【0092】
第2の態様に係る分離装置(1;1A)では、第1の態様において、排出口(23)は、ケーシング(2)の外周縁に沿って形成されている。
【0093】
第2の態様に係る分離装置(1;1A)は、排出口(23)がケーシング(2)の外周縁に沿って形成されていない場合と比べて、分離効率の向上を図ることが可能となる。
【0094】
第3の態様に係る分離装置(1;1A)では、第2の態様において、排出口(23)は、ケーシング(2)の外周面(28)に形成されている。
【0095】
第3の態様に係る分離装置(1;1A)では、遠心力の作用している固体が排出口(23)から排出されやすくなる。
【0096】
第4の態様に係る分離装置(1;1A)では、第1~3の態様のいずれか1つにおいて、ケーシング(2)は、空間(25)内において排出口(23)と流出口(22)との間を仕切る仕切壁(26)を更に有する。
【0097】
第4の態様に係る分離装置(1;1A)では、遠心力の作用している固体が排出口(23)から排出されやすくなり、かつ、流出口(22)から流出されにくくなる。
【0098】
第5の態様に係る分離装置(1;1A)では、第1~4の態様のいずれか1つにおいて、排出口(23)は、回転中心軸(30)に直交する方向において羽根(4)と重複しない位置にある。
【0099】
第5の態様に係る分離装置(1;1A)は、排出口(23)が回転中心軸(30)に直交する方向において羽根(4)と少なくとも一部重複する位置にある場合と比べて、分離効率の向上を図ることが可能となる。
【0100】
第6の態様に係る分離装置(1;1A)は、第1~5の態様のいずれか1つにおいて、整流構造(8)を更に備える。整流構造(8)は、ケーシング(2)の内側において流入口(21)と回転体(3)との間に位置しており、流入口(21)内に流入する気体の流れを整流する。
【0101】
第6の態様に係る分離装置(1;1A)は、ケーシング(2)内に流入する気体の流れを整流することができる。
【0102】
第7の態様に係る分離装置(1;1A)では、第1~6の態様のいずれか1つにおいて、流入口(21)は、ケーシング(2)の軸方向に交差する方向に貫通している。
【0103】
第7の態様に係る分離装置(1;1A)では、流入口(21)から流入する気体の流量が大きくなりすぎるのを抑制可能となる。
【0104】
第8の態様に係る分離装置(1;1A)は、第1~7の態様のいずれか1つにおいて、回転軸(9)を更に備える。回転軸(9)は、回転体(3)の回転中心軸(30)に沿って配置されている。回転軸(9)の少なくとも一部が、空間(25)内に配置されている。
【0105】
第2~8の態様に係る構成については、分離装置(1;1A)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【0106】
第9の態様に係る分離システム(10)は、第1~8の態様のいずれか1つの分離装置(1;1A)と、駆動装置(6)と、を備える。駆動装置(6)は、回転体(3)を回転駆動する。
【0107】
第9の態様に係る分離システム(10)は、気体に含まれる固体を気体から分離する分離性能の向上を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0108】
1、1A 分離装置
10 分離システム
2 ケーシング
21 流入口
22 流出口
23 排出口
25 空間
3 回転体
4 羽根
41 第1端
42 第2端
6 駆動装置
8 整流構造
9 回転軸
30 回転中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13