(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】レーザリペア方法、レーザリペア装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20240920BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20240920BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20240920BHJP
B23K 26/351 20140101ALI20240920BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240920BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20240920BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20240920BHJP
H01L 23/522 20060101ALI20240920BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240920BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G09F9/00 352
B23K26/00 N
B23K26/03
B23K26/351
G02F1/13 101
H01L21/88 Z
H01L29/78 612A
(21)【出願番号】P 2019043524
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2021-12-27
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】水村 通伸
【合議体】
【審判長】中塚 直樹
【審判官】素川 慎司
【審判官】小島 寛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-180907(JP,A)
【文献】特開2011-099875(JP,A)
【文献】特開2006-119575(JP,A)
【文献】特開2013-146760(JP,A)
【文献】特開2009-262161(JP,A)
【文献】特開2010-064120(JP,A)
【文献】特開2010-097433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00 - 9/46
H01L 27/32
H01L 51/50
H05B 33/00 - 33/28
G02F 1/13 - 1/1335
G02F 1/13363 - 1/141
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された多層膜構造の欠陥部にレーザ光を照射して修正加工を行うレーザリペア方法であって、
前記欠陥部を含む領域の画像を取得し、
前記欠陥部を含むように前記画像上に前記レーザ光の走査範囲を設定し、
前記走査範囲内での前記レーザ光の走査時に、前記画像の色情報が欠陥部であると認識される走査位置で、前記レーザ光の出力をオンに又は高く制御することを特徴とするレーザリペア方法。
【請求項2】
前記レーザ光の走査は、前記走査範囲を複数回走査することを特徴とする請求項1記載のレーザリペア方法。
【請求項3】
前記欠陥部を含む領域に白色光を照射し、前記領域からの反射光を分光して分光画像を取得し、
取得した前記分光画像によって、前記欠陥部の色情報を認識することを特徴とする請求項1又は2記載のレーザリペア方法。
【請求項4】
前記分光画像によって、前記欠陥部の下地層の色情報を認識し、
前記走査範囲内での前記レーザ光の走査時に、前記画像の色情報が前記下地層であると認識される走査位置で、前記レーザ光の出力をオフに又は低く制御することを特徴とする請求項3記載のレーザリペア方法。
【請求項5】
基板上に形成された多層膜構造の欠陥部にレーザ光を照射して修正加工を行うレーザリペア装置であって、
前記欠陥部を含む走査範囲にレーザ光を走査する走査部と、
前記欠陥部を含む領域の画像を取得するカメラ部と、
前記カメラ部が取得した画像に基づいて、前記走査部と前記レーザ
光の出力を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記レーザ光の走査時に、前記画像の色情報が欠陥部であると認識される走査位置で、前記レーザ光の出力をオンに又は高く制御することを特徴とするレーザリペア装置。
【請求項6】
前記欠陥部を含む領域に白色光を照射し、前記領域からの反射光を分光した分光画像を取得する分光画像取得部を備え、
前記制御部は、前記分光画像によって、前記欠陥部の色情報を認識することを特徴とする請求項5記載のレーザリペア装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記分光画像によって、前記欠陥部の下地層の色情報を認識し、前記走査範囲内での前記レーザ光の走査時に、前記画像の色情報が前記下地層であると認識される走査位置で、前記レーザ光の出力をオフに又は低く制御することを特徴とすることを特徴とする請求項6記載のレーザリペア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザリペア方法、レーザリペア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザリペア装置は、従来、基板上に形成された多層構造の配線パターンに対して、検査対象箇所を撮影した欠陥画像と、欠陥の無い参照画像とを照合して欠陥を検出し、入力される指示内容に基づいて、検出された欠陥に対してレーザ光が照射される加工位置及び加工範囲を指定し、指定された加工位置及び加工範囲にレーザ光を照射することがなされている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のレーザリペア装置は、検出された欠陥が分かる配線パターンの画像に対して、グラフィック・ユーザ・インターフェースにより画像上に欠陥部を含む長方形の加工範囲を指定し、その加工範囲全域に一定のリペアレシピ(レーザエネルギー、レーザ周波数、レーザショット数など加工パラメータ)で修正加工を行っている。
【0005】
このような従来のレーザリペア装置は、多層構造の加工対象において、加工対象の欠陥部における下地層の材質が部分的に異なる場合であっても、加工範囲内を決められた一定のリペアレシピで加工するため、下地層の材質の違いで除去される部分と除去されない部分のむらが生じてしまい、欠陥部に対して適正な修正を行うことができない場合があった。これに対して、過剰な条件での加工で欠陥部を全て除去しようとすると、欠陥部の下地層が過剰に除去されてしまい、適正な層構造が維持できない問題があった。
【0006】
また、多層構造の加工対象物において、大型基板の製造工程などで、層の膜厚にばらつきがある場合に、前述した従来のレーザリペア装置では、修正場所によって膜厚が異なっているにも拘わらず、決められた一定のリペアレシピで欠陥部の加工が行われるため、この場合にも加工で除去すべき欠陥部が残ってしまったり、過剰な加工で下地層が除去されてしまったりして、適正な修正を行うことができない問題があった。
【0007】
更に、従来のレーザリペア装置では、長方形の加工範囲の中に加工対象の欠陥部以外の層が露出しているため、加工範囲全域を一定のリペアレシピで加工すると欠陥部の層だけでなくその周囲の露出した層を加工してしまう問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題に対処するために提案されたものである。すなわち、下地層の材質や層の膜厚のばらつきに影響されること無く、適正に加工対象の欠陥部を修正加工できるようにすること、加工対象の欠陥部の周囲の露出層が加工されるのを抑止して、加工対象の欠陥部を確実に修正できるようにすること、加工対象の欠陥部が残ってしまったり、加工対象の欠陥部の下地層が過剰に加工されてしまうことを抑止した適正な修正加工を自動で行えるようにすること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
基板上に形成された多層膜構造の欠陥部にレーザ光を照射して修正加工を行うレーザリペア方法であって、前記欠陥部を含む領域の画像を取得し、前記欠陥部を含むように前記画像上に前記レーザ光の走査範囲を設定し、前記走査範囲内での前記レーザ光の走査時に、前記画像の色情報が欠陥部であると認識される走査位置で、前記レーザ光の出力をオンに又は高く制御することを特徴とするレーザリペア方法。
【0010】
基板上に形成された多層膜構造の欠陥部にレーザ光を照射して修正加工を行うレーザリペア装置であって、前記欠陥部を含む走査範囲にレーザ光を走査する走査部と、前記欠陥部を含む領域の画像を取得するカメラ部と、前記カメラ部が取得した画像に基づいて、前
記走査部と前記レーザ光の出力を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記レーザ光の走査時に、前記画像の色情報が欠陥部であると認識される走査位置で、前記レーザ光の出力をオンに又は高く制御することを特徴とするレーザリペア装置。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るレーザリペア装置の全体構成を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るレーザリペア方法の工程を示す説明図である。
【
図3】分光画像取得工程と色画像認識工程を示す説明図である((a)は、欠陥部を含む領域の全波長画像、(b)は、判別された第2層の色画像、(c)は、欠陥部の下地層となる第1層の色画像)。
【
図4】欠陥部画像抽出工程と走査範囲設定工程を示す説明図である((a)は、分光画像取得部が取得した分光画像から判別された第2層の色画像、(b)は、第2層の基準画像、(c)は、抽出された欠陥部のみの画像)。
【
図5】走査加工実行工程を示す説明図である((a)は1回目の走査加工状態、(b)は2回目以降の走査加工状態)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るレーザリペア装置の全体構成の一例を示している。レーザリペア装置1は、基板100上に形成された多層膜構造110の欠陥部に、レーザ光を照射して修正加工を行う装置である。基板100は、平面的に移動可能なステージS上に支持されており、レーザリペア装置1の光軸Pを基板上の任意の位置に合わせることができるようになっている。
【0014】
加工の対象は、例えば、TFT基板であり、TFT基板は、ガラスなどの基板100上にTFT(Thin-Film-Transistor)の多層膜構造110が形成されている。多層膜構造110は、一例として、第1層(例えば、ポリシリコン層(p-Si;polysilicon))111、第2層(例えば、メタル電極層)112、第3層(例えば、絶縁層)113、第4層(例えば、保護層)114などで構成されている。
【0015】
図1において、レーザリペア装置1は、レーザ光Lを出射するレーザ発振器2と、レーザ光Lを設定された走査範囲に走査する走査部3と、欠陥部を含む領域の画像を取得するカメラ部4と、走査部3とレーザ光の出力を制御する制御部5と、欠陥部を含む領域の分光画像を取得する分光画像取得部6と、欠陥部を含む領域に白色光を照射する白色光源7と、カメラ部4及び分光画像取得部6と同軸の光学系8Aを有する顕微鏡8を備えている。
【0016】
制御部5は、カメラ部4と分光画像取得部6が取得する画像に基づいて、走査部3とレーザ光の出力を制御する。カメラ部4が取得した画像又は分光画像取得部6が取得した分光画像のデータが制御部5に送信され、制御部5には、前述した画像又は分光画像をモニタリングすることができるモニタ装置9が接続されている。
【0017】
レーザ発振器2から出射されたレーザ光Lは、例えば、ミラー10にて反射され、走査部3を構成する2つのガルバノミラー3A,3Bにて反射され、ハーフミラー11(11A)を透過し、顕微鏡8の光学系8Aを透過して、修正加工対象となる欠陥部に照射される。
【0018】
走査部3は、ガルバノミラー3A,3Bの駆動範囲によって、レーザ光Lの走査範囲(加工範囲)が設定され、レーザ光の照射点を走査範囲内で移動させる。走査の形態は特に限定されないが、図示のように、2つのガルバノミラー3A,3Bを用いる例では、一つのガルバノミラー3Aの駆動で一次元的な線走査を行い、もう一つのガルバノミラー3Bの駆動で線走査と交差する方向の走査を行うラスター走査を行うことができる。
【0019】
カメラ部4は、修正加工対象の欠陥部を含む領域の画像を取得する。白色光源7から出射される白色光が、ミラー12、ハーフミラー11(11B)、光学系8Aを経由して、カメラ部4が画像を取得する領域に照射され、そこから反射した光が、光学系8A、ハーフミラー11(11A,11B)を経由して、カメラ部4の撮像面に結像される。カメラ部4からは修正加工対象の欠陥部を含む領域のカラー画像が出力され、その画像データが制御部5に送信される。図示の例では、カメラ部4の前段に、被照射領域で反射したレーザ光をカットするフィルタ20が配置されている。これによって、欠陥部にレーザ光を照射しながら、反射したレーザ光をカットして欠陥部の画像を取得することができる。
【0020】
分光画像取得部6は、切り替えミラー13を顕微鏡8の光軸上に挿入することによって、欠陥部を含む領域に白色光を照射し、白色光を照射した領域からの反射光を分光して分光画像を取得する。分光画像取得部6は、分光器6Aと2Dカメラ6Bを備えている。図示の例では、切り替えミラー13を用いて光学系の切り替えを行っているが、分光画像取得部6をユニット化して、顕微鏡8の光学系8Aの後段に挿入するようにしてもよい。
【0021】
白色光源7から出射される白色光は、ミラー12、ハーフミラー11(11B)、光学系8Aを経由して、欠陥部を含む領域に照射され、そこからの反射光が、光学系8Aを経由して、切り替えミラー13にて反射され、分光器6Aにて分光され、2Dカメラ6Bの結像面に結像する。2Dカメラ6Bは、分光器6Bにて分光された光を各波長のラインにて結像する。白色光の被照射領域を一方向に走査しながら、波長毎にライン結像した画像を2Dカメラ6Bの結像面で取得し、同じ波長で異なるタイミングの画像を繋ぎ合わせる処理を行うことで、波長毎の2次元画像(分光画像)が取得される。
【0022】
前述した切り替えミラー13は、顕微鏡8の光軸に対して挿入・退避するように配備されている。切り替えミラー13が、顕微鏡8の光軸から外れている状態では、カメラ部4が画像を取得しており、またこの状態で、レーザ光Lが欠陥部に照射される。切り替えミラー13が顕微鏡12の光軸に挿入されている状態では、前述したように、分光画像取得部6が、欠陥部を含む領域の分光画像を取得する。
【0023】
このようなレーザリペア装置1を用いたレーザリペア方法の工程は、欠陥検査装置による検査結果に基づいて欠陥部を特定した後に行われる。欠陥検査装置による検査工程では、例えば、特定された欠陥部に対して、欠陥部の位置座標、形状、サイズ、色などに加えて、どの工程で生じた欠陥であるかの工程情報などのデータが検査結果として取得される。
【0024】
レーザリペア装置1を用いたレーザリペア方法の工程は、前述した検査工程の後、準備工程として、修正加工を行うことが特定された欠陥部の位置に、レーザーリペア装置1の光軸P(顕微鏡8の光軸)を合わせるように、レーザーリペア装置1又は基板100を支持するステージSを移動させる。そして、カメラ部4にて修正加工対象の欠陥部を含む画像が得られる状態にした後に、
図2に示すように、分光画像取得(S1)、色情報認識(S2)、欠陥部画像抽出(S3)、走査範囲設定(S4)、走査加工実行(S5)の各工程が行われる。
【0025】
分光画像取得工程(S1)では、欠陥部を含む領域に白色光源7から出射される白色光を照射して、その領域を一方向に走査しながら、その領域からの反射光を分光画像取得部6に入射させることで、分光画像を取得し、その画像データを制御部5に送る。この際、白色光の被照射領域を一方向に走査しながら、波長毎にライン結像した画像を2Dカメラ6Bの結像面で取得し、同じ波長で異なるタイミングの画像を繋ぎ合わせる処理を行うことで、分光画像が取得される。
【0026】
そして、波長毎の分光画像を重ね合わせることで、
図3(a)に示すように、欠陥部Wを含む領域の全波長画像が取得される。図示の例では、ガラスの基板100上に、ポリシリコン層である第1層111が形成され、一部が第1層111に重なるようにしてメタル電極層である第2層112が形成されている状態の全波長画像が取得されている。この全波長画像によって、欠陥部Wを有する層(第2層112)とその下地層(第1層111)のパターン形状等を確認することができる。次に、分光画像取得部6によって、各波長の分光画像を取得する。
【0027】
色情報認識工程(S2)では、分光画像取得部6によって取得した分光画像によって、欠陥部W及びその下地層の色情報を認識する。制御部5は、分光画像取得部6から送られてきた分光画像のデータを画像解析して、各層の色画像を判別する。ここでは、検査工程で取得した情報から、メタル電極層である第2層112に欠陥部Wが存在することが分かっているので、制御部5は、送られてきた分光画像から第2層112の色画像を欠陥部Wの色画像として判別する。
図3(b)は、判別された第2層112の色画像を示している。制御部5は、この色画像から第2層112の色情報(例えば、RGB値)を算出し、この値が欠陥部Wの色情報であると認識する。メタル電極層の色画像から算出される色情報は、例えば、RGB値が、R:127,G:127,B:127である。
【0028】
また、制御部5は、取得した分光画像によって、第2層112と同様に、欠陥部Wの下地層である第1層111の色画像を判別する。
図3(c)は、欠陥部Wの下地層となる第1層111の色画像を示している。制御部5は、この色画像から第1層111の色情報(例えば、RGB値)を算出する。ポリシリコン層の色画像から算出される色情報は、例えば、RGB値が、R:255,G:192,B:0である。
【0029】
欠陥部画像抽出工程(S3)は、欠陥部Wを含む層(第2層112)の色画像を欠陥の無い基準画像と比較して、欠陥部Wの画像を抽出する。
図4(a)は、分光画像取得部6が取得した分光画像から判別された第2層112の色画像であり、この層の画像を
図4(b)に示す第2層112の基準画像と比較することで、
図4(c)に示すように、欠陥部Wのみの画像が抽出される。ここでの基準画像は、多層膜構造110の設計値として予め制御部5に入力されている。次の走査範囲設定工程(S4)では、前述した欠陥部画像抽出工程(S3)で抽出された欠陥部Wの画像を用いて、欠陥部Wを含むように画像上にレーザ光の走査範囲Fを設定する。
【0030】
走査加工実行工程(S5)では、設定された走査範囲F内でのレーザ光の走査時に、カメラ部4で取得される画像の色情報が欠陥部であると認識される走査位置で、レーザ光の出力をオンに又は高く制御し、カメラ部4で取得される画像の色情報が下地層であると認識される走査位置で、レーザ光の出力をオフに又は低く制御する。
【0031】
制御部5は、走査部3を駆動して走査範囲F内の走査加工を行う前に、前述した色情報認識工程において、予め取得した分光画像を画像解析して、走査範囲F内の画像の色情報が、欠陥部Wの色に該当するのか、下地層の色に該当するのかを、走査位置毎に認識している。具体的には、RGB値が、R:127,G:127,B:127である領域は、メタル電極層である第2層112の画像であるから、走査範囲F内においては、欠陥部Wであると認識し、RGB値が、R:255,G:192,B:0である範囲は、ポリシリコン層である第1層111の画像であるから、走査範囲F内においては、下地層であると認識している。
【0032】
制御部5は、前述した認識の下で、カメラ部4による画像取得を行いながら、走査開始後のレーザ光の出力を制御する。そして、走査範囲内の画像の色情報が欠陥部Wに該当する走査位置では、レーザ光の出力をオン又は高くし、走査範囲内の画像の色情報が下地層に該当する走査位置では、レーザ光の出力をオフ又は低く制御する。これによって、走査範囲F内でのレーザ光の出力状態は、
図5(a)に示すようには、欠陥部W(第2層112)上に走査位置がある場合のみレーザ光の出力がオン又は高くなり、下地層(第1層111)上に走査位置がある場合にはレーザ光の出力がオフ又は低くなる(図示の太線がレーザ光がオン又は高いところを示している。)。
【0033】
レーザ光の走査は、走査範囲を複数回走査し、2回以降の走査加工の際にも、前述したと同様の制御が行われる。これによると、仮に、
図5(b)に示すように、2回目以降の走査加工で、走査範囲F内の一部で下地層が露出し、部分的に欠陥部Wが残っているような場合にも、走査範囲F内の下地層であると認識される走査位置では、レーザ光の出力はオフ又は低くなり、走査範囲F内の欠陥部Wであると認識される走査位置のみで、レーザ光の出力はオン又は高く制御される。そして、走査前に全ての走査範囲の色情報が下地層に該当すると認識される場合に、走査加工を終了する。
【0034】
このようなレーザリペア装置1及びそれによるレーザリペア方法によると、画像認識によって、自動で欠陥部のみに選択的にレーザ光を照射することができるので、下地層への加工を極力抑えて削り残し無く欠陥部Wを除去することができる。これにより、下地層の材質や層の膜厚のばらつきに影響されること無く、適正に欠陥部Wを修正加工することができ、また、欠陥部Wの周囲の露出層が加工されるのを抑止することができるので、加工後にも多層膜構造を適正に維持することができる。
【0035】
なお、前述した実施形態においては、分光画像取得部6による分光画像によって、欠陥部Wやその下地層の色情報を認識しているが、カメラ部4のカラー画像を画像解析することで欠陥部Wやその下地層の色情報を認識できる場合には、分光画像取得部6による分光画像の取得を省略することができる。
【0036】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1:レーザリペア装置,2:レーザ発振器,
3:走査部,3A,3B:ガルバノミラー
4:カメラ部,5:制御部,
6:分光画像取得部,6A:分光器,6B:2Dカメラ,
7:白色光源,8:顕微鏡,8A:光学系,9:モニタ装置,
10,12:ミラー,11(11A,11B):ハーフミラー,
13:切り替えミラー,20:フィルタ,
100:基板,110:多層膜構造,
111:第1層(ポリシリコン層),112:第2層(メタル電極層),
113:第3層(絶縁層),114:第4層(保護層),
S:ステージ,P:光軸,L:レーザ光,W:欠陥部,F:走査範囲