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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電気自動車
(51)【国際特許分類】
   B62K 5/027 20130101AFI20240920BHJP
   B60L 15/00 20060101ALI20240920BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B62K5/027
B60L15/00 Z
B60L15/20 S
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020088363
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021181293
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-03-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505246789
【氏名又は名称】学校法人自治医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 智
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3183493(JP,U)
【文献】特開平01-095986(JP,A)
【文献】特開2000-053008(JP,A)
【文献】特開2012-106523(JP,A)
【文献】国際公開第2019/194000(WO,A1)
【文献】特開2006-167232(JP,A)
【文献】特開2021-115907(JP,A)
【文献】実開平05-026779(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/00-5/10
B60L 1/00-3/12,7/00-13/00,15/00-58/40
A61G 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が着座する着座部と、
前記着座部の前方に配置され操舵機能を有する一つの前輪と、
前記着座部の後方に配置される二つの後輪と、
前記前輪または後輪のうちの少なくともいずれかの駆動輪を回転させる駆動手段と、
前記駆動手段による前記駆動輪の回転数および/またはトルクを制御する制御部と、
を備え、
前記着座部は、地面より、前記後輪の直径よりも低い位置に設けられ、
前記着座部の傾きにより前記前輪の操舵角の制御を可能とし、
前記一つの前輪を回転及び操舵可能に保持し、後方に線状に延びるメインフレームと、
前記二つの後輪を回転可能に保持し、形状が平面的に展開され、前記メインフレームの後方において該メインフレームと結合するサブフレームと、をさらに備え、
前記着座部は、前記サブフレームに固定され、
前記着座部の傾きにより前記メインフレームを傾けることで、前記前輪の操舵角を制御し、
前記駆動輪は二つの後輪であり、前記制御部は、該二つの後輪の回転数および/またはトルクを独立に制御可能であり、
前記駆動輪はさらに前輪であり、前記制御部は、さらに前記前輪の回転数および/またはトルクを独立に制御可能であり、
前記制御部は、前記前輪の回転数および/またはトルクを、前記運転者の足で操作可能な第二調整装置からの入力信号に基づいて制御することを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
前記メインフレームと前記サブフレームとは互いに固定されたことを特徴とする、請求項1に記載の電気自動車。
【請求項3】
前記前輪の操舵角を中立状態に戻すよう、前記前輪を付勢する前輪付勢手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の電気自動車。
【請求項4】
前記制御部は、前記二つの後輪の回転数および/またはトルクを、前記運転者の左右に
配置され該運転者の手で操作可能な二つの調整装置からの入力信号に基づいて独立に制御することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気自動車。
【請求項5】
前記着座部は、地面より、前記後輪の回転軸の高さと同等以下の高さに設けられたことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の電気自動車。
【請求項6】
前記着座部は、前記前輪と前記後輪の間の距離の1/2より後方に設けられたことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の電気自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転によって推進力を得る電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、環境対策の必要性の拡大から、電気自動車が普及している。そして、内燃機関の不使用による設計自由度の向上により、様々な形態の電気自動車が提案されている。(例えば、引用文献1―3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3161882号公報
【文献】特開2008-068808号公報
【文献】実用新案登録第3095111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気自動車としては、移動用、荷物の運搬用等を目的とした電動自動車が公知であるが、一方で、自動車の運転自体をスポーツ感覚で楽しむ使用者が増加している中、必ずしも、電気自動車の走行状態に運転者の意志や嗜好を充分に反映させ得る構造にはなっていなかった。本発明の目的は、各車輪の制御と、車体の傾斜制御または操舵輪の制御を組合せることで、運転者の意志や嗜好を走行状態により精密に反映させることができる電気自動車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための本発明は、運転者が着座する着座部と、
前記着座部の前方に配置され操舵機能を有する一つの前輪と、
前記着座部の後方に配置される二つの後輪と、
前記前輪または後輪のうちの少なくともいずれかの駆動輪を回転させる駆動手段と、
前記駆動手段による前記駆動輪の回転数および/またはトルクを制御する制御部と、
を備え、
前記着座部は、地面より、前記後輪の直径よりも低い位置に設けられ、
前記着座部の傾きにより前記前輪の操舵角の制御を可能とした、電気自動車である。
【0006】
本発明によれば、着座部が後輪の直径よりも低い位置に設けられているので、電気自動車の走行中の重心を充分に低くすることができる。よって、走行中の姿勢安定性を向上させ、転倒などの事故の発生を抑制することができる。また、運転者の姿勢により、電気自動車の進行方向を制御することがより容易となり、運転者の意志や嗜好を電気自動車の運転状態により精密に反映させることが可能となる。
【0007】
また、本発明においては、前記一つの前輪を回転及び操舵可能に保持し、後方に延びるメインフレームと、
前記二つの後輪を回転可能に保持し、前記メインフレームの後方において該メインフレームと結合するサブフレームと、をさらに備え、
前記着座部の傾きにより前記メインフレームを傾けることで、前記前輪の操舵角を制御してもよい。
【0008】
この場合、前輪の前後方向から見た傾斜角は、メインフレームの傾斜角によって決定さ
れる。そして、運転者が着座部を傾けることにより、メインフレームが傾斜し、それに伴い、前輪が傾斜し、結果として操舵角が制御される。
【0009】
ここにおいて、前記メインフレームと前記サブフレームとは互いに固定されるようにしてもよい。この場合には、着座部を傾けた場合に、メインフレームまたはサブフレーム自体の変形に基づいて、メインフレームを傾斜させることとなる。
【0010】
あるいは、前記メインフレームと前記サブフレームは、弾性部材および/または緩衝部材を介して結合するようにしてもよい。この場合には、着座部を傾けた場合に、メインフレームとサブフレームの結合状態が変化し、この変化に基づいて、メインフレームを傾斜させることとなる。
【0011】
また、本発明においては、前記前輪の操舵角を中立状態に戻すよう、前記前輪を付勢する前輪付勢手段をさらに備えるようにしてもよい。これによれば、運転者による操舵角の意図的な変更や、運転者による着座部の傾斜角の変更が無い場合には、より確実に、前輪を直進に適した状態に戻すことが可能となる。その結果、進行方向の変更が終わった時点で、より確実に直進状態に戻すことが可能となる。また、直進状態における走行時の安定性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明においては、前記駆動輪は二つの後輪であり、前記制御部は、該二つの後輪の回転数および/またはトルクを独立に制御可能であるようにしてもよい。このことによっても、運転者の意志や嗜好を電気自動車の運転状態により精密に反映させることが可能となる。
【0013】
また、本発明においては、前記制御部は、前記二つの後輪の回転数および/またはトルクを、前記運転者の左右に配置され該運転者の手で操作可能な二つの調整装置からの入力信号に基づいて独立に制御するように設けられてもよい。これによれば、運転者の両手の作業により、二つの後輪の回転数やトルクを独立に制御することが可能であり、電気自動車の運転状態を微妙に調整することが可能である。
【0014】
また、本発明においては、前記駆動輪はさらに前輪であり、前記制御部は、さらに前記前輪の回転数および/またはトルクを独立に制御可能としてもよい。すなわち、二つの後輪と一つの前輪を独立に制御可能とすることで、電気自動車の運転状態を微妙に調整することが可能である。なお、本発明において、二つの後輪と一つの前輪を独立に制御可能とする目的は、走行安定性の向上だけではない。運転者の意志や嗜好を、二つの後輪と一つの前輪の回転数やトルクに独立に反映させ、運転自体をスポーツ感覚でより楽しむことを可能とすることも目的の一つである。
【0015】
また、本発明においては、前記制御部は、前記前輪の回転数および/またはトルクを、前記運転者の足で操作可能な第二調整装置からの入力信号に基づいて制御するようにしてもよい。これによれば、運転者の両手及び足を駆使して、二つの後輪と一つの前輪の回転数やトルクを独立に制御することとなり、運転を楽しみ、また、運転者の運動機能をトレーニングすることが可能である。
【0016】
また、本発明においては、前記着座部は、地面より、前記後輪の回転軸の高さと同等以下の高さに設けられるようにしてもよい。これによれば、走行中の電気自動車の安定性をより高くすることができる。
【0017】
また、本発明においては、前記着座部は、前記前輪と前記後輪の間の距離の1/2より後方に設けられるようにしてもよい。これによれば、重心を電気自動車の後方に配置させ
ることが可能となり、電気自動車の走行中に意図的にスピンを掛け易くなるなど、運転状態のバリエーションを増加させることが可能となる。
【0018】
また、本発明は、
運転者が着座する着座部と、
前記着座部の前方に配置され操舵機能を有する一つの前輪と、
前記着座部の後方に配置される二つの後輪と、
前記二つの後輪を含む駆動輪を回転させる駆動手段と、
前記駆動手段による前記駆動輪の回転数および/またはトルクを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記二つの後輪のうち、右側の後輪の回転数および/またはトルクを、前記運転者の右側に配置され該運転者の右手で操作可能な右調整装置からの入力信号に基づいて制御可能であり、
前記二つの後輪のうち、左側の後輪の回転数および/またはトルクを、前記運転者の左側に配置され該運転者の左手で操作可能な左調整装置からの入力信号に基づいて制御可能であることを特徴とする、電気自動車であってもよい。
【0019】
また、その場合には、
前記右調整装置は、前記右側の後輪を制動する右制動装置をさらに有し、
前記左調整装置は、前記左側の後輪を制動する右制動装置をさらに有するようにしてもよい。
【0020】
また、その場合には、
前記駆動輪はさらに前輪を含み、前記制御部は、前記前輪の回転数および/またはトルクを、前記運転者の足で操作可能な第二調整装置からの入力信号に基づいて制御可能であることとしてもよい。
【0021】
なお、上記の課題を解決するための手段は、可能な限り、組み合わせて使用することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、各車輪の回転数および/またはトルクの制御と、車体の傾斜制御または操舵輪の制御を組合せることで、運転者の意志や嗜好を走行状態により精密に反映させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例1における電気自動車の概略構成を示す図である。
図2】実施例1における電気自動車のフレーム構造を示す図である。
図3】実施例2における電気自動車の概略構成を示す図である。
図4】実施例3における電気自動車の概略構成を示す図である。
図5】実施例4における電気自動車の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施例について図を用いて説明する。ただし、以下で説明する実施例は、あくまで本発明の例示に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での改良や変形を行うことが可能であることは言うまでもない。
【0025】
<実施例1>
図1は、本発明の実施例1に係る電気自動車1の概略構成である。図1(a)は側面図
図1(b)は上面図を示す。以下、図1における左側を前方、右側を後方とする。また、紙面奥側を右方、紙面手前側を左方とする。これは図2以降についても同様である。本実施例に係る電気自動車1は、一つの前輪2と、二つの後輪3を備える三輪自動車である。前輪2は、2本のフロントフォーク4aに回転可能に支持されている。2本のフロントフォーク4aは前輪2の外周近傍で結合され、円筒状に形成されたヘッドチューブ4bを貫通して、ハンドルバー5に結合している。ヘッドチューブ4bは、メインフレーム4に固定されている。メインフレーム4は、電気自動車1の前方から後方にかけて延び運転者の体重や走行時の加重に対抗して電気自動車1の各構成を支える。メインフレーム4の後方には、平面視で左右方向に広がるサブフレーム4cが固定されている。
【0026】
このサブフレーム4cは、図1(b)に示すように、平面視が概略長方形の枠に左右方向に補強用チューブが渡された構成を有していてもよいが、その形状、構成は特に限定されない。前方に頂角を有する五角形等の多角形形状の枠を有し、頂角でメインフレーム4に固定されていてもよい。さらに、全部または一部が板構造を有していてもよいし、特に外周に枠を有さない構成であってもよい。このサブフレーム4cの機能は、二つの後輪3を回転可能に支持するとともに、後述するバッテリー9等の部材を保持することである。また、後述する着座部7の一部または全部を保持する機能を有していてもよい。
【0027】
本実施例において、メインフレーム4とサブフレーム4cの固定の方法は、溶接、ねじ止め、リブ止めなど、充分な強度と耐久性を有する種々の方法を選択することが可能である。二つの後輪3の回転中心付近には、インホイールモータ8が備えられている。このインホイールモータ8は、中心軸としてのハブシャフト8aに対して、ローター8bを回転させるモータであって、このハブシャフト8aが後輪3の左右方向内側に配置されたサブフレーム内枠4dと、後輪3の左右方向外側に配置されたサブフレーム外枠4eとに固定され、ローター8bが後輪3の車輪に固定されている。
【0028】
また、本実施例における二つの後輪3は、前後方向から見てハの字型に傾斜して備えられ、高速走行時の安定性が向上されているが、この二つの後輪3は、前後方向から見て垂直方向に互いに平行に設けられていてもよい。また、前輪2と後輪3の前後方向の略中央部には、運転者が着座する着座部7が設けられている。この着座部7は、メインフレーム4または、サブフレーム4cのいずれかまたは、両方に固定されている。なお、図示は省略するが、着座部7には、運転者が走行中に着座部7から脱落することを防止するための保護カバー、保護フレーム、安全ベルトなどが設けられていてもよい(以下の実施例においても同じ)。
【0029】
本実施例では、メインフレーム4の着座部7より前方には、運転者の足を置くバー6が左右に突出するように設けられている。また、ハンドルバー5は、メインフレーム4に前輪付勢手段としてのバネ10により結合されており、左右両側から後側にバネ10により付勢されるように構成されている。これにより、ハンドルバー5は、運転者により意図的に回動しない限り、中立位置(直進位置)を維持するように構成されている。
【0030】
また、着座部7の前側のメインフレーム4には、制御部11が設置されている。この制御部11には、電源SWの他、ハンドルバー5に設けられたスロットル5a、5bの角度情報が入力され、この角度情報に応じた出力指令信号をインホイールモータ8に送信する。このスロットル5a、5bは本実施例において調整装置に相当する。特にスロットル5aは右調整装置に相当し、スロットル5bは左調整装置に相当する。インホイールモータ8では、サブフレーム4cに搭載されたバッテリー9からの電力供給を受けつつ、制御部11からの指令信号に応じた回転数及びトルクで後輪3を回転させる。
【0031】
なお、本実施例では、右側のスロットル5aの角度で、右側の後輪3aにおけるインホ
イールモータ8の回転数及びトルクが制御され、左側のスロットル5aの角度で、左側の後輪3bにおけるインホイールモータ8の回転数及びトルクが制御される。また、ハンドルバー5には、ブレーキバー5c、5dが備えられている。このブレーキバー5c、5dはそれぞれ、右側の後輪3a、左側の後輪3bの制動のためのブレーキである。このブレーキバー5cは右制動装置に、ブレーキバー5dは左制動装置に相当する。このブレーキの機構については公知の技術が使用されるので、ここでの説明は割愛する。このように、本実施例では、運転者は、右手で右側の後輪3aの回転数、トルク及び制動を制御し、左手で左側の後輪3bの回転数、トルク及び制動を制御することができ、両手で運転状態を微妙に調整することが可能である。
【0032】
ここで、本実施例では、着座部7は、地面から前輪2及び後輪3の直径よりも低い高さとなるように配置されている。より具体的には、より径の小さい前輪2の回転中心近傍で、より径の大きい後輪3の回転中心より低い高さとなるように配置されている。これによれば、運転者が乗車した場合の全体の重心を充分に下げることができ、高速運転時の姿勢安定性を確保することが可能となっている。
【0033】
なお、図2には、本実施例における電気自動車1のフレーム回りの部品の配置を特に選択して上面図として示す。本実施例では、電気自動車1のフレーム構造は、前側には前後方向に線状に延びるメインフレーム4を配置し、後側には、形状が平面的に展開されるサブフレーム4cを配置し、これらを互いに固定する構造となっている。よって、運転者が着座部7に着座した状態で、左右方向に体重移動を行うことで、メインフレーム4及びサブフレーム4cを変形させて容易に傾斜させることが可能である。
【0034】
この場合、メインフレーム4及びサブフレーム4cには捩じれによる変形と曲げによる変形が生じる。特にメインフレーム4は前後方向に線状に延びる構成となっているので、捩じれによる変形が生じ易い。従って、前輪2をより容易に傾斜させることができ、リーンイン姿勢と同等の効果により、前輪2の操舵角を発生させ、車体の進行方向を変更することが可能となる。その結果、本実施例によれば、ハンドルバー5の操作、後輪3a、3
bの回転と制動の独立制御、運転者の体重移動により、運転者の意図、嗜好をより直接的に電気自動車1の運転状態に反映させることが可能であり、運転自体の趣味性を高めることが可能である。
【0035】
なお、本実施例におけるインホイールモータ8には、回転数制御のためのホール素子等の位置センサ(不図示)が内蔵されている。この位置センサの出力信号をパルス信号として取り出して変調することで、インホイールモータ8の回転数に応じた周波数のバルス信号を生成することが可能である。この場合、必ずしも回転数0の時に、周波数が0となる必要はなく、回転数0の際に周波数H0とし、回転数の増加に伴って周波数が増加するように設定することも可能である。このようなパルス信号を用いて背景音(疑似エンジン音)を生成することで、周囲に対する安全性や嗜好性を向上させることも可能である。
【0036】
<実施例2>
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例では、フレーム構造をよりフレキシブルにして、運転者の体重移動を運転状態により容易に反映可能とした例について説明する。図3には、実施例2に係る電気自動車21を示す。図3(a)は側面図、図3(b)は上面図である。図3(b)においては、簡単のため、着座部7は省略している。電気自動車21においては、メインフレーム24と、サブフレーム24cとが、分離されている。そして、メインフレーム24とサブフレーム24cの間を弾性部材であるバネ30と、緩衝部材であるダンパー32によって結合している。これにより、フレーム構造のローリング方向の剛性または動的特性を、バネ30とダンパー32の特性を適宜選択することで、調整可能とした。また、電気自動車21の走行条件に応じて、バネ30、ダンパー3
2を変更することで、フレーム構造のローリング方向の剛性または動的特性を最適化することが可能である。
【0037】
本実施例においては、ハンドルバー5に設けられたスロットル5a、5bに加えて、サブフレーム24cに設けられた、本実施例における調整装置としての第2スロットル25a、25bを有している。また、着座部7(図3(b)には不図示)の下のサブフレーム24cには、制御部29が設置されている。この制御部29には、電源SWの他、スロットル25a、25bの角度情報が入力され、この角度情報に応じた出力指令信号をインホイールモータ8に送信する。インホイールモータ8では、サブフレーム24cに搭載されたバッテリー9からの電力供給を受けつつ、制御部29からの指令信号に応じた回転数及びトルクで後輪3a、3bを回転させる。なお、本実施例でも、右調整装置としての右側のスロットル25aの角度で、右側の後輪3aにおけるインホイールモータ8の回転数及びトルクが制御され、左調整装置としての左側のスロットル25aの角度で、左側の後輪3bにおけるインホイールモータ8の回転数及びトルクが制御される。
【0038】
また、サブフレーム24cにおけるスロットル25aの近傍には右制動装置としてのブレーキバー25cが、スロットル25bの近傍にも左制動装置としてのブレーキバー25dが備えられている。このブレーキバー25c、25dはそれぞれ、右側の後輪3a、左側の後輪3bの制動のためのブレーキである。本実施例では、メインフレーム24とサブフレーム24cとが相対的に移動するが、スロットル25a、25b、ブレーキバー25c、25d及び、制御部29、バッテリー9をサブフレーム24cに配置した。よって、メインフレーム24とサブフレーム24cとが相対移動を繰り返したとしても、信頼性と耐久性を確保することが可能である。
【0039】
なお、上記の本実施例の説明においては、メインフレーム24とサブフレーム24cの相対移動は、バネ30、ダンパー32で規制される点のみ説明したが、メインフレーム24とサブフレーム24cとの相対位置は、さらに他の手段によって規制されてもよい。例えば、メインフレーム24とサブフレーム24cはいずれかの位置で互いに回動可能に結合されていてもよい。あるいは、メインフレーム24とサブフレーム24cはいずれかの位置で互いに摺動可能に結合されていてもよい。
【0040】
さらに、メインフレーム24とサブフレーム24cの間の位置関係を、例えば電動の変位装置で変更可能としてもよい。この電動の変位装置は、例えば、モータのボールねじ機構で実現することが可能である。このように、メインフレーム24とサブフレーム24cの位置関係を変更可能とすることで、バネ30による付勢力を調整することができ、着座部7を傾斜させることによるメインフレーム24及び前輪2の傾斜のし易さを調整することが可能である。
【0041】
<実施例3>
次に、本発明の実施例3について説明する。本実施例における電気自動車31が、実施例1において説明した電気自動車1に対して最も異なる点は、インホイールモータ8が前輪2にも装備されている点である。二つの後輪3のインホイールモータ8の制御は、実施例1と同様にハンドルバー35に設けられたスロットル35a、35bの角度情報によって行う。一方、前輪2に設けられたインホイールモータ8は、右側のバー36の踏み込み量によって制御する。
【0042】
図4は、本発明の実施例3に係る電気自動車31の概略構成である。図4(a)は側面図、図4(b)は上面図を示す。本実施例に係る電気自動車31においては、前輪2にも上述のようにインホイールモータ8が備えられている。前輪2のインホイールモータ8のハブシャフト8aは、2本のフロントフォーク34aに固定されている。ローター8bは
前輪2に固定されており、ローター8bがハブシャフト8aに対して回転することで、前輪2を回転させる。2本のフロントフォーク34aは前輪2の外周近傍で結合され、ヘッドチューブ34bを貫通して、ハンドルバー35に結合している。ヘッドチューブ34bは、メインフレーム34に固定されている。メインフレーム34の後方には、平面視で左右方向に広がるサブフレーム34cが固定されている。
【0043】
電気自動車31においては、二つの後輪3の回転軸付近にも、インホイールモータ8が備えられている。このハブシャフト8aが平面視で後輪3の左右方向内側に配置されたサブフレーム内枠34dと、後輪3の左右方向外側に配置されたサブフレーム外枠34eとに固定され、ローター8bが後輪3に固定されている。
【0044】
また、前後方向において後輪3の回転軸の直前方には、運転者が着座する着座部37が設けられている。この着座部37は、メインフレーム34または、サブフレーム34cのいずれかまたは、両方に固定されている。本実施例では、メインフレーム4の着座部7より前方には、運転者の足を置くバー36が左右に突出するように設けられている。
【0045】
また、ハンドルバー35は、メインフレーム34に固定された補助フレーム38を介してメインフレーム34にバネ40a及びダンパー40bにより結合されており、運転者により意図的に回動しない限り、中立位置を維持するように構成されている。ダンパー40bが付加されていることで、ハンドルバー35の姿勢をより安定させることが可能である。なお、ハンドルバー35は、補助フレーム38を介さずに、メインフレーム34に直接バネ40a及びダンパー40bにより結合されてもよいことは当然である。また、ハンドルバー35は、メインフレーム34にバネ40aのみ、またはダンパー40bのみにより結合されてもよい。
【0046】
また、着座部7の前側のメインフレーム34には、制御部39が設置されている。この制御部39には、電源SWの他、ハンドルバー35に設けられた調整装置としてのスロットル35a、35bの角度情報が入力され、この角度情報に応じた出力指令信号を後輪3a、3bのインホイールモータ8に各々送信する。なお、本実施例においても、右側のスロットル35aの角度で、右側の後輪3aにおけるインホイールモータ8の回転数及びトルクが制御され、左側のスロットル35aの角度で、左側の後輪3bにおけるインホイールモータ8の回転数及びトルクが制御される。また、ハンドルバー35には、ブレーキバー35c、35dが備えられている。このブレーキバー35c、35dはそれぞれ、右側の後輪3a、左側の後輪3bの制動のためのブレーキである。
【0047】
また、本実施例では、右側のバー36は運転者によって踏み込み可能な第二調整装置となっており、右側のバー36の踏み込み量が、制御部39に入力され、この踏み込み量の情報に基づいて、前輪2のインホイールモータ8の回転数及びトルクが制御されるようになっている。
【0048】
また、本実施例においても、着座部37は、地面から前輪2及び後輪3の直径よりも低い高さとなるように配置されている。より具体的には、後輪3の回転中心と同等の高さとなるように配置されている。これによっても、運転者が乗車した場合の全体の重心を充分に下げることができ、高速運転時の姿勢安定性を確保することが可能となっている。
【0049】
なお、本実施例においても、電気自動車41のフレーム構造は、前側には前後方向に線状に延びるメインフレーム34を配置し、後側には、形状が平面的に展開されるサブフレーム34cを配置し、これらを互いに固定する構造となっている。よって、運転者が着座部37に着座した状態で、左右方向に体重移動を行うことで、メインフレーム34及びサブフレーム34cを変形させて容易に傾斜させることが可能である。従って、前輪2をよ
り容易に傾斜させることができ、リーンイン姿勢と同等の効果により操舵角を発生させ、車体の進行方向を変更することが可能となる。その結果、本実施例によれば、ハンドルバー35の操作と、前輪2、後輪3a、3bの回転数及びトルク並びに制動の独立制御と、
運転者の体重移動とにより、運転者の意図や嗜好をさらに直接的に電気自動車31の運転状態に反映させることが可能である。また、運転自体の趣味性を高めることが可能である。
【0050】
なお、本実施例では、右側のスロットル35aの角度で、右側の後輪3aにおけるインホイールモータ8の回転数及びトルクが制御され、左側のスロットル35aの角度で、左側の後輪3bにおけるインホイールモータ8の回転数及びトルクが制御され、右側のバー36の踏み込み量で、前輪2のインホイールモータ8の回転数及びトルクが制御されるようにした。しかしながら、各スロットル35a、35b、(左右いずれかの)バー36によって、何れの車輪の回転数、トルクが制御されるかは、適宜変更できることは当然である。
【0051】
<実施例4>
次に、本発明の実施例4について説明する。本実施例における電気自動車41と、実施例3で説明した電気自動車31との相違点は、電気自動車41においては、インホイールモータ8が前輪2に装備される一方、二つの後輪3にはインホイールモータ8が装備されていない点である。すなわち、電気自動車41の駆動輪は、前輪2のみであって、二つ後輪3は、電気自動車41の移動に伴い、従動回転するのみである。
【0052】
図5は、本発明の実施例4に係る電気自動車41の概略構成である。図5(a)は側面図、図5(b)は上面図を示す。本実施例に係る電気自動車41においては、前輪2には上述のようにインホイールモータ8が備えられている。電気自動車41においては、二つの後輪3の中心には、インホイールモータ8が備えられていない。また、本実施例では、メインフレーム34の着座部37より前方には、運転者の足を置くバー46が左右に突出するように設けられている。本実施例では、バー46は単に運転者の足を置く機能を有するのみであって、インホイールモータ8の回転数やトルクを制御する機能は有さない。
【0053】
また、着座部37の前側のメインフレーム34には、制御部49が設置されている。この制御部49には、電源SWの他、ハンドルバー45に設けられた調整装置であるスロットル45aの角度情報が入力され、この角度情報に応じた出力指令信号を前輪2のインホイールモータ8に送信する。また、ハンドルバー45には、ブレーキバー45c、45dが備えられている。このブレーキバー45c、45dはそれぞれ、前輪2、両側の後輪3の制動のためのブレーキである。
【0054】
また、本実施例においても、着座部37は、地面から前輪2及び後輪3の直径よりも低い高さとなるように配置されている。より具体的には、後輪3の回転中心と同等の高さとなるように配置されている。これによっても、運転者が乗車した場合の全体の重心を充分に下げることができ、高速運転時の姿勢安定性を確保することが可能となっている。
【0055】
なお、本実施例においても、電気自動車41のフレーム構造は、前側には前後方向に線状に延びるメインフレーム34を配置し、後側には、形状が平面的に展開されるサブフレーム34cを配置し、これらを固定する構造となっている。よって、運転者が着座部37に着座した状態で、左右方向に体重移動を行うことで、メインフレーム34及びサブフレーム34cを変形させて容易に傾斜させることが可能である。従って、前輪2をより容易に左右方向に傾斜させることができ、リーンイン姿勢と同等の効果により、前輪2に操舵角を発生させ、車体の進行方向を変更することが可能となる。
【0056】
さらに、電気自動車41においては、駆動輪は前輪2のみである。よって、前輪2の回転数の制御によっては、前輪2は空回りし易い。運転者は、前輪2の回転数を適宜制御することによって、空回りをさせないように、あるいは、意図的に空回りをさせるように電気自動車41を運転することができ、スポーツ感覚での運転を行うことができる。さらに、本実施例においても、着座部37は後輪3a、3bの回転軸の直前方すなわち、電気自動車41の前後方向の中心よりも後方に配置されるので、カーブにおいて、電気自動車41を意図的にスピンさせ易くすることができる。このことによっても、より容易にスポーツ感覚での運転を行うことが可能となる。
【0057】
その結果、本実施例によっても、ハンドルバー45の操作と、前輪2の回転数及びトルク並びに制動の制御と、運転者の体重移動とにより、運転者の意図、嗜好をさらに直接的に電気自動車41の運転状態に反映させることが可能である。また、運転自体の趣味性を高めることが可能である。
【0058】
なお、本実施例においては、上述のように、着座部37は後輪3a、3bの直前方すなわち、電気自動車41の前後方向の中心よりも後方に配置される。そして、バッテリー9は着座部37の下方に位置するようにサブフレーム34cに取り付けられている。このように、本実施例では比較的高い位置に配置された着座部37の下方のスペースを有効利用してバッテリー9を配置することが可能となっている。また、そのことで、電気自動車41の重心をより後方に配置することが可能で、さらに、カーブにおいて電気自動車41を意図的にスピンさせ易くすることができる。
【0059】
なお、上記の実施例1~4においては、バッテリー9は、基本的にサブフレームの上側または下側に配置することとしたが、バッテリー9の位置は、目的に応じて変更することが可能である。例えば、前後方向について、前輪2と後輪3a、3bの中央付近に配置してもよい。こうすれば、車両の重心を中央付近に集中させ、走行安定性を向上させることも可能である。
【符号の説明】
【0060】
1、21、31、41・・・電気自動車
2・・・前輪
3a、3b・・・後輪
4、34・・・メインフレーム
4c、34c・・・サブフレーム
5、35、45・・・ハンドルバー
6、36、46・・・バー
7・・・着座部
8・・・インホイールモータ
図1
図2
図3
図4
図5