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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】油性棒状化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20240920BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240920BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20240920BHJP
   A61Q 1/08 20060101ALI20240920BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20240920BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61K8/92
A61K8/36
A61K8/02
A61Q1/04
A61Q1/08
A61Q1/10
A61Q1/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020091113
(22)【出願日】2020-05-26
(65)【公開番号】P2021187743
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】591147339
【氏名又は名称】株式会社トキワ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】矢野 秀和
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-077050(JP,A)
【文献】特開2004-224707(JP,A)
【文献】特開2006-342141(JP,A)
【文献】特開2004-256515(JP,A)
【文献】特開昭61-056116(JP,A)
【文献】Black Line Eyeliners Collection, ID 1990451,Mintel GNPD[online], 2013年2月,2024年04月04日,https://www.portal.mintel.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 1/00 - 90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)部分水添ホホバエステルと、(B)モクロウと、(C)高級脂肪酸と、(D)ダイマー酸エステルと、水添ヒマシ油と、を含有
前記(A)成分の含有量、前記(B)成分の含有量、前記(C)成分の含有量、前記(D)成分の含有量、及び前記水添ヒマシ油の含有量がそれぞれ、油性棒状化粧料の全量を基準として、0.1~5質量%、5~15質量%、10~40質量%、1~8質量%、及び8~20質量%である、油性棒状化粧料。
【請求項2】
前記(A)成分の融点が、45~55℃である、請求項1に記載の油性棒状化粧料。
【請求項3】
前記(A)成分及び前記(D)成分の含有量の合計が、油性棒状化粧料の全量を基準として、4~10質量%である、請求項1又は2に記載の油性棒状化粧料。
【請求項4】
前記(A)成分と前記(D)成分との質量比[(A)成分/(D)成分]が、1/6~1/1である、請求項1~3のいずれか一項に記載の油性棒状化粧料。
【請求項5】
記(B)成分及び前記(C)成分の含有量の合計が、前記水添ヒマシ油、前記(B)成分及び前記(C)成分の含有量の合計を基準として、60~74質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の油性棒状化粧料。
【請求項6】
前記(B)成分と前記(C)成分との質量比[(B)成分/(C)成分]が、0.25~1.4である、請求項1~5のいずれか一項に記載の油性棒状化粧料。
【請求項7】
25℃における粘度が5~30000mPa・sである、前記(A)成分及び前記(D)成分以外のエステル油を、油性棒状化粧料の全量を基準として、1~10質量%含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の油性棒状化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性棒状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
アイブロウペンシル、アイライナーペンシル、リップライナーペンシル等の芯材として油性棒状化粧料が用いられている。油性棒状化粧料は、押出成型や流し込み成型により製造されるのが一般的であり、所望の芯形状に成型できるように油剤が配合されている。成型に適した油剤として、モクロウ及び高級脂肪酸などが多くの油性棒状化粧料に用いられている(例えば、下記特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公平6-99284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の油剤が配合された油性棒状化粧料は、経時的に表面に結晶が白く浮き出る、所謂、発粉現象が起こりやすい。発粉が生じた化粧料は、外観が損なわれるだけでなく、描く際にひっかかりを感じにくいといった描きやすさなどの使用性も低下する。他方で、油性棒状化粧料には、高温でも油性成分が染み出しにくい保存安定性や、落下等の衝撃によって割れや欠けが生じにくいといった強度も要求される。
【0005】
本発明は、発粉が生じにくく、なおかつ十分な強度、保存安定性及び使用性を併せ持つことができる油性棒状化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、(A)部分水添ホホバエステルと、(B)モクロウと、(C)高級脂肪酸と、(D)ダイマー酸エステルと、を含有する油性棒状化粧料を提供する。
【0007】
本発明の油性棒状化粧料は、上記構成を有することにより、発粉が生じにくく、なおかつ十分な強度、保存安定性及び使用性を併せ持つことができる。
【0008】
発粉抑制と使用性の観点から、上記(A)成分の融点が、45~55℃であることが好ましい。
【0009】
発紛抑制及び強度確保の観点から、上記(A)成分及び上記(D)成分の含有量の合計が、油性棒状化粧料の全量を基準として、4~10質量%であることが好ましい。
【0010】
発粉抑制の観点から、上記(A)成分と上記(D)成分との質量比[(A)成分/(D)成分]が、1/6~1/1であることが好ましい。
【0011】
使用性の観点から、油性棒状化粧料は水添ヒマシ油を更に含有し、上記(B)成分及び上記(C)成分の含有量の合計が、水添ヒマシ油、上記(B)成分及び上記(C)成分の含有量の合計を基準として、60~74質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発粉が生じにくく、なおかつ十分な強度、保存安定性及び使用性を併せ持つことができる油性棒状化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[油性棒状化粧料]
本実施形態の油性棒状化粧料は、(A)部分水添ホホバエステル((A)成分という場合もある)と、(B)モクロウ((B)成分という場合もある)と、(C)高級脂肪酸((C)成分という場合もある)と、(D)ダイマー酸エステル((D)成分という場合もある)とを含有する。本実施形態の油性棒状化粧料は、粉体成分を含むことができ、上記以外の油性成分を更に含有してもよい。
【0014】
<(A)部分水添ホホバエステル>
部分水添ホホバエステルとしては、ホホバ油を水素添加して得られるエステル油を用いることができる。このようなエステル油は、例えば、FLORAESTERS20、FLORAESTERS30、FLORAESTERS60(以上、INTERNATIONAL FLORA TECHNOLOGIES社製、商品名)等の市販品を用いることができる。
【0015】
本実施形態の油性棒状化粧料においては、発粉の生じにくさと使用性の観点から、(A)成分の融点が、45~55℃であることが好ましく、50~55℃であることがより好ましい。なお、(A)成分の融点は以下の方法によって測定される。
【0016】
試料を約5mg秤量し、アルミニウム試料パン中に入れる。このパンにアルミニウムカバーを取り付け、示差走査熱量計「DSC7020」(日立ハイテクサイエンス社製、製品名)中に設置する。電気冷却ユニット「Polyscience」(日立ハイテクサイエンス社製、製品名)を用いて、窒素ガス流量30~35mL/minのもと、試料及び基準試料を-10℃で1分間保持した後、昇温速度10℃/minで0℃から120℃まで昇温させ、降温条件-10℃/minで120℃から-10℃まで降温させ、-10℃で5分間保持した後に再び昇温速度10℃/minで-10℃から120℃まで昇温することにより、融解吸熱カーブを得る。このときの2回目の昇温における融解吸熱カーブのピーク温度を融点とする。
【0017】
本実施形態の油性棒状化粧料における(A)成分の含有量は、発粉抑制、使用性、及び保存安定性の観点から、油性棒状化粧料の全量を基準として、0.1~5質量%が好ましく、0.5~4.0質量%がより好ましく、0.9~3.5質量%が更に好ましく、1.0~3.0質量%が更により好ましく、1.2~2.5質量%が特に好ましい。
【0018】
また、発粉抑制の観点から、(A)成分の含有量は、油性棒状化粧料に含まれる油性成分の全量基準で、1~8質量%が好ましく、2~5質量%がより好ましい。
【0019】
<(B)モクロウ>
モクロウは、化粧料に一般的に用いられているものであれば特に限定されず使用することができる。
【0020】
本実施形態の油性棒状化粧料における(B)成分の含有量は、成型性の観点から、油性棒状化粧料の全量を基準として、5~15質量%であることが好ましく、8~12質量%であることがより好ましい。
【0021】
<(C)高級脂肪酸>
高級脂肪酸は、脂肪族炭化水素基の炭素数(以下、単に炭素数という)が12以上の脂肪酸を用いることができる。高級脂肪酸としては、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ラノリン酸、ベヘニン酸などが挙げられる。
【0022】
本実施形態の油性棒状化粧料は、描きやすさ、特にべたつきのなさ、肌あたりのよさの観点から、炭素数が20以下の脂肪酸を含有することが好ましく、炭素数が14~20の脂肪酸を含有することがより好ましく、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの少なくとも一種を含有することがより好ましい。
【0023】
本実施形態の油性棒状化粧料における(C)成分の含有量は、成型性と描きやすさの観点から、油性棒状化粧料の全量を基準として、10~40質量%が好ましく、12~20質量%がより好ましい。
【0024】
また、肌あたりのよさの観点から、本実施形態の油性棒状化粧料に含まれる炭素数が12以上の高級脂肪酸における、炭素数が14~20の脂肪酸を含有割合が、50~100質量%であることが好ましく、70~100質量%であることがより好ましい。
【0025】
更に、(B)成分と(C)成分との質量比[(B)成分/(C)成分]は、0.25~1.4が好ましく、描きやすさの観点から、0.4~0.75~0.5~0.65がより好ましい。
【0026】
また、使用性の観点から、油性棒状化粧料は水添ヒマシ油を更に含有し、上記(B)成分及び上記(C)成分の含有量の合計が、水添ヒマシ油、上記(B)成分及び上記(C)成分の含有量の合計を基準として、60~74質量%であることが好ましく、65~72質量%であることがより好ましい。
【0027】
<(D)ダイマー酸エステル>
ダイマー酸エステルとしては、2分子の不飽和脂肪酸の重合によって得られるダイマー酸のエステルを用いることができる。不飽和脂肪酸としてはリノール酸、リノレン酸、オレイン酸などが挙げられる。また、かかるダイマー酸のエステル部分としては、セチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール、リノレイルアルコール等の高級アルコール、ダイマージリノレイルアルコール等の不飽和アルコール2分子が重合したダイマージオール、フィトステロール等から誘導できるもの、及びヒマシ油などが挙げられる。具体的には、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビスステアリル、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油等が挙げられる。
【0028】
ダイマー酸エステルは、化粧料に一般的に用いられているものであれば特に限定されず使用することができる。ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)としては「Plandool-G」(日本精化株式会社製、商品名)を、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)としては「Plandool-H」(日本精化株式会社製、商品名)を、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビスステアリルとしては「LUSPLAN DA-DD-IS」(日本精化株式会社製、商品名)を、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油としては「リソカスタDA-L」(高級アルコール工業社製、商品名)等の市販品を用いることができる。
【0029】
ダイマー酸エステルは、25℃でペースト状であるものが好ましい。
【0030】
本実施形態の油性棒状化粧料における(D)成分の含有量は、肌への密着性の観点から、油性棒状化粧料の全量を基準として、1~8質量%が好ましく、2~7質量%がより好ましく、2.5~4.8質量%が更に好ましい。
【0031】
また、発紛抑制及び強度確保の観点から、(A)成分及び(D)成分の含有量の合計が、油性棒状化粧料の全量を基準として、4~10質量%が好ましく、5~8質量%がより好ましい。
【0032】
また、発粉抑制の観点から、(A)成分と(D)成分との質量比[(A)成分/(D)成分]が、1/6~1/1であることが好ましく、1/4~1/2であることがより好ましい。
【0033】
<その他の油性成分>
本実施形態の油性棒状化粧料は、上記(A)~(D)成分以外の油性成分として、通常、化粧料に用いられる油剤であれば、固形油及び固形油以外の油剤など、特に限定なく用いることができる。その他の油性成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
固形油としては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレン等の炭化水素類、硬化ヒマシ油(水添ヒマシ油)、水添ホホバ油、カルナウバロウ、ライスワックス等の植物由来油脂、トリベヘン酸グリセリル、コレステロール脂肪酸エステル等のエステル類、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、アクリル変性シリコーン等のシリコーン類、パルミチン酸デキストリン、ステアリン酸イヌリン等の糖脂肪酸エステル類等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
固形油以外の油剤としては、ペースト状油、液状油を用いることができる。ペースト状油としては、例えば、ワセリン、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、イソステアリン酸水添ヒマシ油、オレイン酸フィトステリル、ヘキサ(オレイン酸/パルミチン酸/ステアリン酸)スクロース、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、ビスジグリセリルポリアシルアジペート-2等が挙げられる。
【0036】
液状油としては、例えば、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、トリエチルヘキサノイン、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソステアリル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジイソステアリン酸プロパンジオール、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン等のエステル油;ジメチコン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油;流動パラフィン、スクワラン、オレフィンオリゴマー、流動パラフィン、スクワラン、水添ポリイソブテン等の炭化水素油;ヒマワリ種子油、ホホバ種子油、オリーブ油、ヒマシ油等の植物油;イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール等の高級アルコール、などが挙げられる。
【0037】
本実施形態の油性棒状化粧料は、強度保持及び安定性向上の観点から、水添ヒマシ油を含有することが好ましい。水添ヒマシ油の含有量は、油性棒状化粧料の全量を基準として、8~20質量%が好ましく、10~15質量%がより好ましく、10.5~12質量%が更に好ましい。
【0038】
本実施形態の油性棒状化粧料は、(A)成分及び(D)成分以外のエステル油(以下、「その他のエステル油」ともいう)の含有量が、油性棒状化粧料の全量を基準として、1~10質量%であることが好ましく、3~9質量%であることがより好ましい。
【0039】
その他のエステル油は、25℃における粘度が、5~30000mPa・sであるものを用いることができる。その他のエステル油は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
なお、25℃における粘度は、B型粘度計を用いて、測定温度25℃、回転数12rpmで測定したときの数値を指す。
【0041】
その他のエステル油は、25℃における粘度が、10000~30000mPa・sの高粘度エステル油と、5~500mPa・sの低粘度エステル油とを併用してもよい。
【0042】
本実施形態の油性棒状化粧料は、油性成分の含有量が、油性棒状化粧料の全量を基準として、35~65%質量%であることが好ましく、46~60質量%であることがより好ましく、48~58質量%であることが更に好ましい。
【0043】
<粉体成分>
粉体成分としては、通常、化粧料に用いられる粉体であれば、特に限定なく用いることができ、例えば、体質粉体、白色顔料、着色顔料等が挙げられる。粉体の形状についても特に限定されず、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造を有していてもよい。
【0044】
具体的には、マイカ、合成マイカ、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、酸化アルミニウム、シリカ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の体質顔料類、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛等の紫外線散乱剤類、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、アクリロニトリル-メタクリル酸共重合体パウダー、塩化ビニリデン-メタクリル酸共重合体、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、ウレタンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、セルロースパウダー、N-アシルリジンパウダー等の有機粉体類、微粒子酸化チタン被覆マイカチタン、微粒子酸化チタン被覆ナイロン、硫酸バリウム被覆マイカチタン、酸化チタン含有シリカ、酸化亜鉛含有シリカ等の複合粉体類、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸が挙げられる。
【0045】
着色顔料としては、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機性着色顔料、赤色228号、赤色226号、青色404号、赤色202号、黄色4号アルミニウムレーキ等の有機性着色顔料、雲母チタン、微粒子酸化チタン被覆マイカチタン、硫酸バリウム被覆マイカチタン、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス、アルミニウムフレーク等のパール顔料、カルミン、ベニバナ等の天然色素などが挙げられる。
【0046】
これらの粉体成分は、発色、密着性の観点から、疎水性処理粉体が好ましい。疎水性処理としては、高級脂肪酸、金属石鹸、油脂、ロウ、シリコーン化合物、フッ素化合物、界面活性剤、デキストリン脂肪酸エステルが挙げられる。
【0047】
粉体成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
本実施形態の油性棒状化粧料は、粉体成分の含有量が、油性棒状化粧料の全量を基準として、35~65%質量%であることが好ましく、40~54質量%であることがより好ましく、42~52質量%であることが更に好ましい。
【0049】
本実施形態の油性棒状化粧料は、上記成分の他に、通常化粧料に用いられる成分、例えば、界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、色素、増粘剤、pH調整剤、香料、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、キレート剤、消炎剤、保湿剤、などを含有することができる。
【0050】
本実施形態の油性棒状化粧料は、例えば以下の手順により製造することができる。油性成分、必要に応じてその他の成分などを混合し、加熱溶解する。得られた溶解物に粉体成分を混合し、混合物を3本ロール機又は攪拌機で均一分散させる。その後、当該混合物(化粧料基材)を押出成型機や金型などで成型することによって、油性棒状化粧料を得ることができる。
【0051】
油性棒状化粧料の形状は特に限定されないが、油性棒状化粧料の長軸方向に直交する横断面の形状が、例えば、円、楕円、三角形、矩形、又は多角形(角の数5以上)であってもよい。本実施形態の油性棒状化粧料は、発粉抑制、保存安定性及び使用性と、強度とを両立することが可能であることから、細い形状又は薄い形状を有する場合であっても良好且つ十分に使いきることができる。
【0052】
断面形状が円又は楕円である場合、直径又は楕円の中心を通過する最短部径が0.5mm以上7mm以下であってもよく、下限は0.7mm、1mm、又は1.3mmであってもよいし、上限は5mm、3mm、2mm、又は1.5mmであってもよい。
【0053】
断面形状が三角形である場合、高さが0.5mm以上5mm以下であってもよく、下限は0.8mm、1mm、又は1.5mmであってもよいし、上限は4mm、3mm、又は2mmであってもよい。
【0054】
断面形状が矩形である場合、短軸方向の厚さが、0.4mm以上2.0mm以下であってもよい。また、厚さの下限は0.6mm、0.7mm、又は0.8mmであってもよいし、厚さの上限は0.9mm又は1.5mmであってもよい。
【0055】
本実施形態の油性棒状化粧料は、アイブロウペンシル、アイライナーペンシル、リップライナー、アイカラーペンシル、コンシーラーペンシルなどとして好適に用いられる。また、本実施形態の油性棒状化粧料は、棒状の化粧料を繰り出して使用するペンシル型化粧製品に用いることができる。
【実施例
【0056】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例により本発明の技術範囲が限定されるものではない。なお、表中の数値は、化粧料基材全量を基準とする含有量(質量%)を示す。
【0057】
実施例に先立ち、各実施例で採用した評価方法を説明する。
【0058】
<発粉>
成型した棒状化粧料を各温度条件(-5℃、5℃、25℃、40℃、50℃、5~40℃サイクル)に4週間保管した。保管後の化粧料の状態を目視にて確認し、下記の判定基準に従って発粉を評価した。
[判定基準]
○:発粉が見られない
△:発粉が見られた
×:著しい発粉が見られた
【0059】
<使用性の評価>
化粧品評価専門パネル10名に、実施例及び比較例の油性棒状化粧料について、5℃に4週間保管した化粧料と保管前の化粧料をそれぞれ使用してもらい、描きやすさ(ひっかかりのなさ)、べたつきのなさ、肌あたりのよさの観点から使用性を評価してもらった。なお、使用性の評価は、下記の評価基準に従って5段階評価を行いサンプル毎に評点を付し、更に全パネルの評点の平均点を下記の判定基準に従って判定した。
[評点:評価基準]
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:やや不良
1点:不良

[判定基準(評点の平均点)]
◎:4以上
○:3以上4未満
△:2以上3未満
×:2未満
【0060】
<保存安定性の評価>
成型した棒状化粧料を50℃で4週間保管した。保管後の化粧料の状態を目視にて確認し、下記の判定基準に従って保存安定性を評価した。N=2で行い、判定が異なる場合は悪いほうの判定を採用した。
[判定基準]
○:油の染み出しが見られない
×:油の染み出しが見られた
【0061】
<落下強度の評価>
5℃で1週間保管した油性棒状化粧料のサンプルを、取り出し直後に、床に対して平行となる向きで、70cmの高さからPタイルへ10回落下させ、芯折れがないかを確認した。N=5で行い、すべてに芯折れがない場合を○とし、1本でも芯折れがある場合は×とした。
【0062】
<折れ強度の評価>
成型した棒状化粧料を各温度条件(-5℃、5℃、25℃、40℃、50℃、5~40℃サイクル)に4週間保管した。保管前及び保管後の棒状化粧料について、レオメーター(不動工業株式会社製)を用いて、25℃で、支点間距離20mmにて支持された芯の中心に2mm/minの速度で荷重を加えたときの折損荷重を測定した。N=5で測定しその平均値を求めた。保管前の棒状化粧料の折損荷重を初期値とし、この初期値に対する保管後の棒状化粧料の折損荷重の差に基づき、下記の基準に従って折れ強度を評価した。
[判定基準]
○:初期値との差が±20%未満
△:初期値の差が±20%以上30%未満
×:初期値との差が±30%以上
【0063】
<成型性>
押出成型機にて直径1.5mmの円柱の形状に成型し、その状態を確認した。
○:問題なく成型できる
×:成型不可(著しい曲がり、キズ、折れ)
【0064】
(実施例1~22及び比較例1~4)
表1~3に示す組成(質量%)の油性棒状化粧料(アイブロウペンシル)を以下の製法により調製し、上記の評価を行った。その結果を併せて表1~3に示す。
【0065】
<製法>
油性成分を80~100℃で溶解した混合物に、粉体成分を混合し、3本ロールを用いて均一に分散し、化粧料基材を得た。得られた化粧料基材を押出成型機にて直径1.5mmの円柱状に成型した。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
【表6】
【0072】
表1~3中、各原料の詳細は下記のとおりである。
部分水添ホホバエステルA:「FLORAESTERS30」(INTERNATIONAL FLORA TECHNOLOGIES社製、商品名)(融点:52.6℃)
部分水添ホホバエステルB: 「FLORAESTERS20」(INTERNATIONAL FLORA TECHNOLOGIES社製、商品名)(融点:48.3℃)
部分水添ホホバエステルC:「FLORAESTERS60」(INTERNATIONAL FLORA TECHNOLOGIES社製、商品名)(融点:58.9℃)
水添ホホバ油:「FLORAESTERS70」(INTERNATIONAL FLORA TECHNOLOGIES社製、商品名)(融点:70.3℃)
ダイマー酸エステルA:「Plandool-H」(日本精化株式会社製、商品名、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)
ダイマー酸エステルB:「Plandool-G」(日本精化株式会社製、商品名、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)
トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2:25℃の粘度22,500mPa・s
トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン:25℃の粘度180mPa・s
パルミチン酸エチルヘキシル:25℃の粘度11mPa・s
【0073】
なお、上記の融点は以下の方法によって測定した。
試料を約5mg秤量し、アルミニウム試料パン中に入れた。このパンにアルミニウムカバーを取り付け、示差走査熱量計「DSC7020」(日立ハイテクサイエンス社製、製品名)中に設置した。電気冷却ユニット「Polyscience」(日立ハイテクサイエンス社製、製品名)を用いて、窒素ガス流量30~35mL/minのもと、試料及び基準試料を-10℃で1分間保持した後、昇温速度10℃/minで0℃から120℃まで昇温させ、降温条件-10℃/minで120℃から-10℃まで降温させ、-10℃で5分間保持した後に再び昇温速度10℃/minで-10℃から120℃まで昇温することにより、融解吸熱カーブを得た。このときの2回目の昇温における融解吸熱カーブのピーク温度を融点とした。
【0074】
表4~6に示すとおり、実施例1~22のアイブロウペンシルは、-5℃~50℃の各温度及び5~40℃のサイクル条件において発粉が抑制されているとともに、十分な強度、保存安定性及び使用性を併せ持つことが分かる。実施例1~22のアイブロウペンシルは、特に、実使用温度域(5~25℃)での発粉抑制と高温での保存安定性とを両立することができることが確認された。また、実施例1~22のアイブロウペンシルは、5℃での保管後においても良好な使用性を維持しており、広い温度領域にわたって折れ強度が安定していることも分かった。
【0075】
(実施例23:リップライナー)
(配合割合(質量%))
(油性成分)
水添ヒマシ油 8.0
モクロウ 9.0
ステアリン酸 12.0
部分水添ホホバエステルA 3.7
ダイマー酸エステルB 8.3
トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2 6.0
トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン 4.5
トコフェロール 0.1
(粉体成分)
合成金雲母 残余
黒酸化鉄 4.0
黄酸化鉄 0.10
酸化チタン 6.0
ベンガラ 0.10
赤202 8.50

上記成分の詳細は、すでに上述したものと同様である。
【0076】
<製法>
油性成分を80~100℃で撹拌し、ここに粉体成分を混合し、化粧料基材を得た。得られた化粧料基材を押出成型機にて直径3mmの円柱状に成型した。
【0077】
<評価>
得られたリップライナーについて、上記同様の評価を行ったところ、発粉については、すべての保管条件において「○」、使用性については、初期及び保管後のいずれも「◎」、保存安定性は「○」、落下強度は「○」、折れ強度については、初期値0.15Nであり、すべての保管条件において「○」、成型性は「○」の評価であった。