(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】学習用データ生成方法、信号種別分類システム、データ収集システム、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 18/23211 20230101AFI20240920BHJP
G06F 18/214 20230101ALI20240920BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20240920BHJP
H04B 17/00 20150101ALI20240920BHJP
G01R 29/08 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G06F18/23211
G06F18/214
G06N20/00
H04B17/00
G01R29/08 B
(21)【出願番号】P 2020169784
(22)【出願日】2020-10-07
【審査請求日】2023-09-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「高ノイズ環境における周波数共用のための適応メディアアクセス制御に関する研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【氏名又は名称】中西 健
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【氏名又は名称】伊藤 世子
(72)【発明者】
【氏名】大西 綾乃
(72)【発明者】
【氏名】武内 良男
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 晃朗
(72)【発明者】
【氏名】宮本 進生
(72)【発明者】
【氏名】前山 利幸
(72)【発明者】
【氏名】横山 浩之
【審査官】大倉 崚吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/055673(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/155481(WO,A1)
【文献】特開2013-026976(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026523(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079020(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0019554(US,A1)
【文献】特開2006-350090(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0007433(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0346833(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00-99/00
G06F 18/00-18/40
H04B 17/00
G01R 29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナにより受信した電波の電波波形データを取得する電波波形取得処理ステップと、
前記電波波形データの時間領域または周波数領域の特徴を示すデータであって、前記電波波形データよりもデータ量が少ないデータである特徴量データを取得する特徴量取得処理ステップと、
前記特徴量データをクラスタに分類するクラスタリング処理ステップと、
前記クラスタリング処理により分類された前記特徴量データにラベルを付与することで、前記特徴量データと前記ラベルとを対応付けたデータを学習用データとして取得する学習用データ取得ステップと、
前記クラスタリング処理における分類数の最適数を取得する最適クラスタ数取得ステップと、
を備え
、
前記最適クラスタ数取得ステップは、
クラスタ数を変化させながら、クラスタリング処理の初期設定を変更してもクラスタの分類状況が変化しないクラスタ数を検出し、検出したクラスタ数に基づいて、前記分類数の最適数を取得する、
信号種別分類処理のための学習用データ生成方法。
【請求項2】
前記特徴量データは、ケプストラムから抽出されるデータである、
請求項1に記載の学習用データ生成方法。
【請求項3】
前記特徴量データは、ケプストラムの低次成分を抽出または加工したデータである、
請求項1に記載の学習用データ生成方法。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれかに記載の学習用データ生成方法により生成された学習用データを用いて学習処理を行うことで取得した信号種別分類器の学習済みモデルを用いて信号種別分類処理を行う信号種別分類システムであって、
無線通信機と、
ホスト装置と、
を備え、
前記無線通信機は、
アンテナにより受信した電波の電波波形データを取得する電波波形取得処理ステップと、
前記電波波形データの時間領域または周波数領域の特徴を示すデータであって、前記電波波形データよりもデータ量が少ないデータである特徴量データを取得する特徴量取得処理ステップと、
前記特徴量データをホスト装置に送信する送信ステップと、
を実行し、
前記ホスト装置は、
前記無線通信機から送信される前記特徴量データを受信する受信ステップと、
前記無線通信機により取得された前記特徴量データを、前記信号種別分類器の学習済みモデルに入力することで、前記特徴量データのラベルを取得するラベル取得ステップと、
を実行する、
信号種別分類システム。
【請求項5】
前記特徴量データは、ケプストラムから抽出されるデータである、
請求項
4に記載の信号種別分類システム。
【請求項6】
前記特徴量データは、ケプストラムの低次成分を抽出または加工したデータである、
請求項
4に記載の信号種別分類システム。
【請求項7】
N個(N:自然数)の請求項
4から
6のいずれかの信号種別分類システムと、
前記N個の信号種別分類システムにより取得されたデータであって、特徴量データとラベルとを対応付けたデータである信号種別データを、前記N個の信号種別分類システムから収集するサーバと、
を備えるデータ収集システム。
【請求項8】
請求項1から
3のいずれかの学習用データ生成方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波環境の状況把握を可能とするための信号種別分類技術に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な機器の稼働状況の把握、制御などを目的として、工場、病院、商業施設などの屋内環境へのIoT(Internet of Things)デバイスの導入が進んでいる。このような環境下では、無線通信のトラフィックが場所的、時間的に集中しやすく、無線通信パケットの衝突や遅延が発生しやすい。このような状況下でも、安定した通信が望まれる。また、システム全体の動作状況を把握するため、監視対象の周波数帯域における混雑具合や電波強度などの情報を把握し、無線品質に問題が生じていないかを監視し、問題が生じている場合には、その原因の特定につながる情報を提供できるシステムが望まれる。このようなシステムを実現するために、電波環境の状況把握を可能とするための信号種別分類技術を確立させることが重要となる。
【0003】
従来、ノイズ発生源を特定するための技術が開発されており、例えば、特許文献1には、雷放電により発生する雑音(単発パルスやバースト状パルス)を検知するための技術の開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような従来技術では、無線信号あるいは電磁ノイズの発生源の性質がある程度分かっていることが前提となっており、発生源から生じる無線信号や電磁ノイズの周波数スペクトルや信号(あるいは電磁ノイズ)の時間波形のパターン(例えば、単発パルスやバースト状パルス)をある程度予測できるため、発生源を特定することができる。
【0006】
しかしながら、無線信号や電磁ノイズの発生源が多数あり、かつ、その無線信号や電磁ノイズの周波数スペクトルや波形パターンが予測できない無線環境下においては、従来技術を適用して、無線環境の状況を把握することは極めて困難である。
【0007】
そこで、周波数スペクトルや波形パターンの予測が困難な無線信号や電磁ノイズが多数飛び交う環境下であっても、無線環境の状況を適切に把握できる技術が求められている。このような技術を実現するために、周波数スペクトルや波形パターンの予測が困難な無線信号や電磁ノイズの種別を適切に分類する技術(信号種別分類技術)を確立させることが有効である。つまり、当該技術を用いることで、無線環境下において、どのような無線信号や電磁ノイズが存在しているかを把握でき、その結果、無線環境の状況を適切に把握できる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、周波数スペクトルや波形パターンの予測が困難な無線信号や電磁ノイズの種別を適切に分類する信号種別分類システム、および、信号種別分類システムに搭載される分類器を機械学習により構築するための学習用データ生成方法、データ収集システム、および、プログラムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第1の発明は、信号種別分類処理のための学習用データ生成方法であって、電波波形取得処理ステップと、特徴量取得処理ステップと、クラスタリング処理ステップと、学習用データ取得ステップと、を備える。
【0010】
電波波形取得処理ステップは、アンテナにより受信した電波の電波波形データを取得する。
【0011】
特徴量取得処理ステップは、電波波形データの時間領域または周波数領域の特徴を示すデータであって、電波波形データよりもデータ量が少ないデータである特徴量データを取得する。
【0012】
クラスタリング処理ステップは、特徴量データをクラスタに分類する。
【0013】
学習用データ取得ステップは、クラスタリング処理により分類された特徴量データにラベルを付与することで、特徴量データとラベルとを対応付けたデータを学習用データとして取得する。
【0014】
この学習用データ生成方法では、電波波形の特徴を維持しつつ、データ量を低減させた特徴量データを取得するので、特徴量データを大量に取得し、データ送信しても、通信路にかかる負荷が少なくてすむ。これにより、この学習用データ生成方法では、大量のデータを収集し、収集したデータを用いて大量の学習用データを生成することができる。また、この学習用データ生成方法では、収集した特徴量データに対してクラスタリング処理により分類し、分類したクラスタにラベルを付与するので、電波波形データがどのようなものであっても適切に種別分類を行うことができる。その結果、この学習用データ生成方法では、多様な電波波形データに対応する信号種別分類器(例えば、ニューラルネットワークモデル)の学習処理を高精度かつ効果的に行うことができる学習用データを生成することができる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明であって、特徴量データは、ケプストラムから抽出されるデータである。
【0016】
これにより、この学習用データ生成方法では、ケプストラムから抽出されるデータを特徴量データとして学習用データを生成することができる。
【0017】
第3の発明は、第1の発明であって、特徴量データは、ケプストラムの低次成分を抽出または加工したデータである。
【0018】
これにより、この学習用データ生成方法では、ケプストラムの低次成分を抽出または加工したデータを特徴量データとして学習用データを生成する処理を行うことができる。ケプストラムの低次成分を抽出したデータは、電波波形の特徴を維持しつつ、周波数領域での白色ノイズ成分を効果的に抑制したデータとなる。このため、この学習用データ生成方法において、ケプストラムの低次成分を抽出したデータを特徴量データとして学習用データを生成する処理を行うことで、非常に高精度な学習用データを生成することができる。
なお、ケプストラムの低次成分を「加工」するとは、例えば、ケプストラムの低次成分に対して、所定の処理(例えば、フィルタ処理)等を施すことを含む概念である。なお、「加工」は、電波波形の特徴を維持しつつ、周波数領域での白色ノイズ成分を効果的に抑制したデータを取得できる処理であれば、どのような処理でもよい。
【0019】
なお、ケプストラムから抽出する低次成分は、例えば、ケプストラムの全データをN1次元のベクトルで表現するとしたとき、例えば、ケプストラムの配列が高次元へ向けて0に収束するため、N1×0.1以下のデータ(低次元側のデータ)など、収束する前の低次元側の配列を設定することが好ましい。例えば、ケプストラムの全データを1000次元(N1=1000)のベクトルで表現するとしたとき、1次元~100次元のデータ(100=N1×0.1)の一部または全部をケプストラムから抽出する低次成分としてもよい。また、例えば、ケプストラムの全データを1500次元(N1=1500)のベクトルで表現するとしたとき、1次元~16次元のデータ(16次元分のデータ)をケプストラムから抽出する低次成分としてもよい。
【0020】
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明であって、クラスタリング処理における分類数の最適数を取得する最適クラスタ数取得ステップをさらに備える。
【0021】
これにより、この学習用データ生成方法では、最適クラスタ数により、クラスタリング処理を実行することが可能となる。
【0022】
第5の発明は、第4の発明であって、最適クラスタ数取得ステップは、クラスタリング処理の初期設定(例えば、乱数シード)を変更しながら、クラスタ数を変化させたときに、クラスタの分類状況が変化しないクラスタ数を検出し、検出したクラスタ数に基づいて、分類数の最適数を取得する。
【0023】
これにより、この学習用データ生成方法では、初期設定(例えば、乱数シード)を変更してもクラスタ数が変化しない数(例えば、初期設定(例えば、乱数シード)を変更してもクラスタ数が変化しない最大の数)を分類数の最適数(最適クラスタ数)として設定することができる。
【0024】
第6の発明は、第1から第5のいずれかの発明である学習用データ生成方法により生成された学習用データを用いて学習処理を行うことで取得した信号種別分類器の学習済みモデルを用いて信号種別分類処理を行う信号種別分類システムであって、無線通信機と、ホスト装置と、を備える。
【0025】
無線通信機は、
アンテナにより受信した電波の電波波形データを取得する電波波形取得処理ステップと、
電波波形データの時間領域または周波数領域の特徴を示すデータであって、電波波形データよりもデータ量が少ないデータである特徴量データを取得する特徴量取得処理ステップと、
特徴量データをホスト装置に送信する送信ステップと、
を実行する。
【0026】
ホスト装置は、
無線通信機から送信される特徴量データを受信する受信ステップと、
無線通信機により取得された特徴量データを、信号種別分類器の学習済みモデルに入力することで、特徴量データのラベルを取得するラベル取得ステップと、
を実行する。
【0027】
この信号種別分類システムでは、無線通信機において特徴量データ取得処理を行うことで、データ量を大幅に削減することができるので、無線信号や電磁ノイズの特徴を維持しつつ個々のデータ量が少ない特徴量データを大量に取得し、取得した大量の特徴量データを用いて、信号種別分類器の学習済みモデルにより信号種別分類処理を行うことができる。したがって、この信号種別分類システムでは、周波数スペクトルや波形パターンの予測が困難な無線信号や電磁ノイズであっても、その種別を適切に分類することができる。
【0028】
第7の発明は、第6の発明であって、特徴量データは、ケプストラムから抽出されるデータである。
【0029】
これにより、この信号種別分類システムでは、ケプストラムから抽出されるデータを特徴量データとして、処理を実行することができる。
【0030】
第8の発明は、第6の発明であって、特徴量データは、ケプストラムの低次成分を抽出または加工したデータである。
【0031】
これにより、この信号種別分類システムでは、ケプストラムの低次成分を抽出または加工したデータを特徴量データとして、処理を実行することができる。
なお、ケプストラムの低次成分を「加工」するとは、例えば、ケプストラムの低次成分に対して、所定の処理(例えば、フィルタ処理)等を施すことを含む概念である。なお、「加工」は、電波波形の特徴を維持しつつ、周波数領域での白色ノイズ成分を効果的に抑制したデータを取得できる処理であれば、どのような処理でもよい。
【0032】
第9の発明は、N個(N:自然数)の第6から第8のいずれかの発明である信号種別分類システムと、N個の信号種別分類システムにより取得されたデータであって、特徴量データとラベルとを対応付けたデータである信号種別データを、N個の信号種別分類システムから収集するサーバと、を備えるデータ収集システム。
【0033】
これにより、このデータ収集システムでは、信号種別分類システムにより取得したデータをサーバに集約し、サーバで多様な処理(データ解析処理、データ可視化処理)を行うことができる。
【0034】
第10の発明は、第1から5のいずれかの発明である学習用データ生成方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0035】
これにより、第1から第5の発明のいずれかの発明と同様の効果を奏する学習用データ生成方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを実現することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、周波数スペクトルや波形パターンの予測が困難な無線信号や電磁ノイズの種別を適切に分類する信号種別分類システム、および、信号種別分類システムに搭載される分類器を機械学習により構築するための学習用データ生成方法、データ収集システム、および、プログラムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】第1実施形態に係る信号種別分類システム100の概略構成図。
【
図2】信号種別分類システム100の学習時の処理(学習用データ生成処理)を説明するためのシーケンス図。
【
図3】信号種別分類システム100で実行される特徴量取得処理を説明するための図。
【
図4】信号種別分類システム100で実行される特徴量取得処理を説明するための図。
【
図5】信号種別分類システム100で実行される特徴量取得処理を説明するための図。
【
図6】クラスタリング処理におけるクラスタ数(分類数)の最適数の取得処理のフローチャート。
【
図7】クラスタリング処理におけるクラスタ数(分類数)の最適数の取得処理を説明するための図。
【
図8】予測時における信号種別分類システム100の概略構成図。
【
図9】信号種別分類システム100の予測時の処理(信号種別分類処理)を説明するためのシーケンス図。
【
図10】n個の信号種別分類システム100_1~100_nを含むデータ収集システム1000の概略構成図。
【
図11】第1実施形態の第1変形例の信号種別分類システム100Aの概略構成図。
【
図12】第1実施形態の第2変形例の信号種別分類システム100Bの概略構成図。
【
図13】第1実施形態の第3変形例のデータ収集システム1000Aの概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[第1実施形態]
第1実施形態について、図面を参照しながら、以下、説明する。
【0039】
<1.1:信号種別分類システムの構成>
図1は、第1実施形態に係る信号種別分類システム100の概略構成図である。
【0040】
信号種別分類システム100は、
図1に示すように、N個(N:自然数)の無線通信機S1_1~S1_Nと、ホスト装置H1と、N個の無線通信機S1_1~S1_N(N:自然数)とを備える。
【0041】
(1.1.1:無線通信機)
無線通信機S1_1は、
図1に示すように、アンテナAnt_S1と、RF処理部11と、IQデータ取得部12と、特徴量取得部13と、第1通信インターフェース14と、無線通信機用制御部15と、を備える。
【0042】
アンテナAnt_S1は、外部から放射(送信)された電波(RF信号)を受信するためのアンテナである。
【0043】
RF処理部11は、アンテナAnt_S1を介して、外部からRF信号を受信し、受信したRF信号に対して受信用のRF処理(RF復調処理、AD変換等)を実行し、RF処理後の信号Sig0(RF復調信号Sig0(例えば、ベースバンドOFDM信号))を取得する。そして、RF処理部11は、RF処理後の信号Sig0をIQデータ取得部12に出力する。なお、RF処理部11は、無線通信機用制御部15から制御信号CTL1を入力し、当該制御信号CTL1により処理を行う。また、RF処理部11は、制御信号CTL1に従い、RF処理の対象とする周波数帯域(例えば、中心周波数fo、周波数帯域Δf)を設定し、受信用のRF処理を行うことで、上記で設定した周波数領域のRF信号のRF復調信号Sig0を取得する。
【0044】
IQデータ取得部12は、無線通信機用制御部15から出力される制御信号CTL2と、RF処理部11から出力される信号Sig0とを入力する。IQデータ取得部12は、制御信号CTL2に従い、RF処理部11から出力される信号Sig0から、I成分信号(同相成分信号)のデータ(I成分データ)と、Q成分信号(直交成分信号)のデータ(Q成分データ)とを取得し、取得したデータをデータD1として、特徴量取得部13に出力する。
【0045】
特徴量取得部13は、無線通信機用制御部15から出力される制御信号CTL3と、IQデータ取得部12から出力されるデータD1とを入力する。特徴量取得部13は、制御信号CTL3に従い、IQデータ取得部12から出力されるデータD1に対して、特徴量取得処理を実行し、所定の特徴量を取得する(詳細については、後述)。そして、特徴量取得部13は、取得した特徴量を含むデータをデータD2として、第1通信インターフェース14に出力する。
【0046】
第1通信インターフェース14は、例えば、有線のネットワーク(所定のシリアルバス規格(例えば、USBやPCI Express)等に準拠した通信路を含む)または無線のネットワークを介して、外部の装置とデータ送受信を行うための通信インターフェースである。そして、第1通信インターフェース14は、無線通信機S1_1とホスト装置H1との間で、コマンド、データ等を通信するための通信インターフェース(例えば、USBによる通信を行うための通信インターフェース)である。
【0047】
第1通信インターフェース14は、特徴量取得部13から出力されるデータD2を入力し、入力したデータを有線または無線のネットワークを介して通信できる形式のデータにしてホスト装置H1に送信する。
【0048】
また、第1通信インターフェース14は、ホスト装置H1から受信したコマンドCmd1を無線通信機用制御部15に出力する。
【0049】
無線通信機用制御部15は、無線通信機S1_1の各機能部を制御するための機能部であり、ホスト装置H1から第1通信インターフェース14を介して受信したコマンドCmd1に従い、所定の制御信号を生成し、生成した制御信号を各機能部に出力することで、各機能部を制御する。例えば、無線通信機用制御部15は、RF処理部11を制御するための制御信号CTL1を生成し、当該制御信号CTL1をRF処理部11に出力する。また、無線通信機用制御部15は、IQデータ取得部12を制御するための制御信号CTL2を生成し、当該制御信号CTL2をIQデータ取得部12に出力する。また、無線通信機用制御部15は、特徴量取得部13を制御するための制御信号CTL3を生成し、当該制御信号CTL3を特徴量取得部13に出力する。
【0050】
無線通信機S1_2~S1_Nは、それぞれ、上記と同様の構成(無線通信機S1_1と同様の構成)を有している。なお、信号種別分類システム100に含まれる無線通信機は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0051】
(1.1.2:ホスト装置)
ホスト装置H1は、
図1に示すように、第2通信インターフェース21と、ホスト装置用制御部22と、ROM23と、RAM24と、取得データ用バッファ25と、記憶部26と、第3通信インターフェース27と、バスBus_H1と、を備える。第2通信インターフェース21、ホスト装置用制御部22、ROM23、RAM24、取得データ用バッファ25、記憶部26、および、第3通信インターフェース27は、バスBus_H1に接続されており、バスBus_H1を介して、互いにデータ、コマンド等を送受信できる。なお、ホスト装置H1の上記機能部の一部または全部は、必ずしもバス接続されていなくてもよく、直接接続されるものであってもよい。
【0052】
第2通信インターフェース21は、例えば、有線または無線のネットワーク(所定のシリアルバス規格(例えば、USBやPCI Express)等に準拠した通信路を含む)を介して、外部の装置とデータ送受信を行うための通信インターフェースである。そして、第2通信インターフェース21は、無線通信機S1_1とホスト装置H1との間で、コマンド、データ等を通信するための通信インターフェース(例えば、USBによる通信を行うための通信インターフェース)である。
【0053】
第2通信インターフェース21は、無線通信機S1_1~S1_Nから送信されるデータを受信する。そして、第2通信インターフェース21は、受信したデータを取得データ用バッファ25に出力する。また、第2通信インターフェース21は、ホスト装置用制御部22により生成されたコマンドCmd1を、ホスト装置用制御部22が指定する送信先(無線通信機S1_1~S1_Nの1つまたは複数)へ送信するための送信データを生成し、当該送信データを送信先に送信する。
【0054】
ホスト装置用制御部22は、ホスト装置H1の各機能部を制御するための機能部であり、各機能部を制御するための制御信号を生成し、生成した制御信号を該当する機能部に出力することで、各機能部を制御する。また、ホスト装置用制御部22は、無線通信機S1_1~S1_Nの1つまたは複数を制御するためのコマンドCmd1を生成し、生成したコマンドCmd1を、第2通信インターフェース21を介して、該当する(指定した送信先の)無線通信機へ送信する。
【0055】
また、ホスト装置用制御部22は、学習モードと予測モードとを切り替えるモード切替機能を有しており、ホスト装置用制御部22により、ホスト装置H1の動作モードが学習モード、または、予測モードに設定される。
【0056】
ホスト装置用制御部22は、学習モードにおいて、ホスト装置H1にて、学習処理(または、学習用データの生成得処理)が実行されるように、各機能部を制御する。また、ホスト装置用制御部22は、予測モードにおいて、ホスト装置H1にて、予測処理(例えば、信号種別分類処理)が実行されるように、各機能部を制御する。
【0057】
また、ホスト装置用制御部22は、ROM23に記憶されているデータ(命令、コード等)を読み出し、ROMに記憶されているプログラム等を実行する。また、ホスト装置用制御部22は、RAM24に、所定のデータ、コード等を記憶し、所定のタイミングでRAM24に記憶されているデータ、コード等を読み出すことで、所定の処理(プログラム等)を実行する。
【0058】
ROM23は、読み出し専用メモリであり、ホスト装置H1で実行されるプログラム、ライブラリ、命令、コード等が記憶される。ROM23に記憶されているデータは、ホスト装置用制御部22により読み出される。
【0059】
RAM24は、ランダムアクセスメモリであり、ホスト装置H1で所定の処理を実行するためのデータ、コマンド、コード等が記憶される。RAM24に記憶されているデータ、コマンド、コード等は、ホスト装置用制御部22により読み出される。
【0060】
取得データ用バッファ25は、第2通信インターフェース21により受信した無線通信機S1_1~S1_Nからの送信データを記憶するためのバッファである。なお、取得データ用バッファ25は、例えば、無線通信機S1_1~S1_Nごとのデータを分けて記憶管理するために、無線通信機の数と同数のバッファ(例えば、
図1のバッファBuf_1~Buf_N)を含むものであってもよい。また、取得データ用バッファ25は、1つのバッファを含むものであり、当該1つのバッファにおいて、記憶領域を無線通信機の数と同数のメモリ領域に分けて、メモリ管理を行うものであってもよい。
【0061】
記憶部26は、データを記憶するための装置である。記憶部26には、例えば、ホスト装置H1により取得された学習用データが記憶される。
【0062】
第3通信インターフェース27は、例えば、有線または無線のネットワーク(例えば、LAN)を介して、外部の装置とデータ送受信を行うための通信インターフェースである。ホスト装置H1は、例えば、外部に設置されたサーバと、第3通信インターフェース27を介して、データ通信を行う。
【0063】
<1.2:信号種別分類システムの動作>
以上のように構成された信号種別分類システム100の動作について、以下、図面を参照しながら説明する。
【0064】
図2は、信号種別分類システム100の学習時の処理(学習用データ生成処理)を説明するためのシーケンス図である。
【0065】
図3は、信号種別分類システム100で実行される特徴量取得処理を説明するための図である。
【0066】
図4は、信号種別分類システム100で実行される特徴量取得処理を説明するための図であり、無線信号(狭帯域通信の信号)、電磁ノイズ(タイプ1)、および、電磁ノイズ(タイプ2)のスペクトルおよびケプストラムを示した図である(920MHz帯を対象とする処理)。
【0067】
図5は、信号種別分類システム100で実行される特徴量取得処理を説明するための図であり、無線信号(狭帯域通信の信号)、電磁ノイズ(タイプ1)、および、電磁ノイズ(タイプ2)のスペクトルおよびケプストラム(低次元領域(16次元分の領域)を拡大したケプストラム)を示した図である。
【0068】
図6は、クラスタリング処理におけるクラスタ数(分類数)の最適数の取得処理のフローチャートである。
【0069】
図7は、クラスタリング処理におけるクラスタ数(分類数)の最適数の取得処理を説明するための図である。
【0070】
以下では、説明便宜のため、狭空間(例えば、工場内)に、N=3として、3台の無線通信機S1_1、S1_2、S1_3、および、ホスト装置H1が設置されており、(1)無線通信機S1_1において、920MHz帯域の無線信号および電磁ノイズのデータを取得し、(2)無線通信機S1_2において、2.4GHz帯域の信号および電磁ノイズのデータを取得し、(3)無線通信機S1_3において、5.2GHz帯域の信号および電磁ノイズのデータを取得する場合(一例)について説明する。
【0071】
また、信号種別分類システム100の動作について、(1)学習時の処理と、(2)予測時の処理とに分けて、以下、説明する。
【0072】
(1.2.1:学習時の処理)
まず、信号種別分類システム100の学習時の処理について説明する。
【0073】
(ステップS1):
ステップS1において、ホスト装置H1は、初期化処理を実行する。具体的には、以下のように処理が実行される。
【0074】
ホスト装置H1のホスト装置用制御部22は、無線通信機S1_1に対して、中心周波数fo=920MHz、周波数帯域Δf=15MHzの周波数帯域(920MHz帯域)の無線信号および電磁ノイズのデータを取得させるためのコマンドCmd1(fo=920MHz,Δf=15MHz)を生成し、当該コマンドCmd1(fo=920MHz,Δf=15MHz)を含むデータを、第2通信インターフェース21を介して、当該コマンドの送信先である無線通信機S1_1に送信する。
【0075】
また、ホスト装置H1のホスト装置用制御部22は、無線通信機S1_2に対して、中心周波数fo=2.4GHz、周波数帯域Δf=15MHzの周波数帯域(2.4GHz帯域)の無線信号および電磁ノイズのデータを取得させるためのコマンドCmd1(fo=2.4GHz,Δf=15MHz)を生成し、当該コマンドCmd1(fo=2.4GHz,Δf=15MHz)を含むデータを、第2通信インターフェース21を介して、当該コマンドの送信先である無線通信機S1_2に送信する。
【0076】
また、ホスト装置H1のホスト装置用制御部22は、無線通信機S1_3に対して、中心周波数fo=5.2GHz、周波数帯域Δf=15MHzの周波数帯域(5.2GHz帯域)の無線信号および電磁ノイズのデータを取得させるためのコマンドCmd1(fo=5.2GHz,Δf=15MHz)を生成し、当該コマンドCmd1(fo=5.2GHz,Δf=15MHz)を含むデータを、第2通信インターフェース21を介して、当該コマンドの送信先である無線通信機S1_3に送信する。
【0077】
(ステップS1.1):
無線通信機S1_1は、ホスト装置H1から送信されたコマンドCmd1(fo=920MHz,Δf=15MHz)を含む通信データを受信する。無線通信機S1_1の第1通信インターフェース14は、受信した通信データからホスト装置H1から送信されたコマンドCmd1(fo=920MHz,Δf=15MHz)を抽出し、抽出したコマンドCmd1(fo=920MHz,Δf=15MHz)を、無線通信機用制御部15に出力する。
【0078】
無線通信機S1_1の無線通信機用制御部15は、コマンドCmd1(fo=920MHz,Δf=15MHz)に従い、RF処理部11において、fo=920MHz,Δf=15MHzの周波数帯域の無線信号(および電磁ノイズ)が受信するように指示する制御信号CTL1を生成し、当該制御信号CTL1をRF処理部11に出力する。
【0079】
無線通信機S1_1のRF処理部11は、制御信号CTL1に従い、受信可能周波数帯域を、fo=920MHz,Δf=15MHzの周波数帯域に設定する。
【0080】
上記周波数帯域の設定処理を行った後、無線通信機S1_1の無線通信機用制御部15は、ホスト装置H1から受信したコマンドCmd1に対応する処理が完了したことを示すAck信号を、第1通信インターフェース14を介して、ホスト装置H1へ送信する。
【0081】
(ステップS1.2):
無線通信機S1_2は、ホスト装置H1から送信されたコマンドCmd1(fo=2.4GHz,Δf=15MHz)を含む通信データを受信する。無線通信機S1_2の第1通信インターフェース14は、受信した通信データからホスト装置H1から送信されたコマンドCmd1(fo=2.4GHz,Δf=15MHz)を抽出し、抽出したコマンドCmd1(fo=2.4GHz,Δf=15MHz)を、無線通信機用制御部15に出力する。
【0082】
無線通信機S1_2の無線通信機用制御部15は、コマンドCmd1(fo=2.4GHz,Δf=15MHz)に従い、RF処理部11において、fo=2.4GHz,Δf=15MHzの周波数帯域の無線信号(および電磁ノイズ)が受信するように指示する制御信号CTL1を生成し、当該制御信号CTL1をRF処理部11に出力する。
【0083】
無線通信機S1_2のRF処理部11は、制御信号CTL1に従い、受信可能周波数帯域を、fo=2.4GHz,Δf=15MHzの周波数帯域に設定する。
【0084】
上記周波数帯域の設定処理を行った後、無線通信機S1_2の無線通信機用制御部15は、ホスト装置H1から受信したコマンドCmd1に対応する処理が完了したことを示すAck信号を、第1通信インターフェース14を介して、ホスト装置H1へ送信する。
【0085】
(ステップS1.3):
無線通信機S1_3は、ホスト装置H1から送信されたコマンドCmd1(fo=5.2GHz,Δf=15MHz)を含む通信データを受信する。無線通信機S1_3の第1通信インターフェース14は、受信した通信データからホスト装置H1から送信されたコマンドCmd1(fo=5.2GHz,Δf=15MHz)を抽出し、抽出したコマンドCmd1(fo=5.2GHz,Δf=15MHz)を、無線通信機用制御部15に出力する。
【0086】
無線通信機S1_3の無線通信機用制御部15は、コマンドCmd1(fo=5.2GHz,Δf=15MHz)に従い、RF処理部11において、fo=5.2GHz,Δf=15MHzの周波数帯域の無線信号(および電磁ノイズ)が受信するように指示する制御信号CTL1を生成し、当該制御信号CTL1をRF処理部11に出力する。
【0087】
無線通信機S1_3のRF処理部11は、制御信号CTL1に従い、受信可能周波数帯域を、fo=5.2GHz,Δf=15MHzの周波数帯域に設定する。
【0088】
上記周波数帯域の設定処理を行った後、無線通信機S1_3の無線通信機用制御部15は、ホスト装置H1から受信したコマンドCmd1に対応する処理が完了したことを示すAck信号を、第1通信インターフェース14を介して、ホスト装置H1へ送信する。
【0089】
ホスト装置H1は、無線通信機S1_1~S1_3から、送信したコマンドCmd1に対するAck信号を受信したら、無線通信機S1_1~S1_3において、送信したコマンドCmd1に従う設定が完了したと判断し、処理をステップS2に進める。
【0090】
(ステップS2):
ステップS2において、ホスト装置H1は、データ取得指示処理を実行する。具体的には、以下のように処理が実行される。
【0091】
ホスト装置H1のホスト装置用制御部22は、無線通信機S1_1~S1_3のぞれぞれに対してデータ取得開始を指示するコマンドCmd1(Data_get_start)を生成する。そして、ホスト装置用制御部22は、第2通信インターフェース21を介して、生成したコマンドCmd1(Data_get_start)を含む通信データを、無線通信機S1_1~S1_3のそれぞれに送信する。
【0092】
無線通信機S1_1は、ホスト装置H1から送信されたコマンドCmd1(Data_get_start)を含む通信データを受信する。無線通信機S1_1の第1通信インターフェース14は、受信した通信データからホスト装置H1から送信されたコマンドCmd1(Data_get_start)を抽出し、抽出したコマンドCmd1(Data_get_start)を、無線通信機用制御部15に出力する。
【0093】
無線通信機S1_1の無線通信機用制御部15は、コマンドCmd1(Data_get_start)に従い、データ取得処理を実行(開始)するための制御信号CTL1~CTL3を生成し、生成した制御信号CTL1をRF処理部11に、生成した制御信号CTL2をIQデータ取得部12に、生成した制御信号CTL3を特徴量取得部13に出力する。
【0094】
無線通信機S1_1のRF処理部11、IQデータ取得部12、および、特徴量取得部13は、無線通信機用制御部15から入力した制御信号CTL1~CTL3に従い、データ取得処理を実行(開始)する。
【0095】
また、無線通信機S1_2、および、無線通信機S1_3においても、上記と同様の処理が実行され、データ取得処理が実行(開始)される。
【0096】
(ステップS3):
ステップS3において、無線通信機S1_1~S1_3のそれぞれにおいて、特徴量データ取得処理が実行される。具体的には、以下のように処理が実行される。
【0097】
無線通信機S1_1のRF処理部11は、アンテナAnt_S1を介して、外部からRF信号を受信し、受信したRF信号に対して受信用のRF処理(920MHz帯のRF復調処理、AD変換等)を実行し、RF処理後の信号Sig0(RF復調信号Sig0(例えば、ベースバンドOFDM信号))を取得する。そして、RF処理部11は、RF復調信号Sig0をIQデータ取得部12に出力する。
【0098】
無線通信機S1_1のIQデータ取得部12は、RF処理部11から出力される信号Sig0から、I成分信号(同相成分信号)のデータ(I成分データ)と、Q成分信号(直交成分信号)のデータ(Q成分データ)とを取得し、取得したデータをデータD1として、特徴量取得部13に出力する。
【0099】
無線通信機S1_1の特徴量取得部13は、IQデータ取得部12から出力されるデータD1に対して、特徴量取得処理を実行し、所定の特徴量を取得する。具体的には、特徴量取得部13は、データD1の所定の期間のサンプル(所定数のサンプル)からケプストラムを計算し、計算したケプストラムの低次成分のみのデータを特徴量として取得する。
【0100】
つまり、特徴量取得部13は、データD1から、所定の期間に含まれるk個のサンプル(I成分データ、および/または、Q成分データのk個のサンプル)をRx信号サンプル集合x
n(1≦n≦Nmax)して取得し、取得したRx信号サンプル集合x
nに対して、下記数式に相当する処理を行うことで、ケプストラムのデータ(集合)c
nを取得する(
図3を参照)。
s
n=log(|DFT(x
n)|)
c
n=DFT
-1(s
n)
DFT():離散フーリエ変換
DFT
-1():逆離散フーリエ変換
|x|:xの絶対値
log():対数をとる関数
さらに、特徴量取得部13は、上記により取得したケプストラムのデータ(集合)c
nの要素のうち低次元の要素のみを抽出する処理、すなわち、下記数式に相当する処理を実行し、特徴量データc
fnを取得する(
図3を参照)。
c
fn=LPF_cep(c
n)
LPF_cep():ケプストラムの低次成分のデータ(低次元要素)を抽出する関数
例えば、特徴量取得部13は、ケプストラムのデータ(集合)c
nが15000次元のベクトルである場合、ケプストラムのデータ(集合)c
nの16次元分のデータ(ケプストラムのデータ(ベクトル)の1~16次元のデータ(15000次元のベクトルの1番目の要素から16番目の要素を取り出したデータ)を取り出したデータ)を特徴量データとして取得する。なお、特徴量取得部13は、ケプストラムの低次成分のデータに対して加工したデータ(例えば、所定のフィルタを施したデータ)を特徴量データとして取得するようにしてもよい。
【0101】
このように特徴量データ取得処理を行うことで、データ量を大幅に削減することができるため、無線通信機S1_1~S1_3からホスト装置H1への送信データ量を大幅に削減することができ、さらに、ホスト装置H1でのクラスタリング処理で使用するデータ量も大幅に削減される。したがって、ホスト装置H1でのクラスタリング処理を高速化することができる。
【0102】
さらに、上記のように特徴量データ取得処理を行うことで、ホスト装置H1でのクラスタリング処理の精度を向上させることができる。これについて、
図4、
図5を用いて説明する。
【0103】
図4は、920MHz帯を処理対象とした場合の(1)無線信号(狭帯域通信の信号)、(2)電磁ノイズ(タイプ1)、および、(3)電磁ノイズ(タイプ2)の
(A)Rx信号サンプル集合x
n(IQサンプルの集合に相当)のスペクトルs
n(=log(|DFT(x
n)|))(
図4の上段のSptr()で示したデータ)、
(B)ケプストラムc
n(=DFT
-1(s
n))(
図4の下段のCepstrum()で示したデータ)、および、
(C)リフタードスペクトル(
図4の上段のLiftered_sptr()で示したデータ)
を示した図である。
【0104】
なお、リフタードスペクトルは、ケプストラムの低次元側の16次元のみを抽出し、17次元以降のデータを「0」にしたデータ(低域ケプストラム)に対して、離散フーリエ変換を施して取得したデータ(スペクトル)である。
【0105】
図4から分かるように、(1)無線信号(狭帯域通信の信号)、(2)電磁ノイズ(タイプ1)、および、(3)電磁ノイズ(タイプ2)のリフタードスペクトルは、互いに明確に区別可能なデータ(グラフ)となっている。つまり、ケプストラムの低次元側の16次元のみを抽出することで取得される特徴量データは、(1)無線信号(狭帯域通信の信号)、(2)電磁ノイズ(タイプ1)、および、(3)電磁ノイズ(タイプ2)を区別し、異なる種類のデータとして明確に分類できるデータである。ケプストラムの低次元側のデータ(例えば、低次元側の16次元のデータ)は、リフタードスペクトラムに変換したときのデータから分かるように(
図4の上段のグラフを参照)、白色ノイズ成分(周波数領域において略一様に生じるノイズ成分)を抑制しつつ、無線信号または電磁ノイズの特徴的な部分を効果的に抽出した(反映させた)データとなる。
図5の下段のケプストラムの低次元側の16次元のデータにおいても、無線信号および電磁ノイズ(例えば、
図5の無線信号、電磁ノイズ(タイプ1)、および、電磁ノイズ(タイプ2))の特徴的な部分が反映されており、無線信号および電磁ノイズ(例えば、
図5の無線信号、電磁ノイズ(タイプ1)、および、電磁ノイズ(タイプ2))の種別分け(区別)が十分可能であることが分かる。
【0106】
すなわち、ケプストラムの低次元側の16次元のみを抽出することで取得される特徴量データは、無線信号または電磁ノイズの区別を困難にする白色ノイズ成分の影響を抑えることができ、かつ、無線信号または電磁ノイズの特徴的部分を効果的に抽出した(反映させた)データとなる。
【0107】
したがって、上記のように、ケプストラムの低次元側のデータのみ(低次元側の16次元のデータ)を抽出することで特徴量データを取得する処理を行い、当該処理により取得された特徴量データを用いて、クラスタリング処理を行うことで、クラスタリング処理の精度を向上させることができる。
【0108】
無線通信機S1_1の特徴量取得部13は、上記により取得した特徴量データを、データD2として、第1通信インターフェース14に出力する。第1通信インターフェース14は、特徴量取得部13により取得されたデータD2を含む通信データ(これを送信データDtx(D2,S1_1)と表記する)をホスト装置H1に送信する。
【0109】
無線通信機S1_2、S1_3においても、上記と同様の処理が実行され、無線通信機S1_2、S1_3により、それぞれ取得された特徴量データD2を含む通信データ(送信データDtx(D2,S1_2)、Dtx(D2,S1_3))が、ホスト装置H1に送信される。
【0110】
(ステップS4):
ステップS4において、ホスト装置H1は、無線通信機S1_1~S1_3のそれぞれから、送信されてくる通信データDtx(D2,S1_1)、Dtx(D2,S1_2)、Dtx(D2,S1_3)を、第2通信インターフェース21により受信する。そして、第2通信インターフェース21は、受信した通信データから、各無線通信機により取得された特徴量データD2を取得し、取得した特徴量データD2を取得データ用バッファ25に出力する。なお、このとき、ホスト装置H1のホスト装置用制御部22は、取得した特徴量データD2がどの無線通信機により取得されたデータであるかが分かるように、取得データ用バッファ25に記憶し管理する。例えば、ホスト装置H1のホスト装置用制御部22は、無線通信機S1_1から取得された特徴量データD2を、取得データ用バッファ25のバッファBuf_1に記憶し、無線通信機S1_2から取得された特徴量データD2を、取得データ用バッファ25のバッファBuf_2に記憶し、無線通信機S1_3から取得された特徴量データD2を、取得データ用バッファ25のバッファBuf_3に記憶するようにしてもよい。
【0111】
なお、無線通信機S1_1~S1_3において、大量の特徴量データを取得するために、ステップS3、S4の処理は、繰り返し実行されるものであってもよい。
【0112】
(ステップS5):
ステップS5において、ホスト装置H1は、無線通信機S1_1~S1_3により取得され、取得データ用バッファ25に記憶された特徴量データに対して、クラスタリング処理を行う。具体的には、ホスト装置H1のホスト装置用制御部22は、例えば、k-means++法により、取得データ用バッファ25に記憶された特徴量データをクラスタに分類する処理を実行する。
【0113】
ここで、クラスタリング処理におけるクラスタ数(分類数)の最適数の取得処理(取得方法)について、
図6のフローチャート、および、
図7の説明図を用いて説明する。
【0114】
(ステップSA101~SA104):
ホスト装置H1は、乱数シードをseed1に設定し(ステップSA101)、クラスタ数kの初期値を「2」に設定する(ステップSA102)。
【0115】
ステップSA103において、ホスト装置H1は、例えば、k-means++法により、取得データ用バッファ25に記憶された特徴量データをクラスタに分類する処理(クラスタリング処理)を実行する。
【0116】
そして、ステップSA104において、ホスト装置H1は、ステップSA103のクラスタリング結果のデータをデータRst(k,seed1)として取得する。
【0117】
(ステップSB101~SB104):
ホスト装置H1は、乱数シードをseed2(seed1とは異なる値)に設定し(ステップSB101)、クラスタ数kの初期値を「2」に設定する(ステップSB102)。
【0118】
ステップSB103において、ホスト装置H1は、例えば、k-means++法により、取得データ用バッファ25に記憶された特徴量データ(ステップSA103で処理対象としたデータと同じデータ)をクラスタに分類する処理(クラスタリング処理)を実行する。
【0119】
そして、ステップSB104において、ホスト装置H1は、ステップSB103のクラスタリング結果のデータをデータRst(k,seed2)として取得する。
【0120】
(ステップS106)
ステップS106において、ホスト装置H1は、乱数シードをseed1としたときのクラスタリング結果データRst(k,seed1)と、乱数シードをseed2としたときのクラスタリング結果データRst(k,seed2)とが同一であるか否かを判定する。そして、判定の結果、クラスタリング結果データRst(k,seed1)とクラスタリング結果データRst(k,seed2)とが同一である場合、ホスト装置は、変数k0に現在設定されているクラスタ数kを代入し(ステップS106)、さらに、kの値を+1だけインクリメントする処理を行う(ステップS107)。そして、処理をSA103およびSB103に戻す。そして、ステップSA103~SA104、SB103~SB104、S105の処理が繰り返し実行される。
【0121】
一方、判定の結果、クラスタリング結果データRst(k,seed1)とクラスタリング結果データRst(k,seed2)とが同一ではない場合、ホスト装置H1は、クラスタ数の最適数k_optに、現在設定されているクラスタ数の1つ前に設定されたクラスタ数k0を設定する。これにより、乱数シードを変えた場合に、クラスタリング結果が同一である最大のクラスタ数がクラスタ数の最適数に設定される。つまり、上記処理により、クラスタ数の最適数k_optを取得できる。
【0122】
図7は、上記のクラスタ数の最適数を求める処理の一例を示しており、
(A)乱数シードを「35」に設定したときの
(A1)クラスタ数=3(k=3)の場合のクラスタリング結果、
(A2)クラスタ数=3(k=4)の場合のクラスタリング結果、
(A3)クラスタ数=3(k=5)の場合のクラスタリング結果、および、
(B)乱数シードを「171」に設定したときの
(B1)クラスタ数=3(k=3)の場合のクラスタリング結果、
(B2)クラスタ数=3(k=4)の場合のクラスタリング結果、
(B3)クラスタ数=3(k=5)の場合のクラスタリング結果、
を示している。
図7のグラフにおいて、横軸は時間であり、縦軸はクラスタ番号である。
【0123】
図7の場合、クラスタ数=4(k=4)としたときの乱数シード=35のクラスタリング結果(Rst(k=4,seed1=35))と、乱数シード=171のクラスタリング結果(Rst(k=4,seed2=171))とは、同一データであるが、クラスタ数=5(k=5)としたときの乱数シード=35のクラスタリング結果(Rst(k=5,seed1=35))と、乱数シード=171のクラスタリング結果(Rst(k=5,seed2=171))とは、同一データではない(図中の点線で囲んだ部分、および、一点鎖線で囲んだ部分のクラスタリングの結果が異なる)。
【0124】
したがって、
図7の場合、乱数シードを変更したときに同一のクラスタリング結果が得られるクラスタ数の最大数が「4」となり、この値がクラスタ数の最適数k_optに設定される。
【0125】
つまり、ホスト装置H1では、上記処理により、クラスタ数の最適数k_optを取得し、取得したクラスタ数の最適数k_optにより、例えば、k-means++法により、クラスタリング処理を実行する。これにより、ホスト装置H1では、精度の高いクラスタリング処理を実行することができる。
【0126】
なお、クラスタ数の最適数k_optを取得する処理は、
図6に示すフローチャートの手順に限定されることなく、例えば、変更する乱数シードの数を「3」以上にしてもよい。この場合、SA101~SA104と同様の処理(乱数シードは、seed1、seed2とは異なる値に設定)を乱数シードの数分だけ並列に実行し、設定した乱数シードの数がN1である場合、ステップS105において、N1個のクラスタリング結果データが全て同一か否かを判定するようにすればよい。また、
図6の並列処理で実行されるステップ(SA101~SA104、SB101~SB104)は、直列に処理(シリアルに処理)されるものであってもよい。
【0127】
(ステップS6):
ステップS6において、ホスト装置H1では、教師データ生成処理が実行される。具体的には、ホスト装置H1では、ステップS5のクラスタリング処理の結果に基づいて、例えば、同一クラスタに分類されたデータに対して、(自動または手動で)同一のラベルを付与することで学習用データ(教師データ)を生成する。つまり、ホスト装置H1では、特徴量データと、その特徴量データが分類されたクラスタに付与されたラベルとを対応付けたデータを学習用データとすることで、特徴量データから信号種別を分類する分類器のニューラルネットワークモデルを学習させるためのデータ(学習用データ(教師データ))を生成する。
【0128】
ステップS6で生成された学習用データを用いて、特徴量データから信号種別を分類する分類器をニューラルネットワークなどの分類モデルで学習させることで、特徴量データから信号種別を分類する分類器の学習済みモデルを取得する。なお、この学習処理は、ホスト装置H1で実行してもよいし、サーバ等の処理能力の高いコンピュータにより実行してもよい。
【0129】
上記学習処理により取得された、特徴量データから信号種別を分類する分類器の学習済みモデルを、ホスト装置H1のROM23、あるいは、RAM24に構築する。つまり、上記学習処理により取得された、特徴量データから信号種別を分類する分類器の学習済みモデルにより処理を実行するためのプログラム、コード、および、パラメータのデータ等を、ホスト装置H1のROM23、あるいは、RAM24に記憶させる。
【0130】
(1.2.2:予測時の処理)
次に、信号種別分類システム100の予測時の処理について説明する。
【0131】
図8は、予測時における信号種別分類システム100の概略構成図である。
【0132】
なお、
図8に示すように、上記の学習処理により取得された、特徴量データから信号種別を分類する分類器の学習済みモデルを、ホスト装置H1のROM23に構築されているものとする。つまり、上記の学習処理により取得された、特徴量データから信号種別を分類する分類器の学習済みモデルにより処理を実行するためのプログラム、コード、および、パラメータのデータ等は、ホスト装置H1のROM23に記憶されているものとする。
【0133】
図9は、信号種別分類システム100の予測時の処理(信号種別分類処理)を説明するためのシーケンス図である。
【0134】
図10は、n個の信号種別分類システム100_1~100_nを含むデータ収集システム1000の概略構成図である。
【0135】
(ステップS21~S24):
ステップS21~S24において、信号種別分類システム100では、学習時のステップS1~S4と同様の処理が実行される。
【0136】
(ステップS25):
ステップS25において、ホスト装置H1は、信号種別分類処理を実行する。具体的には、ホスト装置H1は、取得データ用バッファ25に記憶されている特徴量データを、ホスト装置H1において構築されている信号種別分類器の学習済みモデルに入力し、信号種別分類器の学習済みモデルから出力されるデータを取得する。信号種別分類器の学習済みモデルから出力されるデータは、入力された特徴量データにラベルを付与したデータであり、付与されたラベルにより、入力された特徴量データの取得元の無線信号、または、電磁ノイズの種別を特定することができる(信号種別を分類することができる)。
【0137】
なお、ホスト装置H1は、上記により取得した信号種別を分類したデータ(ラベルを付与されたデータ)を、第3通信インターフェース27を介して、例えば、外部に設置されているサーバに送信するようにしてもよい。
【0138】
例えば、
図10に示すように、ホスト装置H1を、ネットワークNW1(例えば、LAN)を介して、サーバSvr1に接続し、ホスト装置H1は、上記により取得した信号種別を分類したデータ(ラベルを付与されたデータ)を、第3通信インターフェース27、ネットワークNW1を介して、サーバSvr1に送信するようにしてもよい。
【0139】
また、
図10に示すように、n個(n:2以上の自然数)の信号種別分類システム100_1~100_nを設け、各信号種別分類システム100_1~100_nのホスト装置H1~Hnを、ネットワークNW1を介してサーバSvr1に接続することで、データ収集システム1000を構築するようにしてもよい。
【0140】
このように構築したデータ収集システム1000では、例えば、狭空間の別々の位置に、信号種別分類システム100_1~100_nを設置することで、当該狭空間を飛び交う無線信号や電磁ノイズの特徴量データから学習済みモデル(分類器)により取得した信号種別を分類したデータ(ラベルを付与されたデータ)を大量に取得でき、かつ、取得した大量のデータをサーバSvr1に集めることができる。なお、サーバSvr1は、
図10に示すように、大量のデータを記憶保持することができるデータ記憶部Strgに接続されているものであってもよく、この場合、サーバSvr1は、信号種別分類システム100_1~100_nから収集したデータ(信号種別分類データ)をデータ記憶部Strgに記憶させる。
【0141】
さらに、サーバSvr1は、上記により収集したデータ(信号種別分類データ)を解析し、例えば、解析結果を可視化する処理を行うことで、データ取得した対象の狭空間の電波状況を適切に把握することができる。
【0142】
また、データ収集システム1000において、信号種別分類システム100_1~100_n信号種別分類システム100_1~100_nのそれぞれに含まれる無線通信機S1_1~S1_N、S2_1~S2_N、・・・、Sn_1~Sn_Nのデータ取得対象の周波数帯域を様々な値に設定することで、データ取得した対象の狭空間の多様な周波数帯域の無線信号、電磁ノイズのデータを取得することができる。その結果、データ収集システム1000において、データ取得した対象の狭空間の多様な周波数帯域の電波状況を適切に把握することができる。
【0143】
≪まとめ≫
以上のように、信号種別分類システム100では、各無線通信機において特徴量データ取得処理を行うことで、データ量を大幅に削減することができるため、各無線通信機からホスト装置H1への送信データ量を大幅に削減することができる。そして、信号種別分類システム100では、ホスト装置H1でのクラスタリング処理で使用するデータ量も大幅に削減されるので、ホスト装置H1でのクラスタリング処理を高速化することができる。さらに、信号種別分類システム100では、クラスタリング処理の最適クラスタ数を取得し、主とした最適クラスタ数により、クラスタリング処理が実行されるため、高精度なクラスリング処理を実行することができる。また、信号種別分類システム100では、各無線通信機にて、ケプストラムの低次元側のデータのみ(低次元側の16次元のデータ)を抽出することで特徴量データを取得する処理を行い、ホスト装置H1にて、当該処理により取得された特徴量データを用いて、クラスタリング処理を行うことで、クラスタリング処理の精度を向上させることができる。
【0144】
そして、信号種別分類システム100では、上記の高精度なクラスタリング処理により分類されたデータに対してラベルを付与し、特徴量データと、その特徴量データが分類されたクラスタに付与されたラベルとを対応付けたデータを学習用データとすることで、特徴量データから信号種別を分類する分類器のニューラルネットワークモデルを学習させるためのデータ(学習用データ(教師データ))を生成することができる。
【0145】
このように、信号種別分類システム100では、周波数スペクトルや波形パターンの予測が困難な無線信号や電磁ノイズの種別を適切に分類する信号種別分類システム100に搭載される分類器(機械学習の対象にできるニューラルネットワークなどを用いて実現されるモデルであって、特徴量データから信号種別を分類する分類器のモデル)を機械学習により構築するための学習用データ生成方法を行うことができる。
【0146】
また、上記により生成した学習用データを用いて、特徴量データから信号種別を分類する分類器のモデル(機械学習の対象にできるニューラルネットワークなどを用いて実現されるモデルであって、特徴量データから信号種別を分類する分類器のモデル)を学習させることで、特徴量データから信号種別を分類する分類器の学習済みモデルを取得することができる。そして、信号種別分類システム100において、取得した学習済みモデル(信号種別分類器)を用いて、各無線通信機により取得された特徴量データに対して、信号種別分類処理を行うことで、周波数スペクトルや波形パターンの予測が困難な無線信号や電磁ノイズであっても、その種別を適切に分類することができる。
【0147】
つまり、信号種別分類システム100では、各無線通信機において特徴量データ取得処理を行うことで、データ量を大幅に削減することができるので、学習時においても予測時においても、無線信号や電磁ノイズの特徴を維持しつつ個々のデータ量が少ない特徴量データを大量に取得し、取得した大量の特徴量データを用いて、学習用データの生成、分類器(機械学習の対象にできるニューラルネットワークなどを用いて実現されるモデルであって、特徴量データから信号種別を分類する分類器のモデル)の学習処理、信号種別分類器の学習済みモデルにより信号種別分類処理を行うことができる。したがって、信号種別分類システム100では、周波数スペクトルや波形パターンの予測が困難な無線信号や電磁ノイズであっても、その種別を適切に分類することができる。
【0148】
≪第1変形例≫
次に、第1実施形態の第1変形例について、説明する。なお、上記実施形態と同様の部分については、同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0149】
図11は、第1実施形態の第1変形例の信号種別分類システム100Aの概略構成図である。
【0150】
本変形例の信号種別分類システム100Aでは、
図11に示すように、1つのアンテナAnt_S1が、N個の無線通信機S1A_1~S1A_Nに接続されている。つまり、信号種別分類システム100Aでは、1つのアンテナAnt_S1(共通のアンテナ)により受信信号をN個の無線通信機S1A_1~S1A_Nで処理するため、受信信号をN個の無線通信機S1A_1~S1A_Nで受信信号の位相差、レベル差を合わせることができる。
【0151】
また、信号種別分類システム100Aは、第1実施形態の信号種別分類システム100において、発振器Osc1と、分配器Dist1とを追加し、無線通信機S1_1を無線通信機S1A_1に置換し、無線通信機S1_2~S1_Nをそれぞれ無線通信機S1A_1~S1_Nに置換した構成を有している。
【0152】
発振器Osc1は、リファレンス信号sig_refを発生させるための発振器である。発振器Osc1により発生させたリファレンス信号sig_refは、無線通信機S1A_1に出力される。
【0153】
無線通信機S1A_1は、
図11に示すように、第1実施形態の無線通信機S1_1において、同期信号生成部16を追加した構成を有している。
【0154】
同期信号生成部16は、発振器Osc1から出力されるリファレンス信号sig_refを入力し、リファレンス信号sig_refに同期した同期信号sig_sync(例えば、クロック信号)を生成する。そして、同期信号生成部16は、生成した同期信号sig_refを、無線通信機S1A_1の各機能部に出力し、各機能部は、同期信号sig_refに基づいて、処理(サンプリング処理を含む)を行う。
【0155】
また、同期信号生成部16は、生成した同期信号sig_syncを分配器Dist1に出力する。
【0156】
分配器Dist1は、無線通信機S1A_1の同期信号生成部16から出力される同期信号sig_syncを入力し、当該同期信号sig_syncを、無線通信機S1A_2~S1A_Nのそれぞれに出力(分配)する。
【0157】
無線通信機S1A_2~S1A_Nのそれぞれは、分配器Dist1から出力される同期信号sig_syncを入力し、当該同期信号sig_syncに基づいて(当該同期信号sig_syncに同期させて)各機能部での処理を実行する。
【0158】
このように、信号種別分類システム100Aでは、共通のリファレンス信号sig_refから生成した同期信号sig_syncをN個の無線通信機S1A_1~S1A_Nで使用するので、N個の無線通信機S1A_1~S1A_Nにおいて、サンプリングタイミングを合わせることができ、また、共通の同期信号sig_syncに同期した処理を実行することができる。これにより、さらに、信号種別分類システム100Aでは、高精度な処理を実行することができる。
【0159】
≪第2変形例≫
次に、第1実施形態の第2変形例について、説明する。なお、上記実施形態と同様の部分については、同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0160】
図12は、第1実施形態の第2変形例の信号種別分類システム100Bの概略構成図である。
【0161】
本変形例の信号種別分類システム100Bは、
図12に示すように、第1実施形態の信号種別分類システム100のホスト装置H1を、ホスト装置H1の機能を有するサーバSvr1に置換した構成を有している。
【0162】
信号種別分類システム100Bでは、例えば、サーバSvr1をホスト装置H1よりも高機能なものとすることで、各無線通信機から送信される特徴量データを、さらに高機能なサーバSvr1を用いて処理を行うことができる。
【0163】
≪第3変形例≫
次に、第1実施形態の第3変形例について、説明する。なお、上記実施形態と同様の部分については、同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0164】
図13は、第1実施形態の第3変形例のデータ収集システム1000Aの概略構成図である。
【0165】
本変形例のデータ収集システム1000Aは、第1実施形態のデータ収集システム1000(
図10を参照)において、さらに、サーバSvr1を、他のサーバを接続可能なネットワークNW2に接続した構成を有している。
【0166】
これにより、データ収集システム1000Aでは、例えば、サーバSvr1で取得したデータを、ネットワークNW2を介して、他のサーバ(例えば、
図13では、サーバSvr2)に送信することができ、ネットワークNW2に接続された複数サーバにより、信号種別分類システムで取得されたデータに対する分析処理、データ収集処理、データ保存管理処理等を行うことができる。なお、データ収集システム1000Aにおいて、
図13に示した場合に限定されることはなく、ネットワークNW2に複数のサーバ(3台以上のサーバ)が接続される構成であってもよい。また、データ収集システム1000Aにおいて、所定のサーバにデータを集約させるようにしてもよいし、データを複数のサーバで分散するようにしてもよい。また、取得したデータに対する処理(例えば、分析処理、可視化処理)等を複数のサーバで分散して行うようにしてもよい(エッジ処理、クラウド処理を行うようにしてもよい)。
【0167】
このように、信号種別分類システムにおいて、無線信号や電磁ノイズの特徴を維持しつつ個々のデータ量が少ない特徴量データを大量に取得することができるため、複数の信号種別分類システムを含む多様な構成のシステムを構築することが容易となる。つまり、信号種別分類システムで個々のデータ量が少ない特徴量データが取得できるので、その特徴量データを大量に通信により、他の装置に送信しても、従来に比べると通信負荷が劇的に少ない。このため、特徴量データを大量に扱うことができるシステムを、多様な構成により構築することができる。つまり、本発明を用いることで、システム構成の拡張性が多様なものとなり、かつ、システム構成の拡張変更が容易となる。
【0168】
[他の実施形態]
上記実施形態(変形例を含む)において、信号種別分類システム、データ収集システムに用いられる無線通信機は、SDR(software defined radio)により実現してもよい。この場合、無線通信機の各機能部の一部または全部は、例えば、FPGAにより実現されるものであってもよい。
【0169】
また、上記実施形態(変形例を含む)の一部または全部を組み合わせて、信号種別分類システム、データ収集システム、無線通信機、ホスト装置、サーバ等を構成するようにしてもよい。
【0170】
また、上記実施形態(変形例を含む)において、特徴量データとして、ケプストラムのデータの低次元部分を抽出したデータを取得する場合について、説明したが、これに限定されることはなく、例えば、特徴量データとして、無線信号および/または電磁ノイズの時間領域の信号の特徴、あるいは、周波数領域でのスペクトルの特徴を反映させたデータあれば、他のデータを特徴量データとして採用し、特徴量データ取得処理を実行するようにしてもよい。例えば、所定の期間(所定の時間)において取得したIQデータ(IQサンプル)の値のヒストグラムのデータを特徴量データとして採用してもよい。この場合、例えば、インパルス状のノイズが所定の期間のどのタイミングで発生しても、ヒストグラムデータとしては、類似のデータとなるため、インパルス状のノイズの特徴を顕著に表す特徴量データを取得することが可能となる。
【0171】
また、上記実施形態(変形例を含む)で説明した信号種別分類システム、データ収集システム、無線通信機、ホスト装置、サーバにおいて、各ブロックは、LSIなどの半導体装置により個別に1チップ化されても良いし、一部又は全部を含むように1チップ化されても良い。
【0172】
なお、ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0173】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用しても良い。
【0174】
また、上記各実施形態の各機能ブロックの処理の一部または全部は、プログラムにより実現されるものであってもよい。そして、上記各実施形態の各機能ブロックの処理の一部または全部は、コンピュータにおいて、中央演算装置(CPU)により行われる。また、それぞれの処理を行うためのプログラムは、ハードディスク、ROMなどの記憶装置に格納されており、ROMにおいて、あるいはRAMに読み出されて実行される。
【0175】
また、上記実施形態の各処理をハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア(OS(オペレーティングシステム)、ミドルウェア、あるいは、所定のライブラリとともに実現される場合を含む。)により実現してもよい。さらに、ソフトウェアおよびハードウェアの混在処理により実現しても良い。
【0176】
また、例えば、上記実施形態(変形例を含む)の各機能部を、ソフトウェアにより実現する場合、
図14に示したハードウェア構成(例えば、CPU、ROM、RAM、入力部、出力部等をバスBusにより接続したハードウェア構成)を用いて、各機能部をソフトウェア処理により実現するようにしてもよい。
【0177】
また、上記実施形態(変形例)の各機能部をソフトウェアにより実現する場合、当該ソフトウェアは、
図14に示したハードウェア構成を有する単独のコンピュータを用いて実現されるものであってもよいし、複数のコンピュータを用いて分散処理により実現されるものであってもよい。
【0178】
また、上記実施形態における処理方法の実行順序は、必ずしも、上記実施形態の記載に制限されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、実行順序を入れ替えることができるものである。
【0179】
前述した方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム及びそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、本発明の範囲に含まれる。ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、大容量DVD、次世代DVD、半導体メモリを挙げることができる。
【0180】
上記コンピュータプログラムは、上記記録媒体に記録されたものに限られず、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク等を経由して伝送されるものであってもよい。
【0181】
また、上記実施形態(変形例を含む)において、「同じ」は、概ね同じであることを含む概念である。「同時」は、概ね同時であることを含む概念である。「一致」は、概ね一致していることを含む概念である。
【0182】
なお、本発明の具体的な構成は、前述の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更および修正が可能である。
【符号の説明】
【0183】
100、100A、100B 信号種別分類システム
S1_1~S1_N、S1A_1~S1A_N 無線通信機
H1 ホスト装置
1000 データ収集システム
Svr1、Svr2 サーバ