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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電気手術器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/18 20060101AFI20240920BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61B18/18 100
A61B18/14
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020549816
(86)(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2019067166
(87)【国際公開番号】W WO2020011546
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】1811434.8
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】バーン,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】シャー,パラブ
【審査官】立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/103209(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/066445(WO,A2)
【文献】特表2015-514504(JP,A)
【文献】特表2013-525075(JP,A)
【文献】特表2007-507263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/18
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気手術器具であって、
マイクロ波エネルギー及び/または高周波エネルギーを伝達するための同軸給電ケーブルであって、前記同軸給電ケーブルが、内部導体、外部導体、及び前記内部導体と前記外部導体を分離する誘電材料を有する、前記同軸給電ケーブルと、
前記マイクロ波エネルギー及び/または前記高周波エネルギーを受信するために前記同軸給電ケーブルの遠位端に配置された放射先端部であって、前記放射先端部が、
前記放射先端部の外側表面からの前記同軸給電ケーブルから受信した前記マイクロ波エネルギー及び/または前記高周波エネルギーを送達するように構成される、エネルギー送達構造であって、前記エネルギー送達構造が、前記内部導体に電気接続され、前記同軸給電ケーブルの前記遠位端を越えて長手方向に延在する細長い導体を含む、前記エネルギー送達構造と、
前記細長い導体の周りに配置される誘電体であって、
前記誘電体がその中に空洞を含み、前記空洞が、前記放射先端部の屈曲を容易にするために前記細長い導体の周りに配置された前記誘電体の一部に形成されている、前記誘電体と、
を含む、前記放射先端部と、
を備える、前記電気手術器具。
【請求項2】
前記空洞が、前記細長い導体の周りに配置される、請求項1に記載の電気手術器具。
【請求項3】
前記空洞が、前記誘電体に長手方向に延在する管腔を含む、請求項1または2に記載の電気手術器具。
【請求項4】
前記誘電体が、前記細長い導体を取り囲む内側スリーブを含み、前記管腔が、前記内側スリーブの半径方向の厚さだけ前記細長い導体から離間している、請求項3に記載の電気手術器具。
【請求項5】
前記管腔が、環状の断面を有する、請求項3または4に記載の電気手術器具。
【請求項6】
前記管腔が、前記誘電体の外側表面に配置された長手方向に延在する溝を形成する、請求項3に記載の電気手術器具。
【請求項7】
前記空洞が、前記誘電体内の凹みによって形成される、請求項1または2に記載の電気手術器具。
【請求項8】
前記凹みが、前記誘電体の周りに延在する周溝を形成する、請求項7に記載の電気手術器具。
【請求項9】
前記誘電体が波形表面を含み、前記凹みが前記波形表面の波形によって形成される、請求項7または8に記載の電気手術器具。
【請求項10】
前記放射先端部が、前記誘電体の外側表面の周りに配置された外側シースを更に含み、
前記外側シースが、前記外側シースと前記誘電体の間の相対移動を可能にするために前記誘電体から分離している、請求項1~9のいずれか一項に記載の電気手術器具。
【請求項11】
前記誘電体が第1の誘電材料で形成されており、前記外側シースが前記第1の誘電材料とは異なる第2の誘電材料から形成されている、請求項10に記載の電気手術器具。
【請求項12】
前記第1の誘電材料が、前記第2の誘電材料よりも高い溶融温度を有する、請求項11に記載の電気手術器具。
【請求項13】
前記第1の誘電材料が、ポリテトラフルオロエチレンであり、前記第2の誘電材料が、フッ化エチレンプロピレンである、請求項12に記載の電気手術器具。
【請求項14】
前記外側シースが、前記誘電体の遠位端を覆うように配置されている遠位先端部を含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の電気手術器具。
【請求項15】
前記外側シースが、前記誘電体の前記外側表面の周りに封止を形成するように構成されている、請求項10~14のいずれか一項に記載の電気手術器具。
【請求項16】
前記誘電体が、前記細長い導体がそれを通って延在する、螺旋体を含む、請求項10~15のいずれか一項に記載の電気手術器具。
【請求項17】
前記エネルギー送達構造が、近位調整要素及び遠位調整要素を含み、これらのそれぞれが、前記細長い導体に電気接続され、前記近位調整要素及び前記遠位調整要素が前記細長い導体の長さだけ長手方向に離間し、
前記誘電体が、前記近位調整要素と前記遠位調整要素との間に配置された第1の誘電スペーサを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の電気手術器具。
【請求項18】
前記エネルギー送達構造が、前記誘電体の表面上に配置された遠位電極及び近位電極を備え、前記遠位電極及び前記近位電極が、前記誘電体の中間部分によって互いから物理的に分離されており、
前記近位電極が、前記外部導体に電気接続され、
前記遠位電極が、前記細長い導体を介して前記内部導体に電気接続される、請求項1~16のいずれか一項に記載の電気手術器具。
【請求項19】
前記誘電体の前記中間部分に取り付けられている、調整要素を更に含む、請求項18に記載の電気手術器具。
【請求項20】
生体組織を治療するための電気手術装置であって、前記電気手術装置が、
マイクロ波エネルギー及び/または高周波エネルギーを供給するように配置された電気手術用ジェネレータと、
前記電気手術用ジェネレータからの前記マイクロ波エネルギー及び/または前記高周波エネルギーを受信するように接続された請求項1~19のいずれか一項に記載の電気手術器具と、を備える、前記電気手術装置。
【請求項21】
器具チャネルを有する可撓性挿入コードを含む、外科用スコープデバイスを更に含み、前記電気手術器具が前記器具チャネル内に適合するように寸法決めされている、請求項20に記載の電気手術装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的組織を切除するために、生体組織にマイクロ波エネルギー及び/または高周波エネルギーを送達するための電気手術器具に関する。プローブは、内視鏡またはカテーテルのチャネルを通して挿入することができる、または腹腔鏡手術または開腹手術で使用することができる。器具は、肺または胃腸の用途で使用され得るが、それに限定されない。
【背景技術】
【0002】
電磁(EM)エネルギー、特にマイクロ波及び高周波数(RF)エネルギーは、体組織を切断、凝固、及び切除する能力において電気外科手術で有用であることがわかっている。通常、EMエネルギーを体組織に送達するための装置は、EMエネルギー源を含むジェネレータと、エネルギーを組織に送達するためにジェネレータに接続された電気手術器具と、を含む。従来の電気手術器具は、多くの場合、患者の身体に経皮的に挿入されるように設計されている。しかし、例えば、標的部位が動いている肺または胃腸(GI)管の薄壁部分にある場合、体内で経皮的に器具を配置することは困難であり得る。他の電気手術器具は、身体内のチャネル(例えば、気道、または食道もしくは結腸の管腔)を通過することができる、外科用スコープデバイス(例えば、内視鏡)によって標的部位に送達することができる。これにより、低侵襲処置が可能になり、それは、患者の死亡率を低下させ、術中及び術後の合併症率を低下させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
マイクロ波EMエネルギーを使用した組織切除は、生体組織の大部分が水で構成されているという事実に基づいている。ヒトの器官の軟性織は、通常70%と80%の間の含水量である。水分子には、永久電気双極子モーメントがある。つまり、分子全体に電荷の不均衡が存在する。この電荷の不均衡により、分子が回転して、電気双極子モーメントが印加された電界の極性と整列する際、時間変化する電界の印加によって生成される力に応答して分子が移動する。マイクロ波周波数では、急速な分子振動により摩擦熱が発生し、熱の形で磁場エネルギーが散逸する。これは、誘電加熱として知られている。
【0004】
この原理はマイクロ波焼灼療法に利用され、標的組織の水分子が、マイクロ波周波数で局所的な電磁界を印加することにより急速に加熱され、組織の凝固と細胞死をもたらす。肺及び他の器官の種々の症状を治療するために、マイクロ波を発するプローブを使用することは知られている。例えば、肺で、マイクロ波放射は、喘息を治療し、腫瘍または病変部を切除するために使用できる。
【0005】
RF EMエネルギーは、生体組織の切断及び/または凝固で使用できる。RFエネルギーを使用する切断方法は、電流が組織基質を流れる(細胞のイオン含有量、つまり、ナトリウム及びカリウムによって支援される)際に、組織を通る電子の流れに対するインピーダンスが熱を発生させるという原理に基づいて作動する。組織基質に純正弦波を印加すると、細胞内に十分な熱が発生して、組織の水分を蒸発させる。このため、細胞の内圧が大幅に上昇し、細胞膜はこれを制御することができず、結果として細胞が破裂する。これが広い領域にわたって発生したときには、組織が横切断されていることがわかる。
【0006】
RF凝固は、効率の低い波形を組織に適用することで機能し、細胞成分は、蒸発する代わりに約65℃に加熱される。これは乾燥により組織の水分をなくし、更に血管の壁のタンパク質及び細胞壁をなすコラーゲンを変性させる。タンパク質の変性は凝固カスケードへの刺激として働き、凝固が強化される。同時に、壁のコラーゲンは、棒状の分子からコイルへと変性し、これにより血管が収縮して小さくなり、凝血塊にアンカーポイントが与えられ、塞ぐ面積を小さくする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
最も概括的には、本発明は、可撓性が向上した放射先端部を備える、電気手術器具を提供する。本発明の第1態様で、これは、放射先端部の屈曲を容易にするために、放射先端部に誘電材料を形成することによって得ることができる。本発明の第2態様で、これは、放射先端部の誘電体及び外側シースを別個の部品として形成し、部品間の移動及び屈曲を可能にすることによって得られる。放射先端部の可撓性を改善することにより、電気手術器具の操作性が改善され得る。
【0008】
本発明の電気手術器具は、身体内の標的組織を切除するために使用されてもよい。標的組織を効率的に切除するために、放射先端部は、標的組織のできるだけ近く(多くの場合は内側)に配置する必要がある。(例えば、肺の中の)標的組織に到達するために、デバイスは、通路(例えば、気道)を通り、体内の障害物の周りを案内される必要があり得る。したがって、放射先端部をより可撓性にすることは、放射先端部を標的組織に案内することを容易にし得る。例えば、標的組織が肺の中にある場合、これは、細く曲がりくねっている場合がある、通路(例えば、細気管支)に沿って器具を進ませることを容易にすることができる。放射先端部を可能な限り標的組織の近くに配置することにより、周囲の健康な組織の照射を回避または低減することができる。
【0009】
本発明の第1態様によれば、マイクロ波エネルギー及び/または高周波エネルギーを伝達するための同軸給電ケーブルであって、同軸給電ケーブルが、内部導体、外部導体、及び内部導体と外部導体を分離する誘電材料を有する、同軸給電ケーブルと、マイクロ波エネルギー及び/または高周波エネルギーを受信するために同軸給電ケーブルの遠位端に配置された放射先端部であって、放射先端部が、放射先端部の外側表面からの同軸給電ケーブルから受信したマイクロ波エネルギー及び/または高周波エネルギーを送達するように構成される、エネルギー送達構造であって、エネルギー送達構造が、内部導体に電気接続され、同軸給電ケーブルの遠位端を越えて長手方向に延在する細長い導体を含む、エネルギー送達構造と、細長い導体の周りに配置される誘電体であって、誘電体がその中に空洞を含み、空洞が、放射先端部の屈曲を容易にするために細長い導体に隣接して配置される、誘電体と、を含む、放射先端部と、を備える、電気手術器具が提供される。
【0010】
エネルギー送達構造は、マイクロ波エネルギーのみ、または高周波エネルギーのみを送達するように構成され得る。更に実施形態では、エネルギー送達構造は、マイクロ波エネルギー及び高周波数エネルギーの両方を別々にまたは同時に送達することができるように構成され得る。細長い導体は、マイクロ波エネルギーを放射するためのアンテナとして、または高周波数エネルギーを送達するための活性電極への電気的接続を提供する手段として(例えば、外部導体に接続された戻り電極と組み合わせて)構成され得る。
【0011】
電気手術器具は、ヒトの身体の閉鎖された、またはアクセスが困難な場所(例えば、肺または子宮)で、組織を切除するのに適している場合がある。しかし、この器具は、他の器官の組織を切除するために使用され得ることが理解され得る。
【0012】
同軸給電ケーブルは、一端で電気手術用ジェネレータに接続可能な従来の低損失同軸ケーブルでもよい。特に、内部導体は、同軸給電ケーブルの長手方向軸に沿って延在する、細長い導体でもよい。誘電材料は、内部導体の周りに配置されてもよく、例えば、第1の誘電材料は、内部導体が延在するチャネルを有してもよい。外部導体は、誘電材料の表面に配置された導電性材料から作製されるスリーブでもよい。同軸給電ケーブルは、ケーブルを絶縁及び保護するための外側保護シースを更に含み得る。いくつかの例で、保護シースは、組織がケーブルに張り付くのを防ぐために、非粘着性材料で作製またはコーティングされてもよい。放射先端部は、同軸給電ケーブルの遠位端にあり、同軸給電ケーブルに沿って伝達されるEMエネルギーを標的組織に送達する働きをする。放射先端部は、同軸給電ケーブルに恒久的に取り付けられている場合と、同軸給電ケーブルに取り外し可能に取り付けられている場合がある。例えば、コネクタを同軸給電ケーブルの遠位端に設けることができ、これは、放射先端部を収容し、必要な電気接続を形成するように構成される。
【0013】
誘電体は、細長い導体を運ぶためのチャネルを備えてもよい。器具は、細長い導体をチャネルに通すことによって、または誘電体を細長い導体上に堆積させることによって組み立てることができる。
【0014】
誘電体は一般に円筒形でもよいが、他の形状でも可能である。誘電体は、同軸給電ケーブルの遠位端に取り付けられてもよい。いくつかの例で、誘電体は、同軸給電ケーブルの遠位端を越えて延在する、同軸給電ケーブルの誘電材料の突出部分を含み得る。これにより、放射先端部の構造が簡素化され、放射先端部と同軸給電ケーブルの間の境界でのEMエネルギーの反射が回避される。他の例で、同軸給電ケーブルの誘電材料とは別の第2の誘電材料を使用して、誘電体を形成することができる。第2の誘電材料は、同軸給電ケーブルの誘電材料と同じでも異なっていてもよい。第2の誘電材料は、マイクロ波エネルギーが標的組織に送達される効率を改善するために、標的組織とのインピーダンス整合を改善するように選択され得る。誘電体はまた、所望の方法で放射プロファイルを形成するように選択及び配置される、誘電材料の複数の異なる部分も含み得る。誘電体は、組織が張り付くのを防ぐために、非粘着性材料(例えば、PTFE)で作製またはコーティングされ得る。
【0015】
誘電体は、長手方向、すなわち、同軸給電ケーブルの長手方向軸に平行な方向に延在する。細長い導体は、誘電体のチャネル内に延在する。チャネルは、誘電体の一部を通って延在する、通路であり得る。細長い導体は、細長い形状を有する任意の適切な導体であり得る。例えば、細長い導体は、誘電体内を延在する導電性材料のワイヤ、ロッド、または細片でもよい。いくつかの実施形態では、細長い導体は、同軸給電ケーブルの遠位端を越えて延在する、内部導体の遠位部分でもよい。言い換えれば、内部導体は、同軸給電ケーブルの遠位端を越えて誘電体の中に延在して、細長い導体を形成することができる。これは、別個の導体を内部導体の遠位端に接続する必要がないので、同軸給電ケーブルの遠位端に放射先端部を形成することを容易にすることができる。
【0016】
放射先端部は、マイクロ波ラジエーターとして機能するように構成することができ、すなわち、同軸給電ケーブルによって伝達されるマイクロ波エネルギーを放射するように構成することができる。特に、同軸給電ケーブルから放射先端部に運ばれるマイクロ波エネルギーは、細長い導体の長さに沿って放射され得る。外部導体は、細長い導体が外部導体の遠位端を越えて延在するように、同軸給電ケーブルの遠位端で終端できる。このようにして、放射先端部は、マイクロ波単極アンテナとして機能することができる。したがって、放射先端部に運ばれたマイクロ波エネルギーは、細長い導体から周囲の標的組織に放射され得る。
【0017】
追加的にまたは代替的に、放射先端部は、RFエネルギーを使用して標的組織を切断または切除するように構成され得る。例えば、放射先端部は、標的組織を切断または切除するように配置された、一対の露出した電極(例えば、双極RF電極)を含み得る。電極のうちの1つは、内部導体に(例えば、細長い導体を介して)電気接続されてもよく、電極の別の1つは、外部導体に電気接続されてもよい。このようにして、高周波エネルギーを近位及び遠位の電極に伝達することにより、電極間または電極の周りに位置する生体組織を切断及び/または切除することができる。場合によっては、放射先端部は、マイクロ波エネルギーとRFエネルギーの両方を個別にまたは同時に送達するように構成できる。これは、RFとマイクロ波エネルギーの間の適用を切り替える、またはそれを変化させることにより、電気手術器具の機能の急速な変化を可能にし得る。
【0018】
空洞は、細長い導体の周りに配置された誘電体の一部に形成することができ、すなわち、空洞は、細長い導体が延在するチャネルを有する、誘電体の一部に配置することができる。空洞は、長手方向に垂直な横(例えば、半径)方向にチャネルから間隔を置いて配置されてもよい。例えば、誘電体が円筒形である場合、チャネルは、円筒体の中心軸を実質的に中心とすることができ、空洞は、チャネルから半径方向に離間配置されることができる。空洞は、誘電体の内部または表面上に形成された空隙、例えば、誘電体の誘電材料が存在しない領域でもよい。例えば、空洞は、誘電体の表面上の窪みまたは凹みであり得る。空洞は、誘電体の外側表面に形成され得る。あるいは、空洞は、誘電体の内側表面、例えば、チャネルの壁に形成されてもよい。空洞が誘電体内に形成される場合、空洞は、誘電体内に封入された空隙またはポケットであり得る。
【0019】
空洞は、細長い導体を取り囲む誘電体の部分の材料の量を減らすことができる。例えば、空洞は、細長い導体を取り囲む誘電体の部分で、誘電体を形成する材料の横方向の総厚を減少させることができる。これにより、細長い導体の周りの誘電体の剛性が低下する可能性がある。空洞は、誘電体の屈曲を容易にする、屈曲点または屈曲部としても機能することができる。したがって、空洞は、誘電体の可撓性を高めるのに役立ち得る。これは、放射先端部の屈曲を容易にすることができ、次に、身体内の細く曲がりくねった通路を通して電気手術器具を案内することを容易にすることができる。これは、標的組織へのエネルギーの効率的な送達を確実にするために、放射先端部を標的組織に可能な限り近接して配置することを可能にし得る。空洞の容積は、誘電材料の全体的な容積と比較して比較的小さくてもよい。このようにして、空洞は、誘電体のインピーダンス整合性に大きな影響を与えずに、誘電体の可撓性を改善することができる。したがって、放射先端部の放射プロファイルは、空洞の存在によって大幅に影響を受けない可能性がある。
【0020】
空洞は空であり得る(例えば、それは空気で満たされ得る)。場合によっては、誘電体の可撓性を改善するために、空洞に変形可能な材料を充填することができる。
【0021】
場合によっては、誘電体に複数の空洞が形成されてもよい。空洞は、誘電体の長さに沿って配置されてもよく、例えば、それらは長手方向に離間配置されてもよい。これは、誘電体の長さに沿った複数の屈曲点を提供して、その長さに沿った誘電体の屈曲を容易にすることができる。空洞は、誘電体の長手方向軸の周りに配置されてもよい。これは、長手方向に対して異なる方向に誘電体を曲げることを容易にすることができる。したがって、複数の空洞を有することは、誘電体の可撓性を更に改善することができる。複数の空洞は、等間隔で配置されてもよく、またはそれらは任意の方法で配置されてもよい。空洞は、特定の方向への誘電体の屈曲を容易にするために、誘電体上に配置されてもよい。例えば、誘電体の側面に空洞を配置することで、例えば、空洞のある側の誘電体の剛性を低下させることにより、その側面に向かって誘電体を曲げることを容易にすることができる。複数の空洞を誘電体の長手方向軸の周りに配置して、誘電体の複数の方向への屈曲を容易にすることができる。
【0022】
空洞(複数可)は、誘電体の製造中に形成されてもよい。例えば、誘電体は、1つ以上の空洞を含むように成形されてもよい。あるいは、空洞は、誘電体に穴をあける及び/または誘電体の一部を機械で切削することによって、形成されてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、空洞は、誘電体で長手方向に延在する管腔によって形成されてもよい。誘電体は、細長い導体を取り囲む(すなわち、細長い導体が延在するチャネルを提供する)内側スリーブを備えてもよい。管腔は、内側スリーブの半径方向の厚さだけ細長い導体から離間され得る。管腔は、誘電体の全体または一部に沿って延在して、誘電体の可撓性を改善することができる。管腔は、誘電体の一部を通って延在する、通路またはチャネルであり得る。管腔は、閉じた管腔でもよく、すなわち、誘電体の内部に形成されてもよい。あるいは管腔は、開放管腔でもよく、すなわち、誘電体の表面に形成されてもよい。いくつかの例で、管腔は、誘電体のチャネルに平行でもよい。他の例で、管腔は、誘電体のチャネルの周りに巻かれるような螺旋形状を有してもよい。管腔は円形の断面を有してもよく、またはそれは別の形状の断面を有してもよい。有利には、管腔は、放射先端部を通して配線または他の入力を伝達するために使用することができる。誘電体の管腔は、同軸給電ケーブルの管腔と連続していてもよく、それにより、入力は、電気手術器具の近位端から放射先端部に供給され得る。例えば、管腔は、流体(例えば、先端部を冷却するための冷却液)を運ぶために使用されてもよい。管腔は、制御ワイヤを運ぶために使用されてもよい(例えば、放射先端部の遠位端に配置されたブレードまたは他の機構を制御するために)。
【0024】
誘電体の長手方向に延在する、複数の管腔があり得る(例えば、複数の空洞がある場合)。管腔は、それらが誘電体のチャネルの周りに離間されるように配置されてもよく、例えば、管腔は、チャネルの周りに等間隔で配置されてもよい。これにより、複数の方向で長手方向軸に対する放射先端部の屈曲が容易になり得る。
【0025】
いくつかの実施形態で、管腔は、チャネルが形成される誘電体の一部を取り囲む、環状断面を有することができる。言い換えれば、誘電体は、細長い導体を含むチャネルが形成される内側部分と、内側部分の周りにスリーブを形成する外側部分と、を含むことができる。外側部分は、内側部分から離間されて、内側部分と外側部分の間に管腔を形成することができる。外側部分は、例えば、スペーサを使用して内側部分から離間され得る。誘電体の内側部分を取り囲む環状断面を有する管腔を提供することによって、空洞は、誘電体の長手方向軸の周りに効果的に形成され得る。これにより、誘電体の剛性が長手方向軸を中心にして実質的に対称となり、長手方向軸に対する誘電体の屈曲を容易にすることができ、例えば、優先的な屈曲方向がないようにし得る。管腔は、その環状断面が誘電体の長手方向軸を実質的に中心とするように配置され得、その結果、管腔は長手方向軸を中心にして軸対称である。これにより、長手方向軸の周りの誘電体の剛性の等方性を更に改善することができる。
【0026】
いくつかの実施形態で、管腔は、誘電体の外側表面に配置されてもよい。例えば、それは、誘電体の外側表面に長手方向に延在する溝を形成することができる。したがって、管腔は、誘電体の外側表面上の開いた管腔であり得る。誘電体が複数の空洞を含む場合、複数の溝が外側表面に形成されてもよい。放射先端部の屈曲を容易にすることに加えて、溝は係合機構として役立つことができる。例えば、電気手術器具の外側保護シースは、放射先端部に対して外側保護シースを固定するために、溝に係合される1つ以上の突起を有し得る。別の例で、溝は、外科用スコープデバイスの器具チャネルに沿って放射先端部を案内する、及び/または放射先端部の所望の配向を維持するために使用されてもよい。誘電体の表面上の溝は、例えば、放射先端部を回転させるために、放射先端部を把持するために使用されてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態で、空洞は、誘電体の凹みによって形成されてもよい。凹みは、誘電体の外側表面に形成され得る。凹みは、誘電体の表面上に形成される、窪みまたは切り欠きであり得る。凹みは、誘電体の屈曲点または屈曲部として機能する場合がある。例えば、それは、誘電体の他の領域と比較して、屈曲に対する抵抗が低い領域を構成する(例えば、凹みでの誘電体の厚さが薄いため)。凹みの長さは、長手方向に対する誘電体の屈曲を容易にするために、長手方向に対して垂直であり得る。誘電体に複数の凹みを形成して、複数の屈曲点または屈曲部を設けることができる。このようにして、誘電体の屈曲は、その長さに沿った複数の点で促進され得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、凹みは、誘電体の外側表面に形成されてもよい。他の実施形態で、凹みは、誘電体の内側表面、例えば、誘電体のチャネルの壁に形成されてもよい。複数の凹みがある場合、凹みのいくつかは外側表面に形成されてもよく、凹みのいくつかは内側表面に形成されてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、凹みは、誘電体の周囲に延在する溝を形成することができる。溝は、誘電体の外側表面に形成されてもよい。溝は、誘電体の周囲にループまたはリングを形成することができる。この場合、溝は長手方向に垂直な方向に配向できる。他の場合で、溝は、誘電体の長さに沿って誘電体の周りに巻かれるように、螺旋形状を有してもよい。誘電体の周囲に溝を形成することにより、誘電体の剛性は、長手方向軸を中心に実質的に対称であり得る。これにより、長手方向軸に対して誘電体を曲げることが容易になり得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、誘電体は、波形表面を含むことができ、凹みは、波形表面の波形によって形成することができる。誘電体の外側表面は波形であってもよい、及び/または内側表面(チャネルの壁)に波形をつけることができる。場合によっては、誘電体の外側表面と内側表面の両方に波形をつけることができる。例えば、誘電体の一部は、ある長さの波形チューブまたはパイプによって形成されてもよい。適切な波形チューブまたはパイプは、PTFE、FEP、またはPFAで作製できる。波形表面は、一連の山と谷を形成するように配置された一連の波形または隆起を含むことができる。凹みは、隣接する波形/隆起の間に形成された谷に対応し得る。波形表面は複数の波形を含み得るので、複数の凹みが波形表面に形成され得る。上述のように、凹みは、誘電体の屈曲点または屈曲部として機能することができる。波形チューブは、広く市販されている。これにより、低コストで、可撓性放射先端部の製造が容易になり得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、放射先端部は、誘電体の外側表面の周りに配置された外側シースを更に含み得て、外側シースは、誘電体から分離して、外側シースと誘電体との間の相対移動を可能にする。外側シースは、放射先端部を環境から保護し、隔離するのに役立ち得る。外側シースは、組織が張り付くのを防ぐために、非粘着性材料(例えば、PTFE)で作製またはコーティングされ得る。外側シースは、誘電体の外側表面を覆う絶縁材料のスリーブでもよい。例えば、外側シースは、誘電体の周りで収縮された、ある長さの熱収縮チューブによって形成され得る。外側シースは、誘電体から分離している。つまり、誘電体とは別に形成されている。すなわち、別の構成要素として形成される。更に、外側シースを誘電体に固定する接着剤または他の接続手段がない場合がある。外側シースは、外側シースと誘電体との間の摩擦力を介して誘電体に保持されてもよい。その結果、誘電体の外側表面と外側シースとの間の少量の相対移動が可能になり得る。このようにして、誘電体が曲げられると、外側シースは、誘電体の表面に対して移動して、外側シースでの応力の蓄積を回避することができる。例えば、外側シースは、誘電体の屈曲の内側の周りに「集まる」ことができる。したがって、外側シースは、放射先端部の屈曲に対して任意の有意な抵抗を提供しない場合があり、すなわち、外側シースは、放射先端部の剛性を大幅に増加させることができない場合がある。したがって、誘電体とは別に外側シースを形成することにより、放射先端部の屈曲を容易にすることができる。更に、これにより、誘電体の破損及び/または外側シースの割れをもたらす可能性がある、誘電体と外側シースの間の境界面への応力の集中を避けることができる。
【0032】
外側シースは、同軸給電ケーブルに対してその位置を固定するために、一端が同軸給電ケーブルの遠位端に取り付けられてもよい。例えば、外側シースは、同軸給電ケーブルの保護シースに取り付けられてもよい。場合によっては、外側シースは、同軸給電ケーブルの保護シースの続きであり得る。例えば、外側シースは、同軸給電ケーブルの遠位端を越えて延在する同軸給電ケーブルの保護シースの遠位部分であり得る。空洞が誘電体の外側表面上に形成される場合、外側シースは空洞を覆う役割を果たすことができる。このようにして、誘電体に空洞が存在するにもかかわらず、放射先端部は滑らかな外側表面を有することができる。
【0033】
外側シースの構成は、本発明の独立した態様を提供し得る。この態様によれば、マイクロ波エネルギー及び/または高周波エネルギーを伝達するための同軸給電ケーブルであって、同軸給電ケーブルが、内部導体、外部導体、及び内部導体と外部導体を分離する誘電材料を有する、同軸給電ケーブルと、マイクロ波エネルギー及び/または高周波エネルギーを受信するために同軸給電ケーブルの遠位端に配置された放射先端部であって、放射先端部が、放射先端部の外側表面からの同軸給電ケーブルから受信したマイクロ波エネルギー及び/または高周波エネルギーを送達するように構成される、エネルギー送達構造であって、エネルギー送達構造が、内部導体に電気接続され、同軸給電ケーブルの遠位端を越えて長手方向に延在する細長い導体を含む、エネルギー送達構造と、細長い導体の周りに配置される誘電体と、誘電体の外側表面の周りに配置される外側シースであって、外側シースが、誘電体から分離して、外側シースと誘電体との間の相対移動を可能にする、外側シースと、を含む、放射先端部と、を備える、電気手術器具が提供される。
【0034】
本発明の第1態様の特徴は、本発明の第2態様と共通であり得て、再度説明しない。特に、本発明の第2態様の電気手術器具の誘電体は、本発明の第1態様に関連して上述したように、空洞(または複数の空洞)を含むことができる。
【0035】
上記の本発明の第1または第2態様のいずれかの実施形態は、以下の特徴を含むことができる。
【0036】
いくつかの実施形態で、誘電体は第1の誘電材料で形成されてもよく、外側シースは第1の誘電材料とは異なる第2の誘電材料で形成されてもよい。第1及び第2の誘電材料は、標的組織との放射先端部のインピーダンス整合を改善するように選択され得る。第1及び第2の誘電材料はまた、放射先端部の屈曲を容易にするように選択されてもよい。例えば、第2の誘電材料は、第1の誘電材料よりも低い剛性を有することができる。これにより、外側シースが放射先端部の全体的な剛性を大幅に増加させないことが保証される。
【0037】
いくつかの実施形態で、第1の誘電材料は、第2の誘電材料よりも高い溶融温度を有し得る。これにより、第2の誘電材料を誘電体上で溶融または収縮させることにより、外側シースを形成することができる。例えば、外側シースは、第2の誘電材料で作製した熱収縮材料のチューブによって形成されてもよい。熱収縮チューブは、誘電体上に配置され、次いで、熱を加えることにより誘電体上で収縮され得る。第1の誘電材料の溶融温度は、第2の誘電材料の溶融温度よりも高いので、誘電体は、その上に外側シースが形成されるときに溶融しない。これは、それらの間の相対移動を可能にするためにそれらを別個の構成要素として維持しながら、誘電体上への外側シースの良好な適合を確実にすることができる。これは、放射先端部の製造を容易にすることができる。
【0038】
いくつかの実施形態で、第1の誘電材料はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)でもよく、第2の誘電材料はフッ化エチレンプロピレン(FEP)でもよい。PTFEは、FEPよりも高い溶融温度である。FEPは一般にPTFEよりも柔らかいため、簡単に曲げることができる。この材料の組み合わせを使用して、誘電体上にFEPを溶融して外側シースを形成し(例えば、成形型を使用して)、誘電体上に直接外側シースを形成できる。あるいは、FEP製のある長さの熱収縮チューブを使用して、誘電体上に外側シースを形成することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、外側シースは、誘電体の遠位端を覆うように配置された遠位先端部を含むことができる。したがって、外側シースは、誘電体の外側表面(例えば、側面)と遠位端の両方を覆うことができる。このようにして、外側シースは、誘電体上にキャップを形成することができる。遠位先端部は、外側シースの残りの部分と同じ誘電材料(例えば、第2の誘電材料)で作製されてもよい。遠位先端部は、標的組織への放射先端部の挿入を容易にするために、尖っていてもよい。あるいは、遠位先端部は、丸みを帯びていても平らでもよい。遠位先端部は、標的組織とのインピーダンス整合を改善するのに役立ち得る。遠位先端部はまた、放射先端部の周囲の環境に位置する流体が、外側シースと誘電体の間の空間(例えば、空洞)に入るのを防ぐように機能することができる。
【0040】
いくつかの実施形態で、外側シースは、誘電体の外側表面の周りに封止を形成するように構成されてもよい。したがって、外側シースは、誘電体の外側表面を封入することができる。外側シースは、放射先端部の周囲の環境に位置する流体が、外側シースと誘電体の間の空間に入るのを防ぐように機能することができる。例えば、封止は、誘電体の近位端及び誘電体の遠位端にて、外側シースと誘電体の間に形成され得る。外側シースが遠位先端部を含む場合、封止は、誘電体の近位端でのみ必要となり得る。場合によっては、同軸給電ケーブルと放射先端部との間の境界面での漏れを防ぐために、外側シースと同軸給電ケーブルの遠位端との間に封止を形成することができる。
【0041】
空洞が誘電体の外側表面上にある場合、外側シースは、空洞内の空気(または、他の流体)を閉じ込めて、周囲環境の流体が空洞に入るのを防ぐように機能することができる。
【0042】
いくつかの実施形態で、放射先端部は、誘電チョークを更に含むことができる。誘電チョークは、外部導体に対して(例えば、外部導体と近位電極との間で)取り付けられた一片の電気絶縁材料であり、放射先端部で反射されたEMエネルギーが同軸給電ケーブルに戻って伝搬するのを減らす。これは、放射先端部の放射プロファイルが同軸給電ケーブルに沿って延びる量を低減し、強化された放射プロファイルを提供することができる。
【0043】
誘電体は、細長い導体が延在する、螺旋体を含み得る。言い換えれば、誘電体の一部は、螺旋として形成され、螺旋は、細長い導体の長さに巻き付けられる。したがって、細長い導体が延在するチャネルは、螺旋のコイルによって形成され得る。誘電体の螺旋形状は、誘電体の屈曲を容易にすることができ、誘電体の長手方向軸を中心に誘電体の実質的に対称的な剛性を提供することができる。螺旋体は螺旋状のばねとして機能し、放射先端部に高度の可撓性を提供する。更に、誘電体の螺旋形状は、誘電体が曲げられた後、その元の形状に戻ることを容易にし得る。例えば、曲がりくねった通路を通過するように曲がった後、誘電体の弾力性により、放射先端部は再び真っすぐになり得る。
【0044】
螺旋状誘電体は、本発明の第3の独立した態様を含み得る。この態様によれば、マイクロ波エネルギー及び/または高周波エネルギーを伝達するための同軸給電ケーブルであって、同軸給電ケーブルが、内部導体、外部導体、及び内部導体と外部導体を分離する誘電材料を有する、同軸給電ケーブルと、マイクロ波エネルギー及び/または高周波エネルギーを受信するために同軸給電ケーブルの遠位端に配置された放射先端部であって、放射先端部が、放射先端部の外側表面からの同軸給電ケーブルから受信したマイクロ波エネルギー及び/または高周波エネルギーを送達するように構成される、エネルギー送達構造であって、エネルギー送達構造が、内部導体に電気接続され、同軸給電ケーブルの遠位端を越えて長手方向に延在する細長い導体を含む、エネルギー送達構造と、細長い導体の周りに配置される誘電体であって、誘電体が、細長い導体が延在する螺旋体を含む、誘電体と、を含む、放射先端部と、を備える、電気手術器具が提供される。
【0045】
本発明の第1態様及び本発明の第2態様の特徴は、本発明の第3態様と共通であり得て、再度説明しない。
【0046】
上述の本発明の態様のいずれかの電気手術器具のいくつかの実施形態で、エネルギー送達構造は、近位調整要素及び遠位調整要素を含み得て、これらのそれぞれは、細長い導体に電気接続され、近位調整要素及び遠位調整要素が細長い導体の長さだけ長手方向に離間している。誘電体は、近位調整要素と遠位調整要素との間に配置された第1の誘電スペーサを含み得る。
【0047】
近位調整要素は、放射先端部の近位端の近くに位置する一片の導電性材料(例えば、金属)でもよい。遠位調整要素は、放射先端部の遠位端の近くに位置する一片の導電性材料(例えば、金属)でもよい。したがって、遠位調整要素は、近位調整要素よりも同軸給電ケーブルの遠位端から離れていてもよい。近位及び遠位の調整要素は両方とも、細長い導体に電気接続されている。例えば、近位及び遠位の調整要素はそれぞれ、細長い導体の上またはその周囲に配置されてもよい。近位及び遠位の調整要素は、任意の適切な手段によって細長い導体に電気接続され得る。例えば、近位及び遠位の調整要素は、細長い導体に溶接またははんだ付けされてもよい。別の例で、近位及び遠位の調整要素は、導電性接着剤(例えば、導電性エポキシ)を使用して細長い導体に接続されてもよい。近位及び遠位の調整要素は、細長い導体の長さだけ長手方向に離間している。言い換えれば、細長い導体の一部が近位電極と遠位電極の間に配置されている。近位及び遠位の調整要素は、誘電体の一部で覆われていてもよく、その結果、環境から隔離/保護される。
【0048】
近位及び遠位の調整要素は、放射先端部によって放出されるマイクロ波エネルギーのプロファイルを形成するのに役立ち得る。特に、発明者らは、長手方向に離間された調整要素を細長い導体上に配置することが、放射先端部の周りに集中する放射プロファイルを生成するのに役立ち得ることを見出した。放射プロファイルは、ほぼ球状の形状を有することができる。調整要素はまた、同軸給電ケーブルに沿って後方に延在する放射プロファイルの尾部を低減するように機能することができる。このようにして、放射先端部に運ばれたマイクロ波エネルギーは、放射先端部から放出され、放射先端部の周りの明確な量の周囲の標的組織を切除することができる。調整要素の形状、サイズ及び位置は、所望のマイクロ波放射プロファイルを得るように選択することができる。
【0049】
第1の誘電スペーサは、近位調整要素と遠位調整要素との間に配置された誘電体の一部であり得る。誘電体のチャネルは、第1の誘電スペーサに部分的または全体的に形成されてもよい。場合によっては、近位調整要素は、同軸給電ケーブルの遠位端から離間され得る。そのような場合、誘電体は、同軸給電ケーブルの遠位端と近位調整要素との間に配置された第2の誘電スペーサを含み得る。
【0050】
空洞が誘電体内に形成される場合、空洞は第1の誘電スペーサに形成され得る。場合によっては、空洞は、第2の誘電スペーサに形成されてもよい。あるいは、空洞は、第1及び第2の誘電スペーサの両方に形成されてもよい。これにより、放射先端部の可撓性が更に向上できる。
【0051】
放射先端部が外側シースを含む場合、外側シースは、第1の誘電スペーサの外側表面を覆うことができる。外側シースは、外側シースと第1の誘電スペーサとの間の相対移動を可能にするために、第1の誘電スペーサから分離されていてもよい。誘電体が第2の誘電スペーサも含む場合、外側シースは第2の誘電スペーサの外側表面も覆うことができる。外側シースは、近位及び遠位の調整要素の外側表面も覆い、それらを環境から保護及び隔離することができる。
【0052】
上記の本発明の態様のいずれかの電気手術器具のいくつかの実施形態で、エネルギー送達構造は、誘電体の表面上に配置された遠位電極及び近位電極を備えることができ、遠位電極及び近位電極は、誘電体の中間部分によって互いから物理的に分離される。近位電極は、外部導体に電気接続され得る。遠位電極は、細長い導体を介して内部導体に電気接続され得る。
【0053】
近位電極と遠位電極はそれぞれ外部導体と内部導体に電気接続されているため、近位電極と遠位電極は、同軸給電ケーブルに沿って伝達されるRFエネルギーを受け取って、双極RF電極として機能する。このようにして、高周波エネルギーを近位及び遠位の電極に伝達することにより、電極間または電極の周りに位置する生体組織を切除及び/または凝固することができる。更に、近位電極と遠位電極の間の長手方向の間隔により、マイクロ波エネルギーが同軸給電ケーブルに沿って伝達されるとき、近位電極と遠位電極は双極アンテナの極として作動することができる。したがって、マイクロ波エネルギーが同軸給電ケーブルに沿って伝達されるとき、放射先端部はマイクロ波双極アンテナとして働くことができる。近位電極と遠位電極の間隔は、使用するマイクロ波周波数、及び標的組織によって引き起こされる負荷に依存する場合がある。したがって、放射先端部のこの構成により、RFエネルギーとマイクロ波エネルギーの両方を使用した組織の治療が可能になる。発明者らはまた、RFエネルギーとマイクロ波エネルギーの間で切り替えることにより、器具の放射プロファイル(「切除プロファイル」とも呼ばれる)を変更することが可能であることも発見した。言い換えれば、電気手術器具によって切除される組織の体積のサイズ及び形状は、RFエネルギーとマイクロ波エネルギーとの間で切り替えることによって調整され得る。これにより、外科処置中に器具を交換する必要なく、切除プロファイルを原位置に変更することが可能になり得る。
【0054】
誘電体の中間部分は、近位電極と遠位電極との間に配置された誘電スペーサであり得る。誘電体のチャネルは、誘電体の中間部分に部分的または全体的に形成されてもよい。
【0055】
空洞が誘電体に形成される場合、空洞は誘電体の中間部分に形成され得る。放射先端部が外側シースを含む場合、外側シースは誘電体の中間部分の外側表面を覆うことができる。外側シースは、外側シースと誘電体との間の相対移動を可能にするために、中間部分から分離されることができる。外側シースは、近位及び遠位の電極を覆わないように、すなわち、近位及び遠位の電極が放射先端部の表面で露出するように配置され得る。外側シースは、近位及び遠位の電極の表面と同一平面になるように配置されてもよく、その結果、放射先端部は滑らかな外側表面を有する。
【0056】
いくつかの実施形態で、放射先端部は、誘電体の中間部分に取り付けられた調整要素を更に含むことができる。調整要素は、放射プロファイルを形成し、放射先端部と標的組織との間のインピーダンス整合を改善するのに役立ち得る。調整要素は、誘電体の中間部分内に取り付けられた導電体を備えることができ、導電体は、細長い導体に電気接続される。調整要素は、放射先端部の結合効率を改善するための静電容量を導入するように選択された寸法を有することができる。例えば、導電体は、近位電極と遠位電極との間に位置する細長い導体の一部の周りに取り付けられたスリーブであり得る。
【0057】
上記の本発明の態様のいずれかの電気手術器具は、完全な電気手術システムの一部を形成し得る。例えば、電気手術システムは、マイクロ波エネルギー及び/または高周波エネルギーを供給するように構成された電気手術用ジェネレータと、電気手術用ジェネレータからのマイクロ波エネルギー及び/または高周波エネルギーを受信するように接続された本発明の電気手術器具と、を含むことができる。電気手術装置は、患者の身体内に挿入するための可撓性挿入コードを有する外科用スコープデバイス(例えば、内視鏡)を更に含むことができ、可撓性挿入コードは、その長さに沿って延在する器具チャネルを有し、電気手術器具は、器具チャネル内に適合するように寸法設定される。
【0058】
本明細書で「マイクロ波」は概して、400MHz~100GHzの周波数範囲、だが好ましくは1GHz~60GHzの範囲を示すために使用し得る。マイクロ波EMエネルギーの好ましいスポット周波数には、915MHz、2.45GHz、3.3GHz、5.8GHz、10GHz、14.5GHz、及び24GHzがある。5.8GHzが好ましい場合がある。それに対し、本明細書では、「高周波数」または「RF」は、少なくとも3桁低い、例えば、最高300MHzの周波数範囲を示すために使用する。好ましくは、RFエネルギーは、神経刺激を防ぐのに十分に高い(例えば、10kHzを超える)周波数、及び組織脱色化または熱拡散を防ぐのに十分に低い(例えば、10MHzより低い)周波数を有する。RFエネルギーの好ましい周波数範囲は、100kHzと1MHzの間であり得る。
【0059】
本明細書で「近位」及び「遠位」という用語は、それぞれ治療部位から離れた、及びそれに近い電気手術器具の端部を指す。したがって、使用中、電気手術器具の近位端はRF及び/またはマイクロ波エネルギーを提供するジェネレータに近いが、遠位端は治療部位(すなわち、患者の標的組織)に近い。
【0060】
「導電性」という用語は、文脈で明らかにそうではなことを記載する場合を除いて、電気伝導性を意味するために本明細書で使用される。
【0061】
本明細書で使用する「長手方向」という用語は、同軸伝送線の軸に平行な、電気手術器具の長さに沿った方向を指す。本明細書で使用する「横方向」という用語は、長手方向に垂直な方向、例えば、同軸伝送線の長手方向軸から半径方向外側に向かう方向を指す。「内部」という用語は、器具の中心(例えば、軸)に半径方向に近いことを意味する。「外部」という用語は、器具の中心(軸)から半径方向に遠いことを意味する。
【0062】
「電気手術」という用語は、手術中に使用されて、マイクロ波及び/または高周波電磁(EM)エネルギーを利用する、器具、装置またはツールに関連して使用する。
【0063】
本発明の例を添付の図面を参照して以下に論じる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】本発明の実施形態である組織切除のための電気手術システムの概略図である。
図2】本発明の実施形態である、電気手術器具の概略断面側面図である。
図3】本発明の別の実施形態である、電気手術器具の概略断面側面図である。
図4a】本発明の実施形態である、電気手術器具の概略断面側面図である。
図4b図4aの電気手術器具の誘電スペーサの断面図である。
図5a】本発明の実施形態による電気手術器具で使用され得る、誘電スペーサの断面図である。
図5b】本発明の実施形態による電気手術器具で使用され得る、誘電スペーサの断面図である。
図5c】本発明の実施形態による電気手術器具で使用され得る、誘電スペーサの断面図である。
図6】本発明の別の実施形態である、電気手術器具の概略断面側面図である。
図7a図6の電気手術器具の誘電スペーサの斜視図である。
図7b図6の電気手術器具の誘電スペーサの斜視図である。
図8図2の電気手術器具のシミュレーションした放射プロファイルを示す図である。
図9図6の電気手術器具のシミュレーションした放射プロファイルを示す図である。
図10】本発明の別の実施形態である、電気手術器具の概略断面側面図である。
図11a】本発明の実施形態による電気手術器具で使用され得る、誘電スペーサの斜視図を示す。
図11b】本発明の実施形態による電気手術器具で使用され得る、誘電スペーサの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1は、マイクロ波エネルギー及び高周波エネルギーを侵襲性電気手術器具の遠位端に供給することができる、完全な電気手術システム100の概略図である。システム100は、マイクロ波及び/または高周波エネルギーを制御可能に供給するための、ジェネレータ102を備える。この目的のための適切なジェネレータは、WO2012/076844に記載されており、それは参照により本明細書に組み込まれる。送達される適切な出力レベルを測定するために、ジェネレータは、器具から返された反射信号を監視するように構成され得る。例えばジェネレータは、適切な出力送達レベルを判定するために、器具の遠位端で見られるインピーダンスを算出するように構成され得る。ジェネレータは、患者の呼吸周期に一致するように調節される、一連のパルスで電力を供給するように構成され得る。これにより、肺が収縮したときに電力供給が行われる。
【0066】
ジェネレータ102は、インターフェースケーブル104によってインターフェースジョイント106に接続される。必要であれば、インターフェースジョイント106は、トリガー110を摺動させることによって操作可能である器具制御機構を収容して、例えば1つ以上の制御ワイヤまたはプッシュロッド(図示せず)の長手方向(前後)の動きを制御できる。複数の制御ワイヤがある場合、完全な制御を提供するために、インターフェースジョイントに複数の摺動トリガーがある場合がある。インターフェースジョイント106の機能は、ジェネレータ102及び器具制御機構から、インターフェースジョイント106の遠位端から延在する単一の可撓軸112内への入力を合わせることである。他の実施形態では、他の種類の入力も、インターフェースジョイント106に接続され得る。例えば、いくつかの実施形態では、流体供給は、インターフェースジョイント106に接続されてもよく、それにより、流体が器具に送達されてもよい。
【0067】
可撓軸112は、内視鏡114の器具(作業)チャネルの全長を通して挿入できる。
可撓軸112は、内視鏡114の器具チャネルを通って、内視鏡管の遠位端で(例えば、患者の内部に)突出するように形成された、遠位アセンブリ118(図1で縮尺どおりには示されていない)を有する。遠位端アセンブリは、マイクロ波エネルギー及び高周波数エネルギーを生体組織内に送達させるための作動先端部を含む。先端部の構成については、以下で詳しく説明する。
【0068】
遠位アセンブリ118の構造は、作業チャネルを通過するのに適している最大外径を有するように構成され得る。通常、外科用スコープデバイス(例えば、内視鏡)の作業チャネルの直径は、4.0mm未満(例えば、2.8mm、3.2mm、3.7mm、3.8mmのうちの任意の1つ)である。可撓軸112の長さは、0.3m以上(例えば、2mまたはそれ以上)であり得る。他の例にて、遠位アセンブリ118は、作業チャネルを通過して軸が挿入された後(そして、器具コードが患者内に導入される前)、可撓軸112の遠位端に載置され得る。あるいは可撓軸112は、その近位接続を行う前に、遠位端から作業チャネル内に挿入されることができる。これらの配置で、遠位端アセンブリ118は、外科用スコープデバイス114の作業チャネルより大きい寸法を有するのが可能になる。
【0069】
上述のシステムは、器具を患者の身体内に導入する1つの方法である。他の技術も可能である。例えば、器具は、カテーテルを使用しても挿入され得る。
【0070】
図2は、本発明の実施形態である電気手術器具200の断面側面図を示す。電気手術器具200は、組織内にマイクロ波エネルギーを放射することによって生体組織を切除するように構成される。電気手術器具の遠位端は、例えば、上で考察された遠位アセンブリ118に対応し得る。電気手術器具200は、マイクロ波エネルギーを伝達するために、その近位端でジェネレータ(例えば、ジェネレータ102)に接続可能な同軸給電ケーブル202を含む。同軸給電ケーブルは、上述のインターフェースケーブル104に対応し得る。同軸給電ケーブル202は、内部導体204、及び誘電材料208によって分離された外部導体206を含む。同軸給電ケーブル202は、好ましくはマイクロ波エネルギーに低損失である。チョーク(図示せず)は同軸給電ケーブル204上に提供され得て、遠位端から反射するマイクロ波エネルギーの逆伝播を阻害し、そうしてデバイスに沿った逆加熱を制限する。同軸給電ケーブル202は、同軸給電ケーブルを保護するために外部導体206の周りに配置された可撓性保護シース210を更に含む。保護シース210は、外部導体206をその周囲から電気的に絶縁するために、絶縁材料で作製できる。保護シース210は、組織が張り付くのを防ぐために、非粘着性材料(例えば、PTFE)で作製またはコーティングされ得る。
【0071】
放射先端部212は、同軸給電ケーブル202の遠位端214に形成される。図2の破線215は、同軸給電ケーブル202と放射先端部212の間の境界面を示している。放射先端部212は、同軸給電ケーブル202によって運ばれるマイクロ波エネルギーを受け取り、そのエネルギーを生体組織内に送達するように構成される。同軸給電ケーブル202の外部導体206は、同軸給電ケーブル202の遠位端214で終端する、すなわち、外部導体206は放射先端部212内に延在しない。放射先端部212は、同軸給電ケーブル202の遠位端を越えて延在する内部導体204の遠位部分216を含む。特に、内部導体204の遠位部分216は、外部導体206の遠位端を越えて延在する。
【0072】
導電性材料(例えば金属)で作製された近位調整要素218は、放射先端部212の近位端の近くで内部導体204の遠位部分216に電気接続される。近位調整要素218は、円筒形状を有し、内部導体204の遠位部分216が通過するチャネル220を含む。近位調整要素218は、例えば、導電性接着剤(例えば、導電性エポキシ)を使用して、またははんだ付けもしくは溶接によって、内部導体204に固定され得る。近位調整要素218は、それが内部導体204の中心にあるように取り付けられ、それにより、内部導体204の長手方向軸を中心に対称的に配置される。
【0073】
導電性材料(例えば、金属)で作られた遠位調整要素222は、放射先端部212の遠位端の近くで内部導体204の遠位部分216に電気接続される。したがって、遠位調整要素222は、近位調整要素218よりも内部導体204に沿って更に配置される。遠位調整要素222は、内部導体204の遠位部分216の長さだけ近位調整要素から離れている。近位調整要素218と同様に、遠位調整要素は円筒形状を有し、チャネル224を含む。図2に見られるように、内部導体204の遠位部分216は、チャネル224内に延在する。内部導体204の遠位部分216は、チャネル224の遠位端で終端する、すなわち、それは、遠位調整要素222を越えて突出しない。遠位調整要素222は、例えば、導電性接着剤(例えば、導電性エポキシ)を使用して、またははんだ付けもしくは溶接によって、内部導体204に固定され得る。近位調整要素218と同様に、遠位調整要素222は、それが内部導体204の中心にあるように取り付けられる。
【0074】
近位調整要素218及び遠位調整要素222の両方は、同じ外径を有する。近位調整要素218及び遠位調整要素222の外径は、電気手術器具200の外径よりわずかに小さくてもよい。図示の例では、遠位調整要素222は、器具の長手方向で近位調整要素218よりも長い。例えば、遠位調整要素222は、近位調整要素218の約2倍の長さであり得る。遠位調整要素222を近位調整要素218より長くすることにより、放射先端部212の遠位端の周りにマイクロ波放射を集中させることが可能になる。
【0075】
誘電材料208の遠位部分226は、同軸給電ケーブル202の遠位端214を越えて放射先端部212内に延在する。誘電材料208の遠位部分226は、近位調整要素218と同軸給電ケーブル202の遠位端214との間のスペーサとして機能する。いくつかの実施形態(図示せず)では、誘電材料208は、同軸給電ケーブル202の遠位端214で終端してもよく、別個のスペーサが、同軸給電ケーブル202の遠位端214と近位調整要素218との間に設けられてもよい。誘電スペーサ228は、近位調整要素218と遠位調整要素222との間の放射先端部212に提供される。誘電スペーサ228は、誘電材料の円筒状片であり、それを貫通して延在する中央チャネルを有する。したがって、誘電スペーサ228は、誘電材料の管でもよい。内部導体204の遠位部分214は、誘電スペーサ228のチャネルを通って延在する。誘電スペーサ228の近位面は近位調整要素218と接触しており、誘電スペーサ228の遠位面は遠位調整要素222と接触している。誘電スペーサ228は、近位及び遠位の調整要素218、222とほぼ同じ外径を有する。
【0076】
同軸給電ケーブル202に沿って運ばれるマイクロ波エネルギーは、内部導体204の遠位部分216の長さに沿って放射され、標的組織を切除することができる。電気手術器具200の放射プロファイルは、図8に関連して以下で論じる。
【0077】
放射先端部212は、放射先端部212の外側に提供される外側シース230を更に含む。外側シース230は、誘電スペーサ228と、近位及び遠位の調整要素218、222と、を覆って、放射先端部212の外側表面を形成する。外側シース230は、放射先端部212を絶縁し、それを環境から保護する役割を果たすことができる。外側シース230の外径は、同軸給電ケーブル202の外径と実質的に同じであるので、器具は滑らかな外側表面を有する。特に、シース230の外側表面は、境界面215で同軸給電ケーブル202の外側表面と同一平面にあってもよい。外側シース230は、その近位端で保護シース210の遠位端に固定されている。封止が外側シース230と保護シース210の間に形成されて、同軸給電ケーブル202と放射先端部212との間の境界面で流体が器具に漏れるのを防ぐことができる。いくつかの実施形態(図示せず)では、外側シース230は、同軸給電ケーブル202の保護シース210の続きであり得る。
【0078】
外側シース230は、放射先端部212の遠位端を覆う、尖った遠位先端部232を含む。遠位先端部232は、誘電スペーサ228の外側表面を覆う外側シース230のスリーブ部分231に接続される。したがって、外側シース230は、放射先端部212の外側の周りにキャップを形成する。遠位先端部232は、標的組織への放射先端部212の挿入を容易にするために、尖っていてもよい。しかし、他の実施形態(図示せず)では、遠位先端部は、丸みを帯びていても平坦でもよい。
【0079】
誘電スペーサ228及び誘電材料208の遠位部分226は、共に、放射先端部212の誘電体を形成し得る。外側シース230(遠位先端部232を含む)は、放射先端部の誘電体とは別に形成される。特に、外側シース230は、(例えば、接着剤またはその他を介して)放射先端部の誘電体に取り付けられていない。外側シースはまた、近位または遠位の調整要素218、222に固定されていなくてもよい。したがって、外側シース230は、保護シース210への接続を介して、及び外側シース230と放射先端部212の誘電体との間の摩擦力を介して、放射先端部212上に保持される。その結果、外側シース230と放射先端部212の誘電体との間の少量の相対移動及び屈曲が可能になり得る。外側シース230と誘電体との間の相対移動の範囲は、外側シースと誘電体の相対剛性(可撓性)に依存し得る。
【0080】
誘電体に対する外側シース230の移動が、(例えば、放射先端部212が曲げられたときに起こり得る)外側シース230での応力を緩和させることを可能にし得るので、誘電体の曲げる能力は、放射先端部212の屈曲を容易にし得る。例えば、外側シース230は、放射先端部212の屈曲の内側の周りに「集まる」ことができる、及び/または放射先端部212の屈曲の内側の周りで誘電体から離間し得る。更に、外側シース230と放射先端部212の誘電体との間の相対移動を可能にすることにより、誘電体と外側シース230との間の境界面での応力を回避することができる。
【0081】
外側シース230は、放射先端部212の誘電体よりも低い溶融温度を有する誘電材料で作製される。例えば、外側シース230はFEPで作製されてもよく、誘電スペーサ228はPTFEで作製されてもよい。外側シースは、誘電体上で外側シース230の誘電材料を溶融または収縮させることによって形成されてもよい。例えば、外側シース230は、ある長さの熱収縮チューブによって形成されてもよい。このようにして、外側シース230は、製造中に外側シース230が誘電体と融合しないことを保証しながら、放射先端部212の誘電体上に直接形成されてもよい。外側シース230は、単一部片として一体的に形成されてもよい、すなわち、スリーブ部分231及び遠位先端部232は、単一部品として形成されてもよい。あるいは、スリーブ部分231及び遠位先端部232は、別々に形成さて、その後一緒に組み立てられ得る。
【0082】
図3は、本発明の別の実施形態である電気手術器具300の断面側面図を示す。電気手術器具300は、マイクロ波及びRFエネルギーの両方を別々にまたは同時に標的組織に送達するように構成される。電気手術器具の遠位端は、例えば、上で考察された遠位アセンブリ118に対応し得る。
【0083】
電気手術器具300は、マイクロ波エネルギー及びRFエネルギーを伝達するために、その近位端でジェネレータ(例えば、ジェネレータ102)に接続可能な同軸給電ケーブル302を含む。同軸給電ケーブル302は、内部導体304、及び誘電材料308によって分離された外部導体306を含む。同軸給電ケーブルは、同軸給電ケーブル302を保護するために外部導体306の周りに配置された可撓性保護シース310を更に含む。同軸給電ケーブル302は、上述の同軸給電ケーブル202と同様であり得る。
【0084】
放射先端部312は、同軸給電ケーブル302の遠位端に形成される。放射先端部312は、同軸給電ケーブル302によって運ばれるマイクロ波エネルギー及びRFエネルギーを受け取り、そのエネルギーを生体組織内に送達するように構成される。放射先端部312は、放射先端部312の近位端の近くに位置する近位電極314と、放射先端部312の遠位端の近くに位置する遠位電極316とを含む。近位電極314は、放射先端部312の外側表面の周りに露出したリングを形成する、中空の円筒状導体である。近位電極214は、同軸給電ケーブル302の外部導体306に電気接続し得る。例えば、近位電極314は、外部導体306に溶接またははんだ付けされ得る。近位電極314は、接続の軸対称性を確実にするために、外部導体306の全周上に延在する物理的接触の領域によって外部導体306に電気接続され得る。外部導体206は、近位電極314で終端する、すなわち、それは、近位電極314を越えて遠位方向に延在しない。いくつかの実施形態(図示せず)で、近位電極は、外部導体306の露出した遠位部分であり得る。
【0085】
遠位電極316はまた、放射先端部312の外側表面の周りに露出したリングを形成する、中空の円筒状導体である。近位電極314と同様に、遠位電極316は、同軸給電ケーブル302と同軸に配置される。近位及び遠位の電極314、316は、実質的に同じ形状及びサイズを有し得る。遠位電極316は、電気手術器具300の長手方向に近位電極314から離間している。近位及び遠位の電極314、316は、同軸給電ケーブル302の外径と同じ外径を有し、その結果、電気手術器具300は、滑らかな外側表面を有する。これにより、組織が近位及び遠位の電極314、316に引っかかるのを防ぐことができる。
【0086】
近位電極314は、内部導体304の遠位突出部分が通過する通路を画定する。このようにして、内部導体304は、放射先端部312内に延在し、そこで、遠位電極316に電気接続される。内部導体304は、内部導体306から放射状に(すなわち、外向きに)延在する導体318を介して、遠位電極316に電気接続される。導体318は、内部導体304の軸を中心に対称的に配置された1つ以上の分岐(例えば、ワイヤまたは他の可撓性導電要素)を含むことができる。あるいは、導体318は、内部導体304の周りに取り付けられ、内部導体304と遠位電極316との間に接続された導電性ディスクまたはリングを含んでもよい。内部導体304と遠位電極316との間の接続は、好ましくは、内部導体204によって画定される軸を中心にして対称である。これは、放射先端部312を中心にした対称的な磁場形状の形成を容易にすることができる。
【0087】
同軸給電ケーブル302の誘電材料308の遠位部分もまた、外部導体306の遠位端を越えて、近位電極314によって画定される通路を介して放射先端部312内に延在する。したがって、内部導体304及び近位電極314は、誘電材料308によって絶縁される。誘電材料308の遠位部分は、放射先端部312の誘電体を形成する。調整要素320は、近位電極314と遠位電極316との間に位置する、放射先端部312の誘電体の中間部分322に位置する。調整要素320は、容量性リアクタンスを導入するために、近位電極314と遠位電極316との間の内部導体304に電気接続される導電性要素である。この例では、導電性調整要素320は円筒形状であり、内部導体304と同軸に配置されている。調整要素320は、器具がマイクロ波周波数で操作されるときに、結合効率を改善する(すなわち、反射信号を低減する)のに役立ち得る。
【0088】
近位電極314及び遠位電極316は、それぞれ外部導体306及び内部導体304に電気接続されるので、それらは、双極RF切断電極として使用され得る。例えば、遠位電極316は、活性電極として機能し得て、近位電極314は、同軸給電ケーブル302に沿って伝達されるRFエネルギーの戻り電極として機能し得る。このようにして、放射先端部312の周りに配置された標的組織を、上記の機構を介して、RFエネルギーを使用して切断及び/または凝固することができる。
【0089】
そのうえ、マイクロ波エネルギーが同軸給電ケーブル302に沿って伝達されるとき、放射先端部312はマイクロ波双極アンテナとして働くことができる。特に、近位電極314及び遠位電極316は、マイクロ波周波数で双極アンテナの放射要素として機能し得る。したがって、放射先端部の構造は、高周波エネルギー及びマイクロ波エネルギーの両方を標的組織内に送達することを可能にする。これにより、放射先端部に伝達されるEMエネルギーの種類に応じて、高周波及びマイクロ波エネルギーを使用して、標的組織を切除及び/または凝固することができる。近位電極314及び遠位電極316の円筒形状は、器具300の長手方向軸を中心に対称である放射プロファイルを生成するように機能し得る。
【0090】
放射先端部312は、外側シース324を含む。外側シース324は、近位電極314と遠位電極316との間の誘電材料308の中間部分322の外側表面を覆う。外側シース324は、近位及び遠位の電極314、316の露出した表面と同一平面にあり、その結果、放射先端部312は滑らかな外側表面を有する。外側シース324は、近位電極314と遠位電極316との間の放射先端部312の部分を保護及び絶縁するように機能し得る。外側シース324は、誘電材料308とは別々に形成される。特に、外側シース324は、(例えば、接着剤またはその他を介して)誘電材料308に取り付けられていない。外側シース324は、近位及び遠位の電極314、316によって放射先端部312上に保持されることができ、これにより、長手方向の外側シース324の動きをブロックし得る(近位電極314、遠位電極316及び外側シース324はすべて同じ外径のため)。外側シース324はまた、外側シース324と誘電材料308との間の摩擦力によって適所に保持されてもよい。その結果、外側シース324と誘電材料308の中間部分322との間の少量の移動及び屈曲が可能であり得る。外側シース324と中間部分322の間の相対移動の範囲は、外側シース324と中間部分322の相対剛性(可撓性)に依存し得る。放射先端部312は、その遠位端に遠位先端部326を更に含む。遠位先端部は、標的組織内への放射先端部312の挿入を容易にするために、尖っている。
【0091】
器具200と同様に、外側シース324のこの構成は、放射先端部312の屈曲を容易にすることができる。特に、外側シース324と誘電材料308の中間部分322との間のいくらかの動きを可能にすることにより、放射先端部が曲げられたときに生じ得る、外側シース324内の応力を緩和することができる。中間部分322と外側シース324との間の境界面での応力も回避することができる。
【0092】
外側シース324は、上述の外側シース230と同様の方法で形成され得る。例えば、外側シース324は、誘電材料208の中間部分322の周りで溶融または収縮される、FEPで作製されてもよい。誘電材料208の中間部分322は、FEPよりも高い溶融温度を有する材料(例えば、PTFE)で作製されてもよく、それにより、外側シース324の形成中に溶融しない。
【0093】
電気手術器具の放射先端部の可撓性は、放射先端部の誘電材料の形状を変更することによっても増加され得る。特に、屈曲を容易にするために、放射先端部の誘電材料に1つ以上の空洞を形成することができる。
【0094】
図4aは、本発明の実施形態である電気手術器具400の断面図を示す。電気手術器具400は、その誘電スペーサがそれを通って延在する環状管腔を含むことを除いて、上述の電気手術器具200と同様である。図2で使用されるものに対応する参照番号は、図4aでは、図2に関連して上述した特徴に対応する電気手術器具400の特徴を示すために使用される。
【0095】
電気手術器具400は、近位調整要素218と遠位調整要素222との間の、その放射先端部212に誘電スペーサ401を含む。誘電スペーサ401は、それを貫通して延在する環状管腔402を含むことを除いて、電気手術器具200の誘電スペーサ228と同様である。環状管腔402は、誘電スペーサ401の長さに沿って長手方向に延在する。図4bは、電気手術器具400の長手方向に垂直な平面での、電気手術器具400の誘電スペーサ401の断面図を示す。示すように、環状管腔402は、内部導体204の遠位部分216を取り囲む環状(例えば、円形)断面を有する。環状管腔402は、内部導体の遠位部分216が延在する誘電スペーサ401の内側部分404と、内側部分404の周りにスリーブを形成する誘電スペーサ401の外側部分406との間に形成される。環状管腔402は、内部導体204の遠位部分216の周りに同軸に配置される。言い換えると、環状管腔402は、内部導体204の長手方向軸を中心に実質的に対称である。
【0096】
環状管腔402は、誘電スペーサ401内に空洞(または、空隙)を形成する、すなわち、それは、誘電スペーサ401の誘電材料が存在しない誘電スペーサ401内に管状領域を形成する。環状管腔402は、例えば、空気で満たされ得る。その結果、(例えば、電気手術器具200の誘電スペーサ228と比較して)誘電スペーサ401内の材料の量が減少する。特に、図4bに示されるように、誘電材料を含む誘電スペーサ401の断面積は、環状管腔402の断面積に対応する量だけ減少する。概して、本体の剛性は、その本体を形成する材料の断面積に比例する。したがって、誘電スペーサ228に環状管腔402を形成することにより、誘電スペーサ401の剛性を低減することができ、それは、その長さに沿った誘電スペーサ401の屈曲を容易にすることができる。環状管腔402は、器具の長手方向軸を中心に対称的に配置されるので、誘電スペーサ401の剛性は、長手方向軸を中心にして実質的に対称であり得る。その結果、誘電スペーサ401の屈曲は、長手方向軸に垂直な平面にあるすべての方向で促進され得る。
【0097】
図4a及び図4bに示される環状管腔402以外の異なる種類の管腔または空洞は、放射先端部の可撓性を改善するために使用され得る。図5a~図5cは、それを通って延在する管腔の異なる形状を有する誘電スペーサの(長手方向軸に垂直な平面での)断面図を示す。図5a~図5cに示す誘電スペーサは、例えば、電気手術器具400の誘電スペーサ401で置き換えることができる。
【0098】
図5aは、誘電スペーサ500の断面図を示す。誘電スペーサ500は中央チャネル502を含み、それを通って内部導体204の遠位部分216が延在できる。誘電スペーサ500はまた、中央チャネル502の周りに配置される、3つの管腔504、506、508を含む。管腔504、506、508は、それらが長手方向軸を中心にして実質的に回転対称であるように配置される。管腔504、506、508は、誘電スペーサ500の長さに沿って長手方向に延在することができる。管腔504、506、508は、空気で満たされ得る。環状管腔402と同様に、管腔504、506、508は、誘電スペーサ500の剛性を低下させて、放射先端部の可撓性を改善するように機能する。
【0099】
図5bは、別の誘電スペーサ510の断面図を示す。誘電スペーサ510は、内部導体204の遠位部分216がそれを通って延在できる、中央チャネル512を含む。中央チャネル512は、内部導体204の遠位部分216よりも大きな断面を有し得て、その結果、中央チャネル512の壁と遠位部分216との間に空間が形成される。したがって、中央チャネル512は、その剛性を低減するために、誘電スペーサ500内の空洞として機能することができる。誘電スペーサ510はまた、その外側表面上に形成された一連の開放管腔514~524(または、溝)を含む。開放管腔514~524は、それらが長手方向軸を中心にして実質的に回転対称であるように配置される。開放管腔514~524は、誘電スペーサ510の剛性を低減し得る。空気は、誘電スペーサの外側表面上に形成される外側シース(例えば、外側シース230)によって開放管腔に閉じ込められ得る。
【0100】
図5cは、別の誘電スペーサ526の断面図を示す。誘電スペーサ526は、内部導体204の遠位部分216がそこを通って延在できる中央チャネル528と、その外側表面に配置された一連の開放管腔530~536と、を含むので、誘電スペーサ510と同様である。開放管腔530~536は、それらが長手方向軸を中心にして実質的に回転対称であるように配置される。
【0101】
空洞または管腔は、誘電スペーサの全長に沿って延在する必要はない。例えば、管腔または空洞は、誘電スペーサの一部に沿ってのみ延在することができ、またはそれを貫通する1つ以上の放射状支持アームを有することができる。場合によっては、誘電スペーサの異なる部分に沿って延在する、複数の管腔または空洞を備えることができる。異なる種類の空洞または管腔を、誘電スペーサ内で組み合わせることができる。放射先端部が特定の方向に優先的に屈曲可能であることが望まれる場合、空洞または管腔は、誘電スペーサの対応する側に配置されて、その側のスペーサの剛性を低減し得る。いくつかの実施形態(図示せず)で、誘電材料208の遠位部分226に管腔を形成して、同軸給電ケーブル202との境界面近くの放射先端部212の可撓性を改善することができる。上述の空洞または管腔は、放射先端部の可撓性を改善するために他の電気手術器具に組み入れることができる。例えば、上述の電気手術器具300は、誘電材料308の中間部分322がそれを通って延在する1つ以上の管腔を含むように修正されてもよい。
【0102】
図6は、本発明の別の実施形態である電気手術器具600の断面図を示す。電気手術器具600は、その誘電スペーサがその可撓性を改善するように形成されていることを除いて、上述の電気手術器具200と同様である。図2で使用されるものに対応する参照番号は、図6では、図2に関連して上述した特徴に対応する電気手術器具600の特徴を示すために使用される。
【0103】
電気手術器具600は、近位調整要素218と遠位調整要素222との間の、その放射先端部212に誘電スペーサ602を含む。誘電スペーサ602は、概ね円筒形の形状を有する。誘電スペーサ602は、内部導体204の遠位部分216が延在する、その中央を通る、チャネル603を含む。誘電スペーサ602の外側表面には、第1環状溝604及び第2環状溝606が形成されている。第1溝604及び第2溝606はそれぞれ、誘電スペーサ602の外側表面の周りにループを形成する。図7aは、誘電スペーサ602の斜視図を示し、図7bは、誘電スペーサ602の側面図を示す。第1溝604及び第2溝606は、誘電スペーサ602の断面積が(例えば、溝から離れた誘電スペーサ602の面積と比較して)減少する誘電スペーサ602内の領域を形成する。したがって、誘電スペーサ602は、溝604、606で溝の外側よりも低い剛性を有し得て、その結果、誘電スペーサ602の屈曲は、溝604、606で促進される。したがって、第1溝及び第2溝604、606は、誘電スペーサの屈曲点または屈曲部として機能することができる。したがって、第1溝及び第2溝604、606は、放射先端部212の可撓性を改善するのに役立ち得る。
【0104】
外側シース230のスリーブ部分231は、誘電スペーサ602の外側表面を覆う。このように、第1溝及び第2溝604、606は、外側シース230によって覆われ、その結果、放射先端部212は滑らかな外側表面を有する。空気は、外側シースによって第1溝及び第2溝604、606に閉じ込められ得る。
【0105】
他の実施形態(図示せず)では、より多くの溝を誘電スペーサの外側表面に設けて、誘電スペーサに更なる屈曲点を提供することができる。誘電スペーサの可撓性を更に改善するために、溝が、誘電スペーサの内側表面、例えば、内部導体204の遠位部分216が通って延在するチャネル603の壁に形成されてもよい。図示の例で、第1溝及び第2溝604、606は長方形の輪郭を有し、すなわち、それらは、互いに平行な側壁608、610、及び側壁608、610に垂直な内壁612を有する(図7bを参照)。しかし、他の形状の溝を使用することもできる。例えば、側壁608、610は、互いに対して斜めの角度でもよい。場合によっては、溝は三角形の輪郭または丸みを帯びた輪郭を有し得る。異なる輪郭を有する溝の組み合わせは、同じ誘電スペーサ上で使用され得る。いくつかの実施形態(図示せず)で、誘電材料208の遠位部分226に溝を形成して、同軸給電ケーブル202との境界面近くの放射先端部212の可撓性を改善することができる。誘電スペーサの表面に溝または凹みを形成する概念は、放射先端部の可撓性を改善するために他の電気手術器具に組み込まれ得る。例えば、電気手術器具300は、誘電材料308の中間部分322に溝が形成されるように修正され得て、放射先端部312に屈曲点を提供する。
【0106】
図8は、電気手術器具200の標的組織にてシミュレーションした放射プロファイルを示す。放射プロファイルは、有限要素解析ソフトウェアを使用して、5.8GHzのマイクロ波周波数についてシミュレーションした。放射プロファイルは、マイクロ波エネルギーによって切除された組織の結果として生じる体積を示している。図8に見られるように、放射プロファイルは放射先端部の周りに集中し、ほぼ球形の領域を画定する。
【0107】
図9は、電気手術器具600の標的組織にてシミュレーションした放射プロファイルを示す。放射プロファイルは、有限要素解析ソフトウェアを使用して、5.8GHzのマイクロ波周波数についてシミュレーションした。図8に示される放射プロファイルと同様に、電気手術器具600の放射プロファイルは、放射先端部の周りに集中し、ほぼ球形の領域を画定する。電気手術器具600の放射プロファイルの形状は、誘電スペーサ602内の第1溝及び第2溝604、606の存在によって著しく影響を受けない。したがって、第1溝及び第2溝604、606は、放射先端部の放射プロファイルに大きな影響を与えることなく、放射先端部の可撓性を改善することができる。
【0108】
図10は、本発明の別の実施形態である電気手術器具700の断面図を示す。電気手術器具700は、その誘電スペーサがその可撓性を改善するために波形になっていることを除いて、上述の電気手術器具200と同様である。図2で使用されるものに対応する参照番号は、図10では、図2に関連して上述した特徴に対応する電気手術器具700の特徴を示すために使用される。
【0109】
電気手術器具700は、近位調整要素218と遠位調整要素222との間の、その放射先端部212に誘電スペーサ702を含む。誘電スペーサ702は、ある長さの波形(または、渦巻き形)チューブで形成される。ある長さの波形チューブは、例えば、PTFEまたはPFAで作製され得る。誘電スペーサ702は、チャネル(または、通路)を画定し、それを通って内部導体204の遠位部分が延在する。誘電スペーサ702の外側表面上の波形は、一連の規則的に離間配置するピーク(例えば、ピーク704、706)及びピーク間に位置する谷(例えば、谷708)を画定する。波形外側表面の谷は、誘電スペーサ702の外側表面の溝または凹みに対応し、すなわち、誘電スペーサが(例えば、ピークが位置する領域と比較して)より小さい外径を有する領域に対応する。したがって、谷(溝)は、誘電体702の屈曲点または屈曲部として機能することができる。したがって、誘電スペーサ702の波形の外側表面は、その長さに沿った誘電スペーサ702の屈曲を容易にし得る、一連の規則的に離間した屈曲点を提供する。これにより、高可撓性の放射先端部212をもたらすことができる。
【0110】
外側シース230は、誘電スペーサ702の波型外側表面を覆い、その結果、放射先端部212は滑らかな外側表面を有する。空気は、外側シース230によって波形に閉じ込められ得る。いくつかの実施形態(図示せず)では、誘電スペーサの外側表面は滑らかであり得て、代わりに波形が、誘電スペーサの内側表面(例えば、内部導体204の遠位部分216がそれを通って延在する、チャネルの壁)上に形成されてもよい。放射先端部の波形の誘電材料を使用して、放射先端部の可撓性を高めるという概念は、他の電気手術器具に組み入れることができる。例えば、電気手術器具300は、誘電材料308の中間部分322が波形表面を有するように修正されて、放射先端部312に一連の屈曲点を提供できる。
【0111】
図11a及び図11bは、本発明の実施形態である電気手術器具で使用され得る、誘電スペーサ800の斜視図を示す。例えば、誘電スペーサ800は、電気手術器具200の誘電スペーサ228と置き換えることができる。誘電スペーサ800は、コイルに形成される可撓性誘電材料(例えば、PTFE)で作製した螺旋体802を有する。螺旋体802は、その軸に沿って延在し、細長い導体(例えば、内部導体208の遠位部分216)が延在することができる通路804を画定する。その螺旋形状のために、誘電スペーサ800は螺旋ばねのように振る舞うことができる。特に、誘電スペーサ800の螺旋形状は、その長手方向軸に対する誘電スペーサ800の屈曲を容易にすることができる。したがって、誘電スペーサ800を電気手術器具の放射先端部に組み込むことによって、放射先端部の屈曲を容易にすることができる。誘電スペーサの螺旋形状は、誘電スペーサ800の弾性も強化できる。誘電スペーサ800は、放射先端部が曲げられた後、放射先端部を真っすぐにするのに役立ち得る。例えば、放射先端部を曲げて、曲がりくねった通路を通過した後、誘電スペーサ800の弾性は、放射先端部を真っすぐにするように作用することができる。このようにして、放射先端部は、曲げられた後、自動的に元の(例えば、真っすぐな)構成に戻ることができる。
【0112】
一部の実施形態(図示せず)では、誘電スペーサの一部のみが螺旋形状を有することができる。放射先端部の螺旋形状の誘電材料を使用して、放射先端部の屈曲を容易にするという概念は、他の電気手術器具に組み入れることができる。例えば、電気手術器具300は、放射先端部312の屈曲を容易にするために、誘電材料308の中間部分322が螺旋部分を含むように修正されてもよい。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11a
図11b