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特許7557872地中熱利用装置及び該地中熱利用装置の使用方法
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  • 特許-地中熱利用装置及び該地中熱利用装置の使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】地中熱利用装置及び該地中熱利用装置の使用方法
(51)【国際特許分類】
   F24T 10/30 20180101AFI20240920BHJP
   E01H 5/10 20060101ALI20240920BHJP
   F25B 30/06 20060101ALI20240920BHJP
   E01C 11/26 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
F24T10/30
E01H5/10 Z
F25B30/06 T
E01C11/26 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021014520
(22)【出願日】2021-02-01
(65)【公開番号】P2021131223
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-04-28
【審判番号】
【審判請求日】2024-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2020025157
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500575972
【氏名又は名称】株式会社リビエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】今 喜代美
(72)【発明者】
【氏名】今 修一郎
(72)【発明者】
【氏名】今 祐治郎
【合議体】
【審判長】水野 治彦
【審判官】飯星 潤耶
【審判官】鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-141205(JP,U)
【文献】特開2016-145664(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0055709(KR,A)
【文献】特開2005-326128(JP,A)
【文献】特開平8-5162(JP,A)
【文献】特開2005-90902(JP,A)
【文献】特開2016-98806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24T 10/30
F25B 30/06
E01H 5/10
E01C 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設される筒状ケーシング内の熱媒体流体の熱を地上設備にて利用するようにした地中熱利用装置において、
前記筒状ケーシングは、前記熱媒体流体を貯溜するための熱媒体流体貯溜室を内側に確保した内側筒部と、該内側筒部を囲む外側筒部とを具備して二重筒状に構成され、
前記外側筒部の周壁には、内外に貫通する通水路が設けられ、
前記内側筒部と前記外側筒部の間には、前記通水路を介して流入する地下水を貯溜する地下水貯溜室が確保され、
前記内側筒部は、
前記熱媒体流体貯溜室と前記地下水貯溜室とを水密に仕切っており、
前記熱媒体流体貯溜室内にある前記熱媒体流体を吸入口から汲み上げる往管と、
汲み上げた前記熱媒体流体の熱を利用した後、前記熱媒体流体を吐出口から前記熱媒体流体貯室へ戻す還管を備え、
前記内側筒部と前記外側筒部の間には、その上端側に断熱材が設けられ、前記断熱材よりも下方側に前記地下水貯溜室及び前記通水路が設けられており、
前記熱媒体流体は、発電用タービンを循環するものではなく又は前記発電用タービンを駆動するための蒸気を生成し熱交換器を循環する循環型地熱発電システムではなく、
前記地下水貯溜室は別の井戸から地下水を供給されるものではない地中熱利用装置。
【請求項2】
前記通水路は、前記断熱材よりも下側で上下方向へわたるスリット状に形成され、前記外側筒部の周方向に間隔を置いて複数設けられることを特徴とする請求項記載の地中熱利用装置。
【請求項3】
前記内側筒部の底壁部と前記外側筒部の底壁部との間には、前記内側筒部の周壁部を下方へ延長可能にする空間が確保されていることを特徴とする請求項1~何れか1項記載の地中熱利用装置。
【請求項4】
前記内側筒部内の熱媒体流体を吸入して地上設備に導いて利用した後に前記内側筒部内に戻す循環流路を備えたことを特徴とする請求項1~何れか1項記載の地中熱利用装置。
【請求項5】
前記循環流路を第一の循環流路とし、
前記第一の循環流路とは異なる第二の循環流路を備え、
前記第一の循環流路は、前記熱媒体流体を吸入するための吸入口を、前記内側筒部内に貯溜した熱媒体流体の上層寄りに配置し、
前記第二の循環流路は、前記熱媒体流体を吸入するための吸入口を前記第一の循環流路の吸入口よりも下方側に配置し、この吸入口により吸入した前記熱媒体流体を、前記地上設備とは異なる他の地上設備に導いて利用した後に前記内側筒部内に戻すように構成されていることを特徴とする請求項記載の地中熱利用装置。
【請求項6】
前記循環流路は、前記内側筒部内の熱媒体流体を、吸入し分岐して複数の地上設備に導いて利用した後に、合流して前記内側筒部内に戻すことを特徴とする請求項記載の地中熱利用装置。
【請求項7】
前記循環流路は、前記内側筒部内から吸入した熱媒体流体を、直列的に配管接続された複数の地上設備に順次に流通して利用した後に、前記内側筒部内に戻すことを特徴とする請求項記載の地中熱利用装置。
【請求項8】
複数の前記地上設備のうち、下流側の地上設備の吐出側配管と、上流側の地上設備の吸入側配管との間に、前記下流側の地上設備で利用した熱媒体流体を前記上流側の地上設備で再利用するための再利用配管を設けたことを特徴とする請求項記載の地中熱利用装置。
【請求項9】
請求項1~何れか1項記載の地中熱利用装置の使用方法であって、
前記熱媒体流体が不凍液であり、
前記地下水貯溜室内の地下水を凍結させた後、前記内側筒部内の前記熱媒体流体の熱を利用することを特徴とする地中熱利用装置の使用方法。
【請求項10】
請求項1~何れか1項記載の地中熱利用装置の使用方法であって、
地上が高温の時に、前記内側筒部内から汲み上げた熱媒体流体を外部熱により加熱して前記内側筒部内に戻し、
この後、地上が前記高温よりも低温の時に、前記内側筒部内の熱媒体流体の熱を利用することを特徴とする地中熱利用装置の使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中の熱を、融雪や空調機、冷凍機等の熱源(温熱源及び冷熱源を含む)として利用するようにした地中熱利用装置、及び該地中熱利用装置の使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載されるように、鉛直状のケーシングと、このケーシング内に位置する開口から上方のケーシング外へ延設された往管と、ケーシング外からケーシング内へ入り下方へ延設された還管と備え、前記往管によりケーシング内の地下水をくみ上げて地上設備に流通させ熱交換等に利用した後、この利用後の水を前記還管によりケーシング内へ戻し更に地下水脈へ戻すようにした地下水往還装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-9335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術によれば、くみ上げた地下水を地上設備で利用した後に地下水脈に戻すことになるため、環境への悪影響が懸念され、自治体等による規制を受ける場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
地中に埋設される筒状ケーシング内の熱媒体流体の熱を地上設備にて利用するようにした地中熱利用装置において、前記筒状ケーシングは、前記熱媒体流体を貯溜するための熱媒体流体貯溜室を内側に確保した内側筒部と、該内側筒部を囲む外側筒部とを具備して二重筒状に構成され、前記外側筒部の周壁には、内外に貫通する通水路が設けられ、前記内側筒部と前記外側筒部の間には、前記通水路を介して流入する地下水を貯溜する地下水貯溜室が確保され、前記内側筒部は、前記熱媒体流体貯溜室と前記地下水貯溜室とを水密に仕切っており、前記熱媒体流体貯溜室内にある前記熱媒体流体を吸入口から汲み上げる往管と、汲み上げた前記熱媒体流体の熱を利用した後、前記熱媒体流体を吐出口から前記熱媒体流体貯室へ戻す還管を備え、前記内側筒部と前記外側筒部の間には、その上端側に断熱材が設けられ、前記断熱材よりも下方側に前記地下水貯溜室及び前記通水路が設けられており、前記熱媒体流体は、発電用タービンを循環するものではなく又は前記発電用タービンを駆動するための蒸気を生成し熱交換器を循環する循環型地熱発電システムではなく、前記地下水貯溜室は別の井戸から地下水を供給されるものではない地中熱利用装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、地下水を汲み上げることなく、地熱を効率的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る地中熱利用装置の一例であって、地中に埋めた状態を示す縦断面図である。
図2】本発明に係る地中熱利用装置の他例であって、地中に埋めた状態を示す縦断面図である。
図3】本発明に係る地中熱利用装置の他例であって、地中に埋めた状態を示す縦断面図である。
図4】本発明に係る地中熱利用装置の他例であって、地中に埋めた状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第1の特徴は、地中に埋設される筒状ケーシング内の熱媒体流体の熱を地上設備にて利用するようにした地中熱利用装置において、前記筒状ケーシングは、前記熱媒体流体を貯溜するための熱媒体流体貯溜室を内側に確保した内側筒部と、該内側筒部を囲む外側筒部とを具備して二重筒状に構成され、前記外側筒部の周壁には、内外に貫通する通水路が設けられ、前記内側筒部と前記外側筒部の間には、前記通水路を介して流入する地下水を貯溜する地下水貯溜室が確保され、前記内側筒部は、前記熱媒体流体貯溜室と前記地下水貯溜室とを水密に仕切っている(図1及び図2参照)。
【0009】
第2の特徴として、前記内側筒部と前記外側筒部の間には、その上端側に断熱材が設けられ、前記断熱材よりも下方側に前記地下水貯溜室及び前記通水路が設けられている(図3図4参照)。
【0010】
第3の特徴として、前記通水路は、前記断熱材よりも下側で上下方向へわたるスリット状に形成され、前記外側筒部の周方向に間隔を置いて複数設けられる(図3図4参照)。
【0011】
第4の特徴として、前記内側筒部の底壁部と前記外側筒部の底壁部との間には、前記内側筒部の周壁部を下方へ延長可能にする空間が確保されている(図3図4参照)。
【0012】
第5の特徴は、前記内側筒部内の熱媒体流体を吸入して地上設備に導いて利用した後に前記内側筒部内に戻す循環流路を備えた(図1及び図2参照)。
【0013】
第6の特徴は、前記循環流路を第一の循環流路とし、前記第一の循環流路とは異なる第二の循環流路を備え、前記第一の循環流路は、前記熱媒体流体を吸入するための吸入口を、前記内側筒部内に貯溜した熱媒体流体の上層寄りに配置し、前記第二の循環流路は、前記熱媒体流体を吸入するための吸入口を前記第一の循環流路の吸入口よりも下方側に配置し、この吸入口により吸入した前記熱媒体流体を、前記地上設備とは異なる他の地上設備に導いて利用した後に前記内側筒部内に戻すように構成されている(図2参照)。
【0014】
第7の特徴として、前記循環流路は、前記内側筒部内の熱媒体流体を、吸入し分岐して複数の地上設備に導いて利用した後に、合流して前記内側筒部内に戻す(図3参照)。
【0015】
第8の特徴として、前記循環流路は、前記内側筒部内から吸入した熱媒体流体を、直列的に配管接続された複数の地上設備に順次に流通して利用した後に、前記内側筒部内に戻す(図4参照)。
【0016】
第9の特徴として、複数の前記地上設備のうち、下流側の地上設備の吐出側配管と、上流側の地上設備の吸入側配管との間に、前記下流側の地上設備で利用した熱媒体流体を前記上流側の地上設備で再利用するための再利用配管を設けた。
【0017】
第10の特徴は、上記地中熱利用装置の使用方法であって、前記熱媒体流体が不凍液であり、前記地下水貯溜室内の地下水を凍結させた後、前記内側筒部内の前記熱媒体流体の熱を利用する。
【0018】
第11の特徴は、上記地中熱利用装置の使用方法であって、地上が高温の時に、前記内側筒部内から汲み上げた熱媒体流体を外部熱により加熱して前記内側筒部内に戻し、この後、地上が前記高温よりも低温の時に、前記内側筒部内の熱媒体流体の熱を利用する。
【0019】
<第一の実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る地中熱利用装置の一例を示している。
地中熱利用装置1は、地中に略鉛直状に埋設される筒状ケーシング10と、この筒状ケーシング10における内側筒部11内の熱媒体流体を地上設備に導いて利用した後に前記内側筒部内に戻す第一の循環流路20とを備える。
【0021】
地中熱利用装置1が埋設される地中は、不透水層及び帯水層を有する。帯水層は、上下の不透水層の間に形成される水を含んだ地層であり、例えば、砂層、礫層などの多孔質浸透性の未固結地層、または割れ目を有した砂岩、礫岩、稀に玄武岩、分散した溶岩が重なり合った火成岩層、あるいは多孔質、空洞のある石灰岩の層等によって構成される。図示例の地中熱利用装置1は、不透水層及びその下側の帯水層に挿通されるようにして埋設される。
【0022】
筒状ケーシング10は、内側筒部11と、内側筒部11を囲む外側筒部12とを具備する二重筒状に構成され、内側筒部11内に熱媒体流体Bを貯溜するための熱媒体流体貯溜室10Aを確保するとともに、内側筒部11の外周面と外側筒部12の内周面との間に、通水路12aを介して流入する地下水を一時的に貯溜する地下水貯溜室10Bを確保している。
【0023】
内側筒部11は、円筒状の周壁部とその下端の底部から有底筒状に形成される。
この内側筒部11は、その周壁部及び底部により、周囲の空間に対し密閉状に仕切られ、その内部を熱媒体流体貯溜室10Aにしている。
内側筒部11の周壁部は、例えば、金属製パイプを上下方向へ複数連結することで構成される。
内側筒部11の周壁部及び底部は、熱媒体流体貯溜室10Aと地下水貯溜室10Bとを水密に仕切っている。内側筒部11の上端部は、円盤状の蓋部材13によって閉鎖されている。
【0024】
内側筒部11内には、熱媒体流体Bが貯溜される。
熱媒体流体Bは、防食不凍液であり、ブライン等と呼称される場合もある。この熱媒体流体Bには、例えばエチレングリコール等を主成分としたブライン不凍液を用いればよいが、水やその他の液体を用いることも可能である。
【0025】
また、外側筒部12は、内側筒部11の外径よりも大きい円筒状の周壁部の下端を底部により閉鎖した有底筒状に形成される。外側筒部12の周壁部には、周方向に間隔を置いて複数の通水路12aが設けられる。
【0026】
各通水路12aは、上下方向へわたって外側筒部12の周壁部を貫通するスリット状に形成される。この通水路12aは、地中における不透水層からその下側の帯水層に跨るように長尺状に形成され、図示例によれば、外側筒部12の上端近傍から同外側筒部12の下端近傍まで連続している。
また、各通水路12aの周宇方向の幅は、外側筒部12周囲の礫(小石)等を通過させ難いように適宜に設定される。
【0027】
第一の循環流路20は、内側筒部11内の熱媒体流体Bを、比較的上層側で吸入し第一の地上設備X1に導いて利用した後に内側筒部11内に戻すように構成される。
詳細に説明すれば、この第一の循環流路20は、内側筒部11内にて吸入口20aから上方へ延設され蓋部材13を貫通し、さらに地上の第一の地上設備X1まで延設された往管21と、往管21の途中に設けられて管内の熱媒体流体Bを第一の地上設備X1へ強制搬送するポンプPと、第一の地上設備X1を通過した熱媒体流体Bを内側筒部11内へ戻す還管22とを備える。
【0028】
図1に示す一例によれば、往管21の吸入口20aは、内側筒部11内に貯溜された熱媒体流体Bの上層寄りに位置する。そして、還管22の吐出口は、内側筒部11内において熱媒体流体Bの液面よりも上側に位置する。
【0029】
第一の地上設備X1は、往管21及びポンプPによって汲み上げられた熱媒体流体Bを熱交換器に通過させて熱利用し、その利用後の熱媒体流体Bを還管22へ戻す。
例えば、図示の第一の地上設備X1は、融雪装置であり、地面に埋め込まれたコイル式熱交換器に、熱媒体流体Bを通過させるように構成される。
【0030】
この第一の地上設備X1の他例としては、空調機器や、コールドチェーン機器、その他の冷凍装置とすることも可能である。この場合、往管21及び還管22は、この第一の地上設備X1の熱源側の熱交換器部分に接続される。
【0031】
次に、上記構成の地中熱利用装置1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
地中熱利用装置1を地中に埋め込むと、複数の通水路12aを介して、地下水貯溜室10Bに地下水が浸入する。この地下水は、図1に示す一例によれば、帯水層と不透水層の境目よりも若干上側に液面を有する。
この地下水は、温度や液圧等の変化に応じて、地下水貯溜室10B内へ侵入したり外側筒部12外へ流出したりして、流動する。
【0032】
地下水の熱は、内側筒部11の管壁を介して、熱媒体流体Bへ伝達する。
そして、熱媒体流体Bは、第一の循環流路20によって汲み上げられ、第一の地上設備X1を流通した後、内側筒部11内へ戻される。
【0033】
熱媒体流体貯溜室10Aと地下水貯溜室10Bとは、内側筒部11の管壁により仕切られている。このため、熱媒体流体貯溜室10Aの熱媒体流体Bが地下水貯溜室10Bへ侵入することはない。
【0034】
したがって、上記構成の地中熱利用装置1によれば、地下水を直接汲み上げたり、汲み上げた地下水を地中層に戻したりすることなく、地下水の熱を第一の地上設備X1で有効に利用することができ、環境への悪影響が少ない。
【0035】
<第二の実施態様>
図2に示す地中熱利用装置2は、上記構成の地中熱利用装置1に対し、第二の循環流路30を加えたものである。
【0036】
第二の循環流路30は、熱媒体流体Bを吸入するための吸入口30aを、第一の循環流路20の吸入口20aよりも下方側に配置し、この吸入口30aにより吸入した熱媒体流体Bを、第一の地上設備X1とは異なる第二の地上設備X2に導いて利用した後に内側筒部11内に戻す。
詳細に説明すれば、第二の循環流路30は、内側筒部11内の底部寄りの吸入口30aから上方へ延設され蓋部材13を貫通して地上の第二の地上設備X2に接続された往管31と、往管31の途中に設けられて管内の熱媒体流体Bを第二の地上設備X2へ強制搬送するポンプPと、第二の地上設備X2の下流側に接続されて、第二の地上設備X2を通過した熱媒体流体Bを内側筒部11内へ戻す還管32とを備える。
【0037】
往管31の吸入口30aは、内側筒部11内に貯溜された熱媒体流体Bの下層寄りに位置する。そして、還管32の吐出口は、内側筒部11内において熱媒体流体Bの液面よりも上側に位置する。
第二の地上設備X2は、往管31及びポンプPによって汲み上げられた熱媒体流体Bを熱源側熱交換器に通過させて熱利用し、その利用後の熱媒体流体Bを還管32へ戻す。この第二の地上設備X2は、例えば、冷暖切替が可能なヒートポンプ式冷凍空調機器やコールドチェーン機器、給湯器等とすればよい。
【0038】
上記構成の地中熱利用装置2によれば、上記地中熱利用装置1と同様に、地下水を直接汲み上げたり、汲み上げた地下水を地中層に戻したりすることなく、地下水の熱を第一及び第二の地上設備X1,X2で有効に利用することができ、環境への悪影響が少ない。
しかも、例えば、冬場であれば、比較的温度の高い熱媒体流体Bの上層部の熱を利用して路面を融雪しながら、比較的温度の低い熱媒体流体Bの下層部の熱により、第二の地上設備X2の熱源側熱交換器を冷却することができる。したがって、地下水熱を効率的に利用することができる。
【0039】
<第三の実施態様>
本発明に係る第三の実施態様は、上記構成の地中熱利用装置2(図2参照)の使用方法に関する。
この使用方法では、先ず、例えば冬場等、地中がほぼ零度以下になる時期に、その地中の低温熱により地下水貯溜室10B内の地下水を凍結させる。
この後、夏場等、外気温が比較的高い時期に、地下水貯溜室10B内で凍結した地下水の低温熱を、内側筒部11の管壁を介して熱媒体流体Bへ伝達し、この熱媒体流体Bを第二の循環流路30により汲み上げて、第二の地上設備X2(例えば、冷凍装置やコールドチェーン機器等)にて利用する。
よって、この方法によれば、冬場等における地下水の低温熱を夏場に有効利用することができる。
【0040】
<第四の実施態様>
本発明に係る第四の実施態様は、上記構成の地中熱利用装置2(図2参照)の使用方法に関する。
この使用方法では、例えば、夏場、地上が比較的高温の時に、第一の循環流路20の往管21により内側筒部11内から熱媒体流体Bを汲み上げ、この汲み上げた熱媒体流体Bを、路面の熱により高温になった第一の地上設備X1の熱交換器により加熱する。そして、この加熱された熱媒体流体Bを、還管22によって内側筒部11内に戻す。
この後、例えば夜間等、地上が前記高温よりも低温の時に、第二の循環流路30の往管31により熱媒体流体貯溜室10Aから熱媒体流体Bを汲み上げ、この汲み上げた熱媒体流体Bの熱を、第二の地上設備X2にて利用する。
よって、この方法によれば、地上が高温になった際の熱を、前記高温よりも低温の時に有効に利用することができる。
【0041】
<第五の実施態様>
本発明に係る第五の実施態様は、図3に示す地中熱利用装置3のように、上記構成の地中熱利用装置1に対し、断熱材14を加え、通水路12aを通水路12a’に置換し、内側筒部11を内側筒部11’に置換し、第一の循環流路20を循環流路40に置換し、第二の地上設備X2’を加えたものである。
【0042】
断熱材14は、内側筒部11’と外側筒部12の間における上端側に、隙間がないように、円筒状に設けられる。
この断熱材14は、不透水層中において外気温の影響を受け易い深度(外気温干渉深度)以内に設けられる。
図示例によれば、筒状ケーシング10の全長が50~100m程度であり、断熱材14の全長(深さ方向の寸法)dは約10mである。
断熱材14の材質は、水を吸収しない材料であることが好ましく、例えば、発泡ポリスチレンや、ウレタンフォーム等の発泡プラスチック系断熱材等とすればよい。
【0043】
通水路12a’は、外側筒部12における断熱材14よりも下方側の部分に、該部分の上下方向の略全長にわたってスリット状に形成される。この通水路12a’は、外側筒部12の周方向に間隔を置いて複数設けられる。
【0044】
内側筒部11’は、その周壁部が、上側の本体部11c’と、この本体部11c’の下端側に直列的に接続された複数の筒体11b’とから構成され、複数の筒体11b’の最下端部には底壁部11a’が接続される。この構成によれば、筒体11b’の数の変更により、内側筒部11’の上下方向の全長寸法を調節することができる。
筒体11b’を、隣接する他の部材(本体部11c’、他の筒体11b’又は底壁部11a’)に接続する手段は、螺合接続や、複数のネジを用いた接続等、着脱可能なものであればよい。
なお、他例としては、上記内側筒部11(図1参照)の下端側の切断と、筒体11b’及び底壁部11a’の溶接とにより、前記全長寸法を調節するようにすることも可能である。
【0045】
地下水貯溜室10B’は、内側筒部11’と外側筒部12の間における断熱材14よりも下側の円筒状の空間と、内側筒部11’の底壁部11a’と外側筒部12の底壁部12bとの間の空間とから構成される。
底壁部11a’と底壁部12bの間の上下寸法は、内側筒部11’の周壁部を筒体11b’等により下方へ延長できるように、そして通水路12a’から侵入した細砂等をある程度貯溜できるように、余裕をもった寸法に設定される。
【0046】
次に、循環流路40、第一の地上設備X1及び第二の地上設備X2’について説明する。
循環流路40は、内側筒部11’内(熱媒体流体貯溜室10A)の熱媒体流体Bを、往管21及びポンプPにより吸入し、三方弁41により第一の分岐流路42と第二の分岐流路43に分岐して、複数(図示例によれば二つ)の地上設備X1,X2’に導き利用した後に、合流して還管22より内側筒部11’内へ戻す。
【0047】
三方弁41は、周知の電動式三方弁であり、図示しない制御回路に制御されて、上流側の熱媒体流体Bを第一の分岐流路42と第二の分岐流路43のうちの一方又は双方へ流す。
【0048】
第一の分岐流路42は、第一の地上設備X1を通過した後、還管22を通って熱媒体流体貯溜室10A内へ入る。
【0049】
第二の分岐流路43は、第二の地上設備X2’の熱源側熱交換器を通過した後、第一の分岐流路42と合流して還管22へ入り、熱媒体流体貯溜室10A内へ入る。
【0050】
図3に例示する第一の地上設備X1は、上記したものと同じものである。また、第二の地上設備X2’は、ヒートポンプ式冷凍空調機器であり、その利用側熱交換器の配管には、エアコン室内機やファンコイルユニット等の熱利用機器44が接続される。
【0051】
よって、上記構成の地中熱利用装置3及び循環流路40等によれば、熱媒体流体Bが地上側の熱の影響で変動するようなことを断熱材14により防ぐことができる上、断熱材14よりも下側の地下水貯溜室10B’に通水路12a’を介して効率的に地下水を流通させることができる。
【0052】
また、例えば、底壁部12bに蓄積される細砂等が比較的少ない場合は、内側筒部11’を筒体11b’を用いて下方へ延長して熱媒体流体Bを増やす等、内側筒部11’の全長及び容量を容易に調節することができる。
【0053】
熱媒体流体Bの熱を第一の地上設備X1と第二の地上設備X2’の双方で利用することができ、また、三方弁41を切替え動作させて、熱媒体流体Bの熱を一方のみで利用することも可能である。
なお、図示例以外の他例としては、循環流路40中の三方弁41を、弁機構を有さない分岐管(チーズ等)に置換し、第一の分岐流路42と第二の分岐流路43のうちの一方ま又は双方に流路を開閉するための電動弁を設けるようにしてもよい。
【0054】
<第六の実施態様>
本発明に係る第六の実施態様は、図4に示す地中熱利用装置4のように、上記地中熱利用装置3に対し、循環流路40を循環流路50に置換し、第二の地上設備X2’を第二の地上設備X2”に置換したものである。
【0055】
循環流路50は、内側筒部11’内から往管21及びポンプPにより吸入した熱媒体流体Bを、直列的に配管接続された複数(図示例によれば二つ)の地上設備X1,X2”に順次に流通して利用した後に、前記内側筒部内に戻す。
複数の地上設備X1,X2”のうち、下流側の地上設備X2”の吐出側配管54と、ポンプPとの間には、下流側の地上設備X2”で利用した熱媒体流体Bを上流側の地上設備X1で再利用するための再利用配管55が設けられる。
【0056】
詳細に説明すれば、吸入口20aからポンプPへ向かう往管21中には、該流路を開閉するバルブ51、バルブ51の下流側の流体を第二の地上設備X2”の吐出側の流体と合流してポンプPへ流す合流管52が設けられる。そして、ポンプPの下流側の配管は、第一の地上設備X1を通過して第二の地上設備X2”の熱源側熱交換器の吸入口に接続される。そして、この熱源側熱交換器の吐出口には、吐出側配管54が接続され、この吐出側配管54の下流側は三方弁53に接続される。
【0057】
バルブ51は、図示しない制御回路に制御された周知の電動開閉弁であり、往管21中の流路を必要に応じて開放又は閉鎖する。
三方弁53は、図示しない制御回路により制御された周知の電動式三方弁であり、吐出側配管54側から流入した流体を、還管22と再利用配管55とのうちの一方又は双方へ流す。
【0058】
第二の地上設備X2”は、図示例によれば給湯器であり、その熱源側熱交換器が、循環流路50の流路中に設けられる。
この第二の地上設備X2”の利用側熱交換器(図示せず)は、水道水等を過熱して温水にする。前記温水は、配管等を介してシャワーや蛇口等の利用側機器へ導かれる。
なお、第二の地上設備X2”及び前記利用側機器は、上述した第二の地上設備X2’(ヒートポンプ式冷凍空調機器等)及び熱利用機器44(エアコン等)やその他の地上設備に置換することが可能である。
【0059】
よって、上記構成によれば、吸入口20aから吸い込まれた熱媒体流体Bは、ポンプP及び第一の地上設備X1を流通し、さらに第二の地上設備X2”の熱源側熱交換器を通過した後、内側筒部11’内へ戻されたり、第一の地上設備X1で再利用されたりする。
すなわち、例えば、三方弁53を三方とも流通可能な状態にした場合には、吐出側配管54を通過した熱媒体流体Bが三方弁53により二つに分岐され、その一部は還管22を介して内側筒部11’内へ戻され、他の一部は再利用配管55を介して第一の地上設備X1等に再利用される。
また、例えば、三方弁53を吐出側配管54と再利用配管55の間のみ流通可能な状態にし、バルブ51を閉鎖した場合には、循環流路50内の熱媒体流体Bは、内側筒部11’内へ戻されることなく、第一の地上設備X1と第二の地上設備X2”の間の配管を循環する。
【0060】
このように、地中熱利用装置4及び循環流路50等によれば、現場状況等に応じて、熱媒体流体Bの熱を効率的に利用することができる。
【0061】
<その他の変形例>
なお、上記実施態様によれば、通水路12aが不透水層から帯水層に跨るように、この通水路12aを外側筒部12の上端側から下端側にかけて設けたが、他例としては、この通水路12aを、帯水層のみに対応するように、外側筒部12の下部側のみに設けるようにしてもよい。
【0062】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0063】
1,2:地中熱利用装置
10:筒状ケーシング
10A:熱媒体流体貯溜室
10B:地下水貯溜室
11:内側筒部
12:外側筒部
12a:通水路
20:第一の循環流路
20a:吸入口
30:第二の循環流路
30a:吸入口
X1:第一の地上設備
X2:第二の地上設備
図1
図2
図3
図4