(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】無垢材木理シート基材の作製方法
(51)【国際特許分類】
B27D 1/04 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B27D1/04 F
(21)【出願番号】P 2021039012
(22)【出願日】2021-03-11
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】521103853
【氏名又は名称】台巻木建材有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】黄▲ゆー▼哲
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-240405(JP,A)
【文献】特開昭52-031808(JP,A)
【文献】特開昭51-079711(JP,A)
【文献】特開平05-228906(JP,A)
【文献】特開平07-047508(JP,A)
【文献】特開2006-205586(JP,A)
【文献】国際公開第2008/113890(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に横置する細長い樹幹の年輪断面の中心に矩形或いは円心形の廃物部を区画し、前記廃物部の上下両側は幅広板エリアとし、前記廃物部の左右両側は幅狭板エリアとするステップAと、
同じ厚さに設定して水平方向に一層ずつ前記樹幹を切断し、多層の板
材を取得するステップBと、
前記廃物部の上下両側の前記幅広板エリアから取得した複数の前記板材から、頂底両側の幅が不足している前記板材である狭い材を除去し、左右両側を直辺として切り揃えて余剰の辺を除去した後、同じ厚さであり且つ左右両側に垂直な接合面を有し、樹種の木目の特徴を表現する多層の幅広なメインボードを取得するステップCと、
前記樹幹の中段の前記幅狭板エリア及び廃物部を含む領域から取得した前記板材を、前記廃物部を切除するように縦方向に切断し、前記廃物部を切除した板材から左右両側を直辺として切り揃えて余剰の辺を除去した後、同じ厚さであり且つ左右両側に垂直な接合面を有する多層の幅狭な辺材を取得するステップDと、
同じ長さに裁断した複数の前記メインボード及び辺材を選択し、全体の幅の総合的な需要に応じて水平方向に接合することで、所定のシート基材最終製品の縦横の寸法より実質的に大きい、自然な木目の継ぎ合せを表現する基板を構成するステップEと、
前記基板の長さ方向の両側に、該基板と実質的に同じ厚さの四角棒を接着し辺を密封した後、全体を移動させて加工可能な膜板を構成するステップFと、
前記膜板を水平方向に薄くスライスし、自然な木目の継ぎ合せを表現する多層のシートを作製するステップGと、
透明接着剤を薄い不織布の全面に塗布し、前記シートの底面に実質的に同じ幅の前記不織布を位置決めし、前記シートと不織布を堅固に貼り合わせて、全面的に木目が分布している基材を構成するステップHと、
前記基材を型決めした後、縦横方向に固定寸法に切断し、無垢材木理シート基材の作製を完了するステップIと、
を含むことを特徴とする無垢材木理シート基材の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無垢材木理シート基材の作製方法に関し、すなわち、細長い樹幹を完全に取得し、木目の分布特性に対し精確にスライスして膜材を取得し、広い面積の木目の自然な継ぎ合せを作製し、本物の木目を表現する。また、シート基材の産業的利益は、特に木材の成長特性により高効率で裁断して応用し、消費を最少にすることで天然資源の保護という実益を達成する。
【背景技術】
【0002】
木質の建材や板材を室内装飾の壁板や家具に応用すると、室内に暖色系の質感を与えるほか、木質が自然な芳香を放つため、最高級で最も高価な材料として応用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、樹木の生長速度が遅いため、無垢材(杉や松等)を丸ごと板材として大量に使用すると、過剰な伐採により地球環境を破壊するほか、主に十分な面積と厚さを有する完全な無垢材を取得することは容易でなく、価格も高騰し、自然に対する破壊も非常に重大で決して無視できないものとなった。このため、現在市場では無垢材の外観を代替する合板や発泡板等の代替品が多く存在している。
【0004】
よくある合板や発泡板は外層に木質模様のスキンを貼り付けているが、前述のスキンはプリンターで印刷しているため、模様の重複が多く、装飾に応用すると非常に不自然となった。また、印刷したスキンには木材本来の赤外線及び紫外線の吸収能力がなく、天然の暖色系の質感に欠け、自然な木の芳香を放たないという様々な効果が欠失していた。
【0005】
上記課題を解決するために、あるメーカーでは、木材を平びき、回転切削、四分びき、或いは薄切等の技術で加工することにより天然木化粧板を取得し、貼り付け処理を施して、合板や発泡板の外層または不織布の上層に貼り付け、貼り合わせ用の木目シートを開発した。
【0006】
しかしながら、従来の化粧板切開技術は、木材の成長を考慮して材料を取得しているわけではないため、全面的な木目板として貼り合わせると自然な木目がバラバラになったり、破裂するのを避けられなかった。特に、大サイズの広い面積の板面や壁面に敷設する場合、前述の製造方法では模様が重複し、或いは化粧板の模様が極度に不自然になり、天然木材の装設効果が失われ、明らかに実益性が不十分であった。
【0007】
他の方式では、科学技術による化粧板を合板または剛性材料に貼り合わせている。但し、このような科学技術による化粧板は貼り合わせる前に前処理が必要であり、プロセスが煩雑になり、コストが高くなるほか、天然木化粧板に比べて非常に厚く重く、敷設施工の工費が高くなり、不便であった。
【0008】
そこで、本発明者は上記の欠点が改善可能と考えた。すなわち、上述の化粧板切開技術を改善し、高効率で材料を取得し、天然の木材資源を保護することが、関連業者が共に積極的に解決を目指すための目下の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記技術的課題に鑑みて開発されたものであり、無垢材木理シート基材の作製方法を提供することを目的とする。つまり、水平方向に横置する細長い樹幹の年輪断面の中心に廃物部を区画し、同じ厚さに設定して水平方向に一層ずつ前記樹幹を切断し、多層の板材を取得した後、頂底の狭い材を排除し、左右両側の余剰の辺を除去し、前記廃物部を切除するように縦方向に切断し、同じ厚さであり且つ両側に垂直な接合面を有し、樹種の木目を表現する多層の幅広なメインボード及び接続状垂直方向パターンの特徴を表現する多層の幅狭な辺材をそれぞれ切り出す。ここでは、全体の幅の総合的な需要に応じて、同じ長さの複数の前記メインボード及び辺材を選択して水平方向に接合し、所定のシート最終製品の縦横の寸法より実質的に大きい、自然な木目の継ぎ合せを表現する基板を構成している。前記基板の長さ方向の両側には、該基板と実質的に同じ厚さの四角棒を接着し、辺を密封して膜板を構成し、該膜板を水平方向に薄くスライスしてシートを作製している。透明接着剤を薄い不織布の全面に塗布し、前記シートの底面に実質的に同じ幅の不織布を位置決めし、前記シートと不織布を堅固に貼り合わせて、全面的に木目が分布している基材を形成し、型決め処理を施した後、前記基材を縦横方向に固定寸法に切断し、シート基材を作製している。天然の原木のように広い面積の木目の質感を呈し、特に各シート基材は天然の無垢材の木目が決して重複しないという特色を有し、この種のシート基材の応用価値を明確に高める。
【0010】
本発明の他の目的は、無垢材木理シート基材の作製方法を提供する。つまり、主に樹木の天然の木目の成長方向に材料を取得し、腐食現象が発生しやすい樹幹の中心を廃物部として区画して排除し、且つ頂底両側の狭い材及び左右両側の余剰の辺を切除した後にメインボード及び辺材の取得を完了し、完全な木目を形成する有効な木材を最高の効率で応用する。加工プロセスにおいて、木目を継ぎ合せる際に瑕疵の発生率を低下させ、プロセスを簡略化し、経済効果を高める進歩性という実益を達成させる。
【0011】
本発明のさらなる他の目的は、無垢材木理シート基材の作製方法を提供する。つまり、有効な木材を高効率で完全に応用する実益を有し、各原木の樹体から生産可能な無垢材木理シート基材を増量することで経済効果を高めるほか、原木の樹体の必要量を減らし、伐採量を減らし、貴重な自然の資源を保護する効果を達成させる。
【0012】
本発明のさらにさらなる他の目的は、無垢材木理シート基材の作製方法を提供する。つまり、薄いシートとなるように水平方向にスライスする。シートの底面を透明接着剤により不織布に接着し、全面的に木目が分布する基材を構成する。型決め処理により、固定寸法に切断した後にシート基材を作製する。極めて薄い不織布が光透過状態を形成し、薄いシート基材の一部が遮光性を呈し、基材全体をカーテンのカーテンシートとして直接応用する場合、内側または外側に組み合わせる光源が照射すると、原木の木目が全面的に自然なハレーションを表現する。これが本発明に係る無垢材木理シート基材を応用することによる他の実務的な利益である。
【0013】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の無垢材木理シート基材の作製方法を示すフローチャートである。
【
図5】基板を接合し、膜板を密封する分解概略図である。
【
図6】基板を接合し、膜板を密封する分解概略図である。
【
図7】膜板をシートにカットする分解概略図である。
【
図9】シートに不織布を貼り合わせる基材の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【0016】
図1を参照しながら、本発明の無垢材木理シート基材の作製方法をさらに詳しく説明する。前記作製方法の各ステップを下記に示す。
ステップA、中心に廃物部21を区画する。
ステップB、水平方向に同じ厚さに一層ずつ切断する。
ステップC、メインボード22から狭い材2C及び余剰の辺2Dを除去する。
ステップD、辺材23から廃物部21及び余剰の辺2Dを除去する。
ステップE、基板3はメインボード22と辺材23を接合する。
ステップF、膜板4は基板3の長さ方向の両側の四角棒31の辺を密封する。
ステップG、シート41は膜板4を水平方向に薄くスライスする。
ステップH、基材6は透明接着剤によりシート41に薄い不織布5を接着して形成する。
ステップI、木目シート7は基材6の縦横を固定の寸法に切断する。
【0017】
上述のステップにより、無垢材木理シート基材の作製を完了する。木目シート7を積み重ねて平らにし、基材6の表面に漆等で物理的処理を施すことは、従来の各種薄膜を処理するための慣用の技術であり、本発明の範囲に含まれないため、その説明を省略する。
【0018】
図2、
図3、
図4を参照すれば、本発明に係る無垢材木理シート基材の作製方法は、水平方向に横置する細長い樹幹2の年輪断面の中心に矩形或いは円心形の廃物部21を区画する。廃物部21の上下両側は幅広板エリア2Aとし、廃物部21の左右両側は幅狭板エリア2Bとする。
【0019】
横方向カッターS1により、同じ厚さに設定して水平方向に一層ずつ樹幹2を切断し、多層の板体を取得した後、廃物部21の上下両側の幅広板エリア2Aから取得した複数の板材から、頂底両側の幅が不足している板体である狭い材2Cを除去し、左右両側を直辺として切り揃えて余剰の辺2Dを除去した後、同じ厚さであり且つ左右両側に垂直な接合面を有し、樹種の木目の特徴を表現する多層の幅広なメインボード22(
図4参照)として切断する。
【0020】
樹幹2の中段の幅狭板エリア2B及び廃物部21を含む領域から取得した板材に対し、縦方向カッターS2により、廃物部21を切除するように縦方向に切断し、廃物部21を切除した板材から左右両側を直辺として切り揃えて余剰の辺2Dを除去した後、同じ厚さであり且つ左右両側に垂直な接合面を有し、接続状垂直方向パターンの特徴を表現する多層の幅狭な辺材23を取得する。
【0021】
図2に示されるように、縦方向カッターS2により、矩形の廃物部21を区画するように縦方向に切断する方式により、切断工程を簡略化するが、材料取得率が低くなる(辺材23の幅が狭い)問題が生じる可能性がある。
図3に示されるように、縦方向カッターS3により、円心形の廃物部21を区画するように縦方向に切断し、切断加工では実際の廃物部21の確実な幅に基づいて分けて切断する。その切断工程は多いが、材料取得率が高くなる(辺材23の幅が広い)という実益性を有している。
【0022】
図5を参照すれば、左右両側が共に垂直な接合面であり、且つ同じ長さに裁断、例えば、8ftの長さ、すなわち約245cmに設定した複数のメインボード22及び辺材23を選択し、全体の幅の総合的な、例えば、4ftの幅、すなわち約122cmに設定する需要に応じて、水平方向に接合し、所定のシート基材最終製品の縦横の寸法より実質的に大きい、自然な木目の継ぎ合せを表現する基板3を構成している。例えば、基板3を4ftの幅、8ftの長さの仕様の板に設定することが挙げられる。
【0023】
自然に成長した樹幹2の幅径は均一ではなく、廃物部21の幅も精確に設定できないため、メインボード22及び辺材23の各片の幅の仕様が精確に一致しなくなる。この場合、作業員が現場で木目が相似する同一の樹種を選定してメインボード22及び辺材23を切り出し、幅を接合して所定のシート基材最終製品の縦横の寸法より実質的に大きくすればよい。
【0024】
その組み合わせ方式は、1つ或いは複数の木目の特徴を表現するメインボード22に、側面に1つ或いは複数の左右両側に垂直な接合面を有する辺材23の木目図像を組み合わせることが好ましい。
【0025】
全てのメインボード22または全ての辺材23を接合し、異なる風格の決して重複しない木目の図像の特色を形成している。
【0026】
図6を参照すれば、基板3の長さ方向の両側は、基板3と実質的に同じ厚さの四角棒31を接着して辺を密封した後、全体を移動させて加工可能な膜板4を構成している。
【0027】
図7を参照すれば、横方向切断機S4により、膜板4は水平方向に薄くスライスすることで、自然な木目の継ぎ合せを表現する多層のシート41(四角棒31のマージン411)を作製している。
【0028】
図8を参照すれば、作製した多層のシート41は、まず連続層を積層し、重量物Wにより上面を加圧して先に平坦にし、後続の貼り合わせ作業を行いやすくしている。
【0029】
図9を参照すれば、透明接着剤を塗布する接着剤塗布ローラPにより薄い不織布5の全面に塗布し、裏返しの状態のシート41の底面に実質的に同じ幅の不織布5を位置決めし、シート41と不織布5を堅固に貼り合わせて、全面的に木目が分布している木目薄片である基材6を構成している。
【0030】
図10を参照すれば、基材6は型決めした後、縦横方向に固定寸法に切断し、天然の原木のような広い面積の木目を自然に表現し、且つ特に各種材料の表面を貼り合わせて施工可能な木目シート7を有している。
【0031】
木目シート7は底層に不織布5を敷設し、接着剤を塗布しやすくし、壁面、全面的なカーテン、または家具として使用する。器材表面に貼付し施工する基材は広い面積の木目の質感を表現し、本発明の重要な経済的実益及び確実な進歩性という特徴を達成している。
【0032】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
2 樹幹
21 廃物部
2A 幅広板エリア
2B 幅狭板エリア
2C 狭い材
2D 余剰の辺
22 メインボード
23 辺材
3 基板
31 四角棒
4 膜板
41 シート
411 マージン
5 不織布
6 基材
7 木目シート
S1 横方向カッター
S2 縦方向カッター
S3 縦方向カッター
S4 横方向切断機
W 重量物
P 接着剤塗布ローラ