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特許7557891化合物、細胞性小胞染色剤および細胞性小胞の蛍光染色方法
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  • 特許-化合物、細胞性小胞染色剤および細胞性小胞の蛍光染色方法 図1
  • 特許-化合物、細胞性小胞染色剤および細胞性小胞の蛍光染色方法 図2
  • 特許-化合物、細胞性小胞染色剤および細胞性小胞の蛍光染色方法 図3
  • 特許-化合物、細胞性小胞染色剤および細胞性小胞の蛍光染色方法 図4
  • 特許-化合物、細胞性小胞染色剤および細胞性小胞の蛍光染色方法 図5
  • 特許-化合物、細胞性小胞染色剤および細胞性小胞の蛍光染色方法 図6
  • 特許-化合物、細胞性小胞染色剤および細胞性小胞の蛍光染色方法 図7
  • 特許-化合物、細胞性小胞染色剤および細胞性小胞の蛍光染色方法 図8
  • 特許-化合物、細胞性小胞染色剤および細胞性小胞の蛍光染色方法 図9
  • 特許-化合物、細胞性小胞染色剤および細胞性小胞の蛍光染色方法 図10
  • 特許-化合物、細胞性小胞染色剤および細胞性小胞の蛍光染色方法 図11
  • 特許-化合物、細胞性小胞染色剤および細胞性小胞の蛍光染色方法 図12
  • 特許-化合物、細胞性小胞染色剤および細胞性小胞の蛍光染色方法 図13
  • 特許-化合物、細胞性小胞染色剤および細胞性小胞の蛍光染色方法 図14
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】化合物、細胞性小胞染色剤および細胞性小胞の蛍光染色方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 271/12 20060101AFI20240920BHJP
   C07D 491/147 20060101ALI20240920BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240920BHJP
   G01N 33/533 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C07D271/12 CSP
C07D491/147
G01N33/53 S
G01N33/533
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022578274
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2022001692
(87)【国際公開番号】W WO2022163446
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2021012443
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】竹森 洋
(72)【発明者】
【氏名】古田 享史
(72)【発明者】
【氏名】森田 洋子
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/262374(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/235424(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/035767(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D,G01N
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】
(式(1)中、R1は、H、C1-C6のアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基またはカルボキシ基を表す。R2は、H、C1-C18のアルキル基、C1-C18のアルコキシ基、ハロゲン元素、NO2またはN(CH32を表す。R3およびR4は、それぞれ独立にHまたはCH3を表す。但し、R3およびR4は互いに結合して環を形成してもよく、その場合は、R3およびR4はCH2である。lは1または2を表し、mは0または1を表し、nは1、2または3を表す。Zは蛍光基を表す。)
【請求項2】
式(1)で表される化合物が、下記式(2)で表される化合物である、
請求項1に記載の化合物。
【化2】
(式(2)中、R1は、HまたはCH3を表す。R2は、H、CH3、OCH3またはN(CH32を表す。R3およびR4は、それぞれ独立にHまたはCH3を表す。但し、R3およびR4は互いに結合して環を形成してもよく、その場合は、R3およびR4はCH2である。R5は、NO2、SO2NH2またはSO2N(CH32を表す。lは1または2を表し、mは0または1を表し、nは1、2または3を表す。)
【請求項3】
式(1)で表される化合物が、下記式(3)で表される化合物である、
請求項1に記載の化合物。
【化3】
(式(3)中、R1は、HまたはCH3を表す。R2は、H、CH3、OCH3またはN(CH32を表す。R3およびR4は、それぞれ独立にHまたはCH3を表す。但し、R3およびR4は互いに結合して環を形成してもよく、その場合は、R3およびR4はCH2である。lは1または2を表し、mは0または1を表し、nは1、2または3を表す。)
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の化合物を含む、
細胞性小胞染色剤。
【請求項5】
さらに、他の蛍光化合物を含む、
請求項4に記載の細胞性小胞染色剤。
【請求項6】
請求項1~請求項3に記載の化合物ならびに請求項4および請求項5に記載の細胞性小胞染色剤からいずれか一つを選択し、細胞性小胞を染色する染色工程と、
試料中の染色された細胞性小胞を検出する検出工程と、
を含む、
細胞性小胞の蛍光染色方法。
【請求項7】
請求項1~請求項3に記載の化合物ならびに請求項4および請求項5に記載の細胞性小胞染色剤からいずれか一つを選択し、細胞性小胞を染色する染色工程(ただし、人の生体内の細胞性小胞を染色することを除く。)と、
試料中の染色された細胞性小胞を検出する検出工程と、
検出工程後に、試料を評価する評価工程と、
を含む
胞性小胞の蛍光染色方法。
【請求項8】
試料が化粧品を含み、
細胞内に取り込まれた細胞性小胞を測定して化粧品を評価する、
請求項7に記載の細胞性小胞の蛍光染色方法。
【請求項9】
試料が医薬品を含み、
細胞内に取り込まれた細胞性小胞を測定して医薬品を評価する、
請求項7に記載の細胞性小胞の蛍光染色方法。
【請求項10】
試料が細胞を含み、
細胞内の細胞性小胞を測定して細胞の分化・品質を評価する、
請求項7に記載の細胞性小胞の蛍光染色方法。
【請求項11】
試料が食品を含み、
食品内の細胞性小胞を測定して食品を評価する、
請求項7に記載の細胞性小胞の蛍光染色方法。
【請求項12】
試料が生体から採取された生体組織を含み、
採取された生体組織中の細胞性小胞を測定して生体組織を評価する、
請求項7に記載の細胞性小胞の蛍光染色方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願における開示は、化合物、細胞性小胞染色剤および細胞性小胞の蛍光染色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、細胞外分子を細胞内に取り込む機構であるエンドサイトーシスは、細胞の生理機能や疾患に関与することが知られ、多くの研究が行われている。エンドサイトーシスによる細胞表面の窪みはその後細胞内へ移行しエンドソームを形成する。そのため、エンドサイトーシスにより細胞内へ取り込まれた細胞外部の物質は、エンドソームに蓄積される。また、エンドソームは、細胞外から取り込まれた分子の、その後の行き先を決める重要な細胞内小器官として機能する。
【0003】
また、エンドサイトーシスにより形成されたエンドソームから、細胞外へ放出されるエクソソームが形成される。エクソソームの表面には細胞膜成分が含まれ、内部には細胞内の物質が含まれるため、放出された元の細胞の特徴を反映しており、細胞間の情報伝達に重要な役割を果たしている。さらに、エクソソームは、細胞外へ放出され、体液中に(血液、髄液、尿等)にも存在し、体中を循環している。そのため、エクソソームを疾患等の診断マーカーとして利用することが期待されている。また、エクソソームと同様にエンドソームを由来とする小胞としてメラノソームが知られている。メラノソームは、メラノサイトで生成、放出されてケラチノサイトに輸送され、ケラチノサイトに取り込まれる。このような機序から、ケラチノサイトにおけるメラノソームの蓄積を測定することで、医薬品や化粧品等の評価が行われる。
【0004】
そのため、エンドソーム由来の細胞内小胞や細胞外に放出される小胞の検出・分析は、細胞が外部の物質を取り込むしくみや放出するしくみを理解する上でも重要である。特許文献1には、複数の異常な細胞に由来するエクソソームを分析することが開示されている。また、特許文献2には、蛍光標識したケラチノサイトと非標識メラノサイトを共培養し、これに蛍光標識メラノソーム特異抗体を結合させた後フローサイトメーターを用いて解析する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-204604号公報
【文献】特開2005-249391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、特許文献2には、蛍光色素を用いた蛍光標識によって小胞の検出を行うことが開示されている。蛍光標識は、小胞を回収後に蛍光色素と混合するのみという簡便な方法であることからよく用いられている。しかしながら、蛍光標識後に未反応の蛍光色素を除く作業によりサンプルロスが生じることや蛍光色素同士の凝集でミセルを形成してしまうといった問題がある。そのため、小胞を特異的に染色する新たな染色剤に使用できる化合物が望まれている。
【0007】
そこで、本出願における開示は、細胞内および/または細胞外の小胞に特異的に結合する新たな化合物、細胞性小胞染色剤および細胞性小胞の蛍光染色方法を提供することを課題とする。本出願における開示のその他の任意付加的な効果は、発明を実施するための形態において明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]下記式(1)で表される化合物。
【化1】
(式(1)中、R1は、H、C1-C6のアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基またはカルボキシ基を表す。R2は、H、C1-C18のアルキル基、C1-C18のアルコキシ基、ハロゲン元素、NO2またはN(CH32を表す。R3およびR4は、それぞれ独立にHまたはCH3を表す。但し、R3およびR4は互いに結合して環を形成してもよく、その場合は、R3およびR4はCH2である。lは1または2を表し、mは0または1を表し、nは1、2または3を表す。Zは蛍光基を表す。)
[2]式(1)で表される化合物が、下記式(2)で表される化合物である、
上記[1]に記載の化合物。
【化2】
(式(2)中、R1は、HまたはCH3を表す。R2は、H、CH3、OCH3またはN(CH32を表す。R3およびR4は、それぞれ独立にHまたはCH3を表す。但し、R3およびR4は互いに結合して環を形成してもよく、その場合は、R3およびR4はCH2である。R5は、NO2、SO2NH2またはSO2N(CH32を表す。lは1または2を表し、mは0または1を表し、nは1、2または3を表す。)
[3]式(1)で表される化合物が、下記式(3)で表される化合物である、
上記[1]に記載の化合物。
【化3】
(式(3)中、R1は、HまたはCH3を表す。R2は、H、CH3、OCH3またはN(CH32を表す。R3およびR4は、それぞれ独立にHまたはCH3を表す。但し、R3およびR4は互いに結合して環を形成してもよく、その場合は、R3およびR4はCH2である。lは1または2を表し、mは0または1を表し、nは1、2または3を表す。)
[4]上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の化合物を含む、
細胞性小胞染色剤。
[5]さらに、他の蛍光化合物を含む、
上記[4]に記載の細胞性小胞染色剤。
[6]上記[1]~[3]に記載の化合物ならびに上記[4]および[5]に記載の細胞性小胞染色剤からいずれか一つを選択し、細胞性小胞を染色する染色工程と、
試料中の染色された細胞性小胞を検出する検出工程と、
を含む、
細胞性小胞の蛍光染色方法。
[7]検出工程後に、試料を評価する評価工程を含む、
上記[6]に記載の細胞性小胞の蛍光染色方法。
[8]試料が化粧品を含み、
細胞内に取り込まれた細胞性小胞を測定して化粧品を評価する、
上記[7]に記載の細胞性小胞の蛍光染色方法。
[9]試料が医薬品を含み、
細胞内に取り込まれた細胞性小胞を測定して医薬品を評価する、
上記[7]に記載の細胞性小胞の蛍光染色方法。
[10]試料が細胞を含み、
細胞内の細胞性小胞を測定して細胞の分化・品質を評価する、
上記[7]に記載の細胞性小胞の蛍光染色方法。
[11]試料が食品を含み、
食品内の細胞性小胞を測定して食品を評価する、
上記[7]に記載の細胞性小胞の蛍光染色方法。
[12]試料が生体から採取された生体組織を含み、
採取された生体組織中の細胞性小胞を測定して生体組織を評価する、
上記[7]に記載の細胞性小胞の蛍光染色方法。
【発明の効果】
【0009】
標識後に未反応の色素を除く作業が必要ないためサンプルロスを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例13の結果を示す図面代用写真。図1Aは細胞全体の蛍光顕微鏡像を示す。図1B図1Aの枠で囲まれた箇所を拡大したものを示す。
図2】実施例14の結果を示す図面代用写真。図2AはPIKfyve阻害剤添加前の化合物1が発する蛍光を観察した蛍光顕微鏡像を示す。図2BはPIKfyve阻害剤添加前の位相差顕微鏡像を示す。図2CはPIKfyve阻害剤添加後の化合物1が発する蛍光を観察した蛍光顕微鏡像を示す。図2DはPIKfyve阻害剤添加後の位相差顕微鏡像を示す。図2EはPIKfyve除去後細胞を3時間培養した後の化合物1が発する蛍光を観察した蛍光顕微鏡像である。図2FはPIKfyve除去後細胞を3時間培養した後の位相差顕微鏡像である。
図3】化合物1によるヒト細胞の細胞性小胞を蛍光染色した結果を示す図面代用写真。図3Aは実施例15の蛍光顕微鏡像を示す。図3Bは実施例16の蛍光顕微鏡像を示す。
図4】実施例17の結果を示す図面代用写真。図4Aは化合物1が発する蛍光を観察した蛍光顕微鏡像を示す。図4Bはミトコンドリア染色試薬が発する蛍光を観察した蛍光顕微鏡像を示す。図4Cは核を染色するDAPIが発する蛍光を観察した蛍光顕微鏡像を示す。図4Dは位相差顕微鏡像を示す。
図5】化合物1が細胞性小胞に高い特異性を有すること示す例を示した図面代用写真。図5Aは、実施例18と比較例1の蛍光顕微鏡像を重ねたものである。図5Bは、実施例18の蛍光顕微鏡像である。図5Cは、比較例1の蛍光顕微鏡像である。
図6】化合物1が細胞性小胞に高い特異性を有すること示す別の例を示した図面代用写真。図6Aは実施例19の蛍光顕微鏡像を示す。図6Bは実施例19の位相差顕微鏡像を示す。図6Cは比較例2の蛍光顕微鏡像を示す。図6Dは比較例2の位相差顕微鏡像を示す。
図7】エクソソームの蛍光染色の結果を示す図面代用写真。
図8】エクソソーム検出における検量線を示す図。
図9】食品中のエクソソーム測定の結果を示す図。
図10】ラベル化エクソソームの細胞内への取り込みを示す図面代用写真。図10Aは化合物1およびExoSparkler Mem Dye-Redの両方が発する蛍光を重ねた蛍光顕微鏡像を示す。図10Bは化合物1が発する蛍光を観察した蛍光顕微鏡像を示す。図10CはExoSparkler Mem Dye-Redが発する蛍光を観察した蛍光顕微鏡像を示す。
図11】ラベル化メラノソームの細胞取り込み阻害の結果を示す図。図11Aは、実施例29の蛍光顕微鏡像および比較例4の位相差顕微鏡像を示す。図11Bは、実施例29の結果を示す。図11Cは、比較例4の結果を示す。
図12】細胞性小胞を蛍光染色した結果を示す図面代用写真。図12Aは実施例30の蛍光顕微鏡像を示す。図12Bは実施例30の位相差顕微鏡像を示す。図12Cは実施例31の蛍光顕微鏡像を示す。図12Dは実施例32の蛍光顕微鏡像を示す。図12Eは実施例33の蛍光顕微鏡像を示す。図12Fは実施例34の蛍光顕微鏡像を示す。図12Gは実施例35の蛍光顕微鏡像を示す。図12Hは実施例36の蛍光顕微鏡像を示す。図12Iは実施例37の蛍光顕微鏡像を示す。図12Jは実施例38の蛍光顕微鏡像を示す。図12Kは実施例39の蛍光顕微鏡像を示す。
図13】化合物1~化合物7による生細胞と死細胞に対する蛍光強度測定の結果を示す図。
図14】実施例47の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(化合物の実施形態)
以下に、実施形態に係る化合物について説明する。
【0012】
実施形態に係る化合物は、下記式(1)で表される化合物であることを特徴とする。式(1)で表される化合物は、細胞性小胞に特異的に結合し蛍光を発する。本明細書における「細胞性小胞」は、「細胞内小胞」、エクソソーム等の「細胞外小胞」を含む。
【0013】
【化4】
【0014】
式(1)中、R1は、H、C1-C6のアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基またはカルボキシ基を表す。C1-C6のアルキル基は、直鎖、分岐または環状であってもよい。C1-C6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0015】
2は、H、C1-C18のアルキル基、C1-C18のアルコキシ基、ハロゲン元素、NO2またはN(CH32を表す。C1-C18のアルキル基は、直鎖、分岐または環状であってもよい。C1-C18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロヘプタデシル基、シクロオクタデシル基等が挙げられる。C1-C18のアルコキシ基は、飽和または不飽和でもあってもよく、芳香環を有してもよい。また、C1-C18のアルコキシ基は、直鎖、分岐または環状であってもよい。C1-C18のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノナオキシ基、デカンオキシ基、ウンデカンオキシ基、ドデカンオキシ基、トリデカンオキシ基、テトラデカンオキシ基、ペンタデカンオキシ基、ヘキサデカンオキシ基、ヘプタデカンオキシ基、オクタデカンオキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、1-ブテニルオキシ基、2-ブテニルオキシ基、3-ブテニルオキシ基、1,3-ブタンジエニルオキシ基、1-ペンテニルオキシ基、2-ペンテニルオキシ基、3-ペンテニルオキシ基、4-ペンテニルオキシ基、ヘキシニルオキシ基、ヘキシジニルオキシ基、ヘプチニルオキシ基、ヘプチジニルオキシ基、オクチニルオキシ基、オクチジニルオキシ基、ノニニルオキシ基、ノニジニルオキシ基、デシニルオキシ基、デシジニルオキシ基、ウンデシニルオキシ基、ウンデシジニルオキシ基、ドデシルオキシ基、ドデシジニルオキシ基、トリデシニルオキシ基、トリデシジニルオキシ基、テトラデシニルオキシ基、テトラデシジニルオキシ基、ペンタデシニルオキシ基、ペンタデシジニルオキシ基、ヘキサデシニルオキシ基、ヘキサデシジニルオキシ基、ヘプタデシニルオキシ基、ヘプタデシジニルオキシ基、オクタデシニルオキシ基、オクタデシジニルオキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アンスリルオキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、トリメチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、ジエチルフェノキシ基、トリエチルフェノキシ基、プロピルフェノキシ基、ブチルフェノキシ基、メチルナフトキシ基、ジメチルナフトキシ基、トリメチルナフトキシ基、メチルアンスリルオキシ基、エチルアンスリルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、ナフチルメチルオキシ基、フルオレニルメチルオキシ基等が挙げられる。ハロゲン元素としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0016】
3およびR4はそれぞれ独立に、HまたはCH3を表し、R3、R4は同じであってもよく、異なってもよい。但し、R3およびR4は互いに結合して環を形成してもよく、その場合は、R3およびR4はCH2である。
【0017】
lは1または2を表し、mは0または1を表し、nは1、2または3を表す。
【0018】
Zは蛍光基を表す。式(1)で表される化合物の蛍光基は、蛍光を発するものであれば特に制限はない。蛍光基としては、例えば、NBD(ニトロベンゾフラザン)、ABD(スルファモイルベンソフラザン)、DBD(ジメチルアミノスルホニルベンゾフラザン)、ジメチルアミノベンジリデンロダニン、FAM、FITC、ROX、TAMRA、Alexa Fluor(登録商標) 405、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 700、AMCA、AMCA-X、APC(Allophycocyanin)、APC-XL、ATTO 390、ATTO 465、ATTO 488、ATTO 490LS、ATTO 520、ATTO 532、ATTO Rho6G、ATTO 542、ATTO 550、ATTO 565、ATTO 590、ATTO 594、ATTO 633、ATTO 647N、ATTO 647、ATTO 655、ATTO 665、ATTO 680、ATTO 700、ATTO 740、C-PC(C-Phycocyanin)、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、DY-405、DY-415、DY-475XL、DY-480XL、DY-481XL、DY-485XL、DY-490、DY-495、DY-495-X5、DY-500XL、DY-505-X5、DY-510XL、DY-520XL、DY-521XL、DY-547、DY-548、DY-549、DY-554、DY-555、DY-556、DY-560、DY-590、DY-610、DY-615、DY-630、DY-631、DY-632、DY-633、DY-634、DY-635、DY-636、DY-647、DY-648、DY-649、DY-650、DY-651、DY-652、DY-675、DY-676、DY-677、DY-678、DY-680、DY-681、DY-682、DY-700、DY-701、DY-730、DY-731、DY-732、DY-734、DY-749、DY-750、DY-751、DY-752、DY-776、DY-777、DY-780、DY-781、DY-782、DyLight 405、DyLight 488、DyLight 547、DyLight 549、DyLight 594、DyLight 633、DyLight 647、DyLight 649、DyLight 680、DyLight 750、DyLight 800、ECD、Fluorescein、HiLyte Flour 488、HiLyte Fluor 555、HiLyte Fluor 647、HiLyte Fluor 680、HiLyte Fluor 750、HiLyte Fluor TR、HiLyte Plus 555、HiLyte Plus 647、HiLyte Plus 750、IRDye700DX、IRDye800、IRDye800CW、MFP488、MFP555、MFP590、MFP631、NorthernLights 493、NorthernLights 557、NorthernLights 637、Oyster 500、Oyster 550、Oyster 556、Oyster 645、Oyster 650、Oyster 656、Pacific Blue、PE(phycoerythrin)、B-PE、R-PE、PerCP、Phycocyanin、PREX710、Quantum Red、Rhodamine、ROX (X-Rhodamine、Rhodamine Red X)、Royal Blue、Spectrum Green、Spectrum Orange、Spectrum Red、Texas Red、Tri-Color、TRITC等が挙げられる。また、蛍光基Zは、式(1)で表される化合物が細胞性小胞を染色した際に蛍光を発することができれば、どのように結合してもよい。
【0019】
式(1)で表される化合物のより具体的な例として、下記式(2)で表される化合物および下記式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0020】
【化5】
【0021】
式(2)中、R1は、HまたはCH3を表す。R2は、H、CH3、OCH3またはN(CH32を表す。R3およびR4は、それぞれ独立にHまたはCH3を表す。但し、R3およびR4は互いに結合して環を形成してもよく、その場合は、R3およびR4はCH2である。R5は、NO2、SO2NH2またはSO2N(CH32を表す。lは1または2を表し、mは0または1を表し、nは1、2または3を表す。
【0022】
【化6】
【0023】
式(3)中、R1は、HまたはCH3を表す。R2は、H、CH3、OCH3またはN(CH32を表す。R3およびR4は、それぞれ独立にHまたはCH3を表す。但し、R3およびR4は互いに結合して環を形成してもよく、その場合は、R3およびR4はCH2である。lは1または2を表し、mは0または1を表し、nは1、2または3を表す。
【0024】
式(2)で表される化合物および式(3)で表される化合物の具体例を以下に示すが、これら例示された化合物に制限されるものではない。
【0025】
【化7】
【0026】
式(1)で表される化合物は、エンドソーム由来の細胞性小胞に結合する。そのため、実施形態に係る化合物は、細胞内のエンドソームやメラノソーム、細胞外に放出されたエクソソーム等を蛍光染色できる。また、細胞内小胞を染色する場合、実施形態に係る化合物は、生細胞の細胞内小胞を特異的に蛍光染色できる。さらに、実施形態に係る化合物は細胞性小胞に結合して蛍光を発し、細胞性小胞に結合していない化合物は蛍光を発さない。したがって、細胞性小胞に未結合の化合物を取り除く作業の必要がなく、サンプルロスを抑制できる。
【0027】
(細胞性小胞染色剤の実施形態)
上記の実施形態に係る化合物は、溶媒に溶解して細胞性小胞染色剤として用いることもできる。溶媒は式(1)で表される化合物を溶解できるのであれば、特に制限はない。溶媒としては、例えば、アセトン、DMSO、エタノール、およびこれらの水溶液等が挙げられる。
【0028】
実施形態に係る細胞性小胞染色剤は、式(1)で表される化合物の他に、例えば、ミトコンドリア、細胞膜等の細胞性小胞と異なる要素を蛍光染色する他の蛍光化合物を任意付加的に含んでもよい。式(1)で表される化合物と蛍光化合物を用いることで、複数の要素を同時に染色できる。また、式(1)で表される化合物と蛍光化合物の相互作用により、式(1)で表される化合物を増感させることや、式(1)で表される化合物の細胞性小胞への特異性を向上させることができる。
【0029】
(細胞性小胞の蛍光染色方法の実施形態)
実施形態に係る細胞性小胞の染色方法は、式(1)で表される化合物または細胞性小胞染色剤を用い細胞性小胞を染色する染色工程と、試料中の染色された細胞性小胞を検出する検出工程と、を少なくとも含み、任意付加的に、検出工程後に試料を評価する評価工程を含む。
【0030】
染色工程は、式(1)で表される化合物によって細胞性小胞を蛍光染色する。例えば、細胞内小胞の染色を行う場合、細胞が培養されているところへ式(1)で表される化合物を添加すればよい。また、培養された細胞を回収し、回収した細胞へ式(1)で表される化合物を添加してディッシュ等へ捲いてもよい。エクソソーム等の細胞外小胞の染色を行う場合には、細胞外小胞を含む溶液に式(1)で表される化合物を添加すればよい。
【0031】
染色工程において、添加する式(1)で表される化合物の量としては、添加した後の最終濃度が0.01μM~10μMの範囲でよく、0.1μM~1μMの範囲が好ましい。
【0032】
検出工程は、式(1)で表される化合物の蛍光基に応じた励起光を照射して、試料中の細胞性小胞に結合した式(1)で表される化合物から発せられる蛍光を検出する。励起光の照射には、一般的な蛍光検出と同様の照射手段を用いればよく、例えば、蛍光顕微鏡が備えるレーザ光源から、必要に応じて所定の波長を選択すればよい。蛍光の検出は、蛍光顕微鏡の鏡筒から行ってもよいし、蛍光顕微鏡に設置されたカメラ等が撮影した画像をモニタ等の表示手段に表示してもよい。式(1)で表される化合物の蛍光基によるが、蛍光顕微鏡の鏡筒から目視によっては十分に蛍光を観察することができない場合があっても、カメラ等による画像の撮影を通じて蛍光を観察することが可能な場合もある。必要に応じて所定の波長を選択的に通過させるフィルタを用いてもよい。
【0033】
また、細胞性小胞の蛍光染色方法は、任意付加的に試料を評価する評価工程を含む。評価工程は、式(1)で表される化合物によって検出された細胞性小胞により試料を評価する。何を評価するかは試料によって異なるが、例えば、化粧品、医薬品、食品等の評価を行うことができる。さらに、細胞内小胞を検出して細胞の分化度合いの評価や体液中のエクソソームを検出し、疾患等を評価することもできる。
【0034】
例えば、化粧品や医薬品を評価する場合、あらかじめ式(1)で表される化合物によって細胞性小胞をラベル化しておき、化粧品や医薬品の存在によって、ラベル化された細胞性小胞の細胞へ取り込みを検出・観察することで、化粧品や医薬品を評価できる。例えば、メラニンを溜め込む小胞であるメラノソームのケラチノサイトへの取り込みから色素沈着や、それに伴う皮膚疾患が評価できる。また、食品中に含まれる細胞性小胞を測定することで、食品の評価もできる。例えば、腸の機能に影響を与える小胞内のmiRNAの取り込み効率で、食品機能を予測できる。
【0035】
さらに、細胞における細胞性小胞の分布をみることで細胞の分化度合いを評価することもできる。例えば、メラノソーム含量が多いメラノサイトとメラノソーム含量が少ないメラノサイトは、その分化度合いが異なる。そのため、メラノサイトにおいてメラノソームを検出することで細胞の分化度合いや品質の評価をすることもできる。
【0036】
また、エクソソームは、放出された元の細胞の特徴を反映している。そして、細胞外に放出されるエクソソーム等の細胞性小胞は、生体組織中に含まれる。そのため、生体組織中のエクソソームは、疾患等の診断マーカーとして用いることもできる。したがって、生体から生体組織を採取し、採取された生体組織の細胞性小胞を式(1)で表された化合物を用いて測定することで、疾患等を評価できる。よって、式(1)で表された化合物は、臨床検査機器および試薬の開発へも応用でき、細胞性小胞を測定するキットにも用いることができる。なお、本明細書における「生体組織」は、生体内の体液、細胞、組織を含む。
【0037】
実施形態に係る化合物、細胞性小胞染色剤および細胞性小胞の蛍光染色方法は、以下の効果を奏する。
(1)式(1)で表される化合物は細胞性小胞に特異的に結合する。そして、細胞性小胞に結合しない式(1)で表される化合物は蛍光を発さない。したがって、細胞性小胞を特異的に蛍光染色させたうえで、未結合の式(1)で表される化合物を取り除く作業が必要ないため、サンプルロスを抑制できる。
(2)未結合の式(1)で表される化合物を取り除く作業が必要なく、式(1)で表される化合物を加えるのみで、簡便に細胞性小胞を蛍光染色できる。
(3)細胞性小胞染色剤が、式(1)で表される化合物の他に蛍光化合物を含んだ場合、複数の要素を同時に染色できる。また、式(1)で表される化合物と蛍光化合物の相互作用により、式(1)で表される化合物を増感させることや、式(1)で表される化合物の細胞性小胞への特異性を向上させることができる。
(4)式(1)で表される化合物を用いて細胞性小胞を検出することで、化粧品、医薬品、食品、細胞の分化度合い、疾患等の評価ができる。
【0038】
以下に実施例を掲げ、本出願で開示する実施形態を具体的に説明するが、この実施例は単に実施形態の説明のためのものである。本出願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。
【実施例
【0039】
[化合物1の合成]
<実施例1>
以下に記載する手順で、化合物1を合成した。
【0040】
【化8】
【0041】
5-(2-bromoethoxy)-2,3-dihydro-1H-inden-1-one
5-ヒドロキシ-1-インダノン(745mg,5.03mmol)を酢酸エチル(15mL)に溶解させたのち、酢酸エチル(15mL)に懸濁させた炭酸カリウム(2.45g,17.7mmol)、1,2-ジブロモエタン(3.27mL,38.0mmol)、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(BTEAC)(121mg,531μmol)を順次加え、24時間加熱還流させた。反応液を室温まで放冷した後に氷水に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=1/1)にて精製し、白色固体の5-(2-bromoethoxy)-2,3-dihydro-1H-inden-1-one(1.06g,4.16mmol,83%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 2.67 (m, 2H, COCH2), 3.08 (br t, J = 6 Hz, 2H, ArCH2), 3.66 (t, J = 6.4 Hz, 2H, BrCH2), 4.35 (t, J = 6.4 Hz, 2H, OCH2), 6.89-6.93 (br m, 2H, ArH), 7.69 (d, J = 9.2 Hz, 1H, ArH)
【0042】
5-(2-azidoethoxy)-2,3-dihydro-1H-inden-1-one
5-(2-Bromoethoxy)-2,3-dihydro-1H-inden-1-one(410mg,1.61mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(5.0mL)に溶解させ、アジ化ナトリウム(129mg,1.98mmol)を加えて35分間加熱還流させた。反応液を室温まで放冷した後に水に注ぎ込み、ジエチルエーテルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮し、赤褐色固体の5-(2-azidoethoxy)-2,3-dihydro-1H-inden-1-one(346mg,1.59mmol,99%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 2.66-2.7 (m, 2H, COCH2), 3.09 (br t, J = 6 Hz, 2H, ArCH2), 3.63 (t, J = 5 Hz, 2H, N3CH2), 4.21 (t, J = 5 Hz, 2H, OCH2), 6.90-6.94 (br m, 2H, ArH), 7.70 (d, J = 9.2 Hz, 1H, ArH)
【0043】
【化9】
【0044】
3-[4-(dimethylamino)phenyl]acrylonitrile
アルゴン雰囲気下、水酸化カリウム(890mg)をアセトニトリル(5.0mL)に溶解させ、10分間加熱還流させた。続いて、アセトニトリル(10.0mL)に溶解させたp-ジメチルアミノベンズアルデヒド(2.03g,13.6mmol)を加え、3時間加熱還流させた。反応液を室温まで放冷した後に水を加え、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。残渣をジクロロメタンで抽出し、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を乾固しない程度まで減圧濃縮したのち、酢酸エチルを加えて同様に減圧濃縮を2回行い、3-[4-(dimethylamino)phenyl]acrylonitrile(2.40g)を得た。この化合物は精製せず、そのまま次の反応に用いた。
【0045】
3-[4-(dimethylamino)phenyl]propanenitrile
3-[4-(dimethylamino)phenyl]acrylonitrile(2.40g)を酢酸エチル(40.0mL)に溶解させ、Pd/C(10%,240mg)を加え、バルーン圧の水素雰囲気下、室温で5時間30分反応させた。反応溶液をセライトろ過し、ろ液を減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=3/1)にて精製し、淡黄色結晶の3-[4-(dimethylamino)phenyl]propanenitrile(1.40g,8.03mmol,2段階収率59%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 2.55 (t, J = 7.4 Hz, 2H, CH2CN), 2.86 (t, J = 7.4 Hz, 2H, ArCH2), 2.92 (s, 6H, N(CH3)2), 6.69 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 7.09 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH)
【0046】
4-(3-aminopropyl)-N,N-dimethylaniline
アルゴン雰囲気下、3-[4-(dimethylamino)phenyl]propanenitrile(601mg,3.45mmol)をジエチルエーテル(3.5mL)に溶解させ、氷水浴下、水素化アルミニウムリチウム(391mg,10.3mmol)を加え、3時間反応させた。反応混合物にジエチルエーテルを加え、撹拌しながら、水(391μL)、15%水酸化ナトリウム水溶液(391μL)、水(1.17mL)をこの順に加えた。反応混合物をセライトろ過した後、ろ液を減圧濃縮し、黄色油状の4-(3-aminopropyl)-N,N-dimethylaniline(507mg)を得た。
【0047】
【化10】
【0048】
5-(2-azidoethoxy)-N-{3-[4-(dimethylamino)phenyl]propyl}-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine
4-(3-aminopropyl)-N,N-dimethylaniline(67.6mg,379μmol)をメタノール(600μL)に溶解させ、5-(2-azidoethoxy)-2,3-dihydro-1H-inden-1-one(41.2mg,190μmol)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(21.2mg,337μmol)、酢酸(30μL)をこの順番に加え、15時間10分加熱還流させた。反応液を室温まで放冷した後に1M塩酸を加えて過剰の水素化物をクエンチした。続いて、反応液に水酸化ナトリウム水溶液を加えて弱塩基性にし、酢酸エチルで抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アセトン)にて精製し、淡黄色油状の5-(2-azidoethoxy)-N-{3-[4-(dimethylamino)phenyl]propyl}-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(36.3mg,95.6μmol,50%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.75-1.86 (complex, 3H, ArCH2CH 2), 2.35 (m, 1H, ArCH2CH 2), 2.57 (dt, J = 3.2 and 8.0 Hz, 2H, ArCH2), 2.71 (t, J = 7.1, 2H, ArCH2), 2.7-2.8 (m, 1H), 2.90 (s, 6H, N(CH3)2), 2.90-2.99 (m, 1H), 3.56 (t, J = 5 Hz, 2H, N3CH2), 4.12 (t, J = 5 Hz, 2H, OCH2), 4.15 (t, J = 6.4 Hz, 1H, ArCHNH), 6.68 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 6.74 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ArH), 6.77 (s, 1H, ArH), 7.05 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.20 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ArH)
【0049】
5-(2-azidoethoxy)-N-{3-[4-(dimethylamino)phenyl]propyl}-N-methyl-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine
5-(2-azidoethoxy)-N-{3-[4-(dimethylamino)phenyl]propyl}-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(10.1mg,26.6μmol)をメタノール(150μL)に溶解させ、パラホルムアルデヒド(4.9mg)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(19.6mg,312μmol)をこの順番に加え、室温で18時間反応させた。反応液に1M塩酸を加えて過剰の水素化物をクエンチした。続いて、反応液に水酸化ナトリウム水溶液を加えて弱塩基性にし、酢酸エチルで抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アセトン)にて精製し、淡黄色油状の5-(2-azidoethoxy)-N-{3-[4-(dimethylamino)phenyl]propyl}-N-methyl-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(5.4mg,14μmol,53%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.72-1.84 (complex, 2H, ArCH2CH 2), 1.98-2.05 (m, 2H, ArCH2CH 2), 2.15 (s, 3H, NCH3), 2.38-2.45 (m, 1H), 2.44-2.62 (complex, 2H), 2.7-2.8 (m, 1H), 2.89 (br, 8H), 3.57 (t, J = 5.0 Hz, 2H, N3CH2), 4.13 (t, J = 5.0 Hz, 2H, OCH2), 4.35 (t, J = 7.4 Hz, 1H, ArCHN), 6.68 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 6.75 (s, 1H, ArH), 6.75-6.78 (1H, ArH), 7.05 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 7.25-7.26 (1H, ArH)
【0050】
5-(2-aminoethoxy)-N-{3-[4-(dimethylamino)phenyl]propyl}-N-methyl-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine
5-(2-azidoethoxy)-N-{3-[4-(dimethylamino)phenyl]propyl}-N-methyl-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(22.4mg,57μmol)をメタノール(500μL)に溶解させ、Pd/C(10%,4.2mg)を加え、バルーン圧の水素雰囲気下、室温で6時間20分反応させた。反応混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧濃縮して黄色油状の5-(2-aminoethoxy)-N-{3-[4-(dimethylamino)phenyl]propyl}-N-methyl-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(17.2mg)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.7-1.85 (complex, 2H, ArCH2CH 2), 1.97-2.06 (m, 2H, ArCH2CH 2), 2.16 (s, 3H, NCH3), 2.37-2.62 (complex, 4H), 2.7-2.9 (complex, 2H), 2.89 (s, 6H), 3.06 (t, J = 5.0 Hz, 2H, H2NCH2), 3.96 (t, J = 5.0 Hz, 2H, OCH2), 4.31-4.4 (br, 1H, ArCHN), 6.68 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 6.74 (s, 1H, ArH), 6.74-6.77 (1H, ArH), 7.05 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 7.25-7.26 (1H, ArH)
【0051】
【化11】
【0052】
化合物1
5-(2-aminoethoxy)-N-(3-(4-(dimethylamino)phenyl)propyl)-N-methyl-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(17.2mg,46.8μmol)をアセトニトリル(500μL)に溶解させ、続いて、アセトニトリル(500μL)に溶解させたNBD-F(9.0mg,49μmol)を加え、室温で5時間30分反応させた。反応溶液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アセトン)にて精製し、赤褐色油状の化合物1(19.7mg,37μmol,79%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ: 1.72-1.83 (complex, 2H, ArCH2CH 2), 1.98-2.07 (m, 2H, ArCH2CH 2), 2.15 (s, 3H, NCH3), 2.38-2.62 (complex, 3H, NCH2 and ArCH2), 2.71-2.94 (complex, 3H, ArCH2), 2.89 (s, 6H, N(CH3)2), 3.86-3.92 (m, 2H, HNCH 2), 4.30 (t, J = 5 Hz, 2H, OCH2), 4.36 (t, J = 6.7 Hz, 1H, ArCHN), 6.28 (d, J = 8.5 Hz, 1H, ArH), 6.52 (br, 1H, ArH), 6.67 (d, J = 8.5 Hz, 2H, ArH), 6.76 (s, 1H, ArH), 6.75-6.78 (1H, ArH), 7.05 (d, J = 8.5 Hz, 2H, ArH), 8.51 (d, J = 8.5 Hz, 1H, ArH)
【0053】
[化合物2の合成]
<実施例2>
以下に記載する手順で、化合物2を合成した。
【0054】
【化12】
【0055】
5-(2-azidoethoxy)-N-(3-phenylpropyl)-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine
3-フェニルプロピルアミン(398mg,2.94mmol)をメタノール(6.0mL)に溶解させ、5-(2-azidoethoxy)-2,3-dihydro-1H-inden-1-one(320mg,1.47mmol)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(111mg,1.77mmol)、酢酸(400μL)をこの順番に加え、18時間加熱還流させた。反応液を室温まで放冷した後に1M塩酸を加えて過剰の水素化物をクエンチした。続いて、反応液に水酸化ナトリウム水溶液を加えて弱塩基性にし、酢酸エチルで抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アセトン)にて精製し、淡黄色油状の5-(2-azidoethoxy)-N-(3-phenylpropyl)-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(141mg,419μmol,29%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.76-1.88 (complex, 3H, ArCH2CH 2), 2.31-2.43 (m, 1H, ArCH2CH 2), 2.6-2.8 (complex, 4H), 2.91-3.0 (complex, 2H), 3.56 (t, J = 5 Hz, 2H, N3CH2), 4.12 (t, J = 5 Hz, 2H, OCH2), 4.15 (t, J = 6 Hz, 1H, ArCHN), 6.74 (dd, J = 8.2 and 2 Hz, 2H, ArH), 7.15-7.22 (complex, 4H, ArH), 7.26 (t, J = 8.4 Hz, 2H, ArH)
【0056】
5-(2-azidoethoxy)-N-methyl-N-(3-phenylpropyl)-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine
5-(2-azidoethoxy)-N-(3-phenylpropyl)-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(79.0mg,235μmol)をメタノール(1.0mL)に溶解させ、パラホルムアルデヒド(54.7mg)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(20.8mg,331μmol)をこの順番に加え、室温で18時間反応させた。反応液に1M塩酸を加えて過剰の水素化物をクエンチした。続いて、反応液に水酸化ナトリウム水溶液を加えて弱塩基性にし、酢酸エチルで抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アセトン)にて精製し、淡黄色油状の5-(2-azidoethoxy)-N-methyl-N-(3-phenylpropyl)-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(51mg,146μmol,62%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.76-1.86 (complex, 2H, ArCH2CH 2), 1.98-2.05 (complex, 2H, ArCH2CH 2), 2.16 (s, 3H, NCH3), 2.35-2.48 (complex, 2H, NCH2), 2.545-2.91 (complex, 4H, ArCH2), 3.57 (t, J = 5 Hz, 2H, N3CH2), 4.13 (t, J = 5 Hz, 2H, OCH2), 4.35 (t, J = 7 Hz, 1H, ArCHN), 6.74-6.78 (br, 2H, ArH), 7.13-7.19 (complex, 3H, ArH), 7.21-7.28 (complex, 3H, ArH)
【0057】
5-(2-aminoethoxy)-N-methyl-N-(3-phenylpropyl)-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine
5-(2-azidoethoxy)-N-methyl-N-(3-phenylpropyl)-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(27.4mg,78μmol)をメタノール(1.0mL)に溶解させ、Pd/C(10%,2.8mg)を加え、バルーン圧の水素雰囲気下、室温で7時間30分反応させた。反応混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧濃縮して黄色油状の5-(2-aminoethoxy)-N-methyl-N-(3-phenylpropyl)-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(25.3mg)を得た。
【0058】
化合物2
5-(2-aminoethoxy)-N-methyl-N-(3-phenylpropyl)-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(25.3mg,78μmol)をアセトニトリル(500μL)に溶解させ、続いて、アセトニトリル(500μL)に溶解させたNBD-F(14.5mg,79μmol)を加え、室温で15時間反応させた。反応溶液を減圧濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アセトン)にて精製し、化合物2(24.3mg,50μmol,64%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.77-1.86 complex, 2H, ArCH2CH 2), 1.98-2.07 (complex, 2H, ArCH2CH 2), 2.16 (s, 3H, NCH3), 2.43 (br t, J = 7 Hz, 2H, NCH2), 2.54-2.92 (complex, 4H, ArCH2), 3.89 (br, 2H, HNCH2), 4.30 (t, J = 5 Hz, 2H, OCH2), 4.36 (t, 1H, J = 7 Hz, ArCHN), 6.28 (d, J = 8.7 Hz, 1H, ArH), 6.75-6.78 (br, 2H, ArH), 7.13-7.18 (complex, 4H, ArH), 7.23-7.28 (complex, 1H, ArH), 8.51 (d, J = 8.7 Hz, 1H, ArH)
【0059】
[化合物3の合成]
<実施例3>
以下に記載する手順で、化合物3を合成した。
【0060】
【化13】
【0061】
化合物3
5-(2-aminoethoxy)-N-(3-(4-(dimethylamino)phenyl)propyl)-N-methyl-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(25.0mg,68μmol)をアセトニトリル(500μL)に溶解させ、続いて、アセトニトリル(500μL)に溶解させたABD-F(15.5mg,71μmol)を加え、室温で4時間10分反応させた。反応溶液を減圧濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アセトン)にて精製し、赤褐色油状の化合物3(32.6mg,58μmol,85%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.75-1.84 (complex, 2H, ArCH2CH 2), 2.0-2.08 (complex, 2H, ArCH2CH 2), 2.16 (s, 3H, NCH3), 2.41-2.6 (complex, 3H, NCH2 and ArCH2), 2.71-2.92 (complex, 3H, ArCH2), 2.89 (s, 6H, N(CH3)2), 3.81 (t, J = 5 Hz, 2H, HNCH 2), 4.27 (t, J = 5 Hz, 2H, OCH2), 4.34-4.41 (br, 1H, ArCHN), 6.01 (br t, J = 8.2 Hz, 1H, ArH), 6.20 (d, J = 8 Hz, 1H, ArH), 6.67 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 6.76 (s, 1H, ArH), 6.75-6.79 (1H, ArH), 7.04 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 7.95 (d, J = 8 Hz, 1H, ArH)
【0062】
[化合物4の合成]
<実施例4>
以下に記載する手順で、化合物4を合成した。
【0063】
【化14】
【0064】
5-[2-(2-bromoethoxy)ethoxy]-2,3-dihydro-1H-inden-1-one
5-ヒドロキシ-1-インダノン(435mg,2.94mmol)を酢酸エチル(10mL)に溶解させたのち、酢酸エチル(10mL)に懸濁させた炭酸カリウム(1.47g,10.6mmol)、ビス(2-ブロモエチル)エーテル(1.82mL,14.7mmol)、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(76mg,334μmol)を順次加え、24時間加熱還流させた。反応液を室温まで放冷した後に氷水に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=1/1)にて精製し、白色固体の5-[2-(2-bromoethoxy)ethoxy]-2,3-dihydro-1H-inden-1-one(654mg,2.19mmol,74%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 2.66 (m, 2H, COCH2), 3.07 (br t, J = 6 Hz, 2H, ArCH2), 3.49 (t, J = 6.2 Hz, 2H, BrCH2), 3.88 (t, J = 6.4 Hz, 2H, OCH2), 3.90 (t, J = 5 Hz, 2H, OCH2), 4.21 (t, J = 5 Hz, 2H, ArOCH2), 6.89-6.93 (br m, 2H, ArH), 7.68 (d, J = 9.2 Hz, 1H, ArH)
【0065】
5-[2-(2-azidoethoxy)ethoxy]-2,3-dihydro-1H-inden-1-one
5-[2-(2-bromoethoxy)ethoxy]-2,3-dihydro-1H-inden-1-one(403mg,1.35mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(5.0mL)に溶解させ、アジ化ナトリウム(105mg,1.61mmol)を加えて1時間30分間加熱還流させた。反応液を室温まで放冷した後に水に注ぎ込み、ジエチルエーテルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮し、赤褐色固体の5-[2-(2-azidoethoxy)ethoxy]-2,3-dihydro-1H-inden-1-one(347mg,1.33mmol,99%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 2.64-2.68 (m, 2H, COCH2), 3.07 (br t, J = 6 Hz, 2H, ArCH2), 3.41 (t, J = 5 Hz, 2H, N3CH2), 3.75 (t, J = 5 Hz, 2H, OCH2), 3.89 (t, J = 4.6 Hz, 2H, OCH2), 4.21 (t, J = 4.6 Hz, 2H, ArOCH2), 6.89-6.93 (br m, 2H, ArH), 7.67 (d, J = 9.2 Hz, 1H, ArH)
【0066】
【化15】
【0067】
5-[2-(2-azidoethoxy)ethoxy]-N-{3-[4-(dimethylamino)phenyl]propyl}-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine
4-(3-aminopropyl)-N,N-dimethylaniline(120mg,673μmol)をメタノール(3.0mL)に溶解させ、5-[2-(2-azidoethoxy)ethoxy]-2,3-dihydro-1H-inden-1-one(101mg,386μmol)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(49.2mg,783μmol)、酢酸(100μL)をこの順番に加え、38時間加熱還流させた。反応液を室温まで放冷した後に1M塩酸を加えて過剰の水素化物をクエンチした。続いて、反応液に水酸化ナトリウム水溶液を加えて弱塩基性にし、酢酸エチルで抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル)にて精製し、淡黄色油状の5-[2-(2-azidoethoxy)ethoxy]-N-{3-[4-(dimethylamino)phenyl]propyl}-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(105mg,248μmol,64%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.75-1.85 (complex, 3H, ArCH2CH 2), 2.31-2.4 (m, 1H, ArCH2CH 2), 2.57 (dt, J = 3 and 8 Hz, 2H, ArCH2), 2.71 (t, J = 7 Hz, 2H, ArCH2), 2.7-2.8 (m, 1H), 2.90 (s, 6H, N(CH3)2), 2.89-3.0 (m, 1H), 3.40 (t, J = 5 Hz, 2H, N3CH2), 3.74 (t, J = 5 Hz, 2H, OCH2), 3.84 (t, J = 5 Hz, 2H, OCH2), 4.12 (t, J = 5 Hz, 2H, OCH2), 4.09-4.18 (complex, 3H, ArOCH2 and ArCHNH), 6.68 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 6.74 (dd, J = 2 and 8.2 Hz, 1H, ArH), 6.77 (s, 1H, ArH), 7.05 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 7.18 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ArH)
【0068】
5-[2-(2-azidoethoxy)ethoxy]-N-{3-[4-(dimethylamino)phenyl]propyl}-N-methyl-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine
5-[2-(2-azidoethoxy)ethoxy]-N-{3-[4-(dimethylamino)phenyl]propyl}-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(13mg,31μmol)をメタノール(300μL)に溶解させ、パラホルムアルデヒド(10.7mg)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(9.7mg,154μmol)をこの順番に加え、室温で17時間反応させた。反応液に1M塩酸を加えて過剰の水素化物をクエンチした。続いて、反応液に水酸化ナトリウム水溶液を加えて弱塩基性にし、酢酸エチルで抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アセトン)にて精製し、淡黄色油状の5-(2-(2-azidoethoxy)ethoxy)-N-(3-(4-(dimethylamino)phenyl)propyl)-N-methyl-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(9.8mg,22μmol,71%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.7-1.82 (complex, 2H, ArCH2CH 2), 1.96-2.05 (m, 2H, ArCH2CH 2), 2.14 (s, 3H, NCH3), 2.37-2.62 (complex, 4H), 2.7-2.8 (m, 1H), 2.89 (br, 8H), 3.4 (br, 2H, N3CH2), 3.74 (br, 2H, OCH2), 3.85 (br, 2H, OCH2), 4.12 (br, 2H, ArOCH2), 4.34 (m, 1H, ArCHN), 6.67 (br, 2H, ArH), 6.75 (br, 2H, ArH), 6.75-6.78 (1H, ArH), 7.05 (br, 2H, ArH)
【0069】
5-[2-(2-aminoethoxy)ethoxy]-N-{3-[4-(dimethylamino)phenyl]propyl}-N-methyl-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine
5-[2-(2-azidoethoxy)ethoxy]-N-{3-[4-(dimethylamino)phenyl]propyl}-N-methyl-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(9.8mg,22μmol)をメタノール(1mL)に溶解させ、Pd/C(10%,3.7mg)を加え、バルーン圧の水素雰囲気下、室温で6時間20分反応させた。反応混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧濃縮して黄色油状の5-[2-(2-aminoethoxy)ethoxy]-N-{3-[4-(dimethylamino)phenyl]propyl}-N-methyl-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(8.8mg)を得た。
【0070】
【化16】
【0071】
化合物4
5-[2-(2-aminoethoxy)ethoxy]-N-{3-[4-(dimethylamino)phenyl]propyl}-N-methyl-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(8.8mg,21μmol)をアセトニトリル(500μL)に溶解させ、続いて、アセトニトリル(500μL)に溶解させたNBD-F(4.2mg,23μmol)を加え、室温で15時間反応させた。反応溶液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アセトン)にて精製し、赤褐色油状の化合物4(4.3mg,7.5μmol,36%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ: 1.74-1.85 (br, 2H, ArCH2CH 2), 1.98-2.08 (m, 2H, ArCH2CH 2), 2.16 (s, 3H, NCH3), 2.41-2.6 (complex, 4H, NCH2 and ArCH2), 2.7-2.86 (complex, 2H, ArCH2), 2.89 (s, 6H, N(CH3)2), 3.62-3.81 (m, 2H, HNCH 2), 3.88-3.95 (complex, 4H), 4.13 (t, J = 5 Hz, 2H, OCH2), 4.39 (br, 1H, ArCHN), 6.18 (d, J = 8.5 Hz, 1H, ArH), 6.61 (br, 1H, ArH), 6.67 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 6.72 (s, 1H, ArH), 6.71-6.76 (1H, ArH), 7.04 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 8.44 (d, J = 8.5 Hz, 1H, ArH)
【0072】
[化合物5の合成]
<実施例5>
以下に記載する手順で、化合物5を合成した。
【0073】
【化17】
【0074】
5-(2-azidoethoxy)-N-[4-(dimethylamino)benzyl]-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine
4-(ジメチルアミノ)ベンジルアミン二塩酸塩(155mg,695μmol)をメタノール(3.0mL)に溶解させ、トリエチルアミン(216μL)、5-(2-azidoethoxy)-2,3-dihydro-1H-inden-1-one(100mg,460μmol)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(48.5mg,772μmol)、酢酸(100μL)をこの順番に加え、42時間加熱還流させた。反応液を室温まで放冷した後に1M塩酸を加えて過剰の水素化物をクエンチした。続いて、反応液に水酸化ナトリウム水溶液を加えて弱塩基性にし、酢酸エチルで抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル)にて精製し、淡黄色油状の5-(2-azidoethoxy)-N-[4-(dimethylamino)benzyl]-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(130mg,370μmol,80%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.88-2.0 and 2.35-2.45 (complex, each 1H, ArCH2CH 2), 2.78 (dt, J = 7.8 and 15.8 Hz, 1H, ArCH2), 2.91 (s, 6H, N(CH3)2), 3.0 (ddd, J = 5, 8.5, and 15.8 Hz, 1H, ArCH2), 3.56 (t, J = 5 Hz, 2H, N3CH2), 3.77 and 3.81 (d, J = 12.8 Hz, 2H, ArCH2N), 4.11 (t, J = 5 Hz, 2H, OCH2), 4.26 (t, J = 6.4 Hz, 1H, ArCHN), 6.70 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 6.76 (d, J = 8.3 Hz, 1H, ArH), 6.78 (br s, 1H, ArH), 7.22-7.25 (2H, ArH), 7.27 (d, J = 8.3 Hz, 1H, ArH)
【0075】
5-(2-azidoethoxy)-N-[4-(dimethylamino)benzyl]-N-methyl-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine
5-(2-azidoethoxy)-N-[4-(dimethylamino)benzyl]-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(57.5mg,164μmol)をメタノール(0.8mL)に溶解させ、パラホルムアルデヒド(27.1mg)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(16.0mg,255μmol)をこの順番に加え、室温で7時間反応させた。反応液に1M塩酸を加えて過剰の水素化物をクエンチした。続いて、反応液に水酸化ナトリウム水溶液を加えて弱塩基性にし、酢酸エチルで抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル)にて精製し、淡黄色油状の5-(2-azidoethoxy)-N-[4-(dimethylamino)benzyl]-N-methyl-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(58mg,159μmol,97%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.6-1.8 and 2.0-2.11(complex, each 1H, ArCH2CH 2), 2.12 (s, 3H, NCH3), 2.71-2.83 and 2.86-2.95 (complex, each 1H, ArCH2), 2.91(s, 6H, N(CH3)2), 3.32 (d, J = 12.8 Hz, 1H, ArCH2), 3.50 (d, J = 12.8 Hz, 1H, ArCH2), 3.57 (t, J = 5 Hz, 2H, N3CH2), 4.13 (t, J = 5 Hz, 2H, OCH2), 4.40 (t, J = 7.1 Hz, 1H, ArCHN), 6.70 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 6.76 (s, 1H, ArH), 6.78 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ArH), 7.21 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 7.33 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ArH)
【0076】
5-(2-aminoethoxy)-N-[4-(dimethylamino)benzyl]-N-methyl-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine
5-(2-azidoethoxy)-N-[4-(dimethylamino)benzyl]-N-methyl-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(28.7mg,79μmol)をメタノール(1.5mL)に溶解させ、Pd/C(10%,6.5mg)を加え、バルーン圧の水素雰囲気下、室温で6時間50分反応させた。反応混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧濃縮して黄色油状の5-(2-aminoethoxy)-N-[4-(dimethylamino)benzyl]-N-methyl-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(23.5mg)を得た。この化合物は精製せず、そのまま次の反応に用いた。
【0077】
【化18】
【0078】
化合物5
5-(2-aminoethoxy)-N-[4-(dimethylamino)benzyl]-N-methyl-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(23.0mg,68μmol)をアセトニトリル(500μL)に溶解させ、続いて、アセトニトリル(500μL)に溶解させたNBD-F(14.4mg,79μmol)を加え、室温で1時間30分反応させた。反応溶液を減圧濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル)にて精製し、赤褐色固体の化合物5(16.1mg,32μmol,47%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 2.0-2.2 (complex, 2H, ArCH2CH 2), 2.12 (s, 3H, NCH3), 2.71-2.93 (complex, 2H, ArCH2), 2.91(s, 6H, N(CH3)2), 3.31 (d, J = 12.8 Hz, 1H, ArCH2N), 3.49 (d, J = 12.8 Hz, 1H, ArCH2N), 3.89 (br, 2H, HNCH 2), 4.30 (t, J = 5 Hz, 2H, OCH2), 4.40 (br, 1H, ArCHN), 6.28 (d, J = 7.8 Hz, 1H, ArH), 6.69 (d, J = 7.8 Hz, 2H, ArH), 6.76 (s, 1H, ArH), 6.74-6.81 (1H, ArH), 7.20 (d, J = 7.8 Hz, 2H, ArH), 7.35 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 8.51 (d, J = 7.8 Hz, 1H)
【0079】
[化合物6の合成]
<実施例6>
以下に記載する手順で、化合物6を合成した。
【0080】
【化19】
【0081】
4-(2-bromoethoxy)benzaldehyde
4-ヒドロキシベンズアルデヒド(403mg,3.30mmol)をアセトニトリル(25mL)に溶解させたのち、1,2-ジブロモエタン(2.8mL,33.0mmol)、炭酸カリウム(825mg,5.97mmol)を順次加え、13時間加熱還流させた。反応液を室温まで放冷した後に氷水に注ぎ込み、ジエチルエーテルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=3/1)にて精製し、薄桃色固体の4-(2-bromoethoxy)benzaldehyde(559mg,2.44mmol,74%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.66 (t, J = 6.2 Hz, 2H, BrCH2), 4.37 (t, J = 6.2 Hz, 2H, OCH2), 7.01 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 7.84 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 9.89 (s, 1H, ArCHO)
【0082】
4-(2-azidoethoxy)benzaldehyde
4-(2-bromoethoxy)benzaldehyde(402mg,1.75mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(5.0mL)に溶解させ、アジ化ナトリウム(157mg,2.42mmol)を加えて20分間加熱還流させた。反応液を室温まで放冷した後に水に注ぎ込み、ジエチルエーテルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮し、淡黄色油状の4-(2-azidoethoxy)benzaldehyde(325mg,1.70mmol,97%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.64 (t, J = 4.9 Hz, 2H, N3CH2), 4.22 (t, J = 4.9 Hz, 2H, OCH2), 7.02 (d, J = 8.9 Hz, 2H, ArH), 7.85 (d, J = 8.9 Hz, 1H, ArH), 9.89 (s, 1H, CHO)
【0083】
【化20】
【0084】
4-(3-{[4-(2-azidoethoxy)benzyl]amino}propyl)-N,N-dimethylaniline
4-(3-aminopropyl)-N,N-dimethylaniline(143mg,802μmol)をメタノール(4mL)に溶解させ、4-(2-azidoethoxy)benzaldehyde(100mg,523μmol)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(63.3mg,1.01mmol)、酢酸(200μL)をこの順番に加え、375時間加熱還流させた。反応液を室温まで放冷した後に1M塩酸を加えて過剰の水素化物をクエンチした。続いて、反応液に水酸化ナトリウム水溶液を加えて弱塩基性にし、酢酸エチルで抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル)にて精製し、淡黄色油状の4-(3-{[4-(2-azidoethoxy)benzyl]amino}propyl)-N,N-dimethylaniline(105mg,297μmol,57%)を得た。この化合物は精製せず、そのまま次の反応に用いた。
【0085】
4-(3-{[4-(2-azidoethoxy)benzyl]methylamino}propyl)-N,N-dimethylaniline
4-(3-{[4-(2-azidoethoxy)benzyl]amino}propyl)-N,N-dimethylaniline(16.2mg,46μmol)をメタノール(500μL)に溶解させ、パラホルムアルデヒド(10mg)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(4.7mg,75μmol)をこの順番に加え、室温で16時間反応させた。反応液に1M塩酸を加えて過剰の水素化物をクエンチした。続いて、反応液に水酸化ナトリウム水溶液を加えて弱塩基性にし、酢酸エチルで抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル)にて精製し、淡黄色油状の4-(3-{[4-(2-azidoethoxy)benzyl]methylamino}propyl)-N,N-dimethylaniline(7.8mg,21μmol,46%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.79 (quin, J = 7.5 Hz, 2H, CH2CH 2CH2), 2.16 (s, 3H, NCH3), 2.39 (t, J = 7.5 Hz, 2H, NCH 2CH2Ar), 2.53 (t, J = 7.5 Hz, 2H, NCH2CH 2Ar), 2.90 (s, 6H, N(CH3)2), 3.42 (s, 2H, ArCH2N), 3.58 (t, J = 5.0 Hz, 2H, N3CH2), 4.14 (t, J = 5 Hz, 2H, ArOCH2), 6.68 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 6.86 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 7.05 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 7.22 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH)
【0086】
4-(3-{[4-(2-aminoethoxy)benzyl]methylamino}propyl)-N,N-dimethylaniline
4-(3-{[4-(2-azidoethoxy)benzyl]methylamino}propyl)-N,N-dimethylaniline(7.2mg,20μmol)をメタノール(1mL)に溶解させ、Pd/C(10%,4.7mg)を加え、バルーン圧の水素雰囲気下、室温で3時間40分反応させた。反応混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧濃縮して黄色油状の4-(3-{[4-(2-aminoethoxy)benzyl]methylamino}propyl)-N,N-dimethylaniline(6.1mg)を得た。この化合物は精製せず、そのまま次の反応に用いた。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.78 (quin, J = 7.7 Hz, 2H, CH2CH 2CH2), 2.15 (s, 3H, NCH3), 2.38 (t, J = 7.7 Hz, 2H, NCH 2CH2CH2), 2.53 (t, J = 7.7 Hz, 2H, CH2CH2CH 2Ar), 2.90 (s, 6H, N(CH3)2), 3.07 (t, J = 5 Hz, 2H, H2NCH 2), 3.40 (s, 2H, ArCH2N), 3.97 (t, J = 5 Hz, 2H, ArOCH2), 6.68 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 6.85 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 7.05 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 7.20 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH)
【0087】
【化21】
【0088】
化合物6
4-(3-{[4-(2-aminoethoxy)benzyl]methylamino}propyl)-N,N-dimethylaniline(5.9mg,17μmol)をアセトニトリル(300μL)に溶解させ、続いて、アセトニトリル(300μL)に溶解させたNBD-F(3.5mg,19μmol)を加え、室温で13時間反応させた。反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アセトン)にて精製し、赤褐色固体の化合物6(6.6mg,13μmol,76%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.78 (quin, J = 7.6 Hz, 2H, CH2CH 2CH2), 2.15 (s, 3H, NCH3), 2.39 (t, J = 7.6 Hz, 2H, NCH 2CH2CH2), 2.53 (t, J = 7.6 Hz, 2H, CH2CH2CH 2Ar), 2.89 (s, 6H, N(CH3)2), 3.41 (s, 2H, ArCH2N), 3.86-3.92 (m, 2H, HNCH 2CH2O), 4.31 (t, J = 5 Hz, 2H, ArOCH2), 6.28 (d, J = 8.7 Hz, 1H, ArH), 6.68 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 6.87 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 7.04 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 8.51 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH)
【0089】
[化合物7の合成]
<実施例7>
以下に記載する手順で、化合物7を合成した。
【0090】
【化22】
【0091】
化合物7
5-(2-aminoethoxy)-N-(3-(4-(dimethylamino)phenyl)propyl)-N-methyl-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(16.2mg,44μmol)をアセトニトリル(500μL)に溶解させ、続いて、アセトニトリル(500μL)に溶解させたDBD-F(11.7mg,48μmol)を加え、室温で15時間20分反応させた。反応溶液を減圧濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル)にて精製し、赤褐色油状の化合物7(20.7mg,35μmol,80%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.72-1.84 (br m, 2H, ArCH2CH 2), 1.98-2.07 (complex, 2H, ArCH2CH 2), 2.16 (s, 3H, NCH3), 2.36-2.93 (complex, 6H, NCH2 and ArCH2), 2.86 (s, 6H, N(CH3)2), 2.89 (s, 6H, N(CH3)2), 3.80 (m, 2H, HNCH 2), 4.27 (t, J = 5 Hz, 2H, OCH2), 4.3-4.4 (br, 1H, ArCHN), 5.99 (br, 1H, ArH), 6.23 (d, J = 7.8 Hz, 1H, ArH), 6.68 (d, J = 8.3 Hz, 2H, ArH), 6.73-6.8 (complex, 2H, ArH), 7.05 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 7.91 (d, J = 7.8 Hz, 1H, ArH)
【0092】
[化合物8の合成]
<実施例8>
以下に記載する手順で、化合物8を合成した。
【0093】
【化23】
【0094】
5-(2-aminoethoxy)-N-{3-[4-(dimethylamino)phenyl]propyl}-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine
5-(2-azidoethoxy)-N-{3-[4-(dimethylamino)phenyl]propyl}-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(33.4mg,88μmol)をメタノール(1.5mL)に溶解させ、Pd/C(10%,13.4mg)を加え、バルーン圧の水素雰囲気下、室温で6時間20分反応させた。反応混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧濃縮して黄色油状の5-(2-aminoethoxy)-N-{3-[4-(dimethylamino)phenyl]propyl}-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(30.3mg)を得た。この化合物は精製せず、そのまま次の反応に用いた。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.76-1.88 (1H, ArCH2CH 2), 1.80 (quin, J = 7.3 Hz, 2H, ArCH2CH 2), 2.31-2.41 (complex, 1H, ArCH2CH 2), 2.51-2.62 (m, 2H), 2.72 (t, J = 7.1 Hz, 2H), 2.72-2.81 (m, 1H), 2.90 (s, 6H, N(CH3)2), 2.9-2.99 (br m, 1H), 3.05 (t, J = 5.0 Hz, 2H, H2NCH2), 3.96 (t, J = 5.0 Hz, 2H, OCH2), 4.12-4.17 (m, 1H, ArCHN), 6.68 (d, J = 8.2 Hz, 2H, ArH), 6.73 (d, J = 8 Hz, 1H, ArH), 6.77 (s, 1H, ArH), 7.06 (d, J = 8.2 Hz, 2H, ArH), 7.19 (d, J = 8 Hz, 1H, ArH)
【0095】
化合物8
5-(2-aminoethoxy)-N-(3-(4-(dimethylamino)phenyl)propyl)-2,3-dihydro-1H-inden-1-amine(28.2mg,80μmol)をアセトニトリル(500μL)に溶解させ、続いて、アセトニトリル(500μL)に溶解させたNBD-F(14.6mg,80μmol)を加え、室温で30分反応させた。反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮し、残渣を薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、アセトン)にて精製し、赤褐色油状の化合物8(24.3mg,47μmol,59%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ: 1.7-1.91 (br, 1H, ArCH2CH 2), 1.82 (quin, J = 7.4 Hz, 2H, ArCH2CH 2), 2.32-2.41 (m, 1H, ArCH2CH 2), 2.52-2.6 (complex, 2H, NCH2 and ArCH2), 2.72 (t, J = 7.4 Hz, 2H, ArCH2), 2.74-2.81 (complex, 1H, ArCH2CH 2), 2.88-3.0 (1H), 2.89 (s, 6H, N(CH3)2), 3.86-3.92 (t, J = 5 Hz, 2H, HNCH 2CH2O), 4.19 (t, J = 6.4 Hz, 1H, ArCHN), 4.28 (t, J = 5 Hz, 2H, OCH2), 6.28 (d, J = 8.7 Hz, 1H, ArH), 6.67 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 6.74 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 6.77 (s, 1H, ArH), 7.04 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 8.50 (d, J = 8.7 Hz, 1H, ArH)
【0096】
[化合物9の合成]
<実施例9>
以下に記載する手順で、化合物9を合成した。
【0097】
【化24】
【0098】
(E)-4-[2-({3-[4-(dimethylamino)phenyl]allyl}amino)ethyl]phenol
チラミン(698mg,5.09mmol)と4-(dimethylamino)cinnamaldehyde(910mg,5.19mmol)をメタノール(20mL)に溶解させ、3Åモレキュラーシーブ(969mg)を加えて室温で22時間攪拌させた。続いて、反応容器を0℃に冷却し、水素化ホウ素ナトリウム(392mg,10.4mmol)を添加した。さらにメタノール(26mL)を反応溶液に加え、室温で42時間撹拌した。反応混合物をセライトろ過した後、ろ液を減圧濃縮し、黄色固体の(E)-4-[2-({3-[4-(dimethylamino)phenyl]allyl}amino)ethyl]phenol(1.44g)を得た。この化合物は精製せず、そのまま次の反応に用いた。
【0099】
(E)-4-[2-({3-[4-(dimethylamino)phenyl]allyl}(methyl)amino)ethyl]phenol
(E)-4-[2-({3-[4-(dimethylamino)phenyl]allyl}amino)ethyl]phenol(1.43g)をメタノール(35mL)に溶解させ、パラホルムアルデヒド(930mg)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(389mg,6.19mmol)をこの順番に加え、室温で17時間反応させた。反応液に1M塩酸を加えて過剰の水素化物をクエンチした。続いて、反応液に水酸化ナトリウム水溶液を加えて弱塩基性にし、反応溶液を減圧濃縮した後、酢酸エチルで抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アセトン)にて精製し、淡黄色油状の(E)-4-[2-({3-[4-(dimethylamino)phenyl]allyl}(methyl)amino)ethyl]phenol(796mg,2.56mmol,2段階収率50%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 2.33 (s, 3H, NCH3), 2.62 (dd, J = 6.2 and 9.6 Hz, 2H, NCH2CH 2Ar), 2.74 (dd, J = 6.2 and 9.6 Hz, 2H, NCH 2CH2Ar), 2.94 (s, 6H, N(CH3)2), 3.19 (d, J = 6.9 Hz, 2H, NCH 2CH=CH), 6.05 (dt, J = 6.9 and 16 Hz, 1H, ArCH=CHCH2), 6.41 (d, J = 16 Hz, 1H, ArCH=CH), 6.67 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 6.71 (d, J = 8.3 Hz, 2H, ArH), 7.04 (d, J = 8.3 Hz, 2H, ArH), 7.26 (2H, ArH).
【0100】
(E)-4-(3-{[4-(2-bromoethoxy)phenethyl](methyl)amino}prop-1-en-1-yl)-N,N-dimethylaniline
(E)-4-[2-({3-[4-(dimethylamino)phenyl]allyl}(methyl)amino)ethyl]phenol(390mg,1.26mmol)を酢酸エチル(5.0mL)に溶解させたのち、酢酸エチル(12mL)に懸濁させた炭酸カリウム(653mg,4.73mmol)、1,2-ジブロモエタン(698μL,8.10mmol)、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(BTEAC)(33.1mg,145μmol)を順次加え、17時間加熱還流させた。反応液を室温まで放冷した後に氷水に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アセトン/酢酸エチル/トリエチルアミン=100/100/3)にて精製し、黄色固体の(E)-4-(3-{[4-(2-bromoethoxy)phenethyl](methyl)amino}prop-1-en-1-yl)-N,N-dimethylaniline(361mg,865μmol,69%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 2.33 (s, 3H, NCH3), 2.58-2.64 (m, 2H, NCH 2CH2Ar), 2.71-2.78 (m, 2H, NCH2CH 2Ar), 2.94 (s, 6H, N(CH3)2), 3.19 (d, J = 6.9 Hz, 2H, NCH 2CH=CH), 3.61 (t, J = 6.2 Hz, 2H, BrCH2), 4.25 (t, J = 6.2 Hz, 2H, ArOCH2), 6.05 (dt, J = 6.9 and 16 Hz, 1H, ArCH=CHCH2), 6.41 (d, J = 16 Hz, 1H, ArCH=CH), 6.67 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 6.73 (d, J = 8.2 Hz, 2H, ArH), 7.05 (d, J = 8.2 Hz, 2H, ArH), 7.25 (2H, ArH).
【0101】
(E)-4-(3-{[4-(2-azidoethoxy)phenethyl](methyl)amino}prop-1-en-1-yl)-N,N-dimethylaniline
(E)-4-(3-{[4-(2-bromoethoxy)phenethyl](methyl)amino}prop-1-en-1-yl)-N,N-dimethylaniline(290mg,695μmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(3.0mL)に溶解させ、アジ化ナトリウム(71.7mg,1.10mmol)を加えて90℃で1時間反応させた。反応液を室温まで放冷した後に水に注ぎ込み、ジエチルエーテルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=1/1)にて精製し、黄色固体の(E)-4-(3-{[4-(2-azidoethoxy)phenethyl](methyl)amino}prop-1-en-1-yl)-N,N-dimethylaniline(206mg,543μmol,78%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 2.33 (s, 3H, NCH3), 2.56-2.66 (br, 2H, NCH 2CH2Ar), 2.7-2.8 (br, 2H, NCH 2CH2Ar), 2.94 (s, 6H, N(CH3)2), 3.19 (d, J = 6.9 Hz, 2H, NCH 2CH=CH), 3.57 (t, J = 4.8 Hz, 2H, N3CH2), 4.11 (t, J = 4.8 Hz, 2H, ArOCH2), 6.05 (dt, J = 6.9 and 15.6 Hz, 1H, ArCH=CHCH2), 6.41 (d, J = 15.6 Hz, 1H, ArCH=CH), 6.67 (d, J = 8.5 Hz, 2H, ArH), 6.83 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 7.11 (d, J = 8.5 Hz, 2H, ArH), 7.25 (2H, ArH).
【0102】
4-(3-{[4-(2-aminoethoxy)phenethyl](methyl)amino}propyl)-N,N-dimethylaniline
(E)-4-(3-{[4-(2-azidoethoxy)phenethyl](methyl)amino}prop-1-en-1-yl)-N,N-dimethylaniline(20.5mg,54μmol)をメタノール(1.0mL)に溶解させ、Pd/C(10%,5.8mg)を加え、バルーン圧の水素雰囲気下、室温で15時間50分反応させた。反応混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧濃縮して黄色油状の4-(3-{[4-(2-aminoethoxy)phenethyl](methyl)amino}propyl)-N,N-dimethylaniline(17.8mg,93%)を得た。この化合物は精製せず、そのまま次の反応に用いた。
【0103】
【化25】
【0104】
化合物9
4-(3-{[4-(2-aminoethoxy)phenethyl](methyl)amino}propyl)-N,N-dimethylaniline(17.4mg,49μmol)をアセトニトリル(500μL)に溶解させ、続いて、アセトニトリル(500μL)に溶解させたNBD-F(9.9mg,55μmol)を加え、室温で1時間反応させた。反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,アセトン)で精製し、赤褐色油状の化合物9(17.3mg,33μmol,67%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.69-1.8 (complex, 2H, CH2CH 2CH2), 2.16 (s, 3H, NCH3), 2.25-2.44 (complex, 4H, ArCH2 and NCH2), 2.50 (t, J = 7.8 Hz, 2H, ArCH2), 2.67-2.74 (m, 2H), 2.89 (s, 6H, N(CH3)2), 3.85-3.91 (br m, 2H, HNCH 2CH2O), 4.28 (t, J = 5 Hz, 2H, ArOCH2), 6.27 (d, J = 8.5 Hz, 1H, ArH), 6.67 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 6.84 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 7.03 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 7.12 (d, J = 8.7 Hz, 2H, ArH), 8.50 (d, J = 8.5 Hz, 2H, ArH).
【0105】
[化合物10の合成]
<実施例10>
以下に記載する手順で、化合物10を合成した。
【0106】
ATTO565(NHSエステル)Conjugation Kitを用いて、5-(2-aminoethoxy)-N-(3-(4-(dimethylamino)phenyl)propyl)-N-methyl-2,3-dihydro-1H-inden-1-amineから調製した。1mgのATTO565(NHSエステル)と等molの4-(3-{[4-(2-aminoethoxy)benzyl]methylamino}propyl)-N,N-dimethylanilineを0.1mLのアセトニトリル中で混合し16時間反応させた。反応溶液を減圧濃縮し、残渣を逆層PLC(ODS、水/アセトニトリル=1/50)で精製し、赤褐色固体の化合物10を得た。
【0107】
[化合物11の合成]
<実施例11>
以下に記載する手順で、化合物11を合成した。
【0108】
3-(4-methylphenyl)propan-1-amineを用いて、化合物1の合成と同様の手法により化合物11を合成した。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ: 1.75-1.85 (br, 2H, ArCH2CH 2), 1.96-2.1 (m, 2H, ArCH2CH 2), 2.16 (s, 3H, NCH3), 2.30 (s, 3H, ArCH3), 2.37-2.68 (complex, 4H, NCH2 and ArCH2), 2.71-2.93 (complex, 2H, ArCH2), 3.86-3.93 (br, 2H, HNCH 2), 4.30 (t, J = 5 Hz, 2H, OCH2), 4.34-4.42 (br, 1H, ArCHN), 6.29 (d, J = 8.7 Hz, 1H, ArH), 6.76 (s, 1H, ArH), 6.76-6.79 (m, 1H, ArH), 7.02-7.09 (complex, 5H, ArH), 8.51(d, J = 8.7 Hz, 1H, ArH).
【0109】
[化合物12の合成]
<実施例12>
以下に記載する手順で、化合物12を合成した。
【0110】
3-(4-methoxyphenyl)propan-1-amineを用いて、化合物1の合成と同様の手法により化合物12を合成した。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ: 1.7-1.9 (complex, 2H, ArCH2CH 2), 2.0-2.1 (m, 2H, ArCH2CH 2), 2.21 (s, 3H, NCH3), 2.4-2.67 (complex, 4H, NCH2 and ArCH2), 2.73-2.94 (complex, 2H, ArCH2), 3.77 (s, 3H, OCH3), 3.88-3.93 (br, 2H, HNCH 2), 4.30 (t, J = 5 Hz, 2H, OCH2), 4.37-4.48 (m, 1H, ArCHN), 6.29 (d, J = 8.7 Hz, 1H, ArH), 6.76 (s, 1H, ArH), 6.77-6.83 (m, 1H, ArH), 6.8 (d, J = 8.5 Hz, 2H, ArH), 7.04-7.1 (complex, 1H, ArH), 7.07 (d, J = 8.5 Hz, 2H, ArH), 8.51(d, J = 8.7 Hz, 1H, ArH).
【0111】
[化合物1および抗CD63抗体による細胞内小胞の蛍光染色]
<実施例13>
実施例1で合成した化合物1および抗CD63抗体によって細胞内小胞の蛍光染色を行った。手順を以下に示す。
(1)ガラスボトムディッシュ(マツナミ)にマウス悪性黒色腫細胞B16F10(理研細胞バンクより入手)3×104個を捲いて、24時間培養した。培地はダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)のHighグルコース(D6046(Merck))に1×ペニシリン・ストレプトマイン(26252-94(ナカライテクス))と10%牛胎児血清(ニチレイ)を添加したものを用いた。培養は37℃、5%CO2で行った。
(2)化合物1を最終濃度が0.3μMとなるように培地に添加した。
(3)化合物1を添加して5分後に培地を吸引除去し、4%パラホルムアルデヒド/リン酸緩衝液(09154-14(ナカライテクス))1mLを添加し、室温で15分固定した。
(4)4%パラホルムアルデヒド/リン酸緩衝液を吸引除去後、リン酸緩衝液を1mL添加した。
(5)DAPI(Cellstain(登録商標)DAPI solution(同仁化学研究所))を1μL添加し、15分放置し核を蛍光染色した。
(6)リン酸緩衝液を吸引除去し、リン酸緩衝液で洗浄する作業を3回行った。
(7)洗浄後、10%BlockingOne(ナカライテスク)/リン酸緩衝液に抗CD63抗体(D263-3(MBL))を1/1000希釈した反応液1mLを加え、1時間室温に放置した。
(8)リン酸緩衝液を吸引除去し、リン酸緩衝液で洗浄する作業を3回行った。
(9)洗浄後に、10%BlockingOne/リン酸緩衝液に抗マウスIgG H&L(Alexa Fluor594)(ab150116(Abcam))を1/1000希釈した反応液1mLを加え、1時間室温に放置した。
(10)リン酸緩衝液を吸引除去し、リン酸緩衝液で洗浄する作業を4回行った。
(11)蛍光顕微鏡(BZ-9000(キーエンス))により測定した。なお、測定において化合物1は470nmで励起し、CD63に結合した抗体は540nmで励起した。また、DAPIは360nmで励起した。
【0112】
図1に結果を示す。図1Aは、細胞全体の蛍光顕微鏡像である。図1Bは、図1Aの枠で囲まれた箇所を拡大したものである。化合物1は緑色の蛍光を発し、CD63に結合した抗体は赤色の蛍光を発した。図1から、化合物1およびCD63に結合した抗体から蛍光が発せられていることが示された。そして、図1Aおよび図1Bから、化合物1からの蛍光とCD63に結合した抗体からの蛍光が重なっていた。CD63は、エンドソーム由来の細胞性小胞のマーカーである。したがって、図1の結果から、化合物1が、細胞性小胞を蛍光染色できることが示された。
【0113】
[化合物1によるオートファゴソームの検出]
<実施例14>
エンドソーム由来細胞内小胞形成阻害剤(PIKfyve阻害剤)を用いてオートファゴソームの検出を行った。手順を以下に示す。
(1)ガラスボトムディッシュにB16F10細胞3×104個を捲いて、24時間培養した。
(2)化合物1を最終濃度が3μMになるように添加した。
(3)蛍光顕微鏡により測定した。なお、測定は470nmで励起した。
(4)その後、PIKfyve阻害剤(HY-13228(MedChemExpress))を最終濃度が10μMとなるように培地中へ添加し、1時間培養した。
(5)蛍光顕微鏡により測定した。
(6)PIKfyve阻害剤含有培地を吸引除去し、新たな培地で洗浄操作を2回行い、さらに新たな培地で3時間培養した。
(7)蛍光顕微鏡により測定した。
【0114】
図2に結果を示す。図2Aは、PIKfyve阻害剤添加前の化合物1が発する蛍光を観察した蛍光顕微鏡像である。図2Bは、PIKfyve阻害剤添加前の位相差顕微鏡像である。図2Cは、PIKfyve阻害剤添加後の化合物1が発する蛍光を観察した蛍光顕微鏡像である。図2Dは、PIKfyve阻害剤添加後の位相差顕微鏡像である。図2Eは、PIKfyve除去後細胞を3時間培養した後の化合物1が発する蛍光を観察した蛍光顕微鏡像である。図2Fは、PIKfyve除去後細胞を3時間培養した後の位相差顕微鏡像である。図2Aから細胞内に細胞性小胞が存在し、図2Bからメラノソームが細胞内に存在していることがわかる。PIKfyve阻害剤を添加すると図2Cおよび図2Dに示されるように、蛍光強度の低下およびメラノソームの破壊・泡沫化がみられた。このことからPIKfyve依存的な細胞性小胞についても化合物1は蛍光染色できることが示された。そして、図2Eおよび図2FからPIKfyve阻害剤を除去した後の細胞では、メラノソームの周りを包むオートファゴソーム膜が化合物1によって蛍光染色された。オートファゴソーム膜はエンドソーム由来である。したがって、PIKfyve阻害剤を用いた場合でも化合物1がエンドソーム由来の細胞性小胞を蛍光染色できることが示された。
【0115】
[ヒト細胞における細胞性小胞の蛍光染色]
実施例13および実施例14から、化合物1がマウス由来の細胞の細胞性小胞を蛍光染色することが示された。そこで、ヒト由来の細胞についても蛍光染色を行った。
<実施例15>
化合物1を用いてHEK293細胞の細胞性小胞を蛍光染色した。以下に手順を示す。
(1)ガラスボトムディッシュにHEK293A細胞(ThermoFisher)を捲いて、24時間培養した。培地はDMEM Low Glucose(D6046(Merck))に10%FCS、1×ペニシリンストレプトマイシンを添加しものを用いた。
(2)化合物1を最終濃度が0.3μMになるように添加した。
(3)蛍光顕微鏡により測定した。なお、測定は470nmで励起した。
【0116】
<実施例16>
化合物1を用いてケラチノサイト細胞(PSVK1)の細胞性小胞を蛍光染色した。以下に手順を示す。
(1)ガラスボトムディッシュにPSVK1細胞(医薬基盤・健康・栄養研究所 細胞バンクから入手)を捲いて、24時間培養した。培地はKeratinocyte Growth Medium 2 Kit(C-20111(TAKARAバイオ))を用いた。
(2)化合物1を最終濃度が0.3μMになるように添加した。
(3)蛍光顕微鏡により測定した。なお、測定は470nmで励起した。
【0117】
図3に結果を示す。図3Aは、実施例15の蛍光顕微鏡像である。図3Bは、実施例16の蛍光顕微鏡像である。図3Aおよび図3Bから、化合物1がヒト細胞であるHEK293細胞の細胞性小胞およびPSVK1細胞の細胞性小胞を蛍光染色できることが示された。
【0118】
[化合物1の細胞性小胞に対する特異性1]
<実施例17>
化合物1による生細胞の細胞性小胞の蛍光染色を行った。以下に手順を示す。
(1)コラーゲンコートガラスボトムディッシュ(マツナミ)にB16F10細胞3×104個を捲いて、24時間培養した。
(2)ミトコンドリア染色試薬(MitoTracker Red(ThermoFisher))を培地に最終濃度が1μMとなるように添加しミトコンドリアを蛍光染色した。
(3)5分後に培地を吸引除去し、4%パラホルムアルデヒド/リン酸緩衝液を添加し、室温で15分固定した。
(4)4%パラホルムアルデヒド/リン酸緩衝液を吸引除去し、リン酸緩衝液を1mL添加した。
(5)DAPIを1μL添加し、15分放置し核を蛍光染色した。
(6)リン酸緩衝液を吸引除去し、リン酸緩衝液で洗浄する作業を5回行った。
(7)洗浄後、DMEM培地を2mL加えた。
(8)新たにB16F10細胞3×104個を捲いて、24時間培養した。
(9)化合物1を最終濃度が0.3μMになるように添加した。
(10)蛍光顕微鏡により測定した。なお、測定において化合物1は470nmで励起し、ミトコンドリア染色試薬は540nmで励起し、DAPIは360nmで励起した。
【0119】
図4に結果を示す。図4Aは、化合物1が発する蛍光を観察した蛍光顕微鏡像である。図4Bは、ミトコンドリア染色試薬が発する蛍光を観察した蛍光顕微鏡像である。図4Cは、核を染色するDAPIが発する蛍光を観察した蛍光顕微鏡像である。図4Dは、位相差顕微鏡像である。図4Dから顕微鏡像の全体に細胞は存在しているものの、図4Aでは、一部の細胞の細胞性小胞しか蛍光染色されていなかった。図4Bおよび図4Cの矢印にあるように、図4Aにおいて化合物1によって細胞性小胞が蛍光染色されなかった細胞は、死細胞であった。したがって、化合物1は、生細胞の細胞性小胞を蛍光染色することが示された。
【0120】
[化合物1の細胞性小胞に対する特異性2]
化合物1と他の細胞性小胞染色剤による細胞性小胞の蛍光染色を行い比較した。
【0121】
<実施例18>
化合物1により細胞内小胞の蛍光染色を行った。以下に手順を示す。
(1)ガラスボトムディッシュにB16F10細胞3×104個を捲いて、24時間培養した。
(2)化合物1を最終濃度が3μMとなるように培地に添加した。
(3)蛍光顕微鏡により測定した。なお、測定は470nmで励起した。
【0122】
<比較例1>
化合物1に換えてExoSparkler Mem Dye-Red(340-09671(同仁化学研究所))1μL/mLを培地に添加し、ExoSparkler Mem Dye-Red添加後、培地を吸引除去し、新たな培地を加え洗浄した以外は、実施例18と同様である。なお、測定は540nmで励起した。
【0123】
図5に結果を示す。図5Aは、実施例18と比較例1の蛍光顕微鏡像を重ねたものである。図5Bは、実施例18の蛍光顕微鏡像である。図5Cは、比較例1の蛍光顕微鏡像である。図5から、実施例18および比較例1は、細胞性小胞を蛍光染色していることが示された。しかしながら、図5Aおよび図5Bから実施例18は、細胞性小胞のみを蛍光染色しているのに対し、比較例1は図5Aの矢印にあるように、染色後に洗浄しているにもかかわらず細胞性小胞以外のごみ等も蛍光染色していた。したがって、化合物1は細胞性小胞に対し高い特異性を有していることが示された。
【0124】
[化合物1の細胞性小胞に対する特異性3]
夾雑物が存在する中で化合物1と他の細胞性小胞染色剤による細胞性小胞の蛍光染色を行い比較した。
【0125】
<実施例19>
夾雑物が存在した状態で化合物1により細胞内小胞の蛍光染色を行った。以下に手順を示す。
(1)マウスの糞約100mgを回収し、回収した糞を10倍量(1mL)のリン酸緩衝液中に懸濁した。
(2)B16F10細胞をトリプシン・EDTA(ナカライテクス)にて剥離し回収し、1×104個の細胞を100μLのリン酸緩衝液中に懸濁し、(1)のマウス糞懸濁液10μLと混合した。
(3)細胞と糞の懸濁液をガラスボトムディッシュ上に拡げ、300μMの化合物1を最終濃度が0.3μMとなるように加えた。
(4)蛍光顕微鏡で測定した。なお、測定は470nmで励起した。
【0126】
<比較例2>
化合物1に換えてCellMask試薬(C10045(ThermoFisher))1μLを細胞と糞の懸濁液に添加したこと以外は実施例19と同様である。なお、測定は540nmで励起した。
【0127】
図6に結果を示す。図6Aは、実施例19の蛍光顕微鏡像である。図6Bは、実施例19の位相差顕微鏡像である。図6Cは、比較例2の蛍光顕微鏡像である。図6Dは、比較例2の位相差顕微鏡像である。図6Aおよび図6Bから、夾雑物が存在していても実施例19は、細胞性小胞のみを蛍光染色していることが示された。また、図6Cおよび図6Dから、比較例2は、細胞性小胞以外の夾雑物まで蛍光染色していた。マウス糞には生きた腸内細菌や食物消化物が大量に含まれるが、化合物1は腸内細菌や食物消化物には反応せず、細胞性小胞を特異的に蛍光染色できることが示された。
【0128】
[エクソソームの蛍光染色]
<実施例20>
細胞外の小胞であるエクソソームの蛍光染色を行った。手順を以下に示す。
(1)DMSOに溶解した化合物1を最終濃度が0.3μMになるようにリン酸緩衝液に溶解した。
(2)化合物1が溶解したリン酸緩衝液にミルクエクソソーム10ngを添加した。
(3)画像解析装置ChemiDoc(バイオラッド)により測定を行った。なお、測定は302nmで励起した。
【0129】
<比較例3>
ミルクエクソソームを添加しなかったこと以外は、実施例20と同様である。
【0130】
図7に結果を示す。図7に示すように、ミルクエクソソームを添加した実施例20は、蛍光を発した。一方で、比較例3は、蛍光を発さなかった。したがって、化合物1は、細胞性小胞であるエクソソームに結合することで蛍光を発することが示された。
【0131】
[エクソソーム検出における検量線の作成]
<実施例21>
エクソソーム検出における検量線を作成した。以下に手順を示す。
(1)牛胎児血清50μLとリン酸緩衝液50μLを混合した溶液を蛍光用96穴マイクロプレート(3-3321-03(アズワン))のウェルに入れた。
(2)0.1~1ngの範囲でミルクエクソソームを各ウェルに加えた。
(3)蛍光プレートリーダー(GroMax Multi(プロメガ))で自家蛍光(励起488nm)を測定した。
(4)各ウェルに化合物1を最終濃度が0.3μMになるよう添加して、蛍光(励起488nm)を測定した。その際、得られた蛍光強度から自家蛍光強度を引いたものを測定値とした。
【0132】
各エクソソーム濃度で蛍光強度を測定し、その結果から作成した検量線を図8に示す。牛胎児血清中にもエクソソームが含まれるが、外部から加えたミルクエクソソーム量に依存して蛍光強度が増加することが示された。したがって、図8の検量線から夾雑物存在下でも1ngのエクソソームを検出できる。
【0133】
[食品中のエクソソーム測定]
実施例21で得られた検量線を用いて、食品中のエクソソームを測定した。
<実施例22>
ブラックコーヒー中に含まれるエクソソームを測定した。以下に手順を示す。
(1)ブラックコーヒー(UCC)50μLとリン酸緩衝液50μLを混合した溶液を蛍光用96穴マイクロプレートのウェルに入れた。
(2)蛍光プレートリーダーで自家蛍光(励起488nm)を測定した。
(3)ウェルに化合物1を最終濃度が0.3μMになるよう添加して、蛍光(励起488nm)を測定した。その際、得られた蛍光強度から自家蛍光強度を引いたものを測定値とした。
【0134】
<実施例23>
ブラックコーヒーに換えてミルク入りコーヒー(アサヒ)としたこと以外は、実施例22と同様である。
【0135】
<実施例24>
ブラックコーヒーに換えて乳酸菌飲料(ヤクルト)としたこと以外は、実施例22と同様である。
【0136】
<実施例25>
ブラックコーヒーに換えて1%スキムミルク(フジフイルムワコー)としたこと以外は、実施例22と同様である。
【0137】
<実施例26>
ブラックコーヒーに換えて牛乳(明治)としたこと以外は、実施例22と同様である。
【0138】
<実施例27>
ブラックコーヒーに換えて野菜ジュース(カゴメ)としたこと以外は、実施例22と同様である。
【0139】
図9に結果を示す。図9から食品中のエクソソームを測定できることが示された。ブラックコーヒーからは、エクソソームが検出されなかった。また、野菜ジュースにもエクソソームが含まれることが示された。
【0140】
[化合物1およびエクソソーム染色試薬によるラベル化エクソソームの細胞内への取り込み]
<実施例28>
化合物1およびエクソソーム染色試薬によって蛍光染色されたラベル化エクソソームの細胞内への取り込みを測定した。手順を以下に示す。
(1)ミルクエクソソーム(EXO-AB-01(コスモバイオ))を化合物1(最終濃度0.3μM)とExoSparkler Mem Dye-Red(340-09671(同仁化学研究所))(1μL)で5分間染色した後、ExoSparkler Mem Dye-Redに付属のカラムで精製し、ラベル化ミルクエクソソームを作成した。
(2)HEK293A細胞を培養し、ラベル化ミルクエクソソームを加えた。
(3)ラベル化ミルクエクソソームを加えてから12時間後に蛍光顕微鏡によって測定した。なお、測定において化合物1は470nmで励起し、ExoSparkler Mem Dye-Redは540nmで励起した。
【0141】
図10に結果を示す。図10Aは、化合物1およびExoSparkler Mem Dye-Red両方が発する蛍光を重ねた蛍光顕微鏡像である。図10Bは、化合物1が発する蛍光を観察した蛍光顕微鏡像である。図10Cは、ExoSparkler Mem Dye-Redが発する蛍光を観察した蛍光顕微鏡像である。ExoSparkler Mem Dye-Redはエクソソームに結合する蛍光試薬である。図10Aから、化合物1の蛍光とExoSparkler Mem Dye-Redの蛍光が重なることから、化合物1はエクソソームについても特異的に結合していることが示された。また、化合物1でラベル化したエクソソームが細胞内に取り込まれることも示された。
【0142】
[ラベル化メラノソームの細胞取り込み阻害]
<実施例29>
メラノソーム取り込み阻害剤の存在下で、メラノソームの細胞への取り込みを測定した。以下に手順を示す。
(1)B16F10細胞を10mLの培地で培養した。
(2)Forskolin(F0855(東京化成工業))を最終濃度20μMとなるように培地に添加し48時間培養してメラニン合成誘導した。
(3)培地を吸引除去後、新鮮なForskolin含有培地に交換し、さらに24時間培養した。
(4)培地を15mL遠心管に回収した後、3000rpmで5分間遠心して混入細胞を沈殿させて除去し、上清を回収した。
(5)回収した上清を別の15mL遠心管に移し、8000rpmで10分間遠心した。
(6)沈殿をリン酸緩衝液1mLに懸濁し、2mLの遠心チューブへ移した。
(7)12000rpmで5分間の遠心し、上清を捨て、沈殿をさらに1mLのリン酸緩衝液で2回洗浄した。
(8)洗浄後の沈殿を100μLのリン酸緩衝液に懸濁し、化合物1を最終濃度が3μMになるように添加して、5分間染色した。
(9)12000rpmで5分間遠心して上清を捨て、沈殿を1mLのリン酸緩衝液で2回洗浄した。
(10)洗浄後の沈殿を100μLのリン酸緩衝液に懸濁しラベル化メラノサイトを作成した。
(11)96穴マイクロプレートのウェルにケラチノサイト細胞5×104個を捲いた。
(12)ラベル化メラノサイト(10μL)とメラノソーム取り込み阻害剤(最終濃度10μM)をウェルに加えた。メラノソーム取り込み阻害剤として6-ショーガオール(192-16161(フジフイルムワコー))を用いた。
(13)12時間後に細胞をリン酸緩衝液100μLで2回洗浄した。
(14)プレートリーダー(GroMax Multi(プロメガ))を用い、ラベル化メラノソームを測定した。なお、測定は488nmで励起した。
【0143】
<比較例4>
プレートリーダーでの測定を、450nmにおける吸光度で行ったこと以外は、実施例29と同様である。
【0144】
結果を図11に示す。図11Aは、実施例29の蛍光顕微鏡像および比較例4の位相差顕微鏡像である。図11Bは、実施例29の結果を示す。図11Cは、比較例4の結果を示す。図11Aおよび図11Bから、メラノソーム取り込み阻害剤が存在しないと、ラベル化メラノソームは、ケラチノサイト細胞に取り込まれているが、メラノソーム取り込み阻害剤が存在すると、蛍光強度が低下していることからケラチノサイト細胞にラベル化メラノソームの取り込みが阻害されることが示された。一方で、比較例4での吸光度測定では、ケラチノサイトへのメラノソームの取り込みは評価ができなかった。したがって、化合物1を用いたことで、メラノソーム取り込み阻害剤によるケラチノサイトへのメラノソームの取り込みを評価できることが示された。
【0145】
[化合物2~化合物4、化合物6~化合物12による細胞性小胞の蛍光染色]
<実施例30>
化合物1に換えて化合物2としたこと以外は、実施例14のPIKfyve阻害剤非添加と同様である。
【0146】
<実施例31>
化合物1に換えて化合物3としたこと以外は、実施例14のPIKfyve阻害剤非添加と同様である。
【0147】
<実施例32>
化合物1に換えて化合物4としたこと以外は、実施例14のPIKfyve阻害剤非添加と同様である。
【0148】
<実施例33>
化合物1に換えて化合物6としたこと以外は、実施例14のPIKfyve阻害剤非添加と同様である。
【0149】
<実施例34>
化合物1に換えて化合物7としたこと以外は、実施例14のPIKfyve阻害剤非添加と同様である。
【0150】
<実施例35>
化合物1に換えて化合物8としたこと以外は、実施例14のPIKfyve阻害剤非添加と同様である。
【0151】
<実施例36>
化合物1に換えて化合物9としたこと以外は、実施例14のPIKfyve阻害剤非添加と同様である。
【0152】
<実施例37>
化合物1に換えて化合物10とし、測定の際、励起光を540nmとしたこと以外は、実施例14のPIKfyve阻害剤非添加と同様である。
【0153】
<実施例38>
化合物1に換えて化合物11としたこと以外は、実施例14のPIKfyve阻害剤非添加と同様である。
【0154】
<実施例39>
化合物1に換えて化合物12としたこと以外は、実施例14のPIKfyve阻害剤非添加と同様である。
【0155】
図12に結果を示す。図12Aは、実施例30の蛍光顕微鏡像である。図12Bは、実施例30の位相差顕微鏡像である。図12Cは、実施例31の蛍光顕微鏡像である。図12Dは、実施例32の蛍光顕微鏡像である。図12Eは、実施例33の蛍光顕微鏡像である。図12Fは、実施例34の蛍光顕微鏡像である。図12Gは、実施例35の蛍光顕微鏡像である。図12Hは、実施例36の蛍光顕微鏡像である。図12Iは、実施例37の蛍光顕微鏡像である。図12Jは、実施例38の蛍光顕微鏡像である。図12Kは、実施例39の蛍光顕微鏡像である。図12A図12C図12Kより、化合物2~化合物4、化合物6~化合物12は、化合物1と同様に細胞性小胞を蛍光染色できることが示された。また、図12Aの蛍光強度と図12Bの細胞内のメラニン量を測定することで、蛍光強度とメラニン量の相関が判定できる。このことから、細胞の品質評価を行えることが示唆された。
【0156】
[生細胞と死細胞に対する蛍光強度測定]
化合物1~化合物7の各化合物の生細胞と死細胞に対する蛍光強度を測定した。以下に手順を示す。
<実施例40>
(1)B16F10細胞をトリプシン-EDTAではがし、リン酸緩衝液に懸濁した。このとき死細胞作製には、30%エタノールを加えた。
(2)生細胞懸濁液と死細胞懸濁液それぞれを2000rmpで3分間、遠心分離して細胞を落とした。
(3)リン酸緩衝液で2回洗浄し、細胞をカウントした。この時点で生細胞懸濁液から得られた生細胞は70%の生存率であった。
(4)細胞5×104個/100μLに最終濃度1μLとなるように化合物1を添加し、蛍光(励起488nm)を測定した。その際、得られた蛍光強度から自家蛍光強度を引いたものをリン酸緩衝液のみの蛍光強度で割った値を測定値とした。
【0157】
<実施例41>
化合物1に換えて化合物2としたこと以外は、実施例40と同様である。
【0158】
<実施例42>
化合物1に換えて化合物3としたこと以外は、実施例40と同様である。
【0159】
<実施例43>
化合物1に換えて化合物4としたこと以外は、実施例40と同様である。
【0160】
<実施例44>
化合物1に換えて化合物5としたこと以外は、実施例40と同様である。
【0161】
<実施例45>
化合物1に換えて化合物6としたこと以外は、実施例40と同様である。
【0162】
<実施例46>
化合物1に換えて化合物7としたこと以外は、実施例40と同様である。
【0163】
<比較例5>
化合物1に換えて下記式で表される蛍光化合物としたこと以外は、実施例40と同様である。
【化26】
【0164】
図13に結果を示す。図13から実施例40~実施例46において、いずれも生細胞の蛍光強度の方が高く、死細胞の蛍光強度との差も大きかった。一方で、比較例5は、生細胞の蛍光強度と死細胞の蛍光強度との差は小さかった。したがって、化合物1~化合物7が、生細胞の細胞性小胞に特異性を有していることが示された。
【0165】
[腫瘍移植マウスの血清中エクソソームの測定]
<実施例47>
メラノーマ細胞を移植したマウスから血清を採取し、血清中のエクソソームを測定した。以下に手順を示す。
(1)マウス(C57BL/6(8W オス))の皮下にB16F10細胞5×104個を移植して、2週間後に腫瘍重量を測定した。
(2)マウスの血清を採取し、血清20μLとリン酸緩衝液80μLを混合した。
(3)血清とリン酸緩衝液の混合液に化合物1を最終濃度0.3μMとなるように添加した。
(4)化合物1添加してから15分後に蛍光顕微鏡で測定した。なお、測定は488nmで励起した。
【0166】
図14に結果を示す。図14から、腫瘍重量が増加するにしたがって蛍光強度も増加した。このことから、腫瘍重量が増加することで、血清中のエクソソームが増加していることが示された。
【0167】
以上の実施例より、本出願で開示する化合物は、細胞性小胞に特異性が高く、細胞性小胞に未反応のものは蛍光を発さないことが示された。したがって、標識後に未反応の化合物を除く作業が必要なくサンプルロスを抑制できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0168】
細胞性小胞の蛍光染色を行う分野において有用である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14