(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】パノラマX線断層画像生成装置、パノラマX線断層撮影装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/51 20240101AFI20240920BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61B6/51 511
A61B6/03 550W
A61B6/03 550V
A61B6/03 560G
(21)【出願番号】P 2023196362
(22)【出願日】2023-11-20
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000141598
【氏名又は名称】株式会社吉田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信生
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-144898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンビーム状のX線束を被写体に照射する1回のパノラマ撮影で得られる多数のフレーム画像データをもとに、前記被写体において任意の深さに設定される断層面におけるパノラマX線断層画像を生成するパノラマX線断層画像生成装置であって、
パノラマ撮影時における旋回アームの旋回角度毎の回転中心の位置座標を含む旋回アーム位置関係情報と、パノラマ断層画像における基準断層面の位置情報であるパノラマ断層位置情報と、を記憶する主記憶部と、
1回のパノラマ撮影でX線検出器によって取得した多数のフレーム画像データを記憶するフレーム画像記憶部と、
前記基準断層面におけるパノラマ断層画像に積算する画素の画素値の厚みを指定する情報である積層厚情報と、前記基準断層面を含む隣り合う2つの断層面の間の距離を示す断層間の距離情報と、前記旋回アーム位置関係情報と、前記パノラマ断層位置情報と、を用いて、設定される断層面におけるパノラマ断層画像
の垂直方向の画素列を通過するX線束の経路を求め、前記
ファンビーム状のX線束の経路
毎に、前記基準断層面におけるパノラマ断層画像の画素の画素値に、他の断層面におけるパノラマ断層画像の
前記X線束の経路上の画素の画素値を積算し、積算した画素値の平均値を前記基準断層面におけるパノラマ断層画像の画素の画素値とするパノラマX線画像生成部と、を備えることを特徴とするパノラマX線断層画像生成装置。
【請求項2】
前記基準断層面におけるパノラマ断層画像に積層する範囲を、前歯部を含む指定した旋回角度の範囲のみとする請求項1に記載のパノラマX線断層画像生成装置。
【請求項3】
前記パノラマX線画像生成部は、前記フレーム画像記憶部を用いて所定の断層面を設定し、設定した断層面におけるパノラマ断層画像を生成し、前記パノラマ断層画像における垂直方向の画素列を通るX線束の経路を求め、前記X線束の経路に基づいて前記垂直方向の画素列におけるそれぞれの画素の高さを求め、前記画素の高さに応じて前記垂直方向の画素列におけるそれぞれの画素の画素値を前記X線束の経路上の基準断層面において高さが同等である画素の画素値に対して積算する一連の演算処理を、当該パノラマ断層画像において前記垂直方向の画素列を順次変更しながら実行し、かつ、前記フレーム画像記憶部に設定する断層面を順次更新しながら、設定される全ての断層面について前記演算処理を実行し、前記基準断層面の全ての画素について、積算した画素値の平均値をそれぞれ求め、前記基準断層面上の画素の画素値とすることを特徴とする請求項1に記載のパノラマX線断層画像生成装置。
【請求項4】
複数の前記パノラマ断層画像からなる集合体を仮想3次元空間上の3次元画像として記憶する3次元画像記憶部を備え、
前記パノラマX線画像生成部は、
1以上の標準断層面のいずれか1つを前記基準断層面とした上で、前記基準断層面と前記積層厚情報と前記断層間の距離情報とを用いて、前記3次元画像記憶部の仮想3次元空間上に所定間隔で複数の断層面を設定しておき、前記フレーム画像記憶部を用いて前記複数の断層面のうちの1つの断層面を設定し、設定した断層面におけるパノラマ断層画像を生成し、前記パノラマ断層画像における垂直方向の画素列を通るX線束の経路を求め、X線束の経路を基にX線束の垂直方向の広がりを考慮して前記垂直方向の画素列毎に、前記断層面の位置に応じて前記垂直方向の画素列の高さを補正し、高さを補正した画素列を前記仮想3次元空間上に設定された対応する断層面に順次配置する一連の演算処理を、断層面を順次変更しながら、設定される全ての断層面について実行することで疑似3Dボリューム画像を生成する疑似3Dボリューム画像生成部と、
前記疑似3Dボリューム画像において前記基準断層面上の垂直方向の画素列を通るX線束の経路を求め、前記疑似3Dボリューム画像を前記X線束の経路と一致する垂直面で切断してできる切断面上の画素を求め、前記切断面において高さが同等である各画素のそれぞれの画素値を積算し、積算した画素値を平均した値を、前記基準断層面上の対応する画素の画素値に置き換える処理を、前記基準断層面上の全ての垂直方向の画素列について実行し、前記基準断層面上の置き換えられた画素を用いてパノラマ断層画像を生成するパノラマ断層画像生成部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のパノラマX線断層画像生成装置。
【請求項5】
複数の前記パノラマ断層画像からなる集合体を仮想3次元空間上の3次元画像として記憶する3次元画像記憶部を備え、
前記パノラマX線画像生成部は、
1以上の標準断層面のいずれか1つを前記基準断層面とした上で、前記基準断層面と前記積層厚情報と前記断層間の距離情報とを用いて、前記3次元画像記憶部の仮想3次元空間上に所定間隔で複数の断層面を設定しておき、前記フレーム画像記憶部を用いて前記複数の断層面のうちの1つの断層面を設定し、設定した断層面におけるパノラマ断層画像を生成し、前記パノラマ断層画像における垂直方向の画素列を通るX線束の経路を求め、X線束の経路を基にX線束の垂直方向の広がりを考慮して前記垂直方向の画素列毎に、前記断層面の位置に応じて前記垂直方向の画素列の高さを補正し、高さを補正した画素列を前記仮想3次元空間上に設定された対応する断層面に順次配置する一連の演算処理を、断層面を順次変更しながら、設定される全ての断層面について実行することで疑似3Dボリューム画像を生成する疑似3Dボリューム画像生成部と、
1回のパノラマ撮影で得られる多数のフレーム画像データをもとに、複数の断層面に対応して前記フレーム画像データのシフト量をそれぞれ変えた複数のパノラマ断層画像を生成し、周波数分析処理により、被写体の最もフォーカスが合った断層面であるオートフォーカス断層面を抽出するオートフォーカス部と、
前記疑似3Dボリューム画像において前記オートフォーカス断層面上の垂直方向の画素列を通るX線束の経路を求め、前記疑似3Dボリューム画像を前記X線束の経路と一致する垂直面で切断してできる切断面上の画素を求め、前記切断面において高さが同等である各画素のそれぞれの画素値を積算し、積算した画素値を平均した値を、前記オートフォーカス断層面上の対応する画素の画素値に置き換える処理を、前記オートフォーカス断層面上の全ての垂直方向の画素列について実行し、前記オートフォーカス断層面上の置き換えられた画素を用いてパノラマ断層画像を生成するパノラマ断層画像生成部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のパノラマX線断層画像生成装置。
【請求項6】
複数の前記パノラマ断層画像からなる集合体を仮想3次元空間上の3次元画像として記憶する3次元画像記憶部を備え、
前記パノラマX線画像生成部は、
1回のパノラマ撮影で得られる多数のフレーム画像データをもとに、複数の断層面に対応して前記フレーム画像データのシフト量をそれぞれ変えた複数のパノラマ断層画像を生成し、周波数分析処理により、被写体の最もフォーカスが合った断層面であるオートフォーカス断層面を抽出するオートフォーカス部と、
前記オートフォーカス断層面を前記基準断層面とした上で、前記オートフォーカス断層面と前記積層厚情報と前記断層間の距離情報とを用いて、前記3次元画像記憶部の仮想3次元空間上に所定間隔で複数の断層面を設定しておき、前記フレーム画像記憶部を用いて前記複数の断層面のうちの1つの断層面を設定し、設定した断層面におけるパノラマ断層画像を生成し、前記パノラマ断層画像における垂直方向の画素列を通るX線束の経路を求め、X線束の経路を基にX線束の垂直方向の広がりを考慮して前記垂直方向の画素列毎に、前記断層面の位置に応じて前記垂直方向の画素列の高さを補正し、高さを補正した画素列を前記仮想3次元空間上に設定された対応する断層面に順次配置する一連の演算処理を、断層面を順次変更しながら、設定される全ての断層面について実行することで疑似3Dボリューム画像を生成する疑似3Dボリューム画像生成部と、
前記疑似3Dボリューム画像において前記オートフォーカス断層面上の垂直方向の画素列を通るX線束の経路を求め、前記疑似3Dボリューム画像を前記X線束の経路と一致する垂直面で切断してできる切断面上の画素を求め、前記切断面において高さが同等である各画素のそれぞれの画素値を積算し、積算した画素値を平均した値を、前記オートフォーカス断層面上の対応する画素の画素値に置き換える処理を、前記オートフォーカス断層面上の全ての垂直方向の画素列について実行し、前記オートフォーカス断層面上の置き換えられた画素を用いてパノラマ断層画像を生成するパノラマ断層画像生成部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のパノラマX線断層画像生成装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のパノラマX線断層画像生成装置と、
前記ファンビーム状のX線束を照射するX線発生器と、
前記被写体を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記X線発生器と前記X線検出器とを保持する前記旋回アームと、
前記旋回アームを駆動させるモータを有する旋回移動装置と、
前記旋回アームの駆動を制御する制御手段と、
前記X線発生器の駆動を制御する制御手段と、
前記X線検出器の駆動を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするパノラマX線断層撮影装置。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のパノラマX線断層画像生成装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パノラマX線断層画像生成装置、パノラマX線断層撮影装置およびプログラムに係り、特に、歯科用のパノラマX線断層画像生成装置、パノラマX線断層撮影装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療の際、患者の歯(歯列)の状態を総覧的に調べるため、パノラマX線断層撮影が行われる。パノラマX線断層撮影法は、回転断層撮影法の応用であり、歯列形状(歯列弓)に合わせて回転中心位置を移動させ、上顎洞、顎関節、歯列、オトガイまでを網羅したX線撮影法である。従来のパノラマX線断層撮影装置では、予め定められた標準歯列のX線断層画像を取得することを前提としている。そのため、被写体である患者の歯列が標準歯列と適合しない場合、フォーカスの合わない、ぼやけたX線断層画像となるという問題があった。また、パノラマX線断層撮影法の性質上、臼歯部分に比べて前歯部分は、回転半径が小さい。すなわち、特に前歯部においては、パノラマX線撮影装置の回転中心位置と、被写体を写す断層との距離が近い。そのため、回転断層撮影の原理によって前歯部の断層域が薄くなるので、よりフォーカスの合う患者位置づけが難しくなっている。
【0003】
そこで、近年、断層の位置を標準断層の位置から変更できる機能(以下、可変断層機能と呼称する)を備えたパノラマX線断層撮影装置が作られるようになった。可変断層機能を備えたパノラマX線断層撮影装置は、高速にフレーム画像データを取得可能なX線検出器を用い、1回の撮影で得られたフレーム画像データを、シフト量を変化させ加算(重ね合わせ)することで、任意の深さのX線断層画像を得ることができる。また、従来、この可変断層機能を応用したオートフォーカス機能を備えたパノラマX線断層撮影装置が知られている(特許文献1参照)。このオートフォーカス機能は、1回の撮影で得られたフレーム画像データを用いて、シフト量を変えた複数のX線断層画像を生成し、周波数分析処理により、被写体の歯列の最もフォーカスが合った断層面を自動的に抽出するものである。また、従来、前歯部では断層域が薄いことを課題として、前歯の傾斜に合わせて、斜めに切った断層面上の像に対応するパノラマX線断層画像を得る機能を備えたパノラマX線断層撮影装置が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4746482号公報
【文献】特許第2787169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パノラマX線断層撮影法では、前歯部分は断層域が薄くなることから、前歯部分の画像には、断層域がもともと厚い臼歯部分の画像とは異なる特徴がある。ヒトの前歯は、一般に、頭部の前後方向に傾斜している。前歯部の断層域が薄いことにより、1つの前歯に注目したときのエナメル質と根尖部とを同時にX線断層画像に収めることが困難となっていたり、あるいは、上顎の前歯と下顎の前歯とを同時にX線断層画像に収めることが困難となっていたりする。また、前歯部の断層域が薄いことは、前後方向における患者位置づけの困難さを引き起こしている。これらの問題は現在まで解決されておらず、別途デンタル撮影で前歯部を撮影し直す必要があるなど、患者の被曝線量が大きくなる要因や円滑な診療を妨げる要因となっている。
【0006】
特許文献1,2に記載された技術を用いたとしても、前歯部の断層域は薄いままである。つまり、従来のパノラマX線断層撮影装置では、前歯部は、標準断層位置などの設定された断層位置から外れた領域については画像にはならず、従来得られる前歯部の画像は、薄い断層域に設定された1つの断層位置だけに関する画像であり、前歯部の情報量の少ない画像となっているのが現状である。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、前歯部の情報量の多いパノラマX線断層画像を取得することのできるパノラマX線断層画像生成装置、パノラマX線断層撮影装置およびプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係るパノラマX線断層画像生成装置は、ファンビーム状のX線束を被写体に照射する1回のパノラマ撮影で得られる多数のフレーム画像データをもとに、前記被写体において任意の深さに設定される断層面におけるパノラマX線断層画像を生成するパノラマX線断層画像生成装置であって、パノラマ撮影時における旋回アームの旋回角度毎の回転中心の位置座標を含む旋回アーム位置関係情報と、パノラマ断層画像における基準断層面の位置情報であるパノラマ断層位置情報と、を記憶する主記憶部と、1回のパノラマ撮影でX線検出器によって取得した多数のフレーム画像データを記憶するフレーム画像記憶部と、前記基準断層面におけるパノラマ断層画像に積算する画素の画素値の厚みを指定する情報である積層厚情報と、前記基準断層面を含む隣り合う2つの断層面の間の距離を示す断層間の距離情報と、前記旋回アーム位置関係情報と、前記パノラマ断層位置情報と、を用いて、設定される断層面におけるパノラマ断層画像の垂直方向の画素列を通過するX線束の経路を求め、前記ファンビーム状のX線束の経路毎に、前記基準断層面におけるパノラマ断層画像の画素の画素値に、他の断層面におけるパノラマ断層画像の前記X線束の経路上の画素の画素値を積算し、積算した画素値の平均値を前記基準断層面におけるパノラマ断層画像の画素の画素値とするパノラマX線画像生成部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、パノラマX線断層画像生成装置は、入力する積層厚情報および断層間の距離情報と、記憶した旋回アーム位置関係情報およびパノラマ断層位置情報とを用いて、基準断層面におけるパノラマ断層画像の画素の画素値に、他の断層面におけるパノラマ断層画像の画素の画素値を積算して平均化するので、前歯部の断層域を厚くすることができる。また、基準断層面におけるパノラマ断層画像の画素の画素値に、他の断層面におけるパノラマ断層画像の画素の画素値を単純に積算するのではなく、ファンビーム状のX線束の経路毎に積算して平均化するので、得られるパノラマX線断層画像は、被写体の内部情報を正確に反映したものとなり、従来よりも前歯部の情報量の多い画像となる。
なお、本発明は、コンピュータを、前記したパノラマX線断層画像生成装置として機能させるためのプログラムで実現することもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前歯部の情報量の多いパノラマX線断層画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係るパノラマX線断層撮影装置の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2(a)は旋回アームの旋回角度と回転中心と断層面との関係を示す図である。
図2(b)は所定旋回角度のときの回転中心と断層面との関係を示す図である。
【
図3】
図3(a)~
図3(b)は、第1実施形態に係るパノラマX線断層画像生成装置による処理の説明図である。
【
図4】第1実施形態に係るパノラマX線断層撮影装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】第1実施形態に係るパノラマX線断層画像生成装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6(a)~
図6(c)は、第1実施形態に係るパノラマX線断層画像生成装置の説明図である。
【
図7】
図7(a)~
図7(d)は、従来のパノラマX線断層撮影装置によって取得する前歯部の画像の説明図である。
【
図8】
図8(a)~
図8(c)は、第1実施形態に係るパノラマX線断層画像生成装置によって取得する前歯部の画像の説明図である。
【
図9】第2実施形態に係るパノラマX線断層撮影装置の構成を示す模式図である。
【
図13】前歯部を通るX線透過経路とパノラマX線断層画像との対応関係を示す模式図である。
【
図14】
図14(a)~
図14(b)は、第2実施形態に係るパノラマX線断層画像生成装置による処理の説明図である。
【
図15】第2実施形態に係るパノラマX線断層撮影装置の動作を示すフローチャートである。
【
図16】
図15の疑似3Dボリューム画像生成処理を示すフローチャートである。
【
図17】
図15のパノラマ断層画像生成処理を示すフローチャートである。
【
図18】第3実施形態に係るパノラマX線断層撮影装置の構成を示す模式図である。
【
図19】オートフォーカス部による処理の説明図である。
【
図20】第3実施形態に係るパノラマX線断層撮影装置の動作を示すフローチャートである。
【
図21】
図20のパノラマ断層画像生成処理を示すフローチャートである。
【
図22】変形例に係るパノラマX線断層撮影装置の動作を示すフローチャートである。
【
図23】
図22の疑似3Dボリューム画像生成処理を示すフローチャートである。
【
図24】第1実施形態の変形例に係るパノラマX線断層画像生成装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図25】第2実施形態の変形例に係る疑似3Dボリューム画像生成処理の流れを示すフローチャートである。
【
図26】第2実施形態の変形例に係るパノラマ断層画像生成処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るパノラマX線断層画像生成装置およびパノラマX線断層撮影装置を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。
【0013】
(第1実施形態)
[パノラマX線断層撮影装置の構成]
図1に示すように、パノラマX線断層撮影装置1は、X線発生器2と、X線検出器3と、旋回アーム4と、旋回移動装置5と、撮影制御装置6と、パノラマX線断層画像生成装置7と、を備えている。
【0014】
X線発生器2は、図示しないスリットを有しており、このスリットを介してX線を放出することにより生成されるファンビーム状のX線束を被写体Oに照射するものである。X線検出器3は、X線発生器2から照射されて被写体Oを透過したX線を受光して、被写体OのX線が透過した部分を所定のフレームレートで撮像するものである。X線検出器は、例えばX線イメージインテンシファイア(Image Intensifier:I.I.)やフラットパネル検出器(Flat Panel Detector:FPD)等である。
【0015】
図1および
図2(b)に示すように、X線検出器3の受光面3aは、X線発生器2の照射部に対向して配置される。なお、
図2(b)では、X線発生器2を簡略化して円で示しており、また、被写体Oの1つの断層面101の位置を例示している。また、旋回アーム4の回転中心Cは、パノラマ撮影の際に
図2(a)に示すように移動する。旋回アーム4は、X線発生器2とX線検出器3の受光面3aとの間に被写体Oが収まるようにX線発生器2とX線検出器3とを保持する。
【0016】
旋回移動装置5は、旋回アーム4を駆動させるモータを有する。旋回移動装置5は、X-Y軸モータ5aと、旋回軸モータ5bと、を備えている。X-Y軸モータ5aは、旋回アーム4をX軸方向およびY軸方向に駆動させるモータである。旋回軸モータ5bは、旋回アーム4を旋回させるモータである。
図2(a)は、被写体Oである歯列を上から視た概念図である。
図2(a)に示すように、パノラマX線撮影において断層面101を撮影する際、旋回アーム4の回転中心Cは、旋回アーム4の旋回角度に応じて、
図2(a)において水平方向に移動する。臼歯部を撮影するとき(例えば角度90度)、回転半径が大きく(断層域が厚く)、回転中心Cは、
図2(a)において最も右に位置する。前歯部を撮影するとき(例えば角度10度)、回転半径が小さく(断層域が薄く)、回転中心Cは、
図2(a)において最も左に位置する。
【0017】
撮影制御装置6は、パノラマX線撮影におけるX線照射、X線検出およびアーム旋回を制御するものであり、一般的なコンピュータと同様のハードウェア構成を備えている。ここでは、撮影制御装置6は、前記機能を実現するために、CPU10と、RAM11と、主記憶部12と、を備えている。
【0018】
CPU10は、旋回アーム制御部13と、X線照射制御部14と、X線検出部制御部15と、を備えている。旋回アーム制御部13は、旋回アーム4の駆動を制御する制御手段である。X線照射制御部14は、X線発生器2の駆動を制御する制御手段である。X線検出部制御部15は、X線検出器3の駆動を制御する制御手段である。これらの制御手段は、例えば特許文献1に開示されたパノラマX線断層撮影装置のコントローラと同様である。
【0019】
CPU10は、X線撮影実行プログラムを実行することにより撮影制御装置6の機能を実現する。主記憶部12は、例えばROMやHDD等を備え、プログラム16と、旋回アーム制御情報17と、を記憶する。主記憶部12は、プログラム16として、例えば、起動時にCPU10により実行されるブートプログラム、撮影制御装置6を構成するハードウェアに係るプログラム、X線撮影実行プログラム等を記憶する。旋回アーム制御情報17は、パノラマ撮影の際に旋回アーム4の旋回角度毎のアーム回転中心位置座標等の制御情報である。表示部18は、撮影制御装置6の操作画面を表示したり、X線撮影の制御状態を表示したりするものであり、例えば液晶ディスプレイ等である。操作部19は、X線撮影のオペレータが操作するものであり、例えば電源ボタンや各機能ボタン、あるいは、キーボード、マウス等の入力装置である。また、表示部18および操作部19はタッチパネルで構成することもできる。なお、図示はしていないが、撮影制御装置6は、表示部18や操作部19のための入出力インタフェースや、パノラマX線断層画像生成装置7と通信するための通信インタフェースも備えている。
【0020】
[パノラマX線断層画像生成装置]
パノラマX線断層画像生成装置7は、ファンビーム状のX線束を被写体に照射する1回のパノラマ撮影で得られる多数のフレーム画像データをもとに、被写体において任意の深さに設定される断層面におけるパノラマX線断層画像を生成する装置である。パノラマX線断層画像生成装置7は、一般的なコンピュータと同様のハードウェア構成を備えている。ここでは、パノラマX線断層画像生成装置7は、CPU20と、RAM30と、主記憶部40と、を備えている。
【0021】
RAM30は、フレーム画像メモリ(フレーム画像記憶部)31を備えている。フレーム画像メモリ31は、1回のパノラマ撮影でX線検出器3によって取得した多数のフレーム画像データを記憶する記憶部である。
【0022】
主記憶部40は、例えばROMやHDD等を備え、プログラム41と、旋回アーム位置関係情報42と、パノラマ断層位置情報43と、を記憶する。主記憶部40は、プログラム41として、ブートプログラム、パノラマX線断層画像生成装置7を構成するハードウェアに係るプログラム、パノラマX線断層画像生成プログラム等を記憶する。
旋回アーム位置関係情報42は、例えば、パノラマ撮影時における旋回アーム4の旋回角度毎の回転中心Cの位置座標、X線検出器3の位置座標、およびX線発生器2の位置座標を含む情報である。なお、主記憶部40は、旋回アーム位置関係情報42として、少なくとも旋回角度毎の回転中心Cの位置座標を記憶していればよい。X線検出器3の位置座標およびX線発生器2の位置座標については、旋回アーム4における回転中心C、X線検出器3およびX線発生器2の機械的な位置関係に基づいて、計算によりそれぞれ求めることができるからである。
パノラマ断層位置情報43は、パノラマ断層画像における基準断層面の位置情報である。基準断層面は、パノラマ撮影時の基準となる断層面である。基準断層面としては、例えば、パノラマX線断層撮影装置に、標準的な歯列の断層面として設定されている標準断層面を用いることができる。標準断層面は、通常、骨格や歯列の大きさ或いは形状にあわせて複数用意される。例えば大人用の標準断層面や子供用の標準断層面などを準備することができる。
【0023】
表示部51は、パノラマX線断層画像及び操作画面を表示するものであり、例えば液晶ディスプレイ等である。操作部52は、オペレータが操作するものであり、例えばマウスやキーボード等の入力装置である。また、表示部51および操作部52はタッチパネルで構成することもできる。なお、図示はしていないが、パノラマX線断層画像生成装置7は、表示部51や操作部52のための入出力インタフェースや、撮影制御装置6と通信するための通信インタフェースも備えている。
【0024】
CPU20は、パノラマX線断層画像生成プログラムを実行することによりパノラマX線断層画像生成装置7の機能を実現する。CPU20は、パノラマX線画像生成部60を備えている。パノラマX線画像生成部60には、積層厚情報と、断層間の距離情報と、が入力される。積層厚情報は、基準断層面におけるパノラマ断層画像に積算する画素の画素値の厚みを指定する情報である。積層厚情報は、パノラマX線撮影法の断層域の厚さに対応した情報であり、例えば20mm等とすることができる。この積層厚情報に基づいて、撮影範囲全体の断層域が厚くなり、当然、前歯部の断層域も厚くなる。指定する厚みは、前歯部の通常の厚みよりも厚くする。厚く指定することにより、前歯部に積算する情報を増やすことができる。断層間の距離情報は、基準断層面を含む隣り合う2つの断層面の間の距離を示す。パノラマX線画像生成部60は、積層厚情報と、断層間の距離情報と、旋回アーム位置関係情報42と、パノラマ断層位置情報43と、を用いて、設定される断層面におけるパノラマ断層画像を通過するX線束の経路を求め、X線束の経路毎に、基準断層面におけるパノラマ断層画像の画素の画素値に、他の断層面におけるパノラマ断層画像の画素の画素値を積算して平均化する。ここで、平均化するとは、積算した画素値の平均を計算し、その計算結果(平均値)を、あらためて基準断層面におけるパノラマ断層画像の画素の画素値とすることである。積算した画素値の平均値は、その画素について積算した画素値(最終的な積算結果)を、その画素について設定されている断層面の個数によって除算することで得られる。
【0025】
本実施形態では、パノラマX線画像生成部60は、フレーム画像メモリ31を用いて所定の断層面を設定し、設定した断層面におけるパノラマ断層画像を生成する。パノラマX線画像生成部60は、パノラマ断層画像における垂直方向の画素列(以下、縦の画素列と呼ぶ)を通るX線束の経路を求める。例えば
図2(b)に示すように断層面101に、1つのパノラマ断層画像が配置されるとき、断層面101の位置情報と、X線発生器2、X線検出器3および旋回アーム4の回転中心Cのそれぞれの位置情報(旋回アーム位置関係情報42)を用いた計算によって、X線発生器2から照射されるX線束の経路が求められる。
【0026】
パノラマX線画像生成部60は、X線束の経路に基づいて縦の画素列におけるそれぞれの画素の高さを求める。
ここで、パノラマ断層画像における縦の画素列について
図3(a)を参照して説明する。前提としてパノラマX線断層撮影装置1(
図1参照)において、旋回アーム4は、X線発生器2とX線検出器3とを所定距離だけ離間させて保持しているので、X線発生器2とX線検出器3の受光面3aとの間の距離は一定である。例えば断層面21に着目すると、断層面21とX線発生器2との間の距離aと、断層面21とX線検出器3との間の距離bとの和は、一定値である。また、X線発生器2は、ファンビーム状のX線束を照射する。ここで、ファンビーム状のX線束は、縦方向に広がりがある。
そのため、被写体の断層面が、X線発生器2に対して近いほど、その断層面のパノラマ断層画像の高さが低くなる。反対に、被写体の断層面が、X線発生器2から離れるほど、その断層面のパノラマ断層画像の高さが高くなる。パノラマX線画像生成部60は、この縦方向の広がりを考慮し、縦の画素列におけるそれぞれの画素の高さを求める。
図3(a)に示すように、例えばX線検出器3の受光面3aのパノラマ断層画像の縦の画素列の高さH0は、断層面21のパノラマ断層画像の縦の画素列高さH1よりも高い。また、断層面21のパノラマ断層画像の縦の画素列の高さH1は、断層面22のパノラマ断層画像の縦の画素列の高さH2よりも高い。
【0027】
パノラマX線画像生成部60は、縦の画素列におけるそれぞれの画素の高さに応じて、この縦の画素列におけるそれぞれの画素の画素値を、X線束の経路上の基準断層面において高さが同等である画素の画素値に対して積算する一連の演算処理を行う。
前記したように、パノラマX線画像生成部60は、設定される断層面において生成されるパノラマ断層画像における縦の画素列を通るX線束の経路を求めている。
図3(b)は、縦の画素列を通るX線束の経路の一例を示す模式図である。この例では、断層面102が、X線束の経路上の基準断層面103よりもX線発生器2の側に設定されたものとしている。また、黒丸は画素を示している。パノラマX線画像生成部60は、断層面102において所定の高さに配置された画素の画素値を、基準断層面103において同じ高さに配置された画素の画素値に対して積算する。
【0028】
パノラマX線画像生成部60は、パノラマ断層画像において縦の画素列を順次変更しながら、この一連の演算処理を実行し、かつ、フレーム画像メモリ31に設定する断層面を順次更新しながら、設定される全ての断層面について演算処理を実行する。設定される全ての断層面について演算処理が終了したら、パノラマX線画像生成部60は、基準断層面103の全ての画素について、積算した画素値の平均値をそれぞれ求め、基準断層面103上の画素の画素値に置き換える。
パノラマX線画像生成部60は、従来のフィルムで撮影したパノラマX線断層画像と表示が同等になるようにする補正(以下、画像補正処理と呼ぶ)を行うことができる。
図2(a)に示すように、パノラマX線断層撮影装置では、旋回アームの旋回角度が変わると、断層面101から回転中心Cまでの距離が変わる。言い換えると、旋回アームの旋回角度が変わると、
図3(a)に示すX線発生器2から断層面21までの距離aと、X線発生器2からX線検出器3までの距離(a+b)と、の比率が変わる。したがって、パノラマX線断層撮影装置では、旋回アームの旋回角度が変わると、X線検出器3に投影される像の大きさ(拡大率)が変わる。つまり、前歯部の拡大率が、臼歯部の拡大率に比べて大きい、といったパノラマ断層画像が生成される。なお、本実施形態において画像補正処理は必須ではない。ただし、前歯部の高さが臼歯部の高さに釣り合うように、画像の高さを補正すると、従来のフィルムで撮影したパノラマX線断層画像に見慣れている歯科医師にとっては使い勝手がよいので、画像補正処理をすることが好ましい。
【0029】
[パノラマX線断層撮影装置の動作]
次に、第1実施形態に係るパノラマX線断層撮影装置1の動作について
図4を参照(適宜
図1参照)して説明する。まず、パノラマX線断層撮影装置1は、X線撮影を実行する(ステップS10)。このステップS10では、具体的には、撮影制御装置6の制御の下、旋回アーム4が旋回を開始し、X線発生器2がX線照射を開始する(ステップS11)。そして、パノラマX線断層画像生成装置7は、フレーム画像データを収集し、フレーム画像メモリ31に記憶する(ステップS12)。撮影制御装置6は、1回のパノラマ撮影を終えると、旋回アーム4の旋回を終了し、X線発生器2からのX線照射を終了する(ステップS13)。次に、パノラマX線断層画像生成装置7は、パノラマX線画像生成部60によって、パノラマX線断層画像を生成し(ステップS30)、表示部51にパノラマX線断層画像を表示する(ステップS50)。
【0030】
[パノラマX線断層画像生成装置の動作]
次に、第1実施形態に係るパノラマX線断層画像生成装置7のステップS30の動作について
図5(適宜
図1参照)を参照して説明する。
まず、パノラマX線断層画像生成装置7は、パノラマX線画像生成部60に、積層厚情報と断層間の距離情報を設定する(ステップS31)。オペレータは、積層厚情報として、例えば「20mm」を入力したり、断層間の距離情報として、例えば「0.5mm」を入力したりすることができる。なお、積層厚情報は、固定値(例えば、±10mm)を設定し、入力不要としてもよいし、オペレータが、いくつかの候補値から選択してもよい。同様に、断層間の距離情報は、固定値(例えば0.1mm間隔)を設定し、入力不要としてもよいし、オペレータが、いくつかの候補値から選択してもよい。
【0031】
次に、パノラマX線断層画像生成装置7は、パノラマX線画像生成部60に、基準断層面を設定する(ステップS32)。オペレータは、基準断層面として、例えば「大人用の標準断層面」を選択したりする操作をすることができる。次に、パノラマX線画像生成部60は、積層厚情報と断層間の距離情報を基に、基準断層面を基準とした領域に、所定間隔の断層面を設定する(ステップS33)。
【0032】
ここで、パノラマX線断層画像生成装置7の処理について
図6(a)~
図6(c)を参照(適宜
図2(b)および
図2(a)参照)して説明する。ここでは、基準断層面の、1回のパノラマ撮影でX線検出器3によって多数のフレーム画像データを取得しているものとする。このとき、歯列の上から視た場合の基準断層面103の概念図を
図6(a)に示す。
図6(b)に示すように、パノラマX線画像生成部60は、基準断層面103の外側に例えば10mm広げた領域から、内側に例えば10mm広げた領域までの間に、0.5mm間隔の断層面104をそれぞれ設定する。つまり、パノラマX線画像生成部60は、基準断層面103の外側に例えば20個の断層面を設定し、基準断層面103の内側に例えば20個の断層面を設定する。なお、
図6(c)は、
図6(b)の領域Bの拡大図である。この例では、設定した厚み105は、20mmであり、断層間の距離情報は0.5mm間隔である。
【0033】
そして、パノラマX線画像生成部60は、フレーム画像メモリ31を用いて、n番目の断層面におけるパノラマ断層画像を生成する(ステップS34)。そして、パノラマX線画像生成部60は、パノラマ断層画像の縦の画素列を通るX線束の経路を求める(ステップS35)。例えば
図2(b)に示すように1つの断層面101に、1つのパノラマ断層画像が配置されるとき、このパノラマ断層画像において、X線束の経路上に配置される画素が求められる。
【0034】
そして、パノラマX線画像生成部60は、X線束の縦方向の広がりを考慮し、n番目の断層面におけるそれぞれの画素の高さを求める(ステップS36)。そして、パノラマX線画像生成部60は、パノラマ断層画像の各画素の画素値を、X線束の経路上の基準断層面の同じ高さの画素の画素値に積算する(ステップS37)。そして、パノラマX線画像生成部60は、全ての縦の画素列についてステップS35~S37の処理をそれぞれ実行したか否かを判別する(ステップS38)。全ての縦の画素列についてステップS35~S37の処理を実行していない場合(ステップS38:No)、パノラマX線画像生成部60は、次の縦の画素列を選択して(ステップS39)、ステップS35に戻る。
【0035】
一方、全ての縦の画素列についてステップS35~S37の処理を実行した場合(ステップS38:Yes)、パノラマX線画像生成部60は、設定された全ての断層面についてステップS34~S39の処理をそれぞれ実行したか否かを判別する(ステップS40)。全ての断層面についてステップS34~S39の処理を実行していない場合(ステップS40:No)、パノラマX線画像生成部60は、次の断層面を選択して(ステップS41)、ステップS34に戻る。一方、全ての断層面についてステップS34~S39の処理を実行した場合(ステップS40:Yes)、パノラマX線画像生成部60は、基準断層面のパノラマ断層画像の全ての画素について、積算した画素値の平均値を、その画素の画素値に置き換える(ステップS42)。そして、パノラマX線画像生成部60は、画像補正処理を実行し(ステップS43)、メイン処理に戻る。
【0036】
本実施形態に係るパノラマX線断層画像生成装置7は、前記したように前歯部の断層域を厚くすることができる(例えば20mm)。一方、
図7(a)に示すように、一般的なパノラマX線撮影法の断層域106は、顎骨に合わせて馬蹄形をしており、回転断層撮影の原理によって、回転半径が小さい前歯部の断層域110が薄い。そのため、
図7(b)に示すように、傾斜した上顎前歯121および下顎前歯122のいずれかにしかフォーカスが合わないことがある。例えば、
図7(c)に示すように、フォーカス位置111の場合、下顎前歯122の根尖部にフォーカスが合うものの、下顎前歯122のエナメル質や上顎前歯121にフォーカスが合っていない画像となる。また、
図7(d)に示すように、フォーカス位置112の場合、上顎前歯121にフォーカスが合うものの、下顎前歯122の根尖部にフォーカスが合っていない画像となる。つまり、従来技術では、傾斜する上顎前歯121および下顎前歯122の全てにフォーカスを合わせることができなかった。したがって、従来、歯科医師は、
図7(c)または
図7(d)いずれかの画像を見て診断しなければならなかった。
【0037】
これに対して、本実施形態に係るパノラマX線断層画像生成装置7は、
図8(a)に示すように、基準断層面103の外側や内側に他の断層面104を設定しており、前歯部の改善された断層域130を含むパノラマX線断層画像を生成することができる。なお、
図8(a)のp軸は、正面-背面方向に対応する軸であり、q軸は、p軸に直交する軸である。
図8(b)は、上顎前歯121および下顎前歯122のフォーカス位置の概念図であり、
図8(c)は、上顎前歯121および下顎前歯122のフォーカス位置とパノラマX線断層画像との対応を示す概念図である。パノラマX線断層画像生成装置7によれば、
図8(b)に示すように、前歯部の改善された断層域130が厚いために、傾斜する上顎前歯121および下顎前歯122の全てにフォーカスを合わせることができる。したがって、よりフォーカスの合う患者位置づけが容易になっている。また、前歯部の改善された断層域130によって、前歯部の情報量の多いパノラマX線断層画像を取得することができる。
【0038】
パノラマX線断層画像生成装置7は、広い範囲の断層情報を取得できるため、1枚のパノラマX線断層画像中に多くの情報が含まれ、特に前歯部においては、一般的なパノラマX線断層画像に比べて、多くの情報が含まれることとなる。パノラマX線断層画像は、歯や顎骨の状態を総覧的に診ることを目的とする撮影であることから、より歯科診療上の利益に供するレントゲン画像を提供することが可能となる。
また、従来、パノラマX線断層撮影で奥行方向の必要な画像情報が得られない場合、デンタルレントゲンで追加の撮影をすることが一般的である。このことから、パノラマX線断層画像生成装置7によれば、デンタルレントゲンの撮影を不要とする場合も想定され、患者の被曝を低減する効果も期待できる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、
図9を参照して第2実施形態に係るパノラマX線断層撮影装置1Bの構成について説明する。パノラマX線断層撮影装置1Bにおいて、
図1に示すパノラマX線断層撮影装置1と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。パノラマX線断層撮影装置1Bは、パノラマX線断層画像生成装置7Bの機能が第1実施形態と相違している。
【0040】
パノラマX線断層画像生成装置7Bは、CPU20と、RAM30と、主記憶部40と、を備えている。CPU20は、パノラマX線画像生成部60Bを備えており、RAM30は、フレーム画像メモリ31と、3次元画像メモリ(3次元画像記憶部)32と、を備えている。3次元画像メモリ32は、複数のパノラマ断層画像からなる集合体を仮想3次元空間上の3次元画像として記憶する。
【0041】
パノラマX線画像生成部60Bは、パノラマ断層画像生成部61と、疑似3Dボリューム画像生成部62と、を備えている。
疑似3Dボリューム画像生成部62は、1以上の標準断層面のいずれか1つを基準断層面とした上で、基準断層面と積層厚情報と断層間の距離情報とを用いて、3次元画像メモリ32の仮想3次元空間上に所定間隔で複数の断層面を設定しておき、フレーム画像メモリ31を用いて複数の断層面のうちの1つの断層面を設定し、設定した断層面におけるパノラマ断層画像を生成する。疑似3Dボリューム画像生成部62は、パノラマ断層画像における縦の画素列を通るX線束の経路を求め、X線束の経路を基にX線束の縦方向の広がりを考慮して縦の画素列毎に、断層面の位置に応じて縦の画素列の高さを補正する。疑似3Dボリューム画像生成部62は、高さを補正した画素列を、仮想3次元空間上に設定された対応する断層面に順次配置する一連の演算処理を、断層面を順次変更しながら、設定される全ての断層面について実行することで疑似3Dボリューム画像を生成する。
パノラマ断層画像生成部61は、疑似3Dボリューム画像において基準断層面上の縦の画素列を通るX線束の経路を求める。パノラマ断層画像生成部61は、疑似3Dボリューム画像をX線束の経路と一致する垂直面で切断してできる切断面上の画素を求める。パノラマ断層画像生成部61は、切断面において高さが同等である各画素のそれぞれの画素値を積算し、積算した画素値を平均した値を、基準断層面上の対応する画素の画素値に置き換える処理を、基準断層面上の全ての縦の画素列について実行する。パノラマ断層画像生成部61は、基準断層面上の置き換えられた画素を用いてパノラマ断層画像を生成する。
【0042】
パノラマX線断層画像生成装置7Bにおいて、主記憶部40は、プログラム41Bとして、パノラマX線断層画像生成装置7Bとして機能させるためのプログラムも記憶する。
【0043】
図10(a)は、基準断層面のパノラマ断層画像141の概念図である。
図10(b)は、3D空間142に、各断層面のパノラマ断層画像143を配置して疑似3Dボリューム画像を構成した概念図である。ここでは、一例として、基準断層面の外側に所定の間隔で断層をずらして断層面を拡大して3つのパノラマ断層画像を配置し、また、基準断層面の内側に所定の間隔で断層をずらして断層面を縮小して3つのパノラマ断層画像を配置した状態を図示している。なお、基準断層面の外側および内側のいずれか一方にパノラマ断層画像を配置することもできる。
【0044】
ここで、疑似3Dボリューム画像には、数多くのパノラマ断層画像がまるでバームクーヘンのように重なっている。例えば0.1mm間隔で断層をずらして生成した疑似3Dボリューム画像を上から視ると、
図11(a)に示す概念図のように、基準断層面103の外側および内側に配置された各断層面のパノラマ断層画像143が重なって、ひとかたまりになっている。
【0045】
図11(b)は、実験で生成した疑似3Dボリューム画像の一例を示す。
図11(b)において右下の画像は、疑似3Dボリューム画像の外観を示す3D画像である。左下の画像は、疑似3Dボリューム画像を上から視た画像である。左上の画像は、疑似3Dボリューム画像の前歯部を上から下までq軸方向に切断した切断面の画像である。右上の画像は、疑似3Dボリューム画像の臼歯部を上から下までp軸方向に切断した切断面の画像である。
【0046】
図12は、3D空間におけるX線透過経路の概念図であり、
図12(a)は、3D空間142において、疑似3Dボリューム画像145を上から視た状態に対応する。
図12(b)は、疑似3Dボリューム画像145を横から視た状態に対応する。ここでは、疑似3Dボリューム画像145は、基準断層面103の外側および内側に例えば0.1mm間隔で断層をずらして生成されている。疑似3Dボリューム画像145は、前歯部の改善された断層域130を有している。パノラマX線断層画像生成装置7Bは、
図12(a)に示すように、X線発生器2から疑似3Dボリューム画像145を介してX線検出器3の受光面3aに至るX線束の経路146を計算する。パノラマX線断層画像生成装置7Bは、X線束の幅方向の経路だけではなく、X線束の高さ方向の経路も計算する。なお、
図12(a)において、X線発生器2やX線検出器3の位置は、一例であって、旋回アーム4の旋回角度および回転中心Cの移動に伴って変化する。パノラマX線断層画像生成装置7Bは、これらの位置情報として、旋回アーム位置関係情報42(
図9参照)を用いる。
【0047】
図13は、
図12と同様の概念図であり、後段の処理で生成されるパノラマX線断層画像との対応関係を示している。X線束の経路146が、幅方向(q方向)において5本の矢印で示されているが、これらはそれぞれが基準断層面103上の縦の画素列を通るX線束を模式的に示している。この後段の処理で生成されるパノラマX線画像において必要な幅方向(q方向)の画素数が例えば600画素であれば、パノラマX線断層画像生成装置7Bは、X線束の経路146として、幅方向において例えば600の経路を想定して計算する。
【0048】
図14(a)は、疑似3Dボリューム画像を生成した後に横から見たX線束の模式図である。このX線束の経路は、基準断層面103上の縦の画素列を通っている。ここでは、疑似3Dボリューム画像145をX線束の経路と一致する垂直面で切断してできる切断面をハッチングで示している。なお、
図14(a)では、疑似3Dボリューム画像145として、前歯部に対応する部分を示している。疑似3Dボリューム画像は、
図14(a)において右側(X線発生器2に近づく側)よりも、左側(X線発生器2から離れる側)が高い形状である。ここでは、疑似3Dボリューム画像の切断面の形状は矩形である。この矩形の左辺(X線発生器2から離れる側の辺)の高さは、矩形の右辺(X線発生器2に近づく側の辺)の高さよりも高い。疑似3Dボリューム画像145は、画像データとして多数の画素のそれぞれの画素値を含んでいる。
【0049】
図14(b)は、
図14(a)と同様に、疑似3Dボリューム画像を生成した後に横から見たX線束の模式図である。このX線束の経路は、基準断層面103上の縦の画素列を通っている。ただし、
図14(b)においては、疑似3Dボリューム画像の切断面におけるハッチングを解除して、代わりに黒丸が各画素(画像データ)を示している。ここでは、疑似3Dボリューム画像の切断面の形状は矩形である。この矩形の左辺上の画素と、矩形の右辺上の画素とを繋ぐ仮想線は、パノラマ断層画像生成部61が、切断面において高さが同等である各画素のそれぞれの画素値を積算して平均化することを模式的に示している。
なお、疑似3Dボリューム画像の切断面において、同じ高さの画素の画素値を積算する際に、画素の高さによって、積算すべき画素の個数(設定されている断層面の個数)が異なる場合があり、積算値を平均する際に母数が異なる場合もある。また、基準断層面103上の縦の画素列のそれぞれの水平方向の位置の違いによっても、積算すべき画素の個数が異なる場合があり、積算値を平均する際に母数が異なる場合もある。
【0050】
[パノラマX線断層撮影装置の動作]
次に、第2実施形態に係るパノラマX線断層撮影装置1Bの動作について
図15を参照(適宜
図9および
図4参照)して説明する。なお、
図4に示す手順と同じ手順には同じ符号を付して説明を省略する。
まず、第2実施形態に係るパノラマX線断層撮影装置1Bは、X線撮影を実行する(ステップS10)。このステップS10は、前記したステップS11,S12,S13を含んでいる。次に、第2実施形態に係るパノラマX線断層画像生成装置7Bは、パノラマX線画像生成部60Bによって、パノラマX線断層画像を生成し(ステップS30B)、表示部51にパノラマX線断層画像を表示する(ステップS50)。ステップS30Bの処理は、疑似3Dボリューム画像生成処理(ステップS100)と、パノラマ断層画像生成処理(ステップS200)とを含んでいる。
【0051】
[パノラマX線断層画像生成装置の動作]
次に、第2実施形態に係るパノラマX線断層画像生成装置7BのステップS30Bの動作について
図16および
図17を参照(適宜
図9参照)して説明する。
パノラマX線断層画像生成装置7Bの疑似3Dボリューム画像生成部62は、疑似3Dボリューム画像生成処理(ステップS100)を実行する。
図16は、
図15の疑似3Dボリューム画像生成処理を示すフローチャートである。
図16に示すステップS131~S135の処理は、
図5に示すステップS31~S35の処理と概ね同様である。すなわち、パノラマX線断層画像生成装置7Bは、疑似3Dボリューム画像生成部62に、積層厚情報と断層間の距離情報を設定する(ステップS131)。次に、パノラマX線断層画像生成装置7Bは、疑似3Dボリューム画像生成部62に、基準断層面を設定する(ステップS132)。次に、疑似3Dボリューム画像生成部62は、積層厚情報と断層間の距離情報を基に、3次元画像メモリ32において、基準断層面を基準とした領域に、所定間隔の断層面を設定する(ステップS133)。そして、疑似3Dボリューム画像生成部62は、フレーム画像メモリ31を用いて、n番目の断層面におけるパノラマ断層画像を生成する(ステップS134)。そして、疑似3Dボリューム画像生成部62は、n番目の断層面におけるパノラマ断層画像の縦の画素列を通るX線束の経路を求める(ステップS135)。
【0052】
そして、ステップS135に続いて、疑似3Dボリューム画像生成部62は、ステップS135で求めたX線束の経路を基にX線束の縦方向の広がりを考慮して縦の画素列の高さを補正し、補正した画素列を3次元画像メモリ32におけるn番目の断層面に配置する(ステップS137)。
【0053】
このステップS137に続くステップS138~S141の処理は、
図5に示すステップS38~S41の処理と概ね同様である。すなわち、疑似3Dボリューム画像生成部62は、全ての縦の画素列についてステップS135,S137の処理をそれぞれ実行したか否かを判別する(ステップS138)。全ての縦の画素列についてステップS135,S137の処理を実行していない場合(ステップS138:No)、疑似3Dボリューム画像生成部62は、次の縦の画素列を選択して(ステップS139)、ステップS135に戻る。一方、全ての縦の画素列についてステップS135,S137の処理を実行した場合(ステップS138:Yes)、疑似3Dボリューム画像生成部62は、全ての断層面についてステップS134~S139の処理を実行したか否かを判別する(ステップS140)。全ての断層面についてステップS134~S139の処理を実行していない場合(ステップS140:No)、疑似3Dボリューム画像生成部62は、次の断層面を選択して(ステップS141)、ステップS134に戻る。一方、全ての断層面についてステップS134~S139の処理を実行した場合(ステップS140:Yes)、パノラマX線断層画像生成装置7Bはメイン処理に戻る。
【0054】
また、パノラマX線断層画像生成装置7Bのパノラマ断層画像生成部61は、パノラマ断層画像生成処理(ステップS200)を実行する。
図17は、
図15のパノラマ断層画像生成処理を示すフローチャートである。
図17に示すように、パノラマ断層画像生成部61は、基準断層面上の縦の画素列を通るX線束の経路を求める(ステップS201)。そして、パノラマ断層画像生成部61は、疑似3Dボリューム画像をX線束と一致する垂直面で切断してできる切断面上の画素を求める(ステップS202)。そして、パノラマ断層画像生成部61は、疑似3Dボリューム画像の切断面において、同じ高さに配置された画素の画素値を積算し、積算した画素値の平均値を、基準断層面上の縦の画素列において対応する画素の画素値とする(ステップS203)。そして、パノラマ断層画像生成部61は、基準断層面上の全ての縦の画素列についてステップS201~S203の処理をそれぞれ実行したか否かを判別する(ステップS204)。基準断層面上の全ての縦の画素列についてステップS201~S203の処理を実行していない場合(ステップS204:No)、パノラマ断層画像生成部61は、次の縦の画素列を選択して(ステップS205)、ステップS201に戻る。一方、基準断層面上の全ての縦の画素列についてステップS201~S203の処理を実行した場合(ステップS204:Yes)、パノラマ断層画像生成部61は、基準断層面上の画素からパノラマX線断層画像を生成する(ステップS206)。そして、パノラマ断層画像生成部61は、画像補正処理を実行し(ステップS207)、メイン処理に戻る。
【0055】
(第3実施形態)
次に、
図18を参照して第3実施形態に係るパノラマX線断層撮影装置1Cの構成について説明する。パノラマX線断層撮影装置1Cにおいて、
図9に示すパノラマX線断層撮影装置1Bと同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。パノラマX線断層撮影装置1Cは、パノラマX線断層画像生成装置7Cの機能が第2実施形態と相違している。パノラマX線断層画像生成装置7Cでは、疑似3Dボリューム画像においてX線束の経路を求めるときの基準面を、標準断層面ではなくオートフォーカス機能を使った断層面としている。
【0056】
パノラマX線断層画像生成装置7Cは、パノラマX線画像生成部60Cを備えている。パノラマX線画像生成部60Cは、パノラマ断層画像生成部61Cと、疑似3Dボリューム画像生成部62と、オートフォーカス部63と、を備えている。
疑似3Dボリューム画像生成部62は、1以上の標準断層面のいずれか1つを基準断層面とした上で、基準断層面と積層厚情報と断層間の距離情報とを用いて、3次元画像メモリ32の仮想3次元空間上に所定間隔で複数の断層面を設定しておき、フレーム画像メモリ31を用いて複数の断層面のうちの1つの断層面を設定し、設定した断層面におけるパノラマ断層画像を生成する。疑似3Dボリューム画像生成部62は、パノラマ断層画像における縦の画素列を通るX線束の経路を求め、X線束の経路を基にX線束の縦方向の広がりを考慮して縦の画素列毎に、断層面の位置に応じて縦の画素列の高さを補正する。疑似3Dボリューム画像生成部62は、高さを補正した画素列を仮想3次元空間上に設定された対応する断層面に順次配置する一連の演算処理を、断層面を順次変更しながら、設定される全ての断層面について実行することで疑似3Dボリューム画像を生成する。
オートフォーカス部63は、1回のパノラマ撮影で得られる多数のフレーム画像データをもとに、複数の断層面に対応してフレーム画像データのシフト量をそれぞれ変えた複数のパノラマ断層画像を生成し、周波数分析処理により、被写体の最もフォーカスが合った断層面であるオートフォーカス断層面を抽出する。
パノラマ断層画像生成部61Cは、疑似3Dボリューム画像においてオートフォーカス断層面上の縦の画素列を通るX線束の経路を求める。パノラマ断層画像生成部61Cは、疑似3Dボリューム画像をX線束の経路と一致する垂直面で切断してできる切断面上の画素を求め、切断面において高さが同等である各画素のそれぞれの画素値を積算し、積算した画素値を平均した値を、オートフォーカス断層面上の対応する画素の画素値に置き換える処理を、オートフォーカス断層面上の全ての画素について実行する。パノラマ断層画像生成部61Cは、オートフォーカス断層面上の置き換えられた画素を用いてパノラマ断層画像を生成する。
【0057】
パノラマX線断層画像生成装置7Cにおいて、RAM30の3次元画像メモリ32は、生成されたパノラマ断層画像を用いて疑似3Dボリューム画像を構築することに加えて、オートフォーカス断層面を抽出するためにも利用される。また、パノラマX線断層画像生成装置7Cにおいて、主記憶部40は、プログラム41Cとして、パノラマX線断層画像生成装置7Cとして機能させるためのプログラムも記憶する。
【0058】
オートフォーカス部63としては、例えば特許文献1に開示されたオートフォーカス機能を用いることができる。
図19は、オートフォーカス断層面の一例を示す模式図である。オートフォーカス部63は、周波数分析処理により、複数の断層面の位置情報と、高周波領域の位置情報とをそれぞれ対応付けたモデルである多断層モデルを生成する。オートフォーカス部63は、例えば、9個のサンプル点が対応付けられた多断層モデルを取得した場合、
図19に示すように、各サンプル点8a~8iを連結し、各サンプル点8a~8iの位置情報を補間することにより、それらを滑らかに連結した曲線を有する補間された多断層モデルM
2を生成する。この連結された曲線の位置情報が、オートフォーカス断層面Gを示すこととなる。また、オートフォーカス部63は、各サンプル点8a~8iの位置と、旋回アーム4の回転中心Cの位置との距離(回転半径)を求める。なお、
図19では、回転半径として、回転中心からサンプル点8a,8eまでの距離r
a,r
eを例示した。
【0059】
[パノラマX線断層撮影装置の動作]
次に、第3実施形態に係るパノラマX線断層撮影装置1Cの動作について
図20を参照(適宜
図18および
図15参照)して説明する。なお、
図15に示す手順と同じ手順には同じ符号を付して説明を省略する。
まず、第3実施形態に係るパノラマX線断層撮影装置1Cは、X線撮影を実行する(ステップS10)。次に、第3実施形態に係るパノラマX線断層画像生成装置7Cは、パノラマX線画像生成部60Cによって、パノラマX線断層画像を生成し(ステップS30C)、表示部51にパノラマX線断層画像を表示する(ステップS50)。
ステップS30Cの処理において、疑似3Dボリューム画像生成処理(ステップS100)は、
図16に示す処理と同様なので、これ以上の説明を省略する。ステップS100に続いて、パノラマX線断層画像生成装置7Cのオートフォーカス部63は、オートフォーカス断層面を求める(ステップS300)。そして、パノラマX線断層画像生成装置7Cのパノラマ断層画像生成部61Cは、パノラマ断層画像生成処理(ステップS200C)を実行する。
【0060】
次に、ステップS200Cの動作について
図21を参照(適宜
図18参照)して説明する。
図21に示すように、パノラマ断層画像生成部61Cは、オートフォーカス断層面上の縦の画素列を通るX線束の経路を求める(ステップS201C)。そして、パノラマ断層画像生成部61Cは、疑似3Dボリューム画像をX線束と一致する垂直面で切断してできる切断面上の画素を求める(ステップS202C)。そして、パノラマ断層画像生成部61Cは、疑似3Dボリューム画像の切断面において、同じ高さに配置された画素の画素値を積算し、積算した画素値の平均値を、オートフォーカス断層面上の縦の画素列において対応する画素の画素値とする(ステップS203C)。そして、パノラマ断層画像生成部61Cは、オートフォーカス断層面上の全ての縦の画素列についてステップS201C~S203Cの処理を実行したか否かを判別する(ステップS204C)。オートフォーカス断層面上の全ての縦の画素列についてステップS201C~S203Cの処理を実行していない場合(ステップS204C:No)、パノラマ断層画像生成部61Cは、次の縦の画素列を選択して(ステップS205)、ステップS201Cに戻る。一方、オートフォーカス断層面上の全ての縦の画素列についてステップS201C~S203Cの処理を実行した場合(ステップS204C:Yes)、パノラマ断層画像生成部61Cは、オートフォーカス断層面上の画素からパノラマ断層画像を生成する(ステップS206C)。そして、パノラマ断層画像生成部61Cは、画像補正処理を実行し(ステップS207)、メイン処理に戻る。
【0061】
(第3実施形態の変形例)
第3実施形態の変形例に係るパノラマX線断層画像生成装置7Cは、
図18に示すように、オートフォーカス部63と、疑似3Dボリューム画像生成部62と、パノラマ断層画像生成部61Cと、を備えている。ただし、第3実施形態の変形例に係るパノラマX線断層画像生成装置7Cは、疑似3Dボリューム画像においてX線束の経路を求めるときの基準面を、オートフォーカス断層面とすることに加えて、疑似3Dボリューム画像を生成するときの基準面をオートフォーカス断層面としている。
【0062】
そのため、変形例に係る疑似3Dボリューム画像生成部62は、オートフォーカス断層面Gを基準断層面とした上で、オートフォーカス断層面と積層厚情報と断層間の距離情報とを用いて、3次元画像メモリ32の仮想3三次元空間上に所定間隔で複数の断層面を設定しておき、フレーム画像メモリ31を用いて複数の断層面のうちの1つの断層面を設定し、設定した断層面におけるパノラマ断層画像を生成する。疑似3Dボリューム画像生成部62は、パノラマ断層画像における縦の画素列を通るX線束の経路を求め、X線束の経路を基にX線束の縦方向の広がりを考慮して縦の画素列毎に、断層面の位置に応じて縦の画素列の高さを補正する。疑似3Dボリューム画像生成部62は、高さを補正した画素列を仮想3次元空間上に設定された対応する断層面に順次配置する一連の演算処理を、断層面を順次変更しながら、設定される全ての断層面について実行することで疑似3Dボリューム画像を生成する。
なお、オートフォーカス部63およびパノラマ断層画像生成部61Cは、第3実施形態と同様である。
【0063】
次に、第3実施形態の変形例に係るパノラマX線断層撮影装置1Cの動作について
図22を参照(適宜
図18および
図20参照)して説明する。なお、
図20に示す手順と同じ手順には同じ符号を付して説明を省略する。
変形例では、パノラマX線断層画像を生成する処理(ステップS30D)において、オートフォーカス断層面を基準にして疑似3Dボリューム画像を生成する点が第3実施形態の動作と相違している。したがって、変形例に係るパノラマX線画像生成部60Cは、
図22に示すように、ステップS30Dの処理において、オートフォーカス断層面を求める処理(ステップS300D)と、疑似3Dボリューム画像生成処理(ステップS100D)と、パノラマ断層画像生成処理(ステップS200D)と、をこの順番に実行する。ここで、オートフォーカス断層面を求める処理(ステップS300D)は、
図20に示すオートフォーカス断層面を求める処理(ステップS300)と同様である。
【0064】
変形例に係る疑似3Dボリューム画像生成部62は、疑似3Dボリューム画像生成処理(ステップS100D)において、
図23に示すように、オートフォーカス断層面を基準断層面に設定する(ステップS132D)。
図23に示す疑似3Dボリューム画像生成処理(ステップS100D)は、ステップS132D以外の処理が、
図16に示す疑似3Dボリューム画像生成処理(ステップS100)と同様なので、これ以上の説明を省略する。
また、
図22に示すパノラマ断層画像生成処理(ステップS200D)は、
図17に示すパノラマ断層画像生成処理(ステップS200C)と同様なので、これ以上の説明を省略する。
【0065】
以上、本発明の実施形態に係るパノラマX線断層画像生成装置およびパノラマX線断層撮影装置について説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変などしたものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
例えば第2実施形態において、疑似3Dボリューム画像は、0.1mm間隔で断層をずらして生成したものとしたが、間隔はこれに限らず、より広くても狭くてもよい。また、第1実施形態において、設定した厚み105が20mmであり、0.5mm間隔の断層面104をそれぞれ設定するものとしたが、厚みや間隔は、より広くても狭くてもよい。さらに、例えば、基準断層面のパノラマ断層画像と、基準断層面から5mm外側の断層位置に配置されたパノラマ断層画像と、の2枚のパノラマ断層画像を用いて、X線束の経路を元に、基準断層面のパノラマ断層画像に、もう1つの断層位置のパノラマ断層画像を積算することとしても、同様の効果を奏することが可能である。
【0066】
第1実施形態に係るパノラマX線断層画像生成装置7は、基準断層面において高さが同等である各画素のそれぞれの画素値を積算する処理を、前歯部を含む指定した旋回角度の範囲のみに適用してもよい。以下、前歯部を含む指定した旋回角度の範囲を、積層範囲と呼称する。この変形例に係るパノラマX線断層画像生成装置7のパノラマX線画像生成部60(
図1参照)の動作について、
図24を参照して説明する。まず、パノラマX線断層画像生成装置7は、パノラマX線画像生成部60に、積層厚情報と断層間の距離情報と積層範囲を設定する(ステップS31B)。ここで、積層範囲が設定されないと、積層厚情報に基づいて、撮影範囲全体の断層域が厚くなるが、積層範囲が設定されることで、前歯部を含む指定範囲の断層域のみが厚くなる。そして、パノラマX線断層画像生成装置7は、パノラマX線画像生成部60に、基準断層面を設定し(ステップS32)、積層厚情報と断層間の距離情報を基に、基準断層面を基準とした領域に、所定間隔の断層面を設定する(ステップS33)。続いて、パノラマX線画像生成部60は、基準断層面におけるパノラマ断層画像を生成する(ステップS45)。その後、ステップS34B~S43の処理は、
図5のステップS34~S43の処理と同様なので、説明を省略する。なお、ステップS34B~S38B,S42Bの処理は、指定された積層範囲で処理を行う点を除いて、
図5のステップS34~S38,S42の処理と同じである。
【0067】
また、第2実施形態に係るパノラマX線断層画像生成装置7Bは、疑似3Dボリューム画像生成処理、および、疑似3Dボリューム画像の切断面において高さが同等である各画素のそれぞれの画素値を積算する処理を、前歯部を含む指定した旋回角度の範囲(積層範囲)のみに適用してもよい。この変形例に係るパノラマX線断層画像生成装置7BのパノラマX線画像生成部60B(
図9参照)の動作について、
図25および
図26を参照して説明する。
図25に示すように、パノラマX線断層画像生成装置7Bは、疑似3Dボリューム画像生成部62に、積層厚情報と断層間の距離情報と積層範囲を設定する(ステップS131B)。次に、パノラマX線断層画像生成装置7Bは、疑似3Dボリューム画像生成部62に、基準断層面を設定する(ステップS132)。その後、疑似3Dボリューム画像生成部62が行うステップS133~S141の処理は、
図16のステップS133~S141の処理と同様なので、説明を省略する。なお、ステップS134B~S135B,S138Bの処理は、指定された積層範囲で処理を行う点を除いて、
図16のステップS134~S135,S138の処理と同じである。
また、
図26に示すように、パノラマX線画像生成部60Bのパノラマ断層画像生成部61は、基準断層面におけるパノラマ断層画像を生成し、3次元画像メモリ32の基準断層面に配置する(ステップS210)。その後、パノラマ断層画像生成部61が行うステップS201B~S207の処理は、
図17のステップS201~S207の処理と同様なので、説明を省略する。なお、ステップS201B,S204Bの処理は、指定された積層範囲で処理を行う点を除いて、
図17のステップS201,S204の処理と同じである。
これら旋回角度の範囲(積層範囲)を指定する変形例は、指定した旋回角度の範囲外については、基準断層面の画素をそのまま使ってパノラマX線断層画像を生成することができる。特に、断層が薄い前歯部のみに限定して処理をすると、計算量を少なくでき、処理時間の節約になるので好ましい。
【0068】
同様に、第3実施形態およびその変形例に係るパノラマX線断層画像生成装置7Cは、疑似3Dボリューム画像生成処理、および、疑似3Dボリューム画像の切断面において高さが同等である各画素のそれぞれの画素値を積算する処理を、前歯部を含む指定した旋回角度の範囲(積層範囲)のみに適用してもよい。
【0069】
第2実施形態に係るパノラマX線断層画像生成装置7Bは、前歯部、小臼歯部、大臼歯部といった部位毎に、疑似3Dボリューム画像の切断面において高さが同等である各画素のそれぞれの画素値を積算する際の重み(係数)を変えてもよい。また、パノラマX線断層画像生成装置は、旋回角度の範囲毎に、疑似3Dボリューム画像の切断面において高さが同等である各画素のそれぞれの画素値を積算する際の重み(係数)を変えてもよい。通常のパノラマ断層画像であれば、大臼歯部、小臼歯部、前歯部の順番に、断層域が薄くなっていくが、画素値を積算する際の重み(係数)を大臼歯部、小臼歯部、前歯部の順番に、徐々に大きくしていくことで、不自然さが軽減されたパノラマX線断層画像を生成することができる。
【符号の説明】
【0070】
1,1B,1C パノラマX線断層撮影装置
2 X線発生器
3 X線検出器
3a 受光面
4 旋回アーム
5 旋回移動装置
5a X-Y軸モータ
5b 旋回軸モータ
6 撮影制御装置
7,7B,7C パノラマX線断層画像生成装置
10 CPU
11 RAM
12 主記憶部
13 旋回アーム制御部
14 X線照射制御部
15 X線検出部制御部
16 プログラム
17 旋回アーム制御情報
18 表示部
19 操作部
20 CPU
30 RAM
31 フレーム画像メモリ(フレーム画像記憶部)
32 3次元画像メモリ(3次元画像記憶部)
40 主記憶部
41,41B,41C プログラム
42 旋回アーム位置関係情報
43 パノラマ断層位置情報
51 表示部
52 操作部
60,60B,60C パノラマX線画像生成部
61,61C パノラマ断層画像生成部
62 疑似3Dボリューム画像生成部
63 オートフォーカス部
103 基準断層面
145 疑似3Dボリューム画像
146 X線束の経路
C 回転中心
O 被写体
【要約】
【課題】前歯部の情報量の多いパノラマX線断層画像を取得すること。
【解決手段】パノラマX線断層画像生成装置7は、1回のパノラマ撮影でX線検出器3によって取得した多数のフレーム画像データを記憶するフレーム画像メモリ31と、基準断層面におけるパノラマ断層画像に積算する画素の画素値の厚みを指定する情報である積層厚情報と、基準断層面を含む隣り合う2つの断層面の間の距離を示す断層間の距離情報と、旋回アーム位置関係情報42と、パノラマ断層位置情報43と、を用いて、設定される断層面におけるパノラマ断層画像を通過するX線束の経路を求め、X線束の経路に基づいて、基準断層面におけるパノラマ断層画像の画素の画素値に、他の断層面におけるパノラマ断層画像の画素の画素値を積算し、積算した画素値の平均値を基準断層面におけるパノラマ断層画像の画素の画素値とするパノラマX線画像生成部60と、を備える。
【選択図】
図1