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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】冷凍装置および冷凍装置輸送システム
(51)【国際特許分類】
   F25D 11/00 20060101AFI20240920BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F25D11/00 101D
F25D23/00 301G
F25D23/00 301P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024049181
(22)【出願日】2024-03-26
【審査請求日】2024-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2023052303
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523114361
【氏名又は名称】株式会社HSKコンサルティング
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101384
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 成夫
(72)【発明者】
【氏名】原田 正雄
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 恭祐
(72)【発明者】
【氏名】敖特根 其其格
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-64544(JP,A)
【文献】特開平6-137740(JP,A)
【文献】特開2003-76751(JP,A)
【文献】特開2001-235271(JP,A)
【文献】特開2010-236807(JP,A)
【文献】特開2017-150700(JP,A)
【文献】特開2022-50897(JP,A)
【文献】国際公開第2020/161763(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/115503(WO,A1)
【文献】特開2021-127887(JP,A)
【文献】特表2021-503588(JP,A)
【文献】特許第6574649(JP,B2)
【文献】特開2017-144932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00 - 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送対象物を低温輸送するために輸送機器に搭載されて用いる冷凍装置であって、
垂直方向寸法が水平方向寸法よりも大きな箱状の本体と、
前記の本体における立面の一つである前面から輸送対象物を出し入れ可能な冷蔵室と、
前記の冷蔵室の内部空間を冷却する冷凍サイクル機器と、
前記の冷凍サイクル機器に対してエネルギを供給する二次電池と、
時刻データを取得する時計と、
冷蔵室の室内温度を測定する温度計と、
前記の温度計の測定結果である温度データを用いて前記の冷凍サイクル機器を制御する温度制御装置と、
当該冷凍装置とは物理的に離間した場所に設置された管理サーバとのデータ送受信を実施する通信装置と、
を備え、
前記の通信装置は、前記の温度データを時刻データとともに前記の管理サーバへ送信することとし、
前記の二次電池に蓄積された電気エネルギを交流に変換するためのインバータと、
前記のインバータにて変換された電気エネルギを前記の本体の外部にある交流機器に接続するためのコンセントと、
を備えた冷凍装置。
【請求項2】
前記の二次電池および前記の冷凍サイクル機器に含まれるコンプレッサおよびコンデンサは、前記の本体における前記の冷蔵室の下方へ配置した
請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記の冷蔵室は、垂直方向に複数個を独立させて備え、
前記の温度計は、前記の冷蔵室ごとにそれぞれ備え、
前記の温度制御装置は、各々の冷蔵室の内部温度を別々に制御可能とした
請求項1または請求項2のいずれかに記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記の本体における上面には、太陽光パネルを備え、
前記の太陽光パネルは、受光して得た電気エネルギを前記の二次電池へ供給することとした
請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項5】
前記の本体の位置データを取得するGPSと、
前記のGPSが取得した位置データを前記の時刻データとともに記録する経路データベースと、
を備え、
前記の通信装置は、前記の時刻データおよび前記の位置データを管理サーバへ送信することとした
請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項6】
前記の二次電池は、前記の本体に対して着脱可能とし、
前記の通信装置は、二次電池の残量データを取得して前記の管理サーバへ送信可能とした
請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項7】
輸送対象物を低温輸送するために輸送機器に搭載されて用いる冷凍装置、および管理サーバを用いた冷凍装置輸送システムであって、
前記の冷凍装置は、
垂直方向寸法が水平方向寸法よりも大きな箱状の本体と、
前記の本体における立面の一つである前面から輸送対象物を出し入れ可能な冷蔵室と、
前記の冷蔵室の内部空間を冷却する冷凍サイクル機器と、
前記の冷凍サイクル機器に対してエネルギを供給する二次電池と、
時刻データを取得する時計と、
冷蔵室の室内温度を測定する温度計と、
前記の温度計の測定結果である温度データを用いて前記の冷凍サイクル機器を制御する温度制御装置と、
当該冷凍装置とは物理的に離間した場所に設置された管理サーバとのデータ送受信を実施し、前記の温度データを時刻データとともに前記の管理サーバへ送信することとした通信装置と、
前記の二次電池に蓄積された電気エネルギを交流に変換するためのインバータと、
そのインバータにて変換された電気エネルギを前記の本体の外部にある交流機器に接続するためのコンセントと、
を備え、
前記の管理サーバは、
停電の発生を検知する停電検知手段と、
前記の停電検知手段が停電を検知した場合に、前記の位置データおよび前記の残量データを用いて前記の輸送機器による前記の冷凍装置の輸送先を前記の輸送機器ごとに判断する輸送先判断手段と、
前記の輸送先判断手段が判断した輸送先を、該当する輸送機器へ送信する輸送先指令手段と、を備え、
前記の輸送機器に搭載した前記の冷凍装置を非常用電源として用いることとした
冷凍装置輸送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池を電源とした冷蔵サイクルを内蔵した冷凍装置、およびその冷凍装置を用いた物流技術に関する。
【背景技術】
【0002】
物流における運搬する輸送方法は、非食品など低温にする必要がない「常温輸送」と、低温状態を保持したまま輸送する「低温輸送」に大別される。低温輸送は、更に摂氏零度前後の「チルド輸送」と、摂氏マイナス10度以下のような「冷凍輸送」とに分けられる。
【0003】
低温輸送物は、輸送を開始する出発地で低温にされ、輸送を終了する到達地までの輸送過程においても、できる限り低温を維持しながら輸送することが望まれる。
低温輸送を実行するため、現状では、出発地にて輸送物を低温にした状態をできる限り保ちながら目的地まで輸送する「保冷輸送」という方法と、輸送中における低温輸送物を冷却しながら輸送する「再冷輸送」という方法に大別することができる。
【0004】
保冷輸送は、輸送機器(例えばトラック)の貨物スペースを出発前に冷却した上で、貨物スペースを断熱材で囲ったり、貨物スペース(コンテナ)に保冷剤を入れたりすることで対応する。運送業者に要求される設備が再冷輸送よりも少なくて清むという利点があるが、低温輸送物に高度な品質、具体的には輸送時にも出発地で設定された温度を上げることなく目的地まで運ぶような高度な輸送が求められる場合には向かない。
【0005】
一方の再冷輸送は、輸送機器(例えばトラック)の貨物スペース(コンテナ)を断熱材で囲った上で、圧縮機(コンプレッサ)、凝縮器(コンデンサ)、蒸発器(エバポレータ)、冷媒配管などの冷却設備を輸送機器に搭載して、貨物スペースを冷却する。そうした冷却設備を必要とする分、運送業者に要求される設備が保冷輸送よりも大きいという欠点があるが、低温輸送物に高度な品質を求めることが可能である。
【0006】
さて、本願発明に関連する先行技術を調査するため、以下の検索式にて検索したところ、17件がヒットした。
[冷凍/CL+冷蔵/CL]*[バッテリ/CL+電池/CL]
その17件の中から、以下の2件を抽出した。
【0007】
特許文献1には、貨物自動車の冷凍車等において、エンジン停止中においても冷凍装置を作動可能とし、且つ、設置スペースの省スペース化を図る技術が開示されている。
【0008】
特許文献2には、冷凍庫(コンテナ)内が複数の室(K1,K2)に区画された冷凍車Cにおいて、搬送物(輸送物)の積載スペースを狭めることなく、それぞれ所望の温度で管理できる技術が開示されている。
【0009】
特許文献2の主要部を示す図1に基づいて、より具体的に説明する。
車両用冷凍装置1は、電動圧縮機を有するコンプレッサユニット21と、コンデンサユニット20とのそれぞれが各室K1,K2に対応して複数設けられてなる外部ユニットとしての冷凍機本体7と、荷室内の空気を冷却する内部ユニットとしてのエバポレータユニット10A,10Bを備え、各室のうち、1つの室K1には本体フレーム9を介して冷凍機本体7とエバポレータユニット10Aとが取り付けられ、他の室K2にはエバポレータユニット10Bが取り付けられている。この車両用冷凍装置1が、冷凍車両Cの冷凍コンテナKにける各室K1,K2を冷却するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第6574649号公報
【文献】特開2017-144932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1および特許文献2に開示された技術では、以下のような課題が依然として残っている。
すなわち、出発地にて低温輸送物を冷凍車の冷凍コンテナ(荷室)へ入れるまでの作業の際に、低温輸送物が外気にさらされる。同様に、目的地にて低温輸送物を降ろす作業の際に、低温輸送物が外気に晒される。
【0012】
出発地や目的地にて低温輸送物が外気にさらされる時間を短くするためには、出発地や目的地における保冷室と冷凍車両との間を運搬する際に、低温輸送物を保冷部材で覆う、または低温輸送物よりも一回り以上大きな保冷空間を備える機器(たとえば、低温輸送物を収納可能なクーラーボックス)に移し替える、という作業を必要とする。そうした移し替えの作業時にも外気に晒される。
【0013】
図2を用いて、物流業界全体の問題点を示すこととする。
たとえば、24時間営業のコンビニエンスストアには、商品の補充のために、常温輸送、チルド輸送、冷凍輸送の3種類が必要となる。常温輸送、チルド輸送、冷凍輸送のそれぞれは、常温での輸送が可能な商品を運ぶ常温便、チルド食品を運ぶチルド便、冷凍食品を運ぶ冷凍便の3種類のトラックが運搬することで成り立っている。
【0014】
常温便のトラックは、コンビニエンスストア(A)が必要とした商品を納品したら、コンビニエンスストア(B)が必要とする商品を納品しに移動する。同様に、チルド便のトラックも冷凍便のトラックも、各コンビニエンスストアを巡回して納品する。こうした輸送、納品の方法が採用されていることを主因として問題となっているのが、容積率を上げにくいという点である。
【0015】
また、三種類のトラックが必要となることから、三人のトラックドライバーが必要となっており、輸送に従事する輸送従事者の人件費、トラックという設備費、トラックが移動することに伴う消耗品代金としての燃料費などが掛かることとなる。運送業界の働き方改革が叫ばれている昨今、輸送従事者(トラックドライバー)が不足する問題は特に、喫緊に解決すべき課題である。
【0016】
図1に示した特許文献2の技術を用いれば、一台のトラックで複数の温度帯となる収納スペース(荷室)を構成することが可能である。具体的には、第1室(K1)を冷凍室となる温度帯に、第2室(K2)をチルド室となる温度帯に設定すれば、冷凍便とチルド便とを兼ねたトラックとすることができる。
【0017】
しかし、荷下ろしの度に第1室、第2室の扉を開けて商品を卸す、という作業をすることとなる。すると、荷下ろし作業の度に、第1室や第2室に外気が入り込んで室内温度が上昇することとなり、次の輸送地までに室内温度を下げるため、大きなエネルギを必要とすることとなってしまう。
【0018】
本発明が解決しようとする課題は、低温運送に関して、省エネルギで輸送の効率化に寄与する冷凍装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(第一の発明)
第一の発明は、輸送対象物を低温輸送するために輸送機器(例えば輸送車両60)に搭載されて用いる冷凍装置に係る。
すなわち、垂直方向寸法が水平方向寸法よりも大きな箱状の本体(10)と、
その本体(10)における立面の一つである前面から輸送対象物を出し入れ可能な冷蔵室(15,16)と、
その冷蔵室(15,16)の内部空間を冷却する冷凍サイクル機器(40)と、
その冷凍サイクル機器(40)に対してエネルギを供給する二次電池(30)と、
時刻データを取得する時計と、
冷蔵室の室内温度を測定する温度計(22.23)と、
前記の温度計(22.23)の測定結果である温度データを用いて前記の冷凍サイクル機器(40)を制御する温度制御装置(21)と、
当該冷凍装置とは物理的に離間した場所に設置された管理サーバ(50)とのデータ送受信を実施する通信装置(29)と、を備える(図4図11図15参照)。
前記の通信装置(29)は、前記の温度データを時刻データとともに前記の管理サーバ(50)へ送信する。
【0020】
(用語説明)
「輸送機器」とは、例えばトラックなどの輸送車両(60)が代表的であるが、船舶、航空機、鉄道車両なども含む。
輸送機器に対する本体(10)の出し入れを容易にするため、その本体(10)の底面に固定して本体(10)を移動可能とする移動機器(たとえば、キャスター19)を備えることが望ましい。
【0021】
「冷蔵室(15,16)」とは、内部空間が常温よりも低い温度となる開閉可能な部屋であり、零度未満の温度にすることも可能である。
【0022】
「冷凍サイクル機器(40)」とは、冷却対象(例えば冷蔵室の内部空気)との熱交換を終えて温まった冷媒を圧縮するコンプレッサ(圧縮機41)、そのコンプレッサ(41)によって圧縮された冷媒を放熱させるコンデンサ(凝縮器44)、冷媒を循環させる冷媒管(42)を含む(図5図6参照)。
【0023】
「二次電池(30)」とは、放電および充電を繰り返すことが可能な電池である。たとえば、リン酸鉄リチウム電池、ニッケル水素電池などが採用可能である。リン酸鉄リチウムイオンを採用した二次電池は、耐熱性と耐火性に優れ、熱暴走が発生しにくいとされている。後述する実施形態においては、二次電池としてリン酸鉄リチウムイオンバッテリを採用している。
【0024】
(作用)
輸送対象物を冷蔵室(15,16)に収納する。続いて、移動機器(19)を用いて、本体(10)を移動させて輸送機器(60)へ搭載する。その輸送機器(60)が輸送対象物の目的地まで移動する。
輸送機器(60)が輸送対象物を目的地まで輸送する時間帯において、温度計(22.23)の温度データに基づいて冷蔵室(15,16)の室内温度が上昇したら、温度制御装置(21)が二次電池(30)からの電気エネルギを用いて冷凍サイクル機器(40)を作動させ、室内温度を下げることができる。本願に係る冷却する対象となる冷蔵室(15,16)を、輸送機器の荷室の内部全体を冷却しなければならない仕切り式冷凍車両(図3)と比較すると極めて小さいので、従来の冷凍車両よりもエネルギ消費が小さくて済む。
【0025】
通信装置(29)は、温度データを時刻データとともに管理サーバ(50)へ送信する。冷凍サイクル機器(40)とは物理的に離間した場所に設置されている管理サーバ(50)において、冷蔵室(15,16)の室内温度状態を把握することができる。
【0026】
(第一の発明のバリエーション1)
第一の発明は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、 前記の二次電池(30)および前記の冷凍サイクル機器(40)に含まれるコンプレッサ(41)およびコンデンサ(44)は、前記の本体(10)における前記の冷蔵室の下方へ配置するのである(図15参照)。
冷凍サイクル機器(40)の中でも上下寸法の大きな機器類を本体(10)の下部に配置すれば、重心位置を更に低くすることができる(図21図23図24参照)。
【0027】
なお、「コンプレッサ(41)およびコンデンサ(44)」について、「本体(10)における冷蔵室(15,16)の上方へ配置」した場合(図4参照)には、冷凍サイクル機器(40)の中でも上下寸法の大きな機器類が冷蔵室(15,16)の上方に配置されることで、冷蔵室(15,16)の使い勝手が向上する(図13参照)。
なお、輸送対象物を冷蔵室(15,16)に積んだ場合に、より低い値となるように冷蔵室(15,16)の下から積載することが望ましい。
【0028】
(第一の発明のバリエーション2)
第一の発明は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、 前記の冷蔵室(15,16)は、垂直方向に複数個を独立させて備え、
前記の温度計は、前記の冷蔵室ごとにそれぞれ備え、
前記の温度制御装置(21)は、各々の冷蔵室(15,16)の内部温度を別々に制御可能とする(図11参照)。
【0029】
(作用)
冷蔵室(15,16)は、複数個が垂直方向に独立して存在する。そのため、輸送対象物が多かったり少なかったりしても、水平方向において左右や前後に偏る可能性を低めることができる。
また、各々の冷蔵室(15,16)は、その内部温度を別々に設定可能であるので、例えば、一つを摂氏零度前後に設定し、摂氏マイナス10度以下に設定すれば、「チルド輸送」と「冷凍輸送」とを一つの冷凍装置にて実現できることとなる。輸送従事者の数を減らすことに貢献する可能性も高い。
【0030】
(第一の発明のバリエーション3)
第一の発明は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、前記の本体における上面には、太陽光パネル(49)を備え、
前記の太陽光パネル(49)は、受光して得た電気エネルギを前記の二次電池(30)へ供給することとするのである(図16参照)。
【0031】
(作用)
太陽光パネル(49)が受光して得た電気エネルギは、二次電池(30)へ供給(充電)することができる。
【0032】
なお、二次電池(30)や太陽光パネル(49)が受光して得た電気エネルギを、冷凍サイクル機器(40)以外の機器に電気エネルギを提供可能とすることは、当然可能である。「冷凍サイクル機器(40)以外の機器」とは、たとえば、本体(10)に取り付けられて本体(10)の外へ光を照射する非常用ライト(39)(図4図11参照)や、本体(10)とは無関係なスマートフォンなどである。たとえば、停電が発生した際に、本願に係る冷凍装置は、非常用電源として機能することとなる。
【0033】
(第一の発明のバリエーション4)
第一の発明は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、 前記の本体(10)の位置データを取得するGPS(Global Position System 27)と、
前記のGPS(27)が取得した位置データを前記の時刻データとともに記録する経路データベース(28)と、を備え、
前記の通信装置(29)は、前記の時刻データおよび位置データを管理サーバ(50)へ送信することとするのである(図11参照)。
【0034】
(作用)
温度データベース(25,26)および経路データベース(28)に蓄積されたデータは、通信装置(29)が外部の管理サーバ(50)へ送信可能である。したがって、輸送対象物のトレーサビリティが輸送中に求められたとしても、管理サーバ(50)において出力することができる。
【0035】
(第一の発明のバリエーション5)
第一の発明は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、前記の二次電池(30)は、前記の本体(10)に対して着脱可能とし、
前記の通信装置(29)は、二次電池(30)の残量データを取得して外部の管理サーバ(50)へ送信可能とするのである(図11参照)。
【0036】
(作用)
外部の管理サーバ(50)は、通信装置(29)を介して二次電池(30)の残量データを取得することができる。
二次電池(30)は本体(10)に対して着脱可能なので、残量データに基づいて残量の少なくなった二次電池(30)を交換することができる。
【0037】
(第一の発明のバリエーション6)
第一の発明は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、前記の二次電池(30)に蓄積された電気エネルギを交流に変換するためのインバータ(48)と、
そのインバータ(48)にて変換された電気エネルギを前記の本体の外部機器に接続するためのコンセント(35)と、
を備えるのである(図26参照)。
【0038】
(作用)
インバータ(48)およびコンセント(35)を備えているので、本体(10)の二次電池(30)を非常用電源として簡易に使用することができる。
【0039】
(第二の発明)
第二の発明は、輸送対象物を低温輸送するために輸送機器(例えば輸送車両60)に搭載されて用いる冷凍装置を制御するコンピュータプログラムに係る。
前記の冷凍装置は、垂直方向寸法が水平方向寸法よりも大きな箱状の本体(10)と、
前記の本体(10)における立面の一つである前面から輸送対象物を出し入れ可能であるような冷蔵室(15,16)と、
その冷蔵室(15,16)の内部空間を冷却する冷凍サイクル機器(40)と、
その冷凍サイクル機器(40)に対してエネルギを供給する二次電池(30)と、
時刻データを取得する時計と、
当該冷凍装置とは物理的に離間した場所に設置された管理サーバ(50)とのデータ送受信を実施する通信装置(29)と、
前記の冷蔵室(15,16)の室内温度を測定する温度計(22,23)と、
前記の冷凍サイクル機器(40)の作動を制御する温度制御装置(21)と
を備える。
前記のコンピュータプログラムは、
各冷蔵室(15,16)の室内温度を設定して記憶させる設定温度記憶手順と、
前記の温度計(22,23)にて測定された結果を受信する温度受信手順と、
受信した温度および前記の設定温度記憶手順にて記憶された室内温度を比較して前記の冷凍サイクル機器(40)を作動させる必要性を判断する作動判断手順と、
その作動判断手順によって作動が必要と判断された場合に前記の冷凍サイクル機器(40)を作動させる作動命令手順と、
冷凍サイクル機器(40)を作動後の温度を受信する作動温度受信手順と、
受信した作動後の温度に基づいて前記の冷凍サイクル機器(40)の作動を停止させる必要性を判断する停止判断手順と、
その停止判断手順によって作動停止が必要と判断された場合に前記の冷凍サイクル機器(40)の作動を停止させる停止命令手順と、
を前記の温度制御装置(21)に実行させる。
加えて、前記の温度データを時刻データとともに前記の管理サーバ(50)へ送信するデータ送信手順を前記の通信装置(29)に実行させることとしたコンピュータプログラムである(図11参照)。
【0040】
(第二の発明のバリエーション1)
第二の発明は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、前記の本体(10)には、本体(10)の位置データを取得するGPS(27)を備え、
そのGPS(27)が取得した位置データを時刻データとともに取得する位置データ取得手順を
前記の温度制御装置(21)に実行させることとしたコンピュータプログラムとするのである。
【0041】
(第二の発明のバリエーション2)
第二の発明におけるバリエーション1は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、前記の本体(10)には、外部の管理サーバ(50)と通信可能な通信装置(29)を備え、
その通信装置(29)に対して、前記のGPS(27)が取得した位置データを時刻データとともに所定間隔毎に前記の管理サーバ(50)へ送信させるようにしたコンピュータプログラムとするのである。
【0042】
(第二の発明のバリエーション3)
第二の発明におけるバリエーション2は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、前記の位置データとともに、各冷蔵室(15,16)の室内温度を前記の管理サーバ(50)へ送信させるようにしたコンピュータプログラムとするのである。
【0043】
第二の発明に係るコンピュータプログラムは、冷凍機器の制御装置に備えられた演算装置としてのCPU、無線通信またはシリアル通信などによってデータを入力するデータ入力装置、演算の対象となるデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリ、データ格納のための不揮発性メモリ(たとえば、ハードディスクドライブ)などを用いて実行される。
【0044】
第二の発明に係るコンピュータプログラムを、記録媒体へ記憶させて提供することもできる。
ここで、「記録媒体」とは、それ自身では空間を占有し得ないプログラムを担持することができる媒体である。例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-R、CD-RW、MO(光磁気ディスク)、DVD-R、DVD-RW、フラッシュメモリなどである。
また、この発明に係るプログラムを格納したコンピュータから、通信回線を通じて他の端末手段へ伝送することも可能である。
【発明の効果】
【0045】
第一によれば、低温運送に関して、省エネルギで輸送の効率化に寄与する冷凍装置を提供することができた。
第二の発明によれば、低温運送に関して、省エネルギで輸送の効率化に寄与する冷凍装置を制御する制御用のコンピュータプログラムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】特開2017-144932号の公報から引用した図である。
図2】コンビニエンスストアを巡る輸送システムの問題点を示す概念図である。
図3】仕切り式冷凍車両における問題点を示すための透視斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る冷凍装置の斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る冷凍装置の概略側面図である。
図6】本発明の実施形態に係る冷凍装置に用いる冷凍サイクル機器を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る冷凍装置について、重心位置を示す側面図である。
図8】本発明の実施形態に係る冷凍装置について、重心位置を示す正面図である。
図9】本発明の実施形態に係る冷凍装置に用いる二次電池を示す斜視図である。
図10】本発明の実施形態に係る冷凍装置に用いる上部裏パネルを示す斜視図である。
図11】本発明の実施形態に係る冷凍装置について、制御装置を示す概念図である。
図12】冷凍サイクルの制御手順を示すフローチャートである。
図13】本発明の実施形態に係る冷凍装置を二つ並列させた状態を示す斜視図である。
図14】本発明の実施形態に係る冷凍装置を二つ並列させた状態で、輸送車両の荷室に納めた状態を示す図である。
図15】本発明の第二の実施形態に係る冷凍装置の概略斜視図である。
図16】本発明の第二の実施形態に係る冷凍装置の上平面図および側面図である。
図17】本発明の第二の実施形態に係る冷凍装置の一部であって、図16に示したA-A断面から下方を見た平面図である。
図18】本発明の第二の実施形態に係る冷凍装置の一部であって、図16に示したB-B断面から右方向を見た側面図である。
図19】本発明の第二の実施形態に係る冷凍装置において、上下の冷蔵室が冷却される様子を示す図である。
図20】本発明の第二の実施形態に係る冷凍装置において、輸送物の積載時および未積載時における重心位置を示す図である。
図21】本発明に用いる冷凍サイクル機器の一例を示す斜視図である。
図22】本発明の第三の実施形態に係る冷凍装置の側面図である。
図23】本発明の第三の実施形態に係る冷凍装置において、輸送物の積載時および未積載時における重心位置を示す図である。
図24】本発明の第四の実施形態に係る冷凍装置において、輸送物の積載時および未積載時における重心位置を示す図である
図25】本発明に係る冷凍装置を輸送車両に積載させて輸送対象物を運ぶ荷物管理者が、冷凍装置の状態を把握するためのデータ収集をどのように実施するかを示す概念図である。
図26】本発明に係る冷凍装置に搭載するインバータを示す斜視図である。
図27】本発明に係る冷凍装置を搭載した輸送車両が物流を実施している様子を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。ここで使用する図面は、図4から図27である。
図4から図10は、第一の実施形態に係る冷凍装置を示す。図15から図20は、第二の実施形態に係る冷凍装置を示す。図22から図23は、第三の実施形態に係る冷凍装置を示す。図24は、第四の実施形態に係る冷凍装置を示す。
【0048】
図4
図4は、本発明の実施形態に係る冷凍装置を示す斜視図である。この冷凍装置は、輸送対象物を低温輸送するために輸送機器、例えば輸送車両60に搭載されて用いる(図12参照)。
この冷凍装置は、垂直方向寸法が水平方向寸法よりも大きな箱状の本体10と、 その本体10の底面に固定して本体10を移動可能とするキャスター19と、 前記の本体10における立面の一つである前面から輸送対象物を出し入れ可能な2つの冷蔵室15,16と、 その冷蔵室15,16の内部空間を冷却する冷凍サイクル機器40(図4では図示を省略)と、 その冷凍サイクル機器40に対してエネルギを供給する二次電池30と、を備える。
【0049】
本体10の寸法は、高さ2000ミリメートル、幅1100ミリメートル、奥行き950ミリメートルとしている。そして、上下の冷蔵室15,16の境目の高さは800ミリメートルである。この高さは、輸送対象物を冷蔵室15,16から出し入れするのに容易である。
【0050】
二次電池30および冷凍サイクル機器40の主要部品は、前記の本体10における冷蔵室15,16の上方へ配置している。具体的には、上端から320ミリメートルの空間に、電池用スペース13およびコンプレッサ等用スペース14を設け、それらに配置固定するようにしている。そして、二次電池30および冷凍サイクル機器40を配置した部位は、上部前パネル11および上部後パネル12によって囲まれている。
【0051】
上部前パネル11および上部後パネル12とも、冷凍サイクル機器40などから発生する熱を逃がす必要がある。そのため、上部前パネル11はパンチングメタルとしており、上部後パネル12はルーバーを備えている。上部後パネル12については、図11を用いて後述する。
上部前パネル11における右上部には、非常用ライト39が備えられており、二次電池30と接続されている。非常用ライト39は、LEDであり、夜間や非常時などに点灯させることができる。
【0052】
(二次電池30)
電池用スペース13には、本体10に対して着脱可能な二次電池30が備えられる。この二次電池30は、リン酸鉄リチウム電池であり、定格電圧24V、定格容量400Ahである。気温や輸送車両の状態などの条件によっても異なるが、常温での輸送車両における走行時間が約8時間であっても冷凍便として機能できる容量となっている。
【0053】
二次電池30は、冷凍サイクル機器40を作動させる際に放電するが、外部電源からの充電時において冷凍サイクル機器40を作動させる場合、二次電池30からの放電は実施しないように設定されている。また、外部電源からの充電時であっても、充電が完了した場合(満充電となった際)には、更なる充電(過充電)が実施されないように設定されている。
【0054】
外部からの充電のため、定格使用周波数50Hz,60Hzの双方に対応する交流100ボルト用の電源コード(長さ3メートル)がコンセントボックス35に収納されている。また、コンセントボックス35には、二次電池30からの放電が可能な給電コンセントを2つ用意してある。
【0055】
(冷蔵室)
上冷蔵室15、下冷蔵室16とも、476.5リットルの内部空間をなす。2つで953リットルであり、これは本体10が占める占有体積に対して48.3%となる。
設定温度が摂氏8度からマイナス20度の範囲で調節可能であり、2つの冷蔵室15,16は独立した温度設定が可能となっている。冷蔵や冷凍の食品類が輸送対象物となることが多いため、ステンレス製の真空断熱パネルを使用して構成して保温力および容積率を高めている。ステンレスとしては、食品産業規格に合わせたSUS-304を採用している。このため、無臭であり、錆や自己変質を発生しにくい。
【0056】
図5
図5には、本体10を側面から見た状態を示している。上冷蔵室15、下冷蔵室16ともに、その内部空間の奥側に、エバポレータ43,43を固定してある。そして、そのエバポレータ43,43から冷蔵室15,16の外側へ冷媒管42が、コンプレッサ等用スペース14へ延びている。
【0057】
なお、冷媒管42の中を循環する冷媒には、R404Aを採用している。ここで、「R404A」とは、低~中温度域に対する業務用冷凍機器に使用されているR-502およびR-22代替冷媒として開発されたR-125、R-134a、R-143aの3成分からなる擬似共沸混合冷媒である。
【0058】
なお、想像線にて、フォークリフト爪挿入部18を描いているが、フォークリフト重量や各種性能によっては本体10を持ち運ぶことが困難である。よって、本体10を持ち運べる性能を備えたフォークリフトを準備できない現場で採用される場合は、フォークリフト爪挿入部18を省略することとしている。
【0059】
図6
図6では、主に冷凍サイクル機器40を説明している。
コンプレッサ等用スペース14において、前側からコンデンサ44,コンプレッサ41,ドライヤー46,気液分離機45などを二組配置している。二組なのは、冷蔵室15,16の内部空間を、それぞれ独立した調整温度に設定するためである。コンプレッサ41は、400ワットのローターコンプレッサを採用した。
【0060】
冷媒管42やエバポレータ43以外の冷凍サイクル機器40は、一般の冷蔵庫では下部の奥側へ配置している。これは、冷凍サイクル機器40が比較的重い部品であるためである。
しかし、本実施形態に係る冷凍装置では、本体10の上部に設置している。これは、本体10の全体寸法や重量(約200kg)、2つの冷蔵室15,16の大きさ、材質、使い勝手など,様々な要素を考慮した結果として決定したものである。
【0061】
図7図8
本体10の重心位置は、冷蔵室15,16が空の状態において、グランドラインから1070ミリメートルの位置にある。垂直方向寸法に対して60%以下(53.5%)となっている。
本発明に係る冷凍装置は、輸送機器60に積載させて使用することを前提としている。そのため、輸送機器60に対する積み卸し作業、輸送機器60に積載させた状態での輸送対象物の出し入れ作業などから本体10の垂直方向寸法、幅寸法、奥行き寸法を決定している。
【0062】
キャスター19は、本体10の下面に4つ備えられており、それぞれが1トンの荷重に耐えられるものを採用している。また、前側に配置するキャスター19にはロック機構が備えてある。このキャスター19のロック機構をフリー状態にして本体10を移動させようとする場合、重心位置が高さ1070ミリ付近にあるのは、作業者として扱いやすい。重心高さ付近を押すことで移動させることができる上、転倒のおそれが小さいからである。
なお、冷蔵室15,16に輸送対象物が収納されると、ほぼ全ての場合で重心は更に下がる。冷蔵室15,16の内部空間の底面は、いずれも重心位置よりも低いからである。
【0063】
図9
図9は、二次電池30の斜視図である。
概ね直方体をなしており、奥側面に2つのバッテリ端子31、上面に取っ手32を備える。本体正面板33の上面には図示を省略したレールがあり、前側からスライドさせて挿入し、本体正面板33の奥側端部に固定されている電池支持L字板34までスライドさせたら固定する。
【0064】
図10
図10(a)は上部後パネル12の斜視図、図10(b)は上部後パネル12の内側に固定されたコンセントボックス35を内側から見た斜視図である。
【0065】
水平方向には、ルーバー12Aを設けており、コンプレッサ等用スペース14にて発生する熱がこもらないようにしている。
非常用ライト39は、二次電池30からの給電によって点灯する。
コンセントボックス35には、二次電池30から給電を受ける外部機器を接続するための端子を備えている。
【0066】
図11
図11は、小型の輸送車両60の荷室61に、前述してきた冷凍装置本体10A,10Bを搭載した場合に、それぞれの冷蔵室を制御するための情報処理手段を概念的に示している。なお、冷凍装置本体10A,10Bの並び方は荷室61の寸法や開け方構造に依存している。この図では、荷室61の左に荷室61を開閉するための扉がある場合である(図14とは異なる)。
【0067】
冷凍装置本体10A,10Bのそれぞれに、独立して制御装置20、二次電池30、冷凍サイクル機器40が備えられている。この図では、冷凍装置本体10Bの制御装置20を図示しているが、冷凍装置本体10Aも同じである。
【0068】
上冷蔵室15の内部空間の気温を測定する上室温度計22、下冷蔵室16の内部空間の気温を測定する下室温度計23は、それぞれ測定結果を管理データベース24内の上室温度データベース25、下室温度データベース26へ、時刻データとともに蓄積する。
【0069】
上室温度計22、下室温度計23とも、温度制御装置21に測定温度のデータを送信している。温度制御装置21は、予め、それぞれ設定された温度を、図示を省略した記憶装置に記録している。そして、設定された温度の上限に達したら、冷凍サイクル機器40を指導させる命令信号を発信する。
【0070】
冷凍装置本体10A,10Bのそれぞれには、GPS27が備えられている。そのGPS27が取得する位置データは、管理データベース24の経路データベース28へ、時刻データとともに定期的に記録される。
輸送車両60にGPSが搭載されていたとしても、冷凍装置本体10A,10Bをそれぞれ別の場所で下ろしたり、回収したりする場合には、それぞれの位置データを把握できない。そのような場合に対応できるようにするためである。
【0071】
温度制御装置21は、二次電池30の状態を知るためのデータ(たとえば、バッテリ残量)を受信することができる。また、そのデータを受信することで二次電池30に対する命令信号(たとえば、節電モードへの切替命令)を発信することもできる。
【0072】
管理データベース24内のデータは、通信装置29を介して、外部の管理サーバ50へ定期的に送信される。すなわち、管理サーバ50においては、冷蔵室15,16の室内温度データおよび位置データを時刻データとともに把握できる。そのため、輸送対象物のトレーサビリティに必要なデータを取得できる。
【0073】
図12
図12は、冷蔵室15,16の室内温度を管理する手順を示すフローチャートである。
【0074】
まず、輸送対象物に応じた各冷蔵室の温度を設定する(S1)。たとえば、マイナス10度というように設定する場合のほか、上限値および下限値(たとえば、マイナス2度からマイナス10度)を設定する場合がある。前者では、冷凍サイクルが作動すべき上限値や冷凍サイクルを停止させるべき下限値を自動的に決定する。
【0075】
輸送対象物が各冷蔵室に入れられたら、各冷蔵室の温度の測定を定期的に(たとえば3分ごと)開始する(S2)。
【0076】
測定された温度が、冷凍サイクルの作動を必要とする温度であるか否か判断される(S3)。必要ない温度である場合には、定期的な温度測定(S2)に戻る。
【0077】
冷凍サイクルの作動を必要とする温度となった場合には、冷凍サイクルの作動を開始させる(S4)。そして、作動させた冷蔵室の温度を定期的に測定する(S5)。
【0078】
測定された温度が、冷凍サイクルの作動を停止させるべき温度であるか否か判断される(S6)。停止が必要ない温度である場合には、定期的な温度測定(S5)に戻る。
【0079】
測定された温度が、冷凍サイクルの作動を停止させるべき温度となった場合には、冷凍サイクルの作動を停止させる(S7)。そして、定期的な温度測定(S2)に戻る。
【0080】
図13
図13では、図10までで説明した冷凍装置本体10A,10Bを二つ並列させた状態を示している。身長が約170センチメートルの作業者をも図示することで、スケール感を描いている。
【0081】
作業者としては、上冷蔵室15および下冷蔵室16の開閉や、輸送対象物の出し入れといった作業をするのに、使い勝手が良い。もし、コンプレッサ等用スペース14が本体の下部に設けられていたら、上冷蔵室15の開閉や輸送対象物の出し入れがしにくくなる。
【0082】
図14
図14では、冷凍装置本体10A,10Bを二つ並列させ、冷蔵や冷凍の設備がない輸送車両60の荷室61へ積載させた状態を示している。冷凍装置本体10A,10Bの二つを積載させた状態と例示したのであるが、一つでも構わない。
【0083】
冷凍装置本体10は、それぞれ独立した温度設定が可能な上冷蔵室15および下冷蔵室16を備えているので、上冷蔵室15をチルド温度に、下冷蔵室16を冷凍温度にそれぞれ設定すれば、冷蔵や冷凍の設備がない輸送車両60であっても、常温便、チルド便、冷凍便の3種類を兼用できることとなる。このため、輸送車両60の容積率を効率化したり、輸送車両60の数抑制に貢献したりできる。
【0084】
輸送対象物が占める容積が他の輸送対象物に比べて小さい上に温度管理に厳密さが求められる輸送対象物、たとえば医薬品などの輸送に、本発明に係る冷凍装置は適している。自らに冷却機能を備えているが、冷却対象となる冷蔵室15,16の容積は輸送対象物を収納できるものの比較的小さいので、エネルギ効率が良いからである。
【0085】
図15
図15は、第二の実施形態に係る冷凍装置を示している。第一の相違点は、冷凍サイクル機器40や二次電池30を配置した場所である。第一の実施形態に係る冷凍装置では、本体10の上部に設置したが、第二の実施形態に係る冷凍装置では、下冷蔵室16の下方としている。第一の実施形態よりも重心位置を下げられる、というメリットがある。
【0086】
第二の相違点は、冷凍サイクル機器40による冷蔵室15,16の冷却方式である。第一の実施形態に係る冷凍サイクル機器40では、冷蔵室15,16の室内に配したエバポレータ43によって冷蔵室内の空気を冷却する方式であった。第二の実施形態では、冷蔵室15,16の壁面に接触させるように配した冷媒管42によって冷蔵室内の空気を冷却する方式を採用している。第一の実施形態よりも冷蔵室における収納空間の自由度を確保しやすく(図19にて詳述)、輸送対象物に霜がつきにくいというメリットがある。
なお、冷媒管42は、図示しているように蛇行曲線状をなす部位を設けている。そのため、輸送車両60からの振動に対しても破損などのトラブルが生じにくい。
【0087】
冷凍サイクル機器40や二次電池30を下冷蔵室16の下方に配置したことで、下部の側面にルーバーを配置している。冷凍サイクル機器40が作動することによって発生する廃熱を、本体10の外へ逃がすためである。
【0088】
図16
図16(a)では、第一の実施形態では採用しなかった太陽光パネル49を、天井板に代えて備えた状態を示している。
【0089】
太陽光パネル49は、受光して得た電気エネルギを前記の通信装置29および二次電池30へ供給することとしている。冷凍サイクル機器40を稼動させる電気エネルギを賄うのは、発電量が大きくないので厳しいが、通信機器29がデータを送受信したり、非常用ライト39を点灯させたりする程度の電気エネルギであれば、比較的短時間の受光でも実用的に足る。
【0090】
図16(b)では、本体10を正面から見た図であって、図17にて示すA-A、図18にて示すB-Bの位置を示している。本体10の正面上部には、非常用ライト39が備えられている。
【0091】
図17
図17(a)では、冷凍サイクル機器40、インバータ48を含む制御ボックスおよび二次電池30が配置されている様子を示している。
図17(b)では、冷凍サイクル機器40および二次電池30が配置される内部空間を上から見た状態および寸法を示している。
【0092】
図18
図18では、第二の実施形態に係る冷凍装置の主要部が上から順に、太陽光パネル49、上冷蔵室15、下冷蔵室16、冷凍サイクル機器40と配置されている様子が示されている。
【0093】
図19
図19は、第二の実施形態における冷凍サイクル機器40が冷蔵室15,16をどのように冷却するかを示している。
【0094】
第二の実施形態は、図15に示したように、冷蔵室15,16の外壁面に接触させるように配した冷媒管42によって冷蔵室15,16内の空気を冷却する方式である。冷却された空気に偏りがないように、冷蔵室15,16の内部空間の上部には、循環用ファン47を配置している。循環用ファン47は、図示しているように冷蔵室15,16の内部空間の空気をかき回し、室内の温度が一定となるように機能する。
【0095】
循環用ファン47は内部空間の上部に配置されているので、エバポレータ43が配置されている低温輸送物を収納しやすい。収納対象は、冷蔵室15,16内の底面を必ず使うため、奥行き方向の寸法を狭めてしまうエバポレータ43よりも、デッドスペースとなりやすい内部空間の上部に配置される循環用ファン47の方が、冷蔵室における収納空間の自由度を確保しやすいのである。
【0096】
図20
図20(a)は、第二の実施形態における冷蔵室15,16へ低温輸送物を収納した場合の重心位置を示している。
高さ2000ミリメートルに対して、重心の高さは、769ミリメートルであり、40%以下となる。
【0097】
図20(b)は、第二の実施形態における冷蔵室15,16へ低温輸送物を収納していない場合の重心位置を示している。
高さ2000ミリメートルに対して、重心の高さは、1067ミリメートルであり、55%以下となる。
【0098】
図21
図21には、第二の実施形態にて採用した冷凍サイクル機器40の主要部を示している。
コンプレッサ41に接続される配管においては、XYZ方向の振動を吸収できるジグザグ曲線状をなす部位を、吸気管および排気管のいずれにも採用している。そのため、コンプレッサ41自らが発生させる振動の他、輸送車両60からの振動に対しても破損などのトラブルが生じにくい。
なお、図示は省略しているが、振動吸収ゴム(防振ゴム)なども、コンプレッサ41や冷媒管42の固定する際に適宜用いている。
【0099】
図22
図22は、冷蔵室(中央冷蔵室17)が一つしかない冷凍装置に係る第三の実施形態を示している。
高さ方向寸法は2000ミリメートルであり、第一および第二の実施形態と同じである。しかし、中央冷蔵室17の高さは、1245ミリメートルとしており、高さ方向寸法を第一および第二の実施形態よりも大きくしている。
【0100】
図23
図23(a)は、第三の実施形態における中央冷蔵室17へ低温輸送物を収納した場合の重心位置を示している。
高さ2000ミリメートルに対して、重心の高さは、756ミリメートルであり、40%以下となる。
【0101】
図23(b)は、第三の実施形態における中央冷蔵室17へ低温輸送物を収納していない場合の重心位置を示している。
高さ2000ミリメートルに対して、重心の高さは、1061ミリメートルであり、55%以下となる。
【0102】
図24
図24は、第四の実施形態に係る冷凍装置であり、第三の実施形態における本体の高さ方向寸法を1700ミリメートルに変更したものである。冷蔵室(中央冷蔵室17)が一つしかない点は、第三の実施形態と同じである。
【0103】
図24(a)は、第四の実施形態における中央冷蔵室17へ低温輸送物を収納した場合の重心位置を示している。
高さ1700ミリメートルに対して、重心の高さは、658ミリメートルであり、40%以下となる。
【0104】
図24(b)は、第四の実施形態における中央冷蔵室17へ低温輸送物を収納していない場合の重心位置を示している。
高さ1700ミリメートルに対して、重心の高さは、871ミリメートルであり、55%以下となる。
【0105】
図25
図25は、本発明に係る冷凍装置10に低温輸送物を収納し、その冷凍装置10を搭載した輸送車両60にて荷物の運搬を依頼した荷物依頼者が低温郵送物のトレーサビリティをチェックするため、どのようにデータを取得しているか、を示している。
【0106】
図25(a)は、冷凍装置本体10から管理サーバ50が各種データを取得して蓄積し、荷物依頼者は自らに係る端末70にて管理サーバ50へアクセスすることによって、運搬を依頼した荷物の状態をチェックする場合を示している。
【0107】
図25(b)では、冷凍装置本体10から管理サーバ50が各種データを取得して蓄積するものの、荷物依頼者は自らに係る端末70にて管理サーバ50へアクセスすることなく、冷凍装置本体10へ直接アクセスし、運搬を依頼した荷物の状態をチェックする場合を示している。
【0108】
図25(a)、図25(b)いずれの場合であっても、荷物管理者は、管理サーバ50の運営主体から与えられたIDと、自らが設定したパスワードとを用いて、必要なデータを取得し、運搬を依頼した荷物のトレースをすることができる。冷凍装置本体10は、冷蔵室毎の温度データ、位置データを時間データとともに取得しているので、荷物依頼者は必要なデータを取得し、地図データへプロットすることでトレーサビリティを確保することができる。
【0109】
なお、二次電池30の残量データは、管理サーバ50にて取得できるので、その残量では荷物の配達地までに必要な冷却ができない、といった事態を予想することができる。そのような場合、管理サーバ50の管理者から輸送車両60のドライバーへ連絡し、着脱自在な二次電池30を充電済みの新たな二次電池30に交換し、荷物の配達地までに必要な冷却を確保する。
【0110】
図26
図26(a)は、二次電池30の電気エネルギを110ボルトの交流に変換するインバータ48の位置を示す斜視図である。
図26(b)は、インバータ48を介して変換された交流電源として冷凍装置本体10を使用することができる。インバータ48が位置する冷凍装置本体10の外側には、コンセントボックス35を備えることで、100Vの交流で用いる各種の電気機器のコンセントを接続できる。
【0111】
インバータ48およびコンセントボックス35を備えているので、停電時などには冷凍装置本体10の二次電池30を100Vの交流で用いる電気機器に対して非常用電源として使用することができる。たとえば、1150Wの使用電力のエアコンであれば、8.3時間駆動させることができる。使用電力が18Wであるスマートフォン充電であれば、533時間の使用が可能である。
【0112】
災害時に広域停電が発生したとする。その場合、輸送車両60に冷凍装置本体10を積載して、停電が発生している施設(例えば、病院)まで輸送車両60を運転する。そして、冷凍装置本体10を輸送車両60から下ろし、キャスター19を用いて施設の建物内へ運び込んだ上で、二次電池30を非常用電源として使用することができる。施設の建物内へ運び込むことができない電気自動車に比べて、非常電源としての使い勝手が良い。
【0113】
ところで、小売業などの店舗において、非常用電源としての単独の目的で二次電池を保有するのは、設置・保管場所を大きく取る必要がある。また、非常用電源として二次電池を保有できたとしても、二次電池は自然放電してしまうため、維持管理をしなければならない。維持管理を怠ると、実際の停電時に使用したいとしても、非常用電源として機能しないこととなる。
【0114】
図27
図27には、冷凍品やチルド品などを輸送するために、本実施形態に係る冷凍装置本体10を搭載した輸送車両60A,60B,60Cが、物流拠点80からA店舗81やB店舗82へ商品を運搬している様子を示している。より具体的には、物流拠点80を出発した輸送車両AがA店舗81へ向かっており、輸送車両BがB店舗82へ向かっており、配送を終えた輸送車両Cが物流拠点80へ戻ろうとしている状態を示している。また、物流拠点80では、フル充電を終えた二次電池30を搭載した冷凍装置本体10を積み込んだ待機車両60Dが、次の配送の準備をしている。
【0115】
時間経過とともに、輸送車両60A,60B,60Cは配送を終えて次の輸送地へ向かったり、物流拠点80へ戻ったりすることとなる。物流拠点80に戻ったら、輸送車両60に搭載していた冷凍装置本体10の二次電池30を、予め物流拠点80においてフル充電しておいた二次電池30へ交換する。
【0116】
この状態で、A店舗81やB店舗82を含む広域停電が発生したとする。A店舗81に向かっていた輸送車両Aに搭載していた冷凍装置本体10をA店舗81にて降ろし、二次電池30非常電源として使うこととすれば、A店舗81は独自に非常電源を保有していなくても、二次電池30の残量分という限られた時間とはいえ、店舗としての営業が継続可能となる。B店舗82についても同様である。
【0117】
こうした停電時への対応について、より詳細に説明する。
物流拠点80に管理サーバ50を設置しておき、各輸送車両60A,60B,60Cに搭載されたそれぞれの冷凍装置本体10から位置データを取得するようにしておく。
【0118】
管理サーバ50は、停電の発生を検知する停電検知手段と、その停電検知手段が停電を検知した場合に、位置データおよび残量データを用いて輸送車両60A,60B,60Cによる冷凍装置本体10の輸送先を輸送車両60A,60B,60Cごとに判断する輸送先判断手段と、その輸送先判断手段が判断した輸送先を、該当する輸送機器へ送信する輸送先指令手段と、を備えている。
【0119】
管理サーバ50は、輸送車両ごとに、それぞれの冷凍装置本体10の位置データや二次電池30の残量データなどを常に把握することができる。そうしたデータに基づいて、広域停電の発生時には、各輸送車両60A,60B,60Cがどの店舗に向かえば良いのか、あるいは物流拠点80へ一旦戻った方が良いのか、などを、輸送先判断手段が判断することとするのである。
【0120】
図26および図27を用いて説明したように、輸送車両60に高容量のバッテリ(二次電池30)を搭載し、平時には冷凍装置を稼働させるための給電用の出力に用いる。その平時の状態を維持することで、輸送車両60に搭載された冷凍サイクル機器40を稼働させる目的で常に充電された状態にある二次電池30が、停電時の非常用電源としての用途へ即座に転用可能となる。また、非常時専用の用途としての二次電池を保有し、保管場所を確保したり維持管理をしたりする必要もない。
【0121】
前述してきた実施形態によれば、一台の輸送車両60にて複数の温度帯に設定した荷物を運送することが可能となるため、低温輸送の効率化に寄与する。
また、物流サイクルにおいて本実施形態に係る冷凍装置本体10を搭載した輸送車両60を採用すれば、停電時において冷凍装置本体10を非常用電源に転用することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、冷蔵庫や冷凍機器の製造業、冷凍機器を用いた運送業、冷凍機器に通信機器を搭載してデータを管理するデータサービス業、輸送車両の管理業などにおいて利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0123】
10;冷凍装置本体
10A、10B;本体
10C;一室型冷凍装置 10D;一室型冷凍装置(小型)
11;上部前パネル 12;上部後パネル
12A;ルーバー
13;電池用スペース 14;コンプレッサ用スペース
15;上冷蔵室 16;下冷蔵室
17;中央冷蔵室 18;フォークリフト爪挿入部
19;キャスター
20;冷凍装置の制御装置
21;温度制御装置 22;上室温度計
23;下室温度計 24;管理データベース
25;上室温度データベース 26;下室温度データベース
27;GPS 28;経路データベース
29;通信装置
30;二次電池
31;バッテリ端子 32;取っ手
33;本体上面板 34;電池支持L字板
35;コンセントボックス
39;非常用ライト
40;冷凍サイクル機器
41;コンプレッサ 42;冷媒管
43;エバポレータ 43A;エバポレータファン
44;コンデンサ 45;気液分離機
46;ドライヤー 47;循環用ファン
48:インバータ 49;太陽光パネル
50;管理サーバ
60;輸送車両(60A,60B,60C,60D)
61;荷室
70;荷物依頼者の端末
80;物流拠点
【要約】
【課題】 低温運送に関して、複数種類の移動機器による輸送となっており、輸送の容積率を高めにくくて効率が悪い。輸送従事者の数も多く必要となっている。
【解決手段】 輸送機器に搭載可能であり、複数の冷蔵室(15,16)を垂直方向に備えた冷凍装置とする。冷蔵室(15,16)の室内は、二次電池(30)によって作動する冷凍サイクル機器(40)によって、独立した温度設定にて冷蔵可能とする。たとえば、二つの冷蔵室(15,16)を冷凍とチルドに温度設定することで、冷凍便とチルド便とを常温車両にて同時に実現可能とする。
【選択図】 図15
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