(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】マンホールポンプ場リモート式リリーフシステム
(51)【国際特許分類】
E03F 5/22 20060101AFI20240920BHJP
E03F 5/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E03F5/22
E03F5/02
(21)【出願番号】P 2024070988
(22)【出願日】2024-04-24
【審査請求日】2024-04-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514256265
【氏名又は名称】田平 直
(74)【代理人】
【識別番号】110003122
【氏名又は名称】弁理士法人タナベ・パートナーズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田平 直
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-250881(JP,A)
【文献】特開2022-159754(JP,A)
【文献】特開2016-075102(JP,A)
【文献】特開2024-018019(JP,A)
【文献】特開平10-266326(JP,A)
【文献】特開2012-096580(JP,A)
【文献】特開2021-083305(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0159889(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00-11/00
E02D 29/00-29/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水槽と、前記汚水槽に設置され、汚水の吸込及び吐出を行う汚水ポンプと、前記汚水ポンプから吐出された汚水を外部に送水する圧送管と、を備えたマンホールポンプ場において用いられるマンホールポンプ場リモート式リリーフシステムであって、
前記汚水ポンプが停止した場合に前記汚水槽の外部に設置され、前記汚水槽内の汚水を吸込み、前記圧送管に前記汚水を吐出する予備ポンプと、
前記予備ポンプを動作させる燃料が蓄えられる主燃料タンクと、
前記予備ポンプを動作させる予備の燃料が蓄えられる予備燃料タンクと、
前記主燃料タンク内の燃料残量を検出する主燃料残量検出部と、
前記予備ポンプを動作させる燃料を、前記主燃料タンク内の燃料から前記予備燃料タンク内の燃料に切替を行う予備燃料切替部と、
当該マンホールポンプ場リモート式リリーフシステムの制御を行う制御部と、
外部ネットワークとの間で通信を行う通信部と、を備え、
前記制御部は、
前記主燃料残量検出部によって検出される主燃料タンクの燃料残量に係る情報を、前記通信部を介して利用者が備える利用者機器に送信し、
前記利用者が前記利用者機器を用いて生成した燃料切替指示を、前記通信部を介して受信した場合には、前記予備燃料切替部に対し、前記予備ポンプを動作させる燃料の切替を行わせることを特徴とするマンホールポンプ場リモート式リリーフシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記主燃料残量検出部によって検出される主燃料タンクの燃料残量に係る情報を、前記通信部を介して利用者が備える利用者機器に送信するとき、前記主燃料タンクの燃料残量が所定値以下の場合には、燃料切替指示を促すことを特徴とする請求項1に記載のマンホールポンプ場リモート式リリーフシステム。
【請求項3】
前記主燃料タンク内の燃料を前記予備ポンプに供給するための第1燃料ホースと、
前記予備燃料タンク内の燃料を前記予備ポンプに供給するための第2燃料ホースと、を備え、
前記第1燃料ホースの中途において、前記予備燃料切替部を介して前記第2燃料ホースが連結されていることを特徴とする請求項1に記載のマンホールポンプ場リモート式リリーフシステム。
【請求項4】
前記予備燃料切替部は、前記制御部からの開閉指示に基づいて開閉可能な電動バルブであることを特徴とする請求項3に記載のマンホールポンプ場リモート式リリーフシステム。
【請求項5】
前記主燃料残量検出部は、前記主燃料タンクの燃料キャップに配設され、液面の上下変化に伴い上下動するフロートによって液面の高さを検出するフロートセンサーに基づいて燃料残量を検出することを特徴とする請求項1に記載のマンホールポンプ場リモート式リリーフシステム。
【請求項6】
前記予備ポンプは、エンジンポンプであることを特徴とする請求項1に記載マンホールポンプ場リモート式リリーフシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールポンプ場リモート式リリーフシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水道等の中継地点に設置されるマンホール形式ポンプ場(以下、「マンホールポンプ場」と称する)が知られている。マンホールポンプ場とは、マンホールの中にポンプを設置した簡易な中継ポンプ場である。このようなマンホールポンプ場に関し、これまで各種発明がなされてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、マンホール外部に設置されてガソリンエンジンにより動作するシステムであって、マンホールポンプ場が災害時や電源喪失時に中継ポンプ場として機能しなくなったときに仮設することで下水の中継機能を仮復旧する災害対応型マンホールポンプ場バックアップシステム(以下、「バックアップシステム」とも称する)に係る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記バックアップシステムによる下水道システムの仮復旧が必要になるときの社会状況は、往々にして豪雨災害や大地震の直後であり、このような状況下では、下水道事業の職員は災害復旧に人手を取られる。そのため、ガソリンエンジン用の燃料タンクの残量管理を適切に行う時間を得にくくなり、それによりバックアップシステムが稼働し続けたときにガソリンが不足してガソリンエンジンが停止して、バックアップシステムによる仮復旧の支障となってしまい得る問題があった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、システム稼働時であっても燃料タンクの残量管理を適切に行うことが可能なマンホールポンプ場リモート式リリーフシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係るマンホールポンプ場リモート式リリーフシステムは、汚水槽と、前記汚水槽に設置され、汚水の吸込及び吐出を行う汚水ポンプと、前記汚水ポンプから吐出された汚水を外部に送水する圧送管と、を備えたマンホールポンプ場において用いられるマンホールポンプ場リモート式リリーフシステムであって、前記汚水ポンプが停止した場合に前記汚水槽の外部に設置され、前記汚水槽内の汚水を吸込み、前記圧送管に前記汚水を吐出する予備ポンプと、前記予備ポンプを動作させる燃料が蓄えられる主燃料タンクと、前記予備ポンプを動作させる予備の燃料が蓄えられる予備燃料タンクと、前記主燃料タンク内の燃料残量を検出する主燃料残量検出部と、前記予備ポンプを動作させる燃料を、前記主燃料タンク内の燃料から前記予備燃料タンク内の燃料に切替を行う予備燃料切替部と、当該マンホールポンプ場リモート式リリーフシステムの制御を行う制御部と、外部ネットワークとの間で通信を行う通信部と、を備え、前記制御部は、前記主燃料残量検出部によって検出される主燃料タンクの燃料残量に係る情報を、前記通信部を介して利用者が備える利用者機器に送信し、前記利用者が前記利用者機器を用いて生成した燃料切替指示を、前記通信部を介して受信した場合には、前記予備燃料切替部に対し、前記予備ポンプを動作させる燃料の切替を行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、システム稼働時であっても燃料タンクの残量管理を適切に行うことが可能なマンホールポンプ場リモート式リリーフシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】従来のマンホールポンプ場の全体構成例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係るマンホールポンプ場リモート式リリーフシステムを上面から見た図である。
【
図3】本実施形態に係るマンホールポンプ場リモート式リリーフシステムに係る構成例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係るバックアップ制御装置の装置構成例を示す図である。
【
図5】
図4のエンジンポンプ周辺をB方向から見た図である。
【
図6】本実施形態に係るバックアップ制御装置の機能構成例を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る外部サーバーの機能構成例を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る外部サーバーが作成する表示画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明の実施形態の説明に先立ち、まず、従来のマンホールポンプ場について説明する。
【0011】
[従来のマンホールポンプ場]
図1は、従来のマンホールポンプ場の全体構成例を示す図である。
図1では、マンホールポンプ場100の地中断面図を示している。
【0012】
図1に示す従来のマンホールポンプ場100は、汚水槽(マンホール井)61、汚水ポンプ62、流入管63、圧送管64、立上り管65、逆止弁66、仕切弁67等から構成される。汚水ポンプ62を駆動するための電源等については図示を省略している。このマンホールポンプ場100は、下水管や配水管の中継地点に設置されるものである。
【0013】
図1に示す従来のマンホールポンプ場100では、流入管63を介して排水・下水が汚水槽61に流入し、汚水ポンプ62が汚水槽61内の排水・下水を吸込む。汚水ポンプ62によって吸込まれた下水は、鉛直方向に伸びる立上り管65、逆流防止用の逆止弁66、流体を遮断する際等に用いられる仕切弁67を通流して圧送管64に送水される。
【0014】
以下、圧送管64について補足する。圧送管64は、流入管63より高い位置に設けられ、汚水ポンプ62によって圧力を高められた排水・下水を送水するための中空の管体であり、逆T字状の水平部64Aと、水平部64Aに連結される直管状の直管部64Bとを有する。
【0015】
水平部64Aは、汚水ポンプ62によって圧力を高められた排水・下水を流入する部分であり、具体的には汚水ポンプ62により吐出され、立上り管65、逆止弁66、仕切弁67を通流してきた排水・下水を流入する。この水平部64Aに流入してきた流体は直管部64Bに送水される。
【0016】
[マンホールポンプ場リモート式リリーフシステムの構成例]
図2は、本実施形態に係るマンホールポンプ場リモート式リリーフシステムを上面から見た図である。
図3は、本実施形態に係るマンホールポンプ場リモート式リリーフシステムに係る構成例を示す図である。
【0017】
図3では、
図2のマンホールポンプ場10の地中断面図(A-Aにおける断面図)を示している。
【0018】
図2~
図3に示すマンホールポンプ場10は、吸込ホース1、バックアップ制御装置2、吐出ホース3、パイプユニット4、圧送管5、電極棒6、汚水槽(マンホール井)7、汚水ポンプ8、流入管9等から構成される。このマンホールポンプ場10は、下水管や配水管の中継地点に設置されるものである。
【0019】
図2~
図3に示す構成要素のうち、特に吸込ホース1、バックアップ制御装置2、吐出ホース3、パイプユニット4、電極棒6を総称する場合、マンホールポンプ場リモート式リリーフシステム20(以下、単に「リリーフシステム20」)と称する。リリーフシステム20は、マンホールポンプ場10が災害や故障等により停止している間、仮復旧を迅速に行うことを可能にするためのバックアップシステムである。以下、各構成要素について説明する。
【0020】
吸込ホース1は、
図2や
図3に示すように、一端側がバックアップ制御装置2に接続されるとともに、他端側が汚水槽7内に垂設され、汚水槽7内の汚水ポンプ8付近の汚水を吸込む(吸引する)ための中空の管体である。
【0021】
バックアップ制御装置2は、汚水ポンプ8が停止した場合に外部に仮設されて汚水槽7内の汚水の吸込及び吐出を行ってマンホールポンプ場10の仮復旧を行うための装置である。このバックアップ制御装置2の詳細については
図4~
図6を用いて後述する。
【0022】
吐出ホース3は、一端側がバックアップ制御装置2に接続され、他端側が汚水槽7内に垂設されるとともにパイプユニット4に連結され、吸込ホース1で吸込まれた汚水を、パイプユニット4を介して圧送管5に吐出するための中空の管体である。
【0023】
パイプユニット4は、圧送管5に予め取付け及び取外し可能に設置され、上端には吐出ホース3を連通可能に接続する接続部41を有する。このパイプユニット4は、予め工場等において規格品として製作されるものである。このパイプユニット4と吐出ホース3とは、接続部41において例えばワンタッチ継手のフィッティングエルボ(詳細には不図示)を介して接続される。接続部41としてフィッティングエルボを用いることにより、パイプユニット4と吐出ホース3とが異径管であっても両者を簡易に接続することができ、緊急時の対応性、簡易性に優れている。
【0024】
このパイプユニット4は、上端の接続部41から上下に伸びる鉛直直管部42と、水平部43とを有する。特に水平部43は、水平部64A(
図1参照)と同様の形状であって逆T字状に構成される。すなわちパイプユニット4は、圧送管64の水平部64Aと代替可能な形状に構成されている。
【0025】
本実施形態に係るマンホールポンプ場10では、従来の圧送管64の水平部64A(
図1参照)を、パイプユニット4の水平部43と取り換えている。その結果、圧送管5にパイプユニット4が接続されることとなる。これにより、圧送管5は、エンジンポンプ23により圧縮されて吐出ホース3及びパイプユニット4を通流してきた汚水を受け入れることが可能となる。
【0026】
圧送管5は、パイプユニット4の水平部43に連結される直管状の直管部であり、汚水ポンプ8又はバックアップ制御装置2(具体的には、後述する
図4のエンジンポンプ23)によって圧力を高められた排水・下水を送水するための中空の管体である。
【0027】
電極棒6は、吸込ホース1に固定され、汚水槽7内の水位を検知する水位検知手段である。この電極棒6は汚水の水面を検知すると導通信号を発し、バックアップ制御装置2(具体的には、
図4の制御装置22b)にオン・オフを指示して制御を行う。この電極棒6が水面の検知を開始するための起動スイッチ(不図示)が押下されると、本リリーフシステム20の動作は開始する。
【0028】
この電極棒6は、
図3に示すように、流入管9の直下部に配置される上側電極棒6aと、吸込ホース1の端部より少し上方の位置に設置される下側電極棒6bとを含み、いずれも吸込ホース1に固定される。
【0029】
上側電極棒6aにより水面が検知されると、バックアップ制御装置2(具体的には、
図4のエンジンポンプ23)は起動する。一方、下側電極棒6bにより水面が検知されると、バックアップ制御装置2(エンジンポンプ23)は停止する。すなわち、上側電極棒6a、下側電極棒6bは、それぞれバックアップ制御装置2(エンジンポンプ23)の起動水位、停止水位を検知するものと言い換えることができる。
【0030】
なお、バックアップ制御装置2(エンジンポンプ23)の起動水位と停止水位の検知をフロート式の検知器で行うと、きょう雑物がフロートに絡まることで動作不良が生じて制御不能の原因となることから、電極棒6で水位検知を行い、電極棒6を吸込ホース1に固定することで稼働中のトラブルを低減させる利点がある。
【0031】
汚水ポンプ8は、汚水槽7内に設置され、汚水槽7内の汚水の吸込及び吐出を行う、電動機とポンプとが一体化して構成された2台のポンプである。この汚水ポンプ8の電動機を駆動するための電源等については
図2~
図3において図示を省略している。
【0032】
流入管9は、
図3に示すように、汚水槽7内の鉛直方向中間よりやや上の位置に設けられ、上流から流れてきた排水・下水を汚水槽7内に流入させる中空の管体である。
【0033】
以上に示す構成により、本実施形態に係るマンホールポンプ場10では、従来のマンホールポンプ場100(
図1参照)に比して、吸込ホース1、バックアップ制御装置2、吐出ホース3、パイプユニット4及び電極棒6からなるリリーフシステム20の設備を追加している。これにより、マンホールポンプ場10が地震等の災害や不慮の故障により停止している緊急時において、仮復旧を迅速に行うことを可能にしている。
【0034】
また、当該マンホールポンプ場10のポンプ場としての機能を確保することができ、下水管路内における下水の滞留による地上部への溢水を防ぐことができる。また、下水が管路内に停滞することでし渣や汚泥が管路内に沈積して下水管が閉塞し易くなるといった二次的な被害の発生を防ぐことができる。さらに、簡便に当該マンホールポンプ場10の機能を復旧させることができることにより、バキューム車による輸送や大掛かりなバイパスによる圧送を行うことで工事費が多大に発生することを防ぐことができる。
【0035】
なお、上記説明において、バックアップ制御装置2(特に、
図4のエンジンポンプ23)は、マンホールポンプ場10の災害時等における電力供給断絶時における仮復旧のための仮設の汚水ポンプであり、吸込ホース1、吐出ホース3及びパイプユニット4は仮復旧のための配管であると言い換えることができる。
【0036】
[バックアップ制御装置の装置構成例]
図4は、本実施形態に係るバックアップ制御装置の装置構成例を示す図である。
図5は、
図4のエンジンポンプ周辺をB方向から見た図である。なお、前述(
図2や
図3)と同様の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を適宜省略する。以下においても同様である。
【0037】
図4及び
図5に示すようにバックアップ制御装置2は、ソーラーパネル21、制御盤22、ソーラーバッテリー22a、制御装置22b、通信装置22c、エンジンポンプ23、主燃料タンク24、予備燃料タンク25、第1燃料ホース26a、第2燃料ホース26b、残量モニター27、電源バルブ28等を有する。なお、各装置間の配線については図示を省略している。
【0038】
ソーラーパネル21は、太陽光で発電を行う発電装置であり、このソーラーパネル21によって発電された電力はソーラーバッテリー22aに蓄電される。
【0039】
制御盤22は、バックアップ制御装置2の制御・操作を行うための各種電子機器、ここではソーラーバッテリー22a、制御装置22b、通信装置22c等が格納される。また制御盤22には、使用者が各種指示、例えばエンジンポンプ23の起動・停止や、電動バルブ28の開閉指示を手動入力するための操作パネル(不図示)が設けられる。
【0040】
ソーラーバッテリー22aは、ソーラーパネル21によって発電された電力を蓄電する蓄電池である。制御装置22bは、当該バックアップ制御装置2の各種制御を行う装置である。通信装置22cは、外部のインターネットに対して無線通信を行う例えば無線LANルーター等の通信装置である。
【0041】
エンジンポンプ23は、汚水ポンプ8(
図2参照)が停止した場合に仮復旧用に外部に仮設される汚水用の予備ポンプである。このエンジンポンプ23は、吸込ホース1を介して汚水槽7(
図2参照)内の汚水を吸込み、吐出ホース3を介して、吸込まれた汚水を圧送管5(
図2参照)に吐出するエンジン内蔵式のポンプである。エンジン内蔵式のポンプであるため、災害時等に電力供給が遮断されることで稼働の可否を左右されない利点がある。なお、エンジンポンプ23の代わりに、他の例えばモーター式のポンプ等を予備ポンプとしても良い。
【0042】
このエンジンポンプ23は、ソーラーバッテリー22aに蓄えられた電力に基づいて駆動する。これにより、エンジンポンプ23のエンジン点火用の電力が不足しないように発電と充電を行うことが可能である。なお、災害時等におけるエンジンポンプ23の連続稼働時間が課題である。
【0043】
主燃料タンク24は、エンジンポンプ23用の例えば容量5リットルの燃料が蓄えられるタンクであり、本実施形態ではエンジンポンプ23の直上に配設される。なお、容量5リットルの主燃料タンク24によって、エンジンポンプ23を7時間程度稼働させることが可能である。
【0044】
予備燃料タンク25は、主燃料タンク24に併設される予備用の例えば容量15リットル(若しくは30リットル)の燃料が蓄えられるタンクである。主燃料タンク24内の燃料が無くなった場合にこの予備燃料タンク25内の燃料をリリーフ、いわゆる代替品として使用することによって、エンジンポンプ23は24時間~48時間程度の連続稼働が可能となる。この予備燃料タンク25は、主燃料タンク24の鉛直方向上方に後付けで配設される。
【0045】
第1燃料ホース26aは、主燃料タンク24に蓄えられた燃料をエンジンポンプ23に供給するために使用されるホースである。この第1燃料ホース26aの中途には、電動バルブ28を介して第2燃料ホース26bが連結されている。
【0046】
第2燃料ホース26bは、予備燃料タンク25に蓄えられた燃料をエンジンポンプ23に供給するために使用されるホースである。電動バルブ28が開状態である場合には、第2燃料ホース26bと第1燃料ホース26aとは連通し、第2燃料ホース26b内の燃料は第1燃料ホース26aに通流してエンジンポンプ23に供給される。一方、電動バルブ28が閉状態である場合には、第2燃料ホース26bと第1燃料ホース26aとは連通しない。
【0047】
残量モニター27は、主燃料タンク24の燃料キャップ(不図示)に配設され、主燃料タンク24内の燃料残量を計測する計測器である。この残量モニター27は、液面の上下変化に伴い上下動するフロートによって液面の高さを検出するフロートセンサー(不図示)を用いる。検出された燃料残量を示す信号は、制御装置22bによって通信装置22cを介して外部サーバー30に送信される。既知の技術であるため、ここでは詳細な説明を省略する。なお、フロートセンサー以外の技術を用いて主燃料タンク24内の燃料残量を計測しても良い。
【0048】
電動バルブ28は、第1燃料ホース26aと第2燃料ホース26bとの間に介装され、制御装置22bによる開閉指示に基づいて開閉する電動式の開閉弁である。電動バルブ28が開状態になると、予備燃料タンク25からエンジンポンプ23へ燃料補充することによって、予備燃料タンク25をリリーフとして使用することが可能となる。なお、この電動バルブ28は、利用者が制御盤22の操作パネル(不図示)において手動で開閉指示を入力することによって開閉することもできる。
【0049】
以上に示す構成により、本実施形態に係るバックアップ制御装置2では、制御装置22bが各種制御を行う。具体的には、例えば電極棒6(
図2参照)によって汚水の水面が検知された場合に発せられる導通信号に基づいて、エンジンポンプ23を起動又は停止する制御、残量モニター27によって検出される主燃料タンク24の燃料残量に応じて、通信装置22cを介して外部サーバー30に燃料残量を示す信号等を通知する制御、通信装置22cを介して外部から受信した電動バルブ28の開閉指示に基づいて、電源バルブ28を開閉する制御を行う。
【0050】
特に、制御装置22bは、残量モニター27によって検出される主燃料タンク24の燃料残量を示す信号を、通信装置22cを介して外部サーバー30に送信する。これにより、本バックアップ制御装置2の利用者である下水道事業の職員(以下、単に「利用者」ともいう。)は、自身が使用するスマートフォンのアプリやPCのブラウザ等を介して外部サーバー30にアクセスし、主燃料タンク24の燃料残量の確認等を行うことができる。
【0051】
[バックアップ制御装置の機能構成例]
図6は、本実施形態に係るバックアップ制御装置の機能構成例を示す図である。
【0052】
図6に示すようにバックアップ制御装置2は、発電部210、制御部220、電源部230、通信部240、主燃料残量検出部250、予備燃料切替部260等を有する構成である。
【0053】
発電部210は、発電を行う発電手段であって、例えばソーラーパネル21(
図4参照)である。制御部220は、本バックアップ制御装置2に係る各種制御を行う制御手段であって、例えば制御装置22b(
図4参照)である。電源部230は、本バックアップ制御装置2が動作する際の電源であって、例えばソーラーバッテリー22a(
図4参照)である。通信部240は、本バックアップ制御装置2が外部サーバー30(
図6では不図示)等と通信を行う通信手段であって、例えば通信装置22c(
図4参照)である。
【0054】
主燃料残量検出部250は、主燃料タンク24内の燃料残量を検出する検出手段であって、例えば残量モニター27(
図4参照)である。予備燃料切替部260は、エンジンポンプ23に供給される燃料を、主燃料タンク24内の燃料から予備燃料タンク25内の燃料に切り替える切替手段であって、例えば電動バルブ28(
図4参照)である。
【0055】
以上に示す構成により、本実施形態に係るバックアップ制御装置2では、特に制御部220が、主燃料残量検出部250によって検出される主燃料タンク24の燃料残量を示す信号を、通信部240を介して外部サーバー30に送信する。また、通信部240を介して外部から受信した燃料切替指示(例えば電動バルブ28の開指示)に基づいて、予備燃料切替部260に対し、主燃料タンク24に代えて予備燃料タンク25内の燃料をリリーフとして使用するよう切り替えさせる。
【0056】
そのため、本バックアップ制御装置2の利用者は、自身が使用するスマートフォンのアプリやPCのブラウザ等を介して外部サーバー30にアクセスし、主燃料タンク24の燃料残量の確認を行ったり、必要に応じて予備燃料タンク25への燃料切替指示を送ることによって予備燃料タンク25内の燃料を使用するよう切り替えることができる。
【0057】
[外部サーバーの機能構成例]
図7は、本実施形態に係る外部サーバーの機能構成例を示す図である。
図8は、本実施形態に係る外部サーバーが作成する表示画面の一例を示す図である。
【0058】
外部サーバー30は、CPU、メモリ、SSD(若しくはHDD)等を備える一般的なコンピュータ装置であり、
図7に示すように、制御部31、通信部32、記憶部33等を有する構成である。
【0059】
制御部31は、利用者が使用するスマートフォンやPC(以下、「利用者機器」ともいう。)からの要求に応じて、スマートフォンのアプリやPCのブラウザに表示させる表示画面を作成したり、通信部32を介して利用者による利用者機器の操作情報を受信して、当該操作情報に基づく制御情報をバックアップ制御装置2に対して送信したりする。
【0060】
図8では、制御部31によって作成される表示画面の例を示している。
【0061】
図8(a)に示す表示画面51は、主燃料タンク24の燃料残量を利用者機器に表示させる表示画面である。すなわち、制御部31は、通信部32を介してバックアップ制御装置2から受信した主燃料タンク24の燃料残量を示す信号に応じて、当該主燃料タンク24の燃料残量を表示画面51のように表示させる。表示領域51aにおける残量情報は燃料残量の変化に応じて更新されるものとする。
【0062】
このような表示画面51に係るデータが、通信部32を介して利用者機器に送信され、当該利用者機器に表示される。これにより、利用者はバックアップ制御装置2を直接操作することなく、主燃料タンク24の燃料残量をリアルタイムに把握することができる。
【0063】
なお、制御部31は、当該燃料残量が一定値以下になった場合には、利用者機器に対して警告を通知することが望ましい。例えば、燃料残量が半分になった場合には「注意レベル」である旨を示す警告表示又は警告音を、それぞれ利用者機器に表示又は通知させたり、燃料残量が1/4になった場合には「警告レベル」である旨を示す警告表示又は警告音を、それぞれ利用者機器に表示又は通知させたりすることが望ましい。
【0064】
図8(b)に示す表示画面52は、前述の表示領域51aに相当する表示領域52aに加え、使用する燃料を主燃料タンク24内の燃料から予備燃料タンク25内の燃料に切り替える燃料切替指示を入力可能な操作領域52bが設けられた表示画面である。すなわち、制御部31は、通信部32を介して受信した主燃料タンク24の燃料残量を示す信号に応じて、例えば燃料残量が1/4になって上記の「警告レベル」である旨を示す警告表示又は警告音を表示又は通知させる際に、操作領域52bを併せて表示させる。
【0065】
このような表示画面52に係るデータが、通信部32を介して利用者機器に送信され、当該利用者機器に表示される。これにより、利用者はバックアップ制御装置2を直接操作することなく、表示画面52上で燃料切替指示を入力することができる。
【0066】
なお、表示画面52上で燃料切替指示が入力されると、制御部31は、燃料切替指示が入力された旨の情報を通信部32を介して受信し、その後、バックアップ制御装置2に対して燃料切替指示(例えば電動バルブ28の開指示)を送信する。これにより、バックアップ制御装置2では、制御部220が予備燃料切替部260(
図6参照)に予備燃料タンク25内の燃料をリリーフとして使用するよう切り替えさせる。
【0067】
図7に戻り、通信部32は、利用者機器やバックアップ制御装置2との間で通信を行う。記憶部33は、制御部31が各種制御を行う際に使用するデータ等を記憶する。
【0068】
以上に示す構成により、本実施形態に係る外部サーバー30は、バックアップ制御装置2から受信した主燃料タンク24の燃料残量に係る情報を、利用者機器に対して提供したり、利用者機器において燃料切替指示が入力されると、バックアップ制御装置2(特に、予備燃料切替部260)の動作を制御するための指示情報を送信したりする。
【0069】
言い換えると、本実施形態に係るバックアップ制御装置2は、主燃料タンク24の燃料残量に係る情報を、通信部220及び外部サーバー30を介して利用者が備える利用者機器に間接的に送信し、外部サーバー30及び通信部220を介して利用者による燃料切替指示を間接的に受信した場合には、予備燃料切替部260に対し、エンジンポンプ23を動作させる燃料の切替を行わせている。
【0070】
これにより、以下の効果を奏する。その効果とは、従来マンホールポンプ場100の仮復旧のためにエンジンポンプを外設する場合には、常に燃料の消費状況を有人にて監視しなければならなかったのに対し、本実施形態によれば、利用者は現地に居なくとも自身が使用するスマートフォンのアプリやPCのブラウザ等を介して外部サーバー30にアクセスすることで、リアルタイムに燃料残量を確認できることである。
【0071】
また、主燃料タンク24内の燃料残量が少なくなった場合にも、利用者は自身が使用するスマートフォンのアプリやPCのブラウザ等を介して予備燃料タンク25への切り替えを行うことができる。そのため、システム稼働時に燃料が不足してエンジンポンプが停止してしまう事態を防止することができる。
【0072】
以上のとおり、当該リリーフシステム20の無人化が可能となり、緊急時の対応性・簡易性に優れ、リリーフシステム20の稼働時であっても、エンジンポンプ23用の燃料タンクの残量管理を適切に行うことができる。また、当該リリーフシステム20によれば、主燃料タンク24内の燃料残量が少なくなった場合に、利用者による遠隔操作によって予備燃料タンク25内の燃料を使用するよう切り替える、いわゆるリモート式(遠隔式)のリリーフ(救援)動作を実現することができる。
【0073】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものであり、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0074】
例えば、上記説明においては、主燃料タンク24とエンジンポンプ23とを連結する第1燃料ホース26aの中途に、電動バルブ28を介して第2燃料ホース26bを連結する形態(
図5参照)について説明を行ってきたが、この場合に限定されるものではない。
【0075】
例えば、予備燃料タンク25のタンク内と主燃料タンク24のタンク内とを連結するように、第2燃料ホース26bを配設しても良い。この場合には、予備燃料タンク25を専用の架台等を用いて主燃料タンク24よりも高い位置に設置することにより、高低差を利用して予備燃料タンク25から主燃料タンク24に燃料を補充することができる。
【0076】
また例えば、上記説明においては、制御装置22bが残量モニター27によって検出される燃料残量を示す信号を取得する形態について説明を行ってきたが、この場合に限定されるものではない。例えば、残量モニター27にESP32等の通信ユニットを設け、この通信ユニットを介してデータを外部サーバー30に送信するようにしても良い。
【0077】
また例えば、上記説明においては、制御装置22bと外部サーバー30とを別個の装置として設けた形態について説明を行ってきたが、この場合に限定されるものではない。例えば、外部サーバー30が備える各機能を制御装置22bが備えるように構成しても良い。
【0078】
この場合、外部サーバー30の制御部32が行う各種制御は、制御装置22bによって実現される。言い換えると、本実施形態に係るバックアップ制御装置2(制御装置22b)は、主燃料タンク24の燃料残量に係る情報を、通信部220を介して利用者が備える利用者機器に直接的に送信し、通信部220を介して利用者による燃料切替指示を直接的に受信した場合には、予備燃料切替部260に対し、エンジンポンプ23を動作させる燃料の切替を行わせることとなる。
【0079】
また例えば、上記説明においては、制御装置22bが外部から受信した電動バルブ28の開閉指示に基づいて電源バルブ28を開閉する制御を行う形態について説明を行ってきたが、この場合に限定されるものではない。制御装置22bは、残量モニター27の検出値に応じて自動で電動バルブ28を開閉制御しても良い。
【符号の説明】
【0080】
1 吸込ホース
2 バックアップ制御装置
3 吐出ホース
4 パイプユニット
5 圧送管
7 汚水槽
8 汚水ポンプ
10 マンホールポンプ場
20 マンホールポンプ場リモート式リリーフシステム
23 エンジンポンプ(予備ポンプ)
24 主燃料タンク
25 予備燃料タンク
26a 第1燃料ホース
26b 第2燃料ホース
27 残量モニター
28 電動バルブ
220 制御部
240 通信部
250 主燃料残量検出部
260 予備燃料切替部
【要約】
【課題】システム稼働時であっても燃料タンクの残量管理を適切に行うことが可能なマンホールポンプ場リモート式リリーフシステムを提供する。
【解決手段】汚水槽に設置され、汚水の吸込及び吐出を行う汚水ポンプを備えたマンホールポンプ場において用いられ、汚水槽の外部に設置される予備ポンプと、燃料が蓄えられる主燃料タンクと、予備燃料が蓄えられる予備燃料タンクと、主燃料タンク内の燃料残量を検出する主燃料残量検出部と、予備ポンプを動作させる燃料を、主燃料タンク内の燃料から予備燃料タンク内の燃料に切替を行う予備燃料切替部と、制御を行う制御部と、通信を行う通信部と、を備え、制御部は、主燃料残量検出部によって検出される主燃料タンクの燃料残量に係る情報を、通信部を介して利用者が備える利用者機器に送信し、通信部を介して燃料切替指示を受信した場合には、予備燃料切替部に対し、燃料の切替を行わせる。
【選択図】
図6