(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】測量システム、測量装置、測量方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G01C15/00 101
(21)【出願番号】P 2021215369
(22)【出願日】2021-12-29
【審査請求日】2023-10-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年9月28日にApple社が運営するiPhone向けアプリケーションのダウンロードサービスである「App Store」にて「https://apps.apple.com/jp/app/optim-land-scan/id1511692496」としてバージョン2.3.0より公開
(73)【特許権者】
【識別番号】500521522
【氏名又は名称】株式会社オプティム
(74)【代理人】
【識別番号】110004440
【氏名又は名称】弁理士法人ソシデア知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】友廣 一雄
(72)【発明者】
【氏名】坂田 泰章
(72)【発明者】
【氏名】秋里 隆史
(72)【発明者】
【氏名】村田 恵介
(72)【発明者】
【氏名】長沼 俊介
(72)【発明者】
【氏名】久保 健太
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-186994(JP,A)
【文献】特開2020-056616(JP,A)
【文献】特開2004-085551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標示を設置した現実空間の撮影画像を取得する第1取得部と、
前記現実空間の3次元データを取得する第2取得部と、
取得した前記現実空間の3次元データに基づいて、前記現実空間の3次元モデルを生成する生成部と、
取得した前記撮影画像に、生成した前記3次元モデルを重ねた複合現実を表示する第1表示部と、
前記複合現実における前記標示の位置を自動認識し、3次元位置記憶デバイスから、前記現実空間の
3次元位置情報を測量結果として取得する第3取得部と、
前記複合現実において、前記測量結果を取得済の第1領域と、前記測量結果を未取得の第2領域とを異なる態様で表示する第2表示部と、
を備える測量システム。
【請求項2】
前記第1領域とは、前記測量結果を取得した地点を中心とした所定の領域である請求項1に記載の測量システム。
【請求項3】
前記第1領域を着色する着色部と、
を更に備え、
前記第2表示部は、前記複合現実において、着色した前記第1領域と、未着色の第2領域とを表示する、
請求項1に記載の測量システム。
【請求項4】
前記第1領域に新たな物体を検出する検出部と、
前記第1領域の内、検出した前記新たな物体の近傍を第3領域に設定する設定部と、
設定した前記第3領域の着色を解除する解除部と、
を更に備え、
前記第2表示部は、前記複合現実において、着色した前記第1領域と、未着色の前記第2領域及び前記第3領域とを表示する、
請求項
3に記載の測量システム。
【請求項5】
現実空間の撮影画像を取得する第1取得部と、
標示を設置した前記現実空間の3次元データを取得する第2取得部と、
取得した前記現実空間の3次元データに基づいて、前記現実空間の3次元モデルを生成する生成部と、
取得した前記撮影画像に、生成した前記3次元モデルを重ねた複合現実を表示する第1表示部と、
前記複合現実における前記標示の位置を自動認識し、3次元位置記憶デバイスから、前記現実空間の
3次元位置情報を測量結果として取得する第3取得部と、
前記複合現実において、前記測量結果を取得済の第1領域と、前記測量結果を未取得の第2領域とを異なる態様で表示する第2表示部と、
を備える測量装置。
【請求項6】
コンピュータが実行する測量方法であって、
標示を設置した現実空間の撮影画像を取得するステップと、
前記現実空間の3次元データを取得するステップと、
取得した前記現実空間の3次元データに基づいて、前記現実空間の3次元モデルを生成するステップと、
取得した前記撮影画像に、生成した前記3次元モデルを重ねた複合現実を表示するステップと、
前記複合現実における前記標示の位置を自動認識し、3次元位置記憶デバイスから、前記現実空間の
3次元位置情報を測量結果として取得するステップと、
前記複合現実において、前記測量結果を取得済の第1領域と、前記測量結果を未取得の第2領域とを異なる態様で表示するステップと、
を備える測量方法。
【請求項7】
コンピュータに、
標示を設置した現実空間の撮影画像を取得するステップ、
前記現実空間の3次元データを取得するステップ、
取得した前記現実空間の3次元データに基づいて、前記現実空間の3次元モデルを生成するステップ、
取得した前記撮影画像に、生成した前記3次元モデルを重ねた複合現実を表示するステップ、
前記複合現実における前記標示の位置を自動認識し、3次元位置記憶デバイスから、前記現実空間の
3次元位置情報を測量結果として取得するステップ、
前記複合現実において、前記測量結果を取得済の第1領域と、前記測量結果を未取得の第2領域とを異なる態様で表示するステップ、
を実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量に有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、現実空間を測量する方法として、LiDAR(Laser imaging Detection And Ranging)技術が注目されている。LiDARは、レーザ等を照射し、照射した各地点で点群を形成するものである。
例えば、特許文献1では、LiDAR技術により、画像検出及び測距を行う技術が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建設現場は、主に、現場面積が、1,000平方メートル以下の小規模現場、1,000平方メートルよりも広く10,000平方メートル以下の中規模現場、10,000平方メートルよりも広い大規模現場に分類されている。中規模現場及び大規模現場における測量は、ICT(Information and Communication Technology)技術の導入が進み、ドローンを利用したUAV(Unmanned Aerial Vehicle)測量、3Dレーザ測量器を利用した測量等の測量の効率化やコストの最適化が進んでいる。一方、小規模現場での測量は、光波測量が主流であり、測量の効率化やコストの最適化を図ることが困難であった。
そのため、小規模現場での測量の効率化やコストの最適化を図る技術が求められている。
そこで、本発明者は、LiDAR技術を用いて、測量結果を取得済の領域と未取得の領域とを異なる態様で表示する仕組みに着目した。
【0005】
本発明は、LiDAR技術を用いて、測量結果を取得済の領域と未取得の領域とを異なる態様で表示することにより、測量の効率化及びコストの最適化を図ることを可能とする測量システム、測量装置、測量方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、標示を設置した現実空間の撮影画像を取得する第1取得部と、
前記現実空間の3次元データを取得する第2取得部と、
取得した前記現実空間の3次元データに基づいて、前記現実空間の3次元モデルを生成する生成部と、
取得した前記撮影画像に、生成した前記3次元モデルを重ねた複合現実を表示する第1表示部と、
前記複合現実における前記標示の位置を自動認識し、3次元位置記憶デバイスから、前記現実空間の3次元位置情報を測量結果として取得する第3取得部と、
前記複合現実において、前記測量結果を取得済の第1領域と、前記測量結果を未取得の第2領域とを異なる態様で表示する第2表示部と、
を備える測量システムを提供する。
【0007】
本発明によれば、測量システムは、標示を設置した現実空間の撮影画像を取得し、前記現実空間の3次元データを取得し、取得した前記現実空間の3次元データに基づいて、前記現実空間の3次元モデルを生成し、取得した前記撮影画像に、生成した前記3次元モデルを重ねた複合現実を表示し、前記複合現実における前記標示の位置を自動認識し、3次元位置記憶デバイスから、前記現実空間の3次元位置情報を測量結果として取得し、前記複合現実において、前記測量結果を取得済の第1領域と、前記測量結果を未取得の第2領域とを異なる態様で表示する。
【0008】
本発明は、システムのカテゴリであるが、装置、方法及びプログラムであっても同様の作用、効果を奏する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、測量の効率化及びコストの最適化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】測量システム1が実行する複合現実表示処理のフローチャートを示す図である。
【
図4】測量装置10が取得する撮影画像の一例を模式的に示す図である。
【
図5】測量装置10が表示する複合現実の一例を模式的に示す図である。
【
図6】測量システム1が実行する測量済領域表示処理のフローチャートを示す図である。
【
図7】測量装置10が表示する複合現実の一例を模式的に示す図である。
【
図8】測量システム1が実行する新規物体検出処理のフローチャートを示す図である。
【
図9】測量装置10が表示する複合現実の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。以降の図においては、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号を付している。
【0012】
[基本概念/基本構成]
図1は、測量システム1の概要を説明するための図である。測量システム1は、少なくとも測量装置10を備える現実空間を測量するシステムである。
本実施形態では、測量システム1は、測量装置10と、GNSS(Global Navigation Satellite System)デバイス、トータルステーション等の測量装置が測量した現実空間の任意の点の3次元位置の測量結果を記憶する3次元位置記憶デバイス(例えば、GNSSデバイス、トータルステーション、クラウドコンピュータ)20とが、データ通信可能に接続されている。
【0013】
本実施形態は、前提として、測量装置10は、LiDAR技術により測量を行うものであり、3次元位置記憶デバイス20は、測量装置が測量した現実空間の任意の点の3次元位置の測量結果(任意の点の3次元位置情報)を記憶するデバイスである。また、測量装置10は、所定のアプリケーションにより、各処理を実行するものである。
【0014】
測量システム1が、測量結果を取得済の第1領域と、測量結果を未取得の第2領域とを異なる態様で表示する場合についての処理ステップの概要について、
図1に基づいて説明する。
【0015】
測量装置10は、現実空間の撮影画像を取得する(ステップS1)。
撮影画像は、静止画だけでなく、動画等の映像を含むものである。
測量者は、現実空間に、標定点又は検証点を示す標示を設置する。測量装置10は、この標示が設置された現実空間を撮影することにより、現実空間の撮影画像を取得する。
【0016】
測量装置10は、現実空間の3次元データを取得する(ステップS2)。
測量装置10は、LiDAR技術により、測量を行う現実空間の地形をスキャンし、スキャン結果に基づいて、現実空間の3次元データを取得する。
【0017】
測量装置10は、取得した現実空間の3次元データに基づいて、現実空間の3次元モデルを生成する(ステップS3)。
測量装置10は、取得した3次元データに基づいて、3次元点群やTIN(Triangulated Irregular Network)等のデータ構造により、現実空間の3次元モデルを生成する。本実施形態では、測量装置10は、3次元データに基づいたメッシュ映像データを生成する。
【0018】
測量装置10は、取得した撮影画像に、生成した3次元モデルを重ねた複合現実を表示する(ステップS4)。
測量装置10は、取得した撮影画像に、生成したメッシュ映像データを重ねたものを複合現実として、自身の表示部等に表示する。
【0019】
測量装置10は、現実空間の測量結果を取得する(ステップS5)。
測量装置10は、3次元位置記憶デバイス20から、現実空間の3次元位置情報を測量結果として取得する。
【0020】
測量装置10は、複合現実において、測量結果を取得済の第1領域と、測量結果を未取得の第2領域とを異なる態様で表示する(ステップS6)。
測量装置10は、例えば、複合現実として撮影画像に重ねたメッシュ映像データにおける、測量結果を取得した地点を中心とした所定の領域である第1領域を、所定の色(例えば赤、青、黄)に着色する。複合現実として撮影画像に重ねたメッシュ映像データにおける、第1領域以外の領域である第2領域を、着色せずに、そのままの状態(無着色の状態)を維持する。
測量装置10は、複合現実において、第1領域を着色した状態に変更し、第2領域を未着色の状態を維持することにより、複合現実において、着色済の第1領域と、未着色の第2領域とを表示する。
【0021】
このような測量システム1によれば、測量の効率化及びコストの最適化を図ることが可能となる。
【0022】
[機能構成]
図2に基づいて、測量システム1の機能構成について説明する。
測量システム1は、少なくとも、建設現場等で測量を行う測量者が所持する測量装置10を備え、LiDAR技術により、現実空間の測量を行うシステムである。
本実施形態では、測量システム1は、測量装置10と、GNSSデバイス、トータルステーション等の測量装置が測量した現実空間の任意の点の3次元位置の測量結果を記憶するGNSSデバイス、トータルステーション、クラウドコンピュータ等の3次元位置記憶デバイス20とが公衆回線網等のネットワーク9を介して、データ通信可能に接続されている。
測量システム1は、測量装置10及び3次元位置記憶デバイス20に加えて、その他の端末や装置類等が含まれていても良い。この場合、測量システム1は、後述する処理を、測量装置10、3次元位置記憶デバイス20及びその他の端末や装置類等の何れか又は複数の組み合わせにより実行する。
なお、本明細書におけるクラウドコンピュータとは、ある特定の機能を果たす際に、任意のコンピュータをスケーラブルに用いるものや、あるシステムを実現するために複数の機能モジュールを含み、その機能を自由に組み合わせて用いるものの何れであってもよい。
【0023】
測量装置10は、LiDAR技術により現実空間を測量する携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等の携帯端末等であり、自身にインストールされた所定のアプリケーションにより、LiDAR技術による測量に関する処理、複合現実の表示に関する処理、各種データ通信に関する処理、各種データ処理等を行うものである。
【0024】
測量装置10は、制御部として、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備え、通信部として、他の端末や装置等と通信可能にするためのデバイス、現実空間の測量結果を取得する第3取得部11等を備える。
また、測量装置10は、記憶部として、ハードディスクや半導体メモリ、記憶媒体、メモリカード等によるデータのストレージ部等を備える。
また、測量装置10は、処理部として、各種処理を実行する各種デバイス、現実空間の撮影画像を取得する第1取得部12、現実空間の3次元データを取得する第2取得部13、現実空間の3次元モデルを生成する生成部14、複合現実を表示する第1表示部15、複合現実において、測量結果を取得済の第1領域と、測量結果を未取得の第2領域とを異なる態様で表示する第2表示部16等を備える。
【0025】
測量装置10において、制御部が所定のプログラムを読み込むことにより、通信部と協働して、測量結果取得モジュールを実現する。
また、測量装置10において、制御部が所定のプログラムを読み込むことにより、処理部と協働して、撮影画像取得モジュール、3次元データ取得モジュール、3次元モデル生成モジュール、複合現実表示モジュール、認識モジュール、着色モジュール、着色結果表示モジュール、検出モジュール、設定モジュール、解除モジュールを実現する。
【0026】
以下、本測量システム1が実行する各処理について、上述した各モジュールが実行する処理と併せて説明する。
本実施形態において、各モジュールは、その処理内容を、所定のアプリケーションにより実行するものである。
【0027】
[測量装置10が実行する複合現実表示処理]
図3に基づいて、測量装置10が実行する複合現実表示処理について説明する。同図は、測量装置10が実行する複合現実表示処理のフローチャートを示す図である。本複合現実表示処理は、上述した現実空間の撮影画像の取得処理(ステップS1)、現実空間の3次元データの取得処理(ステップS2)、現実空間の3次元モデルの生成処理(ステップS3)、複合現実の表示処理(ステップS4)の詳細である。
【0028】
撮影画像取得モジュールは、現実空間の撮影画像を取得する(ステップS10)。
撮影画像は、静止画だけでなく、動画等の映像を含むものである。
測量者は、現実空間に、標定点又は検証点を示す標示を設置する。本処理での標定点は、水平位置及び標高が明らかな基準となる点である。また、本処理での検証点は、3次元点群の検証を行う点である。また、標示は、例えば、GNSSデバイスである。
撮影画像取得モジュールは、この標示が設置された現実空間を撮影することにより、現実空間の撮影画像を取得する(
図4参照)。
なお、撮影画像取得モジュールは、測量装置10とデータ通信可能に接続された撮影機能を有する他の端末や装置類等により撮影された撮影画像を取得しても良い。
【0029】
[測量装置10が取得する撮影画像]
図4は、撮影画像取得モジュールが取得する撮影画像の一例を模式的に示した図である。同図において、撮影画像取得モジュールが取得する撮影画像30を示している。撮影画像30は、標定点又は検証点を示す標示31及び背景32が映っている。
【0030】
図3に戻り、複合現実表示処理の続きを説明する。
3次元データ取得モジュールは、現実空間の3次元データを取得する(ステップS11)。
3次元データ取得モジュールは、LiDAR技術により、測量を行う現実空間の地形をスキャンし、スキャン結果に基づいて、現実空間の3次元データを取得する。
【0031】
3次元モデル生成モジュールは、取得した3次元データに基づいて、現実空間の3次元モデルを生成する(ステップS12)。
3次元モデル生成モジュールは、取得した3次元データに基づいて、3次元点群やTIN等のデータ構造により、現実空間の3次元モデルを生成する。本実施形態では、3次元モデル生成モジュールは、3次元データに基づいたメッシュ映像データを生成する。
なお、3次元モデルは、上述した例に限らず、その他のデータ構造のものであっても良い。
【0032】
複合現実表示モジュールは、取得した撮影画像に、生成した3次元モデルを重ねた複合現実を表示する(ステップS13)。
複合現実表示モジュールは、取得した撮影画像に、生成したメッシュ映像データを重ねたものを複合現実として、自身の表示部等に表示する(
図5参照)。
なお、複合現実表示モジュールが表示する複合現実は、上述した例に限らず、その他のものであっても良い。
【0033】
[測量装置10が表示する複合現実]
図5は、複合現実表示モジュールが表示する複合現実の一例を模式的に示した図である。同図において、複合現実表示モジュールが表示する複合現実40を示している。複合現実40は、撮影画像30(標示31及び背景32)に、メッシュ映像データ41を重ねたものである。
【0034】
以上が、複合現実表示処理である。
測量装置10は、複合現実表示処理を、継続的に実行するものである。すなわち、測量装置10は、測量者が現実空間の映像の撮影を開始し、撮影を終了するまでの間、撮影画像の取得、3次元データの取得、3次元モデルの生成、複合現実の表示を継続的に実行するものである。例えば、測量者が、撮影を開始した状態で、別の測量地点に移動する場合、測量装置10は、測量者の移動に合わせて、撮影画像の取得、3次元データの取得、3次元モデルの生成、複合現実の表示を実行する。
【0035】
[測量装置10が実行する測量済領域表示処理]
図6に基づいて、測量装置10が実行する測量済領域表示処理について説明する。同図は、測量装置10が実行する測量済領域表示処理のフローチャートを示す図である。本測量済領域表示処理は、上述した複合現実表示処理の実行後に行われる処理であり、上述した現実空間の測量結果の取得処理(ステップS5)、測量結果を取得済の第1領域と、測量結果を未取得の第2領域とを異なる態様で表示する処理(ステップS6)の詳細である。
【0036】
認識モジュールは、複合現実における標定点又は検証点を示す標示を自動認識する(ステップS20)。
認識モジュールは、複合現実における撮影画像を画像解析し、特徴点や特徴量を抽出する。認識モジュールは、抽出した特徴点や特徴量に基づいて、撮影画像に映る標示を認識する。認識モジュールは、撮影画像に映る標示を認識することにより、複合現実における標示を認識する。
【0037】
測量結果取得モジュールは、現実空間の測量結果を取得する(ステップS21)。
測量結果取得モジュールは、GNSSデバイス、トータルステーション又はクラウドコンピュータ等の3次元位置記憶デバイス20から、現実空間の3次元位置情報を測量結果として取得する。
【0038】
<GNSSデバイス又はトータルステーションから3次元位置情報を取得する場合>
測量結果取得モジュールが、GNSSデバイス又はトータルステーションから3次元位置情報を取得する場合について説明する。
GNSSデバイス又はトータルステーションは、現実空間に設定した複数の標定点の3次元位置を予め測量しておき、この標定点の3次元位置の測量結果を、測量装置10の要求に応じて、現実空間の3次元位置情報として、測量装置10に送信する。
測量結果取得モジュールは、この3次元位置情報を受信することにより、現実空間の3次元位置情報を取得する。
【0039】
<クラウドコンピュータから3次元位置情報を取得する場合>
測量結果取得モジュールが、クラウドコンピュータから3次元位置情報を取得する場合について説明する。
トータルステーションは、現実空間に設定した複数の標定点の3次元位置を予め測量しておき、この標定点の3次元位置の測量結果を、現実空間の3次元位置情報として、クラウドコンピュータに送信する。クラウドコンピュータは、この現実空間の3次元位置情報を受信し、この現実空間の3次元位置情報を記憶する。クラウドコンピュータは、記憶した現実空間の3次元位置情報を、測量装置10の要求に応じて、測量装置10に送信する。
測量結果取得モジュールは、この3次元位置情報を受信することにより、現実空間の3次元位置情報を取得する。
【0040】
着色モジュールは、測量結果を取得済の第1領域を着色する(ステップS22)。
本処理での第1領域は、メッシュ映像データにおいて、測量結果を取得した地点を中心とした所定の領域を意図するものである。
着色モジュールは、複合現実として撮影画像に重ねたメッシュ映像データの第1領域を、所定の色(例えば、赤、青、黄)に着色する。着色モジュールが、第1領域に着色する方法は、メッシュ映像データにおける第1領域に、RGB値等のカラーコードを指定する等の、データに色を追加する方法であれば良く、特に限定されるものではない。
【0041】
着色結果表示モジュールは、複合現実において、着色済の第1領域と、未着色の第2領域とを表示する(ステップS23)。
本処理での第2領域は、メッシュ映像データにおける、第1領域以外の領域であり、測量結果を未取得の領域を意図するものである。
着色結果表示モジュールは、複合現実において、着色済の第1領域と、第1領域以外の領域を未着色の第2領域として表示する(
図7参照)。すなわち、着色結果表示モジュールは、上述したステップS13の処理により表示した複合現実を、第1領域を着色した状態に変更し、第2領域をそのままの状態に維持する。
【0042】
[測量装置10が表示する複合現実]
図7は、着色結果表示モジュールが表示する複合現実の一例を模式的に示した図である。同図において、着色結果表示モジュールが表示する複合現実50を示している。複合現実50は、ハッチングで着色したことを示す第1領域51と、第1領域以外の領域である未着色の第2領域52が示されている。
【0043】
以上が、測量済領域表示処理である。
測量装置10は、測量済領域表示処理を、継続的に実行するものである。すなわち、測量装置10は、上述した複合現実表示処理により表示する複合現実に対して、測量結果の取得、第1領域の着色、第1領域と第2領域との表示を継続的に実行するものである。例えば、測量者が、複合現実を表示した状態で移動する場合、測量装置10は、測量者の移動に合わせて、測量結果の取得、第1領域の着色、第1領域と第2領域との表示を実行する。測量装置10は、測量者の移動に合わせて、複合現実全体における第1領域を増加させ、着色する領域が増加することになる。
【0044】
[測量装置10が実行する新規物体検出処理]
図8に基づいて、測量装置10が実行する新規物体検出処理について説明する。同図は、測量装置10が実行する新規物体検出処理のフローチャートを示す図である。本新規物体検出処理は、上述した測量済領域表示処理の実行中又は実行後に行われる処理である。
【0045】
検出モジュールは、第1領域に新たな物体を検出する(ステップS30)。
本処理での物体とは、例えば、標示、建設物、測量用機器である。本処理での新たな物体とは、上述した測量済領域表示処理により、第1領域に着色した後に、この第1領域に設置等された物体である。
検出モジュールは、上述したステップS23の処理により、着色済の第1領域の表示後に、この第1領域が映る撮影画像を取得した際、複合現実における撮影画像を画像解析し、特徴点や特徴量を抽出する。検出モジュールは、抽出した特徴点や特徴量に基づいて、撮影画像に映る新たな物体を検出する。
なお、検出モジュールは、新たな物体を検出できなかった場合、新規物体検出処理を終了する。
【0046】
設定モジュールは、第1領域の内、検出した新たな物体の近傍を第3領域に設定する(ステップS31)。
本処理での第3領域は、メッシュ映像データの第1領域において、新たな物体を検出した地点を中心とした所定の領域を意図するものである。
設定モジュールは、検出した新たな物体から所定の範囲の領域を、第3領域に設定する。
【0047】
解除モジュールは、第3領域の着色を解除する(ステップS32)。
解除モジュールは、複合現実として撮影画像に重ねたメッシュ映像データの第3領域に着色された所定の色を解除し、未着色の状態に変更する。解除モジュールが、第3領域の着色を解除する方法は、メッシュ映像データにおける第3領域から、RGB値等のカラーコードを削除する等のデータから色を削除する方法であれば良く、特に限定されるものではない。
【0048】
着色結果表示モジュールは、複合現実において、着色済の第1領域と、未着色の第2領域及び第3領域とを表示する(ステップS33)。
着色結果表示モジュールは、複合現実において、着色済の第1領域と、未着色の第2領域と、着色を解除し、未着色に変更した第3領域とを表示する(
図9参照)。すなわち、着色結果表示モジュールは、上述したステップS23の処理により表示した複合現実を、第1領域の内、第3領域以外の領域の着色をそのままの状態に維持し、未着色の第2領域をそのままの状態に維持し、第3領域の着色を解除し、未着色の状態に変更する。
【0049】
[測量装置10が表示する複合現実]
図9は、着色結果表示モジュールが表示する複合現実の一例を模式的に示した図である。同図において、着色結果表示モジュールが表示する複合現実60を示している。複合現実60は、ハッチングで着色したことを示す第1領域61と、未着色の第2領域62と、第1領域61の内、着色が解除された未着色の第3領域63とが示されている。
【0050】
以上が、新規物体検出処理である。
測量装置10は、新規物体検出処理を、継続的に実行するものである。すなわち、測量装置10は、上述した測量済領域表示処理により表示する複合現実に対して、新たな物体の検出、第3領域の設定、第3領域の着色の解除、第1、第2及び第3領域の表示を継続的に実行するものである。例えば、測量者が、複合現実を表示した状態で移動する場合、測量装置10は、測量者の移動に合わせて、新たな物体の検出、第3領域の設定、第3領域の着色の解除、第1、第2及び第3領域の表示を実行する。
【0051】
上述した各処理は、別個の処理として記載しているが、測量装置10は、上述した各処理の一部又は全部を組み合わせて実行する構成も可能である。また、測量装置10は、各処理において、説明したタイミング以外のタイミングであっても、その処理を実行する構成も可能である。
【0052】
上述した手段、機能は、コンピュータ(CPU、情報処理装置、各種端末を含む)が、所定のプログラムを読み込んで、実行することによって実現される。プログラムは、例えば、コンピュータからネットワーク経由で提供される(SaaS:ソフトウェア・アズ・ア・サービス)形態やクラウドサービスで提供されてよい。また、プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録された形態で提供されてよい。この場合、コンピュータはその記録媒体からプログラムを読み取って内部記録装置又は外部記録装置に転送し記録して実行する。また、そのプログラムを、記録装置(記録媒体)に予め記録しておき、その記録装置から通信回線を介してコンピュータに提供するようにしてもよい。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述したこれらの実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0054】
(1)現実空間の撮影画像を取得する第1取得部(例えば、第1取得部11、撮影画像取得モジュール)と、
前記現実空間の3次元データを取得する第2取得部(例えば、第2取得部12、3次元データ取得モジュール)と、
取得した前記現実空間の3次元データに基づいて、前記現実空間の3次元モデルを生成する生成部(例えば、生成部13、3次元モデル生成モジュール)と、
取得した前記撮影画像に、生成した前記3次元モデルを重ねた複合現実を表示する第1表示部(例えば、第1表示部14、複合現実表示モジュール)と、
前記現実空間の測量結果を取得する第3取得部(例えば、第3取得部15、測量結果取得モジュール)と、
前記複合現実において、前記測量結果を取得済の第1領域と、前記測量結果を未取得の第2領域とを異なる態様で表示する第2表示部(例えば、第2表示部16、着色結果表示モジュール)と、
を備える測量システム。
【0055】
(1)の発明によれば、測量の効率化及びコストの最適化を図ることが可能となる。
【0056】
(2)前記第1領域を着色する着色部(例えば、着色モジュール)と、
を更に備え、
前記第2表示部は、前記複合現実において、着色した前記第1領域と、未着色の第2領域とを表示する、
(1)に記載の測量システム。
【0057】
(2)の発明によれば、測量の効率化及びコストの最適化を図る。
【0058】
(3)前記第1領域に新たな物体を検出する検出部(例えば、検出モジュール)と、
前記第1領域の内、検出した前記新たな物体の近傍を第3領域に設定する設定部(例えば、設定モジュール)と、
設定した前記第3領域の着色を解除する解除部(例えば、解除モジュール)と、
を更に備え、
前記第2表示部は、前記複合現実において、着色した前記第1領域と、未着色の前記第2領域及び前記第3領域とを表示する、
(2)に記載の測量システム。
【0059】
(3)の発明によれば、測量の効率化及びコストの最適化を図る。
【0060】
(4)現実空間の撮影画像を取得する第1取得部(例えば、第1取得部11、撮影画像取得モジュール)と、
前記現実空間の3次元データを取得する第2取得部(例えば、第2取得部12、3次元データ取得モジュール)と、
取得した前記現実空間の3次元データに基づいて、前記現実空間の3次元モデルを生成する生成部(例えば、生成部13、3次元モデル生成モジュール)と、
取得した前記撮影画像に、生成した前記3次元モデルを重ねた複合現実を表示する第1表示部(例えば、第1表示部14、複合現実表示モジュール)と、
前記現実空間の測量結果を取得する第3取得部(例えば、第3取得部15、測量結果取得モジュール)と、
前記複合現実において、前記測量結果を取得済の第1領域と、前記測量結果を未取得の第2領域とを異なる態様で表示する第2表示部(例えば、第2表示部16、着色結果表示モジュール)と、
を備える測量装置。
【0061】
(5)コンピュータが実行する測量方法であって、
現実空間の撮影画像を取得するステップ(例えば、ステップS10)と、
前記現実空間の3次元データを取得するステップ(例えば、ステップS11)と、
取得した前記現実空間の3次元データに基づいて、前記現実空間の3次元モデルを生成するステップ(例えば、ステップS12)と、
取得した前記撮影画像に、生成した前記3次元モデルを重ねた複合現実を表示するステップ(例えば、ステップS13)と、
前記現実空間の測量結果を取得するステップ(例えば、ステップS21)と、
前記複合現実において、前記測量結果を取得済の第1領域と、前記測量結果を未取得の第2領域とを異なる態様で表示するステップ(例えば、ステップS23)と、
を備える測量方法。
【0062】
(6)コンピュータに、
現実空間の撮影画像を取得するステップ(例えば、ステップS10)、
前記現実空間の3次元データを取得するステップ(例えば、ステップS11)、
取得した前記現実空間の3次元データに基づいて、前記現実空間の3次元モデルを生成するステップ(例えば、ステップS12)、
取得した前記撮影画像に、生成した前記3次元モデルを重ねた複合現実を表示するステップ(例えば、ステップS13)、
前記現実空間の測量結果を取得するステップ(例えば、ステップS21)、
前記複合現実において、前記測量結果を取得済の第1領域と、前記測量結果を未取得の第2領域とを異なる態様で表示するステップ(例えば、ステップS23)、
を実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラム。
【符号の説明】
【0063】
1 測量システム
9 ネットワーク
10 測量装置
11 第3取得部
12 第1取得部
13 第2取得部
14 生成部
15 第1表示部
16 第2表示部
20 3次元位置記憶デバイス
30 撮影画像
31 標示
32 背景
40 複合現実
41 メッシュ映像データ
50 複合現実
51 第1領域
52 第2領域
60 複合現実
61 第1領域
62 第2領域
63 第3領域