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  • 特許-大豆乳酸菌発酵食品、及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】大豆乳酸菌発酵食品、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 11/00 20210101AFI20240920BHJP
   A23C 11/10 20210101ALI20240920BHJP
   A23L 11/60 20210101ALI20240920BHJP
   A23L 11/65 20210101ALI20240920BHJP
【FI】
A23L11/00 E
A23C11/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018203853
(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公開番号】P2020068686
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-10-25
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100215957
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 明照
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 孝広
【合議体】
【審判長】植前 充司
【審判官】松本 陶子
【審判官】天野 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-284520(JP,A)
【文献】Yogurt Flavour Lactic Acid Bacteria Drink,Mintel GNPD, [online], ID#:3451627 ,2015年9月,[Retrieved on 19-08-2022], Retrieved from the internet: <URL: https://portal.mintel.com>
【文献】Fermented Soymilk Yogurt Type(Mango & Pineapple),Mintel GNPD, [online], ID#:397531 ,2005年9月,[Retrieved on 19-08-2022], Retrieved from the internet: <URL: https://portal.mintel.com>
【文献】2018年4月12日「ふくれん のむ豆乳ヨーグルト」新発売, [online], 09-04-2018 uploaded, [Retrieved on 19-08-2022], Retrieved from the internet:<URL: https://www.fukuren.co.jp/news/info/440>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23C
Mintel GNPD
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引力が4.0N以上7.5N以下であり、かつ粘度が1000mPa・s以上3700mPa・s以下である、大豆乳酸菌発酵食品。
【請求項2】
大豆原料を含む発酵前液を乳酸菌で発酵させて、乳酸菌発酵物を得る工程と、発酵工程で得られた乳酸菌発酵物をゾル化する工程とを備える、請求項1に記載の大豆乳酸菌発酵食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆乳酸菌発酵食品、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康志向の高まりにより、様々な発酵食品が販売されている。近年、豆乳を乳酸菌で発酵させたヨーグルトタイプの大豆乳酸菌発酵食品も認知されてきた(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2014/163123号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大豆乳酸菌発酵食品は、乳を原料とした発酵乳ではないため、大豆乳酸菌発酵食品(生菓子)とされる区分で取り扱われている。従来の大豆乳酸菌発酵食品は、乳製品と同様にスプーン等ですくって喫食するものである。
【0005】
これまで、豆乳に乳酸菌及びヨーグルトフレーバーを配合したヨーグルト風味の豆乳飲料や、豆乳を乳酸菌で発酵させた発酵物を豆乳に配合した豆乳飲料が販売されている。しかし、いずれも清涼飲料とされる区分で取り扱われるものであることから、その製造にあたり、常温流通できるよう殺菌工程が必須となっているため、生きた乳酸菌を摂取することができるものではなかった。
【0006】
一方、大豆乳酸菌発酵食品は、生きた乳酸菌を摂取することができるものの、従来の大豆乳酸菌発酵食品は、容易にストローで喫食することができなかった。これまでに簡便に喫食することができる大豆乳酸菌発酵食品は知られていない。
【0007】
本発明は、上述した背景から、乳酸菌を生きたまま摂取することが可能で、スプーンで喫食もでき、かつ簡便にストローで喫食できる大豆乳酸菌発酵食品を提供することを目的とする。乳を原料とする発酵乳のヨーグルトにおいても、スプーンで喫食することが可能で、かつストローで喫食もできるものはこれまでになかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、吸引力が4.0N以上7.5N以下である、大豆乳酸菌発酵食品に関する。
【0009】
本発明に係る大豆乳酸菌発酵食品は、生きた乳酸菌を含むものであるため、これを喫食することで生きた乳酸菌を摂取することができる。また、本発明に係る大豆乳酸菌発酵食品は、吸引力が上記所定の範囲内にあるため、スプーンで喫食もできると共に、簡便にストローで喫食することができる。
【0010】
本明細書において、「大豆乳酸菌発酵食品」とは、大豆原料(例えば、豆乳)を乳酸菌で発酵させたもの、若しくは当該発酵物を加工したもの、又はこれらを原料とした食品を意味する。大豆乳酸菌発酵食品は、食品衛生法上、大豆乳酸菌発酵食品(生菓子)又はこれに準ずる区分に分類されるものであってよい。
【0011】
本明細書において、「吸引力」とは、後述の実施例における〔吸引力の測定〕欄に記載した方法により測定される値を意味する。
【0012】
本発明に係る大豆乳酸菌発酵食品は、粘度が1000mPa・s以上3700mPa・s以下であることが好ましい。吸引力が上記所定の範囲内にあることに加え、粘度が上記所定の範囲内にあると、スプーンで喫食でき、かつストローで喫食することが可能であると共に、充分な食感が感じられる大豆乳酸菌発酵食品となる。
【0013】
本明細書において、「粘度」とは、後述の実施例における〔粘度の測定〕欄に記載した方法により測定される値を意味する。
【0014】
本発明はまた、大豆原料を含む発酵前液を乳酸菌で発酵させて、乳酸菌発酵物を得る工程と、発酵工程で得られた乳酸菌発酵物をゾル化する工程とを備える、大豆乳酸菌発酵食品の製造方法にも関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、乳酸菌を生きたまま摂取することが可能で、スプーンで喫食もでき、かつ簡便にストローで喫食できる大豆乳酸菌発酵食品の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】吸引力の測定に使用する装置の概略を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
〔大豆乳酸菌発酵食品〕
本実施形態に係る大豆乳酸菌発酵食品は、吸引力が4.0N以上7.5N以下であることを特徴とする。吸引力が、上記所定の範囲内にあることにより、スプーンで喫食もできると共に、簡便にストロー(例えば、φ7.3の2段ストロー)で喫食することができる。
【0019】
本実施形態に係る大豆乳酸菌発酵食品の吸引力は、4.25N以上であってよく、4.5N以上であってよく、4.75N以上であってよく、5.0N以上であってよい。また、本実施形態に係る大豆乳酸菌発酵食品の吸引力は、7.25N以下であってよく、7.0N以下であってよく、6.75N以下であってよく、6.5N以下であってよく、6.25N以下であってよく、6.0N以下であってよい。本実施形態に係る大豆乳酸菌発酵食品の吸引力は、4.5N以上6.0N以下であることが好ましく、5.0N以上6.0N以下であることがより好ましい。吸引力がこの好ましい範囲内にあると、ストローでの喫食により適した大豆乳酸菌発酵食品となる。
【0020】
本実施形態に係る大豆乳酸菌発酵食品は、粘度が1000mPa・s以上3700mPa・s以下であることが好ましい。吸引力が上記所定の範囲内にあることに加え、粘度が上記所定の範囲内にあると、スプーンで喫食でき、かつストローで喫食することが可能であると共に、充分な食感が感じられる大豆乳酸菌発酵食品となる。
【0021】
本実施形態に係る大豆乳酸菌発酵食品の粘度は、1100mPa・s以上であってよく、1200mPa・s以上であってよく、1300mPa・s以上であってよい。また、本実施形態に係る大豆乳酸菌発酵食品の粘度は、3600mPa・s以下であってよい。
【0022】
〔大豆乳酸菌発酵食品の製造方法〕
本実施形態に係る大豆乳酸菌発酵食品は、例えば、大豆原料を含む発酵前液を乳酸菌で発酵させて、乳酸菌発酵物を得る工程(以下、「発酵工程」ともいう。)、及び発酵工程で得られた乳酸菌発酵物をゾル化する工程(以下、「ゾル化工程」ともいう。)を少なくとも備える製造方法により製造することができる。本実施形態に係る製造方法は、大豆原料を含む発酵前液を調製する工程(以下、「調製工程」ともいう。)、ゾル化した乳酸菌発酵物に添加物を添加する工程(以下、「添加工程」ともいう。)、及びゾル化した乳酸菌発酵物、又はこれに添加物を添加したものを容器に充填する工程(以下、「充填工程」ともいう。)から選択される少なくとも1つの工程を更に備えるものであってもよい。
【0023】
(調製工程)
調製工程は、大豆原料を含む発酵前液を調製する工程である。調製工程は、大豆原料、及び必要に応じて他の原料を混合して原料混合物を得るステップ(混合ステップ)を少なくとも備える。調製工程は、原料混合物を均質化するステップ(第1の均質化ステップ)、原料混合物、又は均質化した原料混合物を殺菌するステップ(殺菌ステップ)を更に備える。
【0024】
大豆原料は、例えば、豆乳、脱脂豆乳、大豆の磨砕物及び粉砕物、脱皮処理した大豆の磨砕物及び粉砕物、酵素処理した豆乳及び脱脂豆乳等が挙げられる。大豆原料としては、豆乳を使用することが好ましい。
【0025】
本明細書において、「豆乳」とは、大豆から熱水等によりタンパク質その他の成分を溶出させ、繊維質を除去して得られる乳状の飲料を意味する。「豆乳」としては、大豆固形分の含有量が2質量%以上であるものがよく、4質量%以上であるものが好ましく、8質量%以上であるものがより好ましい。「豆乳」には、例えば、果汁入り豆乳飲料、調製豆乳、原豆乳、無調整豆乳等が含まれる。
【0026】
原料混合物に添加する他の原料としては、食品原料及び食品添加物として許容可能なものであれば特に制限されない。他の原料の具体例としては、例えば、水、糖(スクロース、マルトース、フルクトース、グルコース、スタキオース、ラフィノース等)、たんぱく質(例えば、大豆たん白、エンドウたん白)、果汁(例えば、レモン果汁)、果肉、ジャム類、乳製品(例えば、牛乳、乳脂肪、粉乳、練乳)、pH調整剤(例えば、塩酸、水酸化ナトリウム)、酸味料(例えば、クエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸)、甘味料(例えば、トレハロース、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム)、食物繊維(例えば、イヌリン、大豆食物繊維)、安定剤(例えば、アルギン酸類、グリセリン脂肪酸エステル、加工澱粉)、香料(例えば、ヨーグルトフレーバー、ミルクフレーバー、果実フレーバー)、増粘多糖類(例えば、ジェランガム、グアガム、ゼラチン、キサンタンガム、ウェランガム、ローカストビーンガム、ペクチン)等が挙げられる。
【0027】
原料混合物に含まれる大豆原料の量は、例えば、原料混合物全量を基準として、40~85w/w%(400~850g/1kg)であってよい。
【0028】
原料混合物中のタンパク質含有量は、例えば、1~10w/w%であってよい。大豆乳酸菌発酵食品の吸引力及び粘度を本発明で規定する範囲に調節し易くなるという観点から、原料混合物中のタンパク質含有量は、1~5w/w%であることが好ましく、2~4w/w%であることがより好ましい。
【0029】
第1の均質化ステップは、必要に応じて実施すればよい。混合ステップで得られた原料混合物の均質化は、例えば、市販のホモジナイザー等を用いて実施することができる。
【0030】
殺菌ステップは、原料混合物、又は均質化した原料混合物を、例えば、80~150℃に加熱して殺菌処理することにより実施することができる。
【0031】
調製工程で得られた発酵前液は、乳酸菌を添加する前に乳酸菌による発酵に適した温度(例えば、40~45℃)になるまで冷却するのが好ましい。
【0032】
(発酵工程)
発酵工程で使用する乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)及びラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)等のラクトバチラス属に属する乳酸菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)等のストレプトコッカス属に属する乳酸菌、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)等のラクトコッカス属に属する乳酸菌、並びにビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)等のビフィドバクテリウム属に属する乳酸菌を用いることができる。乳酸菌は、1種を単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。
【0033】
発酵工程を実施する際の温度(発酵液の温度)は、使用する乳酸菌の種類等に応じて、適宜設定すればよい。発酵液の温度は、これに限定されるものではないが、例えば、40~45℃としてよい。
【0034】
発酵工程では、乳酸菌発酵で生成される乳酸等の酸が蓄積することにより、大豆原料に含まれるタンパク質等が変成して発酵液が固化する。固化の程度は、発酵工程を実施する時間で制御することもできる。本実施形態に係る製造方法は、大豆乳酸菌発酵食品の吸引力及び粘度を本発明で規定する範囲に調節し易くなるという観点から、発酵液のpHが4.5~4.8になるまで発酵工程を行うことが好ましく、発酵液のpHが4.6~4.7になるまで発酵工程を行うことがより好ましい。発酵液のpHがこの範囲に到達するまでの時間(発酵工程を実施する時間)は、使用する発酵原液の組成、乳酸菌の種類等により異なるため、一概に規定することはできないが、例えば、3~6時間程度である。
【0035】
大豆乳酸菌発酵食品の吸引力及び粘度は、発酵原液に含まれる他の原料(例えば、増粘多糖類、食物繊維)の種類及び量を調節することによっても、調整することができる。
【0036】
(ゾル化工程)
ゾル化工程では、発酵工程で得られた乳酸菌発酵物を、例えば、攪拌や均質化等の処理を行うことにより、ゾル化する。処理物の均一性の観点から、ゾル化工程では、均質化の処理を行うことが好ましい。発酵工程で得られた乳酸菌発酵物は、通常固化している。ゾル化工程を実施することにより、固化した乳酸発酵物を崩し、ゾル化させることができる。ゾル化工程を実施することにより、いわゆるソフトタイプ又はドリンクタイプ(液状)の大豆乳酸菌発酵食品となる。なお、ゾル化工程で発酵物に水を配合して粘度を下げる方法も知られているが、本発明においては、スプーンで喫食もでき、かつ簡便にストローで喫食できる大豆乳酸菌発酵食品を得るという観点から、ゾル化工程で乳酸菌発酵物に水を添加しないのが望ましい。
【0037】
発酵工程で得られた乳酸菌発酵物のゾル化は、例えば、冷却プレート(例えば、設定温度15℃)を通す等により冷却した後、ホモジナイザー等の装置を利用して乳酸菌発酵物を均質化することにより行うことができる。均質化の際に加える力は、例えば、0~5MPaであってよく、0.5~3MPaであることが好ましく、1~2MPaであることがより好ましい。均質化の際に加える力が5MPa以下であると、粘度が低くなりすぎず、適正な粘度に調整し易くなる。また、均質化の際の温度は、例えば、5~40℃であってよく、10~20℃であることが好ましく、12~18℃であることがより好ましい。均質化の際の温度が40℃以下であると、粘度が高くなりすぎず、適正な粘度に調整し易くなる。
【0038】
(添加工程)
添加工程は、必要に応じて実施すればよい。添加工程は、ゾル化した乳酸菌発酵物に添加物を添加するステップ(添加ステップ)に加え、添加物を添加した後、均質化するステップ(第2の均質化ステップ)を更に含んでいてもよい。
【0039】
添加物としては、食品原料及び食品添加物として許容可能なものであれば特に制限されない。添加物の具体例としては、例えば、フルーツソース、果肉(カットされたもの、ペースト状のもの)、ジャム、穀類(グラノーラ、ナッツ類)、チョコレート類等が挙げられる。
【0040】
第2の均質化ステップは、必要に応じて実施すればよい。均質化は、例えば、市販のホモジナイザー等を用いて実施することができる。
【0041】
(充填工程)
充填工程は、必要に応じて実施すればよい。充填工程は、ゾル化した乳酸菌発酵物、又はこれに添加物を添加したものを容器に充填する工程である。
【0042】
容器は、密閉できるものであればよく、例えば、ガラス容器、プラスチック容器、紙容器、パウチ容器等を適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。
【0043】
本実施形態に係る製造方法は、発酵工程後に殺菌処理を行わないのが望ましい。これにより、得られる大豆乳酸菌発酵食品(生菓子)は、生きた乳酸菌を豊富に含むものになる。
【実施例
【0044】
以下、実施例等に基づいて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
〔大豆乳酸菌発酵食品の製造〕
表1に示す配合量で各原料を配合し、ホモジナイザー(株式会社イズミフードマシナリ社製)を使用して、60℃及び10MPaの条件下で均質化処理を行った後、殺菌処理(85℃で30秒間)を行うことで、発酵前液を調製した。調製した発酵前液に乳酸菌スターターとして0.02unit/Kgの製剤を0.1w/w%添加し、43℃で発酵液のpHが4.6~4.7になった時点で発酵を終了した。この場合、発酵時間は4時間であった。得られた乳酸菌発酵物をホモジナイザー(株式会社イズミフードマシナリ社製)を使用して、43℃及び5MPaの条件下でゾル化処理を行った後、10℃以下に冷却して大豆乳酸菌発酵食品(豆乳乳酸菌発酵食品)を得た。
【0046】
使用した原料は、以下のものである。
乳酸菌スターター:ストレプトコッカス・サーモフィルス、ラクトバチルス・ブルガリカス、ラクトバチルス・アシドフィルス及びビフィドバクテリウム・アニマリスを含むスターター(0.02unit/Kgの製剤を使用)
無調整豆乳:不二製油株式会社社製
三温糖:伊藤忠製糖社製
ジェランガム:三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製
グアガム:三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製
ゼラチン製剤:太陽化学株式会社製
キサンタンガム:三栄源エフ・エフ・アイ株式会社社製
ウェランガム:三栄源エフ・エフ・アイ株式会社社製
【0047】
〔吸引力の測定〕
図1は、吸引力の測定に使用した試験系の概略を示す模式図である。図1を参照しながら、吸引力の測定方法を説明する。
【0048】
まず、シリンジ70(容量10mL,テルモ株式会社製,SS-10SZ)をクリープメーター40(株式会社山電製,RE2-3305C,ロードセル:LC2-3305B-200N)付属品の傾斜版で上下を挟み、クリープメーターに固定した。次に、シリンジ70のプランジャー60上面をクリープメーターの治具50(XZ4)に接着して固定した。そして、シリンジ70の口部にシリコーンチューブ30(25cm)を連結し、シリコーンチューブ30の他端には、ストロー20(φ7.3の2段ストローを伸ばしたもの)を連結した。ストロー20とシリコーンチューブ30の連結部は、テープ及びパラフィルムで空気漏れがないようにシールした。
【0049】
測定は、クリープメーター40の測定条件として引張試験を選択して行った。まず、ストロー20の他端を試料10(各試験区の大豆乳酸菌発酵食品200mL)が入った容器の底部までさし、クリープメーター40でプランジャー60を引き上げることにより、ストロー20を介して試料10を吸い上げる際の荷重の変動を測定した。プランジャー60は、5mm/秒のスピードで9秒間引き上げた(1mL/1秒吸引。9秒間で9mL吸引。)。その後、9秒間その位置で保持し、合計18秒間の間の荷重変動を測定した。吸引開始1秒後以降の荷重測定値の最大値を吸引力とした。測定時の温度は、約10℃であった。
【0050】
〔粘度の測定〕
試料の粘度は、B型粘度計(東機産業株式会社製,BII型粘度計BLII)を使用して測定した。ローターNo.3を使用し、回転数12rpmとして、30秒後の粘度を測定した。測定時の温度は、約10℃であった。
【0051】
〔官能評価〕
選抜されたパネル6名により、試料(各試験区の大豆乳酸菌発酵食品)をストロー(φ7.3の2段ストローを伸ばしたもの)で吸引し、「吸い易さ」及び「食感」について評価した。「吸い易さ」及び「食感」は、下記評価基準に従って、総合的に評価した。
「吸い易さ」
・吸い易い:特に力むことなく飲める程度
・吸い難い:力んで吸えば飲める程度
・吸えない:力んで飲んでも飲めない程度
「食感」:乳製品のヨーグルトを元に評価を行った
・弱い :ドリンクタイプのヨーグルトを食した場合と同等程度
・やや弱い:ドリンクタイプのヨーグルトを食した場合より食感を感じる程度
・適当 :ハードタイプヨーグルトをよくかき混ぜて食した場合と同等程度
・やや強い:ハードタイプヨーグルトを軽くかき混ぜて食した場合と同等程度
・強い :ハードタイプヨーグルトそのまま食した場合と同等程度
【0052】
吸引力及び粘度の測定結果、並びに官能評価結果を併せて表1に示した。
【表1】
【0053】
吸引力が4.0~7.5Nの範囲内であった試験区1~4及び6~8の大豆乳酸菌発酵食品は、スプーンで喫食でき、かつストローで喫食することが可能であった。また、吸引力が上記範囲にあると共に、粘度が1000~3700mPa・sの範囲内であった試験区2~4及び6~7の大豆乳酸菌発酵食品は、スプーンで喫食でき、かつストローで喫食することが可能であると共に、充分な食感を感じることができた。なお、市販の大豆乳酸菌発酵食品(生菓子)の吸引力を測定したところ8.3Nであり、ストローで喫食することができなかった。
【符号の説明】
【0054】
10…試料、20…ストロー、30…シリコーンチューブ、40…クリープメーター、50…治具、60…プランジャー、70…シリンジ、A…プランジャー引き上げ方向。
図1