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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20240920BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F27/29 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019159038
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021039987
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-04-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】篠原 良栄
(72)【発明者】
【氏名】荒澤 崇
(72)【発明者】
【氏名】川崎 仁寛
(72)【発明者】
【氏名】西村 宗仁
【合議体】
【審判長】篠原 功一
【審判官】畑中 博幸
【審判官】山本 章裕
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-508298(JP,A)
【文献】特開2017-143118(JP,A)
【文献】特開2017-090049(JP,A)
【文献】特開2007-088134(JP,A)
【文献】特開2019-134042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯部と、前記巻芯部を挟んで配置される第1鍔部および第2鍔部と、を有するドラムコアと、
前記巻芯部に巻回されたコイルと、
前記第1鍔部の第1方向側の第1鍔面と、前記第2鍔部の前記第1方向側の第2鍔面とに接続する板コアと、
前記第1鍔部に設けられ前記コイルの一方の端部が電気的に接続される第1電極端子と、
前記第2鍔部に設けられ前記コイルの他方の端部が電気的に接続される第2電極端子と、を有し、
前記板コアは、前記第1鍔面に向かって突出し前記第1鍔面に対向する第1平面を有する第1凸部と、前記第2鍔部に向かって突出し前記第2鍔面に対向する第2平面を有する第2凸部と、を有し、
前記ドラムコアと前記板コアとは、前記第1鍔面と前記第1平面とが突き合わされ、前記第2鍔面と前記第2平面とが突き合わされて、接合されており、
巻軸方向に沿う前記板コアの長さは、前記巻軸方向に沿う前記ドラムコアの長さより短く、
前記第1鍔面と前記第1平面とを接合する第1接着剤硬化部は、前記第1凸部において前記第1平面より前記第1鍔面から離れる方向に延びる第1壁面に接触しており、
前記第2鍔面と前記第2平面とを接合する第2接着剤硬化部は、前記第2凸部において前記第2平面より前記第2鍔面から離れる方向に延びる第2壁面に接触しており、
前記第1壁面は、前記第1平面に対して前記第2平面に近い側で接続する第1内壁面を有し、前記第1接着剤硬化部は前記第1内壁面に接触しており、
前記第2壁面は、前記第2平面に対して前記第1平面に近い側で接続する第2内壁面を有し、前記第2接着剤硬化部は前記第2内壁面に接触していることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記第1壁面は、前記第1平面に対して前記第2平面から遠い側で接続する第1外壁面を有し、前記第1接着剤硬化部は前記第1外壁面に接触しており、
前記第2壁面は、前記第2平面に対して前記第1平面から遠い側で接続する第2外壁面を有し、前記第2接着剤硬化部は前記第2外壁面に接触していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記板コアは、金属コア又は合金コアであることを特徴とする請求項1または請求項に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記ドラムコアは、フェライトコアであることを特徴とする請求項に記載のコイル部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板コアとドラムコアを組み合わせたコアを用いたコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
面実装可能なチップ型のコイル部品として、板コアとドラムコアを組み合わせたコアを用いたコイル部品が提案されている。板コアは、ドラムコアの鍔部に対して、接着剤などで接合されている。従来の板コアは、単純な板状の形状を有しており、ドラムコアの2つの鍔部に接続して、ドラムコアと伴に閉磁路を形成する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-329618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の形状のコアでは、コアの材質などの影響により、ドラムコアと板コアとの接合性が低くなる問題が生じている。たとえば、板コアの材質がフェライトではなく、金属コアまたは合金コアである場合に、接合性の低下が生じる傾向にある。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされ、その目的は、板コアとドラムコアとの間の接合性が良好なコイル部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るコイル部品は、
巻芯部と、前記巻芯部を挟んで配置される第1鍔部および第2鍔部と、を有するドラムコアと、
前記巻芯部に巻回されたコイルと、
前記第1鍔部の第1方向側の第1鍔面と、前記第2鍔部の前記第1方向側の第2鍔面とに接続する板コアと、
前記第1鍔部に設けられ前記コイルの一方の端部が電気的に接続される第1電極端子と、
前記第2鍔部に設けられ前記コイルの他方の端部が電気的に接続される第2電極端子と、を有し、
前記板コアは、前記第1鍔面に向かって突出し前記第1鍔面に対向する第1平面を有する第1凸部と、前記第2鍔部に向かって突出し前記第2鍔面に対向する第2平面を有する第2凸部と、を有し、
前記ドラムコアと前記板コアとは、前記第1鍔面と前記第1平面とが突き合わされ、前記第2鍔面と前記第2平面とが突き合わされて、接合されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るコイル部品の板コアは、第1凸部と第2凸部とを有しており、第1凸部の第1平面が第1鍔面に突き合わされ、第2凸部の第2平面が第2鍔面に突き合わされることにより、ドラムコアの第1鍔部および第2鍔部に接合されている。板コアが第1凸部および第2凸部を有することにより、第1凸部および第2凸部には、従来の平らな板コアに比べて接合に適した表面が形成される。したがって、本発明に係るコイル部品は、このような第1凸部および第2凸部を介して、板コアがドラムコアに接合されているため、板コアとドラムコアとの間の接合性が良好である。
【0008】
また、たとえば、巻軸方向に沿う前記板コアの長さは、前記巻軸方向に沿う前記ドラムコアの長さより短くてもよい。
【0009】
板コアの長さをドラムコアの長さより短くすることにより、第1凸部における第1平面の外側の部分や、第2凸部における第2平面の外側の部分にも接着剤が広がりやすくなるため、このようなコイル部品は、板コアとドラムコアとの間の接合性が良好である。
【0010】
また、たとえば、前記第1鍔面と前記第1平面とを接合する第1接着剤硬化部は、前記第1凸部において前記第1平面より前記第1鍔面から離れる方向に延びる第1壁面に接触してもよく、
前記第2鍔面と前記第2平面とを接合する第2接着剤硬化部は、前記第2凸部において前記第2平面より前記第2鍔面から離れる方向に延びる第2壁面に接触してもよい。
【0011】
第1凸部における第1壁面や、第2凸部における第2壁面は、第1平面や第2平面に比較して密な表面を有しており、接着剤との接合性が良好である。したがって、第1壁面や第2壁面に接着剤硬化部が接触していることにより、このようなコイル部品は、板コアとドラムコアとの間の接合性を、向上させることができる。
【0012】
また、たとえば、前記第1壁面は、前記第1平面に対して前記第2平面に近い側で接続する第1内壁面を有し、前記第1接着剤硬化部は前記第1内壁面に接触してもよく、
前記第2壁面は、前記第2平面に対して前記第1平面に近い側で接続する第2内壁面を有し、前記第2接着剤硬化部は前記第2内壁面に接触してもよい。
【0013】
第1内壁面および第2内壁面は、第1凸部および第2凸部において、中央の凹部側に位置する壁面であり、第1凸部および第2凸部のなかでも、特に密な表面が形成される傾向がある。したがって、第1内壁面や第2内壁面に接着剤硬化部が接触しているコイル部品は、板コアとドラムコアとの間の接合性を、効果的に向上させることができる。また、このようなコイル部品は、第1凸部や第2凸部に対して、接着剤硬化部が板コアの中央側に広がっているため、このような部分に接着面積が拡大しても、コイル部品の外形寸法には影響を与えない。したがって、このようなコイル部品は、外形寸法の製造バラツキが少なく、板コアとドラムコアとの間の接合性が良好なコイル部品を実現できる。
【0014】
また、たとえば、前記第1壁面は、前記第1平面に対して前記第2平面から遠い側で接続する第1外壁面を有し、前記第1接着剤硬化部は前記第1外壁面に接触してもよく、
前記第2壁面は、前記第2平面に対して前記第1平面から遠い側で接続する第2外壁面を有し、前記第2接着剤硬化部は前記第2外壁面に接触してもよい。
【0015】
第1外壁面および第2外壁面は、第1凸部および第2凸部において、第1平面や第2平面より外側に位置する壁面であり、第1平面や第2平面に比べて、密な表面が形成される傾向がある。したがって、第1外壁面や第2外壁面に接着剤硬化部が接触しているコイル部品は、板コアとドラムコアとの間の接合性を、効果的に向上させることができる。また、第1外壁面および第2外壁面に接着剤硬化部が接触しているコイル部品は、板コアの両端部またはその周辺を接着剤で被覆できるため、板コアとドラムコアとの間の接合性が良好である。
【0016】
また、たとえば、前記板コアは、金属コア又は合金コアであることを特徴とする。
【0017】
板コアが金属コア又は合金コアである場合、板コアがフェライトコアである場合に比べて表面が粗くなる傾向にあるが、そのような板コアであっても、第1凸部および第2凸部を有することにより、ドラムコアに対して良好な接合性を有する。
【0018】
また、たとえば、前記ドラムコアは、フェライトコアであってもよい。
【0019】
従来の形状である場合、金属コアの板コアと、フェライトコアのドラムコアを接合する場合に接合性が低下する傾向にあるが、板コアが第1凸部および第2凸部を有することにより、このようなコイル部品は、板コアとドラムコアの接合性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るコイル部品の斜視図である。
図2図2は、図1に示すコイル部品の分解斜視図である。
図3図3は、図1に示すコイル部品に含まれる板コアの正面図である。
図4図4は、図1に示すコイル部品に含まれる板コアの底面図である。
図5図5は、図1に示すコイル部品の断面図である。
図6図6は、図5の一部を拡大した部分拡大断面図である。
図7図7は、本発明の他の実施形態に係るコイル部品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るコイル部品10を斜め上方から見た斜視図である。コイル部品10は、ドラムコア20と、コイル30と、板コア40と、第1電極端子74と、第2電極端子76等を有する。コイル部品10は、略直方体状の外形状を有しており、たとえば、実装機械の吸着ノズルが板コア40の上面を吸着・保持して搬送することにより、実装基板に表面実装される。ただし、コイル部品10としては、表面実装されるもののみには限定されない。
【0022】
図2は、図1に示すコイル部品10の分解斜視図である。図2に示すように、コイル部品10のコアは、ドラムコア20と板コア40とを接合して構成される。コイル部品10は、板コア40とドラムコア20とを接合する接着剤が硬化して形成される第1接着剤硬化部64と第2接着剤硬化部66とを有する。
【0023】
硬化後に第1接着剤硬化部64と第2接着剤硬化部66となる接着剤としては、エポキシ系接着剤などがあげられるが、エポキシ系以外の接着剤を用いてもよい。なお、図2においては、第1接着剤硬化部64および第2接着剤硬化部66の形状については、模式的に示されている。第1接着剤硬化部64および第2接着剤硬化部66とその周辺の形状については、図5および図6を用いて、後程詳述する。
【0024】
図2に示すように、ドラムコア20は、巻芯部22と、巻芯部22を挟んで両側に配置される第1鍔部24および第2鍔部26とを有する。巻芯部22には、コイル30が巻回される。なお、コイル部品10の説明では、図1および図2に示すように、コイル30の巻軸方向をX軸方向、ドラムコア20と板コア40とを接合する方向をZ軸方向、X軸方向およびZ軸方向に直交する方向をY軸方向として説明を行う。
【0025】
巻芯部22における巻軸方向に直交する断面の形状は矩形であるが、巻芯部22の断面形状はこれに限定されず、円形、楕円形、その他の形状であってもよい。第1鍔部24および第2鍔部26は、巻芯部22と同様に、巻軸方向に直交する断面の形状が矩形である。ただし、第1鍔部24および第2鍔部26は、巻軸方向に直交する断面に関して、巻芯部22より広い断面積を有している。第1鍔部24および第2鍔部26は、巻軸方向に直交する方向に関して、巻芯部22に対して突出している。
【0026】
板コア40は、略矩形板状又は略直方体の外形状を有しており、ドラムコア20の第1鍔部24と第2鍔部26とに接続する。板コア40は、第1鍔部24および第2鍔部26の面のうち、第1方向側となるZ軸正方向側の面である第1鍔面24aおよび第2鍔面26aに接続する。板コア40の詳細形状については、後程述べる。
【0027】
第1鍔部24には、コイル30の一方の端部である第1端部34が電気的に接続される第1電極端子74が設けられている。図5に示すように、第1電極端子74は、第1鍔面24aとは反対側の面である鍔下面24bに設けられているが、第1電極端子74の設置位置としてはこれに限定されず、第1鍔部24の他の面や、第1鍔部24の複数の面に連続するように設けられてもよい。
【0028】
第2鍔部26には、コイル30の他方の端部である第2端部36が電気的に接続される第2電極端子76が設けられている。図5に示すように、第2電極端子76は、第2鍔面26aとは反対側の面である鍔下面26bに設けられているが、第2電極端子76の設置位置としてはこれに限定されず、第2鍔部26の他の面や、第2鍔部26の複数の面に連続するように設けられてもよい。
【0029】
図2に示すドラムコア20と板コア40とは、たとえば磁性材料で作製される。ドラムコア20と板コア40とは、同種の材料で作製されていてもよいが、異なる材料で作製されていてもよい。実施形態に係るコイル部品10において、板コア40は、純鉄、Fe‐Ni合金、Fe‐Si合金、Fe‐Si‐Al合金、Fe‐Si‐Cr合金などの金属コア又は合金コアである。
【0030】
板コア40は、たとえば、軟磁性金属粉末をバインダ等などと混合し、成形・焼成することにより作製される。板コア40が金属コア又は合金コアであることにより、コイル部品10の磁気飽和特性を向上させることができる。なお、板コア40に含まれる軟磁性金属粒子は、酸化クロムなどの酸化物の絶縁被膜を形成していることが好ましく、このような板コア40は、金属コア又は合金コアでありながら抵抗値が高く、コアの損失を低減することができる。ただし、板コア40は、フェライトコアであってもよい。
【0031】
実施形態に係るコイル部品10において、ドラムコア20は、フェライトコアである。ただし、ドラムコア20としてはフェライトコアに限定されず、ドラムコア20は、板コア40と同様に、金属コア又は合金コアであってもよい。ドラムコア20は、たとえば、Мn-Zn系フェライト、Ni-Zn系フェライトなどのフェライト粉末を用いて、フェライト焼結体を作製することにより得られる。
【0032】
ドラムコア20は、たとえば、バインダを実質的に含まないフェライト成形体から作製されることにより、ドラムコア20にボイドなどが生じる問題を防止できる。また、ドラムコア20を、フェライトコアとすることにより、抵抗値の高いコアを実現し、コアの損失を低減できる。また、板コア40を金属コア又は合金コアとし、ドラムコア20をフェライトコアとすることにより、磁気飽和特性が良好であって、コアロスの少ないコイル部品10を実現できる。
【0033】
断面図である図5に示す第1電極端子74および第2電極端子76は、たとえば、Ag、Ni、Snなどの電極材料を、第1鍔部24および第2鍔部26に対して塗布、および焼き付けたり、メッキ処理により被膜を形成したりすることにより、作製する。ただし、第1電極端子74および第2電極端子76としてはこれらに限定されず、たとえば、金属板を第1鍔部24および第2鍔部26に取り付けて、第1電極端子74および第2電極端子76を作製してもよい。
【0034】
図1に示すコイル30は、たとえば、被覆導線などにより構成される。コイル30を構成する導線は、より線であっても単線であってもよい。図5に示すように、コイル30は巻芯部22に1層巻きされているが、コイル30は、巻芯部22に多層巻きされているものであってもよい。また、コイル30の第1端部34と第2端部36は、第1電極端子74と第2電極端子76に対して、溶接やはんだ付けなどによって固定される。
【0035】
図3は、コイル部品10に含まれる板コア40の正面図であり、図4は、板コア40の底面図である。図3に示すように、板コア40は、第1凸部44と、第2凸部46とを有する。第1凸部44と、第2凸部46とは、板コア40の面のうち、ドラムコア20に対向するZ軸負方向側の面に形成される。また、第1凸部44と、第2凸部46とは、板コア40においてX軸方向(巻軸方向)の両側に配置されており、第1凸部44と第2凸部46との間には、第1凸部44および第2凸部46に対してZ軸正方向側に凹んでいる凹部48が形成されている。
【0036】
断面図である図5に示すように、第1凸部44は、ドラムコア20の第1鍔面24aに向かって突出している。第1凸部44の先端面である第1平面44aは、第1鍔面24aに対向する。第2凸部46は、ドラムコア20の第2鍔面26aに向かって突出している。第2凸部46の先端面である第2平面46aは、第2鍔面26aに対向する。
【0037】
図5に示すように、ドラムコア20と板コア40とは、第1鍔面24aと第1平面44aとが突き合わされ、第2鍔面26aと第2平面46aとが突き合わされて、接合されている。第1鍔面24aと第1平面44aとの間には、第1接着剤硬化部64が介在しており、第2鍔面26aと第2平面46aとの間には、第2接着剤硬化部66が介在している。
【0038】
図3および図4に示すように、第1凸部44は、第1鍔面24aに突き合わせられる第1平面44aの他に、第1平面44aより第1鍔面24aから離れる方向である上方向(Z軸正方向)または斜め上方向に延びる第1壁面44bを有する。第1壁面44bは、第1平面44aに対して第2平面46aに近い側(X軸正方向側)で接続する第1内壁面44baと、第1平面44aに対して第2平面46aから遠い側(X軸負方向側)で接続する第1外壁面44bbとを有する。
【0039】
また、第2凸部46は、第2鍔面26aに突き合わせられる第2平面46aの他に、第2平面46aより第2鍔面26aから離れる方向である上方向(Z軸正方向)または斜め上方向に延びる第2壁面46bを有する。第2壁面46bは、第2平面46aに対して第1平面44aに近い側(X軸負方向側)で接続する第2内壁面46baと、第2平面46aに対して第1平面44aから遠い側(X軸正方向側)で接続する第2外壁面46bbとを有する。
【0040】
図3に示すように、第1内壁面44baおよび第2内壁面46baは、板コア40において巻軸方向(X軸方向)中央側に傾斜する曲面であり、第1外壁面44bbおよび第2外壁面46bbは、板コア40の巻軸方向(X軸方向)外側に傾斜する平面である。第1内壁面44baと第2内壁面46baとは、凹部48によって接続されている。
【0041】
図5の一部を拡大した図6に示すように、第1鍔面24aと第1平面44aとを接合する第1接着剤硬化部64は、第1平面44aからはみ出して、第1壁面44bに接触している。すなわち、第1平面44aから板コア40の中央側にはみ出した第1接着剤硬化部64の一部は、第1内壁面44baに接触している。また、第1平面44aから板コア40の外側にはみ出した第1接着剤硬化部64の他の一部は、第1外壁面44bbに接触している。
【0042】
図5に示すように、第2鍔面26aと第2平面46aとを接合する第2接着剤硬化部66も、第1接着剤硬化部64と同様に、第2平面46aからはみ出して、第2壁面46bに接触している。すなわち、第2平面46aから板コア40の中央側にはみ出した第2接着剤硬化部66の一部は、第2内壁面46baに接触している。また、第2平面46aから板コア40の外側にはみ出した第2接着剤硬化部66の他の一部は、第2外壁面46bbに接触している。
【0043】
ここで、図3および図4に示すような第1凸部44および第2凸部46を板コア40が有することにより、板コア40においてドラムコア20に対向する面は、単に表面積が増加するだけでなく、部分的に密な表面が形成される傾向にある。すなわち、図3に示すような板コア40は、板コアの厚み方向であるZ軸方向に移動する金型を用いて成型されるため、Z軸方向に直交する第1平面44aや第2平面46aに比べて、第1平面44aや第2平面46aに対して平行でない第1壁面44bおよび第2壁面46bのほうが、コアを構成する材料が密に配置された表面が形成される傾向にある。
【0044】
また、第1壁面44bおよび第2壁面46bの中でも、厚みの薄い凹部48に近い第1内壁面44baおよび第2内壁面46baの方が、第1外壁面44bbや第2外壁面46bbに比べて、材料が密に配置された表面になる傾向にある。このような面の粗密は、金型内の粒子の移動量が、金型の移動方向や厚みが薄い部分で大きくなり、金型の移動方向に垂直な方向や厚みの厚い部分で小さくなることに起因していると考えられる。
【0045】
コイル部品10では、板コア40におけるドラムコア20との接合部分に、第1凸部44と第2凸部46を設けることにより、図5に示す第1および第2接着剤硬化部64、66に対する接合性が良好な緻密な表面が、第1凸部44と第2凸部46に配置される。したがって、このような第1凸部44および第2凸部46と、第1鍔面24aおよび第2鍔面26aとの間に第1および第2接着剤硬化部64、66を介在させたコイル部品10は、板コア40とドラムコア20との接合強度が良好である。
【0046】
また、第1凸部44と第2凸部46のうち、特に緻密な表面が形成されやすい傾向にある第1壁面44bおよび第2壁面46bに、第1および第2接着剤硬化部64、66が接触していることにより、板コア40とドラムコア20との接合強度がさらに向上する。なお、板コア40が金属コア又は合金コアである場合、第1凸部44と第2凸部46を設けることが、板コア40とドラムコア20との接合強度の向上に特に効果がある。
【0047】
すなわち、金属コア又は合金コアの表面は、焼結フェライトなどのフェライトコアに比べて、成形体のバインダ含有量の多さなどに起因して、粗い傾向がある。粗い金属コア又は合金コアの表面に接着剤を塗布すると、接着剤の溶剤成分が表面から急速に奪われることにより、接着剤硬化部による接合強度に悪影響を与える場合がある。しかしながら、コイル部品10の板コア40では、第1凸部44および第2凸部46に密な表面が形成されることにより、接着時における接着剤の溶剤成分の喪失を抑制し、第1および第2接着剤硬化部64、66は、好適な接合強度を奏する。
【0048】
以上のように実施形態を挙げて本発明を説明してきたが、本発明は上述した実施形態のみに限定されず、他の多くの実施形態、実施例および変形例を含むことは言うまでもない。たとえば、第1凸部44および第2凸部46が有する第1壁面44bおよび第2壁面46bは、図3に示すように、第1平面44aおよび第2平面46aから斜め上方向へ延びる傾斜面であってもよいが、これとは異なり、第1平面44aや第2平面46aに対して垂直に上方向(Z軸正方向)へ延びる面であってもよい。
【0049】
また、図1に示すコイル部品10では、巻軸方向(X軸方向)に沿う板コア40の長さは、巻軸方向に沿うドラムコア20の長さと同じであるが、板コア40とドラムコア20の長さは異なっていてもよい。図7は、他の実施形態に係るコイル部品110の断面図である。コイル部品110は、巻軸方向に沿う板コア140の長さL1が、巻軸方向に沿うドラムコア20の長さL2より短い点で、第1実施形態に係るコイル部品10とは異なる。
【0050】
図7に示すコイル部品110は、第1接着剤硬化部164および第2接着剤硬化部166が、それぞれ第1外壁面44bbと第2外壁面46bbの全体を被覆している。このように、コイル部品110は、第1接着剤硬化部164および第2接着剤硬化部164が板コア140の外側面の近傍まで広がっており、板コア140とドラムコア20との接合強度が良好である。
【0051】
また、コイル部品110は、板コア140の長さL1が、ドラムコア20の長さL2より短いため、たとえ第1接着剤硬化部164および第2接着剤硬化部166が板コア140の外側へはみ出したとしても、板コア140より長いドラムコア20より外側にはみ出すことが防止される。したがって、コイル部品110は、外形寸法のバラツキを抑制しつつ、板コア140とドラムコア20との間の接合性を向上させることができる。その他のコイル部品110の特徴および効果については、コイル部品10と同様である。
【符号の説明】
【0052】
10、110…コイル部品
20…ドラムコア
22…巻芯部
24…第1鍔部
24a…第1鍔面
24b、26b…鍔下面
26…第2鍔部
26a…第2鍔面
30…コイル
34…第1端部
36…第2端部
40、140…板コア
44…第1凸部
44a…第1平面
44b…第1壁面
44ba…第1内壁面
44bb…第1外壁面
46…第2凸部
46a…第2平面
46b…第2壁面
46ba…第2内壁面
46bb…第2外壁面
48…凹部
64、164…第1接着剤硬化部
66、166…第2接着剤硬化部
74…第1電極端子
76…第2電極端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7