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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】受電装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/60 20160101AFI20240920BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240920BHJP
   H02J 50/12 20160101ALN20240920BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J7/00 301D
H02J50/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020080694
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021175355
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】七野 隆広
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-007838(JP,A)
【文献】特開2009-033782(JP,A)
【文献】特開2016-007117(JP,A)
【文献】特開2017-070074(JP,A)
【文献】特開2017-034972(JP,A)
【文献】特開2013-132133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00-50/90
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電装置であって、
送電装置から無線で電力を受電する受電手段と、
受電電力の情報を送信する通信手段と、
前記受電手段により前記受電装置を起動する電力を受電した後で、かつ、前記送電装置が送電を制限る第1の期間であって波形の包絡線に基づいてQuality factorが測定される前記第1の期間とは重複しない第2の期間において、前記受電電力測定する測定手段と、
し、
前記通信手段は、前記送電装置から、測定された前記Quality factorに基づく異物の検出処理の結果を示す情報を受信し、
前記通信手段は、前記Quality factorに基づいて異物が検出されなかった場合、前記測定手段により測定された受電電力の情報であって電力損失に基づく異物の検出処理に用いられるCalibration data Pointとなる情報を送信することを特徴とする受電装置。
【請求項2】
前記受電電力測定に基づいて、前記送電装置における送電の制限と再開とを検出する検出手段をさらに有する、ことを特徴とする請求項1に記載の受電装置。
【請求項3】
前記送電装置との間で、前記第1の期間のタイミングを事前に共有する手段をさらに有する、ことを特徴とする請求項1に記載の受電装置。
【請求項4】
前記第2の期間は、送電が再開された後開始される、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項5】
前記第2の期間は、送電の再開の後に、前記受電装置における受電電力に対応する値が安定するまでの時間が経過した後開始される、ことを特徴とする請求項4に記載の受電装置。
【請求項6】
前記第2の期間は、送電が制限される前終了される、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項7】
前記第1の期間は、前記第2の期間が終了してから当該第2の期間において測定された受電電力の情報を前記送電装置へ送信するまでのオフセット期間の間に含まれる、ことを特徴とする請求項6に記載の受電装置。
【請求項8】
送電装置から無線で電力を受電する受電装置によって実行される制御方法であって、
前記受電装置を起動する電力を受電した後で、かつ、前記送電装置が送電を制限る第1の期間であって波形の包絡線に基づいてQuality factorが測定される前記第1の期間とは重複しない第2の期間において、受電電力測定する測定工程と
前記送電装置から、測定された前記Quality factorに基づく異物の検出処理の結果を示す情報を受信する受信工程と、
前記Quality factorに基づいて異物が検出されなかった場合、前記測定工程において測定された受電電力の情報であって電力損失に基づく異物の検出処理に用いられるCalibration data Pointとなる情報を送信する送信工程と、
含むことを特徴とする制御方法。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1から7のいずれか1項に記載の受電装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電力伝送における物体検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線電力伝送システムの技術開発が広く行われており、標準化団体Wireless Power Consortium(WPC)が無線充電規格として策定した規格(WPC規格)が広く知られている。このような無線電力伝送では、送電装置が電力を伝送可能な範囲に異物が存在する場合に、その異物を検出して送受電を制御することが肝要になる。異物とは、受電装置とは異なる物体である。特許文献1には、WPC規格に準拠した送受電装置の近傍に異物が存在する場合に、その異物を検出して送受電を制限する手法が記載されている。特許文献2には、無線電力伝送システムのコイルを短絡させて異物検出を行う技術が開示されている。また、特許文献3には、無線電力伝送システムの送電コイルに一定期間高周波信号を印加して測定したそのコイルのQ値(Quality factor)の変化によって異物を検出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-070074号公報
【文献】特開2017-034972号公報
【文献】特開2013-132133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、受電装置とは異なる物体の検出を精度よく実行可能とする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による受電装置は、送電装置から無線で電力を受電する受電手段と、
受電電力の情報を送信する通信手段と、前記受電手段により前記受電装置を起動する電力を受電した後で、かつ、前記送電装置が送電を制限る第1の期間であって波形の包絡線に基づいてQuality factorが測定される前記第1の期間とは重複しない第2の期間において、前記受電電力測定する測定手段と、をし、前記通信手段は、前記送電装置から、測定された前記Quality factorに基づく異物の検出処理の結果を示す情報を受信し、前記通信手段は、前記Quality factorに基づいて異物が検出されなかった場合、前記測定手段により測定された受電電力の情報であって電力損失に基づく異物の検出処理に用いられるCalibration data Pointとなる情報を送信する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、受電装置とは異なる物体の検出を精度よく実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】無線電力伝送システムの構成例を示す図である。
図2】受電装置の構成例を示す図である。
図3】送電装置の構成例を示す図である。
図4】受電装置の制御部の機能構成例を示す図である。
図5A】従来の送電装置と受電装置とが実行する処理の流れの例を示す図である。
図5B】実施形態に係る送電装置と受電装置とが実行する処理の流れの例を示す図である。
図5C】実施形態に係る送電装置と受電装置とが実行する処理の流れの例を示す図である。
図6】第2異物検出の測定期間及び測定結果の通知期間と第3異物検出の送電電力制限期間との関係を説明する図である。
図7】受電装置が実行する処理の流れの例を示す図である。
図8】受電電力の報告と、第3異物検出の要求との時間関係を説明する図である。
図9A】受電装置が実行する処理の流れの例を示す図である。
図9B】受電装置が実行する処理の流れの例を示す図である。
図10】送電装置が実行する処理の流れの例を示す図である。
図11】時間領域におけるQ値の測定方法を説明するための概念図である。
図12】パワーロス手法による異物検出の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
(システム構成)
図1に、本実施形態に係る無線電力伝送システムの構成例を示す。本無線電力伝送システムは、一例において、送電装置100と受電装置102とを含んで構成される。送電装置100と受電装置102は、WPC(Wireless Power Consortium)規格に準拠しているものとする。送電装置100は、例えば自装置上に載置された受電装置102に対して無線で送電する電子機器である。送電装置100は、送電コイル101を介して受電装置102へ無線で電力を送る。受電装置102は、例えば、送電装置100から受電して内蔵バッテリに充電を行う電子機器である。また、受電装置102は、他の装置(カメラ、スマートフォン、タブレットPC、ラップトップ、自動車、ロボット、医療機器、プリンター)に内蔵され、それらの装置に電力を供給するように構成されてもよい。送電装置100がスマートフォンなどであってもよい。この場合、例えば受電装置102は、別のスマートフォンであってもよいし、無線イヤホンであってもよい。また、受電装置102は自動車等の車両や輸送機であってもよいし、送電装置100は自動車等の車両や輸送機のコンソール等に設置される充電器であってもよい。なお、矢印104は、受電装置102が送電装置100上を移動することを示しており、移動の前後で、送電コイル101と受電装置102の受電コイルの位置関係が変化することを示している。
【0010】
また、図1は、導電性の異物103が、送電コイル101から出力される無線電力が影響を及ぼす範囲(送電可能範囲、operating volume)に存在している状況を例示している。このような異物103がoperating volume内に存在すると、送受電の効率が劣化し、場合によっては発熱等の問題が生じうる。このため、送電装置100と受電装置102は、このような異物103を検出して、送受電制御を実行することが重要となる。そこで、本実施形態では、送電装置100および受電装置102が、WPC規格に準拠する制御の範囲内で、送電コイル内部の電圧の時間変化からQ値(Quality factor)を測定して、このような異物103を検出して、送受電の制御を行う。以下では、このような手順を実行する装置の構成と処理の流れの例について詳細に説明する。なお、異物103は、受電装置とは異なる物体である。異物103は、例えば、金属片やICカードのような導電性の物体である。
【0011】
(装置の構成)
図2に、受電装置102の構成例を示す。受電装置102は、例えば、制御部200、受電コイル201、整流部202、電圧制御部203、通信部204、充電部205、バッテリ206、共振コンデンサ207、スイッチ208、および、UI部209を含んで構成される。制御部200は、受電装置102の全体を制御する。制御部200は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の1つ以上のプロセッサを含んで構成される。なお、制御部200は、例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の1つ以上の記憶装置を含んでもよい。そして、制御部200は、例えば、記憶装置に記憶されたプログラムをプロセッサによって実行することにより、後述の各処理を実行するように構成されうる。受電コイル201は、送電装置100の送電コイル101から電力を受電する際に用いられるコイルである。整流部202は、受電コイル201を介して受電した交流電圧および交流電流を、直流電圧および直流電流に変換する。電圧制御部203は、整流部202から入力された直流電圧のレベルを、制御部200および充電部205などが動作するのに適した(過大でもなく過少でもない)直流電圧のレベルに変換する。また、電圧制御部203は、変換されたレベルの電圧を充電部205へ供給する。充電部205は、電圧制御部203から供給された電圧によりバッテリ206を充電する。通信部204は、送電装置100との間で、WPC規格に基づいた無線充電の制御通信を行う。この制御通信は、受電コイル201で受電した交流電圧および交流電流を負荷変調することにより行われる。
【0012】
また、受電コイル201は、共振コンデンサ207と接続され、特定の周波数F2で共振するように構成される。スイッチ208は、受電コイル201と共振コンデンサ207を短絡するためのスイッチであり、制御部200によって制御される。スイッチ208がオンとされると、受電コイル201と共振コンデンサ207が直列共振回路を構成する。このとき、受電コイル201と共振コンデンサ207およびスイッチ208の閉回路にのみ電流が流れ、整流部202や電圧制御部203には電流が流れなくなる。これに対して、スイッチ208がオフとされると、受電コイル201および共振コンデンサ207を介して、整流部202および電圧制御部203に電流が流れるようになる。
【0013】
UI部209は、ユーザに対する各種の情報出力を行うユーザインタフェース(UI)である。UI部209は、例えば、画面表示、LEDの点滅や色の変化、スピーカによる音声出力、受電装置102本体の振動等の動作により情報を出力する。UI部209は、例えば、液晶パネル、スピーカ、バイブレーションモータ等を含んで構成される。なお、UI部209は、ユーザによる情報入力を受け付ける機能を有してもよく、例えば、ボタンやタッチパネル等を含んで構成されうる。
【0014】
出力コンデンサ210は、電圧制御部203と充電部205との間に接続され、充電部205において短時間に急激に負荷が増大した場合等において出力電圧を安定させる。また、出力コンデンサ210は、電圧制御部203が供給できる電力が短時間に急激に減少したとしても、一定期間は安定した電圧を充電部205に供給することを可能とすることができる。なお、送電装置100が短時間(例えば図11(A)及び図11(B)に関連して後述する第3異物検出処理における時間T0からT5の間)送電を停止することがある。この場合、整流部202の入力電力、入力電圧、および入力電流のいずれかが、短時間停止し又は急激に低下することが想定される。出力コンデンサ210は、このような場合であっても、受電装置102および負荷である充電部205が動作するのに十分な電圧、電流および電力を供給できるように構成されうる。
【0015】
図3に、送電装置100の構成例を示す、送電装置100は、例えば、制御部300、電源部301、送電部302、送電コイル303、通信部304、メモリ305、共振コンデンサ306、およびスイッチ307を含んで構成される。制御部300は、送電装置100の全体を制御する。制御部300は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の1つ以上のプロセッサを含んで構成される。なお、制御部300は、例えば、後述のメモリ305や制御部300に内蔵された記憶装置に記憶されたプログラムをプロセッサによって実行することにより、後述の各処理を実行するように構成されうる。電源部301は、各機能ブロックに電源を供給する。電源部301は、例えば、商用電源又はバッテリである。バッテリには、例えば、商用電源から供給される電力が蓄電されうる。
【0016】
送電部302は、電源部301から入力された直流又は交流電力を、無線電力伝送に用いる周波数帯の交流電力に変換し、その交流電力を送電コイル303へ入力し、これにより受電装置102に受電させるための電磁波を送電コイル303から発生させる。例えば、送電部302は、電源部301により供給される直流電圧を、FET(Field Effect Transister)を使用したハーフブリッジ又はフルブリッジ構成のスイッチング回路で交流電圧に変換する。この場合、送電部302は、FETのON/OFFを制御するゲ-トドライバを含む。また、送電部302は、送電コイル303に入力する電圧(送電電圧)と電流(送電電流)との少なくともいずれか、または、周波数を調節することにより、出力させる電磁波の強度や周波数を制御する。例えば、送電部302は、送電電圧又は送電電流を大きくすることにより電磁波の強度を強くし、送電電圧又は送電電流を小さくすることにより電磁波の強度を弱くする。ここで、送電部302は、WPC規格に対応した受電装置102の充電部205に対して少なくとも15ワット(W)の電力を出力するだけの電力を供給する能力があるものとする。また、送電部302は、制御部300の指示に基づいて、送電コイル303による電磁波の出力が開始又は停止されるように、交流電力の出力制御を行う。
【0017】
通信部304は、送電コイル303を介して、受電装置102との間で、WPC規格に基づく送電制御のための通信を行う。通信部304は、送電部302から出力される交流電圧および交流電流を周波数変調(FSK(Frequency Shift Keying))を用いて変調し、受電装置102へ情報を伝送する。また、通信部304は、受電装置102の通信部204による負荷変調で変調された交流電圧および交流電流を復調して、受電装置102が送信した情報を取得する。すなわち、通信部304は、送電部302から送電される電磁波に受電装置102へ送信すべき情報を重畳し、その電磁波に対して受電装置102によって重畳された受信信号を検出することによって、受電装置102と通信する。また、通信部304は、送電コイル303とは異なるコイル(又はアンテナ)を用いて、WPC規格とは異なる規格に従って受電装置102と通信を行ってもよい。また、通信部304は、複数の通信機能を選択的に用いて受電装置102と通信してもよい。メモリ305は、例えば、制御部300によって実行される制御プログラムや、送電装置100及び受電装置102の状態などの情報を記憶する。例えば、送電装置100の状態は制御部300により取得される。また、受電装置102の状態は、受電装置102の制御部200により取得されて通信部205から送信され、送電装置100は、通信部304を介してこの状態を示す情報を取得する。
【0018】
また、送電コイル303は、共振コンデンサ306と接続され、特定の周波数F1で共振するように構成される。スイッチ307は、送電コイル303と共振コンデンサ306とを短絡するためのスイッチであり、制御部300によって制御される。スイッチ307がオンとされると、送電コイル303と共振コンデンサ306が直列共振回路を構成する。このとき、送電コイル303と共振コンデンサ306およびスイッチ307の閉回路にのみ電流が流れる。スイッチ307がオフとされると、送電コイル303および共振コンデンサ306には、送電部302から電力が供給される。
【0019】
図4に、受電装置102の制御部200の機能構成例を示す。制御部200は、例えば、第2Q値測定部401、Calibration処理部402、第2異物検出処理部403、および、第3異物検出処理部404を有する。第2Q値測定部401は、後述のような、時間領域におけるQ値の測定(第2Q値測定)を行う。Calibration処理部402は、後述のような、Calibration data Pointの取得およびCalibrationカーブの作成処理に必要な受電電力を送電装置100に通知する。第2異物検出処理部403は、後述するパワーロス手法に基づく異物検出処理(第2異物検出処理)を行う。第3異物検出処理部404は、第2Q値測定部401によって測定されたQ値に基づく異物検出処理(第3異物検出処理)を実行する。図4に示される各処理部は、例えば、それぞれが独立した複数のプログラムとして構成され、イベント処理等により、これらの複数のプログラム間の同期を確立しながら並行して動作しうる。
【0020】
(WPC規格における異物検出方法)
続いて、WPC(Wireless Power Consortium)規格で規定されている異物検出方法について、送電装置100と受電装置102を例として用いて説明する。ここでは、周波数領域で測定されたQ値に基づく異物検出方法(第1異物検出方法)と、パワーロス手法に基づく異物検出方法(第2異物検出方法)について説明する。
【0021】
(1)周波数領域で測定されたQ値に基づく異物検出方法(第1異物検出方法)
第1異物検出方法では、まず、送電装置100が、異物の影響によって変化するQ値の周波数領域における測定(第1Q値測定)を行う。この測定は、送電装置100がAnalog Pingを送電してから、Digital Pingを送電するまでの間に実行される(図5AのF501を参照)。例えば、送電部302は、Q値を測定するために、送電コイル303が出力する無線電力の周波数を掃引し、送電装置100は送電コイルと直列(または並列)に接続される共振コンデンサ306の端部の電圧値を測定する。そして、送電装置100は、その電圧値がピークとなる共振周波数を探索し、共振周波数で測定されるピークの電圧値から3dB下がった電圧値を示す周波数と、その共振周波数とから、送電コイル303のQ値を算出する。
【0022】
また、別の方法でQ値を測定してもよい。例えば、送電部302は、送電コイル303が出力する無線電力の周波数を掃引し、送電装置100は送電コイル303と直列に接続される共振コンデンサ306の端部の電圧値を測定して、その電圧値がピークとなる共振周波数を探索する。そして、送電装置100は、その共振周波数においてその共振コンデンサ306の両端の電圧値を測定し、その両端の電圧値の比から送電コイル303のQ値を算出する。
【0023】
送電コイル303のQ値を算出した後、送電装置100の制御部300は、通信部304を介して、異物検出の判断基準となるQ値を受電装置102から取得する。例えば、制御部300は、WPC規格で規定された送電コイル上に受電装置が置かれた場合の送電コイルのQ値(第1の特性値)を、受電装置102から受信する。このQ値は、受電装置102が送信するFOD(Foreign Object Detection) Statusパケットに格納されて、送電装置100は、このFOD Statusパケットを受信することによりこのQ値を取得する。制御部300は、取得したQ値から、送電装置100上に受電装置102が置かれた場合の、送電コイル303のQ値を推定する。本実施形態では、推定されたQ値を第1基準Q値と呼ぶ。なお、FOD Statusパケットに格納されるQ値は、あらかじめ受電装置102の不揮発メモリ(不図示)に記憶されうる。すなわち、受電装置102は、事前に記憶していたQ値を送電装置100へ通知しうる。なお、このQ値は、後述するQ1に対応する。
【0024】
送電装置100の制御部300は、第1基準Q値と、送電装置100により測定されたQ値とを比較し、比較結果に基づいて異物の有無を判定する。例えば、制御部300は、第1基準Q値に対して、a%(第1の割合)低下したQ値を閾値として、測定されたQ値がその閾値より低い場合に、異物がある可能性が高いと判定し、そうでない場合は異物がない可能性が高いと判定する。
【0025】
(2)パワーロス手法に基づく異物検出方法(第2異物検出方法)
続いて、WPC規格で規定されているパワーロス手法に基づく異物検出方法について、図12を参照して説明する。図12は、パワーロス手法による異物検出の概念図であり、横軸は送電装置100の送電電力を示し、縦軸は受電装置102の受電電力を示す。
【0026】
まず、送電装置100の送電部302は、受電装置102に対してDigital Pingを送電する。そして、送電装置100のCalibration処理部402は、Digital Pingを受電したときの受電装置102における受電電力値Pr1(Light Loadという)を、送電装置100へ通知する。受電電力値は、少なくとも、充電部205に入力される電力を含む。なお、この通知は、Received Power Packet(mode1)を用いて行われる。以下では、Received Power Packet(mode1)を「RP1」と呼ぶ。このとき、受電装置102は、受電電力を負荷(充電部205とバッテリ206など)に供給していない。送電装置100の制御部300は、受信したRP1によって示される受電電力Pr1と、そのPr1が得られたときの送電電力値Pt1との関係(図12の点1200)を、メモリ305に記憶する。これにより、送電装置100は、送電電力としてPt1を送電したときの、送電装置100と受電装置102との間の電力損失量がPt1-Pr1(Ploss1)であることを認識することができる。
【0027】
次に、受電装置102のCalibration処理部402は、受電装置102における受電電力値Pr2(Connected Loadという)の値を送電装置100へ通知する。この通知は、Received Power Packet(mode2)を用いて行われる。なお、以下では、Received Power Packet(mode2)を「RP2」と呼ぶ。このとき、受電装置102は、受電電力を負荷に供給している。そして、送電装置100の制御部300は、受信したRP2によって示される受電電力Pr2と、そのPr2が得られたときの送電電力値Pt2との関係(図12の点1201)を、メモリ305に記憶する。これにより、送電装置100は、送電電力としてPt2を送電したときの、送電装置100と受電装置102との間の電力損失量がPt2-Pr2(Ploss2)であることを認識することができる。なお、送電電力値は、少なくとも、送電部303が送電コイル304に出力した電力を含んだ値である。
【0028】
そして送電装置100の制御部300は、点1200と点1201とを直線補間し、直線1202を作成する。直線1202は、送電装置100と受電装置102の周辺に異物が存在しない状態における、送電電力と受電電力の関係に対応する。このため、送電装置100は、送電電力値と直線1202とから、異物がない可能性が高い状態における受電電力を予想することができる。例えば、送電装置100は、送電電力値がPt3の場合について、送電電力値がPt3である場合に対応する直線1202上の点1203から、受電電力値がPr3であると予想することができる。
【0029】
ここで、送電装置100の送電部302が、Pt3の送電電力で受電装置102に対して送電した場合に、通信部304が受電装置102から受電電力値Pr3’という値を受信したとする。送電装置100の制御部300は、異物が存在しない状態における受電電力値Pr3から、実際に受電装置102から受信した受電電力値Pr3’を引いた値Pr3-Pr3’(=Ploss_FO)を算出する。このPloss_FOは、送電装置100と受電装置102との間に異物が存在する場合に、その異物で消費される電力損失と考えることができる。このため、送電装置100の制御部300は、異物で消費されたであろう電力Ploss_FOがあらかじめ決められた閾値を超えた場合に、異物が存在すると判断することができる。この閾値は、例えば、点1200と点1201との関係に基づいて導出される。なお、異物はTXとRXの間に存在しなくても、送電可能範囲に存在することで、電力を受けて発熱してしまう。
【0030】
また、送電装置100の制御部300は、事前に、異物が存在しない状態における受電電力値Pr3から、送電装置100と受電装置102との間の電力損失量Pt3-Pr3(Ploss3)を求めておく。そして、送電装置100の制御部300は、異物が存在するか不明な状態において受電装置102から受信した受電電力値Pr3’から、異物が存在する状態での送電装置100と受電装置102間の電力損失量Pt3-Pr3’(Ploss3’)を算出する。そして、送電装置100の制御部300は、Ploss3’-Ploss3を算出し、この値があらかじめ決められた閾値を超えた場合に、異物が存在すると判断することができる。なお、Ploss3’-Ploss3=Pt3-Pr3’-Pt3+Pr3=Pr3-Pr3’である。このため、電力損失量の比較により、異物で消費されたと予測される電力Ploss_FOを推定することもできる。
【0031】
以上のように、異物で消費されたであろう電力Ploss_FOは、受電電力の差Pr3-Pr3’として算出されてもよいし、電力損失の差Ploss3’-Ploss3(=Ploss_FO)として算出されてもよい。
【0032】
送電装置100の制御部300は、直線1202を取得した後、通信部304を介して、受電装置102から定期的に現在の受電電力値(例えば上記のPr3’)を受信する。受電装置102のCalibration処理部402が定期的に送信する現在の受電電力値は、Received Power Packet(mode0)として送電装置100に送信される。送電装置100の制御部300は、Received Power Packet(mode0)に格納されている受電電力値と、直線1202とに基づいて異物検出を行う。なお、以下では、Received Power Packet(mode0)を「RP0」と呼ぶ。
【0033】
なお、送電装置100と受電装置102との周辺に異物が存在しない状態における送電電力と受電電力の関係である直線1202を取得するための点1200および点1201を、本実施形態では「Calibration data Point」と呼ぶ。また、少なくとも2つのCalibration data Pointを補間して取得される線分(直線1202)を「Calibrationカーブ」と呼ぶ。Calibration data PointおよびCalibrationカーブ(第2の基準)は、送電装置100の制御部300による異物検出処理のために使用される。
【0034】
(時間領域におけるQ値測定方法)
時間領域におけるQ値の測定方法について、図11(A)及び図11(B)を用いて説明する。図11(A)及び図11(B)は、時間領域におけるQ値の測定(第2Q値測定)の方法を説明するための概念図である。本実施形態では、第2Q値に基づく異物検出方法を第3異物検出方法と呼ぶ。受電装置102において、第2Q値測定は、第2Q値測定部401により行われる。第2Q値測定では、送電装置100と受電装置102が、同じ期間にスイッチをオンとして、送電を瞬断させたうえで、受電電力を負荷に届けないようにする。これによれば、例えばコイルに印加される電圧が徐々に減少する。そして、この減少の仕方によって第2Q値が算出される。
【0035】
図11(A)の波形1100は、送電コイル又は受電コイルの電圧値の時間経過を示している。なお、ここでの送電コイル又は受電コイルの電圧値は、送電装置100の送電コイル303又は受電装置102の受電コイル201の端部に印加される高周波電圧の値でありうる。また、ここでの送電コイル又は受電コイルの電圧値は、送電装置100の共振コンデンサ306もしくは受電装置102の共振コンデンサ207の端部に印加される高周波電圧の値であってもよい。なお、図11(A)及び図11(B)において、横軸は時間を示しており、縦軸は電圧値を示している。時間T0において、送電装置100が送電コイル303や共振コンデンサ306への高周波電圧の印加(送電)を停止する。これに応じて、送電装置100の送電コイル303や共振コンデンサ306における電圧値が徐々に減少し、受電装置102の受電コイル201や共振コンデンサ207における電圧値も徐々に減少する。点1101は、高周波電圧の包絡線上の一点であり、時間T1における高周波電圧である。図11(A)における(T1、A1)は、時間T1における電圧値がA1であることを示す。同様に、点1102は、高周波電圧の包絡線上の一点であり、時間T2における高周波電圧である。図11(A)における(T2、A2)は、時間T2における電圧値がA2であることを示す。
【0036】
Q値測定は、時間T0以降の電圧値の時間変化に基づいて実行される。例えば、Q値は、電圧値の包絡線である点1101および点1102の時間、電圧値、および、高周波電圧の周波数f(以降、fのことを動作周波数と呼ぶ。)に基づいて、(式1)により算出される。
(式1)
すなわち、ここでのQ値は、送電が制限された(停止された)後の、送電コイル303の経過時間とその際の電圧の降下量との関係により定まる電気特性である。
【0037】
次に、本実施形態で受電装置102が時間領域でQ値を測定するための処理について図11(B)を参照して説明する。波形1103は、受電コイル201に印加される高周波電圧の値を示しており、その周波数は、Qi規格で使用される110kHzから148.5kHzの間の周波数である。また、点1104および点1105は、電圧値の包絡線の一部である。上述のように、送電装置100は、時間T0からT5の区間において送電を停止する。そして、送電装置100の制御部300は、スイッチ308をオンとして、送電コイル304と共振コンデンサ307とを含んだ共振回路を構成する。また、受電装置102の制御部200は、受電コイル201の電圧値を観測することにより送電装置100における送電の停止を検出すると、スイッチ208をオンとして、受電コイル201と共振コンデンサ207とを含んだ共振回路を構成する。受電装置102の第2Q値測定部401は、時間T3における電圧値A3(点1104)、時間T4における電圧値A4(点1105)および高周波電圧の動作周波数と(式1)に基づいて、Q値を測定する。なお、送電装置100は、時間T5において送電を再開する。受電装置102の制御部200は、受電コイル201の電圧値を観測することにより、時間T5における送電の再開を検出すると、スイッチ208をオフとして、受電コイル201と共振コンデンサ207とを含んだ共振回路を開放する。このように、第2Q値測定では、送電装置100が送電を瞬断している間に、受電装置102の第2Q値測定部401が、時間経過と電圧値および動作周波数に基づいてQ値を測定する。
【0038】
周波数領域において測定されたQ値(第1Q値)に基づく異物検出(第1異物検出方法)は、測定のたびに共振周波数を探すために周波数を掃引する。送電装置100がDigital PingやPower Transferフェーズのなど比較的大きな電力を送電中にこのような掃引が実行されると、送電部302のスイッチングノイズの増大の原因となりうる。一方で、時間領域において測定されたQ値(第2Q値)に基づく異物検出(第3異物検出方法)は、単一の周波数で実行可能であり、周波数を掃引する必要がない。このため、Digital PingやPower Transferフェーズの送電時の動作周波数で実行可能であり、スイッチングノイズへの影響が少ない。このため、第3異物検出方法は、Digital PingやPower Transferフェーズの送電時の動作周波数において実行可能であり、大きな電力を送電中でも第1異物検出方法と比較してスイッチングノイズを低減することができる。
【0039】
(従来の送電装置および受電装置の動作)
従来の送電装置100と受電装置102の動作について図5Aを用いて説明する。図5Aの説明では、送電装置100と受電装置102は、それぞれ、WPC規格v1.2.3に準拠した送電装置および受電装置であるとする。
【0040】
送電装置100は、送電コイル303の近傍に存在する物体を検出する為にAnalog Pingを送電する(F500)。Analog Pingは、パルス状の電力で、物体を検出するための電力である。また、Analog Pingは、受電装置102がこれを受電したとしても、制御部200を起動することができない程度の微小な電力である。送電装置100は、Analog Pingにより、送電コイル303の近傍に存在する物体に起因する送電コイル303内部の電圧値の共振周波数のシフトや、送電コイル303を流れる電圧値・電流値の変化によって物体を検出する。送電装置100は、Analog Pingにより物体を検出すると、上述の第1Q値測定により送電コイル303のQ値を測定する(F501)。そして、送電装置100は、第1Q値測定が終了すると、Digital Pingの送電を開始する(F502)。Digital Pingは、受電装置102の制御部200を起動させるための電力であり、Analog Pingよりも大きい電力である。また、Digital Pingは、以降、連続的に送電される。すなわち、送電装置100は、Digital Pingの送電を開始してから(F502)、受電装置102から後述のEPT(End Power Transfer)データの受信(F524)まで、Digital Ping以上の電力を送電し続ける。
【0041】
受電装置102は、Digital Pingを受電して起動すると、受電したDigital Pingの電圧値をSignal Strengthデータに格納して送電装置100へ送信する(F503)。続いて、受電装置102は、受電装置102が準拠しているWPC規格のバージョン情報やデバイス識別情報を含むIDを格納したIDデータを送電装置100へ送信する(F504)。さらに、受電装置102は、電圧制御部203が負荷(充電部205)へ供給する電力の最大値等の情報を含んだConfigurationデータを送電装置100へ送信する(F505)。送電装置100は、IDデータおよびConfigurationデータを受信する。そして、送電装置100は、これらのデータによって受電装置102がWPC規格v1.2以降の(後述のNegotiationを含む)拡張プロトコルに対応していると判定すると、ACK(肯定応答)で応答する(F506)。
【0042】
受電装置102は、ACKを受信すると、送受電する電力の交渉などを行うNegotiationフェーズに遷移する。まず、受電装置102は、送電装置100に対してFOD Statusデータを送信する(F507)。本実施形態では、このFOD Statusデータを「FOD(Q1)」と呼ぶ。送電装置100は、受信したFOD(Q1)に格納されているQ値(周波数領域で測定されたQ値)と第1Q値測定で測定したQ値とに基づいて、第1異物検出方法により異物検出を行う。そして、送電装置100は、異物がない可能性が高いと判定した場合に、その判定結果を示すACKを受電装置102に送信する(F508)。
【0043】
受電装置102は、ACKを受信すると、送電装置100へ、能力を問い合わせるデータであり、WPC規格で規定されているGeneral Requestの1つであるGeneral Request(Capabiliy)を送信する(F509)。このデータを、GRQ(CAP)と呼ぶ。送電装置100は、GRQ(CAP)を受信すると、自装置が対応している能力情報を格納したCapabilityデータ(CAPという)を送信する(F510)。
【0044】
続いて、受電装置102が受電を要求する電力値の最大値であるGuaranteed Power(GP)の交渉を行う。Guaranteed Powerは、送電装置100との間での交渉で合意された、受電装置102の負荷電力(バッテリ206が消費する電力)の最大値である。この交渉は、WPC規格で規定されているSpecific Requestデータのうち、受電装置102が、要求するGuaranteed Powerの値を格納したデータを送電装置100へ送信することにより実現される(F511)。本実施形態では、このデータを「SRQ(GP)」と呼ぶ。送電装置100は、自装置の送電能力等を考慮して、SRQ(GP)に応答する。送電装置100は、Guaranteed Powerを受け入れ可能であると判断した場合、その要求を受入れたことを示すACKを送信する(F512)。本実施形態では、受電装置102が、SRQ(GP)により、Guaranteed Powerとして15ワットを要求したものとする。受電装置102は、Guaranteed Powerを含む複数のパラメータの交渉が終了すると、Specific Requestのうち、交渉の終了(End Negotiation)を要求する「SRQ(EN)」を送電装置に送信する(F513)。そして、送電装置100は、SRQ(EN)に対してACKを送信し(F514)、Negotiationを終了して、Guaranteed Powerで定められた電力の送受電を行うPower Transferフェーズに遷移する。
【0045】
続いて、送電装置100は、上述したパワーロス手法に基づく異物検出(第2異物検出方法)を実行する。まず、送電装置100は、RP1を受電装置102から受信する(F515)。送電装置100は、RP1に格納されている受電電力値と、その受電電力が得られたときの送電装置100の送電電力値を、Calibration data Point(図12の点1200に対応)として受け入れる。そして、送電装置100は、Calibration data Pointの受け入れを示すACKを、受電装置102へ送信する(F516)。
【0046】
受電装置102は、ACKを受信後、送電装置100に対して受電電圧(または受電電流、受電電力)の増減を要求するControl Error(以後、CEと表現する)を送電装置100に送信する。CEには、符号および数値が格納され、符号がプラスであれば受電電圧を上げることを要求することを、マイナスであれば受電電圧を下げることを要求することを、数値がゼロであれば受電電圧を維持することを要求することを、それぞれ意味する。ここでは、受電装置102は、受電電圧を上げることを示すCE(+)を、送電装置100に送信する(F517)。
【0047】
送電装置100は、CE(+)を受信すると、送電部302の設定値を変更して、送電電圧を上げる(F518)。受電装置102は、CE(+)に応答して受電電力が上昇すると、受電した電力を負荷(充電部205やバッテリ206)に供給し、RP2を送電装置100に送信する(F519)。送電装置100は、RP2に格納されている受電電力値とその時の送電装置100の送電電力値を、Calibration data Point(図12の点1201に対応)として受け入れる。そして、送電装置100は、Calibration data Pointの受け入れを示すACKを、受電装置102へ送信する(F520)。この時点で、送電装置100は、2つのCalibration data Point(図12の点1200と点1201)を取得しているため、Calibrationカーブ(図12の直線1202)を導出することができる。
【0048】
送電装置100および受電装置102は、この時点でPower Transferフェーズに遷移しており、送電装置100は、受電装置102がNegotiationフェーズで交渉した最大15ワットを受電可能な電力を送電している。受電装置102は、送電装置100に対して、送電電力の維持を要求するCEおよび現在の受電電力値を格納したRP0を送電装置100に定期的に送信する(F521、F522)。送電装置100は、受電装置102からRP0を受信すると、上述の第2異物検出方法に基づいて、異物検出を行う。送電装置100は、異物検出の結果、異物がない可能性が高いと判定した場合、ACKを受電装置102に送信する(F523)。なお、送電装置100は、異物がある可能性が高いと判定した場合は、受電装置102へNAKを送信する。その後、受電装置102は、バッテリ206への充電が終了すると、送電装置100に対して送電を停止することを要求するEPT(End Power Transfer)データを送信する(F524)。
【0049】
以上のようにして、WPC規格v1.2.3に準拠した送電装置100と受電装置102との間で無線電力伝送が行われる。
【0050】
上述のようにして、第1異物検出方法では、送電装置100がF501において第1Q値の測定を行った時点の異物が検出される。一方で、第1Q値の測定後、Calibration data Pointを取得するまで(例えばF516のACKの送信まで)の間にOperating Volumeに異物103が載置されても、その異物103は検出されない。第1異物検出方法では、送電装置100は、F501の第1Q値の測定時点の異物の有無を、FOD(Q1)を受信した時点で判定するのみだからである。
【0051】
また、第2異物検出方法では、Calibrationカーブ(直線1202)が生成されていない間は、Operating Volumeに異物103が載置されても、異物検出を行うことができない。すなわち、受電装置102がF515でRP1を最初のCalibration data Point(点1200)を取得した段階では異物検出を行うことができない。そして、送電装置100は、その後にF520でACKを送信して次のCalibration data Point(点1201)を取得してCalibrationカーブ(直線1202)を生成してから、異物103を検出できるようになる。例えば、受電装置102がF517でCE(+)を送信した直後に、Operating Volumeに異物103が載置された場合、この時点ではCalibrationカーブが生成されていないため、この異物103は検出されない。また、この時点においては、当然に第1異物検出処理も行われない。
【0052】
また、送電装置100は、例えばF517でCE(+)を送信した直後に異物103が載置された場合などでは、異物103が存在する状態でCalibration data Pointを取得することとなる。この場合、送電装置100は、その後に精度のよい第2異物検出処理を行うことができなくなる。例えば、異物103がOperating Volume内に存在することにより、送電装置100の送電電力がその異物103によって消費されてしまう。その結果、図12に示すように、受電装置102において受電電力Pr2が得られる時点での送電装置100の送電電力は、受電装置102に対して提供される電力(Pt2)に異物で消費される電力が加算された値であるPt2’(≠Pt2)となる。このため、送電装置100は、Calibration data Pointとして点1204を取得し、その結果、Calibrationカーブとして直線1205を作成する。第2異物検出方法は、上述のように、異物が載置されていない状態でCalibrationカーブが作成され、そのカーブと実測の送電電力及び受電電力の組み合わせとの乖離を調べて異物の存在を検出する方法である。これに対して、直線1205は異物の影響を受けた状態で作成されたCalibrationカーブであるため、精度のよい異物検出を行うことはできなくなる。また、送電装置100がF501で第1Q値を測定してから受電装置102がF515でRP1を送信するまでに異物103がOperating Volumeに載置された場合にも、第2異物検出方法による異物検出の精度が低下してしまう。受電装置102がACKを送信したとき(F516)に取得されるCalibration data Pointが、異物103がOperating Volumeに存在した状態で作成されることとなるからである。
【0053】
このように、第1Q値の測定から、Calibrationカーブの生成までの間に異物103が載置された場合、その異物103の検出ができず、また、その後の第2異物検出方法の使用が困難となりうる。
【0054】
このような事情に鑑み、本実施形態では、第3異物検出方法をWPC規格に適用する。例えば、送電装置100および受電装置102は、第3異物検出方法で異物がない可能性が高いことを確認したうえで、Calibration data Pointを作成する。この処理について、図5B及び図5Cを用いて説明する。
【0055】
まず、送電装置100および受電装置102は、F500~F503までは図5Aと同様の処理を実行する。そして、送電装置100は、F503において受電装置102からSignal Strengthを受信すると、第3異物検出を行うために、図11(B)を用いて説明したように、送電を停止する。受電装置102は、送電の停止を検出すると、図11(B)を用いて説明したように動作して、第2Q値測定を実行する(F551)。そして、受電装置102は、F507のFOD(Q1)に対するACKを受信し(F508)、第1異物検出で異物がない可能性が高いと分かった時点で、F551の第2Q値測定で測定したQ値を送電装置100に送信する(F552)。なお、受電装置102は、後述のように、F508においてGRQ(CAP)を送信し、F509において受信したCAPに基づいて、送電装置101が第2Q値測定(第3異物検出方法)に対応しているか否かを判定しうる。そして、受電装置102は、図5Bに示すように、送電装置101が第2Q値測定に対応している場合に、F551で測定されたQ値を送電装置100に通知するようにしてもよい。送電装置100は、このQ値を正しく受信すると受電装置102に対してACKを送信する(F553)。送電装置100は、FOD(Q1)に対してACKを送信した時点で、第1Q値測定時にOperating Volumeに異物は存在しないと判定しているため、第1Q値測定の直後に受電装置102が実行した第2Q値測定時も異物が存在する可能性は低い。このため、送電装置100は、F552で受信したQ値を第3異物検出処理において異物の有無を判断する基準値(第2基準Q値)としてメモリ306に記憶することができる。
【0056】
その後、受電装置102は、F515でRP1を送信する前に、第3異物検出処理を送電装置100に対して要求する(F554)。そして、受電装置102は、送電装置101がその要求を受け入れたことを示すACKを受信すると(F555)、第2Q値測定を実行する(F556)。そして、受電装置102は、第2Q値測定によって測定されたQ値を送電装置100に送信する(F557)。送電装置100は、F557で受信したQ値と、F552において受信してメモリ306に記憶した第2基準Q値に戻づく閾値とを比較して、異物が存在する可能性が高いか否かを判定する。そして、送電装置100は、その比較の結果、異物がない可能性が高いと判定した場合に、受電装置102にACKを送信する(F558)。受電装置102は、受信したACKによって、異物がない可能性が高いことを認識すると、Calibration data Pointを作成するために送電装置100へRP1を送信する(F515)。以上のように、第3異物検出方法をWPC規格に適用することにより、Calibration data Pointを作成する直前に異物の有無を確認することができる。受電装置102が、第3異物検出要求(F554)に対してACK(F555)を受信してから、送電装置100にQ値を送信し(F557)、応答を受信するまで(F558)の送電装置100および受電装置102の状態を、第3異物検出処理状態と呼ぶ。なお、受電装置102は、F555のACKの受信した場合ではなく、送電の停止を検出した場合に、第3異物検出処理状態に移行してもよい。
【0057】
ここで、受電装置102は、Calibration data Pointの作成(RP1およびRP2の送電装置100への送信)の直前に第3異物検出方法を実行すると、RP1およびRP2に格納する受電電力値を正しく測定できない場合がありうる。これについて図6(A)を用いて説明する。
【0058】
F515は、受電装置102が送信するRP1データである。なお、このRP1データは、RP2データであってもよい。期間601は、Twindowと呼ばれ、WPC規格v1.2.3においてWindow sizeとして定義される。受電装置102は、期間601において、受電電力値に関する値の測定を実行し、その測定した値をRP1(又はRP2)データに格納して、送電装置100へ通知する。期間602はオフセット期間である。期間602は、Toffsetと呼ばれ、WPC規格v1.2.3においてWindow offsetとして定義される。期間602は、期間601の終端とRP1(又はRP2)データの先頭との間の期間である。受電装置102は、期間601において受電電力に関する値の測定を実行して、期間602だけ待機してから、RP1(又はRP2)データを送信する。期間601の長さ(Window size)と期間602の長さ(Window offset)は、Configuration Packetの情報要素として受電装置102から送電装置100へ送信される。なお、送電装置100は、期間601と同じ時間において送電電力を測定し、その測定した値とRP1(又はRP2)データに含まれる受電電力値とに基づいてCalibration data pointを作成する。
【0059】
なお、波形600は、送電装置100の送電部303の出力を概念的に示している。波形600は、送電装置100が時間T0において送電部303からの送電を停止し、時間T5において送電を再開することを示している。なお、図6の時間T0およびT5は、図11(B)の時間T0とT5に対応している。
【0060】
ここで、期間601は、図6(A)のように送電の停止期間(T0~T5)と重複する場合がありうる。送電の停止期間が短時間である場合、受電装置102の電圧制御部203は、充電部205の動作に十分な電力を供給することができる。このため、受電電力値は送電の停止期間がない場合、すなわち、図12のPr2と同様となる。一方で、図6(A)のような場合、送電電力値は、短くない送電の停止期間において送電が行われないため、受電電力値がPt2より小さい値となりうる。すなわち、送電の停止期間(T0~T5)が期間601と重複した場合は、Calibration data pointは点1201とは異なる点となる。このため、パワーロス手法での異物検出精度が劣化してしまう。
【0061】
これに対して、本実施形態の受電装置102は、図6(B)に示すように、送電装置100の送電が時間T5で再開してから、少なくとも期間601および期間602が経過した後にF515のRP1又はRP2データを送電装置100へ送信する。例えば、受電装置102は、送電装置100の送電が時間T5において再開された後の時間T7において、受電電力を測定する期間601を開始しうる。また、受電装置102は、受電電力を測定した期間601が送電の停止期間(T0~T5)と重複するときは、F515におけるRP1又はRP2データを送電装置100への送信を遅延させてもよい。これによれば、図6(B)に示すように、送電の停止期間(T0~T5)が期間601と重複することがなくなる。このため、送電装置100は、F515で受信する受電電力値に基づいて、Calibration data pointを高精度に作成することができる。
【0062】
また、送電装置100は、受電装置102が受電電力を測定した期間と同じ時間において送電電力を測定することができるように、所定時間ごとに送電電力を測定するようにしうる。この所定時間をTsliceと呼ぶ。送電装置100が送電電力を測定する時間と、送電の停止期間(T0~T5)とが重複した場合は、パワーロス手法で正しい異物検出ができない。これに対して、図6(B)の例に示すように、時間T6から時間T8の差のようにTsliceが設定される。送電装置100は、時間T6から始まるTwindowの期間603の間、送電電力を測定する。同様に、送電装置100は、時間T6から時間Tsliceだけ経過した時間T8から始まるTwindowの期間604の間の送電電力をも測定する。すなわち、送電装置100は、Tsliceごとに測定を開始する始点をずらしながらTwindowの期間にわたって送電電力を測定する。そして、送電装置100は、F515のRP1又はRP2データの先頭を受信した時点で、受電装置102が受電電力を測定した期間601と対応する期間に測定した送電電力を選択する。例えば、図6(B)のようにT6とT7の時間間隔が、Tslice/2より小さい場合は、送電装置100は、期間603において測定した送電電力値を選択する。また、送電装置100は、T6とT7の時間間隔がTslice/2より大きい場合は、期間604において測定した送電電力値を選択する。
【0063】
受電装置102は、送電装置100の送電が時間T5で再開してから、少なくともTslice/2と期間601および期間602が経過した後に、F515のRP1又はRP2データを送電装置100へ送信するようにする。これによれば、送電装置100が送電電力を測定し、上述のように選択された時間と、送電の停止期間(T0~T5)とが重複することがなくなる。また、受電装置102は、送電装置100の送電が時間T5において再開した後に、さらに少なくとも時間Tslice/2の後に、受電電力を測定する期間601を時間T7において開始してもよい。
【0064】
また、送電の停止期間(T0~T5)が期間601と重複しない限りにおいて、他の構成が用いられてもよい。例えば、図6(C)を用いて説明する。図6(C)によれば、送電の停止期間(T0~T5)は、期間602と重複しているが、期間601とは重複していない。すなわち、受電装置102は、送電の停止期間(T0~T5)の全部が期間602に含まれる場合には、期間602に後続するRP1又はRP2データの送信を行ってもよい。すなわち、受電装置102は、送電停止タイミング(時間T0)が期間601の後(期間602の開始後)であり、かつ送電の再開タイミング(時間T5)が期間602の終了前の場合、期間602に後続するRP1又はRP2データの送信を行いうる。
【0065】
また、上述の例では、受電装置102は、時間T5における送電再開から、少なくともTslice/2の期間と、期間601および期間602とが経過した後に、RP1又はRP2データを送電装置100に送信するようにした。しかしながら、これは一例であり、他の構成が用いられてもよい。例えば、時間T5における送電再開から、少なくとも所定時間(この所定時間をTstableと呼ぶ。)の経過後、さらに少なくともTslice/2の期間と期間601および期間602との経過後に、RP1又はRP2データが送電装置100に送信されてもよい。
【0066】
(送電装置および受電装置の動作)
図5B及び図5Cを用いて、本実施形態の送電装置100および受電装置102の動作について説明する。なお、すでに説明した構成に関しては同一の符号を付することにより説明を省略する。送電装置100は、Signal Strength(F503)を受信すると、そのSignal Strength(F503)が送信される時間区間の後端から所定の時間内に受電装置102にQ値を測定させるために一定時間だけ送電を停止する。ここでの所定の時間は、最大でも、先行するデータ(この場合、F503のSignal Strength)の時間区間の後端から、後続のデータ(この場合、F504のID)の時間区間の先頭までの時間に設定される。例えば、所定の時間は、最大でも、WPC規格で規定されているTstartの最小値(11.5ms)を超えないように、例えば送電装置100によって、設定される。ここで、Tstartとは、WPC規格で規定されている時間間隔で、先行するデータの後端から後続のデータの先頭を送信開始するまでの時間である。また、送電装置100は、先行するデータ(この場合はF503のSignal Strength)の時間区間の後端からの経過時間が、上述のTstartの最小値を超えない範囲で送電を停止して、また、送電を再開する。
【0067】
受電装置102は、送電の停止を検出すると、例えば図11(B)の時間T3から時間T4の間で、第2Q値測定を実行する(F551)。そして、受電装置102は、F510において送電装置100からCAPを受信し、送電装置100が第2Q値測定(第3異物検出方法)に対応していると判定すると、F551で測定したQ値を送電装置100へ通知する(F552)。送電装置100は、F552においてQ値を正常に受信したことに応じて、ACKを受電装置102へ送信する(F553)。電装置100は、F552で受信したQ値を、第3異物検出処理において異物の有無を判断する基準値としてメモリ306に記憶する。
【0068】
受電装置102は、F515でRP1を送信する前に第3異物検出処理を送電装置100に要求を送信し(F554)、ACKを受信すると(F555)、上述の第3異物検出処理状態に遷移する。そして、受電装置102は、第2Q値測定を実行し(F556)、測定したQ値を送電装置100へ送信する(F557)。送電装置100は、F557において受信したQ値と、F552において受信してメモリ306に記憶したQ値に戻づく閾値とを比較し、比較の結果、異物がない可能性が高いと判定した場合に、受電装置102へACKを送信する(F558)。受電装置102は、ACKを受信することによって異物がない可能性が高いことを認識すると、上述の第3異物検出処理状態を終了し、Calibration data Pointを作成するために、送電装置100へRP1を送信する(F515)。
【0069】
同様に、受電装置102は、F519でRP2を送信する前に、第3異物検出処理を送電装置100に要求する(F559)。受電装置102は、送電装置100からACKを受信したことに応じて(F560)、第2Q値測定を実行する(F561)。そして、受電装置102は、測定したQ値を、送電装置100へ送信する(F562)。送電装置100は、F562で受信したQ値と、F552で受信してメモリ306に記憶したQ値に戻づく閾値とを比較し、比較の結果、異物がない可能性が高いと判定した場合に、受電装置102へACKを送信する(F563)。受電装置102は、ACKを受信することによって異物がない可能性が高いことを認識すると、Calibration data Pointを作成するために、送電装置100へRP2を送信する(F519)。
【0070】
ここで、受電装置102が、図1の矢印104のように移動して、送電装置100との位置関係が変化したとする。この場合、第1異物検出方法では移動を検出することが難しい場合がある。そこで、受電装置102は、送電装置100が第3異物検出処理に対応している場合に、RP0を送信するタイミングにおいて第3異物検出を要求しうる。すなわち、受電装置102はRP0を送信して(F522)、ACKを受信した(F523)後で、送電装置100に対して、第3異物検出要求を送信する(F564)。そして、受電装置102は、その第3異物検出要求に対してACKを受信した(F565)場合、上述の第3異物検出処理状態に遷移する。そして、受電装置102は、第2Q値測定を実行する(F566)。そして、受電装置102は測定したQ値を、送電装置100へ送信する(F567)。送電装置100は、F567において受信したQ値とF552で受信したQ値に基づく閾値とを比較して、閾値を超えたと判定すると、NAKを受電装置102へ送信する(F568)。
【0071】
なお、受電装置102は、RP0を定期的に送信するため、第3異物検出処理状態であってもRP0を送信することがある。すなわち、受電装置102は、F565でACKを受信したことに応じて第3異物検出処理状態に遷移し、その後、その第3異物検出処理状態を終了する前に、送電装置100にRP0を送信し(F522)、送電装置100からACKを受信しうる(F523)。受電装置102は、F522で送信したRP0に対して、F523でACKを受信すると、第3異物検出処理状態を終了する。そして、受電装置102は、第3異物検出処理状態で動作中にRP0に対してACKを受信した一方で、F567で送信したQ値に対して、F568でNAKを受信すると、受電装置102が移動した可能性が高いと判定する。そして、受電装置102は、作成済みのCalibrationカーブを再度作成する必要があると判定しうる。このため、受電装置102は、再Calibration要求を送電装置100へ送信し(F569)、上述のF554からF520の処理に基づいて、再度、Calibrationを実行する(F571)。
【0072】
上述の実施形態では、送電装置100は、先行するデータ(F503のSignal Strengh)と後続のデータ(F504のID)との間に送電を停止し、受電装置102は、送電が停止している間に第2Q値測定を実行するとした。ここで、先行するデータはSignal Strength(F503)に限られず、また、後続のデータはID(F504)に限られない。例えば、先行するデータがF504のIDであり、後続のデータがF505のConfigurationであってもよい。この場合、送電装置100は、F504のIDの時間区間の後端からの経過時間が上述のTstartの最小値を超える前に、送電を停止して、また、送電を再開するようにしうる。また、先行するデータがF504のIDであり、後続のデータが、受電装置102に関する付加的な識別情報を格納するデータであってもよい。この後続のデータは、WPC規格で規定されているExtended IDでありうる。また、先行するデータがExtended IDであり、後続するデータがCEデータの時間区間の後端から送電装置100がCEデータに基づいて送電電圧の制御を開始するまでの遅延時間を通知するデータであってもよい。このデータは、WPC規格で規定されているPower Control Hold Offでありうる。
【0073】
また、受電装置102は、送電装置100が時間T5において送電を再開してから、少なくとも期間601および期間602が経過した後に、F515でRP1又はRP2データを送電装置100に送信すると説明した。しかしながら、これに限られない。例えば、受電装置102は、送電が時間T5において再開してから、まず、少なくとも受電装置102の受電電圧が、すなわち、整流部202の入力電圧と出力電圧とが安定するまでの時間(Tstable)が経過するのを待つようにしてもよい。受電装置102は、その後に、少なくとも期間601および期間602が経過した後に、F515のRP1又はRP2を送電装置100に送信しうる。
【0074】
また、上述の実施形態では、送電装置100は、先行するデータに対応する時間区間の後端からの経過時間が上述のTstartの最小値を超えないうちに、送電を停止し、また送電を再開すると説明した。これも、先行するデータに対応する時間区間の後端からの経過時間がTstartの最小値を超える前に、受電装置102の受電電圧が、すなわち受電アンテナ201および整流部202の入力電圧と出力電圧とが十分安定するように行われうる。例えば、先行するデータに対応する時間区間の後端のタイミングから、その後端に上述のTstartの最小値を加算したタイミングまでの期間として規定される所定期間の後端からTstableを減算した時間内に送電が再開されるようにしうる。すなわち、送電の開始後に受電アンテナ201および整流部202の入力電圧と出力電圧とが十分安定するタイミングが、先行するデータに対応する時間区間の後端からの経過時間が上述のTstartの最小値を超えるタイミングより前に到来するようにする。これにより、受電装置102が、より精度のよい第2Q値測定を実行することが可能となる。
【0075】
また、WPC規格では、受電装置102が送信したデータに対応する時間区間の後端からTsilentで規定される時間は、次のデータの送信を開始することが許されていない。これは、送電装置100又は受電装置102が行うデータ変調によって生じる送電アンテナ304又は受電アンテナ201の電圧値の変動が遅くともTsilentの期間内に安定することを意味している。このため、送電装置100は、先行するデータに対応する時間区間の後端からTsilent経過した時間から、上述のTstartの最小値以内に、送電を停止し、また送電を再開するようにしてもよい。すなわち、データ変調による送電アンテナ304又は受電アンテナ201の電圧値の変動が安定しないうちに送電の停止・再開を行わないようにしうる。これにより、受電装置102が、より精度のよい第2Q値測定を実行することが可能となる。また、この場合にも、送電装置100は、先行するデータに対応する時間区間の後端から、上述のTstartの最小値からTstableを減算した時間が経過するより前に送電を再開するように動作しうる。
【0076】
また、送電装置100は、先行するデータに対応する時間区間の後端から、そのデータに対する応答が送信される時間区間の先頭までの間に、送電を停止・再開してもよい。例えば、送電装置100は、F505で受電装置102から送信されるConfigurationデータに対応する時間区間の後端から、F506で自装置が送信するACKに対応する時間区間の先頭の間に、送電の停止と再開とを実行しうる。WPC規格では、受電装置102が送信するデータに対応する時間区間の後端から、時間Tresponseが経過する前に、送電装置100がそのデータに対する応答データの送信を開始することが規定されている。このため、送電装置100は、例えばF505のConfigurationデータに対応する時間区間の後端から、Tresponseの最小値が経過する前に、送電の停止と再開とを実行しうる。また、送電装置100は、先行するデータに対応する時間区間の後端からTsilent経過した時間から、その後端にTresponseの最小値を加算したタイミングまでの間に、送電の停止・再開を行うようにしてもよい。また、この場合にも、送電装置100は、先行するデータに対応する時間区間の後端から、上述のTresponseからTstableを減算した時間が経過するより前に送電を再開するように動作しうる。なお、先行するデータはF505のConfigurationデータに限られず、また、後続のデータはF506のACKに限られない。例えば、先行するデータがF506のACKであり、後続のデータがF507のFOD(Q1)であってもよい。
【0077】
また、送電装置100が送電を停止する時間(図11(B)のT0からT5)は、第2基準Q値をメモリ306に記憶するまでは、WPC規格で規定された所定の時間を使用してもよい。そして、送電装置100は、受電装置102が送信する第3異物検出要求に応じて送電を停止する場合は、受電装置102が要求する時間に基づいて送電を停止してもよい。受電装置102は、第3異物検出要求を送信する時点では負荷に電力を供給しており、負荷の消費電力が都度変化する。これに対して、上述のような構成にすることにより、受電装置102は、消費電力の変動に応じて要求時間を変更することが可能となる。例えば、消費電力が大きいときほど要求時間を短く、消費電力が小さいほど要求時間を長くすることができる。
【0078】
また、受電装置102は、第3異物検出要求を送電装置100へ送信し、応答としてND(Not Defined)を受信したときは、送電装置100が第3異物検出処理に対応していないと判断し、以降、第3異物検出要求を送信しないようにしてもよい。NDとは、WPC規格で規定されている送電装置100が送信する応答のうちACK(肯定)やNAK(否定)ではない応答であり、送電装置100が要求に対応していないことを示すデータである。
【0079】
また、図5Bにおいて、F515においてRP1又はRP2データが送信される場合について説明した。しかしながら、これに限られず、受電電力値を通知する他のデータがF515で送信されてもよい。例えば、F515において、RP0データが送信されてもよい。
【0080】
なお、上述の実施形態では、受電装置102は、図5CのF522のRP0に対してF523で応答(ACK)を受信したときに、F564で送電装置100へ第3異物検出要求を送信する。そして、受電装置102は、F565でACKを受信したことに応じて第3異物検出処理状態に遷移する。上述のように、受電装置102は、第3異物検出処理状態に遷移した後にRP0(F522)を送信する場合がある。この場合、受電装置102は、直前のF564で第3異物検出要求を送信したにも関わらず、再度、第3異物検出要求を送信してしまいうる。そこで、受電装置102の第2異物検出処理部403は、このような第3異物検出要求を重複して送信することを防ぐように機能しうる。この処理の流れの例について、図7を用いて説明する。
【0081】
受電装置102は、RP0の先頭の部分を送信すると(S701)、RP0を送信する間隔を規定するタイマをリセットする(S702)。そして、受電装置102は、タイムアウトを検出したこと(S703でYES)に応じて、現在、自装置が第3異物検出処理状態にあるかを判定する(S704)。そして、受電装置102は、第3異物検出処理状態で動作中の場合(S704でYES)、次のRP0を送信しないようにする(S705)。これにより、受電装置102が、第3異物検出処理状態においてRP0を送信することを抑制し、第3異物検出要求が繰り返し送電装置100へ送信されることを防ぐことができる。なお、受電装置102は、タイムアウト時に第3異物検出処理状態でなかった場合(S704でNO)は、次のRP0を送電装置100へ送信する(S706)。なお、送電装置100は、第3異物検出要求に対してACKを送信したことに応じて第3異物検出処理状態に遷移しうる。そして、送電装置100は、第3異物検出処理状態においてRP0を受信した場合に、送電を停止して、エラーを出力し、無線電力伝送に関連する処理を終了してもよい。
【0082】
ここで、受電装置102が、第3異物検出処理状態においてRP0を送信しないようにした場合の動作の概要について、図8(A)を用いて説明する。時間長800は、RP0(F522)の先頭から、次のRP0を送信するまでの時間長であり、WPC規格ではTreceivedとして規定される時間長である。受電装置102は、時間長800の周期でRP0を送電装置100へ送信する。この時間長800は、S703のタイムアウトの時間長に対応しうる。ここで、図8(A)では、次のRP0の先頭を送信すべき時間をT6とする。時間長801は、RP0に対する応答であるACK(F523)の後端から、Q値(F567)に対する応答であるACK(F568)の後端までの時間である。T7は、ACK(F568)の後端であり、送電装置100および受電装置102が第3異物検出処理状態での動作を終了するタイミングを示している。受電装置102は、第3異物検出処理状態で動作中はRP0を送信しないため、T6に比べてT7が時間的に後の場合、受電装置102はT6において次のRP0を送信しない。
【0083】
これに対して、受電装置102は、図8(B)に示すようなタイミングで、時間長801が時間長800よりも短くなるように動作する。すなわち、時間長800に対応する時間区間が開始した後で時間長801に対応する時間区間が始まる場合、F567のQ値の送信を早期に実行するようにする。これにより、受電装置102は、次のRP0の先頭の送信を開始するT6より前に、Q値(F567)に対する応答(F568のACK)の後端までの時間T7が到来するように動作する。これにより、受電装置102は、TreceivedごとにRP0を送信することができるようになる。
【0084】
また、時間長800は、送電装置100がF522でRP0の先頭を受信してから、次のRP0の先頭をその時間長800以内に受信しなかった場合に送電電力を停止する、タイムアウト時間として用いられてもよい。なお、このタイムアウト時間は、WPC規格ではTpowerとして定義される。
【0085】
上述の例では、受電装置102が、第3異物検出処理状態で動作中である場合には、RP0を送信しないようにするために、Q値の送信などのタイミング制御を実行する。一方で、受電装置102が、Q値の送信などのタイミングを制御することなく、また、第3異物検出処理状態で動作中であるか否かによらず、RP0を送信するようにしてもよい。そして、受電装置102は、例えば第3異物検出処理状態においてRP0を送信した際に、その応答がNAKである場合にのみ、第3異物検出要求を送信するように構成されうる。この場合の処理の流れについて、図9Aを用いて説明する。受電装置102は、RP0を送信し(S901)、応答を受信する(S902)。受電装置102は、応答がNAKであった場合(S903でYES)、第3異物検出処理状態であるか否かを判定する。そして、受電装置102は、第3異物検出処理状態で動作中である場合(S904でYES)は、第3異物検出要求を送信しない(S906)。一方、受電装置102は、第3異物検出処理状態で動作中でない場合(S904でNO)は、第3異物検出要求を送電装置100へ送信する(S905)。また、受電装置102は、応答がNAKでない場合(S903でNO)は、処理を終了する。これによれば、受電装置102が、Q値の報告のタイミングなどを調整することなく、RP0を継続的に送信することが可能となる。
【0086】
また、送電装置100が、第3異物検出処理状態であるか否かに応じて、RP0に対する応答を変更するように動作してもよい。この場合の送電装置100が実行する処理の流れについて図10を用いて説明する。送電装置100は、RP0を受信し(S1001)、自装置が第3異物検出処理状態で動作中であるかを判定する。送電装置100は、第3異物検出処理状態で動作中の場合(S1002でYES)、受電装置102に対してND(Not Defined)を送信する(S1003)。なお、送電装置100は、第3異物検出処理状態で動作中でない場合(S1002でNO)、受信したRP0に対して、第2異物検出方法に基づいてACK/NAKを選択して送信する(S1004)。
【0087】
この場合の受電装置102が実行する処理の流れについて、図9Bを用いて説明する。受電装置102は、RP0を送信し(S911)、応答を受信する(S912)と、自装置が第3異物検出処理状態で動作中であるか否かを判定する(S913)。そして、受電装置102は、自装置が第3異物検出処理状態で動作中であり(S913でYES)、応答がNDである場合(S916でYES)、何もせずに処理を終了する。一方、受電装置102は、第3異物検出処理状態で動作中あり(S913でYES)、応答がNDでない場合(S916でNO)、送電装置100が図10の処理に基づいて動作しておらず、送電装置100が故障しているか又は不正な装置であると判定する。このため、受電装置102は、EPTを送信し(S915)、無線電力伝送を終了する。また、受電装置102は、第3異物検出処理状態で動作中ではなく(S913でNO)、応答がNDでない場合(S914でNO)には、そのまま処理を終了する。この場合は応答がACK又はNAKであり、受電装置102は、送電装置100が第2異物検出方法に基づいて動作していると判定することができるからである。また、受電装置102は、第3異物検出処理状態で動作中ではなく(S913でNO)、応答がNDの場合(S914でYES)には、送電装置100が図10の処理に基づいて動作しておらず、送電装置100が故障しているか又は不正な装置であると判定する。このため、受電装置102は、EPTを送信し(S915)、無線電力伝送を終了する。これによっても、受電装置102が、Q値の報告のタイミングなどを調整することなく、RP0を継続的に送信することが可能となる。
【0088】
上述の実施形態では、受電装置102は、第2Q値測定において、受電コイル201の高周波電圧に基づいてQ値を測定するものとした。ここで、その高周波電圧には、送電303の送電周波数、送電コイル304と共振コンデンサ307の共振周波数F1、および、受電コイル201と共振コンデンサ207の共振周波数F2の、3つの周波数が含まれうる。このため、受電装置102は、3つ周波数のいずれの周波数におけるQ値を測定してもよい。
【0089】
また、上述の実施形態では、受電装置102がQ値を測定する例について説明した。しかしながら、これに限られず、送電装置100がQ値を測定してもよい。また、送電装置100が、上述の3つの周波数のいずれかの周波数におけるQ値を測定してもよい。送電装置100は、第2Q値測定を実行する場合、すでに説明したタイミングの他に、F500でAnalog Pingを送電して物体を検出してから、F502でDigital Pingの送電を開始するまでの期間に、送電の停止・再開を行ってもよい。例えば、ユーザが受電装置102をOperating Volumeに載置してから、送電装置100は、所定期間内に所定の電力を送電し、送電の停止および再開を行ってもよい。所定期間は、例えば、WPC規格において規定されている、受電装置102がOperating Volumeに載置されてからDigital Pingの送電を開始するまでの時間を示すTdetectによって定まる期間である。
【0090】
また、送電装置100がF500でAnalog Pingを送電して物体を検出してから、F501で第1Q値測定を実行する前に、第2Q値の測定が行われてもよい。また、F501で第1Q値測定が終了してからF502でDigital Pingの送電が開始されるまでの間に、第2Q値の測定が行われてもよい。また、F502でDigital Pingの送電が開始されてから、F503でSignal Strengthが送受信される前に、第2Q値の測定が行われてもよい。例えば、送電装置100がF502でDigital Pingの送電を開始してから、受電装置102がSignal Strengthを送信するまでの時間を示すWPC規格のTwake以内の期間において、第2Q値の測定が行われてもよい。
【0091】
また、F510のCAPに関する説明において、受電装置102は、送電装置100が第2Q値測定(第3異物検出方法)に対応していることを認識すると、F552でQ値の測定結果を送電装置100に通知すると説明した。しかしながら、これに限られない。これは、受電装置102は、F510のCAPによって送電装置100が第2Q値測定に対応していないことを認識すると、第2Q値を測定しないようにしてもよい。また、受電装置102は、送電装置100へQ値を送信した後にND又はNAKを受信した場合に、その後には第3異物検出要求を行わないようにしてもよい。
【0092】
また、送電装置100は、Q値を正しく受信した場合に受電装置102に対してACKを送信するようにしたが、第3異物検出において異物がある可能性が高いと判定した場合、F552のQ値に対してNAKを送信するようにしてもよい。受電装置102は、NAKを受信すると、EPTを送信し、送電装置100に送電を停止させるようにしてもよい。
【0093】
また、上述の実施形態では、受電装置102が受電コイル201の電圧値を観測することにより送電の停止と再開を検出するようにした。しかしながら、これに限られない。例えば、送電装置100と受電装置102が送電の停止・再開のタイミングを事前に共有し、受電装置102は、その共有したタイミングとタイマを用いて、停止と再開を検出してもよい。
【0094】
なお、上述の第2Q値の測定に代えて、異物の存在によって変化する他の物理量の測定が行われるようにしてもよい。例えば、電圧値や電流値の時間経過による変化や、電圧値や電流値の減衰率などが測定されてもよく、また、コイル間の結合係数が測定されてもよい。このように、第2Q値や、その他の値など、送電コイルと受電コイルとの少なくともいずれかに関する電気特性に基づいて、上述の第3異物検出方法による異物の検出が行われうる。なお、送電コイルの電気特性と受電コイルの電気特性の両方に基づいて異物検出が行われなくてもよく、送電コイルの電気特性のみに基づいて異物検出が行われてもよいし、受電コイルの電気特性のみに基づいて異物検出が行われてもよい。
【0095】
また、図7図9A図9B、および図10の処理は、例えば、受電装置102の制御部200や送電装置100の制御部300が、事前に記憶されたプログラムを読み出して実行して、各機能部を制御することによって実現されうる。ただし、これに限られず、これらの処理の少なくとも一部が、ハードウェアにより実現されてもよい。ハードウェアにより実現する場合、例えば、所定のコンパイラを用いることにより、各処理ステップを実現するためのプログラムからFPGA上に自動的に専用回路が生成されうる。ここで、FPGAとは、Field Programmable Gate Arrayの頭字語である。また、FPGAと同様にして、Gate Array回路を形成し、上述の処理の少なくとも一部を実行するハードウェアが実現されるようにしてもよい。
【0096】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0097】
200:制御部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
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図12