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特許7557963月経困難症の予防及び/又は治療のための組合せ医薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】月経困難症の予防及び/又は治療のための組合せ医薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7048 20060101AFI20240920BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 31/17 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 36/65 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61K31/7048
A61K9/20
A61K31/17
A61K31/192
A61K31/522
A61K36/65
A61K47/02
A61P29/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020094013
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2020196710
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2019101546
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306014736
【氏名又は名称】第一三共ヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】田中 美希
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 泰貴
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-090549(JP,A)
【文献】特開2014-070024(JP,A)
【文献】特開2013-151485(JP,A)
【文献】特開2016-056166(JP,A)
【文献】特開2004-262922(JP,A)
【文献】特開2013-133299(JP,A)
【文献】特表2012-509255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物、及びヘスペリジンを含有する月経困難症の予防及び/又は治療のための組合せ医薬。
【請求項2】
ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物、及びヘスペリジンを含有する生理痛の予防及び/又は治療のための組合せ医薬。
【請求項3】
さらに芍薬又はその抽出物;アリルイソプロピルアセチル尿素及びブロムワレリル尿素から選ばれる1種以上の鎮静剤;カフェイン水和物、無水カフェイン、安息香酸カフェインナトリウム、テオフィリンおよびジプロフィリンから選ばれる1種又は2種以上であるキサンチン類;及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウム;から選ばれる1種又は2種以上を含有する、請求項1又は2に記載の組合せ医薬。
【請求項4】
さらに芍薬又はその抽出物;アリルイソプロピルアセチル尿素及びブロムワレリル尿素から選ばれる1種以上の鎮静剤;カフェイン水和物、無水カフェイン、安息香酸カフェインナトリウム、テオフィリンおよびジプロフィリンから選ばれる1種又は2種以上であるキサンチン類;及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有する、請求項1又は2に記載の組合せ医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の痛み、特に月経時の痛みに対し、優れた鎮痛作用を示す、月経困難症の予防及び/又は治療のための組合せ医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
月経困難症は 、月経期間中に月経に随伴して生じる下腹痛、腰痛、下痢及び頭痛などの病的症状であり、排卵/月経周期の確立した女性の約45~60%に認められるとの報告がある。月経困難症における疼痛(月経痛、生理痛)の多くは、子宮の規則的かつ病的な強い収縮によって子宮筋への血流が遮断され、その結果、子宮筋への虚血が起こることにより生じると考えられている(非特許文献1参照)。また、子宮内膜で産生されるプロスタグランジン(以下、PGともいう)は血中に移行し、月経随伴症状である動悸、めまいや頭痛などの心・血管症状、悪心、嘔吐、下痢などの消化管症状を引き起こすといわれている(非特許文献2)。
【0003】
子宮内膜においては、PG(PGE2、PGF2α等)は細胞膜の脂質であるアラキドン酸を基質として、シクロオキシゲナーゼ(COX)により産生されることが知られており、このPGにより、子宮の収縮が引き起こされる。COXには、COX-1とCOX―2が存在し、特にCOX-2は、排卵時に黄体形成ホルモンにより卵胞において誘導され、受精、着床、分娩等の生殖現象とのかかわりが深いことが知られている。
【0004】
ロキソプロフェンナトリウムはフェニルプロピオン酸系の非ステロイド性抗炎症薬であり、優れた鎮痛・抗炎症・解熱作用を有している。ロキソプロフェンナトリウムを有効成分として含有する解熱鎮痛剤は、頭痛・月経痛(生理痛)・歯痛・抜歯後の疼痛・咽喉痛・腰痛・関節痛・神経痛・筋肉痛・肩こり痛・耳痛・打撲痛・骨折痛・ねんざ痛・外傷痛の鎮痛、悪寒・発熱時の解熱の効能効果を有している(例えば、非特許文献3参照)。
【0005】
子宮(ラット摘出子宮)においては、ロキソプロフェンナトリウム水和物1μg/mL 以上で自動運動の停止が認められたことが報告されている。子宮の自動運動にはPGの関与が大きいことが知られており、この影響はロキソプロフェンナトリウム水和物のプロスタグランジン生合成阻害作用によるものと考えられる。(非特許文献4参照)
【0006】
ロキソプロフェンナトリウムは、子宮筋の収縮を抑制し、月経痛(生理痛)に対する鎮痛効果が期待できるものの、より優れた効果と安全性を兼ね備えた薬剤が望まれている。
【0007】
ヘスペリジンは、みかんの皮に含まれるポリフェノールの1種であり、ビタミンPの1種としても知られ、その作用として毛細血管の強化作用、血中脂質の改善作用、血流改善作用、抗アレルギー作用、発癌抑制作用等を有する極めて有用な物質である(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
しかしながら、ヘスペリジンの子宮筋に対する作用は知られていない。また、ロキソプロフェンナトリウム水和物とヘスペリジンを含有する製剤は知られているが(特許文献2参照)、ロキソプロフェン又はその塩にヘスペリジンを併用することにより、鎮痛作用が増強することは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2008-074838号公開公報
【文献】特開2018-090549号公開公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】産婦人科の世界 Vol.58 No.7 2006 第3頁~第10頁
【文献】臨床婦人産科 63巻8号・2009年8月 第1076頁~第1081頁
【文献】ロキソニンS 添付文書 第一三共ヘルスケア株式会社
【文献】医薬品インタビューフォーム「ロキソニン錠60mg,ロキソニン細粒10%」,第一三共株式会社医療用医薬品集 2013年版 JAPIC 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、月経困難症に伴う疼痛、すなわち月経痛(生理痛)の治療効果を有する、月経困難症の予防及び/又は治療のための組合せ医薬を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物と、ヘスペリジン類とを併用することにより、子宮筋の収縮の抑制、具体的には子宮筋の収縮の頻度及び振幅をより減少させることを見出した。さらに、ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物と、ヘスペリジン類との組み合わせに、芍薬又はその抽出物、アリルイソプロピルアセチル尿素及びブロムワレリル尿素から選ばれる1種以上の鎮静剤、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及びキサンチン類をさらに組み合わせた場合には、より顕著に子宮筋の収縮を抑制することを見出した。このことにより、本発明者らは、ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物と、ヘスペリジン類とを含む組合せ医薬が、月経困難症に伴う疼痛、すなわち、月経痛(生理痛)に対して優れた鎮痛効果を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物、及びヘスペリジン類を含有する月経困難症の予防及び/又は治療のための組合せ医薬。
(2)ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物、及びヘスペリジン類を含有する生理痛の予防及び/又は治療のための組合せ医薬。
(3)さらに芍薬又はその抽出物;アリルイソプロピルアセチル尿素及びブロムワレリル尿素から選ばれる1種以上の鎮静剤;キサンチン類;及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウム;から選ばれる1種又は2種以上を含有する、上記(1)又は(2)に記載の組合せ医薬。
(4)さらに芍薬又はその抽出物;アリルイソプロピルアセチル尿素及びブロムワレリル尿素から選ばれる1種以上の鎮静剤;キサンチン類;及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有する、上記(1)又は(2)に記載の組合せ医薬。
(5)ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物、ヘスペリジン類、及び芍薬又はその抽出物を含有する、組合せ医薬。
(6)ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物、ヘスペリジン類、芍薬又はその抽出物及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有する、組合せ医薬。
【0014】
(A1)ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物、及びヘスペリジン類を、対象に投与することを含む、月経困難症を予防及び/又は治療する方法。
(A2)ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物、及びヘスペリジン類を、対象に投与することを含む、生理痛を予防及び/又は治療する方法。
(A3)さらに芍薬又はその抽出物;アリルイソプロピルアセチル尿素及びブロムワレリル尿素から選ばれる1種以上の鎮静剤;キサンチン類;及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウム;から選ばれる1種又は2種以上を投与する、上記(A1)又は(A2)に記載の方法。
(A4)さらに芍薬又はその抽出物;アリルイソプロピルアセチル尿素及びブロムワレリル尿素から選ばれる1種以上の鎮静剤;キサンチン類;及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを投与する、上記(A1)又は(A2)に記載の方法。
(A5)ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物、ヘスペリジン類、及び芍薬又はその抽出物を、対象に投与することを含む、上記(A1)又は(A2)に記載の方法。
(A6)ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物、ヘスペリジン類、芍薬又はその抽出物及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを、対象に投与することを含む、上記(A1)又は(A2)に記載の方法。
【0015】
(B1)月経困難症の予防及び/又は治療において使用するための、ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物、及びヘスペリジン類の組合せ。
(B2)生理痛の予防及び/又は治療において使用するための、ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物、及びヘスペリジン類の組合せ。
(B3)さらに芍薬又はその抽出物;アリルイソプロピルアセチル尿素及びブロムワレリル尿素から選ばれる1種以上の鎮静剤;キサンチン類;及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウム;から選ばれる1種又は2種以上を含む、上記(B1)又は(B2)に記載の組合せ。
(B4)さらに芍薬又はその抽出物;アリルイソプロピルアセチル尿素及びブロムワレリル尿素から選ばれる1種以上の鎮静剤;キサンチン類;及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含む、上記(B1)又は(B2)に記載の組合せ。
(B5)ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物、ヘスペリジン類、及び芍薬又はその抽出物を含む、上記(B1)又は(B2)に記載の組合せ。
(B6)ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物、ヘスペリジン類、芍薬又はその抽出物及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有する、上記(B1)又は(B2)に記載の組合せ。
【0016】
(C1)月経困難症の予防及び/又は治療のための組合せ医薬の製造のための、ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物、及びヘスペリジン類の使用。
(C2)生理痛の予防及び/又は治療のための組合せ医薬の製造のための、ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物、及びヘスペリジン類の使用。
(C3)さらに芍薬又はその抽出物;アリルイソプロピルアセチル尿素及びブロムワレリル尿素から選ばれる1種以上の鎮静剤;キサンチン類;及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウム;から選ばれる1種又は2種以上を使用する、上記(C1)又は(C2)に記載の使用。
(C4)さらに芍薬又はその抽出物;アリルイソプロピルアセチル尿素及びブロムワレリル尿素から選ばれる1種以上の鎮静剤;キサンチン類;及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを使用する、上記(C1)又は(C2)に記載の使用。
(C5)ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物、ヘスペリジン類、及び芍薬又はその抽出物を使用する、上記(C1)又は(C2)に記載の使用。
(C6)ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物、ヘスペリジン類、芍薬又はその抽出物及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを使用する、上記(C1)又は(C2)に記載の使用。
【発明の効果】
【0017】
本発明の、ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物とヘスペリジン類を含有する組合せ医薬は、月経痛(生理痛)の症状の予防及び/又は治療に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明におけるロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物は、ロキソプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム水和物(2水和物)等を挙げることができる。本発明におけるロキソプロフェンナトリウム水和物は、第17改正日本薬局方2016等に収載されている。
【0019】
本発明におけるヘスペリジン類は、ヘスペリジン、及びグリコシルヘスペリジン等のヘスペリジン誘導体を挙げることができる。ヘスペリジンはビタミンPとも呼ばれ、日本薬局方外医薬規格2002等に収載されている。
【0020】
芍薬はボタン科シャクヤクの根を乾燥したものである。本発明における芍薬又はその抽出物としては、特に限定されないが、芍薬乾燥エキス(乾燥シャクヤクエキス)、芍薬軟エキス、芍薬流エキス等が挙げられる。
【0021】
アリルイソプロピルアセチル尿素及びブロムワレリル尿素は、鎮静剤の有効成分として市販されており、容易に入手できる。
メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは日本薬局方外医薬品規格2002に収載されている。製剤の賦形剤等として用いられている他、胃・十二指腸潰瘍や胃炎の症状改善を目的とした制酸剤として、また非ステロイド性抗炎症薬による消化管障害を抑制するための制酸剤として使用されている。
【0022】
本発明におけるキサンチン類は、例えば、カフェイン水和物、無水カフェイン、安息香酸カフェインナトリウム、テオフィリン、ジプロフィリン等を挙げることができる。本発明におけるキサンチン類としては、カフェイン水和物又は無水カフェインが好ましい。これらのキサンチン類は、第17改正日本薬局方2016や日本薬局方外医薬品規格2002等に収載されている。
【0023】
本発明の医薬の剤形としては、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、液剤、トローチ剤、ゼリー剤等を挙げることができる。
【0024】
製剤化は、公知の製剤技術により行うことができ、製剤中には適当な製剤添加物を加えることができる。製剤添加物は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜加えればよい。製剤添加物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、甘味剤、嬌味剤、滑沢剤、コーティング剤等を挙げることができる。
【0025】
賦形剤としては、例えば、結晶セルロース、粉末セルロース、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、二酸化ケイ素、沈降炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、酸化マグネシウム、乳酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、アミノ酢酸、合成ヒドロタルサイト、合成ケイ酸アルミニウム、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油、乳糖、白糖、D-マンニトール、エリスリトール、トレハロース、ブドウ糖、果糖等を挙げることができる。
【0026】
崩壊剤としては、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、アルギン酸、部分アルファー化デンプン、ベントナイト等を挙げることができる。
【0027】
結合剤としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポビドン、マクロゴール、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ゼラチン、デキストリン、ペクチン、ポリアクリル酸ナトリウム、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、プルラン等を挙げることができる。
【0028】
甘味剤としては、例えば、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、サッカリン等が挙げられる。
【0029】
嬌味剤としては、例えば、メントール、ハッカ水、ハッカ油、アスコルビン酸、クエン酸、ケイヒ油、チョウジ油、乳酸、ハチミツ、ボルネオール、ローズ油等が挙げられる。
【0030】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、硬化油等を挙げることができる。
【0031】
コーティング剤としては、例えば、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アラビアゴム、エチルセルロース、カルナウバロウ、カルボキシビニルポリマー、ステアリン酸マグネシウム、タルク、セラック、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン、ポビドン、ポリビニルアルコール、マクロゴール等を挙げることができる。
【0032】
これら製剤添加物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明の組合せ医薬の患者への投与量は、患者の性別、年齢、症状、投与方法、投与回数、投与時期等により適宜検討を行い、適当な投与量を決めればよい。
【0034】
例えば、ロキソプロフェンナトリウムについては、無水物として1日当たり10~1000mg投与することが好ましく、100~360mg投与することがさらに好ましく、180mg投与することが特に好ましい。
【0035】
また、ヘスペリジン類については、ヘスペリジンとして1日当たり1~1000mg投与することが好ましく、15~150mg投与することがさらに好ましく、50~120mg投与することが特に好ましい。
【0036】
芍薬またはその抽出物については、芍薬の原生薬換算で、1日あたり100~5000mg投与することが好ましく、150~2000mg投与することがさらに好ましく、200~900mg投与することが特に好ましい。
【0037】
なお、本明細書において、原生薬換算量とは、その成分量を得るために必要な原生薬の質量(乾燥質量)である。
【0038】
芍薬またはその抽出物が、例えば、芍薬の根を小片、小塊に切断若しくは粉砕、又は粉末に粉砕したものであれば、配合する芍薬の質量が原生薬換算量になり、シャクヤクエキス(シャクヤク乾燥エキス、シャクヤク軟エキスなど)の場合であれば、配合されるシャクヤクエキスの量を得るために必要な原生薬(芍薬)の乾燥質量が原生薬換算量になる。
【0039】
なお、シャクヤク乾燥エキスは特に限定されないが、市販のシャクヤク乾燥エキスとしては、例えば、日本粉末薬品株式会社製シャクヤク乾燥エキス(商品名:シャクヤク乾燥エキス-Q、抽出溶媒:水、原生薬換算比7:1(シャクヤクを7倍濃縮したもの))、アルプス薬品工業株式会社製シャクヤク乾燥エキス(抽出溶媒:水、原生薬換算比5:1(シャクヤクを5倍濃縮したもの))などが挙げられる。
【0040】
また、シャクヤク軟エキスは特に限定されないが、市販のシャクヤク軟エキスとしては、例えば、日本粉末薬品株式会社製シャクヤク軟エキス(商品名:シャクヤク乾燥エキス-A、抽出溶媒:水、原生薬換算比4:1(シャクヤクを4倍濃縮したもの))、アルプス薬品工業株式会社製シャクヤクエキス(抽出溶媒:水、原生薬換算比4:1(シャクヤクを4倍濃縮したもの))などが挙げられる。
【0041】
キサンチン類については、キサンチン類が無水カフェインの場合、1日当たり10~1000mg投与することが好ましく、50~500mg投与することがさらに好ましく、150mg投与することが特に好ましい。
【0042】
メタケイ酸アルミン酸マグネシウムについては、1日あたり10~2000mg投与することが好ましく、50~500mg投与することがさらに好ましく、300mg投与することが特に好ましい。
【0043】
アリルイソプロピルアセチル尿素及びブロムワレリル尿素から選ばれる1種以上の鎮静剤については、1日当たり10~1000mg投与することが好ましく、100~360mg投与することがさらに好ましく、180mg投与することが特に好ましい。
【0044】
本発明の組合せ医薬は、本発明に係る複数の成分を含む単一の製剤(単一の医薬組成物)として製し、これを投与してもよいし、また本発明に係る各成分を分けて別の製剤(複数の医薬組成物)とし、それらの製剤を同時又は順次投与可能としたキット製剤としてもよい。
また、本発明の組合せ医薬の製剤の剤形が、固形製剤の場合、適宜、ガラス瓶やPTP等の包装形態とすることができる。さらに、必要に応じて、乾燥剤を本発明の医薬品組成物とともに封入することができる。
【0045】
ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物、及びヘスペリジン類を含有する本発明の月経困難症の予防及び/又は治療のための組合せ医薬は、生理痛症状の予防又は治療に用いられるのが好ましい。
【0046】
ロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物、ヘスペリジン類、及び芍薬又はその抽出物を含有する本発明の組合せ医薬、並びにロキソプロフェン又はその塩又はそれらの水和物、ヘスペリジン類、芍薬又はその抽出物及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有する本発明の組合せ医薬の用途は特に限定されない。上記した本発明の組合せ医薬は、月経困難症の予防及び/又は治療のため、又は生理痛症状の予防又は治療のために使用してもよいし、それ以外にも例えば、鎮痛剤として、頭痛、歯痛・抜歯後の疼痛、咽喉痛、腰痛、関節痛、神経痛、筋肉痛、肩こり痛、耳痛、打撲痛、骨折痛、ねんざ痛、外傷痛の鎮痛のために使用してもよく、又は悪寒・発熱時の解熱のために使用してもよい。
【0047】
以下に、実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらにのみ限定されるべきものではない。
【実施例
【0048】
(実施例1)被験物質のラット摘出子宮を用いたマグヌス試験
1.試験方法
9~11週齢の雌性ラット(Slc:SD、日本エスエルシー株式会社)44匹を6日以上馴化した後、膣垢検査にて性周期が発情期であることを確認したラットを使用した。ラットを放血致死させて開腹し、左右の子宮角を摘出した。摘出した子宮角を、長さ2~3cmの管状標本とした。オルガンバスに95%O+5%COの混合ガスを通じたLocke-Ringer液を満たし、標本を0.5gの負荷で懸垂した。
【0049】
標本の反応はアイソトニックトランスデューサー(TD-111T、日本光電工業(株))、高感度直流増幅器(AD-611J、日本光電工業(株))およびPowerLab(PL3516、AD INSTRUMENTS)を介して、データ収録解析ソフトウェア(LabChartPro、AD INSTRUMENTS)により記録した。
【0050】
標本を懸垂し約30分安定化させた。その後、自動運動の振幅が安定した後に媒体又は各検体の被験液を1標本につき1濃度を適用し、適用後10分以上自動運動を記録した。
【0051】
データの解析は、以下のとおり実施した。
自動運動の振幅(mm):適用前値は媒体又は各検体適用時点の直前に得られた1波形を解析した。適用後の値は適用後10分間で得られた波形の最後の1波形を解析した。それぞれの収縮波形の最小値および最大値を計測し、最小値と最大値の差を算出した。
自動運動の収縮回数(times/10min):媒体又は各検体適用前および適用後それぞれ10分間の波形記録から集計した。
【0052】
いずれのデータも適用前値に対する変化率(%)を算出した。結果は平均および標準偏差(±SD)で表した。
【0053】
得られたデータを、媒体群と各検体群について、studentのt検定(有意水準5%)を実施した。
【0054】
2.被験物質
被験物質の成分としては、次のものを使用した。すなわち、ロキソプロフェンナトリウム水和物(以下、LOXとも称する)は東京化成工業(株)製のものを、乾燥シャクヤクエキス(原生薬換算比7:1、以下、シャクヤクとも称する)は日本粉末薬品(株)製のものを、ヘスペリジンは富士フイルム和光純薬(株)製のものを、カフェイン一水和物(以下、カフェインとも称する)はナカライテスク(株)製のものを、アリルイソプロピルアセチル尿素(以下、AIAUとも称する)は金剛化学(株)製のものを、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは富士化学工業(株)製のものを使用した。
【0055】
また、Locke-Ringer液は、塩化ナトリウム(154.0mmol/L)、塩化カリウム(5.6mmol/L)、塩化カルシウム(2.2mmol/L)、塩化マグネシウム(2.1mmol/L)、炭酸水素ナトリウム(5.9mmol/L)、およびD-(+)-グルコース(2.8mmol/L)を蒸留水に溶解して調製した。
【0056】
3.検体及び試験群構成
各検体は、各被験物質をLocke-Ringer液に懸濁又は溶解した後、(表1)の最終濃度となるようオルガンバス内に一定量添加した。
【表1】
【0057】
4.試験結果
結果を表2に示す。
【表2】
【0058】
ロキソプロフェン単独群の検体2では、媒体群の検体1と比較して自動運動の振幅の低値を示したが、有意な差は認められなかった。収縮回数は媒体群と比較して有意な低値を示した。また、ヘスペリジン0.8%単独群である検体4では、自動運動の振幅に対して影響を及ぼさなかったが、媒体群と比較して収縮回数の有意な低値を示した。また、ヘスペリジンの1.6%単独群である検体5では、自動運動の振幅に対して影響を及ぼさなかったが、媒体群と比較して収縮回数の有意な低値を示した。
【0059】
ロキソプロフェンとヘスペリジン0.8%の併用群である検体8は、媒体群と比較して自動運動の振幅の有意な低値および収縮回数の有意な低値を示した。
【0060】
また、乾燥シャクヤクエキスの1.0%である検体3では、媒体群と比較して自動運動の有意な低値および収縮回数の有意な低値を示した。
カフェイン一水和物の1.4%である検体6では、媒体群と比較して自動運動の振幅の低値を示したが、有意な差は認められなかった。収縮回数は媒体群と比較して有意な低値を示した。
【0061】
ロキソプロフェン1.9%と乾燥シャクヤクエキス1.0%とヘスペリジン0.8%である検体10は、媒体群と比較して自動運動の有意な低値および収縮回数の有意な低値を示した。
ロキソプロフェン1.9%と乾燥シャクヤクエキス1.0%とヘスペリジン0.8%とカフェイン一水和物1.4%である検体11は、媒体群と比較して自動運動の有意な低値および収縮回数の有意な低値を示した。
【0062】
ロキソプロフェン1.9%と乾燥シャクヤクエキス1.0%とヘスペリジン0.8%とカフェイン一水和物1.4%とアリルイソプロピルアセチル尿素1.67%とメタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.7%である検体12は、媒体群と比較して自動運動の有意な低値および収縮回数の有意な低値を示した。
【0063】
したがって、本発明の組合せ医薬は、子宮筋の収縮に対し抑制効果を示したことから、子宮筋の過剰な収縮により発生する月経困難症及び生理痛に対し、優れた作用を示すものであることが判った。
【0064】
(実施例2)被験物質のラット摘出子宮を用いたマグヌス試験2
1.試験方法
9~11週齢の雌性ラット(Slc:SD、日本エスエルシー株式会社)36匹を6日以上馴化した後、膣垢検査にて性周期が発情期であることを確認したラットを使用した。ラットを放血致死させて開腹し、左右の子宮角を摘出した。摘出した子宮角を、長さ2~3cmの管状標本とした。オルガンバスに95%O+5%COの混合ガスを通じたLocke-Ringer液を満たし、標本を0.5gの負荷で懸垂した。
以降の試験方法、標本の記録法、解析方法は試験例1と同様に実施した。
【0065】
2.被験物質
被験物質の成分としては、次のものを使用した。すなわち、ロキソプロフェンナトリウム水和物(以下、LOXとも称する)は東京化成工業(株)製のものを、乾燥シャクヤクエキス(原生薬換算比7:1、以下、シャクヤクとも称する)は日本粉末薬品(株)製のものを、ヘスペリジンは東京化成工業(株)製のものを、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは富士化学工業(株)製のものを使用した。
3.検体及び試験群構成
各検体は、各被験物質をLocke-Ringer液に懸濁又は溶解した後、(表3)の最終濃度となるようオルガンバス内に一定量添加した。
【表3】
【0066】
4.試験結果
結果を表4に示す。
【表4】
【0067】
ロキソプロフェン単独群の検体15は、媒体群の検体14と比較して自動運動の振幅、及び収縮回数が有意な低値を示した。また、検体16(乾燥シャクヤクエキス1.0%単独群)、検体17(ヘスペリジン0.8%単独群)検体18(メタケイ酸アルミン酸マグネシウム2.78%単独群)は、自動運動の振幅に対して影響を及ぼさなかったが、媒体群の検体14と比較して収縮回数の有意な低値を示した。
【0068】
ロキソプロフェン1.9%と乾燥シャクヤクエキス1.0%とヘスペリジン0.8%である検体19は、媒体群である検体14と比較して自動運動の振幅の有意な低値および収縮回数の有意な低値を示した。
また、ロキソプロフェン1.9%と乾燥シャクヤクエキス1.0%とヘスペリジン0.8%とメタケイ酸アルミン酸マグネシウム2.78%である検体20は、媒体群と比較して自動運動の振幅の有意な低値および収縮回数の有意な低値を示した。
【0069】
したがって、これらの組合せ医薬は、子宮筋の収縮に対し抑制効果を示したことから、子宮筋の過剰な収縮により発生する月経困難症及び生理痛に対し、優れた作用を示すものであることが判った。
【0070】
(製剤例1)
以下の表5の組成で、常法により錠剤を製造する。
【0071】
【表5】
【0072】
(製剤例2)
以下の表6の組成で、常法により錠剤を製造する。
【0073】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の、ロキソプロフェンナトリウム及びヘスペリジンを含有する組合せ医薬は、月経困難症、生理痛を改善するため、その予防及び/又は治療用の組合せ医薬として有用なものである。