IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社TOTOKUの特許一覧

<>
  • 特許-プローブ針及びプローブユニット 図1
  • 特許-プローブ針及びプローブユニット 図2
  • 特許-プローブ針及びプローブユニット 図3
  • 特許-プローブ針及びプローブユニット 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】プローブ針及びプローブユニット
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/067 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G01R1/067 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020095572
(22)【出願日】2020-06-01
(65)【公開番号】P2021189065
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】323004813
【氏名又は名称】株式会社TOTOKU
(74)【代理人】
【識別番号】110003904
【氏名又は名称】弁理士法人MTI特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】深澤 雅章
(72)【発明者】
【氏名】岡田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 卓弥
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-017455(JP,A)
【文献】特開2012-137416(JP,A)
【文献】特開2010-091494(JP,A)
【文献】特開2008-286100(JP,A)
【文献】特開2011-183545(JP,A)
【文献】国際公開第2008/072699(WO,A1)
【文献】特開昭63-253260(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2011-0085456(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 1/06-1/073、
H01L 21/64-21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピン形状の金属導体の外周に絶縁被膜を有する胴体部と、前記金属導体の両端に該絶縁被膜を有しない端部とを有するプローブ針において、前記絶縁被膜は、ポリエステル系エナメル塗料を用いて長尺の前記金属導体上に連続エナメル焼き付け方法でエナメル焼付けして単層構造又は積層構造に形成された絶縁被膜であり、JIS B-0601-2001に基づいて測定された前記絶縁被膜の最表面の算術平均高さRaが0以上0.06μm以下であり、スキューネスRskが-2≦Rsk<0である、ことを特徴とするプローブ針。
【請求項2】
前記金属導体の外径が8μm以上180μm以下の範囲内であり、前記胴体部の外径が10μm以上200μm以下の範囲内である、請求項1に記載のプローブ針。
【請求項3】
被測定体側に配置された支持板と、検査装置側に配置された支持板と、それら少なくとも2つの支持板それぞれが備える案内穴に装着されるプローブ針とを有し、前記いずれかの支持板の案内穴の内面に前記プローブ針が接触するとともに前記被測定体の電極に金属導体の先端を接触させて行う検査に用いるプローブユニットであって、
前記プローブ針が、ピン形状の金属導体の外周に絶縁被膜を有する胴体部と、前記金属導体の両端に該絶縁被膜を有しない端部とを有し、前記絶縁被膜は、ポリエステル系エナメル塗料を用いて長尺の前記金属導体上に連続エナメル焼き付け方法でエナメル焼付けして単層構造又は積層構造に形成された絶縁被膜であり、JIS B-0601-2001に基づいて測定された前記絶縁被膜の最表面の算術平均高さRaが0以上0.06μm以下であり、スキューネスRskが-2≦Rsk<0である、ことを特徴とするプローブユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に電子部品及び基板等の導通検査に用いるプローブユニットの使用時において、プローブユニットが備えるプローブ針案内穴の変形と摺動不良を防いだプローブ針及びプローブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等に使用される高密度実装基板、又は、パソコン等に組み込まれるBGA(Ball Grid Array)やCSP(Chip Size Package)等のICパッケージ基板等、様々な回路基板が多く用いられている。このような回路基板は、実装の前後の工程において、例えば直流抵抗値の測定や導通検査等が行われ、その電気特性の良否が検査されている。電気特性の良否の検査は、電気特性を測定する検査装置に接続された検査装置用治具(以下、「プローブユニット」という。)を用いて行われ、例えば、プローブユニットに装着されたピン形状のプローブ針の先端を、その回路基板の電極(以下「被測定体」ともいう。)に接触させることにより行われている。
【0003】
こうしたプローブユニットへの組み付け時やプローブユニットの使用時において、特許文献1では、案内穴とプローブ針の擦れによる摺動不良、検査不良及び寿命低下の問題を解決する技術として、金属導体の外周に設けられる多層絶縁被膜を、被膜強度及び耐電圧を有するベース被膜と、滑り性を有するフッ素系被膜との積層構造とすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-91494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、絶縁被膜にフッ素系樹脂を設け、フッ素系樹脂自身が持つ低い摩擦係数により、プローブ針装着穴に対する滑り性を向上させている。しかし、フッ素系樹脂以外の樹脂で絶縁被膜が形成されている場合、そうした滑り性は実現できず、プローブ針の案内穴に削れが生じて穴の形状が変形し、その穴にプローブ針が引っかかって摺動不良が生じることがあった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、主に電子部品及び基板等の導通検査に用いるプローブユニットの使用時において、プローブユニットが備えるプローブ針案内穴の変形と摺動不良を防いだプローブ針及びプローブユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係るプローブ針は、ピン形状の金属導体の外周に絶縁被膜を有する胴体部と、前記金属導体の両端に該絶縁被膜を有しない端部とを有するプローブ針において、前記絶縁被膜の算術平均高さRaが0.06μm以下であり、スキューネスRskがマイナスである、ことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、絶縁被膜の算術平均高さRaとスキューネスRskを上記範囲内とすることで、胴体部が接触する案内穴内面の削れを防ぎ、案内穴の変形と摺動不良を防ぐことができる。
【0009】
本発明に係るプローブ針において、前記絶縁被膜は、単層構造又は積層構造であり、該積層構造の場合は、最表面に設けられた絶縁被膜の算術平均高さRaが0.06μm以下であり、スキューネスRskがマイナスである。
【0010】
本発明に係るプローブ針において、前記金属導体の外径が8μm以上180μm以下の範囲内であり、前記胴体部の外径が10μm以上200μm以下の範囲内である。
【0011】
(2)本発明に係るプローブユニットは、被測定体側に配置された支持板と、検査装置側に配置された支持板と、それら少なくとも2つの支持板それぞれが備える案内穴に装着されるプローブ針とを有し、前記いずれかの支持板の案内穴の内面に前記プローブ針が接触するとともに前記被測定体の電極に金属導体の先端を接触させて行う検査に用いるプローブユニットであって、
前記プローブ針が、ピン形状の金属導体の外周に絶縁被膜を有する胴体部と、前記金属導体の両端に該絶縁被膜を有しない端部とを有し、前記絶縁被膜の算術平均高さRaが0.06μm以下であり、スキューネスRskがマイナスである、ことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、絶縁被膜の算術平均高さRaとスキューネスRskを上記範囲内とするプローブ針を有するので、胴体部が接触する案内穴内面の削れを防ぎ、案内穴の変形と摺動不良を防ぐことができる。その結果、電子部品及び基板等の導通検査に用いるプローブユニットの使用時において、案内穴の変形と摺動不良を防いだ安定した検査を繰り返し行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、主に電子部品及び基板等の導通検査に用いるプローブユニットの使用時において、プローブユニットが備えるプローブ針案内穴の変形と摺動不良を防いだプローブ針及びプローブユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るプローブ針の一例を示す説明図である。
図2】本発明に係るプローブ針の断面図であり、(A)は1層からなる絶縁被膜であり、(B)は2層からなる絶縁被膜である。
図3】本発明に係るプローブユニットの一例を示す説明図ある。
図4】実験で用いたプローブ針の外観写真(A)と、支持板に設けられた案内穴の写真(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るプローブ針及びプローブユニットについて図面を参照しつつ説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の技術的思想の一例であり、本発明の技術的範囲は、以下の記載や図面だけに限定されるものではなく、同様の技術的思想の発明を含んでいる。
【0016】
[プローブ針]
本発明に係るプローブ針10は、ピン形状の金属導体1の外周に絶縁被膜2を有する胴体部6と、その金属導体1の両端に絶縁被膜2を有しない端部3とを有する。このプローブ針10において、絶縁被膜2の算術平均高さRa(JIS B-0601-2001)が0.06μm以下であり、スキューネスRskがマイナス(Rsk<0)である、ことを特徴とする。絶縁被膜2の算術平均高さRaとスキューネスRskを上記範囲内とすることで、胴体部6が接触する案内穴内面の削れを防ぎ、案内穴の変形と摺動不良を防ぐことができる。
【0017】
各構成要素について詳しく説明する。
【0018】
プローブ針10は、図1及び図2に示すように、プローブユニット60を構成する被測定体側の第1支持板20の案内穴周縁に絶縁被膜2の端部7を当てるとともに被測定体11の電極12に金属導体1の先端1aを接触させて行う検査で使用されるものである。このプローブ針10は、金属導体1と、金属導体1の少なくとも両端以外の領域(胴体部6)に設けられた絶縁被膜2とを有している。プローブ針10は、図3に示すように、その胴体部6をプローブユニット60の第2支持板30の案内穴31に通し、その絶縁被膜端部7を第1支持板20の案内穴21の周縁に当接させた状態で摺動し、被測定体11の電気特性を測定する。
【0019】
(金属導体)
金属導体1は、所定の長さに加工されてなるピン形状の導体であり、高い導電性と高い弾性率を有する金属線(「金属ばね線」ともいう。)を切断加工されている。金属導体1に用いられる金属としては、広い弾性域を持つ金属を挙げることができ、例えば銀銅合金、錫銅合金、ベリリウム銅合金等の銅合金、パラジウム合金、タングステン、レニウムタングステン、鋼(例えば高速度鋼:SKH)等を好ましく用いることができる。特に、後述の実施例に示すように、高強度特性を備えた、タングステン、レニウムタングステン等が好ましい。
【0020】
金属導体1は、通常、上記の金属が所定の径の線状導体となるまで冷間又は熱間伸線等の塑性加工が施される。金属導体1の外径は、近年の狭ピッチ化の要請から、細径化が求められており、プローブユニット60において隣り合う各プローブ針10の間隔に応じて、8μm以上180μm以下の範囲内から任意に選択することができる。
【0021】
金属導体1の先端側と後端側の先端1a及び後端1bの形状は、図示しないが、半球形状、円錐形状、先端に半球形状を有する円錐形状、先端に平坦形状を有する円錐形状、等から選ばれるいずれかとすることができる。ここでいう「半球形状」、「円錐形状」は、正確な半球や円錐を含むが、略円錐や略半球も含む。
【0022】
金属導体1の端部3(絶縁被膜2が設けられていない部分)においては、金属導体1と、電極12又は検査装置のリード線50との接触抵抗値の上昇を抑制するために、めっき層が必要に応じて端部3に設けられていてもよい。めっき層を形成する金属としては、ニッケル、金、ロジウム等の金属や金合金等の合金を挙げることができる。めっき層は、単層であってもよいし複層であってもよい。複層のめっき層としては、ニッケルめっき層上に金めっき層が形成されたものを好ましく挙げることができる。めっき層は、通常、絶縁被膜2を形成した金属導体1を切断した後、絶縁被膜2の剥離加工と金属導体1の端部加工を行った後に形成される。こうしためっき層は、端部3だけに設けられていてもよいが、絶縁被膜2を設ける前に金属導体1の全体に設けられていてもよい。
【0023】
なお、プローブ針10をプローブユニット60に装着し易くし、且つ、プローブユニット60の使用時においてプローブ針10の先端1aが第1支持板20の案内穴21の周縁に引っかかることによりプローブ針10の動きが妨げられるのを防止する観点からは、金属導体1の真直度が高いことが好ましく、具体的には真直度が曲率半径Rで1000mm以上であることが好ましい。
【0024】
(絶縁被膜)
絶縁被膜2は、図1及び図2に示すように、金属導体1の少なくとも両側の端部3,3以外の領域の外周に設けられている。絶縁被膜2を有する部分は胴体部6といい、絶縁被膜2が設けられていない部分は端部3といい、端部3の先端を先端1a及び後端1bという。
【0025】
絶縁被膜2の構成材料は特に限定されないが、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド及びフッ素樹脂から選ばれる1種又は2種以上の樹脂材料で構成されていることが好ましい。そして、上記1種又は2種以上の樹脂材料により、単層からなる単層構造又は2層以上からなる積層構造で形成されている。これら絶縁被膜2の形成は、通常、長尺の金属導体1上に連続エナメル焼き付け方法によって行うことが好ましいが、電着塗装等の公知の他の方法で形成したものであってもよい。
【0026】
本発明では、絶縁被膜2は、その算術平均高さRa(JIS B-0601-2001)が0.06μm以下であり、スキューネスRskがマイナスである。絶縁被膜の算術平均高さRaとスキューネスRskを上記範囲内とすることで、胴体部6が挿入されて接触する案内穴(例えば図3に示す案内穴31)の内面の削れを防ぎ、案内穴31の変形と摺動不良を防ぐことができる。
【0027】
算術平均高さRaが0.06μmを超えると、胴体部6が接触(摺動接触)する案内板内面が摩耗して削れてくることがある。算術平均高さRaの下限値は理論上0μmである。算術平均高さRaは、JIS B-0601-2001に規定された工業規格であり、基準長さにおいて、Z(x)の絶対値の平均を表している。測定は、種々の表面粗さ測定装置で測定できるが、本出願では後述の実施例に示す表面粗さ測定装置(オリンパス株式会社製、装置名:LEXT OLS4100)を用いた。
【0028】
上記算術平均高さRa0.06μm以下であっても、スキューネスRskが0(Rsk=0)又はプラス(Rsk>0)の場合は、胴体部6が接触(摺動接触)する案内板内面が摩耗して削れてくることがある。スキューネスRskの下限値は特に限定されないが、マイナス2程度とすることができる。スキューネスRskもJIS B-0601-2001に規定された工業規格であり、二乗平均平方根高さRqの三乗によって無次元化した基準長さにおいて、Z(x)の三乗平均を表している。詳しくは、平均線を中心としたときの高さの分布に関するパラメーターであり、山部と谷部の対称性を表したものである。Rsk=0は平均線に対して対称(正規分布)を意味し、Rsk>0は平均線に対して下側に偏っていることを意味し、Rsk<0は平均線に対して上側に偏っていることを意味している。スキューネスの測定は、上記した算術平均高さRaの測定と同時に行われる。
【0029】
本発明においては、算術平均高さRaが0.06μm以下であり、且つスキューネスRskがマイナスであることが望ましいが、算術平均高さRaが0.06μm以下の場合だけであっても構わない。
【0030】
算術平均高さRa及びスキューネスRskは、絶縁被膜2の製造工程を制御することにより任意の値にコントロールすることができる。具体的には、エナメル塗料を用いてエナメル焼付けする場合の焼付温度、塗布回数、塗料粘度、一回の塗布当たりの塗布量(塗布厚さ)等の条件を制御してコントロールすることができる。したがって、それら条件によっては、RaとRskが上記範囲内にならない場合も生じる。
【0031】
絶縁被膜2は、図2(A)に示す単層でも図2(B)に示す2層以上の積層でもよく、特に限定されない。積層構造の絶縁被膜2として、図2(B)にしめすように、金属導体1上に設けられる第1絶縁被膜2aと、第1絶縁被膜2a上に設けられる第2絶縁被膜2bとで少なくとも構成されている例を挙げることができる。2層以上であれば、例えば3層でも4層でもよいが、コストを考慮すれば2層が望ましい。絶縁被膜2は、エナメル塗料を用いてエナメル焼き付けして形成することができる。なお、絶縁被膜2を構成する単層又は複層のいずれかの層に、顔料や染料を含有させて他のプローブ針10と識別可能にしてもよい。顔料としては、一般的にエナメル線の識別に採用されている各種顔料を採用することができる。
【0032】
絶縁被膜2が設けられた胴体部6の外径は、上記した金属導体1の場合と同様、被測定体11の電極12の狭ピッチ化の要請から、細径化が求められており、10μm以上200μm以下の範囲内から任意に選択することができる。こうした外径範囲のプローブ針10は、絶縁被膜2の算術平均高さRaとスキューネスRskを上記範囲内とすることで、胴体部6が接触する案内穴内面の削れを防ぎ、案内穴の変形と摺動不良を防ぐことができる。なお、絶縁被膜2の最外層は、算術平均高さRaとスキューネスRskを上記範囲内である必要があるので、これを満たさない最外層が設けられることはない。
【0033】
(プローブユニット)
本発明に係るプローブユニット60は、図3に示すように、被測定体側に配置された第1支持板20と、検査装置側に配置された第2支持板30と、それら少なくとも2つの支持板それぞれが備える案内穴21,31に装着されるプローブ針10とを有し、前記いずれかの支持板の案内穴の内面にプローブ針10が接触するとともに、被測定体11の電極12に金属導体1の先端1aを接触させて行う検査に用いるプローブユニットである。その特徴は、プローブ針10が、ピン形状の金属導体1の外周に絶縁被膜2を有する胴体部6と、金属導体1の両端に絶縁被膜を有しない端部3,3とを有し、絶縁被膜2の算術平均高さRa(JIS B-0601-2001)が0.06μm以下であり、スキューネスRskがマイナスであるあるように構成している。なお、プローブユニット60には、複数本から数千本のプローブ針10が装着されている。図3の例のプローブユニット60は、被測定体側の第1支持板20の案内穴周縁に絶縁被膜2の端部7を当てるとともに被測定体11の電極12に金属導体1の先端1aを接触させて行う検査に用い、プローブ針10の胴体部6は、第2支持板30の案内穴31の内面に接触する
【0034】
こうしたプローブユニット60は、絶縁被膜2の算術平均高さRaとスキューネスRskを上記範囲内とするプローブ針10を有するので、胴体部6が接触する案内穴内面の削れを防ぎ、案内穴の変形と摺動不良を防ぐことができる。その結果、電子部品及び基板等の導通検査に用いるプローブユニット60の使用時において、案内穴の変形と摺動不良を防いだ安定した検査を繰り返し行うことができる。
【0035】
検査装置側の第2支持板30は、胴体部6(プローブ針10)の外径よりも若干大きい内径の案内穴31を有している。一方、被測定体側の第1支持板20は、金属導体1の外径よりも若干大きい内径の案内穴21を有している。若干大きいとは、僅かなクリアランス(例えば1~3μm)だけ大きいことを意味している。案内穴21は、胴体部6の外径よりも小さいので、その案内穴21をプローブ針10がすり抜けることはなく、絶縁被膜2の端部7が案内穴周縁のエッジに当接する。案内穴21は、一本一本のプローブ針10をガイドし、被測定体11の電極12に金属導体1の先端1aを正確に接触させるようにガイドする。
【0036】
プローブユニット60は、図3の例では、被測定体11の電気特性を検査する際、プローブ針10と被測定体11とが対応するように位置制御される。電気特性の検査は、プローブユニット60を上下にストロークさせ、プローブ針10の弾性力を利用して被測定体11の電極12にプローブ針10の先端1aを所定の圧力で押し当てることにより行われる。このとき、プローブ針10の後端1bはリード線50に接触し、被測定体11からの電気信号がそのリード線50を通って検査装置(図示しない。)に送られる。
【実施例
【0037】
実施例と比較例により具体的に説明する。
【0038】
[実施例1]
金属導体1として、長尺のレニウムタングステン線(外径87μm)を用いた。絶縁被膜2は単層構造とし、ポリエステル系エナメル塗料を用い、焼付温度を300℃とし、焼付1回当たりの時間を14秒として厚さ14μmで形成した。絶縁被膜2が形成された長尺のプローブ針を定尺切断機で切断して長さ10mmの絶縁被膜付きプローブ針を切り出し、その絶縁被膜付きプローブ針の両端部の所定長さをレーザー剥離し、実施例1のプローブ針10を作製した。胴体部6の外径は115μmであった。なお、実施例1では、TFは有り、空焼は無し、とした。ここで、TFとは、テフロン(登録商標)樹脂添加塗料のことであり、空焼とは、塗料を通さず焼付を1回行うことである。
【0039】
[実施例2]
金属導体1として、長尺のレニウムタングステン線(外径87μm)を用いた。絶縁被膜2は2層構造とし、第1絶縁被膜2aは実施例1と同じポリエステル系エナメル塗料を第1絶縁被膜用塗料として用い、焼付条件(焼付温度と時間)は実施例1と同じにして厚さ14μmで形成した。第2絶縁被膜2bも実施例1と同じポリエステル系エナメル塗料を第2絶縁被膜用塗料として用い、焼付条件(焼付温度と時間)は実施例1と同じにして厚さ2.5μmで形成した。それ以外は実施例1と同様にして実施例2のプローブ針10を作製した。胴体部6の外径は120μmであった。
【0040】
[実施例3]
金属導体1として、長尺のレニウムタングステン線(外径87μm)を用いた。絶縁被膜2は単層構造とし、実施例1と同じポリエステル系エナメル塗料を用い、焼付条件(焼付温度と時間)は実施例1と同じにして厚さ9μmで形成した。それ以外は実施例1と同様にして実施例3のプローブ針10を作製した。胴体部6の外径は105μmであった。
【0041】
[実施例4]
金属導体1として、長尺のレニウムタングステン線(外径87μm)を用いた。絶縁被膜2は単層構造とし、実施例1と同じポリエステル系エナメル塗料を用い、焼付温度を400℃に変更し、焼付1回当たりの時間も3秒に変更して厚さ14μmで形成した。それ以外は実施例1と同様にして実施例4のプローブ針10を作製した。胴体部6の外径は115μmであった。
【0042】
[比較例1]
金属導体1として、長尺のレニウムタングステン線(外径87μm)を用いた。絶縁被膜2は2層構造とし、第1絶縁被膜2aは実施例1と同じポリエステル系エナメル塗料を第1絶縁被膜用塗料として用い、焼付条件(焼付温度と時間)は実施例1と同じにして厚さ10.5μmで形成した。第2絶縁被膜2bはナイロン塗料を第2絶縁被膜用塗料として用い、焼付温度を340℃とし、焼付1回当たりの時間を1秒として厚さ1μmで形成した。それ以外は実施例1と同様にして比較例1のプローブ針10を作製した。胴体部6の外径は110μmであった。
【0043】
[比較例2]
金属導体1として、長尺のレニウムタングステン線(外径87μm)を用いた。絶縁被膜2は2層構造とし、第1絶縁被膜2aは実施例1と同じポリエステル系エナメル塗料を第1絶縁被膜用塗料として用い、焼付条件(焼付温度と時間)は実施例1と同じにして厚さ8μmで形成した。第2絶縁被膜2bはナイロン塗料を第2絶縁被膜用塗料として用い、焼付条件(焼付温度と時間)は比較例1と同じにして厚さ1μmで形成した。それ以外は実施例1と同様にして比較例2のプローブ針10を作製した。胴体部6の外径は105μmであった。
【0044】
[評価]
実施例1と比較例1,2のプローブ針10を使用した。耐久試験用治具として、厚さ1.0mmの(住友化学株式会社製、スミカスーパー(登録商標))からなるプレートに直径0.95mmの案内穴を5個開けたものを用いた。案内穴にプローブ針10を通し、ストローク0.2mm、試験速度10mm/分で360000ショット上下動させた。その結果を図4に示す。図4において、上段はプローブ針の試験前の外観であり、中段はプローブ針の試験後の外観であり、下段は案内穴の外観である。図4(A)は実施例1のプローブ針であり、図4(B)は比較例1のプローブ針であり、図4(C)は比較例2のプローブ針である。
【0045】
図4に示す結果より、比較例1,2のように第2絶縁被膜としてナイロン被覆したプローブ針は、表面が粗くなっているのが確認され、案内穴に変形が生じているのが確認された。一方、実施例1のプローブ針は、表見が平滑であり、案内穴の変形も見られなかった。
【0046】
[表面粗さ実験]
実施例1と比較例1,2における上記評価結果より、表面粗さについて検討した。実施例1の中心導体を用い、その外周に実施例1と同じポリエステル系エナメル塗料を用い、表1に示す焼付条件で厚さ10.5μmの絶縁被膜を形成した。
【0047】
表面粗さ測定装置は、表面粗さ測定装置(オリンパス株式会社製、装置名:LEXT OLS4100)を用い、JIS B-0601-2001に従い、算術平均高さRaとスキューネスRskを測定した。評価は、図4で行ったものと同じ方法で評価し、案内穴が削れる等の影響がないものを「○」とし、削れが確認されたものを「×」とした。表1の結果より、算術平均高さRaが0.06μm以下で、スキューネスRskがマイナスの場合に、案内穴の内面の削れを防ぎ、案内穴の変形と摺動不良を防ぐことができることがわかった。
【0048】
【表1】
【符号の説明】
【0049】
1 金属導体
1a 先端
1b 後端
2 絶縁被膜
2a 第1絶縁被膜
2b 第2絶縁被膜
3 端部
6 胴体部
7 案内穴の周縁に当接する絶縁被膜の端部
10 プローブ針
11 被測定体
12 電極
20 第1支持板
21 案内穴
30 第2支持板
31 案内穴
40 リード線用の保持板
50 リード線
60 プローブユニット
図1
図2
図3
図4