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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】非接触給電用コイルの埋設構造
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/10 20160101AFI20240920BHJP
   E01F 11/00 20060101ALI20240920BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20240920BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20240920BHJP
   B60L 53/122 20190101ALI20240920BHJP
   B60L 53/30 20190101ALI20240920BHJP
【FI】
H02J50/10
E01F11/00
H02J50/40
B60M7/00 X
B60L53/122
B60L53/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020114181
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012377
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100099704
【弁理士】
【氏名又は名称】久寶 聡博
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英介
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/043628(WO,A2)
【文献】特開2013-211933(JP,A)
【文献】特開2012-200032(JP,A)
【文献】特開2012-089618(JP,A)
【文献】特表2012-519104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00 - 50/90
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
B60M 1/00 - 7/00
E01F 9/00 - 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装体の路面下に埋設され該舗装体の路面を走行する車両内に設置された受電コイルに非接触で電力供給可能になっている非接触給電用コイルを列状に複数並置した非接触給電用コイルの埋設構造において、
前記非接触給電用コイルを、コイル状導体部とそのコイル軸線と法線が概ね平行になるように該コイル状導体部の近傍に配置された磁性板とでそれぞれ構成するとともに、前記コイル軸線が開口中心の近傍に位置決めされるように前記磁性板に開口を設けることにより、該開口と前記コイル状導体部の中空空間とが連続一体化してなる貫通孔を前記コイル軸線に沿って延びる形で中央近傍にそれぞれ形成し、
前記非接触給電用コイルのうち、隣り合う2つの非接触給電用コイルの各コイル状導体部が重なるように配置することにより、離間させずに配置した場合に比べ、列方向を含む鉛直断面でみたときに、単位水平距離当たりの非接触給電用コイルの占有割合を減少させるようにしたことを特徴とする非接触給電用コイルの埋設構造。
【請求項2】
前記舗装体をコンクリート舗装体とするとともに、前記非接触給電用コイルを、コイル軸線に沿った圧縮剛性が、前記コンクリート舗装体のうち、直上に拡がるコンクリート板領域の曲げ剛性と同等以上となるようにそれぞれ構成した請求項1記載の非接触給電用コイルの埋設構造。
【請求項3】
前記コイル状導体部の絶縁被膜又は前記コイル状導体部の巻き枠若しくは該コイル状導体部内に充填されたモールド樹脂を、ヤング係数Eが25kN/mm 2 以上の高剛性材料でそれぞれ構成した請求項2記載の非接触給電用コイルの埋設構造
【請求項4】
前記高剛性材料をガラスエポキシ樹脂とした請求項3記載の非接触給電用コイルの埋設構造。
【請求項5】
前記舗装体のうち、前記非接触給電用コイルの直上に拡がる板領域を、繊維補強セメント複合材料又はポリマーコンクリートを用いて構成した請求項1記載の非接触給電用コイルの埋設構造。
【請求項6】
前記繊維補強セメント複合材料をHPFRCCを用いて構成した請求項5記載の非接触給電用コイルの埋設構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として路面下に埋設使用される非接触給電用コイル及びその埋設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の防止対策として、温室効果ガスの排出量を減らすべく、自動車の駆動機構が内燃機関から電動モータへと急速に移行しつつあるが、電気自動車(以下、EV)が広く普及するためには、EVに関する諸問題を解決せねばならない。
【0003】
EVが抱える問題としては、バッテリーの充電に時間がかかる、航続距離が短い、バッテリーのコストが高いといった点が挙げられるが、最近では、自動車のタイヤ内に受電コイルを配置するとともに、複数の給電コイルを自動車の走行方向に沿って路面直下に埋設しておくことで、走行しながらの給電を可能とする技術開発が進められている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】東京大学大学院新領域創成科学研究科、「『第3世代 走行中ワイヤレス給電インホイールモータ』の開発に成功 世界初 受電から駆動までのすべてをタイヤのなかに」、[online]、[令和2年6月5日検索]、インターネット<URL : http://www.k.u-tokyo.ac.jp/info/entry/22_entry772/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載の発明によれば、高速道路や交差点などに設置しておくことにより、充電時間を気にする必要がない、充電機会が増えるので、大容量のバッテリーが不要になる、搭載バッテリーが低容量でよければ、バッテリーのコスト、ひいてはEVのコストも下がるし、バッテリー製造に必要なコバルトなどの資源の枯渇も防止できるといった問題解決が期待できる。
【0006】
ここで、非特許文献1に記載の発明においては、給電コイルがコンクリート舗装体の路面の路面下に埋設されることになるため、該コンクリート舗装体の路面には、走行のために必要な本来の機能に加え、給電コイルを保護する機能も併せ持つ必要がある。
【0007】
しかしながら、コイル軸線に沿った給電コイルの圧縮剛性が比較的小さい、つまり圧縮荷重に対して給電コイルが変形しやすいため、コンクリート舗装体の路面の路面に走行荷重が作用すると、その走行荷重で給電コイルが圧縮変形し、直上のコンクリートには不同沈下が生じる。
【0008】
そのため、給電コイル直上のコンクリートの厚みが小さ過ぎると、不同沈下による曲げひび割れがコンクリートに生じ、給電コイルを保護する機能はもちろん、走行のための機能も低下するという問題を生じていた。
【0009】
ちなみに、給電コイル直上のコンクリートの厚みを大きくする、すなわち給電コイルの埋設深さを大きくすれば、上述の問題は解消されるが、その分、受電コイルとの離間距離が大きくなるため、電波法に抵触しない磁場強度で必要十分な給電効率を確保することが難しくなる。
【0010】
一方、アスファルト舗装体の路面の場合、混合された粗骨材及びアスファルトを、110゜C程度の温度を下回らないようにしながらアスファルトフィニッシャーで敷き均し、さらにこれをロードローラで締め固めるといった手順になるため、給電コイルの耐熱性いかんでは、給電コイルの破損を招くことが懸念される。
【0011】
また、複数の給電コイルをコンクリート舗装体の路面の路面直下に列状に埋設する場合、給電コイルへの走行荷重の集中載荷を防止すべく、給電コイルを互いに離間させて配置することで、それらの離間スペースを介して走行荷重の一部を直下のコンクリートに支持させる構成が想定される。
【0012】
しかしながら、かかる構成においては、各給電コイルにそれぞれ設けられた磁性板も互いに離間することになるため、磁気抵抗が増加して電力伝送効率が低下するという問題や、磁気シールド板を用いる場合には、磁気シールド板も互いに離間することになるため、磁束が漏れてコンクリート中の鉄筋を加熱したり、周辺の電子機器の誤動作を引き起こすといった問題を生じていた。
【0013】
また、給電コイルを舗装体の路面体の路面直下に埋設する場合、磁性板が脆性的な材料特性を有するため、磁性板が路面からの走行荷重で破損するおそれがあるという問題を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、舗装体の路面体の路面下に非接触給電用コイルを埋設する場合において、電波法に抵触しない磁場強度であっても、一定の給電効率を確保しつつ、コンクリートのひび割れを抑制することが可能な非接触給電用コイル及びその埋設構造を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、複数の非接触給電用コイルをコンクリート舗装体の路面直下に列状に埋設する場合において、コンクリートのひび割れを抑制しつつ、磁気抵抗が増加して電力伝送効率が低下するのを防止可能な非接触給電用コイルの埋設構造を提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、複数の非接触給電用コイルをコンクリート舗装体の路面直下に列状に埋設する場合において、コンクリートのひび割れを抑制しつつ、磁束が漏れてコンクリート中の鉄筋を加熱したり、周辺の電子機器の誤動作を引き起こすのを防止可能な非接触給電用コイルの埋設構造を提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明は、複数の非接触給電用コイルをコンクリート舗装体の路面直下に埋設する場合において、磁性板が路面からの走行荷重で破損するのを防止可能な非接触給電用コイルを提供することを目的とする。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明に係る非接触給電用コイルの埋設構造は請求項1に記載したように、舗装体の路面下に埋設され該舗装体の路面を走行する車両内に設置された受電コイルに非接触で電力供給可能になっている非接触給電用コイルを列状に複数並置した非接触給電用コイルの埋設構造において、
前記非接触給電用コイルを、コイル状導体部とそのコイル軸線と法線が概ね平行になるように該コイル状導体部の近傍に配置された磁性板とでそれぞれ構成するとともに、前記コイル軸線が開口中心の近傍に位置決めされるように前記磁性板に開口を設けることにより、該開口と前記コイル状導体部の中空空間とが連続一体化してなる貫通孔を前記コイル軸線に沿って延びる形で中央近傍にそれぞれ形成し、
前記非接触給電用コイルのうち、隣り合う2つの非接触給電用コイルの各コイル状導体部が重なるように配置することにより、離間させずに配置した場合に比べ、列方向を含む鉛直断面でみたときに、単位水平距離当たりの非接触給電用コイルの占有割合を減少させるようにしたものである。
【0022】
また、本発明に係る非接触給電用コイルの埋設構造は、前記舗装体をコンクリート舗装体とするとともに、前記非接触給電用コイルを、コイル軸線に沿った圧縮剛性が、前記コンクリート舗装体のうち、直上に拡がるコンクリート板領域の曲げ剛性と同等以上となるようにそれぞれ構成したものである。
【0023】
また、本発明に係る非接触給電用コイルの埋設構造は、前記コイル状導体部の絶縁被膜又は前記コイル状導体部の巻き枠若しくは該コイル状導体部内に充填されたモールド樹脂を、ヤング係数Eが25kN/mm 2 以上の高剛性材料でそれぞれ構成したものである。
【0024】
また、本発明に係る非接触給電用コイルの埋設構造は、前記高剛性材料をガラスエポキシ樹脂としたものである。
【0025】
また、本発明に係る非接触給電用コイルの埋設構造は、前記舗装体のうち、前記非接触給電用コイルの直上に拡がる板領域を、繊維補強セメント複合材料又はポリマーコンクリートを用いて構成したものである。
【0026】
また、本発明に係る非接触給電用コイルの埋設構造は、前記繊維補強セメント複合材料をHPFRCCを用いて構成したものである。
【0027】
[第1の発明]
第1の発明に係る非接触給電用コイル及びその埋設構造においては、従来と同様、コイル状導体部を備え、その近傍には、該コイル状導体部のコイル軸線と法線が概ね平行になるように磁性板を配置してあるが、本発明においては、コイル軸線が開口中心の近傍となるように位置決めされた開口を磁性板に設けてあり、かかる開口は、コイル状導体部の中空空間と連続一体化し、該中空空間とともに非接触給電用コイルの中央近傍でコイル軸線に沿って延びる貫通孔を形成する。
【0028】
このようにすると、非接触給電用コイルは、貫通孔を取り囲む形で環状をなす形態となり、舗装体の路面下に埋設される際には、その貫通孔に舗装材料が充填される。
【0029】
そのため、舗装体が例えばコンクリート舗装体であれば、非接触給電用コイルの上下に拡がるコンクリートが、貫通孔に充填されたコンクリートを介して連続一体化し、路面に作用する上載荷重は、その一部が貫通孔に充填されたコンクリートを介して非接触給電用コイル直上のコンクリートから直下のコンクリートへと伝達される。
【0030】
つまり、路面からの上載荷重は、その一部が非接触給電用コイルの中央近傍から下方に逃げる形で直下のコンクリートに直接支持され、残りの荷重だけが非接触給電用コイルに作用する。
【0031】
したがって、非接触給電用コイルの圧縮剛性が比較的小さい場合であっても、上載荷重による圧縮変形は小さくなるとともに、それに伴って非接触給電用コイルの直上に拡がるコンクリートには不同沈下が生じにくくなり、曲げひび割れが抑制されるとともに、それに伴い、非接触給電用コイルを保護する機能や走行のための機能も確実に維持される。
【0032】
また、非接触給電用コイル直上のコンクリートの厚みを大きくする必要がないため、受電コイルとの離間距離が過大になるおそれもなくなり、かくして電波法に抵触しない磁場強度で、必要十分な給電効率を確保することが可能となる。
【0033】
ちなみに、磁性板は、磁束強度を高めるためのものであるが、コイル軸線近傍に開口を設けるのであれば、磁性板としての機能を大幅に低下させるものではない。
【0034】
舗装体は、非接触給電用コイルのコイル軸線に沿った圧縮剛性が相対的に小さいために路面の載荷荷重による圧縮変形が大きくなって該舗装体が不同沈下を起こし曲げひび割れが生じる懸念がある限り、舗装体を構成する舗装材料は特に限定されるものではないが、本発明では、コンクリート舗装体が典型例となる。
【0035】
舗装体が設けられた部位は、道路、駐車場その他車両が走行し得るすべての部位が対象となる。
【0036】
車両は、非接触で電力供給を受けることが可能な受電コイルが設置されたいわゆるEVが主たる対象となるが、内燃機関も併せて搭載されたハイブリッド車も包摂されるし、受電コイルが車両のどの部位に設置されているかは任意であって、車両本体の中央下面や背面をはじめ、タイヤ内に設置されている場合も包摂される。
【0037】
磁性板に設ける開口は、コイル状導体部の中空空間と連続一体化することで、コイル軸線に沿って延びる形で非接触給電用コイルの中央近傍に貫通孔が形成される限り、開口の形状、面積等は任意であるが、磁性板の開口寸法をコイル状導体部の内側寸法よりも小さくしたならば、環状をなすコイル状導体部の内周側から磁性板が内方に突出する形となるため、コイル状導体部による磁束の強度を必要十分に高めることができる。
【0038】
第1の発明に係る非接触給電用コイルは、車両を停車させた状態で給電を行う場合であれば、単体での設置が典型例となるが、走行させながら給電を行う場合には、列状に複数並置した構成が典型例となる。
【0039】
ここで、非接触給電用コイルを列状に並置する場合において、隣り合う2つの非接触給電用コイルをそれらの間に隙間をあけることなく詰めて配置すると、列方向を含む鉛直断面でみたときに、単位距離当たりの非接触給電用コイルの占有割合が大きくなり、それに伴って非接触給電用コイルに直接載荷する上載荷重の割合が大きくなって、直上のコンクリートに生じる撓みが大きくなりがちとなるが、複数の非接触給電用コイルのうち、隣り合う2つの非接触給電用コイルが互いに離間するように配置した構成とするならば、隣り合う2つの非接触給電用コイルの離間領域においても上載荷重を直下のコンクリートに逃がすことができるため、上記懸念を解消することができる。
【0040】
離間距離は、コンクリートの粗骨材寸法よりも大きく設定するのが望ましい。
【0041】
一方、かかる構成に代えて、非接触給電用コイルのうち、隣り合う2つの非接触給電用コイルの各コイル状導体部が重なるように配置した構成であっても、列方向を含む鉛直断面でみたときに、単位水平距離当たりの非接触給電用コイルの占有割合を減少させることができるので、上記構成と同様、直上のコンクリートに生じる曲げひび割れを抑制することができる。
【0042】
[第2-1の発明]
第2-1の発明に係る非接触給電用コイルにおいては、従来と同様、コンクリート舗装体の路面下に埋設され該コンクリート舗装体の路面を走行する車両内に設置された受電コイルに非接触で電力供給できるように構成してあるが、本発明においては、コイル軸線に沿った圧縮剛性が、コンクリート舗装体のうち、直上に拡がるコンクリート板領域の曲げ剛性と同等以上となるように構成してある。
【0043】
このようにすると、コンクリート舗装体の路面に走行荷重が作用したとき、その走行荷重による非接触給電用コイルの圧縮変形が十分に抑制されるとともに、その結果、直上のコンクリートに不同沈下が生じて曲げひび割れが発生する懸念もなくなり、かくして非接触給電用コイルを保護する機能や走行のための機能は確実に維持される。
【0044】
また、非接触給電用コイル直上のコンクリートの厚みを大きくする必要がないため、受電コイルとの離間距離が過大になるおそれもなくなり、かくして電波法に抵触しない磁場強度で、必要十分な給電効率を確保することが可能となる。
【0045】
上述のような構成とするための具体的手段、特にコイル軸線に沿った圧縮剛性の大きさについては、コンクリート舗装体の構造特性や走行荷重の性状などを勘案しつつ適宜定めればよいが、コンクリートのヤング係数Eが25kN/mm2~30kN/mm2程度であることを踏まえ、備えられたコイル状導体部の絶縁被膜、該コイル状導体部の巻き枠若しくは該コイル状導体部内に充填されたモールド樹脂を、又はコイル状導体部の内周側に充填されたモールド樹脂をヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成し、又はコイル状導体部の内周側にヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成されてなる荷重受け部を配置した構成が典型例となる。
【0046】
すなわち、上記典型例では、非接触給電用コイルは、以下の構成、
(a) コイル状導体部の絶縁被膜を、ヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成する
(b) コイル状導体部の巻き枠を、ヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成する
(c) コイル状導体部内に充填されたモールド樹脂を、ヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成する
(d) コイル状導体部の内周側に充填されたモールド樹脂を、ヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成する
(e) コイル状導体部の内周側にヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成されてなる荷重受け部を配置する
の中から少なくともいずれかが選択される。
【0047】
構成(e)については、荷重受け部をボックス体とすることで、その内側に例えば共振コンデンサを設置することができるので、コイル全体のコンパクト化に寄与する。
【0048】
高剛性材料としては、これをガラスエポキシ樹脂とした構成が典型例となる。
【0049】
なお、第2-1の発明のうち、(a)、(b)又は(c)に係る構成は、これらを第1の発明にそれぞれ適用することが可能である。
【0050】
[第2-2の発明(参考)]
第2-2の発明(参考)に係る非接触給電用コイルの埋設構造は、コンクリート舗装体の路面下に該コンクリート舗装体の路面を走行する車両内に設置された受電コイルに非接触で電力供給可能な非接触給電用コイルを埋設してなる非接触給電用コイルの埋設構造において、
前記非接触給電用コイルのコイル軸線に沿った圧縮剛性が、前記コンクリート舗装体のうち、前記非接触給電用コイルの直上に拡がるコンクリート板領域の曲げ剛性と同等以上となるように、前記非接触給電用コイルを構成したものである。
【0051】
第2-2の発明(参考)に係る非接触給電用コイルの埋設構造においては、従来と同様、コンクリート舗装体の路面を走行する車両内に設置された受電コイルに非接触で電力供給できるように、該コンクリート舗装体の路面下に非接触給電用コイルを埋設して構成するが、本発明においては、非接触給電用コイルのコイル軸線に沿った圧縮剛性が、コンクリート舗装体のうち、非接触給電用コイルの直上に拡がるコンクリート板領域の曲げ剛性と同等以上となるように、非接触給電用コイルを構成してある。
【0052】
このようにすると、コンクリート舗装体の路面に走行荷重が作用したとき、その走行荷重による非接触給電用コイルの圧縮変形が十分に抑制されるとともに、その結果、直上のコンクリートに不同沈下が生じて曲げひび割れが発生する懸念もなくなり、かくして非接触給電用コイルを保護する機能や走行のための機能は確実に維持される。
【0053】
また、非接触給電用コイル直上のコンクリートの厚みを大きくする必要がないため、受電コイルとの離間距離が過大になるおそれもなくなり、かくして電波法に抵触しない磁場強度で、必要十分な給電効率を確保することが可能となる。
【0054】
非接触給電用コイルのコイル軸線に沿った圧縮剛性と、その直上に拡がるコンクリート板領域の曲げ剛性とを比較するにあたっては、該コンクリート板領域の厚みや水平距離等を勘案して、実情に合う比較手法を適宜選択することが可能であり、例えば、非接触給電用コイルの圧縮剛性は、単位分布荷重がコイル軸線方向に作用したときに該方向に沿って生じる圧縮変位として評価することが可能であるし、コンクリート板領域の曲げ剛性は、単位分布荷重が鉛直方向に作用したときに該方向に沿って生じる最大撓みとして評価することが可能である。
【0055】
非接触給電用コイルの圧縮剛性を高めるにあたっては、任意の構成を採用することが可能であるが、かかる非接触給電用コイルは、特に以下の構成から選択することができる。すなわち、
(a) コイル状導体部の絶縁被膜を、ヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成する
(b) コイル状導体部の巻き枠を、ヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成する
(c) コイル状導体部内に充填されたモールド樹脂を、ヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成する
(d) コイル状導体部の内周側に充填されたモールド樹脂を、ヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成する
(e) コイル状導体部の内周側にヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成されてなる荷重受け部を配置する
構成(e)については、荷重受け部をボックス体とすることで、その内側に例えば共振コンデンサを設置することができるので、コイル全体のコンパクト化に寄与する。
【0056】
高剛性材料としては、これをガラスエポキシ樹脂とした構成が典型例となる。
【0057】
[第3の発明]
第3の発明に係る非接触給電用コイルの埋設構造においては、従来と同様、舗装体の路面を走行する車両内に設置された受電コイルに非接触で電力供給できるように、該舗装体の路面下に非接触給電用コイルを埋設して構成するが、本発明においては、舗装体のうち、非接触給電用コイルの直上に拡がる板領域を、繊維補強セメント複合材料又はポリマーコンクリートを用いて構成してある。
【0058】
このようにすると、板領域の曲げに対する靭性が向上するので、舗装体の路面に走行荷重が作用したとき、板領域に生じる曲げひび割れが抑制される。
【0059】
そのため、非接触給電用コイルを保護する機能や走行のための機能は確実に維持される。
【0060】
また、非接触給電用コイル直上のコンクリートの厚みを大きくする必要がないため、受電コイルとの離間距離が過大になるおそれもなくなり、かくして電波法に抵触しない磁場強度で、必要十分な給電効率を確保することが可能となる。
【0061】
繊維補強セメント複合材料は、少なくとも、結合材、繊維及び水が配合されてなる材料であって、細骨材、減水剤、増粘材等が任意に添加されるものとする。
【0062】
繊維補強セメント複合材料には、繊維補強コンクリート(FRC)などの繊維補強セメント系材料も包摂されるが、高靭性セメント複合材料(DFRCC,Ductile Fiber Reinforced Cementitious Composites)がその典型例となる。
【0063】
なお、本明細書では、水和反応前(硬化前)か水和反応後(硬化後)かを特に区別することなく、繊維補強セメント複合材料なる用語を用いる。
【0064】
結合材には、各種セメントのほか、生石灰、フライアッシュ、膨張材、高炉スラグ、シリカフューム等の水硬性又は潜在水硬性を持つ無機質材料(以下、水硬性材料)が包摂される。
【0065】
繊維には、PVA(ポリビニルアルコール)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)等で形成された樹脂系繊維のほか、鋼繊維が包摂される。
【0066】
ここで、繊維補強セメント複合材料は、上述したようにDFRCCが主たる典型例となり、その概念には、ECC(Engineered Cementitious Composite)や複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料(HPFRCC,High Performance Fiber Reinforced Cement Composite)が包摂されるが、繊維補強セメント複合材料としてHPFRCCを、それに配合される繊維をポリプロピレン繊維とするならば、上述した作用がより確実に発揮される。
【0067】
一方、ポリマーコンクリートには、高分子材料(ポリマー)を水硬性材料とともに用いたもの(ポリマーセメントコンクリート)、ポリマーを水硬性材料に代えて用いたもの(レジンコンクリート)、ポリマーを既設コンクリートに含浸一体化させたもの(ポリマー含浸コンクリート)が包摂されるとともに、コンクリートのみならず、モルタルを含む概念として用いるものとする。
【0068】
ポリマーは、スチレンブタジエンゴム(SBR)ラテックス、エチレン酢酸ビニル(EVA)系、ポリアクリル酸エステル(PAE)系エマルジョン、メチルセルローズ(MC)、ポリビニルアルコール(PVA)、水性エポキシ等が包摂される。
【0069】
なお、第3の発明は、上述した第1の発明、第2-1の発明、第2-2の発明にそれぞれ適用することが可能である。
【0070】
[第4の発明(参考)]
第4の発明(参考)に係る非接触給電用コイルの埋設構造は、舗装体の路面下に該舗装体の路面を走行する車両内に設置された受電コイルに非接触で電力供給可能な複数の非接触給電用コイルを列状に並置する形で埋設してなる非接触給電用コイルの埋設構造において、
前記複数の非接触給電用コイルのうち、隣り合う2つの非接触給電用コイルのそれぞれ設けられた各磁性板を、該各磁性板の対向縁部が一部の部位で当接し、残りの部位で離隔するように、又は該各磁性板の対向縁部が一部の部位で幅狭に離隔し、残りの部位で幅広に離隔するように構成したものである。
【0071】
第4の発明(参考)に係る非接触給電用コイルの埋設構造においては、従来と同様、舗装体の路面を走行する車両内に設置された受電コイルに非接触で電力供給できるように、該舗装体の路面下に複数の非接触給電用コイルを列状に並べる形で埋設するが、本発明においては、複数の非接触給電用コイルのうち、隣り合う2つの非接触給電用コイルのそれぞれ設けられた各磁性板を、該各磁性板の対向縁部が一部の部位で当接し、残りの部位で離隔するように、又は該各磁性板の対向縁部が一部の部位で幅狭に離隔し、残りの部位で幅広に離隔するように構成する。
【0072】
このようにすると、路面からの上載荷重の一部は、2つの非接触給電用コイルのそれぞれ設けられた各磁性板の離隔部位あるいは幅広離隔部位に挟まれた空間を介して、下方に逃げる形で直下のコンクリートに直接支持され、残りの荷重だけが非接触給電用コイルに作用するので、非接触給電用コイルの圧縮剛性が比較的小さい場合であっても、上載荷重による非接触給電用コイルの圧縮変形が小さくなるとともに、それに伴って非接触給電用コイルの直上に拡がるコンクリートには不同沈下が生じにくくなり、曲げひび割れが抑制される。
【0073】
一方、2つの非接触給電用コイルにそれぞれ設けられた磁性板は、当接部位あるいは幅狭離隔部位で互いに近接するため、磁気抵抗の増加が抑制されることとなり、かくして電力伝送効率の低下が防止される。
【0074】
なお、第4の発明は、上述した第1の発明、第2-1の発明、第2-2の発明、第3の発明にそれぞれ適用することが可能である。
【0075】
[第5の発明(参考)]
第5の発明(参考)に係る非接触給電用コイルの埋設構造は、舗装体の路面下に該舗装体の路面を走行する車両内に設置された受電コイルに非接触で電力供給可能な複数の非接触給電用コイルを列状に並置する形で埋設してなる非接触給電用コイルの埋設構造において、
前記複数の非接触給電用コイルのうち、隣り合う2つの非接触給電用コイルのそれぞれ設けられた各磁気シールド板を導電性材料で構成するとともに、該各磁気シールド板の対向縁部が一部の部位で当接し、残りの部位で離隔するように構成したものである。
【0076】
第5の発明(参考)に係る非接触給電用コイルの埋設構造においては、従来と同様、舗装体の路面を走行する車両内に設置された受電コイルに非接触で電力供給できるように、該舗装体の路面下に複数の非接触給電用コイルを列状に並べる形で埋設するが、本発明においては、複数の非接触給電用コイルのうち、隣り合う2つの非接触給電用コイルのそれぞれ設けられた各磁気シールド板を導電性材料で構成するとともに、該各磁気シールド板の対向縁部が一部の部位で当接し、残りの部位で離隔するように構成する。
【0077】
このようにすると、路面からの上載荷重の一部は、2つの非接触給電用コイルのそれぞれ設けられた各磁気シールド板の離隔部位に挟まれた空間を介して、下方に逃げる形で直下のコンクリートに直接支持され、残りの荷重だけが非接触給電用コイルに作用するので、非接触給電用コイルの圧縮剛性が比較的小さい場合であっても、上載荷重による非接触給電用コイルの圧縮変形が小さくなるとともに、それに伴って非接触給電用コイルの直上に拡がるコンクリートには不同沈下が生じにくくなり、曲げひび割れが抑制される。
【0078】
一方、2つの非接触給電用コイルにそれぞれ設けられた磁気シールド板は、該各磁気シールド板がそれぞれ導電性材料で構成されているので、当接部位では電気的に連続して該当接部位においても渦電流が発生し、かくして各磁気シールド板の離隔部位に挟まれた空間を貫通しようとする磁束が遮蔽される。
【0079】
なお、第5の発明は、上述した第1の発明、第2-1の発明、第2-2の発明、第3の発明、第4の発明にそれぞれ適用することが可能である。
【0080】
[第6の発明(参考)]
第6の発明(参考)に係る非接触給電用コイルは、舗装体の路面下に埋設され該舗装体の路面を走行する車両内に設置された受電コイルに非接触で電力供給可能になっている非接触給電用コイルにおいて、
コイル状導体部とそのコイル軸線と法線が概ね平行になるように該コイル状導体部の近傍に配置された平板状磁性層とを備えるとともに、該平板状磁性層を、樹脂材料に埋設する形で複数の磁性片をタイル状に平面配置して構成したものである。
【0081】
第6の発明(参考)に係る非接触給電用コイルにおいては、従来と同様、コイル状導体部を備え、その近傍には、該コイル状導体部のコイル軸線と法線が概ね平行になるように平板状磁性層を備えるが、本発明においては、平板状磁性層を、樹脂材料に埋設する形で複数の磁性片をタイル状に平面配置して構成してある。
【0082】
このようにすると、平板状磁性層全体に過大な強制変形が作用したとしても、かかる変形は、隣り合う磁性片の間に拡がる樹脂材料の靭性によって、あるいは該樹脂材料の先行破断によって吸収されるので、磁性片が破損するのを未然に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1】第1実施形態に係る非接触給電用コイル1の図であり、(a)は全体斜視図、(b)は平面図、(c)はA-A線に沿う断面図。
図2】非接触給電用コイル1が埋設された様子を埋設構造11として示した図であり、(a)は並置方向から見た鉛直断面図、(b)は(a)の直交方向から見た鉛直断面図、(c)は平面図。
図3】非接触給電用コイル1を埋設状況で示した詳細鉛直断面図。
図4】非接触給電用コイル1の作用を模式的に示した図であり、(a)は従来技術に係る鉛直断面図、(b)は(a)における構造モデル図、(c)は第1実施形態に係る鉛直断面図、(d)は(c)の構造モデル図。
図5】第1実施形態の変形例に係る非接触給電用コイルの埋設構造を示した図であり、(a)は、隣り合う非接触給電用コイル1,1を互いに当接するように並置した場合の鉛直断面図、(b)はその平面図、(c)は、隣り合う非接触給電用コイル1,1を互いに重ねながら並置した場合の鉛直断面図、(d)はその平面図。
図6】第2-1実施形態に係る非接触給電用コイル61の図であり、(a)は全体斜視図、(b)は平面図、(c)はB-B線に沿う断面図。
図7】非接触給電用コイル61が埋設された様子を埋設構造71として示した図であり、(a)は並置方向から見た鉛直断面図、(b)は(a)の直交方向から見た鉛直断面図、(c)は平面図。
図8】非接触給電用コイル61を埋設状況で示した詳細鉛直断面図。
図9】非接触給電用コイル61の作用を模式的に示した図であり、(a)は従来技術に係る鉛直断面図、(b)は(a)における構造モデル図、(c)は第2-1実施形態に係る鉛直断面図、(d)は(c)の構造モデル図。
図10】第2-1実施形態の変形例に係る非接触給電用コイルの埋設構造を示した図であり、(a)は、隣り合う非接触給電用コイル61,61を互いに当接するように並置した場合の鉛直断面図、(b)はその平面図、(c)は、隣り合う非接触給電用コイル61,61を互いに重ねながら並置した場合の鉛直断面図、(d)はその平面図。
図11】第2-1実施形態の別の変形例に係る非接触給電用コイル111の図であり、(a)は全体斜視図、(b)は平面図、(c)はC-C線に沿う断面図。
図12】非接触給電用コイル111の作用を示した図であり、(a)は鉛直断面図、(b)はその構造モデル図。
図13】第2-1実施形態のさらに別の変形例に係る非接触給電用コイル131の図であり、(a)は全体斜視図、(b)は平面図、(c)はD-D線に沿う断面図。
図14】第2-2実施形態に係る非接触給電用コイルの埋設構造141を示した図であり、(a)は並置方向から見た鉛直断面図、(b)は詳細鉛直断面図。
図15】第3実施形態に係る非接触給電用コイルの埋設構造151を示した図であり、(a)は並置方向から見た鉛直断面図、(b)は詳細鉛直断面図。
図16】第4実施形態に係る非接触給電用コイルの埋設構造161を示した図であり、(a)は並置方向から見た鉛直断面図、(b)は(a)の直交方向から見た鉛直断面図、(c)は平面図。
図17】非接触給電用コイルの埋設構造161を示した詳細図であり、(a)は平面図、(b)はE-E線に沿う鉛直断面図、(c)は(b)はF-F線に沿う鉛直断面図。
図18】第4実施形態の変形例に係る非接触給電用コイルの埋設構造の詳細図であり、(a)は平面図、(b)はG-G線に沿う鉛直断面図、(c)は(b)はH-H線に沿う鉛直断面図。
図19】第5実施形態に係る非接触給電用コイルの埋設構造191を示した図であり、(a)は並置方向から見た鉛直断面図、(b)は(a)の直交方向から見た鉛直断面図、(c)は平面図。
図20】非接触給電用コイルの埋設構造191を示した詳細図であり、(a)は平面図、(b)はI-I線に沿う鉛直断面図、(c)は(b)はJ-J線に沿う鉛直断面図。
図21】第6実施形態に係る非接触給電用コイル211を示した図であり、(a)は全体斜視図、(b)は断面図、(c)はK-K線に沿う断面図。
図22】第6実施形態に係る非接触給電用コイル211の作用を示した図であり、(a)は並置方向から見た鉛直断面図、(b)はその詳細鉛直断面図。
【発明を実施するための形態】
【0084】
まず、第1の発明に対応する実施形態を第1実施形態として以下に説明する。
【0085】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る非接触給電用コイル1を示した全体斜視図、平面図及びA-A線に沿う断面図である。
【0086】
これらの図でわかるように、本実施形態に係る非接触給電用コイル1は、コイル状導体部2と、フェライト等で形成された磁性板3とを備え、該磁性板は、その法線(図1(c)では上下に延びる)が、コイル状導体部2のコイル軸線7と概ね平行になるように、該コイル状導体部に隣接する形で配置してある。
【0087】
コイル状導体部2は、丸線を使った標準的なコイルをはじめ、平角線を使ったエッジワイズコイル、プリントコイルなど公知のコイルで適宜構成すればよい。
【0088】
磁性板3には、コイル状導体部2のコイル軸線7が開口中心の近傍に位置決めされるように開口4を設けてあり、該開口は、コイル状導体部2の中空空間5と連続一体化することで、該中空空間とともにコイル軸線7に沿って延びる貫通孔6を非接触給電用コイル1の中央近傍に形成する。
【0089】
開口4は、その開口縁部8がコイル状導体部2の内周縁部9から内周側に突出するように、その開口寸法をコイル状導体部2の内側寸法よりも小さくしてある。
【0090】
なお、磁性板3は、その外周縁部8′がコイル状導体部2の外周縁部9′から外周側に突出するように構成してある。
【0091】
図2は、本実施形態に係る非接触給電用コイルの埋設構造を示した直交2方向の鉛直断面図及び平面図である。
【0092】
これらの図でわかるように、本実施形態に係る非接触給電用コイルの埋設構造11は、コンクリート舗装体12の路面13の下方に非接触給電用コイル1を埋設してあり、該コンクリート舗装体の路面13を走行する車両としてのEV14のタイヤ15内に設置された受電コイル16に非接触で電力供給できるようになっている。
【0093】
非接触給電用コイルの埋設構造11は、非接触給電用コイル1を列状に複数並置してあるとともに、これらの非接触給電用コイル1のうち、隣り合う2つの非接触給電用コイル1,1が、離間距離Wだけ互いに離間するように配置してある。
【0094】
離間距離Wは、コンクリートの粗骨材寸法よりも大きく設定するのが望ましい。
【0095】
本実施形態に係る非接触給電用コイル1においては、従来と同様、コイル状導体部2を備え、その近傍には、該コイル状導体部のコイル軸線7と法線が概ね平行になるように磁性板3を配置してあるが、本実施形態においては、コイル軸線7が開口中心の近傍となるように位置決めされた開口4を磁性板3に設けてあり、かかる開口4は、コイル状導体部2の中空空間5と連続一体化し、該中空空間とともに非接触給電用コイル1の中央近傍でコイル軸線7に沿って延びる貫通孔6を形成する。
【0096】
このようにすると、非接触給電用コイル1は、貫通孔6を取り囲む形で環状をなす形態となり、図3に示すように、コンクリート舗装体12の路面13下に埋設される際には、舗装材料であるコンクリート31が貫通孔6に充填された状態となる。
【0097】
図4は、コンクリート舗装体12の路面13に走行荷重が作用したときのコンクリートに生じる変形を模式的に示したものであり、(a)は従来の非接触給電用コイル41を埋設した様子を示した鉛直断面図、(b)はその場合に非接触給電用コイル41の直上のコンクリートに生じる変形状況を示した構造モデル図、(c)は本実施形態に係る非接触給電用コイル1を埋設した様子を示した鉛直断面図、(d)はその場合に非接触給電用コイル1の直上のコンクリートに生じる変形状況を示した構造モデル図である。
【0098】
ここで、同図(a),(c)の各図に描かれた分布荷重の記号は、EVが走行する際に該EVのタイヤを介してコンクリート舗装体12の路面13に作用する走行荷重を示す。
【0099】
また、同図(b),(d)の各図に描かれた弾性バネ42aは、非接触給電用コイル41の任意の位置を押し下げたとき、あるいは非接触給電用コイル1の環状部分を押し下げたときの圧縮剛性を、(d)に描かれた弾性バネ42bは、非接触給電用コイル1の貫通孔6に充填されたコンクリート31を押し下げたときの圧縮剛性をそれぞれ示す。
【0100】
また、同図(b)に描かれたコンクリート梁43は、従来の非接触給電用コイル41直上に拡がるコンクリート板領域を梁としてモデル化したもの、同図(d)に描かれたコンクリート梁44は、非接触給電用コイル1直上に拡がるコンクリート板領域を梁としてモデル化したものである。
【0101】
これらの図でわかるように、従来の非接触給電用コイル41の場合においては、弾性バネ42aとして描いたように、コイル軸線に沿った圧縮剛性が比較的小さい、つまり圧縮荷重に対して非接触給電用コイル41が変形しやすいため、コンクリート舗装体12の路面13に走行荷重が作用すると、その走行荷重で非接触給電用コイル41が圧縮変形し、直上のコンクリートは、コンクリート梁43として示したように不同沈下が生じ、曲げが大きな箇所ではひび割れ45が発生する。
【0102】
一方、本実施形態に係る非接触給電用コイル1においては、非接触給電用コイル1の上下に拡がるコンクリートは、貫通孔6に充填されたコンクリート31を介して連続一体化し、路面13に上載荷重が作用したとき、その上載荷重は同図(c)に示すように、その一部が、非接触給電用コイル1の中央近傍から下方に逃げる形で、コンクリート31を介して非接触給電用コイル1直上のコンクリートから直下のコンクリートへと直接伝達され、残りの荷重だけが非接触給電用コイル1に作用する。
【0103】
ここで、非接触給電用コイル1直上のコンクリートからコンクリート31を経て直下のコンクリートに向かう圧縮剛性(弾性バネ42b)は、伝達経路がすべてコンクリートであるため、弾性バネ42aよりも十分に大きく、それゆえ、直上のコンクリートは、コンクリート梁44として示したように不同沈下が生じにくくなり、ひび割れも発生しない。
【0104】
以上説明したように、本実施形態に係る非接触給電用コイル1によれば、コイル軸線7が開口中心の近傍となるように位置決めされた開口4を磁性板3に設けることで、開口4とコイル状導体部2の中空空間5とが連続一体化してなる貫通孔6を非接触給電用コイル1の中央近傍に形成したので、コンクリート舗装体12の路面13下に埋設した状態では、コンクリート31が貫通孔6に充填された状態となり、路面13で作用した上載荷重の一部を、非接触給電用コイル1の中央近傍から下方に逃がす形で、コンクリート31を介して非接触給電用コイル1直上のコンクリートから直下のコンクリートへと直接伝達させることができる。
【0105】
そのため、非接触給電用コイル1の圧縮剛性が比較的小さい場合であっても、上載荷重による非接触給電用コイル1の圧縮変形が小さくなるとともに、それに伴って非接触給電用コイル1の直上に拡がるコンクリートには不同沈下が生じにくくなり、かくして該直上のコンクリートにおける曲げひび割れを抑制することができるとともに、非接触給電用コイル1を保護する機能や走行のための機能も確実に維持される。
【0106】
また、非接触給電用コイル1直上のコンクリートの厚みを大きくする必要がないため、受電コイル16との離間距離が過大になるおそれもなくなり、かくして電波法に抵触しない磁場強度で、必要十分な給電効率を確保することが可能となる。
【0107】
ちなみに、磁性板3は、磁束強度を高めるためのものであるが、コイル軸線7近傍に開口4を設けるのであれば、磁性板としての機能を大幅に低下させるものではない。
【0108】
また、本実施形態に係る非接触給電用コイル1によれば、磁性板3に設けた開口4の開口寸法を、その開口縁部8がコイル状導体部2の内周縁部9から内周側に突出するように、コイル状導体部2の内側寸法よりも小さくするとともに、磁性板3の外周縁部8′をコイル状導体部2の外周縁部9′から外周側に突出させたので、コイル状導体部2で形成された磁束の強度を必要十分に高めることができる。
【0109】
また、本実施形態に係る非接触給電用コイルの埋設構造11によれば、複数の非接触給電用コイル1を、列状に並置するにあたり、隣り合う2つの非接触給電用コイル1,1が離間距離Wだけ互いに離間するように配置したので、隣り合う2つの非接触給電用コイル1,1の離間領域においても、コンクリート舗装体12の路面13に作用した走行荷重の一部を直下のコンクリートに逃がすことができる。
【0110】
そのため、非接触給電用コイル1の直上に拡がるコンクリートの不同沈下、ひいては、該コンクリートにおける曲げひび割れの発生をより確実に防止することができる。
【0111】
本実施形態では、磁性板3に設ける開口4の開口寸法を、その開口縁部8がコイル状導体部2の内周縁部9から内周側に突出するように、コイル状導体部2の内側寸法よりも小さくしたが、磁束強度上、問題がないのであれば、貫通孔は、コイル状導体部2の中空空間5と連続一体化することで、コイル軸線7に沿って延びる形で非接触給電用コイルの中央近傍に形成される限り、形状や面積は任意であって、コイル状導体部2の中空空間5と平面形状が同じ構成、短辺あるいは長辺のいずれか一方がコイル状導体部2の中空空間5の短辺あるいは長辺と同じ構成などを採用することが可能である。
【0112】
同様に、本実施形態では、磁性板3の外周縁部8′をコイル状導体部2の外周縁部9′から外周側に突出させて構成したが、磁束強度上、問題がないのであれば、コイル状導体部2の外周縁部9′と平面形状が同じ構成、短辺あるいは長辺のいずれか一方がコイル状導体部2の外周縁部9′と同じ構成などを採用することが可能である。
【0113】
また、本実施形態では、非接触給電用コイル1を列状に複数並置するにあたり、隣り合う2つの非接触給電用コイル1,1が、離間距離Wだけ互いに離間するように配置したが、磁性板3に開口4を設けたことによる走行荷重の逃がし作用によって非接触給電用コイル1直上のコンクリートにおける曲げひび割れを十分に抑制することができるのであれば、互いに離間させる構成に代えて、図5(a),(b)に示すように、隣り合う2つの非接触給電用コイル1,1をそれらの間に隙間が空かないように、当接配置した構成を採用してもかまわない。
【0114】
一方、離間距離Wだけ互いに離間するように配置しただけでは、非接触給電用コイル1直上のコンクリートにおける曲げひび割れを十分に抑制することができないのであれば、図5(c),(d)に示すように、隣り合う2つの非接触給電用コイル1,1の各コイル状導体部2,2が重なるように配置した構成とすればよい。
【0115】
かかる構成によれば、列方向を含む鉛直断面でみたときに、単位水平距離当たりの非接触給電用コイル1の占有割合を減少させることができるので、本実施形態と同様に、直上のコンクリートに生じる曲げひび割れを抑制することができるほか、コイル状導体部2,2の重ね配置によって磁束強度を高めることも可能となる。
【0116】
[第2-1実施形態]
次に、第2-1の発明に対応する実施形態を第2-1実施形態として以下に説明する。なお、既述の実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0117】
図6は、本実施形態に係る非接触給電用コイル61を示した全体斜視図、平面図及びB-B線に沿う断面図である。
【0118】
これらの図でわかるように、本実施形態に係る非接触給電用コイル61は、環状をなすコイル状導体部2と、フェライト等で形成された平板状の磁性板63とを備え、該磁性板は、その法線(図6(c)では上下に延びる)が、コイル状導体部2のコイル軸線7と概ね平行になるように、該コイル状導体部に隣接する形で配置してある。
【0119】
コイル状導体部2は、丸線を使った標準的なコイルをはじめ、平角線を使ったエッジワイズコイル、プリントコイルなど公知のコイルで適宜構成すればよい。
【0120】
ここで、本実施形態に係る非接触給電用コイル61は、環状をなすコイル状導体部2の内周側に充填されるモールド樹脂62をヤング係数Eが25kN/mm2以上、望ましくは30kN/mm2以上の高剛性材料で構成してある。
【0121】
高剛性材料は、ガラスエポキシ樹脂で構成することができる。
【0122】
図7は、本実施形態に係る非接触給電用コイルの埋設構造を示した直交2方向の鉛直断面図及び平面図である。
【0123】
これらの図でわかるように、本実施形態に係る非接触給電用コイルの埋設構造71は、コンクリート舗装体12の路面13の下方に非接触給電用コイル61を埋設してあり、該コンクリート舗装体の路面13を走行する車両としてのEV14のタイヤ15内に設置された受電コイル16に非接触で電力供給できるようになっている。
【0124】
非接触給電用コイルの埋設構造71は、非接触給電用コイル61を列状に複数並置してあるとともに、これらの非接触給電用コイル61のうち、隣り合う2つの非接触給電用コイル61,61が、離間距離Wだけ互いに離間するように配置してある。
【0125】
離間距離Wは、コンクリートの粗骨材寸法よりも大きく設定するのが望ましい。
【0126】
本実施形態に係る非接触給電用コイル61においては、従来と同様、環状のコイル状導体部2を備えるが、本実施形態においては、コイル状導体部2の内周側に充填されるモールド樹脂62をヤング係数Eが25kN/mm2以上、望ましくは30kN/mm2以上の高剛性材料で構成してある。
【0127】
このようにすると、非接触給電用コイル61は図8に示すように、コンクリート舗装体12の路面13下に埋設されるが、舗装材料であるコンクリート31は、そのヤング係数Eが25kN/mm2~30kN/mm2程度であるので、非接触給電用コイル61のモールド樹脂62は、コンクリートと同等の高い剛性を有することとなる。
【0128】
図9は、コンクリート舗装体12の路面13に走行荷重が作用したときのコンクリートに生じる変形を模式的に示したものであり、(a)は従来の非接触給電用コイル41を埋設した様子を示した鉛直断面図、(b)はその場合に非接触給電用コイル41の直上のコンクリートに生じる変形状況を示した構造モデル図、(c)は本実施形態に係る非接触給電用コイル61を埋設した様子を示した鉛直断面図、(d)はその場合に非接触給電用コイル61の直上のコンクリートに生じる変形状況を示した構造モデル図である。
【0129】
ここで、同図(a),(c)の各図に描かれた分布荷重の記号は、EVが走行する際に該EVのタイヤを介してコンクリート舗装体12の路面13に作用する走行荷重を示す。
【0130】
また、同図(b),(d)の各図に描かれた弾性バネ42aは、非接触給電用コイル41の任意の位置を押し下げたとき、あるいは非接触給電用コイル61のコイル状導体部2を押し下げたときの圧縮剛性を、(d)に描かれた弾性バネ92は、非接触給電用コイル61のモールド樹脂62を押し下げたときの圧縮剛性をそれぞれ示す。
【0131】
また、同図(b)に描かれたコンクリート梁43は、従来の非接触給電用コイル41直上に拡がるコンクリート板領域を梁としてモデル化したもの、同図(d)に描かれたコンクリート梁44は、非接触給電用コイル61直上に拡がるコンクリート板領域を梁としてモデル化したものである。
【0132】
これらの図でわかるように、従来の非接触給電用コイル41の場合においては、弾性バネ42aとして描いたように、コイル軸線に沿った圧縮剛性が比較的小さい、つまり圧縮荷重に対して非接触給電用コイル41が変形しやすいため、コンクリート舗装体12の路面13に走行荷重が作用すると、その走行荷重で非接触給電用コイル41が圧縮変形し、直上のコンクリートは、コンクリート梁43として示したように不同沈下が生じ、曲げが大きな箇所ではひび割れ45が発生する。
【0133】
一方、本実施形態に係る非接触給電用コイル61においては、路面13に上載荷重が作用したとき、その上載荷重は同図(c)に示すように、その一部が、非接触給電用コイル61の中央近傍から下方に逃げる形で、モールド樹脂62を介して非接触給電用コイル61直上のコンクリートから直下のコンクリートへと直接伝達され、残りの荷重だけが非接触給電用コイル61に作用する。
【0134】
ここで、非接触給電用コイル61直上のコンクリートからモールド樹脂62を経て直下のコンクリートに向かう圧縮剛性(弾性バネ92)は、伝達経路がすべてコンクリートと同等の剛性を有するため、弾性バネ42aよりも十分に大きく、それゆえ、直上のコンクリートは、コンクリート梁44として示したように不同沈下が生じにくくなり、ひび割れも発生しない。
【0135】
以上説明したように、本実施形態に係る非接触給電用コイル61によれば、コイル状導体部2の内周側に、ヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料からなるモールド樹脂62を充填して構成したので、路面13で作用した上載荷重の一部を、非接触給電用コイル61の中央近傍から下方に逃がす形で、モールド樹脂62を介して非接触給電用コイル61直上のコンクリートから直下のコンクリートへと直接伝達させることができる。
【0136】
そのため、非接触給電用コイル61の直上に拡がるコンクリートには不同沈下が生じにくくなり、かくして該直上のコンクリートにおける曲げひび割れを抑制することができるとともに、非接触給電用コイル61を保護する機能や走行のための機能も確実に維持される。
【0137】
また、非接触給電用コイル61直上のコンクリートの厚みを大きくする必要がないため、受電コイル16との離間距離が過大になるおそれもなくなり、かくして電波法に抵触しない磁場強度で、必要十分な給電効率を確保することが可能となる。
【0138】
また、本実施形態に係る非接触給電用コイルの埋設構造71によれば、複数の非接触給電用コイル61を列状に並置するにあたり、隣り合う2つの非接触給電用コイル61,61が離間距離Wだけ互いに離間するように配置したので、隣り合う2つの非接触給電用コイル61,61の離間領域においても、コンクリート舗装体12の路面13に作用した走行荷重の一部を直下のコンクリートに逃がすことができる。
【0139】
そのため、非接触給電用コイル61の直上に拡がるコンクリートの不同沈下、ひいては、該コンクリートにおける曲げひび割れの発生をより確実に防止することができる。
【0140】
本実施形態では、非接触給電用コイル61を列状に複数並置するにあたり、隣り合う2つの非接触給電用コイル61,61が、離間距離Wだけ互いに離間するように配置したが、モールド樹脂62による走行荷重の逃がし作用によって非接触給電用コイル61直上のコンクリートにおける曲げひび割れを十分に抑制することができるのであれば、互いに離間させる構成に代えて、図10(a),(b)に示すように、隣り合う2つの非接触給電用コイル61,61をそれらの間に隙間が空かないように、当接配置した構成を採用してもかまわない。
【0141】
一方、離間距離Wだけ互いに離間するように配置しただけでは、非接触給電用コイル61直上のコンクリートにおける曲げひび割れを十分に抑制することができないのであれば、図10(c),(d)に示すように、隣り合う2つの非接触給電用コイル61,61の各コイル状導体部2,2が重なるように配置した構成とすればよい。
【0142】
かかる構成によれば、列方向を含む鉛直断面でみたときに、単位水平距離当たりの非接触給電用コイル61の占有割合を減少させることができるので、本実施形態と同様に、直上のコンクリートに生じる曲げひび割れを抑制することができるほか、コイル状導体部2,2の重ね配置によって磁束強度を高めることも可能となる。
【0143】
また、本実施形態では、本発明に係る非接触給電用コイルを、コイル状導体部2の内周側にヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成してなるモールド樹脂62を充填して非接触給電用コイル61としたが、これに代えて、図11に示すように、絶縁被膜を、ヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成してなるコイル状導体部2aを備えた非接触給電用コイル111としてもよい。
【0144】
具体的には、銅線の絶縁被膜は、一般的には、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等で形成してあるが、これらに代えて、例えばガラスエポキシ樹脂で形成すればよい。
【0145】
非接触給電用コイル111がコンクリート舗装体12に埋設された状態においては、図12(a)に示すように、路面13に作用する上載荷重は、コイル状導体部2aやその内周側に充填されたコンクリートを介して直下のコンクリートに伝達されるが、コイル状導体部2aを構成する銅線の絶縁被膜が高剛性材料で形成されていることにより、該コイル状導体部の圧縮剛性が高くなるため、コイル状導体部2aを介した経路についても、コンクリートと同等の圧縮剛性を有するため、コイル状導体部2aを押し込んだ際の圧縮剛性を表す弾性バネ112や、その内周側に充填されたコンクリートを押し込んだ際の圧縮剛性を表す弾性バネ113は、弾性バネ42aよりも十分に大きくなり、それゆえ、直上のコンクリートは、コンクリート梁114として同図(b)に示したように不同沈下が生じにくくなり、ひび割れも発生しない。
【0146】
なお、絶縁被膜に代えて、巻き枠(ボビン)を、ヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成し、又は内部に充填されるモールド樹脂を、ヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成してなるコイル状導体部(図示せず)を備えた非接触給電用コイルとしてもよい。
【0147】
ここで、内部に充填されるモールド樹脂とは、銅線を絶縁被膜してなるマグネットワイヤーの周囲や該マグネットワイヤー同士の隙間に充填される樹脂を意味するものとする。
【0148】
また、本変形例には、絶縁被膜、巻き枠、又は内部充填されるモールド樹脂を高剛性材料で形成するという構成のほか、かかる3つの構成要素のうち、任意の2つが組み合わされた構成や、3つ全てが組み合わされた構成が含まれる。
【0149】
また、本変形例は、これを本実施形態の構成に適用する、すなわち、非接触給電用コイル61のコイル状導体部2に代えて、コイル状導体部2aとすることができる。
【0150】
かかる適用においては、モールド樹脂62による走行荷重の逃がし作用に加えて、コイル状導体部2aの圧縮剛性が高くなることによる上述の作用が加わるため、直上コンクリートの曲げひび割れをより確実に抑制することが可能となる。
【0151】
また、本変形例は、これを第1実施形態の構成に適用する、すなわち、非接触給電用コイル1のコイル状導体部2に代えて、コイル状導体部2aとすることができる。
【0152】
かかる適用においては、開口4による走行荷重の逃がし作用に加えて、コイル状導体部2aの圧縮剛性が高くなることによる上述の作用が加わるため、直上コンクリートの曲げひび割れをより確実に抑制することが可能となる。
【0153】
また、本実施形態では、本発明に係る非接触給電用コイルを、コイル状導体部2の内周側にヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成してなるモールド樹脂62を充填して非接触給電用コイル61としたが、これに代えて、図13に示すように、コイル状導体部2の内周側にヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成されてなる荷重受け部132を配置した非接触給電用コイル131としてもよい。
【0154】
かかる構成によっても、上述した実施形態と同様の作用効果を奏するほか、同図に示すように、荷重受け部132をボックス体とすることで、その内側に共振コンデンサ133を設置することが可能となり、コイル全体のコンパクト化を図ることができる。
【0155】
また、本実施形態及びその変形例では、コンクリートのヤング係数Eが25kN/mm2~30kN/mm2程度であることを踏まえ、備えられたコイル状導体部の絶縁被膜、該コイル状導体部の巻き枠若しくは該コイル状導体部内に充填されたモールド樹脂を、又はコイル状導体部の内周側に充填されたモールド樹脂をヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成し、又はコイル状導体部の内周側にヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成されてなる荷重受け部を配置した構成としたが、第2-1に係る発明においては、コイル軸線に沿った圧縮剛性が、コンクリート舗装体のうち、直上に拡がるコンクリート板領域の曲げ剛性と同等以上となるように構成されていれば足りるものであって、コイル軸線に沿った圧縮剛性の大きさについては、コンクリート舗装体の構造特性や走行荷重の性状などを勘案しつつ適宜定めればよい。
【0156】
[第2-2実施形態]
次に、第2-2の発明(参考)に対応する実施形態を第2-2実施形態として以下に説明する。なお、既述の実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0157】
本実施形態に係る非接触給電用コイルの埋設構造141は図14(a)に示すように、従来と同様、コンクリート舗装体12の路面13の下方に非接触給電用コイル142を埋設してあり、該コンクリート舗装体の路面13を走行する車両としてのEV14のタイヤ15内に設置された受電コイル16に非接触で電力供給できるようになっているが、非接触給電用コイル142は同図(b)に示すように、そのコイル軸線7に沿った圧縮剛性が、コンクリート舗装体12のうち、該非接触給電用コイルの直上に拡がるコンクリート板領域143の曲げ剛性と同等以上となるように構成してある。
【0158】
非接触給電用コイル143は、上述したように圧縮剛性が高められたものである限り、どのように構成するかは任意であるが、例えば、コイル状導体部の内周側に充填されたモールド樹脂を、ヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成したものを採用することが可能であって、具体的には、第2-1実施形態で説明した非接触給電用コイル61を採用することができる。
【0159】
また、非接触給電用コイル143は、そのコイル状導体部の絶縁被膜を、ヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成してなるコイル状導体部2aを備えた非接触給電用コイル111(第2-1実施形態で説明した非接触給電用コイル111)を採用することができるし、絶縁被膜に代えて、巻き枠(ボビン)を、ヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成し、又は内部に充填されるモールド樹脂を、ヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成してなるコイル状導体部(図示せず)を備えた非接触給電用コイルとしてもよい(第2-1実施形態で説明した非接触給電用コイル111の変形例)。
【0160】
さらに、非接触給電用コイル143は、コイル状導体部の内周側にヤング係数Eが25kN/mm2以上の高剛性材料で構成されてなる荷重受け部を配置した非接触給電用コイルしてもよい(第2-1実施形態で説明した非接触給電用コイル131)。
【0161】
以下、非接触給電用コイル143は、第2-1実施形態及びその変形例に係る非接触給電用コイルを適宜採用することができるので、その具体的構成については、詳細な説明を省略する。
【0162】
また、本実施形態に係る非接触給電用コイルの埋設構造の作用効果についても、第2-1実施形態で説明した非接触給電用コイルの作用効果と概ね同様であるので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0163】
[第3実施形態]
次に、第3の発明に対応する実施形態を第3実施形態として以下に説明する。なお、既述の実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0164】
本実施形態に係る非接触給電用コイルの埋設構造151は図15(a)に示すように、従来と同様、舗装体154の路面13の下方に非接触給電用コイル152を埋設してあり、該舗装体の路面13を走行する車両としてのEV14のタイヤ15内に設置された受電コイル16に非接触で電力供給できるようになっているが、同図(b)に示すように、舗装体154のうち、非接触給電用コイル152の直上に拡がる板領域153は、これを繊維補強セメント複合材料を用いて構成してある。
【0165】
繊維補強セメント複合材料は、公知のものから適宜選択することができるが、これを複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料(HPFRCC)を用いて構成すれば、板領域153の靭性を大幅に向上させることができる。
【0166】
繊維は、ポリプロピレン繊維とするのが望ましい。
【0167】
HPFRCCは具体的には、硬化した状態において、一軸直接引張応力下で、引張終局ひずみの平均値が0.5%以上、かつ、終局時の平均ひび割れ幅が0.2mm以下となるように、水結合材比(W/B)を35重量%以上、細骨材と結合材との重量比(S/B)を0.5~0.95で調合したマトリックスに、270MPa以上の繊維引張強度と、35~70μmの繊維直径と、5~18mmの繊維長さとを有する、ポリオレフィン系合成樹脂からなるポリプロピレン繊維を、2.0~4.0体積%の添加率で配合して構成することが可能であり、この場合、細骨材の粒径は、1.3mm以下で、かつその中央値を10~100μmとするのが望ましい。
【0168】
結合材は、セメント、フライアッシュ、膨張材などの水硬性材料から適宜選択すればよい。
【0169】
また、HPFRCCは、硬化した状態において、一軸直接引張応力下で、引張終局ひずみの平均値が0.5%以上、かつ、終局時の平均ひび割れ幅が0.2mm以下となるように、水結合材比(W/B)を35重量%以上、細骨材と結合材との重量比(S/B)を0.5~0.95で調合したマトリックスに、1.0~2.5体積%の、270MPa以上の繊維引張強度と、35~70μmの繊維直径と、5~18mmの繊維長さとを有するポリプロピレン繊維と、0.5~1.5体積%のポリビニルアルコール系合成樹脂からなるポリビニルアルコール繊維とを配合して構成することが可能である。
【0170】
以上説明したように、本実施形態に係る非接触給電用コイルの埋設構造151によれば、舗装体154のうち、非接触給電用コイル152の直上に拡がる板領域153を、繊維補強セメント複合材料を用いて構成したので、板領域153の曲げに対する靭性が向上させることが可能となり、かくして舗装体154の路面13に走行荷重が作用したとき、板領域153に生じる曲げひび割れを抑制することができるとともに、非接触給電用コイル152を保護する機能や走行のための機能も確実に維持される。
【0171】
また、板領域153の厚みを大きくする必要がないため、受電コイル16との離間距離が過大になるおそれもなくなり、かくして電波法に抵触しない磁場強度で、必要十分な給電効率を確保することが可能となる。
【0172】
本実施形態では、非接触給電用コイル152の直上に拡がる板領域153を繊維補強セメント複合材料を用いて構成したが、これに代えて、ポリマーコンクリートを用いて構成してもかまわない。
【0173】
かかる構成においても、板領域153の靭性を向上させることが可能となり、上述したと同様の作用効果を奏する。
【0174】
なお、本実施形態及びその変形例は、これらを第1実施形態の構成に適用して、非接触給電用コイル1の直上に拡がるコンクリートを、板領域153又はその変形例に置換することができる。同様に、これらを第2-1実施形態や第2-2実施形態の構成に適用して、非接触給電用コイル61,111,131,142の直上に拡がるコンクリートを、板領域153又はその変形例に置換することができる。
【0175】
[第4実施形態]
次に、第4の発明(参考)に対応する実施形態を第4実施形態として以下に説明する。なお、既述の実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0176】
本実施形態に係る非接触給電用コイルの埋設構造161は図16に示すように、従来と同様、コンクリート舗装体12の路面13の下方に非接触給電用コイル162を埋設してあり、該コンクリート舗装体の路面13を走行する車両としてのEV14のタイヤ15内に設置された受電コイル16に非接触で電力供給できるようになっている。
【0177】
非接触給電用コイル162は、コイル状導体部2bと、フェライト等で形成された平板状の磁性板163とを備え、該磁性板は、その法線(図16(a),(b)では上下に延びる)が、コイル状導体部2bのコイル軸線と概ね平行になるように、該コイル状導体部に隣接する形で配置してある。
【0178】
コイル状導体部2bは、コイル状導体部2と同様、丸線を使った標準的なコイルをはじめ、平角線を使ったエッジワイズコイル、プリントコイルなど公知のコイルで適宜構成すればよいが、内周側の空間構成は任意であり、空間のままでもよいし、モールド樹脂が充填されていてもよい。
【0179】
非接触給電用コイルの埋設構造161は、非接触給電用コイル162を列状に複数並置してあるが、図17でよくわかるように、磁性板163には、並置方向に沿った一方の縁部に2つの切り欠き171aを、他方の縁部に2つの切り欠き171bをそれぞれ設けてあり、並置状態では、隣り合う2つの非接触給電用コイル162,162に属する磁性板163,163の対向縁部が、切り欠き171a,171bが設けられてない部位では当接し、切り欠き171a,171bが設けられた部位ではそれぞれ後退して離隔するとともに、かかる部位には、切り欠き171a,171bが一体化する形で幅dの貫通孔172が形成され、該貫通孔には、埋設状態ではコンクリートが充填されてコンクリート舗装体12の一部となる。
【0180】
このようにすると、路面13からの上載荷重の一部は、2つの非接触給電用コイル162,162のそれぞれ設けられた各磁性板163,163の離隔部位、すなわち貫通孔172に充填されたコンクリートを介して、下方に逃げる形で直下のコンクリートに直接支持され、残りの荷重だけが非接触給電用コイル162に作用する。
【0181】
一方、2つの非接触給電用コイル162,162にそれぞれ設けられた磁性板163,163は、切り欠き171a,171bが設けられてない部位で当接するため、磁気抵抗の増加が抑制される。
【0182】
以上説明したように、本実施形態に係る非接触給電用コイルの埋設構造161によれば、非接触給電用コイル162の圧縮剛性が比較的小さい場合であっても、上載荷重による非接触給電用コイル162の圧縮変形が小さくなるとともに、それに伴って非接触給電用コイル162の直上に拡がるコンクリートには不同沈下が生じにくくなり、曲げひび割れが抑制される。
【0183】
一方、2つの非接触給電用コイル162,162にそれぞれ設けられた磁性板163,163は、切り欠き171a,171bが設けられてない部位で当接するため、磁気抵抗の増加が抑制されることとなり、かくして電力伝送効率の低下が防止される。
【0184】
本実施形態では、隣り合う2つの非接触給電用コイル162,162に属する磁性板163,163の対向縁部が、切り欠き171a,171bが設けられてない部位では当接し、切り欠き171a,171bが設けられた部位ではそれぞれ後退して幅dで離隔するように並置したが、これに代えて、図18に示すように、隣り合う2つの非接触給電用コイル162,162に属する磁性板163,163の対向縁部が、切り欠き171a,171bが設けられてない部位では幅狭に、すなわち幅dnで離隔し、切り欠き171a,171bが設けられた部位ではそれぞれ後退して幅広に、すなわち幅dwで離隔するように並置してもよい。
【0185】
かかる構成においては、切り欠き171a,171bが一体化する形で幅dwの貫通孔182が形成され、該貫通孔には、埋設状態ではコンクリートが充填されてコンクリート舗装体12の一部となる。
【0186】
そのため、路面13からの上載荷重の一部は、2つの非接触給電用コイル162,162のそれぞれ設けられた各磁性板163,163の幅広離隔部位、すなわち貫通孔182に充填されたコンクリートを介して、下方に逃げる形で直下のコンクリートに直接支持され、残りの荷重だけが非接触給電用コイル162に作用することとなる。
【0187】
したがって、本変形例においても、本実施形態と同様、非接触給電用コイル162の圧縮剛性が比較的小さい場合であっても、上載荷重による非接触給電用コイル162の圧縮変形が小さくなるとともに、それに伴って非接触給電用コイル162の直上に拡がるコンクリートには不同沈下が生じにくくなり、曲げひび割れが抑制される。
【0188】
一方、2つの非接触給電用コイル162,162にそれぞれ設けられた磁性板163,163は、切り欠き171a,171bが設けられてない部位でも幅狭に、すなわち幅dnで離隔するに過ぎないため、磁気抵抗の増加が十分抑制されることとなり、かくして電力伝送効率の低下が防止される。
【0189】
なお、本実施形態及びその変形例は、これらを第1実施形態の構成に適用する、すなわち、非接触給電用コイル1の磁性板3に磁性板163の切り欠き構成を適用した上、2つの非接触給電用コイル1,1の並置構成を、2つの非接触給電用コイル162,162の並置構成に置換することができる。
【0190】
同様に、これらを第2-1,2-2実施形態の構成に適用し、非接触給電用コイル61,111,131の磁性板63に磁性板163の切り欠き構成を適用した上、2つの非接触給電用コイル61,61等の並置構成を、2つの非接触給電用コイル162,162の並置構成に置換することができるし、これらを第3実施形態の構成に適用し、非接触給電用コイル152の磁性板に磁性板163の切り欠き構成を適用した上、2つの非接触給電用コイル152,152の並置構成を、2つの非接触給電用コイル162,162の並置構成に置換することが可能である。
【0191】
[第5実施形態]
次に、第5の発明(参考)に対応する実施形態を第5実施形態として以下に説明する。なお、既述の実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0192】
本実施形態に係る非接触給電用コイルの埋設構造191は図19に示すように、従来と同様、コンクリート舗装体12の路面13の下方に非接触給電用コイル192を埋設してあり、該コンクリート舗装体の路面13を走行する車両としてのEV14のタイヤ15内に設置された受電コイル16に非接触で電力供給できるようになっている。
【0193】
非接触給電用コイル192は、コイル状導体部2bと導電性材料からなる磁気シールド板193とを備え、該磁気シールド板は、その法線(図16(a),(b)では上下に延びる)が、コイル状導体部2bのコイル軸線と概ね平行になるように、該コイル状導体部に隣接する形で配置してある。
【0194】
コイル状導体部2bは、コイル状導体部2と同様、丸線を使った標準的なコイルをはじめ、平角線を使ったエッジワイズコイル、プリントコイルなど公知のコイルで適宜構成すればよいが、内周側の空間構成は任意であり、空間のままでもよいし、モールド樹脂が充填されていてもよい。
【0195】
なお、非接触給電用コイル192に磁性板が備えられるかどうかは任意である。
【0196】
非接触給電用コイルの埋設構造191は、非接触給電用コイル192を列状に複数並置してあるが、図20でよくわかるように、磁気シールド板193には、並置方向に沿った一方の縁部に2つの切り欠き201aを、他方の縁部に2つの切り欠き201bをそれぞれ設けてあり、並置状態では、隣り合う2つの非接触給電用コイル192,192に属する磁気シールド板193,193の対向縁部が、切り欠き201a,201bが設けられてない部位では当接し、切り欠き201a,201bが設けられた部位ではそれぞれ後退して離隔するとともに、かかる部位には、切り欠き201a,201bが一体化する形で幅dの貫通孔202が形成され、該貫通孔には、埋設状態ではコンクリートが充填されてコンクリート舗装体12の一部となる。
【0197】
このようにすると、路面13からの上載荷重の一部は、2つの非接触給電用コイル192,192のそれぞれ設けられた各磁気シールド板193,193の離隔部位、すなわち貫通孔202に充填されたコンクリートを介して、下方に逃げる形で直下のコンクリートに直接支持され、残りの荷重だけが非接触給電用コイル192に作用する。
【0198】
一方、2つの非接触給電用コイル192,192にそれぞれ設けられた磁気シールド板193,193は、切り欠き201a,201bが設けられてない部位で当接し該当接部位で電気的な連続状態が形成されることから、図20(a)に示すように、貫通孔202を取り囲むように渦電流が流れ、該貫通孔を貫く磁束を遮蔽する。
【0199】
以上説明したように、本実施形態に係る非接触給電用コイルの埋設構造191によれば、非接触給電用コイル192の圧縮剛性が比較的小さい場合であっても、上載荷重による非接触給電用コイル192の圧縮変形が小さくなるとともに、それに伴って非接触給電用コイル192の直上に拡がるコンクリートには不同沈下が生じにくくなり、曲げひび割れが抑制される。
【0200】
一方、2つの非接触給電用コイル192,192にそれぞれ設けられた磁気シールド板193,193は、切り欠き201a,201bが設けられてない部位で当接するため、貫通孔202を取り囲むように渦電流が流れて該貫通孔を貫く磁束が遮蔽されることとなり、かくして磁束が漏れてコンクリート中の鉄筋を加熱したり、周辺の電子機器の誤動作を引き起こすのを防止することができる。
【0201】
本実施形態は、これを上述した第1実施形態、第2-1実施形態、第2-2実施形態、第3実施形態、第4実施形態にそれぞれ適用する、すなわちそれぞれの実施形態に係る非接触給電用コイルに磁気シールド板をあらたに加えた上、該磁気シールド板に本実施形態の構成を適用することが可能である。
【0202】
[第6実施形態]
次に、第6の発明(参考)に対応する実施形態を第6実施形態として以下に説明する。なお、既述の実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0203】
本実施形態に係る非接触給電用コイル211は図21に示すように、コイル状導体部2bと平板状磁性層212とを備え、該平板状磁性層は、その法線(図21(b)では上下に延びる)が、コイル状導体部2bのコイル軸線7と概ね平行になるように、該コイル状導体部に隣接する形で配置してある。
【0204】
平板状磁性層212は、フェライト等でそれぞれ形成された複数の磁性片213を、樹脂材料に埋設する形でタイル状に平面配置して構成してあり、本実施形態では、横5列、縦4列に並べたものを3段に重ねて構成してある。
【0205】
樹脂材料は、磁性片213の材料、例えばフェライトよりも靭性に優れたものを適宜選択するものとし、例えばエポキシ樹脂を採用することができる。
【0206】
図22は、非接触給電用コイル211の埋設状況を、非接触給電用コイルの埋設構造221として示したものである。
【0207】
非接触給電用コイル211は同図でわかるように、従来と同様、コンクリート舗装体12の路面13の下方に埋設してあり、該コンクリート舗装体の路面13を走行する車両としてのEV14のタイヤ15内に設置された受電コイル16に非接触で電力供給できるようになっているが、タイヤ15を介してEV14の走行荷重が路面13に作用すると、非接触給電用コイル211には、直上のコンクリートを介して該走行荷重が伝達し、平板状磁性層212には、該荷重による曲げが発生する。
【0208】
ここで、磁性材料として、従来のように平板状の磁性板63を用いた場合においては、走行荷重によって生じた曲げ応力によって磁性板63が脆性的に破断する懸念があるが、本実施形態では、平板状磁性層212を、複数の磁性片213が樹脂材料に埋設される形となるようにそれらをタイル状に平面配置して構成してあるので、平板状磁性層212全体に過大な曲げ応力あるいは強制曲げ変形が作用したとしても、かかる変形は、隣り合う磁性片213,213の間に拡がる樹脂材料の靭性によって、あるいは該樹脂材料の先行破断によって吸収される。
【0209】
以上説明したように、本実施形態に係る非接触給電用コイル211によれば、コイル状導体部2bと平板状磁性層212とを備えるとともに、該平板状磁性層を、フェライト等でそれぞれ形成された複数の磁性片213が樹脂材料に埋設される形となるようにそれらをタイル状に平面配置して構成したので、平板状磁性層21全体に生じる曲げ変形は、隣り合う磁性片213,213の間に拡がる樹脂材料の靭性によって、あるいは該樹脂材料の先行破断によって吸収されることとなり、かくして磁性片213が破損するのを未然に防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0210】
1,61,111,131,142,152,162,192,211 非接触給電用コイル
2,2a,2b コイル状導体部
3,63,163 磁性板
4 開口
5 コイル状導体部2の中空空間
6 貫通孔
11,71,141,151,161,191 非接触給電用コイルの埋設構造
12 コンクリート舗装体(舗装体)
13 路面
14 EV(車両)
16 受電コイル
62 モールド樹脂
132 荷重受け部
153 板領域
154 舗装体
193 磁気シールド板
212 平板状磁性層
213 磁性片
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