(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】移動情報提供システム、サーバ装置、および車両
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20240920BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240920BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20240920BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G08G1/09 F
G08G1/16 A
B60W60/00
B60W40/02
(21)【出願番号】P 2020152495
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2019240029
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019240030
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019240031
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100182051
【氏名又は名称】松川 直宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【氏名又は名称】河村 育郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】小山 哉
(72)【発明者】
【氏名】難波 亮介
(72)【発明者】
【氏名】溝口 雅人
(72)【発明者】
【氏名】北村 知之
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-215775(JP,A)
【文献】特開2008-204004(JP,A)
【文献】特開2018-097540(JP,A)
【文献】特開2009-168458(JP,A)
【文献】特開2015-161977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定区域または所定区間について設けられる複数の通信装置を用いて、複数の移動体の移動に関わる情報を受信でき、複数の前記移動体のそれぞれにおいて移動判断または移動制御に用いることができる情報を送信できる、移動情報提供システムであって、
複数の前記移動体の移動についての情報を含むフィールド情報または前記フィールド情報を加工した事前加工情報を収集する収集部と、
前記収集部により収集される情報に基づいて
、車線に沿った位置を横軸とし、時間を縦軸とする走行状況の運行図表に、複数の前記移動体の
現時点位置と
予想位置とをマッピングするマッピング部と、
前記マッピング部により複数の前記移動体の
現時点位置と
予想位置とがマッピングされる
運行図表を用いて、複数の前記移動体のそれぞれが移動可能な進路若しくは移動可能範囲の情報
として、他の移動体と干渉または近接しないものを生成する生成部と、
複数の前記移動体のそれぞれにおいて、生成される進路若しくは移動可能範囲の情報または前記進路若しくは移動可能範囲の情報に基づいて得られるそれぞれの移動体の移動判断または移動制御に用いることができる情報を使用して、それぞれの移動体の移動を制御する制御部と、
を有し、
前記マッピング部は、
前記収集部により収集される情報に、前記移動体が移動可能な道路から発せられた緊急情報が含まれる場合、
前記緊急情報を送信した移動体の位置が、道路の他の車線を跨ぐことなく路肩へ移動可能な車線であるか否かを判断し、
道路の他の車線を跨ぐことなく路肩へ移動可能な車線である場合には、前記運行図表に、前記移動体をマッピングするとともに、
緊急情報を送信した移動体がいる車線に、徐行停止区間を
マッピングし、
道路の他の車線を跨ぐことなく路肩へ移動可能な車線でない場合、前記運行図表に、前記移動体をマッピングするとともに、緊急情報を送信した移動体がいる車線と、当該車線と同じ方向のすべての車線とに、徐行停止区間をマッピングし、
前記生成部は、
前記運行図表にマッピングされている前記徐行停止区間を移動しないように
移動を制限し、前記運行図表に設定されている他の移動体と干渉または近接しないように、複数の前記移動体それぞれの進路若しくは移動可能範囲の情報を生成する、
移動情報提供システム。
【請求項2】
前記移動情報提供システムは、複数の前記移動体それぞれで使用可能な複数の端末装置、を有し、
複数の前記移動体が移動する前記所定区域または前記所定区間について設けられる複数の前記通信装置は、担当する前記所定区域または前記所定区間を移動している移動体にて使用される前記端末装置と通信する、
請求項1記載の移動情報提供システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記移動体としての車両に設けられる、
請求項1または2記載の移動情報提供システム。
【請求項4】
前記生成部は、
前記徐行停止区間の手前において他の移動体が停止している状態で、前記
緊急情報を発生した前記移動体について
の、中央側の車線から路肩へ移動して停止する進路若しくは移動可能範囲の情報を生成する、
請求項1から3のいずれか一項記載の移動情報提供システム。
【請求項5】
前記マッピング部は、
前記収集部により収集される情報に、前記移動体から降りた人の移動する携帯端末から発せられた緊急情報が含まれる場合、前記移動体についての前記徐行停止区間に加えて、前記携帯端末から前記緊急情報が発せられた位置の周囲に前記徐行停止区間を設定し、
前記生成部は、
複数の前記徐行停止区間の手前において停止するように、停止していない複数の前記移動体それぞれの進路若しくは移動可能範囲の情報を生成する、
請求項4記載の移動情報提供システム。
【請求項6】
前記マッピング部は、
前記収集部により収集される情報に、前記緊急情報に係る前記移動体としての車両のドアが開かれたことを示す情報が含まれる場合、前記移動体についての前記徐行停止区間に加えて、前記ドアが開かれた前記車両の位置から前記道路の少なくとも一端までの範囲に前記徐行停止区間を設定し、
前記生成部は、
複数の前記徐行停止区間の手前において停止するように、停止していない複数の前記移動体それぞれの進路若しくは移動可能範囲の情報を生成する、
請求項1から5のいずれか一項記載の移動情報提供システム。
【請求項7】
前記生成部は、
前記
緊急情報を発生した前記移動体についての路肩への移動が完了した後に、または前記移動体から降りている乗員が路肩への移動を終えた後に、前記徐行停止区間の手前で停止している他の前記移動体についての移動を再開する進路若しくは移動可能範囲の情報を生成する、
請求項4から6のいずれか一項記載の移動情報提供システム。
【請求項8】
所定区域または所定区間について設けられる複数の通信装置を用いて、複数の移動体の移動に関わる情報を受信でき、複数の前記移動体のそれぞれにおいて移動判断または移動制御に用いることができる情報を送信できる、移動情報提供システムのサーバ装置であって、
前記移動情報提供システムにおける、
複数の前記移動体の移動についての情報を含むフィールド情報または前記フィールド情報を加工した事前加工情報を収集する収集部と、
前記収集部により収集される情報に基づいて
、車線に沿った位置を横軸とし、時間を縦軸とする走行状況の運行図表に、複数の前記移動体の
現時点位置と
予想位置とをマッピングするマッピング部と、
前記マッピング部により複数の前記移動体の
現時点位置と
予想位置とがマッピングされる
運行図表を用いて、複数の前記移動体のそれぞれが移動可能な進路若しくは移動可能範囲の情報
として、他の移動体と干渉または近接しないものを生成する生成部と、
複数の前記移動体のそれぞれにおいて、生成される進路若しくは移動可能範囲の情報または前記進路若しくは移動可能範囲の情報に基づいて得られるそれぞれの移動体の移動判断または移動制御に用いることができる情報を使用して、それぞれの移動体の移動を制御する制御部と、
の中の少なくとも前記
収集部、前記マッピング部、および前記生成部を有し、
前記マッピング部は、
前記収集部により収集される情報に、前記移動体が移動可能な道路から発せられた緊急情報が含まれる場合、
前記緊急情報を送信した移動体の位置が、道路の他の車線を跨ぐことなく路肩へ移動可能な車線であるか否かを判断し、
道路の他の車線を跨ぐことなく路肩へ移動可能な車線である場合には、前記運行図表に、前記移動体をマッピングするとともに、
緊急情報を送信した移動体がいる車線に、徐行停止区間を
マッピングし、
道路の他の車線を跨ぐことなく路肩へ移動可能な車線でない場合、前記運行図表に、前記移動体をマッピングするとともに、緊急情報を送信した移動体がいる車線と、当該車線と同じ方向のすべての車線とに、徐行停止区間をマッピングし、
前記生成部は、
前記運行図表にマッピングされている前記徐行停止区間を移動しないように
移動を制限し、前記運行図表に設定されている他の移動体と干渉または近接しないように、複数の前記移動体それぞれの進路若しくは移動可能範囲の情報を生成する、
サーバ装置。
【請求項9】
所定区域または所定区間について設けられる複数の通信装置を用いて、複数の移動体の移動に関わる情報を受信でき、複数の前記移動体のそれぞれにおいて移動判断または移動制御に用いることができる情報を送信できる、移動情報提供システムの車両であって、
前記移動情報提供システムにおける、
複数の前記移動体の移動についての情報を含むフィールド情報または前記フィールド情報を加工した事前加工情報を収集する収集部と、
前記収集部により収集される情報に基づいて
、車線に沿った位置を横軸とし、時間を縦軸とする走行状況の運行図表に、複数の前記移動体の
現時点位置と
予想位置とをマッピングするマッピング部と、
前記マッピング部により複数の前記移動体の
現時点位置と
予想位置とがマッピングされる
運行図表を用いて、複数の前記移動体のそれぞれが移動可能な進路若しくは移動可能範囲の情報
として、他の移動体と干渉または近接しないものを生成する生成部と、
複数の前記移動体のそれぞれにおいて、生成される進路若しくは移動可能範囲の情報または前記進路若しくは移動可能範囲の情報に基づいて得られるそれぞれの移動体の移動判断または移動制御に用いることができる情報を使用して、それぞれの移動体の移動を制御する制御部と、
の中の少なくとも
前記マッピング部、前記生成部、および前記制御部を有し、
前記マッピング部は、
前記収集部により収集される情報に、前記移動体が移動可能な道路から発せられた緊急情報が含まれる場合、
前記緊急情報を送信した移動体の位置が、道路の他の車線を跨ぐことなく路肩へ移動可能な車線であるか否かを判断し、
道路の他の車線を跨ぐことなく路肩へ移動可能な車線である場合には、前記運行図表に、前記移動体をマッピングするとともに、
緊急情報を送信した移動体がいる車線に、徐行停止区間を
マッピングし、
道路の他の車線を跨ぐことなく路肩へ移動可能な車線でない場合、前記運行図表に、前記移動体をマッピングするとともに、緊急情報を送信した移動体がいる車線と、当該車線と同じ方向のすべての車線とに、徐行停止区間をマッピングし、
前記生成部は、
前記運行図表にマッピングされている前記徐行停止区間を移動しないように
移動を制限し、前記運行図表に設定されている他の移動体と干渉または近接しないように、複数の前記移動体それぞれの進路若しくは移動可能範囲の情報を生成する、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動情報提供システム、サーバ装置、および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両では、目的地までの走行についての自動運転技術の開発が進んでいる(特許文献1)。
車両は、たとえば、目的地までの経路に沿って走行する。この際、車両は、自車に設けられるカメラなどのセンサにより車両の周辺などを撮像し、他の車両などの移動体を避けて安全に走行することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように車両などの移動体の自動運転などが実現することにより、移動体はユーザの意思によらずに目的地まで移動したり、ユーザの走行操作を支援して移動の安全性を高めたり、できるようになると期待されている。
しかしながら、車両などの移動体がそれぞれに独立して検出と制御とを実行している状況では、必ずしも他の移動体の移動を正確に把握できるとは限らない。
たとえば他の移動体の予想外の移動、死角に止まっている他の移動体、死角から出てくる他の移動体により、車両などの移動体は、これらの他の移動体を避けるように急激な走行制御を実行したりする必要が生じる可能性がある。
【0005】
また、自動車といった車両の走行を判断または制御するために、たとえば車両に対して他の移動体の情報などを提供する移動情報提供システムを実現することも考えられる。たとえば、移動情報提供システムのサーバ装置において複数の移動体の移動情報を収集し、収集した情報に基づいて各移動体について他の移動体と衝突することなく安全に移動を指示することが考えられる。
しかしながら、このように移動体の移動情報を収集したとしても、車両といった移動体は、必ずしも適切に且つ安全に移動できるようにはならない。
たとえば、道路において車両などの移動体は故障したり事故に合ったりする。後続車は、二次的な事故を起こす可能性がある。
たとえば、道路には、事故処理の作業員や、その他の作業員などがいることがある。
このような事態があると、自動車といった車両は、移動情報提供システムから収集した情報に基づく指示情報を得ていたとしても安全に移動できるようになるとは限らない。
【0006】
このように車両などの移動体は、状況に応じた安全性を得ながら移動できるようにすることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る移動情報提供システムは、所定区域または所定区間について設けられる複数の通信装置を用いて、複数の移動体の移動に関わる情報を受信でき、複数の前記移動体のそれぞれにおいて移動判断または移動制御に用いることができる情報を送信できる、移動情報提供システムであって、複数の前記移動体の移動についての情報を含むフィールド情報または前記フィールド情報を加工した事前加工情報を収集する収集部と、前記収集部により収集される情報に基づいて、車線に沿った位置を横軸とし、時間を縦軸とする走行状況の運行図表に、複数の前記移動体の現時点位置と予想位置とをマッピングするマッピング部と、前記マッピング部により複数の前記移動体の現時点位置と予想位置とがマッピングされる運行図表を用いて、複数の前記移動体のそれぞれが移動可能な進路若しくは移動可能範囲の情報として、他の移動体と干渉または近接しないものを生成する生成部と、複数の前記移動体のそれぞれにおいて、生成される進路若しくは移動可能範囲の情報または前記進路若しくは移動可能範囲の情報に基づいて得られるそれぞれの移動体の移動判断または移動制御に用いることができる情報を使用して、それぞれの移動体の移動を制御する制御部と、を有し、前記マッピング部は、前記収集部により収集される情報に、前記移動体が移動可能な道路から発せられた緊急情報が含まれる場合、前記緊急情報を送信した移動体の位置が、道路の他の車線を跨ぐことなく路肩へ移動可能な車線であるか否かを判断し、道路の他の車線を跨ぐことなく路肩へ移動可能な車線である場合には、前記運行図表に、前記移動体をマッピングするとともに、緊急情報を送信した移動体がいる車線に、徐行停止区間をマッピングし、道路の他の車線を跨ぐことなく路肩へ移動可能な車線でない場合、前記運行図表に、前記移動体をマッピングするとともに、緊急情報を送信した移動体がいる車線と、当該車線と同じ方向のすべての車線とに、徐行停止区間をマッピングし、前記生成部は、前記運行図表にマッピングされている前記徐行停止区間を移動しないように移動を制限し、前記運行図表に設定されている他の移動体と干渉または近接しないように、複数の前記移動体それぞれの進路若しくは移動可能範囲の情報を生成する。
【0008】
好適には、前記移動情報提供システムは、複数の前記移動体それぞれで使用可能な複数の端末装置、を有し、複数の前記移動体が移動する前記所定区域または前記所定区間について設けられる複数の前記通信装置は、担当する前記所定区域または前記所定区間を移動している移動体にて使用される前記端末装置と通信する、とよい。
【0009】
好適には、前記制御部は、前記移動体としての車両に設けられる、とよい。
【0011】
好適には、前記生成部は、前記徐行停止区間の手前において他の移動体が停止している状態で、前記緊急情報を発生した前記移動体についての、中央側の車線から路肩へ移動して停止する進路若しくは移動可能範囲の情報を生成する、とよい。
【0012】
好適には、前記マッピング部は、前記収集部により収集される情報に、前記移動体から降りた人の移動する携帯端末から発せられた緊急情報が含まれる場合、前記移動体についての前記徐行停止区間に加えて、前記携帯端末から前記緊急情報が発せられた位置の周囲に前記徐行停止区間を設定し、前記生成部は、複数の前記徐行停止区間の手前において停止するように、停止していない複数の前記移動体それぞれの進路若しくは移動可能範囲の情報を生成する、とよい。
【0013】
好適には、前記マッピング部は、前記収集部により収集される情報に、前記緊急情報に係る前記移動体としての車両のドアが開かれたことを示す情報が含まれる場合、前記移動体についての前記徐行停止区間に加えて、前記ドアが開かれた前記車両の位置から前記道路の少なくとも一端までの範囲に前記徐行停止区間を設定し、前記生成部は、複数の前記徐行停止区間の手前において停止するように、停止していない複数の前記移動体それぞれの進路若しくは移動可能範囲の情報を生成する、とよい。
【0014】
好適には、前記生成部は、前記緊急情報を発生した前記移動体についての路肩への移動が完了した後に、または前記移動体から降りている乗員が路肩への移動を終えた後に、前記徐行停止区間の手前で停止している他の前記移動体についての移動を再開する進路若しくは移動可能範囲の情報を生成する、とよい。
【0016】
本発明の一形態に係るサーバ装置は、所定区域または所定区間について設けられる複数の通信装置を用いて、複数の移動体の移動に関わる情報を受信でき、複数の前記移動体のそれぞれにおいて移動判断または移動制御に用いることができる情報を送信できる、移動情報提供システムのサーバ装置であって、前記移動情報提供システムにおける、複数の前記移動体の移動についての情報を含むフィールド情報または前記フィールド情報を加工した事前加工情報を収集する収集部と、前記収集部により収集される情報に基づいて、車線に沿った位置を横軸とし、時間を縦軸とする走行状況の運行図表に、複数の前記移動体の現時点位置と予想位置とをマッピングするマッピング部と、前記マッピング部により複数の前記移動体の現時点位置と予想位置とがマッピングされる運行図表を用いて、複数の前記移動体のそれぞれが移動可能な進路若しくは移動可能範囲の情報として、他の移動体と干渉または近接しないものを生成する生成部と、複数の前記移動体のそれぞれにおいて、生成される進路若しくは移動可能範囲の情報または前記進路若しくは移動可能範囲の情報に基づいて得られるそれぞれの移動体の移動判断または移動制御に用いることができる情報を使用して、それぞれの移動体の移動を制御する制御部と、の中の少なくとも前記収集部、前記マッピング部、および前記生成部を有し、前記マッピング部は、前記収集部により収集される情報に、前記移動体が移動可能な道路から発せられた緊急情報が含まれる場合、前記緊急情報を送信した移動体の位置が、道路の他の車線を跨ぐことなく路肩へ移動可能な車線であるか否かを判断し、道路の他の車線を跨ぐことなく路肩へ移動可能な車線である場合には、前記運行図表に、前記移動体をマッピングするとともに、緊急情報を送信した移動体がいる車線に、徐行停止区間をマッピングし、道路の他の車線を跨ぐことなく路肩へ移動可能な車線でない場合、前記運行図表に、前記移動体をマッピングするとともに、緊急情報を送信した移動体がいる車線と、当該車線と同じ方向のすべての車線とに、徐行停止区間をマッピングし、前記生成部は、前記運行図表にマッピングされている前記徐行停止区間を移動しないように移動を制限し、前記運行図表に設定されている他の移動体と干渉または近接しないように、複数の前記移動体それぞれの進路若しくは移動可能範囲の情報を生成する。
【0017】
本発明の一形態に係る車両は、所定区域または所定区間について設けられる複数の通信装置を用いて、複数の移動体の移動に関わる情報を受信でき、複数の前記移動体のそれぞれにおいて移動判断または移動制御に用いることができる情報を送信できる、移動情報提供システムの車両であって、前記移動情報提供システムにおける、複数の前記移動体の移動についての情報を含むフィールド情報または前記フィールド情報を加工した事前加工情報を収集する収集部と、前記収集部により収集される情報に基づいて、車線に沿った位置を横軸とし、時間を縦軸とする走行状況の運行図表に、複数の前記移動体の現時点位置と予想位置とをマッピングするマッピング部と、前記マッピング部により複数の前記移動体の現時点位置と予想位置とがマッピングされる運行図表を用いて、複数の前記移動体のそれぞれが移動可能な進路若しくは移動可能範囲の情報として、他の移動体と干渉または近接しないものを生成する生成部と、複数の前記移動体のそれぞれにおいて、生成される進路若しくは移動可能範囲の情報または前記進路若しくは移動可能範囲の情報に基づいて得られるそれぞれの移動体の移動判断または移動制御に用いることができる情報を使用して、それぞれの移動体の移動を制御する制御部と、の中の少なくとも前記マッピング部、前記生成部、および前記制御部を有し、前記マッピング部は、前記収集部により収集される情報に、前記移動体が移動可能な道路から発せられた緊急情報が含まれる場合、前記緊急情報を送信した移動体の位置が、道路の他の車線を跨ぐことなく路肩へ移動可能な車線であるか否かを判断し、道路の他の車線を跨ぐことなく路肩へ移動可能な車線である場合には、前記運行図表に、前記移動体をマッピングするとともに、緊急情報を送信した移動体がいる車線に、徐行停止区間をマッピングし、道路の他の車線を跨ぐことなく路肩へ移動可能な車線でない場合、前記運行図表に、前記移動体をマッピングするとともに、緊急情報を送信した移動体がいる車線と、当該車線と同じ方向のすべての車線とに、徐行停止区間をマッピングし、前記生成部は、前記運行図表にマッピングされている前記徐行停止区間を移動しないように移動を制限し、前記運行図表に設定されている他の移動体と干渉または近接しないように、複数の前記移動体それぞれの進路若しくは移動可能範囲の情報を生成する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、移動体は、状況に応じた安全性を得ながら移動することが可能となる。
【0019】
また、本発明では、移動体の移動の妨げとなり得る障害物を複数の移動体の位置とともにマッピングし、障害物を避けて移動するように、複数の移動体それぞれの進路若しくは移動可能範囲の情報を生成する。したがって、たとえば、走行中の道路または車線に障害物があったとしても、移動体は、状況に応じた安全性を得ながら移動することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る移動体への移動情報提供システムの構成図である。
【
図2】
図2は、
図1のサーバ装置のハードウェア構成図である。
【
図3】
図3は、
図1の自動車の自動運転などを制御する制御システムの構成図である。
【
図4】
図4は、
図3の外通信ECUによる自車情報の送信処理のフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図2のサーバCPUによる複数の自動車の移動に関わるフィールド情報の収集処理のフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図2のサーバCPUによる一次加工情報としての、それぞれの自動車が走行可能な微小区間の進路または走行可能範囲の情報を生成する処理のフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図2のサーバCPUによる、
図6の生成処理で生成した自動車の移動判断または移動制御に用いることができる情報を送信する処理のフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図3の自動車の制御システムの端末装置による、自動車の移動判断または移動制御に用いることができる情報を受信する処理のフローチャートである。
【
図9】
図9は、
図3の自動車の制御システムの走行制御ECUによる、自動車の自動運転または運転支援を制御する処理のフローチャートである。
【
図10】
図10は、第一実施形態の移動情報提供システムにおける、第一具体例での複数の自動車の走行に関するフィールド情報から複数の自動車の走行に関する進路を得て、複数の自動車の移動を制御するまでの一連の処理の説明図である。
【
図11】
図11は、自動車の移動情報提供システムによる車線ごとに、複数の自動車の進路または走行可能範囲の情報の生成処理を説明するための説明図である。
【
図12】
図12は、第二具体例での合流時における領域アルゴリズムを表した図である。
【
図13】
図13は、第三具体例での、徐行停止区間を移動しないようにする自動車の進路または移動可能範囲の情報を生成する処理のフローチャートである。
【
図14】
図14は、自動車100およびその乗員が緊急情報を送信する例での、
図13の処理の説明図である。
【
図15】
図15は、
図14の状態からの、緊急事態を発生して緊急情報を送信した自動車100についての、進路または移動可能範囲の情報の生成処理のフローチャートである。
【
図16】
図16は、
図14の状態からの、徐行停止区間の手前で減速停止した自動車100についての、進路または移動可能範囲の情報の生成処理のフローチャートである。
【
図17】
図17は、第四具体例での、路上で作業する人の安全を確保するために徐行停止区間を設定する場合での、自動車の進路または移動可能範囲の情報を生成する処理のフローチャートである。
【
図18】
図18は、第二実施形態での
図9のステップST67についての詳細な処理のフローチャートである。
【
図19】
図19は、第六実施形態のサーバ装置による、複数の自動車の移動に関わるフィールド情報の収集処理のフローチャートである。
【
図20】
図20は、第六実施形態のサーバ装置による、収集したフィールド情報を送信する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0022】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る移動体への移動情報提供システム1の構成図である。
図1の移動情報提供システム1は、道路を走行する複数の移動体としての複数の自動車100それぞれで使用可能な複数の端末装置2と、複数の自動車100が走行する道路に沿って設けられる複数の無線基地局4と、を有する。
【0023】
また、
図1には、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星110が図示されている。GNSS衛星110は、地表へ向けて、それぞれの衛星の位置を示す緯度経度の情報と、複数の衛星間で同期化を図っている絶対的な時刻の情報とを重畳した電波を発している。複数のGNSS衛星110の電波を受信することにより、受信した地点の位置を示す緯度経度の情報を生成することができる。また、生成した緯度経度と衛星の緯度経度とにより判断できる距離により、電波が受信地点へ到達するまでの時間が演算し得る。これにより、受信した地点についての、GNSS衛星110の時刻による正確な時刻を得ることが可能である。
【0024】
なお、移動体には、自動車100の他にもたとえば、歩行者、自転車、モータサイクル、カート、がある。端末装置2は、これらの移動体について設けられてもよい。端末装置2は、自動車100などに対して固定的に設けられても、取り外し可能に設けられてもよい。
【0025】
複数の無線基地局4が設けられる道路には、
図1の移動情報提供システム1により情報が提供されない他の自動車100、他の移動情報提供システムにより別個の情報が提供される他の自動車100が走行してよい。自動車100その他の移動体は、たとえば電車などのように固定化されている軌道を走行するものではない。自動車100その他の移動体は、それぞれが自由に独自に進行方向や進行速度を変えて移動することができる。移動情報提供システム1は、これらすべての移動体へ移動情報を提供するのではなく、その一部の制限された数の複数の移動体へ移動情報を提供するものでもよい。
【0026】
複数の無線基地局4は、移動情報提供システム1ために設けられた専用ネットワーク5に接続される。専用ネットワーク5には、さらにサーバ装置6が接続される。
【0027】
サーバ装置6は、専用ネットワーク5を通じて、複数の端末装置2と接続される。複数の無線基地局4、専用ネットワーク5、サーバ装置6により、移動体へ移動情報を提供する基地局側のシステム3が構成される。複数の無線基地局4は、単一の道路に沿って区間ごとに並べて設けられて、それぞれが担当する区間を移動している移動体にて使用される端末装置2へ情報を提供するものでよい。また、複数の無線基地局4は、単一の道路よりも広いエリアごとに設けられ、それぞれが担当するエリアを移動している移動体にて使用される端末装置2へ情報を提供するものでよい。
なお、本明細書における「エリア」とは、平面的な広さとして区切られた場所という意味であり、区域である。
また、「区間」とは、ある一点から次の一点までという意味であり、時間という概念を包含している。
【0028】
専用ネットワーク5は、移動情報提供システム1のために、施設されるものであり、専用ネットワーク5は、プライベートなクローズドネットワークでよい。また、ある道路の区間や、ある地域のエリアについて専用で設けられてもよいが、ある特定システムや区間など、特定条件を付与して利用を限るものであればよい。これに対し、インターネットは、パブリックなオープンな広域通信網である。広域通信網には、この他にもたとえば、ADAS(Advanced driver-assistance systems)といった高度交通システムで使用する専用の通信網、電話交換に専用に用いるATM交換網がある。移動情報提供システム1は、専用ネットワーク5の替わりに、または専用ネットワーク5とともにこれらの広域通信網を使用してよい。オープンネットワークでは、クローズドネットワークと比べて伝送遅延が大きくなり易い傾向にあるが、データを暗号化といった符号化することにより一定の秘匿性を担持することができる。ただし、専用ネットワーク5を用いることにより、インターネットなどを用いる場合と比べて、複数の無線基地局4およびサーバ装置6との間でのデータ通信は、低遅延で大容量の高速通信が相互に安定的に実行可能となる。専用ネットワーク5がTCP/IPプロトコルなどによる非同期のフレームにより情報を送受するものであって、コリジョン検出などによりフレームを再送するようなものであっても、それらに起因する伝送遅延が過大となり難い。専用ネットワーク5では、大量のデータが非同期で送受されることがあるインターネットと比べて、伝送遅延を小さく収めることができる。
【0029】
なお、サーバ装置6は、専用ネットワーク5やインターネットで構成される通信網に対して、複数で設けられてよい。複数のサーバ装置6は、道路やエリアといった割り当てられた地域ごとに分散して設けられても、複数の無線基地局4と直接に通信する下位とその上位とに分散して設けられてもよい。複数のサーバ装置6は、複数の端末装置2を複数に分けるグループごとに分散して設けられてよい。いずれにしても、複数のサーバ装置6が協働することにより、各サーバ装置6の処理負荷を軽減できる。また、伝送網に対して複数のサーバ装置6を適切に分散して配置することにより、伝送網の各部および全体での伝送情報量を抑えることも可能である。
【0030】
そして、このような移動情報提供システム1では、複数の自動車100の端末装置2とサーバ装置6とは、専用ネットワーク5および複数の無線基地局4による通信網でのデータパケットのルーティング制御により、相互にデータを送受する。端末装置2が自動車100とともに移動して、その端末装置2を収容する無線基地局4が変化すると、複数の無線基地局4およびサーバ装置6は、ルーティングを切り換えて、移動する自動車100を新たに収容する無線基地局4から端末装置2と通信する。切替前後の複数の無線基地局4は、それらの間で、移動する自動車100および端末装置2に関する情報を送受してよい。
サーバ装置6は、このような通信により、複数の自動車100の走行に関わるフィールド情報を収集する。フィールド情報には、自動車100以外の移動体などについて収集される情報が含まれてよい。サーバ装置6は、収集したフィールド情報に基づいて、たとえば複数の自動車100がたとえば互いに衝突することなく安全に走行することが可能な自動車100ごとの微小区間の進路または移動可能範囲の情報を生成する。サーバ装置6は、生成した情報を一次加工情報として複数の自動車100の端末装置2へ所定の期間ごとに繰り返しに送信する。なお、サーバ装置6は、収集したフィールド情報そのものをたとえば自動車100ごとに整理して、複数の自動車100の端末装置2へ所定の期間ごとに繰り返しに送信してもよい。
なお、担当する所定区域及び/または所定区間に該当する自動車100が一台だけの場合は、一台のみを担当すればよく、その場合は予め収集されている地図とその一台のフィールド情報で一次加工情報を生成すればよい。また、担当する所定区域及び/または所定区間を自動車100が通過する時間において、一回だけ通信してもよい
ここでいう微小区間とは制御または支援を受ける自動車100の進行方向(前後左右)における区間であり、例えば時速60kmでの200ミリ秒に進む距離、などと定義してもよい。
また、担当するとは、無線基地局4が通信可能であることを意味する。
自動車100に設けられる端末装置2は、このような通信により、それを収容する無線基地局4から、サーバ装置6が送信した一次加工情報やフィールド情報を所定の期間ごとに繰り返しに受信する。自動車100は、端末装置2が受信した情報に基づいて、自動車100の移動についての制御を実行する。自動運転の場合、自動車100は、自動運転のための進路を決定し、その進路にしたがって自車を走行させる。手動運転の運転支援の場合、自動車100は、乗車しているユーザの運転操作を、決定した進路から大きく外れないように調整し、自車を走行させる。自動車100は、決定した進路に沿って走行できる。なお、自動車100は、端末装置2が受信した情報や、それに基づく情報を、乗車しているユーザへ表示や音声などにより報知してもよい。
【0031】
ここで、サーバ装置6などの基地局側が収集するフィールド情報は、複数の自動車100などの移動体の移動に関わる情報であればよく、たとえばそれぞれの自動車100から収集する情報、道路の監視情報やそれに基づく地域の交通情報、がある。各自動車100から収集する情報には、たとえば、各自動車100の走行情報、ユーザに関する乗員情報、各自動車100の周辺情報、地域の交通情報、がある。自動車100の走行情報には、たとえば進行方向、進行速度だけでなく、現在地、目的地、車体の姿勢や動き、がある。車体の姿勢には、たとえばヨーレートがある。
【0032】
また、サーバ装置6などの基地局側が各自動車100の端末装置2へ送信する一次加工情報は、各自動車100がそれぞれの自動車100の走行制御または走行判断に使用できる情報などであればよく、たとえば、自動車100の微小区間の進行方向、進行速度、がある。サーバ装置6が各自動車100の端末装置2へ送信する情報には、たとえば、推定した自動車100の現在地の情報、推定した自動車100の現在地からの最大進行可能距離または最大進行可能範囲、推定した現在時刻の情報、が含まれてよい。自動車100は、端末装置2がこれらの情報を短い所定の期間ごとに繰り返し受信し続けることにより、その情報による安全性が確保されている状態で走行し続けることができる。自動車100は、微小区間ごとの情報を所定の期間ごとに繰り返し取得し、それにしたがって走行することより、たとえば所望の目的地まで安全に走行することができる。
【0033】
ところで、これまでの自動車100は、たとえば目的地までの経路をナビゲーション装置へ設定して、その経路の案内にしたがってユーザ自身が安全性を確保しながら運転操作することにより、目的地まで安全に移動することができる。この際、運転支援機能を有する自動車100では、自動車100に設けられるカメラなどのセンサにより車内や車外を撮像して、他の自動車100などの移動体を避けるように進路を調整して運転を支援することができる。
しかしながら、このような自律的な自動運転や運転支援では、必ずしも他の自動車100などの移動を正確に予測して把握できるとは限らない。
たとえばユーザにより操作される他の自動車100は、急激に進路を変更したりして予想外の移動をすることがある。また、進路上に他の移動体が飛び出したり、視認できないコーナの先に他の自動車100が駐車していたりすることもある。たとえば吹雪などで天候が悪化して視認性が低下することもある。吹雪などの天候において対向車を視認し難いこともある。交差点やインターチェンジの合流地点では、横方向や斜め後方向から他の自動車100が接近することもある。これらの場合、自動運転中の自車は、たとえば急激に走行が変化する他の自動車100に当たったり、その進路を妨害したりしないように、他の自動車100を避けるように急激な走行制御を実行しなければならなくなる。このような事態は、事故の未然防止のために避けることが望ましい。自動車100などの移動体の移動を制御する場合、できる限り他の移動体の予想外の移動の影響が生じ難くすることが望ましい。
【0034】
図2は、
図1のサーバ装置6のハードウェア構成図である。
図2のサーバ装置6は、サーバ通信デバイス11、サーバGNSS受信機12、サーバメモリ13、サーバCPU14、および、これらが接続されるサーババス15、を有する。
【0035】
サーバ通信デバイス11は、専用ネットワーク5による通信網に接続される。サーバ通信デバイス11は、通信網に接続されている他の装置、たとえば複数の無線基地局4や自動車100の端末装置2との間でデータを送受する。
サーバGNSS受信機12は、GNSS衛星110の電波を受信して、現在時刻を得る。サーバ装置6は、サーバGNSS受信機12の現在時刻により校正される不図示のサーバタイマを備えてよい。
サーバメモリ13は、サーバCPU14が実行するプログラムおよびデータを記録する。
サーバCPU14は、サーバメモリ13からプログラムを読み込んで実行する。これにより、サーバ装置6には、サーバ制御部が実現される。
サーバ制御部としてのサーバCPU14は、サーバ装置6の全体的な動作を管理する。サーバCPU14は、移動情報提供システム1において収集する情報を取得し、複数の通信装置へ提供する情報を生成し、送信する。
【0036】
図3は、
図1の自動車100の自動運転などを制御する制御システム20の構成図である。
図3の自動車100の制御システム20は、複数の制御装置が、それぞれに組み込まれる制御ECU(Electronic Control Unit)により代表して示されている。制御装置は、
図2のサーバ装置6と同様に、制御ECUの他に、たとえば制御プログラムおよびデータを記録するメモリ、制御対象物またはその状態検出装置と接続される入出力ポート、時間や時刻を計測するタイマ、およびこれらが接続される内部バス、を有してよい。
図3に示される制御ECUは、具体的にはたとえば、駆動ECU21、操舵ECU22、制動ECU23、走行制御ECU24、運転操作ECU25、検出ECU26、外通信ECU27、UI操作ECU28、である。自動車100の制御システム20は、図示しない他の制御ECUを備えてよい。
これらの制御ECUは、自動車100の制御システム20の制御部を構成する。
【0037】
複数の制御ECUは、自動車100で採用されるたとえばCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)といった車ネットワーク30に接続される。車ネットワーク30は、複数の制御ECUを接続可能な複数のバスケーブル31と、複数のバスケーブル31が接続される中継装置としてのセントラルゲートウェイ(CGW)32と、で構成されてよい。複数の制御ECUには、互いに異なる識別情報としてのIDが割り当てられる。制御ECUは、基本的に周期的に、他の制御ECUへデータを出力する。データには、出力元の制御ECUのIDと、出力先の制御ECUのIDとが付加される。他の制御ECUは、バスケーブル31を監視し、出力先のIDがたとえば自らのものである場合、データを取得し、データに基づく処理を実行する。セントラルゲートウェイ32は、接続されている複数のバスケーブル31それぞれを監視し、出力元の制御ECUとは異なるバスケーブル31に接続されている制御ECUを検出すると、そのバスケーブル31へデータを出力する。このようなセントラルゲートウェイ32の中継処理により、複数の制御ECUは、それぞれが接続されているバスケーブル31とは異なるバスケーブル31に接続されている他の制御ECUとの間でデータを入出力できる。
【0038】
UI操作ECU28には、たとえば乗車しているユーザとのユーザインタフェース機器として、表示デバイス41、操作デバイス42、が接続される。表示デバイス41は、たとえば液晶デバイス、映像投影デバイス、でよい。操作デバイス42は、たとえばタッチパネル、キーボード、非接触操作検出デバイス、でよい。表示デバイス41および操作デバイス42は、たとえばユーザが乗る車室の内面に設置されてよい。UI操作ECU28は、車ネットワーク30からデータを取得し、表示デバイス41に表示する。UI操作ECU28は、操作デバイス42に対する操作入力を、車ネットワーク30へ出力する。また、UI操作ECU28は、操作入力に基づく処理を実行し、その処理結果をデータに含めてよい。UI操作ECU28は、たとえば、表示デバイス41に目的地などを設定するためのナビ画面を表示し、操作入力により選択した目的地までの経路を探索し、その経路データをデータに含めてよい。経路データには、現在地から目的地までの移動に使用する道路のたとえばレーンなどの属性情報が含まれてよい。
【0039】
運転操作ECU25には、ユーザが自動車100の走行を制御するために操作部材として、たとえばハンドル51、ブレーキペダル52、アクセルペダル53、シフトレバー54、などが接続される。操作部材が操作されると、運転操作ECU25は、操作の有無、操作量などを含むデータを、車ネットワーク30へ出力する。また、運転操作ECU25は、操作部材に対する操作についての処理を実行し、その処理結果をデータに含めてよい。運転操作ECU25は、たとえば自動車100の進行方向に他の移動体や固定物がある状況においてアクセルペダル53が操作された場合、その異常操作を判断し、その判断結果をデータに含めてよい。
【0040】
検出ECU26には、自動車100の走行状態を検出するための検出部材として、たとえば自動車100の速度を検出する速度センサ61、自動車100の加速度を検出する加速度センサ62、自動車100の外側の周囲を撮像するたとえばステレオカメラ63、車室のユーザを撮像する車内カメラ64、社内外の音をデータ化するマイクロホン65、自動車100の位置を検出するGNSS受信機66、などが接続される。GNSS受信機66は、サーバGNSS受信機12と同様の複数のGNSS衛星110からの電波を受信し、自車の現在位置である緯度、経度、および現在時刻を得る。これにより、自動車100の現在時刻は、サーバ装置6のサーバGNSS受信機12による現在時刻と高い精度で一致することが期待できる。検出ECU26は、検出部材から検出情報を取得し、検出情報を含むデータを、車ネットワーク30へ出力する。また、検出ECU26は、検出情報に基づく処理を実行し、その処理結果をデータに含めてよい。検出ECU26は、たとえば、加速度センサ62が衝突検出閾値を超える加速度を検出した場合、衝突検出を判断し、衝突検出結果をデータに含めてよい。検出ECU26は、ステレオカメラ63の画像に基づいて自車の周囲に存在する歩行者や他の自動車100といった移動体を抽出し、移動体の種類や属性を判断し、画像中の移動体の位置や大きさや変化に応じて移動体の相対方向、相対距離、移動方向を推定し、これらの推定結果を含む移動体の情報をデータに含めて車ネットワーク30へ出力してよい。
【0041】
外通信ECU27には、通信デバイス71、通信メモリ72、が接続される。端末装置2は、外通信ECU27、通信デバイス71、通信メモリ72、を有する。通信デバイス71は、外通信ECU27が送受するデータを、車外のたとえば無線基地局4、他の自動車100の通信デバイス71との間で送受する。通信デバイス71は、エリアごとまたは区間ごとに分けて設けられる複数の通信装置と通信する。通信メモリ72は、コンピュータ読取可能な記録媒体であり、外通信ECU27が実行するプログラム、設定値、外通信ECU27が送受するデータ、を記録する。外通信ECU27は、通信デバイス71を用いてたとえばサーバ装置6との間でデータを送受する。外通信ECU27は、たとえば車ネットワーク30を通じて自車情報を収集し、サーバ装置6へ送信する。外通信ECU27は、たとえばサーバ装置6が自車向けに送信した一次加工情報を通信デバイス71から取得し、通信メモリ72に記録する。
【0042】
外通信ECU27が収集する自車情報には、たとえば、乗車しているユーザの状態などの車内情報、自車の走行状態の情報、自車の走行環境などの周辺情報、走行している地域情報、がある。周辺情報には、周囲に存在する他の移動体についての情報が含まれてよい。自車の走行状態の情報には、たとえば自車に設けられている上述したような自律センサ(車両搭載センサ:加速度、GPS、ジャイロ、電子コンパス、気圧、カメラ、レーダ、超音波、赤外線など)がある。自律センサは、自車の移動に関する情報、自車のユーザの情報及び車両番号などの車両情報、自車の周辺情報または地域情報を検出してよい。また、自車の走行状態の情報には、これらのセンサの検出に基づいて演算可能な走行状態の情報、たとえばヨーレートなどの情報が含まれてよい。そして、外通信ECU27が送信する自車情報は、外通信ECU27が収集した自車情報そのままでもよいが、収集した情報について加工処理、フィルタ処理、符号化処理、量子化処理をした情報でもよい。外通信ECU27は、端末装置2として、自車情報を通信装置へ繰り返し送信する。
外通信ECU27がサーバ装置6から取得する情報には、自車への一次加工情報だけでなく、周辺の他の移動体への一次加工情報が含まれてよい。また、自律センサでは取得できないような補間情報が含まれてよい。外通信ECU27は、端末装置2として、少なくとも自車での移動判断または移動制御に用いることができる情報を通信装置から繰り返し受信する。
【0043】
走行制御ECU24には、制御メモリ81が接続される。制御メモリ81は、コンピュータ読取可能な記録媒体であり、走行制御ECU24が実行するプログラム、設定値、などが記録される。制御メモリ81には、走行制御ECU24による制御内容の情報が記録されてよい。走行制御ECU24は、制御メモリ81からプログラムを読み込んで実行する。これにより、走行制御ECU24は、自動車100の走行を制御するための制御部として機能し得る。
走行制御ECU24は、たとえば、車ネットワーク30を通じて外通信ECU27、検出ECU26、運転操作ECU25などからデータを取得し、自動車100の走行を自動運転または手動運転支援の制御を実行する。走行制御ECU24は、取得したデータに基づいて自動車100の走行を制御するための走行制御データを生成し、駆動ECU21、操舵ECU22、および制動ECU23へ出力する。駆動ECU21、操舵ECU22、および制動ECU23は、入力される走行制御データに基づいて、自動車100の走行を制御する。走行制御ECU24は、移動制御装置として、端末装置2が受信した情報を用いて車両の移動を制御する。
【0044】
次に、上述した構成を有する移動情報提供システム1による、複数の自動車100の進路の制御について説明する。
【0045】
図4は、
図3の外通信ECU27による自車情報の送信処理のフローチャートである。
自動車100に設けられる通信装置の外通信ECU27は、たとえば無線基地局4と通信可能な状態である場合、
図4の自車情報の送信処理を繰り返し実行する。外通信ECU27が自車情報を送信する周期は、たとえば数十ミリ秒から数秒程度の範囲でよい。
【0046】
ステップST1において、外通信ECU27は、車内から自車情報を収集して取得する。外通信ECU27は、たとえば車ネットワーク30を通じて、走行制御ECU24、検出ECU26、運転操作ECU25などからデータを取得する。これにより、外通信ECU27は、たとえば自車の現在位置、進行方向、進行速度といった自車の走行状態、乗車しているユーザの状態、自車の周辺情報、走行している地域情報を、収集する。また、外通信ECU27は、たとえばヨーレートなどの情報を、自律センサの検出値としては得られない情報を、取得した情報に基づいて演算してよい。外通信ECU27は、これらの収集したデータを、通信メモリ72に記録してよい。外通信ECU27により収集されるデータには、それぞれの検出時刻が含まれてよい。
【0047】
ステップST2において、外通信ECU27は、自車情報の送信タイミングであるか否かを判断する。外通信ECU27は、たとえばGNSS受信機66の現在時刻に基づいて、前回の送信タイミングからの経過時間が所定の送信周期を経過したか否かを判断してよい。また、自動車100の制御システム20は、たとえば車ネットワーク30、セントラルゲートウェイ32、外通信ECU27、または走行制御ECU24に接続されて、GNSS受信機66の現在時刻に基づいて校正される車両タイマを有し、この車両タイマの時刻を用いてもよい。そして、送信周期を経過していない場合、外通信ECU27は、処理をステップST1へ戻す。送信周期を経過した送信タイミングであると判断すると、外通信ECU27は、処理をステップST3へ進める。
【0048】
ステップST3において、外通信ECU27は、ステップST2で収集した情報を、通信デバイス71からサーバ装置6へ送信する。通信デバイス71は、その時の通信環境において通信デバイス71が通信可能な無線基地局4へ、ステップST2で収集した情報を送信する。無線基地局4は、自動車100の通信デバイス71から受信した情報を、専用ネットワーク5を通じてサーバ装置6へ送信する。ここで、自動車100の通信デバイス71から無線基地局4へ送信される情報には、たとえば、自動車100において検出された値および検出時刻といった自車情報、自動車100の最新の現在地、自動車100の最新の時刻などが含まれる。
【0049】
このように複数の自動車100の端末装置2は、それぞれの車両の自律センサによる現在または過去の検出情報を、それぞれの車両を収容するエリアまたは区間を担当する通信装置へ、繰り返し送信する。複数の通信装置は、それぞれが担当するエリアまたは区間を移動している自動車100の端末装置2から、それぞれの自動車100の現在または過去の情報を繰り返し受信する。複数の通信装置は、自動車100の端末装置2から受信した情報を、サーバ装置6へ送信する。
【0050】
図5は、
図2のサーバCPU14による複数の自動車100の移動に関わるフィールド情報の収集処理のフローチャートである。
サーバ装置6のサーバCPU14は、サーバ装置6のサーバ通信デバイス11が新たなフィールド情報を受信するたびに、
図5の収集処理を繰り返し実行する。
【0051】
ステップST11において、サーバCPU14は、フィールド情報を受信しているか否かを判断する。フィールド情報には、たとえば、複数の自動車100のそれぞれの端末装置2が送信した自車情報、道路に設置されるカメラなどの検出装置の検出情報、がある。高度交通システムの不図示のサーバ装置6は、管理する地域の交通情報などを、サーバ装置6へ送信してよい。サーバ通信デバイス11は、これらの情報を受信する。サーバ通信デバイス11がフィールド情報を受信していない場合、サーバCPU14は、ステップST11の処理を繰り返す。サーバ通信デバイス11がフィールド情報を受信すると、サーバCPU14は、処理をステップST12へ進める。
【0052】
ステップST12において、サーバCPU14は、受信したフィールド情報について、その時刻などについて修正が必要であるか否かを判断する。自動車100の時刻などと、サーバ装置6の時刻などとは、基本的に共通群のGNSS衛星110の電波に基づく時刻であるため、本来的には一致していると考えられる。しかしながら、自動車100は、たとえばトンネルなどでGNSS衛星110の電波を受信できない状況で走行している場合などがある。この場合、自動車100の時刻はそのタイマにより時刻を更新することとなり、共通する時刻に対して誤差を含む可能性がある。このような自動車100が送信したフィールド情報のたとえば時刻は、サーバ装置6の時刻とは異なる可能性がある。
サーバCPU14は、このような誤差についての有無を、たとえば、受信したフィールド情報とサーバ装置6の情報との比較により、または、受信したフィールド情報の位置と地図データとの比較などにより、判断する。そして、設定されている閾値以上の誤差があると判断する場合、サーバCPU14は、修正が必要であると判断し、処理をステップST13へ進める。誤差が閾値未満である場合、サーバCPU14は、修正が不要であると判断し、処理をステップST14へ進める。
【0053】
ステップST13において、サーバCPU14は、受信したフィールド情報を修正する。フィールド情報の修正の仕方には各種の方法が考えられるが、たとえば、フィールド情報そのものに含まれている時刻などの値を修正しても、その時刻などに対して誤差範囲の情報を付加してもよい。たとえば、サーバCPU14は、トンネルを走行している自動車100の時刻については、トンネルに入ってからの経過時間に応じた時刻の誤差範囲の情報を付加する。
また、CPU14は、時刻の修正にともなって連動して修正が必要になる他の情報、たとえば自動車100の位置、速度などについても、併せて修正してよい。
なお、このようなフィールド情報を修正するための情報は、自動車100がフィールド情報の送信の際に含めても、フィールド情報を中継する基地局4で付加してもよい。また、フィールド情報の修正処理は、自動車100において収集した情報について処理しても、基地局4において中継するフィールド情報ついて処理してもよい。
【0054】
ステップST14において、サーバCPU14は、受信または修正したフィールド情報を、その情報元ごとに分類して、サーバメモリ13に蓄積する。これにより、サーバ装置6のサーバメモリ13は、複数の自動車100の移動に関わるフィールド情報として、複数の自動車100それぞれから受信した、自動車100およびユーザについての情報若しくは周辺情報、または各自動車100が移動している地域の交通情報を蓄積して記録する。なお、サーバCPU14は、それぞれのフィールド情報を受信した時刻を、受信したフィールド情報に対応付けて記録してよい。
【0055】
なお、
図5において、サーバCPU14は、受信したフィールド情報の時刻などについて必要である場合には、その受信したフィールド情報の時刻などを直接に修正している。
この他にもたとえば、サーバCPU14は、受信したフィールド情報の時刻などについては修正することなく、
図5の処理を実行してよい。
この場合において、サーバCPU14は、さらに、受信したフィールド情報の時刻などについての誤差範囲を拡大するための付加的なフィールド情報を生成してもよい。このような誤差範囲についての付加的な情報により、サーバCPU14は、後の処理において自動車100の位置、速度などについての可能性がある範囲についての情報を得ることができる。その結果、たとえば、サーバCPU14が処理する自動車100の位置の範囲に、自動車100が実際に存在している可能性を高めることができる。
【0056】
図6は、
図2のサーバCPU14による一次加工情報としての、それぞれの自動車100が走行可能な微小区間の進路または走行可能範囲の情報を生成する処理のフローチャートである。
サーバ装置6のサーバCPU14は、
図6の進路生成処理を繰り返し実行する。サーバCPU14が進路生成処理を実行する周期は、たとえば一次加工情報の進路を自動車100が走行し終えるまでの時間より短ければよく、たとえば数十ミリ秒から数百ミリ秒程度でよい。
【0057】
ステップST21において、サーバCPU14は、複数の自動車100についての新たな進路を生成するタイミングであるか否かを判断する。サーバCPU14は、サーバGNSS受信機12の現在時刻に基づいて、前回の生成タイミングからの経過時間が所定の生成周期を経過したか否かを判断してよい。そして、生成周期を経過していない場合、サーバCPU14は、ステップST21の判断処理を繰り返す。生成周期を経過した生成タイミングであると判断すると、サーバCPU14は、処理をステップST22へ進める。
【0058】
ステップST22において、サーバCPU14は、サーバメモリ13から、サーバ通信デバイス11が受信している最新のフィールド情報を取得する。サーバCPU14は、たとえば複数の自動車100から収集したそれぞれの移動に関わるフィールド情報を取得する。サーバCPU14は、フィールド情報をたとえば無線基地局4などにおいて加工された事前加工情報を取得してよい。サーバCPU14は、複数の自動車100の移動に関わるフィールド情報として、複数の自動車100それぞれから、それぞれの移動に関する情報、それぞれのユーザの情報、それぞれの周辺情報または地域情報を取得してよい。
【0059】
ステップST23において、サーバCPU14は、現時点図および予測図に、走行環境をマッピングする。走行環境には、たとえば道路ごとの状態を示す渋滞状況や通行止め状況についての情報でよい。走行環境のマッピングにより、現時点図および予測図には、走行環境ごとの位置または範囲ごとに、走行環境を示す情報が割り当てられる。
ここで、現時点図および予測図は、移動情報提供システム1が情報を提供する地域の道路図でよい。現時点図および予測図は、ワールドマップである。現時点図および予測図は、サーバメモリ13に記録されていてよい。
そして、現時点図は、サーバGNSS受信機12の現在時刻での複数の自動車100の現時点位置をリアルタイムにマッピングする道路図でよい。なお、現時点図は、サーバGNSS受信機12の現在時刻より短い所定時間後の時刻での現時点位置をリアルタイム的にマッピングする道路図でよい。
予測図は、道路図の時刻より所定期間後について推定する複数の自動車100の予測位置をマッピングする道路図でよい。予測図は、道路図の時刻より数秒程度後の時点での道路図でよい。
【0060】
ステップST24において、サーバCPU14は、最新のフィールド情報から、サーバ装置6が現時点で通知する必要がある複数の自動車100についての移動体リストを生成する。移動体リストには、サーバ装置6が通知する必要がない他の自動車100といった他の移動体が含まれてよい。
【0061】
ステップST25から、サーバCPU14は、対象の複数の自動車100の現時点位置を現時点図にマッピングするための処理を開始する。自動車100のマッピングにより、現時点図には、自動車100の現時点位置ごとに、自動車100の情報が割り当てられる。
サーバCPU14は、最新のフィールド情報から、移動体リストに含まれる未処理の自動車100の現時点位置を取得または推定する。ここで、現時点とは、サーバGNSS受信機12の時刻そのものである必要はなく、それより数百ミリ秒後の時点でよい。自動車100の最新の現在地に対応する時刻と現時点との時間差が数百ミリ秒程度の閾値以下である場合、サーバCPU14は、取得した現在地を、自動車100の現時点位置としてよい。時間差が閾値より大きい場合、サーバCPU14は、自動車100の移動方向、移動速度、姿勢といった自車情報を用いて、取得した最新の現在地からの既移動方向および既移動量を演算し、その演算結果の位置を、自動車100の現時点位置としてよい。
【0062】
ステップST26において、サーバCPU14は、最新のフィールド情報に基づいて推定した移動体の現時点位置を現時点図にマッピングする。これにより、複数の自動車100についての最新の情報に基づく現時点位置が、高い確度により、現時点図にマッピングされる。
【0063】
ステップST27において、サーバCPU14は、移動体リストの複数の自動車100について処理を終了したか否かを判断する。移動体リストのすべての自動車100についての処理が終了していない場合、サーバCPU14は、処理をステップST25へ戻す。サーバCPU14は、次の未処理の自動車100を選択して、ステップST25からステップST27までの処理を繰り返す。移動体リストのすべての自動車100についての処理が終了すると、サーバCPU14は、現時点図へのマッピング処理を終了して、処理をステップST28へ進める。これにより、現時点図には、対象の複数の自動車100の現時点位置が、それらの相対位置関係を表すようにマッピングされる。
【0064】
ステップST28から、サーバCPU14は、対象の複数の自動車100の将来的な所定期間後の予測位置を、ここでは現時点図の時刻から数秒後の予測位置を、予測図にマッピングするための処理を開始する。
サーバCPU14は、最新のフィールド情報から、移動体リストに含まれる未処理の自動車100の予測位置を演算により推定する。サーバCPU14は、演算対象の自動車100の情報を用いて、現時点時刻より微小期間後の予測時刻での予測位置を演算する。予測時刻は、現時点の時刻より数百ミリ秒から数秒後の時刻でよい。サーバCPU14は、自動車100の移動方向、移動速度、姿勢といった自車情報を用いて、自動車100の挙動を考慮した、現時点位置からの移動方向および移動量を演算し、その演算結果の位置を、自動車100の予測位置としてよい。
【0065】
ステップST29において、サーバCPU14は、最新のフィールド情報に基づいて推定した移動体の予測位置を予測図にマッピングする。これにより、複数の自動車100についての最新の情報に基づく予測位置が、予測図にマッピングされる。
【0066】
ステップST30において、サーバCPU14は、移動体リストの複数の自動車100について処理を終了したか否かを判断する。移動体リストのすべての自動車100についての処理が終了していない場合、サーバCPU14は、処理をステップST28へ戻す。サーバCPU14は、次の未処理の自動車100を選択して、ステップST28からステップST30までの処理を繰り返す。移動体リストのすべての自動車100についての処理が終了すると、サーバCPU14は、予測図へのマッピング処理を終了して、処理をステップST31へ進める。これにより、予測図には、対象の複数の自動車100の予測位置が、それらの相対位置関係を表すようにマッピングされる。
【0067】
ステップST31において、サーバCPU14は、対象の複数の自動車100が安全に走行可能な進路または範囲を生成する。たとえば、サーバCPU14は、対象の複数の自動車100のそれぞれについて、それぞれの現時点図の現時点位置から予測図の予測位置へ向かう、他の移動体と干渉または近接しない安全な進路を生成する。サーバCPU14は、たとえば自動車100が現時点位置から予測位置へ移動するとした場合に他の自動車100と進路が交差しなかったり、他の自動車100と時間がずれて交差したりするとき、現時点位置から予測位置まで走行する進路を生成してよい。これに対して、自動車100が現時点位置から予測位置へ移動するとした場合に他の自動車100と略同時刻において進路が交差するとき、サーバCPU14は、現時点位置から交差の直前位置までを、走行する進路として生成すればよい。この場合、サーバCPU14は、交差の直前位置において停車するように減速する進路を生成してよい。これらの処理により、サーバCPU14は、現時点図の位置から予測図の位置への複数の自動車100の仮想進路に基づいて、それらの進路が互いに交差することがないように複数の自動車100それぞれの安全に進行することができる微小区間の進路を生成し得る。また、サーバCPU14は、このような具体的な進路ではなく、複数の自動車100それぞれが安全に進行することが可能な安全走行可能範囲を生成してよい。安全走行可能範囲は、たとえば他の自動車100の安全走行可能範囲と重ならないように生成すればよい。サーバCPU14は、自動車100ごとに生成した進路または範囲を、フィールド情報から得られる一次加工情報として、サーバメモリ13に記録する。サーバCPU14は、取得した情報に基づいて、複数の自動車100または複数の端末装置2において自動車100の移動判断または移動制御に用いることができる一次加工情報を、生成する。
【0068】
ステップST32において、サーバCPU14は、移動体リストの複数の自動車100について処理を終了したか否かを判断する。移動体リストのすべての自動車100についての処理が終了していない場合、サーバCPU14は、処理をステップST31へ戻す。サーバCPU14は、次の未処理の自動車100を選択して、ステップST31からステップST32までの処理を繰り返す。移動体リストのすべての自動車100についての処理が終了すると、サーバCPU14は、
図6の進路生成処理を終了する。
【0069】
このように、サーバCPU14は、収集したフィールド情報に基づいて推定される複数の移動体の現時点位置を現時点図にマッピングする。また、サーバCPU14は、収集したフィールド情報に基づいて推定される複数の移動体それぞれの進行方向、進行速度または進行状態と、現時点図とに基づいて、複数の移動体の将来的な予測位置を推定して予測図にマッピングする。そして、サーバCPU14は、現時点図の位置から予測図の位置への複数の移動体の移動を想定して、複数の移動体それぞれが走行可能な微小区間の進路または走行可能範囲を、フィールド情報に基づいて得られる一次加工情報として生成する。
【0070】
図7は、
図2のサーバCPU14による、
図6の生成処理で生成した自動車100の移動判断または移動制御に用いることができる情報を送信する処理のフローチャートである。
サーバ装置6のサーバCPU14は、
図7の情報の送信処理を繰り返し実行する。サーバ装置6が情報を送信する周期は、たとえば
図4の自動車100の送信する周期と同じとなるように数十ミリ秒から数秒程度の範囲でよい。
サーバ装置6のサーバCPU14は、たとえば
図5の処理により複数の自動車100からフィールド情報を収集すると、
図6の複数の移動体それぞれが走行可能な微小区間の進路または走行可能範囲を一次加工情報として生成する。サーバCPU14は、この他にもたとえば、
図6の進路生成処理を実行するたびに、
図7の送信処理を繰り返し実行してよい。
【0071】
ステップST41において、サーバCPU14は、サーバメモリ13に記録されている最新の自動車100の進路または移動可能範囲の情報を、一次加工情報を取得する。
【0072】
ステップST42において、サーバCPU14は、取得した一次加工情報を、サーバ通信デバイス11から、それに対応する自動車100の通信デバイス71へ送信する。一次加工情報は、サーバ装置6から専用ネットワーク5を通じて無線基地局4へ送信された後、無線基地局4から自動車100の端末装置2へ送信される。複数の通信装置は、生成された一次加工情報を、複数の自動車100に設けられる複数の端末装置2へ送信する。
【0073】
ステップST43において、サーバCPU14は、移動体リストの複数の自動車100について処理を終了したか否かを判断する。移動体リストのすべての自動車100についての処理が終了していない場合、サーバCPU14は、処理をステップST41へ戻す。サーバCPU14は、次の未処理の自動車100を選択して、ステップST41からステップST43までの処理を繰り返す。移動体リストのすべての自動車100についての処理が終了すると、サーバCPU14は、
図7の進路生成処理を終了する。
【0074】
これにより、サーバ装置6は、複数の自動車100へ、それぞれの制御または判断に用いる一次加工情報を送信する。サーバ装置6は、たとえば複数の自動車100に対してそれぞれの進行方向および進行速度を示す一次加工情報を送信してよい。一次加工情報には、さらに、検証確認のための情報として、現時点位置、現時点時刻、予測時刻、などか含まれてよい。また、サーバ装置6は、
図7の処理を繰り返すことにより、微小区間の進路に関する一次加工情報を、複数の自動車100のそれぞれへ繰り返し送信し続けることになる。
なお、サーバ装置6は、一次加工情報とともに、または一次加工情報の替わりに、フィールド情報複数の自動車100から収集するフィールド情報を、複数の自動車100へ送信してよい。
【0075】
図8は、
図3の自動車100の制御システム20の端末装置2による、自動車100の移動判断または移動制御に用いることができる情報を受信する処理のフローチャートである。
自動車100の端末装置2は、無線基地局4から、一次加工情報を受信する。端末装置2は、無線基地局4から、フィールド情報を受信してよい。
端末装置2の外通信ECU27は、
図8の一次加工情報の受信処理を繰り返し実行する。外通信ECU27は、一次加工情報を受信するたびに、
図8の受信処理を繰り返し実行してよい。
【0076】
ステップST51において、外通信ECU27は、自車宛ての新たな情報を受信しているか否かを判断する。通信デバイス71は、サーバ装置6から、自車宛ての一次加工情報や、自車宛てのフィールド情報を、受信する。この場合、外通信ECU27は、自車宛ての新たな情報を受信していると判断し、処理をステップST52へ進める。通信デバイス71がサーバ装置6から新たな自車宛ての情報を受信していない場合、外通信ECU27は、ステップST51の処理を繰り返す。
【0077】
ステップST52において、外通信ECU27は、通信デバイス71から、自車宛ての情報を取得する。自車宛ての情報とは、自車の制御に利用できるものをいう。自車宛ての情報には、たとえば、自車の装置の制御に関する情報の他に、それに加工可能な自車の周囲の情報が含まれてよい。
【0078】
ステップST53において、外通信ECU27は、取得した自車宛ての情報について、その時刻などについて修正が必要であるか否かを判断する。自動車100の時刻などと、サーバ装置6の時刻などとは、基本的に共通群のGNSS衛星110の電波に基づく時刻であるため、本来的には一致していると考えられる。しかしながら、サーバ装置6において、一時的であるかもしれないが、GNSS衛星110の電波を受信できない状況もありえる。この場合、サーバ装置6の時刻はそのタイマにより時刻を更新することとなり、共通する時刻に対して誤差を含む可能性がある。このようなサーバ装置6が送信したフィールド情報のたとえば時刻は、自動車100の時刻とは異なる可能性がある。
外通信ECU27は、このような誤差についての有無を、たとえば受信した情報と自車の情報との比較により判断する。そして、設定されている閾値以上の誤差があると判断する場合、外通信ECU27は、修正が必要であると判断し、処理をステップST54へ進める。誤差が閾値未満である場合、外通信ECU27は、修正が不要であると判断し、処理をステップST55へ進める。
【0079】
ステップST54において、外通信ECU27は、取得した情報を修正する。情報の修正の仕方には各種の方法が考えられるが、たとえば、情報そのものに含まれている時刻などの値を修正しても、その時刻などに対して誤差範囲の情報を付加してもよい。
また、外通信ECU27は、時刻の修正にともなって連動して修正が必要になる他の情報、たとえば自動車100の位置、速度などについても、併せて修正してよい。
なお、このような情報を修正するための情報は、サーバ装置6が情報の送信の際に含めても、情報を中継する基地局4で付加してもよい。また、情報の修正処理は、サーバ装置6がおいて処理しても、基地局4において処理してもよい。
【0080】
ステップST55において、外通信ECU27は、取得した自車宛ての情報を、通信メモリ72に蓄積する。これにより、自動車100の通信メモリ72には、自車宛ての情報が蓄積して記録される。
【0081】
このように自動車100の端末装置2は、複数の移動体の移動に関わるフィールド情報に基づいて得られる一次加工情報を受信して蓄積する。
なお、端末装置2は、複数の移動体の移動に関わる収集したそのもののフィールド情報を受信して蓄積してもよい。
【0082】
図9は、
図3の自動車100の制御システム20の走行制御ECU24による、自動車100の自動運転または運転支援を制御する処理のフローチャートである。
自動車100の走行を制御する走行制御ECU24は、
図9の一次加工情報に基づく走行制御を繰り返し実行する。走行制御ECU24は、たとえば一次加工情報の進路を自動車100が走行し終えるまでの時間より短い周期で、
図9の走行制御を繰り返せばよい。この場合の繰り返し周期は、たとえば数十ミリ秒から数百ミリ秒程度でよい。
【0083】
ステップST61において、走行制御ECU24は、制御を更新するタイミングであるか否かを判断する。走行制御ECU24は、GNSS受信機66の現在時刻に基づいて、前回の制御タイミングからの経過時間が所定の更新周期を経過したか否かを判断してよい。また、走行制御ECU24は、現在実行している進路での制御の終了時刻を推定し、推定した終了時刻までの残時間が閾値より小さいか否かを判断してよい。そして、更新周期を経過していない場合、走行制御ECU24は、ステップST61の判断処理を繰り返す。更新周期を経過した制御タイミングであると判断すると、走行制御ECU24は、処理をステップST62へ進める。
【0084】
ステップST62において、走行制御ECU24は、最新の一次加工情報を取得する。走行制御ECU24は、外通信ECU27を通じて通信メモリ72から通信デバイス71が最後に受信している一次加工情報を取得する。走行制御ECU24は、最新の一次加工情報とともにそれ以前に受信したその他の一次加工情報を併せて取得してよい。複数の一次加工情報により、移動の変化を把握することが可能である。
【0085】
ステップST63において、走行制御ECU24は、自車の各部から、自車情報を取得する。走行制御ECU24は、たとえば検出ECU26から現在地、周辺の他の移動体の情報、を取得する。運転支援の場合、走行制御ECU24は、運転操作ECU25からユーザによる操作情報を取得する。
【0086】
ステップST64において、走行制御ECU24は、情報と実際の現在位置の一致を判断する。走行制御ECU24は、自車で検出する現在地と、最新の一次加工情報に含まれる現時点位置とを比較する。そして、これらの位置が走行制御に支障をきたさない微小誤差で一致する場合、走行制御ECU24は、現在位置が一致すると判断し、処理をステップST65へ進める。これらの位置が微小誤差より大きい場合、走行制御ECU24は、現在位置が一致しないと判断し、処理をステップST67へ進める。
【0087】
ステップST65において、走行制御ECU24は、最新の一次加工情報により指示されている現在位置からの進路が走行可能なクリアな状態であるか否かを判断する。走行制御ECU24は、たとえば、取得した自車検出の周辺情報に基づいて、指示されている進路または走行可能範囲についての異物、異常、危険の有無、通過する他の移動体の有無、を判断する。これらの障害の可能性がない場合、走行制御ECU24は、指示進路がクリアであると判断し、処理をステップST66へ進める。障害がある場合、またはその可能性がある場合、走行制御ECU24は、指示されている進路または走行可能範囲がクリアでないと判断し、処理をステップST67へ進める。
なお、走行制御ECU24は、単に自律センサにより取得する自車検出の周辺情報に基づいて指示進路のクリアを判断するだけでなく、自律センサの検出値と、最新の一次加工情報に含まれる情報とを突き合わせて、これらの間の誤差に基づいて指示進路のクリアを判断してよい。自律センサの検出値と、外部から取得する情報との間で、物理量の種類や座標系が異なる場合、走行制御ECU24は、外部から取得する情報の物理量や座標系を、自律センサの検出値と比較可能となるように変換し、その変換後の疑似センサの値と自律センサの検出値とを比較すればよい。そして、誤差が閾値以上である場合、走行制御ECU24は、指示されている進路または走行可能範囲がクリアでないと判断し、処理をステップST67へ進める。誤差が閾値より小さい場合、走行制御ECU24は、指示進路がクリアであると判断し、処理をステップST66へ進める。
【0088】
ステップST66において、走行制御ECU24は、指示進路にしたがって走行を制御する。
走行制御ECU24は、指示された進路、または指示された走行可能範囲内の進路を、走行制御データとして生成する。走行制御ECU24は、サーバ装置6から方位と距離もしくは時間を含むベクトルとしての進路を取得している場合、その進路に沿って走行制御データを生成してよい。サーバ装置6から進行可能な安全走行可能範囲を取得している場合、走行制御ECU24は、その安全走行可能範囲内で最大に進行可能な方向と距離もしくは時間によるベクトルを演算し、そのベクトルによる進路を走行制御データとして生成してよい。
走行制御ECU24は、生成した走行制御データにより、自車の走行を制御する。運転支援の場合、走行制御ECU24は、生成した走行制御データによる進路から大きく外れないように、ユーザの操作を調整する。この際、走行制御ECU24は、指示された走行可能範囲から外れないように、ユーザの操作を調整してよい。
このように、走行制御ECU24は、端末装置2が受信した複数の移動体の移動に関わるフィールド情報に基づいて得られる一次加工情報に基づいて、自車の進路を決定して車両の走行を制御または支援する。
【0089】
ステップST67において、走行制御ECU24は、指示進路ではなく、自車の自律センサで独自に検出した情報に基づいて走行制御データを生成する。この際、走行制御ECU24は、自律センサに基づく走行制御データを得るために、従属的な情報として、指示されている進路または走行可能範囲の情報を使用し、それらの指示を超えないように走行制御データを生成してよい。
走行制御ECU24は、生成した走行制御データにより、自車の走行を制御する。運転支援の場合、走行制御ECU24は、生成した走行制御データによる進路から大きく外れないように、ユーザの操作を調整する。この際、走行制御ECU24は、指示された走行可能範囲から外れないように、ユーザの操作を調整してよい。
【0090】
このように走行制御ECU24は、移動体としての自動車100において、通信デバイス71が受信した一次加工情報を取得し、一次加工情報から走行制御データを生成し、生成した走行制御データにより自動車100の走行を制御または支援する。走行制御ECU24は、取得した一次加工情報で指示されている進路により、車両の移動判断または移動制御を実行し、自動車100の走行を制御または支援できる。ここで、走行制御データは、自動車100の移動判断または移動制御に用いる二次加工情報である。
【0091】
なお、本実施形態と異なり、端末装置2は、進路または移動可能範囲の情報以外の情報、たとえばフィールド情報などを無線基地局4から受信してもよい。この場合、走行制御ECU24は、受信により取得した情報に基づいて、サーバ装置6と同様の処理により進路または移動可能範囲を生成し、それに基づいて
図9の処理を実行すればよい。この場合、走行制御ECU24は、フィールド情報から、自車が走行可能な微小区間の進路または走行可能範囲の情報を生成し、その生成した情報に基づいて
図9の処理を実行することになる。
【0092】
以上のように、本実施形態では、サーバ装置6は、複数の移動体としての自動車100の移動に関わるフィールド情報を収集し、収集したフィールド情報に基づいて複数の移動体がたとえば互いに衝突することがないように安全に進行することができる移動体ごとの微小区間の進路または安全走行可能範囲を生成し、生成した微小区間の進路または安全走行可能範囲を、一次加工情報として複数の端末装置2の通信デバイス71のそれぞれへ送信する。したがって、サーバ装置6からそれぞれで使用可能な移動体についての一次加工情報を受信する端末装置2の通信デバイス71は、他の移動体がそれに基づいて移動する進路を考慮した自身の移動に関する進路情報を得ることができる。各移動体は、他の移動体がそれにしたがって移動する進路を考慮した自身の進路情報を得て、それに基づいて進行することにより、他の移動体の予想外の移動の影響を受け難くなる。複数の車両などの移動体が共通の情報にしたがって移動することにより、走行中の相互安全性が高まる。
【0093】
図10は、第一実施形態の移動情報提供システム1における、複数の自動車100の走行に関するフィールド情報から複数の自動車100の走行に関する進路を得て、複数の自動車100の移動を制御するまでの一連の処理の説明図である。
【0094】
ステップST71において、移動情報提供システム1は、複数の自動車100の走行に関するフィールド情報を収集する。
ステップST72において、移動情報提供システム1は、複数の自動車100の走行に関するフィールド情報に基づいて、複数の自動車100の現時点位置を得て、現時点図にマッピングする。
ステップST73において、移動情報提供システム1は、複数の自動車100の走行に関するフィールド情報に基づいて、複数の自動車100の予測位置を得て、予測図にマッピングする。
ステップST74において、移動情報提供システム1は、現時点図と予測図とに基づいて、複数の自動車100それぞれの走行可能範囲または指示進路を得る。
ステップST75において、移動情報提供システム1は、複数の自動車100それぞれの走行可能範囲または指示進路から、複数の自動車100それぞれが制御または判断に用いる進路を得る。
ステップST76において、移動情報提供システム1は、複数の自動車100は、それぞれの進路にそって、たとえば自動運転により自車の走行を制御する。
【0095】
このように移動情報提供システム1は、ステップST72において現時点図を生成し、ステップST73からステップST75の処理により、各自動車100が衝突しないで安全に走行可能な進路や移動可能範囲といった情報を生成する。管制下にある複数の自動車100は、それぞれの指示情報に基づいて自車の走行を制御する。これにより、管制下にある複数の自動車100は、他の移動体と衝突しないように安全に走行し得る。このようにステップST73からステップST75の処理は、現時点図といったマッピングに基づいて各自動車100についての衝突の可能性を予測し、衝突の可能性がある場合にはその衝突が起きないように各自動車100の走行を制御する、衝突予測に基づく管制処理(ステップST70)に該当する。
【0096】
第一実施形態では、複数の無線基地局4に接続されるサーバ装置6が、ステップST71からステップST74までの処理を実行し、自動車100の制御システム20が、ステップST75からステップST76までの処理を実行している。
この他にもたとえば、サーバ装置6は、ステップST71からステップST72までの処理を実行したり、ステップST71からステップST73までの処理を実行したり、ステップST71からステップST75までの処理を実行したり、してよい。この場合、サーバ装置6は、それぞれの処理により生成される一次加工情報を、複数の自動車100の端末装置2へ送信する。自動車100は、端末装置2が受信した一次加工情報に基づく処理においてステップST76の処理を実行し、自車の走行を制御すればよい。
【0097】
次に、本実施形態の移動情報提供システム1により複数の自動車100の移動を制御する管制処理の具体例について説明する。
【0098】
[第一具体例、現時点図と予想図とを車線ごとにまとめたマッピングデータを用いる例]
本実施形態の移動情報提供システム1は、基本的に、道路ごとに、各自動車100の進路または走行可能範囲を生成する。
道路には、同一方向へ通行することができる複数の車線を有するものがある。そして、道路の渋滞状況や先行車の数は、車線ごとに異なることがある。インターチェンジやジャンクションでは、自動車100は減速して渋滞し易い。
以下、このような状況に対応する一例について説明する。
【0099】
図11は、自動車100の移動情報提供システム1による車線ごとに、複数の自動車100の進路または走行可能範囲の情報の生成処理を説明するための説明図である。
図11(A)は、第一車線と、第一車線と同じ方向へ通行可能な第二車線とを有する道路である。
図11(B)は、第一車線での複数の自動車100の走行状況の運行図表である。
図11(C)は、第二車線での複数の自動車100の走行状況の運行図表である。
図11(B)および
図11(C)の走行状況の運行図表において、横軸は、車線に沿った位置である。縦軸は、時間である。原点は、現時点時刻である。運行図表に示される各線は、各自動車100の移動を示している。各自動車100は、横軸と交差する現時点位置から、時間の経過にしたがって線に沿って移動して、位置が変化する。現時点図は、たとえばこのような道路の車線毎の複数の運行図表の組み合わせにより、構成されてよい。
【0100】
サーバ装置6は、複数の自動車100のフィールド情報に含まれる現時点位置および速度に基づいて、
図11(B)および
図18(C)に示す車線ごとの走行状況の運行図表を生成する。たとえば、サーバ装置6は、自動車100から取得する位置または位置の履歴から、道路の車線毎の複数の運行図表から走行中の車線のものを選択する。サーバ装置6は、選択した運行図表に対して、自動車100から取得する時刻、位置、速度若しくは加速度などの情報を用いて、自動車100についての現時点位置およびまたは予想位置を描画する。
サーバ装置6は、運行図表に基づいて、各自動車100が前後の他の自動車100と接近し過ぎないように、各自動車100についての進路または走行可能範囲の情報を生成する。
たとえば
図11(B)の運行図表において、進行方向前側の1台目から3台目の自動車100は、ほぼ速度差がない状態で、図の左から右へ向けて走行している。これに対し、原点に最も近い4台目の自動車100は、その前を走行する他の3台の自動車100より早い速度で走行している。このまま走行を維持した場合、4台目の自動車100は、3台目の自動車100に追突してしまう可能性がある。サーバ装置6は、マッピングに基づいてこのような衝突の可能性を推定して判断し、その判断に係る衝突が生じないように、たとえば、1台目から3台目の自動車100については現在の速度を維持する進路または走行可能範囲の情報を生成し、4台目の自動車100については現在の速度から前の自動車100と同じ速度まで減速する進路または走行可能範囲の情報を生成してよい。そして、4台目の自動車100は、サーバ装置6から取得した情報に基づいて、たとえば3台目の自動車100に追突しない走行可能範囲内において指示された速度まで減速するように、自動走行を制御する。
また、サーバ装置6は、たとえば車線毎の複数の自動車100の平均速度を演算し、これらを比較する。サーバ装置6は、予測図に相当するタイミングにおける複数の自動車100の平均速度を先読み的に演算して比較すればよい。複数の車線の間で平均速度に差がある場合、サーバ装置6は、平均速度が遅い方の車線にいる自動車100に対して、平均速度が速い方の車線へ車線変更する進路または移動可能範囲の情報を生成する。サーバ装置6は、複数ある車線の中の平均速度が最も速い車線へ変更するように、進路または移動可能範囲の情報を生成する。サーバ装置6は、変更先の車線を走行する他の自動車100と接近し過ぎないような、加減速を含む車線変更の進路または移動可能範囲を生成する。
サーバ装置6は、生成した車線変更の進路または走行可能範囲を、送信する。
自動車100の制御システム20は、無線基地局4から端末装置2が受信した車線変更の進路または走行可能範囲にそって、自車の走行を制御または判断する。これにより、自動車100は、指示にしたがって車線を変更する。車線を変更した自動車100は、元にいた車線における渋滞や減速を避けて、走行することができる。
たとえば
図11(B)の車線を走行する複数の自動車100の速度およびその平均速度は、
図11(C)の車線を走行するものより低い。この場合、サーバ装置6は、たとえば、
図11(B)の車線を走行する4台目の自動車100に対して、
図11(C)の車線への変更を指示する。
図11(B)の4台目の自動車100は、サーバ装置6から指示の情報を受信すると、取得した情報に基づいて、たとえば3台目の自動車100に追突することがない走行可能範囲内において、指示された車線変更を自動的に実行する。その後、
図11(B)の4台目の自動車100は、
図11(C)において新たな3台目の自動車100としてマッピングされるようになる。
【0101】
このように本管制処理の例では、各車線を走行している複数の自動車100がそれぞれの車線において追突しないように、各自動車100についての進路または走行可能範囲の情報を生成する。
また、本管制処理の例では、渋滞を避けるように進路または走行可能範囲の情報を生成することができる。
なお、本実施形態では、複数の無線基地局4と専用ネットワーク5により接続されているサーバ装置6において、走行状況の運行図表により、車線変更のための進路または走行可能範囲の情報を生成している。
この場合、インターチェンジやジャンクションといった合流などの複雑な自動車100の流れが発生する状況においては、車線変更のための進路または走行可能範囲の情報が遅れる可能性がある。このような場合には、複数の無線基地局4それぞれに対して複数のサーバ装置6を設け、この複数のサーバ装置6による分散制御により、車線変更のための進路または走行可能範囲の情報を生成するようにするとよい。これにより、情報の伝送遅延を最小限に抑えることができる。
【0102】
[第二具体例、各自動車100の占有領域を考慮する例]
図12は、本実施の形態にかかる合流(車線変更)時の自動車100の領域アルゴリズムを表した図である。サーバ装置130の現在状況地図生成手段は、情報蓄積手段からの情報をサーバ時刻に変更し、横軸を時間座標、縦軸を位置座標とした場合の、時間変化による各車両の位置の変化の平面座標として地図を生成する。その際に、車両の走行領域をPath(以下、走行レーン)として平面上で計算可能に設定する。実線は移動体(ここでは自動車100)の移動状態を表している。縦軸のマイナス方向に進むほど、将来時間を示しており、具体的には実車走行絶対時刻を含んでいる。横軸のプラス方向は車線を示しており、各線の傾きは移動体の速度を表している。すなわち、横軸で重なる場合は、該当する自動車100が干渉するということであり、実線の傾きが垂直に近づくほど、速度が遅いことを表している。実線の周囲に太さを変えて表示されているのは占有領域としての巾であり、これは自動車100Aの車体長(縦、横)及び余裕しろ、である。また、一レーンにおける各自動車100を並べた場合、走行予定時刻において、特定の場所を先に占有している移動体から優先度が高いと判断することで、干渉を避けることができる。矢印の方向は自動車100Aの進行方向が示されている。
図12の左側が第1レーン(合流車線)を表しており、右側が第2レーン(本線)を示している。左上図に示すように、第1レーンを走行する自動車100Aが、第2レーンに車線変更しようとした場合、右上図に示すように走行予測時刻内において、第2レーンを走行する自動車100Bの実線に重なるため、干渉することがわかる。左下図にあるように、走行速度を低下させた場合、右下図にあるように走行予測時刻内で重ならないため、干渉がないとして、速度を低下させて合流するように自動車100Aに通知する。
【0103】
[第三具体例、道路や車線で停止している自動車100などの安全性を確保する例]
自動車100は、道路を移動している間に、たとえば他の自動車100と衝突したり、乗員に不具合が生じたりすることがある。この場合、自動車100は、路上で停止することがある。路上で停止している自動車100に対して、他の自動車100が二次衝突する可能性がある。
【0104】
図13は、第三具体例での、徐行停止区間を移動しないようにする自動車の進路または移動可能範囲の情報を生成する処理のフローチャートである。
図2のサーバ装置6のサーバCPU14は、
図6の進路生成処理の一部として、
図13の処理を繰り返し実行する。
【0105】
ステップST201において、サーバCPU14は、管轄内の自動車100についてのマッピングが完了したか否かを判断する。管轄内の自動車100についてのマッピングが完了していない場合、サーバCPU14は、本処理を繰り返す。管轄内の自動車100についてのマッピングが完了すると場合、サーバCPU14は、処理をステップST202へ進める。
【0106】
ステップST202において、サーバCPU14は、管轄外の自動車100を含む、マッピング処理を開始する。
【0107】
ステップST203において、サーバCPU14は、収集されたフィールド情報に、路上で停止した自動車100などからの緊急情報があるか否かを判断する。
路上で停止した自動車100において、端末装置2は、緊急情報を無線基地局4へ送信する。緊急情報は、無線基地局4を含む専用ネットワーク5を通じて、サーバ装置6へ送信される。この場合、サーバCPU14は、収集されたフィールド情報に路上で停止した自動車100の情報があると判断し、処理をステップST204へ進める。収集されたフィールド情報に路上で停止した自動車100の情報がない場合、サーバCPU14は、ステップST204などによるマッピング処理を飛ばして処理をステップST208へ進める。
【0108】
ステップST204において、サーバCPU14は、ステップST203で判断した緊急情報が、路上の自動車100についてのものであるか否かを判断する。
フィールド情報には、たとえば道路の撮像画像が含まれてよい。この場合、サーバCPU14は、道路の撮像画像に基づいて、路上で停止した自動車100の有無を判断してよい。また、フィールド情報には、道路の撮像画像などに基づいて加工された路上で停止した自動車100の情報、路上で停止した自動車100の位置情報、が含まれてよい。位置情報は、緊急情報に含まれてよい。
そして、ステップST203で判断した緊急情報が路上の自動車100についてのものである場合、サーバCPU14は、処理をステップST205へ進める。緊急情報が路上の自動車100についてのものでない場合、サーバCPU14は、処理をステップST207へ進める。
なお、緊急情報を送信するものとしては、路上で停止した自動車100の他にも、その自動車100から外へ出た乗員の携帯端末がある。乗員の携帯端末の位置が、緊急情報を送信した自動車100の位置とは異なる場合、乗員が自動車100から外へ出ていると考えられる。また、サーバCPU14は、緊急情報を送信した自動車100から、ドアの開閉情報、車内カメラ64の情報を受信している場合、これらの情報に基づいて、乗員が自動車100から外へ出ていると判断してよい。サーバCPU14は、このような車外へ出た乗員の携帯端末から緊急情報を受信している場合、処理をステップST207へ進める。
【0109】
ステップST205において、サーバCPU14は、緊急情報を送信した自動車100の位置が、道路についての両端の車線であるか否かを判断する。
道路には、一車線のもの、二車線のもの、3車線以上のものがある。これらの車線には、対向車線が含まれてよい。そして、一車線の道路、二車線の道路の各車線、3車線以上の両端の車線は、道路についての両端の車線である。
フィールド情報には、たとえば道路の撮像画像が含まれてよい。この場合、サーバCPU14は、道路の撮像画像に基づいて、緊急情報を送信した自動車100がいる道路の車線数を判断してよい。また、フィールド情報には、道路の撮像画像などに基づいて加工された道路の車線数の情報、が含まれてよい。道路の車線数の情報は、緊急情報に含まれてよい。
そして、緊急情報を送信した自動車100の位置が道路についての両端の車線である場合、サーバCPU14は、処理をステップST206へ進める。緊急情報を送信した自動車100の位置が道路についての両端の車線でない場合、サーバCPU14は、処理をステップST207へ進める。
【0110】
ステップST206において、サーバCPU14は、緊急情報を送信した自動車100の位置の周囲に、徐行停止区間をマッピングする。
この際、サーバCPU14は、緊急情報を送信した自動車100が他の車線を跨ぐことなく路肩へ移動可能な両端の車線にいるため、自動車100がいる車線に、徐行停止区間をマッピングする。
また、サーバCPU14は、車線についての自動車100がいる位置の手前に、徐行停止区間をマッピングする。サーバCPU14は、車線についての自動車100がいる位置の奥についても、徐行停止区間をマッピングしてもよい。
その後、サーバCPU14は、処理をステップST208へ進める。
これにより、サーバCPU14は、収集された情報に含まれる緊急情報が複数の同方向車線を含む道路の両端の車線から発したものである場合、その両端の車線のみに徐行停止区間を設定できる。
【0111】
ステップST207において、サーバCPU14は、緊急情報を送信した自動車100の位置の周囲に、徐行停止区間をマッピングする。また、サーバCPU14は、緊急情報を送信した携帯端末の位置の周囲に、徐行停止区間をマッピングする。
この際、サーバCPU14は、緊急情報を送信した自動車100が他の車線を跨がなければ路肩へ移動可能な中央の車線にいる場合、自動車100がいる車線と、それと同方向の車線のすべてに、徐行停止区間をマッピングする。
または、サーバCPU14は、すべての車線についての自動車100がいる位置の手前に、徐行停止区間をマッピングする。サーバCPU14は、すべての車線についての自動車100がいる位置の奥についても、徐行停止区間をマッピングしてもよい。
その後、サーバCPU14は、処理をステップST208へ進める。
これにより、サーバCPU14は、収集された情報に含まれる緊急情報が複数の同方向車線を含む道路の両端ではない中央側の車線から発したものである場合、複数の同方向車線のすべてに徐行停止区間を設定できる。
また、サーバCPU14は、収集された情報に自動車100から降りて移動している人の携帯端末から発せられた緊急情報が含まれる場合、自動車100についての徐行停止区間に加えて、携帯端末の位置の手前といった周囲に徐行停止区間を設定できる。
また、サーバCPU14は、これらステップST206およびステップST207の処理により、収集した情報に自動車100が移動可能な道路の所定区域または所定区間にいる自動車100や人の携帯端末から発せられた緊急情報が含まれる場合には、自動車100をマッピングするとともに、緊急情報が発せられた位置の手前といった周囲に徐行停止区間を設定できる。
【0112】
なお、サーバCPU14は、自動車100から降りて移動している人の携帯端末から発せられた緊急情報に基づくだけではなく、緊急情報に係る自動車100のドアが開かれたことを示す情報に基づいても、徐行停止区間を設定してよい。この場合の徐行停止区間は、緊急情報に係る自動車100のから道路の少なくとも一端までの範囲に、好ましくは道路の両端までの範囲に設定してよい。これにより、自動車100からドアを開いて降りて移動している人の詳しい位置や移動方向を携帯端末の位置などに基づいて把握できない場合でも、その人が移動する可能性が高い範囲に対応するように徐行停止区間を設定することができる。
【0113】
ステップST208において、サーバCPU14は、複数の自動車100とともに徐行停止区間がマッピングされたマッピングデータ、たとえば上述した現時点図や予測図、または
図11(B)や
図11(C)のようなマッピングデータに基づいて、複数の自動車100の移動可能範囲と必要な進路とを生成する。
この際、サーバCPU14は、徐行停止区間と干渉するか否かの可能性を判断し、徐行停止区間と干渉する場合には、徐行停止区間の手前において停止するように、停止していない自動車100について減速停止する進路若しくは移動可能範囲の情報を生成する。サーバCPU14は、徐行停止区間を移動しないように、複数の自動車100それぞれの減速停止の進路若しくは移動可能範囲の情報を生成できる。
なお、ステップST206の場合のように同方向の複数の車線のすべてについて徐行停止区間が設定されていない場合、サーバCPU14は、徐行停止区間の手前で徐行停止区間が設定されていない他の車線へ変更するように、複数の自動車100それぞれの車線変更の進路若しくは移動可能範囲の情報を生成してもよい。
徐行停止区間と干渉しない場合には、サーバCPU14は、通常通りに他の自動車100との干渉を生じない自動車100の進路若しくは移動可能範囲の情報を生成する。
【0114】
図14は、自動車100およびその乗員が緊急情報を送信する例での、
図13の処理の説明図である。
図14(A)は、たとえば道路の模式的な説明図である。
図14(A)の道路には、片側二車線、合計四車線の道路の中央寄りの車線で停止した自動車100と、その後を移動する複数の自動車100とが示されている。また、停止した自動車100から降りた乗員の携帯端末200が示されている。
【0115】
図14の場合、サーバCPU14は、ステップST201までに管制内の自動車100をマッピングし、ステップST206またはステップST207において、車線で停止した自動車100からの緊急通報に基づいて、車線で停止した自動車100の手前に徐行停止区間を設定する。
また、サーバCPU14は、ステップST207において、停止した自動車100から降りた乗員の携帯端末200からの緊急通報に基づいて、携帯端末200の位置の手前に徐行停止区間を設定する。たとえばサーバCPU14は、停止した自動車100の位置からの携帯端末200の移動、停止した自動車100のドアの開閉の情報に基づいて、停止した自動車100から乗員が降りたことを判断し、徐行停止区間を設定してよい。
これらの徐行停止区間は、自動車100の移動再開や、乗員の移動により、更新されてよい。
サーバCPU14は、ステップST208において、徐行停止区間へ向かって移動している複数の自動車100について、徐行停止区間の手前において減速して停止する進路を生成する。
【0116】
図15は、
図14の状態からの、緊急事態を発生して緊急情報を送信した自動車100についての、進路または移動可能範囲の情報の生成処理のフローチャートである。
図2のサーバ装置6のサーバCPU14は、
図6の進路生成処理の一部として、
図15の処理を繰り返し実行する。
【0117】
ステップST211において、サーバCPU14は、緊急事態を発した自動車100の処理を開始する。
【0118】
ステップST212において、サーバCPU14は、すべての規制車線において後続の他の自動車100が減速して停止したか否かを判断する。すべての規制車線において後続の他の自動車100が減速して停止している場合、緊急事態を発して停車している自動車100へ向かって移動してくる他の自動車100は基本的にないと考えることができる。この場合、サーバCPU14は、処理をステップST212へ進める。すべての規制車線において後続の他の自動車100が減速して停止していない場合、サーバCPU14は、本処理を繰り返す。
【0119】
ステップST213において、サーバCPU14は、緊急事態を発した自動車100について、路肩へ移動して停止する進路または移動可能範囲を生成する。これにより、サーバCPU14は、徐行停止区間の手前において他の自動車100が停止している状態で、緊急事態を発生した自動車100について、たとえば道路の中央側の車線から他の車線を跨いで路肩へ移動して停止する進路若しくは移動可能範囲の情報を生成できる。
そして、緊急事態を発した自動車100は、道路の両端ではない中央の車線において停止している場合でも、後続の他の自動車100により追突されることなく安全に、道路の路肩へ移動して停止できる。
なお、緊急事態を発した自動車100が路肩へ移動して停止すると、サーバCPU14は、自動車100について設定した徐行停止区間を解除してよい。
また、緊急事態を発した携帯端末200が路肩へ移動して停止すると、サーバCPU14は、自動車100を降りた乗員について設定した徐行停止区間を解除してよい。
【0120】
図16は、
図14の状態からの、徐行停止区間の手前で減速停止した自動車100についての、進路または移動可能範囲の情報の生成処理のフローチャートである。
図2のサーバ装置6のサーバCPU14は、
図6の進路生成処理の一部として、
図16の処理を繰り返し実行する。
【0121】
ステップST221において、サーバCPU14は、徐行停止区間の手前で減速停止した後続の他の自動車100についての処理を開始する。
【0122】
ステップST222において、サーバCPU14は、緊急事態を発した自動車100が、路肩に停止したか否かを判断する。緊急事態を発した自動車100がたとえば中央の車線にいて路肩に停止していない場合、サーバCPU14は、本処理を繰り返す。緊急事態を発した自動車100が路肩に停止している場合、サーバCPU14は、処理をステップST223へ進める。
【0123】
ステップST223において、サーバCPU14は、緊急事態を発した乗員の携帯端末200が、路肩に移動して停止したか否かを判断する。緊急事態を発した携帯端末200がたとえば中央の車線にいて路肩で停止していない場合、サーバCPU14は、処理をステップST222へ戻す。緊急事態を発した乗員の携帯端末200が路肩で停止している場合、サーバCPU14は、処理をステップST224へ進める。
【0124】
ステップST224において、サーバCPU14は、徐行停止区間の手前で減速停止した後続の他の自動車100について、移動を再開する進路または移動可能範囲を生成する。これにより、サーバCPU14は、緊急事態を発生した自動車100についての路肩への移動が完了した後に、および、自動車100から降りている乗員が路肩への移動を終えた後に、徐行停止区間の手前で停止している他の自動車100についての移動を再開する進路若しくは移動可能範囲の情報を生成できる。この際、サーバCPU14は、複数の車線において停止している複数の自動車100について、たとえば道路の中央側である右から順番に移動を再開するように、複数の自動車100についての進路または移動可能範囲を生成してよい。
そして、徐行停止区間の手前で減速停止している後続の他の自動車100は、緊急事態を発した自動車100および乗員が路肩に避難した状態で、移動を再開できる。
【0125】
以上のように、本実施形態では、自動車100は、状況に応じた安全性を得ながら移動することが可能となる。
特に、本実施形態では、自動車100が移動可能な道路の所定区域または所定区間にいる自動車100や乗員から発せられた緊急情報が含まれる場合、サーバCPU14は、自動車100をマッピングするとともに、緊急情報が発せられた位置の手前といった周囲に徐行停止区間を設定する。また、サーバCPU14は、徐行停止区間を移動しないように、後続の複数の自動車100それぞれの減速停止または車線変更の進路若しくは移動可能範囲の情報を生成する。したがって、自動車100は、道路において必要がある場合には徐行停止して、安全性を得ながら移動することができる。
そして、本実施形態によれば、たとえば道路において自動車100が故障したり事故に合ったりしたとしても、後続の他の自動車100についての二次的な事故を起こし難くなる。
【0126】
本実施形態による一連の事故回避制御によれば、リスクの事前低減により、後続の他の自動車100についての多重事故の可能性を格段に削減でき、最終的には事故ゼロを実現できるようになる可能性がある。自動運転や運転支援のレベルを向上できる。
たとえば吹雪や雨天の夜間のように視界不良となっている走行環境下であっても、後続の他の自動車100は、たとえば時速100kmからの自動運転による減速停止をして、緊急事態にある自動車100などとの接触などを安全に回避できる可能性が生じ得る。後続の他の自動車100は、徐行停止区間の設定状況に応じて、たとえば左車線で事故に合っている自動車100の後で停止するように減速したり、右側の車線へ変更して徐行して通過したり、できる。また、右車線において事故に合っている自動車100から乗員が下りて路肩へ向かって移動しようとする場合においても、徐行停止区間の設定状況に応じて事故に合っている自動車100の後で停止するように減速できる。
また、サーバCPU14により生成される情報は、後続の他の自動車100の移動制御に直接的に用いられなくても、後続の他の自動車100の表示デバイスや、後続の他の自動車100の乗員の携帯端末に、表示されてよい。携帯端末は、たとえば携帯端末のアプリケーションプログラムによる画面に、サーバCPU14により生成される情報を表示してよい。
【0127】
[第四具体例、道路で作業する人の安全性を確保する例]
自動車100が移動する道路には、たとえば警察官、道路の保守点検の作業員、事故処理の作業員などがいることがある。この場合、自動車100は、道路で作業する人をよけて移動する必要がある。
【0128】
図17は、第四具体例での、路上で作業する人の安全を確保するために徐行停止区間を設定する場合での、自動車の進路または移動可能範囲の情報を生成する処理のフローチャートである。
図2のサーバ装置6のサーバCPU14は、
図6の進路生成処理の一部として、
図17の処理を繰り返し実行する。
【0129】
ステップST201において、サーバCPU14は、管轄内の自動車100についてのマッピングが完了したか否かを判断する。管轄内の自動車100についてのマッピングが完了していない場合、サーバCPU14は、本処理を繰り返す。管轄内の自動車100についてのマッピングが完了すると場合、サーバCPU14は、処理をステップST202へ進める。
【0130】
ステップST202において、サーバCPU14は、管轄外のマッピング処理を開始する。
【0131】
ステップST231において、サーバCPU14は、収集されたフィールド情報に、路上で作業する人の携帯端末から発せられた緊急情報があるか否かを判断する。
路上で作業する人が所持する端末装置2は、作業中において緊急情報を無線基地局4へ送信する。緊急情報は、無線基地局4を含む専用ネットワーク5を通じて、サーバ装置6へ送信される。この場合、サーバCPU14は、収集されたフィールド情報に路上で作業する人の情報があると判断し、処理をステップST232へ進める。収集されたフィールド情報に路上で作業する人の情報がない場合、サーバCPU14は、ステップST232によるマッピング処理を飛ばして処理をステップST233へ進める。
【0132】
ステップST232において、サーバCPU14は、緊急情報を送信した携帯端末の位置の周囲に、徐行停止区間をマッピングする。これにより、サーバCPU14は、緊急情報が発せられた位置の手前といった周囲に徐行停止区間を設定できる。
サーバCPU14は、携帯端末の位置がある車線に、徐行停止区間をマッピングしてよい。または、サーバCPU14は、携帯端末の位置がある車線と、その両側の車線とに、徐行停止区間をマッピングしてよい。
また、サーバCPU14は、車線についての自動車100がいる位置の奥についても、徐行停止区間をマッピングしてもよい。
その後、サーバCPU14は、処理をステップST233へ進める。
【0133】
ステップST233において、サーバCPU14は、複数の自動車100とともに徐行停止区間がマッピングされたマッピングデータ、たとえば上述した現時点図や予測図、または
図11(B)や
図11(C)のようなマッピングデータに基づいて、複数の自動車100の移動可能範囲と必要な進路とを生成する。
この際、サーバCPU14は、徐行停止区間と干渉するか否かの可能性を判断し、徐行停止区間と干渉する場合には、徐行停止区間の手前において停止するように、停止していない自動車100について減速停止する進路若しくは移動可能範囲の情報を生成する。同方向の複数の車線のすべてについて徐行停止区間が設定されていない場合、サーバCPU14は、徐行停止区間の手前で徐行停止区間が設定されていない他の車線へ変更するように、複数の自動車100それぞれの車線変更の進路若しくは移動可能範囲の情報を生成してもよい。
徐行停止区間と干渉しない場合には、サーバCPU14は、通常通りに他の自動車100との干渉を生じない自動車100の進路若しくは移動可能範囲の情報を生成する。
【0134】
以上のように、本実施形態では、自動車100は、状況に応じた安全性を得ながら移動することが可能となる。
特に、本実施形態では、自動車100が移動可能な道路の所定区域または所定区間にいる道路作業員の携帯端末から発せられた緊急情報が含まれる場合、サーバCPU14は、自動車100をマッピングするとともに、緊急情報が発せられた位置の手前といった周囲に徐行停止区間を設定する。また、サーバCPU14は、徐行停止区間を移動しないように、後続の複数の自動車100それぞれの減速停止または車線変更の進路若しくは移動可能範囲の情報を生成する。したがって、自動車100は、道路において必要がある場合には徐行停止して、安全性を得ながら移動することができる。また、道路で作業する人についての安全も確保できる。
【0135】
[第二実施形態]
上述した実施形態は、移動情報提供システム1による複数の自動車100の管制制御の例である。そして、各自動車100は、移動情報提供システム1による情報を必要に応じて用いて、自車の移動を制御している。
移動情報提供システム1の自動車100の制御システム20は、自車情報で走行を制御する場合、自律センサにより検出される情報を、無線基地局4から受信した情報より、優先して使用する。
しかしながら、各自律センサは、走行環境によっては、十分な精度での検出ができないことがある。このため、自動車100の制御システム20は、自律センサの種類を増やして、それらの総合的な検出に基づいて走行を制御することが考えられる。しかしながら、このように高い精度で検出可能な自律センサを無制限に増やすことは、自動車100の製造にあたって好ましくない。しかも、自律センサの種類を増やしたとしても、あらゆる走行環境において十分な精度で検出が可能となるとも限らない。
以下、このような状況に対応する一例について説明する。
【0136】
図18は、
図9のステップST67についての詳細な処理のフローチャートである。
自動車100の運転制御ECUは、
図9のステップST67において、
図18の処理を実行する。
【0137】
ステップST81において、運転制御ECUは、自律センサの検出精度が十分であるか否かを判断する。自律センサには、たとえば自動車100の前方などを撮像するステレオカメラがある。ステレオカメラは、逆光などの環境下では、周辺の移動体や路面の車線などを十分に撮像できないことがある。このような撮像画像でない場合、運転制御ECUは、自律センサの検出精度が十分であると判断し、処理をステップST82へ進める。このような撮像画像である場合、運転制御ECUは、自律センサの検出精度が十分でないと判断し、処理をステップST83へ進める。
【0138】
ステップST82において、運転制御ECUは、自律センサの検出値を、無線基地局4から受信した情報より優先的に使用して、自車の走行を制御するための進路を決定する。
【0139】
ステップST83において、運転制御ECUは、無線基地局4から受信した情報を、自律センサの検出値より優先的に使用して、自車の走行を制御するための進路を決定する。運転制御ECUは、無線基地局4から受信した情報から、自律センサの検出情報と同形式の同物理量の疑似センサの情報を生成し、これを自車の走行を制御するための進路の決定に使用してよい。
【0140】
このように本実施形態では、自律センサの検出精度に応じて、自律センサの検出値と、無線基地局4から受信した情報との優先度を切り替える。本実施形態では、たとえば、一時的な視界ロストに対応できる。
たとえば逆光でステレオカメラによる画像認識がロスト、または閾値を下回った場合には、ワールドマップによる管制制御を、ステレオカメラの情報より一時的に優先して使用する。ワールドマップの情報は、微小時間における俯瞰的な情報であるため、先行車が通過した進路を抽出できる。また、他の自動車100の自律センサの情報も反映されている。
また、運転制御ECUは、自動ブレーキの制御においても、自律センサの認識率が80%以下となるように使用に適さない場合、自律センサの認識結果とワールドマップの情報とを比較し、これらの間に閾値以上の差異がある場合にはワールドマップの情報を自律センサの認識結果より優先してよい。
また、運転制御ECUは、一部の自律センサの検出精度が低い場合、その替わりにワールドマップの情報に基づく疑似センサの情報を生成し、これと他の自律センサの情報とを組み合わせて、自車の走行を制御するための進路の決定に使用してよい。
【0141】
[第三実施形態]
上述した実施形態の移動情報提供システム1の自動車100の制御システム20は、自車情報で走行を制御する場合、自律センサにより検出される情報を、無線基地局4から受信した情報より、優先して使用する。
しかしながら、各自律センサは、十分な情報を検出できない状況があり得る。たとえば、雪原、吹雪、視界ロストとなる走行環境下では、ステレオカメラなどの自律センサは、十分な情報を検出できない。自動車100は、道がなく、どこが走れるのかも不明となる。また、突然対向車が出現することもある。自律センサは、まともに使える状況になく、撮像できる範囲の情報も少なくなる。
以下、このような状況に対応する一例について説明する。
【0142】
自動車100の制御システム20は、受信しているワールドマップや天候情報に基づいて、自律センサの検出が期待できない走行区間を判断する。
そのような走行区間を走行する場合、自動車100の制御システム20は、たとえば立ち木などから自車が走れる車幅を推定し、走行可能と推定した方向へ向かう進路を決定する。走行可能な方向の推定は、自動車100の端末装置2からサーバ装置6や無線基地局4へ画像を送信して、基地局側において処理してもよい。
自律センサに基づいて視界が完全にロストしていると判断できる場合、自動車100の制御システム20は、自車情報で走行を制御する場合でも、自律センサの検出情報より、受信したワールドマップから得られる疑似センサの情報を優先する。ただし、実際の衝突の検出などの衝突安全にかかわる情報については、自律センサの検出情報を優先する。吹雪区域の走行は、基本的に最徐行である。自動車100の制御システム20は、ワールドマップから得られる疑似センサの情報を用いて、進路を決定する。このような処理において、自動車100の制御システム20は、さらに、当該区域を走行している自動車100の台数、各自動車100の現在地、当該区域への侵入開始タイミングを把握し、それらの走行軌道をシミュレーションし、それに基づいて進路を決定してよい。
【0143】
また、サーバ装置6または無線基地局4は、ワールドマップに基づいて対向車同士が接近していることを検出した場合、その警告を双方の自動車100へ通知する。これにより、衝突を回避し得る。
ここで、対向車がシステムの管理外であり、吹雪の区間の外で認識されている場合には、その近くを車両が通過する予想の時刻と、現在までの他車両の走行軌跡から、当該車が通過すると予想される通過可能区域をシミュレーションし、当該区域の干渉を避けるように自車両に通知してよい。干渉が避けられない場合は、少なくともシミュレーションでは通過する微小時間で干渉しないように、演算する。
対向車、バイクがシステムの管理外で、吹雪の区間の内で初めて認識された場合は、特定区間を走っている車両に、緊急通知し、ワールドマップに上げる。演算に早く動く動体の不確定要素が増えた状態でシミュレーションを行い、安全の必要性にかかる見積もりを上げる(安全方向に傾ける)。もし、子供などの人物の場合は、その直近の車両に通知し、ワールドマップに上げる。
【0144】
[第四実施形態]
上述した実施形態の移動情報提供システム1において、自動車100の制御システム20は、基本的に自律センサの検出情報に基づいて、自車の走行を制御する。この場合、ユーザが歩行者などを認識していない状態においてブレーキペダルとの踏み間違えでアクセルペダルを踏んでも、歩行者などへ向かって発進しないようにすることができる。
しかしながら、自動車100に設けられる自律センサは、常に正常に動作するとは限らない。経年劣化により自律センサは、正常な検出ができなくなることがある。また、夜間、逆光、対向車のライトなどの走行環境のために、自律センサの検出結果が正しくない場合、自動車100の制御システム20は、自律センサの検出情報に基づいて自車の走行を適切に制御することができなくなる可能性がある。
以下、このような状況に対応する一例について説明する。
【0145】
自動車100の制御システム20は、自律センサの検出情報の適否を判断する。たとえばステレオカメラの撮像画像が全体的に真っ暗であったり、全体的に白飛びしたりしている場合、自動車100の制御システム20は、自律センサの検出情報が不適であると判断する。この場合、自動車100の制御システム20は、ワールドマップの情報に基づいて、進行方向にいる他の移動体を確認する。ワールドマップの情報に基づいて進行方向に他の移動体がいることが確認されると、自動車100の制御システム20は、自律センサの検出情報によりそれを判断できない場合でも、進行方向に他の移動体が存在すると判断し、それに応じた走行制御を実行する。自動車100の制御システム20は、ワールドマップから得られる疑似センサの検出情報を用いて、発進しない制動制御を実行する。
なお、自動車100の制御システム20は、ワールドマップに歩行者など認識されていて、他の車が見えている状態において、自車の自律センサだけが認識できていないという状況を判断して、上述した疑似センサの情報を使用するようにしてもよい。この場合、自動車100の制御システム20は、当該判断が任意時間にわたって発生する場合、または所定回数以上で発生する場合において、疑似センサの信頼度を高としてよい。自動車100の制御システム20は、高い信頼度の疑似センサの検出情報を用いて、自律センサで認識されていない歩行者とその移動方向と干渉しない進路や、時間差を選択して、それらの選択に基づく走行制御を実行してよい。
【0146】
[第五実施形態]
上述した実施形態の移動情報提供システム1において、自動車100の制御システム20は、自動運転とユーザによる手動運転についての運転支援との間で、動作モードを切り替える。
自動車100のユーザは、基本的に自動運転での走行についても責任を負う。
たとえば走行中の自動車100の動作モードが自動運転から運転支援へ切り替わる場合、ユーザは、その切り替わりの前後の責任を負うことになる。自動運転では、運転支援へ切り替わりタイミングを含めて、ユーザに賠償責任が発生しないように走行を制御する必要がある。
特に、走行中の自動車100の動作モードが自動運転から運転支援へ切り替わった直後にユーザが強いブレーキ操作をする必要が生じる場合、ユーザにとっては酷な状況となる。実際にそのような状況となった場合に、フルブレーキを踏めるユーザは少ないと予想される。
以下、このような状況に対応する一例について説明する。
【0147】
自動車100の制御システム20は、自動車100の走行中に、サーバ装置6から端末装置2が受信したワールドマップの信頼性を繰り返し判断する。受信したワールドマップの信頼性が低い場合、自動車100の制御システム20は、自動車100の動作モードを手動運転から自動運転への切替えることを禁止する。
自動車100の制御システム20は、自動運転中に、ワールドマップから得られる疑似センサの検出情報と、自律センサの検出情報とを繰り返し比較する。そして、これらの情報が閾値以上で異なる場合、自動車100の制御システム20は、ワールドマップから得られる疑似センサの検出情報を使用しない。自動車100の制御システム20は、基本的に自律センサの検出情報を使用して、自動運転中の自動車100の走行を制御する。
自動車100の制御システム20は、何らかの外乱などがある場合、自動運転を終了し、自動車100の動作モードを自動運転から手動運転へ切替える制御を実行する。この移行制御において、自動車100の制御システム20は、まず、先行車との車間を広げるように、自車の走行を制御する。先行車と自車との車間は、速度に応じたものとすればよい。所定の車間が得られていることが自律センサにより検出されると、自動車100の制御システム20は、ユーザへ、自動運転から手動運転へ切り替えることを通知する。自動車100の制御システム20は、この検出について、ワールドマップの情報を用いない。数秒の後に、自動車100の制御システム20は、実際の動作モードを、自動運転から手動運転へ切り替える。
このような先行車との車間を確保することにより、走行中の自動車100の動作モードが自動運転から運転支援へ切り替わった直後にユーザが強いブレーキ操作をする必要が生じ難くなる。ユーザは、余裕を持った判断により、自動運転から手動運転へ切り替わることを理解し、手動運転のための操作を開始することができる。手動運転への切り替え直後にユーザが強いブレーキ操作をする必要が生じるような緊急な状況は発生し難くなる。
【0148】
[第六実施形態]
上述した各実施形態のサーバ装置6は、担当する所定区域または所定区間を移動している複数の自動車100から情報を収集し、マッピングし、複数の自動車100においてその移動判断または移動制御に用いることができる情報を生成し、複数の自動車100へ送信している。各自動車100は、サーバ装置6から受信した情報を用いて、その移動判断または移動制御を実行している。
この他にもたとえば、サーバ装置6による処理の一部またはすべては、複数の自動車100のそれぞれにおいて実行されてもよい。たとえば、各自動車100は、
図7のように他の自動車100からフィールド情報を収集し、現時点図や予測図へのマッピングを実行し、自車においてその移動判断または移動制御に用いることができる移動可能範囲および進路の情報を生成し、自車の自動運転などの移動判断または移動制御に使用してもよい。この場合、サーバ装置6や複数の無線基地局4は、複数の自動車100の間でのデータ送受のための機能を発揮することになる。無線基地局4は、複数の自動車100が移動する所定区域または所定区間に設けられ、担当する所定区域または所定区間を移動している自動車100にて使用される端末装置2と通信する。
【0149】
なお、この場合において、サーバ装置6は、フィールド情報に基づいて一次加工情報を生成して送信する。
自動車の端末装置2は、サーバ装置6により生成される情報を、無線基地局4から受信する。
自動車の制御システム20は、端末装置2が受信したフィールド情報またはその一次加工情報に基づいて、二次加工情報としての走行制御データを生成する。
ここで、一次加工情報は、サーバ装置6においてフィールド情報に基づいて生成される情報をいう。二次加工情報は、自動車の制御システム20において、フィールド情報や一次加工情報に基づいて生成される情報をいう。
【0150】
図19は、本実施形態のサーバ装置6による、複数の自動車100の移動に関わるフィールド情報の収集処理のフローチャートである。
サーバ装置6のサーバCPU14は、サーバ装置6のサーバ通信デバイス11が新たなフィールド情報を受信するたびに、
図19の収集処理を繰り返し実行する。
【0151】
ステップST111において、サーバCPU14は、フィールド情報を受信しているか否かを判断する。フィールド情報には、たとえば、複数の自動車100のそれぞれの端末装置2が送信した自車情報、道路に設置されるカメラなどの検出装置の検出情報、がある。高度交通システムの不図示のサーバ装置6は、管理する地域の交通情報などを、サーバ装置6へ送信してよい。サーバ通信デバイス11は、これらの情報を受信する。サーバ通信デバイス11がフィールド情報を受信していない場合、サーバCPU14は、ステップST111の処理を繰り返す。サーバ通信デバイス11がフィールド情報を受信すると、サーバCPU14は、処理をステップST112へ進める。
【0152】
ステップST112において、サーバCPU14は、受信したフィールド情報を、その情報元ごとに分類して、サーバメモリ13に蓄積する。これにより、サーバ装置6のサーバメモリ13は、複数の自動車100の移動に関わるフィールド情報として、複数の自動車100それぞれから受信した、自動車100およびユーザについての情報若しくは周辺情報、または各自動車100が移動している地域の交通情報を蓄積して記録する。なお、サーバCPU14は、それぞれのフィールド情報を受信した時刻を、受信したフィールド情報に対応付けて記録してよい。
【0153】
ステップST113において、サーバCPU14は、受信したフィールド情報に基づいて、サーバ装置6が現時点で通知する必要がある複数の自動車100についての移動体リストを生成する。移動体リストには、サーバ装置6が通知する必要がない他の自動車100といった他の移動体が、サーバ装置6が通知する必要がある複数の自動車100と区別できるように含まれてよい。
【0154】
図20は、本実施形態のサーバ装置による、収集したフィールド情報を送信する処理のフローチャートである。
サーバ装置6のサーバCPU14は、
図20の送信処理を繰り返し実行する。
【0155】
ステップST141において、サーバCPU14は、サーバメモリ13に記録されている複数のフィールド情報から、各自動車100の走行に関連する情報を抽出する。サーバCPU14は、ある自動車100については、その自動車の走行に関連する情報とともに、その前を走行する先行車の走行に関連する情報を、抽出してよい。
【0156】
ステップST142において、サーバCPU14は、抽出したフィールド情報を、サーバ通信デバイス11から、それに対応する自動車100の通信デバイス71へ送信する。フィールド情報は、サーバ装置6から専用ネットワーク5を通じて無線基地局4へ送信された後、無線基地局4から自動車100の端末装置2へ送信される。複数の無線基地局4は、フィールド情報を、複数の自動車100に設けられる複数の端末装置2へ送信する。
【0157】
ステップST143において、サーバCPU14は、移動体リストの複数の自動車100について処理を終了したか否かを判断する。移動体リストのすべての自動車100についての処理が終了していない場合、サーバCPU14は、処理をステップST141へ戻す。サーバCPU14は、次の未処理の自動車100を選択して、ステップST141からステップST143までの処理を繰り返す。移動体リストのすべての自動車100についての処理が終了すると、サーバCPU14は、
図6の進路生成処理を終了する。
【0158】
これにより、サーバ装置6は、複数の自動車100へ、それぞれの制御または判断に用いるフィールド情報を送信する。サーバ装置6は、フィールド情報とともに、移動体リストや、たとえば複数の自動車100に対してそれぞれの進行方向および進行速度を示す一次加工情報を送信してよい。一次加工情報には、さらに、検証確認のための情報として、現時点位置、現時点時刻、現時点時刻より微小期間後の予測時刻、などか含まれてよい。また、サーバ装置6は、
図19および
図20の処理を繰り返すことにより、微小区間の進路に関するフィールド情報を、複数の自動車100のそれぞれへ繰り返し送信し続けることになる。
なお、サーバ装置6は、フィールド情報とともに、またはフィールド情報の替わりに、複数の自動車100から収集するフィールド情報を、複数の自動車100へ送信してよい。
【0159】
そして、サーバ装置6からフィールド情報を受信した各自動車100は、
図6の処理を実行して、自車の進路の情報を生成する。ただし、この場合、各自動車100は、サーバ装置6から移動体リストまたはそれに基づく情報を受信しているため、ステップST24の処理を実行しなくてもよい。
また、各自動車100は、自車で生成した自車の進路の情報を用いて
図9の処理を実行して、自車の走行を制御する。
【0160】
以上のように、本実施形態では、サーバ装置6は、複数の移動体としての自動車100の移動に関わるフィールド情報を収集して各自動車100へ送信する。そして、各自動車100は、複数の自動車100に共通の情報に基づいて、それぞれの移動を判断し、制御できる。各自動車100が複数の自動車100に共通する情報に基づいて処理を実行することにより、複数の自動車100は、互いにと衝突することがないように安全に進行することができる移動体ごとの微小区間の進路または安全走行可能範囲を生成し、生成した微小区間の進路または安全走行可能範囲を利用することができる。各自動車100は、他の自動車100の予想外の移動の影響を受け難くなる。複数の自動車100の走行についての、走行中の相互安全性が高まる。
【0161】
本実施形態は、第一実施形態でのサーバ装置6の処理を、自動車100において実施する例である。上述した第二実施形態から第五実施形態におけるサーバ装置6の処理は、本実施形態と同様に、自動車100の処理とすることができる。この場合、上述した各実施形態におけるサーバ装置6の処理は、自動車100の制御システム20の処理として読み替えればよい。この場合、サーバ装置6の処理は、複数の自動車100の制御システム20により、自動車100ごとに分散して個別に処理されることになる。各自動車100は、基本的に自車についての処理を実行することになる。なお、各自動車100は、たとえばそれぞれの処理の余力に応じて、他の自動車100についての処理を代理実行して結果を送信してもよい。
このような場合において、自動車100の制御システム20は、各実施形態でのサーバ装置6の処理のすべを実行しても、その一部を実行してもよい。
たとえば、サーバ装置6は、複数の自動車100からフィールド情報を中継して自動車100へ送信する。この場合、この場合、各自動車100の制御システム20は、複数の自動車100からフィールド情報を収集するところからの、各実施形態でのサーバ装置6のすべての処理を実行することになる。
たとえば、サーバ装置6は、複数の自動車100からフィールド情報を受信して収集し、それを自動車100へ送信する。この場合、各自動車100の制御システム20は、複数の自動車100からフィールド情報を収集した後の、各実施形態でのサーバ装置6の処理を実行することになる。
たとえば、サーバ装置6は、複数の自動車100からフィールド情報を受信して収集し、現在地図や予想図といったマッピングデータへのマッピングを実行する。この場合、各自動車100の制御システム20は、各実施形態でのマッピングデータに基づく処理以降の処理を実行することになる。
そして、いずれの場合でも、上述した実施形態およびその変形例の移動情報提供システム1は、移動する複数の自動車100で利用可能な複数の端末装置2とともに、移動情報提供システム1が担当する所定区域または所定区間を移動している複数の自動車100の移動に関わるフィールド情報を収集または中継するサーバ装置6、を有する。サーバ装置6は、複数の通信装置としての無線基地局4を通じて、複数の移動体としての複数の自動車100それぞれで使用可能な複数の端末装置2と通信可能であり、上述した各実施形態にあるように集約して設けられても、複数の無線基地局6などと対応させて複数に分散して設けられてもよい。そして、複数の自動車100およびサーバ装置6は、いずれか一方においてまたは双方で分けて、収集または中継される複数の自動車100の移動に関わるフィールド情報をマッピングデータにマッピングし、マッピングデータに基づいて複数の自動車100のそれぞれについての移動を判断または制御するための情報を生成してよい。そして、複数の自動車100のそれぞれが、それぞれについて生成された情報にしたがって移動することにより、複数の自動車100は互いに衝突することなく安全に移動することが可能となる。
【0162】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0163】
たとえば、上述した実施形態では、移動情報提供システム1におけるサーバ装置6と各自動車100の制御システム20とが協働して、それぞれの実施形態の一連の処理を実行している。
この他にもたとえば、上述した実施形態の各種の処理は、サーバ装置6によりすべて実行されてよい。この場合、各自動車100の制御システム20などは、端末装置2および無線基地局4を通じて処理に必要とされる情報をサーバ装置6へ送信し、サーバ装置6による処理結果を、無線基地局4を通じて端末装置2により受信すればよい。また、自動車100の制御システム20は、受信した情報に基づいて、自動車100の走行を判断して制御すればよい。
さらに他にもたとえば、サーバ装置6は、上述した実施形態の各種の処理のたとえば収集といった一部のみを実行し、残りの処理を各自動車100の制御システム20において実行してもよい。この場合、サーバ装置6は、フィールド情報を収集して、複数の自動車100の端末装置2へ転送するだけとなる。各自動車100の制御システム20は、フィールド情報に基づいてマッピングを実行し、自車の進路若しくは移動可能範囲の情報を生成し、生成した情報に基づいて移動を制御することになる。
さらに他にもたとえば、サーバ装置6の替わりに、各自動車100の制御システム20が、上述した実施形態の各種の処理のすべてを実行してもよい。この場合、サーバ装置6の処理を、各自動車100の処理として読み替えればよい。そして、サーバ装置6は、複数の自動車100から収集した情報を中継するように、各自動車100へ送信すればよい。この場合、サーバ装置6は、各自動車100に対して一律にフィールド情報を送信するのではなく、たとえば、それぞれの自動車100において必要となる周辺範囲の他の自動車100のフィールド情報を送信すればよい。たとえば、サーバ装置6は、それぞれが走行している道路ごとに分類した所定区間または所定範囲の他の自動車100のフィールド情報を、それぞれの自動車100へ送信してよい。
さらに他にもたとえば、サーバ装置6は、サーバ装置6は、複数の分散サーバ装置で構成されて、複数の無線基地局4に分散するように設けられてよい。複数の分散サーバ装置は、情報の加工の段階などに応じて分散して処理するものでも、複数の無線基地局4のエリアに対応するように地域ごとに分散して処理するものでもよい。そして、複数の無線基地局4のそれぞれに対応する複数の分散サーバ装置は、無線基地局4と一体的に設けられてよい。この場合、分散サーバ装置は、無線基地局4によるデータのルーティングを管理し、たとえば自動車100から受信したデータを直ちに加工して自動車100へ送信してもよい。このような分散サーバ装置の機能を有する無線基地局4は、情報の伝送遅延時間を最小化することが可能である。分散サーバ装置の機能を有する無線基地局4は、たとえば自動車100の制御システム20の処理の一部を代替えして実行して、自動車100の制御システム20の構成要素の一部として機能することができる。そして、複数の無線基地局4は、たとえば、サーバ装置6を経由することなく互いに通信した協働的な処理により、上述したサーバ装置6の処理を分散して実現する。この場合において、道路に対して固定的に設置される各無線基地局4は、たとえば、それぞれの通信エリアに収容される複数の自動車100の情報を、それぞれの通信エリア内での位置などに基づいて複数の道路に分類し、その道路の分類に基づいてグループ化し、グループ化した情報を複数の他の無線基地局4へ中継転送してよい。複数の無線基地局4とは別のサーバ装置6は、不要としてもよい。また、複数の無線基地局4とサーバ装置6との協働的な処理により、上述したサーバ装置6の処理を分散して実現してもよい。
さらに他にもたとえば、サーバ装置6とともに用いられる無線基地局4は、携帯端末と通信可能な汎用的な無線基地局であっても、自動車100などのみに対して専用的に設けられた無線基地局であってもよい。自動車道には、ADAS通信用の基地局などが設けられている。ADAS通信用の基地局は、上述した実施形態の無線基地局4として用いることができる。また、自動車100は、基地局やサーバ装置6と直接に通信するのではなく、たとえばV2Vなどにより他の自動車100を通じて基地局やサーバ装置6と通信してもよい。
【0164】
上述した実施形態では、移動情報提供システム1は、1つのサーバ装置6を有する。この他にもたとえば、移動情報提供システム1は、複数のサーバ装置6を備えてよい。複数のサーバ装置6は、たとえば互いに異なる区域が割り当てられても、たとえば広域と狭域とのように重なる区域が割り当てられてもよい。また、複数のサーバ装置6は、複数のキャリアによる移動情報提供システム1に分散して設けられてもよい。複数のサーバ装置6は、それぞれの区域について処理するとともに、それぞれの情報を互いに送受して協働して動作してよい。サーバ装置6は、他のサーバ装置6が故障などした場合において、該他のサーバ装置6の区域についても併せて処理してよい。これらの場合、複数のサーバ装置6は、上述した各実施形態で説明したサーバ装置6の処理を実現できる。また、移動情報提供システム1は、通常時は使用されない代替用のサーバ装置6などにより冗長化されてよい。
【0165】
上述した第一実施形態は、先に出願した特願2019-240029号の第一実施形態を基本として本発明を適用した例である。特願2019-240029号におけるサーバ装置6の処理を自動車100で実行する例は、特願2019-240030号に記載されている。また、特願2019-240031号の明細書には、移動情報提供システム1の他の例が記載されている。これらの出願の内容は、本願に対して参照して組み込まれる。
たとえば、本願で例示する第一実施形態の移動情報提供システム1の構成や処理は、特願2019-240029号の
図12から
図19に示すものへ変更してよい。この場合でも、その変形された移動情報提供システム1の構成や処理に対して、上述した各実施形態の内容を適用することにより、本願発明の効果を得ることができる。
【0166】
なお、移動情報提供システム1における時間は、自動車100がサーバ装置6に送信する時間、サーバ装置6が受信する時間、サーバ装置6が自動車100に処理結果を送信する時間、自動車100が処理結果を受信する計測時間、自動車100が通過する予定の予測時間、自動車100が実際に予測した区間を走行する実走行時間である。クローズドシステムにおいては、自動車100とサーバ装置6間の時差を短縮することができる。
【符号の説明】
【0167】
1…移動情報提供システム、2…端末装置、3…基地局側のシステム、4…無線基地局、5…専用ネットワーク、6…サーバ装置、11…サーバ通信デバイス、12…サーバGNSS受信機、13…サーバメモリ、14…サーバCPU、15…サーババス、20…制御システム、21…駆動ECU、22…操舵ECU、23…制動ECU、24…走行制御ECU、25…運転操作ECU、26…検出ECU、27…外通信ECU、28…UI操作ECU、30…車ネットワーク、31…バスケーブル、32…セントラルゲートウェイ、41…表示デバイス、42…操作デバイス、51…ハンドル、52…ブレーキペダル、53…アクセルペダル、54…シフトレバー、61…速度センサ、62…加速度センサ、63…ステレオカメラ、64…車内カメラ、65…マイクロホン、66…GNSS受信機、71…通信デバイス、72…通信メモリ、81…制御メモリ、100…自動車(移動体)、110…GNSS衛星