(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】伝熱管の成形方法
(51)【国際特許分類】
F28F 1/00 20060101AFI20240920BHJP
B21D 7/025 20060101ALI20240920BHJP
B21D 53/06 20060101ALI20240920BHJP
F28F 9/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F28F1/00 B
B21D7/025 B
B21D53/06 Z
F28F9/00 321
(21)【出願番号】P 2020152689
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】紙谷 洋一
(72)【発明者】
【氏名】岡藤 孝史
(72)【発明者】
【氏名】石井 建
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-030256(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0000261(US,A1)
【文献】特開2004-279029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F1/00,9/00
F24F1/0059,1/032,1/14
B60H1/32
B21D7/025,53/06,53/08
F16L9/00-9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配列された複数の管部材に対して、前記複数の管部材の配列方向の一方側から、第1曲げ型を当接させる工程と、
前記複数の管部材に前記配列方向の他方側から荷重を印加することにより、前記複数の管部材に曲げ加工を実施する工程と、
を備え、
前記第1曲げ型は、前記複数の管部材に対する当接面上に、前記管部材の延在方向に沿って曲率が一定で変化するクロソイド部を含み、
当接面が一定の曲率を有する第2曲げ型を用いて前記曲げ加工を実施した場合に前記複数の管部材に生じる面圧分布に基づいて、前記複数の管部材に対する前記第1曲げ型を当接する位置を設定する、伝熱管の成形方法。
【請求項2】
前記面圧分布において面圧が最大になる位置が、前記クロソイド部の前記延在方向に沿った中点に一致するように前記第1曲げ型を当接する位置を設定する、請求項
1に記載の伝熱管の成形方法。
【請求項3】
予め設定された制約条件を満たすように、前記クロソイド部の前記延在方向に沿った長さ、及び、前記クロソイド部に隣接する円弧部の曲率の少なくとも一方を調整する、請求項1又は2に記載の伝熱管の成形方法。
【請求項4】
前記制約条件は、前記曲げ加工で前記管部材に印加される荷重が予め設定された閾値以下になることを含む、請求項3に記載の伝熱管の成形方法。
【請求項5】
前記制約条件は、成形後の伝熱管が熱交換器のケーシングと干渉しないことを含む、請求項3又は4に記載の伝熱管の成形方法。
【請求項6】
前記クロソイド部は、
前記第2曲げ型を用いて前記曲げ加工を実施した場合に、前記複数の管部材に生じる面圧分布に含まれるピークが生じる位置に設けられる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の伝熱管の成形方法。
【請求項7】
前記伝熱管は、
直線状に延在する直線部と、
前記直線部に隣接する湾曲部と、
を備え、
前記湾曲部は、延在方向に沿って曲率が一定の割合で変化するクロソイド部を含む、請求項
1から6
のいずれか一項に記載の
伝熱管の成形方法。
【請求項8】
前記湾曲部は、一定の曲率を有する円弧部を含み、
前記クロソイド部は、前記直線部と前記円弧部との間に設けられる、請求項7に記載の
伝熱管の成形方法。
【請求項9】
前記湾曲部は、前記円弧部の曲率中心に対して非対称形状を有する、請求項8に記載の
伝熱管の成形方法。
【請求項10】
前記伝熱管は、前記円弧部に隣接す
る直線部の延在方向に平行であり前記円弧部の曲率中心を通る第1基準線と、前記クロソイド部及び前記クロソイド部に隣接する前記直線部の境界と前記曲率中心を通る第2基準線とによって規定される角度が15~45度である、請求項8又は9に記載の
伝熱管の成形方法。
【請求項11】
前記伝熱管は、外表面に径方向外側に向けて延びる複数のフィンが延在方向に沿って設けられたフィンチューブである、請求項7から10のいずれか一項に記載の
伝熱管の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、伝熱管、熱交換器、伝熱管の成形方法、曲げ型に関する。
【背景技術】
【0002】
空調機器のような熱交換器では、内部を流れる媒体と熱交換することで、空気を加熱又は冷却する。このような熱交換器に用いられる伝熱管は、例えばチューブ本体の外表面上に熱交換を促進するためのフィンが設けられたフィンチューブが用いられ、仕様に応じて曲げ加工することで成形される。この種の熱交換器では、近年、性能向上を目的として、伝熱管の列数やフィン数を増加させた次世代機の開発が進められている。
【0003】
伝熱管の成形は、例えば、曲面状の当接面を有する曲げ型を管部材に当接させながら荷重を印加する曲げ加工によって行われる。例えば特許文献1及び2では、互いに平行に配列された複数の管部材に対して曲げ型を当接させながら荷重を印加することで曲げ加工を行うことで、複数の伝熱管を同時に成形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-224756号公報
【文献】特開2004-279029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び2のように、曲げ型を用いて複数の管部材を同時に曲げ加工する場合、良好な品質で伝熱管に成形することは容易ではない。特許文献1及び2では、一定の曲率を有する当接面を備える曲げ型を用いて曲げ加工が行われている。このような曲げ型では、一定の曲率を有する当接面と、それに隣接する直線部との間で曲率が不連続に変化するため、荷重印加時に、管部材に対して局所的に大きな面圧が加わる。このような局所的に大きな面圧は、加工対象となる管部材に対して意図しない潰れや破損をもたらす、また表面に放熱用のフィンを有するフィンチューブではフィンの座屈による横倒れなどの不具合をもたらすことがある。このような曲げ加工における不具合発生を防止するために、従来、経験則に基づいて曲げ型の曲面形状を微調整するなど、手間や時間を要していた。
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みなされたものであり、成形時における不具合発生を防止することで、高品質な伝熱管を有する伝熱管、熱交換器、伝熱管の成形方法、及び、曲げ型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る伝熱管は、上記課題を解決するために、
直線状に延在する直線部と、
前記直線部に隣接する湾曲部と、
を備え、
前記湾曲部は、延在方向に沿って曲率が一定の割合で変化するクロソイド部を含む。
【0008】
本開示の一態様に係る熱交換器は、上記課題を解決するために、
本開示の一態様に係る伝熱管を複数を備える熱交換器であって、
前記複数の伝熱管は、互いに平行に配列され、
前記湾曲部は、前記複数の伝熱管の配列方向が前記湾曲部の曲率半径方向になるように湾曲される。
【0009】
本開示の一態様に係る伝熱管の成形方法は、上記課題を解決するために、
互いに平行に配列された複数の管部材に対して、前記複数の管部材の配列方向の一方側から、第1曲げ型を当接させる工程と、
前記複数の管部材に前記配列方向の他方側から荷重を印加することにより、前記複数の管部材に曲げ加工を実施する工程と、
を備え、
前記第1曲げ型は、前記複数の管部材に対する当接面上に、前記管部材の延在方向に沿って曲率が一定で変化するクロソイド部を含む。
【0010】
本開示の一態様に係る曲げ型は、上記課題を解決するために、
互いに平行に配列された複数の管部材を曲げ加工することにより、湾曲部を有する伝熱管を成形するために用いられる曲げ型であって、
前記複数の管部材に対する当接面上に、前記複数の管部材の延在方向に沿って曲率が一定で変化するクロソイド部を含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、成形時における不具合発生を防止することで、高品質な伝熱管を有する伝熱管、熱交換器、伝熱管の成形方法、及び、曲げ型を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る熱交換器の概略構成図である。
【
図3】一実施形態に係る伝熱管の成形方法を示すフローチャートである。
【
図4A】
図3の伝熱管の成形が実施される様子を段階的に示す模式図である。
【
図4B】
図3の伝熱管の成形が実施される様子を段階的に示す模式図である。
【
図4C】
図3の伝熱管の成形が実施される様子を段階的に示す模式図である。
【
図5】略直線形状を有する複数の管部材に対して伝熱管の成形方法を繰り返し実施することで複数の伝熱管が成形される過程を段階的に示す模式図である。
【
図6】一実施形態に係る第1曲げ型の構成を示す図である。
【
図7】
図6の当接面の表面形状を幾何学的に示す図である。
【
図8】第1曲げ型の形状に関する調整方法を示すフローチャートである。
【
図9】
図8のステップS20で求められる面圧分布を、第2曲げ型の当接面における曲率分布とともに示す図である。
【
図10】第1曲げ型の曲率分布を、
図8のステップS20で求めた面圧分布とともに示す図である。
【
図11】
図1の伝熱管の湾曲部近傍の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0014】
(熱交換器の構成)
図1を参照して、一実施形態に係る熱交換器1の全体構成について説明する。
図1は一実施形態に係る熱交換器1の概略構成図であり、
図2は
図1の伝熱管4A、4Bの拡大断面図である。本実施形態では、熱交換器1の一例として、室内の空気温度を調整するための空気調和機における室内機、特に、天井埋込タイプの室内機を示している。
図1では、天井に埋込設置された熱交換器1の水平断面構造が概略的に示されている。
【0015】
図1に示すように、熱交換器1は、ケーシング2内に、複数の伝熱管4、及び、送風機6が収容されて構成される。ケーシング2は、熱交換器1の筐体であり、熱交換対象となる空気を外部から取り込むための取込口(不図示)、及び、熱交換後の空気を外部に放出するための放出口(不図示)を有する。尚、
図1ではケーシング2の一例として、水平断面形状が略四角形状のものを示しているが、ケーシング2の形状は、これに限られない。
【0016】
複数の伝熱管4の各々は、熱交換器用伝熱管であり、空気と熱交換するための媒体3が流れる中空空間8を有する配管部材である(
図2を参照)。伝熱管4は熱伝導性に優れた材料(例えば金属材料)から形成され、伝熱管4の外側に存在する空気と、中空空間8を流れる媒体3とが熱交換可能に構成される。熱交換器1が冷房として機能する場合、中空空間8を流れる媒体3は、ケーシング2に取り込まれる空気より低温であり、熱交換によって当該空気を冷却する。熱交換器1が暖房として機能する場合、中空空間8を流れる媒体3は、ケーシング2に取り込まれる空気より高温であり、熱交換によって当該空気を加熱する。
【0017】
図2に示すように、伝熱管4は、例えば、中空空間8を有する管形状のチューブ本体5と、チューブ本体5の外表面上に熱交換を促進するために設けられたフィン7とを備えるフィンチューブである。より具体的には、伝熱管4は、チューブ本体5の延在方向に対して垂直な複数のフィン7が、チューブ本体5の延在方向に沿って配列された、いわゆるクロスフローフィンチューブである。
【0018】
送風機6は、熱交換対象となる空気を外部からケーシング2に取り込んで伝熱管4に供給するとともに、伝熱管4による熱交換後の空気をケーシング2から外部に放出するためのデバイスである。送風機6は、例えば遠心型送風機であり、
図1ではケーシング2内の略中央部に設置されている。送風機6が駆動されると、ケーシング2の取込口(不図示)から熱交換対象となる空気が外部からケーシング2内に取り込まれ、伝熱管4に供給される。伝熱管4によって媒体3と熱交換された空気は、ケーシング2の放出口(不図示)から外部に放出される。
【0019】
ケーシング2内には、複数の伝熱管4が互いに平行に延在しながら送風機6を囲むように収容される。複数の伝熱管4は、送風機6に対して外側に設けられた第1伝熱管4Aと、第1伝熱管4Aより内側に設けられた第2伝熱管4Bとを含む。本実施形態では、ケーシング2内に2本の伝熱管4が収容される場合を例示しているが、3本以上の伝熱管4が収容されてもよい。
【0020】
また
図1では、複数の伝熱管4の各々に対して不図示の媒体供給源から媒体3が供給され、それぞれの中空空間8を介して不図示の媒体排出先に向けて排出されるように媒体3の流路が示されているが、これは一例に過ぎない。例えば、複数の伝熱管4の各々における媒体3の流れ方向は、互いに平行であってもよいし、互いに反対であってもよい。また複数の伝熱管4の各々の流路は互いに独立していてもよいし、互いに連通していてもよい。後者の場合、例えば、第1伝熱管4A及び第2伝熱管4Bは互いに直列に連通していてもよいし、互いに並列に連通していてもよい。
【0021】
熱交換器1は、ケーシング2内において、このような複数の伝熱管4が互いに平行に延在しながら、送風機6を囲むように、且つ、ケーシング2の内壁と干渉しないように効率的なレイアウトで収容されることで、優れた熱交換性能を有する。具体的には、
図1に示すように、複数の伝熱管4の各々は、略直線形状の管部材が位置P1~P4において曲げ加工が実施されることにより、直線部10及び湾曲部12を含む形状を有する。湾曲部12は、複数の伝熱管4の配列方向b(
図4を参照)が曲率半径方向になるように湾曲される。
【0022】
(伝熱管の成形方法)
続いて、熱交換器用伝熱管である前述の伝熱管4の成形方法について説明する。
図3は一実施形態に係る伝熱管の成形方法を示すフローチャートであり、
図4A~
図4Cは
図3の伝熱管の成形方法が実施される様子を段階的に示す模式図である。
【0023】
まず成形対象となる複数の管部材4´を用意し、これらを互いに平行に配列する(ステップS10)。具体的には、曲げ加工が実施されることにより第1伝熱管4Aに成形される第1管部材4A´と、曲げ加工が実施されることにより第2伝熱管4Bに成形される第2管部材4B´とが用意される。第1管部材4A´及び第2管部材4B´は、略直線形状を有する点を除いて、それぞれ上述の第1伝熱管4A及び第2伝熱管4Bと略同じ構成を有する。第1管部材4A´及び第2管部材4B´は、各々の延在方向aが揃えられるように、所定の配列方向bに沿って配列される。
【0024】
続いて複数の管部材4´に対して曲げ加工を実施する位置Pを設定する(ステップS11)。ステップS11で設定される位置Pは、完成品である複数の伝熱管4の形状に基づいて設定される。本実施形態では、
図5を参照して後述するように、
図1に示す伝熱管4の湾曲部12に対応する位置P1~P4が設定される。
【0025】
図4Aでは、本成形方法を実施するための成形装置14を用いて、複数の管部材4´が互いに平行に配列された状態で安定的に固定されている様子が示されている。成形装置14は、互いに平行に配列された複数の管部材4´を、ステップS11で設定された位置Pの両側においてそれぞれクランプすることにより固定可能なスライド板14a及び曲げ板14bを備える。
【0026】
続いてステップS11で設定された位置Pに対して、
図4Bに示すように、配列方向bの一方側から第1曲げ型20を当接させる(ステップS12)。第1曲げ型20は、完成品である複数の伝熱管4の湾曲部12に対応する当接面22を有し、ステップS12では当接面22が管部材4´に対して配列方向bの一方側から接触するように、第1曲げ型20が操作される。尚、第1曲げ型20の詳細構成については後述する。
【0027】
続いて複数の管部材4´の配列方向bの他方側から荷重を印加することにより、曲げ加工を実施する(ステップS13)。
図4Cに示すように、スライド板14a及び曲げ板14bは、第1曲げ型20とは反対方向から複数の管部材4´を支持しており、スライド板14aに対して曲げ板14bを相対的に回動することにより、複数の管部材4´に対して他方側から荷重が印加される。その結果、複数の管部材4´には第1曲げ型20の当接面22に対応する湾曲部12が形成され、曲げ加工が完了する。
【0028】
図1及び
図2に示す複数の伝熱管4は、このような成形方法を複数の管部材4´に対して繰り返し実施されることにより成形可能である。
図5は略直線形状を有する複数の管部材4´に対して伝熱管の成形方法を繰り返し実施することで複数の伝熱管4が成形される過程を段階的に示す模式図である。
【0029】
図4では、まず略直線形状を有する複数の管部材4´のうち最も端部に近い位置P1に対して、スライド板14a及び曲げ板14bをセッティングすることで複数の管部材4´を固定する(a)。そして、位置P1に対して配列方向bの一方側から第1曲げ型20を当接させながら曲げ板14bをスライド板14aに対して相対的に回動することにより、1回目の曲げ加工を実施する(b)。続いて、位置P1に隣り合う次の位置P2に対してスライド板14a及び曲げ板14bを移動し(c)、位置P2に対して配列方向bの一方側から第1曲げ型20を当接させながら曲げ板14bをスライド板14aに対して相対的に回動することにより、2回目の曲げ加工を実施する(d)。
【0030】
続いて、位置P2に隣り合う次の位置P3に対してスライド板14a及び曲げ板14bを移動し(e)、位置P3に対して配列方向bの一方側から第1曲げ型20を当接させながら曲げ板14bをスライド板14aに対して相対的に回動することにより、3回目の曲げ加工を実施する(f)。続いて、位置P3に隣り合う次の位置P4に対してスライド板14a及び曲げ板14bを移動し(g)、位置P4に対して配列方向bの一方側から第1曲げ型20を当接させながら曲げ板14bをスライド板14aに対して相対的に回動することにより、4回目の曲げ加工を実施する(h)。
【0031】
このように4つの位置P1~P4に対してそれぞれ前述の成形方法を実施することで、
図1に示す形状を有する複数の伝熱管4が成形される。
【0032】
(第1曲げ型の構成)
続いて上述の成形方法に用いられる第1曲げ型20の構成について説明する。
図6は一実施形態に係る第1曲げ型20の構成を示す図であり、
図7は
図6の当接面22の表面形状を幾何学的に示す図である。
【0033】
第1曲げ型20は、成形方法の実施時に成形対象である管部材4´に接触可能な当接面22と、当接面22に隣接する直線部24とを含む。当接面22は、円弧部26と、クロソイド部28とを含む。
【0034】
円弧部26は、第1曲げ型20が管部材4´に当接した際に、管部材4´の延在方向に沿って一定の曲率(曲率半径R1)を有し、曲率中心Mに対して曲率半径R1を有し、周方向長さdLを有する。
【0035】
クロソイド部28は、第1曲げ型20が管部材4´に当接した際に、管部材4´の延在方向に沿って曲率R2が一定の割合で変化するクロソイド形状を有する。クロソイド部28の一端側は円弧部26に隣接するとともに、他端側は直線部24に隣接することにより、クロソイド部28の曲率は、円弧部26の曲率から直線部24の曲率(=略ゼロ)まで一定の割合で変化する(これに伴い、クロソイド部28の曲率半径R2もまた一定の割合で変化する)。このようなクロソイド部28は、円弧部26の曲率中心Mに対して周方向長さLを有する。
【0036】
クロソイド部28の形状は、
図7に示すように、直線部24に沿った第1方向X、及び、第1方向Xに垂直な第2方向Yにそれぞれ沿った長さLX、LYによって規定される。クロソイド部28の長さLX、LYの設計は、例えば以下のように行うことができる。
【0037】
まず円弧部26の曲率中心Mに対する周方向長さdLは、円弧部26の曲率半径R1、及び、円弧dLの中心角dτを用いて、次式で表される。
dL=R1・dτ (1)
また円弧部26の第1方向Xに沿った長さdX、第2方向Yに沿った長さdYは、円弧部26とクロソイド部28との境界位置Bにおける接線角τを用いて、それぞれ次式で求められる。
dX=dLcosτ (2-1)
dY=dLsinτ (2-2)
ここでRL=A
2とすると、円弧部26の曲率半径R1は以下のように求められる(Aはクロソイドの定数で、A=1のとき単位クロソイドとなる)。
dL=A
2/L・dτ
【0038】
上記(1)式及び(3)式を(2)式に代入すると、クロソイド部28の長さLX、LYは、以下のように求められる。
【0039】
このように規定される第1曲げ型20の形状は、熱交換器1の仕様に応じて設定される種々の制約条件を満たすように調整される。
図8は第1曲げ型20の形状に関する調整方法を示すフローチャートである。
【0040】
まず形状の調整対象となる第1曲げ型20に代わりに第2曲げ型を用いて前述の成形方法を実施した際に、加工対象である管部材4´が受ける面圧分布を求める(ステップS20)。ステップS20で用いられる第2曲げ型は、一定の曲率(曲率半径R1)を有する円弧部のみからなる当接面22を有し、その他の特徴を第1曲げ型20と共通する検証用の曲げ型である。すなわち、第2曲げ型は、実質的に第1曲げ型20の当接面22からクロソイド部28を除いたものと同等である。
【0041】
図9は
図8のステップS20で求められる面圧分布を、第2曲げ型の当接面における曲率分布とともに示す図である。
図9に示すように、第2曲げ型は、境界位置Bの一方側では、一定の曲率を有する円弧部のみからなる当接面を有し、境界位置Bの他方側では曲率が略ゼロである直線部を有する。境界位置Bの近傍では、当接面と直線部との間で曲率が不連続に(急激に)変化している。そのため、第2曲げ型を用いて成形方法を実施した場合、境界位置Bの近傍において局所的に大きな面圧のピークP
peakが生じている。このように局所的に大きな面圧が管部材4´に作用すると、曲げ加工時に管部材4´に潰れや破損をもたらす、また表面に設けられた放熱用のフィン7の座屈による横倒れなどの不具合をもたらすことがある。
【0042】
尚、ステップS20における面圧分布は、実際に管部材4´に対して第2曲げ型を用いた成形方法を実施することで実測してもよいが、実測を伴わないシミュレーションによって実施されてもよい。
【0043】
続いてステップS20で求めた面圧分布に基づいて第1曲げ型20を当接する位置Pを設定する(ステップS21)。
図10は第1曲げ型20の曲率分布を、
図8のステップS20で求めた面圧分布とともに示す図である。
図10に示すように、ステップS21では、第1曲げ型20が当接する位置Pは、ステップS20で求めた面圧分布に含まれる面圧の最大ピークPpeakがクロソイド部28に含まれるように設定される。特に
図10の例では、ステップS20で求めた面圧分布に含まれる面圧の最大ピークPpeakが、クロソイド部28の中点Cに一致するように、第1曲げ型20が当接する位置Pが設定される。
【0044】
続いてステップS21で設定された位置Pに第1曲げ型20を当接させて曲げ加工を実施し(ステップS22)、予め設定された制約条件を満足するか否かを判定する(ステップS23)。ステップS22における第1曲げ型20を用いた曲げ加工は、実際の管部材4´に対して行ってもよいが、実体を伴わないシミュレーションによって実施してもよい。
【0045】
ステップS23では、ステップS22で実施された曲げ加工が、予め設定される制約条件を満たすか否かが判定される。制約条件は、例えば、熱交換器1に要求される仕様に基づいて、様々の観点から設定可能である。本実施形態では、一例として、以下の2つ制約条件(第1制約条件、及び、第2制約条件)が判定される場合について説明する。
【0046】
第1制約条件では、曲げ加工時に管部材4´に印加される荷重が、予め設定された閾値を超えないことである。当該閾値は、例えば、管部材4´に設けられたフィン7(
図2を参照)に座屈や倒れ等の不具合が発生する荷重閾値であり、所定の裕度を含んで設定されてもよい。このような第1制約条件を満たすように曲げ加工を行うことで、成形後の伝熱管4に不良が生じることを防止することができる。
第2制約条件では、曲げ加工によって成形された伝熱管4がケーシング2と干渉しないことである。
図1に示すように、成形後の伝熱管4はケーシング2に収容され、その際、ケーシングの内壁との間に所定の隙間が確保されるように設計される必要がある。
【0047】
ステップS23で制約条件が満足されると判定された場合(ステップS23:YES)、ステップS22で用いた第1曲げ型20の仕様が採用される(ステップS24)。一方、ステップS23で制約条件が満足しないと判定された場合(ステップS23:NO)、第1曲げ型20の設計パラメータの少なくとも一部を調整し(ステップS25)、処理をステップS22に戻す。そして、調整後の設計パラメータに基づいた第1曲げ型20を用いた曲げ加工に基づいて、再び制約条件の判定が行われる。このようなループは制約条件を満足する設計パラメータが見つかるまで繰り返される。
【0048】
ステップS25では、調整対象となる設計パラメータとして、円弧部26の曲率半径R1、又は、クロソイド部28の周方向長さLの少なくとも一方が選択される。例えば第1制約条件を満たさない場合(すなわち曲げ加工時に作用する荷重が閾値を超える場合)、円弧部26の曲率半径R1が大きくなるように、設計パラメータを調整してもよい。この場合、円弧部26の曲率半径R1が大きくなることで、クロソイド部28における曲率の変化割合が小さくなり、管部材4´が第1曲げ型20から受ける面圧をより低減できる。また第2制約条件を満たさない場合(すなわち曲げ加工によって成形された伝熱管4がケーシング2の内壁と干渉してしまう場合)、円弧部26の曲率半径R1、及び、クロソイド部28の周方向長さLのバランスを調整することにより、成形後の伝熱管4のサイズが適切な範囲になるように設計パラメータを調整してもよい。
【0049】
(伝熱管の詳細構成)
熱交換器1が備える複数の伝熱管4は、上述したように、複数の管部材4´に対して前述の成形方法を実施することにより成形される。ここで前述の成形方法によって成形された伝熱管4の詳細構成について説明する。
図11は
図1の伝熱管4の湾曲部12近傍の拡大図である。
【0050】
複数の伝熱管4が有する湾曲部12は、第1曲げ型20の当接面22に対応する円弧部40及びクロソイド部42を含む。これは、上述したように、成形方法では第1曲げ型20を管部材4´に対して当接しながら荷重を印加することで、伝熱管4の湾曲部12には、第1曲げ型20の当接面22に含まれる円弧部26とクロソイド部28に対応するように、円弧部40及びクロソイド部42を含む湾曲形状が成形されるためである。
【0051】
伝熱管4の湾曲部12に含まれる円弧部40は、第1曲げ型20の当接面22に含まれる円弧部26に対応する形状を有し、略等しい一定の曲率(曲率半径R1)を有する。また伝熱管4の湾曲部12に含まれるクロソイド部42は、第1曲げ型20の当接面22に含まれるクロソイド部28に対応する形状を有し、略等しい曲率(曲率半径R2)を有する(クロソイド部28の曲率は一定の割合で変化する)。このように湾曲部12は、円弧部40に加えてクロソイド部42を含むことにより、円弧部40の曲率中心Mに対して非対称形状を有する。
【0052】
クロソイド部42は、湾曲部12に含まれる円弧部40と、湾曲部12に隣接する直線部10との間に介在するように設けられることにより、直線部10と湾曲部12との間で曲率が連続的に変化するように構成される。このような湾曲部12は、当該湾曲部12に対応するように、円弧部26及びクロソイド部28を含む第1曲げ型20を用いて成形される。第1曲げ型20では、当接面22において円弧部26と直線部24との間にクロソイド部28が設けられることにより、湾曲部12の成形時に第1曲げ型20が管部材4´に当接しながら荷重が印加された際に、管部材4´に対して局所的に大きな面圧が作用することが効果的に防止される。
【0053】
またクロソイド部42の曲率は、第1曲げ型20のクロソイド部28に対応するように、伝熱管4の延在方向に沿って一定の割合で変化する。そのため、伝熱管4のクロソイド部42における曲率半径R2は、円弧部40の曲率半径R1に比べてΔrだけ大きくなる(Δrは伝熱管4の延在方向に沿って一定の割合で変化する)。このように湾曲部12にクロソイド部42が含まれることにより、湾曲部12が円弧部40のみから構成される場合に比べて、湾曲部12のサイズが大きくなる。そのため、湾曲部12が円弧部40のみから構成される場合に比べて、円弧部40の曲率半径をΔrの分だけ小さくすることで、湾曲部12にクロソイド部42を含めた場合においても、湾曲部12の全体サイズを抑えることができる。
【0054】
伝熱管4においてクロソイド部42が形成される範囲は、直線部10の延在方向に平行であり曲率中心Mを通る第1基準線L1と、クロソイド部42と直線部10との境界位置Bと曲率中心Mとを通る第2基準線L2とによって規定される角度αによって規定される。角度αは、例えば、15~45度の範囲であることが好ましい。
【0055】
図1に示す熱交換器1は、このようなクロソイド部42を含む湾曲部12を有する複数の伝熱管4を備える。このようなクロソイド部42を含む湾曲部12は、当接面22にクロソイド部28を有する第1曲げ型20を用いて前述の成形方法によって成形される。そのため、成形時に管部材4´は第1曲げ型20から局所的に大きな面圧を受けることがなく、高品質な湾曲部が成形される。熱交換器1は、このように成形された湾曲部12を有する複数の伝熱管4を備えることで、良好な性能が得られる。
【0056】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0057】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0058】
(1)一態様に係る伝熱管(例えば上記実施形態の伝熱管4)は、
直線状に延在する直線部(例えば上記実施形態の直線部10)と、
前記直線部に隣接する湾曲部(例えば上記実施形態の湾曲部12)と、
を備え、
前記湾曲部は、延在方向に沿って曲率が一定の割合で変化するクロソイド部(例えば上記実施形態のクロソイド部42)を含む。
【0059】
上記(1)の態様によれば、伝熱管は、直線状に延在する直線部と、直線部に隣接する湾曲部とを備える。伝熱管の湾曲部は、伝熱管の延在方向に沿って曲率が一定の割合で変化するクロソイド部を含む。このようなクロソイド部を含む湾曲部は、例えば、略直線形状を有する管部材に対して、湾曲部に対応する当接面を備える曲げ型を配列方向の一方側から当接した状態で、他方側から荷重を印加することで曲げ加工することによって成形される。このような曲げ加工では、曲げ型の当接面にクロソイド形状が含まれることで、管部材に荷重が印加された際に、管部材が曲げ型から局所的に大きな面圧を受けることがなく、高品質な湾曲部を成形できる。伝熱管は、このように成形された湾曲部を有することで、良好な品質を有する。
【0060】
(2)他の態様では上記(1)の態様において、
前記湾曲部は、一定の曲率を有する円弧部(例えば上記実施形態の円弧部40)を含み、
前記クロソイド部は、前記直線部と前記円弧部との間に設けられる。
【0061】
上記(2)の態様によれば、複数の伝熱管は円弧部及びクロソイド部を含む湾曲部を有する。このような湾曲部は、当該湾曲部に対応するように、円弧部及びクロソイド部を含む曲げ型を用いて成形される。この曲げ型では、当接面において円弧部と直線部との間にクロソイド部が設けられることにより、湾曲部の成形時に曲げ型が管部材に当接しながら荷重が印加された際に、管部材に対して局所的に大きな面圧が作用することが効果的に防止される。
【0062】
(3)他の態様では上記(2)の態様において、
前記湾曲部は、前記円弧部の曲率中心に対して非対称形状を有する。
【0063】
上記(3)の態様によれば、湾曲部はクロソイド部を含むことにより、円弧部の曲率中心に対して非対称形状を有する。
【0064】
(4)他の態様では上記(2)又は(3)の態様において、
前記直線部の延在方向に平行であり前記円弧部の曲率中心(例えば上記実施形態の曲率中心M)を通る第1基準線(例えば上記実施形態の第1基準線L1)と、前記クロソイド部及び前記直線部の境界と前記曲率中心を通る第2基準線(例えば上記実施形態の第2基準線L2)とによって規定される角度が15~45度である。
【0065】
上記(4)の態様によれば、第1基準線及び第2基準線との間の角度αを上記範囲にすることで、クロソイド部を含む湾曲部のサイズを適度に抑えながら、高品質な伝熱管が得られる。
【0066】
(5)他の態様では上記(1)から(4)のいずれか一態様において、
外表面に径方向外側に向けて延びる複数のフィン(例えば上記実施形態のフィン7)が延在方向に沿って設けられたフィンチューブである。
【0067】
上記(5)の態様によれば、伝熱管として外表面に複数のフィンが設けられたフィンチューブを用いた場合に、湾曲部におけるフィンの座屈による横倒れが好適に防止できる。
【0068】
(6)一態様に係る熱交換器は、
上記(1)から(5)のいずれか一態様の伝熱管を複数備える熱交換器(例えば上記実施形態の熱交換器1)であって、
前記複数の伝熱管は、互いに平行に配列され、
前記湾曲部は、前記複数の伝熱管の配列方向(例えば上記実施形態の配列方向b)が前記湾曲部の曲率半径方向になるように湾曲される。
【0069】
上記(6)の態様によれば、上記態様の複数の伝熱管が、互いに平行、且つ、各伝熱管の湾曲部が、複数の伝熱管の配列方向が曲率半径方向になるように配列された熱交換器が構成される。このような熱交換器は、上記のように高品質な湾曲部を有する複数の伝熱管を備えることで、良好な性能が得られる。
【0070】
(7)他の態様では上記(6)の態様において、
前記複数の伝熱管はケーシング(例えば上記実施形態のケーシング2)の略中央部に配置された送風機(例えば上記実施形態の送風機6)を囲むように構成される。
【0071】
上記(7)の態様によれば、送風機を囲むように湾曲形状を有する伝熱管を備える熱交換器を好適に得られる。
【0072】
(8)一態様に係る伝熱管の成形方法は、
互いに平行に配列された複数の管部材(例えば上記実施形態の複数の管部材4´)に対して、前記複数の管部材の配列方向(例えば上記実施形態の配列方向b)の一方側から、第1曲げ型(例えば上記実施形態の第1曲げ型20)を当接させる工程と、
前記複数の管部材に前記配列方向の他方側から荷重を印加することにより、前記複数の管部材に曲げ加工を実施する工程と、
を備え、
前記第1曲げ型は、前記複数の管部材に対する当接面(例えば上記実施形態の当接面22)上に、前記管部材の延在方向に沿って曲率が一定で変化するクロソイド部(例えば上記実施形態のクロソイド部28)を含む。
【0073】
上記(8)の態様によれば、互いに平行に配列された複数の管部材に対して、配列方向の一方側から第1曲げ型を当接させた状態で、他方側から荷重を印加することで曲げ加工が行われることにより、複数の伝熱管が成形される。第1曲げ型は、複数の管部材に対する当接面上に、複数の管部材の延在方向に沿って曲率が一定で変化するクロソイド部を含む。これにより、複数の管部材には荷重印加時に第1曲げ型から受ける面圧が局所的に大きくなることが防止され、高品質な湾曲部を有する複数の伝熱管を得ることができる。
【0074】
(9)他の態様では上記(8)の態様において、
当接面が一定の曲率を有する第2曲げ型を用いて前記曲げ加工を実施した場合に前記複数の管部材に生じる面圧分布に基づいて、前記複数の管部材に対する前記第1曲げ型を当接する位置を設定する。
【0075】
上記(9)の態様によれば、当接面が一定の曲率を有する第2曲げ型を用いて曲げ加工を実施した場合における面圧分布に基づいて、複数の管部材に対する第1曲げ型の当接位置が設定される。
【0076】
(10)他の態様では上記(9)の態様において、
前記面圧分布において面圧が最大になる位置が、前記クロソイド部の前記延在方向に沿った中点に一致するように前記第1曲げ型を当接する位置を設定する。
【0077】
上記(10)の態様によれば、第1曲げ型の複数の管部材に対する当接位置を設定することにより、曲げ加工時に、複数の管部材に作用する面圧が局所的に大きくなることをより好適に防止できる。
【0078】
(11)他の態様では上記(8)から(10)のいずれか一態様において、
予め設定された制約条件を満たすように、前記クロソイド部の前記延在方向に沿った長さ、及び、前記クロソイド部に隣接する円弧部(例えば上記実施形態の円弧部26)の曲率の少なくとも一方を調整する。
【0079】
上記(11)の態様によれば、クロソイド形状の延在方向に沿った長さ、及び、円弧部の曲率の少なくとも一方を調整することにより、予め設定された制約条件を好適に満たすことができる。
【0080】
(12)他の態様では上記(11)の態様において、
前記制約条件は、前記曲げ加工で前記管部材に印加される荷重が予め設定された閾値以下になることを含む。
【0081】
上記(12)の態様によれば、第1曲げ型の設計パラメータであるクロソイド部の延在方向に沿った長さ、及び、円弧部の曲率の少なくとも一方を調整することにより、管部材に曲げ加工を実施した際に、管部材に不良が生じることなく、良好な品質を有する伝熱管の成形ができる。
【0082】
(13)他の態様では上記(11)又は(12)の態様において、
前記制約条件は、成形後の伝熱管(例えば上記実施形態の伝熱管4)が熱交換器(例えば上記実施形態の熱交換器1)のケーシング(例えば上記実施形態のケーシング2)と干渉しないことを含む。
【0083】
上記(13)の態様によれば、第1曲げ型の設計パラメータであるクロソイド部の延在方向に沿った長さ、及び、円弧部の曲率の少なくとも一方を調整することにより、伝熱管がケーシングと干渉しないように、伝熱管を好適に成形できる。
【0084】
(14)一態様に係る曲げ型(例えば上記実施形態の第1曲げ型20)は、
互いに平行に配列された複数の管部材(例えば上記実施形態の複数の管部材4´)を曲げ加工することにより、湾曲部(例えば上記実施形態の湾曲部12)を有する伝熱管(例えば上記実施形態の伝熱管4)を成形するために用いられる曲げ型であって、
前記複数の管部材に対する当接面(例えば上記実施形態の当接面22)上に、前記複数の管部材の延在方向に沿って曲率が一定で変化するクロソイド部(例えば上記実施形態のクロソイド部28)を含む。
【0085】
上記(14)の態様によれば、当接面上にクロソイド部を含む曲げ型を用いて曲げ加工を行うことにより、上記各態様に係る伝熱管を好適に成形できる。
【符号の説明】
【0086】
1 熱交換器
2 ケーシング
3 媒体
4 伝熱管
4´ 管部材
4A 第1伝熱管
4B 第2伝熱管
4A´ 第1管部材
4B´ 第2管部材
5 チューブ本体
6 送風機
7 フィン
8 中空空間
10 直線部(伝熱管)
12 湾曲部
14 成形装置
14a スライド板
14b 曲げ板
20 第1曲げ型
22 当接面
24 直線部(第1曲げ型)
26 円弧部(第1曲げ型)
28 クロソイド部(第1曲げ型)
40 円弧部(伝熱管)
42 クロソイド部(伝熱管)
L1 第1基準線
L2 第2基準線
M 曲率中心