(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20240920BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20240920BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G03G9/097 365
G03G9/087 331
G03G9/08 381
(21)【出願番号】P 2020153141
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2019167620
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和泉谷 勇太
(72)【発明者】
【氏名】野本 昌吾
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-187696(JP,A)
【文献】特開2013-008026(JP,A)
【文献】特開2009-217183(JP,A)
【文献】特開平06-266149(JP,A)
【文献】特開2020-020866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤と、離型剤と、樹脂組成物(P)と、エステル組成物(C)とを含有する静電荷像現像用トナーであって、
前記樹脂組成物(P)が、酸基を有する非晶性ポリエステル系樹脂(A)とアミン化合物とを縮合させてなる樹脂組成物であり、
前記アミン化合物が、アルキレン基の炭素数が1以上5以下であるポリアルキレンイミン、ポリアリルアミン、(ポリ)エチレンポリアミン、及び炭素数2以上9以下の
モノアルカノール
3級アミンから選ばれる1種以上を含み、
前記エステル組成物(C)が、下記のエステル組成物(CI)及びエステル組成物(CII)から選ばれる1種以上であ
り、
前記離型剤が、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックスから選ばれる1種以上である、静電荷像現像用トナー。
エステル組成物(CI):炭素数10以上30以下の脂肪族モノカルボン酸化合物を20モル%以上含むカルボン酸成分(CI-ac)と、炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族アルコールを90モル%以上含むアルコール成分(CI-al)との縮合物を含有するエステル組成物
エステル組成物(CII):炭素数10以上30以下の脂肪族モノアルコールを20モル%以上含むアルコール成分(CII-al)と、炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族カルボン酸化合物を90モル%以上含むカルボン酸成分(CII-ac)との縮合物を含有するエステル組成物
【請求項2】
前記エステル組成物(C)が、前記エステル組成物(CI)である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記エステル組成物(C)が、前記エステル組成物(CII)である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記アミン化合物が、アルキレン基の炭素数が1以上5以下であるポリアルキレンイミンを含む、請求項1~
3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記非晶性ポリエステル系樹脂(A)の重量平均分子量が、2,000以上10,000以下である、請求項1~
4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記非晶性ポリエステル系樹脂(A)の軟化点が、80℃以上120℃以下である、請求項1~
5のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
更に非晶性ポリエステル系樹脂(B)を含有し、該非晶性ポリエステル系樹脂(B)の軟化点が120℃超170℃以下である、請求項1~
6のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
静電荷像現像用トナーが、溶融混練法による粉砕トナーである、請求項1~
7のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項9】
工程1:酸基を有する非晶性ポリエステル系樹脂(A)とアミン化合物とを縮合させて樹脂組成物(P)を得る工程、及び
工程2:工程1で得られた樹脂組成物(P)、着色剤、離型剤、及びエステル組成物(C)を含むトナー原料を溶融混練する工程、を含み、
前記アミン化合物が、アルキレン基の炭素数が1以上5以下であるポリアルキレンイミン、ポリアリルアミン、(ポリ)エチレンポリアミン、及び炭素数2以上9以下の3級アルカノールアミンから選ばれる1種以上を含み、
前記エステル組成物(C)が、下記のエステル組成物(CI)及びエステル組成物(CII)から選ばれる1種以上であ
り、
前記離型剤が、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックスから選ばれる1種以上である、静電荷像現像用トナーの製造方法。
エステル組成物(CI):炭素数10以上30以下の脂肪族モノカルボン酸化合物を20モル%以上含むカルボン酸成分(CI-ac)と、炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族アルコールを90モル%以上含むアルコール成分(CI-al)との縮合物を含有するエステル組成物
エステル組成物(CII):炭素数10以上30以下の脂肪族モノアルコールを20モル%以上含むアルコール成分(CII-al)と、炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族カルボン酸化合物を90モル%以上含むカルボン酸成分(CII-ac)との縮合物を含有するエステル組成物
【請求項10】
前記エステル組成物(C)がエステル組成物(CI)である、請求項
9に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項11】
前記アミン化合物が、アルキレン基の炭素数が1以上5以下であるポリアルキレンイミンを含む、請求項
9又は10に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項12】
前記非晶性ポリエステル系樹脂(A)の重量平均分子量が、2,000以上10,000以下である、請求項
9~
11のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項13】
前記非晶性ポリエステル系樹脂(A)の軟化点が、80℃以上120℃以下である、請求項
9~
12のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項14】
更に非晶性ポリエステル系樹脂(B)を含有し、該非晶性ポリエステル系樹脂(B)の軟化点が120℃超170℃以下である、請求項
9~
13のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる静電荷像現像用トナー、及び当該トナーの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真の分野においては、電子写真システムの発展に伴い、高画質化及び高速化に対応したトナーの開発が求められている。
例えば、特許文献1には、線形ポリエステル(A)と非線形ポリエステル(B)とで構成されるポリエステル樹脂(I)を含有するトナー用樹脂において、炭素数9~30の脂肪族ポリカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体から選ばれる1種以上を40モル%以上含有するカルボン酸成分とアルコール成分との重縮合ポリエステル樹脂であって、SP値が所定の範囲である結晶性ポリエステル(A1)を、線形ポリエステル(A)中に5重量%以上含有するトナー用樹脂を含有するトナー組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、トナー印刷の低コスト化のために、印刷に用いられるトナーの付着量の低減が求められている。トナーの付着量を低減しようとすると着色剤の濃度が低下し、画像濃度が低下するため、着色剤を増量する必要がある。しかしながら、樹脂に対して着色剤を増量すると着色剤の分散性が悪化し、期待されるほどの画像濃度が得られず、光沢も低下することが判明した。
特許文献1の技術では着色剤の分散性が未だ十分でなく、画像濃度及び光沢の更なる向上が求められている。
本発明は、画像濃度及び光沢に優れる静電荷像現像用トナー、及び当該トナーの製造方法等に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、トナーが、酸基を有する非晶性ポリエステル系樹脂とアミン化合物とを縮合させてなる樹脂組成物、及び所定の炭素数の脂肪族モノカルボン酸化合物を所定量含むカルボン酸成分と所定の炭素数の2価以上の脂肪族アルコールを所定量含むアルコール成分との縮合物を含有するエステル組成物、又は所定の炭素数の脂肪族モノアルコールを所定量含むアルコール成分と所定の炭素数の2価以上の脂肪族カルボン酸化合物を所定量含むカルボン酸成分との縮合物を含有するエステル組成物を含有することにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔5〕の実施形態に関する。
〔1〕着色剤と、樹脂組成物(P)と、エステル組成物(C)とを含有する静電荷像現像用トナーであって、
前記樹脂組成物(P)が、酸基を有する非晶性ポリエステル系樹脂(A)とアミン化合物とを縮合させてなる樹脂組成物であり、
前記エステル組成物(C)が、下記のエステル組成物(CI)及びエステル組成物(CII)から選ばれる1種以上である、静電荷像現像用トナー。
エステル組成物(CI):炭素数10以上30以下の脂肪族モノカルボン酸化合物を20モル%以上含むカルボン酸成分(CI-ac)と、炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族アルコールを90モル%以上含むアルコール成分(CI-al)との縮合物を含有するエステル組成物
エステル組成物(CII):炭素数10以上30以下の脂肪族モノアルコールを20モル%以上含むアルコール成分(CII-al)と、炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族カルボン酸化合物を90モル%以上含むカルボン酸成分(CII-ac)との縮合物を含有するエステル組成物
〔2〕着色剤と、樹脂組成物(P)と、エステル組成物(C)とを含有する静電荷像現像用トナーであって、
前記樹脂組成物(P)が、酸基を有する非晶性ポリエステル系樹脂(A)とアミン化合物とを縮合させてなる樹脂組成物であり、
前記エステル組成物(C)が、炭素数10以上30以下の脂肪族モノカルボン酸化合物を20モル%以上含むカルボン酸成分(CI-ac)と、炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族アルコールを90モル%以上含むアルコール成分(CI-al)との縮合物を含有するエステル組成物(CI)である、静電荷像現像用トナー。
〔3〕着色剤と、樹脂組成物(P)と、エステル組成物(C)とを含有する静電荷像現像用トナーであって、
前記樹脂組成物(P)が、酸基を有する非晶性ポリエステル系樹脂(A)とアミン化合物とを縮合させてなる樹脂組成物であり、
前記エステル組成物(C)が、炭素数10以上30以下の脂肪族モノアルコールを20モル%以上含むアルコール成分(CII-al)と、炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族カルボン酸化合物を90モル%以上含むカルボン酸成分(CII-ac)との縮合物を含有するエステル組成物(CII)である、静電荷像現像用トナー。
〔4〕工程1:酸基を有する非晶性ポリエステル系樹脂(A)とアミン化合物とを縮合させて樹脂組成物(P)を得る工程、及び
工程2:工程1で得られた樹脂組成物(P)、着色剤、及びエステル組成物(C)を含むトナー原料を溶融混練する工程、を含み、
前記エステル組成物(C)が、下記のエステル組成物(CI)及びエステル組成物(CII)から選ばれる1種以上である、静電荷像現像用トナーの製造方法。
エステル組成物(CI):炭素数10以上30以下の脂肪族モノカルボン酸化合物を20モル%以上含むカルボン酸成分(CI-ac)と、炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族アルコールを90モル%以上含むアルコール成分(CI-al)との縮合物を含有するエステル組成物
エステル組成物(CII):炭素数10以上30以下の脂肪族モノアルコールを20モル%以上含むアルコール成分(CII-al)と、炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族カルボン酸化合物を90モル%以上含むカルボン酸成分(CII-ac)との縮合物を含有するエステル組成物
〔5〕工程1:酸基を有する非晶性ポリエステル系樹脂(A)とアミン化合物とを縮合させて樹脂組成物(P)を得る工程、及び
工程2:工程1で得られた樹脂組成物(P)、着色剤、及びエステル組成物(C)を含むトナー原料を溶融混練する工程、を含み、
前記エステル組成物(C)が、炭素数10以上30以下の脂肪族モノカルボン酸化合物を20モル%以上含むカルボン酸成分(CI-ac)と、炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族アルコールを90モル%以上含むアルコール成分(CI-al)との縮合物を含有するエステル組成物(CI)である、静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、画像濃度及び光沢に優れる静電荷像現像用トナー、及び当該トナーの製造方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[静電荷像現像用トナー]
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、単に「本発明のトナー」ともいう。)は、着色剤と、樹脂組成物(P)と、エステル組成物(C)とを含有する。
樹脂組成物(P)は、酸基を有する非晶性ポリエステル系樹脂(A)(以下、単に「樹脂(A)」ともいう。)とアミン化合物とを縮合させてなる樹脂組成物である。
そして、エステル組成物(C)は、下記のエステル組成物(CI)及びエステル組成物(CII)から選ばれる1種以上である。
エステル組成物(CI):炭素数10以上30以下の脂肪族モノカルボン酸化合物を20モル%以上含むカルボン酸成分(CI-ac)と、炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族アルコールを90モル%以上含むアルコール成分(CI-al)との縮合物を含有するエステル組成物
エステル組成物(CII):炭素数10以上30以下の脂肪族モノアルコールを20モル%以上含むアルコール成分(CII-al)と、炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族カルボン酸化合物を90モル%以上含むカルボン酸成分(CII-ac)との縮合物を含有するエステル組成物
本発明のトナーによれば、優れた画像濃度及び光沢が示される。
【0009】
本発明の効果が得られる理由は定かではないが、次のように考えられる。
樹脂組成物(P)は、その構造中にアミン化合物に由来する部分を含んでおり、着色剤の分散剤として働くことで、着色剤がトナー中で微分散化された状態となると考えられる。また、エステル組成物(C)は、ポリエステル構造として所定の炭素数の脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族モノアルコールに由来する脂肪族炭化水素基を含み、疎水的で低分子であるため、着色剤への湿潤剤的な作用を発現し、着色剤の分散性がさらに向上する。その結果、画像濃度が向上すると考えられる。また、エステル組成物(C)は溶融粘度が低いため、印字膜が平滑となり、光沢も向上すると考えられる。
【0010】
本明細書における各種用語の定義等を以下に示す。
樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計(DSC)による吸熱の最大ピーク温度との比、すなわち、「軟化点/吸熱の最大ピーク温度」で定義される結晶性指数によって表される。一般に、この結晶性指数が1.4を超えると樹脂は非晶性であり、0.6未満では結晶性が低く非晶性部分が多い。本発明において、「非晶性樹脂」とは、結晶性指数が1.4を超えるか、0.6未満の樹脂をいい、「結晶性樹脂」とは、結晶性指数が0.6以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、1.4以下、好ましくは1.2以下である樹脂をいう。
上記「吸熱の最大ピーク温度」とは、実施例に記載する測定方法の条件下で観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度のことを指す。
樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。
「ポリエステル系樹脂」とは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル樹脂を含んでいてもよい。変性されたポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂がウレタン結合で変性されたウレタン変性ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂がエポキシ結合で変性されたエポキシ変性ポリエステル樹脂、及びポリエステル成分と付加重合系樹脂成分とを有する複合樹脂が挙げられる。
「ビスフェノールA」は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンを意味する。
「カルボン酸化合物」としては、例えば、カルボン酸、それらの無水物及び炭素数1以上3以下のアルキルエステルが挙げられる。なお、アルキルエステルのアルキル基の炭素数は、カルボン酸化合物の炭素数に含めない。
「トナーの樹脂成分」とは、樹脂組成物(P)、エステル組成物(C)を包含する本発明のトナー中に含まれる樹脂成分を意味する。
【0011】
本発明のトナーは、着色剤と、樹脂組成物(P)と、エステル組成物(C)とを含有する。
本発明のトナーは、例えば、トナー粒子と外添剤とを含有する。
トナー粒子は、好ましくは、着色剤と、樹脂組成物(P)と、エステル組成物(C)とを含む。
そして、トナー粒子は、例えば、着色剤誘導体、離型剤、荷電制御剤、その他添加剤を含んでいてもよい。
【0012】
<樹脂組成物(P)>
樹脂組成物(P)は、酸基を有する非晶性ポリエステル系樹脂(A)とアミン化合物とを縮合させてなる樹脂組成物である。樹脂組成物(P)中には、例えば、樹脂(A)とアミン化合物との反応物及びアミン化合物由来の副生成物、並びに未反応の樹脂(A)及び未反応のアミン化合物等が含まれる。そして、樹脂(A)とアミン化合物及びアミン化合物由来の副生成物との反応物が、樹脂組成物(P)中で着色剤の分散剤として働くものと考えられる。
【0013】
〔非晶性ポリエステル系樹脂(A)〕
非晶性ポリエステル系樹脂(A)は、酸基を有する。
酸基としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基が挙げられる。これらの中でも、カルボキシ基が好ましい。
非晶性ポリエステル系樹脂(A)としては、例えば、非晶性ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂セグメント及びビニル系樹脂セグメントを有する非晶性複合樹脂が挙げられる。これらの中でも、好ましくは前記非晶性ポリエステル樹脂である。
前記非晶性ポリエステル樹脂は、アルコール成分(A-al)とカルボン酸成分(A-ac)との重縮合物である。以下、前記非晶性ポリエステル樹脂に含まれるアルコール成分(A-al)とカルボン酸成分(A-ac)について説明する。
【0014】
(アルコール成分(A-al))
アルコール成分(A-al)は、好ましくは、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物(以下、「BPA-AO」ともいう。)及び炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールから選ばれる少なくとも1種を含み、より好ましくはBPA-AOを含む。BPA-AOとしては、好ましくは、式(I):
【化1】
〔式中、OR
11及びR
12Oは、アルキレンオキシ基であり、R
11及びR
12はそれぞれ独立に、炭素数1以上4以下のアルキレン基(好ましくはエチレン基又はプロピレン基)であり、x及びyは、アルキレンオキシドの平均付加モル数であって、それぞれ独立に正の数であり、x及びyの和の平均値は、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは2以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは4以下である。〕で表されるBPA-AOが挙げられる。
【0015】
BPA-AOは、好ましくはビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物(以下、「BPA-PO」ともいう。)、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物(以下、「BPA-EO」ともいう。)、より好ましくはBPA-POである。すなわち、アルコール成分(A-al)は、BPA-POを含むことが好ましい。これらのBPA-AOは、1種又は2種以上を用いてもよい。
BPA-AOの量は、アルコール成分(A-al)中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、更に好ましくは98モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
アルコール成分(A-al)がBPA-POを含む場合、BPA-POの量は、アルコール成分(A-al)中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、更に好ましくは98モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
【0016】
アルコール成分(A-al)は、BPA-AOとは異なる他のアルコール成分を含んでもよい。他のアルコール成分としては、例えば、脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。
【0017】
脂肪族ジオールの炭素数は、好ましくは2以上であり、そして、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは10以下、更に好ましくは6以下である。
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3,3-ジメチル-1,2-ブタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオールが挙げられる。
脂環式ジオールとしては、例えば、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールAの炭素数2以上4以下のアルキレンオキシド(平均付加モル数2以上12以下)付加物が挙げられる。
3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ソルビタンが挙げられる。
なお、樹脂の分子量や軟化点を調整する観点から、アルコール成分(A-al)は、1価のアルコールを含んでもよい。
これらのアルコール成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0018】
(カルボン酸成分(A-ac))
カルボン酸成分(A-ac)としては、例えば、ジカルボン酸化合物、3価以上の多価カルボン酸化合物が挙げられる。
【0019】
ジカルボン酸化合物としては、例えば、芳香族ジカルボン酸化合物、脂肪族ジカルボン酸化合物、及び脂環式ジカルボン酸化合物が挙げられる。
ジカルボン酸化合物の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。
芳香族ジカルボン酸化合物としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられる。これらの中でも、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、ペンタン二酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アゼライン酸、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸が挙げられる。脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは9以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。脂肪族炭化水素基は、直鎖及び分岐鎖のいずれであってもよく、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれであってもよい。炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸としては、例えば、オクテニルコハク酸、ノネニルコハク酸、デセニルコハク酸、ウンデセニルコハク酸、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、トリデセニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、テトラプロペニルコハク酸が挙げられる。
脂環式ジカルボン酸化合物としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
【0020】
これらのジカルボン酸化合物の中でも、カルボン酸成分(A-ac)は、芳香族ジカルボン酸化合物を含むことが好ましく、テレフタル酸を含むことがより好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物の量は、カルボン酸成分(A-ac)中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは65モル%以上、更に好ましくは70モル%以上であり、そして、100モル%以下、更に好ましくは100モル%である。
【0021】
3価以上の多価カルボン酸化合物としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸が挙げられる。これらの中でも、トリメリット酸又はその無水物を含むことが好ましい。
3価以上の多価カルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分(A-ac)中、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、更に好ましくは1モル%以下であり、そして、更に好ましくは0モル%である。
なお、樹脂の分子量や軟化点を調整する観点から、カルボン酸成分(A-ac)には、1価のカルボン酸が、適宜含有されていてもよい。
これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0022】
アルコール成分(A-al)のヒドロキシ基(OH基)に対するカルボン酸成分(A-ac)のカルボキシ基(COOH基)の当量比〔COOH基/OH基〕は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下、更に好ましくは1.0以下である。
【0023】
(樹脂(A)の物性)
樹脂(A)の酸価は、アミン化合物との縮合反応の観点、着色剤との相互作用を高める観点、及び画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは2mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上、更に好ましくは5mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下、更に好ましくは15mgKOH/g以下、更に好ましく10mgKOH/g以下である。
【0024】
樹脂(A)の重量平均分子量は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは2,000以上、より好ましくは3,000以上、更に好ましくは4,000以上であり、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、更に好ましくは10,000以下、更に好ましくは7,000以下である。
【0025】
樹脂(A)の軟化点は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは95℃以上であり、そして、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは110℃以下である。
【0026】
樹脂(A)のガラス転移温度は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下である。
【0027】
樹脂(A)の酸価、重量平均分子量、軟化点、及びガラス転移温度は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。それらの値は、後述の実施例に記載の方法により求められる。なお、樹脂(A)を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた物性の値がそれぞれ前記範囲内であることが好ましい。
【0028】
(樹脂(A)の製造)
樹脂(A)は、例えば、アルコール成分(A-al)及びカルボン酸成分(A-ac)を含む原料モノマー(A)による重縮合反応を行う工程(a)を含む方法により製造してもよい。
工程(a)において、必要に応じて、ジオクチル酸錫(II)、酸化ジブチル錫、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のエステル化触媒を原料モノマー(A)の総量100質量部に対し0.01質量部以上5質量部以下;没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸と同じ。)等のエステル化助触媒を原料モノマー(A)の総量100質量部に対し0.001質量部以上0.5質量部以下用いて重縮合してもよい。
また、重縮合反応にフマル酸等の不飽和結合を有するモノマーを使用する際には、必要に応じて原料モノマー(A)の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上0.5質量部以下のラジカル重合禁止剤を用いてもよい。ラジカル重合禁止剤としては、例えば、4-tert-ブチルカテコールが挙げられる。
重縮合反応の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは260℃以下、より好ましくは240℃以下である。なお、重縮合は、不活性ガス雰囲気中にて行ってもよい。
【0029】
〔アミン化合物〕
アミン化合物は、好ましくはアミノ基(-NH2、-NHR、-NRR’)を有する化合物である。ここで、R、R’は炭素数1以上5以下の炭化水素基を表す。アミン化合物は、樹脂(A)の酸基と縮合反応して、樹脂(A)の分子骨格中に取り込まれうる化合物である。
アミン化合物は、アミノ基以外の官能基を含んでもよい。該官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、ホルミル基、アセタール基、オキシム基、チオール基が挙げられる。
アミン化合物の量は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは7質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
【0030】
アミン化合物としては、例えば、ポリアルキレンイミン、ポリアリルアミン、(ポリ)エチレンポリアミン、アルカノールアミン、アルキルアミンが挙げられる。
【0031】
ポリアルキレンイミンは、好ましくはアルキレン基の炭素数が1以上5以下であるポリアルキレンイミン、より好ましくはアルキレン基の炭素数が2以上4以下であるポリアルキレンイミン、更に好ましくはポリエチレンイミン又はポリプロピレンイミン、更に好ましくはポリエチレンイミンである。
ポリアルキレンイミンの数平均分子量は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは150以上、より好ましくは500以上、更に好ましくは800以上、更に好ましくは1,000以上、更に好ましくは2,000以上であり、そして、好ましくは10,000以下、より好ましくは5,000以下、更に好ましくは4,000以下である。
該数平均分子量の値は、実施例に記載の方法により求められる。
【0032】
ポリアリルアミンとしては、アリルアミン、ジメチルアリルアミン、ジアリルアミン等のアリルアミン化合物の単独重合体又は共重合体などのアミノ基を側鎖に有するポリマーが挙げられる。
ポリアリルアミンの重量平均分子量は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは800以上、より好ましくは1,000以上、更に好ましくは1,300以上であり、そして、好ましくは10,000以下、より好ましくは5,000以下、更に好ましくは4,000以下、更に好ましくは3,000以下、更に好ましくは2,000以下である。
該重量平均分子量の値は、実施例に記載の方法により求められる。
【0033】
(ポリ)エチレンポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等が挙げられる。これらの中でも、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが好ましい。
【0034】
アルカノールアミンとしては、好ましくは炭素数2以上9以下のアルカノールアミンである。アルカノールアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、モノブタノールアミン等の1級アルカノールアミン;N-メチルエタノールアミン、N-メチルプロパノールアミン等のモノアルカノール2級アミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のジアルカノール2級アミンなどの2級アルカノールアミン;N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチルプロパノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン等のモノアルカノール3級アミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン等のジアルカノール3級アミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のトリアルカノール3級アミンなどの3級アルカノールアミンが挙げられる。これらの中でも、炭素数2以上9以下の3級アルカノールアミンが好ましく、炭素数2以上9以下のモノアルカノール3級アミンがより好ましく、N,N-ジメチルエタノールアミンが更に好ましい。
【0035】
アルキルアミンとしては、好ましくは炭素数1以上6以下のアルキルアミンである。アルキルアミンとしては、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン等の1級アミン;ジエチルアミン、ジプロピルアミン等の2級アミンが挙げられる。
アミン化合物は1種又は2種以上を用いてもよい。
【0036】
これらの中でも、アミン化合物は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは、アルキレン基の炭素数が1以上5以下であるポリアルキレンイミン、ポリアリルアミン、(ポリ)エチレンポリアミン、炭素数2以上9以下のアルカノールアミン、及び炭素数が1以上6以下のアルキルアミンから選ばれる1種以上を含み、より好ましくは、アルキレン基の炭素数が1以上5以下であるポリアルキレンイミン、ポリアリルアミン、(ポリ)エチレンポリアミン、及び炭素数2以上9以下の3級アルカノールアミンから選ばれる1種以上を含み、更に好ましくは、アルキレン基の炭素数が1以上5以下であるポリアルキレンイミン、ポリアリルアミン、及び炭素数2以上9以下の3級アルカノールアミンから選ばれる1種以上を含み、更に好ましくは、アルキレン基の炭素数が1以上5以下であるポリアルキレンイミン、及びポリアリルアミンから選ばれる1種以上を含み、更に好ましくは、アルキレン基の炭素数が1以上5以下であるポリアルキレンイミンを含み、更に好ましくはポリエチレンイミンを含む。
アミン化合物がアルキレン基の炭素数が1以上5以下であるポリアルキレンイミンを含む場合、アミン化合物中のアルキレン基の炭素数が1以上5以下であるポリアルキレンイミンの総量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、そして、100質量%以下、更に好ましくは100質量%である。
【0037】
(樹脂組成物(P)の物性)
樹脂組成物(P)の軟化点は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは95℃以上であり、そして、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは110℃以下である。
【0038】
樹脂組成物(P)のガラス転移温度は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下である。
【0039】
樹脂組成物(P)の軟化点、及びガラス転移温度は、原料の種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。それらの値は、後述の実施例に記載の方法により求められる。なお、樹脂組成物(P)を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた物性の値がそれぞれ前記範囲内であることが好ましい。
【0040】
(樹脂組成物(P)の製造)
樹脂組成物(P)は、前述のとおり、酸基を有する非晶性ポリエステル系樹脂(A)とアミン化合物とを縮合させて得られる。
樹脂組成物(P)の製造方法は、例えば、
工程1:酸基を有する非晶性ポリエステル系樹脂(A)とアミン化合物とを縮合させて樹脂組成物(P)を得る工程、
を含む。
【0041】
工程1における縮合時の温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは235℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは170℃以下である。
【0042】
工程1でのアミン化合物の配合量は、着色剤の分散性を向上させ、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは7質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
【0043】
本発明のトナー中、樹脂組成物(P)の含有量は、着色剤の分散性を向上させ、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、トナーの樹脂成分の合計量中の含有量として、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。
【0044】
<エステル組成物(C)>
エステル組成物(C)は、前述のとおり、エステル組成物(CI)及びエステル組成物(CII)から選ばれる1種以上である。
エステル組成物(C)は、エステル基を有するため、樹脂組成物(P)との親和性が高く、また、ポリエステル構造として炭素数10以上30以下の脂肪族モノカルボン酸化合物又は脂肪族モノアルコールに由来する脂肪族炭化水素基を含み、疎水的で低分子であるため、着色剤への湿潤剤的な作用を発現し、着色剤の分散性をさらに向上させると考えられる。その結果、画像濃度及び光沢を向上させることができると考えられる。エステル組成物(C)は、エステル組成物(CI)とエステル組成物(CII)とを併用してもよいが、前記観点から、エステル組成物(CI)及びエステル組成物(CII)のいずれかであることが好ましい。すなわち、本発明は、好ましくはエステル組成物(C)がエステル組成物(CI)である実施態様又はエステル組成物(C)がエステル組成物(CII)である実施態様であり、より好ましくはエステル組成物(C)がエステル組成物(CI)である実施態様である。
【0045】
〔エステル組成物(CI)〕
エステル組成物(CI)は、炭素数10以上30以下の脂肪族モノカルボン酸化合物を20モル%以上含むカルボン酸成分(CI-ac)と、炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族アルコールを90モル%以上含むアルコール成分(CI-al)との縮合物を含有するエステル組成物である。
本発明において、カルボン酸成分(CI-ac)は、エステル組成物(CI)を構成するカルボン酸成分を意味し、アルコール成分(CI-al)は、エステル組成物(CI)を構成するアルコール成分を意味する。
【0046】
(カルボン酸成分(CI-ac))
脂肪族モノカルボン酸化合物の炭素数は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは12以上、より好ましくは14以上、更に好ましくは16以上、更に好ましくは18以上であり、そして、低温定着性の観点から、30以下であり、好ましくは28以下、より好ましくは26以下、更に好ましくは24以下、更に好ましくは22以下である。
脂肪族モノカルボン酸化合物は、飽和脂肪族モノカルボン酸化合物及び不飽和脂肪族モノカルボン酸化合物のいずれであってもよいが、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、飽和脂肪族モノカルボン酸が好ましい。
飽和脂肪族モノカルボン酸化合物としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸が挙げられる。中でも、低温定着性の観点、並びに画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、ステアリン酸、ベヘン酸がより好ましく、ステアリン酸が更に好ましい。
【0047】
カルボン酸成分(CI-ac)は、脂肪族モノカルボン酸化合物以外の他のカルボン酸化合物を含んでもよい。他のカルボン酸化合物としては、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸化合物、芳香族ジカルボン酸化合物、及び脂環式ジカルボン酸化合物、3価以上の多価カルボン酸化合物が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸化合物の炭素数は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
脂肪族ジカルボン酸化合物は、飽和脂肪族ジカルボン酸化合物及び不飽和脂肪族ジカルボン酸化合物のいずれであってもよい。
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、例えば、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸が挙げられる。中でも、セバシン酸が好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物、脂環式ジカルボン酸化合物、及び3価以上の多価カルボン酸化合物の例は、先に例示したものと同様である。
【0048】
脂肪族モノカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分(CI-ac)中、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは40モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、そして、好ましくは100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
【0049】
(アルコール成分(CI-al))
2価以上の脂肪族アルコールの炭素数は、画像濃度及び光沢の観点から、2以上であり、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは8以上であり、そして、低温定着性の観点から、14以下であり、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。
2価以上の脂肪族アルコールは、直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。
直鎖又は分岐の脂肪族ジオールとしては、飽和脂肪族ジオール及び不飽和脂肪族ジオールのいずれであってもよいが、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、飽和脂肪族ジオールが好ましい。
飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール等が挙げられる。中でも、低温定着性の観点、並びに画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、エチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオールが好ましく、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオールがより好ましい。
脂環式ジオール及び3価以上の多価アルコールの例は、先に例示したものと同様である。3価以上の多価アルコールは、グリセリンが好ましい。
【0050】
2価以上の脂肪族アルコールの含有量は、アルコール成分(CI-al)中、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは95モル%以上、より好ましくは97モル%以上であり、そして、好ましくは100モル%以下、更に好ましくは100モル%である。
【0051】
エステル組成物(CI)は、低温定着性の観点、並びに画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは分子中にエステル基を2個有する化合物(以下、「ジエステル化合物」ともいう。)を含む合成エステル組成物である。ジエステル化合物は、溶融粘度が低く、トナーを溶融混練法により製造する場合には、前述の湿潤剤的な作用に加えて、着色剤を分散する際のぬれの過程において着色剤粒子凝集体の隙間へのジエステル化合物の浸透が進み、着色剤粒子の凝縮力を低下し、分散機の機械的な力によって解砕され易くなると考えられる。その結果、着色剤の分散性が向上し、画像濃度及び光沢がより向上すると考えられる。当該観点から、エステル組成物(CI)は、好ましくは、炭素数10以上30以下の脂肪族モノカルボン酸化合物と炭素数2以上14以下の脂肪族ジオールとの縮合物を含むものであり、より好ましくは炭素数16以上24以下の脂肪族モノカルボン酸化合物と炭素数2以上14以下の脂肪族ジオールとの縮合物を含むものであり、更に好ましくは炭素数16以上24以下の脂肪族モノカルボン酸化合物と炭素数6以上14以下の脂肪族ジオールとの縮合物を含むものである。
【0052】
〔エステル組成物(CII)〕
エステル組成物(CII)は、炭素数10以上30以下の脂肪族モノアルコールを20モル%以上含むアルコール成分(CII-al)と、炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族カルボン酸化合物を90モル%以上含むカルボン酸成分(CII-ac)との縮合物を含有するエステル組成物である。
本発明において、アルコール成分(CII-al)は、エステル組成物(CII)を構成するアルコール成分を意味し、カルボン酸成分(CII-ac)は、エステル組成物(CII)を構成するカルボン酸成分を意味する。
【0053】
(アルコール成分(CII-al))
脂肪族モノアルコールの炭素数は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは12以上、より好ましくは14以上、更に好ましくは16以上、更に好ましくは18以上であり、そして、低温定着性の観点から、30以下であり、好ましくは28以下、より好ましくは26以下、更に好ましくは24以下、更に好ましくは22以下である。
脂肪族モノアルコールは、飽和脂肪族モノアルコール及び不飽和脂肪族モノアルコールのいずれであってもよい。画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、飽和脂肪族モノアルコールが好ましい。
脂肪族モノアルコールとしては、例えば、カプリンアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、パルミチルアルコール、ベヘニルアルコールが挙げられる。中でも、ステアリルアルコール、べへニルアルコールが好ましく、ステアリルアルコールがより好ましい。
アルコール成分(CII-al)は、脂肪族モノアルコール以外の他のアルコールを含んでもよい。他のアルコールとしては、直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。
直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールの例は、先に例示したものと同様である。
中でも、脂肪族モノアルコール以外の他のアルコールは、飽和脂肪族ジオールが好ましく、1,12-ドデカンジオールがより好ましい。
【0054】
脂肪族モノアルコールの含有量は、アルコール成分(CII-al)中、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上、更に好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、好ましくは100モル%以下、更に好ましくは100モル%である。
【0055】
(カルボン酸成分(CII-ac))
2価以上の脂肪族カルボン酸化合物の炭素数は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは8以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは12以下である。
2価以上の脂肪族カルボン酸化合物としては、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸化合物、3価以上の脂肪族カルボン酸化合物が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸化合物は、飽和脂肪族ジカルボン酸化合物及びで不飽和脂肪族ジカルボン酸化合物のいずれであってもよい。
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸等が挙げられる。
3価以上の脂肪族カルボン酸化合物としては、アコニット酸等が挙げられる。
中でも、2価以上の脂肪族カルボン酸化合物は、低温定着性の観点、並びに画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、飽和脂肪族ジカルボン酸化合物が好ましく、セバシン酸がより好ましい。
【0056】
カルボン酸成分(CII-ac)は、2価以上の脂肪族カルボン酸化合物以外の他のカルボン酸化合物を含んでもよい。他のカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸化合物、及び脂環式ジカルボン酸化合物が挙げられる。芳香族ジカルボン酸化合物、脂環式ジカルボン酸化合物の例は、先に例示したものと同様である。
【0057】
2価以上の脂肪族カルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分(CII-ac)中、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは95モル%以上、より好ましくは97モル%以上であり、そして、好ましくは100モル%以下、更に好ましくは100モル%である。
【0058】
エステル組成物(CII)は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは分子中にエステル基を2個有するジエステル化合物を含む合成エステル組成物である。該ジエステル化合物は、溶融粘度が低く、前述のエステル組成物(CI)におけるジエステル化合物と同様に、着色剤の分散性が向上し、画像濃度及び光沢がより向上すると考えられる。当該観点から、エステル組成物(CII)としては、好ましくは、炭素数10以上30以下の脂肪族モノアルコールと炭素数2以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物との縮合物を含むものであり、より好ましくは炭素数16以上24以下の脂肪族モノアルコールと炭素数2以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物との縮合物を含むものであり、更に好ましくは炭素数16以上24以下の脂肪族モノアルコールと炭素数6以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物との縮合物を含むものである。
【0059】
以上のとおり、エステル組成物(C)は、ジエステル化合物として炭素数10以上30以下の脂肪族モノカルボン酸化合物と炭素数2以上14以下の脂肪族ジオールとの縮合物を含むエステル組成物(CI)、又はジエステル化合物として炭素数10以上30以下の脂肪族モノアルコールと炭素数2以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物との縮合物を含むエステル組成物(CII)が更に好ましく、ジエステル化合物として炭素数10以上30以下の脂肪族モノカルボン酸化合物と炭素数2以上14以下の脂肪族ジオールとの縮合物を含むエステル組成物(CI)が更に好ましい。
【0060】
〔エステル組成物(C)の物性〕
エステル組成物(C)の酸価は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは0.2mgKOH/g以上、より好ましくは1mgKOH/g以上、更に好ましくは2mgKOH/g以上、更に好ましくは3mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは45mgKOH/g以下、より好ましくは40mgKOH/g以下、更に好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下、更に好ましくは10mgKOH/g以下、更に好ましくは5mgKOH/g以下である。
エステル組成物(C)がエステル組成物(CI)である場合、エステル組成物(C)の酸価は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは0.2mgKOH/g以上、より好ましくは1mgKOH/g以上、更に好ましくは2mgKOH/g以上、更に好ましくは3mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは45mgKOH/g以下、より好ましくは40mgKOH/g以下、更に好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは10mgKOH/g以下、更に好ましくは5mgKOH/g以下である。
エステル組成物(C)がエステル組成物(CII)である場合、エステル組成物(C)の酸価は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上、更に好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは45mgKOH/g以下、より好ましくは40mgKOH/g以下、更に好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下である。
【0061】
エステル組成物(C)の重量平均分子量は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、更に好ましくは700以上、更に好ましくは1,000以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは10,000以下、より好ましくは7,000以下、更に好ましくは5,000以下、更に好ましくは3,000以下、更に好ましくは2,000以下、更に好ましくは1,500以下である。
【0062】
エステル組成物(C)の軟化点は、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
【0063】
エステル組成物(C)は、好ましくは結晶性であり、融点を有するものである。エステル組成物(C)の融点は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
【0064】
エステル組成物(C)の酸価、重量平均分子量、軟化点、及び融点は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。それらの値は、後述の実施例に記載の方法により求められる。なお、エステル組成物(C)を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた物性の値がそれぞれ前記範囲内であることが好ましい。
【0065】
〔エステル組成物(C)の製造〕
エステル組成物(C)は、エステル組成物(CI)又はエステル組成物(CII)を製造して得ることができる。例えば、エステル組成物(CI)は、アルコール成分(CI-al)及びカルボン酸成分(CI-ac)を含む原料モノマーを、不活性ガス雰囲気中、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒、ラジカル重合禁止剤等の存在下、好ましくは130℃以上、より好ましくは170℃以上、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下の温度で縮合させて製造することができる。エステル組成物(CII)は、エステル組成物(CI)と同様に、アルコール成分(CII-al)及びカルボン酸成分(CII-ac)を含む原料モノマーを用いて製造することができる。
【0066】
エステル組成物(CI)及びエステル組成物(CII)の製造におけるエステル化触媒及びエステル化助触媒の例としては、先に例示したものと同様である。ラジカル重合禁止剤としては、4-tert-ブチルカテコール等が挙げられる。エステル組成物(CI)及びエステル組成物(CII)の製造におけるこれらの成分の使用量は以下のとおりである。
エステル化触媒の使用量は、原料モノマーの総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上であり、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
エステル化助触媒の使用量は、原料モノマーの総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
ラジカル重合禁止剤の使用量は、原料モノマーの総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
【0067】
本発明のトナー中、エステル組成物(C)の含有量は、着色剤の分散性を向上させ、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、トナーの樹脂成分の合計量中の含有量として、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下である。
【0068】
本発明のトナー中、樹脂組成物(P)の含有量に対するエステル組成物(C)の含有量の質量比〔エステル組成物(C)/樹脂組成物(P)〕は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上、更に好ましくは0.05以上であり、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.1以下である。
【0069】
本発明のトナーの樹脂成分は、樹脂組成物(P)及びエステル組成物(C)に加えて、非晶性ポリエステル系樹脂、結晶性ポリエステル系樹脂等の他の樹脂を含有してもよいが、本発明のトナー中、樹脂組成物(P)及びエステル組成物(C)の合計含有量は、トナーの樹脂成分の合計量中の合計含有量として、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
【0070】
<非晶性ポリエステル系樹脂(B)>
本発明のトナーは、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、樹脂組成物(P)及びエステル組成物(C)に加えて、好ましくは更に非晶性ポリエステル系樹脂(B)(以下、単に「樹脂(B)」ともいう。)を含有する。樹脂(B)は、前述の樹脂(A)と同じものであってもよいが、好ましくは前述の樹脂(A)の軟化点と異なる軟化点を有するものであり、より好ましくは前述の樹脂(A)の軟化点より高い軟化点を有するものである。
樹脂(B)は、好ましくはアルコール成分(B-al)とカルボン酸成分(B-ac)との重縮合物である非晶性ポリエステル樹脂である。
樹脂(B)のアルコール成分(B-al)及びカルボン酸成分(B-ac)の例は、前述の樹脂(A)のアルコール成分(A-al)及びカルボン酸成分(A-ac)の例と同様である。
アルコール成分(B-al)としては、BPA-AOが好ましい。
BPA-AOは、好ましくはBPA-PO、BPA-EOであり、より好ましくはBPA-POである。すなわち、アルコール成分(B-al)は、BPA-POを含むことが好ましい。
【0071】
カルボン酸成分(B-ac)としては、芳香族ジカルボン酸化合物、脂肪族ジカルボン酸化合物、3価以上の多価カルボン酸化合物が好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物としては、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物の量は、カルボン酸成分(B-ac)中、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは70モル%以下、より好ましくは60モル%以下、更に好ましくは50モル%以下である。
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、アジピン酸が好ましい。
脂肪族ジカルボン酸化合物の量は、カルボン酸成分(B-ac)中、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上であり、そして、好ましくは60モル%以下、より好ましくは50モル%以下、更に好ましくは40モル%以下である。
3価以上の多価カルボン酸化合物としては、トリメリット酸又はその無水物が好ましい。
3価以上の多価カルボン酸化合物の量は、カルボン酸成分(B-ac)中、好ましくは1モル%以上、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは20モル%以上であり、そして、好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下、更に好ましくは30モル%以下である。
【0072】
(樹脂(B)の物性)
樹脂(B)の酸価は、好ましくは2mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは25mgKOH/g以下である。
【0073】
樹脂(B)の軟化点は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上、更に好ましくは115℃以上、更に好ましくは120℃以上、更に好ましくは120℃超であり、そして、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは150℃以下、更に好ましくは140℃以下、更に好ましくは130℃以下である。
樹脂(A)の軟化点が80℃以上120℃以下である場合、樹脂(B)の軟化点は、好ましくは120℃超、より好ましくは125℃以上、更に好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは170℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは140℃以下である。
樹脂(A)と樹脂(B)の軟化点の差は、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上、更に好ましくは30℃以上であり、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下である。
【0074】
樹脂(B)のガラス転移温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更に好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
【0075】
樹脂(B)の酸価、軟化点、ガラス転移温度は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。それらの値は、後述の実施例に記載の方法により求められる。なお、樹脂(B)を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた物性の値がそれぞれ前記範囲内であることが好ましい。
【0076】
本発明のトナー中、樹脂(B)の含有量は、トナーの樹脂成分の合計量中の含有量として、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0077】
本発明のトナー中、トナーの樹脂成分の合計含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは98質量%以下、より好ましくは94質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。
【0078】
<着色剤>
着色剤は、顔料又は染料のいずれであってもよい。
顔料としては、例えば、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料、レーキ顔料が挙げられる。
アゾ顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド3等の不溶性アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド48:1等の溶性アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド144等の縮合アゾ顔料が挙げられる。
フタロシアニン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15:3等の銅フタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン58等のポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料が挙げられる。
縮合多環顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド177等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド123等のペリレン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ43等のペリノン系顔料、C.I.ピグメントレッド122等のキナクリドン系顔料、C.I.ピグメントレッド269等のナフトール系顔料、C.I.ピグメントバイオレット23等のジオキサジン系顔料、C.I.ピグメントイエロー139、185等のイソインドリノン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ66等のイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントイエロー138等のキノフタロン系顔料、C.I.ピグメントイエロー150等のニッケルアゾ錯体系顔料、C.I.ピグメントレッド88等のインジゴ系顔料、C.I.ピグメントグリーン8等の金属錯体顔料、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントオレンジ71等のジケトピロロピロール系顔料が挙げられる。
レーキ顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド57:1が挙げられる。
これらの中では、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、フタロシアニン顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ナフトール系顔料、レーキ顔料が好ましく、フタロシアニン顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料がより好ましく、フタロシアニン顔料が更に好ましく、C.I.ピグメントブルー15:3等の銅フタロシアニン顔料が更に好ましい。
なお、本発明のトナーにおいては、着色剤として顔料を用いる場合、前述したとおり、樹脂組成物(P)により顔料のトナー中での微分散化が向上し、更にエステル組成物(C)の着色剤への湿潤剤的な作用により、顔料の分散性を向上させる効果を発現することができる。そのため、フタロシアニン顔料のみならず、従来、顔料分散性が不十分であった顔料である、キナクリドン系顔料やナフトール系顔料に対しても良好な顔料分散性を得ることができる。
【0079】
染料としては、例えば、アジン系染料、アントラキノン系染料、ペリノン系染料、ローダミン染料が挙げられる。染料として、より具体的に、例えば、C.I.ソルベントブラック5、C.I.ソルベントブラック7、スピリットブラックSB、トルイジンブルー、C.I.ソルベントブルー11、C.I.ソルベントブルー12、C.I.ソルベントブルー35、C.I.ソルベントブルー59、C.I.ソルベントブルー74、1-アミノアントラキノン、2-アミノアントラキノン、ヒドロキシエチルアミノアントラキノン、C.I.ソルベントバイオレット47、ソルベントオレンジ60、ソルベントオレンジ78、ソルベントオレンジ90、ソルベントバイオレット29、ソルベントレッド135、ソルベントレッド162、ソルベントレッド179、ローダミン-Bベースが挙げられる
【0080】
着色剤は、これらの中でも、本発明の効果をより享受する観点から、顔料が好ましい。着色剤の色相は特に限定されず、イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0081】
着色剤の含有量は、トナーの画像濃度を向上させる観点から、トナーの樹脂成分全量100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、更に好ましくは7質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、更に好ましくは10質量部超であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。
【0082】
<着色剤誘導体>
本発明のトナーは、着色剤誘導体を含有してもよい。着色剤誘導体は、例えば、酸性基又は塩基性基が導入された着色剤又はその塩が挙げられる。
着色剤誘導体は、スルホ基が導入された着色剤又はその塩が好ましい。
着色剤として、C.I.ピグメントブルー15:3を用いた場合の着色剤誘導体としては、スルホ基が導入された銅フタロシアニン化合物又はその塩が好ましい。
塩としては、例えば、ハロゲン化物塩、アミン塩、4級アンモニウム塩が挙げられる。
着色剤誘導体としては、銅フタロシアニンのスルホン化物又はその塩が好ましい。
着色剤誘導体の市販品としては、例えば、「SOLSPERS」シリーズの「5000S」、「22000」(以上、日本ルブリゾール株式会社製)等が挙げられる。
【0083】
本発明のトナーが着色剤誘導体を含有する場合、着色剤誘導体の含有量は、トナーの画像濃度を向上させる観点から、着色剤100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0084】
<離型剤>
本発明のトナーは、離型剤を含有してもよい。
離型剤としては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス;マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス又はそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス又はそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
離型剤の融点は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは75℃以上であり、そして、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
【0085】
離型剤の含有量は、トナーの樹脂成分全量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.8質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
【0086】
<荷電制御剤>
本発明のトナーは、荷電制御剤を含有してもよい。荷電制御剤は、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロン(登録商標)N-01」、「ボントロン(登録商標)N-04」、「ボントロン(登録商標)N-07」、「ボントロン(登録商標)N-09」、「ボントロン(登録商標)N-11」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロン(登録商標)P-51」(オリヱント化学工業株式会社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業株式会社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業株式会社製)等;スチレン-アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成株式会社製)等が挙げられる。
【0087】
負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファスト(登録商標)ブラック3804」、「ボントロン(登録商標)S-31」、「ボントロン(登録商標)S-32」、「ボントロン(登録商標)S-34」、「ボントロン(登録商標)S-36」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業株式会社製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット株式会社製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロン(登録商標)E-81」、「ボントロン(登録商標)E-84」、「ボントロン(登録商標)E-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)、「TN-105」(保土谷化学工業株式会社製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE PX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。これらの荷電制御剤は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0088】
荷電制御剤の含有量は、トナーの樹脂成分全量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
【0089】
<その他添加剤>
トナー粒子は、その他添加剤として、更に、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を適宜含有してもよい。
【0090】
本発明のトナー中、トナー粒子の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下、好ましくは99質量%以下である。
【0091】
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、更に好ましくは10μm以下である。本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0092】
<外添剤>
本発明のトナーには、流動性を向上させるために、更に外添剤を含有させてもよい。外添剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化スズ、酸化亜鉛等の無機材料の微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂粒子等の有機微粒子が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。これらの外添剤の中では、シリカが好ましく、疎水化処理剤で処理された疎水性シリカがより好ましい。
【0093】
疎水化処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシランが挙げられる。これらの中でもヘキサメチルジシラザンが好ましい。
【0094】
外添剤を用いて、トナー粒子の表面処理を行う場合、本発明のトナー中の該外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性の観点から、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.08質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
【0095】
[トナーの製造方法]
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、懸濁重合法、乳化凝集法等の公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。
本発明において、溶融混練法は、着色剤、樹脂組成物(P)、及びエステル組成物(C)を含むトナー原料を溶融混練し、得られた溶融混練物を粉砕してトナーを製造する方法である。
【0096】
粉砕トナーである場合、トナーの製造方法は、例えば
工程1:酸基を有する非晶性ポリエステル系樹脂(A)とアミン化合物とを縮合させて樹脂組成物(P)を得る工程、
工程2:工程1で得られた樹脂組成物(P)、着色剤、及びエステル組成物(C)を含むトナー原料を溶融混練する工程、及び
工程3:工程2で得られた溶融混練物を粉砕、分級しトナー粒子を得る工程
を含む。
【0097】
工程2では、トナー原料中に、荷電制御剤等のその他添加剤を含んでいてもよい。これらのトナー原料は、あらかじめヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましい。
溶融混練の温度は、着色剤、荷電制御剤等のその他の添加剤の結着樹脂中への分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及びトナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは95℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、より好ましくは130℃以下である。
溶融混練における滞留時間は、用いる混練機やトナー原料のスケールにもよるが、好ましくは10秒以上、より好ましくは13秒以上、更に好ましくは15秒以上であり、そして、好ましくは30分以下、より好ましくは10分以下、更に好ましくは5分以下、更に好ましくは1分以下、更に好ましくは30秒以下である。平均滞留時間とは、トナー原料を混練機に供給してから排出されるまでの時間をいう。
工程2の溶融混練には、密閉式ニーダー、一軸押出機、又は二軸押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができる。中でも、結晶を溶融混練する観点から、高温条件に設定することのできる二軸押出機が好ましく、軸の回転方向が同方向に回転できる同方向回転二軸押出機がより好ましい。
【0098】
二軸押出機は、混練部が密閉されており、混練の際に発生する混練熱により各材料を容易に溶融することができる。
二軸押出機の設定温度は、押出機の構造上、材料の溶融特性に影響されず、意図した温度にて溶融混練することが容易である。
二軸押出機の設定温度(バレル設定温度)は、前述の溶融混練の温度範囲と同じ範囲に調整することが好ましい。
二軸押出機の回転周速度は、荷電制御剤及び着色剤等のその他の添加剤のトナー中での分散性を向上させる観点、及び、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点から、同方向回転二軸押出機の場合、好ましくは5m/min以上、より好ましくは10m/min以上、更に好ましくは15m/min以上であり、そして、好ましくは50m/min以下、より好ましくは40m/min以下、更に好ましくは30m/min以下である。
工程2で得られた溶融混練物を、粉砕が可能な程度に冷却した後、続く工程3に供する。
【0099】
工程3の粉砕は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、溶融混練物を硬化させて得られた樹脂混練物を、1mm以上5mm以下に粗粉砕した後、更に所望の粒径に微粉砕してもよい。
なお、工程3において、粗粉砕及び微粉砕に用いられる粉砕機、並びに分級に用いられる分級機は、公知の装置を適宜選択して使用することができる。例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、ハンマーミル、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられる。微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、流動層式ジェットミル、衝突板式ジェットミル、回転型機械式ミル等が挙げられ、粉砕効率の観点から、流動層式ジェットミル、及び衝突板式ジェットミルが好ましく、衝突板式ジェットミルがより好ましい。
工程3の分級に用いられる分級機としては、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕に供してもよく、必要に応じて粉砕と分級を繰り返してもよい。
【0100】
本発明のトナーの製造方法は、得られたトナー粒子と外添剤を混合する工程を更に有していてもよい。
トナー粒子と外添剤との混合には、回転羽根等の撹拌具を備えた混合機を用いることが好ましく、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速混合機が好ましく、ヘンシェルミキサーがより好ましい。
【0101】
本発明のトナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる。当該トナーは、一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
【実施例】
【0102】
原料等の各性状等については、次の方法により、測定、評価した。
【0103】
[測定]
〔樹脂及びエステル組成物の酸価〕
酸価は、JIS K0070:1992の方法に基づき測定した。ただし、該方法において、測定溶媒のみエタノールとエーテルの混合溶媒から、非晶性ポリエステル系樹脂の場合はアセトンとトルエンの混合溶媒〔アセトン:トルエン=1:1(容量比)〕に、エステル組成物の場合はクロロホルムに変更した。
【0104】
〔樹脂及びエステル組成物の重量平均分子量〕
以下の方法により得られる、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、重量平均分子量を求めた。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料を、テトラヒドロフラン(非晶性ポリエステル系樹脂の場合)又はクロロホルム(エステル組成物の場合)に、25℃で溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「DISMIC-25JP」(ADVANTEC製)又はポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業株式会社製)(エステル組成物の場合)を用いて濾過して不溶解分を除き、試料溶液とした。
(2)分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフラン(非晶性ポリエステル系樹脂の場合)又はクロロホルム(エステル組成物の場合)を、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行った。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出した。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン「A-500」(5.0×102)、「A-1000」(1.01×103)、「A-2500」(2.63×103)、「A-5000」(5.97×103)、「F-1」(1.02×104)、「F-2」(1.81×104)、「F-4」(3.97×104)、「F-10」(9.64×104)、「F-20」(1.90×105)、「F-40」(4.27×105)、「F-80」(7.06×105)、「F-128」(1.09×106)(以上、東ソー株式会社製)を標準試料として作成したものを用いた。括弧内は分子量を示す。
測定装置:「HLC-8220CPC」(東ソー株式会社製)(非晶性ポリエステル系樹脂の場合)、「CO-8010」(東ソー株式会社製)(エステル組成物の場合)
分析カラム:「GMHXL」+「G3000HXL」(東ソー株式会社製)
【0105】
〔樹脂、樹脂組成物、及びエステル組成物の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
【0106】
〔樹脂又は樹脂組成物のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「Q-20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0107】
〔吸熱の最大ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-20」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、室温(20℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した試料をそのままの温度で1分間維持し、その後、昇温速度10℃/minで180℃まで昇温しながら熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最も大きいピークの温度を吸熱の最大ピーク温度とした。
【0108】
〔エステル組成物の融点〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、室温(20℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した試料をそのままの温度で1分間維持し、その後、昇温速度10℃/minで180℃まで昇温しながら、熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にある大きいピーク(すなわち、ピーク面積が最も大きいピーク)の温度を融点とした。
【0109】
〔ポリアルキレンイミンの数平均分子量(Mn)及びポリアリルアミンの重量平均分子量(Mw)〕
以下に示す、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、数平均分子量及び重量平均分子量を求めた。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.2g/100mLになるように、ポリアルキレンイミン又はポリアリルアミンを、0.15モル/LでNa2SO4を1質量%酢酸水溶液に溶解させた溶液に溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業株式会社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(2)分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液として0.15モル/LでNa2SO4を1質量%酢酸水溶液に溶解させた溶液を、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。そこに、試料溶液100μLを注入して測定を行った。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出した。このときの検量線には、数種類の標準プルラン「P-5」(5.9×103)、「P-50」(4.73×104)、「P-200」(2.12×105)、「P-800」(7.08×105)(以上昭和電工株式会社製)を標準試料として作成したものを用いた。括弧内は分子量を示す。
測定装置:「HLC-8320GPC」(東ソー株式会社製)
分析カラム:「α」+「α-M」+「α-M」(東ソー株式会社製)
【0110】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温した後、200℃から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定した。得られた吸熱の最大ピーク温度を融点とした。
【0111】
〔トナー粒子の体積中位粒径(D50)〕
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、次のとおり測定した。
・測定装置:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマン・コールター株式会社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「コールターマルチサイザー(登録商標)IIIバージョン 3.51」(ベックマン・コールター株式会社製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマン・コールター株式会社製)
・分散液:「エマルゲン(登録商標)109P」〔ポリオキシエチレンラウリルエーテル、花王株式会社製、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance、グリフィン法)=13.6〕を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製した。
・測定条件:ビーカー内で、前記試料分散液を、前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、得られた粒度分布から体積中位粒径(D50)を求めた。
【0112】
[樹脂(A)、樹脂(B)の製造]
製造例A1(樹脂A-1の製造)
表1に示す原料モノマー、及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した20リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで2時間かけて昇温を行った。その後235℃にて反応率が90%以上に到達したのを確認し、235℃、40kPaの減圧下で所望の軟化点まで反応を行い、樹脂A-1を得た。各種物性を測定し表1に示した。
【0113】
製造例B1(樹脂B-1の製造)
表1に示す原料モノマーのうち、アジピン酸、無水トリメリット酸以外の原料モノマー、及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した20リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで2時間かけて昇温を行った。その後235℃にて反応率が90%以上に到達したのを確認し、190℃まで冷却し、表1に示すアジピン酸、無水トリメリット酸を加え、2時間かけて210℃まで昇温した。その後210℃にて1時間反応後、40kPaの減圧下で所望の軟化点まで反応を行い、非晶性ポリエステル樹脂B-1を得た。各種物性を測定し表1に示した。
【0114】
【0115】
[樹脂組成物(P)の製造]
製造例P1~P8(樹脂組成物P-1~P-8の製造)
表2に示す原料を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した20リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で150℃まで2時間かけて昇温を行った。その後150℃にて3時間反応を行い、樹脂組成物P-1~P-8を得た。各種物性を測定し表2に示した。
【0116】
【0117】
[エステル組成物(C)(エステル組成物(CI)及び(CII))の製造]
製造例C1~C8(エステル組成物CI-1~CI-3,CII-1~CII-5の製造)
表3及び表4に示す原料モノマーを、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、130℃から200℃まで8時間かけて昇温した後、200℃にて2時間反応させ、さらにエステル化触媒を投入し、8kPaの減圧下で所望の軟化点まで反応を行い、エステル組成物CI-1~CI-3,CII-1~CII-5を得た。
【0118】
【0119】
【0120】
[トナーの製造]
実施例1~15、比較例1~2(トナー1~15,51~52)
表5に示す配合比の樹脂成分を合計100質量部、負帯電性荷電制御剤「ボントロンE-81」(オリエント化学工業株式会社製)1質量部、着色剤「シアニンブルー4927」(大日精化工業株式会社製、C.I.ピグメントブルー15:3)12質量部、及び離型剤「HNP-9」(日本精蝋株式会社製、パラフィンワックス、融点:80℃)2質量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出し機を用い、スクリュー回転速度200r/min、バレル設定温度100℃で溶融混練した。混合物の供給速度は20kg/h、平均滞留時間は約18秒であった。得られた溶融混練物を冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにて粉砕し、分級して、体積中位粒径(D50)が8μmのトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部に、外添剤として疎水性シリカ「AEROSIL NAX 50」(日本アエロジル株式会社製、疎水化処理剤:HMDS、平均粒子径:約30nm)1質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することにより、トナー1~15,51~52を得た。
【0121】
[トナー評価]
〔画像濃度〕
上質紙「J紙A4サイズ」(富士ゼロックス株式会社製)に市販のプリンタ「Microline(登録商標)5400」(株式会社沖データ製)を用いて、トナーの紙上の付着量が0.42~0.48mg/cm2となるベタ画像を出力し、印刷物を得た。
次に、定着器の温度を130℃に設定し、A4縦方向に1枚あたり1.5秒の速度でトナーを定着させて、印刷物を得た。
出力した印刷物の定着画像部分の反射画像濃度を、測色計「SpectroEye」(GretagMacbeth社製、光射条件;標準光源D50、観察視野2°、濃度基準DINNB、絶対白基準)を用いて測定した。反射画像濃度の値が大きいほど、画像濃度に優れる。結果を表5に示した。
【0122】
〔光沢〕
画像濃度の評価と同様の方法で出力した印刷物の定着画像部分の下に厚紙を敷き、光沢度計((株)堀場製作所製、商品名:「IG-330」)を用いて入射角度60°の光射条件にて印刷物の光沢度を測定した。光沢度が高いほど光沢に優れ、光沢度は、好ましくは25以上、より好ましくは35以上、更に好ましくは40以上である。結果を表5に示した。
【0123】
【0124】
表5に示すとおり、特定の樹脂組成物を含有する実施例のトナーは、比較例のトナーと比較して、画像濃度及び光沢に優れることがわかる。