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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】光低反射不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/4291 20120101AFI20240920BHJP
   D01F 6/46 20060101ALI20240920BHJP
   D04H 1/492 20120101ALI20240920BHJP
【FI】
D04H1/4291
D01F6/46 A
D01F6/46 B
D04H1/492
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020157688
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022051287
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【弁理士】
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】野口 有由香
(72)【発明者】
【氏名】松下 淳一
(72)【発明者】
【氏名】宮堂 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】安達 隆宏
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特許第3129602(JP,B2)
【文献】特開2009-280947(JP,A)
【文献】特許第2769001(JP,B2)
【文献】特開2013-023798(JP,A)
【文献】特開2001-146626(JP,A)
【文献】特開平03-014672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 1/00 - 9/04
D04H 1/00 - 18/04
D06M 10/00 - 11/84
D06M 16/00
D06M 19/00 - 23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾式不織布を備え、
前記乾式不織布は、ポリオレフィン系樹脂及び光吸収粒子を含む単一の構成繊維(ただし、複合繊維を除く)のみから構成される、光低反射不織布。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレンである、請求項1に記載の光低反射不織布。
【請求項3】
前記光吸収粒子は、カーボンブラックである、請求項1又は請求項2に記載の光低反射不織布。
【請求項4】
前記乾式不織布は、水流絡合不織布である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の光低反射不織布。
【請求項5】
前記構成繊維の平均繊度は、4.0dtex以下である、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の光低反射不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光低反射不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可視光及び赤外光等の光を吸収する物質を含む繊維が知られている。例えば、特許文献1には、太陽光吸収剤を含むポリエステル短繊維を含む中綿が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-79367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カメラ等の光学機器に反射光が入射することに起因して、光学機器の誤動作が生じることがある。誤動作を防止するために、光を吸収する物質を含む不織布を光学機器に取り付けることが考えられる。しかしながら、不織布に含まれる水分が蒸発し、その後、光学機器の内部で結露が生じることがある。この場合、結露によって光学機器の内部が曇る等の不具合が生じるおそれがある。
【0005】
本開示は、光の反射率が低く、かつ、水分含有量が少ない光低反射不織布を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る光低反射不織布は、不織布を備え、不織布を構成する構成繊維は、ポリオレフィン系樹脂及び光吸収粒子を含む。
【0007】
ポリオレフィン系樹脂の水分含有量は少ないので、光低反射不織布の水分含有量を少なくすることができる。したがって、光低反射不織布が光学機器に取り付けられた際に、光低反射不織布に含まれる水分によって光学機器の内部が結露する可能性が低減される。さらに、構成繊維に含まれている光吸収粒子が光を吸収することによって、光低反射不織布の光反射率を抑えることができる。その結果、光の反射率が低く、かつ、水分含有量が少ない光低反射不織布を提供することができる。
【0008】
本開示の別の側面に係る光低反射不織布は、不織布と、不織布に担持された光吸収粒子と、を備える。不織布を構成する構成繊維は、ポリオレフィン系樹脂を含む。
【0009】
ポリオレフィン系樹脂の水分含有量は少ないので、光低反射不織布の水分含有量を少なくすることができる。したがって、光低反射不織布が光学機器に取り付けられた際に、光低反射不織布に含まれる水分によって光学機器の内部が結露する可能性が低減される。さらに、不織布に担持されている光吸収粒子が光を吸収することによって、光低反射不織布の光反射率を抑えることができる。その結果、光の反射率が低く、かつ、水分含有量が少ない光低反射不織布を提供することができる。
【0010】
ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレンであってもよい。ポリオレフィン系樹脂の中でも特にポリプロピレンの水分含有量は少ないので、光低反射不織布の水分含有量をより一層少なくすることができる。したがって、光低反射不織布が光学機器に取り付けられた際に、光低反射不織布に含まれる水分によって光学機器の内部が結露する可能性が更に低減される。
【0011】
光吸収粒子は、カーボンブラックであってもよい。カーボンブラックは、光吸収粒子の中でも高い光吸収率を有する。したがって、光低反射不織布の光反射率を更に抑えることができる。
【0012】
不織布は、乾式不織布であってもよい。スパンボンド不織布等の直接紡糸不織布においては、繊維同士が接着した部分の光反射率が高くなるので、不織布の光反射率は高くなる。一方、乾式不織布においては、繊維同士が接着していないことから、高い光反射率を有する部分が形成されない。したがって、上記構成によれば、光低反射不織布の光反射率を更に抑えることができる。
【0013】
乾式不織布は、水流絡合不織布であってもよい。水流絡合不織布は、乾式不織布の中でも比較的薄い厚さを有する。したがって、光低反射不織布の体積を抑えることができる。例えば、光低反射不織布を光学機器に取り付けるためのスペースが狭くても、光低反射不織布を取り付けることができる。
【0014】
構成繊維の平均繊度は、4.0dtex以下であってもよい。この構成においては、不織布が4.0dtex以下の平均繊度を有する細い繊維から構成されている。不織布の構成繊維が細い場合、不織布の表面で乱反射が起こりやすい。したがって、結果的に、光低反射不織布の光反射率をより一層抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれは、光の反射率が低く、かつ、水分含有量が少ない光低反射不織布が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態が詳細に説明される。なお、本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。個別に記載された上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
【0017】
<光低反射不織布>
本実施形態に係る光低反射不織布は、反射光を抑制する不織布であり、例えば、カメラ等の光学機器に入射する反射光を低減するために用いられる。カメラの例としては、自動車に設けられるセンサーカメラが挙げられる。本実施形態に係る光低反射不織布は、乾式不織布を備える。
【0018】
(乾式不織布)
乾式不織布は、乾式法によって製造された不織布である。乾式法は、カード機を用いて繊維ウェブを形成する製造方法である。乾式不織布の例としては、水流で構成繊維を絡合する水流絡合不織布、及びニードルパンチで構成繊維を絡合するニードルパンチ不織布が挙げられる。乾式不織布の目付は、繊維同士が良く絡み合うように、また、取り扱い性に優れるように、例えば、100g/m以下が好ましく、80g/m以下がより好ましく、70g/m以下が更に好ましい。乾式不織布の目付が小さすぎると乾式不織布の構成繊維のムラ及び抜けが発生するおそれがある。したがって、乾式不織布の目付は、例えば、30g/m以上が好ましい。
【0019】
乾式不織布が厚すぎると、カメラに光低反射不織布が映りこむおそれがある。したがって、2.0kPa荷重時における乾式不織布の厚さは、例えば、1.0mm以下が好ましく、0.8mm以下がより好ましく、0.7mm以下が更に好ましい。乾式不織布が薄すぎると、乾式不織布表面が平滑になり、光の拡散が小さくなって乾式不織布の反射率が大きくなるおそれがある。したがって、2.0kPa荷重時における乾式不織布の厚さは、0.3mm以上が好ましい。
【0020】
乾式不織布の引張強度は、特に限定されないが、加工時及び使用時に乾式不織布が破断することがないように、30N/50mm以上が好ましい。乾式不織布の伸び率は、特に限定されないが、加工性の観点から、30%以上が好ましい。
【0021】
乾式不織布を構成する繊維(構成繊維)の平均繊度は、乾式不織布の表面で乱反射を生じさせ易いという観点から、例えば、5.0dtex以下である。構成繊維の平均繊度は、4.5dtex以下であってもよく、4.0dtex以下であってもよい。構成繊維の平均繊度は、乾式不織布の強度の観点から、例えば、2.0dtex以上が現実的である。
【0022】
構成繊維の繊維長は、不織布の工程通過性の観点から、例えば、100mm以下である。構成繊維の繊維長は、不織布の強度の観点から、例えば、30mm以上である。構成繊維の断面形状は、例えば、円形であってもよいし、楕円及び三角形などといった円形以外の異形断面形状であってもよい。
【0023】
乾式不織布の構成繊維は、ポリオレフィン系樹脂と、光吸収粒子と、を含む。具体的には、乾式不織布の構成繊維は、主成分としてポリオレフィン系樹脂を含むポリオレフィン繊維であり、添加剤として光吸収粒子を含む。ポリオレフィン系樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリメチルペンテンなどが挙げられる。これらの中でもポリプロピレンは、吸水性をほとんど有しておらず、より速乾性に優れていることから好ましい。
【0024】
構成繊維におけるポリオレフィン系樹脂の含有比率が大きければ大きいほど、水分の含有量が小さくなる。したがって、構成繊維におけるポリオレフィン系樹脂の含有比率は、70mass%以上が好ましく、80mass%以上がより好ましく、90mass%以上が更に好ましい。構成繊維における光吸収粒子の含有比率が大きいと乾式不織布の反射率が抑えられる一方、構成繊維における光吸収粒子の含有比率が大きすぎると乾式不織布の強度が低下するおそれがある。したがって、構成繊維における光吸収粒子の含有比率は、1~10mass%が好ましく、2~9mass%がより好ましく、3~8mass%が更に好ましい。また、より水分の含有量が小さい光低反射不織布が実現できることから、構成繊維は、ポリオレフィン系樹脂と光吸収粒子とのみから構成されていることが好ましい。
【0025】
(光吸収粒子)
光吸収粒子は、光吸収率が高い粒子であって、例えば可視光領域(360~750nm)の全ての波長において光吸収率が95%以上の粒子をいう。光吸収粒子は、例えば、黒色を有している。光吸収粒子の例としては、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、及び光酸化物微粒子が挙げられる。光吸収粒子の粒子径は、例えば、10~300nm程度である。
【0026】
構成繊維は、機能性を付与するために、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、及び難燃剤などを更に含んでもよい。
【0027】
<光低反射不織布の製造方法>
まず、光吸収粒子を含むポリプロピレン繊維(構成繊維)を準備する工程が行われる。構成繊維は、例えば、ポリプロピレン樹脂と光吸収粒子とを混合することによって得られた樹脂材料を紡糸することによって製造される。
【0028】
続いて、光吸収粒子を含むポリプロピレン繊維を用いて、乾式法により繊維ウェブを形成する工程が行われる。例えば、光吸収粒子を含むポリプロピレン繊維をカード機によって開繊することによって、繊維ウェブが得られる。
【0029】
続いて、繊維ウェブの繊維同士を結合させる工程が行われる。繊維ウェブの繊維同士が結合されることにより、強度を有する不織布が得られる。繊維ウェブの繊維同士を結合させる方法としては、例えば、繊維ウェブを水流により絡合させ、水流絡合不織布を製造する方法、繊維ウェブをニードルパンチにより絡合させ、ニードルパンチ不織布を製造する方法、繊維ウェブに含まれる低融点の樹脂成分を溶解させて繊維ウェブの構成繊維を結合する方法、繊維ウェブにバインダを付与し、及び繊維ウェブの構成繊維を結合する方法が挙げられる。
【0030】
続いて、不織布に仕上げ処理を施す工程が行われる。仕上げ処理の例としては、不織布の乾燥処理、及び厚さ調整処理が挙げられる。乾燥処理に使用される装置の例としては、加熱ローラ、熱風乾燥機、電気炉、及びヒートプレートといった公知の装置が挙げられる。乾燥処理における温度は、120℃以下であってもよく、105℃以下であってもよく、90℃以下であってもよい。乾燥処理は、不織布を加熱することなく行われてもよい。例えば、乾燥処理は、自然乾燥によって行われてもよく、不織布に超音波又は振動を与えることによって行われてもよい。厚さ調整処理に使用される装置の例としては、プレス機が挙げられる。
【0031】
以上のようにして、光低反射不織布が製造される。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係る光低反射不織布の構成繊維は、ポリオレフィン系樹脂を含む。ポリオレフィン系樹脂は、吸水性をそれほど有しておらず、速乾性に優れている。このため、ポリオレフィン系樹脂の水分含有量は少ないので、光低反射不織布の水分含有量を少なくすることができる。したがって、光低反射不織布が光学機器に取り付けられた際に、光低反射不織布に含まれる水分によって光学機器の内部が結露する可能性が低減される。さらに、構成繊維は、光吸収粒子を含んでいるので、光吸収粒子が光を吸収することによって、光低反射不織布の光反射率を抑えることができる。その結果、光の反射率が低く、かつ、水分含有量が少ない光低反射不織布を提供することができる。
【0033】
ポリオレフィン系樹脂の中でも、特にポリプロピレンは、吸水性をほとんど有しておらず、速乾性により優れている。このため、ポリプロピレンの水分含有量は極めて少ないので、光低反射不織布の構成繊維がポリオレフィン系樹脂としてポリプロピレンを含む場合には、光低反射不織布の水分含有量をより一層少なくすることができる。したがって、光低反射不織布が光学機器に取り付けられた際に、光低反射不織布に含まれる水分によって光学機器の内部が結露する可能性がより一層低減される。
【0034】
カーボンブラックは、光吸収粒子の中でも高い光吸収率を有する。したがって、構成繊維が光吸収粒子としてカーボンブラックを含む場合、光低反射不織布の光反射率を更に抑えることができる。
【0035】
スパンボンド不織布等の直接紡糸不織布においては、繊維同士が接着した部分の光反射率が高くなるので、不織布の光反射率は高くなる。一方、乾式不織布においては、繊維同士が接着していないことから、高い光反射率を有する部分が形成されない。したがって、光低反射不織布の光反射率を更に抑えることができる。乾式不織布では、構成繊維が互いに絡み合っていることから、光低反射不織布は高い強度を有し、取り扱い性に優れる。
【0036】
水流絡合不織布は、乾式不織布の中でも比較的薄い厚さを有する。したがって、光低反射不織布に含まれる乾式不織布が水流絡合不織布である場合、光低反射不織布の体積を抑えることができる。例えば、光低反射不織布を光学機器に取り付けるためのスペースが狭くても、光低反射不織布を取り付けることができる。
【0037】
乾式不織布の構成繊維が細い場合、不織布の表面で乱反射が起こりやすい。不織布の表面で乱反射が生じると、不織布の光反射率は低下する。したがって、不織布が4.0dtex以下の平均繊度を有する細い繊維から構成されている場合、結果的に、光低反射不織布の光反射率をより一層抑えることができる。
【0038】
なお、本開示に係る光低反射不織布は上記実施形態に限定されない。
【0039】
例えば、上記実施形態では、光吸収粒子は、構成繊維に含まれているが、構成繊維に含まれていなくてもよい。光吸収粒子は、乾式不織布に担持されていてもよい。この場合も、上記実施形態に係る光低反射不織布と同様の効果が奏される。
【0040】
光低反射不織布は、上記実施形態の乾式不織布に代えて、構成繊維がポリオレフィン系樹脂を含む湿式不織布を備えていてもよい。
【実施例
【0041】
以下、本開示に係る実施例及び比較例を用いた評価試験の結果を示し、本開示を更に詳細に説明する。なお、本開示はこれらの実施例に限定されない。
【0042】
(実施例1)
カーボンブラック3mass%を含むポリプロピレン繊維(ポリプロピレン及びカーボンブラックのみで構成)を100mass%用いてカード機により開繊することによって、繊維ウェブが製造された。ポリプロピレン繊維の平均繊度は3.3dtexであり、ポリプロピレン繊維の繊維長は66mmであった。そして、繊維ウェブを水流により絡合し、乾燥させることにより、不織布が製造された。不織布の目付は、50g/mであった。2.0kPa荷重時の不織布の厚さは、0.65mmであった。
【0043】
(実施例2)
カーボンブラック3mass%を含むポリプロピレン繊維(ポリプロピレン及びカーボンブラックのみで構成)を100mass%用いてカード機により開繊することによって、繊維ウェブが製造された。ポリプロピレン繊維の平均繊度は3.3dtexであり、ポリプロピレン繊維の繊維長は66mmであった。そして、繊維ウェブを水流により絡合し、乾燥させることで水分を取り除き、さらにカレンダーにより110℃に加熱して厚さを調節することにより、不織布が製造された。不織布の目付は、70g/mであった。2.0kPa荷重時の不織布の厚さは、0.65mmであった。
【0044】
(実施例3)
カーボンブラック2mass%を含むポリプロピレン繊維(ポリプロピレン及びカーボンブラックのみで構成)を100mass%用いてカード機により開繊することによって、繊維ウェブが製造された。ポリプロピレン繊維の平均繊度は4.4dtexであり、ポリプロピレン繊維の繊維長は76mmであった。そして、繊維ウェブを水流により絡合し、乾燥させることで水分を取り除き、さらにカレンダーにより110℃に加熱して厚さを調節することにより、不織布が製造された。不織布の目付は、70g/mであった。2.0kPa荷重時の不織布の厚さは、0.64mmであった。
【0045】
(実施例4)
加熱及び溶融したポリプロピレン樹脂とカーボンブラックとを、ノズルから押し出し直接紡糸するスパンボンド法により、不織布が製造された(カーボンブラックの含有量:3mass%、ポリプロピレン及びカーボンブラックのみで構成)。不織布の目付は、50g/mであった。2.0kPa荷重時の不織布の厚さは、0.36mmであった。
【0046】
(比較例1)
カーボンブラック5mass%を含むポリエチレンテレフタレート繊維(ポリエチレンテレフタレート及びカーボンブラックのみで構成)を100mass%用いたことを除いては、実施例1と同様にして、不織布が製造された。ポリエチレンテレフタレート繊維の平均繊度は2.2dtexであり、ポリエチレンテレフタレート繊維の繊維長は51mmであった。不織布の目付は、53g/mであった。2.0kPa荷重時の不織布の厚さは、0.59mmであった。
【0047】
表1に、実施例及び比較例の不織布の物性及び製造方法が示される。なお、繊維組成において、ポリプロピレンは「PP」と略称され、ポリエチレンテレフタレートは「PET」と略称される。
【表1】
【0048】
<評価方法>
実施例及び比較例の不織布が以下の方法で評価された。
【0049】
(曇り性評価)
(1)実施例及び比較例の各不織布がカメラの内部に取り付けられ、不織布が取り付けられたカメラが、低温で所定時間格納された。
(2)続いて、カメラが取り出され、カメラにヒータが取り付けられた。そして、ヒータによってカメラの内部が加熱され、2分後のカメラのレンズの曇り具合が、評価基準に従って目視で評価された。カメラの内部に発生した曇りがない、又は曇りが薄い場合には「OK」とし、カメラの内部に発生した曇りが濃い場合には、「NG」とする評価基準が用いられた。
【0050】
(鏡面光沢度測定)
実施例及び比較例の各不織布における鏡面光沢度(%)が測定された。鏡面光沢度の測定には、グロスメーター(スガ試験機(株)製、UGV-6P)が用いられた。鏡面光沢度の測定は、JIS Z 8741(1997)「鏡面光沢度-測定方法」に則って実施された。光源から各不織布に20°、45°、60°、75°、及び85°の入射角で光が照射されたときの鏡面光沢度が測定された。
【0051】
表2に、曇り性評価及び鏡面光沢度測定の結果が示される。
【表2】
【0052】
曇り性評価において、比較例1の不織布ではカメラの内部に曇りが発生したが、実施例1~4の不織布ではカメラの内部に曇りが発生しなかった。この事実は、実施例1~4の不織布を構成するポリプロピレン繊維に含まれる水分量が、比較例1の不織布を構成するポリエチレンテレフタレート繊維に含まれる水分量よりも少なかったことに起因すると考えられる。
【0053】
鏡面光沢度測定において、いずれの入射角においても、実施例1~3の不織布の鏡面光沢度が、実施例4の不織布の鏡面光沢度よりも小さかった。実施例4の不織布はスパンボンド法によって製造されたスパンボンド不織布である。スパンボンド不織布においては、互いに交差する2つの繊維が変形して接着されていることから、変形した繊維交点が形成され、繊維交点における光反射率が高くなる。一方、実施例1~3の不織布は、乾式法の一種である水流絡合法によって製造された水流絡合不織布である。水流絡合不織布においては、互いに交差する2つの繊維が繊維交点において接着されておらず、繊維交点が変形していないことから、繊維交点における光反射率が低いと考えられる。このことが、実施例1~3の不織布の鏡面光沢度が実施例4の鏡面光沢度よりも小さかったことの原因と考えられる。
【0054】
さらに、45°、60°、75°、及び85°の入射角において、実施例1~2の不織布の鏡面光沢度が、実施例3の不織布の鏡面光沢度よりも小さかった。実施例1~2の不織布を構成する繊維の平均繊度が、4.0dtex以下(3.3dtex)であり、実施例3の不織布を構成する繊維の平均繊度よりも小さかった。不織布の構成繊維が細いほど、不織布表面で乱反射が起こりやすくなると考えられる。このことが、実施例1~2の不織布の鏡面光沢度が実施例3の鏡面光沢度よりも小さかったことの原因と考えられる。