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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】嗜好性飲料抽出フィルター用織物
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/40 20210101AFI20240920BHJP
   A47J 31/06 20060101ALI20240920BHJP
   B01D 39/08 20060101ALI20240920BHJP
   B65D 77/00 20060101ALI20240920BHJP
   D01F 8/14 20060101ALI20240920BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20240920BHJP
   D03D 15/283 20210101ALI20240920BHJP
   D03D 15/292 20210101ALI20240920BHJP
【FI】
D03D15/40
A47J31/06
B01D39/08 Z
B65D77/00 F
D01F8/14 B
D03D1/00 Z
D03D15/283
D03D15/292
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020166156
(22)【出願日】2020-09-30
(62)【分割の表示】P 2020528349の分割
【原出願日】2020-01-08
(65)【公開番号】P2021004440
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2019001623
(32)【優先日】2019-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】305037123
【氏名又は名称】KBセーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 智仁
【審査官】山下 航永
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-163485(JP,A)
【文献】特開2009-005911(JP,A)
【文献】特開2017-119932(JP,A)
【文献】登録実用新案第3139823(JP,U)
【文献】特開2019-014505(JP,A)
【文献】国際公開第2019/009386(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 1/00 - 27/18
D01F 8/00 - 8/18
B65D 77/00 - 77/40
B01D 39/00 - 41/04
A47J 31/00 - 31/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯成分は、融点が220℃以上のホモポリエステルであり、鞘成分は、融点が芯成分より40℃以上低いテレフタル酸及びジオールを主成分とする共重合ポリエステルであり、
フィラメントの数が2~5本で構成され、全体の繊度が15~40dtexである嗜好性飲料抽出フィルター織物用芯鞘型複合マルチフィラメントを用いた織物であって、
開口率が40%~70%であり、
交点が熱融着されており、
引裂き強度が5N以上である、
嗜好性飲料抽出フィルター用織物
【請求項2】
芯成分は、ホモポリエチレンテレフタレートであり、鞘成分は、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートであり、フィラメントの数が2~5本であり、全体の繊度が15~40dtexである嗜好性飲料抽出フィルター織物用芯鞘型複合マルチフィラメントを用いた織物であって、
開口率が40%~70%であり、
交点が熱融着されており、
引裂き強度が5N以上である、
嗜好性飲料抽出フィルター用織物
【請求項3】
芯成分は、ホモポリエチレンテレフタレートであり、鞘成分は、イソフタル酸が20mol%を超えて共重合される共重合ポリエチレンテレフタレートであり、フィラメントの数が2~5本であり、全体の繊度が15~40dtexである嗜好性飲料抽出フィルター織物用芯鞘型複合マルチフィラメントを用いた織物であって、
開口率が40%~70%であり、
交点が熱融着されており、
引裂き強度が5N以上である、
嗜好性飲料抽出フィルター用織物
【請求項4】
前記嗜好性飲料抽出フィルター織物用芯鞘型複合マルチフィラメントは、10質量%濃度のエタノール水溶液中で1時間浸漬後の質量変化率が4%以下であることを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載の嗜好性飲料抽出フィルター用織物
【請求項5】
前記嗜好性飲料抽出フィルター織物用芯鞘型複合マルチフィラメントは、重金属の溶出量が0.1ppm未満であることを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載の嗜好性飲料抽出フィルター用織物
【請求項6】
前記嗜好性飲料抽出フィルター織物用芯鞘型複合マルチフィラメントの鞘成分の共重合ポリエステルの重縮合の触媒が、チタン系触媒であることを特徴とする請求項1~5いずれか1項記載の嗜好性飲料抽出フィルター用織物
【請求項7】
前記嗜好性飲料抽出フィルター織物用芯鞘型複合マルチフィラメントの芯成分のホモポリエステルの重縮合の触媒が、チタン系触媒であることを特徴とする上記請求項1~6いずれか1項記載の嗜好性飲料抽出フィルター用織物
【請求項8】
経糸として、芯成分は融点が220℃以上のホモポリエステルであり、鞘成分は融点が芯成分より40℃以上低いテレフタル酸及びジオールを主成分とする共重合ポリエステルである芯鞘型モノフィラメント、
緯糸として、前記嗜好性飲料抽出フィルター織物用芯鞘型複合マルチフィラメントを用いた、請求項1~7のいずれか1項記載の嗜好性飲料抽出フィルター用織物。
【請求項9】
経糸及び緯糸として前記嗜好性飲料抽出フィルター織物用芯鞘型複合マルチフィラメントを用いた、請求項1~7のいずれか1項記載の嗜好性飲料抽出フィルター用織物。
【請求項10】
経糸として、芯成分はホモポリエチレンテレフタレートであり、鞘成分はイソフタル酸が20mol%を超えて共重合される共重合ポリエチレンテレフタレートである芯鞘型モノフィラメント、
緯糸として、前記嗜好性飲料抽出フィルター織物用芯鞘型複合マルチフィラメントを用いた、請求項1~7のいずれか1項記載の嗜好性飲料抽出フィルター用織物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は嗜好性飲料抽出フィルター織物用マルチフィラメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、嗜好性飲料抽出フィルターの素材としては、紙やポリプロピレン又はポリエチレンの不織布が主流として用いられているが、透明性が悪く包装材中の茶葉が見えにくいこと、紙に至っては熱シール加工ができない等の問題がある。そこで、近年の傾向としては、嗜好性飲料抽出用バッグ中の茶葉が見える高級感のある織物製の嗜好性飲料抽出バッグが増えてきている。
【0003】
織物製の嗜好性飲料抽出用バッグに用いられる、嗜好性飲料抽出フィルターの素材繊維としてはポリアミド繊維が主流である。ポリアミド繊維を用いた織物製の抽出フィルターは、立体形状の形態保持性に優れ、また変形に対する弾性回復力にも富んでいることから、織物が柔らかく、風合いに優れている。しかし、ポリアミド繊維製の抽出用バッグは、空気中の酸素の影響による黄変、熱湯中でのポリアミド繊維の膨潤による抽出用バッグの寸法変化、抽出後のバッグを容器から取り出す際の液切れの悪さ、ポリアミドの比重が軽いことによる熱湯中での抽出用バッグの沈降性の悪さ、及び使用後の焼却による窒素酸化物の発生による環境汚染等の問題が以前から指摘されていた。
【0004】
このようなポリアミド繊維の問題点を改善する目的で、ポリエステル繊維による嗜好性飲料抽出フィルター等が研究されてきている。例えば、特許文献1では、芯と鞘に融点差を持たせた芯鞘構造を有するポリエステル系繊維を用いた織物からなる嗜好性飲料抽出フィルターの製造方法が提案されている。また、特許文献2では、イソフタル酸等を共重合成分とした共重合ポリエステルからなる嗜好性飲料抽出フィルター用ポリエステルモノフィラメントとなし得る分繊用マルチフィラメント及びそれから得られる嗜好性飲料抽出フィルターが提案されている。特許文献3では、扁平状のモノフィラメントを用いた嗜好性飲料抽出フィルターが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3459951号公報
【文献】特開2008-45244号公報
【文献】国際公開WO2008/035443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2及び3では、嗜好性飲料抽出フィルター用織物に用いる際、いずれも、モノフィラメントを製織して、熱セットして、目ずれ防止し、フィルターとして用いているものであり、フィルターの成形性にも優れているものであるが、モノフィラメントの製造方法は紡糸後延伸する2段階方式であったり、分繊用マルチフィラメントを製造後分繊してモノフィラメントを製造する方法が一般的であり製造コストが高くなる。近年は、より安価で、抽出性の優れたものが求められてきているのが現状である。
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、成形性に優れ、より安価で、抽出性が良好な嗜好性飲料抽出フィルターを得るための織物用フィラメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するもので、以下の構成を要旨とする。
(1)芯成分は、融点が220℃以上のホモポリエステルであり、鞘成分は、融点が芯成分より40℃以上低いテレフタル酸及びジオールを主成分とする共重合ポリエステルであり、フィラメントの数が2~5本で構成される嗜好性飲料抽出フィルター織物用芯鞘型複合マルチフィラメント。
(2)芯成分は、ホモポリエチレンテレフタレートであり、鞘成分は、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートであり、フィラメントの数が2~5本である嗜好性飲料抽出フィルター織物用芯鞘型複合マルチフィラメント。
(3)芯成分は、ホモポリエチレンテレフタレートであり、鞘成分は、イソフタル酸が20mol%を超えて共重合される共重合ポリエチレンテレフタレートであり、フィラメントの数が2~5本である嗜好性飲料抽出フィルター織物用芯鞘型複合マルチフィラメント。
(4)10質量%濃度のエタノール水溶液中で1時間浸漬後の質量変化率が4%以下であることを特徴とする(1)~(3)いずれか記載の嗜好性飲料抽出フィルター織物用芯鞘型複合マルチフィラメント。
(5)重金属の溶出量が0.1ppm未満であることを特徴とする(1)~(4)いずれか記載の嗜好性飲料抽出フィルター織物用芯鞘型複合マルチフィラメント。
(6)鞘成分の共重合ポリエステルの重縮合の触媒が、チタン系触媒であることを特徴とする(1)~(5)いずれか記載の嗜好性飲料抽出フィルター織物用マルチフィラメント。
(7)芯成分のホモポリエステルの重縮合の触媒が、チタン系触媒であることを特徴とする上記(1)~(6)いずれか記載の嗜好性飲料抽出フィルター用マルチフィラメント。
(8) 上記(1)~(7)のマルチフィラメントを用いた嗜好性飲料抽出フィルター用織物。
(9)経糸として、芯成分は融点が220℃以上のホモポリエステル、鞘成分は融点が芯成分より40℃以上低いテレフタル酸及びジオールを主成分とする共重合ポリエステルである芯鞘型モノフィラメント、緯糸に(1)~(7)のマルチフィラメントを用いた嗜好性飲料抽出フィルター用織物。
(10)経糸及び緯糸として(1)~(7)のマルチフィラメントを用いた、嗜好性飲料抽出フィルター用織物。
(11)経糸として、芯成分はホモポリエチレンテレフタレートであり、鞘成分はイソフタル酸が20mol%を超えて共重合される共重合ポリエチレンテレフタレートである芯鞘型モノフィラメント、緯糸として、(1)~(7)のマルチフィラメントを用いた嗜好性飲料抽出フィルター用織物。
(12)芯成分のホモポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート、鞘成分の共重合ポリエステルとしてイソフタル酸が20mol%を超えて共重合された共重合ポリエチレンテレフタレートを用いて、芯成分と鞘成分とをそれぞれ芯鞘型複合口金から紡糸温度290~300℃で紡出後、糸を巻き取らず、そのまま紡糸速度3200~4000m/minで延伸倍率3~4倍で延伸してフィラメントの数が2~5本に巻き取る、嗜好性飲料抽出フィルター織物用芯鞘型複合マルチフィラメントの製造方法。
また、上記(1)~(7)のマルチフィラメントはスピンドロー法により得られたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、嗜好性飲料抽出フィルターを製造する際に、フィルターの成形性に優れ、安価で、抽出性が良好な嗜好性飲料抽出フィルターを得ることができる、織物用フィラメントが提供される。またマルチフィラメントを使用することで、嗜好性飲料抽出フィルターを製造する時に、少量の糸使用量で目開きのサイズコントロールが容易となる。またコシや透明感が良好で品位の高い嗜好性飲料抽出フィルターを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、嗜好性飲料抽出フィルター織物用芯鞘型複合マルチフィラメントである。
【0010】
本発明の嗜好性飲料抽出フィルター織物用芯鞘型複合マルチフィラメントの芯成分は、第三成分を共重合しない融点が220℃以上のホモポリエステルである。本発明において、「ホモポリエステル」は、「テレフタル酸とアルキレングリコールの2成分が重合したポリエステル」を意味し、「共重合ポリエステル」は、前述のもの以外の成分(例えばイソフタル酸)を含む、3成分以上からなるポリエステルを示す。ホモポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリトリメチレンテレフタレート(PTT)などのポリアルキレンテレフタレートを主体とするポリエステルが好適に挙げられる。芯成分の融点が220℃未満となると、芯鞘型複合マルチフィラメントを製織した織物は、乾熱処理後の強度保持率が低くなる傾向にある。フィルター用織物の強度保持率を保つ点からは、芯成分は、ポリエチレンテレフタレートであることが特に好ましい。このようなポリエチレンテレフタレートにおける融点は、通常、255~265℃であることが好ましい。
【0011】
芯成分におけるPETの固有粘度は、0.4以上、0.8以下の範囲であることが好ましく、中でも0.5以上、0.7以下、特に0.55以上、0.65以下の範囲が好ましい。固有粘度が小さ過ぎると、製編織後の強度が不足する傾向があり、固有粘度が大き過ぎると、原料ポリマーの固有粘度を過剰に引き上げる必要があり、コスト高となる傾向があるため、上記の範囲が好ましい。
【0012】
芯成分のホモポリエステルの重合触媒は、環境安全性の点から、チタン系触媒であることが好ましい。
【0013】
重合触媒として用いられるチタン系触媒としては、酢酸チタン、テトラアルコキサイドチタン、チタンハロゲン化物、チタン酸塩、チタンアルコキシド類等が好適に挙げられる。
これらは、触媒の活性をより高めるために、マグネシウムを用いた化合物との複合体を好適に用いることができる。特に好ましい例として、チタン酸からなる被覆層が形成されたマグネシウム化合物が挙げられる。本発明において、チタン酸からなる被覆層が形成されたマグネシウム化合物とは、5~100℃の範囲の温度、好ましくは、15~70℃の範囲の温度で、マグネシウム化合物の存在下に、チタン化合物を加水分解して、その表面にチタン酸を析出させることによって、マグネシウム化合物の表面にチタン酸からなる被覆層を有せしめたものである。
上記チタン系触媒の含有量は、ポリエステル樹脂に対して10~500ppmであることが好ましく、より好ましくは50~200ppmである。
【0014】
本発明の芯鞘型複合マルチフィラメントの鞘成分は、融点が芯成分に比べて40℃以上低いテレフタル酸及びジオールを主成分とする共重合ポリエステルである。具体的には、テレフタル酸とエチレングリコール等のジオールを主成分とする共重合ポリエステルが好適に挙げられる。「主成分とする」とは「50モル%以上」を意味する。「主成分とする」とは、共重合ポリエステルにおいてポリアルキレンテレフタレート単位を50モル%以上含むことを意味する。ポリアルキレンテレフタレートと共重合する成分としては、イソフタル酸、アジピン酸及びセバシン酸等が好適に挙げられる。中でも芯鞘構造の複合のし易さ、フィルター織物を製造する際の取り扱い性を考慮するとイソフタル酸が好ましい。尚、本発明において、融点ピークが生じない非晶性の成分の場合、軟化点を融点とする。
【0015】
本発明の芯鞘型複合マルチフィラメントの鞘成分の特に好適な態様は、テレフタル酸とイソフタル酸とを共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートである。テレフタル酸とイソフタル酸との比率は、熱接着がし易く、取り扱い性に優れている点から、イソフタル酸がテレフタル酸とのモル比で20mol%を超えて共重合されていることが好ましい。モル比(テレフタル酸/イソフタル酸)では、80/20~70/30範囲であることが好ましい。
【0016】
鞘成分におけるイソフタル酸を共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、0.60以上、0.66以下の範囲であることが好ましい。固有粘度が小さすぎると、製編織後の強度が不足する傾向があり、固有粘度が大きすぎると、原料ポリマーの固有粘度を過剰に引き上げる必要があり、コスト高となる傾向があるため、上記の範囲が好ましい。
【0017】
上述したような共重合ポリエチレンテレフタレートを鞘成分に用いると、適度に、芯成分より融点が低く、熱接着加工し易くなるため、成形性に優れたものとなる点からも好ましい。
【0018】
鞘成分の共重合ポリエステルの重合触媒は、環境安全性の点から、チタン系触媒であることが好ましい。
【0019】
重合触媒として用いられるチタン系触媒としては、酢酸チタン、テトラアルコキサイドチタン、チタンハロゲン化物、チタン酸塩、チタンアルコキシド類等が好適に挙げられる。
これらは、触媒の活性をより高めるために、マグネシウムを用いた化合物との複合体を好適に用いることができる。特に好ましい例として、チタン酸からなる被覆層が形成されたマグネシウム化合物が挙げられる。本発明において、チタン酸からなる被覆層が形成されたマグネシウム化合物とは、5~100℃の範囲の温度、好ましくは、15~70℃の範囲の温度で、マグネシウム化合物の存在下に、チタン化合物を加水分解して、その表面にチタン酸を析出させることによって、マグネシウム化合物の表面にチタン酸からなる被覆層を有せしめたものである。
上記チタン系触媒の含有量は、ポリエステル樹脂に対して10~500ppmであることが好ましく、より好ましくは50~200ppmである。
【0020】
本発明の芯鞘型マルチフィラメントの芯鞘比率としては、20/80~80/20(体積比)が好ましい。この範囲であると、芯成分により適度な強度を保ち、嗜好性飲料抽出フィルター織物用芯鞘型複合フィラメントの熱収縮率を抑えることができる。このため、織物の目ずれを防ぎ易いものとなり、フィルターとしての成形性が良好である。
【0021】
本発明の芯鞘型マルチフィラメントのフィラメントの数は2~5本が好ましい。この範囲であると、上記芯成分と鞘成分の樹脂の組み合わせにおいて、2段階法で紡糸延伸せずともいわゆる直接紡糸延伸法(スピンドロー法)で安定的に繊維化ができ、製織性も良好で、またモノフィラメントに比べて、少量の糸使用量で有効に目開きのサイズコントロールができるので、安価で抽出性が良好なフィルターを得ることが容易にできる。すなわち、マルチフィラメントの鞘成分の融着により、繊維長手方向に各フィラメントを均一に平たく揃えて固定することができるため、優れた成形性となり、糸使用量は少なく、目開きのサイズコントロールができ、抽出性が良好で、目ずれ防止効果にも優れている。この範囲よりもフィラメント数が多いとフィルターを成形する際に糸が一様に収束せず、均等な目開きを確保することが困難となり、フィルターの品位が悪くなるおそれがある。また一定の目開きでないためフィルターの性能が劣る可能性がある。またフィラメントの数がこの範囲であれば、透明感が良好なものとなり、フィルターが美観に優れ品位の良好なものとなる。
尚、本発明の芯鞘型マルチフィラメントは、芯成分が上記のようなポリエチレンテレフタレートであり、鞘成分が上記のようなイソフタル酸共重合ポリエチレンフタレートであり、上記のフィラメントの数であることが上記効果をより有効に得られる点からも好ましい。
本発明の芯鞘型マルチフィラメントは、後述のように紡糸時に一旦巻き取るのではなくそのまま延伸する直接紡糸延伸法(スピンドロー法)で少ないフィラメント数として得られたものが好ましく、このようなものであれば、紡糸延伸時にフィラメント間が適度に接着し断面が柔軟な形状となるため、製織時の屈曲性が良好となり、取扱い性も優れる。またフィルターとしたときに適度なコシを持たせることができ、モノフィラメントと同等のものとなる。フィラメントの数が大きすぎる場合、1本当たりのフィラメント繊度が小さくなるため糸が柔らかくなりフィルターとした際に適度なコシを得ることが難しくなる。
尚、本発明の嗜好性抽出フィルター織物用フィラメントのフィラメント数はより好ましく
は2~4である。
【0022】
本発明の芯鞘型マルチフィラメントの繊度は、上記のフィラメントの数とする場合、嗜好性飲料抽出フィルター織物とする際の成形性、フィルターの抽出性等を勘案すると、15~40dtexであることが好ましく、より好ましくは、20~35dtexである。フィラメント1本当たりの単糸繊度としては、3~20dtexであることが好ましく、より好ましくは4~18dexである。
【0023】
本発明の芯鞘型複合マルチフィラメントは、10質量%濃度のエタノール水溶液中に1時間浸漬後の質量変化率が4%以下であることが好ましい。
このような質量変化率とすることにより、嗜好性飲料抽出フィルターとして、環境安全性や安全性により優れたものとなる。より好ましくは、質量変化率が2%以下であり、さらに好ましくは、質量変化率が1%以下である。
なお、質量変化率は、以下の式によって、求められる値である。
質量変化率(%)=〔(浸漬前の質量-浸漬後の質量)/(浸漬前の質量)〕×100
【0024】
本発明の芯鞘型複合マルチフィラメントは、重金属の溶出量が0.10ppm未満である。ここで、溶出量は、マルチフィラメントを10質量%濃度のエタノール溶液に100℃で1時間浸漬し溶出させ、真比重5.0以上の金属元素の量を溶出量とする。
このように重金属の溶出量が0.10ppm未満であると、嗜好性飲料抽出フィルターに好適に用いることができ、環境安全性にも優れたものとなる。
【0025】
本発明の芯鞘型複合マルチフィラメントは、熱水収縮率が、10%以下であることが好ましく、なかでも、8%以下であることが好ましい。この範囲とすることにより、織物の熱セット時に湾曲せず、成形時の加工性に優れる。接着性が良好で目ずれせずに取扱い易い点からは、熱水収縮率は、3%以上であることが好ましい。芯鞘型複合マルチフィラメントの熱水処理後の収縮率は後述の方法で測定した値である。
【0026】
本発明の芯鞘型複合マルチフィラメントは、製織することにより、嗜好性飲料抽出フィルターに用いるのに好適な織物を製造することができる。
【0027】
織物の組織としては、平織物等が好適である。
本発明において、嗜好性飲料抽出フィルター用織物としては、本発明の芯鞘型複合フィラメントを、100%用いて製織してもよいし、一部に用いてもよい。好ましくは、40%以上用いることである。また経糸及び緯糸として、本発明の芯鞘型マルチフィラメントを用いてもよいし、経糸及び緯糸のいずれか一方に用いてもよい。
【0028】
本発明の芯鞘型複合マルチフィラメントを一部に用いる場合の好適な態様としては、経糸としてホモPETなどのレギュラーポリエステル糸又は鞘成分の融点が芯成分の融点より低い芯鞘型ポリエステルモノフィラメント、緯糸として本発明の芯鞘型複合マルチフィラメントを用いることが挙げられる。この場合、織物の交点の熱融着性が良好であり、成形性や抽出性に優れるため、好適である。
【0029】
経糸として芯鞘型ポリエステルモノフィラメントを用いる場合、鞘成分が芯成分より融点が40℃以上低い芯鞘型複合モノフィラメントを用いることが好ましく、特に芯成分は融点が220℃以上のホモポリエステル、鞘成分は融点が芯成分より40℃以上低いテレフタル酸及びジオールを主成分とする共重合ポリエステルであることが好ましい。尚、具体的には、芯成分のホモポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレートを用い、鞘成分の共重合ポリエステルとして、イソフタル酸を好ましくは20mol%を超えて共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートを用いた芯鞘型モノフィラメントを用いることが好ましい。さらには、本発明の芯鞘型複合マルチフィラメントにおいて、フィラメント数以外の好適な態様(例えば組成、繊度、熱水収縮率)を少なくとも1以上備えるモノフィラメントであることが好ましい。
また経糸として鞘成分の融点が芯成分の融点より低い芯鞘型ポリエステルモノフィラメントを用いる場合のさらに好適な態様としては、本発明の芯鞘型複合マルチフィラメントと同様の組成、繊度、熱水収縮率を有するものを用いることが好ましく、特に好ましくは、本発明の芯鞘型複合マルチフィラメントのフィラメント数を1としたモノフィラメントを用いることが好ましい。さらに好ましくは、緯糸とフィラメント数以外は同じモノフィラメントであるものである。
【0030】
本発明の芯鞘型複合マルチフィラメントは、フィルターとして安価で抽出性の良好なものを得られる点、取扱い性やフィルターとしたときの品位等の点からも、芯成分のホモポリエステルとしてPETを用い、鞘成分の共重合ポリエステルとしてイソフタル酸を好ましくは20mol%を超えて共重合した共重合PETを用いて、後述するスピンドロー法(SPD法)で得られたフィラメントの数が2~5本のものであることが特に好適である。
【0031】
本発明の芯鞘型複合マルチフィラメントを用いた織物は、飲料抽出フィルターへ成形する際の加工性を良好にする点から、引裂き強度が5N以上であることが好ましく、中でも、7N以上であることが好ましい。
本発明の芯鞘型複合マルチフィラメントを用いた織物は、嗜好性飲料抽出フィルターとして用いたときに液切れがし易い点、フィルターの目ずれがしにくい点から、開口率は40%~70%が好ましい。
【0032】
本発明の芯鞘型複合マルチフィラメントを用いた織物を用いて、熱処理し、超音波シール法等によりシールして成形することにより、嗜好性飲料用フィルターとして用いることができる。
【0033】
本発明の芯鞘型複合マルチフィラメントを用いた織物は、シールしても生地強度を保持でき、成形性に優れているため、矩形で平面形状のもの、球形状のもの、テトラパック型のもの、四つ手網型のもの、その他、多面体形状のもなど、様々な立体形状の嗜好性飲料抽出フィルターを容易に得ることができる。
【0034】
本発明の芯鞘型複合マルチフィラメントを用いた織物を用いて得られる嗜好性飲料抽出フィルターは、紅茶、麦茶、烏龍茶、ジャスミン茶、緑茶等の茶葉又は粉末、コーヒー等粒子又は粉末等の種々の嗜好性飲料に好適に用いることができる。特に、茶葉においては、抽出性が優れたものが得られる。
【0035】
本発明における嗜好性飲料抽出フィルターの好適な製造方法の例を以下に示す。
芯成分として、重合触媒をチタン系触媒としたポリエチレンテレフタレート、鞘成分として、チタン系触媒を重合触媒としたイソフタル酸共重合ポリエステルを用いて、芯鞘型複合マルチフィラメントを製造する。この際、芯鞘型複合口金から紡出後、糸を巻き取らず、そのまま延伸して巻き取るスピンドロー方式(SPD法)で製造することが好ましい。この場合、好適な紡糸条件は、例えば紡糸速度3200~4200m/min、紡糸温度290~300℃、延伸倍率3~4倍である。次に、得られた芯鞘型複合マルチフィラメントを、製織した後、織物の交点が目ずれしないように鞘成分が溶融する温度でマルチフィラメントを熱処理する。次いで、得られた織物を超音波シール法等によりシールし、テトラパック形状等適宜の形状に成形して、嗜好性飲料抽出フィルターを得ることができる。
【実施例
【0036】
物性の測定、評価は以下の通り、実施した。
1)固有粘度
フェノール/テトラクロロエタン=6/4(重量比)混合液50mlに0.5gのポリマーを溶解して、温度20℃においてオストワルド型粘度計を用いて測定した。
2)融点
パーキンエルマー社製DSC-7型を用い、チップ10mg、昇温速度10℃/分の条件にて測定した。
3)強度、伸度
JIS L 1013に準じ、島津製作所(株)製、AGS 1KNGオートグラフ(登録商標)引張試験機を用い、試料糸長200mm、引張速度200mm/minの条件で試料が伸長破断したときの強度(cN/dtex)、伸度(%)を求めた。
4)重金属の溶出量
糸試料を、10質量%濃度のエタノール水溶液に100℃で1時間浸漬し溶出させたエタノール溶液を、アジレントテクノロジー製のICP質量分析装置(Agilent 7500cs)と、アメテック製ICP発光分析装置(CIROS CCD)を用いて測定した。
5)質量変化率
糸試料の質量を測定し浸漬前の質量とした。次に、糸試料を、10質量%濃度のエタノール水溶液に100℃で1時間浸漬させ、乾燥させて、糸試料を測定し、浸漬後の質量とし、以下の式により、質量変化率を算出した。
質量変化率(%)=〔(浸漬前の質量-浸漬後の質量)/(浸漬前の質量)〕×100
6)熱水収縮率
JIS L 1013に準じ、荷重2mg/dtexを掛けた試料長500mmの糸を沸騰水中に15分間浸漬し、次いで風乾した後に次式により芯鞘型複合フィラメントの収縮率を求めた。
熱水収縮率(%)=[(初期試料長―収縮後の試料長)/初期試料長]×100
7)引裂き強度
JIS L1096 8.15.1 A-1法(シングルタング法)に準じ、(株)オリエンティック製テンシロンRTA-500引張試験機を用い、試料幅50mm、試料長250mm、チャック間距離100mm、引張速度100mm/minの条件で試料を引き裂く時の最大荷重を測定した。
8)抽出性
作製した嗜好性飲料抽出フィルター内に3gの緑茶葉を入れ、90℃の水の中に1分間浸漬した際、水の色の変化を目視で判定した。良好なものから、◎、○、△、×とした。
【0037】
(実施例1)
テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、PETオリゴマーの重合触媒として、チタン酸からなる被覆層が形成されたマグネシウム化合物を180ppm添加して重縮合し、芯成分に用いるポリエチレンテレフタレートを得た(固有粘度:0.629)。次に、テレフタル酸に対しイソフタル酸25mol%を加えた酸成分とエチレングリコールを原料とし、重合触媒として、チタン酸からなる被覆層が形成されたマグネシウム化合物をポリエステルに対して180ppm加え、重縮合し、鞘成分に用いるイソフタル酸25mol共重合ポリエチレンテレフタレートを得た(固有粘度:0.643)。
上記で得られた2種のポリエステル樹脂を溶融紡糸装置に供給した。次に、芯成分と鞘成分の樹脂を芯鞘体積比率50:50の割合でポリマーを孔径0.45mmで孔数が3個の紡糸口金を用いて、紡糸温度295℃で吐出した。次いで周速度950m/min、温度95℃の第1ゴデットローラーに7回巻付けて引き取った。その後、引き続き、第1ゴデットローラーの4倍の周速度で温度150℃の第2ゴデットローラーに7回巻付け4倍に延伸した。引き続き、フィラメント数が3本のマルチフィラメントを紡糸速度3800m/minで巻き取った。(芯成分の融点:255℃、鞘成分の融点:185℃)。
得られたマルチフィラメントを、経密度120本/2.54cm、緯密度120本/2.54cmの条件で平織組織にて製織し織物を得た。得られた織物を精練し、200℃で熱処理し、糸の交点の鞘成分を融着させて、フィルター用織物を得た。得られたフィルター用織物を、超音波シール法により、テトラパック形状に成形し、嗜好性飲料抽出フィルター製造した。
【0038】
(実施例2)
芯鞘体積比率70:30に変更する以外は、実施例1と同様に溶融紡糸しポリエステルマルチフィラメント糸を得た。さらに、実施例1と同様に、嗜好性飲料抽出フィルターを製造した。
【0039】
(実施例3)
テレフタル酸とエチレングリコールとを原料とし、PETオリゴマーの重合触媒として、チタン酸からなる被覆層が形成されたマグネシウム化合物をPETオリゴマーに対して200ppm加え、重縮合し、芯成分に用いるポリエチレンテレフタレートを得た(固有粘度:0.63)。
また、実施例1記載の方法で鞘成分に用いるイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートを得た。
この2種のポリエステル樹脂を、実施例1記載の方法で溶融紡糸、延伸を行いポリエステルマルチフィラメントを得た(芯成分の融点:255℃、鞘成分の融点:185℃)。得られたポリエステルマルチフィラメントを用いて実施例1と同様に、嗜好性飲料抽出フィルターを製造した。
【0040】
(実施例4)
芯成分及び鞘成分に用いるポリエチレンテレフタレートの重合触媒を、400ppmの三酸化アンチモンとする以外は実施例1と同様に、重合、溶融紡糸、延伸を実施し、嗜好性飲料抽出フィルターを製造した。
【0041】
実施例1~4で用いる重合触媒、マルチフィラメントの芯鞘比率、マルチフィラメントのフィラメント数、重金属の溶出量、質量変化率、繊度、強度、伸度、熱水収縮率、フィルター用織物の引裂き強度、抽出性の評価を、表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
(比較例1)
芯成分を、実施例1の鞘成分に用いる共重合ポリエチレンテレフタレートとする以外は実施例1と同様に、重合、溶融紡糸を実施し、嗜好性飲料抽出フィルターを製造した。フィルター用織物の引裂き強度は5N未満であり、引裂き強度の低いものであった。
【0044】
(実施例5)
実施例1で得られた芯鞘型複合マルチフィラメントを経密度140本/2.54cm、緯密度140本/2.54cmの条件で平織組織にて製織し織物を得た。得られた織物を精練し、200℃で熱処理し、糸の交点の鞘成分を融着させて、フィルター用織物を得た。この織物の引裂き強度はタテ方向・ヨコ方向とも5N以上、重金属の溶出量は0.02ppm、質量変化率は0.9%であった。得られたフィルター用織物を、超音波シール法により、テトラパック形状に成形し、嗜好性飲料抽出フィルター製造した。
【0045】
(実施例6)
実施例1で得られた2種のポリエステル樹脂を溶融紡糸装置に供給し、芯鞘体積比率50:50の割合でポリマーを吐出し、孔径0.45mmの紡糸口金を用いて、紡糸温度290℃、紡糸速度1500m/minの紡糸条件で溶融紡糸し未延伸ポリエステルモノフィラメント糸を得た。さらに、この未延伸糸を、加熱ローラー温度90℃で3.4倍に延伸し、加熱プレート温度160℃で弛緩熱処理を施し、ポリエステルモノフィラメントを得た(芯成分の融点:255℃、鞘成分の融点:185℃)。
経糸に得られたポリエステルモノフィラメント、緯糸に実施例1で得られたマルチフィラメントを、経密度120本/2.54cm、緯密度120本/2.54cmの条件で平織組織にて製織し織物を得た。この織物の引裂き強度はタテ方向・ヨコ方向とも5N以上、重金属の溶出量は0.02ppm、質量変化率は0.9%であった。得られた織物を精練し、200℃で熱処理し、糸の交点の鞘成分を融着させて、フィルター用織物を得た。得られたフィルター用織物を、超音波シール法により、テトラパック形状に成形し、嗜好性飲料抽出フィルター製造した。
【0046】
(比較例2)
実施例4の重合触媒を用いて重合して得られた2種のポリエステル樹脂を用いて、実施例6と同様にポリエステルモノフィラメントを得た。経糸及び緯糸に得られたポリエステルモノフィラメントを用い、実施例1と同様に嗜好性飲料抽出フィルター製造した。
【0047】
実施例1、5及び6、比較例2の抽出性について、評価した結果を表2に示す。
【表2】
【0048】
実施例1~3より得られたマルチフィラメントからなるフィルター用織物は、ポリアミドの問題点を改善し、成形性に優れ、生地強度も十分で嗜好性飲料抽出フィルターとして十分に使用でき、環境安全性に特に優れた嗜好性飲料抽出フィルターであった。また、芯成分にアンチモン触媒を用いた実施例4は、実施例1~3と比較して、重金属の溶出量が多く、環境安全性には劣っていた。
【0049】
実施例5、6より得られたフィルター用織物は、いずれも、成形性に優れたものであり、引裂強度は5N以上であり、重金属の溶出量は0.02ppm、質量変化率は0.9%であり、生地強度及び環境安全性にも優れたものであった。
【0050】
比較例1から得られたフィルター用織物は、生地強度が十分でなく、成形性に劣っており、嗜好性飲料抽出フィルターとして使用できないものであった。
【0051】
実施例及び比較例から得られた嗜好性飲料抽出フィルターの抽出性を評価したところ、実施例品はいずれも抽出性に優れていた。比較例2から得られたフィルターは、実施例1、5、6から得られたフィルターより、抽出性に劣るものであった。
【0052】
実施例1~6から得られたマルチフィラメントは、比較例2から得られたフィラメントと比べて、糸の使用量は少量であるにも関わらず、フィルター用織物とする際に、目開きのコントロールがし易いものであり、目ずれはしにくく、また成形性及び抽出性が良好であり、安価で抽出性が良好なものを得ることができるものであった。
【0053】
(実施例7~9、比較例
フィラメント数を2、4、5、6とする以外は、実施例1と同様にフィルター用織物を得て、嗜好性飲料抽出フィルター製造した。織物のコシ、織物の透明感、織物の引裂き強度について以下の通り評価した。
A)織物のコシ
フィルター用織物について、試験者が官能評価により、(○)非常にコシがある、(△)普通、(×)コシがないの3段階に評価した。
B)織物の透明感
得られたフィルター用織物の透明感に関して、(○)透明感に優れる、(△)普通、(×)透明感が悪いの3段階に評価した。
C)引裂き強度
フィルター用織物について、(○)タテ方向ヨコ方向とも引裂き強度が5.0N以上、(×)タテ方向ヨコ方向少なくともいずれか一方の引裂き強度が5.0N未満の2段階に評価した。
【0054】
実施例7~9、比較例の評価結果を実施例1の結果とともに以下の表3に示す。
【表3】
【0055】
実施例1、7~9は、織物の引裂き強度がタテ・ヨコとも5.0N以上であり、また製織
時に屈曲性が優れたものであり、熱処理時の取り扱い性も優れており、フィルターとして
、適度なコシを有するものであった。実施例7、実施例1、実施例8のものはフィルター
としたときの織物の透明感に特に優れたものであった。比較例のものは、引裂き強度が
十分でなく、フィルターとしたときに織物のコシがなく、透明感に劣ったものであった。