IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立オートモティブシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電池制御装置 図1
  • 特許-電池制御装置 図2
  • 特許-電池制御装置 図3
  • 特許-電池制御装置 図4
  • 特許-電池制御装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電池制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20240920BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240920BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20240920BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H02J7/02 H
H02J7/00 B
H02J7/00 P
H02J7/10 B
H01M10/48 P
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020176458
(22)【出願日】2020-10-21
(65)【公開番号】P2022067723
(43)【公開日】2022-05-09
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】関 公太朗
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-136255(JP,A)
【文献】国際公開第2019/208163(WO,A1)
【文献】LTC6813-1:マルチセル・バッテリ・モニタ データシート(Rev.0),日本,ANALOG DEVICES, INC,2018年,第1頁-第86頁,https://www.analog.com/media/jp/technical-documentation/data-sheets/j68131f_jp.pdf,[令和6年3月1日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 - 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を構成する複数の電池モジュールに対応して設けられ、該電池モジュールの電圧を検出する複数の電圧検出回路と、各々の前記電圧検出回路をカップリングコンデンサを介してデイジーチェーン接続する複数の通信回線と、該通信回線を介して前記電圧検出回路と通信信号の送受信を行い、前記電圧検出回路から受信した前記電圧に基づいて前記電池を制御する制御回路とを備える電池制御装置であって、
前記電圧検出回路において前記通信回線に接続される通信端子は、所定の受動回路を介して接地され
前記通信回線が上り通信用の第1通信線と下り通信用の第2通信線とを個別に備え、
前記電圧検出回路において前記第1通信線に接続される第1通信端子及び前記第2通信線に接続される第2通信端子は、各々に前記受動回路を介して接地され、
前記受動回路は、
一端が前記第1通信端子に接続された第1抵抗器と、
一端が前記第2通信端子に接続された第2抵抗器と、
一端が前記第1抵抗器の他端及び第2抵抗器の他端に接続され、他端が接地されたコンデンサとを備え
前記電圧検出回路の電源端子は、第2コンデンサを介して前記第1抵抗器の他端と接続されていることを特徴とする電池制御装置。
【請求項2】
前記電圧検出回路の電源端子は、第2の受動回路を介して接地されていることを特徴とする請求項1に記載の電池制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には電圧検出装置が開示されている。この電圧検出装置は、バッテリの電池モジュール毎に設けられ、電池セル各々の電圧を検出する複数の電圧検出回路と、電池セルと電圧検出回路とを接続する複数の電圧検出線と、電圧検出回路から得られる検出情報に基づいて電池セルの充放電を制御する制御装置とを具備し、上記電圧検出回路は、電圧検出線を介して電池セル各々の電圧を検出し、複数の電圧検出回路が通信線を介して直列に接続されると共に直列接続された一方の端である電圧検出回路が制御装置と通信線を介して接続されるものであって、隣り合う電圧検出回路のうち、一方に接続される最低電位の電圧検出線と、他方に接続される最高電位の電圧検出線とが隣接すると共に第1コンデンサを介して接続されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-136255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記背景技術は、複数の電圧検出回路及び制御装置が所謂デイジーチェーン接続されたものであり、各々の電圧検出回路が検出した各電池セルの電圧を他の電圧検出回路を経由して制御装置に通知する。このような背景技術では、複数の電圧検出回路を相互に接続する通信線に第1コンデンサを挿入することによって各々の電圧検出回路を電気的に絶縁し、以ってノイズの影響を軽減して個々の電圧検出回路の安定動作を確保している。
【0005】
しかしながら、このような背景技術では、個々の電圧検出回路が電気的に絶縁されているので、通信線で伝送される通信信号の電位が安定しないという問題点がある。そして、通信信号の電位が安定しないと、複数の電圧検出回路及び制御装置において正確な通信を実現できないた、各々の電圧検出回路が検出した各電池セルの電圧を制御装置に正確に通知することができない。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、複数の電圧検出回路をコンデンサを介してデイジーチェーン接続する際の通信信号の電位の安定性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、電池制御装置に係る第1の解決手段として、電池を構成する複数の電池モジュールに対応して設けられ、該電池モジュールの電圧を検出する複数の電圧検出回路と、各々の前記電圧検出回路をカップリングコンデンサを介してデイジーチェーン接続する複数の通信回線と、該通信回線を介して前記電圧検出回路と通信信号の送受信を行い、前記電圧検出回路から受信した前記電圧に基づいて前記電池を制御する制御回路とを備える電池制御装置であって、前記電圧検出回路において前記通信回線に接続される通信端子は、所定の受動回路を介して接地されている、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、電池制御装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記通信回線が上り通信用の第1通信線と下り通信用の第2通信線とを個別に備え、
前記電圧検出回路において前記第1通信線に接続される第1通信端子及び前記第2通信線に接続される第2通信端子は、各々に前記受動回路を介して接地されている、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、電池制御装置に係る第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、前記受動回路は、一端が前記第1通信端子に接続された第1抵抗器と、一端が前記第2通信端子に接続された第2抵抗器と、一端が前記第1抵抗器の他端及び第2抵抗器の他端に接続され、他端が接地されたコンデンサとを備える、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、電池制御装置に係る第4の解決手段として、上記第3の解決手段において、前記電圧検出回路の電源端子は、第2コンデンサを介して前記第1抵抗器の他端と接続されている、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、電池制御装置に係る第5の解決手段として、上記第1~第3のいずれかの解決手段において、前記電圧検出回路の電源端子は、第2の受動回路を介して接地されている、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の電圧検出回路をコンデンサを介してデイジーチェーン接続する際の通信信号の電位の安定性を確保することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態における車載用電池制御装置の全体構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電圧検出回路の全体的な機能構成を示す回路図である。
図3】本発明の一実施形態に係る電圧検出回路の要部機能構成を示す回路図である。
図4】本発明の一実施形態に係る電圧検出回路の通信信号の波形図である。
図5】本発明の一実施形態に係る電圧検出回路の変形例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る車載用電池制御装置Aは、図1に示すように、n個の電圧検出回路D1~Dn、通信回線T、絶縁回路I及び制御回路Sを備える。この車載用電池制御装置Aは、電気自動車やハイブリッド自動車等、モータを走行動力源とする電動車両に搭載されるものであり、リチウムイオン電池等の組電池Bを制御対象とする。なお、本実施形態における「n」は自然数である。
【0015】
本実施形態の組電池Bから先に説明すると、当該組電池Bは、n個の電池モジュールM1~Mnが直列接続されたものであり、例えば数百ボルトの出力電圧(電池電圧)を有する。図示しないが、この組電池Bは、走行駆動回路であるPCU(Power Control Unit)に力行電力を供給する二次電池である。この組電池Bの力行電力(電池電力)は、PCUによってモータの駆動電力(交流電力)に変換される。
【0016】
n個の電池モジュールM1~Mnは、各々に複数の電池セルが直列あるいは/及び並列に接続されたものであり、所定の出力電圧(モジュール電圧)の直流電力を出力する。このようなn個の電池モジュールM1~Mnからなる組電池Bは、本発明の電池に相当するものである。
【0017】
n個の電圧検出回路D1~Dnは、このようなn個の電池モジュールM1~Mnに対応して設けられた集積回路である。これらn個の電圧検出回路D1~Dnは、自らに対応する電池モジュールM1~Mnについて、各々の電池セルの電圧(セル電圧)を検出かつ監視する上記各電池セルのセル電圧は、組電池Bつまりn個の電池モジュールM1~Mnの状態を示す物理量である。
【0018】
このような電圧検出回路D1~Dnは、各々の電池モジュールM1~Mnにおける複数のセル電圧(電池情報)を複数の通信回線Tを介して制御回路Sに送信する電子回路である。複数の通信回線Tは、デイジーチェーンの接続形式でn個の電圧検出回路D1~Dn及び制御回路Sを通信可能に相互接続する信号線である。
【0019】
すなわち、複数の通信回線Tは、親機である制御回路Sに対して子機であるn個の電圧検出回路D1~Dnを数珠繋ぎする。より具体的には、複数の通信回線Tは、n個の電圧検出回路D1~Dn及び制御回路Sを電圧検出回路D1→電圧検出回路D2→電圧検出回路D3→(中略)→電圧検出回路Dn→制御回路Sの順で相互接続する。
【0020】
このような複数の通信回線Tは、上り通信用の第1通信線t1、第1カップリングコンデンサC1、下り通信用の第2通信線t2及び第2カップリングコンデンサC2を備えている。なお、複数の通信回線Tのうち、第n電圧検出回路Dnと制御回路Sとを相互に接続する通信回線Tは、図示するように第1カップリングコンデンサC1及び第2カップリングコンデンサC2に代えて絶縁回路Iを備えている。
【0021】
複数の通信回線Tにおいて、各々の第1通信線t1は、各電圧検出回路D1~Dnから制御装置S宛に出力された上り通信信号を伝送する電線である。また、複数の通信回線Tにおいて、各々の第1カップリングコンデンサC1は、各々の第1通信線t1の途中部に設けられており、各電圧検出回路D1~Dn間における直流成分の伝送を遮断する。
【0022】
複数の通信回線Tにおいて、各々の第2通信線t2は、制御装置Sから各電圧検出回路D1~Dn宛に出力された下り通信信号を伝送する電線である。また、複数の通信回線Tにおいて、各々の第2カップリングコンデンサC2は、各々の第2通信線t2の途中部に設けられており、各電圧検出回路D1~Dn間における直流成分の伝送を遮断する。
【0023】
すなわち、各通信回線Tにおける第1カップリングコンデンサC1及び第2カップリングコンデンサC2は、各電圧検出回路D1~Dnにおける電気的なアイソレーションを確保する回路素子である。各電圧検出回路D1~Dnは、このような第1カップリングコンデンサC1及び第2カップリングコンデンサC2を備えた複数の通信回線Tによって相互にデイジーチェーン接続されるので、相互干渉を抑制することができる。
【0024】
絶縁回路Iは、このような複数の通信回線Tのうち、第n電圧検出回路Dnと制御回路Sとの間に設けられている。この絶縁回路Iは、上述した第1カップリングコンデンサC1及び第2カップリングコンデンサC2と同様に電気的なアイソレーションを取るための回路であり、例えばフォトカプラやパルストランスである。このような絶縁回路Iは、n個の電池モジュールM1~Mnと制御回路Sとの間の電気的な干渉を抑制する。
【0025】
制御回路Sは、通信回線Tを介してn個の電圧検出回路D1~Dnと通信信号の送受信を行い、n個の電圧検出回路D1~Dnから受信した各電池モジュールM1~Mnのセル電圧に基づいて組電池Bを制御する。この制御回路Sは、複数の通信回線Tの第2通信線t2を介してn個の電圧検出回路D1~Dnに制御指令を送信し、また複数の通信回線Tの第1通信線t1を介してn個の電圧検出回路D1~Dnから各電池セルの電圧(セル電圧)を受信する。
【0026】
続いて、上述したn個の電圧検出回路D1~Dnの詳細構成について説明する。なお、n個の電圧検出回路D1~Dnは略同一に構成されているので、以下では代表として電圧検出回路D1(第1電圧検出回路)の詳細構成を説明する。
【0027】
第1電圧検出回路D1は、図2に示すように、電圧検出IC1、複数のCRフィルタ2及び通信付加回路3を備えている。電圧検出IC1は、図示するように複数の接続端子が設けられた集積回路である。これら接続端子のうち、端子IN0~IN16は、各々にCRフィルタ2を介して第1電池モジュールM1を構成する各電池セルの電極に接続されたアナログ電圧入力端子である。
【0028】
例えば、端子IN0は、第1電池モジュールM1を構成する複数の電池セルのうち、最上位電圧に位置する第1電池セルのプラス電極に第1CRフィルタ2を介して接続されている。また、端子IN1は、上記第1電池セルのマイナス電極、つまり当該第1電池セルの下位電圧に位置する第2電池セルのプラス電極に第2CRフィルタ2を介して接続されている。
【0029】
また、端子IN2は、上記第2電池セルのマイナス電極、つまり当該第2電池セルの下位電圧に位置する第3電池セルのプラス電極に第3CRフィルタ2を介して接続されている。さらに、端子IN16は、第1電池モジュールM1を構成する複数の電池セルのうち、最下位電圧に位置する第16電池セルのマイナス電極に第17CRフィルタ2を介して接続されている。
【0030】
電圧検出IC1は、このような端子IN0~IN16の他に第1通信用端子DPL、第2通信用端子DML及び電源モニタ端子CVDDを少なくとも備えている。第1通信用端子DPLは、上り通信信号を第1通信線t1の一端に出力する出力端子である。第2通信用端子DMLは、下り通信信号が第2通信線t2を介して入力される入力端子である。
【0031】
ここで、第1通信用端子DPL及び第2通信用端子DMLは、本発明の通信端子に相当する。また、第1通信用端子DPLは本発明の第1通信端子に相当し、第2通信用端子DMLは本発明の第2通信端子に相当する。さらに、電源モニタ端子CVDDは、本発明の電源端子に相当する。
【0032】
電源モニタ端子CVDDは、図2に加えて図3にも示すように、第1通信用端子DPL及び第2通信用端子DMLに接続されたデジタルIO回路d1(デジタル入出力回路)に電源に接続されたモニタ端子である。デジタルIO回路d1は、通信回線Tを介した外部との通信用に上り通信信号を生成すると共に下り通信信号を波形成形するデジタル回路である。
【0033】
このデジタルIO回路d1は、デジタル電源回路d2から電源(デジタル電源)が供給されることによって作動し、通信信号の生成及び下り通信信号の波形成形を行うデジタル回路である。上記電源モニタ端子CVDDは、このようなデジタルIO回路d1の電源入力端つまりデジタル電源回路d2の出力端に接続されており、デジタル電源の電圧値をモニターするための出力端子である。
【0034】
複数のCRフィルタ2は、図示するように抵抗器とコンデンサとから構成されたローパスフィルタである。各々のCRフィルタ2において、抵抗器は、一端が各電池セルの電極に接続され他端が端子IN0~IN16及びコンデンサの一端に接続されている。また、各々のCRフィルタ2において、コンデンサは、一端が抵抗器の他端及び端子IN0~IN16に接続され、他端が接地されている。
【0035】
このようなCRフィルタ2は、各々の電池セルから端子IN0~IN16に入力される電圧に重畳するノイズを除去するローパスフィルタである。本実施形態に係る車載用電池制御装置Aと、当該車載用電池制御装置Aの制御対象である組電池Bとは、所定の電線(電圧検出線)で接続されており、当該電圧検出線には外部からノイズが飛来することがある。各々のCRフィルタ2は、このようなノイズが端子IN0~IN16に流れ込むことを抑制する。
【0036】
通信付加回路3は、本実施形態に係る車載用電池制御装置Aにおける特徴的な構成要素である。この通信付加回路3は、本発明の受動回路及び第2受動回路に相当するものであり、図示するように第1抵抗器4、第2抵抗器5、第1コンデンサ6及び第2コンデンサ7を備えている。
【0037】
第1抵抗器4は、第1の抵抗値Raを有し、一端が第1通信用端子DPLに接続され、他端が第1コンデンサ6の一端及び第2コンデンサ7の一端に接続されている。第2抵抗器5は、第2の抵抗値Rbを有し、一端が第2通信用端子DMLに接続され、他端が第1コンデンサ6の一端、第2コンデンサ7の一端及び第1抵抗器4の他端に接続されている。なお、第1の抵抗値Ra及び第2の抵抗値Rbは、例えば同一値に設定されている。
【0038】
第1コンデンサ6は、第1の静電容量Caを有し、一端が第1抵抗器4の他端、第2抵抗器5の他端及び第2コンデンサ7の一端に接続され、他端が接地されている。第2コンデンサ7は、第2の静電容量Cbを有し、一端が第1抵抗器4の他端、第2抵抗器5の他端及び第2コンデンサ7の一端に接続され、他端が電源モニタ端子CVDDに接続されている。なお、第1の静電容量Ca及び第2の静電容量Cbは、例えば同一値に設定されている。
【0039】
このような第1抵抗器4、第2抵抗器5、第1コンデンサ6及び第2コンデンサ7のうち、第1抵抗器4、第2抵抗器5及び第1コンデンサ6は、本発明の受動回路を構成している。すなわち、第1抵抗器4、第2抵抗器5及び第1コンデンサ6は、第1通信用端子DPLを第1の抵抗値Ra及び第1の静電容量Caを介してGND(接地電位)に接続すると共に、第2通信用端子DMLを第2の抵抗値Rb及び第1の静電容量Caを介してGND(接地電位)に接続する受動回路である。
【0040】
また、第2コンデンサ7は、第1の抵抗値Raを介して接続された第1通信用端子DPL及び第2の抵抗値Rbを介して接続された第2通信用端子DMLを第2の静電容量Cbを介してデジタル電源に接続する受動回路(受動素子)である。このような第2コンデンサ7及び上記第1コンデンサ6は、本発明の第2受動回路を構成している。
【0041】
次に、本実施形態に係る車載用電池制御装置Aの動作について、図4及び図5をも参照して詳しく説明する。
【0042】
この車載用電池制御装置Aでは、制御回路Sがセル電圧の送信を要求する電圧送信指令を第2通信線t2に出力すると、当該電圧送信指令は、下り通信信号として各通信回線Tの第2通信線t2及び各電圧検出回路D1~Dnを介して全ての電圧検出回路D1~Dnで受信される。
【0043】
この結果、全ての電圧検出回路D1~Dnは、自らに対応する電池モジュールM1~Mnのセル電圧に自らの識別番号を付加した検出電圧信号を第1通信線t1に出力する。各々の電圧検出回路D1~Dnが第1通信線t1に出力した検出電圧信号は、上り通信信号として各通信回線Tの第2通信線t2及び各電圧検出回路D1~Dnを介して制御回路Sで受信される。
【0044】
ここで、各々の電圧検出回路D1~Dnには通信付加回路3が設けられている。この通信付加回路3は、電圧検出回路D1~Dnにおける上り通信信号の送信及び下り通信信号の受信に際して、以下のように機能する。
【0045】
上り通信信号を生成する電圧検出IC1において、上り通信信号を出力する第1通信用端子DPLは、第1抵抗器4(第1の抵抗値Ra)及び第1コンデンサ6(第1の静電容量Ca)を介して交流的に設定されているので、当該第1抵抗器4(第1の抵抗値Ra)及び第1コンデンサ6(第1の静電容量Ca)は、上り通信信号の電位を安定化させる。
【0046】
また、下り通信信号を生成する電圧検出IC1において、下り通信信号を出力する第2通信用端子DMLは、第2抵抗器5(第2の抵抗値Rb)及び第1コンデンサ6(第1の静電容量Ca)を介して交流的に設定されているので、当該第2抵抗器5(第2の抵抗値Rb)及び第1コンデンサ6(第1の静電容量Ca)は、下り通信信号の電位を安定化させる。
【0047】
このような本実施形態によれば、通信信号の入出力を行う第1通信用端子DPL及び第2通信用端子DMLを第1抵抗器4、第2抵抗器5及び第1コンデンサ6から構成される受動回路によって交流的に接地するので、通信信号の電位の安定性を確保することが可能である。
【0048】
また、通信付加回路3には、上記受動回路に加えて第2コンデンサ7が設けられている。すなわち、電圧検出IC1における電源モニタ端子CVDD、つまり電圧検出IC1において通信信号を最終的に入出力するデジタルIO回路d1の電源(デジタル電源)は、第2コンデンサ7及び第1コンデンサ6から構成される第2の受動回路によって交流的に接地されている。
【0049】
このような本実施形態によれば、図4(a)~(c)に示されているように、GND(接地電位)にパルス状のノイズが重畳していない場合(a)と重畳した場合(b)では通信信号の波形が異なる。すなわち、ノイズが重畳していない場合(a)は通信信号の波形歪が生じないが、GNDからのノイズが重畳した場合には(b)の通信信号波形のように一部がノイズにより潰れてしまい波形歪を起こす。
【0050】
このようなノイズに対して、本実施形態によれば、GND(接地電位)に重畳したノイズと同期してデジタル電源を変動させることが可能になる。すなわち、本実施形態によれば、ノイズによってGND(接地電位)とデジタル電源(5V)とが同期して変動することで、図4(c)のように通信信号の波形もGND(接地電位)に重畳したノイズと同期して変動するため通信信号の波形歪を抑制することが可能であり、よって安定した通信を実現することが可能である。
【0051】
本実施形態に係る車載用電池制御装置Aには、複数のCRフィルタ2が設けられている。これらCRフィルタ2は、上述したようにコンデンサの他端がGND(接地電位)に接続されており、電圧検出線に外部から飛来するノイズを上記コンデンサを介してGND(接地電位)に迂回させる。したがって、GND(接地電位)にはパルス状ノイズが重畳し易い傾向にある。
【0052】
ところで、制御回路Sは、各電圧検出回路D1~Dnから受信した各電池モジュールM1~Mnのセル電圧に基づいて各電池モジュールM1~Mnや組電池Bの状態を判定し、この判定結果に基づいて各電池モジュールM1~Mnや組電池Bを制御する。
【0053】
例えば、第1電池モジュールM1における1つの電池セルが異常電圧であった場合、制御回路Sは、第1電池モジュールM1の各電池セルのうち、上記異常電圧に該当する電池セルに並列接続された放電回路をOFF状態からON状態に設定することにより、異常電圧に該当する電池セルに充電電流が流れ込まないように制御する。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、通信回線Tが上り通信用の第1通信線と下り通信用の第2通信線t2とを個別に備える場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、単一の通信線で下り通信信号と上り通信信号とを伝送する通信回線にも適用可能である。
【0055】
(2)上記実施形態では、第2の受動回路を構成する第1コンデンサ6及び第2コンデンサ7を用いて電源モニタ端子CVDDを交流的に接地したが、本発明はこれに限定されない。第2の受動回路の本質的な機能は、下り通信信号及び上り通信信号を入出力するデジタルIO回路d1の電源(デジタル電源)をGND(基準電位)に重畳したパルス状ノイズに同期して変動させることにある。したがって、デジタルIO回路d1の電源(デジタル電源)を上記パルス状ノイズに同期して変動させることが可能な回路部位でれば、電源モニタ端子CVDD以外の回路部位であってもよい。
【0056】
(3)第1抵抗器4、第2抵抗器5、第1コンデンサ6及び第2コンデンサ7を備える通信付加回路3を採用したが、本発明はこれに限定されない。例えば図5(a)に示すように、通信付加回路3に代えて通信付加回路3Aを採用してもよい。
【0057】
この通信付加回路3Aは、第2コンデンサ7の一端を第1抵抗器4の他端、第2抵抗器5の他端及び第2コンデンサ7の一端に接続するのではなく、GND(接地電位)に接続するものである。このような通信付加回路3Aによれば、通信付加回路3と同様に通信信号の電位の安定とノイズによる影響の低減とを図ることが可能である。このような通信付加回路3Aでは、第2コンデンサ7が本発明の第2の受動回路に相当する。
【0058】
(4)上記実施形態では通信付加回路3を採用したが、当該通信付加回路3に代えて、図5(b)に示す通信付加回路3Cを採用してもよい。この通信付加回路3Cは、第1抵抗器4を第3直列回路Zeに置き換え、また第2抵抗器5を第4直列回路Zfに置き換えたものである。第3直列回路Ze及び第4直列回路Zfは、例えば抵抗器とコンデンサとの直列回路である。
【符号の説明】
【0059】
A 車載用電池制御装置
B 組電池
C1 第1カップリングコンデンサ
C2 第2カップリングコンデンサ
D1~Dn 電圧検出回路
d1 デジタルIO回路
d2 デジタル電源回路
I 絶縁回路
S 制御回路
T 通信回線
t1 第1通信線
t2 第2通信線
1 電圧検出IC
2 CRフィルタ
3 通信付加回路
4 第1抵抗器
5 第2抵抗器
6 第1コンデンサ
7 第2コンデンサ


図1
図2
図3
図4
図5