(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御方法、及び、ハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
B60W 20/12 20160101AFI20240920BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20240920BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240920BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240920BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20240920BHJP
B60W 20/11 20160101ALI20240920BHJP
B60W 20/17 20160101ALI20240920BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20240920BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20240920BHJP
B60L 58/13 20190101ALI20240920BHJP
【FI】
B60W20/12 ZHV
B60W20/00 900
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60K6/46
B60W20/11
B60W20/17
B60L50/16
B60L50/61
B60L58/13
(21)【出願番号】P 2020192026
(22)【出願日】2020-11-18
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手塚 淳
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-099920(JP,A)
【文献】特開2019-188877(JP,A)
【文献】特開2019-104462(JP,A)
【文献】特開2019-188882(JP,A)
【文献】特開2012-147554(JP,A)
【文献】特開2020-029148(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0114463(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0112526(US,A1)
【文献】特開2015-223859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 20/50
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源となるモータと、前記モータに電力を供給するバッテリと、発電機を駆動させて前記バッテリに電力を供給可能なエンジンとを備えるハイブリッド車両において、
予定される走行経路に所定の区間の往復路が含まれる
か否かを判定し、
前記走行経路に前記往復路が含まれる場合、前記往復路の一方を、前記エンジンを駆動させずに前記モータにより走行する
ときに必要なエネルギが、
SOC上限値とSOC下限値の差に相当する前記バッテリの
使用可能最大エネルギを下回る
か否かによって、前記往復路の一方を前記バッテリに蓄えられるエネルギのみで走行可能であるか否かを判定し、
前記往復路の一方を前記バッテリに蓄えられるエネルギのみで走行可能である場合、
前記往復路の一方
を、前記エンジンの駆動を停止して発電を行わずに前記モータによって走行するEVトリップに設定し、
前記往復路の他方
を、前記エンジンを駆動させて前記往復路の一方の走行に必要なエネルギを上回るエネルギを前記バッテリに蓄える
充電トリップに設定する、
ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御方法であって、
前記充電トリップに設定された前記他方の経路の走行中において、暗騒音が閾値を上回る区間において、前記エンジンを駆動させる、ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載のハイブリッド車両の制御方法であって、
前記往復路の
一方及び他方の走行に必要なエネルギ
がいずれも前記使用可能最大エネルギを
下回る場合には、前記往復路のうち前記暗騒音が小さい経路を
前記EVトリップに設定し、前記暗騒音が大きい経路を
前記充電トリップに設定する、ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載のハイブリッド車両の制御方法であって、
前記暗騒音は、前記往復路における路面情報及び走行速度に応じて求められる、ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の制御方法であって、
さらに、前記往復路以外の第3の経路の走行に必要なエネルギが、
前記使用可能最大エネルギを下回る場合であって、前記第3の経路が
前記EVトリップに設定された前記往復路の一方と連続し、かつ、前記第3の経路及び前記往復路の一方の走行に必要なエネルギの和が、
前記使用可能最大エネルギを下回る場合には、
前記充電トリップに設定された前記往復路の他方の走行中において、前記エンジンを駆動させて前記往復路の一方及び前記第3の経路の走行に必要なエネルギを前記バッテリに蓄える、ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の制御方法であって、
前記EVトリップに設定された前記往復路の一方の走行中においては、前記エンジンの駆動が抑制されている旨、または、前記エンジンの駆動が積極的にされる旨を前記ハイブリッド車両の運転者に通知する、ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項7】
駆動源となるモータと、前記モータに電力を供給するバッテリと、発電機を駆動させて前記バッテリに電力を供給可能なエンジンと、前記エンジンの駆動を制御するコントローラと、を備えるハイブリッド車両であって、
前記コントローラは、予定される走行経路に所定の区間の往復路が含まれる
か否かを判定し、
前記走行経路に前記往復路が含まれる場合、前記往復路の一方を、前記エンジンを駆動させずに前記モータにより走行する
ときに必要なエネルギが、
SOC上限値とSOC下限値の差に相当する前記バッテリの
使用可能最大エネルギを下回る
か否かによって、前記往復路の一方を前記バッテリに蓄えられるエネルギのみで走行可能であるか否かを判定し、
前記往復路の一方を前記バッテリに蓄えられるエネルギのみで走行可能である場合、
前記往復路の一方
を、前記エンジンの駆動を停止して発電を行わずに前記モータによって走行するEVトリップに設定し、
前記往復路の他方
を、前記エンジンを駆動させて前記往復路の一方の走行に必要なエネルギを上回るエネルギを前記バッテリに蓄える
充電トリップに設定する、
ハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御方法、及び、ハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン及び発電機を備えるハイブリッド車両においては、燃料消費量の低減を図るために、走行経路毎にバッテリの充電量(SOC:State Of Charge)の目標値が設定されることがある。特許文献1に開示された技術によれば、次走行において暖房要求があると予測される場合には、現在の走行の終了時点でのSOC目標値が低く設定される。これにより、次走行においては積極的にエンジンが駆動されるので、エンジン水温が暖機完了温度を上回り、暖房機能を提供可能となるまでの時間の短縮化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術によれば、次走行における暖房機能に着目した制御であり、次走行の経路等が考慮されていない。そのため、例えば、所定の経路を往復する場合に、一方の経路において、下り勾配が多くエンジンを駆動する必要がない場合であっても、エンジン水温を考慮した制御がされることにより、エンジンが駆動されてしまう。このように、特許文献1の技術では、次回の走行経路を考慮したエンジンの動作を決定するものではないため、エンジンの駆動の必要ない経路においてエンジンが駆動してしまい、その結果、燃費が悪化するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、所定の往復路を走行する場合において、往復路のうちの一方の経路においてエンジンを駆動させないことにより、往復路全体における燃費の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によるハイブリッド車両の制御方法は、駆動源となるモータと、モータに電力を供給するバッテリと、発電機を駆動させてバッテリに電力を供給可能なエンジンとを備えるハイブリッド車両の制御方法である。この制御方法においては、予定される走行経路に所定の区間の往復路が含まれるか否かを判定し、前記走行経路に前記往復路が含まれる場合、往復路の一方を、エンジンを駆動させずにモータにより走行するときに必要なエネルギが、SOC上限値とSOC下限値の差に相当するバッテリの使用可能最大エネルギを下回るか否かによって、往復路の一方をバッテリに蓄えられるエネルギのみで走行可能であるか否かを判定する。そして、往復路の一方をバッテリに蓄えられるエネルギのみで走行可能である場合、往復路の一方を、エンジンの駆動を停止して発電を行わずにモータによって走行するEVトリップに設定し、往復路の他方を、エンジンを駆動させて往復路の一方の走行に必要なエネルギを上回るエネルギをバッテリに蓄える充電トリップに設定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のハイブリッド車両の制御方法によれば、往復路のうちの一方の経路においてエンジンを駆動させないことにより、往復路全体における燃費の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るハイブリッド車両の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、トリップ設定制御を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、車両の運転状態を示すタイミングチャートである。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る目標SOC増加量の説明図である。
【
図5】
図5は、充電トリップにおけるエンジンの駆動制御を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、暗騒音レベルに応じたエンジンの駆動区間の設定方法についての説明図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態に係るトリップ設定制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両の構成を示すブロック図である。なお、本実施形態においては、シリーズ型のハイブリッド車両について説明するが、これに限らない。パラレルハイブリッド型の車両であってよいし、シリーズ型とパラレル型とを併用したハイブリッド車両であってもよい。また、プラグインハイブリッド車両であってもよい。
【0011】
図1に示されるように、車両100は、エンジン(内燃機関)1、発電機2、バッテリ3、電動のモータ4、ギア5、車軸6、及び、車輪7を備える。また、車両100は、シリーズ型のハイブリッド車両であり、エンジン1、発電機2、及び、モータ4が直列に接続されている。すなわち、エンジン1の動力は、車輪7の駆動源でなく、発電機2を発電させるために使用される。
【0012】
詳細には、エンジン1は、減速機(図示せず)を介して発電機2に機械的に連結され、発電機2は、バッテリ3及びモータ4に対して送受電可能に接続されている。このような構成において、エンジン1の駆動力は発電機2に伝達され、発電機2はエンジン1の駆動力によって発電する。発電機2において発電された電力は、バッテリ3、及び、モータ4の双方に供給可能に構成されている。そのため、モータ4は、発電機2の駆動中は主に発電機により発電された電力によって、また、発電機2が駆動していない場合にはバッテリ3に充電された電力によって回転駆動する。
【0013】
モータ4は、ギア5を介して車軸6に機械的に連結され、車軸6は車輪7に機械的に連結される。モータ4の駆動力は、ギア5及び車軸6を介して車輪7に伝達される。車輪7はモータ4の駆動力によって回転することにより、車両100が走行する。
【0014】
車両100は、全体を制御するコントローラ8を備える。さらに、車両100は、ブレーキ力を検知するブレーキ油圧センサ9と、アクセル開度を検知するアクセルポジションセンサ10と、車輪7の回転速度を測定する車輪速センサ11をさらに備える。コントローラ8には、これらのセンサの各々に電気的に接続されており、検出結果が入力される。
【0015】
さらに、車両100には、種々の情報をドライバに対して通知する情報通知部12を備えている。情報通知部12は、コントローラ8からの指示に応じて動作するデバイスであって、例えば、画面に情報を示すディスプレイや、音声により情報を通知するスピーカである。
【0016】
コントローラ8は、主に車両100における駆動系の制御を行う駆動制御部81と、走行経路の作成等を行うトリップ設定部82とを備える。
【0017】
駆動制御部81は、ブレーキ油圧センサ9、及び、アクセルポジションセンサ10からの入力に応じて、車輪速センサ11により取得された車輪7の回転速度が目標回転速度となるようにトルク指令値を生成し、生成したトルク指令値をモータ4へと出力する。同時に、駆動制御部81は、バッテリ3の残量を検出可能に構成されており、バッテリ3の残量(SOC:Stete Of Charge)に応じてエンジン1を駆動させることで、充電を制御する。
【0018】
トリップ設定部82は、不図示のGPS受信機、通信インタフェース、及び、地図データベースを備えており、ドライバの操作に応じて走行経路の設定をするナビゲーション機能を有する。同時に、トリップ設定部82は、以下に示すトリップ設定制御を行う。
【0019】
例えば、通勤路を往復する場合において、往路において下り坂が多く、復路において上り坂が多くさらに、往路においてバッテリ3のSOCが十分に大きく、エンジン1による発電を行わなくてもバッテリ3に蓄えられたエネルギだけで走行可能である場合を想定する。
【0020】
このような場合には、トリップ設定部82は、トリップ設定制御により、往路については、EVトリップとして、エンジン1の駆動を停止して発電を行わずにモータ4を駆動させる。一方、復路については、充電トリップとして、走行終了時のSOCが所定の目標SOCを上回るようにエンジン1を駆動させる。
【0021】
なお、EVトリップ及び充電トリップとして設定されない経路においては、SOCがSOC下限値を下回ると、エンジン1は駆動され、発電機2により発電された電力が、バッテリ3に充電される。そして、SOCがSOC上限値を上回ると、エンジン1は停止されて、バッテリ3の充電が終了する。なお、SOC上限値は、バッテリ3の充電容量の最大値に近く、回生制動が行われても発電電力がバッテリ3に充電できる程度の余裕がある値である。
【0022】
また、充電トリップの走行終了時における目標SOCは、EVトリップで走行に必要なエネルギのSOC換算値を上回る必要がある。現トリップが充電トリップであり次トリップがEVトリップである場合には、目標SOCが達成されることにより、次のEVトリップが可能となる。目標SOCについては、第2実施形態において詳細に説明される。
【0023】
一方、現トリップがEVトリップであり次トリップが充電トリップである場合においては、その次が再びEVトリップと同じ走行経路になると仮定して、充電トリップの走行終了時における目標SOCは、同様にEVトリップで走行に必要なエネルギよりも大きな値とする。なお、目標SOCは、SOC上限値であってもよく、目標SOCがSOC上限値となることで、その次に再びEVトリップと同じ走行経路とならない場合でも、当該走行経路においてエンジン1を駆動しなくてもよくなる可能性を高めることができる。
【0024】
ここで、エンジン1が暖機されていない状態では、エンジン1の駆動開始時に、エンジン1の暖機のために燃料が消費される。しかしながら、EVトリップとして設定された往路においては、エンジン1が駆動されないので、エンジン1の暖機に必要な燃料の消費を低減することができ、その結果、燃費の向上を図ることができる。
【0025】
なお、コントローラ8は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RΑM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたコンピュータで構成される。なお、コントローラ8は一つの装置として構成されていても良いし、複数のブロックに分けられ、本実施形態の各処理を複数のブロックで分散処理するように構成されていても良い。また、後述の図示されるフローチャートに示される処理は、コントローラ8に記憶されたプログラムが実行されることにより行われてもよい。
【0026】
図2は、トリップ設定部82によって実行されるトリップ設定制御を示すフローチャートである。また、本トリップ設定制御は、車両100の走行開始時に行われるものとする。
【0027】
ステップS101において、トリップ設定部82は、車両100の過去の走行履歴から、今回の走行経路(現トリップ)及び次回の走行経路(次トリップ)の目的地及び走行経路が予測可能であるか否かを判定する。
【0028】
トリップ設定部82は、現トリップ及び次トリップの目的地及び走行経路が予測できる場合には(S101:Yes)、次に、ステップS102の処理を行う。トリップ設定部82は、現トリップ及び次トリップの目的地及び走行経路が予測できない場合には(S101:No)、トリップ設定制御を終了する。
【0029】
ステップS102においては、トリップ設定部82は、車両100の過去の走行履歴から、これから予定される走行経路に、今回の走行経路(現トリップ)及び次回の走行経路(次トリップ)が特定の経路の往復が含まれているか否かを判定する。
【0030】
一例として、ステップS101、S102においては、以下のような判定がなされる。例えば、運転者が自宅から会社までの通勤を行う曜日・時間が定まっている場合には、当該所定の曜日・時間において運転が開始される。そのため、トリップ設定部82は、過去及び今回の車両始動時における曜日及び時刻を取得し、今回の車両始動時の曜日及び時刻が、過去における通勤時の曜日及び時刻と近い場合には、現トリップについては、目的地を職場として走行経路(往路)であると判断する。さらに、トリップ設定部82は、次トリップとして、職場から自宅までの走行経路(復路)であると判断する。他の例として、トリップ設定部82は、現在地が自宅である場合に目的地として、過去に往復を行った場所(例えば職場)が設定される場合には、現トリップが自宅から職場までの走行経路(往路)であり、次トリップが職場から自宅までの走行経路(復路)であると判断してもよい。
【0031】
トリップ設定部82は、現トリップ及び次トリップが特定の経路の往復であると予測する場合には(S102:Yes)、次に、ステップS103の処理を行う。トリップ設定部82は、現トリップ及び次トリップが特定の経路の往復であると判断できない場合には(S102:No)、トリップ設定制御を終了する。
【0032】
ステップS103において、トリップ設定部82は、予測された往復経路を走行する現トリップ及び次トリップについて、走行経路についての勾配プロフィール及び車速プロフィールを予測する。勾配プロフィールは、走行経路の所定位置と当該位置における道路勾配を関連付けた勾配データを集積したものである。車速プロフィールは、走行経路の所定位置に応じた車両100の速度を集積したものである。なお、勾配プロフィールの予測には、予め記憶された地図情報等が用いられ、車速プロフィールの予測には、さらに、過去の走行記録や、ネットワークを介して取得する渋滞情報等が用いられる。
【0033】
ステップS104において、トリップ設定部82は、ステップS103において予測された勾配プロフィール及び車速プロフィールに基づいて、現トリップ及び次トリップをモータ4で走行するのに必要なエネルギ消費量を算出する。エネルギ消費量は、これらのトリップの開始時から終了時までに消費されるエネルギであって、全区間におけるモータ4の駆動エネルギから回生エネルギを減ずるにより求められる。
【0034】
ステップS105において、トリップ設定部82は、現トリップ及び次トリップのいずれか一方のみについて、バッテリ3に蓄えられるエネルギのみで当該トリップを走行可能であり、トリップ中にエンジン1を駆動させて発電させる必要があるか否かを判定する。
【0035】
詳細には、トリップ設定部82は、現トリップ及び次トリップについて、ステップS104において予測されたトリップにおけるエネルギ消費量が、バッテリ3の使用可能最大エネルギを下回る場合には、バッテリ3に蓄えられるエネルギのみで走行可能と判定される。ここで、使用可能最大エネルギは、SOC上限値とSOC下限値との差に相当する。
【0036】
さらに、現トリップの走行開始時点におけるSOCが十分に大きくない場合には、エンジン1を駆動させる必要が高いため現トリップはEVトリップとして設定されないことが望ましい。そこで、トリップ設定部82は、現トリップの走行開始時点でのSOCとSOC下限値との差に応じて、現トリップでのバッテリ3の現時点での使用可能エネルギを求める。そして、トリップ設定部82は、現トリップのエネルギ消費量がバッテリ3の使用可能エネルギを上回る場合には、現トリップはバッテリ3に蓄えられているエネルギのみで走行を行えないと判定されて、EVトリップとしては設定されない。
【0037】
トリップ設定部82は、現トリップ及び次トリップについてエネルギ消費量がバッテリ3の使用可能最大エネルギを下回る場合には、現トリップ及び次トリップのうちのいずれか一方のみについて、エンジン1を駆動せずにバッテリ3に蓄えられたエネルギを用いてモータ4で走行を行えると判定する場合には(S105:Yes)、次にステップS106の処理を行う。なお、上述のように、現トリップにおいては、エネルギ消費量が、現時点でのSOCに応じた使用可能エネルギを上回るか否かの判定を行ってもよい。
【0038】
一方、トリップ設定部82は、現トリップ及び次トリップのうちのいずれか一方のみについて、バッテリ3の使用可能最大エネルギで走行を行えないと判定され(S105:No)、次にステップS107の処理を行う。すなわち、現トリップ及び次トリップの両者においてエンジン1を駆動せずにモータ4で走行を行えると判定される場合、または、両者においてエンジン1を駆動せずにモータ4で走行を行えないと判定される場合には、次にステップS107の処理が行われる。
【0039】
ステップS106においては、トリップ設定部82は、ステップS104においてバッテリ3の使用可能最大エネルギで走行を行えると判定された一方のトリップについて、EVトリップとして設定する。同時に、トリップ設定部82は、ステップS104においてバッテリ3の使用可能最大エネルギで走行を行えないと判定された他方のトリップについて、充電トリップとして設定する。
【0040】
一方、ステップS107においては、トリップ設定部82は、現トリップ及び次トリップの両者について、バッテリ3の使用可能最大エネルギで走行を行えるか否かを判定する。
【0041】
トリップ設定部82は、現トリップ及び次トリップの両者について、エンジン1を駆動せずにモータ4で走行を行えると判定する場合には(S107:Yes)、次にステップS108の処理を行う。一方、トリップ設定部82は、現トリップ及び次トリップの両者について、エンジン1を駆動せずにモータ4で走行を行えないと判する場合には(S107:No)、トリップ設定制御を終了する。
【0042】
ステップS108において、トリップ設定部82は、現トリップ及び次トリップの両者について、走行経路の路面状態及び当該走行経路を走行する際の走行速度に応じて車両100の車室内の暗騒音を求め、暗騒音が所定の閾値を下回る区間を求める。ここで、暗騒音とは、エンジン1に起因しない車室内の騒音であって、主に、走行時において車輪7と路面との間の接触に起因するロードノイズである。例えば、直進走行の多い区間は、右左折が多い区間よりも暗騒音は小さいと予測される。走行速度が遅い場合には、速い場合よりも暗騒音は小さいと予測される。
【0043】
そして、トリップ設定部82は、暗騒音が全体的に大きいトリップを充電トリップとして設定するとともに、暗騒音が全体的に小さいトリップをEVトリップとして設定する。例えば、暗騒音が閾値を超える区間が長いトリップを充電トリップとして設定する。充電トリップにおいては暗騒音が大きい区間においてエンジン1を駆動させることにより、ドライバにはエンジン1の駆動音に起因する騒音が気づきにくくなる。なお、暗騒音に基づくトリップ設定については、後に
図3(A4)及び(B4)を用いて説明する。
【0044】
図2に示されるトリップ設定制御の概要は、次の表のように示される。なお、以下の説明では、説明を簡略化するために、ステップS105における、現トリップについてのエネルギ消費量と使用可能エネルギとの比較処理に関する説明を省略する。
【0045】
【0046】
この表においては、列方向に往路の状態が、行方向に復路の状態が示されている。列方向においては、往路のエネルギ消費量が小さくバッテリ3の使用可能最大エネルギを下回る場合と、往路のエネルギ消費量が大きくバッテリ3の使用可能最大エネルギを上回る場合とが示されている。行方向においては、復路のエネルギ消費量が小さくバッテリ3の使用可能最大エネルギを下回る場合と、復路のエネルギ消費量が大きくバッテリ3の使用可能最大エネルギを上回る場合とが示されている。
【0047】
この表中の左下セルに示されるように、往路のエネルギ消費量が大きくバッテリ3の使用可能最大エネルギを上回り、かつ、復路のエネルギ消費量が小さくバッテリ3の使用可能最大エネルギを下回る場合には(S105:Yes)、往路はエンジン1を駆動する充電トリップとして設定され、復路はエンジン1の駆動をさせないEVトリップとして設定される(S106)。
【0048】
同様に、右上セルに示されるように、往路のエネルギ消費量が小さくバッテリ3の使用可能最大エネルギを下回り、かつ、復路のエネルギ消費量が大きくバッテリ3の使用可能最大エネルギを上回る場合には(S105:Yes)、往路はエンジン1の駆動をさせないEVトリップとして設定され、復路はエンジン1を駆動する充電トリップとして設定される(S106)。
【0049】
一方、右下セルに示されるように、往復路の両者においてエネルギ消費量が大きくバッテリ3の使用可能最大エネルギを上回る場合には(S106:No、S107:No)、EVトリップ及び充電トリップの設定は行われず、往復路の両者においてエンジン1が適宜駆動されるシリーズハイブリッド走行が行われる。シリーズハイブリッド走行においては、SOC下限値を下回る場合に駆動し、SOCがSOC上限値を上回るとエンジン1が停止される。
【0050】
また、左上セルに示されるように、往復路の両者においてエネルギ消費量が小さくバッテリ3の使用可能最大エネルギを下回る場合には(S106:No、S107:Yes)、暗騒音が大きい経路が充電トリップとして設定され、暗騒音が小さい経路がEVトリップとして設定される。
【0051】
このようにトリップ設定制御が行われた後には、EVトリップとして設定されたトリップにおいては、エンジン1の駆動が停止される。一方、充電トリップとして認定されたトリップにおいては、エンジン1が積極的に駆動されて充電が行われる。その結果、EVトリップにおいてはエンジン1の駆動が停止されるので、両トリップにおいてエンジン1が駆動される場合と比較すると、エンジン1の駆動回数を減少できる。そのため、EVトリップにおいては、エンジン1の暖機等に必要なエネルギ消費を抑制することができるので、燃費の向上を図ることができる。
【0052】
図3は、本実施形態の車両100の運転状態を示すタイミングチャートである。この図においては、自宅と職場とを往復する例について示されている。図中においては、左方(A)に自宅から職場までの往路の走行状態が示され、右方(B)に職場から自宅までの復路の走行状態が示されている。
【0053】
全てのグラフにおいて、横軸には時間が示されている。縦軸には、往路(A)、復路(B)の両者において、上から順に、車速、標高、エネルギ消費量、及び、暗騒音が示されている。車速、及び、標高はステップS103において取得され、エネルギ消費量はステップS104において求められ、暗騒音はステップS108において取得される。以下では、便宜上、往路及び復路のそれぞれについて、車速、標高、エネルギ消費量、及び、暗騒音を示す領域について、
図3(A1)~(A4)及び
図3(B1)~(B4)と示すものとする。
【0054】
図3(A2)及び
図3(B2)に示されるように、往路は全体として下り坂であり、復路は全体として登坂路である。なお、この図においては、往路と復路は同じ経路を往復するものとする。
【0055】
図3(A1)及び
図3(B1)に示される車速は、過去の走行履歴等に基づき走行時間帯に応じて異なるため、往路及び復路において同じ場所であっても異なる速度となる。
【0056】
図3(A3)及び
図3(B3)には、エネルギ消費量として、走行において使用されるエネルギの時間積分値が示されている。すなわち、エネルギ消費量は、エンジン1の「駆動電力-回生電力」の時間積分値に相当する。往路において一時的にゼロを下回る箇所が存在するが、これは、下り勾配において回生制動が行われて発電されるためである。
図3(A3)に示されるように、往路では、エネルギ消費量がバッテリ3の使用可能最大エネルギを下回る。一方、
図3(B3)に示されるように、復路では、エネルギ消費量が使用可能最大エネルギを上回る。
【0057】
このような場合には、ステップS106において、往路はEVトリップとして設定され、復路は充電トリップとして設定される。
【0058】
なお、往路及び復路において一方のトリップでのみエネルギ消費量が使用可能最大エネルギを上回る場合には(S105:Yes)、暗騒音に基づく設定処理(S108)は行われないが、説明のため、
図3(A4)及び
図3(B4)を用いて、暗騒音に基づくトリップの設定処理について説明する。
【0059】
図3(A4)及び
図3(B4)には、往路及び復路において測される暗騒音が示されている。ここで、暗騒音の予測方法の概要を、次表を用いて説明する。
【0060】
【0061】
この表においては、列方向においては路面粗さが3段階(粗い、中程度、良)で示されている。この路面粗さは、ネットワークを介して取得できるプローブデータにより取得してもよいし、過去の走行履歴に基づいて車輪速の変動から推定してもよい。行方向においては車速が4段階(0-20km/h、20-40km/h、40-60km/h、60km/h以上)で示されている。当該車速は、
図3(A1)及び
図3(B1)に基づいて定められる。
【0062】
また、表中には暗騒音のレベルが3段階(大、中、小)で示されている。暗騒音レベルが「大」の区間においては、エンジン1を燃費最良点(燃料消費率が最低となる運転点)で運転しても、エンジン1の駆動音が車室内において聞こえないレベルであるものとする。暗騒音レベルが「中」の場合には、エンジン1を燃費最良点で運転すると、エンジン1の駆動音が聞こえるが車室内のドライバにとって気にならないレベルであるものとする。暗騒音レベルが「小」の場合には、暗騒音が小さいため、エンジン1を燃費最良点で運転すると、エンジン1の駆動音が車室内において気になるレベルであるものとする。
【0063】
このように、路面粗さ及び車速に応じて暗騒音のレベルを判定することができる。
図3(A4)及び
図3(B4)には、表1よりも詳細に予測された暗騒音が示される。これらの図には、さらに、点線で暗騒音が「大」のレベルが示されている。
【0064】
図3(A4)に示される往路の方が、
図3(B4)に示される復路よりも暗騒音が閾値を上回る区間が短い。そこで、ステップS108の処理においては、往路がEVトリップとして設定され、復路が充電トリップとして設定される。復路においては暗騒音が閾値を上回る区間が長いので、当該区間でエンジン1を駆動させてバッテリ3を充電することで、運転者に対してエンジン1に起因する騒音が気づきにくくなる。
【0065】
このようにして、往路及び復路のうちの一方をEVトリップとして設定し、EVトリップにおいてエンジン1を駆動させないことにより、往復路の両者においてエンジン1が駆動される場合と比較すると、エンジン1の駆動回数が減少させることができる。その結果、エンジン1の暖機等の初期駆動に必要な消費燃料の低減を図ることができるため、往復路の全体としては消費燃料の低減を図ることができる。
【0066】
さらに、トリップ設定部82は、EVトリップ及び充電トリップが設定されている場合には、当該トリップ設定に関する情報を、情報通知部12を介してドライバに通知する。このようにすることで、ドライバに対して、トリップ設定、すなわち、EVトリップが設定されてエンジン1を駆動させないように制御されている状態や、充電トリップが設定されてエンジン1が積極的に駆動している状態等を知らせることができるので、エンジン1の稼働状態に関する違和感を抑制できる。
【0067】
第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0068】
第1実施形態のハイブリッド車両の制御方法によれば、予測される走行経路に所定の区間の往復路が含まれる場合には、往復路の一方において、走行に必要なエネルギが、バッテリ3の供給可能な最大エネルギを下回る場合には(S105:Yes)、その一方についてはEVトリップとして設定し、走行中においてエンジン1を駆動させない。他方、往復路の他方については充電トリップとして設定され、走行中においてエンジン1を駆動させて、EVトリップとして設定された往復路の一方の走行に必要なエネルギをバッテリ3に蓄える。
【0069】
ここで、例えば、エンジン1を駆動する場合であって、エンジン水温が低い場合には、その開始時において暖機運転が必要となる。しかしながら、本実施形態においてEVトリップとして設定された一方の経路においては、エンジン1を駆動させないので、エンジン1の暖機が不要となる。そのため、往復路の両者においてエンジン1を駆動させる場合と比較すると、暖機のために消費する燃料消費量を低減することが可能であり、往復路トータルでの燃料消費を低減することができる。
【0070】
第1実施形態のハイブリッド車両の制御方法によれば、充電トリップにおいて、暗騒音が閾値を上回るような比較的大きい区間において、エンジン1を駆動させる。充電トリップにおいて暗騒音が小さい区間においてエンジン1を駆動させることにより、車室内においてドライバにエンジン1の駆動音に起因する騒音が気づきにくくなり、車室内の快適性の向上を図ることができる。
【0071】
第1実施形態のハイブリッド車両の制御方法によれば、往復路の双方において、走行に必要なエネルギがバッテリ3の供給可能な最大エネルギを下回る場合には(S105:No、S106:Yes)、往復路のそれぞれにおける暗騒音の大きさを取得する。そして、暗騒音が全体において小さい往復路の一方についてはEVトリップとして設定し、暗騒音が大きな往復路の他方については充電トリップとして設定する。
【0072】
ここで、暗騒音が大きな区間においては、暗騒音によりエンジン1の駆動音が気づきにくい。そこで、暗騒音が大きな区間が長い方をEVトリップとして設定することで、車室内の快適性の向上を図りながら、バッテリ3の充電が行いやすくなる。
【0073】
第1実施形態のハイブリッド車両の制御方法によれば、暗騒音レベルは、車両100の走行経路における路面状態を示す、及び、路面における走行速度に応じて定められる。このように定めることにより、主にロードノイズに起因する暗騒音の大きさを精度よく求めることができる。
【0074】
第1実施形態のハイブリッド車両の制御方法によれば、情報通知部12を介して、ドライバに対して、EVトリップ及び充電トリップが設定されている場合には、当該トリップ設定に関する情報を通知する。このようにすることで、ドライバは、EVトリップが設定されてエンジン1が駆動されないように制御されている状態や、充電トリップが設定されてエンジン1が積極的に駆動している状態等を知らせることができるので、エンジン1の駆動状態に関する違和感を抑制できる。
【0075】
(第2実施形態)
第2実施形態においては、充電トリップにおけるエンジン1の駆動方法を定める方法について説明する。
【0076】
まず、現トリップが充電トリップであり、次トリップがEVトリップである場合に、現トリップにおいて必要とされるSOC増加量について、
図4を用いて説明する。
【0077】
図4は、目標SOC増加量の説明図である。縦軸には、SOCの大きさが示されている。横軸には、左方に現トリップに関するSOCが示されており、右方に次トリップに関するSOCが示されている。
【0078】
現トリップにおいては、図左方に開始時点におけるSOCが、SOCcとして示されている。現トリップ終了時におけるSOCは、SOCcから、
図3(B3)に示された現トリップでのエネルギ消費量P1(SOC換算値)だけ小さくなり、SOC1となる。このような、現トリップにおいて発電を行わない場合には、現トリップ終了時におけるSOC2は、「SOCc-P1」と予測される。
【0079】
一方、次トリップにおいては、次トリップの終了時におけるSOCは、図右方に示されるSOC下限値(SOCmin)を上回る必要がある。そのため、現トリップの終了時において要求される最低のSOCであるSOC2は、「SOCmin+P2」となる。
【0080】
そこで、現トリップにおいては、SOC2とSOC1との差以上のエネルギを発電により得る必要がある。そのため、目標SOC増加量P3は、SOC2からSOC1を減ずることにより求められる「P1+P2+SOCmin-SOCc」となる。これは、現トリップのエネルギ消費量P1と、次トリップのエネルギ消費量P2の和に対して、現トリップ開始時点におけるSOCのSOC下限値からの超過分(SOCc-SOCmin)を減じたものに相当する。このように、現トリップにおける目標SOC増加量P3を設定することができる。
【0081】
さらに、目標SOC増加量P3を得るために、充電トリップにおけるエンジン1の制御方法について、
図5を用いて説明する。
【0082】
図5は、充電トリップにおけるエンジン1の駆動制御を示すフローチャートである。この駆動制御の前段において、
図2に示されたトリップ設定制御が行われ、現トリップが充電トリップであり、次トリップがEVトリップであると設定されたものとする。また、
図2のステップS108の処理が行われ、
図3(B4)に示される充電トリップ(本例では現トリップ)における暗騒音レベルが求められているものとする。
【0083】
ステップS201において、トリップ設定部82は、現トリップが充電トリップとして設定されているか否かを判定する。これは、現トリップにおいてバッテリ3に充電されたエネルギを用いて、次トリップにおいてEVトリップが行われることを意味する。
【0084】
ステップS202において、トリップ設定部82は、
図4に示される方法により、現トリップにおける目標SOC増加量(P3)を求める。
【0085】
ステップS203において、トリップ設定部82は、エンジン1の運転点は、燃費最良線上の運転点となるように設定する。
【0086】
ステップS204において、トリップ設定部82は、エンジン1の駆動区間として、暗騒音が大レベル以上の区間を設定する。
【0087】
ここで、
図6を用いて、暗騒音レベルに応じたエンジン1の駆動区間の設定方法について説明する。
【0088】
図6は、
図3(B3)と同様に、充電トリップにおける暗騒音が示されている。この図には、上方から
図6(A)、(B)、及び(C)の3つのタイミングチャートが示されている。それぞれのタイミングチャートにおいては、充電トリップにおける暗騒音が示されるとともに、閾値以上となるエンジン1の駆動区間が太線で示されている。
【0089】
図6(A)には、暗騒音レベルが「大」以上に相当する比較的大きな閾値が示されており、
図6(B)には、暗騒音レベルが「中」以上に相当する中程度の閾値が示されており、
図6(C)には、暗騒音レベルが「小」以上に相当する比較的小さな閾値が示されている。
【0090】
図6(A)~
図6(C)を比較すれば、
図6(A)に示されるような暗騒音レベルが「大」以上である区間でエンジン1を駆動させる場合には、エンジン1の駆動区間が短く、発電により得られる総エネルギは小さい。一方、
図6(C)に示されるような暗騒音レベルが「小」以上である区間でエンジン1を駆動させる場合には、エンジン1の駆動区間が長く、発電により得られる総エネルギは大きくなる。
【0091】
ステップS205において、
図6(A)に示されるような暗騒音レベルが「大」以上である区間でエンジン1を駆動させる場合における発電により得られる総エネルギを予測し、その総エネルギに応じた予測SOC増加量を求める。そして、トリップ設定部82は、予測SOC増加量が目標SOC増加量を上回るか否かについて判定する。
【0092】
トリップ設定部82は、予測SOC増加量が目標SOC増加量を上回る場合には(S205:Yes)、エンジン1の駆動設定制御を終了する。一方、トリップ設定部82は、予測SOC増加量が目標SOC増加量を下回る場合には(S205:No)、次に、ステップS206の処理を行う。
【0093】
ステップS206において、トリップ設定部82は、エンジン1の駆動区間として、暗騒音が中レベル以上である区間を設定する。
図6(B)に示されるように、エンジン1の駆動区間として暗騒音が中レベル以上である区間を設定することによって、
図6(A)の例よりも予測SOC増加量が大きくなり、中程度となる。
【0094】
ステップS207において、トリップ設定部82は、さらに、予測SOC増加量が目標SOC増加量を上回るか否かについて判定する。トリップ設定部82は、予測SOC増加量が目標SOC増加量を上回る場合には(S207:Yes)、エンジン1の駆動方法設定制御を終了する。一方、トリップ設定部82は、予測SOC増加量が目標SOC増加量を下回る場合には(S207:No)、次に、ステップS208の処理を行う。
【0095】
ステップS208において、トリップ設定部82は、エンジン1の駆動区間として、暗騒音が低レベル以上である区間を設定する。
図6(C)に示されるように、エンジン1の駆動区間として暗騒音が低レベル以上である区間を設定することによって、
図6(A)、(B)の例よりも予測SOC増加量がさらに大きくなる。
【0096】
ステップS209において、トリップ設定部82は、さらに、予測SOC増加量が目標SOC増加量を上回るか否かについて判定する。トリップ設定部82は、予測SOC増加量が目標SOC増加量を上回る場合には(S209:Yes)、エンジン1の駆動設定制御を終了する。一方、トリップ設定部82は、予測SOC増加量が目標SOC増加量を下回る場合には(S209:No)、次に、ステップS210の処理を行う。
【0097】
ステップS210において、エンジン1の駆動方法として、暗騒音が低レベル以上である区間でエンジン1を駆動させる場合に、当該区間でエンジン1を駆動させる場合における予測SOC増加量が目標SOC増加量を上回るようなエンジン1の出力を設定する。これは、エンジン1の出力を大きくすることで、単位時間あたりの発電量が大きくなり、予測SOC増加量が大きくなるため、予測SOC増加量が目標SOC増加量を上回るようにエンジン1の出力を決定できる。このようにして、充電地トリップにおいて目標SOC増加量だけSOCを増加させることができる。
【0098】
第2実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0099】
第2実施形態のハイブリッド車両の制御方法によれば、エンジン1は、暗騒音が閾値を上回る場合において駆動されるとともに、目標SOC増加量が得られる程度まで閾値が変更される。このように閾値を変更することにより、エンジン1の駆動音がドライバに気になりにくい状態で発電が行われながら、目標SOC増加量を得ることができる。
【0100】
(変形例)
第2実施形態においては、暗騒音レベルが小以上である場合において(S208)、エンジン1の出力を燃費最良点での出力よりも大きくする(S210)例について説明したが、これに限らない。本変形例においては、暗騒音レベルが「中」又は「大」以上である場合に、エンジン1の出力を燃費最良点での出力よりも大きくする例について説明する。
【0101】
次表は、暗騒音レベル及び目標SOC増加量と、エンジン1の駆動方法との関係を示す表である。
【0102】
【0103】
ただし、表中のパラメータのうち、αは、エンジン1の駆動音が車室内において聞こえるが気にならない状態となるまで出力を増加させる場合の増加幅である。βは、αよりも大きく、目標SOC増加量を得られるまで出力を増加させる場合の増加幅である。
【0104】
この表においては、暗騒音レベルが小である場合については示されていない。これは、第2実施形態において、ステップS209~210において暗騒音レベルが「小」以上の場合について説明されたためであり、本変形例においては説明を省略した。
【0105】
この表の例によれば、まず、暗騒音レベルが「中」レベル以上の区間において、エンジン1を燃費最良点で駆動させる場合について検討する。この場合には、エンジン1を燃費最良点で駆動させると、SOC増加量が目標値である40%~50%を上回ることはできるが、60%を上回るのは難しい。そこで、エンジン1の出力を比較的少量のαだけ増加させることにより、充電トリップにおいて60%のSOC増加量を得られるものとする。
【0106】
次に、暗騒音レベルが「大」レベル以上の区間において、エンジン1を燃費最良点で駆動させる場合について検討する。この場合には、エンジン1を燃費最良点で駆動させると、SOC増加量が目標値である30%~40%を上回ることができる。そして、エンジン1の出力を比較的少量のαだけ増加させることにより、50%のSOC増加量が得られ、エンジン1の出力をβだけ増加させることにより、60%のSOC増加量が得られる。エンジン1の出力を増加させることにより、充電トリップにおいて目標SOC増加量を上回るSOC増加量を得ることができる。
【0107】
このように、第2実施形態のように暗騒音が小レベルの場合に限り、エンジン1の出力を多きくするのではなく、目標SOC増加量と暗騒音レベルに応じてエンジン1の出力を制御することによっても、所望のSCO増加量を得ることができる。
【0108】
変形例によれば、以下の効果を得ることができる。
【0109】
変形例のハイブリッド車両の制御方法によれば、目標SOC増加量と暗騒音レベルに応じてエンジン1の出力を燃費最良点での出力よりも大きくすることによって、所望のSCO増加量を得ることができる。これにより、目標SOC増加量を得ることができるので、EVトリップとして設定された経路の走行前において走行に必要なSOCを確保することができるので、EVトリップにおいてエンジン1を駆動させずに走行することができる。
【0110】
(第3実施形態)
第1及び第2実施形態においては、単純な往復経路を走行する場合において、一方をEVトリップとし、他方を充電トリップとして設定する例について説明した。第3実施形態においては、さらに、往復経路以外の他経路が、往路及び復路の前後に設定されうる場合におけるトリップ設定制御について説明する。
【0111】
本実施形態におけるトリップ設定制御の概要は以下のとおりである。
【0112】
例えば、車両100が自宅から勤務地への通勤に加え、勤務時間中において社内の他部門へと移動に用いられるものとする。この例においては、
図2に示される第1実施形態のトリップ設定制御により、往路が充電トリップとされ、復路がEVトリップとされるものとする。このような場合に、通勤先から他部門への第3の経路について、エネルギ消費量がバッテリ3の使用可能最大エネルギを下回る場合には、EVトリップ候補となる。
【0113】
そして、EVトリップとされた復路、及び、EVトリップ候補である他経路におけるエネルギ消費量の和が使用可能最大エネルギを下回る場合には、他経路をEVトリップとする。そして、往路の充電トリップにおいて、走行終了時に、他経路及び復路の走行に必要なSOCが確保されるように、エンジン1を制御する。以下においては、このようなトリップ設定制御の詳細について説明する。
【0114】
図7は、本実施形態のトリップ設定制御を示す図である。なお、この図に示される処理の前段において、トリップ設定部82は、地図情報や過去の走行パターン等を参照して、予測される将来における複数の走行経路を診断する。そして、特定の経路の往路及び復路が含まれており、一方がEVトリップとして設定され、他方が充電トリップとして設定されているものとする。
【0115】
ステップS301において、トリップ設定部82は、過去の走行履歴を参照し、将来における複数の走行経路のうち、EVトリップ及び充電トリップが設定された往復路以外の他経路について、日常的に使用される場合には、当該他経路におけるエネルギ消費量を取得する。
【0116】
ステップS302において、トリップ設定部82は、往路及び復路の前後の他経路のうち、エネルギ消費量がバッテリ3の使用可能最大エネルギを下回り、EVトリップ候補となりうる経路が存在するか否かを判定する。
【0117】
ステップS303において、トリップ設定部82は、往復路のいずれかのEVトリップとして設定された経路と、EVトリップ候補の他経路のうちの少なくとも1つが連続しているか否かを判定する。そして、両者が連続している場合には、トリップ設定部82は、次に、ステップS304の処理を行う。両者が連続していない場合には、トリップ設定部82は、次に、ステップS305の処理を行う。
【0118】
ステップS304において、トリップ設定部82は、往復路のいずれかのEVトリップとして設定された経路と、EVトリップ候補の他経路のうちの少なくとも1つとの連続する経路について、最初の経路を起点としてどの経路までバッテリ3の使用可能最大エネルギで走行が可能か否かを判定する。
【0119】
詳細には、トリップ設定部82は、各経路の走行に必要なエネルギ消費量を求め、それらのエネルギ消費量の和がバッテリ3の使用可能最大エネルギ下回るか否かを判定する。例えば、使用可能最大エネルギが70%であり、EV設定された往路でのエネルギ消費量がSOC換算で30%、その後の第1候補の経路でのエネルギ消費量が25%、さらにその後の第2候補の経路でのエネルギ消費量が20%である場合について検討する。このような場合には、EV設定された往路及び第1候補の経路でのエネルギ消費量の和は55%であり、使用可能最大エネルギの70%を下回る。しかしながら、EV設定された往路、第1候補、及び、第2候補の他経路でのエネルギ消費量の和は75%であり、使用可能最大エネルギの70%を上回ってしまう。このような場合には、第1候補の他経路をEVトリップとして設定し、第2候補の他経路はEVトリップとして設定しない。
【0120】
ステップS305においては、トリップ設定部82は、EVトリップ候補とした他経路については、EVトリップとして設定しない。
【0121】
ステップS306においては、トリップ設定部82は、EVトリップとして設定された経路(往復路の一方、及び、他経路)の前の経路(往復路の他方)について、充電トリップとして設定する。ステップS304において連続する経路がEVトリップとして設定される場合には、それらの経路の直前の経路が充電トリップとして設定される。
【0122】
ステップS307においては、充電トリップにおけるエンジン1の駆動設定制御が行われる。なお、エンジン1の駆動設定制御は、
図5に示された第2実施形態のエンジン駆動制御(S201~S210)と同等となる。なお、この場合の、目標SOC増加量は、第2実施形態に示されたSOC増加量に加えて、往復路以外の他経路のエネルギ消費量(SOC換算値)が加算されたものとなる。
【0123】
このようにすることで、往復経路以外にもEVトリップ候補となる他経路がある場合において、往復路のいずれか一方と他経路とが連続する場合には、連続するEVトリップのエネルギ消費量の和を上回るSOC増加量を、その前の充電トリップで充電しておく。その結果、より長い区間(往復路の一方のEVトリップ、及び、他経路のEVトリップ)で、エンジン1を駆動させないため、燃費低減の効果がさらに高くなる。
【0124】
第3実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0125】
第3実施形態のハイブリッド車両の制御方法によれば、往復路以外の第3の経路の走行に必要なエネルギが、バッテリ3の供給可能な最大エネルギを下回る場合であって(S302:Yes)、第3の経路が前記エンジンの駆動を抑制する往復路の一方と連続する場合には(S303)、第3の経路をEVトリップとして設定する(S304)。
【0126】
このような場合には、充電トリップの走行中において、エンジン1を駆動させてEVトリップとして設定された往復路の一方及び第3の経路の走行に必要なエネルギをバッテリ3に蓄える。その結果、第3の経路の走行時におけるエンジン1の駆動をさらに抑制できるので、特に、燃費が悪くなる近距離走行におけるエンジン1の駆動が抑制されるので、燃費のさらなる向上を図ることができる。
【0127】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0128】
また、上記した各実施形態は、それぞれ単独の実施形態として説明したが、適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0129】
1 エンジン
2 発電機
3 バッテリ
4 モータ
8 コントローラ
12 情報通知部
81 駆動制御部
82 トリップ設定部
100 車両