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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】画像形成システム、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/06 20060101AFI20240920BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240920BHJP
   B65H 1/04 20060101ALI20240920BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B65H7/06
G03G21/00 370
G03G21/00 386
B65H1/04 326B
G03G15/00 401
G03G15/00 420
G03G15/00 446
G03G15/00 480
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020196337
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2021091552
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2019224025
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】籾山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】矢野 崇史
(72)【発明者】
【氏名】潮津 英大
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅人
(72)【発明者】
【氏名】藤川 知樹
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-212789(JP,A)
【文献】特開2018-140867(JP,A)
【文献】特開2014-193767(JP,A)
【文献】特開2015-067397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/06
G03G 21/00
B65H 1/04
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置と画像形成装置とを有する画像形成システムであって、
前記画像形成装置は、
記録材を収容する収容手段であって、給紙方向における当該記録材の後端を規制する規制板を有する収容手段と、
前記収容手段に収容された記録材を給紙する給紙手段と、
前記給紙手段により給紙された記録材を検知する検知手段と、
所定のタイミングから前記検知手段が前記記録材を検知するまでの時間を測定する測定手段と、を有し、
前記情報処理装置は、
前記画像形成装置から前記測定手段によって測定された時間データを受信する受信手段と、
前記受信手段で受信した複数の前記時間データを、時間の長さに応じて第1グループと第2グループに分類する分類手段と、
前記第1グループに含まれる前記時間データと前記第2グループに含まれる前記時間データを用いて、前記規制板の位置が前記収容手段に収容された記録材のサイズに対応する基準位置に対してずれているかを判定する判定手段と、を有することを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
前記分類手段は、所定の閾値以上の前記時間データを前記第1グループに分類し、前記所定の閾値よりも小さい前記時間データを前記第2グループに分類することを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記判定手段は、前記第1グループの中で所定番目に大きい時間データを用い、前記第2グループの中の中央値に対応する時間データを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記判定手段は、前記第1グループに含まれる前記時間データが第1の閾値よりも大きく、前記第2グループに含まれる前記時間データが前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値と、前記第2の閾値よりも大きく前記第1の閾値よりも小さい第3の閾値との間である場合に、前記規制板が前記基準位置よりも前記給紙方向と反対の方向にずれていると判定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記判定手段は、前記第1グループに含まれる前記時間データと前記第2グループに含まれる前記時間データを用いて、前記規制板の位置が前記基準位置に対してずれているか、または前記給紙手段によって記録材のスリップが発生しているかを判定することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記判定手段は、前記第1グループに含まれる前記時間データが第1の閾値よりも大きく、前記第2グループに含まれる前記時間データが前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値と、前記第2の閾値よりも大きく前記第1の閾値よりも小さい第3の閾値との間である場合に、前記規制板が前記基準位置よりも前記給紙方向と反対の方向にずれていると判定し、
前記第1グループに含まれる前記時間データが前記第1の閾値よりも大きく、前記第2グループに含まれる前記時間データが前記第3の閾値よりも大きい場合に、記録材のスリップが発生していると判定することを特徴とする請求項5に記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記検知手段によって記録材の搬送異常が検知された場合に、前記判定手段は、前記規制板の位置が前記基準位置に対してずれているかを判定することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の画像形成システム。
【請求項8】
前記給紙手段は、前記収容手段に収容された記録材を給送するための給送部材と、前記給送部材によって給送された記録材を搬送するための搬送部材と、前記搬送部材と分離ニップ部を形成し、複数枚の記録材を1枚に分離するための分離部材と、を含むことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像形成システム。
【請求項9】
前記測定手段は、前記給紙手段による記録材の給紙開始タイミングから前記検知手段が前記記録材を検知するまでの時間を測定することを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の画像形成システム。
【請求項10】
前記画像形成システムは、前記収容手段に収容された記録材のサイズを指定するための指定手段をさらに有し、
前記基準位置は前記指定手段によって指定された前記記録材のサイズに応じて設定されることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の画像形成システム。
【請求項11】
前記画像形成装置は情報を表示するための表示手段を有し、
前記判定手段が前記規制板の位置がずれていると判定した場合、前記表示手段は前記規制板の位置がずれていることを示す情報を表示することを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の画像形成システム。
【請求項12】
情報処理装置と画像形成装置とを有する画像形成システムであって、
前記画像形成装置は、
記録材を収容する収容手段と、
前記収容手段に収容された記録材を給紙する給紙手段と、
前記給紙手段により給紙された記録材を検知する検知手段と、
所定のタイミングから前記検知手段が前記記録材を検知するまでの時間を測定する測定手段と、を有し、
前記情報処理装置は、
前記画像形成装置から前記測定手段によって測定された時間データを受信する受信手段と、
前記受信手段により受信した複数の前記時間データを時間の長さに応じて第1グループと第2グループに分類する分類手段と、
前記第1グループに含まれる前記時間データと前記第2グループに含まれる前記時間データを用いて、前記給紙手段によって記録材のスリップが発生しているかどうか判定する判定手段と、を有することを特徴とする画像形成システム。
【請求項13】
前記分類手段は、所定の閾値以上の前記時間データを前記第1グループに分類し、前記所定の閾値よりも小さい前記時間データを前記第2グループに分類することを特徴とする請求項12に記載の画像形成システム。
【請求項14】
前記判定手段は、前記第1グループの中で所定番目に大きい時間データを用い、前記第2グループの中の中央値に対応する時間データを用いることを特徴とする請求項12又は13に記載の画像形成システム。
【請求項15】
前記判定手段は、前記第1グループに含まれる前記時間データが第1の閾値よりも大きく、前記第2グループに含まれる前記時間データが前記第1の閾値よりも小さい第3の閾値よりも大きい場合に、前記スリップが発生していると判定することを特徴とする請求項12乃至14の何れか1項に記載の画像形成システム。
【請求項16】
前記検知手段によって前記記録材の搬送異常が検知された場合に、前記判定手段は、記録材のスリップが発生しているかを判定することを特徴とする請求項12乃至15の何れか1項に記載の画像形成システム。
【請求項17】
前記判定手段が記録材のスリップが発生していると判定した場合、前記画像形成装置は、前記給紙手段と前記収容手段に収容された記録材との当接圧を強くすることを特徴とする請求項12乃至16の何れか1項に記載の画像形成システム。
【請求項18】
前記判定手段が記録材のスリップが発生していると判定した場合、前記画像形成装置は、前記検知手段によって前記記録材の搬送異常を検出するまでの時間を長くすることを特徴とする請求項12乃至17の何れか1項に記載の画像形成システム。
【請求項19】
画像形成装置であって、
記録材を収容する収容手段であって、給紙方向における当該記録材の後端を規制する規制板を有する収容手段と、
前記収容手段に収容された記録材を給紙する給紙手段と、
前記給紙手段により給紙された記録材を検知する検知手段と、
所定のタイミングから前記検知手段が前記記録材を検知するまでの時間を測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定された複数の時間データを、時間の長さに応じて第1グループと第2グループに分類する分類手段と、
前記第1グループに含まれる時間データと前記第2グループに含まれる時間データを用いて、前記規制板の位置が前記収容手段に収容された記録材のサイズに対応する基準位置に対してずれているかを判定する判定手段と
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項20】
前記判定手段は、前記第1グループに含まれる前記時間データと前記第2グループに含まれる前記時間データを用いて、前記規制板の位置が前記基準位置に対してずれているか、または前記給紙手段によって記録材のスリップが発生しているかを判定することを特徴とする請求項19に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成システム、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の画像形成装置は、記録材(シート)を積載する積載部と、積載部に積載されたシートを搬送する給紙機構とを備える。この給紙機構で記録材を搬送する際に、記録材の搬送異常によるジャムが様々な要因で発生する。例として、給紙ローラの繰り返し搬送による劣化要因や、記録材に起因したスリップなどの要因等が挙げられる。
【0003】
また積載部には記録材の後端を規定して記録材の位置決めを行う後端規制板が存在する。ユーザが、この後端規制板を正しく設定できていない場合も、記録材の搬送異常が生じることになる。このような記録材の搬送異常を防止するために、例えば特許文献1には、記録材を搬送するための給紙ローラの回転開始から、搬送路の下流に設けられたセンサに記録材が到達する時間(以下、給紙時間)が所定の閾値を上回る場合に、ユーザが正しく後端規制板をセットできていないと判定する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-212789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来技術では、記録材の搬送異常が、給紙ローラの劣化やスリップに起因する場合であっても、後端規制板が正しく設定できていないことに起因していると誤判定されるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、記録材の搬送状況に基づき、規制板の位置を推測することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る画像形成システムは以下のような構成を備える。即ち、
情報処理装置と画像形成装置とを有する画像形成システムであって、
前記画像形成装置は、
記録材を収容する収容手段であって、給紙方向における当該記録材の後端を規制する規制板を有する収容手段と、
前記収容手段に収容された記録材を給紙する給紙手段と、
前記給紙手段により給紙された記録材を検知する検知手段と、
所定のタイミングから前記検知手段が前記記録材を検知するまでの時間を測定する測定手段と、を有し、
前記情報処理装置は、
前記画像形成装置から前記測定手段によって測定された時間データを受信する受信手段と、
前記受信手段で受信した複数の前記時間データを、時間の長さに応じて第1グループと第2グループに分類する分類手段と、
前記第1グループに含まれる前記時間データと前記第2グループに含まれる前記時間データを用いて、前記規制板の位置が前記収容手段に収容された記録材のサイズに対応する基準位置に対してずれているかを判定する判定手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、記録材の搬送状況に基づき、規制板の位置を推測することができるという効果がある。
【0009】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。なお、添付図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
添付図面は明細書に含まれ、その一部を構成し、本発明の実施形態を示し、その記述と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
図1】実施形態1に係る、中間転写ベルトを採用して複数の画像形成部を並列に備える画像形成装置の概略構成図。
図2】実施形態1に係る画像形成装置における給紙動作を説明する概略断面図。
図3】実施形態1に係る搬送機構で記録材Sの給紙動作を繰り返したときの給紙時間の推移の一例を示す図。
図4】実施形態1に係る画像形成装置のハードウェア構成と、画像形成装置を含む画像形成システムの構成を説明するブロック図。
図5】実施形態1に係るエンジン制御部及びサーバ制御部の機能を説明する機能ブロック図。
図6】記録材の給紙枚数と給紙時間との関係を示すグラフ図。
図7】記録材の給紙開始位置に応じた、記録材の給紙枚数と給紙時間との関係を示すグラフ図。
図8】実施形態1に係る画像形成装置において後端規制板がずれているかどうか判定する処理を説明するフローチャート。
図9】実施形態2に係るエンジン制御部及びサーバ制御部の機能を説明する機能ブロック図。
図10】実施形態2に係る画像形成装置において後端規制板がずれているかどうか判定する処理を説明するフローチャート。
図11】給紙動作を繰り返した際の給紙時間の推移の一例を示す図。
図12】実施形態3に係るエンジン制御部及びサーバ制御部の機能を説明する機能ブロック図。
図13】実施形態3に係る画像形成装置において記録材のスリップが発生しているかどうか判定する処理を説明するフローチャート。
図14】実施形態4に係るエンジン制御部及びサーバ制御部の機能を説明する機能ブロック図。
図15】実施形態4に係る画像形成装置において記録材のスリップが発生しているかどうか判定する処理を説明するフローチャート。
図16】実施形態5に係る画像形成装置のハードウェア構成と、画像形成装置を含む画像形成システムの構成を説明するブロック図。
図17】実施形態5に係るエンジン制御部及びサーバ制御部の機能を説明する機能ブロック図。
図18】実施形態5における制御部のフローチャート
図19】給紙時間データをソートした後の遅延側と早着側の遅延データの統計値を求める例を示す図。
図20】後規制板がずれているか確率を求めるテーブル例と、給紙時間データをソートした後の遅延側と早着側の遅延データの統計値を求める例を示す図。
図21】スリップが発生している確率を求めるテーブル例と、給紙時間データをソートした後の遅延側と早着側の遅延データの統計値を求める例を示す図。
図22】実施形態6における制御部のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これら複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。以下の実施形態では、電子写真方式の画像形成装置を例に説明する。
【0012】
図1は、実施形態1に係る、中間転写ベルトを採用して複数の画像形成部を並列に備える画像形成装置100の概略構成図である。
【0013】
画像形成装置100は、タンデム式のカラーレーザビームプリンタであり、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせることでカラー画像を形成(印刷)できる。図1において、各色に対応する画像形成部の構成は、参照番号に添え字Y、M、C、Kを付して示している。尚、以下の説明において、特にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックを区別する必要のない部材の説明では、説明の便宜上、符号の添え字のY、M、C、Kを省略して説明する。
【0014】
プロセスカートリッジ5は、それぞれトナー容器6、像担持体である感光体ドラム1、帯電ローラ2、現像ローラ3、ドラムクリーニングブレード4、及び廃トナー容器7を有している。プロセスカートリッジ5の下方にはレーザユニット8が配置され、レーザユニット8は、画像信号に基づく露光を感光体ドラム1に対して行う。感光体ドラム1は、帯電ローラ2に所定の負極性の電圧を印加することで、その表面が所定の負極性の電位に帯電された後、レーザユニット8によって、各色に対応する静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像ローラ3に所定の負極性の電圧を印加することで反転現像されて感光体ドラム1上に、それぞれY、M、C、Kのトナー像が形成される。尚、実施形態1で使用するトナーは、負極性に帯電されている。
【0015】
中間転写体ユニットは、中間転写体11、駆動ローラ12、テンションローラ13、対向ローラ15を有している。また、感光体ドラム1に対向して、中間転写体11の内側に一次転写ローラ10が配設されており、一次転写ローラ10には、不図示の電圧印加手段により転写電圧が印加される。感光体ドラム1上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム及び中間転写体11が矢印方向に回転し、更に一次転写ローラ10に正極性の電圧を印加することにより、中間転写体11上に一次転写される。感光体ドラム1上のトナー像はY、M、C、Kの順に、中間転写体11上に一次転写され、4色のトナー像が重なった状態で二次転写ローラ14まで搬送される。
【0016】
給紙機構20は、シート状の記録材Sを積載して収容する給紙カセット21内から記録材Sを給紙する給紙ローラ22と、給紙された記録材Sを搬送する搬送ローラ23及び記録材Sを1枚ずつ分離搬送する分離ローラ24とを有している。そして、給紙機構20から搬送された記録材Sは、レジストローラ対25によって二次転写ローラ14に搬送される。中間転写体11から記録材Sへトナー像を転写するために、二次転写ローラ14に正極性の電圧を印加する。これにより、搬送されている記録材Sに、中間転写体11上のトナー像が二次転写される。こうしてトナー像が転写された記録材Sは定着装置30に搬送され、定着装置30の定着フィルム31と加圧ローラ32とによって加熱、加圧され、その記録材Sの表面にトナー像が定着される。こうして画像が定着された記録材Sは、排紙ローラ対33によって排出される。
【0017】
このとき画像形成装置は、搬送路センサ27を用いて記録材の早着或いは遅延やジャムなどの搬送異常が発生したかどうかを判定する。そして搬送異常が発生したと判定した場合、不図示の表示部に搬送異常が発生したことを通知する表示を行う。また、必要に応じて搬送異常を解消するための手法などを表示する。
【0018】
次に実施形態1に係る給紙機構20について図2を参照して詳しく説明する。
【0019】
図2は、実施形態1に係る画像形成装置100における給紙動作を説明する概略断面図である。
【0020】
図2(A)は、給紙カセット21に収容された最上位に位置する記録材S1を給紙するタイミングにおける、給紙機構の断面図である。給紙カセット21内の記録材S1は、給紙カセット21内の後端規制板26によって、その後端が規定されて位置決めされ、記録材S1を給紙する際の先端はPsで示す位置にある。給紙動作が開始されると、給紙ローラ22(給送部材)、搬送ローラ23(搬送部材)がそれぞれ回転し、記録材S1は、給紙ローラ22と記録材S1との間の摩擦により図2(A)の右方向(給紙方向)に移動を始める。その後、記録材S1は、搬送ローラ23と分離ローラ24(分離部材)で形成する分離ニップPnに到達する。
【0021】
このとき図2(B)に示すように記録材S1とS2の間でも摩擦力が生じ、記録材S2も移動する場合がある。この分離ニップPnは、給紙ローラ22の回転によって2枚以上の記録材S1,S2が分離ニップPnに搬送されてきたときに記録材S2を分離し、1枚の記録材S1だけ下流に送る機能を有している。分離ローラ24には不図示のトルクリミッタが接続されており、記録材S1の搬送方向とは逆方向に抵抗力としてのトルクが与えられている。このトルクは、分離ニップPnに記録材Sが1枚だけある時には分離ローラ24が搬送ローラ23に従動して回転し、分離ニップPnに記録材Sが2枚入ると停止するよう設定されている。よって、分離ニップPnで記録材を1枚ずつ下流に搬送することができる。
【0022】
その後、更に給紙ローラ22、搬送ローラ23が回転を続けると記録材S1はレジストローラ対25を通過し、図2(C)に示すように記録材S1の先端は搬送路センサ27によって検知される位置Prに到達する。この給紙動作の開始から記録材S1が搬送路センサ27に到達するまでの時間が給紙時間である。
【0023】
図3(A)は、図2に示すような搬送機構で記録材Sの給紙動作を繰り返したときの給紙時間の推移の一例を示す図である。
【0024】
図3(A)に示すように、記録材Sの給紙動作を繰り返すと、給紙時間が全体的に長くなる傾向にある。これは、記録材の給紙動作を繰り返すことで、給紙ローラ22が摩耗し、給紙ローラ22と記録材との摩擦力が低下するためである。また前述した通り、分離ニップPnから給紙を開始する場合は給紙時間が短くなり、給紙カセット21内の記録材の先端Psの位置から給紙開始する場合は給紙時間が長くなる。
【0025】
また、繰り返し給紙動作を実施したとしても、後端規制板26を正しく設定していれば、Psから給紙した場合とPnから給紙した場合の給紙時間の差(図3(A)のΔa)は常に一定となる。
【0026】
一方で、図3(B)の点線枠は、後端規制板26の位置が、本来の位置(規定位置、基準位置ともいう)よりも記録材の搬送方向と反対の方向にずれているときのデータである。後端規制板26が搬送方向と反対の方向にずれている場合は、遅延側データ全体が遅れる側にシフトし、早着側のデータには変化がない(図3(B)のΔb)。そのため、ΔaとΔbの関係は、Δa<Δbになる。
【0027】
ここで、遅延側のデータが遅れる理由は、記録材の先端位置がPsよりも後端規制板26側にずれている状態で給紙が開始されるために、記録材の搬送距離が長くなってしまうためである。また、早着側のデータに変化がない理由は、後端規制板26の位置ずれは記録材同士の間で摩擦力が発生することには変化がなく、後続する記録材がPnまで移動するためである。
【0028】
図4は、実施形態1に係る画像形成装置100のハードウェア構成と、画像形成装置100を含む画像形成システムの構成を説明するブロック図である。このシステムは、ホストコンピュータ400、画像形成装置100及びサーバ(情報処理装置)410を含んでいる。ホストコンピュータ400は、ネットワークを介して画像形成装置100へプリントを指示する本体部401と、ユーザの操作を受け付けるとともにユーザに対する表示を行う操作表示部402とを有する。ここで、ホストコンピュータ400が有する操作表示部402には、不図示のタッチパネル機能を有するディスプレイ、キーボード、ポインティングデバイス等が含まれる。
【0029】
画像形成装置100は、ビデオコントローラ430と操作表示部431とプリンタエンジン420とを有する。画像形成装置100が有する操作表示部431には、不図示のオペレーションパネルや操作ボタンなどが含まれる。ビデオコントローラ430は、ホストコンピュータ400から送信された印刷データやプリント指示をプリンタエンジン420に送信する。プリンタエンジン420は、CPU422とROM423とRAM(メモリ)424とを含むエンジン制御部421と、システムバス425、IOポート426を有している。CPU422は、ROM423に記憶されているプログラム及び各種データをRAM424に展開し、RAM424を作業領域とすることでプログラムを実行する。前述した構成要素は、双方向にアクセス可能なシステムバス425を介してIOポート426へアクセス可能となっている。IOポート426には、搬送路センサ27、給紙モータ90、給紙ソレノイド91等が接続されている。CPU422は、IOポート426を介してこれらのデバイスを制御する。尚、このIOポート426に接続されるデバイスは、図4の構成に限定されるものではない。
【0030】
サーバ410は、演算装置412と記憶装置413とを含むサーバ制御部411を有し、画像形成装置100と双方向に送受信可能なネットワークで接続されている。演算装置412は、記憶装置413に保存されたプログラムの実行や、各種データの読み書きを行う。演算装置412はCPUやGPU、記憶装置413にはRAM、HDDやSSDなどを直接割り当てても良いし、仮想マシンなどの仮想環境を割り当てても良い。サーバ制御部411は、ビデオコントローラ430を経由することで、エンジン制御部421と情報の受け渡しを行うことが可能である。
【0031】
次に実施形態1に係るエンジン制御部421及びサーバ制御部411の機能を図5を参照して説明する。尚、エンジン制御部421の機能は、CPU422がRAM424に展開したプログラムを実行することにより実現される。またサーバ制御部411の機能は、サーバ410の演算装置412が記憶装置413に記憶されているプログラムを実行することにより実現される。エンジン制御部421は、給紙制御に関わる機能、給紙時間の測定に関わる機能を有し、サーバ制御部411は、後端規制板26が正しく設定されているか判定する機能を有する。それぞれ順に説明する。
【0032】
図5は、実施形態1に係るエンジン制御部421及びサーバ制御部411の機能を説明する機能ブロック図である。
【0033】
エンジン制御部421は、給紙制御に関わる機能として、給紙部501、駆動部502を有する。プリンタエンジン420がプリント指示を受けると、給紙部501は駆動部502に給紙動作を指示する。駆動部502は、給紙部501の指示に従って、給紙モータ90を回転駆動することで、搬送ローラ23及び分離ローラ24を回転させる。更に、給紙開始のタイミングで、給紙ソレノイド91を駆動することで、給紙ローラ22を1回転させる。この動作により、給紙カセット21内で押し上げられた記録材Sが1枚ずつ分離給紙され、搬送路センサ27まで搬送される。
【0034】
次に、給紙時間の測定に関わる機能として、測定部503、検知部504を有する。測定部503は、給紙部501が給紙動作を指示したタイミングから、記録材Sの先端が搬送路センサ27に到達するまでの時間を測定する。この測定は記録材Sを1枚給紙する毎に行われ、その測定された時間は給紙時間データとしてRAM424に保存される。この測定部503は、例えばCPU422に内蔵されたタイマを時間を測定する測定手段として用いている。RAM424に保存された給紙時間データは、ビデオコントローラ430を経由してサーバ制御部411の記憶装置413にも保存される。検知部504は、搬送路センサ27からの入力信号に基づき、記録材Sの先端が搬送路センサ27に到達したことを検知する。
【0035】
次に、後端規制板26が正しく設定されているか否かを判定する機能として、規制板ずれ判定部510を有する。規制板ずれ判定部510は、分類部511、統計量算出部512を有する。分類部511は、記憶装置413に保存された給紙時間データの集合を所定の基準に基づき複数のグループに分類する。実施形態1では、図6に示すように遅延側データ集合と早着側データ集合とに分類する。ここでは給紙時間データが1250ms以上(所定値以上)を遅延側データとし、1250ms(所定値)未満を早着側データとしている。また統計量算出部512は、分類されたそれぞれのグループから統計値を算出する。実施形態1では、500枚毎に遅延側データ、早着側データそれぞれについて1つの統計値を算出する。また実施形態1では、遅延側データのデータ数N1が450枚、早着側データのデータ数N2が50枚で1つの統計値を算出する。
【0036】
遅延側データの統計値DSは、遅延側データの集合の中から上位5%目(所定枚数目)のデータとすると、N1×5%=23番目のデータとなる。
【0037】
図19(A)は、遅延側データ集合を値の大きい順(遅い順)にソートした結果を示し、23番目のデータが統計値(1448ms)となる。
【0038】
早着側データの統計値ESは、早着側データの集合の中央値とすると、N2×50%=25番目のデータとなる。図19(B)は、早着側データ集合を値の小さい順(早い順)にソートした結果で、25番目のデータが統計値(1170ms)となる。
【0039】
次に、それぞれの統計値から後端規制板26の位置が規定位置よりも記録材の搬送方向と反対の方向にずれているか否かを判定する。この方法は、前述した通り、以下の2点の両方を満足する場合に、後端規制板26の位置がずれていると判定する。
(1)遅延側の統計値DSについて、後端規制板26がずれていない状態のデータより遅くなっている。
(2)早着側の統計値ESについて、後端規制板26がずれていない状態のデータから変化がない。
【0040】
具体的な判定方法について、図7を参照して説明する。
【0041】
Psから記録材の給紙を開始した場合の給紙時間は、図7の遅延側直線DLで近似することができる。このデータは予め実験データから決定した直線であり、xを給紙枚数、t1を給紙時間、αを傾き、βを切片とすると、給紙時間t1は、以下の式(1)のような一次関数で表される。
【0042】
t1=αx+β …式(1)
実施形態1では、α=70/300000、β=1380であり、給紙枚数xを100000枚とするとt1=1403となる。即ち、100000枚の記録材を給紙したときの給紙時間t1より、前述した遅延側データの統計値の方が大きい場合は、後端規制板26がずれていると判定できる。実施形態1では、このt1に対して、更に、予め設定したマージンm(%)考慮し、遅延側データの統計値DSとの比較閾値DTを以下のように求める。
【0043】
DT=t1×(100+m)÷100 …式(2)
実施形態1では、m=3とすると、DT=1445となる。
【0044】
続いて、記録材の給紙をPnから開始した場合の給紙時間は、図7の早着側直線ELで近似することができる。このデータは予め実験データから決定した直線であり、xを給紙枚数、t2を給紙時間、αを傾き、βを切片とすると、給紙時間t2は、以下の式(3)のような一次関数で表される。
【0045】
t2=αx+β …式(3)
実施形態1では、α=70/300000、β=1140であり、xは100000枚とするとt2=1163となる。即ち、100000枚の記録材を給紙したときの給紙時間t2を比較閾値ET1とする。更に、このET1から予め設定した範囲r%考慮した早着側データの統計値ESとの比較閾値ET2を以下の式(4)で求める。
【0046】
ET2=ET1×(100+r)÷100 …式(4)
実施形態1においては、r=5とすると、ET2=1221となる。
【0047】
ここで、前述した後端規制板26がずれていると判定する条件2つを以下の式(5)で表すと以下のようになる。
(1)DS>DT(所定枚数給紙したときの遅延側の予測給紙時間よりも長い)
(2)ET1<ES<ET2(所定枚数給紙したときの早着側の予測給紙時間よりも所定時間だけ長い) …式(5)
実施形態1では、上記2つの条件をともに満たす場合に後端規制板26がずれていると判定する。
【0048】
最後に、通知部513は、後端規制板26がずれていることをエンジン制御部421に通知する。尚、実施形態1における給紙時間t1,t2、統計値DS,ES、比較閾値DT,ET1,ET2の単位はms、給紙枚数xの単位は枚である。
【0049】
次に、実施形態1におけるエンジン制御部421及びサーバ制御部411の動作を、図8のフローチャートを参照して説明する。
【0050】
図8は、実施形態1に係る画像形成装置100において後端規制板26がずれているかどうか判定する処理を説明するフローチャートである。尚、このフローチャートで示す処理は、CPU422がRAM424に展開したプログラムを実行し、サーバ制御部411と協業することにより実現される。
【0051】
この処理は、プリンタエンジン420がプリント指示を受け取ることにより開始され、まずS801でCPU422は、給紙部501、駆動部502による給紙動作を開始して記録材Sの搬送を開始する。次にS802に進みCPU422は、給紙枚数を計数するx(RAM424に設けられている変数)を+1する。次にS803に進みCPU422は、測定部503、検知部504による給紙時間の測定を行う。即ち、搬送路センサ27からの入力信号に基づき、記録材Sの先端が搬送路センサ27に到達した時間を求め、その時間から給紙動作を開始したときの時間を差し引くことで給紙時間データを取得する。CPU422は取得した給紙時間データをサーバ制御部411へ送信する。そしてS804に進み演算装置412は、受信した給紙時間データを記憶装置413に保存する。
【0052】
次S805に進み演算装置412は規制板ずれ判定部510として機能し、給紙枚数xが500(所定数)になったかどうか判定し、500枚分の給紙時間データがたまるとS806に進み、演算装置412は分類部511として機能し、RAM424に保存された給紙時間データの集合を遅延側データ集合と早着側データ集合とに分類する。次にS807に進み演算装置412は統計量算出部512として機能し、遅延側統計値DS及び早着側統計値ESを算出する。実施形態1では、前述した通り、DS=1448、ES=1170となる。その後S808に進み演算装置412は規制板ずれ判定部510として機能し、遅延側比較閾値DT及び早着側比較閾値ET1,ET2を算出する。実施形態1では前述した通り、DT=1445、ET1=1163、ET2=1221となる。
【0053】
次にS809に進み演算装置412は、遅延側データの後端規制板ずれ判定条件、即ち、DS>DTかどうか判定する。ここで遅延側統計値DS>遅延側比較閾値DTであればS810に進み演算装置412は、早着側データの後端規制板ずれの判定条件、即ち、ET1<ES<ET2かどうか判定する。ここで早着側比較閾値ET1<早着側統計値ES<早着側比較閾値ET2であれば、後端規制板26がずれていると判定してS811に進む。S811で演算装置412は通知部513として機能し、エンジン制御部421に後端規制板26がずれていることを通知してS812に進む。この後端規制板26がずれていることは、操作表示部431への表示や、ユーザやディーラのホストコンピュータ400や不図示のプリンタ管理ツールに通知される。そしてS812でCPU422はエンジン制御部421として機能し、次ページのプリント指示があるかどうか判定し、あれば再びS801の給紙動作開始に戻り、そうでなければ、この処理を終了する。
【0054】
尚、実施形態1では、給紙機構が1つの構成の場合を例示しているが、給紙機構が複数存在する構成に適用することも可能である。給紙機構が複数存在する構成においては、エンジン制御部421及びサーバ制御部411の動作を給紙機構毎に独立して実施し、その結果、後端規制板ずれの判定は給紙機構毎に独立して実施される。
【0055】
以上説明したように実施形態1によれば、後端規制板26が正しく設定されていないことを精度良く検知し報知することで、記録材の搬送異常が検出される前にユーザやディーラに後端規制板の再セットを促すことができる。その結果、ユーザやディーラが不要なサービスコールを実施することがなくなり、無駄なコストの発生を抑えることができる。
【0056】
尚、本発明は、この実施形態1に限られるものではなく、例えば、プリンタエンジン420が規制板ずれ判定部510を有する構成をとっても良い。また分類部511による給紙時間データの集合の分類手法は、ガウス混合モデルやK平均法などのクラスタリング手法を用いてもよい。
【0057】
また通知部513は、プリンタエンジン420に判定結果を返すようにしたが、直接ユーザのPCやディーラ管理のPCやサーバに通知してもよい。更に、通知部513は、実施形態1では定期枚数毎に通知したが、例えば給紙カセット21内の記録材がなくなり、ユーザが記録材を補充する毎に通知してもよい。
【0058】
また、規制板ずれ判定部510は、1回で後端規制板ずれと判定したが、例えば10回判定を行い、その内、例えば半数以上、或いは7,8回、後端規制板ずれと判定した場合に、後端規制板ずれと通知してもよい。
【0059】
[実施形態2]
上述の実施形態1では、記録材(シート)の搬送異常が発生する前に、未然にユーザやディーラに後端規制板の位置ずれがあると判定して通知する方法を説明した。これに対して実施形態2では、記録材の搬送異常が検出された場合に、その要因が後端規制板ずれかどうか判定して、その結果を通知する方法を説明する。主な部分の説明は実施形態1と同様であり、ここでは実施形態1と異なる部分のみを説明する。
【0060】
図9は、実施形態2に係るエンジン制御部421及びサーバ制御部411の機能を説明する機能ブロック図である。前述の実施形態1の図5と共通する部分は同じ参照番号で示している。図5との違いは、エンジン制御部421が搬送異常判定部901、給紙カセット開閉検知部902を有し、規制板ずれ判定部510が規制板ずれ確率判定部903を有する点である。
【0061】
搬送異常判定部901は、検知部504が、搬送路センサ27からの入力信号に基づき、記録材Sの先端を検知することが所定時間できなかった場合に記録材の搬送異常を検出し、規制板ずれ判定部510に通知する。規制板ずれ判定部510は、搬送異常判定部901から通知を受けると後端規制板ずれかどうかの判定処理を開始する。
【0062】
分類部511は、RAM424或いは記憶装置413に保存された給紙時間データの集合を実施形態1と同様にグループに分類する。実施形態2では、給紙時間データの集合は、給紙カセット開閉検知部902から給紙カセットの開閉が通知されてから、記録材の搬送異常が検出されるまでの給紙時間データを用いる。給紙カセット21を開閉する際は、ユーザが給紙カセット21に記録材Sを装填して後端規制板26を操作する可能性が高い。そのため、例えば任意の500枚毎のデータ集合とするより、精度を上げることができる場合がある。
【0063】
統計量算出部512は、実施形態1と同様に、分類されたそれぞれのグループから統計値を算出する。実施形態2では、給紙カセット21の開閉から記録材の搬送異常までの遅延側データN1が200枚、早着側データN2が20枚とする。そして実施形態1と同様にそれぞれの統計値を算出する。遅延側の統計値DSは、遅延側データ集合の中から上位5%目のデータとすると、N1×5%=10番目のデータとなる。図19(C)は、遅延側データ集合を値の大きい順(遅い順)にソートした結果で、10番目のデータが統計値(1520ms)となる。
【0064】
早着側の統計値ESは、早着側データ集合の中央値とすると、N2×50%=10番目のデータとなる。図19(D)は、早着側データ集合を値の小さい順(早い順)にソートした結果で、10番目のデータが統計値(1167ms)となる。
【0065】
次に、それぞれの統計値から後端規制板26がずれているかどうか判定する。この判定方法は、実施形態1と同様に、まず2つの条件から判定する。
【0066】
実施形態2における遅延側の比較閾値は、α=70/300000、β=1380、x=100000、m=3とすると、前述の式(1)と式(2)からDT=1445となる。
【0067】
また、早着側の比較閾値は、α=70/300000、β=1140、x=100000、r=5とすると、前述の式(3)と式(4)からET1=1163、ET2=1221となる。
【0068】
ここで、前述の式(5)で示した以下の2つの条件を満たす場合に、後端規制板26がずれている可能性があると判定する。
(1)DS>DT
(2)ET1<ES<ET2
更に、給紙カセットの開閉から、記録材の搬送異常が検出されるまでの給紙時間データの数が少ない場合は、間違った判定をしてしまうリスクがあるため、給紙時間データの数が50より多くないと判定を実施しない。実施形態2では、給紙時間データの数が220であるため判定を実施する。
【0069】
規制板ずれ確率判定部903は、後端規制板26がずれている確率を判定する。図20(A)に示すように、まず給紙時間データの数が多いほどデータの信頼性が増すため、確率を高くしている。また、遅延側直線DLから算出したt1に対して、どの程度ずれているかを示す指標iが大きいほど、確率を高くしている。
【0070】
指標iは以下の式(6)によって算出されるずれ率(%)である。
【0071】
i=DS÷t1×100-100 …式(6)
実施形態2では、DS=1520、t1=1403であるため、i=8.3となる。図20(A)に示す通り、データ数が220、i=8.3の場合は、後端規制板がずれている確率は90%と判定することができる。
【0072】
そして通知部513は、後端規制板26がずれている確率をエンジン制御部421に通知する。
【0073】
図10は、実施形態2に係る画像形成装置100において後端規制板26がずれているかどうか判定する処理を説明するフローチャートである。尚、このフローチャートで示す処理は、CPU422がRAM424に展開したプログラムを実行し、サーバ制御部411と協業することにより実現される。尚、図10において、前述の実施形態1の図8の処理と同じ処理は同じ参照番号を付して、それらの説明を省略する。
【0074】
S1001でCPU422は記録材の搬送異常が検出されているかどうか判定する。ここで記録材の搬送異常が検出されていないときはS812に進むが、記録材の搬送異常が検出されているときはS1002に進む。S1002で演算装置412は分類部511として機能し、給紙カセット21の開閉から記録材の搬送異常が通知されるまでのデータ数が50よりも多いかどうか判定する。ここで50よりも多いと判定したときはS806~S810を実行して、後端規制板26がずれているかどうか判定する。そしてS810で後端規制板26がずれていると判定するとS1003に進み演算装置412は規制板ずれ確率判定部903として機能し、給紙時間データの数及びずれ率を示す指標iから上述の図20(A)を参照して、後端規制板ずれの確率を取得する。
【0075】
実施形態2では、給紙時間データの数は220、i=8.3であるため、後端規制板がずれている確率は90%であると判定する。そしてS811で演算装置412は通知部513として機能し、エンジン制御部421に通知する。この後端規制板26がずれている確率は、操作表示部431への表示や、ユーザやディーラのホストコンピュータ400や不図示のプリンタ管理ツールに通知される。
【0076】
以上説明したように実施形態2によれば、記録材の搬送異常の発生時に、後端規制板26が正しく設定されていないことが原因で記録材の搬送異常が起きたということをユーザやディーラに対して通知して、後端規制板の再セットを促すことができる。また、ユーザやディーラの不要なサービスコールの実施や給紙ローラなどの消耗品の不要な交換を抑えることができる。
【0077】
[実施形態3]
前述の実施形態1、2では、規制板のずれを検知して通知する例で説明した。これに対して実施形態3では、記録材のスリップを検知し、記録材の搬送異常が発生する前に、未然にユーザやディーラに記録材のスリップの発生を通知する方法を説明する。実施形態3に係る構成の主な部分の説明は実施形態1、2と同様であり、ここでは実施形態1、2と異なる部分のみを説明する。
【0078】
図11(A)は、給紙動作を繰り返した際の給紙時間の推移の一例を示す図である。図11(A)は、図3(A)と同様に、記録材の給紙動作を繰り返すと、給紙時間が全体的に遅れる傾向にある例を示す。これは、給紙動作を繰り返すことで、給紙ローラ22が摩耗し、給紙ローラ22と記録材との摩擦力が低下するためである。また、前述した通り、分離ニップPnから給紙開始する場合は給紙時間が早くなり、Psから給紙開始する場合は遅くなる。
【0079】
一方、図11(B)の点線枠は、スリップが発生したときのデータを示す。スリップが発生した場合は、遅延側データと早着側データが共に遅れる側にシフトする傾向がある。遅延側データと早着側データが共に遅れる理由は、記録材の先端位置に関わらず、記録材の表面性などの要因によって、記録材と給紙ローラ22、及び搬送ローラ23の間で摩擦力が低下し、給紙ローラが空転するためである。
【0080】
図12は、実施形態3に係るエンジン制御部421及びサーバ制御部411の機能を説明する機能ブロック図である。尚、図12において、前述の実施形態と共通する箇所は同じ参照番号で示し、それらの説明を省略する。
【0081】
サーバ制御部411は、記録材のスリップが発生しているかどうかを判定する機能として、スリップ判定部1201を有する。スリップ判定部1201は、分類部511、統計量算出部512を有する。分類部511は、前述の実施形態1,2における分類部511と同様の機能を有する。実施形態3では、給紙時間が1300ms以上を遅延側データとし、それ以外を早着側データとしている。また統計量算出部512は、分類されたそれぞれのグループから統計値を算出する。実施形態3では、500枚毎に遅延側、早着側それぞれについて1つの統計値を算出する。また実施形態3では、遅延側データN1が450枚、早着側データN2が50枚とする。
【0082】
遅延側の統計値DSは、遅延側データ集合の中から上位5%目のデータとすると、N1×5%=23番目のデータとなる。図20(B)は、遅延側データ集合を値の大きい順(遅い順)にソートした結果の一例を示す図で、23番目のデータが統計値(1478ms)となる。
【0083】
また早着側の統計値ESは、早着側データ集合の中央値とすると、N2×50%=25番目のデータとなる。図20(C)は、早着側データ集合を値の小さい順(早い順)にソートした結果の一例を示す図で、25番目のデータが統計値(1260ms)となる。
【0084】
次に、それぞれの統計値からスリップが発生しているかどうか判定する。この判定方法は、前述した通り、以下の2点を両方満たす場合に、スリップが発生していると判定する。
(1)遅延側の統計値DSについて、スリップが発生していない状態のデータより遅くなっている。
(2)早着側の統計値ESについて、スリップが発生していない状態のデータより遅くなっている。
【0085】
実施形態3の遅延側の比較閾値は、実施形態1と同様に算出する。実施形態3においては、α=70/300000、β=1380であり、x=200000、m=3とすると、上記式(1)(2)からDT=1469となる。
【0086】
また実施形態3の早着側の比較閾値も、実施形態1と同様に算出する。実施形態3においては、α=70/300000、β=1140、x=200000、r=5とすると、上記式(4)から、ET2=1246となる。
【0087】
ここで、前述したスリップが発生していると判定する条件2つを式で表すと以下のようになる。
(1)DS>DT(所定枚数給紙したときの遅延側の予測給紙時間よりも長い)
(2)ES>ET2(所定枚数給紙したときの早着側の予測給紙時間よりも長い)
実施形態3では上記2つの条件ともに満たす場合に、記録材のスリップが発生していると判定する。通知部513は、記録材のスリップが発生していることをエンジン制御部421に通知する。
【0088】
図13は、実施形態3に係る画像形成装置100において記録材のスリップが発生しているかどうか判定する処理を説明するフローチャートである。尚、このフローチャートで示す処理は、CPU422がRAM424に展開したプログラムを実行し、サーバ制御部411と協業することにより実現される。尚、図13において、前述の実施形態1の図8と同じ処理は同じ参照番号を付して、それらの説明を省略する。
【0089】
S1301で演算装置412はスリップ判定部1201として機能し、給紙枚数xが500かどうか判定し、500枚分の給紙時間データがたまる毎にS1302に進む。S1302で演算装置412は分類部511として機能し、RAM424に保存された給紙時間データの集合を遅延側データ集合と早着側データ集合に分類する。次にS1303に進み演算装置412は統計量算出部512として機能し、遅延側の統計値DS及び早着側の統計値ESを算出する。実施形態3では、前述した通り、DS=1478、ES=1260となる。その後S1304に進み演算装置412はスリップ判定部1201として機能し、遅延側の比較閾値DT及び早着側の比較閾値ET2を算出する。実施形態3では、前述した通り、DT=1469、ET2=1246となる。
【0090】
そしてS1305に進み演算装置412は、遅延側データのスリップの判定条件を満たしているかどうか判定する。ここで遅延側統計値DS>遅延側比較閾値DTであればS1306に進み演算装置412は、早着側データのスリップの判定条件を満たしているかどうか判定する。ここで早着側の統計値ES>早着側の比較閾値ET2であればS1307に進み演算装置412は通知部513として機能し、記録材のスリップが発生していることをエンジン制御部421に通知する。記録材のスリップが発生していることは、操作表示部431への表示や、ユーザやディーラのホストコンピュータ400や不図示のプリンタ管理ツールに通知される。そして最後にS812でCPU422はエンジン制御部421として機能し、次ページのプリント指示があるかどうか判定し、あれば再びS801の給紙動作開始に戻り、そうでなければ制御を終了する。
【0091】
尚、実施形態3は、給紙機構が1つの構成を例示しているが、給紙機構が複数存在する構成に適用することも可能である。給紙機構が複数存在する構成においては、エンジン制御部421及びサーバ制御部411の動作を給紙機構毎に独立して実施し、その結果、スリップ判定は給紙機構毎に独立して実施される。
【0092】
以上説明したように実施形態3によれば、記録材のスリップが発生していることを精度良く検知し報知することができる。また、記録材の搬送異常が発生する前にユーザやディーラに対して未然に記録材や給紙ローラの交換を促すことができる。
【0093】
尚、本発明は、実施形態3に限られるものではない。例えば、プリンタエンジン420がスリップ判定部1201を有する構成をとっても良い。分類部511による給紙時間データ集合の分類手法は、ガウス混合モデルやK平均法などのクラスタリング手法を用いてもよい。
【0094】
また通知部513は、プリンタエンジン420に判定結果を返すようにしたが、直接、ユーザのPCやディーラ管理のPCやサーバに通知してもよい。更に通知部513は、実施形態3では、所定枚数毎に通知したが、例えば給紙カセット21内の記録材がなくなり、ユーザが記録材を補充する毎に通知してもよい。
【0095】
またスリップ判定部1201は、1回でスリップ発生と判定したが、例えば10回判定し、その内、例えば半数以上スリップ発生と判定した場合に、記録材のスリップが発生していると通知してもよい。また実施形態3の記録材のスリップ通知は、実施形態1、2の規制板のずれの通知と併用してもよい。
【0096】
[実施形態4]
実施形態3では、記録材の搬送異常が発生する前に、未然にユーザやディーラにスリップ発生を通知する方法を説明した。これに対して実施形態4では、記録材の搬送異常が発生した場合に、その要因が記録材のスリップであることを通知する例を説明する。主な部分の説明は実施形態2,3と同様であり、ここでは実施形態2、3と異なる部分のみを説明する。
【0097】
図14は、実施形態4に係るエンジン制御部421及びサーバ制御部411の機能を説明する機能ブロック図である。前述の実施形態2,3の図9図12と共通する部分は同じ参照番号で示している。図12との違いは、エンジン制御部421が搬送異常判定部901、給紙カセット開閉検知部902とを有し、スリップ判定部1201がスリップ確率判定部1403を有する点である。
【0098】
スリップ判定部1201は、搬送異常判定部901から記録材の搬送異常の通知を受けると記録材のスリップの有無の判定処理を開始する。分類部511は、RAM424に保存された給紙時間データの集合を実施形態3と同様にグループに分類する。実施形態4では、給紙時間データの集合は、給紙カセット開閉検知部902で給紙カセット21の開閉が検知されてから、記録材の搬送異常が検出されるまでの給紙時間データを用いる。統計量算出部512は、実施形態3と同様に、分類されたそれぞれのグループから統計値を算出する。実施形態3では、給紙カセット21の開閉から搬送異常までの遅延側データN1が200枚、早着側データN2が20枚とする。そして実施形態3と同様にして、それぞれの統計値を算出する。遅延側の統計値DSは、遅延側データ集合の中から上位5%目の(所定番目に大きい)データとすると、N1×5%=10番目のデータとなる。図21(A)は、遅延側データ集合を値の大きい順(遅い順)にソートした結果の一例を示す図で、10番目のデータが統計値(1550ms)となる。
【0099】
また早着側の統計値ESは、早着側データ集合の中央値とすると、N2×50%=10番目のデータとなる。図21(B)は、早着側データ集合を値の小さい順(早い順)にソートした結果の一例を示す図で、10番目のデータが統計値(1290ms)となる。
【0100】
次に、それぞれの統計値からスリップが発生しているか判定する。この判定方法は、実施形態3と同様にまず2つの条件から判定する。
【0101】
実施形態4の遅延側の比較閾値DTは、α=70/300000、β=1380、x=200000、m=3とすると、上記式(1)(2)からDT=1469となる。
【0102】
また、早着側の比較閾値ETは、α=70/300000、β=1140、x=200000、r=5とすると、上記式(4)からET2=1246となる。
【0103】
ここで、前述した以下の2つの条件を満たす場合に、記録材のスリップが発生している可能性があると判定する。
(1)DS>DT
(2)ES>ET2
更に、給紙カセットの開閉から、記録材の搬送異常が検出されて通知されるまでの給紙時間データの数が少ない場合は、間違った判定を行うリスクがあるため、給紙時間データの数が50より多くないと、その判定を行わない。実施形態4では、給紙時間データの数が220であるため、その判定処理を実施する。
【0104】
スリップ判定部1201は更に、スリップが発生している確率を判定する。図21(C)に示すように、まず給紙時間データの数が多いほどデータの信頼性が増すため、確率を高くしている。また、遅延側直線DLから算出したt1と、早着側直線ELから算出したt2とのずれ率を示す指標iが大きいほど、確率を高くしている。
【0105】
指標iは、以下の式(6)によって算出されるずれ率(%)である。
【0106】
i=((DS÷t1×100-100)+(ES÷t2×100-100))÷2
…式(6)
この式(6)は、遅延側直線DLから算出したt1と遅延側の統計値DSのずれ率と、早着側直線ELから算出したt2と早着側の統計値ESのずれ率の平均を表している。
【0107】
実施形態4では、DS=1550、t1=1426、ES=1290、t2=1186であるため、i=8.6となる。図21(C)から、データ数220、i=8.6から、スリップが発生している確率は90%と予測できる。通知部513は、スリップが発生している確率をエンジン制御部421に通知する。
【0108】
図15は、実施形態4に係る画像形成装置100において記録材のスリップが発生しているかどうか判定する処理を説明するフローチャートである。尚、このフローチャートで示す処理は、CPU422がRAM424に展開したプログラムを実行し、サーバ制御部411と協業することにより実現される。尚、図15において、前述の実施形態3の図13の処理と同じ処理は同じ参照番号を付して、それらの説明を省略する。
【0109】
S1501でCPU422は記録材の搬送異常の通知がないか判定する。搬送異常があると判定するとS1502に進み演算装置412は分類部511として機能し、給紙カセット21の開閉から搬送異常までの給紙時間データの数が50以上かどうか判定する。50以上であればS1302に進み演算装置412は、前述の図13のS1302~S1306と同様の処理を実行する。ここではDS=1550、DT=1469、ES=1290、ET2=1246なので、DS>DTかつES>ET2となって演算装置412はスリップが発生したと判定してS1503に進む。S1503で演算装置412はスリップ確率判定部1403として機能し、給紙時間データの数及びスリップ率を示す指標iを式(6)から算出し、指標iからスリップが発生している確率を図21(C)のテーブルを参照して決定する。
【0110】
実施形態4では、給紙時間データの数が220、i=8.6なので、スリップが発生している確率は90%と決定し、S1307で通知部513がエンジン制御部421に通知する。スリップが発生している確率は、操作表示部431への表示や、ユーザやディーラのホストコンピュータ400や不図示のプリンタ管理ツールに通知される。
【0111】
以上説明したように実施形態4によれば、記録材の搬送異常が発生したときに、記録材のスリップが発生したことが原因で搬送異常が起きたということをユーザやディーラに対して通知できる。これにより、ユーザやディーラに対して、記録材や給紙ローラの交換を促すことができる。
【0112】
[実施形態5]
上述の実施形態3、4では、記録材のスリップの発生を検知して通知する方法を説明した。実施形態5では、記録材のスリップを検知した場合、記録材の搬送異常を回避しやすくする動作へ切り替える例で説明する。主な部分の説明は実施形態3、4と同様であり、ここでは実施形態3、4と異なる部分のみを説明する。
【0113】
図16は、実施形態5に係る画像形成装置100のハードウェア構成と、画像形成装置100を含む画像形成システムの構成を説明するブロック図である。
【0114】
実施形態5に係る画像形成装置100は、ピック当接離間モータ92を有する点が前述の実施形態と異なっている。各IOポート426には、搬送路センサ27、給紙モータ90、給紙ソレノイド91、給紙ローラ22、ピック当接離間モータ92が接続されている。
【0115】
実施形態5の給紙機構20は、図2の給紙機構に対し、不図示のピック当接離間モータ92を有する。給紙ローラ22はピック当接離間モータ92によって、記録材Sに対して垂直方向に駆動可能になっている。ピック当接離間モータ92を正転すると給紙ローラ22を記録材Sに当接する方向に、逆転すると給紙ローラ22を記録材Sから離間する方向に駆動する。また、ピック当接離間モータ92を正転する時間を変えることで、給紙ローラ22と記録材Sの当接圧を調整することができる。給紙ローラ22と記録材Sの当接圧が強いほど、給紙ローラ22と記録材Sの摩擦力が大きくなるため、記録材のスリップが発生しにくくなる。
【0116】
図17は、実施形態5に係るエンジン制御部421及びサーバ制御部411の機能を説明する機能ブロック図である。前述の実施形態4の図14と共通する部分は同じ参照番号で示している。図14との違いは、ビデオコントローラ430が搬送異常回避選択部1701を有し、エンジン制御部421が搬送異常回避制御部1702、給紙圧調整部1703を有し、ピック当接離間モータ92を制御する点である。
【0117】
搬送異常回避選択部1701は、操作表示部431に記録材のスリップが発生した際に搬送異常を回避するかどうかの選択画面を表示させる。ユーザが搬送異常を回避する選択をした場合、ビデオコントローラ430は、エンジン制御部421に搬送異常の回避指示を行う。
【0118】
搬送異常回避制御部1702は、通知部513から受信した記録材のスリップが発生している確率が所定の閾値(本実施形態5では50%とする)を超えており、かつビデオコントローラ430から搬送異常の回避指示を受信している場合、以下(A)(B)で示すような搬送異常の回避動作を行う。
(A)給紙圧調整部1703による給紙ローラ22と記録材Sの当接圧の強化。
(B)搬送異常判定部901による記録材の搬送異常を検知する時間の変更。
【0119】
(A)の場合は、搬送異常回避制御部1702が給紙圧調整部1703に給紙ローラによる給紙圧を強くするよう指示すると、給紙圧調整部1703がピック当接離間モータ92を正転する時間を通常より10ms長くする。これにより、給紙ローラ22と記録材の当接圧を強くして、記録材のスリップが発生しにくくする。
【0120】
(B)の場合は、搬送異常判定部901による記録材Sの先端を検知することができない場合に搬送異常と判定するまでの時間を、搬送異常回避制御部1702により通常より500ms長くする。このように搬送異常と判定するまでの時間を長くすることで、記録材のスリップによる搬送異常が発生しにくくなる。
【0121】
図18は、実施形態5に係る画像形成装置100において記録材のスリップが発生していると判定したときに搬送異常を回避する処理を説明するフローチャートである。図18において、前述の実施形態4のフローチャート(図15)と共通する処理は同じ参照番号を付して、それらの説明を省略する。
【0122】
S1501で搬送異常の通知がない場合はS1801に進み、実施形態3のS1301と同様に、演算装置412はスリップ判定部1201として機能し、給紙枚数xが500枚かどうか判定し、500枚分の給紙時間データが記憶されると度にS1302に進む。S1302で演算装置412は分類部511として機能し、RAM424に保存された給紙時間データの集合を遅延側データ集合と早着側データ集合に分類する。そしてS1303~S1304で演算装置412は統計量算出部512として機能し、遅延側統計値DS及び早着側統計値ESを算出する。実施形態5では、DS=1550、DT=1469、t1=1426、ES=1290、ET2=1246、t2=1186とする。ここではS1305でDS>DTであり、かつS1306でES>ET2であるため、記録材のスリップが発生していると判定してS1503に進む。
【0123】
S1503で演算装置412はスリップ確率判定部1403として機能し、スリップの確率を算出する。このスリップの確率の算出方法は実施形態4と同様であり、式(6)からi=8.6、図21(C)より、スリップの確率は90%となる。そしてS1307で演算装置412は通知部513として機能し、エンジン制御部421にスリップ確率を通知する。
【0124】
次にS1802に進みCPU422は搬送異常回避制御部1702として機能し、スリップ確率が50%以上であることから、記録材のスリップが発生していると判定してS1803に進む。S1803でCPU422は搬送異常回避制御部1702として機能し、ビデオコントローラ430から搬送異常の回避指示を受信しているかどうか判定する。そうであればS1804に進みCPU422は、搬送異常の回避動作に切り替える。
【0125】
この搬送異常の回避動作(抑止動作)は、前述の(A)の給紙圧調整部1703による給紙ローラ22と記録材Sの当接圧の強化、(B)の搬送異常判定部901による搬送異常を検知するまでの時間の変更を行う。そしてS812に進みCPU422は、次ページのプリント指示があれば再びS801の給紙動作開始に戻り、そうでなければ、この処理を終了する。
【0126】
以上説明したように実施形態5によれば、記録材のスリップが発生している場合、そのスリップの発生を抑止するように制御することで、記録材の搬送異常の発生を減少させることができる。その結果、記録材の搬送異常による記録材の除去作業などのユーザの手間を軽減することができる。
【0127】
[実施形態6]
本実施形態は実施形態1と実施形態3を組み合わせたものである。上述した通り、実施形態1では規制板ずれ判定部510により後端規制板26の位置ずれが発生しているかを判定し、実施形態3ではスリップ判定部1201によりスリップが発生しているかを判定した。本実施形態ではサーバ制御部411により後端規制板26の位置ずれが発生しているかを判定し、さらにスリップが発生しているかを判定する。主な部分の説明は上記の実施形態1、3と同様であり、ここでは実施形態1、3と異なる部分のみを説明する。
【0128】
図22は、実施形態6に係る画像形成装置100において後端規制板26がずれているかどうか判定し、さらにスリップが発生しているかを判定する処理を説明するフローチャートである。尚、このフローチャートで示す処理は、CPU422がRAM424に展開したプログラムを実行し、サーバ制御部411と協業することにより実現される。尚、図22において、前述の実施形態1の図8の処理と同じ処理は同じ参照番号を付して、それらの説明を省略する。
【0129】
S801乃至S812の処理については説明を省略する。本実施形態においては、演算装置412がS810においてET1<ES<ET2かどうかを判定し、そうでないと判定した後の処理が実施形態1とは異なる。早着側比較閾値ET1<早着側統計値ES<早着側比較閾値ET2でないと判定した場合、演算装置412はS2201へと進む。ここで、早着側の統計値ES>早着側の比較閾値ET2であればS2202に進み演算装置412は通知部513として機能し、記録材のスリップが発生していることをエンジン制御部421に通知する。記録材のスリップが発生していることは、操作表示部431への表示や、ユーザやディーラのホストコンピュータ400や不図示のプリンタ管理ツールに通知される。そして最後にS812でCPU422はエンジン制御部421として機能し、次ページのプリント指示があるかどうか判定し、あれば再びS801の給紙動作開始に戻り、そうでなければ制御を終了する。
【0130】
以上説明したように実施形態6によれば、後端規制板26の位置ずれが発生していること、または記録材のスリップが発生していることを精度良く検知し報知することができる。また、記録材の搬送異常が発生する前にユーザやディーラに対して未然に記録材や給紙ローラの交換を促すことができる。特にS809、S810、S2201の3つの判定処理を踏むことで、記録材Sの給紙に時間がかかっている理由が後端規制板26の位置ずれによるものなのか、スリップによるものなのかを精度良く判定することができる。
【0131】
また、上記の実施形態6では記録材の搬送異常が発生する前に、未然にユーザやディーラに後端規制板26の位置ずれ、またはスリップ発生を通知する方法を説明した。これに対し、実施形態2と実施形態4を組み合わせることで、記録材の搬送異常が発生した場合に、その要因が後端規制板26の位置ずれによるものなのか、記録材のスリップによるものなのかを判定、通知するようにしてもよい。なお、上記の実施形態と同様に、本実施形態においてもプリンタエンジン420が規制板ずれ判定部510及びスリップ判定部1201を有する構成をとっても良い。つまり、エンジン制御部421とサーバ制御部411の間で情報のやり取りを行わず、エンジン制御部421だけで処理を完結させてもよい。
【0132】
(その他の実施形態)
上記の実施形態では、給紙機構20は、給紙ローラ22と、搬送ローラ23と、分離ローラ24を有していた。しかし、これに限定されない。例えば、給紙ローラ22に比べてサイズの大きい給紙ローラを1つ設け、その給紙ローラ表面の第1の位置が給紙カセット21に収容された記録材Sと接触し、給紙ローラ表面の第2の位置が分離ローラ24と分離ニップ部を形成する構成であってもよい。つまり、この構成によれば搬送ローラ23は不要となる。
【0133】
上記の実施形態では、後端規制板26の規定位置(基準位置)は給紙カセット21に収容された記録材Sのサイズに応じてプリンタエンジン420またはビデオコントローラ430が設定していた。ここで、記録材Sのサイズは画像形成装置100に設けられた操作表示部431を介してユーザが入力できる構成であってもよい。または、ホストコンピュータ400から通知される印刷ジョブの中に記録材Sのサイズに関する情報が含まれていてもよい。
【0134】
また、上記の実施形態では、給紙ローラ22が記録材Sの給紙を開始したタイミングから給紙時間のカウントを開始していたが、これに限定されない。例えば、搬送路センサ27とは別の位置に新たなセンサを配置して、その新たなセンサで記録材Sを検知したタイミングから給紙時間のカウントを開始してもよい。もしくは搬送路センサ27で記録材Sを検知したタイミングから給紙時間のカウントを開始し、新たなセンサで記録材Sを検知したタイミングで給紙時間のカウントを終了するようにしてもよい。
【0135】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0136】
本発明は上記実施形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
【符号の説明】
【0137】
27…搬送路センサ、28…記録材検知センサ、29…給紙カセットの有無検知センサ、90…搬送モータ、92…ピックアップ当接離間モータ、100…画像形成装置、411…サーバ制御部、420…プリンタエンジン、421…エンジン制御部、422…CPU、423…ROM、424…RAM、510…規制板ずれ判定部、511…分類部、512…統計量算出部、513…通知部、901…搬送異常判定部、902…給紙カセット開閉検知部、903…規制板ずれ確率判定部、1201…スリップ判定部、1403…スリップ確率判定部、1702…搬送異常回避制御部、1703…給紙圧調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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図19
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図22