(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】引手部材
(51)【国際特許分類】
E06B 9/78 20060101AFI20240920BHJP
F16G 13/12 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E06B9/78
F16G13/12 J
(21)【出願番号】P 2020199806
(22)【出願日】2020-12-01
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390020101
【氏名又は名称】セイキ住工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 幸久
(72)【発明者】
【氏名】澤口 直人
(72)【発明者】
【氏名】守谷 将人
(72)【発明者】
【氏名】森田 裕也
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-161325(JP,A)
【文献】特開2010-240228(JP,A)
【文献】登録実用新案第3173483(JP,U)
【文献】登録実用新案第3154318(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00 - 9/92
F16G 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有し、紐状をなす紐状部の端部に前記紐状部の幅よりも広い幅をなす拡幅部を有する紐状部材に係止される引手部材であって、
外部と前記中空部とを連通し前記拡幅部が挿通さ
れる拡幅部挿通孔
と、
前記中空部を形成し前記拡幅部が係止される上面部と、
前記中空部に対し前記拡幅部挿通孔の反対側に当該拡幅部挿通孔と繋がらずに設けられ、外部と前記中空部とを連通する連通孔と、
を有することを特徴とする引手部材。
【請求項2】
請求項1に記載の引手部材であって、
前記連通孔は、前記拡幅部挿通孔とは異なる他の拡幅部挿通孔であることを特徴とする引手部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の引手部材であって、
前記中空部を挟んで前記拡幅部挿通孔と前記連通孔とが配置されている方向と交差する方向における両端に各々、前記中空部と外部とを連通する交差方向連通孔を有していることを特徴とする引手部材。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の引手部材であって、
構造体に設けられて昇降可能なスクリーンを有するスクリーン装置の操作部として垂れ下がる前記紐状部材の下端部に係止されており、
前記構造体側の部位に仮固定される仮固定部を有していることを特徴とする引手部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紐状部材の端部に設けられる引手部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から紐状部材としてのボールチェーンの両端を連結する連結部材は知られており、この連結部材の連結本体には、長手方向における両側にボールチェーンのボール部を挿通可能な通孔が形成されており、通孔と連通し且つボール部が通過可能なボール通過部が連結本体の長手方向における中央外周面に形成されている。また、ボール通過部の両端から連結本体の両端に向ってそれぞれスリットが設けられている。スリットの一部はボールチェーンのコード部の直径より狭く形成されている。
【0003】
この連結部材は、ボールチェーンへの張力が所定値より小さい場合にコード部またはボール部の通過を阻止し、ボールチェーンへの張力が所定値以上である場合に連結本体が弾性変形してコード部またはボール部の通過を許容するように構成されている。このため、この連結部材には、通孔、スリット、ボール通過部が繋がって弾性変形し易い構造をなしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えばロールスクリーンの操作部のようにボールチェーンの端部に設けられる引手部材の場合には、引手部材はボールチェーンを引っ張るための操作部なので、ボールチェーンと係合する部位には大きな力が作用しやすい。このため、ボールチェーンが外れ難いように、引手部材は弾性変形し難く剛性が高い方が望ましい。
【0006】
また、引手部材のような小さな物品は、乳幼児などが誤って飲み込む虞があり、剛性を高めるべく、例えば全体にわたるスリットなどが設けられていない引手部材を誤飲した場合には気道が塞がれる虞があるという課題がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、誤飲した際にも気道が確保されやすい引手部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための主たる発明は、中空部を有し、紐状をなす紐状部の端部に前記紐状部の幅よりも広い幅をなす拡幅部を有する紐状部材に係止される引手部材であって、外部と前記中空部とを連通し前記拡幅部が挿通されて係止される拡幅部挿通孔と、前記中空部に対し前記拡幅部挿通孔の反対側に設けられ、外部と前記中空部とを連通する連通孔と、を有することを特徴とする引手部材である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、誤飲した際にも気道が確保されやすい引手部材を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る引手部材を有するスクリーン装置を示す縦断面図である。
【
図2】本実施形態に係る引手部材を有するスクリーン装置を示す横断面図である。
【
図3】
図3(a)は、ボールチェーンに係止された引手部材を屋内側の上方から見た斜視図であり、
図3(b)は、ボールチェーンに係止された引手部材を屋外側の下方から見た斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、引手部材を左側から見た図であり、
図4(b)は、引手部材を屋外側から見た図であり、
図4(c)、引手部材を屋内側から見た図であり、
図4(d)は、引手部材を上方から見た図であり、
図4(e)は、引手部材を下方から見た図である。
【
図7】引手部材がレール部に仮固定されている状態を示す斜視図である。
【
図8】引手部材により連結されているロールチェーンを示す断面図である。
【
図9】引手部材の他の実施形態を示す斜視図である。
【
図10】引手部材の他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る引手部材について図面を参照して説明する。
本実施形態の引手部材1は、例えば、
図1、
図2に示すような構造体としての建物に取り付けられて窓をなす建具2と共に設けられるスクリーン装置3の操作部に用いられる。
【0011】
本実施形態においては、建具2の屋内側に設けられたスクリーン装置3であって、軸体4aに巻き付けられた網材でなるスクリーン4bが昇降自在に設けられている、所謂ロールスクリーン装置3を例に挙げ、引き出されたスクリーン4bを巻き上げる操作をするために設けられ、ロールスクリーン装置本体4から垂れ下がるボールチェーン5の下端に取り付けられている引手部材1について説明する。尚、スクリーンは、網材に限らず、軸体に巻き付けられて、引き出し可能なシート状の部材であれば構わない。
【0012】
以下の説明においては、建物等に取り付けられた状態のロールスクリーン装置3を屋内側から見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向、屋内外方向である奥行き方向を見込み方向として示す。ロールスクリーン装置3及び引手部材1の各部位であっても、また、ロールスクリーン装置3を構成する各部材については単体の状態であっても、ロールスクリーン装置3が取り付けられた状態で上下方向、左右方向、見込み方向等となる方向にて方向を特定して説明する。
【0013】
建具2は、開口を形成する枠体2aと、開口を開閉自在に設けられた障子2bと、を有しており、ロールスクリーン装置3は、建具2の屋内側に設けられている。ロールスクリーン装置3は、枠体2aの上部に配置され軸体4aに巻き付けられたスクリーン4bが収容されているロールスクリーン装置本体4と、枠体2aを構成する左右の縦枠2cに沿って設けられ、引き出されて昇降するスクリーン4bを案内するレール部6と、を有している。
【0014】
ロールスクリーン装置本体4からは、スクリーン4bの操作をするためのボールチェーン5が垂れ下がっている。ボールチェーン5は、複数のボール部5aが連結部5bにより繋がって1本のロープ状をなしており、その下端に設けられたボール部5aに引手部材1が係止されている。本実施形態においては、ボールチェーン5が紐状部材に相当し、ボールチェーン5の下端に設けられているボール部5aが、紐状部材が端部に有する拡幅部に相当し、下端のボール部5aを除くボール部5aと連結部5bとが紐状部に相当する。
【0015】
レール部6には、
図2に示すように、スクリーン4bの左右の端部が収容されて案内されるスクリーン端部収容部6aと、スクリーン4bの下端に設けられた端部バー4cの左右の端部4dを案内する端部バーガイド部6bと、を有している。
図2においては、スクリーン4b及び端部バー4cの右端側を破断して示しているが、スクリーン4b及び端部バー4cの右端側も左端側と同様にレール部6と係合する。端部バーガイド部6bは、スクリーン端部収容部6aと、スクリーン端部収容部6aの見込方向における両側となる屋内側と屋外側とに各々間隔を空けて対向する対向片6cとの間に設けられた上下方向に沿う溝であり、この溝に案内されて端部バー4cが昇降する。
【0016】
屋内側の端部バーガイド部6bを形成する対向片6cに、ボールチェーン5の下端に係止されている引手部材1が仮固定可能である。引手部材1が仮固定される構成については後述する。
以下の引手部材1の説明においては、対向片6cに仮固定された状態で上下方向、左右方向、見込み方向等となる方向にて方向を特定して説明する。
【0017】
ボールチェーン5の下端に係止される引手部材1は、
図3、
図4に示すように、ほぼ直方体状をなす引手本体部10と、引手本体部10の屋外側に向く面から突出された仮固定部17と、を有している。引手部材1は、ほぼ直方体状をなす引手本体部10の長手方向が上下方向に沿う状態で、ボールチェーン5に係止されて吊り下げられる。
【0018】
引手本体部10は、
図5に示すように、内部に中空部1aを形成する、屋外側面部11、屋内側面部12、左側面部13、右側面部14、上面部15、下面部16の6つの面部を有している。中空部1aにおいて屋内側面部12と上面部15とにより形成される角部(屋内側上角部という)1b及び屋外側面部11と下面部16とにより形成される角部(屋外側下角部という)1cは、ボール部5a周面の曲率とほぼ同じ曲率の曲面をなしている。また、中空部1aの左右方向の幅、すなわち左側面部13と右側面部14との間隔は、ボール部5aの直径よりも僅かに広く形成されている。
【0019】
屋内側面部12には、中央より僅か上側に、ボールチェーン5のボール部5aよりも僅かに大きく中空部1aと連通する拡幅部挿通孔としての上側ボール挿通孔12aが設けられている。上側ボール挿通孔12aは上方に延びる上側スリット12bを有している。上側スリット12bは、ボール部5aの直径よりも狭く、ボールチェーン5の連結部5bよりも僅かに広い幅をなしており、連結部5bが挿通可能である。
【0020】
上側スリット12bは、上面部15まで繋がっており、
図6に示すように、上側ボール挿通孔12aから中空部1aに挿入されたボールチェーン5のボール部5aと繋がる連結部5bが、上方に引き上げられて上側スリット12bに挿通され、ボール部5aが上面部15に当接して引手部材1がボールチェーン5に係止されるように構成されている。すなわち、上側スリット12bが設けられている引手本体部10の上部側の部位にボールチェーン5が係止される。
【0021】
引手部材1が係止された状態では、ボール部5aが左側面部13と右側面部14との間に位置し、ボール部5aの上側の周面が屋内側上角部1bの曲面に接触し、連結部5bが上側スリット12bの上側の端部12cに接触、または近接して、ボール部5aの移動が規制されている。
【0022】
引手部材1の上面部15には、見込方向における中央より屋外側に、左側面部13と右側面部14との間が上下方向に貫通し、外部と中空部1aとを連通する上連通孔15aが設けられている。上連通孔15aと上側スリット12bとは繋がっていない。
【0023】
屋外側面部11には、上部側に屋外側に突出する仮固定部17が設けられている。仮固定部17は、屋外側面部11の上部の左右方向における中央から屋外側に突出した屋外側突出片17aと、屋外側突出片17aの先端から左右方向の両側に各々延出される延出片17bと、を有している。
【0024】
延出片17bは、屋外側面部11と見込方向に間隔を空けて設けられており、
図2に示すように、各々屋外側突出片17a側から先端方向に向かって僅かに屋外側面部11側に傾斜する第1傾斜部17cと、第1傾斜部17cと繋がり先端方向に向かって僅かに屋外側に傾斜する第2傾斜部17dと、を有して屈曲している。
【0025】
本実施形態のボールチェーン5及び引手部材1は、ロールスクリーン装置3の右側に配置されているので、
図7に示すように、引手部材1は右側のレール部6に仮固定される。引手部材1は、右側に延出されている延出片17bが、右側のレール部6の屋内側の端部バーガイド部6bに挿入されて仮固定される。このとき、延出片17bと屋外側面部11との間に、レール部6の対向片6cが位置しており、延出片17bの屋外側突出片17a側の部位と、延出片17bの先端とが、スクリーン端部収容部6aに当接される。
【0026】
これにより、延出片17bの第1傾斜部17cと第2傾斜部17dとの境界部分となり屋外側面部11側に突出している突出曲部17eが対向片6cを押圧するように延出片17bが弾性変形し、突出曲部17eと屋外側面部11との間に対向片6cが挟持されて引手部材1がレール部6に仮固定される。尚、ボールチェーン5及び引手部材1は、ロールスクリーン装置3の左側に配置されている場合には、左側に延出された延出片17bにより引手部材1が仮固定される。
【0027】
屋外側面部11の仮固定部17よりも下側には、中央より僅か下側に、ボールチェーン5のボール部5aよりも僅かに大きく中空部1aと連通する他の拡幅部挿通孔としての下側ボール挿通孔11aが設けられている。下側ボール挿通孔11aは下方に延びる下側スリット11bを有している。下側スリット11bは、ボール部5aの直径よりも狭く、ボールチェーン5の連結部5bよりも僅かに広い幅をなしており、連結部5bが挿通可能である。
【0028】
下側スリット11bは、下面部16まで繋がっており、下側ボール挿通孔11aから中空部1aに挿入されたボールチェーン5のボール部5aと繋がる連結部5bが下側スリット11bに挿通されつつボールチェーン5が吊り下げられると、ボール部5aが下面部16に当接してボールチェーン5が引手部材1に係止可能に構成されている。本実施形態においては、引手本体部10の上部側の部位のみ使用しているが、下側スリット11bが設けられている引手本体部10の下部側の部位にもボールチェーン5を係止することも可能である。
【0029】
ボールチェーン5が係止されると、ボール部5aが左側面部13と右側面部14との間に位置し、ボール部5aの下側の周面が屋外側下角部1cの曲面に接触し、連結部5bが下側スリット11bの下側の端部11cに接触、または近接して、ボール部5aの移動が規制されている。
【0030】
引手部材1の下面部16には、見込方向における中央より屋内側に、左側面部13と右側面部14との間が上下方向に貫通し、外部と中空部1aとを連通する下連通孔16aが設けられている。下連通孔16aと下側スリット11bとは繋がっていない。
【0031】
ここで、上側ボール挿通孔12a及び下側ボール挿通孔11aのいずれか一方が、外部と中空部1aとを連通しボール部5aが挿通されるボール挿通孔に相当し、他方が、中空部1aに対しボール挿通孔11a、12aの反対側に設けられ、外部と中空部1aとを連通する連通孔及び他のボール挿通孔に相当する。また、上連通孔15a及び下連通孔16aが、中空部1aを挟んでボール挿通孔と連通孔とが配置されている方向(見込方向)と交差する方向(上下方向)における両端に各々設けられている、中空部1aと外部とを連通する交差方向連通孔に相当する。
【0032】
このように、引手本体部10は、下側ボール挿通孔11a、下側スリット11b、及び、下連通孔16aの見込方向の位置や、下側ボール挿通孔11a、下側スリット11bの上下方向の向きが、上側ボール挿通孔12a、上側スリット12b、及び、上連通孔15aと異なるものの、引手本体部10の上側部分と下側部分とは同一形状をなしているので、
図8に示すように、上下を反転させて使用することが可能である。
【0033】
本実施形態の引手部材1によれば、引手本体部10は、中空部1aを有してほぼ直方体状をなしており、長手方向の全長に繋がるようなスリット等は設けられていないので、弾性変形し難く、高い剛性が保たれているので、係止しているボールチェーン5が外れ難い。
また、引手本体部10に中空部1aを挟んで両側に、外部と中空部1aとを連通する下側ボール挿通孔11a及び上側ボール挿通孔12aを有しているので、下側ボール挿通孔11a及び上側ボール挿通孔12aとが中空部1aを介して繋がっている。このため、
図5に示すように、引手部材1の下側ボール挿通孔11a側の外部と上側ボール挿通孔12a側の外部との間が連通するので、たとえ、誤って飲み込んだとしても、気道が確保されやすい引手部材1を提供することが可能である。
【0034】
また、
図8に示すように、下側ボール挿通孔11aと上側ボール挿通孔12aとボールとは、互いに引手本体部10の反対側に設けられているので、引手部材1の両側にボールチェーン5を各々挿通させて各々係止することが可能である。このため、引手部材1により2本のボールチェーン5を連結すること、或いは、1本のボールチェーン5の両端を各々下側ボール挿通孔11a及び上側ボール挿通孔12aに挿通し係止させてループ状にする連結部材としても使用することが可能である。
【0035】
また、下側ボール挿通孔11aと上側ボール挿通孔12aとが配置されている見込方向ばかりでなく、この方向と交差する上下方向における両端となる上面部15及び下面部16にも各々、中空部1aと外部とを連通する上連通孔15a及び下連通孔16aを有している。このため、引手部材1は、
図5に示すように、2つの方向に連通しており、また、中空部1aに対して4箇所の開孔、すなわち、上側ボール挿通孔12a、下側ボール挿通孔11a、上連通孔15a及び下連通孔16aが設けられているので、たとえ、誤って飲み込まれたとしても、より気道が確保されやすい。
【0036】
更に、上側ボール挿通孔12aの上側スリット12bは、屋内側面部12から上面部15にわたって、下側ボール挿通孔11aの下側スリット11bは、屋外側面部11から下面部16にわたって、それぞれ設けられているので、誤って飲み込んだ場合であってもより気道を確保しやすいという優れた効果を奏する。
【0037】
また、引手部材1には、仮固定部17が設けられているので、垂れ下がるボールチェーン5の下端部に係止されてスクリーン装置3の操作部をなす引手部材1を、仮固定部17によりレール部6に仮固定することにより、引手部材1が風等に煽られて揺動することを防止することができる。このため、引手部材1が建具2等に接触して、引手部材1や建物及び建具2などが損傷すること、或いは、音が発生することを防止することが可能である。
【0038】
上記実施形態においては、引手部材が有する中空部を挟んで両側にそれぞれ、ボール挿通孔を有している例について説明したが、これに限るものではない。例えば、引手部材が有する中空部を挟んで一方側にボール挿通孔が設けられ、他方側には、外部と中空部とを連通する単なる連通孔が設けられている形態であっても構わない。より具体的には、
図9、
図10に示すように、ほぼ円筒状をなす本体部7aの上端が上面部7bにより覆われており、本体部7a内が中空をなして下端7cが開放された引手部材7であって、上面部7bに、外部と中空部7dとを連通してボール部5aが挿通されて係止されるボール挿通孔7eを有する形態であっても構わない。このような引手部材7の場合には、上面部7bのボール挿通孔7eから開放された下端7cの連通孔7fまでが連通しているので、たとえ誤って飲み込んでしまったとしても、気道を確保することが可能である。
【0039】
また、上記実施形態においては、紐状部材の一例としてボールチェーンを例に挙げて説明したが、これに限るものではない。例えば、1本の紐の下端部に紐の幅よりも広い幅をなす拡幅部が設けられていてもよいし、1本の紐の下端部が結ばれて玉が形成されることにより拡幅されていてもよい。すなわち、紐状部材は、紐状をなして垂れ下がり可能な部材の下端部に、紐状部の幅よりも広い幅をなす拡幅部が設けられていれば構わない。このとき、拡幅部は玉状をなしていなくとも、引手部材の拡幅部挿通孔に挿通されて係止可能であれば構わない。
【0040】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
本実施形態には、少なくとも以下の発明が含まれる。
【0041】
中空部を有し、紐状をなす紐状部の端部に前記紐状部の幅よりも広い幅をなす拡幅部を有する紐状部材に係止される引手部材であって、外部と前記中空部とを連通し前記拡幅部が挿通されて係止される拡幅部挿通孔と、前記中空部に対し前記拡幅部挿通孔の反対側に設けられ、外部と前記中空部とを連通する連通孔と、を有することを特徴とする引手部材である。
【0042】
このような引手部材によれば、紐状部材が挿通される拡幅部挿通孔と、引き手部材が有する中空部に対して拡幅部挿通孔の反対側に設けられて外部と中空部とを連通する連通孔と、を有しているので、拡幅部挿通孔と連通孔とが中空部を介して繋がっている。このため、引手部材の拡幅部挿通孔側の外部と連通孔側の外部との間が連通するので、たとえ、引手部材を誤って飲み込んだとしても、気道が確保されやすい引手部材を提供することが可能である。
【0043】
かかる引手部材であって、前記連通孔は、前記拡幅部挿通孔とは異なる他の拡幅部挿通孔であることを特徴とする。
【0044】
このような引手部材によれば、拡幅部挿通孔の反対側に設けられている連通孔が、前記拡幅部挿通孔とは異なる他の拡幅部挿通孔なので、引手部材の両側に紐状部材を挿通させて各々係止することが可能である。このため、引手部材により2本の紐状部材を連結することが可能である。また、1本の紐状部材の両端に各々拡幅部が設けられている場合には、各拡幅部を各々拡幅部挿通孔に挿通してループ状にする連結部材としても使用することが可能である。
【0045】
かかる引手部材であって、前記中空部を挟んで前記拡幅部挿通孔と前記連通孔とが配置されている方向と交差する方向における両端に各々、前記中空部と外部とを連通する交差方向連通孔を有していることを特徴とする。
【0046】
このような引手部材によれば、拡幅部挿通孔と連通孔とが配置されている方向ばかりでなく、この方向と交差する方向における両端にも各々、中空部と外部とを連通する交差方向連通孔を有している。このため、引手部材は、2つの方向に連通しており、また、中空部に対して4箇所の開孔が設けられているので、たとえ、誤って飲み込まれたとしても、より気道が確保されやすい。
【0047】
かかる引手部材であって、構造体に設けられて昇降可能なスクリーンを有するスクリーン装置の操作部として垂れ下がる前記紐状部材の下端部に係止されており、前記構造体側の部位に仮固定される仮固定部を有していることを特徴とする。
【0048】
このような引手部材によれば、垂れ下がる紐状部材の下端部に係止されてスクリーン装置の操作部をなす引手部材を、スクリーン装置が設けられている構造体側の部位に仮固定することにより、引手部材は風等に煽られて揺動しない。このため、引手部材が構造体に接触して、引手部材や構造体が損傷すること、或いは、音が発生することを防止することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 引手部材、1a 中空部、3 ロールスクリーン装置(スクリーン装置)、
4b スクリーン、5 ボールチェーン、5a ボール部、5b 連結部、
7 引手部材、7d 中空部、7e ボール挿通孔、7f 連通孔、
11a 下側ボール挿通孔(ボール挿通孔、連通孔)、
12a 上側ボール挿通孔(ボール挿通孔、連通孔)、
15 上面部、15a 上連通孔、16 下面部、16a 下連通孔、
17 仮固定部