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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】スペーサ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240920BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240920BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240920BHJP
   G01L 1/20 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J11/06
G01L1/20 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020200437
(22)【出願日】2020-12-02
(65)【公開番号】P2022088149
(43)【公開日】2022-06-14
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】澤村 周
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/151209(WO,A1)
【文献】特開2015-145491(JP,A)
【文献】特開2019-065213(JP,A)
【文献】特開2015-187261(JP,A)
【文献】特開2004-091500(JP,A)
【文献】特開2009-231088(JP,A)
【文献】特開2003-329521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
G01L 1/20
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤組成物からなる粘着剤層を有し、
前記粘着剤組成物は、モノマー成分を重合させてなる重合体、架橋剤、および粘着付与樹脂を含み、
前記モノマー成分は、炭素数が1以上4以下のアルキル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル((メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを除く))、前記モノマー成分の全量に対して、80質量%以上95質量%以下含み、
前記モノマー成分は、(メタ)アクリル酸を、前記モノマー成分の全量に対して、1質量%以上7質量%以下含み、
前記モノマー成分は、ヒドロキシル基含有ビニルモノマーを含み
記炭素数が1以上4以下のアルキル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、および、前記(メタ)アクリル酸の総量100質量部に対する前記ヒドロキシル基含有ビニルモノマーの質量部数が、0.01質量部以上、0.1質量部以下であり、
架橋剤が、イソシアネート系架橋剤またはエポキシ樹脂架橋剤であり、
前記重合体100質量部に対する前記架橋剤の質量部数が、0.001質量部以上、10質量部以下であり、
下記試験により測定される前記粘着剤層の酢酸エチル不溶分の割合が、35質量%以上、60質量%以下である、スペーサ。
<試験>
粘着剤層の酢酸エチル不溶分の割合:約0.1gの前記粘着剤層(質量M1)を、多孔質ポリテトラフルオロエチレンからなり、平均孔径が0.2μmである膜(質量M2)で巾着状に包み、口を糸(質量M3)で縛り、包みを得る。前記包みを酢酸エチル50mLに浸し、23℃で7日間保持後、前記包みを取り出して外表面に付着している酢酸エチルを拭き取り、前記包みを130℃で2時間乾燥させ、前記包みの質量(M4)を測定する。前記粘着剤層の酢酸エチル不溶分の割合を、質量M1から質量M4を以下の式に代入することにより求める。
粘着剤層の酢酸エチル不溶分の割合(%)=[(M4-M2-M3)/M1]×100
【請求項2】
請求項1に記載のスペーサを備えた荷重検知センサであって、
第1の基板と、第2の基板と、スペーサと、第1の電極と、第2の電極とを備えた荷重検知センサであって、
前記第1の基板と、前記第2の基板とは、前記荷重検知センサの厚み方向に互いに間隔が隔てて対向配置されており、
前記第1の基板の前記荷重検知センサの厚み方向一方側に、第1の電極が配置されており、
前記第2の基板の前記荷重検知センサの厚み方向他方側に、第2の電極が配置されており、
前記第1の電極と前記第2の電極は、前記荷重検知センサの厚み方向に互いに間隔が隔てられ、
前記スペーサは、前記荷重検知センサの厚み方向と直交する面方向において、前記第1の電極および前記第2の電極とは間隔を隔てて配置されるように、前記第1の基板と、前記第2の基板との間に配置される、荷重検知センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
スペーサが荷重検知センサに備えられることが知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の荷重検知センサは、上下に間隔を隔てて配置される2つの電極と、それらの周端部の間に配置されるスペーサと、それらを支持する2つの基板とを備える。荷重検知センサに荷重がかけられると、2つの電極が接触し、それらが導通することにより、荷重検知センサは、荷重を検知する。他方、荷重検知センサに荷重がかけられていないと、2つの電極のギャップが確保され、それらの導通がないことにより、荷重検知センサは、荷重がかけられていないことを検知する。特許文献1に記載のスペーサは、ポリエチレンテレフタレートを含む樹脂からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-40596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2つの基板を固定する観点から、それらの間に配置されるスペーサに粘着性を付与したい場合がある。
【0006】
また、近年、荷重検知センサは、高温環境下で使用される場合がある。
【0007】
上記したスペーサには、高温環境下で使用されても、荷重に対する厚みの変化が抑制されること、つまり、耐圧縮性に優れ、所定のギャップを確保することが求められる。
【0008】
本発明は、高温環境下における耐圧縮性、および、粘着性に優れるスペーサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明(1)は、粘着剤組成物からなる粘着剤層を有し、前記粘着剤組成物は、モノマー成分の重合体を含み、前記モノマー成分は、炭素数が1以上4以下のアルキル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを80質量%以上含み、前記粘着剤層のゲル分率が、35質量%以上、60質量%以下である、スペーサを含む。
【0010】
<試験>
粘着剤層の酢酸エチル不溶分の割合:約0.1gの前記粘着剤層(質量M1)を、多孔質ポリテトラフルオロエチレンからなり、平均孔径が0.2μmである膜(質量M2)で巾着状に包み、口を糸(質量M3)で縛り、包みを得る。前記包みを酢酸エチル50mLに浸し、23℃で7日間保持後、前記包みを取り出して外表面に付着している酢酸エチルを拭き取り、前記包みを130℃で2時間乾燥させ、前記包みの質量(M4)を測定する。前記粘着剤層の酢酸エチル不溶分の割合を、質量M1から質量M4を以下の式に代入することにより求める。
粘着剤層の酢酸エチル不溶分の割合(%)=[(M4-M2-M3)/M1]×100
【発明の効果】
【0011】
本発明のスペーサは、高温環境下における耐圧縮性、および、粘着性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明のスペーサの一実施形態が備えられる荷重検知センサの断面図である。
図2図2は、スペーサの一態様の断面図である。
図3図3は、スペーサの他の態様の断面図である。
図4図4は、スペーサの他の態様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<スペーサおよび荷重検知センサの一実施形態>
本発明のスペーサの一実施形態を備える荷重検知センサを、図1を参照して説明する。
【0014】
この荷重検知センサ1は、所定厚みを有し、厚み方向に直交する面方向に延びる。荷重検知センサ1は、2つの基板2、3と、2つの電極4、5と、スペーサ6とを備える。
【0015】
2つの基板2、3は、厚み方向に間隔を隔てて対向配置されている。2つの基板2、3のそれぞれは、絶縁材料からなる。
【0016】
2つの電極4、5のそれぞれは、2つの基板2、3のそれぞれの対向面の中央部に配置されている。これにより、2つの電極4、5は、厚み方向に対向配置されている。2つの電極4、5は、荷重検知センサ1に荷重が負荷されていない時(非荷重時)には、厚み方向に互いに間隔が隔てられる。2つの電極4、5のそれぞれは、導電材料からなる。
【0017】
スペーサ6は、2つの基板2、3のそれぞれの対向面の周端部に配置されている。具体的には、厚み方向一方側に配置される第1基板2の他方面の周端部と、厚み方向他方側に配置される第2基板3の一方面の周端部とに接触している。スペーサ6は、2つの電極4、5の周囲に間隔を隔てて配置されている。スペーサ6の厚みは、2つの電極4、5の合計厚みより厚い。スペーサ6の詳細は、後述する。
【0018】
<スペーサ6>
次に、スペーサ6を、図2から図4を参照して、詳説する。スペーサ6は、所定厚みを有し、面方向に延びる。スペーサ6は、荷重検知センサ用スペーサと称呼することができる。スペーサ6は、粘着剤層8を有する。粘着剤層8の材料は、粘着剤組成物である。つまり、粘着剤層8は、粘着剤組成物からなる。
【0019】
<粘着剤組成物>
粘着剤組成物は、モノマー成分の重合体を含む。重合体は、モノマー成分を重合させてなる。モノマー成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する。
【0020】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル>
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、モノマー成分における必須成分である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルを含む。以下、(メタ)の用例および定義は、上記の通りである。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、炭素数が1以上4以下のアルキル部分を有する。炭素数が1以上4以下のアルキル部分としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、および、ブチルが挙げられる。好ましくは、ブチルが挙げられる。ブチルとしては、具体的には、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、および、tert-ブチルが挙げられ、好ましくは、n-ブチルが挙げられる。
【0021】
具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロチル(メタ)アクリレート、および、ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、好ましくは、ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。ブチル(メタ)アクリレートとしては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、および、tert-ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。好ましくは、tert-ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0022】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独使用または併用できる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単独使用するときには、好ましくは、n-ブチルアクリレートが用いられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルを併用するときには、好ましくは、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの組合せが挙げられ、より好ましくは、n-ブチルアクリレートとn-ブチルメタクリレートとの組合せが用いられる。
【0023】
モノマー成分における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの百分率は、80質量%以上である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの百分率が80質量%未満であれば、スペーサ6は、高温雰囲気下における耐圧縮性が低下する。換言すると、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの百分率が80質量%以上であるので、スペーサ6は、高温雰囲気下における耐圧縮性に優れる。
【0024】
モノマー成分における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの百分率は、好ましくは、85質量%以上、より好ましくは、90質量%以上であり、また、例えば、100質量%以下、好ましくは、99質量%以下、より好ましくは、95質量%以下である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの百分率が上記した上限以下であれば、高温環境下においても、スペーサ6が基板2、3から剥がれる事を抑制できる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの組合せである場合には、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの総量に対するアクリル酸アルキルエステルの百分率は、例えば、80質量%以上、好ましくは、90質量%以上であり、また、例えば、99質量%以下、好ましくは、95質量%以下である。
【0025】
<(メタ)アクリル酸>
また、モノマー成分は、(メタ)アクリル酸をさらに含有してもよい。(メタ)アクリル酸として、好ましくは、アクリル酸が挙げられる。モノマー成分における(メタ)アクリル酸の百分率は、例えば、1質量%以上、好ましくは、2質量%以上であり、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、7質量%以下である。
【0026】
<共重合性ビニルモノマー>
さらに、モノマー成分は、炭素数が1以上4以下のアルキル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、および、(メタ)アクリル酸以外の共重合性ビニルモノマーを含有してもよい。共重合性ビニルモノマーは、上記した(メタ)アクリル酸アルキルエステル、および、(メタ)アクリル酸と共重合可能なビニルモノマーである。共重合性ビニルモノマーとしては、例えば、ヒドロキシル基含有ビニルモノマー、および、炭素数が5以上のアルキル部分を有する第2の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0027】
ヒドロキシル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、および、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0028】
第2の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、および、オクチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0029】
炭素数が1以上4以下のアルキル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、および、(メタ)アクリル酸の総量100質量部に対する共重合性ビニルモノマーの質量部数は、例えば、0.01質量部以上であり、また、例えば、15質量部以下である。炭素数が1以上4以下のアルキル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、および、(メタ)アクリル酸の総量100質量部に対するヒドロキシル基含有ビニルモノマーの質量部数は、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.02質量部以上であり、また、例えば、0.1質量部以下、好ましくは、0.05質量部以下である。炭素数が1以上4以下のアルキル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、および、(メタ)アクリル酸の総量100質量部に対する第2の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの質量部数は、例えば、2質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下である。
【0030】
上記したモノマー成分の重合方法は、特に限定されない。重合方法として、例えば、溶液重合、および、乳化重合が挙げられる。重合では、溶媒および重合開始剤が用いられる。溶媒としては、例えば、エステルが挙げられる。エステルとしては、例えば、酢酸エチルが挙げられる。重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物が挙げられ、好ましくは、アゾビスイソブチロニトリル、および、アゾビス2-メチルブチロニトリルが挙げられる。
【0031】
重合体の重量平均分子量は、例えば、10万以上であり、また、例えば、200万以下である。重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトフラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値に基づいて測定される。
【0032】
得られた重合体に架橋剤および/または粘着付与樹脂を配合することができる。この場合には、粘着剤組成物は、重合体と、架橋剤および/または粘着付与樹脂とを含有する。
【0033】
<架橋剤>
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、および、エポキシ系架橋剤が挙げられる。イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(コロネートLとして東ソー社より入手可能)が挙げられる。エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(テトラッドCとして三菱ガス化学社より入手可能)が挙げられる。架橋剤は、単独使用または併用できる。重合体100質量部に対する架橋剤の質量部数は、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.005質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0034】
<粘着付与樹脂>
粘着付与樹脂としては、例えば、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、および、石油系樹脂が挙げられ、好ましくは、テルペン系樹脂、および、ロジン系樹脂が挙げられる。テルペン系樹脂としては、例えば、テルペンフェノール樹脂、および、テルペン変性フェノール樹脂が挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えば、重合ロジンペンタエリスリトールエステル、および、水添ロジングリセリンエステルが挙げられる。重合体100質量部に対する粘着付与樹脂の質量部数は、例えば、5質量部以上であり、また、50質量部以下である。
【0035】
溶媒を用いた重合によって、重合体が溶液または分散液に含まれて調製される場合には、上記した溶液または分散液に対して、架橋剤および/または粘着付与樹脂を配合する。これによって、粘着剤組成物の溶液または粘着剤組成物の分散液が調製される。
【0036】
上記した溶液または分散液を、例えば、図2に示す基材フィルム9の表面(厚み方向一方面)に塗布し、その後、乾燥させる。つまり、溶液または分散液から溶媒を除く。これにより、図2に示すように、粘着剤組成物からなる粘着剤層8を有するスペーサ6を製造する。粘着剤組成物は、重合体が架橋体により架橋された架橋重合体を含む。粘着剤層8の厚みは、特に限定されない。粘着剤層8の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、500μm以下、好ましくは、100μm以下である。
【0037】
<粘着剤層8の酢酸エチル不溶分>
粘着剤層8の酢酸エチル不溶分の割合は、35質量%以上、60質量%以下である。粘着剤層8の酢酸エチル不溶分の割合は、下記の試験により測定される。
【0038】
<試験>
約0.1gの粘着剤層8(質量M1)を、多孔質ポリテトラフルオロエチレンからなり、平均孔径が0.2μmである膜(質量M2)で巾着状に包み、口を糸(質量M3)で縛り、包みを得る。包みを酢酸エチル50mLに浸し、23℃で7日間保持後、包みを取り出して外表面に付着している酢酸エチルを拭き取り、包みを130℃で2時間乾燥させ、包みの質量(M4)を測定する。粘着剤層8の酢酸エチル不溶分の割合を、質量M1から質量M4を以下の式に代入することにより求める。
【0039】
粘着剤層8の酢酸エチル不溶分の割合(%)=[(M4-M2-M3)/M1]×100
【0040】
粘着剤層8の酢酸エチル不溶分の割合が35質量%未満であれば、高温雰囲気下における耐圧縮性が低下する。一方、粘着剤層8の酢酸エチル不溶分の割合が60質量%超過であれば、粘着性が低下する。
【0041】
粘着剤層8の酢酸エチル不溶分の割合は、好ましくは、40質量%以上であり、また、好ましくは、60質量%以下、より好ましくは、50質量%以下である。
【0042】
粘着剤層8の酢酸エチル不溶分を所望範囲に設定する方法は、特に限定されない。例えば、モノマー成分および/または架橋剤の、種類および/または配合量を調整する。
【0043】
なお、粘着剤層8の酢酸エチル不溶分の割合を「ゲル分率」と称呼することもできる。
【0044】
<スペーサ6の層構成>
スペーサ6は、図2に示すように、基材フィルム9をさらに備えてもよい。この場合には、スペーサ6は、基材フィルム9と、粘着剤層8とを厚み方向に順に備える。基材フィルム9の材料としては、例えば、紙、樹脂、金属が挙げられる。好ましくは、樹脂、具体的には、ポリエステル樹脂、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。基材フィルム9の厚みは、特に限定されない。基材フィルム9の厚みは、例えば、25μm以上、好ましくは、75μm以上であり、また、例えば、500μm以下、好ましくは、100μm以下である。
【0045】
スペーサ6の他の態様は、図3に示すように、粘着剤層8と、基材フィルム9と、粘着剤層8とを厚み方向に順に備える。つまり、このスペーサ6では、基材フィルム9の厚み方向一方面および他方面のそれぞれに、粘着剤層8が配置されている。
【0046】
スペーサ6の他の態様は、図4に示すように、粘着剤層8のみを備える。つまり、図4に示すスペーサ6は、基材フィルム9を備えない基材レスタイプである。
【0047】
図2図4に示すスペーサ6を複数積層することもできる。これにより、2つの電極4、5間にギャップを設ける。スペーサ6の厚みは、特に限定されない。
【0048】
<作用効果>
このスペーサ6では、粘着剤層8の酢酸エチル不溶分の割合が35質量%以上であるので、高温雰囲気下における耐圧縮性に優れる。また、粘着剤層8の酢酸エチル不溶分の割合が60質量%以下であるので、粘着性に優れる。
【0049】
また、このスペーサ6では、モノマー成分が炭素数が1以上4以下のアルキル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを80質量%以上含むので、高温環境下における耐圧縮性に優れる。
【実施例
【0050】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記した「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0051】
[実施例1]
(重合体の調製)
酢酸エチル148質量部に、表1に示したモノマー成分(質量部)および重合開始剤としてのアゾビス2-メチルブチロニトリル0.1質量部を溶解して、60℃で4時間重合し、重合体の溶液を得た。得られた重合体の重量平均分子量は、130万であった。
【0052】
(粘着剤組成物の調製)
上記した重合体の溶液の固形分100質量部に対して粘着付与樹脂としてテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル社製、YSポリスターS145)15質量部を加え、さらに、表1に示した架橋剤(質量部)を加えて粘着剤組成物の溶液を作製した。
【0053】
(スペーサの製造)
上記した粘着剤組成物の溶液を、厚み100μmのPETフィルムの厚み方向一方面および他方面に塗布し、その後、乾燥させることによって、厚み25μmの粘着剤層をPETフィルムの厚み方向一方面および他方面のそれぞれに形成した。これによって、図3に示すように、粘着剤層8と、基材フィルム9と、粘着剤層8とを厚み方向に順に備えるスペーサ6を製造した。
【0054】
[比較例1および比較例2]
実施例1と同様にして、粘着剤層8と、基材フィルム9と、粘着剤層8とを厚み方向に順に備えるスペーサ6を製造した。但し、架橋剤(質量部)を表1に示した配合量に変えた。
【0055】
[実施例2]
(重合体の調製)
酢酸エチル127質量部に重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.16質量部を溶解した。その後、その溶液に表2に示したモノマー成分(質量部)を60℃で5時間かけて滴下し、さらに、60℃で2時間重合して、重合体の溶液を得た。得られた重合体の重量平均分子量は、50万であった。
【0056】
(粘着剤組成物の調製)
上記した重合体の溶液の固形分100質量部に対して、粘着付与樹脂としてテルペン変性フェノール樹脂(住友ベークライト社製、スミライトレジンPR-12603N)10質量部、重合ロジンペンタエリスリトールエステル(ハリマ化成社製、ハリタックPCJ)10質量部、水添ロジングリセリンエステル(ハリマ化成社製、ハリタックSE10)10質量部を加え、さらに、表2に示した架橋剤(質量部)を加えて粘着剤組成物の溶液を作製した。
【0057】
(スペーサの製造)
上記した粘着剤組成物の溶液を用いて、実施例1と同様にして、粘着剤層8と、基材フィルム9と、粘着剤層8とを厚み方向に順に備えるスペーサ6を製造した。
【0058】
[比較例3および比較例4]
実施例2と同様にして、粘着剤層8と、基材フィルム9と、粘着剤層8とを厚み方向に順に備えるスペーサ6を製造した。但し、架橋剤(質量部)を表2に示した配合量に変えた。
【0059】
[実施例3]
(粘着剤組成物の作製)
酢酸エチル232質量部に、表3に示したモノマー成分(質量部)および重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.08質量部を溶解して、60℃で9時間重合し、重合体の溶液を得た。得られた重合体の重量平均分子量は40万であった。
【0060】
(粘着剤組成物の作製)
上記した重合体の溶液の固形分100質量部に対し粘着付与樹脂として重合ロジンペンタエリストリトールエステル(荒川化学工業社製、ペンセルD-125 30質量部を加え、さらに、表3に示した架橋剤(質量部)を加えて粘着剤組成物の溶液を作製した。
【0061】
(スペーサの製造)
上記した粘着剤組成物の溶液を用いて、実施例1と同様にして、粘着剤層8と、基材フィルム9と、粘着剤層8とを厚み方向に順に備えるスペーサ6を製造した。
【0062】
[比較例5]
(粘着剤組成物の作製)
酢酸エチル232質量部に、表3に示したモノマー成分(質量部)および重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.08質量部を溶解して、60℃で9時間重合し、重合体の溶液を得た。得られた重合体の重量平均分子量は40万であった。
【0063】
(粘着剤組成物の作製)
上記した重合体の溶液の固形分100質量部に対し粘着付与樹脂として重合ロジンペンタエリスリトールエステル(荒川化学工業社製、ペンセルD-125)30質量部を加え、さらに、3に示した架橋剤(質量部)を加えて粘着剤組成物の溶液を作製した。
【0064】
(スペーサの製造)
上記した粘着剤組成物の溶液を用いて、実施例3と同様にして、粘着剤層8と、基材フィルム9と、粘着剤層8とを厚み方向に順に備えるスペーサ6を製造した。
【0065】
<評価>
各実施例および各比較例におけるスペーサおよび粘着剤層について、下記の事項を評価した。その結果を表1から表3に記載する。
【0066】
(粘着剤層8の酢酸エチル不溶分の割合の測定)
約0.1gの粘着剤層(質量M1)8を、多孔質ポリテトラフルオロエチレンからなり、平均孔径が0.2μmである膜(質量M2)で巾着状に包み、口を糸(質量M3)で縛り、包みを得た。包みを酢酸エチル50mLに浸し、23℃で7日間保持後、包みを取り出して外表面に付着している酢酸エチルを拭き取り、包みを130℃で2時間乾燥させ、包みの質量(M4)を測定した。粘着剤層8の酢酸エチル不溶分の割合を、質量M1から質量M4を以下の式に代入することにより求めた。
【0067】
粘着剤層8の酢酸エチル不溶分の割合(%)=[(M4-M2-M3)/M1]×100
【0068】
なお、上記した多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜としては、日東電工社の商品名「ニトフロン(登録商標)NTF1122」(平均孔径0.2μm、気孔率75%、厚さ85μm)を使用した。
【0069】
(高温雰囲気下における耐圧縮性)
スペーサを8つ厚み方向に重ね、第1方向(面方向に含まれる一の方向)両端部における厚み方向最一方部および最他方部の粘着剤層8をPET基材で覆って、粘着剤層8の厚みの合計が400μmである耐圧縮性の評価用サンプルを作製した。
【0070】
評価用サンプルを、島津製作所社製のマイクロオートグラフを用いて、80℃環境下で、圧縮速度0.1m/分で圧縮し、応力歪み曲線を得た。応力歪み曲線の傾きが13MPa/mm以上であれば、高温雰囲気下における耐圧縮性が良好(〇)と評価した。一方、応力歪み曲線の傾きが13MPa/mm未満であれば、高温雰囲気下における耐圧縮性が不良(×)であると評価した。圧力歪み曲線の傾きは、原点と、応力が1.5MPaの時の点とを通過する直線を引き、その直線の傾きとして求めた。
【0071】
(粘着性)
粘着剤層8を指で触り、その感触を以下の基準で評価した。
【0072】
〇:粘着性(タック感)が強い。
×:粘着性(タック感)が弱い。
【0073】
<実施例1と、比較例1および2との対比>
実施例1と、比較例1および2とは、表1から分かるように、モノマー成分が同一である一方、架橋剤の種類および量を変更することによって、高温雰囲気下における耐圧縮性および粘着性を評価した。粘着剤層8の酢酸エチル不溶分の割合が43.0質量%(本発明の範囲内)である実施例1は、粘着剤層8の酢酸エチル不溶分の割合が24.0質量%(本発明の範囲外)である比較例1に対して、高温雰囲気下における耐圧縮性に優れる。実施例1は、粘着剤層8の酢酸エチル不溶分の割合が65.0質量%(本発明の範囲外)である比較例2に対して、粘着性に優れる。このことは、表2に記載される実施例2と、比較例3および4とについても言える。
【0074】
<実施例3と、比較例5との対比>
実施例3と比較例5は、表3から分かるように、架橋剤の種類および量が同一である一方、n-ブチルアクリレートの配合割合を変更することによって、高温雰囲気下における耐圧縮性および粘着性を評価した。モノマー成分におけるn-ブチルアクリレートの百分率が83質量%(本発明の範囲内)である実施例3は、モノマー成分におけるn-ブチルアクリレートの百分率が65質量%(本発明の範囲外)である比較例5に対して、高温雰囲気下における耐圧縮性に優れる。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【符号の説明】
【0078】
6 スペーサ
8 粘着剤層

図1
図2
図3
図4