IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リブドゥコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特許-吸収性物品 図1
  • 特許-吸収性物品 図2
  • 特許-吸収性物品 図3
  • 特許-吸収性物品 図4
  • 特許-吸収性物品 図5
  • 特許-吸収性物品 図6
  • 特許-吸収性物品 図7
  • 特許-吸収性物品 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/53 20060101AFI20240920BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20240920BHJP
   A61F 13/539 20060101ALI20240920BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20240920BHJP
   A61F 13/535 20060101ALI20240920BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61F13/53 100
A61F13/15 141
A61F13/15 142
A61F13/539
A61F13/534 100
A61F13/535 200
A61F13/511 400
A61F13/511 200
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020203539
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2022090931
(43)【公開日】2022-06-20
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】石田 明宏
(72)【発明者】
【氏名】橋本 敦史
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-174736(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0307617(US,A1)
【文献】特開2009-203586(JP,A)
【文献】特開2020-188933(JP,A)
【文献】特開2019-146753(JP,A)
【文献】特開2002-360620(JP,A)
【文献】特開2020-058635(JP,A)
【文献】特開2014-204799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/53
A61F 13/15
A61F 13/539
A61F 13/534
A61F 13/535
A61F 13/511
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌面側に配置された透液性のトップシートと、外面側に配置された不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された少なくとも1層の吸収体とを有し、
前記吸収体が、吸収体コアと、前記吸収体コアの肌面側平面の少なくとも一部を被覆するコアラップシートから構成されており、
前記トップシートに、抗菌剤が付与されており、
前記コアラップシートに、消臭剤が付与されており、
前記吸収体コアの肌面側平面を被覆するコアラップシートが、消臭剤高目付領域と消臭剤低目付領域とを有しており、前記吸収体コアの肌面側平面を被覆するコアラップシートの面積において、消臭剤低目付領域の面積率が40面積%~90面積%であり、
前記トップシートと前記コアラップシートとが接着剤で接合され、前記接着剤の少なくとも一部が、前記消臭剤高目付領域上に配置されており、前記消臭剤高目付領域の面積における接着剤配置領域の面積の割合が、30面積%~90面積%であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記消臭剤低目付領域の消臭剤は、前記消臭剤高目付領域の消臭剤の成分の一部と同一の化合物を有している請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記消臭剤高目付領域が、吸収性物品の長手方向に連続的であり、吸収性物品の幅方向に断続的に配置されており、
各消臭剤高目付領域の幅が1mm~30mmであり、
各消臭剤高目付領域の間に形成される消臭剤低目付領域の幅が0.5mm~10mmである請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体コアが、上層吸収体コアと下層吸収体コアとの2層構造であり、
前記上層吸収体コアは、幅方向略中央部に、開口を有している請求項1~3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記トップシートの肌面側の幅方向両側部に、立ち上がり可能に構成されたサイドシートが配置されており、
前記サイドシートは、立ち上がり基部で前記トップシートと接合されており、
前記トップシートは、前記立ち上がり基部との接合部よりも幅方向中央側にのみ抗菌剤が付与されている請求項1~4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体コアの肌面側平面を被覆するコアラップシートにおいて、
前記消臭剤が、前記コアラップシートの肌面側に付与されている請求項1~5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記トップシートが、使用者の肌に接する肌当接シートと、前記肌当接シートの外面側に積層されたセカンドシートとの積層体であり、
前記セカンドシートに、前記抗菌剤が付与されている請求項1~6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性能および消臭性能を有する吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつ、生理用ナプキン、失禁者用パッド等の吸収性物品は、身体から排泄される尿や経血等の体液を吸収、保持させて使用するが、使用時あるいは使用後に廃棄する時の不快臭に対する対策が求められている。このような不快臭を抑制した吸収性物品が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、着用時に肌面側に配置される液透過性の表面シート、非肌面側に配置される液不透過性の裏面シート、及び前記両シート間に介在された液保持性の吸収体を具備する、縦方向とこれと直交する幅方向とを有する吸収性物品であって、前記表面シートと前記吸収体との間には、抗菌剤を含有する抗菌シートが前記表面シート側に配され、消臭剤を含有する消臭層が前記抗菌シートより前記吸収体側に配されており、前記吸収性物品の幅方向について、前記消臭層の左右端縁が前記吸収体の肌面領域内もしくは側面領域内に留められ、他方、前記抗菌シートは前記吸収体の肌面領域及び非肌面領域に在り、該非肌面領域において前記抗菌シートと前記吸収体とが当接するようにされた吸収性物品(特許文献1(請求項1)参照)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-030900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、消臭性能を高めるために、消臭剤と抗菌剤とを備えた吸収性物品が提案されている。しかしながら、このような吸収性物品では、着用者の体液を吸収する際に、消臭剤と抗菌剤とが混ざり合いやすく、それぞれの消臭性能、抗菌性能を十分に発揮できない場合があった。本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、抗菌性能および消臭性能に優れた吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吸収性物品は、肌面側に配置された透液性のトップシートと、外面側に配置された不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された少なくとも1層の吸収体とを有し、前記吸収体が、吸収体コアと少なくとも前記吸収体コアの肌面側平面の一部を被覆するコアラップシートから構成されており、前記トップシートに抗菌剤が付与されており、前記コアラップシートに消臭剤が付与されており、前記吸収体コアの肌面側平面を被覆するコアラップシートが消臭剤高目付領域と消臭剤低目付領域とを有していることを特徴とする。コアラップシートが消臭剤低目付領域を有することで、体液が消臭剤低目付領域を優先的に透過するようになる。そのため、体液に含まれる抗菌剤とコアラップシートに付与された消臭剤とが混ざり合うことが抑制され、それぞれが有する抗菌性能および消臭性能をより発揮できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、抗菌性能および消臭性能に優れた吸収性物品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の吸収性物品の一例の平面図。
図2図1の吸収性物品のV-V線の断面図。
図3図1の吸収性物品の消臭剤の配置態様を示す平面図。
図4図1の吸収性物品の接着剤の配置態様を示す平面図。
図5】本発明の吸収性物品の他の例の平面図。
図6図5の吸収性物品のV-V線の断面図。
図7図5の吸収性物品の消臭剤の配置態様を示す平面図。
図8図5の吸収性物品の接着剤の配置態様を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の吸収性物品は、肌面側に配置された透液性のトップシートと、外面側に配置された不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された少なくとも1層の吸収体とを有し、前記吸収体が、吸収体コアと少なくとも前記吸収体コアの肌面側平面の一部を被覆するコアラップシートから構成されている。また、本発明の吸収性物品では、前記トップシートに抗菌剤が付与されており、前記コアラップシートに消臭剤が付与されている。そして、本発明の吸収性物品では、前記吸収体コアの肌面側平面を被覆するコアラップシートが、消臭剤高目付領域と消臭剤低目付領域とを有していることを特徴とする。
【0010】
トップシートに抗菌剤を配置することで、体液と抗菌剤とを確実に接触させることができ、体液等を吸収した後の腐敗菌の繁殖を抑制し、悪臭の発生を低減できる。また、吸収体コアの肌面側平面を被覆するコアラップシートに消臭剤を付与することで、吸収体コアからトップシート側へ向かう不快臭を効果的に抑制できる。さらに、コアラップシートが消臭剤低目付領域を有することで、体液が消臭剤低目付領域を優先的に透過するようになる。そのため、体液に含まれる抗菌剤とコアラップシートに付与された消臭剤とが混ざり合うことが抑制され、それぞれが有する抗菌性能および消臭性能がより発揮される。よって、吸収性物品の抗菌性能および防臭性能が向上する。
【0011】
本発明の吸収性物品は、肌面側に配置された透液性のトップシートと、外面側に配置された不透液性のバックシートとを有する。
【0012】
(トップシート)
前記トップシートは、吸収性物品の最も着用者側に配置されるものであり、着用者の体液を速やかに捕捉して吸収性コアへと移動させる。前記トップシートは、透液性のシート材料、例えば、親水性繊維により形成された不織布が使用できる。トップシートとして利用される不織布は、例えば、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布であり、これらの不織布を形成する繊維としては通常、表面を界面活性剤により親水化処理した疎水性繊維(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド)が用いられる。なお、トップシートとして、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維にて形成された透液性の不織布が用いられてもよい。
【0013】
前記トップシートは、単層構造でも、2層以上の多層構造としてもよい。トップシートを多層構造とする場合、各層は同じ種類のシートを使用してもよいし、異なる種類のシートを使用してもよい。多層構造のトップシートとしては、使用者の肌に接する肌当接シートと、前記肌当接シートの外面側に積層されたセカンドシートとの積層体が挙げられる。前記セカンドシートに使用し得る不織布としては、前記トップシートとして利用される不織布として例示したもののほか、ティッシュペーパーが挙げられる。
【0014】
前記トップシートには、抗菌剤が付与されている。トップシートに抗菌剤を配置することで、吸収性物品に取り込まれた体液と抗菌剤とを、確実に接触させることができる。そのため、体液等を吸収した後の腐敗菌の繁殖を抑制することができ、吸収性物品からの悪臭の発生を低減することができる。前記抗菌剤は、トップシートの全面に付与してもよいし、一部に付与してもよい。
【0015】
前記トップシートは、抗菌剤が付与されている部分における抗菌剤の付与量は、0.0001g/m2以上が好ましく、より好ましくは0.0005g/m2以上、さらに好ましくは0.001g/m2以上であり、0.1g/m2以下が好ましく、より好ましくは0.05g/m2以下、さらに好ましくは0.01g/m2以下である。抗菌剤の付与量が0.001g/m2以上であれば抗菌活性が低い抗菌剤でも抗菌効果を有し、0.1g/m2以下であれば抗菌剤の皮膚刺激を抑えることができる。前記抗菌剤の付与量は、トップシートの肌面側平面の面積に対する付与量である。
【0016】
前記抗菌剤としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、没食子酸、グルコン酸、コハク酸、フマル酸、ソルビン酸、プロピオン酸、安息香酸等の有機酸モノマー;モノラウリン酸グリセロール、メチルパラベン、エチルパラベン等の有機酸のエステル化合物;グルコン酸クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩等のビグアナイド化合物;セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド等の第4級アンモニウム塩;セチルピリジニウムクロリド、ラウリルピリジニウムクロリド等のピリジニウム塩;ドデシルジアミノエチルグリシン塩酸塩、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩等の両性界面活性剤;イソプロピルメチルフェノール、フェノキシエタノール、パラクロロメタ-キシレノール等の芳香族アルコール;銀イオン、銅イオンまたは亜鉛イオンを細孔に収着させたゼオライトなどが挙げられる。これらの中でも、皮膚への安全性の観点から、有機酸モノマーまたは有機酸のエステル化合物が好ましい。
【0017】
前記トップシートの態様としては、単層のトップシートに抗菌剤が付与されている態様;前記トップシートが、使用者の肌に接する肌当接シートと、前記肌当接シートの外面側に積層されたセカンドシートとの積層体であり、前記肌当接シートに抗菌剤が付与されている態様;前記トップシートが、使用者の肌に接する肌当接シートと、前記肌当接シートの外面側に積層されたセカンドシートとの積層体であり、前記セカンドシートに抗菌剤が付与されている態様;前記トップシートが、使用者の肌に接する肌当接シートと、前記肌当接シートの外面側に積層されたセカンドシートとの積層体であり、前記肌当接シートおよびセカンドシートの両方に抗菌剤が付与されている態様が挙げられる。
【0018】
前記抗菌剤を付与する方法としては、粉末状の抗菌剤を散布する方法、トップシートに抗菌剤含有液を接触させた後、溶媒を除去する方法などが挙げられる。前記トップシートに抗菌剤含有液を接触させる方法としては、トップシートに抗菌剤含有液を散布する方法、トップシートに抗菌剤含有液をコーター塗工、グラビア塗工、フレキソ塗工で塗布する方法、抗菌剤含有液にトップシートを浸漬する方法などが挙げられる。トップシートが多層構造である場合、シートに抗菌剤を付与した後にシートを積層してもよいし、シートの積層体を作製した後に抗菌剤を付与してもよい。例えば、肌当接シートとセカンドシートとの積層体を作製した後に抗菌剤を付与した場合、肌当接シートおよびセカンドシートの両方に抗菌剤が付与される。
【0019】
前記抗菌剤含有液の溶媒としては、水、水と親水性有機溶剤との混合溶液などを用いることができる。前記親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0020】
前記抗菌剤含有液中の抗菌剤濃度は、特に限定されず、適宜調節すればよい。前記抗菌剤としてフマル酸を用いる場合、フマル酸含有液中のフマル酸濃度は、0.03質量%以上が好ましく、より好ましくは0.06質量%以上、さらに好ましくは0.10質量%以上であり、0.60質量%以下が好ましく、より好ましくは0.30質量%以下である。
【0021】
前記フマル酸含有液は、増粘剤を含有することが好ましい。前記増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、ペクチン、グアーガム、プルラン、タマリンドガム、カラギーナン、ゼラチン、不飽和カルボン酸(共)重合体(例えば、ポリアクリル酸、イソブチレン-マレイン酸共重合体、ジイソブチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)、カルボキシル化多糖体(例えば、カルボキシメチルセルロースなど)、および、これらの塩(例えば、有機アミン塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩)、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸、および、これらの塩(例えば、有機アミン塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、N,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(共)重合体の無機酸(塩酸、リン酸など)塩または有機酸(ギ酸、酢酸、乳酸など)塩などが挙げられる。
【0022】
(バックシート)
前記バックシートは、吸収性物品の最も外面側に配置されるものであり、体液等が外部に漏れ出すことを防止する。バックシートに使用される不透液性シートとしては、例えば、疎水性繊維(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド)にて形成された撥水性または不透液性の不織布(例えば、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、SMS(スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド)不織布)や、撥水性または不透液性のプラスチックフィルムが挙げられる。不透液性シートにプラスチックフィルムが利用される場合、ムレを防止して着用者の快適性を向上するという観点からは、透湿性(通気性)を有するプラスチックフィルムが好ましく、さらに外面に不織布が積層された不織布ラミネートフィルムがより好ましい。
【0023】
(吸収体)
前記吸収性物品は、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体を有する。前記吸収体は、吸収体コアと、少なくとも前記吸収体コアの肌面側平面の一部を被覆するコアラップシートから構成されている。
【0024】
(吸収体コア)
前記吸収体コアは、体液を吸収し、保持する。前記吸収体コアは、吸水性材料として、吸水性樹脂粉末を含有することが好ましい。また、前記吸収体コアは、吸水性材料として、さらに吸水性繊維を含有してもよい。
【0025】
前記吸水性樹脂粉末としては、従来吸収性物品に使用されているものが使用できる。前記吸水性樹脂粉末は、特に限定されないが、アクリル酸を構成成分とする架橋重合体であって、そのカルボキシ基の少なくとも一部が中和されているものを使用することが好ましい。前記架橋重合体を構成するアクリル酸成分の含有率は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、99質量%以下が好ましく、より好ましくは97質量%以下である。アクリル酸成分の含有率が前記範囲内であれば、得られる吸水性樹脂粉末が、所望の吸収性能を発現しやすくなる。
【0026】
架橋重合体のカルボキシ基の少なくとも一部を中和する陽イオンとしては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属イオン等が挙げられる。これらの中でも、架橋重合体のカルボキシ基の少なくとも一部が、ナトリウムイオンで中和されていることが好ましい。なお、架橋重合体のカルボキシ基の中和は、重合して得られる架橋重合体のカルボキシ基を中和するようにしてもよいし、予め中和された単量体を用いて架橋重合体を形成するようにしてもよい。
【0027】
架橋重合体のカルボキシ基の中和度は、55モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましい。中和度が低すぎると、得られる吸水性樹脂粉末の吸収性能が低下する場合がある。また、中和度の上限は、特に限定されず、カルボキシ基の全てが中和されていてもよい。なお、中和度は、下記式で求められる。
中和度(モル%)=100×「架橋重合体の中和されているカルボキシ基のモル数」/「架橋重合体が有するカルボキシ基の総モル数(中和、未中和を含む)」
【0028】
前記吸水性樹脂粉末には、防腐剤、防かび剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、芳香剤、消臭剤、無機質粉末及び有機質繊維状物などの添加剤を含むことができる。
【0029】
前記吸水性繊維としては、例えば、パルプ繊維、セルロース繊維、レーヨン、アセテート繊維が挙げられる。また、前記吸水性繊維には前記抗菌剤が付与されていてもよい。中でも、抗菌スペクトルの観点から、ラウリルピリジニウムクロリド等のピリジニウム塩、第4級アンモニウム塩、両性界面活性剤等のイオン性界面活性剤と、イソプロピルメチルフェノール等の非イオン系抗菌剤の両方を含むことが好ましい。さらに、静菌剤として、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)等のキレート剤を含むことがより好ましい。
【0030】
前記吸収体コアは、吸水性樹脂粉末に加えて、繊維基材を含有してもよい。前記繊維基材としては、熱融着繊維などが挙げられる。熱融着性繊維は、保形性を高めるために使用される。熱融着繊維の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維や複合繊維などが用いられる。吸水性材料として、吸水性樹脂粉末のみを含有する吸収体コアは、薄型化が可能である。繊維基材を含有する吸収体コアは、体液の分散性に優れる。体液の分散性の点では、メチル化セルロースやアセチル化セルロース等の半合成繊維でもよい。
【0031】
前記吸収体が有する吸収体コアは、一層でもよいし、二層以上の多層でもよい。吸収体コアを多層とする場合、各層の平面視形状は同一でもよいし、異なっていてもよい。また、吸収体コアを多層とする場合、最も上方(肌面側)に配置される層は、幅方向中央部に、厚さ方向に貫通する開口を有していることが好ましい。前記開口の幅は、この開口が存在する層の幅方向の長さを100%とした時、1%以上が好ましく、より好ましくは2%以上であり、30%以下が好ましく、より好ましくは20%以下である。前記開口の長さは、この開口が存在する層の長手方向の長さを100%とした時、30%以上が好ましく、より好ましくは40%であり、80%以下が好ましく、より好ましくは70%以下である。
【0032】
前記吸収体コアの態様としては、上層吸収体コアと下層吸収体コアとからなる2層構造が好ましい。また、この場合、前記上層吸収体コアは、幅方向略中央部に、厚さ方向に貫通する開口を有していることが好ましい。上層吸収体コアが開口を有することで、この開口を通して、体液が下層吸収体コアへとまんべんなく拡散する。よって、吸収性物品の吸収性能が向上し、また、抗菌機能および消臭機能がより活発化する。
【0033】
(コアラップシート)
前記コアラップシートは、少なくとも前記吸収体コアの肌面側平面の一部を被覆し、前記吸収体コアの肌面側平面を被覆するコアラップシートには消臭剤が付与されている。前記吸収体コアの肌面側に配置されたコアラップシートに消臭剤を付与することで、吸収体コアから発生し、トップシート側へ向かう不快臭を効果的に抑制できる。
【0034】
前記コアラップシートとしては、透液性のシート材料、例えば、親水性繊維により形成された不織布、ティッシュペーパーが使用できる。これらの中でも、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ポリアクリルアミド等の紙力増強剤を多く含むティッシュペーパーが好ましい。コアラップシートとして利用される不織布は、例えば、ポイントボンド不織布やエアスルー不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布であり、これらの不織布を形成する親水性繊維としては通常、セルロース、レーヨン、コットン等が用いられる。
【0035】
前記コアラップシートは、前記吸収体コアの肌面側平面の少なくとも一部を被覆する。前記コアラップシートは、前記吸収体コアの肌面側平面の50面積%以上を被覆していることが好ましく、より好ましくは70面積%以上、さらに好ましくは90面積%以上である。前記コアラップシートが、前記吸収体コアの肌面側平面の全面を被覆していることも好ましい。なお、吸収体コアが多層の場合、各層の平面の合計から重複面積を除したものを吸収体コアの肌面側面積とする。例えば、吸収体コアが上層吸収体コアと下層吸収体コアとの2層構造である場合、上層吸収体コアの肌面側平面の面積(S1)と下層吸収体コアの肌面側平面の面積(S2)との合計から、上層吸収体コアと下層吸収体コアが重なっている部分の面積(S3)を除した値(S1+S2-S3)を吸収体コアの肌面側面積となる。
【0036】
前記コアラップシートは、前記吸収体コアの側面および外面側平面を被覆していてもよい。前記コアラップシートが、前記吸収体コアの肌面側平面および外面側平面の全面を被覆していることが好ましい。
【0037】
前記コアラップシートに付与される消臭剤としては、ポリフェノール化合物;β-シクロデキストリン等の環状オリゴ糖;1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ドデカンジオール等の1,2-アルカンジオール;トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール等のポリヒドロキシアミン化合物;モノアリルアミン、N-メチルアリルアミン、N-エチルアリルアミン、N,N-ジメチルアリルアミン等のアリルアミン重合体の架橋物;グリシン、サルコシン、アラニン、フェニルアラニン、グルタミン酸、リジン、オルニチン、スレオニン等のアミノ酸またはその金属塩;サリチル酸ヒドラジド、イソフタル酸ヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジン誘導体などが挙げられる。これらの中でも、皮膚への安全性の観点から、ポリフェノール化合物、アミノ酸、またはそれらの金属塩が好ましく、酸化亜鉛との併用がより好ましい。
【0038】
前記ポリフェノール化合物としては、タンニン、タンニン酸、五倍子、没食子、没食子酸、カテキン等のフラボノイドなどが挙げられ、ポリフェノール化合物の重合物が好ましく、縮合型タンニンがより好ましい。前記ポリフェノール化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。縮合型タンニンは、柿の実(柿渋)、未熟バナナ、ブドウの果皮や種子、栗皮、紅茶、イナゴマメやタマリンドやタラ等の豆類の種皮やサヤ、オークやケプラチョやミモザ等の樹皮や木質部等に含まれ、圧搾したり、溶媒(例えば、熱水やアルコール)で抽出することにより、濃縮物として得ることができる。
【0039】
縮合型タンニンとしては、柿渋由来のもの(柿の搾汁液に含まれる縮合型タンニン)を用いることが好ましい。柿渋由来の縮合型タンニンであるカキタンニンは、複数のヒドロキシ基が結合したフラバン骨格が12~30個程度繋がった構造を有し、特に高い消臭効果を示す。柿渋は、例えば、未成熟の渋柿の実を圧搾して得られた搾汁液を発酵させることにより得ることができ、これをそのまま用いてもよく、必要に応じて適宜濃縮、希釈、ろ過、抽出、乾燥等の処理を施してもよい。柿渋は市販品を用いてもよい。
【0040】
前記ポリフェノール化合物は、一部のフェノール性ヒドロキシ基の水素原子が金属原子に置換されていることが好ましい。このように水素原子の一部を金属原子に置換することで、臭気の原因分子(臭気分子)を補足する性能がより向上する。前記金属原子としては、アルカリ金属原子が好ましく、ナトリウム、カリウムがより好ましい。
【0041】
前記吸収体コアの肌面側平面を被覆するコアラップシートは、消臭剤が付与されている消臭剤高目付領域と、消臭剤が付与されていない消臭剤低目付領域とを有している。コアラップシートが消臭剤低目付領域を有することで、トップシートを透過して吸収体コアに吸収される体液が、消臭剤低目付領域を優先的に透過するようになる。これにより、トップシートを透過した体液に含まれる抗菌剤と、コアラップシートに付与された消臭剤とが混ざり合うことが抑制され、それぞれが有する抗菌性能および消臭性能の低下を抑制できる。前記消臭剤高目付領域は、積極的に消臭剤が付与された領域である。前記消臭剤低目付領域は、消臭剤を付与していない部分、消臭剤を付与していない部分に消臭剤高目付領域に付与された消臭剤が毛細管現象によって移行している部分、または、少量の消臭剤を付与した部分である。また、前記消臭剤高目付領域の消臭剤は、前記消臭剤低目付領域の消臭剤と同一の化合物を有していることが好ましい。
【0042】
前記吸収体コアの肌面側平面を被覆するコアラップシートの面積において、消臭剤低目付領域の面積率は、40面積%以上が好ましく、より好ましくは50面積%以上、さらに好ましくは60面積%以上であり、90面積%以下が好ましく、より好ましくは85面積%以下、さらに好ましくは80面積%以下である。消臭剤低目付領域の面積率が40面積%以上であれば体液中に放出された抗菌剤と消臭剤との接触を低減することができ、90面積%以下であれば相対的に消臭剤高目付領域の面積率が高くなり、臭気の捕捉性が向上する。
【0043】
前記吸収体コアの肌面側平面を被覆するコアラップシートにおいて、消臭剤が積極的に付与された消臭剤高目付領域の配置態様は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜調節すればよい。消臭剤高目付領域の配置態様としては、筋状、ドット状、格子状等が挙げられる。
【0044】
前記消臭剤高目付領域は、吸収性物品の長手方向に連続的であり、吸収性物品の幅方向に断続的に配置することが好ましい。この場合、各消臭剤高目付領域の間に、消臭剤低目付領域が形成される。この態様において、各消臭剤高目付領域の幅は、1mm以上が好ましく、より好ましくは3mm以上であり、30mm以下が好ましく、より好ましくは20mm以下である。また、各消臭剤低目付領域の幅(すなわち、隣接する消臭剤高目付領域の間隔)は、0.5mm以上が好ましく、より好ましくは1mm以上であり、10mm以下が好ましく、より好ましくは5mm以下である。
【0045】
前記コアラップシートの消臭剤高目付領域における消臭剤の付与量は、0.1g/m2以上が好ましく、より好ましくは0.2g/m2以上、さらに好ましくは0.3g/m2以上であり、2.4g/m2以下が好ましく、より好ましくは2.0g/m2以下、さらに好ましくは1.6g/m2以下である。消臭剤の付与量が0.1g/m2以上であれば吸収体コアの臭気を消臭でき、2.4g/m2以下であれば消臭剤によるコアラップシートの強度低下を抑制できる。
【0046】
前記コアラップシートの消臭剤低目付領域における消臭剤の付与量は、1.2g/m2以下が好ましく、より好ましくは1.0g/m2以下、さらに好ましくは0.8g/m2以下である。消臭剤の付与量が1.2g/m2以下であれば、消臭剤低目付領域における体液の通過阻害を抑制できる。前記消臭剤低目付領域は、消臭剤が付与されていなくてもよい。前記消臭剤低目付領域に消臭剤が付与されている場合、付与量は0.02g/m2以上が好ましく、より好ましくは0.2g/m2以上、さらに好ましくは0.4g/m2以上である。消臭剤の付与量が0.02g/m2以上であれば消臭剤低目付領域を介した臭気の通過を軽減できる。
【0047】
前記吸収体コアの肌面側平面を被覆するコアラップシートにおいて、前記消臭剤は、前記コアラップシートの肌面側に付与されていることが好ましい。消臭剤をコアラップシートの肌面側に付与することで、消臭剤が吸収性コアに移行しにくくなる。そのため、消臭剤が吸収性コアに取り込まれて、消臭性能が低下することを抑制できる。
【0048】
前記消臭剤高目付領域を形成する方法としては、粉末状の消臭剤を散布する方法、コアラップシートに消臭剤含有液を接触させた後、溶媒を除去する方法などが挙げられる。前記コアラップシートに消臭剤含有液を接触させる方法としては、コアラップシートに消臭剤含有液を散布する方法、コアラップシートに消臭剤含有液を塗布する方法などが挙げられる。前記消臭剤含有液を塗布する方法としては、コーター塗工、フレキソ塗工、グラビア塗工が好ましい。コーター塗工やフレキソ塗工を採用すれば、消臭剤含有液を所望とする位置に的確に塗工することができる。そのため、消臭剤高目付領域を所望とする形状に成形しやすくなる。
【0049】
前記消臭剤低目付領域を形成する方法としては、コアラップシートに広範囲に消臭剤含有液を接触させた後、さらに消臭剤含有液を間欠的に接触させ、重複しない領域を消臭剤低目付領域として形成する方法、消臭剤含有液の塗布量を部分的に異ならせる方法、コアラップシートに消臭剤含有液を部分的に塗布し、一部を毛細管現象により拡散させる方法などが挙げられる。なお、前記消臭剤低目付領域の消臭剤は、前記消臭剤高目付領域の消臭剤の成分の一部と同一の化合物を有していることが好ましい。
【0050】
前記消臭剤含有液の溶媒としては、水、水と親水性有機溶剤との混合溶液などを用いることができる。前記親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等が挙げられる。また、前記消臭剤含有液には、前記増粘剤を含むことができ、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはポリエチレングリコールが好ましい。
【0051】
前記消臭剤含有液中の消臭剤濃度は、特に限定されず、適宜調節すればよい。前記消臭剤としてポリフェノール化合物を用いる場合、ポリフェノール化合物含有液中のポリフェノール化合物濃度は、0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは5.0質量%以上であり、30質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下である。
【0052】
前記ポリフェノール化合物含有液は、塩基性金属化合物を含有することが好ましい。前記塩基性金属化合物は、水溶液のpHが7超となる化合物である。塩基性金属化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記塩基性金属化合物としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物が挙げられる。
【0053】
コアラップシートは、消臭剤を付与した後、吸収体コアを被覆してもよいし、消臭剤を付与していないコアラップシートで吸収体コアを被覆した後、消臭剤を付与してもよい。
【0054】
前記コアラップシートの態様としては、吸収体コアの肌面側平面の一部を被覆する態様、吸収体コアの肌面側平面の全面を被覆する態様、吸収体コアの肌面側平面と側面を被覆する態様、吸収体コアの肌面側平面の全面と側面と外面側平面の一部を被覆する態様、吸収体コアの肌面側平面の全面と側面と外面側平面の全面を被覆する態様が挙げられる。前記吸収体コアの外面側平面を被覆するコアラップシートにも消臭剤を付与してもよく、前記吸収体コアの肌面側を被覆するコアラップシートの消臭剤と同じ化合物からなる消臭剤が好ましい。
【0055】
(接着剤)
前記トップシートと前記コアラップシートとは、接着剤で接合されていることが好ましい。前記接着剤としては、ホットメルト接着剤が挙げられ、合成ゴム系ホットメルト接着剤が好ましい。前記トップシートと前記コアラップシートとを接着剤で接合する場合、接着剤の少なくとも一部を前記消臭剤高目付領域上に配置することが好ましい。接着剤は体液を透過しにくいため、体液は接着剤が配置されていない部分を通過しやすい。そのため、消臭剤高目付領域上に接着剤を配置することで、トップシートを透過した体液に含まれる抗菌剤と、コアラップシートに付与された消臭剤とが混ざり合うことがより抑制される。
【0056】
接着剤の配置態様としては、筋状、ドット状、格子状、オメガ状、ウェーブ状、スパイラル状等が挙げられ、スパイラル状が好ましい。前記接着剤を筋状、ドット状、格子状に配置する場合、接着剤が配置されている部分を接着剤配置領域とする。前記接着剤を複数列のスパイラル状に配置する場合、各スパイラル状塗布部の幅方向全域を接着剤配置領域とし、隣接する各スパイラル状塗布部の間を接着剤が塗布されていない領域とする。接着剤を長手方向に連続的な筋状またはスパイラル状に配置する場合、隣接する各筋状または各スパイラル状塗布部の間隔は、3mm~15mmが好ましい。
【0057】
前記消臭剤高目付領域の面積において、接着剤配置領域の面積の割合は、30面積%以上が好ましく、より好ましくは40面積%以上、さらに好ましくは50面積%以上であり、90面積%以下が好ましく、より好ましくは80面積%以下、さらに好ましくは70面積%以下である。
【0058】
(サイドシート)
前記トップシートの肌面側の幅方向両側部には、立ち上がり可能に構成されたサイドシートが配置されていることが好ましい。前記サイドシートは、立ち上がり基部を基点に内側縁が立ち上がり可能に構成されている。そして、着用時には、サイドシートの内側縁が着用者の肌に向かって立ち上がることで、横漏れが防止される。前記サイドシートは、不透液性のプラスチックフィルムや、撥水性不織布等から構成される。前記サイドシートは、幅方向内方端に起立用弾性部材が設けられており、この起立用弾性部材の収縮力によって立ち上がるように構成されている。また、前記サイドシートは、前記立ち上がり基部において、トップシートと接合されている。サイドシートとトップシートとの接合方法は特に限定されず、接着剤、融着などが挙げられる。
【0059】
吸収性物品がサイドシートを有する場合、前記トップシートは、前記サイドシートの立ち上がり基部との接合部よりも幅方向中央側にのみ抗菌剤が付与されていることが好ましい。
【0060】
(具体例)
本発明の吸収性物品としては、例えば、使い捨ておむつ(テープ型、パンツ型、パッド型等)、失禁パッド、生理用ナプキン等の人体から排出される体液を吸収するために用いられる吸収性物品が挙げられる。また、ペットに用いられる使い捨ておむつや、シートタイプの吸収性物品が挙げられる。
【0061】
前記吸収性物品が、失禁パッド、生理用ナプキンまたは使い捨て補助パッドである場合、例えば、透液性のトップシートと不透液性のバックシートとの間に、吸収体が配置される。失禁パッド、生理用ナプキンまたは使い捨て補助パッドの形状としては、砂時計型、ひょうたん型などが挙げられる。また、必要に応じて、前記透液性のトップシートの幅方向両側に不透液性のサイドシートが設けられていてもよい。サイドシートは、トップシートの幅方向両側の上面に接合され、接合点より幅方向内方のサイドシートは、吸収体の両側縁に沿って一対の立ち上がりフラップを形成する。
【0062】
前記吸収性物品が使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつとしては、例えば、後背部または前腹部の左右に一対の止着部材が設けられ、当該止着部材により着用時にパンツ型に形成するテープ型使い捨ておむつ;前腹部と後背部とが接合されることによりウエスト開口部と一対の脚開口部とが形成されたパンツ型使い捨ておむつ;などが挙げられる。
【0063】
吸収性物品が、使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつは、例えば、トップシートとバックシートとの間に、吸収体が配置された積層体からなり、この積層体が前腹部と後背部とこれらの間に位置する股部とを有していてもよい。
【0064】
前記使い捨ておむつには、両側縁部に沿って、立ち上がりフラップが設けられていることが好ましい。立ち上がりフラップを設けることにより、体液の横漏れを防ぐことができる。立ち上がりフラップは、トップシートの幅方向両側に設けられたサイドシートの内方端が立ち上げられて、形成されてもよい。前記立ち上がりフラップおよびサイドシートは、撥水性であることが好ましい。
【実施例
【0065】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0066】
(実施態様)
前記吸収性物品の実施態様の例を、失禁パッドを例に挙げ、図1~8を参照して説明する。図1は、実施態様1の失禁パッドの平面図である。図2は、図1の失禁パッドのV-V断面図である。図3は、図1の失禁パッドの消臭剤の配置態様を示す平面図である。図4は、図1の失禁パッドの接着剤の配置態様を示す平面図である。図5は、実施態様2の失禁パッドの平面図である。図6は、図5の失禁パッドのV-V断面図である。図7は、図5の失禁パッドの消臭剤の配置態様を示す平面図である。図8は、図5の失禁パッドの接着剤の配置態様を示す平面図である。なお、図では、矢印Bが幅方向を、矢印Aが長手方向を示す。矢印A,Bにより形成される面上の方向が、平面方向である。図3および7では、コアラップシート42と消臭剤10のみを図示している。図4および8では、コアラップシート42、消臭剤10、接着剤11およびトップシート2のみを図示している。
【0067】
実施態様1
図1~4に示した実施態様1の失禁パッド(吸収性物品)1は、透液性のトップシート2と、液不透過性のバックシート3と、これらの間に配置された吸収体4を有している。前記バックシート3は、不織布と透湿性プラスチックの積層体である。前記吸収体4は、吸収体コア41とコアラップシート42から構成されている。前記吸収体コア41は、吸水性樹脂粉末(図示しない)と吸水性繊維(図示しない)とから構成されている。前記コアラップシート42は、吸収体コア41の肌面側平面の一部、外面側平面の一部および側面をすべて被覆している。
【0068】
トップシート2の幅方向Bの両側縁には、失禁パッド1の長手方向Aに延在するサイドシート5が配置されている。サイドシート5は、液不透過性のプラスチックフィルムや撥水性不織布等により構成される。サイドシート5には、失禁パッド1の幅方向内方端に起立用弾性部材6が設けられている。前記サイドシート5は、立ち上がり基部において接着剤8により前記トップシート2と接合されている。つまり、接着剤8が配置された部分がトップシート2とサイドシート5との接合部である。失禁パッド1の使用時には、起立用弾性部材6の収縮力によりサイドシート5の内方端が着用者の肌に向かって立ち上がり、これにより尿等の排泄物の横漏れが防止される。
【0069】
前記トップシート2には、抗菌剤9として有機酸が付与されている。前記抗菌剤9は、前記トップシート2の肌面側に付与されている。また、前記抗菌剤9は、前記トップシート2の前記サイドシート5の立ち上がり基部との接合部よりも幅方向中央側にのみ付与されている。
【0070】
前記コアラップシート42は、吸収体コア41の肌面側を被覆する部分に、消臭剤10として柿渋由来の縮合型タンニンを含む消臭剤が付与されている。前記消臭剤10は、コアラップシート42の肌面側に付与されている。図3に示すように、消臭剤10は、失禁パッド1の長手方向に連続的であり、失禁パッド1の幅方向に断続的に配置されている。前記消臭剤10は、コーター塗装によってシートに塗布されており、消臭剤高目付領域の面積率が60面積%~80面積%である。図3において、網掛け部分が消臭剤高目付領域であり、それ以外の部分が消臭剤低目付領域である。なお、図3では、抗菌剤10は、10本の筋状に配置されているが、筋の本数や幅はこれに限定されず、適宜調節すればよい。また、図3では、抗菌剤10は、コアラップシート42の吸収体コア41の肌面側を被覆する部分にのみ付与されているが、吸収体コア41の側面や外面側平面を被覆する部分にも付与してもよい。
【0071】
前記トップシート2と前記コアラップシート42とは、接着剤11で接合されている。図4に示すように、前記接着剤11は、失禁パッド1の長手方向に連続的であり、失禁パッド1の幅方向に断続的に配置されている。図4において、斜線部分が接着剤配置領域である。図4に示すように、接着剤配置領域は、前記消臭剤高目付領域に重なるように配置されている。図4では、消臭剤高目付領域の面積において、接着剤配置領域の面積の割合が100面積%となっている。なお、消臭剤高目付領域の面積における接着剤配置領域の面積の割合は適宜調節すればよい。
【0072】
実施態様2
図5~8に示した実施態様2の失禁パッド(吸収性物品)1は、透液性のトップシート2と、液不透過性のバックシート3と、これらの間に配置された吸収体4を有している。前記バックシート3は、不織布と透湿性プラスチックの積層体である。前記トップシート2は、使用者の肌に接する肌当接シート21と、前記肌当接シートの外面側に積層されたセカンドシート22とから構成されている。
【0073】
前記吸収体4は、吸収体コア41とコアラップシート42から構成されている。前記吸収体コア41は、吸水性樹脂粉末(図示しない)と吸水性繊維(図示しない)とから構成されている。前記吸収体コア41は、上層吸収体コア43と下層吸収体コア44の2層構造となっている。前記上層吸収体コア43は、幅方向略中央部に開口43aが形成されている。前記コアラップシート42は、吸収体コア41の肌面側平面、外面側平面および側面をすべて被覆している。つまり、上層吸収体コア43と下層吸収体コア44の両方が、コアラップシート42で包まれている。
【0074】
トップシート2の幅方向Bの両側縁には、失禁パッド1の長手方向Aに延在するサイドシート5が配置されている。サイドシート5は、液不透過性のプラスチックフィルムや撥水性不織布等により構成される。サイドシート5には、失禁パッド1の幅方向内方端に起立用弾性部材6が設けられている。前記サイドシート5は、立ち上がり基部において接着剤8により前記トップシート2(肌当接シート21)と接合されている。つまり、接着剤8が配置された部分がトップシート2とサイドシート5との接合部である。
【0075】
前記セカンドシート22の肌面側には、抗菌剤9として有機酸が付与されている。この抗菌剤9は、前記トップシート2(肌当接シート21)の前記サイドシート5の立ち上がり基部との接合部よりも幅方向中央側にのみ付与されている。なお、図6では、抗菌剤9がセカンドシート22にのみ付与されているが、抗菌剤9は肌当接シート21にのみ付与してもよいし、肌当接シート21とセカンドシート22の両方に付与してもよい。
【0076】
前記コアラップシート42は、吸収体コア41の肌面側を被覆する部分に、消臭剤10として柿渋由来の縮合型タンニンを含む消臭剤が付与されている。なお、消臭剤10は、コアラップシート42の肌面側に付与されている。図7に示すように、消臭剤10は、失禁パッド1の長手方向に連続的であり、失禁パッド1の幅方向に断続的に配置されている。前記消臭剤10は、コーター塗装によってシートに塗布されており、消臭剤高目付領域の面積率が60面積%~80面積%である。図7において、網掛け部分が消臭剤高目付領域であり、それ以外の部分が消臭剤低目付領域である。なお、図7では、抗菌剤10は、14本の筋状に配置されているが、筋の本数や幅はこれに限定されず、適宜調節すればよい。また、図7では、抗菌剤10は、コアラップシート42の吸収体コア41の肌面側を被覆する部分にのみ付与されているが、吸収体コア41の側面や外面側平面を被覆する部分にも付与してもよい。
【0077】
前記トップシート2(セカンドシート22)と前記コアラップシート42とは、接着剤11で接合されている。図8に示すように、前記接着剤11は、失禁パッド1の長手方向に連続的であり、失禁パッド1の幅方向に断続的に配置されている。図8において、斜線部分が接着剤配置領域である。図8に示すように、接着剤配置領域は、前記消臭剤高目付領域の一部に重なるように配置されている。図8では、消臭剤高目付領域の面積において、接着剤配置領域の面積の割合が71面積%となっている。なお、消臭剤高目付領域の面積における接着剤配置領域の面積の割合は適宜調節すればよい。
【0078】
実施提要3
好ましい実施例として、非肌面側から、不織布と透湿性プラスチックの積層体のバックシート3と、吸収体コアの外面側平面の一部を被覆するコアラップシート42と、前記吸収性樹脂粉末および前記吸水性繊維が混在する前記吸収体コア41と、前記柿渋由来の縮合型タンニンを含む消臭剤がコーター塗工により全体の60~80%の面積で長手方向に連続、かつ、幅方向に間欠的に塗布された吸収体コアの肌面側平面の一部を被覆するコアラップシート42と、前記有機酸を含む抗菌剤が散布されたトップシートとを、この順に積層された使い捨ておむつが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の吸収体は、例えば、人体から排出される体液を吸収するために用いられる吸収性物品に好適に使用でき、特に失禁パッド、使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの吸収性物品として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0080】
1:吸収性物品、2:トップシート、21:肌当接シート、22:セカンドシート、3:バックシート、4:吸収体、41:吸収体コア、42:コアラップシート、5:セカンドシート、6:起立用弾性部材、8:接着剤、9:抗菌剤、10;消臭剤、11:接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8