(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】力検出器及び力検出システム
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G01L5/00 101Z
(21)【出願番号】P 2020214413
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2022-02-18
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】濃野 友人
【合議体】
【審判長】山村 浩
【審判官】濱本 禎広
【審判官】藤田 年彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/045837(WO,A1)
【文献】特開2011-85435(JP,A)
【文献】特開2019-138741(JP,A)
【文献】特開2008-128940(JP,A)
【文献】特開2011-169749(JP,A)
【文献】特開2007-10383(JP,A)
【文献】特開2007-218906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00-5/28
G01B 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の力が作用する検出面を有する第1層、及び前記第1層の前記検出面とは反対側の面に設けられると共に前記第1層とヤング率が異なる材料で形成された第2層を有する層構造体と、
前記層構造体の内部に形成されると共に、前記検出面の接線方向に作用する前記力を受けて自らの周囲に前記検出面の法線方向から見て非対称な分布の応力を発生させる応力発生部と、
前記応力発生部の周囲に分散配置された複数のセンサと
を備え、
前記第1層は、前記第2層よりもヤング率が相対的に小さく、
前記応力発生部として、前記第2層側から前記第1層側に向けて突出された突部
と、
前記第1層の内部に形成された空隙部と、を備え、
前記センサは、前記第1層の内部に埋設配置されている、
力検出器。
【請求項2】
前記第1層の前記検出面に積層されると共に前記第1層よりもヤング率が大きな材料によって形成された力分散層を備える
請求項1記載の力検出器。
【請求項3】
前記応力発生部として、前記力分散層から前記第1層に向けて突出された力分散層突部を備える
請求項2記載の力検出器。
【請求項4】
請求項1~3いずれか一項に記載の力検出器と、
前記力検出器の出力と予め求められた校正値とに基づいて前記力検出器に作用した力の値を求める演算処理を行う演算装置と
を備える力検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力検出器及び力検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、触覚センサ等の外部から作用する力を検出する力検出器が用いられている。例えば、特許文献1には、感圧導電部材と、感圧導電部材を加圧する圧力伝達部材と、圧力伝達部材を被覆する弾性被覆層と備える触覚センサが開示されている。このような特許文献1に開示された触覚センサでは、弾性被覆層の表面に作用した力によって弾性被覆層に覆われた圧力伝達部材が傾き、この傾きによって変化する感圧導電部材への押圧力を検出することで、外部から作用する力を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の触覚センサは、圧力伝達部材の傾きによって感圧導電部材を押圧することで力を検出する構造であるため、圧力伝達部材の感度を高めるには、弾性被覆層と圧力伝達部材との硬さの差を極めて大きくする必要がある。しかしながら、このような触覚センサを長期に亘って使用すると、弾性被覆層と圧力伝達部材との界面が剥離する可能性があり、検出精度の低下を招く可能性がある。また、圧力伝達部材のヤング率が大きいため、触覚センサの全体を湾曲させることが難しく、曲面や形状が変化する面に触覚センサを配置することが困難となる。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ヤング率が極めて大きな圧力伝達部材を内部に備える必要がなく、信頼性が高くかつより湾曲が容易な力検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による力検出器は、検出対象の力が作用する検出面を有する第1層、及び上記第1層の上記検出面とは反対側の面に設けられると共に上記第1層とヤング率が異なる材料で形成された第2層を有する層構造体と、上記層構造体の内部に形成されると共に、上記検出面の接線方向に作用する上記力を受けて自らの周囲に上記検出面の法線方向から見て非対称な分布の応力を発生させる応力発生部と、上記応力発生部の周囲に分散配置された複数のセンサとを備えるという構成を採用する。
【0007】
本発明の一態様による力検出器は、上記センサが、上記第1層と上記第2層とのうちヤング率が相対的に小さい側の内部に埋設配置されているという構成を採用する。
【0008】
本発明の一態様による力検出器は、上記応力発生部として、上記第1層と上記第2層とのうちヤング率が相対的に大きい側からヤング率が相対的に小さい側に向けて突出された突部を備えるという構成を採用する。
【0009】
本発明の一態様による力検出器は、上記応力発生部として、上記第1層と上記第2層とのうちヤング率が相対的に小さい側の内部に形成された空隙部を備えるという構成を採用する。
【0010】
本発明の一態様による力検出器は、上記第1層の上記検出面に積層されると共に上記第1層よりもヤング率が大きな材料によって形成された力分散層を備えるという構成を採用する。
【0011】
本発明の一態様による力検出器は、上記応力発生部として、上記力分散層から上記第1層に向けて突出された力分散層突部を備えるという構成を採用する。
【0012】
本発明の一態様による力検出システムは、上記第1~第6いずれかの発明である力検出器と、上記力検出器の出力と予め求められた校正値とに基づいて上記力検出器に作用した力の値を求める演算処理を行う演算装置を備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1層と第2層とを有する層構造体の内部に、第1層の検出面の接線方向に作用する力を受けて自らの周囲に検出面の法線方向から見て非対称な分布の応力を発生させる応力発生部を備えている。第1層と第2層とのヤング率の差が小さい場合であっても、このような応力発生部によって非対称な分布の応力を発生させることができる。非対称な応力分布をセンサで検出することで、検出面に作用する力を求めることができる。このため、本発明によれば、ヤング率が極めて大きな圧力伝達部材を内部に備える必要がなく、信頼性が高くかつより湾曲が容易なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態における力検出器の概略構成を検出面の法線方向から見た模式図である。
【
図3】本発明の第1実施形態における力検出器の概略構成を模式的に示す分解図である。
【
図4】検出層の検出面に対して検出面の接線方向に力を作用させた場合における検出層のY方向における垂直ひずみ分布を示すシミュレーション結果を示す図であり、(a)が+X方向に力を作用させた場合を示す図であり、(b)が-X方向に力Fを作用させた場合を示す図である。
【
図5】ヤング率比と、センサ出力との関係を示すグラフである。
【
図6】本発明の第2実施形態における力検出器の概略構成を模式的に示す断面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態における力検出器の概略構成を模式的に示す分解図である。
【
図8】本発明の第3実施形態における力検出器の概略構成を模式的に示す断面図である。
【
図9】本発明の第3実施形態における力検出器の概略構成を模式的に示す分解図である。
【
図10】本発明の第4実施形態における力検出器の概略構成を模式的に示す断面図である。
【
図11】本発明の第4実施形態における力検出器の概略構成を模式的に示す分解図である。
【
図12】本発明の第5実施形態における力検出器の概略構成を模式的に示す断面図である。
【
図13】本発明の第5実施形態における力検出器の概略構成を模式的に示す分解図である。
【
図14】本発明の第6実施形態における力検出システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図15】本発明の第6実施形態における力検出システムにおける校正方法を説明するための二次元モデルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る力検出器及び力検出システムの一実施形態について説明する。以下では、まず本発明の実施形態の概要について説明し、続いて本発明の実施形態の詳細について説明する。
〔概要〕
【0016】
本発明の実施形態は、ヤング率が極めて大きな圧力伝達部材を内部に備える必要がなく、信頼性が高くかつより湾曲が容易な力検出器を実現するものである。つまり、本発明の実施形態は、全体的に柔らかく、使用される対象(例えば、ロボットのハンド)の形状に応じた適切な形状にすることができる信頼性の高い力検出器を実現するものである。
【0017】
上述した特許文献1に開示された触覚センサは、圧力伝達部材の傾きによって感圧導電部材を押圧することで力を検出する構造であるため、圧力伝達部材の感度を高めるには、弾性被覆層と圧力伝達部材との硬さの差を極めて大きくする必要がある。例えば、弾性被覆層のヤング率が0.6MPaであるのに対して、圧力伝達部材のヤング率が100MPa以上とされており、100倍以上の違いがある。このように、弾性被覆層と圧力伝達部材との硬さの差が極めて大きい場合には、長期に亘る使用により、弾性被覆層と圧力伝達部材との界面が剥離する可能性があり、検出精度の低下を招く可能性がある。また、圧力伝達部材のヤング率が大きいため、触覚センサの全体を湾曲させることが難しく、曲面や形状が変化する面に触覚センサを配置することが困難となる。
【0018】
本発明の実施形態では、検出対象の力が作用する検出面を有する第1層と、第1層の検出面と反対側の面に設けられると共に第1層とヤング率が異なる材料で形成された第2層とを有する層構造体を備える。また、層構造体の内部に応力発生部(検出面の接線方向に作用する力を受けて自らの周囲に検出面の法線方向から見て非対称な分布の応力を発生させる部位)が形成されており、応力発生部の周囲に複数のセンサが分散配置されている。これにより、ヤング率が極めて大きな圧力伝達部材を内部に備える必要がなく、信頼性が高くかつより湾曲が容易な力検出器を実現することができる。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本第1実施形態における力検出器1の概略構成を検出面の法線方向から見た模式図である。また、
図2は、
図1のA-A断面図である。また、
図3は、本実施形態の力検出器の分解図である。なお、視認を容易とするため、
図1においては、後述する検出層2で被覆されたセンサ5及び配線6を実線で示している。また、
図2及び
図3においては、配線6を省略して図示している。
【0020】
本実施形態の力検出器1は、検出面Mに作用した外力を電気信号に変換して出力するセンサであり、例えば触覚センサとして用いられる。本実施形態の力検出器1は、検出層2(第1層)と、支持層3(第2層)と、応力発生部4と、センサ5と、配線6とを備えている。
【0021】
なお、以下の説明においては、説明の便宜上、
図1~
図3に示すように、検出層2と支持層3との積層方向をY方向とし、Y方向と直交する一方向をX方向とし、X方向及びY方向と直交する方向をZ方向とする。ただし、本実施形態の力検出器1の設置姿勢は重力方向に対して特に限定されるものではない。
【0022】
検出層2は、支持層3に積層されており、支持層3と反対側の表面が検出面Mとされた層である。本実施形態においては、検出層2は、支持層3よりもヤング率が小さい材料によって形成されている。例えば、検出層2は、支持層3の形成材料よりもヤング率が小さなシリコーン樹脂によって形成することができる。また、検出層2は、支持層3よりもヤング率が小さい材料で形成されていればよく、アクリル樹脂やウレタン樹脂によって形成することも可能である。
【0023】
検出面Mは、検出対象の力が作用する面であり、本実施形態においては平面である。検出面Mは、X-Z平面と平行な面である。なお、検出面Mが湾曲面であることも可能である。本実施形態においては、検出面Mに対して直接的に外部の物体が接触し、この物体から受ける力が検出対象の力となる。本実施形態の力検出器1は、検出面Mの接線方向(X-Z平面と平行な方向)に作用する力成分と、検出面Mの法線方向に沿って検出面Mを押圧する力成分のいずれも検出することが可能である。
【0024】
支持層3は、検出層2の検出面Mと反対側の面に固着されており、検出層2を支持する。上述のように、検出層2は、支持層3よりもヤング率が小さい材料によって形成されている。すなわち、支持層3は、検出層2よりもヤング率が大きい材料によって形成されている。例えば、支持層3は、検出層2の形成材料よりもヤング率が大きなシリコーン樹脂によって形成することができる。また、支持層3は、検出層2よりもヤング率が大きい材料で形成されていればよく、アクリル樹脂やウレタン樹脂によって形成することも可能である。
【0025】
本実施形態の力検出器1は、検出層2と支持層3とが積層された構造、すなわち検出層2及び支持層3を有する層構造体7である。応力発生部4は、このような層構造体7の内部に形成されている。応力発生部4は、検出面Mの接線方向に作用する力を受けて自らの周囲に検出面Mの法線方向から見て非対称な分布の応力を発生させる。本実施形態においては、支持層3が検出層2に向けて突出された突部3aを有しており、この突部3aが応力発生部4である。すなわち、本実施形態の力検出器1は、応力発生部4として、ヤング率が相対的に大きい側(支持層3側)からヤング率が相対的に小さい側(検出層2側)に向けて突出された突部3aを応力発生部4として備えている。
【0026】
図1に示すように、突部3aは、アレイ状に配置されて複数設けられている。本実施形態では、各々の突部3aは、同一の四角錐形状である。これらの突部3aは、例えば
図3に示すように支持層3の一部によって形成されているため、検出層2よりもヤング率が大きな材料によって形成されている。なお、本実施形態においては、複数の突部3aは、X方向及びZ方向において、等間隔で配列されている。ただし、複数の突部3aの配置間隔は変更が可能である。また、複数の突部3aは不等間隔で配列されていても良い。
【0027】
図4は、検出層2の検出面Mに対して検出面Mの接線方向に力Fを作用させた場合における検出層2のY方向における垂直ひずみ分布を示すシミュレーション結果を示す図であり、(a)が+X方向に力Fを作用させた場合を示し、(b)が-X方向に力Fを作用させた場合を示している。なお、
図4においては、色の濃さで圧縮ひずみと引張ひずみが示されており、色が濃い部位(黒い部位)が圧縮ひずみ部位であり、色が薄い部位(白い部位)が引張ひずみ部位である。
【0028】
図4(a)に示すように検出面Mに対して+X方向に力Fが作用すると、検出層2の全体が+X方向に移動しようとする。突部3aのヤング率が検出層2よりも大きいため、検出層2の各々の突部3aの-X方向の部位は、突部3aに押し当てられて圧縮する。これによって、突部3aの-X方向の部位に圧縮ひずみが生じる。一方で、検出層2の各々の突部3aの+X方向の部位は、力Fの作用方向に対して突部3aの裏側に位置し、変形が小さい突部3aによって引っ張られることになり引張ひずみが生じる。また、
図4(a)に示すように、突部3aの頂部よりも検出面Mに近い部位においては、突部3aの頂部よりも+X方向の部位で圧縮ひずみが大きくなり、突部3aの頂部よりも-X方向の部位で引張ひずみが大きくなっている。
【0029】
図4(b)に示すように検出面Mに対して-X方向に力Fが作用すると、検出層2の全体が-X方向に移動しようとする。検出層2の各々の突部3aの+X方向の部位は、突部3aに押し当てられて圧縮する。これによって、突部3aの+X方向の部位に圧縮ひずみが生じる。一方で、検出層2の各々の突部3aの-X方向の部位は、引張ひずみが大きくなる。また、
図4(b)に示すように、突部3aの頂部よりも検出面Mに近い部位においては、突部3aの頂部よりも-X方向の部位で圧縮ひずみが大きくなり、突部3aの頂部よりも+X方向の部位で引張ひずみが大きくなっている。
【0030】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、検出面Mの接線方向に力Fが作用すると、突部3aを挟んで力Fの上流側と下流側とでひずみの大きさが異なる。これは、突部3aが検出面Mの接線方向に作用する力Fを受けて自らの周囲に検出面Mの法線方向から見て非対称なひずみ分布を発生させていることを意味する。また、ひずみ分布は応力分布と対応付けられる。したがって、突部3aは、検出面Mの接線方向に作用する力Fを受けて自らの周囲に検出面Mの法線方向から見て非対称な分布の応力を発生させている。本実施形態では、このような突部3aが、
図2に示すように、層構造体7の内部に対して複数形成されている。
【0031】
図4(a)と
図4(b)とを比較すると、検出面Mの接線方向に作用する力Fの向きが反転した場合には、ひずみの分布(すなわち応力分布)も反転する。したがって、これらの応力分布を検出することによって、検出面Mの接線方向に作用する力Fの向きを得ることが可能となる。また、検出面Mを法線方向から押圧した場合には、突部3aのX方向及びZ方向における両側には、均等な大きさのひずみ(すなわち応力)が生じることとなる。したがって、突部3aの周囲における検出層2の応力部分を検出することによって、検出面Mに作用する力Fの方向を得ることが可能となる。
【0032】
このように本実施形態においては、四角錐形状の突部3aが設けられていることによって、検出面Mに作用する力Fの方向に応じて突部3aの周囲に加わる応力の大きさや方向が変化する。なお、突部3aの形状は、四角錐形状に限定されるものではない。突部3aは、検出面Mに作用する力Fの方向に応じて突部3aの周囲に加わる応力の大きさや方向が変化する形状であれば良く、例えば多角柱形状、円柱形状、半球形状、円錐形状、四角以外の多角錐形状等であっても良い。また、本実施形態では全ての突部3aが同一形状であるが、異なる形状の突部3aが含まれていても良い。
【0033】
センサ5は、
図2及び
図3に示すように、検出層2の内部に埋設配置されている。このセンサ5としては、ひずみを検出するひずみセンサを用いることができる。また、検出層2には、応力分布に応じた圧力分布も生じている。このため、センサ5として圧力を検出する圧力センサを用いることも可能である。
【0034】
センサ5は、1つの突部3aに対して4つ設けられている。
図1に示すように、突部3aの頂部を囲むように、4つのセンサ5が設けられている。なお、説明の便宜上、必要に応じて、
図1に示すように、頂部に対して+X方向に変位した位置のセンサ5をセンサ5aとし、頂部に対して-X方向に変位した位置のセンサ5をセンサ5bとし、頂部に対して+Z方向に変位した位置のセンサ5をセンサ5cとし、及び頂部に対して-Z方向に変位した位置のセンサ5をセンサ5dとする。各々のセンサ5は、
図2に示すように、突部3aの頂部よりも検出面M側に配置されている。
【0035】
これらのセンサ5は、検出層2に生じた応力(すなわちひずみあるいは圧力)に応じた強度の信号を出力する。1つの突部3aに対して設けられた4つのセンサ5の出力信号が示す値(以下、検出値と称する)に基づいて、この突部3aの-Y方向に位置において検出面Mに、どのような力Fが作用しているかを算出することができる。なお、本実施形態においてセンサ5は、圧縮ひずみで負の出力となり、引張ひずみで正の出力になる方式のものであるとする。このようなセンサ5としては、例えばピエゾ抵抗式ひずみゲージを用いることが可能である。ただし、圧縮ひずみで正の出力となり、引張ひずみで負の出力になる方式のセンサを用いることも可能である。
【0036】
例えば、力FがX方向にのみ作用しており、センサ5bの検出値が負(圧縮ひずみ)で、センサ5aの検出値が正(引張ひずみ)である場合には、
図4(a)に示すように、検出面Mに対して+X方向に力Fが作用していることが分かる。また、センサ5bの検出値とセンサ5aの検出値との差から、+X方向に作用する力Fの大きさを算出することができる。
【0037】
また、力FがX方向にのみ作用しており、センサ5aの検出値が正(引張ひずみ)で、センサ5bの検出値が負(圧縮ひずみ)である場合には、
図4(b)に示すように、検出面Mに対して-X方向に力Fが作用していることが分かる。また、センサ5aの検出値とセンサ5bの検出値との差から、-X方向に作用する力Fの大きさを算出することができる。
【0038】
また、力FがZ方向にのみ作用しており、センサ5dの検出値が負(圧縮ひずみ)で、センサ5cの検出値が正(引張ひずみ)である場合には、検出面Mに対して+Z方向に力Fが作用していることが分かる。また、センサ5dの検出値とセンサ5cの検出値との差から、+Z方向に作用する力Fの大きさを算出することができる。
【0039】
また、力FがZ方向にのみ作用しており、センサ5cの検出値が正(引張ひずみ)で、センサ5dの検出値が負(圧縮ひずみ)である場合には、検出面Mに対して-Z方向に力Fが作用していることが分かる。また、センサ5cの検出値とセンサ5dの検出値との差から、-Z方向に作用する力Fの大きさを算出することができる。
【0040】
また、4つのセンサ5から検出値が出力されると共に、これらの検出値が同一あるいは略同一の大きさである場合には、検出面Mに対して法線方向に押圧する力Fが作用していることが分かる。また、これらの検出値の大きさ(あるいは検出値の和)から、検出面Mに対して法線方向に押圧する力Fの大きさを算出することができる。
【0041】
このように、力検出器1の表面である検出面Mに力Fが加わると、層構造体7の内部にひずみや圧力が発生する。検出面Mの接線方向に力Fが加わる場合、突部3aは検出層2よりヤング率の大きい材料からなるため、突部3aの周囲の検出層2より変形が少ない。このため、突部3aの周囲のひずみや圧力は力Fの方向や大きさに応じて突部3aよりも大きく変化することとなる。これらの突部3aの周囲のひずみや圧力(すなわち応力)がセンサ5によって検出される。
【0042】
図4(a)及び
図4(b)に示したように、力Fを加える方向を反転することによって、ひずみの分布も反転する。このため、突部3aを挟んで配置される2つのセンサ5の出力差は力Fの方向と力Fの大きさの情報を含むことになる。一方で、検出面Mに均一な分布の垂直方向の力が加わると、突部3aを挟んで配置される2つのセンサ5には同じひずみが加わることとなる。したがって、これらの2つのセンサ5の出力の和が、力Fの大きさの情報を含むこととなる。これらのセンサ5の出力の差と和とによって力検出器1に加わる力Fの大きさ及び方向が算出可能である。
【0043】
図5は、突部3a(すなわち本実施形態においては支持層3)のヤング率を検出層2とのヤング率で割った値(ヤング率比)と、センサ5の出力強度(センサ出力)との関係を示すグラフである。なお、
図5においては、ヤング率比が無限大の時のセンサ出力を1として規格化している。
図5に示すように、ヤング率比が2以上である場合には、ヤング率比が無限大の時の半分程度ものセンサ出力が得られる。
【0044】
配線6は、センサ5の各々に対して接続されてセンサ5からの出力信号を外部に取り出すためのものであり、本実施形態では検出層2に埋設配置されている。本実施形態においては、センサ5の一方の出力端子に接続された縦向きの配線6が平行に複数配設され、センサ5の他方の出力端子に接続された横向きの配線6が平行に複数配設され、縦向きの配線6と横向きの配線6が検出面Mの法線方向から見て交差するマトリックス配線構造が設けられている。ただし、配線6の配設パターンについては、各々のセンサ5の出力信号を外部に取り出すことができるのであれば、特に限定されるものではない。
【0045】
なお、検出層2に埋設配置されるセンサ5及び配線6は、力Fが検出面Mに作用した場合の検出層2の変形を阻害しないことが好ましい。このため、センサ5及び配線6は、検出層2と同等のヤング率の材料によって形成されていることが好ましい。このようなセンサ5及び配線6は、例えば、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法あるいはグラビアオフセット印刷法等の印刷法を用いて形成することが可能である。
【0046】
このような本実施形態の力検出器1では、上述のように、検出面Mに力Fが作用すると、検出層2の内部に応力分布が生じる。このとき、検出面Mの接線方向に力Fが作用した場合には、突部3aによって、突部3aの周囲に検出面Mの法線方向から見て非対称な応力分布が発生する。このような応力分布が複数のセンサ5によって検出される。上述のように突部3aの応力分布により、力Fの方向及び大きさを算出することができる。したがって、本実施形態の力検出器1によれば、ヤング率が極めて大きな(例えば、検出層2のヤング率の100倍程度の)圧力伝達部材を内部に備えることなく、力Fを算出可能な検出値を得ることができる。
【0047】
以上のように、本実施形態の力検出器1は、検出対象の力Fが作用する検出面Mを有する検出層2と、検出層2の検出面Mと反対側の面に設けられると共に検出層2とヤング率が異なる材料で形成された支持層3とを備えている。また、力検出器1は、応力発生部4とセンサ5とを備えている。応力発生部4は、検出層2及び支持層3を有する層構造体7の内部に形成されると共に、検出面Mの接線方向に作用する力を受けて自らの周囲に検出面Mの法線方向から見て非対称な分布の応力を発生させる。センサ5は、応力発生部4の周囲に分散配置されて複数設けられている。
【0048】
本実施形態の力検出器1によれば、検出層2と支持層3とを有する層構造体7の内部に、検出層2の検出面Mの接線方向に作用する力Fを受けて自らの周囲に検出面Mの法線方向から見て非対称な分布の応力を発生させる応力発生部4を備えている。検出層2と支持層3とのヤング率の差が小さい場合であっても、このような応力発生部4によって非対称な分布の応力を発生させることができる。このため、本実施形態の力検出器1によれば、ヤング率が極めて大きな圧力伝達部材を内部に備える必要がなく、圧力伝達部材が周囲の層と剥離するような現象を抑止して、信頼性が高いものとなる。また、検出層2と支持層3とのヤング率が近く、検出層2及び支持層3との両方を柔軟に変形可能な材料によって形成することが可能である。このため、本実施形態の力検出器1は、湾曲が容易なものとなる。
【0049】
また、本実施形態の力検出器1においては、センサ5が、検出層2と支持層3とのうちヤング率が相対的に小さい側(本実施形態では検出層2)の内部に埋設配置されている。相対的にヤング率が大きな層の内部にもひずみ等は生じるが、相対的にヤング率が小さい層の内部の方がよりひずみ等が大きくなる。したがって、相対的にヤング率が小さい層の内部にセンサ5を設置することで、ひずみ等(すなわち応力)の検出が容易となる。ただし、相対的にヤング率が大きな層の内部にセンサ5を設置することも可能である。
【0050】
また、本実施形態の力検出器1においては、応力発生部4として、検出層2と支持層3とのうちヤング率が相対的に大きい側(本実施形態では支持層3)からヤング率が相対的に小さい側(本実施形態では検出層2)に向けて突出された突部3aを備えている。このような本実施形態の力検出器1によれば、応力発生部4を簡易な構造とすることが可能となる。また、突部3aの外側にセンサ5が配置されるため、突部3aを避けてセンサ5に接続する配線6を引き廻すことが容易となる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、
図6及び
図7を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0052】
図6は、本実施形態の力検出器1Aの概略構成を模式的に示す断面図である。また、
図7は、本実施形態の力検出器1Aの概略構成を模式的に示す分解図である。これらの図に示すように、本実施形態の力検出器1Aは、検出層2の検出面Mに対して、力分散層10が設けられている。つまり、本実施形態の力検出器1Aにおいては、層構造体7は、検出層2及び支持層3に加えて、力分散層10を有している。
【0053】
力分散層10は、検出層2よりもヤング率が大きな材料によって形成されている。例えば、力分散層10は、検出層2の形成材料よりもヤング率が大きなシリコーン樹脂によって形成することができる。また、力分散層10は、検出層2よりもヤング率が大きい材料で形成されていればよく、アクリル樹脂やウレタン樹脂によって形成することも可能である。また、力分散層10は、力FをX-Z面において分散させることができれば良く、検出層2及び支持層3よりも厚さ寸法(Y方向における寸法)を小さくすることができる。
【0054】
力分散層10を設けない場合には、応力発生部4(突部3a)の配置間隔(応力発生部4の周期)よりも周期が短い空間周波数の力Fが検出面Mに作用した場合には、標本化定理より実際の力Fと異なる力成分が誤差として出力される。これに対して、力分散層10を設けることによって、力FがX-Z面において分散されて、検出面Mに作用する力Fの空間周波数が小さくなる。このため、実際の力Fと異なる力成分が誤差として出力されることを防止することができる。
【0055】
このように本実施形態の力検出器1Aは、検出層2の検出面Mに積層されると共に検出層2よりもヤング率が大きな材料によって形成された力分散層10を備えている。このため、実際の力Fと異なる力成分が誤差として出力されることを防止することができ、検出誤差を低減することが可能となる。
【0056】
なお、力分散層10と検出層2との厚さ寸法(Y方向における寸法)やヤング率を調整することによって、空間周波数のカットオフ周波数を調整することが可能である。
【0057】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について、
図8及び
図9を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1及び上記第2実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0058】
図8は、本実施形態の力検出器1Bの概略構成を模式的に示す断面図である。また、
図9は、本実施形態の力検出器1Bの概略構成を模式的に示す分解図である。これらの図に示すように、本実施形態の力検出器1Bは、力分散層10から検出層2に向けて突出する突部10a(応力発生部)が設けられている。一方で、本実施形態の力検出器1Bにおいては、支持層3に対して突部3aが設けられていない。つまり、本実施形態の力検出器1Bにおいては、応力発生部4として、力分散層10の突部10a(力分散層突部)が設けられている。
【0059】
本実施形態の力検出器1Bでは、力分散層10に設けられた突部10aが応力発生部4である。すなわち、本実施形態の力検出器1Bは、応力発生部4として、ヤング率が相対的に大きい側(力分散層10側)からヤング率が相対的に小さい側(検出層2側)に向けて突出された突部10aを備えている。
【0060】
突部10aは、例えば検出面Mの法線方向から見て、上記第1実施形態の突部3aと同じ位置にアレイ状に配置されて複数設けられている。本実施形態では、各々の突部10aは、同一の四角錐形状である。これらの突部10aは、例えば
図8に示すように力分散層10の一部によって形成されているため、検出層2よりもヤング率が大きな材料によって形成されている。なお、本実施形態においては、複数の突部10aは、X方向及びZ方向において、等間隔で配列されている。ただし、複数の突部10aの配置間隔は変更が可能である。また、複数の突部10aは不等間隔で配列されていても良い。
【0061】
このような本実施形態の力検出器1Bにおいては、四角錐形状の突部10aが設けられていることによって、検出面Mに作用する力Fの方向に応じて突部10aの周囲に加わる応力の大きさや方向が変化する。ただし、突部10aの形状は、四角錐形状に限定されるものではない。突部10aは、検出面Mに作用する力Fの方向に応じて突部10aの周囲に加わる応力の大きさや方向が変化する形状であれば良く、例えば多角柱形状、円柱形状、半球形状、円錐形状、四角以外の多角錐形状等であっても良い。また、本実施形態では全ての突部10aが同一形状であるが、異なる形状の突部10aが含まれていても良い。
【0062】
センサ5は、1つの突部10aに対して4つ設けられている。検出面Mの法線方向から見て突部10aの下向きの頂部を囲むように、頂部に対して+X方向に変位した位置、頂部に対して-X方向に変位した位置、+Z方向に変位した位置及び-Z方向に変位した位置の各々にセンサ5が配置されている。また、
図8に示すように、各々のセンサ5は、突部10aの下向きの頂部よりも支持層3側に配置されている。
【0063】
これらのセンサ5は、検出層2に生じた応力(すなわちひずみあるいは圧力)に応じた強度の信号を出力する。1つの突部10aに対して設けられた4つのセンサ5の検出値に基づいて、この突部10aの-Y方向に位置する検出面Mの部位に、どのような力Fが作用しているかを算出することができる。
【0064】
このように、力検出器1Bの検出面Mに力Fが加わると、層構造体7の内部にひずみや圧力が発生する。検出面Mの接線方向に力Fが加わる場合、突部10aは検出層2よりヤング率の大きい材料からなるため、突部10aの周囲の検出層2より変形が少ない。このため、突部10aの周囲のひずみや圧力は力Fの方向や大きさに応じて突部10aよりも大きく変化することとなる。これらの突部10aの周囲のひずみや圧力(すなわち応力)がセンサ5によって検出される。力Fを加える方向を反転することによって、ひずみの分布も反転する。このため、突部10aを挟んで配置される2つのセンサ5の出力差は力Fの方向と力Fの大きさの情報を含むことになる。
【0065】
一方で、検出面Mに均一な分布の垂直方向の力が加わると、突部10aを挟んで配置される2つのセンサ5には同じひずみが加わることとなる。したがって、これらの2つのセンサ5の出力の和が、力Fの大きさの情報を含むこととなる。これらのセンサ5の出力の差と和とによって力検出器1Bに加わる力Fの大きさ及び方向が算出可能である。
【0066】
このような本実施形態の力検出器1Bによれば、力分散層10の突部10aが応力発生部4として機能するため、
図8及び
図9に示すように、支持層3に突部3aを設けない構成であることが可能となる。
【0067】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について、
図10及び
図11を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1及び上記第2実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0068】
図10は、本実施形態の力検出器1Cの概略構成を模式的に示す断面図である。また、
図11は、本実施形態の力検出器1Cの概略構成を模式的に示す分解図である。これらの図に示すように、本実施形態の力検出器1Cは、検出層2の内部に空隙部2b(応力発生部)が設けられている。一方で、本実施形態の力検出器1Cにおいては、支持層3に対して突部3aが設けられていない。つまり、本実施形態の力検出器1Cにおいては、応力発生部4として、空隙部2bが設けられている。
【0069】
本実施形態の力検出器1Cでは、検出層2に設けられた空隙部2bが応力発生部4である。すなわち、本実施形態の力検出器1Cは、応力発生部4として、検出層2と支持層3とのうちヤング率が相対的に小さい側(本実施形態においては検出層2)の内部に形成された空隙部2bを備えている。
【0070】
空隙部2bは、例えば検出面Mの法線方向から見て、上記第1実施形態の突部3aと同じ位置にアレイ状に配置されて複数設けられている。本実施形態では、各々の空隙部2bは、同一の直方体形状である。なお、本実施形態においては、複数の空隙部2bは、X方向及びZ方向において、等間隔で配列されている。ただし、複数の空隙部2bの配置間隔は変更が可能である。また、複数の空隙部2bは不等間隔で配列されていても良い。
【0071】
このような本実施形態の力検出器1Cにおいては、直方体形状の空隙部2bが設けられていることによって、検出面Mに作用する力Fの方向に応じて空隙部2bの周囲に加わる応力の大きさや方向が変化する。ただし、空隙部2bの形状は、直方体形状に限定されるものではない。空隙部2bは、検出面Mに作用する力Fの方向に応じて空隙部2bの周囲に加わる応力の大きさや方向が変化する形状であれば良く、四角錐形状、円錐形状、半球形状等であっても良い。また、本実施形態では全ての空隙部2bが同一形状であるが、異なる形状の空隙部2bが含まれていても良い。
【0072】
センサ5は、1つの空隙部2bに対して4つ設けられている。検出面Mの法線方向から見た空隙部2bの中心位置を囲むように、中心位置に対して+X方向に変位した位置、中心位置に対して-X方向に変位した位置、中心位置に対して+Z方向に変位した位置及び中心位置に対して-Z方向に変位した位置の各々にセンサ5が配置されている。また、
図10に示すように、各々のセンサ5は、空隙部2bよりも検出面M側に配置されている。
【0073】
これらのセンサ5は、検出層2に生じた応力(すなわちひずみあるいは圧力)に応じた強度の信号を出力する。1つの空隙部2bに対して設けられた4つのセンサ5の検出値に基づいて、この空隙部2bの-Y方向に位置する検出面Mの部位に、どのような力Fが作用しているかを算出することができる。
【0074】
このように、力検出器1Cの検出面Mに力Fが加わると、層構造体7の内部にひずみや圧力が発生する。検出面Mの接線方向に力Fが加わる場合、空隙部2bの周囲では空隙部2bによる応力緩和や応力集中により、非対称のひずみの分布が発生する。これらの空隙部2bの周囲のひずみや圧力(すなわち応力)がセンサ5によって検出される。力Fを加える方向を反転することによって、ひずみの分布も反転する。このため、空隙部2bを挟んで配置される2つのセンサ5の出力差は力Fの方向と力Fの大きさの情報を含むことになる。
【0075】
一方で、検出面Mに均一な分布の垂直方向の力が加わると、空隙部2bを挟んで配置される2つのセンサ5には同じひずみが加わることとなる。したがって、これらの2つのセンサ5の出力の和が、力Fの大きさの情報を含むこととなる。これらのセンサ5の出力の差と和とによって力検出器1Cに加わる力Fの大きさ及び方向が算出可能である。
【0076】
このような本実施形態の力検出器1Cによれば、空隙部2bを応力発生部4として備えるため、検出層2あるいは力分散層10に対して突部を設けない構成であることが可能となる。ただし、力検出器1cは、空隙部2bに加えて、上記第1実施形態の突部3a、上記第2実施形態の突部10aを備えることも可能である。
【0077】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について、
図12及び
図13を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0078】
図12は、本実施形態の力検出器1Dの概略構成を模式的に示す断面図である。また、
図13は、本実施形態の力検出器1Dの概略構成を模式的に示す分解図である。これらの図に示すように、本実施形態の力検出器1Dは、支持層3が凹部3b(応力発生部)を備えている。一方で、本実施形態の力検出器1Dにおいては、支持層3に対して突部3aが設けられていない。つまり、本実施形態の力検出器1Dにおいては、応力発生部4として、凹部3bが設けられている。
【0079】
本実施形態の力検出器1Dでは、支持層3に設けられた凹部3bが応力発生部4である。すなわち、本実施形態の力検出器1Dは、応力発生部4として、検出層2と支持層3とのうちヤング率が相対的に大きい側(本実施形態においては支持層3)に形成された凹部3bを備えている。
【0080】
凹部3bは、例えば検出面Mの法線方向から見て、上記第1実施形態の突部3aと同じ位置にアレイ状に配置されて複数設けられている。本実施形態では、各々の凹部3bは、検出面Mの法線方向から見て、例えば正方形状である。なお、本実施形態においては、複数の凹部3bは、X方向及びZ方向において、等間隔で配列されている。ただし、複数の凹部3bの配置間隔は変更が可能である。また、複数の凹部3bは不等間隔で配列されていても良い。
【0081】
このような本実施形態の力検出器1Dにおいては、検出面Mの法線方向から見て正方形状の凹部3bが設けられていることによって、検出面Mに作用する力Fの方向に応じて凹部3bの周囲に加わる応力の大きさや方向が変化する。なお、本実施形態において、凹部3bの周囲とは、凹部3bを形成する支持層3の壁面の周囲を意味し、凹部3bの内部も含む。
【0082】
検出面Mの法線方向から見た凹部3bの形状は、正方形状に限定されるものではない。凹部3bは、検出面Mに作用する力Fの方向に応じて凹部3bの周囲に加わる応力の大きさや方向が変化する形状であれば良い。検出面Mの法線方向から見た凹部3bの形状は、円形状等であっても良い。また、本実施形態では全ての凹部3bが同一形状であるが、異なる形状の凹部3bが含まれていても良い。
【0083】
センサ5は、1つの凹部3bに対して4つ設けられている。検出面Mの法線方向から見た凹部3bの中心位置を囲むように、中心位置に対して+X方向に変位した位置、中心位置に対して-X方向に変位した位置、中心位置に対して+Z方向に変位した位置及び中心位置に対して-Z方向に変位した位置の各々にセンサ5が配置されている。また、
図12に示すように、各々のセンサ5は、凹部3bの内部に配置されている。
【0084】
これらのセンサ5は、検出層2に生じた応力(すなわちひずみあるいは圧力)に応じた強度の信号を出力する。1つの凹部3bに対して設けられた4つのセンサ5の検出値に基づいて、この凹部3bの-Y方向に位置する検出面Mの部位に、どのような力Fが作用しているかを算出することができる。
【0085】
このように、力検出器1Dの検出面Mに力Fが加わると、層構造体7の内部にひずみや圧力が発生する。検出面Mの接線方向に力Fが加わる場合、凹部3bの周囲では凹部3bの壁面に検出層2が押圧されることにより、非対称のひずみの分布が発生する。これらの凹部3bの周囲のひずみや圧力(すなわち応力)がセンサ5によって検出される。力Fを加える方向を反転することによって、ひずみの分布も反転する。このため、凹部3bを挟んで配置される2つのセンサ5の出力差は力Fの方向と力Fの大きさの情報を含むことになる。
【0086】
一方で、検出面Mに均一な分布の垂直方向の力が加わると、凹部3bを挟んで配置される2つのセンサ5には同じひずみが加わることとなる。したがって、これらの2つのセンサ5の出力の和が、力Fの大きさの情報を含むこととなる。これらのセンサ5の出力の差と和とによって力検出器1Dに加わる力Fの大きさ及び方向が算出可能である。
【0087】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について、
図14及び
図15を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0088】
図14は、本実施形態の力検出システムSの概略構成を示すブロック図である。この図に示すように、本実施形態の力検出システムSは、上記第1実施形態における力検出器1と、演算装置20とを備えている。なお、力検出システムSは、上記第1実施形態における力検出器1に代えて、第2実施形態における力検出器1A、第3実施形態における力検出器1B、第4実施形態における力検出器1C、あるいは第5実施形態における力検出器1Dを備えていても良い。
【0089】
演算装置20は、コンピュータ装置やワークステーションからなり、力検出器1の出力に基づいた演算処理を行う。
図14に示すように、演算装置20は、入力部21と、記憶部22と、制御部23(算出部)と、表示部24と、出力部25とを備えている。
【0090】
入力部21は、力検出器1が出力する信号を受付可能な入力用インタフェースや作業者の指令を入力可能な操作部等を含む。入力部21は、力検出器1に有線または無線によって直接的に接続されており、力検出器1が備えるセンサ5の検出値が入力される。
【0091】
記憶部22は、例えば、半導体メモリ、磁気メモリあるいは光メモリからなるが、特にこれらに限定されるものではない。この記憶部22は、例えばコンピュータ装置やワークステーションの主記憶装置、補助記憶装置あるいはキャッシュメモリとして機能させることも可能である。この記憶部22は、演算装置20の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部22は、例えばシステムプログラム及びアプリケーションプログラムなどの各種情報等を記憶することが可能である。
【0092】
また、本実施形態においては、記憶部22は、制御部23にて力検出器1に作用した力Fを算出する際に用いられる校正値を予め記憶している。
図15を用いて、記憶部22に記憶された校正値を用いた校正方法の考え方について説明する。
図15は、校正方法の考え方について説明するための二次元モデルである。
【0093】
図15に示すように、力検出器1の検出面Mのある一点に一定の大きさの法線方向の力F
1を加える。このときn個のセンサ5のそれぞれの検出値s
11,・・・,s
1nを校正値として記録する。続いて、力を加える位置をX方向に微小量移動し同様の大きさの法線方向の力F
2を加える。同様にセンサのそれぞれの検出値s
21,・・・,s
2nを校正値として記録する。同様にして位置を変えてF
m/2まで校正値を記録していく。mは偶数である。
【0094】
次に、力F1を加えた位置でX方向の力Fm/2+1を力検出器1に加えて同様にセンサ5のそれぞれの検出値を校正値として記録する。同様に力F2を加えた位置でX方向の力Fm/2+2を力検出器1に加えてセンサ5のそれぞれの検出値を校正値として記録する。同様にしてFmまでセンサ5の検出値を校正値として記録する。ここで任意の位置である力F0を加えた場合のセンサ出力をs01,・・・,s0nとする。F0をF1~Fmまでの線形結合で表すと下式(1)のようになる。
【0095】
【0096】
ここで係数k1,・・・,kmと校正値とs01,・・・,s0nの関係式は下式(2)のようになる。
【0097】
【0098】
ここから係数k1,・・・,kmを近似解として求める。この近似解を式(1)に代入することによってF0を求める。
【0099】
なお、実際の力検出器1では奥行き方向(Z方向)にも突部3aとセンサ5がアレイ状に配置されており、校正で力を加える位置はZ方向にもあり、力の向きもZ方向が加わる。このような場合であっても校正方法は同様である。また、校正方法はこの方法だけでなく、校正する際に力を点ではなく球や長方形などの特定の形状を持ったもので力を加え、この際のセンサ5の検出値を校正値としてもよい。
【0100】
制御部23は、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つの専用回路とを備えており、例えばこれらの組み合わせを備えている。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)若しくはGPU(Graphics Processing Unit)などの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。制御部23は、演算装置20の各部を制御しながら、演算装置20の動作に関わる処理を実行する。
【0101】
また、制御部23は、記憶部22に記憶された校正値と力検出器1のセンサ5の検出値とに基づいて力検出器1に作用した力Fの値を算出する。このとき、制御部23は、上述の校正方法に基づいて、力検出器1に作用した力Fの値を算出する。ただし、これに限られるものではなく、制御部23における演算方法は深層学習などを用いてもよい。
【0102】
表示部24は、各種情報を表示する。表示部24は、例えば液晶ディスプレイを用いることができる。ただし、表示部24は、液晶ディスプレイに限定されず、例えば、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどであってもよい。出力部25は演算装置20の演算結果や力検出器1の検出値を外部に出力するためのものである。
【0103】
このような本実施形態の力検出システムSによれば、力検出器1の特性に応じて予め取得された校正値を用いて力検出器1の検出値を校正する。このため、力検出器1に作用した力Fの値をより正確に求めることが可能となる。
【0104】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0105】
例えば、上記実施形態においては、検出層2を形成する材料のヤング率が支持層3を形成する材料のヤング率よりも小さい構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、検出層2を形成する材料のヤング率が支持層3を形成する材料のヤング率よりも大きい構成を採用することが可能である。また、検出層2を形成する材料のヤング率が支持層3を形成する材料のヤング率よりも大きい場合には、本発明は、センサ5を支持層3に埋設配置する構成であっても良い。
【符号の説明】
【0106】
1……力検出器、1A……力検出器、1B……力検出器、1C……力検出器、1D……力検出器、2……検出層(第1層)、2b……空隙部、3……支持層(第2層)、3a……突部、3b……凹部、4……応力発生部、5……センサ、6……配線、7……層構造体、10……力分散層、10a……突部、20……演算装置、21……入力部、22……記憶部、23……制御部、24……表示部、25……出力部、F……力、M……検出面、S……力検出システム