(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】剥離機構及びこれを用いた積層装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240920BHJP
B65H 41/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01L21/68 N
B65H41/00 B
(21)【出願番号】P 2020218719
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 由
(72)【発明者】
【氏名】澤田 智世
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-171530(JP,A)
【文献】特開平08-244019(JP,A)
【文献】特開2020-121855(JP,A)
【文献】特開2019-186399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B65H 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム付きシートを
加熱せずに固定状態で載置する剥離ステージと、
前記剥離ステージに載置された前記シートから前記フィルムを剥離させる剥離ヘッドと、
前記フィルム付きシートの外周部の一部を冷却し、剥離起点部を形成する冷却手段と、を備え、
前記剥離ヘッドは、
前記剥離起点部における前記フィルムを保持した状態で、前記剥離ヘッド及び前記剥離ステージの相対移動により、前記シートから前記フィルムを剥離するフィルム保持手段を含む剥離機構。
【請求項2】
前記冷却手段は、前記剥離ヘッドに設けられ、前記フィルム付きシートの上方及び側方より冷却し、
前記剥離起点部を形成する、請求項1に記載の剥離機構。
【請求項3】
前記冷却手段は、前記剥離ステージに設けられ、前記フィルム付きシートの下方より冷却し、
前記剥離起点部を形成する、請求項1に記載の剥離機構。
【請求項4】
前記フィルム保持手段は、前記剥離ヘッドに垂下して設けられる付勢部材と、前記付勢部材に回転可能に設けられ、外周面の少なくとも一部に粘着面を備える粘着ローラと、を有し、
前記粘着ローラは、前記付勢部材により、前記粘着面が前記剥離起点部に押圧されるとともに、前記シートに対して相対移動することにより、前記粘着面に前記フィルムを巻付ける、請求項1から3のいずれか一項に記載の剥離機構。
【請求項5】
前記フィルム保持手段は、前記粘着ローラに対向配置され、前記粘着ローラに対して離接方向に移動可能であるクランプ爪をさらに有し、
前記クランプ爪は、前記粘着ローラに近接配置された状態において、前記粘着ローラの前記粘着面に巻付いた前記フィルムを前記粘着ローラとの間に挟持する、請求項4に記載の剥離機構。
【請求項6】
前記フィルム付きシートは、略矩形形状を有しており、前記剥離起点部は、前記フィルム付きシートの一つの角部に形成され、
前記剥離ヘッド及び前記剥離ステージとの間に、前記シートの対角線方向への相対移動を生じさせて、前記シートから前記フィルムを剥離させる、請求項1から5のいずれか一項に記載の剥離機構。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の剥離機構と、
前記シートの位置合わせを行うアライメント手段と、
位置合せされた前記シートを積層する積層手段と、
を備える、積層装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、冷却手段を備える剥離機構及びこれを用いた積層装置に関する。
【0002】
積層装置は、電子部品を構成する複数枚のシートを積層するものであり、剥離機構、アライメント手段、積層手段、及び搬送手段などを備える。この剥離機構は、アライメント手段によって、シートがアライメントされる前や、積層手段によって、複数のシートからなる積層体が形成された後に、最上層のシートからフィルムを剥離する。
【0003】
例えば、特許文献1(特に、段落[0052]-[0055]及び
図6(a)参照)には、剥離機構(以下、「従来の剥離機構」という)であって、フィルム付きシートの全体に対して、加熱処理を行い、粘着層の発砲膨張により粘着力を下げた後、シートからフィルムを剥離させるものが記載されている。
【0004】
しかしながら、従来の剥離機構では、加熱処理により、フィルム付きシートの全体的に軟化が生じているため、シートからフィルムの剥離を開始させること、つまり、剥離起点部を形成することが困難という問題点(以下、「剥離起点部の形成が困難」という)を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さらに近年、積層体には、小型化及び低背化が要望されているため、積層されるシート自体の薄化が行われている。この薄化されたシートの剛性は、比較的低くなっている。よって、従来の剥離機構を用いて、薄化されたフィルム付きシートの全体に対して、加熱処理を行うと、薄化されたシートの剛性はさらに低下し、フィルム及びシートが一体化するという現象が生じていた。これにより、フィルムをシートから剥離させること自体が非常に困難となるため、前述の問題点(剥離起点部の形成が困難)がより顕著になるとともに、この状態で剥離動作を行うと、シートに不可逆的な皺が形成され、シート自体に損傷を与えるおそれもあった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、剥離起点部を容易に形成することにより、シートに損傷を与えずに、剥離動作を円滑に行うことができる剥離機構及びこれを用いた積層装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一実施形態の剥離機構は、フィルム付きシートを固定状態で載置する剥離ステージと、前記剥離ステージに載置された前記シートから前記フィルムを剥離させる剥離ヘッドと、を備え、前記剥離ヘッドは、前記フィルム付きシートの外周部の一部を冷却し、剥離起点部を形成する冷却手段と、前記剥離起点部における前記フィルムを保持した状態で、前記剥離ヘッド及び前記剥離ステージの相対移動により、前記シートから前記フィルムを剥離するフィルム保持手段と、を含むものである。
【0009】
本発明に係る一実施形態の積層装置は、前記剥離機構を備え、前記シートの位置合わせを行うアライメント手段と、位置合せされた前記シートを積層する積層手段と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、剥離起点部を容易に形成することにより、シートに損傷を与えずに、剥離動作を円滑に行うことができる剥離機構及びこれを用いた積層装置を提供することを目的とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る剥離機構を用いた積層装置を示す平面模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る剥離機構の概略説明図であり、(a)剥離機構の平面図、(b)剥離ヘッドのシート対角線に沿う側面図、(c)剥離ステージのシート対角線に沿う側面図、をそれぞれ表す。
【
図3】フィルムの剥離工程における冷却準備動作から剥離起点部形成動作までの説明図であり、(a)及び(b)冷却準備動作の側面図及び平面図、(c)及び(d)剥離起点部形成動作の側面図及び平面図、をそれぞれ表す。
【
図4】フィルムの剥離工程における粘着動作から巻付き動作までの説明図であり、(a)及び(b)粘着動作の側面図及び平面図、(c)及び(d)巻付け動作の側面図及び平面図、をそれぞれ表す。
【
図5】フィルムの剥離工程における引上げ動作からクランプ動作までの説明図であり、(a)及び(b)引上げ動作の側面図及び平面図、(c)及び(d)クランプ動作の側面図及び平面図、をそれぞれ表す。
【
図6】フィルムの剥離工程における剥離動作の説明図であり、(a)及び(b)剥離動作(水平方向)の側面図及び平面図、(c)及び(d)剥離動作(斜め上方向)の側面図及び平面図、をそれぞれ表す。
【
図7】フィルムの剥離工程における剥離終了時の説明図であり、(a)及び(b)剥離終了時の側面図及び平面図、をそれぞれ表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下に説明する実施形態は、本発明を具体的に実現した形態を例示するものである。よって、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって、以下に説明される実施形態の構成は適宜修正又は変更されるべきものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
<用語について>
本明細書および特許請求の範囲の記載において、各用語を以下のように定義する。「積層」とは、複数枚(2枚も含む)の貼り合わせを示す。「積層体」とは、複数枚(2枚も含む)のシートSを貼り合わせたものを示す。「剥離線」とは、フィルムfがシートSに接着されている領域と、剥離された領域との境界線を示す。「フィルムの粘着境界線」とは、粘着ローラ12の下端部に粘着されているフィルムfの領域と、粘着ローラ12の下端部に粘着されていないフィルムfの領域との境界線を示す。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る剥離機構100を用いた積層装置1を示す平面模式図である。ここで、X軸方向は、剥離ステージ20が延在する一方向を示すものであり、Y軸方向は、X軸方向と直交し、かつ、剥離ステージ20が延在する他方向を示すものである。また、Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向と直交し、かつ、剥離ステージ20が面する方向を示すものである。さらに、
図1中の点Aから点Cは、各ステージの中心位置を示し、それぞれ、剥離ステージ位置、アライメントステージ位置、及び、積層ステージ位置に対応する。
【0015】
<積層装置について>
積層装置1は、電子部品を構成する薄化された複数のシートSを高精度かつ高速に積層するものである。この積層装置1は、剥離機構100と、アライメント手段200と、積層手段300と、搬送手段(不図示)と、を備える。以下、それらを順に説明する。なお、積層装置1は、剥離機構100、アライメント手段200、積層手段300、及び、搬送手段を制御する制御手段(不図示)をさらに備える。
【0016】
<剥離機構について>
剥離機構100は、剥離ヘッド10(
図2(a)参照)と、剥離ステージ20と、を備える。剥離機構100は、詳細は後述するが、剥離対象物であるフィルム付きシートSfを剥離ステージ20に固定状態で載置させた後、剥離ヘッド10により、シートSからフィルムfを剥離させる。
【0017】
<アライメント手段について>
アライメント手段200は、シートSの基準位置への位置合わせを行うものである。アライメント手段200は、シートSを吸着固定し載置するアライメントステージ201と、シートSを基準位置へと位置合わせするために、アライメントステージ201のXY平面内における移動及び回動を行う電動アクチュエータ(不図示)と、シートSに設けられる位置合わせ参照用のマークを撮像するアライメント撮像ユニット(不図示)と、を備える。
【0018】
アライメント手段200は、アライメントステージ201上に載置されたシートSを複数の吸着ポート(不図示)により真空吸着する。そして、アライメント撮像ユニットが、シートSに設けられた参照用のマークを撮像する。この撮像された画像は、画像処理装置(不図示)に送信され、画像処理により、参照用のマークの位置が算出されるとともに、この算出された参照用のマークと予め定められた基準位置との誤差が算出される。ここで、この誤差が所定範囲内であれば、シートSの位置合わせが適切に行われたものと判断され、制御手段からの指示により、シートSの位置合わせ動作を終了にする。一方、この誤差が所定範囲外であれば、シートSの位置合わせが適切に行われなかったものと判断される。この際、電動アクチュエータが、制御手段からの指示により、誤差が最小となるように、アライメントステージ201を介して、シートSのXY平面内における移動及び回動を行う。この予め定められた基準位置への位置合わせは、誤差が所定範囲内となるまで続けられる。
【0019】
<積層手段について>
積層手段300は、複数のシートSが積層され、積層体が形成される積層ステージ301を備える。
【0020】
<搬送手段について>
搬送手段は、X軸方向(矢印I方向:剥離ステージ位置Aとアライメントステージ位置B、矢印II方向:アライメントステージ位置Bと積層ステージ位置C)及びZ軸方向へと移動可能である搬送スライド機構(不図示)と、搬送スライド機構に吊り下げ支持され、シートSを吸着保持する搬送保持機構(不図示)と、を備える。
【0021】
<積層装置における積層工程ついて>
図1を用いて、積層装置1におけるシートSの積層工程を順に説明する。
【0022】
まず、剥離機構100において、1枚のフィルム付きシートSfが、剥離ステージ20上に固定状態で載置された後、フィルムfの外周部の一部が、剥離ヘッド10により、保持される。その後、剥離ヘッド10(
図2(a)参照)と剥離ステージ20との相対移動により、シートSからフィルムfが剥離される。なお、本実施形態の剥離機構100においては、従来の剥離機構のように、フィルム付きシートSfの全体に対して、加熱処理を行わないため、全体的なフィルム付きシートの軟化を抑制することができる。
【0023】
剥離機構100において、シートSからフィルムfの剥離が完了すると、搬送保持機構が、搬送スライド機構により、待機位置(不図示)から剥離ステージ位置Aへと移動した後、Z軸方向の下方へと移動する。この搬送保持機構が、シートSに当接されると、真空吸着により、シートSが、搬送保持機構に保持される。その後、搬送保持機構が、搬送スライド機構により、Z軸方向の上方へと移動し、剥離ステージ位置Aからアライメントステージ位置Bへと、X軸方向(矢印I方向)に移動した後、Z軸方向の下方へと移動し、アライメントステージ201の上面に当接される。そして、搬送保持機構が、吸着保持を解除することにより、シートSが、アライメントステージ201の所定位置に載置された後、搬送保持機構が、搬送スライド機構により、待機位置に移動する。
【0024】
さらに、アライメント手段200において、シートSの位置合わせが適切に行われると、搬送保持機構が、搬送スライド機構により、待機位置からアライメントステージ位置Bに移動した後、Z軸方向の下方へと移動する。そして、搬送保持機構が、アライメントステージ201上の位置合わせが適切に行われたシートSに当接されると、真空吸着により、シートSが、搬送保持機構に保持される。その後、搬送保持機構が、搬送スライド機構により、Z軸方向の上方へと移動し、アライメントステージ位置Bから積層ステージ位置Cへと、X軸方向(矢印II方向)に移動した後、Z軸方向の下方へと移動し、積層ステージ301の上面、又は、既に積層された他のシートSに当接される。そして、搬送保持機構が、吸着保持を解除することにより、シートSが、積層ステージ301の所定位置に載置される。以上、説明した積層装置1における積層工程を行うことにより、フィルムfがシートSから剥離されるとともに、位置合わせが適切に行われたシートSが積層され、積層体が形成される。これにより、品質低下が抑制されたシートSを用いて、積層体を形成することができる。
【0025】
なお、本実施形態における剥離機構100は、剥離対象物が、1枚のフィルム付きシートSfであるため、アライメント手段200により、シートSがアライメントされる前に、シートSからフィルムfを剥離させている。しかしながら、これに限らず、例えば、剥離対象物が、積層体の最上層のフィルム付きシートSfであれば、積層手段300により、複数のシートSからなる積層体を形成し、仮圧着した後に、最上層のシートSからフィルムfを剥離させてもよい。
【0026】
本実施形態における積層装置1は、剥離機構100、アライメント手段200、積層手段300、搬送手段、及び、制御手段を備えるものである。しかしながら、本実施形態における積層装置1は、これに限らず、例えば、シートSを剥離ステージ20上に供給するシート供給手段や、シートSの積層体を圧着し一体化する圧着手段などを備えてもよい。
【0027】
<剥離機構の詳細構成について>
図2は、本発明の実施形態に係る剥離機構の概略説明図であり、(a)剥離機構の平面図、(b)剥離ヘッドのシート対角線に沿う側面図、(c)剥離ステージのシート対角線に沿う側面図、をそれぞれ表す。ここで、
図2(a)中における一点鎖線Lは、剥離ステージ20に載置されたフィルム付きシートSfの一方の対角線の延長線上を示すものである。また、
図2(a)中の点A、点D、点E、及び、点Fは、それぞれ、シートSの中心位置、待機位置、開始位置、及び、終了位置を示し、一点鎖線L上に配置されるものである。
【0028】
剥離機構100は、剥離ヘッド10と、剥離ヘッド10の対角線方向Lへの移動を行う剥離ヘッド駆動手段(相対移動手段)(不図示)と、剥離ステージ20と、剥離ステージ20の対角線方向Lへの移動を行う剥離ステージ駆動手段(相対移動手段)(不図示)と、備える。以下、それらを順に説明する。なお、本実施形態においては、説明を簡略化するために、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、剥離ステージ20を固定状態とし、剥離ヘッド10を、剥離ヘッド駆動手段により、対角線方向L(矢印III方向)、Z軸方向(矢印IV方向)、及び、対角線方向Lに沿う斜め上方向(矢印IX方向)へと移動させるものとする。これにより、剥離ヘッド10及び剥離ステージ20に、相対移動を生じさせることができる。
【0029】
<剥離ヘッドについて>
図2(b)に示すように、剥離ヘッド10は、冷却モジュール(冷却手段)11と、粘着ローラ(フィルム保持手段)12と、付勢部材13と、クランプ爪(フィルム保持手段)14と、クランプ爪駆動機構(不図示)と、を備える。
【0030】
<冷却モジュール>
冷却モジュール11は、剥離ヘッド10の下端部に設けられ、冷却流体を噴射するノズル11aと、剥離ヘッド10に保持され、冷却流体が貯蔵された流体源(不図示)からノズル11aへと冷却流体を供給する可撓性のパイプ11bと、冷却流体を昇圧及び冷却する圧縮機(不図示)及び冷却装置(不図示)と、ノズル11aを回動させるノズル駆動機構(不図示)と、を備える。なお、流体源として、冷却流体が加圧状態で貯蔵されている高圧容器などを採用する場合には、圧縮機を省略することができる。このノズル11aは、先端部に先すぼまりのテーパー形状を有しており、局所的な冷却流体の噴射を可能としている(
図2(b)中の破線参照)。また、ノズル駆動機構は、対角線方向Lと直交し、水平方向に延在する回動軸11cを中心に、ノズル11aを回動方向(矢印V方向)へと回動させ、冷却流体の噴射角度αを調整する。
【0031】
ここで、本実施形態における冷却流体の種類は、液化石油ガス(LPG)、液化天然ガス(LNG)、エタノール、メントール、新冷媒ガス(R32・R410a)、液体窒素、及び、二酸化炭素ガスなどの中から選択することができる。本実施形態における冷却流体の温度は、冷却対象箇所の温度を、雰囲気温度(例えば、室温)以下とするものであるが、0(℃)以下とすることが好ましい。また、本実施形態における冷却流体の噴射時間は、10(sec)以下であるが、3(sec)以下とすることが好ましい。さらに、本実施形態における冷却流体の流速、流量及び温度は、一定値に保持させるものであるが、これに限らず、例えば、変化させるものであってもよい。加えて、本実施形態における冷却流体の噴射角度αは、様々な規格のフィルム付きシートSfの上面や側面へと、冷却流体を噴射させるために、水平面に対して、0(°)~90(°)とする。
【0032】
<粘着ローラ及び付勢部材>
粘着ローラ12は、円筒形状を有し、外周面12bに粘着性を有する粘着面を備える。詳細は後述するが、この粘着ローラ12の粘着面が、フィルムfを粘着することにより、フィルムfをシートSから剥離させるとともに、この剥離させたフィルムfを保持することができる。本実施形態における粘着ローラ12の外周面12bは、全体を粘着面とするものであるが、これに限らず、少なくとも一部(例えば、フィルムfが粘着する領域)のみを粘着面としてもよい。また、本実施形態における粘着ローラ12の粘着面の材質は、例えば、アクリル系、又は、シリコン系などの粘着剤から構成される。
【0033】
付勢部材13は、スプリングなどからなり、下端部に対角線方向Lと直交し、水平方向に延在する回転軸13aを備え、剥離ヘッド10から垂下した状態で支持されている。
【0034】
粘着ローラ12は、付勢部材13に対して、回転軸13aを中心とする回転方向(矢印VII方向)に回転可能に軸支されている。本実施形態において、粘着ローラ12をフィルムfに接触させる際に、剥離ヘッド駆動手段により、付勢部材13の付勢方向(矢印VI方向)への押し込み量が調整されることにより、粘着ローラ12をフィルムfに対して所望の付勢力で負荷することができる。
【0035】
<クランプ爪及びクランプ爪駆動機構>
クランプ爪14は、下端部に対角線方向Lに突出する突起14aを備え、粘着ローラ12と対角線方向Lに対向配置される。クランプ爪駆動機構は、クランプ爪14を、粘着ローラ12に対して離接方向(矢印VIII方向)へと移動させる。このクランプ爪駆動機構により、クランプ爪14が、粘着ローラ12に近接配置され、クランプ爪14と粘着ローラ12との間にフィルムfを挟持することができる。
【0036】
<剥離ステージについて>
図2(c)に示すように、剥離ステージ20は、剥離ステージ20上に配置される吸着板21と、吸着板21を介して、剥離対象物であるフィルム付きシートSfを真空吸着させる複数の吸着ポート22と、を備える。
【0037】
吸着板21は、シートSの破損を防止するために、複数の連通孔を有するものであり、例えば、複数の孔を有する板状部材から構成されてもよいし、樹脂性の多孔質材料から構成されてもよい。
【0038】
<フィルム付きシートSfについて>
剥離対象物であるフィルム付きシートSfは、シートSの上にフィルムfが積層されている。このフィルム付きシートSfには、シートSとフィルムfとの間に粘着層を有するもの(例えば、テープ)や、シートSとフィルムfとの間に粘着層を有さないもの(例えば、PETフィルム)などを含む。ここで、本実施形態におけるフィルム付きシートSfは、薄化されたものであり、シートS及びフィルムfの厚みを、それぞれ、50(μm)及び20(μm)とするものであるが、これに限らず、例えば、シートSの厚み及びフィルムfの厚みを、それぞれ、1(μm)以下としてもよい。
【0039】
<剥離機構における剥離工程について>
図3から
図7を用いて、剥離機構100における剥離工程を説明する。なお、剥離機構100の駆動は、制御手段を主体とし、制御手段からの指示により実行される。ここで、
図3(b)、
図3(d)、
図4(b)、
図4(d)、
図5(b)、
図5(d)、
図6(b)、
図6(d)及び
図7(b)については、説明の便宜上、剥離ヘッド10の外形を破線で示すとともに、ノズル11aを実線で示している。
【0040】
<冷却準備動作について>
まず、
図3(a)及び
図3(b)を用いて、冷却準備動作について説明する。なお、初期状態として、剥離ヘッド10は、待機位置Dで停止しており、ノズル11aは、水平方向を向くように配置されている。また、剥離ステージ20上に、吸着板21を介して、剥離対象物であるフィルム付きシートSfが吸着固定されている。
【0041】
剥離ヘッド10が、剥離ヘッド駆動手段により、待機位置Dから開始位置Eへと、対角線方向L(矢印III(1)方向)に移動する。この際、粘着ローラ12は、フィルム付きシートSfの角部の一つ(後の剥離起点部Ra)の上方に配置される。その後、剥離ヘッド10が、剥離ヘッド駆動手段により、Z軸方向の下方(矢印IV(2)方向)に移動する。また、ノズル11aが、ノズル駆動機構により、回動方向(矢印V(3)方向)へと回動され、フィルム付きシートSfの角部の一つと対向配置される。
【0042】
ここで、フィルム付きシートSfの種類(例えば、厚みなど)に応じて、ノズル11aの配置を調整することができる。例えば、フィルム付きシートSfが比較的薄い場合には、フィルム付きシートSfの上方からの冷却により、フィルムf及びシートSの剛性をそれぞれ高めることができる。よって、ノズル11aを、フィルム付きシートSfから上方(矢印IV(2)方向)に離間させるとともに、回動方向(矢印V(3)方向)へと大きく回動させ、冷却流体の噴射角度α(
図3(c)参照)を比較的大きく設定する。一方、フィルム付きシートSfのフィルムfが比較的厚い場合には、フィルム付きシートSfの側方からの冷却により、フィルムf及びシートSの剛性をそれぞれ高めることができる。よって、ノズル11aを、フィルム付きシートSfへと下方向(矢印IV(2)方向)に近接させるとともに、回動方向(矢印V(3)方向)へと小さく回動させ、冷却流体の噴射角度α(
図3(c)参照)を比較的小さく設定する。
【0043】
<剥離起点部形成動作について>
次に、
図3(c)及び
図3(d)を用いて、フィルム付きシートSfが比較的薄い場合における剥離起点部形成動作を説明する。なお、フィルム付きシートSfのフィルムfが比較的厚い場合は、フィルム付きシートSfが比較的薄い場合と、冷却流体の噴射角度αが異なるのみであるため、説明は省略する。
【0044】
冷却モジュール11は、冷却処理として、ノズル11aを、フィルム付きシートSfの角部の一つに対向配置させた状態で、フィルム付きシートSfの上方から冷却流体を噴射させる。これにより、フィルム付きシートSfにおける冷却流体が噴射された局所的な冷却領域は、一時的に、非冷却領域と比べ、フィルムf及びシートSの剛性が大きくなっているため、フィルムf及びシートSの一体化が抑制されている。したがって、この局所的な冷却領域を、剥離起点部Raとして形成し、シートSからフィルムfの剥離を開始させることができる。
【0045】
ここで、フィルム付きシートSfには、シートSとフィルムfとの間に粘着層を有し、この粘着層の粘着力(化学的結合力)がシートSとフィルムfとの間の密着力となるものや、シートSとフィルムfとの間に粘着層を有さず、アンカー効果による結合力(機械的結合力)、分子間相互作用による結合力(物理的結合力)などがシートSとフィルムfとの間の密着力となるものがある。従来の剥離機構では、粘着層を有するフィルム付きシートSfに対して、加熱処理を行うことにより、粘着層を発砲膨張させ、シートSとフィルムfとの密着力の低下を行うものであった。
【0046】
これに対し、本実施形態の剥離機構100は、粘着層の有無に関係なく、それぞれのフィルム付きシートSfに対して、剥離起点部Raを容易に形成することができる。なお、この冷却領域である剥離起点部Raが形成されている状態は、一時的なものであり、経時変化により、雰囲気温度へと遷移する。したがって、冷却流体の噴射により、剥離起点部Raが形成された後、迅速に、剥離起点部Raにおける剥離が行われる必要がある。
【0047】
本実施形態の剥離機構100においては、冷却処理を行うことにより、フィルムf及びシートSのそれぞれの剛性を大きくし、フィルムf及びシートSの一体化を抑制するため、従来の剥離機構が有する問題点(剥離起点部の形成が困難)を解消させ、シートSに損傷を与えずに、剥離動作を円滑に行うことができる。
【0048】
なお、本実施形態では、フィルム付きシートSfの角部の一つに剥離起点部Raが形成され、この剥離起点部Raからフィルム付きシートSfの中心位置Aに向けて、シートSからフィルムfを剥離させるものである。これは、フィルム付きシートSfの一辺に沿って均一な剥離起点部Raを形成する場合と比べ、剥離起点部Raの形成時間を短縮することができるとともに、シートSからのフィルムfの剥離を剥離線に沿って均一に維持することができる。また、本実施形態における冷却モジュール11は、剥離起点部Raを形成する際に、冷却流体を噴射するものであるが、これに限らず、例えば、ノズル11aを水平方向に走査可能な構成とし、シートSからフィルムfを剥離する際に、水平方向に走査しながら、シートS及びフィルムfの側部に対して、冷却流体を噴射してもよい。
【0049】
<粘着動作について>
図4(a)及び
図4(b)を用いて、粘着動作を説明する。剥離ヘッド10が、剥離ヘッド駆動手段により、Z軸方向の下方(矢印IV(4)方向)に移動し、粘着ローラ12の外周面12bにおける粘着性を有する粘着面が、フィルムfの剥離起点部Raに対応する領域に接触される。この際、剥離ヘッド駆動手段が、付勢部材13の付勢方向(矢印VI(5)方向)の押し込み量を調整することにより、粘着ローラ12が、フィルムfに対して所望の付勢力で押圧される。これにより、フィルムfの剥離起点部Raに対応する領域が、粘着ローラ12の粘着面により、確実に粘着保持される。さらに、ノズル11aが、ノズル駆動機構により、回動方向(矢印V(6)方向)へと回動され、水平方向を向く初期状態に戻される。これにより、後の剥離動作において、ノズル11aが他の部材との干渉を回避することができる。
【0050】
<巻付け動作について>
図4(c)及び
図4(
d)を用いて、巻付け動作を説明する。まず、剥離ヘッド10が、剥離ヘッド駆動手段により、開始位置Eから中心位置Aへ向けて、対角線方向L(矢印III(7)方向)に移動する。
【0051】
この巻付け動作において、剥離起点部Raにおける冷却効果が維持されており、フィルムf及びシートSの剛性は、非冷却領域と比べ、剛性が依然として大きくなっている。また、粘着ローラ12が、付勢部材13により、常時、付勢方向(矢印VI(5)方向)に負荷され、フィルムfが、粘着ローラ12の粘着面に粘着保持されている。さらに、フィルムfに対する粘着ローラ12の粘着面の粘着力を、シートSとフィルムfとの界面に生じる密着力より高く設定している。
【0052】
次に、剥離ヘッド10が、対角線方向L(矢印III(7)方向)へ移動するにともない、粘着ローラ12が回転軸13aを中心として、回転方向(矢印VII(8)方向)に回転される。この際、粘着ローラ12の外周面12bがフィルムfに対して転動することにより、フィルムfの剥離起点部Raに対応する領域から順に、粘着ローラ12の粘着面に巻付くように粘着保持されるともに、剥離線Pl1が形成される。
【0053】
この粘着ローラ12へのフィルムfの巻付けにより、粘着保持される面積を増加させること、つまり、フィルムfに対する粘着ローラ12の粘着力を増加させることができる。ここで、後のクランプ動作のために、粘着ローラ12に巻付くフィルムfの先端が、クランプ爪14の突起14a及び粘着ローラ12の回転軸13aを結ぶ直線より、Z軸方向の上方位置となるまで巻付けられる。
【0054】
本実施形態においては、剥離起点部形成動作後から巻付け動作までの時間は、0(s)~30(s)と設定しているが、0(s)~10(s)とすることが好ましい。このように、本実施形態においては、剥離起点部Raにおける冷却効果が維持されている時間内(例えば、冷却流体を噴射後~数秒以内)に、剥離起点部Raにおける剥離を行うことにより、剥離動作を円滑に行うことができる。
【0055】
<引上げ動作について>
図5(a)及び
図5(b)を用いて、引上げ動作を説明する。この引上げ動作は、後の剥離動作(水平方向)において、剥離ヘッド10が、剥離ステージ20、吸着板21、シートS、及び剥離させたフィルムfと、物理的に干渉することを回避するために行うものである。
【0056】
剥離ヘッド10が、剥離ヘッド駆動手段により、Z軸方向の上方(矢印IV(9)方向)に移動する。この際、粘着ローラ12は、付勢部材13により、付勢方向(矢印VI(10)方向)に負荷されるとともに、フィルムfの一部が粘着ローラ12に巻付いているため、フィルムfの粘着境界線faと剥離線Pl2との間のフィルムfに引張力が生じる。この引張力により、シートSからフィルムfが新たに剥離され、剥離線Pl1から剥離線Pl2へと移動する。ここで、粘着ローラ12が回転する際に、粘着ローラ12と付勢部材13との間で生じる摩擦力を調整することにより、引上げ動作において、粘着ローラ12が回転することを防止することができる。また、粘着ローラ12へのフィルムfの巻付けにより、フィルムfに対する粘着ローラ12の粘着力を増加させているため、引上げ動作の際に、粘着ローラ12からフィルムfが落下することを防止できる。
【0057】
<クランプ動作について>
図5(c)及び
図5(d)を用いて、クランプ動作を説明する。このクランプ動作は、後の剥離動作(水平方向)において、シートSからフィルムfを継続的に剥離させるために行うものである。
【0058】
クランプ爪14が、クランプ爪駆動機構により、近接方向(矢印VIII(11)方向)へと移動する。この際、クランプ爪14の突起14aと、粘着ローラ12との間に、粘着ローラ12の粘着面に巻付いたフィルムfが挟持される。これにより、粘着ローラ12の粘着力に加え、クランプ爪14と粘着ローラ12との挟持力により、フィルムfを、粘着ローラ12へとより堅固に支持することができる。
【0059】
<剥離動作(水平方向)について>
図6(a)及び
図6(b)を用いて、剥離動作(水平方向)を説明する。剥離ヘッド10が、剥離ヘッド駆動手段により、中心位置Aへと、対角線方向L(矢印III(12)方向)に移動する。ここで、剥離ヘッド10が中心位置Aに向かうに伴い、剥離線(Pl2,Pl3))の長さ、つまり、剥離させる領域が増加し、剥離力が比較的大きくなる。したがって、剥離線Pl3を介して、フィルムfがシートSに接着されている領域と、剥離された領域とが成す角度β1を、比較的小さな鋭角に設定するとともに、対角線方向L(矢印III(12)方向)への移動速度を、比較的低速(例えば、1(mm/sec)~50(mm/sec))に設定する。これにより、
図6(a)に示すように、粘着ローラ12の粘着力及びクランプ爪14と粘着ローラ12との挟持力が生じる方向(略水平方向)と、剥離ヘッド駆動手段によりフィルムfに生じる引張力の方向とを一致させることができ、フィルムfが、粘着ローラ12から脱落することを防ぐとともに、シートSからフィルムfを、確実に剥離させることができる。
【0060】
<剥離動作(斜め上方向)について>
図6(c)及び
図6(d)を用いて、剥離動作(斜め上方向)を説明する。剥離ヘッド10が、剥離ヘッド駆動手段により、対角線方向L、かつ、Z軸方向の上方である斜め上方向(矢印IX(13)方向)に移動する。ここで、剥離ヘッド10が中心位置Aから終了位置Fに向かうに伴い、剥離線(Pl3,Pl4))の長さ、つまり、剥離させる領域が減少し、剥離力が比較的小さくなる。したがって、剥離線Pl4を介して、フィルムfがシートSに接着されている領域と、剥離された領域とが成す角度β2を、比較的大きな
角度に設定するとともに、斜め上方向(矢印IX(13)方向)への移動速度を、比較的高速(例えば、10(mm/sec)~100(mm/sec))に設定する。これにより、
図6(c)に示すように、粘着ローラ12の粘着力及びクランプ爪14と粘着ローラ12との挟持力が生じる方向(略水平方向)と、剥離ヘッド駆動手段によりフィルムfに生じる引張力の方向とが若干異なっていても、フィルムfが、粘着ローラ12から脱落することなく、シートSからフィルムfを、迅速に剥離させることができる。
【0061】
<剥離終了時について>
図7(a)及び
図7(b)を用いて、剥離終了時を説明する。剥離ヘッド10が、剥離ヘッド駆動手段により、終了位置Fに移動する。剥離されたフィルムfは、粘着ローラ12から垂下される。この剥離されたフィルムfは、回収機構(不図示)(例えば、吸盤、ハンドなど)により、吸着又は把持された後、クランプ爪14が、クランプ爪駆動機構により、粘着ローラ12より離間され、クランプ爪14と粘着ローラ12との挟持力が解除される。さらに、回収機構が、回収機構駆動手段(不図示)により、回収箱(不図示)の上方へと移動した後、吸着又は把持を解除する。これにより、フィルムfが、粘着ローラ12から剥離され、回収箱へと排出される。その後、剥離ヘッド10は、初期状態である待機位置Dに移動し、他のフィルム付きシートSfに対する剥離工程を行う。
【0062】
(その他の実施形態について)
本実施形態において、冷却モジュール11は、ノズル11aを介して、冷却流体を噴射するものとしたが、これに限らない。例えば、ノズル11aの代わりに、小型の送風機を採用するものであってもよいし、または、フィルム付きシートSfの角部の一つ(剥離起点部Ra)に対応する剥離ステージ20の領域に、ペルチェ素子などを設け、フィルム付きシートSfの下方より冷却するものであってもよい。これにより、剥離ヘッド10を軽量化させることや、粘着ローラ12とフィルム付きシートSfとの距離を予め近接させることができるため、剥離起点部Raにおける冷却効果が維持されている時間内に剥離動作を確実に行うことができる。なお、冷却モジュール11を剥離ステージ20に設ける場合には、冷却モジュール11を、フィルム付きシートSfの少なくとも剥離起点部Raに対応する領域に設けるものであればよいため、例えば、フィルム付きシートSfの全体に対応する領域に設けるものであってもよい。
【0063】
(発明の実施態様)
本発明の第1の実施の態様は、フィルム付きシートSfを固定状態で載置する剥離ステージ20と、剥離ステージ20に載置されたシートSからフィルムfを剥離させる剥離ヘッド10と、フィルム付きシートSfの外周部の一部を冷却し、剥離起点部Raを形成する冷却手段11と、を備え、剥離ヘッド10は、剥離起点部Raにおけるフィルムfを保持した状態で、剥離ヘッド10及び剥離ステージ20の相対移動により、シートSからフィルムfを剥離するフィルム保持手段12,14を含む剥離機構100である。
【0064】
このように、フィルム付きシートSfの外周部の一部を冷却し、剥離起点部Raを形成することにより、フィルムf及びシートSのそれぞれの剛性を大きくし、フィルムf及びシートSの一体化を抑制することができるため、従来の剥離機構が有する問題点(剥離起点部の形成が困難)を解消させることができるという効果を奏する。
【0065】
本発明の第2の実施の態様は、第1の実施の態様において、更に、冷却手段11は、剥離ヘッド10に設けられ、フィルム付きシートSfの上方及び側方より冷却し、剥離起点部Raを形成する。
【0066】
このように、フィルム付きシートSfの種類(例えば、厚みなど)に応じて、冷却位置を調整することができるという効果を奏する。
【0067】
本発明の第3の実施の態様は、第1の実施の態様において、更に、冷却手段11は、剥離ステージ20に設けられ、フィルム付きシートSfの下方より冷却し、剥離起点部Raを形成する。
【0068】
これにより、粘着ローラ12とフィルム付きシートSfとの距離を予め近接させることができるため、剥離起点部Raにおける冷却効果が維持されている時間内に剥離動作を確実に行うことができるという効果を奏する。
【0069】
本発明の第4の実施の態様は、第1~第3のいずれかの実施の態様において、更に、フィルム保持手段12,14は、剥離ヘッド10に垂下して設けられる付勢部材13と、付勢部材13に回転可能に設けられ、外周面12bの少なくとも一部に粘着面を備える粘着ローラ12と、を有し、粘着ローラ12は、付勢部材13により、粘着面が剥離起点部Raに押圧されるとともに、シートSに対して相対移動することにより、粘着面にフィルムfを巻付けることである。
【0070】
これにより、剥離起点部Raにおける冷却効果が維持されている時間内に剥離動作を行うことができるという効果を奏する。
【0071】
本発明の第5の実施の態様は、第4の実施の態様において、更に、フィルム保持手段12,14は、粘着ローラ12に対向配置され、粘着ローラ12に対して離接方向に移動可能であるクランプ爪14をさらに有し、クランプ爪14は、粘着ローラ12に近接配置された状態において、粘着ローラ12の粘着面に巻付いたフィルムfを粘着ローラ12との間に挟持することである。
【0072】
このように、クランプ爪14と粘着ローラ12との挟持力により、フィルムfを、粘着ローラ12に対して、より堅固に支持することができるため、剥離動作(水平方向、斜め上方向)の際に、フィルムfが、粘着ローラ12から脱落することを防ぐことができるという効果を奏する。
【0073】
本発明の第6の実施の態様は、第1~第5のいずれかの実施の態様において、更に、フィルム付きシートSfは、略矩形形状を有しており、剥離起点部Raは、フィルム付きシートSfの一つの角部に形成され、剥離ヘッド10及び剥離ステージ20との間に、シートSの対角線方向Lへの相対移動を生じさせて、シートSからフィルムfを剥離させることである。
【0074】
これにより、フィルム付きシートSfの一辺に沿って均一な剥離起点部Raを形成する場合と比べ、剥離起点部Raの形成時間を短縮することができるとともに、シートSからのフィルムfの剥離を剥離線に沿って均一に維持することができるという効果を奏する。
【0075】
本発明の第7の実施の態様は、第1~第6のいずれかの実施の態様に係る剥離機構100と、シートSの位置合わせを行うアライメント手段200と、位置合せされたシートSを積層する積層手段300と、を備える、積層装置1である。
【0076】
これにより、品質低下を解消させたシートSを用いて、積層体を形成することができるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0077】
1 積層装置
10 剥離ヘッド
11 冷却モジュール(冷却手段)
11a ノズル
11b パイプ
11c 回動軸
12 粘着ローラ(フィルム保持手段)
12b 外周面
13 付勢部材
13a 回転軸
14 クランプ爪(フィルム保持手段)
14a 突起
20 剥離ステージ
21 吸着板
22 吸着ポート
100 剥離機構
200 アライメント手段
300 積層手段
f フィルム
fa 粘着境界線
Pl1,Pl2,Pl3,Pl4 剥離線
Ra 剥離起点部
S シート
Sf フィルム付きシート