(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】容器入り冷菓の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 9/04 20060101AFI20240920BHJP
A23G 9/24 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A23G9/04
A23G9/24
(21)【出願番号】P 2021000611
(22)【出願日】2021-01-05
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】307013857
【氏名又は名称】株式会社ロッテ
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 純子
(72)【発明者】
【氏名】神戸 寿史
(72)【発明者】
【氏名】秋山 直哉
【審査官】井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-225679(JP,A)
【文献】特開2010-46015(JP,A)
【文献】特開2019-97516(JP,A)
【文献】特開2020-010651(JP,A)
【文献】特許第5536273(JP,B1)
【文献】特開2018-144882(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180199(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面及び底面の周囲から立ち上がった側壁を有し、上面が開放された容器に所定量の冷菓材を充填する工程、
容器に充填された所定量の冷菓材が所定の硬さに凍るまで、冷菓材を冷凍硬化させる工程、
容器内の冷凍硬化した所定量の冷菓材の上面に、所定量の冷菓材の量を維持したまま、上方から所定の穴開け具を用いて掘削して穴を開ける工程、及び
前記穴の開いた所定量の冷菓材の入った容器に蓋を被せる工程、
を含む、容器入り冷菓の製造方法。
【請求項2】
前記穴を開ける工程は、掘削時に生じる掘削冷菓材を冷菓材の上面に均す均し工程を含む、請求項1に記載の容器入り冷菓の製造方法。
【請求項3】
蓋を被せた容器を-18℃以下で保管する工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の容器入り冷菓の製造方法。
【請求項4】
前記冷凍硬化させる工程における所定の硬さとは、硬さの最大応力が0.50N~8.82Nであることを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の容器入り冷菓の製造方法。
【請求項5】
前記冷凍硬化させる工程では、冷菓材の中心温度が-10℃~-18℃になるように冷凍処理をする、請求項1~3のいずれか一項に記載の容器入り冷菓の製造方法。
【請求項6】
使用する前記所定の穴開け具は、その温度が0℃~40℃に調温されたものを用いる、請求項1に記載の容器入り冷菓の製造方法。
【請求項7】
使用する前記所定の穴開け具は、その温度が10℃~20℃に調温されたものを用いる、請求項1に記載の容器入り冷菓の製造方法。
【請求項8】
前記所定の穴開け具は、一枚又は複数枚の押し羽刃を有する、請求項1に記載の容器入り冷菓の製造方法。
【請求項9】
前記所定の穴開け具は、前記押し羽刃が押す方向に対して捩じれている、請求項8に記載の容器入り冷菓の製造方法。
【請求項10】
前記冷菓材は、アイスクリームミックス又はアイスクリームミックスと削氷を混合したものを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の容器入り冷菓の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器入りの冷菓の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体と氷を攪拌・混合し、スラリー状態にしたフローズンドリンクは、当初カフェなどの限られた店頭で販売されていたが、人気の高まりとともに、コンビニエンスストアでも発売されるに至っている。
コンビニエンスストアで販売されているフローズンドリンクは、例えば、容器本体に氷菓が収容され、容器本体に収容された氷菓に空洞を保持するための中栓がされた構成のものが公知である。(例えば、特許文献1)
フローズンドリンクを食する場合は、中栓を抜いて氷菓に形成された凹部を解放し、容器本体に外力を加えて氷菓の凹部分を崩した後に液体を注ぐものである。
【0003】
係る従来の商品は、ドリンクが入る領域を保持するために、専用の中栓を用いなければならず、食する際に中栓という不用物が発生するため、ゴミ抑制などのニーズの高まりに反するという課題がある。また、中栓を氷菓から抜き取る作業が煩わしく、不衛生であるという課題もある。
そこで、中栓を有さずに凹部を形成する冷菓製造装置や冷菓の製造方法が提案されている。(例えば、特許文献2又は特許文献3)
【0004】
特許文献2に記載の冷菓材の成形方法は、冷菓材を中空の凹部形状に連続的に硬化させる方法であり、「凍結前」の冷菓材に、冷却した凸状の成形型の投入及び抜き出しを繰り返して、冷菓材に凹部を形成しつつ冷菓材を冷凍硬化させる方法である。(特許文献2の例えば請求項8を参照)
特許文献3に記載の冷菓の製造方法は、「凍結前」の冷菓材に、第1のモールドを挿入して凹部を形成し、その後、形成された凹部に第2のモールドを挿入して仕上げを行うというものである。(特許文献3の例えば要約を参照)
更に、液状物を配置するための空間が形成された冷菓が、特許文献4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5952508号公報
【文献】特許第6592068号公報
【文献】特開2020-10651号公報
【文献】特開2013-153732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2及び3に記載の冷菓材の成形方法は、いずれも、「凍結前」の冷菓材に凹部を形成しつつ冷菓材を冷凍硬化させる方法である。そのため、製造設備として、凹部を形成するための凸型の成形型(モールド)を凍結に必要な極低温に保つために、例えば液体窒素の供給・循環経路を組み込む等の必要がある。よって、多量の液体窒素を必要とし、製造設備が複雑化したり、製造コストが高価になったりするという課題がある。
【0007】
また、「凍結前」の冷菓材に凹部を形成しつつ冷菓材を冷凍硬化させるため、硬化が不十分であると、凹部表面付近の薄い部分のみが凍結することとなり、その周囲の軟らかく流動的な冷菓によって凹部が押されてしまうことで、変形や凹部の容積減少が生じることがある。その結果、冷菓の凹部を崩す(冷菓をほぐす)のが困難となる。また、液体を注ぐと凹部から溢れやすくなることで、冷菓材と液体が混ぜづらくなってしまうという課題もある。
【0008】
本発明は、先行技術においては発想されていなかった新規な方法により、穴を施した容器入り冷菓の製造方法を提供することにある。
本発明の目的は、容器に充填されて所定の硬さになるまで冷凍硬化させた「凍結後」の冷菓材に対して、所定の穴開け具を用いて必要な穴を開ける工程を含む、容器入り冷菓の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、底面及び底面の周囲から立ち上がった側壁を有し、上面が開放された容器に所定量の冷菓材を充填する工程、容器に充填された所定量の冷菓材が所定の硬さに凍るまで、冷菓材を冷凍硬化させる工程、容器内の冷凍硬化した所定量の冷菓材の上面に、所定量の冷菓材の量を維持したまま、上方から所定の穴開け具を用いて掘削して穴を開ける工程、及び前記穴の開いた所定量の冷菓材の入った容器に蓋を被せる工程を含む、容器入り冷菓の製造方法である。
【0010】
本発明の前記穴を開ける工程は、掘削時に生じる掘削冷菓材を冷菓材の上面に均す均し工程を含んでいてもよい。
本発明は、蓋を被せた容器を-18℃以下で保管する工程をさらに含んでいてもよい。
本発明において、前記冷凍硬化させる工程における所定の硬さとは、硬さの最大応力が0.50N~8.82Nであってもよい。
【0011】
本発明において、前記冷凍硬化させる工程では、冷菓材の中心温度が-10℃~-18℃になるように冷凍処理をしてもよい。
本発明の使用する前記所定の穴開け具は、その温度が0℃~40℃に調温されたものを用いてもよい。
本発明の使用する前記所定の穴開け具は、その温度が10℃~20℃に調温されたものを用いてもよい。
【0012】
本発明の前記所定の穴開け具は、一枚又は複数枚の押し羽刃を有していてもよい。
本発明の前記所定の穴開け具は、前記押し羽刃が押す方向に対して捩じれていてもよい。
本発明の前記冷菓材は、アイスクリームミックス又はアイスクリームミックスと削氷を混合したものを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、冷却制御が必要な特殊な凸型装置や液体窒素等の冷却媒体を用いる穴形成装置を使用する必要がなく、従来の製造設備に穴開け工程を追加するだけでよいので、製造効率が向上する。
さらに、容器に冷菓材を充填して冷凍硬化した後に穴を開けるため、複雑な設備を必要としない。また、穴開け具の形状変更に対する自由度が高い。さらに、冷菓材を冷凍硬化後に穴を開けるため、穴の大きさや形状が比較的安定する。さらにまた、穴の形状や表面積を容易に変更できるため、食する際の液体注入時に、冷菓材のほぐれやすさをコントロールしやすいといった種々の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る容器入り冷菓の製造工程を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、冷菓材10が充填された容器11の図解的な断面図である。
【
図3】
図3は、穴開け工程において使用される穴開け具20の一例を示す図であり、(A)は正面図、(B)は上面図、(C)は下面図である。
【
図4】
図4は、穴開け具20を用いて行う穴開け工程の内容を示す図解図である。
【
図5】
図5は、穴開け工程の後段において、必要に応じて行われる均し工程の図解図である。
【
図6】
図6は、均し工程で用いられる押し具16の例を示す図である。
【
図7】
図7は、穴開け具の掘削部の形状例を示す図であり、(A)は全体図、(B)は下面図である。
【
図8】
図8は、穴開け具の掘削部の形状例を示す図であり、(A)は全体図、(B)は下面図である。
【
図9】
図9は、穴開け具の掘削部の形状例を示す図であり、(A)は全体図、(B)は下面図である。
【
図10】
図10は、穴開け具の掘削部の形状例を示す図であり、(A)は全体図、(B)は下面図である。
【
図11】
図11は、穴開け具の掘削部の形状例を示す図であり、(A)は全体図、(B)は下面図である。
【
図12】
図12は、穴開け具の掘削部の形状例を示す図であり、(A)は全体図、(B)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、図面を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明をする。
図1は、本発明の一実施形態に係る容器入り冷菓の製造工程を、各工程単位で示すブロック図である。
容器入り冷菓の製造工程においては、まず、凍結硬化する前の冷菓材(アイスクリーム類やかき氷等の氷菓)が製造される(ステップS1~S5)。
【0016】
冷菓材の製造では、アイスクリームミックス(以下、単に「ミックス」という。)が準備される(ステップS1)。ミックスは、一例として、乳製品、糖分、油脂、安定剤、乳化剤、香料、着色料等の原料を混合して溶解したものである。また、氷を細かく砕いた削氷が準備されてもよい(ステップS2)。そして、ミックス及び削氷が混合され(ステップS3)、必要に応じて、整粒され、氷の粒がさらに細かくされてもよい(ステップS4)。得られたミックスと削氷との混合物は、フリージングされて(ステップS5)、冷菓材となる。
【0017】
フリージング(ステップS5)では、ミックス及び削氷の混合物と空気とがフリーザーに導入され、撹拌しながら例えば-2℃~-9℃程度まで急速に冷却して凍結させる。激しく撹拌しながら急速に凍結することによって空気がミックス中に気泡として取り込まれる。取り込まれた空気の体積のミックスの体積に対する比率をオーバーランというが、オーバーランが例えば0~100%になるように調整される。フリージング(ステップS5)により出来上がった冷菓材は、ミックス(及び削氷)が凍結してはいるが、硬化してはおらず、流動性を有している。
【0018】
なお、製造する容器入り冷菓の種類によっては、例えば冷菓がアイスクリームの場合には、削氷は混合されないので、上述のステップS2、S3、S4の工程は省略されてもよい。
次に、充填機において、容器が供給され(ステップS11)、供給された容器に冷菓材が充填される(ステップS12)。
【0019】
容器は、底面及び底面の周囲から立ち上がった側壁を有し、上面は開放されたものが使用される。容器の材質は、プラスチック、紙、金属等その種類を問わない。充填工程(ステップS12)では、供給された容器の開放された上面開口に対し、その上部から流動性を有する冷菓材が投入され、容器内に所定量の冷菓材が充填される。
図2に冷菓材が充填された容器の図解的な断面図を示す。
【0020】
例えば、V1mlの冷菓材10を容器11に充填する場合、一例として、(1.3~1.5)×V1mlの容積の容器11を用いるのが望ましい。なぜなら、容器11に充填されたV1mlの冷菓材10は、冷凍硬化された後、穴が開けられるので、開けられる穴の容量V2ml分だけ冷菓材10の表面が盛り上がるが、その場合にも冷菓材10を確実にかつ食し易いように収容できるからである。
【0021】
つまり、容器11の容積V0と、充填する冷菓材10の体積V1と、形成する穴の容積V2との関係が、V0≧V1+V2である容器11が用いられる。
容器11に充填された冷菓材10は、凍結工程に搬送され(ステップS13)、冷菓材10が所定の硬さに凍るまで冷凍硬化される。
凍結工程(ステップS13)において、冷菓材10を冷凍硬化させる所定の硬さとは、冷菓材10の硬さの最大応力が0.50N(冷菓材10の中心温度が-10℃)~8.82N(冷菓材10の中心温度が-18℃)であることが好ましい。
【0022】
冷菓材10を上述の硬さにすること、又は、冷凍硬化させた冷菓材10の中心温度を上述の温度にすることにより、次工程である穴開け工程(ステップS14)を好適に行うことができる。
穴開け工程(ステップS14)では、容器11内の冷凍硬化した冷菓材10の上面に、上方から所定の穴開け具を用いて掘削して穴を開ける。
【0023】
図3に、穴開け工程において使用される穴開け具20の一例を示す。(A)は、穴開け具20の正面図であり、(B)は穴開け具20の上面図、(C)は穴開け具20の下面図である。
図3を参照して、穴開け具20は、掘削部22と、ベース23と、被固定部24とを有し、これらが垂直に伸びる中心軸21を中心にして下方から上方へ連なっている。掘削部22は、尖った下端220と、下端220から斜め上方へ延びる3枚の先端刃221と、先端刃221から上方へ向かって中心軸21の周囲に等間隔で形成された3枚の押し羽刃222とを含む。3枚の押し羽刃222は、それぞれ、中心軸21を中心に側方へ幅が広がる形態を有し、下方から上方へと幅が漸増している。3枚の押し羽刃222の上下に延びる外エッジ223は尖った刃を形成している。また、3枚の押し羽刃222は、中心軸21に向かってその厚みが漸増している。さらに、3枚の押し羽刃222は、上面視において、外エッジ223が時計回りに捩じれている。言い換えれば、3枚の押し羽刃222は、押し羽刃222が押す方向に対して右回りに捩じれている。
【0024】
穴開け具20を、この実施形態のように、捩じれた3枚の押し羽刃222を有する構成にすると、穴開け具20を冷凍硬化した冷菓材10の上から押し下げるだけで、冷菓材10を掘削して穴を開けつつ、冷菓材10を捩じこめてほぐし、掘削時に生じる掘削冷菓材を上方へ押し上げやすいという作用を有する。
図4は、
図3で説明した穴開け具20を用いて行う穴開け工程の内容を示す図解図である。
【0025】
穴開け工程では、凍結工程(ステップS13)において冷凍硬化された冷菓材10の入った容器11が搬送され、穴開け位置に停止される。穴開け位置とは、例えば、容器11に入った冷菓材10の上面中心が、穴開け具20の下端220に対向する位置である。穴開け具20は、製造設備の例えば上下動するアクチュエータ15に被固定部24が固定されている。そして、アクチュエータ15によって、垂直に上下動される。
【0026】
図4(A)に示すように、冷菓材10の入った容器11が、穴開け具20に対向する位置に停止されると、アクチュエータ15により穴開け具20が垂直に下方へ移動開始される。そして、
図4(B)に示すように、穴開け具20の下端220が冷菓材10の上面に刺さる。穴開け具20がさらに下方へ移動されるに伴い、
図4(C)に示すように、3枚の押し羽刃222が冷菓材10をほぐしつつ、冷菓材10の内部へと侵入して冷菓材10を掘削する。
【0027】
押し羽刃222により押された冷菓材10は、押し羽刃222の体積分の冷菓材10Aが押されてほぐれ、変形する。そして、変形した冷菓材10Aは、容器11内に逃げ場がないため、押し羽刃222の刃面に沿って移動し、冷菓材10の上面部に盛り上がる。つまり、穴開け具20によって掘削された掘削冷菓材10Aが容器に入った冷菓材10の上面に盛り上がる。
【0028】
穴開け具20が所定の位置まで降下され、冷菓材10の穴開けが完了すると(
図4(C))、
図4(D)に示すように、アクチュエータ15により穴開け具20は垂直に上方へ移動される。
図4に示す穴開け工程では、穴開け具20は、アクチュエータ15によって垂直に上下動される構成(つまり、回転することなく、上下動だけする構成)を説明した。穴開け具20が降下されて冷菓材10を掘削する際、穴開け具20の3枚の押し羽刃222は、押す方向(下動方向)に対して捩じれている。そのため、3枚の押し羽刃222で下方へ押される冷菓材10には、3枚の押し羽刃222の捩じれの分だけ、捩じれ方向への力が加わり、ほぐれて変形する。その結果、冷菓材10に穴開け具20の形態よりも大きな穴を開けることができる。
【0029】
しかし、上述の構成に代え、アクチュエータ15によって保持された穴開け具20が、中心軸21を中心に自由回転し得るようにしてもよい。その場合は、アクチュエータ15によって穴開け具20が降下され、
図4(B)に示すように穴開け具20の下端220が冷菓材10の上面に刺さり、さらに穴開け具20が下方へ移動されると、穴開け具20は3枚の押し羽刃222の捩じれに沿って中心軸21を中心に右に回動しつつ冷菓材10を掘削して冷菓材10の内部へと侵入する。また、穴開け具20が上昇される際には、穴開け具20は3枚の押し羽刃222の捩じれに沿って中心軸21を中心に左に回動しつつ上昇して冷菓材10から離れる。よって、冷菓材10に穴開け具20の形態、すなわち3枚の押し羽刃222の捩じれが反映した穴を開けることができる。
【0030】
図5に、穴開け工程(ステップS14)の後段において、必要に応じて行われる均し工程の図解図を示す。
均し工程は、穴開け工程において穴を開けられ、上面が盛り上がった冷菓材10の上面を、平に均すための処理工程である。
均し工程では、
図5(A)に示すように、穴12が開けられた冷菓材10の上面に、押し具16の押し板17が所定の短時間だけ押し付けられる。その後、押し具16が上昇される。これにより、
図5(B)に示すように、容器に入った冷菓材10の上面が平らに均される。
【0031】
均し工程において用いられる押し具16は、
図6(A)に示すように、押し板17が円形の平板のものでもよいし、
図6(B)に示すように、押し板17が中心から周辺に向かって斜め真直に上り傾斜したものでもよい。また、
図6(C)に示すように、押し板17が中心から周辺に向かってゆるやかに湾曲傾斜したものでもよい。
図1を再び参照して、穴開け工程(ステップS14)において穴開けに用いた穴開け具20の温度と穴開け適性について、実験によって確認したところ、次の結果が得られた。
【0032】
品温-14℃の冷菓材10に対して穴開け具20の温度を、0℃、10℃、20℃、30℃、40℃及び50℃に調温して、各温度の穴開け具20で穴を開けた。その結果、冷菓材10に開けた穴が安定した穴形状となるのは、穴開け具20の温度が0℃~40℃の場合であり、より好ましくは、穴開け具20の温度が10℃~20℃の場合であった。
また、本実施形態においては、穴開け具20を、ステンレス鋼で一体成形した。しかし、穴開け具20は、熱伝導率のよい金属、例えば銅やアルミで形成したり、表面に銅メッキやアルミメッキ等を施した金属製のものとしてもよい。熱伝導率のよい金属の場合、穴開け具20と冷菓材10との接触面が良好にほぐされ、穴開け具20が冷菓材10に侵入し易くなる。
【0033】
穴開け工程(ステップS14)が終わると、穴12が開けられた冷菓材10の入った容器11は、蓋被せ工程(ステップS15)へ搬送される。
蓋被せ工程(ステップS15)では、容器11に被せる蓋が供給され、供給される蓋は容器11に自動で被せられ、容器入り冷菓が出来上がる。
出来上がった容器入り冷菓は、ダンボール詰め工程(ステップS16)において、所定個数を単位としてダンボール箱に収容される。そしてダンボール箱に入った容器入り冷菓は、保管工程(ステップS17)へ送られて、-18℃以下の低温で保存管理される。
【0034】
[穴開け手段とその適性]
上述した実施形態における穴開け工程(ステップS14)において使用可能な穴開け具について、種々検討をした。
図7~
図12は、検討をした穴開け具の掘削部(冷菓材に侵入して穴を開ける部分)の形状例を示す図である。
【0035】
図7~
図12において、それぞれ、(A)は掘削部の全体図、(B)は掘削部の下面図である。
図7に示す掘削部31は、一枚羽刃の形状である。
図8に示す掘削部32は、4枚羽刃の形状である。
図9に示す掘削部33は、6枚羽刃の形状である。
図10に示す掘削部34は、8枚羽刃の形状である。これら
図7~
図10の各羽刃31~34は、アクリル板又は木製板を用いて作成した。これら各羽刃31~34は、いずれも冷菓材に対して上下に移動させる押し刃として用いるものである。一方、
図11に示す掘削部35は、いわゆるドリルビットである。また、
図12に示す掘削部36は、木工用のドリルビットである。
図11,12に示す掘削部35及び掘削部36は、押し刃ではなく、回転させて用いる回転刃である。
【0036】
冷菓材に対して、各掘削部31~36で穴開けを行ったところ、押し刃としては、
図7~
図9に示す一枚羽刃、4枚羽刃及び6枚羽刃であれば、冷菓材に所望の穴を開けられることを確認した。
図10に示す8枚羽刃は、羽刃の枚数が多いため、穴を開けた冷菓材の穴が崩れ易いことが確認できた。
また、
図11及び
図12に示す回転刃(ドリルビット)で冷菓材に穴を開けても、良好に穴が開けられることを確認した。
【0037】
以上の検討によれば、穴開け具としては、一枚羽刃又は2~6枚の羽刃という押し刃、ドリルビットのような回転刃を用いることができる。また、穴開け具は、金属製に限らず、安全衛生面で問題がなければ、アクリル等の樹脂製や木製や竹製等も用いることができる。
さらに、穴開け具が押し刃の場合は、押し羽刃に、押す方向に対して捩じれを設けてもよいことを確認した。
【0038】
なお、容器入りの穴付冷菓を食する場合は、従来の中栓を用いて穴が形成された穴付冷菓と、冷凍硬化後にドリルビット(回転刃)で穴を開けた穴付冷菓とでは、後者の方が液体を注いだ際に良好なスラリーが形成されることも確認したので、付言しておく。ここで、良好なスラリーとは、冷菓に50℃の液体を注ぎ、蓋を閉じて上下に振る、あるいは手で容器を複数回揉んだ直後に、内容物を目開約2.5mmのメッシュを載せた漏斗に移し、分離した液体量が少ない状態をいう。
【0039】
本発明は、以上説明した実施形態の内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
10、10A 冷菓材
11 容器
12 穴
15 アクチュエータ
16 押し具
17 押し板
20 穴開け具
21 中心軸
22、31、32、33、34、35、36 掘削部
220 下端
221 先端刃
222 押し羽刃
223 外エッジ
23 ベース
24 被固定部