(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】信号機認識方法及び信号機認識装置
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240920BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G06T7/00 650Z
G06T7/00 300F
G06T1/00 330Z
(21)【出願番号】P 2021003560
(22)【出願日】2021-01-13
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】西村 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】松尾 治夫
【審査官】長谷川 素直
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-097018(JP,A)
【文献】特開2018-120600(JP,A)
【文献】特開2015-125709(JP,A)
【文献】特開2014-32435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G06T 1/00
H04N 7/18
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された撮像部を用いて、前記車両前方の画像を撮像し、
前記撮像部から入力される前記画像を処理するコントローラが、
前記画像において、前記車両前方に存在する信号機に対応する領域を信号機領域として設定し、
前記信号機領域において、輝度値が判定輝度値以上となる領域を灯火領域として抽出し、
前記灯火領域に、輝度値が飽和している飽和領域があるか否かを判定し、
前記灯火領域に前記飽和領域がないと判定した場合には、前記灯火領域の外縁形状に基づいて前記信号機の矢印信号を表す矢印の灯火を判定し、前記灯火領域に前記飽和領域があると判定した場合には、前記飽和領域の外縁形状に基づいて前記矢印の灯火を判定する
信号機認識方法。
【請求項2】
前記コントローラが、
前記灯火領域における前記灯火の色を判定し、
前記灯火領域の外縁形状又は前記飽和領域の外縁形状と、前記灯火の色とに基づいて、前記矢印の灯火を判定する
請求項1記載の信号機認識方法。
【請求項3】
前記コントローラが、
前記灯火領域に前記飽和領域がないと判定した場合には、前記灯火領域内の少なくとも1つの画素に基づいて前記灯火の色を判定し、前記灯火領域に前記飽和領域があると判定した場合には、前記灯火領域から前記飽和領域を除いた領域内にある少なくとも1つの画素に基づいて前記灯火の色を判定する
請求項2記載の信号機認識方法。
【請求項4】
前記コントローラが、
前記灯火領域の外縁形状又は前記飽和領域の外縁形状と、前記灯火の色とに基づいて、前記信号機の色信号を表す所定の色の灯火を判定する
請求項2又は3記載の信号機認識方法。
【請求項5】
車両に搭載されて、前記車両前方の画像を撮像する撮像部と、
前記撮像部から入力される画像を処理するコントローラと、を有し、
前記コントローラは、
前記画像において、前記車両前方に存在する信号機に対応する領域を信号機領域として設定し、
前記信号機領域において、輝度値が判定輝度値以上となる領域を灯火領域として抽出し、
前記灯火領域に、輝度値が飽和している飽和領域があるか否かを判定し、
前記灯火領域に前記飽和領域がないと判定した場合には、前記灯火領域の外縁形状に基づいて前記信号機の矢印信号を表す矢印の灯火を判定し、前記灯火領域に前記飽和領域があると判定した場合には、前記飽和領域の外縁形状に基づいて前記矢印の灯火を判定する
信号機認識装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号機認識方法及び信号機認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、撮影画像から、信号機の色信号を表す所定の色の灯火を含む灯火領域を抽出し、灯火領域に対して色処理を行うことで灯火の色を識別する手法が開示されている。環境照度によっては、灯火領域内に輝度値が飽和する画素が存在する。そこで、特許文献1に開示された手法では、灯火領域から飽和画素を除いた領域に対して色処理を行うこととしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された手法は、信号機の矢印信号を表す矢印の灯火と、矢印の灯火と同一色となる、信号機の色信号を表す所定の色の灯火とを区別することができない可能性がある。そのため、環境照度によっては、矢印の灯火を正確に判定することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、環境照度に関わらず、信号機の矢印の灯火を正確に判定することができる信号機認識方法及び信号機認識装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る信号機認識方法は、車両前方を撮像した画像を処理するコントローラが、画像において信号機領域を設定し、信号機領域において灯火領域を抽出し、灯火領域に飽和領域があるか否かを判定する。コントローラは、灯火領域に飽和領域がないと判定した場合には、灯火領域の外縁形状に基づいて矢印の灯火を判定し、灯火領域に飽和領域があると判定した場合には、飽和領域の外縁形状に基づいて矢印の灯火を判定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、環境照度の状態に関わらず、信号機の矢印の灯火を正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る信号機認識装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る信号機認識方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、画像に設定される信号機領域の説明図である。
【
図6A】
図6Aは、輝度値が飽和した領域がないときの矢印の灯火に対応する灯火領域を示す説明図である。
【
図6B】
図6Bは、輝度値が飽和した領域があるときの矢印の灯火に対応する灯火領域を示す説明図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係る信号機認識装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態に係る信号機認識方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、ステップS33における灯火色の判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1を参照して、本実施形態に係る信号機認識装置の構成を説明する。信号機認識装置は、撮像部10と、コントローラ30とを備えている。コントローラ30は、有線通信又は無線通信により、撮像部10と接続されている。また、コントローラ30は、有線通信又は無線通信により、運転支援装置50に接続されている。
【0011】
撮像部10、コントローラ30及び運転支援装置50は、図示しない車両に搭載されている。しかしながら、コントローラ30は、車両の外部に設置されるものであってもよい。
【0012】
撮像部10は、車両の進行方向、例えば車両前方の画像を撮像する。撮像部10はCCD、CMOS等の固体撮像素子を備えたデジタルカメラであり、車両の周囲を撮像して周辺領域の画像データを取得する。撮像部10は、焦点距離、レンズの画角、カメラの垂直方向及び水平方向の角度などが設定されることにより、車両前方の所定の範囲を撮像する。
【0013】
撮像部10によって撮像された画像は、コントローラ30に入力され、図示しない記憶部に記憶される。撮像部10は所定の周期で画像を撮像しており、コントローラ30に画像が順次入力される。
【0014】
コントローラ30は、撮像部10から入力される画像を処理する。コントローラ30は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータであり、制御装置または処理装置の一例である。コントローラ30には、コントローラ30を信号機認識装置の一部として機能させるためのコンピュータプログラムがインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、コントローラ30は、信号機認識装置が備える複数の情報処理回路として機能する。
【0015】
このコントローラ30は、複数の情報処理回路として、信号機領域設定部31、灯火領域抽出部32、飽和領域判定部33、灯火形状判定部34、及び出力部35を備えている。
【0016】
信号機領域設定部31は、画像に、信号機領域、すなわち車両前方に存在する信号機に対応する領域を設定する。灯火領域抽出部32は、信号機領域において、輝度値が判定輝度値以上となる領域を灯火領域として抽出する。飽和領域判定部33は、灯火領域に、輝度値が飽和している飽和領域があるか否かを判定する。
【0017】
飽和領域判定部33が灯火領域に飽和領域がないと判定した場合、灯火形状判定部34は、灯火領域の外縁形状に基づいて、少なくとも信号機の矢印灯器の灯火を判定する。一方、飽和領域判定部33が灯火領域に飽和領域があると判定した場合、灯火形状判定部34は、飽和領域の外縁形状に基づいて、少なくとも信号機の矢印灯器の灯火を判定する。出力部35は、灯火形状判定部34の判定結果を出力する。出力部35は、例えば運転支援装置50に、判定結果を出力する。
【0018】
運転支援装置50は、コントローラ30によって得られた信号機の認識結果に基づいて、図示しない車両の走行を支援する運転支援を行う。運転支援は、例えば、所定の走行経路に従って自動運転によって車両を走行させるものであってもよいし、車両の乗員の運転操作を支援するものであってもよい。また、運転支援は、ヒューマンインターフェース(表示装置及びスピーカ)を制御して、信号機の認識結果を車両の乗員に通知するものであってもよい。
【0019】
なお、運転支援装置50は、コントローラ30から独立したハードウェアで構成する必要はない。コントローラ30が備える複数の情報処理回路の一つとして、運転支援装置50が実行する機能を実現してもよい。
【0020】
図2を参照し、信号機について説明する。
図2に示す信号機100は、三灯式の信号機本体110と、矢印式の信号機本体120とを備えている。
【0021】
三灯式の信号機本体110は、3色の色信号、例えば、青信号、黄信号及び赤信号を表す色の灯火を行う装置である。三灯式の信号機本体110は、青色灯器111、黄色灯器112、及び赤色灯器113を備えている。3つの色灯器111、112、113は横方向に沿って並んでいる。青色灯器111は左端に位置し、黄色灯器112は中央に位置し、赤色灯器113は右端に位置している。
【0022】
青色灯器111は、内部に光源が収められて、青色の灯火を行う灯器である。青色灯器111によって行われる灯火形状は、丸形状である。青色灯器111の灯火により、青信号が表される。
【0023】
青色灯器111と同様、黄色灯器112及び赤色灯器113は、内部に光源が収められて、黄色及び赤色の灯火を行う灯器である。黄色灯器112及び赤色灯器113によって行われる灯火形状は、丸形状である。黄色灯器112及び赤色灯器113による灯火により、黄信号及び赤信号が表される。
【0024】
三灯式の信号機本体110の灯火(点灯している灯火)が表す意味は、車両が従うべき交通法規等によって定まる。例えば、青色の灯火(青信号)は「進んでも良い」の意味を表し、赤色の灯火(赤信号)は、「停止位置で止まれ」の意味を表す。黄色の灯火(黄信号)は、「停止位置に近接しているため安全に停止することができない場合を除き、停止位置で止まれ」の意味を表す。
【0025】
三灯式の信号機本体110は、青色灯器111、黄色灯器112、及び赤色灯器113が横方向に沿って左から右に並ぶ構成に限らず、青色灯器111、黄色灯器112、及び赤色灯器113が縦方向に沿って下から上に並ぶ構成であってもよい。また、青色灯器111、黄色灯器112、及び赤色灯器113の灯火形状は、丸形状であるが、これに限らない。青色灯器111、黄色灯器112、及び赤色灯器113の灯火形状は、四角形状などの多角形状であってもよい。
【0026】
また、「青色」の灯火とは、三灯式の信号機本体110が行う3色の灯火のうち、黄色及び赤色を除いた色をいう。すなわち、「青色」の灯火は、現実の色度として青色である必要はなく、緑色に相当する色度であってもよい。
【0027】
矢印式の信号機本体120は、所定向きの矢印信号、例えば、左向きの矢印信号、上向きの矢印信号、及び右向きの矢印信号を表す灯火を行う装置である。矢印式の信号機本体120は、左矢印灯器121、上矢印灯器122、右矢印灯器123を備えている。3つの矢印灯器121、122、123は横方向に沿って並んでいる。左矢印灯器121は左端に位置し、上矢印灯器122は中央に位置し、右矢印灯器123は右端に位置している。
【0028】
左矢印灯器121は、内部に光源が収められて、左向きの矢印の灯火を行う灯器である。左矢印灯器121の灯火により、左向きの矢印信号が表される。
【0029】
左矢印灯器121と同様、上矢印灯器122及び右矢印灯器123は、内部に光源が収められて、上向きの矢印及び右向きの矢印の灯火を行う灯器である。上矢印灯器122及び右矢印灯器123の灯火により、上向きの矢印信号及び右向きの矢印信号が表される。
【0030】
矢印式の信号機本体120の灯火が表す意味は、車両が従うべき交通法規等によって定まる。例えば、左向きの矢印の灯火(左向きの矢印信号)は、「赤信号に係わらず、左方向に進行できる」の意味を表し、上向きの矢印の灯火(上向きの矢印信号)は、「赤信号に係わらず、直進方向に進行できる」の意味を表す。右向きの矢印の灯火(右向きの矢印信号)は、「赤信号に係わらず、右方向に進行できる」の意味を表す。
【0031】
なお、矢印式の信号機本体120は、3つの矢印灯器121、122、123を全て備える必要はない。矢印式の信号機本体120は、信号機100が交通に与える通行権に応じて、少なくとも1つの矢印灯器121、122、123を備えていればよい。
【0032】
図3乃至6Bを参照し、信号機認識装置によって実行される一連の処理、すなわち、信号機認識方法の処理の流れを説明する。
図3に示すフローチャートは、撮像部10によって画像が撮像されるタイミングに対応して呼び出され、コントローラ30によって実行される。
【0033】
まず、信号機領域設定部31は、撮像部10から入力された画像を取得すると(ステップS10)、この画像上に信号機領域を設定する(ステップS11)。
【0034】
図4を参照し、信号機領域の設定方法を説明する。信号機領域設定部31は、例えばテンプレートマッチングにより、画像200上の信号機100を検出する。テンプレートマッチングでは、信号機領域設定部31は、標準の信号機外形の画像をテンプレートとして保持している。信号機領域設定部31は、テンプレートを1画素ずつずらしながら画像200全体を走査し、例えば輝度の分布の相関を計算する。信号機領域設定部31は、画像の中で、相関が最も高い値となったテンプレートの位置に信号機100があると判断する。そして、信号機領域設定部31は、画像200内で検出した信号機100の位置を基準に、信号機100を含む領域を信号機領域210として設定する。
【0035】
信号機領域設定部31は、車両の位置及び車両の周囲の地図を含む地図情報を参照し、或いは、車両周囲の物体を検出する物体検出センサの検出結果を参照してもよい。この場合、信号機領域設定部31は、車両と信号機までの距離に応じて、参照するテンプレートの大きさを使い分けることで、画像内の信号機を早期に検出することができる。
【0036】
信号機の検出方法は、テンプレートマッチングに限定されない。信号機の検出は、AdaBoost、SVM(Support Vector Machine)のような機械学習に基づく処理を行う画像処理手段が、画像特徴量に基づいて行ってもよい。画像特徴量としては、画像中の複数領域間の輝度変化の総和を示すHaar-like特徴量、強度テクスチャを抽出できるLBP(Local Binary Pattern)特徴量、画像勾配の強度を方向別ヒストグラムとして表現したHOG(Histogram of Gradient)などを用いることができる。あるいは、信号機の位置情報を含んだ予め記憶している地図上における車両の位置、車両に対する撮像部10の撮像方向、車両姿勢から画像上における信号機の位置を特定する事も可能であり、テンプレートマッチングを用いなくとも信号機領域210を設定することが可能である。
【0037】
図3において、灯火領域抽出部32は、信号機領域において、輝度値が判定輝度値以上となる領域を灯火領域(灯火が点灯している領域)として抽出する(ステップS12)。判定輝度値は、画像200において信号機100の灯火と、それよりも低い輝度値となる物体とを区別することができる輝度値の境界値であり、実験又はシミュレーションを通じて予め設定されている。
【0038】
例えば
図4に示すように、信号機100の灯火状態が、赤色灯器113の赤色の灯火、左矢印灯器121の左向きの矢印の灯火、及び上矢印灯器122の上向きの矢印の灯火であるとする。灯火領域抽出部32は、
図5に示すように、それぞれの灯火に対応する領域を灯火領域113a、121a、122aとして抽出する。
【0039】
矢印の灯火の場合、直線形状の第1灯火領域と、屈曲形状の第2灯火領域といったように、1つの矢印の灯火であっても個別の灯火領域として抽出されることがある。そこで、灯火領域抽出部32は、第1灯火領域及び第2灯火領域の位置関係及び相互の向きを評価し、矢印の灯火となる条件を満たした場合に、第1及び第2灯火領域を一つの灯火領域として統合すること好ましい。これにより、矢印の灯火に対応する灯火領域を適切に判定することができる。
【0040】
つぎに、
図6A及び
図6Bを参照し、上矢印灯器122の上向きの矢印の灯火を例に、照度環境による灯火領域の違いを説明する。日中のように環境照度が高い場合、灯火領域抽出部32によって抽出される灯火領域122aは、
図6Aに示すように、上矢印灯器122の灯火形状と対応する。
【0041】
一方、薄暮のように環境照度が日中に比べて低下した場合には、画像200の中で、上矢印灯器122の矢印の灯火に対応する輝度値が画像全体の輝度値と比べて相対的に高くなる。そのため、
図6Bに示すように、矢印の灯火及びその近傍では輝度値が飽和している飽和領域122bとなり、その周囲に矢印の灯火に対応する色(青色)がぼんやりと現れる。このため、灯火領域抽出部32は、矢印の灯火及びその周囲を含む領域を灯火領域122aとして抽出する。この灯火領域122aの形状は、略丸形状と類似し、色灯器111、112、113の灯火と区別が困難となる。特に、環境照度が低い状態で画像中の周囲物体を判別するために露光を高くした場合には輝度値が飽和し易くなり、矢印の灯火と色灯器111、112、113の灯火との区別が困難となり易い。
【0042】
図3において、飽和領域判定部33は、灯火領域に、輝度値が飽和している飽和領域があるか否かを判定する(ステップS13)。この判定を行う場合、飽和領域判定部33は、灯火領域における飽和領域の面積比を算出し、この面積比が判定値以上である場合、すなわち、灯火領域の中に一定の割合以上の飽和領域が存在する場合に限り、飽和領域があると判定してもよい。
【0043】
灯火領域に飽和領域がないと判定されると(ステップS13でNO)、灯火形状判定部34は、灯火領域の外縁を抽出し(ステップS14)、灯火領域の外縁形状を判定する(ステップS15)。
【0044】
例えば
図6Aに示すように、灯火領域122aに飽和領域がない場合、灯火領域122aの形状は、上矢印灯器122の灯火形状と対応する。よって、灯火形状判定部34は、灯火領域122aの外縁形状から、上向きの矢印という形状を判定することができる。すなわち、灯火形状判定部34は、灯火領域122aの外縁形状に基づいて、上矢印灯器122の灯火を判定することできる。
【0045】
図3において、灯火領域に飽和領域があると判定されると(ステップS13でYES)、灯火形状判定部34は、飽和領域及びその外縁を抽出し(ステップS16、S17)、飽和領域の外縁形状を判定する(ステップS18)。
【0046】
例えば
図6Bに示すように、灯火領域122aに飽和領域がある場合、灯火領域122aは矢印の灯火とその周囲を含む。そのため、灯火領域122aの形状は、上矢印灯器122の灯火形状と対応しない。一方、飽和領域122bの形状は、上矢印灯器122の灯火の影響が強く反映されるので、上矢印灯器122の灯火形状とする。よって、灯火形状判定部34は、飽和領域122bの外縁形状から、上向きの矢印という形状を判定することができる。すなわち、灯火形状判定部34は、飽和領域122bの外縁形状に基づいて、上矢印灯器122の灯火を判定することできる。
【0047】
図5に示すように、複数の灯火領域113a、121a、122aが存在する場合、飽和領域判定部33及び灯火形状判定部34は、灯火領域毎に、飽和領域の有無、及び、灯火領域の外縁形状又は飽和領域の外縁形状に基づく形状判定を行う。これにより、上述した上向きの矢印の他、左向きの矢印、及び丸という形状を判定することができる。その結果、灯火形状判定部34は、灯火領域の外縁形状又は飽和領域の外縁形状の外縁形状に基づいて、左矢印灯器121の灯火、及び三灯式の信号機本体110のいずれかの色灯器111、112、113の灯火を判定することできる。
【0048】
図3において、出力部35は、灯火形状判定部34の判定結果、すなわち、灯火の形状を、例えば運転支援装置50に出力する(ステップS19)。
【0049】
このように本実施形態の信号機認識方法では、コントローラ30が、灯火領域に飽和領域がないと判定した場合には、灯火領域の外縁形状に基づいて信号機の矢印信号を表す矢印の灯火を判定し、灯火領域に飽和領域があると判定した場合には、飽和領域の外縁形状に基づいて矢印の灯火を判定している。
【0050】
この方法によれば、飽和領域の有無に応じて、矢印の灯火を判定する基準を切り替ることができる。これにより、三灯式の信号機本体110の灯火と、矢印式の信号機本体120の灯火とを適切に区別することができるので、環境照度に関わらず、矢印の灯火を正確に判定することができる。
【0051】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る信号機認識装置及び信号機認識方法について説明する。以下、第1の実施形態と重複する内容についての説明は省略し、相違点を中心に第2の実施形態を説明する。
【0052】
図7に示すように、コントローラ30は、信号機領域設定部31、灯火領域抽出部32、飽和領域判定部33、灯火形状判定部34、及び出力部35に加え、灯火色判定部36を備えている。灯火色判定部36は、灯火領域毎に、灯火色(点灯している灯火の色)、すなわち何色の灯火であるのかを判定する。
【0053】
図8及び9を参照し、信号機認識装置によって実行される一連の処理、すなわち、信号機認識方法の処理の流れを説明する。
図8に示すフローチャートは、撮像部10によって画像が撮像されるタイミングに対応して呼び出され、コントローラ30によって実行される。
【0054】
まず、信号機領域設定部31は、撮像部10によって撮像された画像を取得し(ステップS30)、この画像上に信号機領域を設定する(ステップS31)。そして、灯火領域抽出部32は、信号機領域の中から灯火領域を抽出する(ステップS32)。
【0055】
つぎに、飽和領域判定部33及び灯火色判定部36は、灯火色、すなわち灯火領域の灯火の色を判定する(ステップS33)。
図9を参照し、灯火色を判定する処理の詳細を説明する。
【0056】
まず、飽和領域判定部33は、灯火領域に飽和領域があるか否か、すなわち、輝度値が飽和しているか否かを判定する(ステップS51)。
【0057】
輝度値が飽和していないと判定されると(ステップS51でNO)、灯火色判定部36は、灯火領域内の画素に基づいて灯火色を判定する(ステップS52)。
【0058】
灯火色判定部36は、灯火領域内に存在する複数の画素のうち、少なくとも一つの画素を用いて灯火色を判定すればよい。ただし、灯火色判定部36は、灯火領域内に存在する複数の画素を統計的に処理し、灯火色を判定することが好ましい。例えば、灯火色判定部36は、灯火領域内に存在する複数の画素の各色度に基づいて、青色、黄色及び赤色のうち、最も高い頻度で現れる色度を灯火色と判定するといった如くである。
【0059】
画像の各画素がRGB値で表現される場合、灯火色判定部36は、画素毎に、RGB値をRGB空間からHSV空間に変換して、色相を得る。これにより、各画素の色度は、例えば0度(赤色)から180度(青色)を経由して360度(赤色)に至る色相で表される。灯火色判定部36は、青色灯器111の灯火を表す色相を中心とした所定の色相範囲、すなわち青色に相当する色相範囲、黄色灯器112の灯火を表す色相を中心とした所定の色相範囲、すなわち黄色に相当する色相範囲、及び赤色灯器113の灯火を表す色相を中心とした所定の色相範囲、すなわち、赤色に相当する色相範囲を保有している。灯火色判定部36は、画素毎に色相を評価し、対象の画素の色相がいずれかの色相範囲に含まれれば、対象の画素を該当する色相範囲に相当する色であると判定する。
【0060】
この判定により、抽出された灯火領域には、青色、黄色、赤色のいずれかの色が判定される。判定された色情報は、灯火領域に対して関連付けられる。
【0061】
一方、輝度値が飽和していると判定されると(ステップS51でNO)、飽和領域判定部33は、灯火領域から飽和領域を抽出し(ステップS53)、灯火領域から飽和領域を除いた領域を差分領域として抽出する(ステップS54)。
【0062】
そして、灯火色判定部36は、差分領域内の画素に基づいて灯火色を判定する(ステップS55)。差分領域内の画素に基づく灯火色の判定は、ステップS52における灯火領域内の画素に基づく灯火色の判定と同じである。
【0063】
図8において、灯火色判定部36が灯火色を黄色又は赤色と判定した場合(ステップS34においてYES)、灯火形状判定部34は、黄色灯器112又は赤色灯器113の灯火形状、すなわち、丸という形状を判定する(ステップS35)。すなわち、灯火形状判定部34は、灯火色が黄色又は赤色という情報から、黄色灯器112の灯火又は赤色灯器113の灯火を判定することできる(ステップS35)。
【0064】
一方、灯火色判定部36が灯火色を緑色と判定した場合(ステップS34でNO)、飽和領域判定部33は、灯火領域に飽和領域があるか否かを判定する(ステップS36)。
【0065】
飽和領域判定部33が灯火領域に飽和領域がないと判定すると(ステップS36でNO)、灯火形状判定部34は、灯火領域の外縁を抽出して、灯火領域の外縁形状を判定する(ステップS37)。一方、飽和領域判定部33が灯火領域に飽和領域があると判定すると(ステップS36でYES)、灯火形状判定部34は、飽和領域の外縁を抽出して、飽和領域の外縁形状を判定する(ステップS38)。ステップS37及びステップS38の処理は、第1の実施形態におけるステップS14、S15及びステップS17、S18と同じである。
【0066】
出力部35は、灯火形状判定部34の判定結果、すなわち、灯火の形状を、例えば運転支援装置50に出力する(ステップS39)。
【0067】
このように本実施形態の信号機認識方法では、コントローラ30が、灯火領域における灯火の色を判定し、灯火領域の外縁形状又は飽和領域の外縁形状と、灯火色とに基づいて、矢印の灯火を判定している。
【0068】
この方法によれば、形状のみならず、灯火色を考慮することで、三灯式の信号機本体110の灯火と、矢印式の信号機本体120の灯火とを適切に区別することができる。これにより、環境照度に関わらず、矢印の灯火を正確に判定することができる。また、灯火色を考慮することで、赤色の灯火又は黄色の灯火と判定された場合には、形状判定を行うことなく、三灯式の信号機本体110の灯火を判定することできる。
【0069】
本実施形態の信号機認識方法では、コントローラ30が、灯火領域に飽和領域がないと判定した場合には、灯火領域内の少なくとも1つの画素に基づいて灯火色を判定している。また、コントローラが、灯火領域に飽和領域があると判定した場合には、灯火領域から飽和領域を除いた領域内にある画素に基づいて灯火色を判定している。
【0070】
この方法によれば、飽和領域の有無に応じて、灯火色を判定する領域を切り替えることができる。これにより、灯火色を正確に判定することができる。
【0071】
また、本実施形態の信号機認識方法では、コントローラ30が、灯火領域の外縁形状又は前記飽和領域の外縁形状と、灯火色とに基づいて、信号機の色信号を表す所定の色の灯火を判定してもよい。
【0072】
この構成によれば、矢印の灯火のみならず、信号機の色信号を表す所定の色の灯火を正確に判定することができる。
【0073】
(変形例)
上述した第2の実施形態では、出力部35は、灯火形状判定部34によって判定された灯火の形状を出力している。しかしながら、第2の実施形態では、灯火色判定部36によって灯火色を判定している。したがって、出力部35は、灯火形状判定部34によって判定された灯火の形状のみならず、灯火色判定部36によって判定された灯火色を一緒に出力してもよい。これにより、出力部35から出力された情報から、三灯式の信号機本体110のいずれの色灯器111、112、113の灯火であるのか、矢印式の信号機本体120のいずれの矢印灯器121、122、123の灯火であるのかを適切に区別することができる。したがって、信号機100の現示を正確に認識することができる。
【0074】
以上、第1又は第2の実施形態を用いて信号機認識方法及び信号機認識装置を説明した。各実施形態に係る信号機認識装置は、それぞれの実施形態で説明した信号機認識方法を実行するものであり、信号機認識方法と同様の作用、効果を奏する。
【0075】
上述した第1又は第2の実施形態では、信号機認識装置が、運転支援装置50を備えている。しかしながら、信号機認識装置は、撮像部10及びコントローラ30だけで構成されてもよい。
【0076】
また、第1又は第2の第実施形態では、ソフトウェアによってコントローラ30が備える複数の情報処理回路を実現する例を示したが、もちろん、各情報処理回路の機能を実現するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。
【0077】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0078】
10 撮像部
30 コントローラ
31 信号機領域設定部
32 灯火領域抽出部
33 飽和領域判定部
34 灯火形状判定部
35 出力部
36 灯火色判定部
50 運転支援装置