(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】発光装置、制御装置および移動体
(51)【国際特許分類】
B62D 1/06 20060101AFI20240920BHJP
B60R 16/027 20060101ALI20240920BHJP
B60K 37/00 20240101ALI20240920BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20240920BHJP
G06F 3/01 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
B62D1/06
B60R16/027 T
B60K37/00 Z
B60W60/00
G06F3/01 510
(21)【出願番号】P 2021005854
(22)【出願日】2021-01-18
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 彩
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0273429(US,A1)
【文献】特開2019-051784(JP,A)
【文献】特開2001-309466(JP,A)
【文献】特開2001-114112(JP,A)
【文献】特開2019-137179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/06
B60R 16/027
B60K 37/00
G06F 3/01
B60W 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行時の周辺監視に対する運転者の関与度を変更可能な移動体に搭載される発光装置であって、
前記移動体における操舵装置の側方に配置された情報表示装置が前記運転者の有効視野内に位置するときに前記運転者の注視安定視野内に位置するように構成されており、前記関与度に応じた態様で発光する発光部を備えている、発光装置。
【請求項2】
走行時の周辺監視に対する運転者の関与度を変更可能な移動体に搭載される発光装置であって、
前記移動体における操舵装置の側方に配置された情報表示装置が前記運転者の有効視野内に位置する場合に前記運転者の周辺視野内に位置するように構成されており、前記関与度に応じた態様で点滅する発光部を備えている、発光装置。
【請求項3】
前記発光部は、前記操舵装置に配置されるように構成されている、請求項1または請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光部は、前記操舵装置において前記運転者の手が載置される把持部に配置されるように構成されている、請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記発光部は、前記運転者による前記周辺監視への不関与が許容される運転モードから前記運転者による前記周辺監視への関与が求められる運転モードへ遷移される場合に発光するように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記発光部は、前記運転者による前記周辺監視への不関与が許容される運転モードの継続中に発光するように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
走行時の周辺監視に対する運転者の関与度を変更可能な移動体に搭載される制御装置であって、
前記関与度に関する情報を受け付ける受付部と、
前記情報に基づいて、前記移動体における操舵装置の側方に配置された情報表示装置が前記運転者の有効視野内に位置するときに前記運転者の注視安定視野内に位置するように配置されている発光部を発光させる処理部と、
を備えている、
制御装置。
【請求項8】
走行時の周辺監視に対する運転者の関与度を変更可能な移動体に搭載される制御装置であって、
前記関与度に関する情報を受け付ける受付部と、
前記情報に基づいて、前記移動体における操舵装置の側方に配置された情報表示装置が前記運転者の有効視野内に位置するときに前記運転者の周辺視野内に位置するように配置されている発光部を点滅させる処理部と、
を備えている、
制御装置。
【請求項9】
走行時の周辺監視に対する運転者の関与度を変更可能な移動体であって、
前記移動体における操舵装置の側方に配置された情報表示装置が前記運転者の有効視野内に位置するときに前記運転者の注視安定視野内に位置するように構成されており、前記関与度に応じた態様で発光する発光部を備えている、移動体。
【請求項10】
走行時の周辺監視に対する運転者の関与度を変更可能な移動体であって、
前記移動体における操舵装置の側方に配置された情報表示装置が前記運転者の有効視野内に位置する場合に前記運転者の周辺視野内に位置するように構成されており、前記関与度に応じた態様で点滅する発光部を備えている、移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行時の周辺監視に対する運転者の関与度を変更可能な移動体に搭載される発光装置に関連する。本発明は、走行時の周辺監視に対する運転者の関与度を変更可能な移動体に搭載される制御装置にも関連する。本発明は、走行時の周辺監視に対する運転者の関与度を変更可能な移動体にも関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、発光部が搭載されたステアリングホイールを備える操舵装置を開示している。発光部は、車両が自動運転モードで走行している場合に発光するように制御されている。これにより、運転者は、車両が自動運転モードで走行していることを、発光部の発光を通じて報知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、移動体の走行時における周辺監視に対する運転者の関与度の報知性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための第一態様は、走行時の周辺監視に対する運転者の関与度を変更可能な移動体に搭載される発光装置であって、
前記移動体における操舵装置の側方に配置された情報表示装置が前記運転者の有効視野内に位置するときに前記運転者の注視安定視野内に位置するように構成されており、前記関与度に応じた態様で発光する発光部を備えている。
【0006】
上記の目的を達成するための第二態様は、走行時の周辺監視に対する運転者の関与度を変更可能な移動体であって、
前記移動体における操舵装置の側方に配置された情報表示装置が前記運転者の有効視野内に位置するときに前記運転者の注視安定視野内に位置するように構成されており、前記関与度に応じた態様で発光する発光部を備えている。
【0007】
上記の目的を達成するための第三態様は、走行時の周辺監視に対する運転者の関与度を変更可能な移動体に搭載される制御装置であって、
前記関与度に関する情報を受け付ける受付部と、
前記情報に基づいて、前記移動体における操舵装置の側方に配置された情報表示装置が前記運転者の有効視野内に位置するときに前記運転者の注視安定視野内に位置するように配置されている発光部を発光させる処理部と、
を備えている。
【0008】
上記の構成によれば、周辺監視に対する運転者の関与度に応じた態様で発光部が発光するので、運転者は周辺監視に対する運転者の関与度を直感的に把握できる。さらに、発光部は、情報表示装置が運転者の有効視野内に位置する時に運転者の注視安定視野内に位置するように配置されているので、運転者が情報表示装置を注視している状況下でも、発光部の発光が視認されうる。したがって、移動体の走行時における周辺監視に対する運転者の関与度の報知性を高めることができる。
【0009】
上記の目的を達成するための第四態様は、走行時の周辺監視に対する運転者の関与度を変更可能な移動体に搭載される発光装置であって、
前記移動体における操舵装置の側方に配置された情報表示装置が前記運転者の有効視野内に位置する場合に前記運転者の周辺視野内に位置するように構成されており、前記関与度に応じた態様で点滅する発光部を備えている。
【0010】
上記の目的を達成するための第五態様は、走行時の周辺監視に対する運転者の関与度を変更可能な移動体であって、
前記移動体における操舵装置の側方に配置された情報表示装置が前記運転者の有効視野内に位置する場合に前記運転者の周辺視野内に位置するように構成されており、前記関与度に応じた態様で点滅する発光部を備えている。
【0011】
上記の目的を達成するための第六態様は、走行時の周辺監視に対する運転者の関与度を変更可能な移動体に搭載される制御装置であって、
前記関与度に関する情報を受け付ける受付部と、
前記情報に基づいて、前記移動体における操舵装置の側方に配置された情報表示装置が前記運転者の有効視野内に位置するときに前記運転者の周辺視野内に位置するように配置されている発光部を点滅させる処理部と、
を備えている。
【0012】
上記の構成によれば、情報表示装置を注視している運転者の視野の周縁により近い位置に発光部が位置するものの、点滅は単なる発光よりも視覚刺激が強い。従って、運転者が情報表示装置を注視している状況下でも、発光部の点滅が視認されうる。これにより、移動体の走行時における周辺監視に対する運転者の関与度の報知性を高めることができる。また、情報表示装置から離れた位置に発光部を配置できるので、発光部の配置に係る制約を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る発光装置の機能構成を例示している。
【
図2】
図1の発光装置が搭載される車両を例示している。
【
図3】
図2の車両の運転者から見た情報表示装置と発光部の位置関係の一例を示している。
【
図4】
図2の車両の運転者から見た情報表示装置と発光部の位置関係の別例を示している。
【
図8】運転者による周辺監視への不関与が許容される運転モードの継続中に発光する発光部の目標輝度範囲を例示している。
【
図9】運転者による周辺監視への不関与が許容される運転モードから運転者による周辺監視への関与が求められる運転モードへの遷移時に発光する発光部の目標輝度範囲を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例について以下詳細に説明する。各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0015】
図1は、一実施形態に係る発光装置10の具体的な機能構成を例示している。発光装置10は、
図2に例示される車両20に搭載されている。車両20は、移動体の一例である。
【0016】
車両20は、走行時の周辺監視に対する運転者の関与度を変更可能に構成されている。周辺監視に対する運転者の関与度は、車両20が走行する運転モードにより変更されうる。運転モードには、運転支援機能を行う運転モードと手動運転モードが含まれる。本明細書において用いられる「運転支援」という語は、運転操作(ハンドル操作、加速、減速)、走行環境の監視、および運転操作のバックアップの少なくとも一つを少なくとも部分的に行なう制御処理を意味する。すなわち、運転支援は、速度維持機能、車間距離維持機能、衝突被害軽減ブレーキ機能、レーンキープアシスト機能のような部分的な運転支援から完全自動運転動作までを含む意味である。運転者による周辺監視への関与の要求または不関与の許容については、運転支援機能で制御処理される対象および車両環境情報などに基づいて判断されうる。本明細書において用いられる「手動運転」という用語は、運転者の手足による操作が要求される状態を意味する。手動運転モードでは、運転者による周辺監視への関与が要求される。
【0017】
図2に例示されるように、車両20の内部には、操舵装置21と情報表示装置22が配置されている。操舵装置21は、車両20の進行方向を変更する動作を行なうための装置である。操舵装置21は、把持部211と軸部212を備える。把持部211は、運転者の手の載置を許容するように構成されている。軸部212は、把持部211により回動可能である。軸部212の回動は、車両20の進行方向を変更する動作に対応付けられている。情報表示装置22は、ナビゲーション情報、エンターテインメント情報などの様々な情報を表示する表示装置である。情報表示装置22は、車両20における操舵装置21の側方に配置されている。本明細書で用いられる「操舵装置21の側方」という表現は、操舵装置21の側面に対向する領域に加えて操舵装置21の斜め前方および斜め後方に位置する領域も含む意味である。本例においては、情報表示装置22は、車両20において操舵装置21の斜め前方に位置するセンタクラスタ23に配置されている。
【0018】
図1に例示されるように、発光装置10は、発光部11を備えている。
図2に例示されるように、発光部11は、操舵装置21における把持部211に配置されている。発光部11は、把持部211において、運転席24に着座する運転者が情報表示装置22を見ているときに発光部11の発光を視認可能な位置に配置される。
【0019】
図3に例示されるように、人間の視野は、有効視野A1、注視安定視野A2および周辺視野A3に分類されうる。本明細書においては、有効視野A1は、瞬時に情報の受容が可能な範囲として定義される。本明細書においては、注視安定視野A2は、無理な探索動作なしで情報の受容が可能な範囲として定義される。注視安定視野A2は、有効視野A1を包囲するように広がっている。本明細書においては、周辺視野A3は、注視安定視野A2を包囲するように広がっている視野の残りの部分として定義される。
【0020】
本例においては、発光部11は、情報表示装置22が運転者の有効視野A1内に位置するときに運転者の注視安定視野A2内に位置するように配置されている。
【0021】
図1に例示されるように、発光装置10は、制御装置12を備えている。制御装置12は、受付部121と処理部122を備えている。受付部121は、車両20の走行時の周辺監視に対する運転者の関与度に関する情報Iを受け付け可能なインターフェースとして構成されている。関与度に関する情報Iは、車両20の走行を制御する車両制御部25から取得されうる。
【0022】
関与度に関する情報Iがアナログデータの形態である場合、受付部121は、A/Dコンバータを含む適宜の変換回路を備える。処理部122は、デジタルデータの形態である情報Iを処理の対象とする。
【0023】
処理部122は、関与度に関する情報Iに基づいて発光部11を発光させる発光信号Sを出力部123に出力させるように構成されている。発光部11は、発光信号Sに基づいて関与度に応じた態様で発光する。
【0024】
発光信号Sは、アナログ信号であってもよいし、デジタル信号であってもよい。発光信号Sがアナログ信号である場合、出力部123は、D/Aコンバータを含む適宜の変換回路を備える。
【0025】
上記の構成によれば、周辺監視に対する運転者の関与度に関する情報Iに基づいて発光部11が発光するので、運転者は周辺監視に対する運転者の関与度を直感的に把握できる。さらに、発光部11は、情報表示装置22が運転者の有効視野A1内に位置するときに運転者の注視安定視野A2内に位置するように配置されているので、運転者が情報表示装置22を注視している状況下でも、発光部11の発光が視認されうる。したがって、車両20の走行時における周辺監視に対する運転者の関与度の報知性を高めることができる。
【0026】
処理部122は、車両20の走行時の周辺監視に対する運転者の関与度に応じて異なる態様で発光部11を発光させるように構成されうる。
【0027】
例えば、処理部122は、受付部121により運転者による周辺監視への不関与が許容される運転モードから運転者による周辺監視への関与が求められる運転モードへの遷移に関する遷移情報I1を受け付けた場合、発光部11を第一態様で発光させる第一発光信号S1を出力部123に出力させうる。発光部11は、第一発光信号S1に基づいて第一態様で発光する。
【0028】
また、処理部122は、受付部121により運転者による周辺監視への不関与が許容される運転モードの走行継続に関する継続情報I2を受け付けた場合、発光部11を第二態様で発光させる第二発光信号S2を出力部123に出力させうる。発光部11は、第二発光信号S2に基づいて第一態様とは異なる第二態様で発光する。
【0029】
第一態様と第二態様は、発光色、発光時間および発光時間長と非発光時間長の比の少なくとも一つが異なるように設定されうる。例えば、処理部122は、遷移情報I1を受け付けると、赤色または黄色で点滅するように発光部11を発光させうる。また、処理部122は、継続情報I2を受け付けると、青色または緑色で点灯するように発光部11を発光させうる。
【0030】
このような構成によれば、周辺監視に対する運転者の関与度に応じて発光部11の発光態様が相違するので、運転者は周辺監視の必要性の有無を直感的に把握できる。
【0031】
本実施形態においては、発光部11は、情報表示装置22が運転者の有効視野A1内に位置するときに運転者の注視安定視野A2内に位置するように配置されている。しかしながら、
図4に例示されるように、発光部11は、情報表示装置22が運転者の有効視野A1内に位置するときに運転者の周辺視野A3内に位置するように配置されうる。
【0032】
この場合、制御装置12の処理部122は、関与度に関する情報Iに基づいて発光部11を点滅させる発光信号Sを出力部123に出力させるように構成されうる。発光部11は、発光信号Sに基づいて点滅する。
【0033】
本例の場合、情報表示装置22を注視している運転者の視野の周縁により近い位置に発光部11が位置するものの、点滅は単なる発光よりも視覚刺激が強い。したがって、運転者が情報表示装置22を注視している状況下でも、発光部11の点滅が視認されうる。これにより、車両20の走行時における周辺監視に対する運転者の関与度の報知性を高めることができる。また、情報表示装置22からより離れた位置に発光部11を配置できるので、発光部11の配置に係る制約を軽減できる。
【0034】
処理部122は、車両20の走行時の周辺監視に対する運転者の関与度に応じて異なる態様で点滅するように発光部11を発光させうる。
【0035】
例えば、処理部122は、受付部121により遷移情報I1を受け付けた場合、発光部11を第三態様で点滅させる第三発光信号S3を出力部123に出力させうる。発光部11は、第三発光信号S3に基づいて第三態様で点滅する。
【0036】
また、処理部122は、受付部121により継続情報I2を受け付けた場合、発光部11を第四態様で点滅させる第四発光信号S4を出力部123に出力させうる。す発光部11は、第四発光信号S4に基づいて、第三態様とは異なる第四態様で点滅する。
【0037】
第三態様と第四態様は、点滅周期、および一点滅周期における発光時間長と非発光時間長の比の少なくとも一つが異なるように設定されうる。第三態様と第四態様は、さらに発光色が異なるように設定されうる。例えば、処理部122は、遷移情報I1を受け付けると、赤色または黄色でかつ第一周期で点滅するよう発光部11を発光させる。また、処理部122は、継続情報I2を受け付けると、青色または緑色で且つ第一周期よりも長い第二周期で点滅するように発光部11を発光させうる。
【0038】
このような構成によれば、周辺監視に対する運転者の関与度に応じて発光部11の発光態様が相違するので、運転者は周辺監視の必要性の有無を直感的に把握できる。
【0039】
発光部11の形状、配置および数は、適宜に定められうる。例えば、
図3に示されるように、操舵装置21の初期状態において、軸部212から見て時計の9時方向に発光部11が配置されうる。あるいは、
図5に例示されるように、操舵装置21の初期状態において、軸部212から見て時計の12時方向に発光部11が配置されうる。
【0040】
また、二つの発光部11が軸部212を中心として左右対称に配置されうる。例えば、
図6に示されるように、操舵装置21の初期状態において、軸部212から見て時計の2時方向と10時方向にそれぞれ発光部11が配置されうる。あるいは、
図7に例示されるように、操舵装置21の初期状態において、軸部212から見て時計の3時方向と9時方向にそれぞれ発光部11が配置されうる。この場合、操舵装置21が搭載される車両の仕向け先(左ハンドル地域または右ハンドル地域)に応じた発光部11の仕様変更を不要にできる。
【0041】
発光部11に対して車両20の走行時の周辺監視に対する運転者の関与度に応じて異なる目標輝度範囲が導出されうる。例えば、
図8は、運転者による周辺監視への不関与が許容される運転モードの継続中に発光する発光部11の目標輝度範囲R1を示している。
図9は、運転者による周辺監視への不関与が許容される運転モードから運転者による周辺監視への関与が求められる運転モードへの遷移時に発光する発光部11の目標輝度範囲R2を例示している。
【0042】
図8および
図9において、横軸は、発光部11の輝度値を表している。左縦軸は、発光部11の発光がどの程度運転者により気付かれ易いか、すなわち報知性を表している。右縦軸は、発光部11が発光することの煩わしさを運転者がどの程度許容できるか、すなわち許容度を表している。
【0043】
実線で示されるグラフG1は、発光時における発光部11の輝度値と報知性の関係を例示している。発光部11の輝度値が高くなると、報知性は高くなることがわかる。すなわち、発光部11の輝度値が高くなると、運転者が発光部11の発光に気づき易くなる。一方、一点鎖線で示されるグラフG2は、発光時における発光部11の輝度値と許容度の関係を例示している。発光部11の輝度値が高くなると、許容度が低くなることがわかる。すなわち、発光部11の輝度値が高くなると、発光部11の発光に対して運転者が煩わしさを抱き易くなる。グラフG1とグラフG2が交わる輝度値X0は、報知性と許容度の両方が考慮された輝度値を示している。すなわち、輝度値X0よりも輝度値が低くなるほど許容度が高いことが優先され、輝度値X0よりも輝度値が高くなるほど報知性が高いことが優先される。
【0044】
例えば、
図8に示されるように、運転者による周辺監視への不関与が許容される運転モードの継続中に発光する発光部11の目標輝度範囲R1は、報知性に加えて許容度も考慮した目標輝度範囲に設定されうる。具体的には、目標輝度範囲R1は、輝度値X0よりも低い輝度値X1から輝度値X2までの輝度範囲に設定されうる。X1およびX2の値は、適宜定められうる。
【0045】
すなわち、運転者による周辺監視への不関与が許容される運転モードの継続中においては、気づき易さに加えて煩わしくなさも考慮した目標輝度範囲R1に設定されるので、運転者は当該運転モードの継続を確認でき、かつ、発光部11の発光による煩わしさを低減できる。
【0046】
一方、
図9に例示されるように運転者による周辺監視への不関与が許容される運転モードから運転者による周辺監視への関与が求められる運転モードへ遷移されるときに発光する発光部11の目標輝度範囲R2は、報知性を優先した目標輝度範囲に設定されうる。具体的には、目標輝度範囲R2は、輝度値X0から輝度値X3までの輝度範囲に設定されうる。X3の値は、適宜定められうる。
【0047】
すなわち、運転者による周辺監視への不関与が許容される運転モードから運転者による周辺監視への関与が求められる運転モードへ遷移される場合においては、気づき易さを優先した目標輝度範囲R2に設定されるので、運転者は当該運転モードの遷移をより確実に把握できる。
【0048】
図10は、
図8および
図9に例示された導出方法に基づいて得られた目標輝度範囲の具体的な数値を例示している。本例においては、
図5または
図7に例示される構成を有しており、かつ緑色または赤色に発光する発光部11の夜間および昼間における目標輝度範囲が示されている。
【0049】
目標輝度範囲は、運転者による周辺監視への不関与が許容される運転モードの継続中よりも、周辺監視への不関与が許容される運転モードから周辺監視への関与が求められる運転モードへの遷移時の方が高く設定されうる。例えば
図10に示されるように、夜間における発光部11の目標輝度範囲は、運転者による周辺監視への不関与が許容される運転モードの継続中よりも、周辺監視への不関与が許容される運転モードから周辺監視への関与が求められる運転モードへの遷移時の方が高く設定されうる。
【0050】
一方、昼間における発光部11の目標輝度範囲は、運転者による周辺監視への不関与が許容される運転モードの継続中よりも、周辺監視への不関与が許容される運転モードから周辺監視への関与が求められる運転モードへの遷移時の方が低く設定されうる。本例においては、運転者による周辺監視への不関与が許容される運転モードの継続中は発光部11を緑色に発光させ、周辺監視への不関与が許容される運転モードから周辺監視への関与が求められる運転モードへの遷移時は発光部11を赤色に発光させている。車両20の内部が明るい昼間においては赤色よりも緑色の方が気づき易さが低減するので、運転者による周辺監視への不関与が許容される運転モードの継続中における目標輝度範囲が高めに設定されうる。すなわち、目標輝度範囲は、発光部11の発光色の相違に依存して設定されうる。
【0051】
目標輝度範囲は、発光部11の構成に依存して設定されうる。例えば
図10に示されるように、運転者による周辺監視への不関与が許容される運転モードの継続中においては、
図5に例示される発光部11よりも
図7に例示される発光部11の方が、昼間および夜間の両方における目標輝度範囲が高めに設定されうる。同様に、周辺監視への不関与が許容される運転モードから周辺監視への関与が求められる運転モードへの遷移時においては、
図5に例示される発光部11よりも
図7に例示される発光部11の方が、昼間および夜間の両方における目標輝度範囲が高めに設定されうる。
図5の構成よりも
図7の構成の方が発光部11の発光に対する気づき易さが低減するので、
図7の構成の目標輝度範囲が高めに設定されうる。
【0052】
目標輝度範囲は、車両20の周囲環境に依存して設定されうる。例えば
図10に示されるように、運転者による周辺監視への不関与が許容される運転モードの継続中においては、夜間の目標輝度範囲よりも昼間の目標輝度範囲が高めに設定されうる。同様に、周辺監視への不関与が許容される運転モードから周辺監視への関与が求められる運転モードへの遷移時においては、夜間の目標輝度範囲よりも昼間の目標輝度範囲が高めに設定されうる。夜間よりも昼間の方が車両20の内部が明るく発光部11の発光に対する気づき易さが低減するので、昼間の目標輝度範囲が高めに設定されうる。
【0053】
なお、
図7に例示される構成に代えて
図6に例示される構成を有する発光部11についても同様の結果が導き出される。
【0054】
これまで説明した各機能を有する処理部122は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されうる。ROMは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。プロセッサは、ROM上に記憶されたコンピュータプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。上記のコンピュータプログラムは、汎用メモリにプリインストールされてもよいし、無線通信ネットワークを介して外部サーバ装置からダウンロードされて汎用メモリにインストールされてもよい。この場合、外部サーバ装置は、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。
【0055】
処理部122は、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの上記のコンピュータプログラムを実行可能な専用集積回路によって実現されてもよい。この場合、当該専用集積回路に含まれる記憶素子に上記のコンピュータプログラムがプリインストールされる。当該記憶素子は、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。処理部122は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによっても実現されうる。
【0056】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の実施形態に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更・改良されうる。
【0057】
発光部11は、半導体発光素子、側面発光型の光ファイバなどにより実現されうる。半導体発光素子の例としては、発光ダイオード、レーザダイオード、EL素子などが挙げられる。
【0058】
発光部11は、操舵装置21の把持部211に配置されている。しかしながら、発光部11は、情報表示装置22が運転者の有効視野A1内に位置するときに運転者の注視安定視野A2または周辺視野A3内に位置するのであれば、車両20の内部における把持部211とは異なる場所に配置されうる。例えば、
図2に示されるように、発光部11は、操舵装置21において把持部211と軸部212を接続しているスポーク213に配置されうる。あるいは、発光部11は、操舵装置21とは異なる場所に配置されうる。例えば、発光部11は、センタクラスタ23の情報表示装置22に隣接する位置やメータ―パネル26などに配置されてもよい。
【0059】
情報表示装置22は、センタクラスタ23に配置されている。しかしながら、情報表示装置22は、操舵装置21の側方に配置されるのであれば、異なる場所に配置されうる。例えば、情報表示装置22は、
図2に例示されるダッシュボード27上に配置されうる。このような構成においても、情報表示装置22が運転者の有効視野A1内に位置するときに運転者の注視安定視野A2または周辺視野A3内に位置するように発光部11を配置することにより、車両20の走行時における周辺監視に対する運転者の関与度の報知性を高めることができる。
【0060】
発光装置10は、車両20以外の移動体にも搭載されうる。そのような移動体の例としては、鉄道、船舶、航空機などが挙げられる。
【符号の説明】
【0061】
10 発光装置、11 発光部、20 車両、21 操舵装置、22 情報表示装置、211 把持部、A1 有効視野、A2 注視安定視野、A3 周辺視野