(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】セメント用混合材、セメント組成物、およびセメント組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 18/10 20060101AFI20240920BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C04B18/10 A
C04B18/10 Z
C04B28/02
(21)【出願番号】P 2021008148
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2020008693
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141966
【氏名又は名称】新井 範彦
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】桐野 裕介
(72)【発明者】
【氏名】内田 俊一郎
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-119928(JP,A)
【文献】特開2006-193367(JP,A)
【文献】特開2001-316145(JP,A)
【文献】特開平02-141448(JP,A)
【文献】特開平05-194007(JP,A)
【文献】特開2013-170121(JP,A)
【文献】特開2014-202448(JP,A)
【文献】特開平04-182339(JP,A)
【文献】特許第6808883(JP,B1)
【文献】特開2021-116193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭灰、および
下記バイオマス灰の含有率の合計を100質量%として、前記バイオマス灰を10~100質量%含む、セメント用混合材。
[バイオマス灰]
(a)ブレーン比表面積が4000~10000cm
2
/gである。
(b)バイオマス灰中のガラス(無色のガラスおよび有色のガラス)の含有率が35~70体積%である。および
(c)K
2
Oの含有率が2~10質量%である。
【請求項2】
前記バイオマス灰が
、石灰石由来の粒子を10~50体積%含む、請求項1に記載のセメント用混合材。
【請求項3】
前記バイオマス灰が、パーム椰子殻を燃料の一部または全部に用いた火力発電所の循環流動床式焼却炉から得られる飛灰である、請求項1
または2に記載のセメント用混合材。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載のセメント用混合材とセメントを少なくとも含む、セメント組成物。
【請求項5】
粉砕および/または分級して製造した請求項1~
3のいずれか1項に記載のセメント用混合材、並びに、セメントを少なくとも混合して製造する、セメント組成物の製造方法。
【請求項6】
粉砕および/または分級して製造した請求項1~
3のいずれか1項に記載のセメント用混合材、セメント、骨材、および水を少なくとも混練して製造する、セメント組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス灰を含むセメント用混合材、該セメント用混合材を含むセメント組成物、および該セメント組成物の製造方法に関する。なお、本発明においてセメント用混合材は、セメント用混和材、およびコンクリート用混和材も含む概念である。
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電所で石炭を燃焼して得られる石炭灰は、セメント分野ではセメントの原料である粘土と化学成分が似ているため粘土代替品や、セメント用混和材(JIS A 6201 「コンクリート用フライアッシュ」)として、長年に渡り用いられてきた。しかし、年々深刻になる地球温暖化の対策のため、今後、火力発電所では石炭に代えて草木竹等のバイオマスの使用が増加すると予想される。
しかし、バイオマス灰には、バイオマスを単独で燃却して得られる専焼灰と、バイオマスと石炭を混合して燃焼して得られる混焼灰があるが、いずれもセメント用混合材として用いる場合、セメント用混合材であるフライアッシュ等の石炭灰とは異なる特性を有する。例えば、非特許文献1は、セメントと木質バイオマス灰(専焼灰)を各種の割合で置換した混合セメントのモルタルの圧縮強度が記載されている。バイオマス灰の置換率が高くなる程、混合セメントモルタル/ベースセメントモルタルの強度比(活性度指数)は小さくなることから、バイオマス灰はモルタルの強度を低下させる。したがって、バイオマス灰をセメント用混合材として用いることは難しいと考えられていた。なお、本発明では、専焼灰および混焼灰のいずれも単にバイオマス灰という。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】佐川ら、“木質バイオマス焼却灰のセメント混合材への適用”、第70回セメント技術大会講演要旨 2016、pp100~101
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、バイオマス灰の有効利用に資すため、バイオマス灰を用いても、石炭灰のみを用いた場合と同等以上の強度および流動性を有するセメント用混合材等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を達成するため、鋭意検討した結果、下記[1]~[4]の構成を有するセメント用混合材は、前記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
[1]石炭灰、および下記バイオマス灰の含有率の合計を100質量%として、前記バイオマス灰を10~100質量%含む、セメント用混合材。
[バイオマス灰]
(a)ブレーン比表面積が4000~10000cm
2
/gである。
(b)バイオマス灰中のガラス(無色のガラスおよび有色のガラス)の含有率が35~70体積%である。および
(c)K
2
Oの含有率が2~10質量%である。
[2]前記バイオマス灰が、石灰石由来の粒子を10~50体積%含む、前記[1]に記載のセメント用混合材。
[3]前記バイオマス灰が、パーム椰子殻を燃料の一部または全部に用いた火力発電所の循環流動床式焼却炉から得られる飛灰である、前記[1]または[2]に記載のセメント用混合材。
[4]前記[1]~[3]のいずれかに記載のセメント用混合材とセメントを少なくとも含む、セメント組成物。
[5]粉砕および/または分級して製造した前記[1]~[3]のいずれかに記載のセメント用混合材、並びに、セメントを少なくとも混合して製造する、セメント組成物の製造方法。
[6]粉砕および/または分級して製造した前記[1]~[3]のいずれかに記載のセメント用混合材、セメント、骨材、および水を少なくとも混練して製造する、セメント組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のセメント用混合材は、石炭灰のみを用いた場合と同等以上の強度および流動性を有する。また、本発明は、バイオマス灰の有効利用に資することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、前記のように、石炭灰、およびブレーン比表面積が3500cm2/g以上のバイオマス灰の含有率の合計を100質量%として、前記バイオマス灰を10~100質量%含む、セメント用混合材等である。
以下、本発明について、バイオマス灰、石炭灰、セメント用混合材の製造方法、およびセメント組成物の製造方法に分けて、詳細に説明する。
【0009】
1.バイオマス灰
本発明で用いるバイオマス灰のブレーン比表面積は、3500cm2/g以上である。ブレーン比表面積が3500cm2/g以上で、セメント用混合材の活性度指数が高く、特に材齢7日の活性度指数が高いので、該セメント用混合材を含むコンクリート等のセメント質硬化体の初期強度の発現性が良好となる。なお、該ブレーン比表面積は、好ましくは3800cm2/g以上、より好ましくは4000cm2/g以上である。また、バイオマス灰のブレーン比表面積は、好ましくは10000cm2/g以下である。ブレーン比表面積が、10000cm2/g以下であれば、セメント質硬化体を製造する際の作業性がより向上する。なお、前記ブレーン比表面積は、より好ましくは3800~8000cm2/g、さらに好ましくは4000~6000cm2/gである。バイオマス灰のブレーン比表面積は、粉砕および/または分級して調整するとよい。
【0010】
バイオマス灰の粉砕に用いる装置は、特に限定されず、例えば、チューブミル、竪型ミル、ジェットミル等が挙げられる。水洗を伴う場合は湿式で行うと効率的である。
また、バイオマス灰の分級に用いる装置は、前記のように数十μmオーダーの分級点で分級できる装置であれば特に限定されず、例えば、ふるい、慣性分級装置、遠心分級装置、または重力式分級装置等が使用でき、特に分級精度の観点から、サイクロン型エアセパレータ、およびふるい分け装置等が好ましい。水洗を伴う場合は湿式で行うと効率的である。
バイオマス灰の粒度を調整するため分級する場合、分級点は、好ましくは20~100μmである。分級点が20μm未満では、得られるバイオマス灰が少なく、また燃焼炉で揮発したアルカリ金属塩や、脱硫に用いた石灰石からの由来物が、セメントに多く混入するとセメント組成物の流動性が低下する。一方、分級点が100μmを超えるとバイオマス灰の反応面積が減少し、また燃焼炉に投入された流動砂が含まれるため、セメントと混合した場合、セメント質硬化体の強度が低下する。なお、前記分級点は、より好ましくは30~90μm、さらに好ましくは38~75μmである。このように、バイオマス灰を適度な分級点に調整することにより、ガラス質が多く、アルカリ金属塩および排脱石膏を適度に含むセメント用混合材が得られる。
【0011】
また、バイオマス灰の含有率は、石炭灰および前記バイオマス灰の合計を100質量%として、10~100質量%である。バイオマス灰の含有率が前記範囲を外れると、材齢7日における活性度指数は低下する。なお、バイオマス灰の含有率は、好ましくは20~100質量%、より好ましくは40~100質量%である。
【0012】
バイオマス灰は無色のガラスと有色のガラスを含んでいる。本発明で用いるバイオマス灰中のガラス(無色のガラスおよび有色のガラス)の含有率は、好ましくは35~70体積%である。バイオマス灰中のガラスの含有率がこの範囲を外れると、活性度指数が低くなる。なお、バイオマス灰中のガラスの含有率は、好ましくは40~65体積%、より好ましくは45~60体積%である。また、前記バイオマス灰中のガラスの30~60体積%が有色ガラスであることが好ましい。なお、有色のガラスとは無色透明でないガラスである。
また、前記バイオマス灰は、草木竹の燃焼灰や食品残渣の燃焼灰が挙げられる。これらの中でも、草木竹の燃焼灰は、K2Oの含有率がより高く、活性度指数が高いので好ましい。バイオマス発電所では、バイオマスと石炭との混焼を行う場合もあるが、石炭を燃焼して得た石炭灰は一般的にK2Oの含有率が低くなるので、混焼時の石炭の混合量によりバイママス灰の活性が異なる。そのため、本発明で用いるバイオマス灰は、石炭との混焼である場合、燃料中のバイオマスの比率が50質量%以上のものから得られた灰である。
バイオマス灰は無色のガラスより有色のガラスを多く含んでいるので、好ましくはガラス全体に占める有色のガラスの割合が50%質量%以上のものを用いる。
【0013】
前記バイオマス灰中のK2Oの含有率は、好ましくは2~10質量%である。バイオマス灰中のK2Oの含有率がこの範囲を外れると、活性度指数が低くなる。なお、バイオマス灰のK2Oの含有率は、より好ましくは3~8質量%、さらに好ましくは3~5質量%である。
さらに草木竹の燃焼灰の中でも、パーム椰子殻を燃料として用いて得られたパーム椰子殻灰(PKS灰)が、反応性に優れているため、本発明で用いるバイオマス灰(原料)として好適である。
パーム椰子殻は、パーム油生産の副産物であり、天然バイオマス・エネルギー産業で主に使用されている。パーム椰子殻は、灰分の少ない黄褐色の繊維状物質で、その粒径は5~40mm程度であり、発熱量は4000Kcal/kg程度であるため、再生可能資源を用いたエネルギー生産において、パーム椰子殻は、近年、バイオマス発電の燃料としての利用が増えている。
【0014】
パーム椰子殻を燃料とするバイオマス発電の燃焼炉には、ストーカ式や流動床式がある。流動床式である循環流動床式、および加圧式流動床式の燃焼炉で発生したバイオマス灰のいずれも、炉内で脱硫を行うために石灰石が投入されるから、カルシウムや硫黄分を多く含み、また、粒度が細かいため、活性度指数がより高くなり好適である。これらのなかでも、飛灰は、セメント用混合材に用いた場合、該セメント用混合材を含むセメント質硬化体の強度がより向上するため好適である。具体的には、粉砕および/または分級に供するバイオマス灰の粒度は、セメント質硬化体の強度がより高くなるため、好ましくはメジアン径(D50)が200μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは90μm以下である。なお、メジアン径(D50)とは、体積基準の粒度分布において、累積50%の粒径をいう。
なお、粉砕および/または分級に供する前後のバイオマス灰の粒度の測定は、レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置を用いることができる。例えば、該装置として、マイクロトラック・ベル社製のMW3300EXIIを用いて、エタノールを分散媒として1分間の超音波によりバイオマス灰を分散させた後、粒度を測定することができる。
【0015】
また、前記バイオマス灰中のCaOの含有率は、活性度指数が向上するため、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20~45質量%である。
また、前記バイオマス灰中の石灰石由来の粒子の含有率は、活性度指数が向上するため、好ましくは10~50体積%、より好ましくは15~45体積%、さらに好ましくは20~40体積%である。ここで、石灰石由来の粒子とは、生石灰、消石灰、石灰石、および石膏である。
また、前記バイオマス灰は、セメント混合材に用いた場合の流動性の低下を防ぐため、エトリンガイトおよび/またはフリーデル氏塩を含まないものが好ましい。バイオマス灰中のエトリンガイトおよび/またはフリーデル氏塩は、水分による水和により生じるもので、発塵防止のために散水した場合にバイオマス灰中に生じることがある。したがって、バイオマス灰は、一度も水分を含んでいない乾燥した状態のものが好ましい。
【0016】
さらに、前記バイオマス灰は、好ましくは水洗した飛灰である。後掲の表1に示すように、バイオマス灰は塩化物を比較的多く含むから、本発明のセメント用混合材を鉄筋コンクリートに使用する場合、鉄筋の腐食を抑制するため、事前にバイオマス灰の水洗が必要な場合がある。バイオマス灰はカリウムを多く含むため、塩素のほとんどが水溶性の塩化カリウムとして存在するので、水洗によって容易に塩素を除去できる。そして、水洗後のバイオマス灰は、水和による固結と活性度指数の低下を防止するため、好ましくは水洗後、直ちに脱水および/または乾燥するとよい。水洗後のバイオマス灰の脱水ケーキをセメントクリンカと同時に粉砕すると乾燥が不要になるから好ましい。なお、水洗を行うバイオマス灰は、水洗により塩素を除去しやすくするために、フリーデル氏塩(塩素が固定された塩)を含まない、すなわち一度も水分を含んでいないものが好ましい。
【0017】
また、バイオマス灰が未燃カーボンを多く含む場合、AE剤や減水剤の吸着や、モルタルおよびコンクリート等のセメント質硬化体の黒ずみを防止するため、好ましくは、事前にバイオマス灰の未燃カーボンを除去するとよい。また、バイオマス灰と石炭灰を混合して、バイオマス灰由来の未燃カーボンと石炭灰由来の未燃カーボンを一緒に同時に除去してもよい。バイオマス灰から未燃カーボンを除く方法として、浮遊選鉱、静電分離、分級、または加熱等が挙げられる。これらの中でも、塩素とカーボンを同時に除去できるため、好ましくは浮遊選鉱である。
【0018】
2.石炭灰
本発明で用いる石炭灰のブレーン比表面積は、好ましくは2500~6000cm2/gである。該比表面積が2500cm2/g以上であれば、混合材の活性度指数が高く、6000cm2/g以下であれば、セメント質硬化体を製造する際の作業性がより向上する。なお、前記ブレーン比表面積は、より好ましくは2700~5000cm2/g、さらに好ましくは2900~4500cm2/gである。
【0019】
前記石炭灰の強熱減量(ig.loss)は、好ましくは10質量%以下である。強熱減量が10質量%以下であれば、セメント用混合材の活性度指数が高い。なお、石炭灰の強熱減量は、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1~3質量%である。石炭灰の強熱減量を前記数値範囲内にするため、加熱および/または静電分離等により、予め、未燃カーボンを除去してもよい。
【0020】
石炭灰中のSiO2の含有率は、好ましくは50質量%以上である。該含有率が50質量%以上であれば、セメント用混合材の活性度指数が高い。なお、該SiO2の含有率は、より好ましくは51~80質量%、さらに好ましくは52~70質量%である。SiO2の含有率が80質量%を超える石炭灰は入手が困難である。
石炭灰の材齢91日の活性度指数は、好ましくは85%以上である。該活性度指数が85%以上であれば、セメント用混合材の活性度指数は高い。なお、該活性度指数は、より好ましくは90%以上である。
また、石炭灰のフロー値比は、好ましくは95%以上である。該フロー値比が95%以上であれば、セメント組成物の流動性がより高くなる。なお、該フロー値比は、より好ましくは100%以上である。
【0021】
3.セメント用混合材の製造方法
本発明のセメント用混合材の製造方法は、下記(a)~(c)のいずれかの方法から選ばれる製造方法である。
(a)バイオマス灰と石炭灰を混合して、セメント用混合材を製造する方法
(b)バイオマス灰を単独で粉砕および/または分級した後、該バイオマス灰と石炭灰を混合して、セメント用混合材を製造する方法
(c)バイオマス灰と石炭灰を同時に粉砕および/または分級して、セメント用混合材を製造する方法
【0022】
4.セメント組成物の製造方法
本発明のセメント組成物の第1の製造方法は、粉砕および/または分級して製造した前記セメント用混合材、およびセメントを少なくとも混合してセメント組成物を製造する方法であり、本発明のセメント組成物の第2の製造方法は、粉砕および/または分級して製造した前記セメント用混合材、セメント、骨材、および水を少なくとも混練してセメント組成物を製造する方法である。
本発明のセメント組成物の製造方法は、最終製品であるコンクリート等のセメント質硬化体に粉砕および/または分級したバイオマス灰が混合されていればよく、例えば、
(i)粉砕および/または分級したバイオマス灰単独とセメントを混合する方法
(ii)粉砕および/または分級したバイオマス灰、および石炭灰の二成分を混合した後、さらにセメントを混合する方法
(iii)フライアッシュセメントに粉砕および/または分級したバイオマス灰を混合する方法
(iv)セメント、粉砕および/または分級したバイオマス灰、および石炭灰の三成分を混合する方法
(v)セメントクリンカ、およびバイオマス灰を同時粉砕して粒度を調整する方法
(vi)セメントクリンカ、バイオマス灰、および石炭灰を同時粉砕して粒度を調整する方法
(vii)バイオマス灰、およびセメントクリンカを同時粉砕して混合した後、石炭灰を混合する方法
(viii)石炭灰、およびセメントクリンカを同時粉砕して混合した後、粉砕および/または分級したバイオマス灰を混合する方法
(ix)コンクリートの混練時に、粉砕および/または分級したバイオマス灰、若しくは、粉砕および/または分級したバイオマス灰および石炭灰を添加して混練する方法
が挙げられる。なお、本発明のセメント組成物は、バイオマス灰およびセメントの混合物や、該混合物、骨材、および水を混練してなるモルタル、およびコンクリートを包含する概念である。
【0023】
前記セメント組成物の製造に用いるセメントは、特に限定されず、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、エコセメント、白色セメント、耐硫酸塩セメント等が挙げられる。これらの中でも、汎用性が高い普通ポルトランドセメントが好適である。
【0024】
セメント組成物中のセメント用混合材の含有率は、好ましくは5~40質量%である。該含有率が5質量%未満では、バイオマス灰の有効利用量が少なく、40質量%を超えると、セメント組成物の初期強度発現性が低下する。なお、該含有率は、好ましくは10~30質量%、より好ましくは15~25質量%である。
【0025】
セメントやバイオマス灰には石膏が含まれるが、前記セメント組成物の強度を高めるため、さらに石膏を添加してもよい。セメント組成物中の石膏の含有率は、SO3換算で1.4~6質量%である。該含有率が1.4質量%未満では、セメント組成物の初期強度発現性が低下し、6質量%を超えると、セメント組成物の長期強度発現性が低下する。なお、該石膏の含有率は、好ましくは1.5~4質量%、さらに好ましくは1.6~3質量%である。
【0026】
本発明のセメント組成物は、強度や流動性を調整するために、石灰石微粉末および/または高炉スラグ微粉末を含んでもよい。
本発明のセメント組成物が石灰石微粉末や高炉スラグ微粉末を含む場合、セメント組成物全体を100質量%として、石灰石微粉末および/または高炉スラグ微粉末の含有率は、好ましくは10質量%以下である。石灰石微粉末および/または高炉スラグ微粉末の含有率が10質量%以下であれば、セメント組成物の強度発現性の低下が起こらない。なお、該含有率は、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。石灰石微粉末または高炉スラグ微粉末微粉末のブレーン比表面積は、好ましくは3000~10000cm2/gである。該ブレーン比表面積が、3000cm2/g以上であれば、セメント組成物の強度発現性がより向上し、10000cm2/gを超えると、粉砕コストが増加する。なお、該ブレーン比表面積は、より好ましくは4000~9000cm2/gである。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.使用材料
(1)バイオマス灰(混焼灰)
(i)パーム椰子殻灰A(略号:PKS灰A)およびB(略号:PKS灰B)
いずれも、出力2万kwの循環流動床式ボイラから捕集した飛灰である。なお、パーム椰子殻と石炭の混合燃料中の石炭の含有率は、いずれも10質量%である。
(ii)パーム椰子殻灰C(略号:PKS灰C)およびD(略号:PKS灰D)
いずれも、出力5万kwの循環流動床式ボイラから捕集した飛灰である。なお、パーム椰子殻と石炭の混合燃料中の石炭の含有率は、いずれも10質量%である。
【0028】
前記パーム椰子殻灰A~Dの化学組成等を表1に示し、前記パーム椰子殻灰A~Dの非粉砕品(原粉)、粉砕品、および分級品のブレーン比表面積、フロー値比、および活性度指数を表2に示す。
なお、パーム椰子殻灰Dの分級品(D1)は、分級点を45μmに設定したふるい(製品名:スピンエアシーブ SAR-75/200、セイシン企業社製)を用いて、パーム椰子殻灰Dをふるいに掛けて、該ふるいを通過した細粉分である。
また、パーム椰子殻灰の強熱減量(ig.loss)は、975±25℃で、15分間加熱したパーム椰子殻灰の質量減少率、すなわち、100×(加熱前のパーム椰子殻灰の質量-加熱後のパーム椰子殻灰の質量)/加熱前のパーム椰子殻灰の質量(単位:質量%)である。また、化学組成は、蛍光X線による定量分析(検量線法)を行って求めた。表1に示すガラス等の鉱物構成は、偏光顕微鏡下において、定間隔で薄片を移動させながら、顕微鏡の視野に設置された十字線の交点の直下にきた鉱物相を数えることにより構成割合を求める、ポイントカウンティング法により求めた。また、薄片は、試料をエポキシ樹脂で固めた後、20mm×30mm程度のチップを切り出し、厚さ20μm程度の鏡面研磨薄片を作製した。
また、前記パーム椰子殻灰の非粉砕品、粉砕品、および分級品の、ブレーン比表面積、フロー値比、および活性度指数は、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」の附属書Cに準拠して測定した。ちなみに、前記フロー値比は、基準モルタルのフロー値に対する試験モルタルのフロー値の比を百分率で表したものであり、前記活性度指数は、基準モルタルの圧縮強度に対する試験モルタルの圧縮強度の比を百分率で表したものである。
【0029】
【0030】
【0031】
(2)石炭灰a~c
石炭灰a~cのブレーン比表面積、フロー値比、および活性度指数を表3に示す。なお、前記石炭灰のフロー値比および活性度指数は、前記附属書Cに準拠して測定した。
【0032】
【0033】
(3)セメント
普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、住友大阪セメント社製、および宇部三菱セメント社製を均等に混合したセメント)を用いた。
(4)細骨材
JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に規定する標準砂を用いた。
(5)水道水
【0034】
2.セメント用混合材のフロー値比および活性度指数の測定
表4の配合に従い、パーム椰子殻灰および石炭灰を混合してセメント用混合材を作製した。次に、前記附属書Cに準拠して、前記セメント用混合材のフロー値比および活性度指数を測定した。その結果を表4に示す。
【0035】
【0036】
表4に示すように、パーム椰子殻灰の含有率が同じ実施例(パーム椰子殻灰粉砕品および分級品)と比較例(パーム椰子殻灰の非粉砕品)を比べると、いずれの番号の実施例と比較例でも、実施例は比較例に比べフロー値比および活性度指数のいずれも高く、特に材齢7日の初期の活性度指数が顕著に高い。
【0037】
3.分級点に違いによるパーム椰子殻灰のふるい残分と通過分の化学組成および鉱物組成
パーム椰子殻灰Dについて分級点を45μm、32μm、および20μmに変えた場合の、ふるい残分およびふるい通過分の回収率(分配率)と化学組成を表5に示し、そのガラスの含有量を表6に示す。
なお、分級点の違いによるガラスの含有量の増減を比較するために、α-Al2O3を非晶質定量用内部標準として粉末X線解析によりガラスの割合を求めた。
【0038】
【0039】
【0040】
表5に示すように、分級点が小さくなる程、ふるいを通過したパーム椰子殻灰(細粉)が少なく、またパーム椰子殻灰中のアルカリ金属および硫黄の含有率は高い。また、表6に示すように、原粉と比べ、パーム椰子殻灰中のガラスの含有率が増加(表5の流動砂由来のSiO2含有量が低下)するので、分級したパーム椰子殻灰のポゾラン反応が進行して、セメント組成物の強度発現性が向上したことがわかる。
【0041】
以上のことから、本発明は、今後、増加が予想されるバイオマス灰の有効利用に資すことができ、また、既存のフライアッシュと同等以上のフロー値と強度を有するセメント用混合材を提供することができる。