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特許7558075作業機用内燃エンジンの圧縮行程検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】作業機用内燃エンジンの圧縮行程検出方法
(51)【国際特許分類】
   F02P 7/067 20060101AFI20240920BHJP
   F02P 5/15 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F02P7/067 303D
F02P5/15 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021014522
(22)【出願日】2021-02-01
(65)【公開番号】P2022117814
(43)【公開日】2022-08-12
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】100098187
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 正司
(72)【発明者】
【氏名】市川 将史
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 祐二
【審査官】上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-074406(JP,A)
【文献】特開2003-049697(JP,A)
【文献】特開2000-179383(JP,A)
【文献】特許第4114788(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02P 7/067
F02P 5/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダに嵌挿されたピストンによって画成される燃焼室に配置された点火プラグと、
上死点と下死点との間のピストンの往復運動を回転運動に変換して出力するクランクシャフトと、
該クランクシャフトに機械的に連結されて該クランクシャフトの回転によって発電する発電機と、
該発電機で生成した電力を前記点火プラグに供給して燃焼室内の混合気を点火する作業機用内燃エンジンの圧縮行程を判定する方法であって、
前記発電機の発電波形において、前記内燃エンジンの一つのサイクルに相当する期間に含まれる各波形の周期時間を計測する周期時間計測工程と、
前記内燃エンジンの一つのサイクルに相当する期間に含まれる各波形の周期時間を比較して、最も長い周期時間の波形を求める最長周期波形特定工程と、
前記最も長い周期時間の波形が属する前記内燃エンジンの行程を圧縮行程と判定する圧縮行程判定工程とを有し、
更に、
前記内燃エンジンの一つのサイクルに相当する期間に含まれる各波形の周期をナンバリングする波形ナンバリング工程と、
前記波形ナンバリング工程の次に、前記最も長い周期時間の波形の番号をメモリに記憶する波形番号記憶工程とを有する作業機用内燃エンジンの圧縮行程判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業機用内燃エンジンの圧縮行程検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機に搭載される内燃エンジンには、点火プラグの電源として、クランクシャフトに連結された発電機が用いられている(特許文献1)。この発電機は、永久磁石を備えたロータと、発電コイルを備えたステータとで構成され、ロータが回転することにより励起される起電力によって発電する。発電機が生成した電気はコンデンサに充電され、コンデンサに蓄積された電荷を点火タイミング毎に放出して点火プラグの点火が行われる。
【0003】
作業機は、本質的に軽量且つ小型化が要請されるツールである。上記特許文献1は、点火用発電機を使って、気化器に組み込んだ電磁弁を駆動するための電力を供給することを提案している。すなわち、特許文献1は、点火用発電機を電源として、最小限の電力で電磁弁を動作させることを提案している。具体的に説明すると、特許文献1に開示の発明は、電磁弁の消費電力を最小限に抑えるために、電磁弁が非通電状態のときには、バネ力で開弁状態を維持する電磁弁を採用することを提案している。
【0004】
周知のように、内燃エンジンの各サイクルは、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、排気行程の4つの行程で構成されている。4ストロークエンジンは、クランクシャフトが2回転(720°回転)することで各サイクルが完結する。2ストロークエンジンは、クランクシャフトが1回転(360°回転)することで各サイクルが完結する。
【0005】
近時の自動車やモータサイクル(2輪車)に搭載される内燃エンジンは電子化が進んでいる。例えば、特許文献2は、モータサイクルに搭載された内燃エンジンの点火と共に燃料噴射弁の駆動に用いられる発電機が開示されている。
【0006】
作業機においても電子化の開発が進んでいる。この電子化の開発は、複数の電動デバイスを搭載する傾向が強くなる。そして、搭載する電動デバイスの数が多くなれば、必然的に、作業機の発電機の能力を高めなければならない。点火プラグの点火だけでなく、燃料噴射装置の駆動のために、発電能力を高めた発電機を前述した特許文献2は開示している。具体的に説明すると、特許文献2は、6つの磁石と6つの発電コイルとを共に周方向に等間隔に配置した発電機を開示している。このように複数の電磁石及び発電コイルを備えた発電機は、内燃エンジンの各サイクルにおいて、発電波形に複数の山が発生するため、どの山を基準として点火タイミングや燃料噴射タイミングを決定すれば良いか不明となる、という問題を含んでいる。
【0007】
この問題に関して、上記特許文献2に開示の発明は、内燃エンジンに燃料噴射装置を組み込んだときに、この燃料噴射装置の噴射タイミングを制御するために、次の2つの要素の組み合わせを用いてクランクシャフトの回転角度を検出することを提案している。第1の要素は、発電波形を整形してロータの回転角度を検出する。第2の要素は、ロータの回転角度を機械的に検出する。そして、特許文献2に開示の発明は、これら第1、第2の要素を組み合わせることでクランクシャフトの回転角度を検出し、この検出した回転角度に基づいて燃料噴射タイミングを制御することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】US 7,140,352B2
【文献】特開2009-191689号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
作業機は、前述したように、本質的に軽量且つ小型化が要請される。本発明者らは、複数の磁石及び発電コイルを備えた発電機の発電波形において、内燃エンジンの圧縮行程が他の行程にはない特徴があることに着目した。すなわち、圧縮行程の特にその終期のピストンの速度が上死点に近づくに従って遅くなる。このことから、発電波形において、圧縮行程に関連した部分の周期が長くなる。この発電波形の特徴に基づけば、圧縮行程を他の行程から区別することができる。
【0010】
本発明の目的は、発電波形から圧縮行程を検出し、検出した圧縮行程に基づいて例えば点火タイミングを決定する作業機用内燃エンジン圧縮行程検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
シリンダに嵌挿されたピストンによって画成される燃焼室に配置された点火プラグと、
上死点と下死点との間のピストンの往復運動を回転運動に変換して出力するクランクシャフトと、
該クランクシャフトに機械的に連結されて該クランクシャフトの回転によって発電する発電機と、
該発電機で生成した電力を前記点火プラグに供給して燃焼室内の混合気を点火する作業機用内燃エンジンの圧縮行程を判定する方法であって、
前記発電機の発電波形において、前記内燃エンジンの一つのサイクルに相当する期間に含まれる各波形の周期時間を計測する周期時間計測工程と、
前記内燃エンジンの一つのサイクルに相当する期間に含まれる各波形の周期時間を比較して、最も長い周期時間の波形を求める最長周期波形特定工程と、
前記最も長い周期時間の波形が属する前記内燃エンジンの行程を圧縮行程と判定する圧縮行程判定工程とを有し、
更に、
前記内燃エンジンの一つのサイクルに相当する期間に含まれる各波形の周期をナンバリングする波形ナンバリング工程と、
前記波形ナンバリング工程の次に、前記最も長い周期時間の波形の番号をメモリに記憶する波形番号記憶工程とを有する作業機用内燃エンジンの圧縮行程判定方法を提供することにより達成される。
【0013】
本発明の作用効果、他の目的は、以下の本発明の好ましい実施例の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例の内燃エンジンの斜視図である。
図2】実施例の内燃エンジンの側面図である。
図3】発電機からカバーを取り外して、発電機のロータを露出させた状態で図示した実施例の内燃エンジンである。
図4】ロータを取り外した状態の実施例の内燃エンジンを示す図である。
図5】ロータを取り外した状態の実施例の内燃エンジンの側面図である。
図6】実施例の内燃エンジンの発電機から抽出したロータと磁石を説明するための図である。
図7】実施例の内燃エンジンの発電機の発電波形を示す図である。
図8図7に図示の発電波形を整形した整形波形を示す図である。
図9】実施例の内燃エンジンの制御に関連したブロック図である。
図10】実施例の内燃エンジンの制御において、圧縮行程の判定と点火制御の処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図11】実施例の発電波形の割り込み間隔つまり周期波形に関し、エンジン1サイクルに相当する周期波形に対するナンバリングを説明するための図である。
図12】実施例の発電波形の各波形周期のナンバリングとエンジンの吸気、圧縮、燃焼、排気の各行程との関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0015】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。図1図2は実施例の内燃エンジンを示す。図1は斜視図であり、図2は側面図である。図示の内燃エンジン2は4ストロークエンジンであり、単気筒である。内燃エンジン2は、刈払機、刈り込み機、送風機、チェーンソーなどの携帯作業機に搭載される。図中、参照符号4はエアクリーナであり、6は燃料タンクである。
【0016】
図1において、エアクリーナ4が分解して図示されている。エアクリーナ4は、その筐体8がケース本体10とケース蓋12とで構成され、ケース本体10は取付ボルト14によってエンジン本体2aに固定される。ケース蓋12は、ケース本体10に対してリッド取付ボルト16によって脱着可能に固定される。
【0017】
エアクリーナ4の内部には、エアクリーナエレメント18と、その上方に配置されたプレエレメント20とが収容され、ケース蓋12を取り外すことにより、エアクリーナエレメント18、プレエレメント20のメンテナンスが可能である。
【0018】
内燃エンジン2は、リコイル・スタータの操作ハンドル22を操作することで起動させることができる。図1の参照符号30は制御ユニットを示し、32は発電機を示す。発電機32は、クランクシャフト48と機械的に連結されており、内燃エンジン2を駆動源として発電する。
【0019】
内燃エンジン2の吸気系36は電子スロットルバルブユニット38を有し、電子スロットルバルブユニット38によって内燃エンジン2の出力が制御される。なお、図1において、吸気パイプ36aは関連部品に連結する前の状態で図示されている。発電機32が生成した電力は、点火プラグ34だけでなく、電子スロットルバルブユニット38や各種センサの駆動電源として用いられる。
【0020】
図3は、発電機32からカバー32a(図1)を取り外して、発電機32のロータ40を露出させた状態で内燃エンジン2を図示している。発電機32の基本構造は、従来と同様であり、ロータ40とステータ42とで構成されている。図4は、ロータ40を取り外した状態の内燃エンジン2を示し、ステータ42が露出している。図4には、永久磁石44がロータ40から分離した状態で図示されているが、これは永久磁石44の存在を明確にするためであり、実際は、永久磁石44はロータ40に組み付けられている。図5は、ロータ40の図示が省かれている。この図5には永久磁石44がステータ42の周囲に配置した状態で図示されているが、これは永久磁石44の配置位置を説明するためである。
【0021】
図6は、ロータ40とステータ42とを抽出した図である。ステータ42は、6つの芯42aを有し、この6つの芯42aは周方向に等間隔に配置されている。ステータ42の各芯42aには発電コイル46が巻回される。ロータ40は、ステータ42の芯42aの数と同じ6つの永久磁石44を有し、6つの永久磁石44は周方向に等間隔に配置されている。
【0022】
内燃エンジン2は周知のように点火プラグ34(図4図5)を有している。図6を参照して、発電機32において、ステータ42の6つの芯42aのうち一部の芯42aに巻回された発電コイル46、つまり単数又は複数の芯42aに巻回された発電コイル46が発電した電力は第1の端子A1、A2から出力され、点火回路60を経由して点火プラグ34に供給される。残る芯42aに巻回された発電コイル46の起電力は第2の端子B1、B2から出力されて電子スロットルバルブユニット38(図1)などの電源として利用される。
【0023】
ステータ42の中心部42bには、4つの取付穴42cが形成されている。ステータ42は、4つの取付穴42cに挿入される4本のボルトでエンジン本体2aに位置決めされた状態で固定される。ロータ40は、クランクシャフト48に設置したキー48a(図4)と整合した状態でクランクシャフト48に取り付けられてクランクシャフト48の回転と一緒に回転する。
【0024】
発電機32は、ロータ40が回転することにより略正弦波状の交流電圧を出力する(図7)。従来と同様に、この発電機32の発電波形は、点火回路60(図6)に組み込んだ例えばダイオードによって半波整流される。すなわち、発電機32の発電波形に含まれる正側又は負側の成分が正側だけの成分に整形される(図8)。点火回路60では、この半波整流に加えて、必要に応じて電圧を調整して降圧してもよい。次いでコンデンサに蓄電される。図8は、発電機32の出力波形つまり発電波形を半波整流により整形した後の整形波形を示す。
【0025】
図7を参照して、発電機32はクランクシャフト48が1回転(360°回転)する毎に発電波形に3つの山が現れる。実施例の内燃エンジン2は4ストロークエンジンであることから、クランクシャフト48が2回転(720°回転)することで1サイクル、つまり吸入行程、圧縮行程、燃焼行程、排気行程が完結する。図示のように、発電機32は、好ましくは、発電波形の0ボルトが内燃エンジン2のピストンが上死点、下死点に位置するときに出現するようにクランクシャフト48に位置決めした状態で設置される。このように、0ボルトが上死点、下死点に出現するように発電機を設置することで、圧縮行程における割込み間隔の時間の長さが顕著に現れるため、判定し易くなるという利点がある。
【0026】
図7に図示の発電波形に、説明の都合上、付記した第1乃至第4行程は、内燃エンジン2の1つのサイクルを構成している。そして、図7において、時系列に、第1行程の期間に「T1」を付記し、第2行程の期間に「T2」を付記し、第3行程の期間に「T3」を付記し、第4行程の期間に「T4」を付記してある。
【0027】
前述したように、内燃エンジン2のピストンの動きは、圧縮行程において、ピストンが上死点に近づくに従って速度が遅くなる。第1乃至第4の期間T1乃至T4の時間を計測して対比したときに、仮に第2期間T2が最も長かった場合、この第2期間T2つまり第2行程が圧縮行程に相当すると判定することができる。内燃エンジン2の各サイクルの吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、排気行程の順番は不変である。第2期間T2つまり第2行程が圧縮行程であれば、その直前の第1期間T1つまり第1行程が吸気行程である。また、第2期間T2の次の第3期間T3つまり第3行程が燃焼行程であり、その次の第4期間T4つまり第4行程は排気行程である。
【0028】
図9は、内燃エンジン2の制御に関する全体構成図である。図9を参照して、内燃エンジン2は制御ユニット30によって制御される。制御ユニット30はエンジン制御部52とメモリ54を有し、メモリ54に記憶された所定のプログラムに従ってエンジン制御を実行する。制御ユニット30には、発電機32の発電波形が入力されると共にエンジン制御に必要とされるエンジン温度センサなどのセンサ群56からの信号が入力される。なお、制御ユニット30、センサ群56の電源は発電機32である。
【0029】
図10は、圧縮行程の判定と点火制御の処理の一例を説明するためのフローチャートである。図10の処理の概要を説明すると、内燃エンジン2が起動すると発電機32は発電を開始する。次いで、アイドル運転のエンジン回転数が安定すると圧縮行程判定モードが実行される。圧縮行程判定モードは、発電機32の発電波形から圧縮行程を判定することを目的としている。
【0030】
図7を参照して、内燃エンジン2の各サイクルにおいて6つの山が出現する発電波形は、内燃エンジン2の起動から停止までの間、連続する。この連続した発電波形に基づいたときに、どの期間Tが圧縮行程であるか不明である。このことから、エンジン起動直後から内燃エンジン2の全ての行程で点火が行われる。そして、アイドル運転のエンジン回転数が安定すると、この全ての行程での点火の下で、圧縮行程判定モードが実行され、図7を参照して上述した発電波形の期間T1乃至T4のうち最も長い期間を求める。図10を参照して後に説明する具体例では、発電波形の期間T1乃至T4の対比ではなくて、各サイクルで発電波形に現れる6つの各山の割り込み間隔つまり各波形の周期iT1乃至iT6を対比しているが、エンジンの各行程に対応する発電波形の期間T1乃至T4の対比を採用するか、波形の各周期つまり割り込み間隔iT1乃至iT6の対比を採用するかは任意である。
【0031】
仮に、上述したように、第2期間T2(図7)の時間が最も長ければ、この第2期間T2が圧縮行程であると判定する。圧縮行程判定モードで圧縮行程を判定し終わったら、通常のエンジン制御モード、つまり1サイクルに1回、所定の点火タイミングで点火するエンジン制御に変更される。通常運転モードでは、内燃エンジン2が吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、排気行程の順に動作することから、この行程順番に基づいて、圧縮行程の順番が来たら、この圧縮行程を基準として点火タイミングが決定される。点火タイミングの決定において、前回の圧縮行程を基準に点火タイミングを決定しておくのがよい。この通常エンジン制御モードはエンジン停止まで継続して実行される。
【0032】
圧縮行程判定モードにおいて、圧縮行程の判定は、図7に図示の発電波形に基づいて行ってもよいし、図8に図示の整形した波形に基づいて行ってもよい。なお、図8の波形は発電機から得られる略正弦波を正側のみについて整形した波形であるが、略正弦波の負側も整形して、正側及び負側の整形波形に基づいて圧縮行程の判定処理を実行するのが好ましい。したがって、「発電波形」の用語は、発電機32の出力である発電波形と、これを整形した整形波形とを含む用語であると理解されたい。
【0033】
図10を参照して、具体的に説明すると、内燃エンジン2が起動すると同期して全ての行程で点火が実行される(S1、S2)。そして、ステップS3でアイドル運転が安定したのを確認できたら、直ちに圧縮行程の判定処理が実行される(S4乃至S8)。
【0034】
ステップS4において、内燃エンジン2の各サイクルの発電波形で6回現れる各山つまり波形の各周期に対して順に第1乃至第6のナンバリングが行われる。図11に示す時系列の丸で囲んだ1乃至6が第1乃至第6のナンバリングを意味している。このナンバリングは、エンジン2の一つのサイクルが終わるとリセットされる。図11は、前述した図7に対応している。図11を参照して、発電波形の周期つまり割り込み間隔iT1乃至iT6の各時間つまり各波形の周期の時間を計測し(S5)、これを割り込み順の番号と共にメモリ54(図9)に記憶する(S6)。次のステップS7において、メモリ54に記憶した割り込み間隔iT1乃至iT6つまり各周期毎の発電波形の周期の時間を比較して最も長い時間の割り込み間隔を求める(S7)。仮に、第3番目の割り込み間隔iT3つまり第3番目の波形周期が最も長い時間であれば、この第3番目の割り込み間隔iT3は図7で説明した第2行程に属しているから、この第2行程が圧縮行程であると判定する(S8)。これにより、内燃エンジン2の各サイクルにおいて、第3番目の割り込み信号が現れたときには、これは圧縮行程に相当すると他の行程から区別することができる。圧縮行程と判定した割り込み番号つまり周期番号はメモリ54に保存される。図12は、発電波形の6つの周期つまり割り込みの順に第1番から第6番を付番するナンバリングと各行程との関係を説明するための図である。
【0035】
上記の圧縮行程判定処理(S4乃至S8)で圧縮行程を判定して、これに関連する割り込み番号つまり周期番号をメモリ54に記憶させたら、各サイクル毎に点火するのを止めて、通常エンジン制御モードに変更される(S9)。この通常エンジン制御モードは内燃エンジン2が停止するまで継続される。通常エンジン制御モードでは、メモリ54に記憶されている周期番号「第3番」に基づいて、以後の発電波形から該当する周期番号の割り込みが発生したら、これは圧縮行程に相当すると判断して点火が実行される。点火タイミングは、例えば前回の第3番目の割り込みの時のエンジン回転数を参酌して決定される。点火タイミングを決定する基準となるトリガーは、発電波形の山の立ち上がり、立ち下がり、正側又は負側の山ピークなど波形の特徴点を採用すればよい。
【0036】
ロータの回転角度を機械的に検出するなどの物理的な検出要素無しに、今現在の内燃エンジン2が圧縮行程であることを認識して、この圧縮行程を基準に点火タイミングなどの制御を行うことができる。また、エンジン起動から圧縮行程判定処理が終わるまでエンジン2の各行程で点火するものの、圧縮行程を判定した後は、圧縮行程判定モードから通常エンジン制御モードに切り替えられてエンジン2の点火タイミングが訪れたときだけ点火するため、内燃エンジン2の全ての行程で点火し続けることによる弊害、つまり点火プラグの寿命が短命になることを防止し、また、エンジン2の逆回転を防止できる。更に、発電機32が生成した電気を使って全ての行程で点火するという無駄を省いて、発電機32の起電力を点火プラグ以外の電動デバイスの電源としても使用することができる。
【0037】
以上、4ストローク内燃エンジン2を例に本発明を説明したが、当業者であれば、本発明は2ストローク内燃エンジンにも適用可能であることは自明である。また、6つのコイル、6つの磁石を備えた発電機に基づいて実施例を説明したが、本発明は、6つに限定されず複数のコイル及び磁石を備えた発電機を備えた内燃エンジンに適用できる。コイル及び磁石の数は奇数であっても偶数であっても良いが、好ましくはノイズの発生を抑えるために偶数であるのがよい。本発明は、典型的には携帯作業機に搭載される単気筒エンジンに好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
2 実施例のエンジン(4ストロークエンジン)
30 制御ユニット
32 発電機
34 点火プラグ
38 電子スロットルバルブユニット
40 発電機のロータ
42 発電機のステータ
44 永久磁石
46 コイル
48 クランクシャフト
52 エンジン制御部
54 メモリ
56 センサ群
iT1乃至iT6 エンジンの1サイクルに相当する各波形の割り込み間隔(波形周期)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12