(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】柵用支持部材
(51)【国際特許分類】
E01F 13/02 20060101AFI20240920BHJP
E04H 17/22 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E01F13/02 Z
E04H17/22
(21)【出願番号】P 2021018499
(22)【出願日】2021-02-08
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】松原 正光
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-047342(JP,U)
【文献】登録実用新案第3002862(JP,U)
【文献】特開平09-287323(JP,A)
【文献】特開2019-060077(JP,A)
【文献】特開2014-118746(JP,A)
【文献】米国特許第5683074(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 13/00-15/14
E01F 1/00
E04H 17/00-17/26
E01F 3/00-8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に離れた2本の支柱を有する柵における1本の前記支柱と地面や床面との間に介設される柵用支持部材であって、
地面や床面に水平方向に位置決めされる固定部と、
地面や床面に対して垂直軸を中心に回動可能に前記固定部に取り付けられる回転部と、
前記支柱の軸心まわりに前記回転部を回動可能に、前記垂直軸から水平方向に離れた位置で前記回転部に固定されて前記支柱が取り付けられる取付部と、を備え
、
前記固定部は、地面や床面に設けた取付穴に挿入されて前記垂直軸を軸心とする軸状部材であり、
前記取付部は、前記支柱の下端が挿入される筒体であり、
前記回転部は、前記垂直軸に垂直な所定方向に延びた平板状の部材であり、
前記回転部のうち前記所定方向の一端側の表面に前記取付部の下端が接合され、前記回転部のうち前記所定方向の他端側の裏面に前記固定部の上端が接合され、
前記回転部に接合される前記取付部が1つのみであって前記回転部に接合される前記固定部が1つのみであり、
前記取付穴に対して前記固定部が相対回転することで地面や床面に対して前記回転部が前記垂直軸を中心に回動し、前記支柱に対して前記取付部が相対回転することで前記支柱の軸心まわりに前記回転部が回動することを特徴とする柵用支持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柵の支柱と地面や床面との間に介設される柵用支持部材であって、柵の設置効率を向上できる柵用支持部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水平方向に離れた2本の支柱を有する柵には、製造誤差などによって2本の支柱間の水平方向の距離にばらつきが生じることがある。従来、ばらつく支柱間の距離に応じ柵毎に個別に、支柱が挿入される取付穴を地面や床面に設けることで、柵を地面や床面に設置していた。また、特許文献1には、既に地面に設けた取付穴の間隔に応じて、柵の2本の支柱の間隔を現場で調整することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、柵毎に個別に取付穴を設けた場合には、その柵毎に2本の支柱が嵌まる取付穴を探したり、柵を交換するときに取付穴の位置を変更したりする必要があり、柵の設置効率が悪いという問題点がある。また、特許文献1のように、2本の支柱の間隔を現場で調整する場合も、柵の設置効率が悪くなる。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、柵の設置効率を向上できる柵用支持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の柵用支持部材は、水平方向に離れた2本の支柱を有する柵における1本の前記支柱と地面や床面との間に介設されるものであって、地面や床面に水平方向に位置決めされる固定部と、地面や床面に対して垂直軸を中心に回動可能に前記固定部に取り付けられる回転部と、前記支柱の軸心まわりに前記回転部を回動可能に、前記垂直軸から水平方向に離れた位置で前記回転部に固定されて前記支柱が取り付けられる取付部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の柵用支持部材によれば、固定部に取り付けられる回転部が地面や床面に対して垂直軸まわりに回動可能であって、支柱に取り付けられる取付部により支柱の軸心まわりに回転部が回動可能であり、その支柱の軸心と垂直軸とが水平方向に離れている。これにより、固定部により地面や床面に位置決めされた位置(取付位置)に対し、支柱の位置を垂直軸まわりに容易に相対移動させることができる。このような柵用支持部材を、柵の2本の支柱のうち少なくとも一方の支柱に取り付けることで、その柵用支持部材に取り付けた支柱から、もう一方の支柱側の地面や床面への取付位置までの水平方向の距離を容易に変化させることができる。この距離の変化によって2本の支柱間の距離のばらつきや、支柱の両側の取付位置のばらつきを相殺できる。その結果、柵用支持部材の取付位置や2本の支柱の距離を変更することなく、柵用支持部材を介在させて柵を地面や床面に設置できるので、柵の設置効率を向上できる。
【0008】
固定部は、地面や床面に設けた取付穴に挿入される軸状部材であり、垂直軸を軸心とする。回転部は、取付穴に対して固定部が相対回転することで地面や床面に対して垂直軸を中心に回動する。柵の不使用時に、地面や床面から柵用支持部材を容易に取り外しできると共に、柵用支持部材を設置するための突起物が地面や床面に残らないので、柵の不使用時に柵用支持部材や突起物で歩行者が躓くこと等を抑制できる。
【0009】
取付部は、支柱の下端が挿入される筒体である。回転部は、垂直軸に垂直な所定方向に延びた平板状の部材である。回転部のうち所定方向の一端側の表面に取付部の下端が接合され、回転部のうち所定方向の他端側の裏面に固定部の上端が接合される。回転部に接合される取付部が1つのみであって回転部に接合される固定部が1つのみである。柵用支持部材が、支柱と地面や床面との間に着脱可能に介在されるアダプタとなる。そのため、支柱を地面の取付穴に直接挿入する従来の柵の設置方法に対し、アダプタである柵用支持部材を使用できるので、柵の設置効率を簡便な方法で向上できる。
【0010】
さらに、柵用支持部材の固定部が取付穴に対して相対回転することで垂直軸まわりに回転部が回動し、柵用支持部材の取付部が支柱に対して相対回転することで支柱の軸心まわりに回転部が回動する。そのため、回転部を垂直軸や支柱の軸心まわりに回動させるためのベアリング等の回転機構を柵用支持部材自体に設ける必要がない。その結果、柵の設置効率を向上するための柵用支持部材を簡単な構成にできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態における柵用支持部材および柵の正面図である。
【
図3】(a)は柵用支持部材および柵の上面図であり、(b)は地面に設置した柵用支持部材の上面図である。
【
図4】第2実施形態における柵用支持部材の斜視図である。
【
図5】第3実施形態における柵用支持部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず
図1,2を参照して第1実施形態における柵用支持部材20と、その柵用支持部材20を介在させて地面2に設置される柵10,11とについて説明する。
図1は柵用支持部材20及び柵10,11の正面図である。
図2は柵用支持部材20の斜視図である。
【0013】
図1に示すように、柵10,11は、高所からの転落防止や、車両の通行止め等のために地面2や床面などに立設されるものである。柵10,11は、水平方向に離れた2本の支柱12,13と、その支柱12,13の上端同士を連結する横部材14と、支柱12,13の中央同士を連結する横部材15と、を備えている。支柱12,13と横部材14,15とは、溶接やねじ止め等によって互いに接合される。
【0014】
柵10,11は、製造誤差などによって、支柱12,13間の水平方向の距離が異なることがある。
図1では、本発明の理解を容易にするため、柵10の支柱12,13間の距離L1を長く、柵11の支柱12,13間の距離L2を短くしつつ、それらの差を誇張して示している。
【0015】
柵用支持部材20は、柵10,11の支柱12,13のそれぞれと、地面2との間に介設される(介在するように設けられる)アダプタである。それぞれの支柱12,13に取り付けられる柵用支持部材20は全て同一であるので、柵10の支柱12に取り付けられる柵用支持部材20について説明し、その他の柵用支持部材20の説明は省略する。
【0016】
図1,2に示すように、柵用支持部材20は、支柱12の下端が挿入される筒体からなる取付部21と、その取付部21の下端から軸直角方向に延びる板状の回転部22と、取付部21から離れた位置で回転部22の裏面から下方へ突出する軸状部材からなる固定部23と、を備えている。
【0017】
取付部21は、支柱12の外径よりも内径が若干大きい円筒状に形成され、支柱12を挿入可能に上端部に開口部21aが形成されている。支柱12を取付部21の開口部21aに挿入したとき、支柱12に対して取付部21が相対回転し、支柱12の軸心(取付部21の軸心)C1まわりに回転部22が回動(回転)する。
【0018】
固定部23は、取付部21の軸心C1と平行な垂直軸C2を軸心とする軸状部材であり、地面2に垂直に設けた取付穴4に挿入される。取付穴4に固定部23が挿入されることで、固定部23が地面2に水平方向に位置決めされ、柵用支持部材20の地面2への取付位置、即ちその柵用支持部材20を介在した支柱12の地面2への取付位置が決まる。
【0019】
固定部23は、取付穴4の内径よりも外径が若干小さく形成されている。これにより、固定部23を取付穴4に挿入したとき、取付穴4に対して固定部23が相対回転し、地面2に対して固定部23の垂直軸C2を中心に回転部22が回動する。
【0020】
また、取付部21の内径は、固定部23の外径よりも若干大きく形成されている。即ち、取付部21に固定部23を挿入可能となるように、取付部21及び固定部23の寸法が形成されている。さらに、取付部21の内径が取付穴4の内径と略同一になるように、取付部21及び取付穴4が形成されている。これは、本来、取付穴4に直接挿入される支柱12を取付部21に挿入可能にするためである。
【0021】
回転部22は、軸心C1及び垂直軸C2に垂直な所定方向に延びた平板状の部材である。回転部22の長手方向の一端側の表面には取付部21が固定されている。一方、回転部22の長手方向の他端側の裏面には固定部23が固定されている。なお、回転部22と取付部21及び固定部23とは、溶接やねじ止め等によって互いに接合される。
【0022】
図1に加えて
図3(a)を参照しながら、柵用支持部材20を用いて柵10を地面2に設置する方法について具体的に説明する。なお、柵用支持部材20を用いて柵11を地面2に設置する方法も同様であるため説明を省略する。
図3(a)は、柵用支持部材20及び柵10の上面図である。なお、
図3(a)では、横部材14,15の図示を省略している。
【0023】
まず、柵10の支柱12,13にそれぞれ柵用支持部材20の取付部21を取り付ける。続いて、支柱12の軸心C1を中心として回転部22を回動させる。すると、固定部23も軸心C1を中心とし、回転部22の回動に同期して、
図3(a)に示した二点鎖線の軌跡上(軸心C1と垂直軸C2との間の距離を半径とする円上)を移動(回動)する。同様に支柱13に取り付けた柵用支持部材20の回転部22及び固定部23も回動させる。
【0024】
具体的に例えば、柵10の支柱12,13にそれぞれ取り付けた柵用支持部材20の固定部23を、互いに最も近い位置(
図3(a)に固定部23を破線で示した位置)まで回動させることで、2つの固定部23間の距離が最小値L4となる。また、これら2つの固定部23を、互いに最も離れた位置(
図3(a)に固定部23を二点鎖線で示した位置)まで回動させることで、2つの固定部23間の距離が最大値L5となる。
【0025】
このように、支柱12,13両側に取り付けた柵用支持部材20の固定部23の距離を最小値L4から最大値L5の範囲で調整できる。そのため、支柱12,13間の距離L1と、2つの取付穴4間の水平方向の距離L3とが異なって取付穴4に支柱12,13を直接挿入できなくても、その距離L3が最小値L4以上、最大値L5以下であれば、2つの固定部23の距離を取付穴4間の距離L3に合わせることができる。従って、支柱12,13両側の固定部23をそれぞれ取付穴4に挿入できる。上記の通り固定部23を取付穴4に挿入すると、柵10にかかった荷重が柵用支持部材20を介して取付穴4に伝達される。即ち、支柱12,13がそれぞれ取付穴4に挿入されているとみなすことができる。
【0026】
よって、固定部23同士の水平方向の距離の変化により、2本の支柱12,13間の水平方向の距離L1,L2のばらつきや、支柱12,13両側の地面2への取付位置(取付穴4や固定部23)のばらつきを相殺することができる。よって、柵用支持部材20の取付位置を変更したり、支柱12,13の距離L1,L2を現場で調整することなく、柵用支持部材20を介在させて柵10を地面2に設置でき、柵10の設置効率を向上できる。
【0027】
また、
図1に加えて
図3(b)を参照しながら、柵用支持部材20を用いて柵10,11を地面2に設置する別の方法について説明する。
図3(b)は、地面2に設置した柵用支持部材20の上面図である。
【0028】
まず、2つの取付穴4にそれぞれ柵用支持部材20の固定部23を挿入する。続いて、一方の柵用支持部材20に関し、固定部23の垂直軸C2を中心として回転部22を回動させる。すると、取付部21も垂直軸C2を中心とし、回転部22の回動に同期して、
図3(b)に示した二点鎖線の軌跡上(軸心C1と垂直軸C2との間の距離を半径とする円上)を移動(回動)する。同様に、他方の柵用支持部材20に関しても回転部22及び取付部21を回動させる。
【0029】
具体的に例えば、2つの取付穴4にそれぞれ固定部23を挿入した柵用支持部材20の取付部21を、互いに最も近い位置(
図3(b)に取付部21を二点鎖線で示した位置)まで回動させることで、2つの取付部21間の距離が最小値L6となる。また、これら2つの取付部21を、互いに最も離れた位置(
図3(b)に取付部21を実線で示した位置)まで回動させることで、2つの取付部21間の距離が最大値L7となる。
【0030】
このように、支柱12,13両側における地面2への柵用支持部材20の取付位置(取付穴4や固定部23)の水平方向の距離L3が一定であっても、支柱12,13が挿入される取付部21間の距離を最小値L6から最大値L7の範囲で調整できる。よって、支柱12,13間の距離L1,L2が最小値L6以上、最大値L7以下であれば、2つの取付部21の距離を支柱12,13の距離L1,L2に合わせることができるので、支柱12,13を取付部21に挿入できる。
【0031】
従って、柵10,11の支柱12,13間の距離L1,L2がばらつき、支柱12,13両側の地面2への取付位置が一定でも、柵10,11を柵用支持部材20を介在させて地面2に容易に設置できる。
【0032】
柵10,11の支柱12,13の両方に柵用支持部材20が取り付けられている場合には、2つの柵用支持部材20の取付位置の距離L3と、支柱12,13間の距離L1,L2との差が、軸心C1から垂直軸C2までの距離の2倍以下であれば、柵用支持部材20を介在させて地面2に柵10,11を容易に設置できる。一方、柵10,11の支柱12,13の片方だけに柵用支持部材20が取り付けられている場合には、2つの柵用支持部材20の取付位置の距離L3と、支柱12,13間の距離L1,L2との差が、軸心C1から垂直軸C2までの距離以下であれば、柵用支持部材20を介在させて地面2に柵10,11を容易に設置できる。
【0033】
固定部23は取付穴4に挿入される軸状部材なので、柵10,11の不使用時には、地面2から柵用支持部材20を容易に取り外しできると共に、柵用支持部材20を設置するための突起物などが地面2に残らない。これにより、柵10,11の不使用時に柵用支持部材20や、地面2の突起物で歩行者などが躓くこと等を抑制できる。
【0034】
これに加え、取付部21は、支柱12,13が挿入される筒体なので、柵用支持部材20が、支柱12,13と地面2との間に着脱可能に介在されるアダプタとなる。そのため、支柱12,13を地面の取付穴4に直接挿入する従来の柵10,11の設置方法に対し、取付穴4や支柱12,13をそのまま利用して、アダプタである柵用支持部材20を使用できるので、柵10,11の設置効率を簡便な方法で向上できる。
【0035】
さらに、固定部23が取付穴4に対して相対回転し、取付部21が支柱12,13に対して相対回転するので、回転部22を軸心C1や垂直軸C2まわりに回動させるためのベアリング等の回転機構を柵用支持部材20自体に設ける必要がない。その結果、柵10,11の設置効率を向上するための柵用支持部材20を簡単な構成にできる。よって、柵用支持部材20の製造コストを低減し易い。
【0036】
また、取付部21は、固定部23が挿入可能な寸法に形成されるので、支柱12,13を直接挿入するために地面2に設けた取付穴4に固定部23を挿入したとき、その取付穴4に直接挿入可能だった支柱12,13を取付部21に確実に挿入できる。これにより、支柱12,13を直接挿入するために地面2に設けた取付穴4を利用し、柵用支持部材20を介在させて柵10,11を設置するとき、柵用支持部材20の固定部23が挿入される取付穴4の拡径作業などを不要にできる。その結果、柵用支持部材20を用いた柵10,11の設置効率をさらに向上できる。
【0037】
次に
図4を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では、柵用支持部材20の取付部21に支柱12,13を挿入し、支柱12,13に柵用支持部材20を着脱可能に取り付ける場合について説明した。これに対して第2実施形態では、支柱12の下端に柵用支持部材30が一体化される場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0038】
図4は、第2実施形態における柵用支持部材30の斜視図である。柵用支持部材30は、柵の支柱12と地面2(
図1参照)との間に介設され、支柱12と回動可能に一体化されるものである。即ち、第2実施形態における柵は、柵用支持部材30を備えたものである。
【0039】
柵用支持部材30は、支柱12の下端が取り付けられる取付部31と、その取付部31の下端から軸直角方向に延びる板状の回転部22と、取付部31から離れた位置で回転部22の裏面から下方へ突出する軸状部材からなる固定部23と、を備えている。取付部31は、支柱12の下端と回転部22とを連結する部位であって、支柱12の軸心C1まわりに回転部22を回動可能にするスラストベアリングが内蔵されている。
【0040】
このような柵用支持部材30が柵の支柱12に一体化されることで、第1実施形態と同様に、支柱12の軸心C1まわりに固定部23を容易に移動できるので、2本の支柱12,13間の水平方向の距離のばらつきや、固定部23が挿入される2つの取付穴4(地面2への取付位置)の水平方向の距離のばらつきを相殺でき、地面2への柵の設置効率を向上できる。
【0041】
支柱12に柵用支持部材30が一体化されているので、その柵を地面2へ設置するとき、柵とは別に柵用支持部材30を用意する必要がなく、柵の設置効率をより向上できる。また、柵の不使用時には、その柵と一緒に柵用支持部材30が地面2から撤去されるので、柵の不使用時に地面2に残った柵用支持部材30で歩行者が躓くこと等を防止できる。
【0042】
次に
図5を参照して第3実施形態について説明する。第1,2実施形態では、柵用支持部材20,30の固定部23を地面2に設けた取付穴4に挿入し、柵用支持部材20,30が地面2に着脱可能に取り付けられる場合について説明した。これに対して第3実施形態では、地面2に柵用支持部材41が固定される場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0043】
図5は第3実施形態における柵用支持部材41の斜視図である。
図5に示すように、第3実施形態における柵の支柱40は、その下端に開口部40aを設けた円筒状に形成されている。この支柱40以外の柵の構成は、第1実施形態における柵10,11の構成と同一である。
【0044】
柵用支持部材41は、柵の支柱40と地面2(
図1参照)との間に介設されるものである。柵用支持部材41は、ねじ42aや杭などの固定具で地面2に固定される固定部42と、その固定部42にベアリング43を介在させて回動可能に取り付けられる円板状の回転部44と、ベアリング43から離れた位置で回転部44の外周側から上方へ突出した軸状の取付部45と、を備えている。
【0045】
固定部42は、地面2に直接固定されることで地面2に水平方向に位置決めされている。回転部44は、ベアリング43によって、そのベアリング43の中心を通る垂直軸C2を中心に、地面2に対して回動可能となっている。
【0046】
取付部45は、支柱40の下端の開口部40aに挿入されて支柱40に取り付けられる部位である。支柱40が取付部45に取り付けられた場合、その支柱40の軸心C1と取付部45の軸心とが略同一となる。
【0047】
このような柵用支持部材41によれば、第1実施形態と同様に、柵用支持部材41の地面2への取付位置に対して支柱40の位置を容易に移動できるので、2本の支柱40間の水平方向の距離のばらつきや、柵用支持部材41の取付位置の水平方向の距離のばらつきを相殺でき、地面2への柵の設置効率を向上できる。
【0048】
特に本実施形態では、第1実施形態のように支柱12,13を挿入する取付穴4を地面2に設けるのに代えて、地面2に柵用支持部材41を固定することで、柵の設置時に改めて柵用支持部材41を用意する必要がなく、地面2への柵の設置効率をより向上できる。
【0049】
さらに、柵用支持部材41では、地面2の上に固定された板状の固定部42の周縁から回転部44や取付部45が張り出さないので、垂直軸C2まわりの回転部44や取付部45の回転軌跡を確保できる。その結果、支柱40を挿入するために取付部45を垂直軸C2まわりに移動させるとき、その回転軌跡上にある障害物の撤去などを不要にでき、地面2への柵の設置効率をさらに向上できる。
【0050】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、柵10,11や柵用支持部材20,30,41の各部形状や各部寸法を適宜変更しても良い。また、支柱12,13,40と地面2との間に柵用支持部材20,30,41が介設される場合に限らず、支柱12,13,40と床面との間に柵用支持部材20,30,41を介設しても良い。
【0051】
上記形態では、支柱12,13と横部材14,15とが溶接やねじ止め等によって互いに接合される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、横部材15を省略し、1本のパイプを逆U字状に曲げることによって、アーチ状の横部材14で支柱12,13の上端を連結した柵10,11を形成しても良い。即ち、支柱12,13と横部材15とを一体に形成しても良い。
【0052】
また、回転部22と取付部21及び固定部23とを溶接やねじ止め等によって互いに接合する場合に限らず、取付部21、回転部22及び固定部23を一体に形成しても良い。例えば、1本のパイプの一端側をバルジ加工で拡径して取付部21を形成し、パイプをS字形状に曲げ加工することで、パイプの中央部を回転部22とし、パイプの他端側を固定部23としても良い。
【0053】
上記第1実施形態では、柵10,11の支柱12,13の両方に柵用支持部材20を取り付ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。2本の支柱12,13の一方のみに柵用支持部材20を取り付けても良い。柵用支持部材20を取り付けていない側の支柱12,13が地面2から浮いて取付穴4に挿入できない場合には、その支柱12,13が挿入されて取付穴4に挿入されるアダプタを間に挟み込めば良い。また、同様に、2本の支柱12,13,40の一方のみに柵用支持部材30,41を取り付けても良い。
【0054】
上記第1,2実施形態では、柵用支持部材20,30の固定部23を地面2に設けた取付穴4に挿入する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。地面2から突出した突出部に、筒状または環状の固定部を嵌めても良い。また、筒体である取付部21に支柱12,13が挿入される第1実施形態の柵用支持部材20に関し、第3実施形態のように、軸状の取付部45に筒状の支柱40を挿入するように変更しても良い。逆に、第3実施形態の柵用支持部材41における取付部45を第1実施形態の取付部21にし、その取付部21に支柱12,13を挿入しても良い。
【0055】
上記第2実施形態では、支柱12に柵用支持部材30が一体化される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、支柱12の下端を取付部31に着脱可能にしつつ、支柱12を取付部31に取り付けた状態でロックする機構を取付部31に内蔵しても良い。この場合には、柵用支持部材30のみを交換したり、柵用支持部材30が取り付けられる柵のみを交換したりできる。
【符号の説明】
【0056】
2 地面
4 取付穴
10,11 柵
12,13,40 支柱
20,30,41 柵用支持部材
21,31,45 取付部
22,44 回転部
23,42 固定部
C1 軸心
C2 垂直軸