(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】サスペンション装置および緩衝器
(51)【国際特許分類】
B60G 15/07 20060101AFI20240920BHJP
F16F 9/56 20060101ALI20240920BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B60G15/07
F16F9/56
F16F9/32 H
(21)【出願番号】P 2021020801
(22)【出願日】2021-02-12
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 空美
(72)【発明者】
【氏名】山下 幹郎
(72)【発明者】
【氏名】大野 孝幸
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/058773(WO,A1)
【文献】特開2004-338490(JP,A)
【文献】特開2006-064101(JP,A)
【文献】特開2020-163894(JP,A)
【文献】特開2004-149066(JP,A)
【文献】実開昭57-198436(JP,U)
【文献】実開昭59-020041(JP,U)
【文献】特開2020-179717(JP,A)
【文献】特開平10-095219(JP,A)
【文献】実開昭58-186904(JP,U)
【文献】特開2004-036640(JP,A)
【文献】特開平03-189434(JP,A)
【文献】特開2011-012748(JP,A)
【文献】特開平09-226434(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0026669(US,A1)
【文献】中国実用新案第201416609(CN,Y)
【文献】独国特許出願公開第102016213426(DE,A1)
【文献】実開昭54-083754(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 15/07
F16F 9/56
F16F 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪と車体との間に設けられ、前記車体を支えるスプリングと、
前記スプリングとストローク量が同じになるよう配置される緩衝器
本体と、
を備えるサスペンション装置であり、
前記緩衝器
本体の前記車輪側に
室を形成するよう設けられ、前記緩衝器
本体および前記スプリングと直列になるよう配置され、
前記室内の気体の出し入れによって前記車両の車高
を調整する車高調整機構と、
前記車高調整機構により変化した
前記車両の車高を
前記室内の内圧にかかわらず固定
可能なロック機構と、
を備えるサスペンション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のサスペンション装置であり、
前記ロック機構は、前記車高調整機構により前記車両の車高が所定値まで上昇したとき、該車両の上昇した車高が所定値より下がらないようロックし、該ロック後に前記車高調整機構により該車両の車高が所定値まで上昇すると該ロックが解除される
サスペンション装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のサスペンション装置であり、
前記ロック機構は、
円柱状の支柱部材と、
前記支柱部材の外周面を覆うように設けられ、前記支柱部材の軸方向に移動可能な外側部材と、
前記支柱部材の外周面および前記外側部材の内周面の少なくとも一方に設けられる螺旋状の溝部と、
前記支柱部材の外周面および前記外側部材の内周面の少なくとも他方に設けられ、前記溝部内に移動可能に配置される移動部材と、
を有し、
前記溝部は、該溝部内に突出し前記移動部材の一方向の移動を抑制する第1突出部と、該溝部内に突出し前記移動部材の他方向の移動を抑制する第2突出部と、該溝部の側面に設けられ前記第1突出部と対向する位置に配置される凹部とを有する
サスペンション装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のサスペンション装置であり、
前記ロック機構は、
円柱状の支柱部材と、
前記支柱部材の外周面を覆うように設けられ、前記支柱部材の軸方向に移動可能な外側部材と、
前記支柱部材の外周面および前記外側部材の内周面の少なくとも一方に設けられる環状の溝部と、
前記支柱部材の外周面および前記外側部材の内周面の少なくとも他方に設けられ、前記溝部内に移動可能に配置される移動部材と、
を有し、
前記溝部は、該溝部が内周側に向けて凹形状に形成される凹状溝部と、前記凹状溝部と対向する側に設けられ、該溝部が外周側に向けて凸形状で形成される凸状溝部とを有する
サスペンション装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載のサスペンション装置であり、
前記ロック機構は、
円柱状の支柱部材と、
前記支柱部材の外周面を覆うように設けられ、前記支柱部材の軸方向に移動可能な外側部材と、
前記支柱部材の外周面および前記外側部材の内周面の少なくとも一方に設けられる環状の溝部と、
前記支柱部材の外周面および前記外側部材の内周面の少なくとも他方に設けられ、前記溝部内に移動可能に配置される移動部材と、
を有し、
前記溝部は、該溝部の内周側に設けられ、内周側に向けて形成される複数の凹部と、前記凹部と対向する側に設けられ、該溝部が外周側に向けて凸形状に形成される凸状溝部とを有する
サスペンション装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか一項に記載のサスペンション装置であり、
前記緩衝器
本体は、
前記車体または車輪に設けられ、作動流体が封入されるシリンダと、
前記シリンダ内に摺動可能に設けられ、該シリンダ内を2室に区画するピストンと、
一端が前記ピストンに連結され、他端が前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、
を備え、
前記シリンダは、前記支柱部材となる
サスペンション装置。
【請求項7】
請求項3乃至5のいずれか一項に記載のサスペンション装置であり、
前記緩衝器
本体は、
前記車体または車輪に設けられ、作動流体が封入されるシリンダと、
前記シリンダ内に摺動可能に設けられ、該シリンダ内を2室に区画するピストンと、
一端が前記ピストンに連結され、他端が前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、
を備え、
前記支柱部材は、前記ピストンロッドの他端側または前記シリンダの一端側に配置されている
サスペンション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンション装置および緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
エアサスペンション装置における車高調整機構が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エアサスペンション装置で車高調整を行う場合、エンジンが停止しエアコンプレッサが停止した状態においては、空気が徐々に漏れて車両の車高が下がってしまう可能性がある。
【0005】
したがって、本発明は、エンジン停止時でも車高を維持することが可能なサスペンション装置および緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るサスペンション装置の態様は、車両の車輪と車体との間に設けられ、前記車体を支えるスプリングと、前記スプリングとストローク量が同じになるよう配置される緩衝器と、を備えるサスペンション装置であり、前記スプリングと直列に配置され、前記車両の車高を調整する車高調整機構と、前記車高調整機構により変化した車高を固定するロック機構と、を備える、構成とした。
【0007】
本発明に係る緩衝器の態様は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に設けられ、該シリンダ内を2室に区画するピストンと、一端が前記ピストンに連結され、他端が前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、を備え、前記ピストンロッドの他端側、または、前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドとは反対側に設けられ、前記緩衝器の全長を調整する全長調整機構と、前記全長調整機構により変化した全長を固定するロック機構と、を備える、構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エンジン停止時でも車高を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の緩衝器を示す一部を断面とした正面図である。
【
図2】本発明に係る第1実施形態の緩衝器の外側部材の内周面を示す展開図である。
【
図3】本発明に係る第2実施形態の緩衝器を示す一部を断面とした正面図である。
【
図4】本発明に係る第2実施形態の緩衝器の外側部材の内周面を示す展開図である。
【
図5】本発明に係る第3実施形態の緩衝器の外側部材の内周面を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
本発明に係る第1実施形態を
図1および
図2に基づいて以下に説明する。
【0011】
図1に示す第1実施形態のサスペンション装置10は、自動車や鉄道車両等の車両用のサスペンション装置であり、具体的には4輪自動車のサスペンション装置である。サスペンション装置10は、車両の図示略の車輪と車体11との間に設けられる緩衝器21と、緩衝器21と車体11との間、言い換えれば図示略の車輪と車体11との間に設けられて車体11を支えるスプリング22と、を有している。スプリング22はコイルスプリングである。スプリング22と車体11との間には、これらを相対回転可能に連結する軸受23が設けられている。
【0012】
緩衝器21は、同軸状に配置される外筒31およびこれより小径の内筒32を有するシリンダ33(支柱部材)と、シリンダ33の内筒32内に摺動可能に設けられ、内筒32内を室35および室36の2室に区画するピストン37と、一端がピストン37に連結され、他端がシリンダ33の外部に延出されるピストンロッド38と、を備えている。シリンダ33内には、室35および室36に作動流体である油液が封入されている。シリンダ33内には外筒31と内筒32との間に作動流体である油液とガスとが封入されている。シリンダ33の外周面は外筒31の外周面である。外筒31は、外観が円柱状であり、よって、シリンダ33も外観が円柱状である。シリンダ33のピストンロッド38が延出する側とは反対側の端部を底部41とする。シリンダ33の底部41とピストンロッド38が延出する側の端部との間の外周部は外筒31の外周部となっている。
【0013】
ピストン37には、ピストンロッド38がシリンダ33からの延出量を増やす伸び側に移動したときに室35から室36への作動流体を流すと共にその流動を抑制して減衰力を発生させる図示略の減衰力発生機構と、ピストンロッド38がシリンダ33からの延出量を減らす縮み側に移動したときに室36から室35への作動流体を流すと共にその流動を抑制して減衰力を発生させる図示略の減衰力発生機構と、が設けられている。
【0014】
緩衝器21は、外筒31の軸方向の中間位置に固定されて外筒31の径方向外方に広がるスプリングシート44を有している。緩衝器21は、ピストンロッド38がシリンダ33から上方に延出する姿勢とされ、ピストンロッド38のシリンダ33とは反対側の上端部が車体11に連結されている。スプリングシート44と車体11との間に軸受23およびスプリング22が設けられている。言い換えれば、シリンダ33に固定されたスプリングシート44がスプリング22および軸受23を介して車体を支持する。よって、外観が円柱状をなすシリンダ33は、スプリングシート44、スプリング22および軸受23を介して車体11を支持する支柱部材である。ピストンロッド38およびシリンダ33は、スプリング22および軸受23の径方向内側を通っている。なお、シリンダ33を車体11側に、ピストンロッド38を車輪側に設ける場合にも本発明は適用可能である。
【0015】
シリンダ33とピストン37とピストンロッド38とスプリングシート44とが緩衝器本体45を構成している。緩衝器本体45は、スプリング22とストローク量が同じになるように配置されている。
【0016】
緩衝器21は、シリンダ33の外部に延出されるピストンロッド38とは反対側に、緩衝器21の全長を調整する全長調整機構51(車高調整機構)を有している。全長調整機構51は、シリンダ33の底部41側の外周面を覆うように設けられる有底筒状の外側部材52と、シリンダ33の底部41側に設けられて外側部材52とシリンダ33との隙間をシールするシール部材53と、外側部材52の開口側とシリンダ33の外周面との間を覆うダストブーツ54と、を有している。
【0017】
外側部材52は、円板状の底部61と、底部61の外周縁部から軸方向一側に延出する円筒状の胴部62と、を有している。外側部材52は、胴部62の径方向内側にシリンダ33の底部41側の部分を嵌合させており、シリンダ33に対してシリンダ33の軸方向に相対移動可能となっている。また、外側部材52は、シリンダ33に対して円周方向に相対回転可能となっている。
【0018】
胴部62に嵌合するシリンダ33はその外筒31が胴部62と同軸状に配置されることになる。よって、胴部62の軸方向すなわち外側部材52の軸方向は、外筒31の軸方向すなわちシリンダ33の軸方向となる。また、胴部62の円周方向すなわち外側部材52の円周方向は、外筒31の円周方向すなわちシリンダ33の円周方向となる。さらに、胴部62の径方向すなわち外側部材52の径方向は、外筒31の径方向すなわちシリンダ33の径方向となる。
【0019】
緩衝器21は、外側部材52の底部61の軸方向における胴部62とは反対側に溶接等で固定される取付アイ63を有している。緩衝器21は、この取付アイ63が車両の図示略の車輪側に連結される。
【0020】
外側部材52の胴部62には、その軸方向における底部61の近傍位置に、胴部62を径方向に貫通する空気導入穴66が設けられている。シリンダ33は、その底部41が外側部材52の底部61との間に軸方向に隙間を形成する。
【0021】
シール部材53は、環状であり、シリンダ33の底部41側の外周部に嵌合されて保持されている。シール部材53は、外側部材52の胴部62の内周面に摺接しつつ外側部材52に対してシリンダ33と一体に軸方向および円周方向に移動する。シリンダ33の底部41とシール部材53と外側部材52の底部61および胴部62とが、これらの内側に室67を形成している。シール部材53は、外側部材52に対しシリンダ33が移動しても室67の気密を確保する。室67は、シリンダ33および外側部材52の軸方向において、底部41と底部61との間にある。空気導入穴66も、シリンダ33および外側部材52の軸方向において、底部41と底部61との間にあり、室67に連通している。
【0022】
ダストブーツ54は、筒状であり、一端側が外筒31の外側部材52から突出する部分の外周部に嵌合されており、他端側が外側部材52の胴部62の外周部に嵌合されている。ダストブーツ54は、シリンダ33と外側部材52との軸方向および円周方向の相対移動に追従して変形することになり、シリンダ33と外側部材52との隙間に胴部62の開口側から雨水およびダストが浸入するのを抑制する。
【0023】
全長調整機構51は、外側部材52の空気導入穴66を介して室67内に圧縮空気を導入する図示略のエアコンプレッサと、外側部材52に対するシリンダ33の軸方向位置を検出する図示略の軸方向位置センサと、と有している。軸方向位置センサは、言い換えれば、外側部材52およびシリンダ33を合わせた軸方向長さを検出する。図示略の制御装置が、軸方向位置センサの検出結果に基づいてエアコンプレッサを制御する。
【0024】
全長調整機構51は、空気バネ機構であり、スプリング22と直列に配置されている。全長調整機構51は、エアコンプレッサによって空気導入穴66を介して室67内に圧縮空気を導入すると、室67の内圧を高めることになり、この内圧によって、車輪側に取付アイ63を介して連結された外側部材52に対してシリンダ33を軸方向に沿って上側に移動させることになって、シリンダ33に固定されたスプリングシート44でスプリング22を上方に押し上げる。このとき、空気バネである全長調整機構51は室67の内圧によって車体11の重量を支える車重負荷量が増大することになり、スプリング22の車重負荷量が減少することから、スプリング22がバネ力によって車体11を押し上げることになる。これにより、緩衝器21の全長が長くなって車両の車体11が上昇することになる。言い換えれば、緩衝器21およびスプリング22からなるサスペンション装置10が、車体11の高さ、すなわち車両の車高を高くする。
【0025】
逆に全長調整機構51がエアコンプレッサによって室67内の空気を抜いて内圧を下げると、外側部材52に対してシリンダ33を軸方向に沿って下側に移動させることになって、スプリング22を下方に下げる。このとき、全長調整機構51は、スプリング22の車重負荷量を増大させることになって、スプリング22が縮んで車体11を下げることになる。これにより、緩衝器21の全長が短くなって車両の車体11が下降することになる。言い換えれば、緩衝器21およびスプリング22からなるサスペンション装置10が、車体11の高さ、すなわち車両の車高を低くする。
【0026】
このように、全長調整機構51は、緩衝器21の全長を調整することで車体11の高さ、すなわち車両の車高を調整する。
【0027】
緩衝器21は、外側部材52とシリンダ33とで構成されるロック機構71を有している。ロック機構71は、全長調整機構51により変化した緩衝器21の全長を固定する。言い換えれば、ロック機構71は、全長調整機構51により変化した車両の車高を固定する。
【0028】
図2は、外側部材52の胴部62の内周面を平面状に展開して示している。ロック機構71は、シリンダ33の外周面すなわち外筒31の外周面と、外側部材52の内周面すなわち胴部62の内周面とのうちの一方である胴部62の内周面に設けられる螺旋状の溝部75を有している。また、ロック機構71は、外筒31の外周面と胴部62の内周面とのうちの他方である外筒31の外周面に設けられる移動部材76を有している。溝部75は胴部62の内周面から胴部62の径方向外方に凹んでいる。移動部材76は、外筒31の外周面から外筒31の径方向外方に突出しており、溝部75内に移動可能となるように配置されている。
【0029】
ロック機構71は、溝部75を複数、具体的には2箇所有している。2箇所の溝部75は同形状であり、胴部62の軸方向における位置を合わせて胴部62の円周方向に位相を180度異ならせて配置されている。
【0030】
移動部材76は外筒31の径方向に沿う円柱状のピン部材である。ロック機構71は、移動部材76を複数、具体的には2つ有している。2つの移動部材76は、同形状であり、外筒31の軸方向における位置を合わせて外筒31の円周方向に位相を180度異ならせて外筒31に固定されている。一方の移動部材76が一方の溝部75内を移動し、他方の移動部材76が他方の溝部75内を移動する。2つの移動部材76はシリンダ33の一部を構成している。
【0031】
以下、一方の溝部75およびその中を移動する一方の移動部材76について説明する。ここで、胴部62の軸方向は、外筒31の軸方向すなわちシリンダ33の軸方向となり、この方向をシリンダ軸方向と称す。また、胴部62の円周方向は、外筒31の円周方向すなわちシリンダ33の円周方向であり、この方向をシリンダ周方向と称す。
【0032】
溝部75は、その側面99が、胴部62の上端面100からシリンダ軸方向に沿って下方に延出する第1側面101と、第1側面101の下端縁部から下方かつシリンダ周方向において第1側面101が向く方向に延出する第2側面102と、第2側面102の下端縁部から上方かつシリンダ周方向において第1側面101とは反対方向に延出する第3側面103と、第3側面103の上端縁部から下方かつシリンダ周方向において第2側面102とは反対方向に延出する第4側面104と、第4側面104の下端縁部からシリンダ軸方向に沿って上方に延出する第5側面105と、を有している。第2側面102、第3側面103および第4側面104は、シリンダ軸方向上方に向いている。第5側面105は第1側面101とシリンダ周方向に対面する向きである。
【0033】
また、溝部75の側面99は、第5側面105の上端縁部から上方かつシリンダ周方向において第4側面104と同方向に延出する第6側面106と、第6側面106の上端縁部から上方かつシリンダ周方向において第5側面105とは反対方向に延出する第7側面107と、第7側面107の上端縁部からシリンダ軸方向に沿って下方に延出する第8側面108と、第8側面108の下端縁部からシリンダ周方向に沿って第7側面107とは反対方向に延出する第9側面109と、第9側面109の第8側面108とは反対側の端縁部からシリンダ軸方向に沿って胴部62の上端面100まで上方に延出する第10側面110と、を有している。第6側面106、第7側面107および第9側面109はシリンダ軸方向下方に向いている。第8側面108は第5側面105とシリンダ周方向に対面する向きである。第10側面110は第1側面101とシリンダ周方向に対面している。
【0034】
また、溝部75の側面99は、第7側面107のシリンダ軸方向における下側でシリンダ周方向に延びて第7側面107とシリンダ軸方向に対面する第11側面111と、第11側面111のシリンダ周方向における第1側面101側の端縁部から、下方かつシリンダ周方向において第1側面101に近づく方向に延出する第12側面112と、第12側面112の下端縁部からシリンダ軸方向に沿って下方に延出する第13側面113と、第13側面113の下端縁部から上方かつシリンダ周方向において第1側面101から離れる方向に延出する第14側面114と、第14側面114の上端縁部からシリンダ軸方向に沿って下方に延出する第15側面115と、第15側面115の下端縁部からシリンダ周方向に沿って第1側面101から離れる方向に延出する第16側面116と、第16側面116の第1側面101とは反対側の端縁部からシリンダ軸方向に沿って上方に延出する第17側面117と、を有している。第17側面117の上端縁部は、第11側面111のシリンダ周方向における第12側面112とは反対側の端縁部に繋がっている。
【0035】
第7側面107の第8側面108側の部分と第9側面109とは、第12側面112とシリンダ周方向における位置を合わせてシリンダ軸方向に対面している。また、第13側面113は、第10側面110とシリンダ周方向における位置を合わせており、第1側面101とシリンダ周方向に対面し、第2側面102とシリンダ周方向における位置を合わせている。また、第2側面102の第3側面103側の部分と、第3側面103と、第4側面104の第3側面103側の部分とは、第14側面114とシリンダ周方向における位置を合わせてシリンダ軸方向に対面している。
【0036】
第8側面108と、第9側面109と、第10側面110の第9側面109側の部分とは、第7側面107から溝部75内に突出する第1突出部121を形成している。第1突出部121は、シリンダ軸方向に沿って下方に向け突出している。また、第15側面115~第17側面117は、第14側面114から溝部75内に突出する第2突出部122を形成している。第2突出部122は、シリンダ軸方向に沿って下方に向け突出している。
【0037】
第2側面102および第3側面103の境界側部分は、溝部75の側面99に設けられ第1突出部121と対向する位置に配置される第1凹部131(凹部)を形成している。第1凹部131はシリンダ軸方向に沿って下方に向け凹んでいる。第1凹部131は、第14側面114とシリンダ周方向の位置を合わせてシリンダ軸方向に対面している。
【0038】
第4側面104と第5側面105との境界側部分は、シリンダ軸方向に沿って下方に向け凹む第2凹部132を形成している。第2凹部132は、第6側面106とシリンダ周方向の位置を合わせてシリンダ軸方向に対面している。第2凹部132は、第1凹部131よりもシリンダ軸方向の下側にあり、第1凹部131に対してシリンダ周方向の位置をずらしている。
【0039】
第7側面107と第8側面108との境界側部分は、シリンダ軸方向に沿って上方に向け凹む第3凹部133を形成している。第3凹部133は、第12側面112とシリンダ周方向の位置を合わせてシリンダ軸方向に対面している。第3凹部133は、第1凹部131に対して、シリンダ軸方向上側にある。第3凹部133は、シリンダ軸方向において第1凹部131よりも第2凹部132とは反対側にある。第6側面106および第7側面107は、第2凹部132にある移動部材76が上昇する際に、これを第3凹部133に案内する。第12側面112および第2側面102は、第3凹部133にある移動部材76が下降する際に、これを第1凹部131に案内する。
【0040】
第14側面114と第15側面115との境界側部分は、上方に凹む第4凹部134を形成している。第4凹部134は、第4側面104とシリンダ周方向の位置を合わせてシリンダ軸方向に対面している。第4凹部134はシリンダ周方向において第1凹部131と第2凹部132との間にある。第14側面114は、第1凹部131にある移動部材76が上昇する際に、これを第4凹部134に案内する。第4側面104は、第4凹部134にある移動部材76が下降する際に、これを第2凹部132に案内する。
【0041】
シリンダ33に設けられた移動部材76が、例えば、第2凹部132内に位置して第4側面104と第5側面105とに当たる状態にあるとき、シリンダ33はその底部41を外側部材52の底部61に最も近づけて室67を最も狭くする。この位置が外側部材52に対するシリンダ33の下限位置である。このとき、第2凹部132が、移動部材76のシリンダ軸方向下方の移動と、シリンダ周方向の移動とを抑制する。シリンダ33が外側部材52に対して下限位置にあるとき、同じ積載条件での停車時における車体11の地面からの高さが最も低くなり車両の車高も最も低くなる。
【0042】
この状態から、車高を上げる場合、図示略の制御装置が全長調整機構51の図示略のコンプレッサによって室67に圧縮空気を送り込み室67の内圧を上げて室67の容積を拡大する。すると、外側部材52に対してシリンダ33がシリンダ軸方向に沿って上方に移動する。これにより、空気バネである全長調整機構51が車体11の重量を支える。このとき、スプリングシート44でスプリング22を上方に押し上げると共に、スプリング22の車重負荷量が低下することから、スプリング22のばね力により車体11を押し上げることになって車高が上昇する。外側部材52に対してシリンダ33がシリンダ軸方向に沿って上方に移動すると、シリンダ33に設けられた移動部材76が、溝部75内で上昇し、第6側面106に当接し、第6側面106に沿って上昇する。その際に、第6側面106の傾斜によって移動部材76は、シリンダ30を外側部材52に対してシリンダ周方向に回転させることになる。このとき、移動部材76はシリンダ周方向において第1側面101に近づく第1方向(一方向)に移動する。
【0043】
そして、全長調整機構51によって、外側部材52に対してシリンダ33を軸方向に沿ってさらに上方に移動させると、移動部材76は、第7側面107に沿って上昇する。その際にも、第7側面107の傾斜によって移動部材76は、シリンダ30を外側部材52に対してシリンダ周方向に回転させることになる。このときも、移動部材76はシリンダ周方向において第1側面101に近づく第1方向に移動する。
【0044】
そして、移動部材76は、第3凹部133内に位置し第7側面107と第1突出部121の第8側面108とに当接して、それ以上のシリンダ軸方向上方への移動が抑制される。この状態で、移動部材76は、第8側面108によって、シリンダ周方向における第1側面101に近づく第1方向の移動も抑制される。すなわち、第1突出部121が、移動部材76の第1方向の移動を抑制する。言い換えれば、第3凹部133が、移動部材76のシリンダ軸方向上方の移動と、シリンダ周方向の移動とを抑制する。この位置が、シリンダ33の外側部材52に対する上限位置となる。シリンダ33が外側部材52に対して上限位置にあるとき、同じ積載条件での停車時における車体11の地面からの高さが最も高くなり車両の車高も最も高くなる。
【0045】
図示略の制御装置は、図示略の軸方向位置センサによって、シリンダ33が外側部材52に対しこの上限位置に位置したことを検出すると、全長調整機構51により室67の内圧を下げて室67を縮小し外側部材52に対してシリンダ33をシリンダ軸方向に沿って下方に移動させる。すると、シリンダ33に設けられた移動部材76が、溝部75内で下降し、第12側面112に当接し、第12側面112に沿って下降する。その際に、第12側面112の傾斜によって移動部材76は、シリンダ30を外側部材52に対してシリンダ周方向に回転させることになる。このとき、移動部材76はシリンダ周方向において第1側面101に近づく第1方向に移動する。
【0046】
そして、全長調整機構51によって、外側部材52に対してシリンダ33をシリンダ軸方向に沿ってさらに下方に移動させると、移動部材76は、第1側面101と第13側面113との間で下降した後、第2側面102に当接して、第2側面102に沿って下降する。その際に、第2側面102の傾斜によって移動部材76は、シリンダ30を外側部材52に対してシリンダ周方向に回転させることになる。このとき、移動部材76はシリンダ周方向において第1側面101から離れる第2方向に移動する。そして、移動部材76は、第1凹部131内に位置し第2側面102と第3側面103とに当接して、それ以上のシリンダ軸方向下方への移動が抑制される。この状態で、移動部材76は、シリンダ周方向における第1側面101に近づく第1方向および第1側面101から離れる第2方向の移動が抑制される。すなわち、第1凹部131が、移動部材76のシリンダ軸方向下方と、シリンダ周方向の第1方向および第2方向との移動を抑制する。
【0047】
この状態では、外側部材52に対してシリンダ33が昇降範囲における上限位置に近い上部所定位置で機械的に停止させられる。すなわち、ロック機構71が、緩衝器21の全長を最大長さおよび最小長さのうち最大長さに近く最大長さより若干短い所定のロック長さでロックすることになる。車両のこのときの車高の位置を車高ロック位置とする。
【0048】
この状態で、ロック機構71は、緩衝器21の全長が短くなる方向の移動を機械的に停止させるため、室67の圧力が低下しても、緩衝器21の全長がそれ以上短くなることはない。言い換えれば、ロック機構71が、全長調整機構51により変化した車高を車高ロック位置で固定する。このとき、同じ積載条件での停車時における車体11の地面からの高さが、最も低い高さよりも高く、最も高い高さよりも若干低い中間高さになる。
【0049】
この状態から、車高を下げる場合、図示略の制御装置は、全長調整機構51により室67を拡大し外側部材52に対してシリンダ33を軸方向に沿って上方に移動させる。すると、シリンダ33に設けられた移動部材76が、溝部75内で上昇して、第14側面114に当接し、第14側面114に沿って上昇する。その際に、第14側面114の傾斜によって移動部材76は、シリンダ33を外側部材52に対してシリンダ周方向に回転させることになる。このとき、移動部材76がシリンダ周方向において第1側面101から離れる第2方向に移動する。
【0050】
そして、全長調整機構51によって、外側部材52に対してシリンダ33を軸方向に沿ってさらに上方に移動させると、移動部材76は、第4凹部134内に位置し第14側面114と第15側面115とに当接して、それ以上のシリンダ軸方向上方への移動が抑制される。この状態で、移動部材76は、シリンダ周方向における第1側面101から離れる第2方向の移動も第2突出部122の第15側面115によって抑制される。すなわち、第15側面115を有する第2突出部122が、移動部材76の第2方向の移動を抑制する。言い換えれば、第4凹部134が、移動部材76のシリンダ軸方向上方と、シリンダ周方向の第1方向および第2方向との移動を抑制する。
【0051】
図示略の制御装置は、図示略の軸方向位置センサによって、シリンダ33が外側部材52に対しこの位置に位置したことを検出すると、全長調整機構51により室67を縮小し外側部材52に対してシリンダ33をシリンダ軸方向に沿って下方に移動させる。すると、シリンダ33に設けられた移動部材76が、溝部75内で下降し、第4側面104に当接し、第4側面104に沿って下降する。その際に、第4側面104の傾斜によって移動部材76は、シリンダ30を外側部材52に対してシリンダ周方向に回転させることになる。このとき、移動部材76はシリンダ周方向において第1側面101から離れる第2方向に移動する。
【0052】
そして、全長調整機構51によって、外側部材52に対してシリンダ33をシリンダ軸方向に沿ってさらに下方に移動させると、最終的に、移動部材76は、第2凹部132内に位置し、第4側面104と第5側面105とに当接する状態になって、それ以上のシリンダ軸方向下方の移動が抑制される。つまり、シリンダ33が外側部材52に対する下限位置で停止する。図示略の制御装置は、図示略の軸方向位置センサの検出結果に基づいて、シリンダ33が外側部材52に対しこの下限位置に位置したことを確認する。
【0053】
つまり、ロック機構71は、溝部75のジオメトリにより、移動部材76が、上限位置からの車高下降時には上限位置までの車高上昇時とは異なる経路で降下して、第1凹部131に当接する。これにより、ロック機構71が、さらなる車高の低下を防ぐ車高ロック状態になる。
【0054】
以上により、ロック機構71は、全長調整機構51により車両の車高が、移動部材76が第3凹部133内に位置して第7側面107および第8側面108と当接する所定値まで上昇したときには、その後、車高が下がっても、上昇した車高が、移動部材76が第1凹部131内に位置して第2側面102および第3側面103に当接する所定値よりも下がらないように車高を車高ロック位置でロックする。また、ロック機構71は、このロック後に全長調整機構51により車両の車高が、移動部材76が第4凹部134内に位置して第14側面114および第15側面115に当接する所定値まで上昇すると、このロックが解除され、その後、車高が下がると、車高を車高ロック位置よりも下げることになる。
【0055】
よって、図示略の制御装置が、エンジンの停止前に、上記のようにして移動部材76を第1凹部131内に位置させて車両の車高を上限に近い車高ロック位置でロックしておけば、エンジンを停止させて、全長調整機構51の室67内の空気が抜け、内圧が下がっても、車両の車高を車高ロック位置に維持することができる。また、その後、エンジンの始動時に、図示略の制御装置が、エアコンプレッサで室67内の内圧を上げてシリンダ33を上昇させ、移動部材76が第4凹部134内に位置して停止したことを図示略の軸方向位置センサで検出した後、室67内の内圧を下げれば、上記のようにして車両の車高を下げることができる。
【0056】
特許文献1には、エアサスペンション装置における車高調整機構が開示されているが、エアサスペンション装置で車高調整を行う場合、エンジンが停止しエアコンプレッサが停止した状態においては、空気が徐々に漏れて車両の車高が下がってしまう可能性がある。
【0057】
これに対して、第1実施形態のサスペンション装置10は、車両の車高を調整する全長調整機構51により変化した車高を固定するロック機構71を備えているため、エンジンが停止しても、ロック機構71が車高を固定することになる。よって、エンジン停止時でも車高を維持することが可能となる。
【0058】
また、第1実施形態のサスペンション装置10は、ロック機構71が、全長調整機構51により車両の車高が所定値まで上昇したとき、この車両の上昇した車高が所定値より下がらないようロックし、このロック後に全長調整機構51により車両の車高が所定値まで上昇するとロックが解除されるようになっている。このため、ロックおよびロック解除を全長調整機構51の動作を利用して行うことができる。したがって、コスト増を抑制することができる。また、空気バネである全長調整機構51の圧力を上昇させ、再度車高を上げることで、ロックを解除するため、全長調整機構51の圧力を上昇させずにロックを解除してしまった場合に生じる急激な車高低下による衝撃を緩和できる。
【0059】
また、第1実施形態のサスペンション装置10は、円柱状のシリンダ33と、シリンダ33の外周面を覆うように設けられてシリンダ33の軸方向に移動可能な外側部材52と、外側部材52の内周面に設けられる螺旋状の溝部75と、シリンダ33の外周面に設けられて溝部75内に移動可能に配置される移動部材76と、を有している。よって、ロック機構71を溝部75と移動部材76とで構成することができるため、構造を簡素化でき、コスト増を抑制することができる。
【0060】
また、第1実施形態のサスペンション装置10は、溝部75が、溝部75内に突出し移動部材76の一方向の移動を抑制する第1突出部121と、溝部75内に突出し移動部材76の他方向の移動を抑制する第2突出部122と、溝部75の側面99に設けられ第1突出部121と対向する位置に配置される第1凹部131とを有する。よって、第1突出部121で移動部材76をその一方向の移動を抑制して停止させることができ、第2突出部122で移動部材76をその他方向の移動を抑制して停止させることができ、第1突出部121と対向する第1凹部131で移動部材76をその一方向および他方向の移動を抑制して停止させることができる。
【0061】
また、第1実施形態のサスペンション装置10は、外側部材52で外周面が覆われて外側部材52に対して移動可能な支柱部材がシリンダ33であるため、部品点数を低減でき、コンパクト化が図れる。
【0062】
また、第1実施形態の緩衝器21は、シリンダ33の外部に延出されるピストンロッド38とは反対側に設けられて緩衝器21の全長を調整する全長調整機構51と、全長調整機構51により変化した全長を固定するロック機構71とを有するため、エンジンが停止しても、ロック機構71が車高を固定することになる。よって、エンジン停止時でも車高を維持することが可能となる。
【0063】
なお、第1実施形態においては、ロック機構71が、溝部75を外側部材52の内周面に、移動部材76をシリンダ33の外周面に有する場合を例にとり説明したが、溝部75をシリンダ33の外周面に、移動部材76を外側部材52の内周面に有していても良い。この場合は、溝部75を上記に対してシリンダ軸方向に反転させることになる。また、ロック機構71が、溝部75を外側部材52の内周面に、移動部材76をシリンダ33の外周面に有すると共に、シリンダ軸方向の別の位置において、溝部75をシリンダ33の外周面に、移動部材76を外側部材52の内周面に有していても良い。すなわち、ロック機構71が、シリンダ33の外周面および外側部材52の内周面の少なくとも一方に設けられる螺旋状の溝部75と、シリンダ33の外周面および外側部材52の内周面の少なくとも他方に設けられ、溝部75内に移動可能に配置される移動部材76と、を有していれば良い。
【0064】
また、第1実施形態においては、全長調整機構51およびロック機構71をシリンダ33の外部に延出されるピストンロッド38とは反対側に設ける場合を例にとり説明したが、一端がピストン37に連結されたピストンロッド38の他端側に、全長調整機構51およびロック機構71の少なくとも一方を設けることも可能である。
【0065】
[第2実施形態]
本発明に係る第2実施形態を主に
図3および
図4に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0066】
図3に示す第2実施形態のサスペンション装置10Aは、第1実施形態の緩衝器21とは一部異なる緩衝器21Aを有している。緩衝器21Aは、外筒31とは一部異なる外筒31Aを有する点がシリンダ33とは異なるシリンダ33Aを有している。よって、緩衝器21Aは、スプリングシート44を含む緩衝器本体45Aも緩衝器本体45とはシリンダ33Aが相違している。
【0067】
緩衝器21Aには、シリンダ33Aの外部に延出されるピストンロッド38とは反対側に、緩衝器21Aの全長を調整する全長調整機構51A(車高調整機構)が設けられている。全長調整機構51Aは、シリンダ33Aのピストンロッド38とは反対側の端部である底部41Aに固定される有底筒状の外側部材52Aと、外側部材52Aに嵌合されると共に取付アイ63が固定される円柱状の支柱部材180と、外側部材52Aと支柱部材180との隙間をシールするシール部材53Aと、外側部材52Aの開口側と支柱部材180の外周面との間を覆うダストブーツ54Aと、を有している。支柱部材180は、シリンダ33Aのピストンロッド38が延出する側とは反対の一端側に配置されている。
【0068】
外側部材52Aは、円板状の底部61Aと、底部61Aの外周縁部から軸方向一側に延出する円筒状の胴部62Aと、を有している。外側部材52Aは、シリンダ33Aと中心軸線を一致させて底部61Aにおいてシリンダ33Aの底部41Aに固定されており、胴部62Aが底部61Aよりも軸方向においてシリンダ33Aとは反対方向に延出している。胴部62Aの軸方向すなわち外側部材52Aの軸方向は、外筒31Aの軸方向すなわちシリンダ33Aの軸方向となる、また、胴部62Aの円周方向すなわち外側部材52Aの円周方向は、外筒31Aの円周方向すなわちシリンダ33Aの円周方向となる。さらに、胴部62Aの径方向すなわち外側部材52Aの径方向は、外筒31Aの径方向すなわちシリンダ33Aの径方向となる。
【0069】
外側部材52Aは、胴部62Aの径方向内側に支柱部材180を嵌合させており、支柱部材180に対して支柱部材180の軸方向に移動可能となっている。また、外側部材52Aは、支柱部材180に対して円周方向に回転可能となっている。
【0070】
胴部62Aに嵌合する支柱部材180は胴部62Aと同軸状に配置されることになる。よって、胴部62Aの軸方向は、支柱部材180の軸方向となる。また、胴部62Aの円周方向は、支柱部材180の円周方向となる。さらに、胴部62Aの径方向は、支柱部材180の径方向となる。取付アイ63は支柱部材180の軸方向におけるシリンダ33Aとは反対側に溶接等により固定されている。
【0071】
外側部材52Aの胴部62Aには、その軸方向における底部61Aの近傍位置に、胴部62Aを径方向に貫通する空気導入穴66Aが設けられている。支柱部材180は、外側部材52Aの底部61Aとの間に軸方向に隙間を形成する。
【0072】
シール部材53Aは、環状であり、支柱部材180の軸方向における取付アイ63とは反対側の端部である頭部181の外周部に嵌合されて保持されている。シール部材53Aは、外側部材52Aの胴部62Aの内周面に摺接しつつ外側部材52Aに対して支柱部材180と一体に軸方向および円周方向に移動する。支柱部材180とシール部材53Aと外側部材52Aの底部61Aおよび胴部62Aとが、これらの内側に室67Aを形成している。シール部材53Aは、外側部材52Aに対し支柱部材180が移動しても室67Aの気密を確保する。室67Aは、支柱部材180および外側部材52Aの軸方向において、支柱部材180の頭部181と底部61Aとの間にある。空気導入穴66Aも、支柱部材180および外側部材52Aの軸方向において、支柱部材180の頭部181と底部61Aとの間にあり、室67Aに連通している。
【0073】
ダストブーツ54Aは、筒状であり、一端側が取付アイ63の外周部に密着状態で嵌合されており、他端側が外側部材52Aの胴部62Aの外周部に密着状態で嵌合されている。ダストブーツ54Aは、支柱部材180と外側部材52Aとの軸方向および円周方向の相対移動に追従して変形することになり、支柱部材180と外側部材52Aとの隙間に胴部62Aの開口側から雨水およびダストが浸入するのを抑制する。
【0074】
全長調整機構51Aは、図示略のエアコンプレッサが外側部材52Aの空気導入穴66Aを介して室67内Aに圧縮空気を導入する。また、全長調整機構51Aは、図示略の軸方向位置センサが、外側部材52Aおよびシリンダ33Aの支柱部材180に対する軸方向位置を検出することで支柱部材180、外側部材52Aおよびシリンダ33Aを合わせた軸方向長さを検出する。
【0075】
全長調整機構51Aは、空気バネ機構であり、スプリング22と直列に配置されている。全長調整機構51Aは、図示略のエアコンプレッサによって空気導入穴66Aを介して室67A内に圧縮空気を導入すると、室67Aの内圧を高めることになり、この内圧によって、車輪側に取付アイ63を介して連結された支柱部材180に対して外側部材52Aおよびシリンダ33Aを軸方向に沿って上側に移動させることになって、スプリング22を上方に押し上げる。このとき、空気バネである全長調整機構51Aは、室67Aの内圧によって車体11の重量を支える車重負荷量が増大することになり、スプリング22の車重負荷量が減少することから、スプリング22がバネ力によって車体11を押し上げることになる。これにより、緩衝器21Aの全長が長くなって車両の車体11が上昇することになる。言い換えれば、緩衝器21Aおよびスプリング22からなるサスペンション装置10Aが、車体11の高さ、すなわち車両の車高を高くする。
【0076】
逆に全長調整機構51Aがエアコンプレッサによって室67A内の空気を抜いて内圧を下げると、支柱部材180に対して外側部材52Aおよびシリンダ33Aを軸方向に沿って下側に移動させることになって、スプリング22を下方に下げる。このとき、全長調整機構51Aは、スプリング22の車重負荷量を増大させることになって、スプリング22が縮んで車体11を下げることになる。これにより、緩衝器21Aの全長が短くなって車両の車体11が下降することになる。言い換えれば、緩衝器21Aおよびスプリング22からなるサスペンション装置10Aが、車体11の高さ、すなわち車両の車高を低くする。
【0077】
このように、全長調整機構51Aは、緩衝器21Aの全長を調整することで車体11の高さ、すなわち車両の車高を調整する。
【0078】
緩衝器21Aは、外側部材52Aと支柱部材180とで構成されるロック機構71Aを有している。ロック機構71Aは、全長調整機構51Aにより変化した緩衝器21Aの全長を固定する。言い換えれば、ロック機構71Aは、全長調整機構51Aにより変化した車高を固定する。
【0079】
図4は、外側部材52Aの胴部62Aの内周面を平面状に展開して示している。ロック機構71Aは、支柱部材180の外周面と、外側部材52Aの内周面すなわち胴部62Aの内周面とのうちの一方である胴部62Aの内周面に設けられる環状の溝部75Aを有している。また、ロック機構71Aは、支柱部材180の外周面と胴部62Aの内周面とのうちの他方である支柱部材180の外周面に設けられる移動部材76Aを有している。溝部75Aは胴部62Aの内周面から胴部62Aの径方向外方に凹んでいる。移動部材76Aは、支柱部材180の外周面から支柱部材180の径方向外方に突出しており、溝部75A内に移動可能となるように配置されている。
【0080】
ロック機構71Aは、溝部75Aを複数、具体的には2箇所有している。2箇所の溝部75Aは同形状であり、胴部62Aの軸方向における位置を合わせ、胴部62Aの円周方向に位相を180度異ならせて配置されている。
【0081】
移動部材76Aは支柱部材180の径方向に沿う円柱状のピン部材である。ロック機構71Aは、移動部材76Aを複数、具体的には2つ有している。2つの移動部材76Aは、同形状であり、支柱部材180の軸方向における位置を合わせて支柱部材180の円周方向に位相を180度異ならせて支柱部材180に固定されている。一方の移動部材76Aが一方の溝部75A内を移動し、他方の移動部材76Aが他方の溝部75A内を移動する。
【0082】
以下、一方の溝部75Aおよびその中を移動する一方の移動部材76Aについて説明する。支柱部材180および胴部62Aの軸方向はシリンダ33Aの軸方向となり、この方向をシリンダ軸方向と称す。また、支柱部材180および胴部62Aの円周方向はシリンダ33Aの円周方向であり、この方向をシリンダ周方向と称す。
【0083】
溝部75Aは、その側面99Aが、側面99Aにおける上端位置から、下方かつシリンダ周方向一側に延出する第1側面201と、第1側面201の下端縁部からシリンダ軸方向に沿って下方に延出する第2側面202と、第2側面202の下端縁部から上方かつシリンダ周方向において第1側面201と同方向に延出する第3側面203と、第3側面203の上端縁部から下方かつシリンダ周方向において第2側面202とは反対方向に延出する第4側面204と、第4側面204の下端縁部から上方かつシリンダ周方向において第3側面203とは反対方向に延出する第5側面205と、第5側面205の上端縁部からシリンダ軸方向に沿って上方に延出する第6側面206と、第6側面206の上端縁部から上方かつシリンダ周方向において第5側面205と同方向に延出して第1側面201の上端縁部に繋がる第7側面207と、を有している。第1側面201および第7側面207は、シリンダ軸方向下方に向いている。第3側面203、第4側面204および第5側面205はシリンダ軸方向上方に向いている。第6側面206は第2側面202とシリンダ周方向に対面する向きである。
【0084】
また、溝部75Aの側面99Aは、第1側面201にシリンダ軸方向における下側で対面し上端位置から下方かつシリンダ周方向において第2側面202に近づく方向に延出する第8側面208と、第8側面208の下端縁部からシリンダ軸方向に沿って下方に延出する第9側面209と、第9側面209の下端縁部から上方かつシリンダ周方向において第8側面208と同方向に延出する第10側面210と、第10側面210の上端縁部から下方かつシリンダ周方向において第9側面209とは反対方向に延出する第11側面211と、第11側面211の下端縁部から上方かつシリンダ周方向において第10側面210とは反対方向に延出する第12側面212と、第12側面212の上端縁部からシリンダ軸方向に沿って上方に延出する第13側面213と、第13側面213の上端縁部から上方かつシリンダ周方向において第12側面212と同方向に延出して第8側面208の上端縁部に繋がる第14側面214と、を有している。第8側面208および第14側面214は、シリンダ軸方向上方に向いている。第10側面210、第11側面211および第12側面212は、シリンダ軸方向下方に向いている。第9側面209は第2側面202とシリンダ周方向に対面している。第13側面213は第6側面206とシリンダ周方向に対面している。
【0085】
第1側面201の第7側面207側の部分と第7側面207の第1側面201側の部分とは、第14側面214とシリンダ周方向における位置を合わせてシリンダ軸方向に対面している。また、第4側面204と第5側面205の第4側面204側の部分とは、第11側面211とシリンダ周方向における位置を合わせており、シリンダ軸方向に対面している。また、第10側面210と第11側面211の第10側面210側の部分とは、第3側面203とシリンダ周方向における位置を合わせており、シリンダ軸方向に対面している。
【0086】
第10側面210と第11側面211との境界側部分は、シリンダ軸方向に沿って上方に向け凹む第1凹部221を構成している。第1凹部221は、第3側面203とシリンダ周方向における位置を合わせて、シリンダ軸方向に対面している。
【0087】
第1側面201および第7側面207の境界側部分は、シリンダ軸方向に沿って上方に向け凹む第2凹部222を構成している。第2凹部222は、第14側面214とシリンダ周方向における位置を合わせて、シリンダ軸方向に対面している。
【0088】
第4側面204と第5側面205との境界側部分は、シリンダ軸方向に沿って下方に向け凹む第3凹部223を構成している。第3凹部223は、第11側面211とシリンダ周方向における位置を合わせて、シリンダ軸方向に対面している。
【0089】
第2側面202と第3側面203との境界側部分は、シリンダ軸方向に沿って下方に向け凹む第4凹部224を構成している。第4凹部224は、第1側面201とシリンダ周方向における位置を合わせて、シリンダ軸方向に対面している。
【0090】
第3側面203と第4側面204との境界側部分はシリンダ軸方向に沿って上方に向け突出する第1凸部231を構成している。第8側面208と第14側面214との境界側部分は、シリンダ軸方向に沿って上方に向け突出する第2凸部232を構成している。
【0091】
第1凸部231と第1凹部221とが、溝部75Aが内周側に向けて凹形状に形成される凹状溝部241を構成している。第2凸部232と第2凹部222とが、凹状溝部241と対向する側に設けられ、溝部75Aが外周側に向けて凸形状に形成される凸状溝部242を構成している。
【0092】
よって、溝部75Aは、溝部75Aが内周側に向けて凹形状に形成される凹状溝部241と、凹状溝部241と対向する側に設けられ、溝部75Aが外周側に向けて凸形状で形成される凸状溝部242とを有している。
【0093】
第2凹部222は、第1凹部221よりもシリンダ軸方向の上側にある。第3凹部223は、第1凹部221に対して、シリンダ軸方向下側にあり、シリンダ周方向の位置をずらしている。第4凹部224は、第3凹部223に対して、シリンダ軸方向下側にあり、シリンダ周方向の位置をずらしている。第1凹部221は、シリンダ周方向において第3凹部223と第4凹部224との間にある。
【0094】
第14側面214および第5側面205は、第2凹部222にある移動部材76Aが胴部62Aに対し相対的に下方に移動する際に、これを第3凹部223に案内する。第11側面211は、第3凹部223にある移動部材76Aが胴部62Aに対し相対的に上方に移動する際に、これを第1凹部221に案内する。第3側面203は、第1凹部221にある移動部材76Aが胴部62Aに対し相対的に下方に移動する際に、これを第4凹部224に案内する。第1側面201は、第4凹部224にある移動部材76Aが胴部62Aに対し相対的に上方に移動する際に、これを第2凹部222に案内する。
【0095】
支柱部材180に設けられた移動部材76Aが、例えば、第2凹部222内に位置して第1側面201と第7側面207とに当たる状態にあるとき、外側部材52Aはその底部61Aを支柱部材180の頭部181に最も近づけて室67Aを最も狭くする。この位置が支柱部材180に対する外側部材52Aおよびシリンダ33Aの下限位置である。このとき、移動部材76Aが、胴部62Aのシリンダ軸方向下方への移動と、シリンダ周方向の移動とを抑制する。外側部材52Aおよびシリンダ33が支柱部材180に対して下限位置にあるとき、同じ積載条件での停車時における車体11の地面からの高さが最も低くなり車両の車高も最も低くなる。
【0096】
この状態から、車高を上げる場合、図示略の制御装置が、全長調整機構51Aの図示略のエアコンプレッサにより室67Aに圧縮空気を送り込み室67Aの内圧を上げて室67Aの容積を拡大する。すると、支柱部材180に対して外側部材52Aおよびシリンダ33Aがシリンダ軸方向に沿って上方に移動する。これにより、全長調整機構51Aが車体11の重量を支える。このとき、スプリングシート44でスプリング22を上方に押し上げると共に、スプリング22の車重負荷量が低下することから、スプリング22のばね力により車体11を押し上げることになって車高が上昇する。支柱部材180に対して外側部材52Aおよびシリンダ33Aがシリンダ軸方向に沿って上方に移動すると、外側部材52Aに形成された溝部75Aが上昇し、第14側面214において移動部材76Aに当接した後、第14側面214の傾斜で回転しながら、上昇する。
【0097】
そして、全長調整機構51Aによって、支柱部材180に対して外側部材52Aおよびシリンダ33Aをシリンダ軸方向に沿ってさらに上方に移動させると、外側部材52Aに形成された溝部75Aが、第6側面206および第13側面213の間に移動部材76Aを通過させ、その後、第5側面205において移動部材76Aに当接し、第5側面205の傾斜で回転しながら、上昇して第3凹部223内に移動部材76Aを位置させて、移動部材76Aに第4側面204および第5側面205で当接して停止する。これにより、溝部75Aを含む外側部材52Aおよびシリンダ33Aは、一旦、それ以上のシリンダ軸方向上方への移動が抑制される。この状態で、外側部材52Aおよびシリンダ33Aは、移動部材76Aによってシリンダ周方向の移動も抑制される。
【0098】
図示略の制御装置は、図示略の軸方向位置センサによって、外側部材52Aおよびシリンダ33Aが支柱部材180に対しこの位置に位置したことを検出すると、全長調整機構51Aにより室67Aの内圧を下げて室67Aを縮小し支柱部材180に対して外側部材52Aおよびシリンダ33Aをシリンダ軸方向に沿って下方に移動させる。すると、外側部材52Aに形成された溝部75Aが、移動部材76Aに対し下降し、第11側面211において移動部材76Aに当接して、第11側面211の傾斜で回転しながら、下降して第1凹部221内に移動部材76Aを位置させて、移動部材76Aに第10側面210および第11側面211で当接して停止し、それ以上のシリンダ軸方向下方への移動が抑制される。この状態で、外側部材52Aおよびシリンダ33Aは、移動部材76Aによってシリンダ周方向の移動も抑制される。
【0099】
この状態では、支柱部材180に対して外側部材52Aおよびシリンダ33Aが、第3凹部223を移動部材76Aに当接させる位置に近い上部所定位置で機械的に停止させられる。すなわち、ロック機構71Aが、緩衝器21Aの全長を最大長さおよび最小長さのうち最大長さに近く最大長さより若干短い所定のロック長さでロックすることになる。車両のこのときの車高の位置を車高ロック位置とする。
【0100】
この状態で、ロック機構71Aは、緩衝器21Aの全長が短くなる方向の移動を機械的に停止させるため、室67Aの圧力が低下しても、緩衝器21Aの全長がそれ以上短くなることはない。言い換えれば、ロック機構71Aが、全長調整機構51Aにより変化した車高を車高ロック位置で固定する。このとき、同じ積載条件での停車時における車体11の地面からの高さが、最も低い高さよりも高く、最も高い高さよりも若干低い中間高さになる。
【0101】
この状態から、車高を下げる場合、図示略の制御装置は、全長調整機構51Aにより室67Aを拡大し、支柱部材180に対して外側部材52Aおよびシリンダ33Aをシリンダ軸方向に沿って上方に移動させる。すると、外側部材52Aに形成された溝部75Aが、移動部材76Aに対し上昇して、第3側面203において、移動部材76Aに当接して、第3側面203の傾斜で回転しながら、上昇して第4凹部224内に移動部材76Aを位置させて、移動部材76Aに第2側面202および第3側面203で当接して停止し、一旦、それ以上のシリンダ軸方向上方への移動が抑制される。この状態で、外側部材52Aおよびシリンダ33Aは、移動部材76Aによってシリンダ周方向の移動も抑制される。
【0102】
図示略の制御装置は、図示略の軸方向位置センサによって、外側部材52Aおよびシリンダ33Aが支柱部材180に対しこの位置に位置したことを検出すると、全長調整機構51Aによって、支柱部材180に対して外側部材52Aおよびシリンダ33Aをシリンダ軸方向に沿って下方に移動させる。すると、外側部材52Aに形成された溝部75Aが、移動部材76Aに対し下降して、第2側面202および第9側面209の間に移動部材76Aを通過させ、その後、第1側面201において移動部材76Aに当接し、第1側面201の傾斜で回転しながら、下降して第2凹部222内に移動部材76Aを位置させて、移動部材76Aに第1側面201および第7側面207で当接して停止する。これにより、溝部75Aを含む外側部材52Aおよびシリンダ33Aは、それ以上のシリンダ軸方向下方への移動が抑制される。この状態で、外側部材52Aおよびシリンダ33Aは、移動部材76Aによってシリンダ周方向の移動も抑制される。つまり、外側部材52Aおよびシリンダ33Aが支柱部材180に対する下限位置で停止する。図示略の制御装置は、図示略の軸方向位置センサの検出結果に基づいて、外側部材52Aおよびシリンダ33Aが支柱部材180に対しこの下限位置に位置したことを確認する。
【0103】
つまり、ロック機構71Aは、溝部75Aのジオメトリにより、溝部75A内で移動部材76Aを、車高下降時には車高上昇時とは異なる経路で相対的に上昇させて第1凹部221で停止させる。これにより、ロック機構71Aは、さらなる車高の低下を防ぐ車高ロック状態になる。
【0104】
以上により、ロック機構71Aは、全長調整機構51Aにより車両の車高が、移動部材76Aを第3凹部223内に位置させて第4側面204および第5側面205に当接させる所定値まで上昇したときには、その後、車高が下がっても、上昇した車高が、移動部材76Aを第1凹部221内に位置させて第10側面210および第11側面211に当接させる所定値よりも下がらないように車高を車高ロック位置でロックする。また、ロック機構71Aは、このロック後に全長調整機構51Aにより車両の車高が、移動部材76Aを第4凹部224内に位置させて第2側面202および第3側面203に当接させる所定値まで上昇すると、このロックが解除され、その後、車高が下がると、車高を車高ロック位置よりも下げることになる。
【0105】
よって、図示略の制御装置が、エンジンの停止前に、上記のようにして移動部材76Aを第1凹部221内に位置させて車両の車高を上限に近い車高ロック位置でロックしておけば、エンジンを停止させて、全長調整機構51Aの室67A内の空気が抜け、内圧が下がっても、車両の車高を車高ロック位置に維持することができる。また、その後、エンジンの始動時に、図示略の制御装置が、図示略のエアコンプレッサで室67A内の内圧を上げて外側部材52Aおよびシリンダ33Aを上昇させ、移動部材76Aが第4凹部224内に位置して、支柱部材180に対して外側部材52Aおよびシリンダ33Aが停止したことを図示略の軸方向位置センサで検出した後、室67A内の内圧を下げれば、上記のようにして車両の車高を下げることができる。
【0106】
第2実施形態のサスペンション装置10Aは、円柱状の支柱部材180と、支柱部材180の外周面を覆うように設けられて支柱部材180の軸方向に移動可能な外側部材52Aと、外側部材52Aの内周面に設けられる環状の溝部75Aと、支柱部材180の外周面に設けられて溝部75A内に移動可能に配置される移動部材76Aと、を有している。よって、ロック機構71Aを溝部75Aと移動部材76Aとで構成することができるため、構造を簡素化でき、コスト増を抑制することができる。
【0107】
また、第2実施形態のサスペンション装置10Aは、溝部75Aが内周側に向けて凹形状に形成される凹状溝部241と、凹状溝部241と対向する側に設けられ、溝部75Aが外周側に向けて凸形状で形成される凸状溝部242とを有する。よって、溝部75Aの形状を簡素化でき、コスト増を抑制することができる。
【0108】
また、第2実施形態のサスペンション装置10Aは、支柱部材180が、シリンダ33Aのピストンロッド38が延出する側とは反対の一端側に配置されているため、サスペンション装置10Aをコンパクトに形成することができる。
【0109】
なお、第2施形態においては、ロック機構71Aが、溝部75Aを外側部材52Aの内周面に、移動部材76Aを支柱部材180の外周面に有する場合を例にとり説明したが、溝部75Aを支柱部材180の外周面に、移動部材76Aを外側部材52Aの内周面に有していても良い。この場合は、溝部75Aを上記に対してシリンダ軸方向に反転させることになる。また、ロック機構71Aが、溝部75Aを外側部材52Aの内周面に、移動部材76Aを支柱部材180の外周面に有すると共に、シリンダ軸方向の別の位置において、溝部75Aを支柱部材180の外周面に、移動部材76Aを外側部材52Aの内周面に有していても良い。すなわち、ロック機構71Aが、支柱部材180の外周面および外側部材52Aの内周面の少なくとも一方に設けられる環状の溝部75Aと、支柱部材180の外周面および外側部材52Aの内周面の少なくとも他方に設けられ、溝部75A内に移動可能に配置される移動部材76Aと、を有していれば良い。
【0110】
また、第2実施形態においては、全長調整機構51Aおよびロック機構71Aをシリンダ33Aの外部に延出されるピストンロッド38とは反対側に設ける場合を例にとり説明したが、一端がピストン37に連結されたピストンロッド38の他端側に、全長調整機構51Aおよびロック機構71Aの少なくとも一方を設けることも可能である。
【0111】
また、第2実施形態において、溝部75Aにかえて第1実施形態の溝部75を設けることも可能である。その場合、溝部75をシリンダ軸方向に反転させることになる。また、第1実施形態において、溝部75にかえて第2実施形態の溝部75Aを設けることも可能である。その場合、溝部75Aをシリンダ軸方向に反転させることになる。
【0112】
[第3実施形態]
本発明に係る第3実施形態を主に
図5に基づいて第2実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第2実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0113】
第3実施形態においては、外側部材52Aとは一部異なる外側部材52Bを有している。外側部材52Bは胴部62Aに対して溝部75Bが溝部75Aとは異なる胴部62Bを有している。言い換えれば、第3実施形態においては、ロック機構71Aに対し溝部75Aとは異なる溝部75Bを有する点が異なるロック機構71Bを有している。
【0114】
図5は、胴部62Bの内周面を平面状に展開して示している。ロック機構71Bは、溝部75Bを複数、具体的には2箇所有している。2箇所の溝部75Bは同形状であり、胴部62Bの軸方向における位置を合わせて胴部62Bの円周方向に位相を180度異ならせて配置されている。一方の移動部材76Aが一方の溝部75B内を移動し、他方の移動部材76Aが他方の溝部75B内を移動する。
【0115】
以下、一方の溝部75Bおよびその中を移動する一方の移動部材76Aについて説明する。ここでも、胴部62Bの軸方向はシリンダ33Aの軸方向となり、この方向をシリンダ軸方向と称す。また、胴部62Bの円周方向はシリンダ33Aの円周方向であり、この方向をシリンダ周方向と称す。
【0116】
溝部75Bは、その側面99Bが、側面99Bにおける上端位置から、下方かつシリンダ周方向一側に延出する第1側面301と、第1側面301の下端縁部からシリンダ軸方向に沿って下方に延出する第2側面302と、第2側面302の下端縁部から上方かつシリンダ周方向において第1側面301と同方向に延出する第3側面303と、第3側面303の上端縁部から上方かつシリンダ周方向において第1側面301の方向に延出して第1側面301の上端縁部に繋がる第4側面304と、を有している。第1側面301および第4側面304は、シリンダ軸方向下方に向いている。第3側面303はシリンダ軸方向上方に向いている。
【0117】
また、溝部75Bの側面99Bは、第1側面301にシリンダ軸方向における下側で対面し上端位置から下方かつシリンダ周方向において第2側面302に近づく方向に延出する第5側面305と、第5側面305の下端縁部からシリンダ軸方向に沿って下方に延出する第6側面306と、第6側面306の下端縁部から上方かつシリンダ周方向において第5側面305と同方向に延出する第7側面307と、第7側面307の上端縁部からシリンダ軸方向に沿って上方に延出する第8側面308と、第8側面308の上端縁部からシリンダ周方向に沿って第6側面306とは反対方向に延出する第9側面309と、第9側面309の第8側面308とは反対側の端縁部からシリンダ軸方向に沿って下方に延出する第10側面310と、を有している。第5側面305は、シリンダ軸方向上方に向いている。第9側面309はシリンダ軸方向下方に向いている。第6側面306は第2側面302とシリンダ周方向に対面している。第10側面310は第8側面308とシリンダ周方向に対面している。
【0118】
また、溝部75Bの側面99Bは、第10側面310の下端縁部から上方かつシリンダ周方向において第8側面308とは反対方向に延出する第11側面311と、第11側面311の上端縁部からシリンダ軸方向に沿って上方に延出する第12側面312と、第12側面312の上端縁部からシリンダ周方向に沿って第10側面310とは反対方向に延出する第13側面313と、第13側面313の第12側面312とは反対側の端縁部からシリンダ軸方向に沿って下方に延出する第14側面314と、を有している。第13側面313はシリンダ軸方向下方に向いており、第9側面309よりもシリンダ軸方向下側にある。第14側面314は第12側面312とシリンダ周方向に対面している。
【0119】
また、溝部75Bの側面99Bは、第14側面314の下端縁部から上方かつシリンダ周方向において第12側面312とは反対方向に延出する第15側面315と、第15側面315の上端縁部から上方かつシリンダ周方向において第5側面305の方向に延出して第5側面305の上端縁部に繋がる第16側面316と、を有している。第15側面315は、シリンダ軸方向下方に向いている。第16側面316はシリンダ軸方向上方に向いて、第4側面304と対面している。
【0120】
第1側面301の第4側面304側の部分と第4側面304の第1側面301側の部分とは、第16側面316とシリンダ周方向における位置を合わせてシリンダ軸方向に対面している。また、第2側面302と第3側面303の第2側面302側の部分とは第1側面301とシリンダ周方向における位置を合わせてシリンダ軸方向に対面している。
【0121】
第11側面311~第14側面314は、シリンダ軸方向に沿って上方に向け凹む第1凹部321(凹部)を構成している。第1凹部321は、第3側面303とシリンダ周方向における位置を合わせて、シリンダ軸方向に対面している。第1凹部321は、溝部75Bの内周側に設けられ、内周側に向けて形成されている。
【0122】
第7側面307~第10側面310は、シリンダ軸方向に沿って上方に向け凹む第2凹部322(凹部)を構成している。第2凹部322は、第3側面303とシリンダ周方向における位置を合わせて、シリンダ軸方向に対面している。第2凹部322は、溝部75Bの内周側に設けられ、内周側に向けて形成されている。
【0123】
第1側面301および第4側面304の境界側部分は、シリンダ軸方向に沿って上方に向け凹む第3凹部323を構成している。第3凹部323は、第16側面316とシリンダ周方向における位置を合わせて、シリンダ軸方向に対面している。
【0124】
第2側面302と第3側面303との境界側部分は、シリンダ軸方向に沿って下方に向け凹む第4凹部324を構成している。第4凹部324は、第1側面301とシリンダ周方向における位置を合わせて、シリンダ軸方向に対面している。
【0125】
第5側面305と第16側面316との境界側部分は、シリンダ軸方向に沿って上方に向け突出する第1凸部331を構成している。第1凸部331と第3凹部323とはシリンダ軸方向に対面している。第1凸部331と第3凹部323とが、複数の第1凹部321および第2凹部322と対向する側に設けられ、溝部75Bが外周側に向けて凸形状に形成される凸状溝部341を構成している。
【0126】
よって、溝部75Bは、溝部75Bの内周側に設けられ、内周側に向けて形成される複数の第1凹部321および第2凹部322と、複数の第1凹部321および第2凹部322と対向する側に設けられ、溝部75Bが外周側に向けて凸形状で形成される凸状溝部341とを有している。
【0127】
第1凹部321は、第2凹部322よりもシリンダ軸方向の上側にあり、第2凹部322に対してシリンダ周方向の位置をずらしている。第3凹部323は、第1凹部321よりもシリンダ軸方向の上側にある。第4凹部324は、第2凹部322よりもシリンダ軸方向下側にあり、第1凹部321および第2凹部322に対してシリンダ周方向の位置をずらしている。
【0128】
第16側面316および第3側面303は、第3凹部323にある移動部材76Aが胴部62Bに対し相対的に下方に移動する際に、これを第1凹部321の鉛直下方の位置に案内したり、第2凹部322の鉛直下方の位置に案内する。第3側面303は、第1凹部321にある移動部材76Aおよび第2凹部322にある移動部材76Aが胴部62Bに対し相対的に下方に移動する際に、これを第4凹部324に案内する。第1側面301は、第4凹部324にある移動部材76Aが胴部62Aに対し相対的に上方に移動する際に、これを第3凹部323に案内する。
【0129】
支柱部材180に設けられた移動部材76Aが、例えば、第3凹部323内に位置して第1側面301と第4側面304とに当たる状態にあるとき、外側部材52Bはその底部61Aを支柱部材180に最も近づけて室67Aを最も狭くする。この位置が支柱部材180に対する外側部材52Bおよびシリンダ33Aの下限位置である。このとき、移動部材76Aが、第3凹部323に当接して、胴部62Bのシリンダ軸方向下方への移動と、シリンダ周方向の移動とを抑制する。外側部材52Bおよびシリンダ33Aが支柱部材180に対して下限位置にあるとき、同じ積載条件での停車時における車体11の地面からの高さが最も低くなり車両の車高も最も低くなる。
【0130】
この状態から、車高を上げる場合、図示略の制御装置が、全長調整機構51Aの図示略のエアコンプレッサにより室67Aに圧縮空気を送り込み室67Aの内圧を上げて室67Aの容積を拡大する。すると、支柱部材180に対して外側部材52Bおよびシリンダ33Aがシリンダ軸方向に沿って上方に移動する。これにより、全長調整機構51Aが車体11の重量を支える。このとき、スプリングシート44でスプリング22を上方に押し上げると共に、スプリング22の車重負荷量が低下することから、スプリング22のバネ力により車体11を押し上げることになって車高が上昇する。支柱部材180に対して外側部材52Bおよびシリンダ33Aがシリンダ軸方向に沿って上方に移動すると、外側部材52Bに形成された溝部75Bが上昇し、第16側面316において移動部材76Aに当接した後、第16側面316の傾斜で回転しながら、上昇する。
【0131】
そして、全長調整機構51Aによって、支柱部材180に対して外側部材52Bおよびシリンダ33Aをシリンダ軸方向に沿ってさらに上方に移動させると、外側部材52Bに形成された溝部75Bが、第3側面303において移動部材76Aに当接し、第3側面303の傾斜で回転しながら、上昇する。
【0132】
このとき、図示略の制御装置は、例えば、支柱部材180に対して外側部材52Bおよびシリンダ33Aが、第1凹部321を移動部材76Aとシリンダ周方向の位置を合わせるまで上昇したことを、図示略の軸方向位置センサで検出すると、全長調整機構51Aにより室67Aの内圧を下げて室67Aを縮小し支柱部材180に対して外側部材52Bおよびシリンダ33Aをシリンダ軸方向に沿って下方に移動させる。すると、外側部材52Bに形成された溝部75Bが、移動部材76Aに対し下降し、第1凹部321内に移動部材76Aを位置させて、移動部材76Aに第13側面313で当接して停止し、それ以上のシリンダ軸方向下方への移動が抑制される。この状態で、外側部材52Bおよびシリンダ33Aは、移動部材76Aによってシリンダ周方向の移動も抑制される。
【0133】
この状態では、支柱部材180に対して外側部材52Bおよびシリンダ33Aが、シリンダ軸方向の所定の第1中間位置で機械的に停止させられる。すなわち、ロック機構71Bが、緩衝器21Aの全長を最大長さおよび最小長さの間の所定の第1ロック長さでロックすることになる。車両のこのときの車高の位置を第1車高ロック位置とする。
【0134】
この状態で、ロック機構71Bは、緩衝器21Aの全長が短くなる方向の移動を機械的に停止させるため、室67Aの圧力が低下しても、緩衝器21Aの全長がそれ以上短くなることはない。言い換えれば、ロック機構71Bが、全長調整機構51Aにより変化した車高を第1車高ロック位置で固定する。このとき、同じ積載条件での停車時における車体11の地面からの高さが、最も低い高さよりも高く、最も高い高さよりも低い第1中間高さになる。
【0135】
また、上記したように、溝部75Bが、第3側面303において移動部材76Aに当接し、第3側面303の傾斜で回転しながら、上昇する際に、図示略の制御装置は、例えば、支柱部材180に対して外側部材52Bおよびシリンダ33Aが、第2凹部322を移動部材76Aとシリンダ周方向の位置を合わせるまで上昇したことを、図示略の軸方向位置センサで検出すると、全長調整機構51Aにより室67Aの内圧を下げて室67Aを縮小し支柱部材180に対して外側部材52Bおよびシリンダ33Aをシリンダ軸方向に沿って下方に移動させる。すると、外側部材52Bに形成された溝部75Bが、移動部材76Aに対し下降し、第2凹部322内に移動部材76Aを位置させて、移動部材76Aに第9側面309で当接して停止し、それ以上のシリンダ軸方向下方への移動が抑制される。この状態で、外側部材52Bおよびシリンダ33Aは、移動部材76Aによってシリンダ周方向の移動も抑制される。
【0136】
この状態では、支柱部材180に対して外側部材52Bおよびシリンダ33Aが、シリンダ軸方向の所定の第2中間位置で機械的に停止させられる。すなわち、ロック機構71Bが、緩衝器21Aの全長を最大長さおよび最小長さの間の所定の第2ロック長さでロックすることになる。車両のこのときの車高の位置を第2車高ロック位置とする。第2中間位置は上記した第1中間位置よりも高さが高く、第2ロック長さは第1ロック長さよりも長さが長く、第2車高ロック位置は第1車高ロック位置よりも車高が高い。
【0137】
この状態で、ロック機構71Bは、緩衝器21Aの全長が短くなる方向の移動を機械的に停止させるため、室67Aの圧力が低下しても、緩衝器21Aの全長がそれ以上短くなることはない。言い換えれば、ロック機構71Bが、全長調整機構51Aにより変化した車高を第2車高ロック位置で固定する。このとき、同じ積載条件での停車時における車体11の地面からの高さが、第1中間高さよりも高く、最も高い高さよりも若干低い第2中間高さになる。
【0138】
第1車高ロック位置および第2車高ロック位置から、車高を下げる場合、図示略の制御装置は、全長調整機構51Aにより室67Aを拡大し、支柱部材180に対して外側部材52Bおよびシリンダ33Aをシリンダ軸方向に沿って上方に移動させる。すると、外側部材52Bに形成された溝部75Bが、移動部材76Aに対し上昇して、第3側面303において、移動部材76Aに当接して、第3側面303の傾斜で回転しながら、上昇して第4凹部324内に移動部材76Aを位置させて、移動部材76Aに第2側面302および第3側面303で当接して停止し、それ以上のシリンダ軸方向上方への移動が抑制される。この状態で、外側部材52Bおよびシリンダ33Aは、移動部材76Aによってシリンダ周方向の移動も抑制される。この位置が支柱部材180に対する外側部材52Bおよびシリンダ33Aの上限位置である。
【0139】
図示略の制御装置は、図示略の軸方向位置センサによって、外側部材52Bおよびシリンダ33Aが支柱部材180に対しこの上限位置に位置したことを検出すると、全長調整機構51Aによって、支柱部材180に対して外側部材52Bおよびシリンダ33Aをシリンダ軸方向に沿って下方に移動させる。すると、外側部材52Bに形成された溝部75Bが、移動部材76Aに対し下降して、第2側面302および第6側面306の間に移動部材76Aを通過させ、その後、第1側面301において移動部材76Aに当接し、第1側面301の傾斜で回転しながら、下降して第3凹部323内に移動部材76Aを位置させて、移動部材76Aに第1側面301および第4側面304で当接して停止する。これにより、溝部75Bを含む外側部材52Bおよびシリンダ33Aは、それ以上のシリンダ軸方向下方への移動が抑制される。この状態で、外側部材52Bおよびシリンダ33Aは、移動部材76Aによってシリンダ周方向の移動も抑制される。つまり、外側部材52Bおよびシリンダ33Aが支柱部材180に対する下限位置で停止する。図示略の制御装置は、図示略の軸方向位置センサの検出結果に基づいて、外側部材52Bおよびシリンダ33Aが支柱部材180に対しこの下限位置に位置したことを確認する。
【0140】
つまり、ロック機構71Bは、溝部75Bのジオメトリにより、溝部75B内で移動部材76Aを、車高下降時には車高上昇時とは異なる経路で相対的に上昇させて第1凹部321で停止させる。これにより、ロック機構71Bは、さらなる車高の低下を防ぐ第1車高ロック状態になる。また、ロック機構71Bは、溝部75Bのジオメトリにより、溝部75B内で移動部材76Bを、車高下降時には車高上昇時とは異なる経路で相対的に上昇させて第2凹部322で停止させる。これにより、ロック機構71Bは、さらなる車高の低下を防ぐ第2車高ロック状態になる。
【0141】
以上により、ロック機構71Bは、全長調整機構51Aにより車両の車高が、移動部材76Aを第1凹部321とシリンダ周方向の位置を合わせる位置に位置させる所定値まで上昇したときには、その後、車高が下がっても、上昇した車高が、移動部材76Aを第1凹部321内に位置させて第13側面313に当接させる所定値よりも下がらないように車高を第1車高ロック位置でロックする。また、ロック機構71Bは、全長調整機構51Aにより車両の車高が、移動部材76Aを第2凹部322とシリンダ周方向の位置を合わせる位置に位置させる所定値まで上昇したときには、その後、車高が下がっても、上昇した車高が、移動部材76Aを第2凹部322内に位置させて第9側面309に当接させる所定値よりも下がらないように車高を第2車高ロック位置でロックする。また、ロック機構71Bは、これらのロック後に全長調整機構51Aにより車両の車高が、移動部材76Aを第4凹部324内に位置させて第2側面302および第3側面303に当接させる所定値まで上昇すると、このロックが解除され、その後、車高が下がると、車高を第1車高ロック位置および第2車高ロック位置よりも下げることになる。
【0142】
よって、図示略の制御装置が、エンジンの停止前に、上記のようにして移動部材76Aを第13側面313に当接させて車両の車高を第1車高ロック位置でロックしておけば、エンジンを停止させて、全長調整機構51Aの室67A内の空気が抜け、内圧が下がっても、車両の車高を第1車高ロック位置に維持することができる。また、図示略の制御装置が、エンジンの停止前に、上記のようにして移動部材76Aを第9側面309に当接させて車両の車高を第2車高ロック位置でロックしておけば、エンジンを停止させて、全長調整機構51Aの室67A内の空気が抜け、内圧が下がっても、車両の車高を第2車高ロック位置に維持することができる。また、その後、エンジンの始動時に、図示略の制御装置が、図示略のエアコンプレッサで室67A内の内圧を上げて外側部材52Bおよびシリンダ33Aを上昇させ、移動部材76Aが第4凹部324内に位置して、支柱部材180に対して外側部材52Bおよびシリンダ33Aが停止したことを図示略の軸方向位置センサで検出した後、室67A内の内圧を下げれば、上記のようにして車両の車高を下げることができる。
【0143】
第3実施形態によれば、溝部75Bが内周側に向けて凹形状に形成される複数の第1凹部321および第2凹部322と、第1凹部321および第2凹部322と対向する側に設けられ、溝部75Bが外周側に向けて凸形状で形成される凸状溝部341とを有する。よって、エンジン停止時でも、車両の車高を複数の第1車高ロック位置および第2車高ロック位置で維持することができる。
【0144】
なお、第3施形態においても、第2実施形態と同様の変更が可能である。
【0145】
以上に述べた実施形態の第1の態様は、車両の車輪と車体との間に設けられ、前記車体を支えるスプリングと、前記スプリングとストローク量が同じになるよう配置される緩衝器と、を備えるサスペンション装置であり、前記スプリングと直列に配置され、前記車両の車高を調整する車高調整機構と、前記車高調整機構により変化した車高を固定するロック機構と、を備える。これにより、エンジン停止時でも車高を維持することが可能となる。
【0146】
第2の態様は、第1の態様のサスペンション装置であり、前記ロック機構は、前記車高調整機構により前記車両の車高が所定値まで上昇したとき、該車両の上昇した車高が所定値より下がらないようロックし、該ロック後に前記車高調整機構により該車両の車高が所定値まで上昇すると該ロックが解除される。
【0147】
第3の態様は、第1または第2の態様のサスペンション装置であり、円柱状の支柱部材と、前記支柱部材の外周面を覆うように設けられ、前記支柱部材の軸方向に移動可能な外側部材と、前記支柱部材の外周面および前記外側部材の内周面の少なくとも一方に設けられる螺旋状の溝部と、前記支柱部材の外周面および前記外側部材の内周面の少なくとも他方に設けられ、前記溝部内に移動可能に配置される移動部材と、を有し、前記溝部は、該溝部内に突出し前記移動部材の一方向の移動を抑制する第1突出部と、該溝部内に突出し前記移動部材の他方向の移動を抑制する第2突出部と、該溝部の側面に設けられ前記第1突出部と対向する位置に配置される凹部とを有する。
【0148】
第4の態様は、第1または第2の態様のサスペンション装置であり、円柱状の支柱部材と、前記支柱部材の外周面を覆うように設けられ、前記支柱部材の軸方向に移動可能な外側部材と、前記支柱部材の外周面および前記外側部材の内周面の少なくとも一方に設けられる環状の溝部と、前記支柱部材の外周面および前記外側部材の内周面の少なくとも他方に設けられ、前記溝部内に移動可能に配置される移動部材と、を有し、前記溝部は、該溝部が内周側に向けて凹形状に形成される凹状溝部と、前記凹状溝部と対向する側に設けられ、該溝部が外周側に向けて凸形状で形成される凸状溝部とを有する。
【0149】
第5の態様は、第1または第2の態様のサスペンション装置であり、円柱状の支柱部材と、前記支柱部材の外周面を覆うように設けられ、前記支柱部材の軸方向に移動可能な外側部材と、前記支柱部材の外周面および前記外側部材の内周面の少なくとも一方に設けられる環状の溝部と、前記支柱部材の外周面および前記外側部材の内周面の少なくとも他方に設けられ、前記溝部内に移動可能に配置される移動部材と、を有し、前記溝部は、該溝部の内周側に設けられ、内周側に向けて形成される複数の凹部と、前記凹部と対向する側に設けられ、該溝部が外周側に向けて凸形状に形成される凸状溝部とを有する。
【0150】
第6の態様は、第3乃至第5のいずれか一態様のサスペンション装置であり、前記緩衝器は、前記車体または車輪に設けられ、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に設けられ、該シリンダ内を2室に区画するピストンと、一端が前記ピストンに連結され、他端が前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、を備え、前記シリンダは、前記支柱部材となる。
【0151】
第7の態様は、第3乃至第5のいずれか一の態様のサスペンション装置であり、前記緩衝器は、前記車体または車輪に設けられ、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に設けられ、該シリンダ内を2室に区画するピストンと、一端が前記ピストンに連結され、他端が前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、を備え、前記支柱部材は、前記ピストンロッドの他端側または前記シリンダの一端側に配置されている。
【0152】
第8の態様は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に設けられ、該シリンダ内を2室に区画するピストンと、一端が前記ピストンに連結され、他端が前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、を備える緩衝器であって、前記ピストンロッドの他端側、または、前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドとは反対側に設けられ、前記緩衝器の全長を調整する全長調整機構と、前記全長調整機構により変化した全長を固定するロック機構と、を備える。これにより、エンジン停止時でも車高を維持することが可能となる。
【符号の説明】
【0153】
10,10A サスペンション装置
11 車体
21,21A 緩衝器
33,33A シリンダ
35,36 室
37 ピストン
38 ピストンロッド
51,51A 全長調整機構(車高調整機構)
52,52A,52B 外側部材
71,71A、71B ロック機構
75,75A,75B 溝部
76,76A 移動部材
121 第1突出部
122 第2突出部
131 第1凹部(凹部)
241 凹状溝部
242 凸状溝部
321 第1凹部(凹部)
322 第2凹部(凹部)
341 凸状溝部