(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】外部共振型レーザモジュール
(51)【国際特許分類】
H01S 5/0239 20210101AFI20240920BHJP
H01S 5/14 20060101ALI20240920BHJP
H01S 5/34 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01S5/0239
H01S5/14
H01S5/34
(21)【出願番号】P 2021027512
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2024-01-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 IoT社会実現のための革新的センシング技術開発 革新的センシング技術開発 波長掃引中赤外レーザによる次世代火山ガス防災技術の研究開発 産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100183081
【氏名又は名称】岡▲崎▼ 大志
(72)【発明者】
【氏名】杉山 厚志
(72)【発明者】
【氏名】落合 隆英
(72)【発明者】
【氏名】枝村 忠孝
(72)【発明者】
【氏名】秋草 直大
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-036577(JP,A)
【文献】特開2019-152687(JP,A)
【文献】特開2002-289960(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105242396(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0028197(US,A1)
【文献】特表2007-515771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子カスケードレーザ素子と、
前記量子カスケードレーザ素子から出射された光を回折及び反射させる回折格子部と、前記回折格子部を揺動させるための電流が流れるコイルと、を有し、前記量子カスケードレーザ素子の外部共振器を構成するMEMS回折格子と、
前記量子カスケードレーザ素子と前記MEMS回折格子との間に配置され、前記量子カスケードレーザ素子からの出射光及び前記MEMS回折格子から前記量子カスケードレーザ素子へと帰還する光を通過させるレンズを保持するレンズホルダと、
前記量子カスケードレーザ素子、前記MEMS回折格子、及び前記レンズホルダを収容するパッケージと、
前記パッケージの内壁面に沿って配置された電極端子と、
前記電極端子と前記コイルとを電気的に接続するためのワイヤと、を備え、
前記パッケージは、底壁と、前記底壁上に立設され、前記底壁に垂直な方向から見た場合に前記量子カスケードレーザ素子が収容される領域を包囲するように環状に形成された側壁と、前記側壁の前記底壁側とは反対側の開口を塞ぐ天壁と、を有し、
前記天壁は、前記レンズの光軸方向に直交する方向に前記底壁と対向しており、
前記MEMS回折格子は、前記コイルと電気的に接続される電極パッドを有し、
前記電極パッドは、前記ワイヤを介して、前記電極端子に接続されており、
前記底壁に対する前記電極パッドの高さ位置は、前記底壁に対する前記電極端子の高さ位置と同等以上である、外部共振型レーザモジュール。
【請求項2】
前記MEMS回折格子は、前記回折格子部を支持する矩形枠状の支持部を有し、
前記電極パッドは、前記支持部における前記天壁側の一方の隅部に設けられている、請求項1に記載の外部共振型レーザモジュール。
【請求項3】
前記MEMS回折格子は、前記コイルとは異なる第1コイルと電気的に接続される第1電極パッドを更に有し、
前記第1電極パッドは、前記支持部における前記天壁側の他方の隅部に設けられている、請求項2に記載の外部共振型レーザモジュール。
【請求項4】
前記MEMS回折格子は、前記コイルに作用する磁界を発生させる磁石と共に回折格子ユニットを構成しており、
前記磁石は、前記MEMS回折格子に対して前記量子カスケードレーザ素子が設けられた側とは反対側に配置されている、請求項2又は3に記載の外部共振型レーザモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外部共振型レーザモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
外部共振型レーザモジュールとして、量子カスケードレーザ素子と、揺動可能な回折格子と、量子カスケードレーザ素子と回折格子との間に配置されたレンズと、を備えるものが知られている(例えば特許文献1参照)。このような外部共振型レーザモジュールでは、量子カスケードレーザ素子からの光が回折格子によって回折及び反射され、当該光のうち特定波長の光が量子カスケードレーザ素子に帰還する。これにより、量子カスケードレーザ素子の端面と回折格子とによって外部共振器が構成され、特定波長の光が増幅されて外部に出力される。回折格子を揺動させて出力光の波長を変化させることで、所定の波長範囲において波長掃引を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開2009/0225802号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような外部共振型レーザモジュールでは、回折格子を揺動させるためのコイルに電流を流す必要がある。そのための電気的接続構成としては、外部共振型レーザモジュールの動作の安定性(信頼性)及び組立時の作業性を確保可能な構成が求められる。
【0005】
そこで、本開示の一側面は、信頼性及び組立時の作業性の向上を図ることができる外部共振型レーザモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る外部共振型レーザモジュールは、量子カスケードレーザ素子と、量子カスケードレーザ素子から出射された光を回折及び反射させる回折格子部と、回折格子部を揺動させるための電流が流れるコイルと、を有し、量子カスケードレーザ素子の外部共振器を構成するMEMS回折格子と、量子カスケードレーザ素子とMEMS回折格子との間に配置され、量子カスケードレーザ素子からの出射光及びMEMS回折格子から量子カスケードレーザ素子へと帰還する光を通過させるレンズを保持するレンズホルダと、量子カスケードレーザ素子、MEMS回折格子、及びレンズホルダを収容するパッケージと、パッケージの内壁面に沿って配置された電極端子と、電極端子とコイルとを電気的に接続するためのワイヤと、を備え、パッケージは、底壁と、底壁上に立設され、底壁に垂直な方向から見た場合に量子カスケードレーザ素子が収容される領域を包囲するように環状に形成された側壁と、側壁の底壁側とは反対側の開口を塞ぐ天壁と、を有し、天壁は、レンズの光軸方向に直交する方向に底壁と対向しており、MEMS回折格子は、コイルと電気的に接続される電極パッドを有し、電極パッドは、ワイヤを介して、電極端子に接続されており、底壁に対する電極パッドの高さ位置は、底壁に対する電極端子の高さ位置と同等以上である。
【0007】
上記外部共振型レーザモジュールでは、MEMS回折格子の電極パッドが、パッケージ内において、パッケージの内壁面に沿って配置された電極端子と同等以上の高さ位置に配置されている。このように電極パッドの位置を設定することにより、電極パッドの高さ位置をパッケージ側の電極端子の高さ位置よりも低い位置(すなわち、パッケージの奥側(底壁側))に配置する場合と比較して、ワイヤボンディングによるワイヤの形成が容易となると共に、必要なワイヤ長を短くできる。ワイヤ長を短くできることにより、ワイヤに適切な張りを持たせることができると共にワイヤとパッケージ内の部材との干渉を適切に抑制できる。以上により、外部共振型レーザモジュールの信頼性及び組立時の作業性の向上が図られる。
【0008】
MEMS回折格子は、回折格子部を支持する矩形枠状の支持部を有してもよく、電極パッドは、支持部における天壁側の一方の隅部に設けられていてもよい。上記構成によれば、回折格子部の中心から比較的離れた位置である支持部の隅部において、電気的接続が図られる。これにより、ワイヤ及び電極パッドに起因した迷光の発生を低減することができるため、外部共振型レーザモジュールの信頼性を効果的に向上させることができる。
【0009】
MEMS回折格子は、コイルとは異なる第1コイルと電気的に接続される第1電極パッドを更に有してもよく、第1電極パッドは、支持部における天壁側の他方の隅部に設けられていてもよい。上記構成によれば、MEMS回折格子に2種類のコイルを設ける場合においても、矩形枠状の支持部の天壁側の一対の隅部(すなわち、天壁側を上方向として支持部を正面側から見た場合の左上隅部及び右上隅部)にそれぞれのコイルに対応する電極パッドを設けることによって、上述した効果(すなわち、外部共振型レーザモジュールの信頼性及び組立時の作業性の向上)を得ることができる。
【0010】
MEMS回折格子は、コイルに作用する磁界を発生させる磁石と共に回折格子ユニットを構成していてもよく、磁石は、MEMS回折格子に対して量子カスケードレーザ素子が設けられた側とは反対側に配置されていてもよい。上記構成によれば、電極パッドの配置自由度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一側面によれば、信頼性及び組立時の作業性の向上を図ることができる外部共振型レーザモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態の外部共振型レーザモジュールの斜視図である。
【
図2】
図2は、外部共振型レーザモジュールの内部構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線に沿った外部共振型レーザモジュールの断面図である。
【
図4】
図4は、
図3のIV-IV線に沿った外部共振型レーザモジュールの断面図である。
【
図5】
図5は、マウント部材及び回折格子ユニットの関係を示す図である。
【
図7】
図7は、量子カスケードレーザ素子と電極端子との電気的接続構成を示す図である。
【
図8】
図8は、外部共振型レーザモジュールの製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。また、「上」、「下」等の語は図面に示される状態に基づく便宜的なものである。
【0014】
図1~
図4に示されるように、外部共振型レーザモジュール1(以下、「レーザモジュール1」という。)は、量子カスケードレーザ素子(以下「QCL素子)2と、QCL素子2を気密に収容するパッケージ3と、を備えている。外部共振型レーザモジュール1は、出力光(レーザ光L)の波長が可変とされた波長可変光源である。外部共振型レーザモジュール1は、例えば、グルコース等の生体計測、VOCガス(揮発性有機化合物)等の光吸収バンドを有する分析対象の吸収スペクトルの計測等に用いられ得る。例えば、このような吸収スペクトルの測定時には、光透過性の容器内に収容された分析対象が、外部共振型レーザモジュール1と光検出器(不図示)との間に配置される。そして、外部共振型レーザモジュール1は、出力光(レーザ光L)の波長を高速に変化させることにより、所定の波長範囲(例えば、中赤外領域)において波長掃引を行う。これにより、光検出器の検出結果に基づいて、吸収スペクトルが算出される。なお、分析対象は、気体、液体及び固体のいずれであってもよい。
【0015】
パッケージ3は、QCL素子2と、マウント部材4と、回折格子ユニット5と、レンズ6A(第1レンズ)を保持するレンズホルダ7A(第1レンズホルダ)と、レンズ6B(第2レンズ)を保持するレンズホルダ7B(第2レンズホルダ)と、を収容する筐体である。本実施形態では一例として、パッケージ3は、バタフライパッケージとして構成されている。パッケージ3は、底壁31と、側壁32と、天壁33と、を有している。
図2においては、パッケージ3の天壁33の図示が省略されると共に、リード端子10のうち突出壁34よりも外側に突出する部分の図示が省略されている。
【0016】
底壁31は、矩形板状の部材である。底壁31は、例えば銅タングステン等の金属材料によって形成されている。底壁31は、マウント部材4が搭載されるベース部材である。本明細書では便宜上、底壁31の長手方向をX軸方向と表し、底壁31の短手方向をY軸方向と表し、底壁31に垂直な方向(すなわち、X軸方向及びY軸方向に直交する方向)をZ軸方向と表す。X軸方向は、QCL素子2から出射されるレーザ光Lの光軸に沿った方向(光軸方向)でもある。
【0017】
側壁32は、底壁31上に立設されている。側壁32は、Z軸方向から見た場合に、QCL素子2等が収容される内部空間を包囲するように環状に形成されている。本実施形態では、側壁32は、矩形筒状の部材である。側壁32は、コバール等の金属材料によって形成されている。側壁32は、例えば、Ni/Auメッキが施されたコバールフレームである。本実施形態では、側壁32は、底壁31の長手方向(X軸方向)における中央部に設けられている。側壁32の短手方向(Y軸方向)に沿った幅は底壁31の短手方向の幅と一致しており、側壁32の長手方向(X軸方向)に沿った幅は底壁31の長手方向の幅よりも短い。すなわち、底壁31の長手方向における両側には、側壁32よりも外側に突出して延在する突出部31aが形成されている。突出部31aにおける底壁31の四隅に対応する部分には、パッケージ3(底壁31)を他の部材に取り付けるためのネジ孔31bが設けられている。
【0018】
天壁33は、側壁32の底壁31側とは反対側の開口を塞ぐ部材である。天壁33は、矩形板状を呈している。Z軸方向から見た天壁33の外形(長手方向及び短手方向の幅)は、側壁32の外形と略一致している。天壁33は、例えば、側壁32と同じ金属材料(例えばコバール等)によって形成されている。天壁33は、例えばシーム溶接等によって、側壁32の底壁31側とは反対側の端部に接合されている。
【0019】
側壁32のうち長手方向(X軸方向)に沿って延在する一対の第1側壁321(すなわち、短手方向(Y軸方向)に交差する部分)には、パッケージ3内に収容されるQCL素子2等の部材に電流を流すための複数(本実施形態では、短手方向の両側それぞれに7本ずつの計14本)のリード端子10が挿通されている。各リード端子10は、Y軸方向に延在する平板状の導電部材である。
【0020】
また、一対の第1側壁321の各々には、第1側壁321の外面(パッケージ3の外側の面)側及び内面(パッケージ3の内側の面)側の両方に張り出した突出壁34が設けられている(
図4参照)。突出壁34は、Z軸方向における第1側壁321の中央位置よりも上方(天壁33側)において、X軸方向に沿って延在するように設けられた庇状の部材である。各リード端子10は、X軸方向に沿って略等間隔で、突出壁34の上面34aに配置されている。リード端子10のうちパッケージ3の内壁面(第1側壁321の内面)に沿った部分(すなわち、パッケージ3の内部に位置する部分)は、パッケージ3内の各部材(例えば、QCL素子2、MEMS回折格子51、後述する温度センサ9等)に給電するための電極端子10aとして機能する。すなわち、電極端子10aと各部材とが導電性を有するワイヤWを介して電気的に接続されることにより、外部電源から各部材へと給電される。
【0021】
側壁32のうち短手方向(Y軸方向)に沿って延在する第2側壁322(すなわち、長手方向(X軸方向)に交差する部分)の一方には、QCL素子2の一方の端面(第1端面2a)から出射されるレーザ光Lを通過させる光出射窓32aが設けられている。光出射窓32aは、例えば、中赤外領域の波長のレーザ光Lを透過させる材料(例えば、ゲルマニウム等)によって形成されている。本実施形態では一例として、光出射窓32aは、円板状に形成されている。光出射窓32aは、一方の第2側壁322に形成された円形状の開口部に固着されている。
【0022】
次に、パッケージ3に収容される各部材について説明する。
図3に示されるように、QCL素子2、回折格子ユニット5、及びレンズホルダ7A,7Bは、マウント部材4を介して、底壁31上に配置されている。マウント部材4は、上述したような光学素子を搭載する光学ステージである。
図3においては、ワイヤWの図示が省略されている。マウント部材4は、例えば、接合又はネジ留め等によって、底壁31に固定されている。マウント部材4は、例えば銅等の熱伝導性に優れた材料によって形成されている。なお、本実施形態では、マウント部材4は底壁31上に直接配置されているが、マウント部材4は、例えばペルチェモジュール等の冷却素子を介して、底壁31上に配置されてもよい。また、本実施形態では、マウント部材4は単一の部材であるが、マウント部材4は、複数の部材(部品)を組み合わせたものであってもよい。
【0023】
図3及び
図5に示されるように、マウント部材4は、X軸方向に長尺な部材である。マウント部材4は、光出射窓32aに近い側から順に、レンズホルダ7Aが搭載される第1搭載部41と、QCL素子2が搭載される第2搭載部42と、レンズホルダ7Bが搭載される第3搭載部43と、回折格子ユニット5が搭載される第4搭載部44と、を有している。すなわち、光出射窓32a、レンズ6A(レンズホルダ7A)、QCL素子2、レンズ6B(レンズホルダ7B)、及び回折格子ユニット5は、X軸方向に沿ってこの順に配置されている。
【0024】
第1搭載部41及び第3搭載部43は、同一の厚さを有している。すなわち、底壁31を基準として、第1搭載部41の上面41aの高さ位置は、第3搭載部43の上面43aの高さ位置と一致している。レンズホルダ7Aは、樹脂接着剤B(例えば光硬化樹脂等)を介して、第1搭載部41の上面41aに接着固定されている。同様に、レンズホルダ7Bは、樹脂接着剤B(例えば光硬化樹脂等)を介して、第3搭載部43の上面43aに接着固定されている。
【0025】
第2搭載部42は、第1搭載部41と第3搭載部43との間に設けられている。第2搭載部42は、第1搭載部41及び第3搭載部43よりも厚くされており、第1搭載部41及び第3搭載部43に対して突出している。すなわち、第2搭載部42の上面42aは、第1搭載部41及び第3搭載部43の上面41a,43aよりも高い位置にある。QCL素子2は、サブマウント8を介して、第2搭載部42の上面42aに固定されている。サブマウント8は、QCL素子2が載置される矩形板状の部材である。サブマウント8は、上面42aのY軸方向における中央位置に配置されている。サブマウント8は、QCL素子2と近い熱膨張係数を有する材料(例えば、窒化アルミニウム等)によって形成されている。QCL素子2は、例えばAuSn系の半田材料を介して、サブマウント8に接合されている。また、サブマウント8は、例えばIn系(InSn、InAg等)の半田材料を介して、マウント部材4(上面42a)に接合されている。上述したように、QCL素子2はサブマウント8と一体化されているため、QCL素子2及びサブマウント8の両方を合わせたものを「QCL素子」と見做し得る。
【0026】
第2搭載部42の上面42aには、サブマウント8以外に、温度センサ9と電極パッド11とが配置されている。温度センサ9及び電極パッド11は、例えば樹脂接着剤等を介して、マウント部材4(上面42a)に接合されている。本実施形態では、温度センサ9と電極パッド11は、サブマウント8を挟んで互いに反対側に配置されている。温度センサ9は、例えばサーミスタである。電極パッド11は、電極端子10aとQCL素子2との電気的接続を中継する。本実施形態では、2つの電極パッド11が、第2搭載部42の上面42aに設けられている。具体的には、QCL素子2のカソード(本実施形態では、QCL素子2の上面(メサ上面))と電気的に接続される電極パッド11aと、QCL素子2のアノード(本実施形態では、サブマウント8)と電気的に接続される電極パッド11bとが、第2搭載部42の上面42aに設けられている。各電極パッド11a,11bは、略矩形状の接続領域(上面)を有している。各電極パッド11a,11bは、X軸方向に沿って並んでいる。電極パッド11aは、電極パッド11bよりも光出射窓32a側に位置している。底壁31を基準として、各電極パッド11a,11bの高さ位置は、電極端子10aの高さ位置(すなわち、突出壁34の上面34aの高さ位置)よりも低く、且つ、QCL素子2の高さ位置よりも高い。
【0027】
第4搭載部44は、第1搭載部41及び第3搭載部43よりも薄くされている。すなわち、第4搭載部44の上面44aは、第1搭載部41及び第3搭載部43の上面41a,43aよりも低い位置にある。第4搭載部44には、配置孔44bが形成されている。
図5に示されるように、回折格子ユニット5は、後述するヨーク53の一部が配置孔44bに配置された状態で、樹脂接着剤等を用いて第4搭載部44に固定されている。
【0028】
QCL素子2は、第1端面2aと、第1端面2aとは反対側の第2端面2bと、を有している。QCL素子2は、第1端面2a及び第2端面2bの各々から、中赤外領域(例えば4μm~12μm)の光を出射する。第1端面2a及び第2端面2bは、例えばX軸方向に垂直な平坦面であり、QCL素子2から出射されるレーザ光Lの光軸は、X軸方向に沿っている。QCL素子2は、複数の量子井戸層(例えばInGaAs)及び複数の量子障壁層(例えばInAlAs)からなる活性層と、活性層を挟む一対のクラッド層(例えばInP)を含んでおり、上記のような広帯域の光を出射することができる。本実施形態では、QCL素子2における活性層及びクラッド層を含む積層構造の積層方向は、底壁31と天壁33とが対向する方向(Z軸方向)と一致している。なお、QCL素子2は、互いに異なる中心波長を有する複数の活性層と一対のクラッド層とを含んでいてもよく、この場合でも上記のような広帯域の光を出射することができる。第1端面2aには低反射コーティングが施されており、第2端面2bには無反射コーティングが施されている。
【0029】
レンズ6A,6Bは、例えば、セレン化亜鉛(ZnSe)からなる非球面レンズである。レンズ6A,6Bの表面には無反射コーティングが施されている。
【0030】
レンズ6Aは、QCL素子2に対してMEMS回折格子51(回折格子ユニット5)が位置する側とは反対側に配置されている。すなわち、レンズ6Aは、QCL素子2の第1端面2aと対向する位置に配置されている。レンズ6Aは、QCL素子2からの出射光(第1端面2aからの出射光)を通過させる。レンズ6Aは、第1端面2aから出射される光をコリメートする。レンズ6Aによりコリメートされた光は、パッケージ3の光出射窓32aを通り、出力光(レーザ光L)として外部に出力される。
【0031】
レンズ6Bは、QCL素子2とMEMS回折格子51(回折格子ユニット5)との間に配置されている。すなわち、レンズ6Bは、QCL素子2の第2端面2bと対向する位置に配置されている。レンズ6Bは、QCL素子2からの出射光(第2端面2bからの出射光)及びMEMS回折格子51からQCL素子2へと帰還する光を通過させる。レンズ6Bは、第2端面2bからMEMS回折格子51へと出射される光をコリメートする。
【0032】
レンズホルダ7A,7Bは、略直方体状の外形を有している。レンズ6A,6Bは、樹脂接着剤等によって、レンズホルダ7A,7Bに対して固定されている。レンズホルダ7A,7Bの表面は、例えばアルマイト処理等によって、黒色加工されている。
【0033】
回折格子ユニット5は、MEMS回折格子51と、磁石52と、ヨーク53と、を備えている。MEMS回折格子51は、略板状に形成されている。磁石52は、MEMS回折格子51に対してQCL素子2とは反対側に配置されている。MEMS回折格子51はヨーク53に固定されており、磁石52はヨーク53内に収容されている。これによりMEMS回折格子51、磁石52及びヨーク53は一体化されており、1つのユニットを構成している。
【0034】
レンズ6Bによりコリメートされた光は、回折格子ユニット5のMEMS回折格子51に入射する。MEMS回折格子51は、この入射光を回折及び反射させることにより、当該入射光のうち特定波長の光を、レンズ6Bを介して、QCL素子2の第2端面2bに帰還させる。MEMS回折格子51は、QCL素子2の外部共振器を構成している。本実施形態では、MEMS回折格子51と第1端面2aとによって、リトロー型の外部共振器が構成されている。これにより、レーザモジュール1は、特定波長の光を増幅させて外部に出力することができる。
【0035】
また、MEMS回折格子51では、入射光を回折及び反射させる回折格子部64の向きを高速に変化させることができる。これにより、MEMS回折格子51からQCL素子2の第2端面2bに帰還する光の波長が可変となっており、ひいてはレーザモジュール1の出力光(レーザ光L)の波長が可変となっている。レーザ光Lの波長を変化させることで、例えば、QCL素子2のゲインバンドの範囲内において波長掃引を行うことができる。
【0036】
図6に示されるように、MEMS回折格子51は、支持部61と、一対の連結部62と、可動部63と、回折格子部64と、一対のコイル65,66と、を備えている。MEMS回折格子51は、軸線A周りに可動部63を揺動させるMEMSデバイスとして構成されている。MEMS回折格子51は、MEMS技術(パターニング、エッチング等)を用いて半導体基板を加工することにより形成される。
【0037】
支持部61は、平面視において矩形状を呈する平板状の枠体である。支持部61は、一対の連結部62を介して可動部63を支持している。各連結部62は、平面視において矩形棒状を呈する平板状の部材であり、軸線Aに沿って真っ直ぐに延在している。各連結部62は、可動部63が軸線A周りに揺動自在となるように、軸線A上において可動部63を支持部61に連結している。
【0038】
可動部63は、支持部61の内側に位置している。可動部63は、上述したように軸線A周りに揺動可能となっている。可動部63は、平面視において略矩形状を呈する平板状の部材である。本実施形態では一例として、可動部63の四隅は、R状に面取りされている。すなわち、可動部63の四隅は、平面視において円弧状に湾曲している。これにより、可動部63の慣性モーメントを低減することができ、可動部63の揺動を高速化することができる。この例では、可動部63は、長辺が第1方向D1(軸線Aと直交する方向)に平行な略長方形状に形成されており、第1方向D1における可動部63の長さは、第2方向D2(軸線Aと平行な方向)における可動部63の長さよりも長くなっている。一例として、第1方向D1における支持部61の長さは6~7mm程度、第2方向D2における支持部61の長さは6mm程度である。また、第1方向D1における可動部63の長さは4mm程度、第2方向D2における可動部63の長さは3mm程度、厚さは30μm程度である。支持部61、連結部62及び可動部63は、例えば1つのSOI(Silicon on Insulator)基板に作り込まれることにより、一体に形成されている。
【0039】
可動部63におけるQCL素子2の側の表面には、回折格子部64が設けられている。回折格子部64は、複数の格子溝(不図示)を有し、QCL素子2から出射された光を回折及び反射させる。回折格子部64は、例えば、可動部63の表面上に設けられ、回折格子パターンが形成された樹脂層と、当該回折格子パターンに沿うように樹脂層の表面上にわたって設けられた金属層と、を含んでいる。或いは、回折格子部64は、可動部63上に設けられると共に回折格子パターンが形成された金属層のみにより構成されてもよい。回折格子パターンとしては、例えば、鋸歯状断面のブレーズドグレーティング、矩形状断面のバイナリグレーティング、正弦波状断面のホログラフィックグレーティング等を用いることができる。回折格子パターンは、例えばナノインプリントリソグラフィ法により樹脂層に形成される。金属層は、例えば、金からなる金属反射膜であり、蒸着により形成される。
【0040】
コイル65,66は、例えば、銅等の金属材料からなり、可動部63の表面に形成された溝内に埋め込まれたダマシン構造を有している。平面視において、コイル65は軸線Aに対して一方側(
図6中の上側)に配置されており、コイル66は軸線Aに対して他方側(
図6中の下側)に配置されている。コイル65,66は、MEMS回折格子51を駆動させる(すなわち、可動部63を揺動させる)ための電流を流す駆動コイルである。
【0041】
コイル65,66の各々は、平面視において渦巻き状に複数回巻回されている。コイル65の外側端部は、支持部61上に設けられた電極パッド71に配線72を介して電気的に接続されている。配線72は、支持部61、一方の連結部62及び可動部63にわたって延在している。コイル66の外側端部は、支持部61上に設けられた電極パッド73に配線74を介して電気的に接続されている。配線74は、支持部61、他方の連結部62及び可動部63にわたって延在している。なお、本実施形態では、可動部63の表面には、コイル65,66と共に、図示しない検出用コイル(第1コイル)が設けられている。このため、支持部61には、コイル65,66と電気的に接続される電極パッド71,73の他に、検出用コイルで検出された電流を外部に取り出すために検出用コイルの両端部と図示しない配線(配線72,74と同様の配線)を介して電気的に接続される電極パッド75,76(第1電極パッド)が設けられている。
【0042】
コイル65の内側端部は、コイル66の内側の端部と電気的に接続されている。この例では、コイル65,66が互いに一体に形成されていることで、コイル65,66の内側端部同士が電気的に接続されている。言い換えると、MEMS回折格子51では、1本のコイル配線(多層配線)が平面視において8の字状に折り返されるように延在していることで、一対のコイル65,66が構成されている。なお、コイル65,66は互いに別体に形成されてもよい。この場合、コイル65の内側端部とコイル66の内側端部とは配線を介して電気的に接続されてもよい。
【0043】
磁石52は、コイル65,66に作用する磁界(磁力)を発生させる。
図3に示されるように、磁石52は、略直方体状に形成されたネオジウム磁石(永久磁石)である。例えば、磁石52は、MEMS回折格子51の側にN極を有し、MEMS回折格子51とは反対側にS極を有している。
【0044】
ヨーク53は、磁石52の磁力を増幅させ、磁石52と共に磁気回路を形成する。ヨーク53の表面は、例えば亜鉛メッキ処理によって、黒色加工されている。
図3に示されるように、ヨーク53は、傾斜面53aを有している。傾斜面53aは、QCL素子2の第2端面2bに対して傾斜している。このような傾斜面53a上にMEMS回折格子51が固定されることにより、MEMS回折格子51の回折格子部64の法線Nを第2端面2bに対して傾斜させることができる。この例ではZ軸方向の一方側(天壁33側)を向くように回折格子部64が傾斜しているが、Z軸方向の他方側(底壁31側)を向くように回折格子部64が傾斜していてもよい。傾斜面53aの傾斜角度(QCL素子2の第2端面2bに対する角度)は、QCL素子2の発振波長、並びに回折格子部64における格子溝の溝本数及びブレーズド角等に応じて設定される。例えば、発振波長が7μm帯、溝本数が150本/mmである場合、傾斜面53aの傾斜角度は60度程度に設定される。
【0045】
ヨーク53は、Y軸方向から見た場合に略コ字状(逆C字状)に形成されており、傾斜面53aに開口した配置空間SPを画定している。この配置空間SP内に磁石52が配置されて、磁石52がヨーク53内に収容されている。ヨーク53は、Y軸方向から見た場合に、磁石52を包囲している。MEMS回折格子51は、配置空間SPの開口を覆うように、支持部61の縁部において傾斜面53aに固定されている。
【0046】
MEMS回折格子51では、コイル65,66に電流が流れると、磁石52及びヨーク53により形成される磁界により、コイル65,66内を流れる電子に所定の方向にローレンツ力が生じる。これにより、コイル65は所定の方向に力を受ける。このため、コイル65に流れる電流の向き又は大きさ等を制御することで、可動部63(回折格子部64)を軸線A周りに揺動させることができる。また、可動部63の共振周波数に対応する周波数の電流をコイル65,66に流すことで、可動部63を共振周波数レベルで(例えば1kHz以上の周波数で)高速に揺動させることができる。このように、コイル65,66、磁石52及びヨーク53は、可動部63を揺動させるアクチュエータ部として機能する。
【0047】
次に、
図2及び
図7を参照して、QCL素子2と電極端子10aとの電気的接続構成について説明する。
図2及び
図7に示されるように、電極端子10aとQCL素子2(本実施形態では、QCL素子2のカソード及びアノードの各々)とは、ワイヤWを介して電気的に接続されてる。ワイヤWは、例えばワイヤボンディングによって形成される。ワイヤWにおけるQCL素子2側の端部は、レンズホルダ7Aとレンズホルダ7Bとが対向する対向方向(本実施形態では、X軸方向)に直交する方向(本実施形態では、X軸方向に直交する平面に平行な方向であり、例えばY軸方向及びZ軸方向等)から見た場合に、レンズホルダ7Aとレンズホルダ7Bとの間の位置に配置されている。本実施形態では一例として、ワイヤWのQCL素子2側の端部は、QCL素子2又はサブマウント8に接続されている。また、ワイヤWは、上記対向方向に直交する方向から見た場合に、レンズホルダ7Aとレンズホルダ7Bとの間の位置において、電極端子10aと接続されている。言い換えると、上記対向方向に直交する方向から見た場合にレンズホルダ7A又はレンズホルダ7Bと重ならない位置において、ワイヤWが電極端子10aと接続されている。本実施形態では、上記対向方向に直交する方向から見た場合にレンズホルダ7A又はレンズホルダ7Bと重ならない位置に、2つの電極端子10a1,10a2が設けられている。この2つの電極端子10a1,10a2が用いられることにより、上記の配置構成が実現されている。電極端子10a1,10a2は、QCL素子2に対して電極パッド11が設けられた側の突出壁34において、光出射窓32a側から数えて2番目及び3番目に位置する電極端子10aである。
【0048】
電極端子10a1は、QCL素子2のカソード(本実施形態では、QCL素子2の上面)と電気的に接続される。電極端子10a1は、電極パッド11aを介して、QCL素子2の上面に接続されている。より具体的には、電極端子10a1は、複数(本実施形態では6本)のワイヤW1(第1ワイヤ)を介して、電極パッド11aに接続されている。また、電極パッド11aは、複数(本実施形態では6本)のワイヤW2(第2ワイヤ)を介して、QCL素子2の上面に接続されている。各ワイヤW1,W2の本数は1本ずつでもよいが、それぞれ複数本のワイヤW1,W2を用いることにより、電極端子10a1とQCL素子2のカソード(QCL素子2の上面)との間の電気的接続を確実に図ることができる。また、
図7に示されるように、複数本のワイヤW2をQCL素子2の上面(メサ上面)において、光軸方向(X軸方向)に沿って略均等に配置することにより、QCL素子2に対する電流注入量を光軸方向に沿って略均一にすることができるため、QCL素子2の動作安定性を向上させることができる。
【0049】
電極端子10a2は、QCL素子2のアノード(本実施形態では、サブマウント8)と電気的に接続される。電極端子10a2は、電極パッド11bを介して、サブマウント8に接続されている。より具体的には、電極端子10a2は、複数(本実施形態では6本)のワイヤW3(第1ワイヤ)を介して、電極パッド11bに接続されている。また、電極パッド11bは、複数(本実施形態では6本)のワイヤW4(第2ワイヤ)を介して、サブマウント8に接続されている。各ワイヤW3,W4の本数は1本ずつでもよいが、それぞれ複数本のワイヤW3,W4を用いることにより、電極端子10a2とQCL素子2のアノード(サブマウント8)との間の電気的接続を確実に図ることができる。
【0050】
以上のように、レーザモジュール1では、電極端子10aとQCL素子2(アノード又はカソード)とを電気的に接続するために結線されるワイヤW(ワイヤW1~W4)の全体が、対向方向(X軸方向)に直交する方向(Y軸方向、Z軸方向等)から見た場合に、レンズホルダ7Aとレンズホルダ7Bとの間の空間を通過するように構成されている。
【0051】
また、本実施形態では、温度センサ9も、ワイヤW5a,W5bを介して、電極端子10aと電気的に接続されている。具体的には、ワイヤW5は、温度センサ9自体に結線されるワイヤW5aと、マウント部材4に結線されるワイヤW5bと、を有している。ワイヤW5a及びW5bは、QCL素子2に対して温度センサ9が設けられた側の突出壁34において光出射窓32a側から数えて2番目及び3番目に位置する電極端子10a(すなわち、上記対向方向に直交する方向から見た場合にレンズホルダ7A又はレンズホルダ7Bと重ならない位置に配置された電極端子10a)に接続されている。これにより、温度センサ9と電極端子10aとを電気的に接続するワイヤW5a,W5bも、対向方向(X軸方向)に直交する方向(Y軸方向、Z軸方向等)から見た場合に、レンズホルダ7Aとレンズホルダ7Bとの間の空間を通過するように構成されている。
【0052】
次に、
図2を参照して、電極端子10aとMEMS回折格子51との電気的接続構成について説明する。上述したように、MEMS回折格子51は、コイル65,66と電気的に接続される2つの電極パッド71,73を有している。より具体的には、
図2及び
図6に示されるように、電極パッド71,73は、支持部61における天壁33側の一方の隅部(MEMS回折格子51を正面から見た場合の左上の隅部)に設けられている。各電極パッド71,73は、それぞれに対応するワイヤW(ワイヤW6,W7)を介して、それぞれに対応する電極端子10a(電極端子10a3,10a4)に接続されている。電極端子10a3,10a4は、QCL素子2に対して電極パッド11が設けられた側の突出壁34において、光出射窓32aが設けられた側とは反対側から数えて3番目及び2番目に位置する電極端子10aである。
【0053】
電極端子10a3は、複数(本実施形態では2本)のワイヤW6を介して、電極パッド71に接続されている。また、電極端子10a4は、複数(本実施形態では2本)のワイヤW7を介して、電極パッド73に接続されている。各ワイヤW6,W7の本数は1本ずつでもよいが、それぞれ複数本のワイヤW6,W7を用いることにより、各電極端子10a3,10a4と各電極パッド71,73との間の電気的接続を確実に図ることができる。
【0054】
ここで、底壁31に対する電極パッド71,73の高さ位置は、底壁31に対する電極端子10a3,10a4の高さ位置と同等以上である。すなわち、電極パッド71,73は、対応する電極端子10a3,10a4に対して、パッケージ3の奥側(底壁31側)に入り込んでいない。このため、ワイヤボンディングによってワイヤW6,W7を結線する際において、ワイヤボンディング装置のキャピラリーをパッケージ3の奥側に侵入させる必要がない。これにより、キャピラリーがパッケージ3内の他の部材(例えばレンズホルダ7B等)に接触すること、及び当該接触に起因して部材が破損することを、適切に抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、Y軸方向において電極パッド71,73とは反対側に設けられた電極パッド75,76についても、電極パッド71,73と同様の電気的接続構成を有している。すなわち、電極パッド75,76は、支持部61における天壁33側の他方の隅部(MEMS回折格子51を正面から見た場合の右上の隅部)に設けられている。各電極パッド75,76は、それぞれに対応するワイヤW(ワイヤW8,W9)を介して、それぞれに対応する電極端子10a(電極端子10a5,10a6)に接続されている。電極端子10a5,10a6は、QCL素子2に対して温度センサ9が設けられた側の突出壁34において、光出射窓32aが設けられた側とは反対側から数えて2番目及び3番目に位置する電極端子10aである。底壁31に対する電極パッド75,76の高さ位置は、底壁31に対する電極端子10a5,10a6の高さ位置と同等以上である。電極端子10a5は、複数(本実施形態では2本)のワイヤW8を介して、電極パッド75に接続されている。また、電極端子10a6は、複数(本実施形態では2本)のワイヤW8を介して、電極パッド76に接続されている。各ワイヤW8,W9の本数は1本でもよいが、それぞれ複数本のワイヤW8,W9を用いることにより、各電極端子10a5,10a6と各電極パッド75,76との間の電気的接続を確実に図ることができる。
【0056】
次に、
図3及び
図4を参照して、レンズホルダ7Bの配置構成について説明する。天壁33とレンズホルダ7Bの天壁側の面7aとの距離d(
図4参照)は、レンズ6Bの光軸方向(X軸方向)に沿ったレンズホルダ7Bの厚さt(
図3参照)よりも小さい。距離dは、例えば、0.64mm程度である。厚さtは、例えば2.5mm程度である。また、レンズホルダ7Bの面7aは、ワイヤW1,W3が接続される電極端子10a1,10a2よりも高い位置(天壁33に近い位置)にある。
【0057】
次に、レーザモジュール1の製造方法について説明する。まず、QCL素子2及びMEMS回折格子51(回折格子ユニット5)をパッケージ3内に配置する(第1工程)。本実施形態では、以下のような処理が実行される。QCL素子2が、例えばAuSn系の半田材料によって、サブマウント8に半田接合される。続いて、QCL素子2を搭載したサブマウント8が、例えばAuSn系の半田材料によって、マウント部材4の第2搭載部42の上面42aに接合される。また、温度センサ9及び電極パッド11が、例えば樹脂接着剤等を介して、マウント部材4の上面42aに接合される。また、予め組み立てられた回折格子ユニット5が、ヨーク53の一部がマウント部材4の第4搭載部44の配置孔44bに配置された状態で、樹脂接着剤等を用いて第4搭載部44に固定される。これにより、マウント部材4は、レンズホルダ7A,7B以外の各部材を搭載した状態となる。このような状態のマウント部材4を、天壁33が取り付けられていない状態のパッケージ3の底壁31上に固定することにより、第1工程が完了する。なお、マウント部材4は、上述した各部材が搭載されていない状態で、最初に底壁31上に固定されてもよい。この場合、上述した各部材は、側壁32における天壁33側の開口を介して、底壁31に固定されたマウント部材4に対して搭載される。
【0058】
続いて、ワイヤボンディングによって、パッケージ3内に配置されたQCL素子2(アノード及びカソード)と電極端子10a1,10a2とを電気的に接続するワイヤW1~W4を形成する(第2工程)。本実施形態では、QCL素子2と各電極端子10a1,10a2とは、各電極パッド11a,11bを介して電気的に接続されるため、一例として以下のような処理が実施される。まず、ワイヤボンディングによって、QCL素子2の上面(QCL素子2のカソード)から電極パッド11aへと複数(本実施形態では6本)のワイヤW2が形成されると共に、サブマウント8(QCL素子2のアノード)から電極パッド11bへと複数(本実施形態では6本)のワイヤW4が形成される。続いて、電極パッド11aから電極端子10a1へと複数(本実施形態では6本)のワイヤW1が形成されると共に、電極パッド11bから電極端子10a2へと複数(本実施形態では6本)のワイヤW3が形成される。ここで、ワイヤWにおけるQCL素子2側の端部(本実施形態では、ワイヤW2におけるQCL素子2の上面に接続される端部、及び、ワイヤW4におけるサブマウント8に接続される端部)は、X軸方向に直交する方向(Y軸方向及びZ軸方向等)から見た場合に、レンズホルダ7Aが配置される予定の位置とレンズホルダ7Bが配置される予定の位置との間に配置される。また、ワイヤW1,W3と電極端子10a1,10a2とは、X軸方向に直交する方向(Y軸方向及びZ軸方向等)から見た場合に、レンズホルダ7Aが配置される予定の位置とレンズホルダ7Bが配置される予定の位置との間の位置で接続される。
【0059】
第2工程では、温度センサ9と電極端子10aとを電気的に接続するワイヤW5a,W5bについても、ワイヤボンディングによって形成される。また、MEMS回折格子51の電極パッド71,73,75,76と電極端子10a3~10a6とを電気的に接続するワイヤW6~W9についても、ワイヤボンディングによって形成される。上述した通り、各電極パッド71,73,75,76の高さ位置は、電極端子10a3~10a6の高さ位置と同等以上とされている。これにより、各電極パッド71,73,75,76の高さ位置が電極端子10a3~10a6の高さ位置よりも低い場合(すなわち、各電極パッド71,73,75,76がパッケージ3の奥側(底壁31側)に位置する場合)と比較して、各電極パッド71,73,75,76に対するワイヤボンディングの作業性が格段に向上している。第2工程が実施されることにより、
図8に示されるように、天壁33が取り付けられる前のパッケージ3内にレンズホルダ7A,7B以外の部材が配置された状態の中間物1Aが得られる。
【0060】
続いて、レンズ6Aが保持されたレンズホルダ7A及びレンズ6Bが保持されたレンズホルダ7Bをパッケージ3内に配置する(第3工程)。本実施形態では、レンズホルダ7Aは、樹脂接着剤Bを介して、マウント部材4の第1搭載部41の上面41aに接合される。また、レンズホルダ7Bは、樹脂接着剤Bを介して、マウント部材4の第3搭載部43の上面43aに接合される。
【0061】
第3工程においては、電極端子10a1,10a2及びワイヤW1~W4を介してQCL素子2に駆動電圧を印加してレーザ発振させた状態で、レンズ6A,6Bを調芯することによって、レンズホルダ7A,7Bをパッケージ3内に固定する。すなわち、レーザ発振させた状態で、レンズ6A,6Bの光軸がQCL素子2の出射光の光軸と一致するように、レンズホルダ7A,7Bの位置決めを行う。
【0062】
第3工程の完了後、シーム溶接等によって天壁33を側壁32の上端部に接合することにより、
図1に示されるレーザモジュール1が得られる。
【0063】
[作用効果]
以上説明したレーザモジュール1では、QCL素子2を挟んだ両側にレンズホルダ7A,7Bが配置されている。また、パッケージ3の内壁面に沿って配置された電極端子10aとQCL素子2(本実施形態では、QCL素子2のアノード及びカソードの両方)とがワイヤWによって電気的に接続される。ここで、ワイヤWにおけるQCL素子2側の端部は、レンズホルダ7Aとレンズホルダ7Bとが対向する対向方向(X軸方向)に直交する方向(例えば、Y軸方向及びZ軸方向等)から見た場合に、レンズホルダ7Aとレンズホルダ7Bとの間の位置に配置されている。これにより、
図7に示されるように、電極端子10aからQCL素子2(本実施形態では、カソードとしてのQCL素子2の上面、及びアノードとしてのサブマウント8の各々)までの間において、ワイヤWの少なくとも一部(QCL素子2側の端部を含む部分)をレンズホルダ7Aとレンズホルダ7Bとの間の空間に配置する構成を実現することができる。その結果、QCL素子2に給電するためのワイヤWとパッケージ3内の部材(特に、QCL素子2の両側に配置されるレンズホルダ7A,7B)との干渉を好適に抑制できる。以上により、レーザモジュール1の信頼性及び組立時の作業性の向上が図られる。
【0064】
また、ワイヤWは、対向方向(X軸方向)に直交する方向(例えば、Y軸方向及びZ軸方向等)から見た場合に、レンズホルダ7Aとレンズホルダ7Bとの間の位置において、電極端子10aと接続されている。これにより、電極端子10aからQCL素子2(本実施形態では、カソードとしてのQCL素子2の上面、及びアノードとしてのサブマウント8の各々)までの間において、ワイヤWの全体をレンズホルダ7Aとレンズホルダ7Bとの間の空間に配置する構成を実現することができる。これにより、ワイヤWとパッケージ3内の部材(特に、レンズホルダ7A,7B)との干渉をより好適に抑制できる。
【0065】
また、底壁31に対する電極端子10aの高さ位置は、底壁31に対するQCL素子2の高さ位置よりも高い。上記構成によれば、QCL素子2から電極端子10aへと、適度な張りを持たせたワイヤWを結線することが容易となる。その結果、ワイヤWの弛みを好適に抑制し、ワイヤWとパッケージ3内の部材との干渉をより好適に抑制できる。なお、本実施形態では、QCL素子2と電極端子10aとは、電極パッド11を中継することにより、2つのワイヤ(ワイヤW1,W2の組み合わせ、又はワイヤW3,W4の組み合わせ)によって接続されているが、後述するように電極パッド11をQCL素子2と電極端子10aとの中間の高さ位置に配置することにより、上述した効果が得られる。また、電極パッド11を中継させることなく、QCL素子2と電極端子10aとを直接1つのワイヤで接続する場合においては、当然に上述した効果が得られる。
【0066】
また、本実施形態では、ワイヤWは、電極端子10a1と電極パッド11aとを接続するワイヤW1と、電極パッド11aとQCL素子(カソードとしてのQCL素子2の上面)とを接続するワイヤW2と、を有する。同様に、ワイヤWは、電極端子10a2と電極パッド11bとを接続するワイヤW3と、電極パッド11bとQCL素子(アノードとしてのサブマウント8)とを接続するワイヤW4と、を有する。上記構成によれば、電極端子10a1,10a2とQCL素子(QCL素子2の上面又はサブマウント8)とを直接ワイヤ接続する場合と比較して、各ワイヤW1~W4の長さを短くすることができる。これにより、ワイヤW1~W4の弛みを好適に抑制し、ワイヤW1~W4とパッケージ3内の部材との干渉を好適に抑制できる。
【0067】
また、電極パッド11a,11bは、対向方向(X軸方向)に直交する方向(例えば、Y軸方向及びZ軸方向等)から見た場合に、レンズホルダ7Aとレンズホルダ7Bとの間の位置に設けられている。上記構成によれば、ワイヤW1~W4の全体がレンズホルダ7Aとレンズホルダ7Bとの間の空間を通過する構成を実現することができると共に、電極端子10a1,10a2から電極パッド11a,11bを介してQCL素子(QCL素子2の上面又はサブマウント8)へと至る経路をなるべく短くすることで、各ワイヤW1~W4の長さを短くすることができる。これにより、ワイヤW1~W4とパッケージ3内の部材との干渉を好適に抑制できる。
【0068】
また、底壁31に対する電極パッド11a,11bの高さ位置は、底壁31に対する電極端子10a1,10a2の高さ位置よりも低く、且つ、底壁31に対するQCL素子2の高さ位置よりも高い。上記構成によれば、パッケージ3側の電極端子10a1,10a2、電極パッド11a,11b、及びQCL素子2の高さ位置が、段階的に低くなるように設定される。これにより、QCL素子2から電極パッド11a,11bへと適度な張りを持たせたワイヤW2,W4を結線することが容易となると共に、電極パッド11a,11bから電極端子10a1,10a2へと適度な張りを持たせたワイヤW1,W3を結線することが容易となる。その結果、ワイヤW1~W4の弛みを好適に抑制し、ワイヤW1~W4とパッケージ3内の部材との干渉を好適に抑制できる。
【0069】
また、上記製造方法(第1工程~第3工程)では、第2工程において、ワイヤWにおけるQCL素子2側の端部は、レンズホルダ7Aとレンズホルダ7Bとが対向する対向方向(X軸方向)に直交する方向(例えば、Y軸方向及びZ軸方向等)から見た場合に、レンズホルダ7Aとレンズホルダ7Bとの間の位置に配置される。これにより、電極端子10a1,10a2からQCL素子2(本実施形態では、カソードとしてのQCL素子2の上面、及びアノードとしてのサブマウント8の各々)までの間において、ワイヤWの少なくとも一部(QCL素子2側の端部を含む部分)をレンズホルダ7Aとレンズホルダ7Bとの間の空間に配置する構成を実現することができる。その結果、第3工程においてレンズホルダ7A,7Bを配置する際に、ワイヤWとレンズホルダ7A,7Bとの干渉を好適に抑制できる。以上により、レーザモジュール1の信頼性及び組立時の作業性の向上が図られる。
【0070】
また、上記第3工程において、電極端子10a1,10a2及びワイヤWを介してQCL素子2に駆動電圧を印加してレーザ発振させた状態でレンズ6A,6Bを調芯することによって、レンズホルダ7A,7Bがパッケージ3内に固定される。上記製造方法によれば、第3工程において、レーザ発振させた状態で調芯を行うことにより、レンズホルダ7A,7Bをパッケージ3内に適切に位置決めすることができる。さらに、第2工程でワイヤWとレンズホルダ7A,7Bとが干渉しないようにワイヤボンディングが実施されていることによって、第3工程における調芯(すなわち、レンズホルダ7A,7Bの位置の調整)を容易に行うことができる。
【0071】
また、レーザモジュール1では、天壁33とレンズホルダ7Bの天壁33側の面7aとの距離d(
図4参照)は、レンズ6Bの光軸方向(X軸方向)に沿ったレンズホルダ7Bの厚さt(
図3参照)よりも小さい。すなわち、パッケージ3内において、天壁33とレンズホルダ7Bとの距離d(ギャップ)がレンズホルダ7Bの厚さtよりも小さくなるように、レンズホルダ7Bが配置されている。これにより、MEMS回折格子51において反射した光のうちレンズ6Bから外れて天壁33側へと向かう迷光が天壁33とレンズホルダ7Bとの間に侵入したとしても、当該迷光が天壁33とレンズホルダ7Bとの間の空間を通過し難くなっている。すなわち、レンズホルダ7Bに対してMEMS回折格子51が配置される側の空間S2(
図3参照)から、レンズホルダ7Bに対してQCL素子2が配置される側の空間S1(
図3参照)への迷光の侵入を、効果的に抑制することができる。以上により、QCL素子2から外部に出射されるレーザ光Lに迷光成分が混入することを抑制し、レーザ品質を適切に確保することができる。
【0072】
なお、天壁33とレンズホルダ7Bの面7aとは、面同士で対向する(対面する)ように配置されることが好ましい。より好ましくは、天壁33とレンズホルダ7Bの面7aとは、互いに平行に対面するように配置される。また、
図4に示されるように、YZ平面におけるレンズ6Bの外形が円形で、レンズホルダ7Bの外形が矩形であることが好ましい。また、レンズホルダ7Bの厚さtは、X軸方向におけるレンズホルダ7Bの全体の長さである。レンズホルダ7Bの外形が直方体状である場合、レンズホルダ7Bの厚さtは、レンズホルダ7Bの面7aのX軸方向に沿った長さである。また、レンズホルダ7Bの厚さtは、レンズ6Bの安定性を向上させる観点から、レンズ6Bの光軸方向(X軸方向)に沿った厚さ以上であることが好ましい。また、距離dは、レンズ6Bの厚さ以下であることが好ましい。
【0073】
また、X軸方向から見た場合に天壁33と面7aとが平行ではなく(例えば、X軸方向から見た場合に面7aが天壁33に対して傾斜しており)、Y軸方向に沿った各位置における天壁33と面7aとの距離にばらつきがある場合もあり得る。この場合、Y軸方向に沿った各位置における天壁33と面7aとの距離(Z軸方向に沿った距離)の統計値(例えば、最小値、最大値、平均値等)を、上述した天壁33とレンズホルダ7Bの面7aとの距離dとしてもよい。
【0074】
また、Y軸方向から見た場合に天壁33と面7aとが平行ではなく(例えば、Y軸方向から見た場合に面7aが天壁33に対して傾斜しており)、X軸方向に沿った各位置における天壁33と面7aとの距離にばらつきがある場合もあり得る。この場合、X軸方向に沿った各位置における天壁33と面7aとの距離の統計値(例えば、最小値、最大値、平均値等)を、上述した天壁33とレンズホルダ7Bの面7aとの距離dとしてもよい。
【0075】
また、X軸方向及びY軸方向のいずれかから見た場合にも天壁33と面7aとが平行ではない場合には、XY平面における面7aの各位置と天壁33との距離の統計値(例えば、最小値、最大値、平均値等)を、上述した天壁33とレンズホルダ7Bの面7aとの距離dとしてもよい。また、天壁33とレンズホルダ7Aとの間についても上述した天壁33とレンズホルダ7Bとの関係と同様の関係が成り立つことが好ましい。
【0076】
また、ワイヤW(ワイヤW1,W3)は、光軸方向(X軸方向)に直交する方向(例えば、Y軸方向及びZ軸方向等)から見た場合に、レンズホルダ7Bに対してQCL素子2が配置される側の領域において、電極端子10a1,10a2と接続されている。電極端子10a1,10a2は、QCL素子2よりも天壁33に近い位置に配置されており、レンズホルダ7Bの天壁33側の面7aは、電極端子10a1,10a2よりも天壁33に近い位置にある。上記構成によれば、光軸方向(X軸方向)に直交する方向(例えば、Y軸方向及びZ軸方向等)から見た場合にレンズホルダ7BよりもQCL素子2側の空間において電極端子10a1,10a2とワイヤW(本実施形態では、ワイヤW1,W3)とを接続することにより、ワイヤWとレンズホルダ7Bとの干渉を抑制しつつ、レンズホルダ7Bの天壁33側の面7aを電極端子10a1,10a2よりも天壁33に近づけることが可能とされている。これにより、天壁33とレンズホルダ7Bとのギャップ(距離d)がなるべく小さくなるようにレンズホルダ7Bを配置することができる。その結果、上記空間S2において生じた迷光が天壁33とレンズホルダ7Bとの間を通過して上記空間S1へと侵入することを、より一層効果的に抑制することができる。
【0077】
また、QCL素子2における活性層及びクラッド層を含む積層構造の積層方向は、底壁31と天壁33とが対向する方向(Z軸方向)と一致している。上記構成においては、QCL素子2の端面(第1端面2a及び第2端面2b)から出射される光のビーム形状は、積層方向(Z軸方向)に沿った長径を有する楕円形状となる。この場合、QCL素子2の端面から出射される光が上下方向(Z軸方向)に拡がりやすいことから、MEMS回折格子51において反射されて天壁33側へと向かう迷光が生じ易い。一方、上述した天壁33とレンズホルダ7Bとの位置関係(距離dと厚さtとの関係)により、当該迷光が上記空間S1へと侵入することが抑制される。すなわち、上述した天壁33とレンズホルダ7Bとの位置関係を設定することにより、迷光によるレーザ品質の低下を好適に抑制しつつ、QCL素子2の積層方向がZ軸方向と一致するように、QCL素子2を配置することができる。
【0078】
また、レンズホルダ7Bの表面は、黒色加工されている。本実施形態では、アルマイト処理等によって、レンズホルダ7Bの表面が黒色にされている。上記構成によれば、MEMS回折格子51で反射されてレンズ6Bから外れた迷光の一部が黒色に加工されたレンズホルダ7Bの表面で吸収されるため、上記空間S1への迷光の侵入をより一層効果的に抑制することができる。また、本実施形態では、上記迷光の低減効果を高めるために、ヨーク53の表面についても、亜鉛メッキ処理等によって黒色に加工されている。
【0079】
また、底壁31に対するMEMS回折格子51の電極パッド71,73の高さ位置は、底壁31に対する電極端子10a3,10a4の高さ位置と同等以上である(
図2及び
図3参照)。すなわち、レーザモジュール1では、MEMS回折格子51の電極パッド71,73が、パッケージ3内において、パッケージ3の側壁32(第1側壁321)に沿って配置された電極端子10a3,10a4と同等以上の高さ位置に配置されている。本実施形態では、2つの電極パッド71,73のうち上側(天壁33側)の電極パッド73は、電極端子10a3,10a4の高さ位置よりも若干高い位置に配置されており、下側(底壁31側)の電極パッド71は、電極端子10a3,10a4の高さ位置とほぼ同一の位置に配置されている。このように電極パッド71,73の位置を設定することにより、電極パッド71,73の高さ位置をパッケージ3側の電極端子10a3,10a4の高さ位置よりも低い位置(すなわち、パッケージ3の奥側(底壁31側))に配置する場合と比較して、ワイヤボンディングによるワイヤW6,W7の形成が容易となると共に、必要なワイヤ長を短くできる。ワイヤ長を短くできることにより、ワイヤW6,W7に適切な張りを持たせることができると共にワイヤW6,W7とパッケージ3内の部材(例えば、回折格子ユニット5に含まれる各部材等)との干渉を適切に抑制できる。以上により、レーザモジュール1の信頼性及び組立時の作業性の向上が図られる。
【0080】
また、パッケージ3の収容空間の幅(Y軸方向における幅)に対して光学面(可動部63)の幅の割合が比較的大きいMEMS回折格子51を採用した場合にも、電極端子10a3,10a4と電極パッド71,73とのワイヤボンディングを容易に行なうことが可能となる。これにより、光学面の幅の割合が比較的小さいMEMS回折格子51を採用する場合に比べて、レンズ6BとMEMS回折格子51との距離を大きくとることが可能となるため、組立の難易度を大幅に低減することができる。以下、上記について詳細に説明する。本実施形態では、可動部63とワイヤW6~W9との干渉を抑制するために、支持部61において、電極パッド71,73,75,76が、可動部63の両側に配置されている。このような構成において、可動部63の幅を大きくしていくと、電極パッド71,73,75,76は、Y軸方向において、第1側壁321に近接した位置に配置されることになる。このような場合において、仮に電極パッド71,73,75,76の高さ位置をパッケージ3の奥側の深い位置に配置してしまうと、ワイヤボンディングの実施が困難になる。すなわち、ワイヤボンディングにおいて、キャピラリーを電極パッド71,73,75,76にアクセスさせることが非常に困難となる。これに対し、本実施形態のように電極パッド71,73,75,76をパッケージ3側の電極端子10aと同等以上の高さ位置に配置することにより、容易にワイヤボンディングを行うことができるというメリットがある。特に可動部63の幅を大きくした場合において、上記メリットは大きい。また、レンズ6Bは、必ずしも、QCL素子2の第2端面2bから可動部63へと出射される光を完全にコリメートできるわけではない。このため、レンズ6Bを透過した光が、わずかな発散角を有する場合がある。従って、可動部63の幅が小さい場合には、レンズ6Bに対して、MEMS回折格子51をなるべく近づける必要が生じる。これに対し、本実施形態では、上述したように、なるべく幅が大きい可動部63を有するMEMS回折格子51を採用することができるため、レンズ6BとMEMS回折格子51との距離を大きくとることが可能となる。また、パッケージ3内の収容空間に対して、なるべく大きいMEMS回折格子51(すなわち、可動部63の幅をなるべくパッケージ3の横幅(Y軸方向に沿った幅)に近づけたMEMS回折格子51)を用いることで、QCL素子2にフィードバックされる光のロスを低減でき、レーザモジュール1の高出力化を図ることができる。
【0081】
また、MEMS回折格子51は、回折格子部64を支持する矩形枠状の支持部61を有しており、電極パッド71,73は、支持部61における天壁33側の一方の隅部に設けられている。本実施形態では、電極パッド71,73は、MEMS回折格子51を正面から見た場合の左上隅部(
図6参照)に設けられている。上記構成によれば、回折格子部64の中心から比較的離れた位置である支持部61の隅部において、電気的接続が図られる。これにより、ワイヤW6,W7及び電極パッド71,73に起因した迷光の発生を低減することができるため、レーザモジュール1の信頼性を効果的に向上させることができる。以下、上記について詳細に説明する。通常、QCL素子2の第2端面2bから出射されるビーム光の全体を回折格子部64で受けられるように、可動部63は可能な限り大きくされている。しかし、QCL素子2に高電流が注入される場合、QCL素子2からのビーム光の拡がり角が大きくなり、必ずしも回折格子部64でビーム光の全体(全光束)を受けられるとは限らない。このような場合、可動部63(回折格子部64)と支持部61との隙間を抜けた光が、可動部63の裏面側に配置された磁石52の表面で乱反射し、電極パッド71,73及びワイヤW等に当たって迷光を生じるおそれがある。上述したように、回折格子部64の中心から比較的離れた位置である支持部61の隅部に電極パッド71,73を配置することにより、上記のように乱反射した光が電極パッド71,73及びワイヤW等に当たることを抑制することができる。これにより、上述した迷光の発生を効果的に低減することができる。
【0082】
また、MEMS回折格子51は、コイル65,66(駆動用コイル)とは異なるコイル(図示しない検出用コイル、第1コイル)と電気的に接続される電極パッド75,76(第1電極パッド)を更に有している。電極パッド75,76は、支持部61における天壁33側の他方の隅部(すなわち、電極パッド71,73が設けられた側とは反対側の隅部)に設けられている。上記構成によれば、MEMS回折格子51に2種類のコイル(本実施形態では、駆動用のコイル65,66と検出用のコイル)を設ける場合においても、矩形枠状の支持部61の天壁33側の一対の隅部(すなわち、天壁33側を上方向として支持部61を正面側から見た場合の左上隅部及び右上隅部)にそれぞれのコイルに対応する電極パッド71,73,75,76を設けることによって、上述した効果(すなわち、レーザモジュール1の信頼性及び組立時の作業性の向上)を得ることができる。
【0083】
また、MEMS回折格子51は、コイル65,66に作用する磁界を発生させる磁石52と共に回折格子ユニット5を構成している。磁石52は、MEMS回折格子51に対してQCL素子2が設けられた側とは反対側に配置されている。上記構成によれば、電極パッド71,73,75,76の配置自由度を向上させることができる。より具体的には、磁石52をMEMS回折格子51の裏面側に設けることにより、磁石52と電極パッド71,73,75,76(及び電極パッド71,73,75,76に接続されるワイヤW)との干渉を気にする必要がなく、支持部61の表面(QCL素子2側を向く面)に自由に電極パッド71,73,75,76を配置することができる。
【0084】
[変形例]
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限られない。各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。また、上記実施形態に係るレーザモジュール1に含まれる一部の構成は、適宜省略又は変更されてもよい。例えば、電極パッド11は省略されてもよい。この場合、電極端子10aとQCL素子(QCL素子2の上面及びサブマウント8の各々)とが、1つのワイヤによって直接接続されてもよい。また、MEMS回折格子51において検出用コイルが省略される場合には、電極パッド75,76は省略されてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1…外部共振型レーザモジュール、2…量子カスケードレーザ素子、3…パッケージ、6B…レンズ、7a…面、7B…レンズホルダ、10a,10a1~10a6…電極端子、31…底壁、32…側壁、33…天壁、51…MEMS回折格子、61…支持部、64…回折格子部、65,66…コイル、71,73…電極パッド、75,76…電極パッド(第1電極パッド)、W6~W9…ワイヤ。