(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/28 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
F04D29/28 C
(21)【出願番号】P 2021028529
(22)【出願日】2021-02-25
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】永尾 英樹
【審査官】森 秀太
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-070096(JP,A)
【文献】特開2011-256858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心に回転可能とされたロータと、
前記軸線を基準とする径方向の外側から前記ロータを覆うケーシングと、を備え、
前記ロータは、
前記軸線を中心とする円盤状に形成されて中心が埋められた中軸構造を有するディスクを有し、前記軸線の延びる軸方向に隣接された複数のインペラと、
前記軸方向に並ぶ複数の前記インペラをまとめて固定する複数のボルトを有するボルト固定部と、を有し、
前記ディスクは、
前記軸方向から見た際に、前記軸線を中心とする面であって前記軸方向を向くディスク面と、
前記径方向において前記軸線に対して外側に外れた位置で前記ディスクを前記軸方向に貫通するように、前記ディスク面に対して前記軸線を中心とする周方向に複数形成されて前記ボルトが挿通されるボルト孔と、を有し、
前記ディスク面は、
前記ボルト孔に対して少なくとも一部が前記径方向の外側に位置し、隣接する他の前記インペラの前記ディスク面に対して接触する当接面と、
前記当接面に対して前記径方向の内側の領域であって、隣接する他の前記インペラの前記ディスク面に対して前記軸方向に離間する非当接面と、を有する圧縮機。
【請求項2】
前記ディスクは、前記ボルト孔に対して前記径方向の内側で、前記軸方向に突出又は窪むことで、隣り合う前記インペラ同士で互いに嵌まり合って前記径方向への移動を互いに規制するディスク嵌合部を有する請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記ディスク嵌合部は、前記径方向において前記軸線に対して外側に外れた位置で前記周方向に並ぶ複数の凸部または凹部を有する請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記ロータは、他の回転機械のロータに接続可能とされ、前記インペラに固定されたカップリングハブとさらに備え、
前記カップリングハブは、前記インペラに対して着脱可能とされている請求項1から3のいずれか一項に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記ケーシングに対して前記ロータを回転可能に支持する軸受部をさらに備え、
前記軸受部は、前記軸方向において、前記カップリングハブと重なる位置に配置され、前記カップリングハブを回転可能に支持する請求項4に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記ケーシングは、
前記軸方向の第一側に配置された前記インペラから第二側に隣接する前記インペラに向かうように作動流体を流通させるケーシング流路と、
前記作動流体を外部から前記ケーシング流路に流入させる吸込口と、
前記作動流体を前記ケーシング流路から外部に流出させる吐出口とを有し、
前記ロータは、複数の前記インペラに対して前記軸方向の第一側に配置されたバランスピストンを有し、
前記バランスピストンは、
最も前記軸方向の第一側に配置された前記インペラに接触するピストン軸部と、
前記ピストン軸部に対して前記径方向の外側に突出する受圧部とを有し、
前記受圧部は、前記軸方向の第一側を向く第一受圧面と、前記軸方向の第二側を向く第二受圧面とを有し、
前記ケーシングは、前記第一受圧面が配置されて前記吐出口と連通する第一空間と、前記第二受圧面が配置されて前記吸込口と連通する
第二空間と、有する請求項1から5のいずれか一項に記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に遠心圧縮機は、複数のインペラを有するロータと、インペラを外側から覆うことでインペラとの間で流路を形成するケーシングと、を備えている。遠心圧縮機では、ケーシング内に形成された流路を介して外部から供給された流体が、インペラの回転によって圧縮されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されているように、このような遠心圧縮機では、ロータは、複数のインペラが軸方向に積層されることで形成されている。この遠心圧縮機では、積層された複数のインペラが、インペラの中心に形成された大きな穴を挿通するように配置されたシャフトである大きなボルトによって固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したようなインペラの中心にシャフトを挿通させるための大きな穴が開いていると、穴の周辺に薄い部分が形成される。そして、ロータを回転させた際の遠心力による荷重は、その穴の周辺の薄い部分に重点的に作用する。また、この荷重はロータの回転数が高くになるにしたがって増加する遠心力に比例して大きくなる。そのため、シャフトで固定されたインペラを有するロータを高速で回転させようとすると、遠心力による大きな荷重にインペラが耐えられずに損傷する可能性がある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、ロータを安定して高速回転させつつ、遠心力による荷重に対するインペラの強度を向上させることが可能な圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る圧縮機は、軸線を中心に回転可能とされたロータと、前記軸線を基準とする径方向の外側から覆う前記ロータをケーシングと、を備え、前記ロータは、前記軸線を中心とする円盤状に形成されて中心が埋められた中軸構造を有するディスクを有し、前記軸線の延びる軸方向に隣接された複数のインペラと、前記軸方向に並ぶ複数の前記インペラをまとめて固定する複数のボルトを有するボルト固定部と、を有し、前記ディスクは、前記軸方向から見た際に、前記軸線を中心とする面であって前記軸方向を向くディスク面と、 前記径方向において前記軸線に対して外側に外れた位置で前記ディスクを前記軸方向に貫通するように、前記ディスク面に対して前記軸線を中心とする周方向に複数形成されて前記ボルトが挿通されるボルト孔と、を有し、前記ディスク面は、前記ボルト孔に対して少なくとも一部が前記径方向の外側に位置し、隣接する他の前記インペラの前記ディスク面に対して接触する当接面と、前記当接面に対して前記径方向の内側の領域であって、隣接する他の前記インペラの前記ディスク面に対して前記軸方向に離間する非当接面と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の圧縮機によれば、ロータを安定して高速回転させつつ、遠心力による荷重に対するインペラの強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係る圧縮機の概略構成を示す断面図である。
【
図3】本実施形態の第一インペラを示す断面図である。
【
図4】
図3の第一インペラを軸方向の第一側から見た様子を示す図である。
【
図5】カップリングハブに形成されたカービックカップリングを示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本開示による圧縮機1を実施するための形態を説明する。しかし、本開示はこの実施形態のみに限定されるものではない。
【0011】
(圧縮機の構成)
圧縮機1は、作動流体としてガスを圧縮する。本実施形態の圧縮機1は、水素ガスを圧縮する一軸多段式の遠心圧縮機(多段遠心圧縮機)である。
図1に示すように、圧縮機1は、ケーシング2と、ロータ3と、シール部8と、軸受部9と、を備えている。
【0012】
なお、以下では、後述するロータ3の軸線Oが延びている方向を軸方向Daとする。軸線Oを基準にした径方向を単に径方向Drとする。また、軸線Oを中心とするロータ3周りの方向を周方向Dcとする。
【0013】
(ケーシングの構成)
ケーシング2は、ロータ3を径方向Drの外側から覆っている。本実施形態のケーシング2は、外部ケーシング21と、複数のダイアフラム22と、複数のヘッド23とを有している。
【0014】
外部ケーシング21は、ロータ3の軸線Oと同一に配置される中心軸を中心とする円筒状をなしている。外部ケーシング21の軸方向Daの第一側Da1(一方側)は、後述するバンドル100が挿通可能な大きさで開口されている。外部ケーシング21の軸方向Daの第二側Da2(他方側)には、端板211が形成されている。端板211は、軸方向Daに直交するように広がる板状をなしている。端板211の中央部には、ロータ3が挿通可能であって、バンドル100が挿通不能な大きさの挿通孔212が形成されている。これらにより、バンドル100は、外部ケーシング21に対して軸方向Daに移動されることで、ケーシング2に対して挿抜可能とされている。
【0015】
複数のダイアフラム22は、ロータ3を径方向Drの外側から覆うように配置されている。複数のダイアフラム22は、外部ケーシング21の内部に配置されている。ダイアフラム22は、軸線Oを中心として環状をなしている。複数のダイアフラム22は、軸方向Daに延びる筒状となるように積層されている。隣接するダイアフラム22同士では、外周面が溶接やボルトによって互いに固定されている。複数のダイアフラム22が相互に固定されることで、インペラ30に導入する流路が内部に形成されている。また、複数のダイアフラム22は、ヘッド23、ロータ3、シール部8、及び軸受部9と共にバンドル100を構成している。バンドル100は、外部ケーシング21内に収容されている。バンドル100では、ロータ3、複数のダイアフラム22、複数のヘッド23、シール部8、及び軸受部9は一体をなすように、共に移動可能な状態とされている。
【0016】
(流路の構成)
ここで、具体的に、ダイアフラム22によってケーシング2に形成される流路について、軸方向Daの第一側Da1である上流側から軸方向Daの第二側Da2である下流側に向かって順に説明する。本実施形態では、ダイアフラム22は、ガスが流通する上流側から順に、吸込口221、複数のケーシング流路222、及び吐出口223を、外部ケーシング21やヘッド23とともに形成している。
【0017】
吸込口221は、ケーシング2の外部から流入してきた圧縮される前のガスをダイアフラム22の内部に流入させる。吸込口221は、最上流のインペラ30に流入する前のガスが流れている。吸込口221には、インレットガイドベーンが配置されている。
【0018】
ケーシング流路222は、ダイアフラム22内に形成されている。ケーシング流路222は、吸込口221からのガスを最上流のインペラ30に供給したり、上流のインペラ30から排出されたガスを下流に配置されたインペラ30に供給したり、最下流のインペラ30から排出されたガスを吐出口223に送り込んだりしている。
【0019】
吐出口223は、ダイアフラム22の内部を流れて圧縮された後のガスをケーシング2の外部に吐出させる。吐出口223は、最下流のインペラ30から排出されたガスを外部に吐出させる。
【0020】
一対のヘッド23は、円環状の部材であって、外部ケーシング21の内部に配置されている。ヘッド23は、外部ケーシング21の両端の開口を閉塞可能な大きさで形成されている。本実施形態のヘッド23として、複数のダイアフラム22に対して軸方向Daの第一側Da1に配置される吸込側ヘッド231と、複数のダイアフラム22に対して軸方向Daの第二側Da2に配置される吐出側ヘッド232とを有している。
【0021】
吸込側ヘッド231は、吐出側ヘッド232よりも吸込口221に近い位置に配置されている。吸込側ヘッド231は、最も軸方向Daの第一側Da1に配置されたダイアフラム22と共に吸込口221を形成している。吸込側ヘッド231は、一体化された複数のダイアフラム22と、ボルト等によって固定されている。これにより、吸込側ヘッド231は、ダイアフラム22と一体化されている。
【0022】
吐出側ヘッド232は、吸込側ヘッド231よりも吐出口223に近い位置に配置されている。吐出側ヘッド232は、最も軸方向Daの第二側Da2に配置されたダイアフラム22と共に吐出口223を形成している。吐出側ヘッド232は、一体化された複数のダイアフラム22に対して、ボルト等によって固定されている。これにより、吐出側ヘッド232は、ダイアフラム22と一体化されている。
【0023】
(ロータの構成)
ロータ3は、ケーシング2の内部に収容されている。ロータ3は、軸線Oを中心として回転可能とされている。
図2に示すように、本実施形態のロータ3は、複数のインペラ30と、バランスピストン50と、カップリングハブ60と、ボルト固定部70とを有している。
【0024】
インペラ30は、回転することによって遠心力を利用してガスを圧縮する。複数のインペラ30は、軸方向Daで隣接している。インペラ30は、ディスク4とブレード34とカバー35とを備えた、いわゆるクローズドインペラである。以下、インペラ30の基本的な構成について、後述する第一インペラ31を示す
図3及び
図4に基づいて説明する。
【0025】
ディスク4は、軸線Oを中心とする円盤状に形成されて中心が埋められた中軸構造を有する。本実施形態のディスク4は、ディスク軸部41と、ディスク外周部42とを有している。
【0026】
ディスク軸部41は、ディスク4において、中心部分を含む中実の部分である。ディスク軸部41は、軸線Oを中心とする断面円形状に形成されている。本実施形態のディスク軸部41は、ディスク面43と、ボルト孔44と、ディスク嵌合部45とを有している。
【0027】
ディスク面43は、ディスク軸部41に少なくとも一つ形成されている。ディスク面43は、軸方向Daから見た際に、軸線Oを中心とする平面である。ディスク面43は、軸方向Daを向いている。ディスク面43は、隣り合うインペラ30同士で互いに軸方向Daで対向している。つまり、複数のインペラ30が軸方向Daに隣接した状態では、一のインペラ30のディスク面43と、その一のインペラ30に隣接する他のインペラ30のディスク面43とが軸方向Daで互いに向き合っている。ディスク面43は、当接面435と、非当接面436とを有している。
【0028】
当接面435は、ディスク面43における一部の領域であって、隣接する他のインペラ30のディスク面43に対して接触する面である。つまり、隣接するインペラ30では、一のインペラ30の当接面435と、その一のインペラ30に隣接する他のインペラ30の当接面435とが互いに接触している。当接面435は、ボルト孔44に対して少なくとも一部が径方向Drの外側に位置している。本実施形態の当接面435は、ボルト孔44に対して重ならないように径方向Drの外側に位置する環状の面である。
【0029】
非当接面436は、ディスク面43における一部の領域であって、当接面435に対して径方向Drの内側の領域である。非当接面436は、隣接する他のインペラ30のディスク面43に対して軸方向Daに離間した面である。つまり、隣接するインペラ30では、一のインペラ30の非当接面436と、その一のインペラ30に隣接する他のインペラ30の非当接面436とが微小な隙間を形成した状態で接触することなく対向している。非当接面436は、ボルト孔44に対して少なくとも一部が径方向Drの内側に位置している。本実施形態の非当接面436は、ボルト孔44に対して径方向Drの内側かつ、後述するディスク嵌合部45に対して径方向Drの外側に位置する環状の面である。
【0030】
さらに、ディスク軸部41は、後述するボルト71が挿通される複数のボルト孔44が形成されている。ボルト孔44は、径方向Drにおいて軸線Oに対して外側に外れた位置でディスク軸部41を軸方向Daに貫通するように形成されている。ボルト孔44は、ディスク面43に対して軸線Oを中心とする周方向Dcに複数(本実施形態では十二箇所)形成されている。複数のボルト孔44は、均等に離れて配置されている。ボルト孔44は、軸方向Daから見た際に、ボルト71の外形に対してわずかに大きい円形状に形成された孔である。なお、ボルト孔44が形成されているディスク面43の領域は、一部が当接面435とされていてもよく、非当接面436であってもよい。
【0031】
ディスク嵌合部45は、ボルト孔44に対して径方向Drの内側で、軸方向Daに突出又は窪むことで、隣り合うインペラ30同士で互いに嵌まり合って径方向Drへの移動を互いに規制している。ディスク嵌合部45は、軸方向Daから見た際に、軸線Oと重なるようにディスク面43に中心に形成されている。本実施形態にディスク嵌合部45は、嵌合凸部451と、嵌合凹部452とによって形成されている。
【0032】
嵌合凸部451は、軸方向Daの第一側Da1を向くディスク面43に形成されている。嵌合凸部451は、軸線Oを中心とする円柱状をなすようにディスク面43から軸方向Daの第一側Da1に向かって突出している。
【0033】
嵌合凹部452は、軸方向Daの第二側Da2を向くディスク面43に形成されている。嵌合凹部452は、軸方向Daから見た際に、嵌合凸部451と重なるように軸線Oを中心に形成されている。嵌合凹部452は、軸方向Daから見た際に、円形状をなして窪んでいる。嵌合凹部452は、軸方向Daから見た際に、嵌合凸部451よりもわずかに小さく形成されている。したがって、一のインペラ30の嵌合凸部451が、他のインペラ30の嵌合凹部452に焼き嵌め等により嵌り込むことで、一のインペラ30と他のインペラ30との径方向Drの位置が規制される。
【0034】
ディスク外周部42は、ディスク軸部41の外縁から延びるように、ディスク軸部41から径方向Drの外側に向かって突出している。ディスク外周部42は、ディスク軸部41と一体に形成されて一つの部材として形成されている。
【0035】
ブレード34は、ディスク外周部42からカバー35まで延びている。ブレード34は、軸線O周りの周方向Dcに間隔を隔てて複数配置されている。
【0036】
カバー35は、ディスク外周部42及び複数のブレード34に対し、軸方向Daの第一側Da1に配置されている。カバー35は、円盤状で、複数のブレード34を覆うように形成されている。ディスク外周部42、ブレード34、及びカバー35によって、インペラ30の内部にガスを流通させるインペラ流路301が形成されている。ブレード34及びカバー35は、軸方向Daから見た際に、ディスク外周部42のみと重なる位置に形成されており、ディスク軸部41とは重なっていない。
【0037】
図2に示すように、本実施形態では、インペラ30として、複数の第一インペラ31と、第二インペラ32とを有している。第一インペラ31は、複数のインペラ30の中で、最上流のインペラ30を含む上流側の複数(本実施形態では三つ)のインペラ30である。第二インペラ32は、複数のインペラ30の中で最も軸方向Daの第二側Da2に配置されている。したがって、第二インペラ32は、最下流のインペラ30のみである。つまり、第二インペラ32は、複数の第一インペラ31に対して軸方向Daの第二側Da2に配置されている。第一インペラ31及び第二インペラ32は、ディスク軸部41の形状がそれぞれ異なっている。
【0038】
第一インペラ31のディスク軸部41(以下、第一ディスク軸部41Aと称する)は、軸線Oを中心とする円柱状に形成されている。第一ディスク軸部41Aは、軸方向Daの長さが一つのダイアフラム22と同程度の大きさで形成されている。つまり、第一ディスク軸部41Aは、径方向Drから見た際に、ブレード34よりも軸方向Daの第二側Da2に突出するように形成されている。第一ディスク軸部41Aは、ディスク面43として、第一ディスク面431及び第二ディスク面432の二面を有している。
【0039】
第一ディスク面431は、軸方向Daの第一側Da1を向く平面である。第一ディスク面431は、軸方向Daから見た際に、軸線Oを中心とする円形状に形成されている。第一ディスク面431には、嵌合凸部451が形成されている。
【0040】
第二ディスク面432は、軸方向Daの第二側Da2を向く平面である。第二ディスク面432は、軸方向Daから見た際に、軸線Oを中心とする円形状に形成されている。第二ディスク面432は、第一ディスク面431と同じ大きさで形成されている。第二ディスク面432には、嵌合凹部452が形成されている。
【0041】
第二インペラ32のディスク軸部41(以下、第二ディスク軸部41Bと称する)は、軸線Oを中心とする円柱状に形成されている。第二ディスク軸部41Bは、第二ディスク軸部本体48と、第二ディスク延長部49とを有している。
【0042】
第二ディスク軸部本体48は、軸線Oを中心とする円柱状に形成されている。第二ディスク軸部本体48は、軸方向Daの長さが一つのダイアフラム22と同程度の大きさで形成されている。第二ディスク軸部本体48は、第一ディスク軸部41Aと同形状とされている。第二ディスク軸部本体48は、ディスク面43として、第一ディスク面431の一面のみを有している。第二ディスク軸部本体48は、軸方向Daの第二側Da2を向く面に、後述するナット72が収容可能な第一ナット収容凹部481が形成されている。第一ナット収容凹部481は、第二ディスク軸部本体48における軸方向Daの第二側Da2を向く面から、軸方向Daの第一側Da1に向かって窪んでいる。第一ナット収容凹部481は、軸方向Daから見た際に、ボルト孔44と重なる位置に複数形成されている。第一ナット収容凹部481は、軸方向Daから見た際に、ボルト孔44を中心として、ボルト孔44よりも大きな円形状に形成されている。
【0043】
第二ディスク延長部49は、第二ディスク軸部本体48から軸方向Daの第二側Da2に向かって延びている。第二ディスク延長部49は、軸方向Daから見た際に、軸線Oを中心とし、第二ディスク軸部本体48よりも小さい円柱状に形成されている。つまり、第二ディスク延長部49は、軸方向Daから見た際に、第一ナット収容凹部481に囲まれるように、第一ナット収容凹部481に対して径方向Drの内側に形成されている。第二ディスク延長部49は、第二ディスク軸部本体48と一体に形成されて一つの部材として形成されている。第二ディスク延長部49は、軸方向Daの第二側Da2を向く面に、カップリングハブ60を固定するためのネジ穴491が形成されている。
【0044】
バランスピストン50は、複数のインペラ30に対して軸方向Daの第一側Da1に配置されている。本実施形態のバランスピストン50は、最上流のインペラ30(複数の第一インペラ31の中で、最も第一側Da1に配置された第一インペラ31)に対して隣接している。
図1に示すように、バランスピストン50は、軸方向Daにおける位置が、吸込側ヘッド231と重なる位置に配置されている。
図2に示すように、バランスピストン50は、ピストン軸部51と、受圧部52と、ピストン延長部53とを有している。
【0045】
ピストン軸部51は、最も軸方向Daの第一側Da1に配置された第一インペラ31に接触するように配置されている。ピストン軸部51は、軸線Oを中心とする円柱状に形成されている。ピストン軸部51は、第一ピストン面54と、第二ピストン面55と、ピストンボルト孔56とを有している。
【0046】
第一ピストン面54は、軸方向Daの第一側Da1を向く平面である。第一ピストン面54は、軸方向Daから見た際に、軸線Oを中心とする環状に形成されている。第一ピストン面54には、後述するナット72が収容可能な第二ナット収容凹部541が形成されている。第二ナット収容凹部541は、第一ピストン面54から軸方向Daの第二側Da2に向かって窪んでいる。第二ナット収容凹部541は、軸方向Daから見た際に、ボルト孔44と重なる位置に複数形成されている。第二ナット収容凹部541は、軸方向Daから見た際に、ボルト孔44を中心として、ボルト孔44よりも大きな円形状に形成されている。つまり、第二ナット収容凹部541は、第一ナット収容凹部481と同じ形状とされている。
【0047】
第二ピストン面55は、軸方向Daの第二側Da2を向く平面である。第二ピストン面55は、最上流の第一インペラ31の第一ディスク面431と対向している。つまり、バランスピストン50がインペラ30と固定された状態では、第二ピストン面55と第一インペラ31の第一ディスク面431とが軸方向Daで互いに向かい合っている。第二ピストン面55は、軸方向Daから見た際に、軸線Oを中心とする円形状に形成されている。第二ピストン面55には、嵌合凸部451が挿入可能なピストン側凹部551が形成されている。ピストン側凹部551は、軸方向Daから見た際に、嵌合凸部451と重なるように軸線Oを中心に形成されている。ピストン側凹部551は、軸方向Daから見た際に、円形状をなして窪んでいる。ピストン側凹部551は、軸方向Daから見た際に、嵌合凸部451よりもわずかに小さく形成されている。つまり、ピストン側凹部551は、嵌合凹部452と同じ形状とされている。したがって、第一インペラ31の嵌合凸部451が、ピストン側凹部551に焼き嵌め等により嵌り込むことで、最上流の第一インペラ31とバランスピストン50との径方向Drの位置が規制される。
【0048】
ピストンボルト孔56は、径方向Drにおいて軸線Oに対して外側に外れた位置でピストン軸部51を軸方向Daに貫通するように形成されている。ピストンボルト孔56は、第一ピストン面54から第二ピストン面55まで貫通している。ピストンボルト孔56は、第一ピストン面54及び第二ピストン面55に対して軸線Oを中心とする周方向Dcに複数(本実施形態では十二箇所)形成されている。ピストンボルト孔56は、軸方向Daから見た際に、ボルト71の外形に対してわずかに大きい円形状に形成された孔である。本実施形態のピストンボルト孔56は、軸方向Daから見た際に、ボルト孔44と同じ位置及び同じ形状となるように形成されている。
【0049】
受圧部52は、ピストン軸部51に対して径方向Drの外側に環状に突出している。受圧部52は、ピストン軸部51の外縁の一部から径方向Drの外側に向かって突出している。受圧部52の軸方向Daの長さは、ピストン軸部51の軸方向Daの長さよりも短い。受圧部52は、ピストン軸部51と一体に形成されて一つの部材として形成されている。受圧部52は、第一受圧面521と、第二受圧面522とを有している。
【0050】
第一受圧面521は、軸方向Daの第一側Da1を向く平面である。第一受圧面521は、軸方向Daから見た際に、軸線Oを中心とする環状に形成されている。
図1に示すように、第一受圧面521は、吸込側ヘッド231に形成された第一空間S1に配置されている。第一空間S1は、吐出口223と連通する空間である。第一空間S1と吐出口223とは、接続配管59で接続されている。
【0051】
第二受圧面522は、軸方向Daの第二側Da2を向く平面である。第二受圧面522は、軸方向Daから見た際に、軸線Oを中心とする環状に形成されている。第二受圧面522は、径方向Drの位置が第一受圧面521と重なるように形成されている。第二受圧面522は、吸込側ヘッド231に形成された第二空間S2に配置されている。第二空間S2は、吸込口221と連通する空間である。第二空間S2は、第一空間S1に対して、軸方向Daの第二側Da2に位置している。第二空間S2と第一空間S1との間は、後述する第三シール部83によってシールされている。
【0052】
図2に示すように、ピストン延長部53は、ピストン軸部51から軸方向Daの第一側Da1に向かって延びている。ピストン延長部53は、軸方向Daから見た際に、軸線Oを中心とし、ピストン軸部51よりも小さい円柱状に形成されている。つまり、ピストン延長部53は、軸方向Daから見た際に、第二ナット収容凹部541に囲まれるように、第二ナット収容凹部541に対して径方向Drの内側に形成されている。ピストン延長部53は、ピストン軸部51と一体に形成されて一つの部材として形成されている。ピストン延長部53の軸方向Daの第一側Da1の先端に径方向Drの外側に突出するスラストカラー531が形成されている。
【0053】
カップリングハブ60は、蒸気タービンやモータ等の他の回転機械のロータに接続可能とされている。カップリングハブ60は、軸線Oを中心とする円柱状に形成されている。カップリングハブ60の軸方向Daの第二側Da2の端部には、径方向Drの外側に向かって突出するフランジが形成されている。カップリングハブ60は、第二インペラ32に着脱可能に固定されている。具体的には、カップリングハブ60には、軸線Oを中心としてカップリングハブ60を貫通するボルト挿通孔61が形成されている。カップリングハブ60は、ボルト挿通孔61に挿通された固定ボルト62を第二ディスク延長部49のネジ穴491に固定することで、第二ディスク延長部49に対して固定されている。また、
図5に示すように、カップリングハブ60の軸方向Daの第一側Da1を向く端面には、周方向Dcに並ぶ複数の凸部または凹を有する歯形形状のカービックカップリング63が形成されている。カービックカップリング63は、径方向Drにおいて軸線Oに対して外側に外れた位置に形成されている。軸方向Daの第二側Da2を向く第二ディスク延長部49の面のネジ穴491の周囲には、カービックカップリング63の形状に対応した凹部が形成されている。このカービックカップリング63が第二ディスク延長部49の凹部に嵌り込むことによって、第二ディスク延長部49に対するカップリングハブ60の径方向Drに位置が規制されている。
【0054】
ボルト固定部70は、軸方向Daに並ぶ複数のインペラ30とバランスピストン50とをまとめて固定する。ボルト固定部70は、ボルト71と、一対のナット72とを有する。ボルト71は、スタッドボルトのように、頭部が無くネジ部のみで構成されている。ボルト71は、ボルト孔44及びピストンボルト孔56に挿通された状態で端部が、第一ナット収容凹部481及び第二ナット収容凹部541に達するような軸方向Daの長さを有している。ナット72は、第一ナット収容凹部481や第二ナット収容凹部541に収容可能な大きさで形成されている。一対のナット72は、ボルト71の両端にそれぞれ着脱可能とされている。
【0055】
図1に示すように、シール部8は、ロータ3とケーシング2との間をシールしている。本実施形態のシール部8は、第一シール部81と、第二シール部82と、第三シール部83とを有している。
【0056】
第一シール部81は、吸込側ヘッド231の内周面とピストン延長部53の外周面との間をシールしている。第一シール部81は、ドライガスシールである。第一シール部81は、吸込側ヘッド231及びピストン延長部53に対して着脱可能とされている。
【0057】
第二シール部82は、吐出側ヘッド232の内周面と第二ディスク延長部49の外周面との間をシールしている。第二シール部82は、ドライガスシールである。第二シール部82は、吐出側ヘッド232及びピストン延長部53に対して着脱可能とされている。
【0058】
第三シール部83は、吸込側ヘッド231の内周面と受圧部52の外周面との間をシールしている。第三シール部83は、ラビリンスシールである。第三シール部83は、第一シール部81に対して軸方向Daの第二側Da2に離れた位置に配置されている。第三シール部83は、第一空間S1と第二空間S2との間をシールしている。第三シール部83は、吸込側ヘッド231に固定されている。
【0059】
軸受部9は、ケーシング2に対して軸線Oを中心として回転可能にロータ3を支持している。本実施形態の軸受部9は、第一軸受部91と、第二軸受部92と、第三軸受部93とを有している。
【0060】
第一軸受部91は、ピストン延長部53を回転可能に支持するジャーナル軸受である。第一軸受部91は、軸方向Daの第一側Da1のロータ3の端部に作用する径方向Drへの荷重を受けている。
【0061】
第二軸受部92は、第二ディスク延長部49を回転可能に支持するジャーナル軸受である。第二軸受部92は、軸方向Daの第二側Da2のロータ3の端部に作用する径方向Drへの荷重を受けている。第二軸受部92は、円筒状の軸受ホルダー95の内部に取り付けられている。この軸受ホルダー95が、ボルト71等の着脱可能な固定手段を用いて吐出側ヘッド232に固定されている。また、軸受ホルダー95が吐出側ヘッド232から取り外されることで、第二シール部82が吐出側ヘッド232に対して外側に移動可能とされている。
【0062】
第三軸受部93は、ピストン延長部53のスラストカラー531を回転可能に支持するスラスト軸受である。第三軸受部93は、ロータ3に作用する軸方向Daへの荷重を受けている。第三軸受部93は、第一軸受部91と共に、箱状の軸受カバー96の内部に取り付けられている。この軸受カバー96が、ボルト71等の着脱可能な固定手段を用いて吸込側ヘッド231に固定されている。
【0063】
(作用効果)
上記構成の圧縮機1では、インペラ30がディスク軸部41を有する中実の構造となっている。つまり、インペラ30は、シャフトの外周面に焼き嵌め等で固定される構造ではない。そのため、シャフトを挿通させるための大きな穴がインペラ30の中心には形成されていない。そして、中実のインペラ30である複数の第一インペラ31と第二インペラ32を軸方向Daに積層した状態で、さらにバランスピストン50を軸方向Daに積層させている。この積層された複数の第一インペラ31と第二インペラ32とバランスピストン50とに対して、ボルト孔44及びピストンボルト孔56に挿通された状態のボルト71の両端をナット72で締め付けて固定することでロータ3が形成されている。このようなロータ3を回転させた際には、インペラ30に大きな穴があいていないため、遠心力によって生じる荷重に対するインペラ30の強度を大きく向上させることができる。さらに、遠心力による荷重は径方向Drの内側に向かうにしたがって大きくなるうえに、インペラ30には圧縮しているガスによる軸方向Daへのスラスト力も生じる。その結果、インペラ30には、斜めに変形するような径方向Drの外側及び軸方向Daに向かう荷重が作用する。しかしながら、ボルト孔44に対して径方向Drの外側に位置する当接面435でインペラ30同士が接触し、その内側に位置する非当接面436ではインペラ30同士が接触していない。そのため、径方向Drの外側及び軸方向Daに向かう荷重を当接面435で安定して受けることができる。したがって、インペラ30同士でトルクが安定して伝達され、シャフトの無い状態でロータ3を高速回転させても、インペラ30同士がずれてしまうことを防ぐことができる。これらにより、ロータ3を安定して高速回転させつつ、遠心力による荷重に対するインペラ30の強度を向上させることができる。
【0064】
また、軸方向Daに並ぶ第一インペラ31同士や、第一インペラ31と第二インペラ32とは、嵌合凸部451及び嵌合凹部452が互いに嵌り込むことで径方向Drの位置が規制されている。ボルト71で完全に位置を固定する前に、第一インペラ31同士の径方向Drの位置や第二インペラ32と第一インペラ31との径方向Drの位置を合わせることができる。その結果、複数のインペラ30を軸方向Daに積層させる際に、芯出しを行うことができる。これにより、ロータ3を組み立てる際の作業性を向上させることができる。
【0065】
さらに、バランスピストン50のピストン側凹部551に、最上流の第一インペラ31の嵌合凸部451が嵌り込むことで径方向Drの位置が規制されている。そのため、ボルト71で完全に固定する前に、バランスピストン50と最上流の第一インペラ31との径方向Drの位置を合わせることができる。その結果、バランスピストン50よとインペラ30とを軸方向Daに積層させる際に、芯出しを行うことができる。したがって、ロータ3における軸線Oを含む径方向Drの中心の領域を構成する主部品の組み立て時の作業性を大きく向上させることができる。
【0066】
また、他の回転機械と接続されたカップリングハブ60が第二ディスク延長部49に対して固定ボルト62で着脱可能とされている。このカップリングハブ60を第二インペラ32から取り外すことで、第二軸受部92や第二シール部82等のカップリングハブ60に対して軸方向Daの第一側Da1の第二インペラ32に近い位置に配置された部品を第二インペラ32に対して着脱しやすくなる。これにより、修理等を行う際の作業性を向上させることができる。
【0067】
また、第二軸受部92が、軸方向Daにおいて、他の回転機械と接続されたカップリングハブ60と重なる位置に配置されている。この第二軸受部92が、カップリングハブ60を回転可能に支持することで、ロータ3の端部が支持されている。そのため、ロータ3を支持する第二軸受部92に対して近い位置で、ロータ3と他の回転機械とが接続される。したがって、第二軸受部92に対して軸方向Daの外側へのロータ3の突出量を抑えることができる。その結果、振動等のロータ3を高速回転させた際に軸受から飛び出した領域の重量が大きいことで生じるロータダイナミクス上の問題の発生を抑えることができる。これにより、ロータ3をより安定した状態で高速回転させることが可能となる。
【0068】
また、バランスピストン50が、最上流の第一インペラ31に対して、軸方向Daに第一側Da1で固定されている。つまり、複数のインペラ30に対して軸方向Daに第一側Da1に配置されている。そして、受圧部52の第一受圧面521は吐出口223と連通する第一空間S1に配置され、第二受圧面522は吸込口221と連通する第二空間S2に配置されている。吸込口221に比べて吐出口223の圧力は非常に高いため、受圧部52では、第一受圧面521から第二受圧面522に向かうように軸方向Daの第一側Da1から第二側Da2への力が生じる。一方で、インペラ30を流れるガスは吸込口221が配置された上流に対して吐出口223が配置された下流の方が圧縮されているために圧力が高くなっている。そのため、複数のインペラ30では、軸方向Daの第二側Da2から第一側Da1への力がガスによって生じる。その結果、ガスによって複数のインペラ30に作用する力の一部が、受圧部52を介してバランスピストン50に作用する力によって打ち消される。これにより、ロータ3に作用するスラスト力(軸方向Daの力)を低減することができ、スラスト軸受を小さくすることできる。また、複数のインペラ30及びバランスピストン50を固定しているボルト71に軸方向Daの外側に広がるような力が作用してしまうことを抑えることができる。その結果、ボルト71の締め付け力を抑えても、隣接するディスク4の接触面同士の面圧を確保することができるため、ボルト孔44の径を小さくすることができる。ディスク軸部41に形成するボルト孔44が小さくなることで、ディスク軸部41の強度を向上させることができる。これにより、高速回転させた際の遠心力に対するロータ3の強度を向上させることができる。
【0069】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0070】
例えば、ディスク嵌合部45は、隣り合うインペラ30同士で互いに嵌まり合って径方向Drへの移動を互いに規制することができればどのような形状であってもよい。したがって、ディスク嵌合部45は、嵌合凸部451及び嵌合凹部452のように、軸線Oを中心に形成される構造に限定されるものではなく、軸線Oから外れた位置に形成される構造であってもよい。さらに、ディスク嵌合部45は、嵌合凸部451及び嵌合凹部452のように、一つの凸部または凹部のみで形成される構造に限定されるものではない。例えば、ディスク嵌合部45は、
図5に示すようなカップリングハブ60に形成されたカービックカップリング63のような構造であってもよい。したがって、ディスク嵌合部45は、径方向Drにおいて軸線Oに対して外側に外れた位置で周方向Dcに並ぶ複数の凸部または凹を有する構造であってもよい。
【0071】
このような構造のディスク嵌合部45によれば、複数の凸部及び凹部によって嵌合するため、隣り合うインペラ30同士が互いに強固に支持される。その結果、ディスク4の接触面同士の摩擦でトルクを伝達する場合に比較して、複数のインペラ30をボルト71によって固定する際の力を低減できる。これにより、ボルト71の強度を抑えることができる。そのため、ボルト孔44の径を小さくすることができる。ボルト孔44が小さくなることで、ディスク軸部41の強度を向上させることができる。したがって、高速回転させた際の遠心力による荷重に対するロータ3の強度を向上させることができる。
【0072】
<付記>
実施形態に記載の圧縮機1は、例えば以下のように把握される。
【0073】
(1)第1の態様に係る圧縮機1は、軸線Oを中心に回転可能とされたロータ3と、前記軸線Oを基準とする径方向Drの外側から前記ロータ3を覆うケーシング2と、を備え、前記ロータ3は、前記軸線Oを中心とする円盤状に形成されて中心が埋められた中軸構造を有するディスク4を有し、前記軸線Oの延びる軸方向Daに隣接された複数のインペラ30と、前記軸方向Daに並ぶ複数の前記インペラ30をまとめて固定する複数のボルト71と、を有し、前記ディスク4は、前記軸方向Daから見た際に、前記軸線Oを中心とする面であって前記軸方向Daを向くディスク面43と、前記径方向Drにおいて前記軸線Oに対して外側に外れた位置で前記ディスク4を前記軸方向Daに貫通するように、前記ディスク面43に対して前記軸線Oを中心とする周方向Dcに複数形成されて前記ボルト71が挿通されるボルト孔44と、を有し、前記ディスク面43は、前記ボルト孔44に対して少なくとも一部が前記径方向Drの外側に位置し、隣接する他の前記インペラ30の前記ディスク面43に対して接触する当接面435と、前記当接面435に対して前記径方向Drの内側の領域であって、隣接する他の前記インペラ30の前記ディスク面43に対して前記軸方向Daに離間する非当接面436と、を有する。
【0074】
この圧縮機1は、インペラ30が中実の構造となっている。つまり、インペラ30は、シャフトの外周面に焼き嵌め等で固定される構造ではない。そのため、シャフトを挿通させるための大きな穴がインペラ30の中心には形成されていない。ロータ3を回転させた際には、インペラ30に大きな穴があいていないため、遠心力によって生じる荷重に対するインペラ30の強度を大きく向上させることができる。さらに、遠心力による荷重は径方向Drの内側に向かうにしたがって大きくなるうえに、インペラ30には圧縮しているガスによる軸方向Daへのスラスト力も生じている。その結果、インペラ30には、斜めに変形するような径方向Drの外側及び軸方向Daに向かう荷重が作用する。しかしながら、ボルト孔44に対して径方向Drの外側に位置する当接面435でインペラ30同士が接触し、その内側に位置する非当接面436ではインペラ30同士が接触していない。そのため、ロータ3が高速回転することで生じる径方向Drの外側及び軸方向Daに向かう荷重を当接面435で安定して受けることができる。その結果、当接面435に安定した摩擦力が生じ、隣接するインペラ30同士を強固に固定することができる。したがって、インペラ30の間でトルクが安定して伝達され、シャフトの無い状態でロータ3を高速回転させても、インペラ30同士がずれてしまうことを防ぐことができる。これらにより、ロータ3を安定して高速回転させつつ、遠心力による荷重に対するインペラ30の強度を向上させることができる。
【0075】
(2)第2の態様に係る圧縮機1は、(1)の圧縮機1であって、前記ディスク4は、前記ボルト孔44に対して前記径方向Drの内側で、前記軸方向Daに突出又は窪むことで、隣り合う前記インペラ30同士で互いに嵌まり合って前記径方向Drへの移動を互いに規制するディスク嵌合部45を有していてもよい。
【0076】
これにより、ボルト71で完全に位置を固定する前に、インペラ30同士の径方向Drの位置を合わせることができる。その結果、複数のインペラ30を軸方向Daに積層させる際に、芯出しを行うことができる。これにより、ロータ3を組み立てる際の作業性を向上させることができる。
【0077】
(3)第3の態様に係る圧縮機1は、(2)の圧縮機1であって、前記ディスク嵌合部45は、前記径方向Drにおいて前記軸線Oに対して外側に外れた位置で前記周方向Dcに並ぶ複数の凸部または凹部を有していてもよい。
【0078】
これにより、複数の凸部及び凹部によって嵌合するため、嵌合時の隣り合うインペラ30同士の間の摩擦力が向上する。そのため、隣り合うインペラ30同士が互いに強固に支持される。その結果、複数のインペラ30をボルト71によって固定する際の力を低減できる。これにより、ボルト71の強度を抑えることができる。そのため、ボルト孔44の径を小さくすることができる。ボルト孔44が小さくなることで、ディスク4の強度を向上させることができる。
【0079】
(4)第4の態様に係る圧縮機1は、(1)から(3)の何れか一つの圧縮機1であって、前記ロータ3は、他の回転機械のロータ3に接続可能とされ、前記インペラ30に固定されたカップリングハブ60とさらに備え、前記カップリングハブ60は、前記インペラ30に対して着脱可能とされていてもよい。
【0080】
これにより、カップリングハブ60をインペラ30から取り外すことで、カップリングハブ60に対してインペラ30に近い位置に配置された部品を着脱しやすくなる。これにより、ロータ3を組み立てる際の作業性を向上させることができる。
【0081】
(5)第5の態様に係る圧縮機1は、(4)の圧縮機1であって、前記ケーシング2に対して前記ロータ3を回転可能に支持する軸受部9をさらに備え、前記軸受部9は、前記軸方向Daにおいて、前記カップリングハブ60と重なる位置に配置され、前記カップリングハブ60を回転可能に支持していてもよい。
【0082】
これにより、ロータ3を支持する軸受部9に対して近い位置で、ロータ3と他の回転機械とが接続される。したがって、軸受部9に対して軸方向Daの外側へのロータ3の突出量を抑えることができる。その結果、振動等のロータ3を高速回転させた際に軸受から飛び出した領域の重量が大きいことで生じるロータ3ダイナミクス上の問題の発生を抑えることができる。これにより、ロータ3をより安定した状態で高速回転させることが可能となる。
【0083】
(6)第6の態様に係る圧縮機1は、(1)から(5)の何れか一つの圧縮機1であって、前記ケーシング2は、前記軸方向Daの第一側Da1に配置された前記インペラ30から第二側Da2に隣接する前記インペラ30に向かうように作動流体を流通させるケーシング流路222と、前記作動流体を外部から前記ケーシング流路222に流入させる吸込口221と、前記作動流体を前記ケーシング流路222から外部に流出させる吐出口223とを有し、前記ロータ3は、複数の前記インペラ30に対して前記軸方向Daの第一側Da1に配置されたバランスピストン50を有し、前記バランスピストン50は、最も前記軸方向Daの第一側Da1に配置された前記インペラ30に接触するピストン軸部51と、前記ピストン軸部51に対して前記径方向Drの外側に突出する受圧部52とを有し、前記受圧部52は、前記軸方向Daの第一側Da1を向く第一受圧面521と、前記軸方向Daの第二側Da2を向く第二受圧面522とを有し、前記ケーシング2は、前記第一受圧面521が配置されて前記吐出口223と連通する第一空間S1と、前記第二受圧面522が配置されて前記吸込口221と連通する第一空間S1と、有していてもよい。
【0084】
これにより、吸込口221に比べて吐出口223の圧力は非常に高いため、受圧部52では、第一受圧面521から第二受圧面522に向かうように軸方向Daの第一側Da1から第二側Da2への力が生じる。一方で、インペラ30を流れるガスは上流に対して下流の方が圧縮されているために圧力が高くなっている。そのため、複数のインペラ30では、軸方向Daの第二側Da2から第一側Da1への力がガスによって生じる。その結果、複数のインペラ30に働くガスによって生じる力の一部が、受圧部52を介してバランスピストン50に作用する反対向きの力によって打ち消される。これにより、ロータ3に作用するスラスト力(軸方向Daの力)を低減し、スラスト軸受を小さくすることができる。また、複数のインペラ30及を固定しているボルト71に軸方向Daの外側に広がるような力が作用してしまうことを抑えることができる。その結果、ボルト71の締め付け力を抑えてもディスク4の接触面同士の面圧を保つことができ、安定してトルクを伝達することができ、ボルト孔44の径を小さくすることができる。ボルト孔44が小さくなることで、ディスク4の強度を向上させることができる。これにより、ロータ3を高速回転させた際の遠心力に対するロータ3の強度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0085】
1 圧縮機
2 ケーシング
21 外部ケーシング
211 端板
212 挿通孔
22 ダイアフラム
221 吸込口
222 ケーシング流路
223 吐出口
23 ヘッド
231 吸込側ヘッド
232 吐出側ヘッド
3 ロータ
30 インペラ
31 第一インペラ
32 第二インペラ
4 ディスク
41 ディスク軸部
43 ディスク面
435 当接面
436 非当接面
44 ボルト孔
45 ディスク嵌合部
451 嵌合凸部
452 嵌合凹部
42 ディスク外周部
34 ブレード
35 カバー
301 インペラ流路
41A 第一ディスク軸部
41B 第二ディスク軸部
431 第一ディスク面
432 第二ディスク面
48 第二ディスク軸部本体
481 第一ナット収容凹部
49 第二ディスク延長部
491 ネジ穴
50 バランスピストン
51 ピストン軸部
54 第一ピストン面
541 第二ナット収容凹部
55 第二ピストン面
551 ピストン側凹部
56 ピストンボルト孔
52 受圧部
521 第一受圧面
S1 第一空間
522 第二受圧面
S2 第二空間
59 接続配管
53 ピストン延長部
531 スラストカラー
60 カップリングハブ
61 ボルト挿通孔
62 固定ボルト
63 カービックカップリング
70 ボルト固定部
71 ボルト
72 ナット
8 シール部
81 第一シール部
82 第二シール部
83 第三シール部
9 軸受部
91 第一軸受部
92 第二軸受部
95 軸受ホルダー
93 第三軸受部
96 軸受カバー
100 バンドル
O 軸線
Da 軸方向
Da1 第一側
Da2 第二側
Dr 径方向
Dc 周方向