(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】タイヤ滑り止め装置
(51)【国際特許分類】
B60C 27/06 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B60C27/06 E
B60C27/06 A
(21)【出願番号】P 2021036077
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】391021226
【氏名又は名称】株式会社カーメイト
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】田辺 茂
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-191732(JP,A)
【文献】特開2009-029188(JP,A)
【文献】特開2019-077284(JP,A)
【文献】特開平01-306307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 27/00 ― 27/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のタイヤトレッド面に配置されるトレッド部と、前記トレッド部の長手方向に沿って複数、所定の間隔で配置され、幅方向に延設された内側脚部と、外側脚部とを有し、ワイヤの巻き取りにより前記トレッド部、前記内側脚部、及び前記外側脚部をタイヤに密着させる構造を有するタイヤ滑り止め装置であって、
複数の前記内側脚部の先端部は、予め定められた長さを有するワイヤに対して予め定められた間隔を持って配置され、
複数の前記外側脚部の先端部は、巻取手段により巻き取り可能なワイヤを挿通可能なワイヤ挿通部を有する
と共に、
前記内側脚部の先端部を固定するワイヤと、前記外側脚部の先端部を挿通するワイヤとにはそれぞれ、各脚部間に位置する部位にチューブ状部材が配置され、
前記外側脚部の先端部を挿通するワイヤに配置されるチューブ状部材の長さは、前記内側脚部の先端部を固定するワイヤに配置されるチューブ状部材の長さよりも短く設定していることを特徴とするタイヤ滑り止め装置。
【請求項2】
前記外側脚部の先端部を挿通するワイヤに装着されるチューブ状部材の長さは、装着を想定するタイヤサイズのうち、最も小さなサイズのタイヤへ装着した際に前記外側脚部の先端部間の距離に合わせて定められていることを特徴とする
請求項1に記載のタイヤ滑り止め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ滑り止め装置に係り、特に、汎用性を有し、ワイヤによる締め付け構造を有する場合に好適なタイヤ滑り止め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤによる締め付け構造を持つタイヤ滑り止め装置として本願出願人は、特許文献1や特許文献2に開示されているような構造のものを提案している。特許文献1や特許文献2に開示されているタイヤ滑り止め装置は、タイヤのトレッド面に接触するトレッド部と、トレッド部から延設されてタイヤのサイド部分に接触することとなる脚部とを備えるという基本形態を有するものである。このような基本構成を有するタイヤ滑り止め装置では、タイヤの内側及び外側に位置することとなる脚部には、長さが定められたワイヤが配置され、トレッド部の端部に設けられたワイヤを巻き取ることで、タイヤ滑り止め装置をタイヤに密接させる構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-112982号公報
【文献】特開2019-77284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
確かに、特許文献1や特許文献2に開示されているような構造であれば、タイヤ滑り止め装置をタイヤに密着させ、その効果を発揮させる事はできると考えられる。しかし、このような締め付け構造のタイヤ滑り止め装置では、トレッド部の端部の隙間で装着状態が調整される。このため、タイヤのサイズによっては装着時に1箇所、大きく隙間が開いてしまう場合がある。また、タイヤの外側に設けた巻取手段によるワイヤの巻き取りでタイヤの内側と外側の双方の締め付けを成すこととなるため、締付力が分散し、締付力をかけ辛く、装着安定性が確保しづらくなる場合もある。
【0005】
そこで本発明では、装着可能なタイヤサイズに幅を持たせつつトレッド部の隙間の均等化を実現し、装着安定性も確保しやすい構造を有するタイヤ滑り止め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係るタイヤ滑り止め装置は、車両のタイヤトレッド面に配置されるトレッド部と、前記トレッド部の長手方向に沿って複数、所定の間隔で配置され、幅方向に延設された内側脚部と、外側脚部とを有し、ワイヤの巻き取りにより前記トレッド部、前記内側脚部、及び前記外側脚部をタイヤに密着させる構造を有するタイヤ滑り止め装置であって、複数の前記内側脚部の先端部は、予め定められた長さを有するワイヤに対して予め定められた間隔を持って配置され、複数の前記外側脚部の先端部は、巻取手段により巻き取り可能なワイヤを挿通可能なワイヤ挿通部を有することを特徴とする。
【0007】
また、上記特徴を有するタイヤ滑り止め装置では、前記内側脚部の先端部を固定するワイヤと、前記外側脚部の先端部を挿通するワイヤとにはそれぞれ、各脚部間に位置する部位にチューブ状部材が配置され、前記外側脚部の先端部を挿通するワイヤに配置されるチューブ状部材の長さは、前記内側脚部の先端部を固定するワイヤに配置されるチューブ状部材の長さよりも短く設定すると良い。このような特徴を有する事により、基準サイズよりも小さなサイズのタイヤにもタイヤ滑り止め装置を装着することが可能となる。
【0008】
さらに、上記特徴を有するタイヤ滑り止め装置では、前記外側脚部の先端部を挿通するワイヤに装着されるチューブ状部材の長さは、装着を想定するタイヤサイズのうち、最も小さなサイズのタイヤへ装着した際に前記外側脚部の先端部間の距離に合わせて定めるようにすることが望ましい。このような特徴を有する事によれば、適正装着可能なタイヤサイズの下限値を定める事ができる。
【発明の効果】
【0009】
上記のような特徴を有するタイヤ滑り止め装置によれば、装着可能なタイヤサイズに幅を持たせることができる。また、締付力が分散せず、装着安定性も確保しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るタイヤ滑り止め装置をタイヤに装着した状態を示す外側側面の斜視図である。
【
図2】実施形態に係るタイヤ滑り止め装置をタイヤに装着した状態を示す内側側面の斜視図である。
【
図3】実施形態に係るタイヤ滑り止め装置をタイヤに仮装着した状態を示す図である。
【
図4】実施形態に係るタイヤ滑り止め装置を基準サイズよりも小さなタイヤに装着した状態を示す図である。
【
図5】実施形態に係るタイヤ滑り止め装置を基準サイズよりも大きなタイヤに装着した状態を示す図である。
【
図6】サイズの異なるタイヤへタイヤ滑り止め装置を装着した際に生じるトレッド部や内側脚部、及び外側脚部の位置の変化を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のタイヤ滑り止め装置に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。まず、
図1、
図2を参照して、本実施形態に係るタイヤ滑り止め装置についての基本的な構成を説明する。なお、図面において
図1は、タイヤ滑り止め装置を装着したタイヤの外側(表側)側面を示す斜視図であり、
図2は、同内側(裏側)側面を示す斜視図である。
【0012】
[構成]
本実施形態に係るタイヤ滑り止め装置10は、トレッド部12と、内側脚部14、外側脚部16、巻取手段18、ワイヤ20,22、及びチューブ状部材24,26を基本として構成されている。トレッド部12は、タイヤ滑り止め装置10を車両のタイヤ50に装着した際、タイヤ50のトレッド面に配置されることとなる部位である。
図1、
図2に示す例のタイヤ滑り止め装置10のトレッド部12は、網目状パターン面を有し、外表面に滑り止め効果を奏するためのスタッド12aを複数備える構成とされている。
【0013】
タイヤ滑り止め装置10は、このような構成のトレッド部12を複数、タイヤのトレッド面に巻きつけるように配置することとなる。なお、隣接配置されるトレッド部12は、詳細を後述する内側脚部14と外側脚部16、及びワイヤ20,22を介して係合されている。
【0014】
内側脚部14は、トレッド部12を基点として、タイヤ50の幅方向(タイヤ滑り止め装置10の巻き付け方向と交差する方向)に延設される帯状パターンであり、タイヤ滑り止め装置10を車両のタイヤ50に装着した際、タイヤ50の内側側面に回り込むように配置される部位である。
【0015】
外側脚部16は、内側脚部14と同様に、トレッド部12を基点としてタイヤ50の幅方向に延設される帯状パターンであり、タイヤ滑り止め装置10を車両のタイヤ50に装着した際、タイヤ50の外側側面に回り込むように配置される部位である。
【0016】
図1、
図2に示す例では、2つのトレッド部12を1対の滑り止めパターン30として内側脚部14、及び外側脚部16を介して接続し、この滑り止めパターン30を2対づつ、合計で4対組み合わせる事で、1つのタイヤ滑り止め装置10を構成している。なお、連続配置する滑り止めパターン30を接続する場合には、隣接配置される滑り止めパターン30の内側脚部14、及び外側脚部16を係合させるようにしている。また、各内側脚部14、及び外側脚部16には、タイヤ50の円周方向、すなわちタイヤ滑り止め装置10の長手方向に沿ってワイヤ20,22が挿通されている。
【0017】
内側脚部14に挿通されているワイヤ20は、各内側脚部14の先端部14aに挿通されており、各内側脚部14の先端部14a間に位置するワイヤ20には、それぞれチューブ状部材24が配置されている。ワイヤ20が挿通されているチューブ状部材24は、隣接配置される先端部14a間の距離を定めるように構成されている。また、内側脚部14の先端部14aに挿通されるワイヤ20の端部は、係合手段20aを介して係合されることで、ワイヤ20が全体としてリング状を成すこととなる。ここで、ワイヤ20が挿通するチューブ状部材24は、樹脂などにより構成されており、ワイヤ20がホイール52等に接触する事を防止するための保護部材としての役割も果たす。
【0018】
外側脚部16の先端部16aには、固定部16a1と挿通部16a2が定められている。固定部16a1は、外側脚部16の先端部16aのうちの少なくとも1つ(
図1に示す例では2つ)に定められるものであり、締め付け用に用いるワイヤ22の一方の端部を固定する役割を担う。挿通部16a2は、固定部16a1以外の先端部16aであり、タイヤ50の円周方向、すなわちタイヤ滑り止め装置10の長手方向に沿って挿通させるワイヤ22の直径よりも大きな径を有する貫通孔17(
図6参照)を備える構成とされている。このような構成とすることで、貫通孔17に挿通させたワイヤ22は、自在に移動することができる。
【0019】
固定部16a1には、巻取手段18が備えられている。巻取手段18は、図示しない巻取ドラムから引き出されたワイヤ(巻取ワイヤ18a)を巻き取る事ができる装置であり、
図1に示す例では、外側脚部16の先端部16a(挿通部16a2)を挿通させているワイヤ22の延設方向と逆向きに巻取ワイヤ18aを引き出すように配置されている。巻取手段18から引き出された巻取ワイヤ18aは、ワイヤ22の端部に備えられた係合手段22aに係合されることとなる。これにより、外側脚部16の先端部16a(挿通部16a2)を挿通するワイヤ22も、内側脚部14の先端部14aを挿通するワイヤ20と同様に、その全体形状がリング状を成すこととなる。このような構成とした場合、巻取手段18により巻取ワイヤ18aを巻き取ることで、先端部16aを挿通するワイヤ22の全長(ワイヤ22と巻取ワイヤ18aを足した長さ)が短くなり、ワイヤ22と巻取ワイヤ18aにより構成されるリングの直径が小さくなる。このため、外側脚部16がタイヤ50の内周側に引っ張られるように窄み、タイヤ滑り止め装置10がタイヤ50に引き付けられ、装着状態が安定することとなる。
【0020】
外側脚部16の先端部16aの間に位置するワイヤ22には、それぞれチューブ状部材26が備えられている。チューブ状部材26を構成する部材としては、内側脚部14を挿通するワイヤ20に配置されるチューブ状部材24と同様に樹脂などとすれば良い。各チューブ状部材26の長さは、内側脚部14のワイヤ20に配置されたチューブ状部材24よりも短くなるように構成されている。このような構成とすることによれば、タイヤ滑り止め装置10を装着するタイヤの直径が基準サイズよりも小さなものであった場合でも、外側脚部16(先端部16a)の配置位置を均等に維持しつつワイヤ22の巻き取りによる締め付けを行う事が可能となる。
【0021】
[作用・効果]
上記のような特徴を有するタイヤの滑り止め装置10は、次のようにしてタイヤ50へ装着される。まず、内側脚部14、及び外側脚部16を挿通しているワイヤ20,22に設けられているそれぞれの係合手段20a,22aによるワイヤ20,22の係合を解除した状態でタイヤ滑り止め装置10をタイヤ50の外周に配置し、内側脚部14を挿通しているワイヤ20の端部に備えられた係合手段20aによりワイヤ20を係合する。次に、外側脚部16を挿通しているワイヤ22の他方の端部を係合手段22aを介して巻取ワイヤ18aの先端に係合させる。これにより、タイヤ滑り止め装置10は、
図3に示すように、仮装着された状態となる。
【0022】
仮装着された状態から、巻取手段18により巻取ワイヤ18aを巻き取る事で、タイヤ滑り止め装置10の締め付けが成され、タイヤ50に対する装着状態が安定する。
【0023】
このような構成のタイヤ滑り止め装置10では、内側脚部14(先端部14a)の位置が、ワイヤ20の長さにより固定されることとなる。このため、特許文献2に開示されているタイヤ締付装置のようにタイヤの内側と外側で同時に締付が成される場合に比べて締付力の分散が生じ難くなる。よって、外側脚部16側において巻取ワイヤ18aを巻き取る際に締付力をかけ易くなり、装着安定性を向上させることができる。
【0024】
また、このような構成のタイヤ滑り止め装置10は、巻取ワイヤ18aの巻き取りによる締め付け量を変える事により、タイヤ50のサイズが基準サイズよりも大きい場合、あるいは小さい場合にも無理無く装着することが可能となる。
【0025】
例えば
図4に示すように、基準サイズよりも小さなタイヤ50aにタイヤ滑り止め装置10を装着した場合、
図6(B)に示すように、トレッド部12がタイヤ50aのトレッド面の中心よりもやや外側(図中左側)に寄ることとなる。このため、外側脚部16の先端部16a(固定部16a1、挿通部16a2)間の距離が近接し、チューブ状部材26と先端部16aとの隙間が小さくなる(
図4に示す例では、隙間が殆ど無い)。ここで、チューブ状部材26の長さを、タイヤ滑り止め装置10の装着を想定するタイヤサイズのうち、最も小さなサイズのタイヤに装着した際に先端部16aが位置する距離に合わせた長さとした場合、チューブ状部材26の長さにより、適正装着可能なタイヤサイズの下限値を定める事ができる。
【0026】
なお、
図6において、
図6(A)は、基準サイズのタイヤ50にタイヤ滑り止め装置10を装着した状態を示す部分断面図であり、図中対を成す破線で示す範囲がトレッド部12の幅である。
【0027】
一方、基準サイズよりも大きなタイヤ50bにタイヤ滑り止め装置10を装着した場合、
図6(C)に示すように、トレッド部12は、タイヤ50bのトレッド面の中心よりもやや内側(図中右側)に寄ることとなる。このため、外側脚部16の先端部16a(固定部16a1、挿通部16a2)間の距離は離間し、チューブ状部材26と先端部16aとの隙間が大きくなる。
【0028】
このように、装着するタイヤ50,50a,50bのサイズによって装着状態に若干の違いが生じるものの、いずれの場合であっても、トレッド部12がタイヤ50,50a,50bのトレッド面に接している事から、滑り止め装置10としての効果を奏する事ができることに変わりは無い。
【0029】
また、外側脚部16に挿通させたワイヤ22に配置したチューブ状部材26の長さを、内側脚部14に挿通させたワイヤ20に配置したチューブ状部材24の長さよりも短くしたことにより、外側脚部16の先端部16a間の距離を基準サイズのタイヤ50に装着した際の締め付け時の距離よりも小さくすることができる。よって、基準サイズのタイヤ50よりも小さなサイズのタイヤ50aであっても十分な締付力を付与することが可能となる。
【0030】
本実施形態に係るタイヤ滑り止め装置10は、巻取ワイヤ18aの巻き取りによりワイヤ22と巻取ワイヤ18aにより構成されるリングの全長が変化した際、複数の外側脚部16の先端部16aの配置位置が均等に近づくように変化する。このため、固定位置にある内側脚部14との位置関係に対する変化が少なく、トレッド部12や内側脚部14、及び外側脚部16に捻じれ等の歪みが生じ難い。よって、タイヤ滑り止め装置10の劣化を抑制することができる。
【符号の説明】
【0031】
10………タイヤ滑り止め装置、12………トレッド部、12a………スタッド、14………内側脚部、14a………先端部、16………外側脚部、16a………先端部、16a1………固定部、16a2………挿通部、17………貫通孔、18………巻取手段、18a………巻取ワイヤ、20,22………ワイヤ、20a,22a………係合手段、24,26………チューブ状部材、30………滑り止めパターン、50………タイヤ、50a………小さなタイヤ、50b………大きなタイヤ、52………ホイール。