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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】走行支援方法及び走行支援装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240920BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20240920BHJP
   B60W 30/095 20120101ALI20240920BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G09B29/00 Z
B60W30/095
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021038449
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2022138524
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 博幸
(72)【発明者】
【氏名】武井 翔一
(72)【発明者】
【氏名】土谷 千加夫
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/073511(WO,A1)
【文献】特開2020-097276(JP,A)
【文献】特開2020-196399(JP,A)
【文献】特開2020-185991(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0216431(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G09B 29/00
B60W 30/095
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行方向前方の交差点内を直進走行する際の自車両の走路を設定する走行支援装置に係る走行支援方法であって、
前記走行支援装置は、コントローラを備え、
前記コントローラは、
前記自車両の前方で、前記自車両が走行する自車線と交差する交差道路を検出し、
前記自車線の進行方向を基準として、
前記自車線から前記交差道路への入口における、前記自車線の左側の境界の位置を、第1境界位置として検出し、
前記交差道路から前記自車線への出口における、前記自車線の左側の境界の位置を、第2境界位置として検出し、
前記自車線の左側に位置する、前記交差道路の中央分離帯を検出し、
前記中央分離帯から右側に第1距離だけ離れており、且つ、前記第1境界位置と前記第2境界位置を結ぶ線分よりも左側に位置する仮想端点を設定し、
前記交差道路上で前記自車線に対して右側において隣接する隣接車線を、前記自車線に対向する他車両が走行する場合に、前記第1境界位置、前記第2境界位置、及び、前記仮想端点に基づいて前記走路を設定すること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項2】
請求項1に記載された走行支援方法であって、
前記コントローラは、
前記第1境界位置での前記自車線の進行方向と前記第1境界位置から前記仮想端点まで向かう方向がなす角を、前記第1境界位置から前記仮想端点までの距離で除算して得られる第1比率、及び、
前記第1境界位置から前記仮想端点まで向かう方向と前記仮想端点から前記第2境界位置まで向かう方向がなす角を、前記仮想端点から前記第2境界位置までの距離で除算して得られる第2比率、
が共に所定閾値以下となるよう、前記第1距離を設定して前記走路を設定すること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された走行支援方法であって、
前記コントローラは、
前記中央分離帯と前記走路とを離間するためのマージン距離を含む前記第1距離を設定する際、
前記自車両の周囲の道路情報に基づいて、前記中央分離帯が路面上に付された道路標示であるか否かを判定し、
前記中央分離帯が前記道路標示でないと判定される場合の前記マージン距離と比較して、前記中央分離帯が前記道路標示であると判定される場合の前記マージン距離を小さくすること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載された走行支援方法であって、
前記コントローラは、
前記隣接車線を検出し、
前記線分と前記隣接車線の間の距離が第2距離以上であるか否かを判定し、
前記線分と前記隣接車線の間の距離が前記第2距離以上であると判定された場合には、前記線分に基づいて前記走路を設定すること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載された走行支援方法であって、
前記コントローラは、
前記自車線の進行方向を基準として、前記交差道路上で前記自車線よりも右側に位置する隣接車線を検出し、
設定された前記走路と前記隣接車線の間の距離が第2距離以上であるか否かを判定し、
設定された前記走路と前記隣接車線の間の距離が第2距離以上でないと判定された場合には、前記第1距離を減少させて、再度、前記走路を設定すること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載された走行支援方法であって、
前記走路の境界は、2次以上のスプライン関数、シグモイド関数、正弦関数の少なくともいずれかによって構成された線であること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項7】
進行方向前方の交差点内を直進走行する際の自車両の走路を設定する走行支援装置であって、
前記走行支援装置は、コントローラを備え、
前記コントローラは、
前記自車両の前方で、前記自車両が走行する自車線と交差する交差道路を検出し、
前記自車線の進行方向を基準として、
前記自車線から前記交差道路への入口における、前記自車線の左側の境界の位置を、第1境界位置として検出し、
前記交差道路から前記自車線への出口における、前記自車線の左側の境界の位置を、第2境界位置として検出し、
前記自車線の左側に位置する、前記交差道路の中央分離帯を検出し、
前記中央分離帯から右側に第1距離だけ離れており、且つ、前記第1境界位置と前記第2境界位置を結ぶ線分よりも左側に位置する仮想端点を設定し、
前記交差道路上で前記自車線に対して右側において隣接する隣接車線を、前記自車線に対向する他車両が走行する場合に、前記第1境界位置、前記第2境界位置、及び、前記仮想端点に基づいて前記走路を設定すること
を特徴とする走行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行支援方法及び走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点を実際に走行した車両の走行軌跡に基づいて、交差点の入口のノードと出口のノードの間のリンクを生成し、生成したリンク毎に正当なリンクである確率を評価することにより、交差点の構造を推定する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-75905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術によれば、交差点において正しい車線を走行した車両の走行軌跡が得られれば、正しい交差点の構造を推定することができる。しかしながら、実際には、複雑な構造を有する交差点において、正しい車線を車両が走行していない場合もある。そのため、交差点を実際に走行した車両の走行軌跡に基づいたとしても、正しい交差点の構造を推定することができない恐れがある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、正しい交差点の構造を推定し、交差点での円滑な交通を実現できる走行支援方法及び走行支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した問題を解決するために、本発明の一態様に係る走行支援方法及び走行支援装置は、自車両の前方で、自車両が走行する自車線と交差する交差道路を検出し、自車線から交差道路への入口における自車線の左側の境界の位置を第1境界位置として検出し、交差道路から自車線への出口における自車線の左側の境界の位置を第2境界位置として検出する。そして、交差道路の中央分離帯から第1距離だけ離れた仮想端点を設定し、第1境界位置、第2境界位置、及び、仮想端点に基づいて、交差点内での自車両の走路を設定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、正しい交差点の構造を推定し、交差点での円滑な交通を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る走行支援装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る走行支援装置の処理を示すフローチャートである。
図3図3は、交差点での道路標示及び設定される走路に関する例を示す図である。
図4図4は、図3の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。説明において、同一のものには同一符号を付して重複説明を省略する。
【0010】
[走行支援装置の構成]
図1は、本実施形態に係る走行支援装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る走行支援装置は、自車両の周囲の道路情報を取得する取得部(撮像部71、車載センサ73、地図情報取得部75)と、コントローラ100とを備え、コントローラ100は、有線あるいは無線の通信路によって、撮像部71、車載センサ73、地図情報取得部75、車両制御装置400と接続されている。
【0011】
なお、撮像部71、車載センサ73、車両制御装置400は、自車両に搭載されるが、地図情報取得部75、コントローラ100は、車両に搭載されるものであってもよいし、車両の外部に設置されるものであってもよい。
【0012】
撮像部71は、自車両の周囲の画像を撮像する。例えば、撮像部71はCCD、CMOS等の固体撮像素子を備えたデジタルカメラであり、車両の周囲を撮像して周辺領域のデジタル画像を取得する。撮像部71は、焦点距離、レンズの画角、カメラの垂直方向及び水平方向の角度などが設定されることにより、車両の周囲の所定の範囲を撮像する。
【0013】
なお、撮像部71によって撮像された撮像画像はコントローラ100に出力され、所定の期間の間、図示しない記憶部に記憶される。例えば、撮像部71は所定の時間間隔で撮像画像を取得しており、所定の時間間隔で取得した撮像画像が、過去画像として記憶部に記憶される。過去画像は、当該過去画像の撮像時点から所定の期間を経過した後に削除されるものであってもよい。
【0014】
また、撮像部71は、車両の周囲に存在する標識(道路標識や、路面に付された道路標示)やガイドレール等を検出するものであってもよい。
【0015】
車載センサ73は、車両に搭載された、レーザレーダやミリ波レーダ、カメラなど、車両の周囲に存在する物体を検出する物体検出センサなどからなる。車載センサ73は、複数の異なる種類の物体検出センサを備えるものであってもよい。
【0016】
車載センサ73は、車両の周囲の環境を検出する。例えば、車載センサ73は、自車両から検出性能(センサの性能によって決まる検出可能距離)によって定められる所定距離内の他車両、バイク、自転車、歩行者を含む移動物体、及び停車車両を含む静止物体を検出し、移動物体及び静止物体の車両に対する位置、姿勢、大きさ、速度、加速度、減速度、ヨーレートなどを検出するものであってもよい。車載センサ73は、検出結果として、例えば車両の上方の空中から眺めた天頂図(平面図ともいう)における、2次元の物体の挙動を出力するものであってもよい。
【0017】
また、車載センサ73は、車両の周囲に存在する標識(道路標識や、路面に付された道路標示)やガイドレール等を検出するものであってもよい。その他にも、車載センサ73は、車両が備える車輪の回転速度や回転速度差を検出して、車両が走行している車線の路面の滑りやすさを検出するものであってもよい。
【0018】
また、車載センサ73は、車両の周囲の環境の他にも、車両の状態を検出する。例えば、車載センサ73は、車両の移動速度(前後方向、左右方向の移動速度、旋回速度)や、車両が備える車輪の転舵角、転舵角の変化速度を検出するものであってもよい。
【0019】
その他、車載センサ73は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)やオドメトリなど車両の絶対位置を計測する位置検出センサなど、車両の絶対位置を計測する位置検出センサを用いて、車両の絶対位置、すなわち、所定の基準点に対する車両の位置、姿勢及び速度を計測するセンサを含んでいてもよい。
【0020】
地図情報取得部75は、車両が走行する道路の構造を示す地図情報を取得する。地図情報取得部75が取得する地図情報には、信号機の位置情報や、信号機の種別、信号機に対応する停止線の位置などが含まれうる。地図情報取得部75は、地図情報を格納した地図データベースを所有してもよいし、クラウドコンピューティングにより地図情報を外部の地図データサーバから取得してもよい。また、地図情報取得部75は、車車間通信、路車間通信を用いて地図情報を取得してもよい。
【0021】
地図情報取得部75が取得する地図情報には、車線の絶対位置、車線の接続関係、相対位置関係などの道路構造の情報が含まれていてもよい。また、地図情報取得部75が取得する地図情報には、駐車場、ガソリンスタンドなどの施設情報も含まれていてもよい。
【0022】
自車両の周囲の道路情報は、撮像部71によって撮像された画像、車載センサ73によって得られた情報、地図情報取得部75によって得られた地図情報によって構成される。その他、自車両の周囲の道路情報は、取得部によって取得される以外にも、車車間通信、路車間通信によって、自車両の外部から取得されるものであってもよい。
【0023】
車両制御装置400は、コントローラ100によって得られた結果に基づいて、自車両を制御する。例えば、車両制御装置400は、所定の走行経路に従って自動運転によって車両を走行させるものであってもよいし、車両の乗員の運転操作を支援するものであってもよい。
【0024】
コントローラ100(制御部または処理部の一例)は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。コントローラ100には、走行支援装置の一部として機能させるためのコンピュータプログラム(走行支援プログラム)がインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、コントローラ100は、走行支援装置が備える複数の情報処理回路(110、120、130、140、170、180、190)として機能する。なお、コンピュータプログラム(走行支援プログラム)は、コンピュータによって読み書き可能な記録媒体に格納されるものであってもよい。
【0025】
なお、ここでは、ソフトウェアによって走行支援装置が備える複数の情報処理回路(110、120、130、140、170、180、190)を実現する例を示す。ただし、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路(110、120、130、140、170、180、190)を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路(110、120、130、140、170、180、190)を個別のハードウェアにより構成してもよい。更に、情報処理回路(110、120、130、140、170、180、190)は、車両にかかわる他の制御に用いる電子制御ユニット(ECU)と兼用してもよい。
【0026】
コントローラ100は、複数の情報処理回路(110、120、130、140、170、180、190)として、道路標示検出部110、境界検出部120、中央分離帯検出部130、仮想端点設定部140、判定部170、走路設定部180、出力部190を備える。
【0027】
道路標示検出部110は、自車両の周囲の道路情報に基づいて、自車両の前方の道路標示を検出する。例えば、道路標示検出部110は、撮像部71によって撮像された撮像画像に基づいて、自車両の前方の路面に付された道路標示を検出する。撮像画像から道路標示を検出する方法としては、パターンマッチング、エッジ検出、テクスチャー解析、領域分割など、種々の方法を用いることができる。
【0028】
道路標示検出部110によって検出される道路標示としては、例えば、ゼブラゾーン(ゼブラ模様の標示)や、矢印、車線境界線(路面上の白線)などが挙げられる。ゼブラゾーンは、「安全地帯又は路上障害物に接近」、「導流帯」、「中央分離帯」、「横断歩道」などを示すために道路に付される。矢印は、車線における車両の進行方向を示すために道路に付される。
【0029】
境界検出部120は、自車両の周囲の道路情報に基づいて、自車両の前方の交差点を検出する。そして、境界検出部120は、当該交差点において、自車両が走行する自車線と交差する交差道路を検出する。例えば、境界検出部120は、道路標示検出部110によって検出された道路標示に基づいて、交差道路を検出するものであってもよい。
【0030】
境界検出部120は、地図情報に基づいて交差道路を検出するものであってもよい。境界検出部120は、自車両の前方において、自車線を横切る他車両が存在する場合に、当該他車両が自車線を横切る個所を交差道路として検出するものであってもよい。その他、境界検出部120は、道路標識に基づいて交差道路を検出するものであってもよい。
【0031】
さらに、境界検出部120は、自車線の進行方向を基準として、自車線から交差道路への入口における、自車線の左側の境界の位置を、第1境界位置として検出する。境界検出部120は、交差道路から自車線への出口における、自車線の左側の境界の位置を、第2境界位置として検出する。
【0032】
例えば、境界検出部120は、自車線の進行方向を基準として、自車両の前方で自車線と交差道路とが交差する領域のうち最も手前にある辺を入口、最も奥にある辺を出口として抽出するものであってもよい。そして、境界検出部120は、道路標示検出部110によって検出された道路標示のうち、当該入口において左側に位置する車線境界線の位置を第1境界位置として検出し、当該出口において左側に位置する車線境界線の位置を第2境界位置として検出するものであってもよい。
【0033】
例えば、図3では、自車両VSが走行する自車線TL6と交差道路が、自車両VSの前方で交差している状況が示されている。ここで、交差道路は、交差車線TL1、交差車線TL2、及び、中央分離帯CZで構成されている。また、自車線TL6に、隣接車線TL5が隣接している。図4には、図3の領域R1を拡大した図が示されている。
【0034】
図3に示す例において、境界検出部120は、位置P1を第1境界位置として検出し、位置P3を第2境界位置として検出する。
【0035】
境界検出部120は、自車両の周囲の道路情報に基づいて、自車両が走行する自車線に加えて、自車線に隣接する隣接車線を検出するものであってもよい。例えば、境界検出部120は、道路標示(例えば、ゼブラゾーン、車線境界線など)に基づいて隣接車線を検出するものであってもよい。また、境界検出部120は、自車線の進行方向を基準として、交差道路上で自車線よりも右側に位置する隣接車線を検出するものであってもよい。
【0036】
中央分離帯検出部130は、自車両の周囲の道路情報に基づいて、交差道路の中央分離帯を検出する。図3に示す例において、中央分離帯検出部130は、交差道路を検出した後、自車両の周囲の道路情報に基づいて中央分離帯CZを検出する。
【0037】
中央分離帯検出部130は、道路標示検出部110によって検出された道路標示のうち、「中央分離帯」を示すゼブラゾーンに基づいて、中央分離帯を検出するものであってもよい。その他、中央分離帯検出部130は、道路情報に基づいて、交差点近傍に位置するガイドレール、ポールなどの静止物体を抽出し、当該静止物体に基づいて中央分離帯を検出するものであってもよい。
【0038】
中央分離帯検出部130は、自車線の進行方向を基準として、自車両が走行する道路の左側に位置する交差道路における中央分離帯を検出するものであってもよい。
【0039】
仮想端点設定部140は、中央分離帯から第1距離だけ離れた仮想端点を設定する。より具体的には、仮想端点設定部140は、自車線の進行方向を基準として、中央分離帯の先端部から右側に第1距離だけ離れた仮想端点を設定する。
【0040】
図3及び図4に示す例において、仮想端点設定部140は、中央分離帯CZから距離L1だけ離れた位置P2を、仮想端点として設定する。
【0041】
なお、仮想端点を設定する際の第1距離には、中央分離帯と自車両が交差点内で走行するための走路とを離間するためのマージン距離が含まれていてもよい。マージン距離が大きいほど、自車両が交差点内を走行する際の走行軌跡は、中央分離帯から離れることになる。
【0042】
その他、自車両の周囲の道路情報に基づいて、中央分離帯が路面上に付された道路標示であるか否かを判定し、仮想端点設定部140は、中央分離帯が道路標示でないと判定される場合のマージン距離と比較して、中央分離帯が道路標示であると判定される場合のマージン距離を小さく設定するものであってもよい。
【0043】
判定部170は、第1境界位置、第2境界位置、及び、仮想端点に基づいて決定される比率が、所定閾値以下であるか否かを判定する。
【0044】
より具体的には、判定部170は、第1境界位置での自車線の進行方向と第1境界位置から仮想端点まで向かう方向がなす角を、第1境界位置から仮想端点までの距離で除算して第1比率を算出し、第1比率が所定閾値以下であるか否かを判定する。図4に示す例では、判定部170は、角度θ1を位置P1と位置P2の間の距離で除算して第1比率を算出する。
【0045】
また、判定部170は、第1境界位置から仮想端点まで向かう方向と仮想端点から第2境界位置まで向かう方向がなす角を、仮想端点から第2境界位置までの距離で除算して第2比率を算出し、第2比率が所定閾値以下であるか否かを判定する。図4に示す例では、判定部170は、角度θ2を位置P2と位置P3の間の距離で除算して第2比率を算出する。
【0046】
なお、第1比率が所定閾値以下でない、又は、第2比率が所定閾値以下でない、と判定された場合には、判定部170は、仮想端点設定部140における第1距離を増加させるものであってもよい。その後、仮想端点設定部140は、新たに設定された第1距離に基づいて仮想端点を更新するものであってもよい。判定部170は、更新後の仮想端点に基づいて、第1比率及び第2比率を再計算するものであってもよい。すなわち、第1比率及び第2比率が所定閾値以下となるまで、仮想端点の更新が行われるものであってもよい。
【0047】
また、判定部170は、第1境界位置と第2境界位置を結ぶ線分と隣接車線の間の距離が第2距離以上であるか否かを判定するものであってもよい。さらに、判定部170は、後述する走路設定部180によって設定された走路と隣接車線の間の距離が第2距離以上であるか否かを判定するものであってもよい。
【0048】
なお、第2距離は、自車両が交差点内で走行するための走路を隣接車線から離間するために設定される距離である。隣接車線を走行する他車両の進行方向、及び、自車両が交差点内を走行する際の進行方向が同じである場合に設定される第2距離と比較して、両進行方向が逆向きである場合の第2距離は大きく設定されるものであってもよい。これにより、隣接車線を走行する他車両から自車両をより確実に離間させることができる。
【0049】
設定された走路と隣接車線の間の距離が第2距離以上でないと判定された場合には、判定部170は、仮想端点設定部140における第1距離を減少させるものであってもよい。その後、仮想端点設定部140は、新たに設定された第1距離に基づいて仮想端点を更新するものであってもよい。判定部170は、更新後の仮想端点に基づいて、第1比率及び第2比率を再計算するものであってもよい。すなわち、設定された走路と隣接車線の間の距離が第2距離以上となるまで、仮想端点の更新が行われるものであってもよい。
【0050】
その他、判定部170は、自車両の周囲の道路情報に基づいて、中央分離帯が路面上に付された道路標示であるか否かを判定するものであってもよい。
【0051】
走路設定部180は、第1境界位置、第2境界位置、及び、仮想端点に基づいて、交差点内での自車両の走路を設定する。より具体的には、走路設定部180は、第1境界位置、第2境界位置、及び、仮想端点を通過する左走路境界線BLを設定する。そして、自車線の進行方向を基準として右側に、左走路境界線BLから自車両又自車線の幅だけ離間した位置に右走路境界線BRを設定する。走路設定部180は、左走路境界線BL及び右走路境界線BRで挟まれた領域を、交差点内での自車両の走路として設定する。
【0052】
図3には、走路設定部180によって設定される左走路境界線BL及び右走路境界線BRの一例が示されている。図3に示す例では、左走路境界線BLは、位置P1と位置P2を結ぶ線分と、位置P2と位置P3を結ぶ線分と、から構成されている。すなわち、走路設定部180は、第1境界位置、第2境界位置、及び、仮想端点を線分で結んで得られる境界線(1次のスプライン関数によって構成される線)を、左走路境界線BLとして設定するものであってもよい。
【0053】
また、走路設定部180は、2次以上のスプライン関数、シグモイド関数、正弦関数の少なくともいずれかによって構成される線を左走路境界線BLとして設定するものであってもよい。これらの関数によって構成される左走路境界線BLは、線分によって構成された左走路境界線BLよりも滑らかになる。したがって、これらの関数によって構成される左走路境界線BLによって定まる走路を走行する車両の軌跡は、より滑らかになる。
【0054】
さらに、走路設定部180は、自車線の進行方向を基準として右側に、左走路境界線BLから自車両又自車線の幅だけ離れた位置に左走路境界線BLを平行移動させて得られる境界線を、右走路境界線BRとして設定するものであってもよい。
【0055】
また、判定部170によって、第1比率が所定閾値以下でないと判定された場合、又は、第2比率が所定閾値以下でないと判定された場合に、走路設定部180は、増加後の第1距離に基づいて更新された仮想端点に基づいて、再度、交差点内での自車両の走路を設定するものであってもよい。
【0056】
その他、判定部170によって、第1境界位置と第2境界位置を結ぶ線分と隣接車線の間の距離が第2距離以上であると判定された場合に、走路設定部180は、第1境界位置と第2境界位置を結ぶ線分に基づいて、交差点内での自車両の走路を設定するものであってもよい。
【0057】
また、判定部170によって、設定された走路と隣接車線の間の距離が第2距離以上でないと判定された場合に、走路設定部180は、減少後の第1距離に基づいて更新された仮想端点に基づいて、再度、交差点内での自車両の走路を設定するものであってもよい。
【0058】
その他、走路設定部180は、設定された走路内を通過する走行軌跡を設定するものであってもよい。
【0059】
出力部190は、走路設定部180によって設定された走路を出力する。走路は車両制御装置400に出力され、走路内の走行軌跡に基づいて自車両の走行が制御される。
【0060】
[走行支援装置の処理手順]
次に、本実施形態に係る走行支援装置の処理手順を、図2のフローチャートを参照して説明する。図2に示す走行支援装置の処理は、所定の周期で繰り返し実行されるものであってもよいし、取得部で自車両の周囲の道路情報を取得するたびに実行されるものであってもよい。
【0061】
まず、ステップS101において、取得部は、自車両の周囲の道路情報を取得する。
【0062】
ステップS103において、道路標示検出部110は、自車両の周囲の道路情報に基づいて、自車両の前方の道路標示を検出する。
【0063】
ステップS105において、境界検出部120は、交差点の入口及び出口での境界位置(第1境界位置、第2境界位置)を検出する。
【0064】
ステップS107において、中央分離帯検出部130は、自車両の周囲の道路情報に基づいて、交差道路の中央分離帯を検出する。
【0065】
ステップS109において、仮想端点設定部140は、中央分離帯から第1距離だけ離れた仮想端点を設定する。
【0066】
ステップS111において、判定部170は、第1境界位置、第2境界位置、及び、仮想端点に基づいて、第1比率及び第2比率を算出する。
【0067】
ステップS113において、判定部170は、第1境界位置、第2境界位置、及び、仮想端点に基づいて決定される比率が、所定閾値以下であるか否かを判定する。
【0068】
第1比率が所定閾値以下でない、又は、第2比率が所定閾値以下でない、と判定された場合(ステップS113でNOの場合)には、ステップS119において、仮想端点設定部140は、仮想端点を更新する。その後、ステップS111に戻る。
【0069】
一方、第1比率が所定閾値以下、かつ、第2比率が所定閾値以下、と判定された場合(ステップS113でYESの場合)には、ステップS115において、走路設定部180は、第1境界位置、第2境界位置、及び、仮想端点に基づいて、交差点内での自車両の走路を設定する。
【0070】
ステップS117において、出力部190は、走路設定部180によって設定された走路を出力する。
【0071】
[実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、自車両の前方で、自車両が走行する自車線と交差する交差道路を検出し、自車線から交差道路への入口における自車線の左側の境界の位置を第1境界位置として検出し、交差道路から自車線への出口における自車線の左側の境界の位置を第2境界位置として検出する。そして、交差道路の中央分離帯から第1距離だけ離れた仮想端点を設定し、第1境界位置、第2境界位置、及び、仮想端点に基づいて、交差点内での自車両の走路を設定する。
【0072】
これにより、正しい交差点の構造を推定し、交差点での円滑な交通を実現できる。特に、自車両が中央分離帯と接触することを防止しつつ、交差点内において車両が走行すべき走路を設定することができる。
【0073】
また、交差道路の中央分離帯を基準として仮想端点を設定するため、左側に寄った走路を設定できる。そのため、交差点を直進走行する際に自車両が走行する走路の右側を対向する他車両が走行する場合であっても、当該他車両と離間した位置を自車両が走行するよう自車両の走路を設定できる。したがって、交差点内での交通流を妨げることを抑制しつつ、自車両が中央分離帯と接触することを防止できる。
【0074】
さらに、交差点内に車両の走行をガイドする車線境界線がない場合、又は、当該車線境界線を検出しにくい場合であっても、車両が走行すべき走路を設定することができる。したがって、交差点内での交通流を妨げるような走行軌跡を設定する恐れが低減され、さらには、交通法規を順守した走行を行うことが可能となる。
【0075】
例えば、自車両の周囲の道路情報のうち、交差点内の道路標示は路面に付されているため、車両の走行によって摩耗して消えてしまいやすいという性質を有する。一方、交差道路と自車線の交差に関する情報は、地図情報の他、自車線を横切る他車両の存在や、交差点前後での自車線の車線境界線に基づいて取得でき、交差点内の道路標示に比べて確実に取得しやすい。したがって、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置によれば、自車両の周囲の道路情報に基づいていることにより、より迅速かつ正確な走路の設定を行うことが可能である。
【0076】
また、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、第1境界位置での自車線の進行方向と第1境界位置から仮想端点まで向かう方向がなす角を第1境界位置から仮想端点までの距離で除算して得られる第1比率が所定閾値以下となるよう、第1距離を設定して走路を設定するものであってもよい。また、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、第1境界位置から仮想端点まで向かう方向と仮想端点から第2境界位置まで向かう方向がなす角を仮想端点から第2境界位置までの距離で除算して得られる第2比率が所定閾値以下となるよう、第1距離を設定して走路を設定するものであってもよい。
【0077】
これにより、交差点を通過する際の車両の向きが急激に変化してしまうような走路が設定されることが抑制される。さらには、交差点を通過する車両や、当該車両に乗車する乗員、当該車両に搭載されている貨物などに、急激な負荷がかかることを抑制することができる。特に、中央分離帯と接触することを防止しつつ、交差点を通過する際の車両の向きが急激に変化してしまうような走路が設定されることが抑制される。
【0078】
さらに、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、中央分離帯と走路とを離間するためのマージン距離を含む第1距離を設定する際、自車両の周囲の道路情報に基づいて、中央分離帯が路面上に付された道路標示であるか否かを判定し、中央分離帯が道路標示でないと判定される場合のマージン距離と比較して、中央分離帯が道路標示であると判定される場合のマージン距離を小さくするものであってもよい。
【0079】
中央分離帯が路面上に付された道路標示である場合、中央分離帯に自車両が近づいても中央分離帯は自車両の走行に大きな影響を及ぼさない。そのため、このような場合になるべく中央分離帯に寄った走路を設定することで、交差点内での交通流を妨げることを抑制することができる。
【0080】
また、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、自車線の進行方向を基準として、交差道路上で自車線よりも右側に位置する隣接車線を検出し、第1境界位置と第2境界位置を結ぶ線分と隣接車線の間の距離が第2距離以上であるか否かを判定し、線分と隣接車線の間の距離が第2距離以上であると判定された場合には、線分に基づいて走路を設定するものであってもよい。
【0081】
これにより、自車両が交差点内で不必要に左側へ転舵することを抑制することができる。さらには、交差点を通過する際の車両の向きが急激に変化してしまうような走路が設定されることが抑制される。さらには、交差点を通過する車両等に急激な負荷がかかることを抑制することができる。
【0082】
さらに、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、自車線の進行方向を基準として、交差道路上で自車線よりも右側に位置する隣接車線を検出し、設定された走路と隣接車線の間の距離が第2距離以上であるか否かを判定し、設定された走路と隣接車線の間の距離が第2距離以上でないと判定された場合には、第1距離を減少させて、再度、走路を設定するものであってもよい。
【0083】
これにより、設定した走路では、交差道路上で自車線よりも右側に位置する隣接車線に近づきすぎてしまう場合に、走路を更新し、隣接車線を走行する他車両と自車両とが確実に離間させることができる。その結果、隣接車線を走行する他車両の走行による、自車両の走行への影響を抑制することができる。
【0084】
また、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置において、走路の境界は、2次以上のスプライン関数、シグモイド関数、正弦関数の少なくともいずれかによって構成された線であってもよい。これにより、交差点を通過する際の車両の向きが急激に変化してしまうような走路が設定されることが抑制される。特に、交差点の入口、仮想端点、交差点の出口を通過する際の車両の向きが急激に変化してしまうような走路が設定されることが抑制される。さらには、交差点を通過する車両等に急激な負荷がかかることを抑制することができる。
【0085】
上述の実施形態で示した各機能は、1又は複数の処理回路によって実装されうる。処理回路には、プログラムされたプロセッサや、電気回路などが含まれ、さらには、特定用途向けの集積回路(ASIC)のような装置や、記載された機能を実行するよう配置された回路構成要素なども含まれる。
【0086】
以上、実施形態に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0087】
本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0088】
71 撮像部
73 車載センサ
75 地図情報取得部
100 コントローラ
110 道路標示検出部
120 境界検出部
130 中央分離帯検出部
140 仮想端点設定部
170 判定部
180 走路設定部
190 出力部
400 車両制御装置
図1
図2
図3
図4