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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20240920BHJP
   F24C 3/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F24C3/12 A
F24C3/00 F
F24C3/12 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021047337
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146405
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】銅島 誠二
(72)【発明者】
【氏名】梅津 祥充
(72)【発明者】
【氏名】岩井 拓磨
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-153556(JP,A)
【文献】実開平05-064614(JP,U)
【文献】特開2004-356055(JP,A)
【文献】特開2018-035949(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0224130(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 1/00-1/28
F24C 3/10、3/12、15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナと、
前記バーナからの燃焼ガスによって被加熱物を加熱する加熱庫と、
前記加熱庫からの排気ガスが流れる排気ダクトと、
前記加熱庫の上方に配置されており、給気口を介して外部から流入して排気口を介して外部に流出する空気が通過する空気通路と、
前記空気通路内に配置される回路基板と、
前記空気通路内に配置される冷却ファンと、
前記空気通路内に配置される温度検出手段と、
制御部と、を備えており、
前記制御部は、前記冷却ファンを通常回転数で運転する冷却ファン通常運転制御と、前記バーナの点火から所定時間、又は、前記バーナの加熱運転中の所定時間である第1検出時間の間、前記通常回転数より低い回転数で前記冷却ファンを運転する冷却ファン制限運転制御を実行可能であり、
前記制御部は、前記冷却ファン制限運転制御の実行中に前記温度検出手段で検出される検出温度である第1検出温度が、所定の条件を満たすとき、前記冷却ファンに異常が生じていると判断し、前記バーナの火力を低減する、加熱調理器。
【請求項2】
前記所定の条件は、前記冷却ファン制限運転制御の実行直前に前記冷却ファン通常運転制御が実行されるときに、当該冷却ファン通常運転制御の実行中に前記温度検出手段で検出される検出温度である第2検出温度と、前記第1検出温度とに基づいて算出される判定値が所定範囲内であることを含む、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記所定の条件は、前記冷却ファン制限運転制御の実行後に続けて前記冷却ファン通常運転制御が実行されるときに、当該冷却ファン通常運転制御の実行中に前記温度検出手段で検出される検出温度である第2検出温度と、前記第1検出温度とに基づいて算出される判定値が所定範囲内であることを含む、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記判定値は、前記第1検出温度の時間変化率と、前記第2検出温度の時間変化率との間の差であり、
前記所定の条件は、前記差が所定範囲より小さいことを含む、請求項2又は3に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、加熱調理器が開示されている。加熱調理器は、バーナと、バーナからの燃焼ガスによって被加熱物を加熱する加熱庫と、加熱庫からの排気ガスが流れる排気ダクトと、加熱庫の上方に配置されており、給気口を介して外部から流入して排気口を介して外部に流出する空気が通過する空気通路と、空気通路内に配置される回路基板、冷却ファン及び温度検出手段と、を備えている。冷却ファンは、回路基板を冷却するために用いられる。温度検出手段は、空気通路内の温度を検出する。温度検出手段が高温であることを検出することによって、冷却ファンの異常が検知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-153556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような加熱調理器では、電源をオフにすると、それに伴い冷却ファンも停止することがある。バーナが点火された状態から電源がオフとなることで冷却ファンが停止した状態になると、空気通路内の温度が高温の状態のまま冷却ファンが停止する。その後、比較的短時間しか経過していないときに電源を再びオンにすると、温度検出手段で検出される検出温度が高温となる。このような場合には、冷却ファンに異常が生じていない場合であっても、検出温度に基づき冷却ファンが異常であると誤判定されることがあった。
【0005】
本明細書は、回路基板を冷却する冷却ファンの異常をより正確に検知する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示する加熱調理器は、バーナと、バーナからの燃焼ガスによって被加熱物を加熱する加熱庫と、加熱庫からの排気ガスが流れる排気ダクトと、加熱庫の上方に配置されており、給気口を介して外部から流入して排気口を介して外部に流出する空気が通過する空気通路と、空気通路内に配置される回路基板と、空気通路内に配置される冷却ファンと、空気通路内に配置される温度検出手段と、制御部と、を備えている。制御部は、冷却ファンを通常回転数で運転する冷却ファン通常運転制御と、バーナの点火から所定時間、又は、バーナの加熱運転中の所定時間である第1検出時間の間、通常回転数より低い回転数で冷却ファンを運転する冷却ファン制限運転制御を実行可能である。制御部は、冷却ファン制限運転制御の実行中に温度検出手段で検出される検出温度である第1検出温度が、所定の条件を満たすとき、冷却ファンに異常が生じていると判断し、バーナの火力を低減する。
【0007】
上記の加熱調理器では、冷却ファン制限運転制御の実行中の第1検出温度が所定の条件を満たすときに、冷却ファンに異常が生じていると判断し、バーナの火力を低減する。冷却ファンが正常に動作している場合、冷却ファン制限運転制御の実行時の第1検出温度は、冷却ファンの回転数に応じた挙動を示す。一方、冷却ファンに異常が生じている場合、冷却ファン制限運転制御の実行時の第1検出温度は、冷却ファンの回転数とは無関係の挙動を示す。このため、第1検出温度を用いることで、検出温度が高温になる状態(例えば、加熱調理器の使用後、すぐに加熱調理器を再使用する場合等)であっても、冷却ファンの異常の有無を正確に判別することができる
【0008】
本明細書に開示する加熱調理器では、所定の条件は、冷却ファン制限運転制御の実行直前に冷却ファン通常運転制御が実行されるときに、当該冷却ファン通常運転制御の実行中に温度検出手段で検出される検出温度である第2検出温度と、第1検出温度とに基づいて算出される判定値が所定範囲内であることを含んでいてもよい。このような構成によると、冷却ファン通常運転制御の実行時の第2検出温度と、それに続いて実行される冷却ファン制限運転制御の実行時の第1検出温度を用いて、所定の条件を満たすか否かを判定する。冷却ファンが正常に動作している場合、冷却ファン通常運転制御の実行時の第2検出温度は上がり難くなり、冷却ファン制限運転制御の実行時の第1検出温度は上がり易くなる。一方、冷却ファンに異常が生じている場合、冷却ファン通常運転制御の実行時と冷却ファン制限運転制御の実行時で、検出温度(すなわち、第2検出温度と第1検出温度)の上り易さに変化がない。このため、第1検出温度と第2検出温度を用いることで、冷却ファンの異常の有無を正確に判別することができる。
【0009】
本明細書に開示する加熱調理器では、所定の条件は、冷却ファン制限運転制御の実行後に続けて冷却ファン通常運転制御が実行されるときに、当該冷却ファン通常運転制御の実行中に温度検出手段で検出される検出温度である第2検出温度と、第1検出温度とに基づいて算出される判定値が所定範囲内であることを含んでいてもよい。このような構成によると、冷却ファン制限運転制御の実行時の第1検出温度と、それに続いて実行される冷却ファン通常運転制御の実行時の第2検出温度を用いて、所定の条件を満たすか否かを判定する。冷却ファンが正常に動作している場合、冷却ファン通常運転制御の実行時の第2検出温度は上がり難くなり、冷却ファン制限運転制御の実行時の第1検出温度は上がり易くなる。一方、冷却ファンに異常が生じている場合、冷却ファン通常運転制御の実行時と冷却ファン制限運転制御の実行時で、検出温度(すなわち、第2検出温度と第1検出温度)の上り易さに変化がない。このため、第1検出温度と第2検出温度と用いることで、冷却ファンの異常の有無を正確に判別することができる。
【0010】
本明細書に開示する加熱調理器では、判定値は、第1検出温度の時間変化率と、第2検出温度の時間変化率との間の差であってもよい。所定の条件は、差が所定範囲より小さいことを含んでいてもよい。このような構成によると、第1検出温度と第2検出温度の違いを適切に比較することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例の加熱調理器の概略の構成を示す図である。
図2】冷却ファンの異常を検出する処理の一例を示すフローチャート。
図3】電装品室内の温度が高い状態(ホットスタート状態)における処理の一例を示すフローチャート。
図4】ホットスタート状態における処理中の電装品室内の温度変化を説明するための図。
図5】電装品室内の温度が低くなった状態(コールドスタート状態)における処理の一例を示すフローチャート。
図6】コールドスタート状態における処理中の電装品室内の温度変化を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施例)
図1に示す本実施例の加熱調理器10は、業務用に使用されるコンベクションオーブンである。加熱調理器10は、筐体12と、加熱庫14と、バーナ室16と、循環ファン室18と、電装品室20を備えている。加熱庫14と、バーナ室16と、循環ファン室18と、電装品室20は、筐体12の内部に収容されている。
【0014】
加熱庫14は、上下方向に並んで配置された複数のトレー22を備えている。それぞれのトレー22には、食材や調理容器などの被加熱物Wを載置可能である。ユーザは、前扉24を開いた状態で、加熱庫14に被加熱物Wを出し入れ可能である。前扉24は、筐体12に対して前扉24の下端を回動軸として前後に回動させることで、開閉可能である。
【0015】
バーナ室16は、加熱庫14より下方に配置されている。バーナ室16には、燃料ガスを燃焼させるバーナ26が設けられている。バーナ26には、図示しないガス供給管から燃料ガスが供給される。ガス供給管には、図示しないガス開閉弁とガス流量調整弁が設けられている。ガス供給管のガス開閉弁が開かれた状態で、図示しないイグナイタが点火動作を行うと、バーナ26は点火する。バーナ26の燃焼中に、ガス供給管のガス流量調整弁の開度を調整することで、バーナ26の火力を調整することができる。バーナ26の燃焼中に、ガス供給管のガス開閉弁が閉じられると、バーナ26は消火する。バーナ室16の前端には、外部から空気が流入する給気口28が設けられている。バーナ室16の後端は、燃焼ガス通路30の下端に連通している。
【0016】
燃焼ガス通路30は、加熱庫14の後面に沿って上下方向に伸びている。加熱庫14と燃焼ガス通路30の間には、フィルタ32が配置されている。燃焼ガス通路30の後方には、循環ファン室18が配置されている。燃焼ガス通路30と循環ファン室18は、開口34を介して連通している。
【0017】
循環ファン室18には、循環ファン36が配置されている。循環ファン36は、ファンモータ38によって回転駆動される。循環ファン室18の下部は、循環通路40の後端に連通している。循環通路40の前端は、加熱庫14内の最下部で開口している。
【0018】
加熱庫14内の最上部には、排気通路42の前端が連通している。排気通路42の後端は、排気ダクト44の下端に連通している。排気ダクト44は、上下方向に伸びている。排気ダクト44の上端は、冷却通路46内で開口している。冷却通路46の上端は、筐体12の上面に形成された排気口48に連通している。
【0019】
加熱調理器10において、循環ファン36を回転させて、バーナ26を燃焼させると、バーナ26からの燃焼ガスが、バーナ室16から燃焼ガス通路30を経由して循環ファン室18へ流入し、循環通路40を経由して加熱庫14内の最下部に送り出される。加熱庫14内に流れ込んだ燃焼ガスは、トレー22に載置された被加熱物Wの周囲を流動して、被加熱物Wを加熱する。加熱庫14内の一部の燃焼ガスは、循環ファン36の回転によって、フィルタ32を介して燃焼ガス通路30に吸引され、再び循環ファン室18、循環通路40を経由して、加熱庫14内の最下部に送り出される。加熱庫14内の残りの燃焼ガスは、排気通路42を介して排気ダクト44へ流入し、排気ダクト44の上端から排気口48に向けて流れて、筐体12の外部に排出される。なお、バーナ26の燃焼用の空気は、循環ファン36の回転によって、筐体12の外部から給気口28を介してバーナ室16内に吸引される。
【0020】
冷却通路46は、加熱庫14、燃焼ガス通路30、循環ファン室18、排気通路42よりも上方に配置されている。冷却通路46は、加熱庫14、排気通路42の上面を覆っているとともに、排気ダクト44の周囲を囲っている。冷却通路46の前端には、給気口50が形成されている。
【0021】
前扉24は、内側冷却通路52と、外側冷却通路54を備えている。内側冷却通路52は、加熱庫14の前面を覆う形状に形成されている。外側冷却通路54は、内側冷却通路52の前面を覆う形状に形成されている。内側冷却通路52の下端には、外部から空気が流入する給気口56が形成されている。外側冷却通路54の下端には、外部から空気が流入する給気口58が形成されている。内側冷却通路52の上端は、開口60を介して外側冷却通路54に連通している。外側冷却通路54の最上部の後面には、排気口62が形成されている。排気口62は、前扉24が閉じられた時に、冷却通路46の給気口50に近接して対向する位置に配置されている。
【0022】
加熱調理器10が燃焼ガスによって加熱庫14内の被加熱物Wを加熱する際には、排気ダクト44から排気口48へ排出される排気ガスの流れに引っ張られて、冷却通路46内の空気も排気口48へ排出される。この空気の流れによって、前扉24の給気口56と給気口58のそれぞれに空気が流入する。給気口56に流入した空気は、内側冷却通路52を下方から上方に向けて流れた後、開口60を介して外側冷却通路54に流入する。給気口58に流入した空気は、外側冷却通路54を下方から上方に向けて流れる。この内側冷却通路52と外側冷却通路54を流れる空気の流れによって、前扉24の前面が加熱庫14からの熱によって高温となることを抑制することができる。外側冷却通路54の上端まで流れた空気は、排気口62から排出されて、給気口50を介して冷却通路46に流入する。冷却通路46に流入した空気は、加熱庫14の上面に沿って前方から後方に向けて流れた後、排気口48から排出される。
【0023】
電装品室20は、加熱庫14よりも上方であって、排気ダクト44よりも前方に配置されている。電装品室20と加熱庫14の間には、冷却通路46が介在している。また、電装品室20と排気ダクト44の間にも、冷却通路46が介在している。電装品室20の前端には、操作基板64が配置されている。操作基板64は、筐体12の前面に設けられた操作パネル66に接続されている。操作パネル66は、ユーザに加熱調理器10の状態を表示する表示部(図示せず)と、ユーザから加熱調理器10に対する操作入力を受け入れる操作部(図示せず)を備えている。操作基板64は、操作パネル66の表示部の動作を制御するとともに、ユーザからの操作パネル66の操作部への操作入力を検出する回路基板である。電装品室20の操作基板64よりも後方には、制御基板68が配置されている。制御基板68は、操作基板64に接続されている。制御基板68は、加熱調理器10の各電気部品の動作を制御する回路基板である。
【0024】
上記したように、加熱調理器10が燃焼ガスによって加熱庫14内の被加熱物Wを加熱する際には、電装品室20と加熱庫14の間の冷却通路46に空気が流れる。このため、加熱庫14からの熱によって電装品室20が高温となることを抑制することができる。また、加熱調理器10が燃焼ガスによって加熱庫14内の被加熱物Wを加熱する際には、電装品室20と排気ダクト44の間の冷却通路46に空気が流れる。このため、排気ダクト44からの熱によって電装品室20が高温となることを抑制することができる。
【0025】
電装品室20の前端は、筐体12の前面に形成された給気口70に連通している。電装品室20の後端は、筐体12の上面に形成された排気口72に連通している。電装品室20の制御基板68よりも後方には、冷却ファン74が配置されている。冷却ファン74は、ファンモータ(図示せず)によって回転駆動される。冷却ファン74が回転すると、筐体12の外部から給気口70を介して電装品室20に空気が流入するとともに、電装品室20から排気口72を介して筐体12の外部に空気が流出する。このような電装品室20内での空気の流れによって、電装品室20の内部に配置された操作基板64、制御基板68が冷却される。なお、電装品室20の後端の下部には、水平面よりも傾斜した傾斜面76が設けられている。傾斜面76には、温度センサ78が設けられている。温度センサ78は、冷却通路46を挟んで排気ダクト44に対向する位置に配置されている。
【0026】
以下では図2図6を参照して、冷却ファン74の異常を検出する処理について説明する。本実施例では、加熱運転を開始したときに冷却ファン74に異常が生じていないかどうかを検出する。ユーザから操作パネル66を介して加熱運転の開始が指示されると、制御基板68は図2に示す処理を実行する。
【0027】
加熱運転の開始が指示されると、制御基板68は、温度センサ78によって検出される温度が所定温度(例えば50℃)以下であるか否かを判断する(S12)。前回の加熱運転を終了してから短時間しか経過していないと、加熱調理器10全体が熱い状態のままとなっており、電装品室20内の温度も高くなっている。電装品室20内の温度が所定温度より大きい場合(ステップS12でNO)、前回の加熱運転が終了してからあまり時間が経過しておらず、制御基板68は、電装品室20内の温度が高い状態(以下、ホットスタート状態ともいう)であると判断する。したがって、制御基板68は、ホットスタート状態における処理を実行する(S14)。一方、電装品室20内の温度が所定温度以下である場合(ステップS12でYES)、前回の加熱運転が終了してから時間が経過しており、制御基板68は、電装品室20内の温度が低くなった状態(以下、コールドスタート状態ともいう)であると判断する。したがって、制御基板68は、コールドスタート状態における処理を実行する(S16)。
【0028】
まず、ホットスタート状態における処理について説明する。ホットスタート状態であると判断すると(ステップS12でNO)、図3に示すように、制御基板68は、バーナ26を点火する(S22)。これによって、加熱庫14内の被加熱物Wの加熱が開始される。ここでは、冷却ファン74は、駆動せず、停止されている。以下では、制御基板68が、冷却ファン74を駆動しながら加熱運転を実行する制御を「冷却ファン通常運転制御」と称し、制御基板68が、冷却ファン74を駆動せずに加熱運転を実行する制御を「冷却ファン制限運転制御」と称することがある。したがって、以降のステップでは、冷却ファン制限運転制御が実行される。
【0029】
次いで、制御基板68は、温度センサ78で検出された温度を取得する(S24)。図4に示すように、制御基板68は、バーナ26を点火したとき(すなわち、加熱運転の開始時)である時間t1における電装品室20内の温度T1を取得する。
【0030】
図3に示すように、次いで、制御基板68は、バーナ26を点火してから所定時間が経過するまで待機する(ステップS26でNO)。所定時間が経過すると(ステップS26でYES)、制御基板68は、温度センサ78で検出された温度を取得する(S28)。図4に示すように、制御基板68は、冷却ファン制限運転制御を開始してから所定時間経過後の時間t2における電装品室20内の温度T2を取得する。
【0031】
図3に示すように、次いで、制御基板68は、ステップS24で取得した温度T1とステップS28で取得した温度T2を用いて、冷却ファン制限運転制御の実行中の検出温度の時間変化率Δ1を算出する(S30)。図4に示すように、時間変化率Δ1は、例えば、時間t1から時間t2までの間の温度勾配である。
【0032】
図3に示すように、次いで、制御基板68は、冷却ファン74を駆動する(S32)。これによって、以降のステップでは、冷却ファン通常運転制御が実行される。次いで、制御基板68は、温度センサ78で検出された温度を取得する(S34)。次いで、制御基板68は、冷却ファン74の駆動を開始してから所定時間が経過するまで待機する(ステップS36でNO)。所定時間が経過すると(ステップS36でYES)、制御基板68は、温度センサ78で検出された温度を取得する(S38)。ここで取得される温度は、冷却ファン通常運転制御に変更されてから所定時間経過後の時間(図4では、時間t3)における電装品室20内の温度である。冷却ファン74に異常が発生しており、冷却ファン74が正常に駆動しないと、電装品室20内は冷却されない。このため、図4の下部に一点鎖線で示すように、冷却ファン74に異常が発生していると、ステップS34で所定時間が経過する間に電装品室20内の温度はさらに上昇し、時間t3における温度T3は、時間t2における温度T2よりさらに高くなる。一方、図4の下部に実線で示すように、冷却ファン74が正常に駆動すると、所定時間が経過する間に電装品室20内の温度が下がり、時間t3における温度T4は、冷却ファン74が正常に駆動しなかったときの時間t3における温度T3より低くなる。
【0033】
図3に示すように、次いで、制御基板68は、ステップS34で取得した温度(図4では温度T2)とステップS38で取得した温度(図4では温度T3又は温度T4)を用いて、冷却ファン通常運転制御の実行中の検出温度の時間変化率Δ2を算出する(S40)。図4に示すように、時間変化率Δ2は、例えば、時間t2から時間t3までの間の温度勾配である。冷却ファン74が正常に駆動しなかったときには、温度は温度T2から温度T3に変化するため、時間変化率Δ2は大きくなる。一方で、冷却ファン74が正常に駆動したときには、温度は温度T2から温度T3に変化するため、時間変化率Δ2は小さくなる。
【0034】
図3に示すように、次いで、制御基板68は、ステップS30で算出した冷却ファン制限運転制御の実行中の検出温度の時間変化率Δ1と、ステップS40で算出した冷却ファン通常運転制御の実行中の検出温度の時間変化率Δ2との差の絶対値が、所定値より大きいか否かを判断する(S42)。所定値は、時間変化率Δ1と時間変化率Δ2とが、ほとんど変化しないのか、大きく変化するのかを判断するための値であり、制御基板68のメモリ(図示は省略)に予め記憶されている。図4の下部に一点鎖線で示すように、冷却ファン74が正常に駆動しないと、冷却ファン通常運転制御の実行中(時間t2から時間t3の間)も電装品室20内が冷却されず、冷却ファン通常運転制御の実行中(時間t2から時間t3の間)にも、冷却ファン制限運転制御の実行中(時間t1から時間t2の間)と同様に電装品室20内の温度が上昇する。このため、時間変化率Δ1と時間変化率Δ2の間にほとんど差が生じない。したがって、時間変化率Δ1と時間変化率Δ2との差の絶対値が所定値以下である場合(ステップS42でNO)、制御基板68は、冷却ファン74に異常が生じていると判断する。そして、制御基板68は、バーナ26を消火して、加熱運転を停止する(S44)。その後、制御基板68は、操作パネル66を介して、加熱運転が異常終了したことをユーザに報知する(S46)。
【0035】
一方、図4の下部に実線で示すように、冷却ファン74が正常に駆動すると、冷却ファン通常運転制御の実行中(時間t2から時間t3の間)、電装品室20内が冷却され、冷却ファン通常運転制御の実行中(時間t2から時間t3の間)には、冷却ファン制限運転制御の実行中(時間t1から時間t2の間)より、電装品室20内の温度は、下降するか、上昇し難くなる。このため、時間変化率Δ2は、時間変化率Δ1より小さくなり、時間変化率Δ1と時間変化率Δ2は大きく異なる。したがって、時間変化率Δ1と時間変化率Δ2との差の絶対値が所定値より大きい場合(ステップS42でYES)、制御基板68は、冷却ファン74が正常であると判断する。そして、制御基板68は、加熱運転を継続する(S48)。なお、本実施例では、時間変化率Δ2は、冷却ファン74を駆動し始めてから所定時間経過するまで(すなわち、図4の時間t2から時間t3の間)の時間変化率としたが、このような構成に限定されない。例えば、時間変化率Δ2は、冷却ファン74を駆動してから所定時間(例えば、第1の所定時間)経過してから、さらに所定時間(例えば、第1の所定時間とは異なる第2の所定時間)経過するまで(すなわち、図4の時間t2´から時間t3の間)の時間変化率であってもよい。
【0036】
続いて、コールドスタート状態における処理について説明する。コールドスタート状態であると判断すると(図2のステップS12でNO)、図5に示すように、制御基板68は、バーナ26を点火する(S52)。また、制御基板68は、冷却ファン74を駆動する(S54)。これによって、以降のステップでは、冷却ファン通常運転制御が実行される。
【0037】
次いで、制御基板68は、温度センサ78で検出された温度を取得する(S56)。図6に示すように、制御基板68は、加熱運転の開始時である時間t4における電装品室20内の温度T5を取得する。
【0038】
図5に示すように、次いで、制御基板68は、加熱運転を開始してから所定時間が経過するまで待機する(ステップS58でNO)。所定時間が経過すると(ステップS58でYES)、制御基板68は、温度センサ78で検出された温度を取得する(S60)。コールドスタート状態では、加熱運転の開始と同時に冷却ファン通常運転制御が実行される。このため、図6の下部に一点鎖線で示すように、冷却ファン74に異常が発生しており、冷却ファン74が正常に駆動しないと、電装品室20内は冷却されず、時間t5における温度T6は高くなる。一方、図6の下部に実線で示すように、冷却ファン74が正常に駆動すると、電装品室20内は冷却され、時間t5における温度T7は、温度T6より低くなる。
【0039】
図5に示すように、次いで、制御基板68は、ステップS56で取得した温度(図6では温度T5)とステップS60で取得した温度(図6では温度T6又は温度T7)を用いて、冷却ファン74を駆動しながら加熱運転したときの検出温度の時間変化率Δ3を算出する(S62)。図6に示すように、時間変化率Δ3は、例えば、時間t4から時間t5までの間の温度勾配である。図6の下部に一点鎖線で示すように、冷却ファン74が正常に駆動しなかったときには、温度は温度T5から温度T6に変化するため、時間変化率Δ3は大きくなる。一方で、図6の下部に実線で示すように、冷却ファン74が正常に駆動したときには、温度は温度T5から温度T7に変化するため、時間変化率Δ3は小さくなる。
【0040】
図5に示すように、次いで、制御基板68は、冷却ファン74の駆動を停止する(S64)。このため、以降のステップでは、冷却ファン制限運転制御が実行される。次いで、制御基板68は、温度センサ78で検出された温度を取得する(S66)。次いで、制御基板68は、冷却ファン制限運転制御を開始してから所定時間が経過するまで待機する(ステップS68でNO)。所定時間が経過すると(ステップS68でYES)、制御基板68は、温度センサ78で検出された温度を取得する(S70)。ここで取得される温度は、冷却ファン制限運転制御に変更してから所定時間経過後の時間(図6では、時間t6)における電装品室20内の温度である。このため、冷却ファン74に異常が発生しているか否かに関わらず、電装品室20内の温度は大きく上昇する。図6の下部に示すように、時間t5から時間t6の間は、冷却ファン74に異常が発生している場合(図6の下部の一点鎖線参照)と、冷却ファン74が正常に駆動している場合(図6の下部の実線参照)とで、温度センサ78で検出される温度上昇率(傾き)は同一となる。冷却ファン74に異常が発生している場合には、時間t5における温度T6が高いため、時間t6における温度T8も高くなる。一方、冷却ファン74が正常に駆動する場合には、時間t5における温度T7が温度T6より低いため、時間t6における温度T9も温度T8より低くなる。
【0041】
図5に示すように、次いで、制御基板68は、ステップS66で取得した温度(図6では温度T6又は温度T7)とステップS70で取得した温度(図6では温度T8又は温度T9)を用いて、冷却ファン制限運転制御の実行中の検出温度の時間変化率Δ4を算出する(S72)。図6に示すように、時間変化率Δ4は、例えば、時間t5から時間t6までの間の温度勾配である。
【0042】
図5に示すように、次いで、制御基板68は、ステップS62で算出した冷却ファン通常運転制御の実行中の検出温度の時間変化率Δ3と、ステップS72で算出した冷却ファン制限運転制御の実行中の検出温度の時間変化率Δ4との差の絶対値が、所定値より大きいか否かを判断する(S74)。所定値は、時間変化率Δ3と時間変化率Δ4とが、ほとんど変化しないのか、大きく変化するのかを判断するための値であり、制御基板68のメモリ(図示は省略)に予め記憶されている。本実施例では、コールドスタート状態の処理における所定値(ステップS74で用いる所定値)は、ホットスタート状態の処理における所定値(図3のステップS42で用いる所定値)と異なる値であるが、同一の値であってもよい。図6の下部に一点鎖線で示すように、冷却ファン74が正常に駆動しないと、冷却ファン通常運転制御の実行中であっても冷却ファン74が駆動しないため、この期間(時間t4から時間t5の間)にも電装品室20内の温度が大きく上昇する。このため、時間変化率Δ3と時間変化率Δ4の間にほとんど差が生じない。したがって、時間変化率Δ3と時間変化率Δ4との差の絶対値が所定値以下である場合(ステップS74でNO)、制御基板68は、冷却ファン74に異常が生じていると判断する。そして、制御基板68は、バーナ26を消火して、加熱運転を停止する(S76)。その後、制御基板68は、操作パネル66を介して、加熱運転が異常終了したことをユーザに報知する(S78)。
【0043】
一方、図6の下部に実線で示すように、冷却ファン74が正常に駆動すると、冷却ファン通常運転制御の実行中(時間t4から時間t5の間)、電装品室20内が冷却され、電装品室20内の温度は、上昇し難くなるか、下降する。このため、時間変化率Δ3は、時間変化率Δ4より小さくなり、時間変化率Δ3と時間変化率Δ4は大きく異なる。したがって、時間変化率Δ3と時間変化率Δ4との差の絶対値が所定値より大きい場合(ステップS74でYES)、制御基板68は、冷却ファン74が正常であると判断する。そして、制御基板68は、加熱運転を継続する(S80)。なお、本実施例では、時間変化率Δ4は、冷却ファン74を停止してから所定時間経過するまで(すなわち、図6の時間t5から時間t6の間)の時間変化率としたが、このような構成に限定されない。例えば、時間変化率Δ4は、冷却ファン74を停止してから所定時間(例えば、第1の所定時間)経過してから、さらに所定時間(例えば、第1の所定時間とは異なる第2の所定時間)経過するまで(すなわち、図6の時間t5´から時間t6の間)の時間変化率であってもよい。
【0044】
本実施例では、加熱運転を開始したときに、冷却ファン制限運転制御と冷却ファン通常運転制御を実行する。そして、それぞれの制御が実行される間の電装品室20内の温度上昇率を比較し、それによって冷却ファン74の異常を検出している。このため、冷却ファン74が正常に駆動しているか否かを正確に検知することができる。
【0045】
なお、本実施例では、ステップS42やステップS74で用いる所定値は、制御基板68のメモリ(図示は省略)に予め記憶された一定値であったが、このような構成に限定されない。例えば、ステップS42やステップS74で用いる所定値は、前回の冷却ファン74の異常を検出する処理の実行時に取得された温度に基づいて補正されてもよい。取得した温度とは、ホットスタート状態の処理を実行した場合には、図3のステップS24、S28、S34、S38の処理で取得した温度であり、コールドスタート状態の処理を実行した場合には、図5のステップS56、S60、S66、S70の処理で取得した温度である。これらの処理で取得される温度は、外気温等の加熱調理器10の外部の状態によって変化する。取得された温度を用いて所定値を補正することによって、加熱調理器10の外部の状態を考慮して冷却ファン74の異常を検出する処理を実行することができる。このため、より正確に冷却ファン74の異常を検出することができる。
【0046】
また、本実施例では、加熱運転を開始したときに、上記の処理を実行して冷却ファン74が正常に駆動しているか否かを検知していたが、このような構成に限定されない。加熱運転の開始時以外のタイミングに上記の処理を実行して冷却ファン74が正常に駆動しているか否かを検知してもよく、例えば、加熱運転を開始してから所定時間が経過してから(すなわち、加熱運転の中盤や終盤に)上記の処理を実行してもよい。
【0047】
また、本実施例では、冷却ファン制限運転制御では、冷却ファン74を駆動せずに加熱運転を実行したが、このような構成に限定されない。冷却ファン制限運転制御では、冷却ファン通常運転制御における回転数(通常回転数)より低い回転数で冷却ファン74を駆動してもよい。
【0048】
また、本実施例では、冷却ファン74が正常に駆動しているか否かを検知するために、ホットスタート状態の処理では、冷却ファン制限運転制御を実行した後に冷却ファン通常運転制御を実行し、コールドスタート状態の処理では、冷却ファン通常運転制御を実行した後に冷却ファン制限運転制御を実行したが、このような構成に限定されない。例えば、ホットスタート状態において、図5に示すコールドスタート状態の処理のように冷却ファン通常運転制御を実行した後に冷却ファン制限運転制御を実行してもよい。また、コールドスタート状態においても、図3に示すホットスタート状態の処理のように冷却ファン制限運転制御を実行した後に冷却ファン通常運転制御を実行してもよい。
【0049】
実施例で説明した加熱調理器10に関する留意点を述べる。実施例の電装品室20は、「空気通路」の一例であり、操作基板64及び制御基板68は、「回路基板」の一例であり、制御基板68は、「制御部」の一例であり、温度センサ78は、「温度検出手段」の一例である。
【0050】
以上、実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0051】
10 :加熱調理器
12 :筐体
14 :加熱庫
16 :バーナ室
18 :循環ファン室
20 :電装品室
22 :トレー
24 :前扉
26 :バーナ
28 :給気口
30 :燃焼ガス通路
32 :フィルタ
34 :開口
36 :循環ファン
38 :ファンモータ
40 :循環通路
42 :排気通路
44 :排気ダクト
46 :冷却通路
48 :排気口
50 :給気口
52 :内側冷却通路
54 :外側冷却通路
56 :給気口
58 :給気口
60 :開口
62 :排気口
64 :操作基板
66 :操作パネル
68 :制御基板
70 :給気口
72 :排気口
74 :冷却ファン
76 :傾斜面
78 :温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6