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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】操作装置及びロボット制御システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20240920BHJP
   G05B 19/42 20060101ALI20240920BHJP
   G05B 19/409 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B25J9/22 A
G05B19/42 J
G05B19/409 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021072355
(22)【出願日】2021-04-22
(65)【公開番号】P2022166928
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】赤路 雄一
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-091528(JP,A)
【文献】特開2019-016666(JP,A)
【文献】特開2014-233814(JP,A)
【文献】特開2015-179355(JP,A)
【文献】特開2013-111662(JP,A)
【文献】特開2015-022492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
G05B 19/18 - 19/416
G05B 19/42 - 19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用ロボットを操作するための操作装置であって、
前記産業用ロボットに関する情報を表示するとともに、前記産業用ロボットに対する操作指示の入力を受け付ける表示部と、
前記表示部に入力された操作指示に基づいて、前記産業用ロボットの動作を教示するための教示データを出力する出力部と、
を備え、
前記表示部は、前記産業用ロボットに対する操作指示を入力可能な第1レイヤー、及び外部装置により入力されるガイダンス情報を表示可能な第2レイヤーを含む複数のレイヤーを有する画面を表示させ、
前記表示部は、前記外部装置に割り当てられるレイヤーが前記第2レイヤーから前記第1レイヤーに切り替えられた場合に、前記外部装置による前記産業用ロボットに対する操作指示の入力を受け付けない、
操作装置。
【請求項2】
前記表示部は、前記外部装置により前記第2レイヤーの一部に枠が設けられた場合に、前記第1レイヤーの領域のうち、前記枠に対応する領域への入力を受け付け、前記枠以外に対応する領域への入力は受け付けない、
請求項記載の操作装置。
【請求項3】
産業用ロボットを制御するロボット制御装置と、前記ロボット制御装置に接続する操作装置とを備えるロボット制御システムであって、
前記操作装置は、
前記産業用ロボットに関する情報を表示するとともに、前記産業用ロボットに対する操作指示の入力を受け付ける表示部と、
前記表示部に入力された操作指示に基づいて、前記産業用ロボットの動作を教示するための教示データを出力する出力部と、
を備え、
前記表示部は、前記産業用ロボットに対する操作指示を入力可能な第1レイヤー、及び外部装置により入力されるガイダンス情報を表示可能な第2レイヤーを含む複数のレイヤーを有する画面を表示させ、
前記表示部は、前記外部装置に割り当てられるレイヤーが前記第2レイヤーから前記第1レイヤーに切り替えられた場合に、前記外部装置による前記産業用ロボットに対する操作指示の入力を受け付けず、
前記ロボット制御装置は、
前記操作装置に対する接続要求を前記外部装置から受信する通信部と、
前記接続要求を送信した前記外部装置に対して、前記第2レイヤーへのアクセス権を割り当てる制御部と、
を備える、
ロボット制御システム。
【請求項4】
前記ロボット制御装置は、
前記レイヤーと前記レイヤーへのアクセス権が割り当てられた装置の識別情報とを対応付けて記憶する記憶部を、さらに備える、
請求項記載のロボット制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作装置及びロボット制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より複数レイヤーの画面を表示して、それぞれのレイヤーに異なる内容を表示する技術がある。例えば、下記特許文献1には、異なる内容を表示した上層レイヤーと下層レイヤーを合成して表示するゲーム装置が開示されている。このゲーム装置では、上層レイヤーに譜面を形成する音符のマーカーを表示させ、下層レイヤーに隠しマーカーを表示させている。そして、それぞれのマーカーに対するプレイヤーの操作に合わせてレイヤーごとに別々の演出を行うことで、プレイのたびに異なるゲーム画面を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6184203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、産業用ロボットの一つである溶接ロボットを操作するティーチングペンダント(操作装置)には、溶接ロボットに動作を教示するための操作画面がある。溶接ロボットへの教示作業では、例えば、作業者がティーチングペンダントの操作ボタンを操作する等し、溶接ワイヤの先端を誘導し、溶接ワイヤの先端が所定の溶接位置になるようにマニュピレータを駆動させて、溶接トーチの姿勢を定める。そして、これら一連の作業を溶接位置ごとに繰り返し行い、溶接トーチの位置、姿勢等を教示データとして順次記憶させていく。
【0005】
このような教示作業は熟練を要する作業であり、初級者には難しい。したがって、初級者は、熟練者に教わりながら技術を習得することになる。その際、ティーチングペンダントの操作画面を使って初級者と熟練者とがやり取りしながら教示作業を行うことができれば、初級者による教示作業の効率を高めることが可能になる。
【0006】
しかしながら、特許文献1のゲーム装置は、上層レイヤーと下層レイヤーを合成した画面にプレイヤーが入力操作を行うことでゲームを進行するものであり、上層レイヤーと下層レイヤーとを使って他のプレイヤー等とやり取りするものではない。したがって、複数レイヤーの画面を使って初級者と熟練者とが効率よくやり取りできる仕組みを勘案する必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、産業用ロボットに動作を教示させる作業効率を高めることができる操作装置及びロボット制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る操作装置は、産業用ロボットを操作するための操作装置であって、産業用ロボットに関する情報を表示するとともに、産業用ロボットに対する操作指示の入力を受け付ける表示部と、表示部に入力された操作指示に基づいて、産業用ロボットの動作を教示するための教示データを出力する出力部と、を備え、表示部は、産業用ロボットに対する操作指示を入力可能な第1レイヤー、及び外部装置により入力されるガイダンス情報を表示可能な第2レイヤーを含む複数のレイヤーを有する画面を表示させる。
【0009】
この態様によれば、産業用ロボットに関する情報を表示し、産業用ロボットに対する操作指示の入力を受け付ける表示部に対して、第1レイヤーと第2レイヤーとを含む複数のレイヤーを有する画面を表示させることができ、外部装置から入力されるガイダンス情報を第2レイヤーに表示させ、そのガイダンス情報に基づいて、産業用ロボットへの操作指示を第1レイヤーに入力させ、その操作指示に基づいて教示データを出力させることが可能となる。つまり、例えば、熟練者によって第2レイヤーに入力されたガイダンスに従って、初級者が産業用ロボットへの操作指示を第1レイヤーに入力し、教示データを出力させることができる。
【0010】
上記態様において、表示部は、外部装置に割り当てられるレイヤーが第2レイヤーから第1レイヤーに切り替えられた場合に、外部装置による産業用ロボットに対する操作指示の入力を受け付けないこととしてもよい。
【0011】
この態様によれば、外部装置を第1レイヤーにアクセスさせることを可能にしつつ、外部装置からは産業用ロボットに操作指示を出せないように制限することが可能となる。これにより、外部装置によって産業用ロボットが操作される事態を回避できるため、産業用ロボットに対する安全性を確保することができる。
【0012】
上記態様において、表示部は、外部装置により第2レイヤーの一部に枠が設けられた場合に、第1レイヤーの領域のうち、上記枠に対応する領域への入力を受け付け、上記枠以外に対応する領域への入力は受け付けないこととしてもよい。
【0013】
この態様によれば、外部装置から第2レイヤーに枠が設けられると、第1レイヤーではその枠に対応する領域にのみ入力が可能となる。これにより、熟練者によってガイドされた領域以外に、初級者が操作指示を入力することで生じ得る誤作動を防止することができ、産業用ロボットに対する操作の確実性及び安全性を高めることができる。
【0014】
本発明の他の態様に係るロボット制御システムは、産業用ロボットを制御するロボット制御装置と、ロボット制御装置に接続する操作装置とを備えるロボット制御システムであって、上記操作装置は、産業用ロボットに関する情報を表示するとともに、産業用ロボットに対する操作指示の入力を受け付ける表示部と、表示部に入力された操作指示に基づいて、産業用ロボットの動作を教示するための教示データを出力する出力部と、を備え、上記表示部は、産業用ロボットに対する操作指示を入力可能な第1レイヤー、及び外部装置により入力されるガイダンス情報を表示可能な第2レイヤーを含む複数のレイヤーを有する画面を表示させ、上記ロボット制御装置は、操作装置に対する接続要求を外部装置から受信する通信部と、接続要求を送信した外部装置に対して、第2レイヤーへのアクセス権を割り当てる制御部と、を備える。
【0015】
この態様によれば、産業用ロボットに関する情報を表示し、産業用ロボットに対する操作指示の入力を受け付ける表示部に対して、第1レイヤーと第2レイヤーとを含む複数のレイヤーを有する画面を表示させることができ、外部装置から入力されるガイダンス情報を第2レイヤーに表示させ、そのガイダンス情報に基づいて、産業用ロボットへの操作指示を第1レイヤーに入力させ、その操作指示に基づいて教示データを出力させることが可能となる。つまり、例えば、熟練者によって第2レイヤーに入力されたガイダンスに従って、初級者が産業用ロボットへの操作指示を第1レイヤーに入力し、教示データを出力させることができる。
【0016】
上記態様において、ロボット制御装置は、レイヤーと当該レイヤーへのアクセス権が割り当てられた装置の識別情報とを対応付けて記憶する記憶部を、さらに備えることとしてもよい。
【0017】
この態様によれば、記憶された対応関係に基づいて、各装置をレイヤーに割り当てることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、産業用ロボットに動作を教示させる作業効率を高めることができる操作装置及びロボット制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るロボット制御システムの構成を例示する図である。
図2】ティーチングペンダントの利用状況の一例を説明するための模式図である。
図3】ティーチングペンダントの利用状況の一例を説明するための模式図である。
図4】ティーチングペンダントの利用状況の一例を説明するための模式図である。
図5】ティーチングペンダントの利用状況の一例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。また、図面は模式的なものであるため、各構成要素の寸法や比率は実際のものとは相違する。
【0021】
図1は、本発明に係る操作装置としてのティーチングペンダントを含むロボット制御システムの構成を例示する図である。ロボット制御システム100は、例えば、ティーチングペンダント1、ロボット制御装置2及びマニピュレータ3を備える。ティーチングペンダント1とロボット制御装置2とは、例えば通信ケーブルCaを介して接続され、ロボット制御装置2とマニピュレータ3とは、例えば通信ケーブルCbを介して接続される。
【0022】
マニピュレータ3は、ロボット制御装置2において設定される施工条件に従ってアーク溶接を行う産業用ロボットである。マニピュレータ3は、例えば、工場の床面等に固定されるベース部材上に設けられる多関節アーム31と、多関節アーム31の先端に連結される溶接トーチ32とを有する。
【0023】
ロボット制御装置2は、マニピュレータ3の動作を制御する制御ユニットであり、例えば、制御部21、記憶部22、通信部23及び溶接電源部24を含む。制御部21は、例えば、ティーチングペンダント1からの指示に従って、マニピュレータ3及び溶接電源部24を制御する。溶接電源部24は、例えば、溶接ワイヤの先端とワークとの間にアークを発生させるために、予め定められた溶接の施工条件に従って、溶接電流及び溶接電圧等をマニピュレータ3に供給する。溶接の施工条件には、例えば、溶接条件、溶接開始位置、溶接終了位置、アーク放電の時間、溶接距離、溶接トーチの姿勢及び溶接トーチの移動速度等のデータ項目が含まれる。溶接電源部24は、ロボット制御装置2と別個に備えることとしてもよい。
【0024】
ティーチングペンダント1は、作業者がマニピュレータ3の動作を教示する操作装置であり、例えば、制御部11、記憶部12、通信部13、表示部14及び入力部15を含む。
【0025】
記憶部12は、ティーチングペンダント1における処理の実行に必要な各種のプログラムや各種の情報を記憶する。
【0026】
通信部13は、通信ケーブルCaを介して接続されるロボット制御装置2との通信を制御する。例えば、通信部13は、表示部14に入力された操作指示に基づいて、マニピュレータ3の動作を教示するための教示データをロボット制御装置2に送信(出力)する。
【0027】
表示部14は、例えば、タッチパネルであり、マニピュレータ3に関する情報を表示するとともに、マニピュレータ3に対する操作指示の入力を受け付ける。
【0028】
入力部15は、例えば、複数のキーを有しており、各キーの操作に応じて入力信号を生成し、制御部11に出力する。
【0029】
制御部11は、メモリに格納された所定のプログラムをプロセッサが実行することにより、各種の機能を実現する。各種の機能には、例えば、複数のレイヤーを有する画面を表示部14に表示させる機能がある。この機能は、例えば、外部装置であるリモート端末がティーチングペンダント1への接続を要求することにより開始される機能である。この機能を開始する際の流れを、図2を参照して説明する。
【0030】
最初に、作業現場から離れた場所にいるリモート端末4の操作者が、リモート端末4を操作して、作業現場のティーチングペンダント1への接続を要求する。リモート端末4は、例えば、PC(パーソナルコンピュータ)、スマートフォン、タブレット端末、ノートPC、その他の端末装置であってよい。
【0031】
続いて、ロボット制御装置2の通信部23が接続要求を受信すると、ロボット制御装置2の制御部21は、リモート端末4によるティーチングペンダント1への接続を許可し、後述する第2レイヤーL2へのアクセス権をリモート端末4に割り当てる。なお、リモート端末4とロボット制御装置2との間にサーバを設け、リモート端末4及びロボット制御装置2がそのサーバを介してやり取りすることとしてもよい。サーバを介することで、外部からの接続に対するセキュリティを強化することが可能となる。
【0032】
続いて、ロボット制御装置2の制御部21は、記憶部22に格納されている後述のレイヤーアクセス管理テーブルTを更新する。
【0033】
レイヤーアクセス管理テーブルTは、例えば、ティーチングペンダント1の表示画面上に形成される複数のレイヤーとそれぞれのレイヤーに割り当てられた装置の識別情報とを対応付けて記憶するテーブルである。図2では、ティーチングペンダント1の識別情報である“TP1”に対応付けて第1レイヤーL1が記憶され、リモート端末4の識別情報である“PC4”に対応付けて第2レイヤーL2が記憶されている。
【0034】
図2を参照して、ティーチングペンダント1及びリモート端末4の各表示画面上に形成される第1レイヤーL1及び第2レイヤーL2について具体的に説明する。
【0035】
第1レイヤーL1は、ティーチングペンダント1の機能として表示されるベース画面を表示するレイヤーである。ベース画面には、マニピュレータ3に関する情報が表示される。このマニピュレータ3に関する情報には、例えば、溶接の施工条件を設定するための画面情報や、マニピュレータ3を操作する操作プログラムを設定するための画面情報が含まれる。第1レイヤーL1に割り当てられた装置は、第1レイヤーL1からベース画面にアクセスすることができる。したがって、その装置の操作者は、マニピュレータ3に対する操作指示等を入力することが可能となる。
【0036】
第2レイヤーL2は、無色透明のレイヤーであり、第1レイヤーL1の上に重ねて表示されるレイヤーである。第2レイヤーL2が無色透明であるため、ティーチングペンダント1及びリモート端末4の各操作者は、第1レイヤーL1に表示される内容を、第2レイヤーL2を介してそのまま視認することができる。第2レイヤーL2に対しては、例えば、文字や記号、図形等を入力することができる一方、第2レイヤーL2からベース画面にアクセスすることはできない。したがって、第2レイヤーL2に割り当てられた装置の操作者は、マニピュレータ3に対する操作指示等を入力することができない。
【0037】
ティーチングペンダント1及びリモート端末4は、それぞれレイヤーアクセス管理テーブルTで管理されているレイヤーに対してアクセスすることになる。例えば、図2では、ティーチングペンダント1を操作する操作者は、第1レイヤーL1にアクセスしながらマニピュレータ3に対する操作指示等を入力する。他方、リモート端末4を操作する操作者は、第2レイヤーL2にアクセスしながら作業者に対するアドバイスやメッセージ等を含むガイド情報を第2レイヤーL2上に入力する。
【0038】
図2では、リモート端末4の操作者が、ティーチングペンダント1の操作者に対するガイド情報として、第2レイヤーL2上に枠L21を入力している。このガイド情報により、ティーチングペンダント1の操作者は、枠L21に対応する第1レイヤーL1上の領域L11に表示されているボタンを押下して作業を進めることができる。
【0039】
ティーチングペンダント1及びリモート端末4の各操作者は、アクセスするレイヤーを任意に切り替えることができる。レイヤーを切り替える際の流れを、図2及び図3を参照して具体的に説明する。
【0040】
最初に、図2のティーチングペンダント1及びリモート端末4の各操作者が、各端末を操作して、切替先のレイヤーを指定するとともにレイヤーの切り替えを要求する。なお、レイヤーが二つである場合には、レイヤーの指定を省略してもよい。
【0041】
続いて、ロボット制御装置2の通信部23が切り替え要求を受信すると、ロボット制御装置2の制御部21は、ティーチングペンダント1及びリモート端末4にそれぞれ割り当てられているレイヤーを、指定された切替先のレイヤーに変更する。
【0042】
続いて、ロボット制御装置2の制御部21は、記憶部22に格納されているレイヤーアクセス管理テーブルTを、図2に示す内容から図3に示す内容に更新する。具体的に、ティーチングペンダント1に割り当てられているレイヤーを“L1”から“L2”に変更し、リモート端末4に割り当てられているレイヤーを“L2”から“L1”に変更する。その結果、図3に示すように、ティーチングペンダント1の操作者は、第2レイヤーL2にアクセスしながら第2レイヤーL2上にガイド情報を入力できるようになる。他方、リモート端末4の操作者は、第1レイヤーL1にアクセスしながら、マニピュレータ3に対する操作指示等を入力することや、マニピュレータ3の操作プログラムを変更することが可能となる。
【0043】
図3では、ティーチングペンダント1とリモート端末4の双方が、レイヤーを切り替えているが、いずれか一方が切り替えることとしてもよい。図2及び図4を参照して、ティーチングペンダント1のみがレイヤーを切り替える場合について説明する。
【0044】
最初に、図2のティーチングペンダント1の操作者が、ティーチングペンダント1を操作して、切替先のレイヤーとして第2レイヤーL2を指定するとともにレイヤーの切り替えを要求する。
【0045】
続いて、ロボット制御装置2の通信部23が切り替え要求を受信すると、ロボット制御装置2の制御部21は、ティーチングペンダント1に割り当てられているレイヤーを、指定された切替先のレイヤーに変更する。
【0046】
続いて、ロボット制御装置2の制御部21は、記憶部22に格納されているレイヤーアクセス管理テーブルTを、図2に示す内容から図4に示す内容に更新する。具体的に、ティーチングペンダント1に割り当てられているレイヤーを“L1”から“L2”に変更する。その結果、図4に示すように、ティーチングペンダント1の操作者及びリモート端末4の操作者の双方が、第2レイヤーL2にアクセスしながら互いにガイド情報を入力できるようになる。
【0047】
図4では、ベース画面のエラーメッセージ欄L12に表示されたエラー内容に対する対処方法を教えてもらうためのメッセージが、エラーメッセージ欄L12に対応する第2レイヤーL2上の領域L22に入力されている。これに対し、リモート端末4の操作者は、領域L22に入力されたメッセージに対する回答メッセージを第2レイヤーL2上に入力することができる。このように、ティーチングペンダント1の操作者及びリモート端末4の操作者の双方が、第2レイヤーL2にアクセスすることで、第2レイヤーを利用してメッセージをやり取りすることが可能になる。
【0048】
前述したように、実施形態に係るティーチングペンダント1によれば、マニピュレータ3に関する情報を表示するとともに、マニピュレータ3に対する操作指示の入力を受け付ける表示部14に対して、第1レイヤーL1と第2レイヤーL2とを有する画面を表示させることができる。そして、リモート端末4から入力されるガイダンス情報を第2レイヤーL2に表示させ、そのガイダンス情報に基づいて、マニピュレータ3への操作指示を第1レイヤーL1に入力させ、その操作指示に基づいて教示データを出力させることが可能となる。つまり、例えば、熟練者によって第2レイヤーL2に入力されたガイダンスに従って、初級者がマニピュレータ3への操作指示を第1レイヤーL1に入力し、教示データを出力させることができる。
【0049】
また、実施形態に係るティーチングペンダント1を含むロボット制御システム100によれば、リモート端末4を第1レイヤーL1にアクセスさせることを可能にしつつ、リモート端末4からはマニピュレータ3に操作指示を出せないように制限することが可能となる。これにより、リモート端末4によってマニピュレータ3が操作される事態を回避できるため、マニピュレータ3に対する安全性を確保することができる。
【0050】
それゆえ、実施形態に係るティーチングペンダント1を含むロボット制御システム100によれば、溶接ロボットであるマニピュレータ3に対する安全性を確保しつつ、マニピュレータ3に動作を教示させる作業効率を高めることが可能となる。
【0051】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。このため、上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。
【0052】
[第1変形例]
前述した実施形態では、第1レイヤーL1に割り当てられた装置の操作者は、第1レイヤーL1からベース画面内を自由に操作することができたが、ベース画面に対する操作範囲に制限を設けることとしてもよい。
【0053】
例えば、第2レイヤーL2上に枠が入力された場合に、その枠内に対応する第1レイヤーL1上の領域への入力を受け付け、その枠以外に対応する領域への入力は受け付けないこととしてもよい。図5を参照して具体的に説明する。
【0054】
図5のレイヤーアクセス管理テーブルTに示すように、ティーチングペンダント1の操作者に対して第1レイヤーL1へのアクセス権が割り当てられ、リモート端末4の操作者に対して第2レイヤーL2へのアクセス権が割り当てられている。
【0055】
第2レイヤーL2上には、リモート端末4の操作者により、枠L21が入力されている。この枠L21は、ティーチングペンダント1の操作者に対するガイド情報となる。第2レイヤーL2上に枠L21が入力されると、ティーチングペンダント1の操作者は、第1レイヤーL1からベース画面を操作する際の操作範囲に制限が設けられる。
【0056】
具体的に、ティーチングペンダント1の操作者は、枠L21に対応する第1レイヤーL1上の領域L11に表示されているボタンを操作して、そのボタンに対応付けられた処理を実行させることができる一方、その他の第1レイヤーL1上の領域に対する入力操作は受け付けられず、その入力操作に対応付けられた処理を実行させることができない。
【0057】
ここで、ティーチングペンダント1の操作者にとっては、第1レイヤーL1上の領域L11以外への入力操作が受け付けられないことになるが、ティーチングペンダント1の装置内では、第1レイヤーL1上に対する入力操作を検知し、その検知した信号に基づいて領域L11に入力操作されたのか、領域L11以外に入力操作されたのかを判定することとしてもよい。
【0058】
この場合、ティーチングペンダント1の操作者が、ガイド情報に対して正しく操作できたか否かを視覚的に確認できるように、マーク等の指標を表示することとしてもよい。言い換えると、ガイド情報に対して正しく操作できたか否かに応じて、入力された操作に対する振る舞いを変化させてもよい。
【0059】
具体的に、ティーチングペンダント1の操作者が、枠L21に対応する第1レイヤーL1上の領域L11に表示されているボタンを押下したときには、その押下した領域に対して合致を示す星マークL13を表示する。他方、ティーチングペンダント1の操作者が、枠L21以外に対応する第1レイヤーL1上の領域に対して入力操作を行ったときには、その入力操作した領域に対して不一致を示す爆弾マークL14を表示する。これら星マークL13及び爆弾マークL14は、第1レイヤーL1上に表示してもよいし、第2レイヤーL2上に表示してもよい。
【0060】
なお、合致又は不一致に応じて星マークL13又は爆弾マークL14を表示することに限定されない。例えば、合致した場合に枠L21を消去し、不一致の場合にエラーメッセージを表示することとしてもよい。
【0061】
また、ガイド情報の対象は、第2レイヤーL2上に枠を設けることやメッセージを入力することには限定されない。例えば、第2レイヤーL2上に矢印等のマークを設けることとしてもよいし、操作対象となる箇所を音声でガイダンスしてもよい。ガイド情報が音声である場合には、音声でガイダンスされた箇所をティーチングペンダント1の操作者が操作するようにすればよい。
【0062】
このように、第1変形例に係るティーチングペンダント1を含むロボット制御システム100によれば、リモート端末4の操作者は、ティーチングペンダント1の操作者が操作を正しく行えるように誘導することが可能となる。
【0063】
また、第1変形例に係るティーチングペンダント1を含むロボット制御システム100によれば、第2レイヤーL2に枠L21を設けることで、その枠L21に対応する第1レイヤーL1の領域L11にのみ入力操作を制限することができる。これにより、熟練者によってガイドされた領域L11以外に、初級者が操作指示を入力することで生じ得る誤作動を防止することができ、マニピュレータ3に対する操作の確実性及び安全性を高めることが可能になる。
【0064】
[その他の変形例]
前述した実施形態及び第1変形例では、ティーチングペンダント1に接続する外部装置が、一台のリモート端末4である場合について説明しているが、ティーチングペンダント1に接続する外部装置の台数は、二台以上であってもよい。この場合、外部装置の台数に合わせて第2レイヤーを重畳して形成することとすればよい。さらに、各第2レイヤーに入力した内容を、他のレイヤーにコピーする等、複数のレイヤー間で入力情報を連携して扱えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…ティーチングペンダント、2…ロボット制御装置、3…マニピュレータ、4…リモート端末、11…制御部、12…記憶部、13…通信部、14…表示部、15…入力部、21…制御部、22…記憶部、23…通信部、24…溶接電源部、31…多関節アーム、32…溶接トーチ、100…ロボット制御システム、Ca…通信ケーブル、Cb…通信ケーブル、L1…第1レイヤー、L2…第2レイヤー、L21…枠、T…レイヤーアクセス管理テーブル
図1
図2
図3
図4
図5