(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】トラクタ
(51)【国際特許分類】
A01B 59/043 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
A01B59/043 Z
(21)【出願番号】P 2021092544
(22)【出願日】2021-06-01
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小林 句美子
(72)【発明者】
【氏名】後 健蔵
(72)【発明者】
【氏名】山中 貞雄
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-146805(JP,U)
【文献】実開平07-022604(JP,U)
【文献】特開2007-300810(JP,A)
【文献】特開平08-131047(JP,A)
【文献】実開平03-022604(JP,U)
【文献】特開2008-237165(JP,A)
【文献】特開2005-073629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 59/043
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップリンク及び左右のロアリンクを有し、作業装置を昇降させるリンク機構と、
前記リンク機構と前記作業装置との間に介在され、前記リンク機構と前記作業装置とを連結するフレーム体と、が備えられ、
前記フレーム体に、前記トップリンク及び前記左右のロアリンクに連結される第一フレームと、前記第一フレームの後方に設けられ、前記作業装置に連結される第二フレームと、前記第一フレームと前記第二フレームとを連結する連結フレームとが備えられ、
前記フレーム体は、前記リンク機構が最下降状態であるときに、前記第一フレームにおける前記トップリンク及び前記左右のロアリンクが連結される第一連結部と前記第二フレームにおける前記作業装置が連結される第二連結部とが異なる高さ位置に位置するように構成さ
れ、
前記連結フレームは、前記第一連結部と前記第二連結部とに亘って連結されているトラクタ。
【請求項2】
トップリンク及び左右のロアリンクを有し、作業装置を昇降させるリンク機構と、
前記リンク機構と前記作業装置との間に介在され、前記リンク機構と前記作業装置とを連結するフレーム体と、が備えられ、
前記フレーム体に、前記トップリンク及び前記左右のロアリンクに連結される第一フレームと、前記第一フレームの後方に設けられ、前記作業装置に連結される第二フレームと、前記第一フレームと前記第二フレームとを連結する連結フレームとが備えられ、
前記フレーム体は、前記リンク機構が最下降状態であるときに、前記第一フレームにおける前記トップリンク及び前記左右のロアリンクが連結される第一連結部と前記第二フレームにおける前記作業装置が連結される第二連結部とが異なる高さ位置に位置するように構成さ
れ、
前記フレーム体は、前記第一フレームと前記連結フレームとの連結を解除可能なように、かつ、前記第一フレームと前記連結フレームとの連結を解除することで、前記連結フレーム及び前記第二フレームを前記第一フレームから取外し可能なように構成され、
前記第一フレームに、前記第二連結部と同一の第三連結部が備えられ、
前記第一フレームから前記連結フレーム及び前記第二フレームを取り外した状態において、前記第三連結部に前記作業装置を連結可能であるトラクタ。
【請求項3】
トップリンク及び左右のロアリンクを有し、作業装置を昇降させるリンク機構と、
前記リンク機構と前記作業装置との間に介在され、前記リンク機構と前記作業装置とを連結するフレーム体と、が備えられ、
前記フレーム体に、前記トップリンク及び前記左右のロアリンクに連結される第一フレームと、前記第一フレームの後方に設けられ、前記作業装置に連結される第二フレームと、前記第一フレームと前記第二フレームとを連結する連結フレームとが備えられ、
前記フレーム体は、前記リンク機構が最下降状態であるときに、前記第一フレームにおける前記トップリンク及び前記左右のロアリンクが連結される第一連結部と前記第二フレームにおける前記作業装置が連結される第二連結部とが異なる高さ位置に位置するように構成さ
れ、
動力源からの動力を変速するとともに、変速した動力を出力する作業動力出力軸を有する変速装置と、
前記作業装置に設けられた動力入力部が連結されることで、動力源からの動力を前記作業装置に対して取出し可能な動力取出部と、
前記作業動力出力軸と前記動力取出部とを動力伝達可能に連結する動力伝達装置と、が備えられ、
前記作業動力出力軸及び前記動力取出部は、前記第一連結部と前記第二連結部との高さ位置関係と同じ高さ位置関係となるように、異なる高さ位置に設けられ、
前記作業動力出力軸は前記第一フレームによって周囲を囲まれ、かつ、前記動力取出部は前記第二フレームによって周囲を囲まれているトラクタ。
【請求項4】
前記リンク機構が最下降状態であるときに、前記第二連結部が前記第一連結部よりも低い位置に位置する
請求項1から3の何れか一項に記載のトラクタ。
【請求項5】
前記第二連結部のうち、最も低い位置に位置する部分は、最下降状態の前記ロアリンクよりも低い位置に設けられている
請求項4に記載のトラクタ。
【請求項6】
前記第一連結部に、前記トップリンクの遊端部が連結される第一頂部と、前記左右のロアリンクのそれぞれが連結される左右の第一底角部と、が備えられ、
前記第一フレームは、前記第一頂部と前記左右の第一底角部とによって規定される三角形形状に構成され、
前記第二連結部に、前記作業装置における三つの連結具が連結される第二頂部及び左右の第二底角部が備えられ、
前記第二フレームは、前記第二頂部と前記左右の第二底角部とによって規定される三角形形状に構成され、
前記連結フレームに、前記第一頂部と前記第二頂部とに亘る頂部フレーム部と、左の前記第一底角部と左の前記第二底角部とに亘る左底角フレーム部と、右の前記第一底角部と右の前記第二底角部とに亘る右底角フレーム部と、が備えられている
請求項1から5の何れか一項に記載のトラクタ。
【請求項7】
前記第一フレームと前記第二フレームとは、同じ三角形形状に構成されている
請求項6に記載のトラクタ。
【請求項8】
前記第二連結部に、前記作業装置における連結具に係止可能な係止部と、前記係止部の係止状態を保持するロック機構とが備えられ、
前記ロック機構による係止保持によって前記第二連結部と前記作業装置との連結状態が維持され、前記ロック機構による係止保持が解除されることによって前記連結状態が解除可能であり、
前記ロック機構を係止保持状態と係止解除状態とに切換操作する操作具が、運転部から手動操作可能な位置に備えられている
請求項1から7の何れか一項に記載のトラクタ。
【請求項9】
前記フレーム体は、前記第一フレームと前記連結フレームとの連結を解除可能なように、かつ、前記第一フレームと前記連結フレームとの連結を解除することで、前記連結フレーム及び前記第二フレームを前記第一フレームから取外し可能なように構成され、
前記第一フレームに、前記第二連結部と同一の第三連結部が備えられ、
前記第一フレームから前記連結フレーム及び前記第二フレームを取り外した状態において、前記第三連結部に前記作業装置を連結可能である
請求項1または3に記載のトラクタ。
【請求項10】
動力源からの動力を変速するとともに、変速した動力を出力する作業動力出力軸を有する変速装置と、
前記作業装置に設けられた動力入力部が連結されることで、動力源からの動力を前記作業装置に対して取出し可能な動力取出部と、
前記作業動力出力軸と前記動力取出部とを動力伝達可能に連結する動力伝達装置と、が備えられ、
前記作業動力出力軸及び前記動力取出部は、前記第一連結部と前記第二連結部との高さ位置関係と同じ高さ位置関係となるように、異なる高さ位置に設けられ、
前記作業動力出力軸は前記第一フレームによって周囲を囲まれ、かつ、前記動力取出部は前記第二フレームによって周囲を囲まれている
請求項1または2に記載のトラクタ。
【請求項11】
前記フレーム体は、前記リンク機構の上昇動作に基づいて前記作業装置と連結可能なように、かつ、前記リンク機構の下降動作に基づいて前記作業装置との連結が解除されるように構成されている
請求項1から10の何れか一項に記載のトラクタ。
【請求項12】
左右の前輪及び左右の後輪を有する走行装置と、
動力源からの動力を変速する
とともに、変速した動力を出力する作業動力出力軸を有する変速装置と
前記変速装置から出力された動力を前記後輪に伝達する後伝動ケースと、が備えられ、
前記後伝動ケースは、前記変速装置のうちの前記後輪への動力を出力する後走行出力部に連結される上連結部が、前記後輪に連結される下連結部よりも高い位置に位置するように構成されている
請求項1から11の何れか一項に記載のトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されたトラクタでは、トップリンクと左右のロアリンクとの夫々にフレーム体(文献では「オートヒッチ」)が連結されている。特許文献1に開示されたフレーム体において、トップリンク及び左右のロアリンクが連結される連結部分(文献では「トップフック」)と、作業装置が連結される連結部分(文献では「ロアフック」)と、が同じ高さ位置に位置するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トラクタのリンク機構に作業装置を取り付けて作業を行う際には、作業装置を好適な作業高さに設定することが重要である。しかし、トラクタの構成によっては、リンク機構の高さ位置が高過ぎたり低過ぎたりすることも考えられ、作業装置を好適な作業高さに設定できないことも考えられる。この場合、作業装置の構成とトラクタの構成とを互いに対応させることが考えられるが、トラクタと作業装置との少なくとも一方の構成を特殊なものにすると、作業装置が汎用トラクタに対して装着できなくなったり、トラクタが汎用の作業装置を装着できなくなったりする虞がある。
【0005】
本発明の目的は、好適な高さ位置で作業装置の作業が可能なコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のトラクタでは、トップリンク及び左右のロアリンクを有し、作業装置を昇降させるリンク機構と、前記リンク機構と前記作業装置との間に介在され、前記リンク機構と前記作業装置とを連結するフレーム体と、が備えられ、前記フレーム体に、前記トップリンク及び前記左右のロアリンクに連結される第一フレームと、前記第一フレームの後方に設けられ、前記作業装置に連結される第二フレームと、前記第一フレームと前記第二フレームとを連結する連結フレームとが備えられ、前記フレーム体は、前記リンク機構が最下降状態であるときに、前記第一フレームにおける前記トップリンク及び前記左右のロアリンクが連結される第一連結部と前記第二フレームにおける前記作業装置が連結される第二連結部とが異なる高さ位置に位置するように構成され、前記連結フレームは、前記第一連結部と前記第二連結部とに亘って連結されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、第一フレームの第一連結部にリンク機構が連結され、第二フレームの第二連結部に作業装置が連結される。第一連結部が第一フレームに備えられ、第二連結部が第二フレームに備えられる。このため、第一連結部及び第二連結部が一つのフレームに備えられる構成と比較して、第一連結部及び第二連結部を異なる高さ位置に設定し易くなる。そして、トラクタと作業装置と夫々の構成に対応して、連結フレームは、第一フレームの高さ位置と第二フレームの高さ位置とをずらした状態で、第一フレームと第二フレームとを連結する構成が可能となる。これにより、好適な高さ位置で作業装置の作業が可能なトラクタが実現される。
本発明のトラクタでは、トップリンク及び左右のロアリンクを有し、作業装置を昇降させるリンク機構と、前記リンク機構と前記作業装置との間に介在され、前記リンク機構と前記作業装置とを連結するフレーム体と、が備えられ、前記フレーム体に、前記トップリンク及び前記左右のロアリンクに連結される第一フレームと、前記第一フレームの後方に設けられ、前記作業装置に連結される第二フレームと、前記第一フレームと前記第二フレームとを連結する連結フレームとが備えられ、前記フレーム体は、前記リンク機構が最下降状態であるときに、前記第一フレームにおける前記トップリンク及び前記左右のロアリンクが連結される第一連結部と前記第二フレームにおける前記作業装置が連結される第二連結部とが異なる高さ位置に位置するように構成され、前記フレーム体は、前記第一フレームと前記連結フレームとの連結を解除可能なように、かつ、前記第一フレームと前記連結フレームとの連結を解除することで、前記連結フレーム及び前記第二フレームを前記第一フレームから取外し可能なように構成され、前記第一フレームに、前記第二連結部と同一の第三連結部が備えられ、前記第一フレームから前記連結フレーム及び前記第二フレームを取り外した状態において、前記第三連結部に前記作業装置を連結可能であることを特徴とする。
本発明によると、第一フレームの第一連結部にリンク機構が連結され、第二フレームの第二連結部に作業装置が連結される。第一連結部が第一フレームに備えられ、第二連結部が第二フレームに備えられる。このため、第一連結部及び第二連結部が一つのフレームに備えられる構成と比較して、第一連結部及び第二連結部を異なる高さ位置に設定し易くなる。そして、トラクタと作業装置と夫々の構成に対応して、連結フレームは、第一フレームの高さ位置と第二フレームの高さ位置とをずらした状態で、第一フレームと第二フレームとを連結する構成が可能となる。これにより、好適な高さ位置で作業装置の作業が可能なトラクタが実現される。
本発明によると、第一フレームがリンク機構と作業装置との両方に連結可能である。このため、例えば作業装置が第二連結部に連結された状態では、作業装置を好適な作業高さに設定できない場合に、作業者は、第一フレームと第二フレームとの連結を解除して、第一フレームの第三連結部に作業装置を連結させることも可能である。このように、本構成であれば、作業者は、作業装置の連結箇所を第二連結部と第三連結部との何れかに選択可能となる。これにより、作業装置の連結箇所を第二連結部のみである構成と比較して、作業者は作業装置を好適な作業高さに設定し易くなる。
本発明のトラクタでは、トップリンク及び左右のロアリンクを有し、作業装置を昇降させるリンク機構と、前記リンク機構と前記作業装置との間に介在され、前記リンク機構と前記作業装置とを連結するフレーム体と、が備えられ、前記フレーム体に、前記トップリンク及び前記左右のロアリンクに連結される第一フレームと、前記第一フレームの後方に設けられ、前記作業装置に連結される第二フレームと、前記第一フレームと前記第二フレームとを連結する連結フレームとが備えられ、前記フレーム体は、前記リンク機構が最下降状態であるときに、前記第一フレームにおける前記トップリンク及び前記左右のロアリンクが連結される第一連結部と前記第二フレームにおける前記作業装置が連結される第二連結部とが異なる高さ位置に位置するように構成され、動力源からの動力を変速するとともに、変速した動力を出力する作業動力出力軸を有する変速装置と、前記作業装置に設けられた動力入力部が連結されることで、動力源からの動力を前記作業装置に対して取出し可能な動力取出部と、前記作業動力出力軸と前記動力取出部とを動力伝達可能に連結する動力伝達装置と、が備えられ、前記作業動力出力軸及び前記動力取出部は、前記第一連結部と前記第二連結部との高さ位置関係と同じ高さ位置関係となるように、異なる高さ位置に設けられ、前記作業動力出力軸は前記第一フレームによって周囲を囲まれ、かつ、前記動力取出部は前記第二フレームによって周囲を囲まれていることを特徴とする。
本発明によると、第一フレームの第一連結部にリンク機構が連結され、第二フレームの第二連結部に作業装置が連結される。第一連結部が第一フレームに備えられ、第二連結部が第二フレームに備えられる。このため、第一連結部及び第二連結部が一つのフレームに備えられる構成と比較して、第一連結部及び第二連結部を異なる高さ位置に設定し易くなる。そして、トラクタと作業装置と夫々の構成に対応して、連結フレームは、第一フレームの高さ位置と第二フレームの高さ位置とをずらした状態で、第一フレームと第二フレームとを連結する構成が可能となる。これにより、好適な高さ位置で作業装置の作業が可能なトラクタが実現される。
本発明によると、作業動力出力軸と動力取出部との高低差が、第一連結部と第二連結部との高低差と同じとなる。つまり、動力取出部が、作業動力出力軸に対して、第一連結部と第二連結部との高低差と同じ分だけ下方に低く設けられている。そして、作業動力出力軸と動力取出部との間に動力伝達装置が介在し、動力伝達装置は作業動力出力軸からの動力を動力取出部へ伝達する。これにより、トラクタにおけるリンク機構と作業動力出力軸との高さ関係を変更することなく、作業装置の動力入力部に対する動力伝達が可能となる。なお、第一フレームは、作業動力出力軸の一部を囲む構成であっても良いし、作業動力出力軸の全部を囲む構成であっても良い。また、第二フレームは、動力取出部の一部を囲む構成であっても良いし、動力取出部の全部を囲む構成であっても良い。
【0008】
本発明において、前記リンク機構が最下降状態であるときに、前記第二連結部が前記第一連結部よりも低い位置に位置すると好適である。また、本発明において、前記第二連結部のうち、最も低い位置に位置する部分は、最下降状態の前記ロアリンクよりも低い位置に設けられていると好適である。
【0009】
本構成であれば、第二連結部が第一連結部以上に高い位置に位置する構成と比較して、リンク機構が最下降状態であるときに、作業装置が十分な低さまで降下し易くなる。
【0010】
本発明において、前記第一連結部に、前記トップリンクの遊端部が連結される第一頂部と、前記左右のロアリンクのそれぞれが連結される左右の第一底角部と、が備えられ、前記第一フレームは、前記第一頂部と前記左右の第一底角部とによって規定される三角形形状に構成され、前記第二連結部に、前記作業装置における三つの連結具が連結される第二頂部及び左右の第二底角部が備えられ、前記第二フレームは、前記第二頂部と前記左右の第二底角部とによって規定される三角形形状に構成され、前記連結フレームに、前記第一頂部と前記第二頂部とに亘る頂部フレーム部と、左の前記第一底角部と左の前記第二底角部とに亘る左底角フレーム部と、右の前記第一底角部と右の前記第二底角部とに亘る右底角フレーム部と、が備えられていると好適である。
【0011】
本構成であれば、第一フレームと第二フレームとの夫々が三角形形状に構成され、第一フレームと第二フレームとの夫々の三角形の頂点同士が連結フレームによって連結される。これにより、構成が複雑にならずに、第一フレームと第二フレームとが強固に連結される。また、連結フレームが、第一フレームと第二フレームとの夫々の三角形形状の頂点同士を連結する。このため、連結フレームは、必要最小限のシンプルな形状に構成され、第一フレームと第二フレームとの夫々の力の伝達効率を良くすることができる。なお、『三角形形状』には、略三角形形状も含まれる。
【0012】
本発明において、前記第一フレームと前記第二フレームとは、同じ三角形形状に構成されていると好適である。
【0013】
本構成であれば、第一フレームと第二フレームとの夫々に同一形状のフレームを用いることが可能となり、フレーム体の構成が簡素化され、コスト面でも有利である。なお、『同じ三角形形状』には、略同じ三角形形状も含まれ、同じ略三角形形状も含まれ、略同じ略三角形形状も含まれる。
【0014】
本発明において、前記第二連結部に、前記作業装置における連結具に係止可能な係止部と、前記係止部の係止状態を保持するロック機構とが備えられ、前記ロック機構による係止保持によって前記第二連結部と前記作業装置との連結状態が維持され、前記ロック機構による係止保持が解除されることによって前記連結状態が解除可能であり、前記ロック機構を係止保持状態と係止解除状態とに切換操作する操作具が、運転部から手動操作可能な位置に備えられていると好適である。
【0015】
第二フレームは第一フレームの後方に設けられるため、第一連結部及び第二連結部が一つのフレームに備えられる構成と比較して、運転部とロック機構との離間距離が離れがちである。本構成であれば、第二フレームが第一フレームの後方に設けられる構成であっても、運転部から手動操作可能な位置に操作具が備えられているため、運転部のオペレータはロック機構を容易に切換操作できる。
【0016】
本発明において、前記フレーム体は、前記第一フレームと前記連結フレームとの連結を解除可能なように、かつ、前記第一フレームと前記連結フレームとの連結を解除することで、前記連結フレーム及び前記第二フレームを前記第一フレームから取外し可能なように構成され、前記第一フレームに、前記第二連結部と同一の第三連結部が備えられ、前記第一フレームから前記連結フレーム及び前記第二フレームを取り外した状態において、前記第三連結部に前記作業装置を連結可能であると好適である。
【0017】
本構成によると、第一フレームがリンク機構と作業装置との両方に連結可能である。このため、例えば作業装置が第二連結部に連結された状態では、作業装置を好適な作業高さに設定できない場合に、作業者は、第一フレームと第二フレームとの連結を解除して、第一フレームの第三連結部に作業装置を連結させることも可能である。このように、本構成であれば、作業者は、作業装置の連結箇所を第二連結部と第三連結部との何れかに選択可能となる。これにより、作業装置の連結箇所を第二連結部のみである構成と比較して、作業者は作業装置を好適な作業高さに設定し易くなる。
【0018】
本発明において、動力源からの動力を変速するとともに、変速した動力を出力する作業動力出力軸を有する変速装置と、前記作業装置に設けられた動力入力部が連結されることで、動力源からの動力を前記作業装置に対して取出し可能な動力取出部と、前記作業動力出力軸と前記動力取出部とを動力伝達可能に連結する動力伝達装置と、が備えられ、前記作業動力出力軸及び前記動力取出部は、前記第一連結部と前記第二連結部との高さ位置関係と同じ高さ位置関係となるように、異なる高さ位置に設けられ、前記作業動力出力軸は前記第一フレームによって周囲を囲まれ、かつ、前記動力取出部は前記第二フレームによって周囲を囲まれていると好適である。
【0019】
本構成によると、作業動力出力軸と動力取出部との高低差が、第一連結部と第二連結部との高低差と同じとなる。つまり、動力取出部が、作業動力出力軸に対して、第一連結部と第二連結部との高低差と同じ分だけ下方に低く設けられている。そして、作業動力出力軸と動力取出部との間に動力伝達装置が介在し、動力伝達装置は作業動力出力軸からの動力を動力取出部へ伝達する。これにより、トラクタにおけるリンク機構と作業動力出力軸との高さ関係を変更することなく、作業装置の動力入力部に対する動力伝達が可能となる。なお、第一フレームは、作業動力出力軸の一部を囲む構成であっても良いし、作業動力出力軸の全部を囲む構成であっても良い。また、第二フレームは、動力取出部の一部を囲む構成であっても良いし、動力取出部の全部を囲む構成であっても良い。
【0020】
本発明において、前記フレーム体は、前記リンク機構の上昇動作に基づいて前記作業装置と連結可能なように、かつ、前記リンク機構の下降動作に基づいて前記作業装置との連結が解除されるように構成されていると好適である。
【0021】
本構成であれば、作業者がリンク機構を昇降操作させるだけで、作業装置の連結と連結解除とを可能となるため、作業装置の連結作業及び連結解除作業が容易になる。
【0022】
本発明において、左右の前輪及び左右の後輪を有する走行装置と、動力源からの動力を変速するとともに、変速した動力を出力する作業動力出力軸を有する変速装置と前記変速装置から出力された動力を前記後輪に伝達する後伝動ケースと、が備えられ、前記後伝動ケースは、前記変速装置のうちの前記後輪への動力を出力する後走行出力部に連結される上連結部が、前記後輪に連結される下連結部よりも高い位置に位置するように構成されていると好適である。
【0023】
後伝動ケースにおける上連結部が下連結部よりも高い位置に位置する構成は、いわゆる『ハイクリアランス』と呼ばれるトラクタの構成である。トラクタがハイクリアランスの構成で、かつ、動力取出部がロアリンクと略同じ高さ位置、または、左右のロアリンクよりも高い位置に設けられる構成であると、作業装置の連結位置が高い位置となる。この場合、作業装置もハイクリアランスの構成に対応していなければ、作業装置が地面に届かずに対地作業できない虞がある。本構成であれば、第一フレームにおける第一連結部と、第二フレームにおける第二連結部と、が異なる高さ位置に設定可能であるため、ハイクリアランスの構成に対応していない作業装置であっても、作業装置が地面に届き易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】オートヒッチ機構を取り付けたトラクタの全体左側面図である。
【
図7】ロック機構、操作レバー、連係機構の動きを実線と破線とで示す図である。
【
図9】動力取出軸に作業装置の動力入力軸がはまり込み始める様子を示す縦断面図である。
【
図10】動力取出軸に作業装置の動力入力軸がはまり込んだ後の様子を示す縦断面図である。
【
図11】別実施形態のオートヒッチ機構の拡大左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1~
図11において、「F」で示された矢印は前方向を示し、「B」で示された矢印は後方向を示し、「U」で示された矢印は上方向を示し、「D」で示された矢印は下方向を示し、「R」で示された矢印は右方向を示し、「L」で示された矢印は左方向を示している。
【0026】
〔トラクタの全体構成〕
図1~
図3に示されるように、左右の前輪1、左右の後輪2によって、機体3が支持されている。機体3に運転部4が設けられている。左右の前輪1及び左右の後輪2は、本発明の『走行装置』である。
【0027】
図1~
図3に示されるように、機体3に、前部ミッションケース5と、後部ミッションケース6と、静油圧式の無段変速装置7と、機体フレーム8と、機体フレーム9と、エンジン10と、が備えられている。エンジン10は、本発明の『動力源』である。後部ミッションケース6の前部に無段変速装置7が連結され、チャンネル状の機体フレーム8が前部ミッションケース5と無段変速装置7とに亘って連結されている。左右の機体フレーム9が、前部ミッションケース5に連結されて前後方向に沿って配置されている。機体フレーム9に左右の前輪1が支持されている。左右の後輪2が、後部ミッションケース6に支持されている。
【0028】
エンジン10は、前部ミッションケース5の前部及び機体フレーム9の上部に連結されている。エンジン10はボンネット11によって覆われている。エンジン10の動力が前部ミッションケース5の内部の伝動軸(不図示)及び伝動ギヤ(不図示)に伝達される。前部ミッションケース5と無段変速装置7とに亘って伝動軸(不図示)が接続され、エンジン10の動力が前部ミッションケース5から当該伝動軸を介して無段変速装置7に伝達される。
【0029】
前部ミッションケース5は、本発明の『変速装置』である。前部ミッションケース5は、PTO軸17を有し、エンジン10からの動力を変速する。PTO軸17は、前部ミッションケース5から機体3の後端部まで延ばされる。前部ミッションケース5によって変速された動力は、無段変速装置7とPTO軸17とに分配される。
【0030】
無段変速装置7は、前進側及び後進側に無段階に変速可能に構成されている。無段変速装置7の動力が、後部ミッションケース6の内部の副変速装置(不図示)及び後輪デフ装置(不図示)を介して、左右の後輪2に伝達される。当該後輪デフ装置の直前から分岐された動力が、後部ミッションケース6と前部ミッションケース5とに亘って接続された伝動軸(不図示)を介して、前部ミッションケース5の前輪伝動用の伝動軸(不図示)から前輪デフ装置(不図示)に伝達されて、左右の前輪1に伝達される。
【0031】
後部ミッションケース6の左右側方の夫々に、左右の後伝動ケース18が備えられている。
図3の背面図では、左右の後伝動ケース18が、太線で囲まれ、かつ、灰色に色づけした状態で示されている。つまり、
図3の背面図は、左右の後伝動ケース18を明確に示すものである。後部ミッションケース6の左右両側部に、左右の後輪2への動力を出力する後走行出力部6Aが備えられている。左右の後伝動ケース18の夫々の横内端部18Aが後部ミッションケース6の後走行出力部6Aに連結される。左右の後伝動ケース18の夫々の機体横外部は下方に延ばされ、後伝動ケース18の横外端部18Bが後輪2に連結される。これにより、左右の後伝動ケース18の夫々は、後部ミッションケース6から出力された動力を左右の後輪2に伝達する。後部ミッションケース6から出力された動力は、後走行出力部6Aから後伝動ケース18の内部の伝動軸(不図示)を介して後輪2へ伝達される。これにより、左右の後輪2は回転する。後伝動ケース18の横内端部18Aが本発明の『上連結部』であって、後伝動ケース18の横外端部18Bが本発明の『下連結部』である。後伝動ケース18は、後走行出力部6Aに連結される上連結部が、後輪2に連結される下連結部よりも高い位置に位置するように構成されている。
【0032】
前部ミッションケース5の前方に第一前伝動ケース19Aが備えられ、第一前伝動ケース19Aは機体横方向に沿って延びる。また、第一前伝動ケース19Aの左右側方の夫々に、左右の第二前伝動ケース19Bが備えられている。
図2の正面図では、第一前伝動ケース19Aの前方に位置する他の部材を透過させた状態で、第一前伝動ケース19Aが太線で明確に示されている。また、
図2の正面図では、左右の第二前伝動ケース19Bが、太線で囲まれ、かつ、灰色に色づけした状態で示されている。左右の第二前伝動ケース19Bの夫々の機体横内端部が第一前伝動ケース19Aの機体横外端部に連結される。左右の第二前伝動ケース19Bの夫々の機体横外部は下方に延ばされ、第二前伝動ケース19Bの機体横外端部が前輪1に連結される。前部ミッションケース5の前輪伝動用の動力が、第一前伝動ケース19Aの内部の前輪デフ装置(不図示)及び伝動軸(不図示)と、第二前伝動ケース19Bの内部の伝動ギヤ(不図示)と、を介して前輪1に伝達される。これにより、左右の前輪1は回転する。第二前伝動ケース19Bは、第一前伝動ケース19Aの機体横外端部に連結される部分が、前輪1に連結される部分よりも高い位置に位置するように構成されている。
【0033】
このように、本実施形態に示されるトラクタは、いわゆる『ハイクリアランス』と呼ばれる構成のトラクタである。
図2及び
図3に示されるように、左右の後伝動ケース18が後部ミッションケース6の左右両側部から下方に延ばされるとともに、第二前伝動ケース19Bが第一前伝動ケース19Aの左右両端部から下方に延ばされている。つまり、本発明の走行装置は、機体正面視及び機体背面視において略門型形状に形成されている。このため、機体3の下方空間に、生育中の作物がそのまま植立できる空間が存在する。また、左右の前輪1は第一前伝動ケース19Aの縦軸芯まわりに揺動し、左右の後輪2は後伝動ケース18の縦軸芯まわりに揺動する。本実施形態のトラクタは四輪操舵を可能である。本実施形態のトラクタは、特に、圃場における畝間の中耕作業等に適している。
【0034】
機体3の後端部(後部ミッションケース6の後下部)に、三点リンク機構12が上下揺動可能に連結され、三点リンク機構12は作業装置を昇降させる。三点リンク機構12は、本発明の『リンク機構』である。本実施形態では、作業装置として、畝間の中耕除草管理機、カルチベータ、ディスクハロー、パワーハロー、播種機、肥料や除草剤等の散布機等が例示されるがこれに限定されない。
【0035】
三点リンク機構12に、単一のトップリンク13と、左右のロアリンク14と、上下に揺動操作される左右のリフトアーム15と、が備えられている。ロアリンク14は機体3の後端部に上下揺動可能に連結されている。右のリフトアーム15と右のロアリンク14とに亘って、連係ロッド16が接続されている。左右のリフトアーム15が上下に揺動操作されることによって、左右のロアリンク14が上下に揺動し、作業装置が昇降操作される。
【0036】
PTO軸17が機体3の後端部に備えられている。PTO軸17は、エンジン10からの回転力を、ユニバーサルジョイント23を介して作業装置へ伝達する。PTO軸17は、最下降状態のロアリンク14よりも高い位置に設けられ、回転動力を出力する。ユニバーサルジョイント23は、PTO軸17に連結され、PTO軸17からロアリンク14の後端部まで延ばされている。
【0037】
〔オートヒッチ機構について〕
上述したように、本実施形態に示されるトラクタは、いわゆる『ハイクリアランス』と呼ばれる構成のトラクタである。このため、三点リンク機構12の高さ位置と、ハイクリアランスの構成ではない同クラスの汎用のトラクタに設けられた三点リンク機構の高さ位置と、を比較すると、三点リンク機構12の高さ位置の方が高い。この状態で作業装置が三点リンク機構12に連結されると、作業装置の連結位置が高い位置となる。この場合、作業装置がハイクリアランス用に対応していなければ、作業装置が地面に届かずに対地作業できない虞がある。
【0038】
この不都合を回避する手段として、三点リンク機構12の高さ位置を下げることが考えられるが、この場合には、PTO軸17と作業装置の動力入力軸50(
図9及び
図10参照、以下同じ)とに接続されるユニバーサルジョイント23が後下がりに大きく傾斜する。ユニバーサルジョイント23が後下がりに大きく傾斜すると、PTO軸17とユニバーサルジョイント23とのジョイント部分における二つの軸の角度差が大きくなる。また、ユニバーサルジョイント23が後下がりに大きく傾斜すると、ユニバーサルジョイント23と作業装置の動力入力軸50とのジョイント部分における二つの軸の角度差も大きくなる。ジョイント部分における二つの軸の角度差が大きくなると、ジョイント部分における騒音が大きくなったり、動力取出軸25cにおいて不等速回転や脈動が発生したりする虞がある。
【0039】
また、上述の不都合を回避する手段としては、ロアリンク14の後端部を後方へ更に長く延ばす構成も考えられる。しかし、この構成であると、作業装置が機体3に対して更に後方に位置することになるため、トラクタの前後の重心バランスが後寄りに偏りがちとなったり、作業装置を上昇させる際のモーメント荷重が大きくなったりする。
【0040】
上述の不都合を回避するため、本実施形態では、
図1,
図4~
図6に示されるオートヒッチ機構20が備えられている。三点リンク機構12はオートヒッチ機構20を取付け可能に構成されている。トップリンク13及びロアリンク14の後端部に、オートヒッチ機構20が連結可能であり、作業装置がオートヒッチ機構20を介して三点リンク機構12に昇降可能に連結される。なお、
図3の背面図では、オートヒッチ機構20が連結されていない状態が示されている。
【0041】
オートヒッチ機構20に、第一フレーム21と、第二フレーム22と、縦伝達機構24と、動力取出部25と、連結フレーム26と、ロック機構27と、操作レバー28と、が備えられている。第一フレーム21及び第二フレーム22は、本発明の『フレーム体』である。第一フレーム21及び第二フレーム22は、三点リンク機構12と作業装置との間に介在され、三点リンク機構12と作業装置とを連結する。操作レバー28は、本発明の『操作具』である。
【0042】
〔オートヒッチ機構のフレーム体〕
第一フレーム21は、トップリンク13及びロアリンク14に連結される。第一フレーム21は、三点リンク機構12に対して着脱可能である。このため、三点リンク機構12は、オートヒッチ機構20を介さずに作業装置を直接取り付けることも可能である。第二フレーム22は、第一フレーム21の後方に設けられている。第二フレーム22は、作業装置が連結されるように構成されている。連結フレーム26は第一フレーム21と第二フレーム22とを連結する。
【0043】
図5に示されるように、第一フレーム21に、第一外径フレーム21aと、第一右縦フレーム21cと、第一左縦フレーム21dと、第一横フレーム21bと、第一横フレーム21bよりも下側に位置する横フレーム21eと、が備えられている。第一外径フレーム21aと、第一右縦フレーム21cと、第一左縦フレーム21dと、第一横フレーム21bと、横フレーム21eと、は溶接によって連結されている。
【0044】
第一外径フレーム21aは、機体背面視において略三角形形状に構成されている。第一外径フレーム21aの左右側部のうちの少なくとも上部は、上側ほど第一フレーム21の左右中央領域に位置するように傾斜する。第一横フレーム21bの左右両端部は、第一外径フレーム21aにおける左右の傾斜部分に連結されている。第一横フレーム21bは機体横方向に沿って延びる。
【0045】
第一外径フレーム21aよりも内側において、第一右縦フレーム21cと第一左縦フレーム21dとの夫々は、左右に並ぶ状態で設けられ、かつ、上下に延びる。第一右縦フレーム21cの上端部は第一横フレーム21bの右端部に連結され、第一左縦フレーム21dの上端部は第一横フレーム21bの左端部に連結されている。第一右縦フレーム21cと第一左縦フレーム21dとの夫々の下端部は、第一外径フレーム21aの底部に連結されている。
【0046】
横フレーム21eの左右両端部は第一右縦フレーム21cと第一左縦フレーム21dとの夫々に連結されている。横フレーム21eは、第一右縦フレーム21cと第一左縦フレーム21dとの間において機体横方向に沿って延びる。横フレーム21eと、第一外径フレーム21aの底部と、の夫々は、後述する縦伝達機構24の取付部分である。
【0047】
第二フレーム22に、第二外径フレーム22aと、第二右縦フレーム22cと、第二左縦フレーム22dと、第二横フレーム22bと、が備えられている。第二外径フレーム22aは、機体背面視において略三角形形状に構成されている。第二外径フレーム22aの左右側部のうちの少なくとも上部は、上側ほど第二フレーム22の左右中央領域に位置するように傾斜する。第二横フレーム22bの左右両端部は、第二外径フレーム22aにおける左右の傾斜部分に連結されている。第二横フレーム22bは機体横方向に沿って延びる。
【0048】
第二外径フレーム22aよりも内側において、第二右縦フレーム22cと第二左縦フレーム22dとの夫々は、左右に並ぶ状態で設けられ、かつ、上下に延びる。第二右縦フレーム22cの上端部は第二横フレーム22bの右端部に連結され、第二左縦フレーム22dの上端部は第二横フレーム22bの左端部に連結されている。第二右縦フレーム22cと第二左縦フレーム22dとの夫々の下端部は、第二外径フレーム22aの底部に連結されている。
【0049】
このように、第一フレーム21と第二フレーム22との夫々は、中空のスケルトン形状に構成されている。第一フレーム21と第二フレーム22との夫々の外形は略二等辺三角形の形状に形成されている。また、第一フレーム21の外形サイズは、第二フレーム22の外形サイズと同じまたは略同じである。つまり、第一フレーム21及び第二フレーム22は、同じ略三角形形状に構成されている。
【0050】
第一フレーム21の上端部に第一頂部21Uが備えられ、第一頂部21Uは背面視において上下反転のU字状に形成されている。第一頂部21Uは、トップリンク13の遊端部とピン連結されている。また、第一フレーム21の下部における左右両端部の夫々に第一底角部21L,21Rが備えられている。左右の第一底角部21L,21Rの夫々は、左右のロアリンク14とピン連結されている。
【0051】
以下、第一頂部21U、第一底角部21L,21Rの総称を『第一連結部』と称する。第一連結部は、第一フレーム21におけるトップリンク13及びロアリンク14が連結される箇所である。つまり、第一連結部に、トップリンク13の遊端部が連結される第一頂部21Uと、左右のロアリンク14の夫々が連結される左右の第一底角部21L,21Rと、が備えられている。
【0052】
第一頂部21Uは第一外径フレーム21aの上端部と溶接によって連結され、第一底角部21Lは第一外径フレーム21aの左下端部と溶接によって連結され、第一底角部21Rは第一外径フレーム21aの右下端部と溶接によって連結されている。
【0053】
第一外径フレーム21aのうち、第一底角部21L及び第一底角部21Rよりも上側部分は左右中央側ほど上側に位置するように傾斜する。また、第一外径フレーム21aの底部は、第一底角部21Lと第一底角部21Rとに亘って横方向に沿って延びる。このことから、第一フレーム21は、第一頂部21Uと左右の第一底角部21L,21Rとによって規定される二等辺三角形の形状に構成されている。
【0054】
第二フレーム22の上端部に第二頂部22Uが備えられ、第二フレーム22の下部における左右両端部の夫々に第二底角部22L,22Rが備えられている。第二フレーム22は第二外径フレーム22aの上端部と溶接によって連結され、第二底角部22Lは第二外径フレーム22aの左下端部と溶接によって連結され、第二底角部22Rは第二外径フレーム22aの右下端部と溶接によって連結されている。
【0055】
第二外径フレーム22aのうち、第二底角部22L及び第二底角部22Rよりも上側部分は左右中央側ほど上側に位置するように傾斜する。また、第二外径フレーム22aの底部は、第二底角部22Lと第二底角部22Rとに亘って横方向に沿って延びる。第二フレーム22は、第二頂部22Uと左右の第二底角部22L,22Rとによって規定される略二等辺三角形の形状に構成されている。
【0056】
第二頂部22Uは背面視において上下反転のU字状に形成されている。第二頂部22Uに係止凹部22iが形成されている。係止凹部22iの上部は開放されている。第二頂部22Uの係止凹部22iは、作業装置における公知のトップマスト(不図示)を係止可能に構成されている。公知であるため詳述はしないが、当該トップマストは、正面視または背面視において上下反転のV字状に形成され、当該トップマストの上端部の下方に第二頂部22Uが入り込む空間が存在する。第二頂部22Uが当該空間に入り込んだ状態で、オートヒッチ機構20の装着された三点リンク機構12が上向きに揺動し、係止凹部22iが当該トップマストの上部に対して下側から当接することによって、当該トップマストが係止凹部22iに係止される。
【0057】
左右の第二底角部22L,22Rの夫々に係止凹部22jが形成されている。係止凹部22jの後部は開放されている。作業装置には、左右の第二底角部22L,22Rの夫々における係止凹部22jと係合可能な左右の係止ピン(不図示)が備えられている。公知であるため詳述はしないが、当該左右の係止ピンは、作業装置における上述のトップマストに対して左右に振り分け配置され、かつ、作業装置のトップマストよりも下側に位置する。なお、作業装置の動力入力軸50は、当該トップマストの下方に設けられている。作業装置のトップマストが係止凹部22jに係止された状態で、三点リンク機構12がオートヒッチ機構20とともに上向きに揺動すると、作業装置は第二頂部22Uの係止凹部22iを軸芯に揺動する。
図1、
図4及び
図6における左側面視では、三点リンク機構12がオートヒッチ機構20とともに上向きに揺動すると、作業装置は時計回りに揺動する。そして、当該左右の係止ピンの夫々が、左右の係止凹部22jに対して後側から当接することによって、当該左右の係止ピンが、左右の第二底角部22L,22Rの夫々の係止凹部22jに係止される。これにより、作業装置がオートヒッチ機構20に連結される。このように、左右の第二底角部22L,22Rに、作業装置における係止ピンに係止可能な左右の係止凹部22jが備えられている。
【0058】
次に、作業装置とオートヒッチ機構20との連結を解除する場合に関して説明する。三点リンク機構12がオートヒッチ機構20とともに下向きに揺動すると、作業装置が接地する。作業装置が接地した状態、かつ、後述する左右のロック機構27が作業装置における左右の係止ピンを係止保持しない状態において、トラクタが低速で前進すると、作業装置が第二頂部22Uの係止凹部22iを軸芯に揺動する。
図1、
図4及び
図6における左側面視では、作業装置が反時計回りに揺動する。そして、作業装置が揺動しながら、当該左右の係止ピンが左右の係止凹部22jから離れる。これにより、当該左右の係止ピンが、左右の第二底角部22L,22Rの夫々の係止凹部22jに係止されなくなる。そして、三点リンク機構12がオートヒッチ機構20とともに更に下向きに揺動すると、作業装置における上述のトップマストが係止凹部22iから離れる。これにより、当該トップマストが、係止凹部22iに係止されなくなり、作業装置とオートヒッチ機構20との連結が解除される。
【0059】
このように、オートヒッチ機構20の第二フレーム22は、三点リンク機構12の上昇動作に基づいて作業装置と連結可能なように、かつ、三点リンク機構12の下降動作に基づいて作業装置との連結が解除されるように構成されている。
【0060】
以下、第二頂部22U、第二底角部22L,22Rの総称を『第二連結部』と称する。第二連結部は、第二フレーム22における作業装置が連結される箇所である。つまり、第二連結部に、作業装置における三つの連結具(トップマスト、左右の係止ピン)が連結される第二頂部22U及び左右の第二底角部22L,22Rが備えられている。
【0061】
連結フレーム26に、頂部フレーム部26Uと左底角フレーム部26Lと右底角フレーム部26Rとが備えられている。第一頂部21Uと第二頂部22Uとが頂部フレーム部26Uによって連結され、頂部フレーム部26Uは第一頂部21Uと第二頂部22Uとに亘る。第一底角部21Lと第二底角部22Lとが左底角フレーム部26Lによって連結され、左底角フレーム部26Lは第一底角部21Lと第二底角部22Lとに亘る。第一底角部21Rと第二底角部22Rとが右底角フレーム部26Rによって連結され、右底角フレーム部26Rは第一底角部21Rと第二底角部22Rとに亘る。つまり、連結フレーム26は、第一フレーム21と第二フレーム22との夫々の三角形形状の頂点同士を連結する。これにより、連結フレーム26は、必要最小限のシンプルな形状に構成され、第一フレーム21と第二フレーム22との夫々の力の伝達効率を良くすることができる。
【0062】
つまり、第一フレーム21と第二フレーム22との夫々の上端部が頂部フレーム部26Uによって連結され、第一フレーム21と第二フレーム22との夫々の左右両端部が左底角フレーム部26L及び右底角フレーム部26Rによって連結されている。このように、第一フレーム21と第二フレーム22とが三点で連結されている。
【0063】
頂部フレーム部26Uの上端部と第一頂部21Uとが溶接によって連結され、頂部フレーム部26Uの下端部と第二頂部22Uとが溶接によって連結されている。左底角フレーム部26Lの上端部と第一底角部21Lとが溶接によって連結され、左底角フレーム部26Lの下端部と第二底角部22Lとが溶接によって連結されている。右底角フレーム部26Rの上端部と第一底角部21Rとが溶接によって連結され、右底角フレーム部26Rの下端部と第二底角部22Rとが溶接によって連結されている。つまり、第一フレーム21と第二フレーム22とが溶接によって連結されている。
【0064】
頂部フレーム部26Uと左底角フレーム部26Lと右底角フレーム部26Rとの夫々は後側ほど下側に位置するように、後下がりに傾斜する。このため、第二フレーム22の上端部は第一フレーム21の上端部よりも下側に位置し、第二フレーム22の下端部は第一フレーム21の下端部よりも下側に位置する。第一フレーム21の上端部と第二フレーム22の上端部との高低差と、第一フレーム21の下端部と第二フレーム22の下端部との高低差と、は同じまたは略同じである。
【0065】
第二頂部22Uは第一頂部21Uよりも下側に位置し、第二底角部22L,22Rは第一底角部21L,21Rよりも下側に位置する。つまり、三点リンク機構12が最下降状態であるときに、第二連結部(第二頂部22U、第二底角部22L,22R)が第一連結部(第一頂部21U、第一底角部21L,21R)よりも低い位置に位置する。つまり、オートヒッチ機構20における第一フレーム21及び第二フレーム22は、三点リンク機構12が最下降状態であるときに、第一連結部と第二連結部とが異なる高さ位置に位置するように構成されている。なお、第一頂部21Uと第二頂部22Uとの高低差と、第一底角部21L,21Rと第二底角部22L,22Rとの高低差と、は同じまたは略同じである。
【0066】
左右の第二底角部22L,22Rは、第二フレーム22において、作業装置と連結される部分のうちの最も低い部分である。第二連結部のうち、最も低い位置に位置する部分である左右の第二底角部22L,22Rは、最降下状態のロアリンク14よりも低い位置に設けられている。
【0067】
〔オートヒッチ機構において作業装置の連結状態を保持するロック機構〕
図4、
図5及び
図7に示されるように、第二フレーム22のうちの左右の第二底角部22L,22Rの位置する部分の夫々にロック機構27が備えられている。即ち、左右の第二底角部22L,22Rに、係止凹部22jの係止状態を保持するロック機構27が備えられている。
【0068】
左右の第二底角部22L,22Rのうち、係止凹部22jよりも前側に位置する部分に横向きの揺動軸芯Y1が設けられ、左右のロック機構27の夫々は、揺動軸芯Y1まわりに上下揺動可能に構成されている。そして左右のロック機構27の夫々は、係止凹部22jの開放部分を閉塞する係止保持状態と、係止凹部22jよりも下側に揺動して係止凹部22jの開放部分を開放する係止解除状態と、に状態変更可能に構成されている。
【0069】
第二頂部22Uと作業装置のトップマストとが係合し、かつ、左右の第二底角部22L,22Rと作業装置における左右の係止ピンとが係合した状態で、左右のロック機構27が係止凹部22jの開放部分を閉塞すると、作業装置がオートヒッチ機構20に連結された状態が保持される。つまり、ロック機構27による係止保持によって、オートヒッチ機構20の第二フレーム22における第二連結部(第二頂部22U、左右の第二底角部22L,22R)と作業装置との連結状態が維持される。つまり、第二連結部に、作業装置における連結具(トップマスト、左右の係止ピン)に係止可能な係止部として、係止凹部22iと係止凹部22jとロック機構27とが備えられている。
【0070】
左右のロック機構27の夫々は、操作レバー28によって操作される。頂部フレーム部26Uの下部に操作レバー28の揺動軸芯Y2が設けられ、操作レバー28は揺動軸芯Y2まわりに前後揺動可能なように頂部フレーム部26Uの下部に支持される。操作レバー28は運転部4の後方に設けられ、運転部4のオペレータは、運転部4から後方の操作レバー28に手を伸ばし、操作レバー28を前後に揺動操作する。つまり、左右のロック機構27を係止保持状態と係止解除状態とに切換操作する操作レバー28が、運転部4から手動操作可能な位置に備えられている。
【0071】
図4、
図5及び
図7に示されるように、左右のロック機構27の夫々と、操作レバー28と、が連係機構29によって連結されている。連係機構29は、棒状部材を屈曲させることによって構成されている。操作レバー28のうち揺動軸芯Y2よりも下側に位置する下部は前下がりに延び、操作レバー28の当該下部に丸孔が穿孔されている。そして、操作レバー28の当該丸孔を連係機構29が貫通する。連係機構29の左右中央領域は、操作レバー28の当該丸孔を貫通する状態で機体横方向に沿って延び、連係機構29の左右中央両端部が下向きに延びて、左右のロック機構27の夫々に形成された丸孔を貫通する。
【0072】
操作レバー28の上部が揺動軸芯Y2まわりに前後揺動すると、操作レバー28の当該下部が上下に揺動し、連係機構29が上下に変位する。作業者が操作レバー28を前側に揺動操作すると、操作レバー28の下部が下側に揺動し、連係機構29が下方に変位する。そして、左右のロック機構27の夫々が、
図4及び
図7における機体左側面視において反時計回りに揺動し、係止凹部22jの開放部分を閉塞する係止保持状態になる。また、
図7の破線で示されるように、作業者が操作レバー28を後側に揺動操作すると、操作レバー28の下部が上側に揺動し、連係機構29が上方に変位する。そして、左右のロック機構27の夫々が、
図4及び
図7における機体左側面視において時計回りに揺動し、係止凹部22jの開放部分を開放する係止解除状態になる。そして、ロック機構27による係止保持が解除されることによって、オートヒッチ機構20の第二フレーム22における第二連結部(第二頂部22U、左右の第二底角部22L,22R)と、作業装置と、の連結状態が解除可能となる。
【0073】
図5、
図7及び
図8に示されるように、頂部フレーム部26Uの上下中央領域にストッパ部30が支持されている。ストッパ部30は平板状に形成され、ストッパ部30の左側縁部が操作レバー28と摺接する。ストッパ部30の左側縁部に切欠部30iが形成され、ストッパ部30の左側縁部は段差状に形成されている。ストッパ部30の左側縁部のうち、切欠部30iよりも前側部分は、切欠部30iよりも機体左側に突出する。本実施形態では、操作レバー28は金属によって構成され、操作レバー28の左右方向の弾性変形が許容される。作業者が操作レバー28を後側に揺動すると、操作レバー28が切欠部30iに入り込み、左右のロック機構27が係止解除状態に保持される。このため、作業者がオートヒッチ機構20と作業装置との連結を解除する場合、作業者は、操作レバー28を後側に揺動操作して操作レバー28を切欠部30iに係止させる。これにより、操作レバー28の前方への揺動が阻止され、左右のロック機構27が係止解除状態に保持される。この状態で、作業者は、操作レバー28の状態を気にすることなく、作業装置とオートヒッチ機構20との連結解除作業に専念できる。
【0074】
〔オートヒッチ機構における動力伝達構造〕
図4~
図6に示されるように、縦伝達機構24は、第一フレーム21に支持され、かつ、上下方向において第一フレーム21の下端部よりも下側に延びる。動力取出部25は第二フレーム22に支持され、第一フレーム21の下端部よりも下側に位置する。動力取出部25は、最下降状態のロアリンク14よりも低い位置に設けられ、かつ、最下降状態のロアリンク14の後端部よりも後側に設けられている。縦伝達機構24は本発明の『動力伝達装置』である。
【0075】
エンジン10からの動力が、PTO軸17からユニバーサルジョイント23及び縦伝達機構24を介して動力取出部25へ伝達される。換言すると、ユニバーサルジョイント23及び縦伝達機構24は、PTO軸17と動力取出部25とを動力伝達可能に連結する。ユニバーサルジョイント23は、PTO軸17に連結され、動力取出部25よりも高い位置を通されてロアリンク14の後端部まで延ばされている。
【0076】
作業装置に公知の動力入力軸50(
図9及び
図10参照、以下同じ)が備えられる。作業装置の動力入力軸50は、本発明の『作業装置に設けられた動力入力部』である。動力取出部25における動力取出軸25cと、作業装置の動力入力軸50と、がスプライン結合によって連結され、動力取出部25の回転動力が作業装置の動力入力軸50に伝達される。このように、動力取出部25は、作業装置に設けられた動力入力軸50が連結されることで、エンジン10からの動力を作業装置に対して取出し可能なように構成されている。
【0077】
縦伝達機構24は、PTO軸17と動力取出部25との間に介在する。上述したように、動力取出部25が最下降状態のロアリンク14よりも低い位置に設けられている。このため、単にユニバーサルジョイント23がPTO軸17と動力取出軸25cとに直結するだけの構成であると、ユニバーサルジョイント23が後下がりに大きく傾斜し、PTO軸17と動力取出軸25cとの夫々に対するジョイント部分における二つの軸の角度差が大きくなる。ジョイント部分における二つの軸の角度差が大きくなると、ジョイント部分における騒音が大きくなったり、動力取出軸25cにおいて不等速回転や脈動が発生したりする虞がある。この不都合を回避するため、縦伝達機構24は、ユニバーサルジョイント23と動力取出部25とを連結し、ユニバーサルジョイント23からの動力を縦方向に沿って伝達する。ユニバーサルジョイント23の後端部は、本発明の『作業動力出力軸』である。ユニバーサルジョイント23の後端部は、第一フレーム21によって周囲を囲まれている。このため、ユニバーサルジョイント23の後端部が第一フレーム21によってしっかりと守られ、ユニバーサルジョイント23の後端部が異物と接触する虞が軽減される。
【0078】
縦伝達機構24は、前後方向において第一フレーム21と第二フレーム22との間に位置する。また、縦伝達機構24は、機体背面視において第一フレーム21及び第二フレーム22の外周部分に囲まれている。つまり、本発明のフレーム体である第一フレーム21及び第二フレーム22は、縦伝達機構24の周囲を囲う状態で設けられている。
【0079】
縦伝達機構24に、取付プレート24aと、入力軸24cと、上スプロケット部24dと、無端回動チェーン24eと、ケース24Fと、が備えられている。取付プレート24a及びケース24Fは上下に延び、ケース24Fが取付プレート24aに後方から覆い被さる。上スプロケット部24dと無端回動チェーン24eとの夫々はケース24Fに収容されている。
【0080】
縦伝達機構24は第一フレーム21に着脱可能に支持される。具体的には、
図6に示されるように、取付プレート24aが、第一フレーム21における横フレーム21eと、第一フレーム21における第一外径フレーム21aの底部と、にボルト連結されている。
【0081】
図4及び
図6に示されるように、入力軸24cは、機体側面視において、第一底角部21L,21Rと重複する。機体側面視において第一底角部21L,21Rと重複する領域で、ユニバーサルジョイント23の後端部と入力軸24cとが連結される。ユニバーサルジョイント23の後端部と入力軸24cとが連結される箇所は、一般的に『Aフレーム』と呼ばれる従来技術のオートヒッチユニットにおけるユニバーサルジョイントと作業装置の動力入力軸との連結箇所と概ね同じである。つまり、ユニバーサルジョイント23は、従来技術のオートヒッチユニットを三点リンク機構12に連結する場合にも使用できるものである。このため、本実施形態におけるオートヒッチ機構20のために、ユニバーサルジョイント23は特殊な構成を備える必要は無い。
【0082】
入力軸24cと上スプロケット部24dとは一体的に構成されている。一体的に構成された入力軸24c及び上スプロケット部24dが、ケース24Bと取付プレート24aとケース24Fとによって支持される。
【0083】
入力軸24cは上スプロケット部24dに対して前側(動力伝達方向上手側)に位置する。入力軸24c及び上スプロケット部24dは回転軸芯X1まわりに回転するように構成されている。ロアリンク14が最下降位置または略最下降位置まで下降した状態で、回転軸芯X1は前後方向または略前後方向に沿う。取付プレート24aのうち、入力軸24cに対応する部分に開口部が形成され、入力軸24cの前端部が取付プレート24aよりも前側に延ばされている。
【0084】
上スプロケット部24dの下方に、上スプロケット部24dからの動力を入力するための下スプロケット部25dが備えられ、上スプロケット部24dと下スプロケット部25dとに亘って無端回動チェーン24eが巻き回されている。無端回動チェーン24eは、三点リンク機構12が最下降状態のときに上下方向に沿って延びるように構成され、入力軸24c及び上スプロケット部24dと、動力取出部25と、を連結する。このように、縦伝達機構24は、下方の動力取出部25に動力を伝達する。つまり、縦伝達機構24は、入力軸24c及び上スプロケット部24dが動力取出部25と前後方向で重複するように構成されている。これにより、縦伝達機構24の前後幅が抑制され、第二連結部(第二頂部22U、第二底角部22L,22R)と動力取出部25との夫々を、前後方向において出来るだけ三点リンク機構12の位置する側へ寄せることが可能となる。その結果、トラクタの前後の重心バランスが後寄りに偏り難くなり、作業装置を上昇させる際のモーメント荷重も抑制される。
【0085】
動力取出部25に、ケース25Aと動力取出軸25cと下スプロケット部25dとが備えられている。動力取出軸25cと下スプロケット部25dとは一体的に構成され、動力取出軸25cは下スプロケット部25dに対して後側(動力伝達方向下手側)に位置する。動力取出軸25c及び下スプロケット部25dは回転軸芯X2まわりに回転するように構成されている。ロアリンク14が最下降位置または略最下降位置まで下降した状態で、回転軸芯X2は前後方向または略前後方向に沿う。動力取出軸25cはボールベアリング(不図示)を介してケース25Aに支持され、下スプロケット部25dはケース25Aよりも機体前側に突出する。ケース24Fの下部に、動力取出軸25cが貫通する開口部が形成され、下スプロケット部25dはケース24Fの内部に入り込む。下スプロケット部25dの周囲は取付プレート24a及びケース24Fによって囲まれている。
【0086】
動力取出部25は、第二フレーム22によって周囲を囲まれている。このため、動力取出部25が第二フレーム22によってしっかりと守られ、動力取出部25が異物と接触する虞が軽減される。
【0087】
入力軸24cと動力取出軸25cとの高低差と、第一頂部21Uと第二頂部22Uとの高低差と、第一底角部21L,21Rと第二底角部22L,22Rとの高低差と、は同じまたは略同じである。換言すると、回転軸芯X1と回転軸芯X2との高低差と、第一頂部21Uと第二頂部22Uとの高低差と、第一底角部21L,21Rと第二底角部22L,22Rとの高低差と、は同じまたは略同じである。つまり、入力軸24c及び動力取出軸25cは、第一連結部(第一頂部21U、第一底角部21L,21R)と第二連結部(第二頂部22U、第二底角部22L,22R)との高さ位置関係と同じ高さ位置関係となるように、異なる高さ位置に設けられている。
【0088】
〔動力取出部が揺動する構成について〕
本実施形態では、動力取出部25は、第二フレーム22に、左右向きの軸芯Y3まわりに揺動可能な状態で支持されている。動力取出部25は、第一フレーム21及び第二フレーム22に周囲を囲われた状態で第二フレーム22に支持されている。
図5、
図9及び
図10に示されるように、ケース25Aの左右両端領域は機体横方向に沿って棒状に延びる。ケース25Aは第二フレーム22の第二右縦フレーム22c及び第二左縦フレーム22dに揺動可能に支持される。また、ケース25Aは、動力取出軸25c及び下スプロケット部25dと一体的に軸芯Y3まわりに揺動可能に構成されている。
【0089】
図9に示されるように、動力取出軸25cが作業装置の動力入力軸50と連結されていない状態で、動力取出軸25cの回転軸芯X2は、水平方向に対して角度θ1だけ下方に傾斜する。上述したように、作業装置のトップマストが第二頂部22Uの係止凹部22iに係止された状態で、三点リンク機構12がオートヒッチ機構20とともに上向きに揺動すると、作業装置は第二頂部22Uの係止凹部22iを軸芯に揺動する。このとき、作業装置の動力入力軸50も、第二頂部22Uの係止凹部22iを軸芯に揺動する。そして、作業装置の動力入力軸50の先端部と、動力取出軸25cの後端部と、が当接し始める時点で、作業装置の動力入力軸50は水平方向に対して角度θ1だけ前下がりに傾斜する。このことから、作業装置の動力入力軸50と、動力取出軸25cと、がスプライン結合によって嵌合可能である。
【0090】
作業装置の動力入力軸50が、第二頂部22Uの係止凹部22iを軸芯に更に前向きに揺動すると、作業装置の動力入力軸50がケース25Aの内部に入り込み、作業装置の動力入力軸50が、動力取出軸25cに対して更に前方に嵌合する。このとき、作業装置の動力入力軸50の傾斜角度は、角度θ1よりも水平向きに変化する。そして、ケース25Aと動力取出軸25cと下スプロケット部25dとが、作業装置の動力入力軸50の傾斜角度の変化に追従して、左右向きの軸芯Y3まわりに上向きに揺動する。これにより、動力取出軸25cの延び方向と、作業装置の動力入力軸50の延び方向と、が常に一致し、動力取出軸25cと作業装置の動力入力軸50とが円滑に嵌合する。
【0091】
作業装置が第二頂部22Uの係止凹部22iを軸芯に更に揺動し、第二フレーム22と作業装置との連結が完了すると、作業装置の動力入力軸50がケース25Aの内部に入り込み、動力取出軸25cと作業装置の動力入力軸50との嵌合が完了する。この状態で、動力取出軸25cの回転軸芯X2が水平方向に沿う。また、この状態で、動力取出軸25cと作業装置の動力入力軸50とが機体前後方向に沿う水平向きの回転軸芯X2まわりに回転可能となる。
【0092】
動力取出軸25cと作業装置の動力入力軸50とが連結され、動力取出軸25cが水平向きになった状態で、上スプロケット部24dと下スプロケット部25dとに亘る無端回動チェーン24eが緩むことが考えられる。しかし、実際の角度θ1は微小な角度であるため、無端回動チェーン24eには、動力伝達に影響を及ぼす程の緩みは生じない。なお、無端回動チェーン24eの緩みを考慮して、上スプロケット部24dと下スプロケット部25dとに亘る無端回動チェーン24eの回動軌道の途中に、無端回動チェーン24eに対してテンション力を付与するテンション機構が設けられても良い。
【0093】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0094】
(1)上述の実施形態では、第二フレーム22の第二連結部が、第一フレーム21の第一連結部よりも低い位置に位置する。この実施形態に限定されず、第二フレーム22の第二連結部が、第一フレーム21の第一連結部よりも高い位置に位置しても良い。例えば、ハイクリアランスの構成を有さない汎用トラクタに、ハイクリアランス仕様の作業装置を装着する場合に、第二連結部が第一連結部よりも高い位置に位置するオートヒッチ機構20が用いられても良い。
【0095】
(2)上述の実施形態では、第一外径フレーム21aと、第一右縦フレーム21cと、第一左縦フレーム21dと、第一横フレーム21bと、横フレーム21eと、は全て溶接によって連結されているが、この実施形態に限定されない。例えば、第一外径フレーム21aと、第一右縦フレーム21cと、第一左縦フレーム21dと、第一横フレーム21bと、横フレーム21eと、の夫々は、部分的または全体的にボルトによって連結されても良い。また、第一フレーム21と第二フレーム22との少なくとも一方が、中空のスケルトン形状ではなく、全体的に面形状に構成されても良い。さらに、第一フレーム21と第二フレーム22とは、必要な強度と機能が確保されればその形状は上述の実施形態で示した形状に限定されない。
【0096】
(3)上述の実施形態では、第一フレーム21と第二フレーム22とが溶接によって連結されているが、この実施形態に限定されない。第一フレーム21と連結フレーム26とがボルト連結されている構成であっても良い。この場合、本発明のフレーム体は、第一フレーム21と連結フレーム26との連結を解除可能なように構成されても良い。更に、本発明のフレーム体は、第一フレーム21と連結フレーム26との連結を解除することで、連結フレーム26及び第二フレーム22を第一フレーム21から取外し可能なように構成されても良い。
【0097】
そして、
図11に示されるように、第一フレーム21が三点リンク機構12と作業装置との両方に連結する構成であっても良い。
図11に示される実施形態では、第一頂部21Uに係止凹部21iが形成され、第一底角部21L,21Rの夫々に係止凹部21jが形成されている。係止凹部21iは係止凹部22iと同一の構成であって、係止凹部21jは係止凹部22jと同一の構成である。加えて、
図11に示されるケース24Bは、ケース24Fと同一の構成であって、第一右縦フレーム21cと第一左縦フレーム21dとの夫々に揺動可能に支持されている。
図11に示される実施形態では、ケース24Bは機体横向き軸芯Y4まわりに揺動可能である。ユニバーサルジョイント23の後端部に動力取出軸24fが連結され、動力取出軸24fが、ケース24Bと一体的に、機体横向き軸芯Y4まわりに揺動可能である。動力取出軸24fと、作業装置の動力入力軸と、がスプライン結合によって連結されても良い。
【0098】
図11に示される実施形態では、第一頂部21U及び左右の第一底角部21L,21Rは、本発明の『第三連結部』である。つまり、
図11に示される実施形態では、第一フレーム21に、第二連結部(第二頂部22U、第二底角部22L,22R)と同一の第三連結部が備えられている。そして、第一フレーム21から連結フレーム26及び第二フレーム22を取り外した状態において、第三連結部に作業装置を連結可能な構成であっても良い。なお、第一フレーム21に連結フレーム26及び第二フレーム22が連結される場合において、動力取出軸24fと、上述の入力軸24cと、が例えばスプライン結合によって連結される構成であっても良い。
【0099】
(4)上述の実施形態では、ケース24Fの下部に、動力取出軸25cが貫通する開口部が形成されているが、この開口部が、ケース25Aが入り込み程度に大きく形成され、ケース25Aがケース24Fの内部に入り込む構成であっても良い。また、ケース25Aの周囲にゴム製のカバーが備えられ、当該ゴム製のカバーが開口部の隙間を覆う構成であっても良い。
【0100】
(5)上述の実施形態では、第二底角部22L,22Rと動力取出部25との両方が、最下降状態のロアリンク14よりも低い位置に設けられている。この実施形態に限定されず、第二底角部22L,22Rと動力取出部25との一方のみが、最下降状態のロアリンク14よりも低い位置に設けられても良い。
【0101】
(6)上述の実施形態では、第一フレーム21と第二フレーム22とは、同じ二等辺三角形の形状に構成されている。この実施形態に限定されず、第一フレーム21と第二フレーム22とは、サイズと形状との少なくとも一方が異なる三角形形状に構成されても良い。また、第一フレーム21と第二フレーム22との少なくとも一方は、正三角形や四角形や五角形等の形状に構成されても良い。また、第一フレーム21と第二フレーム22との夫々は、略同じ三角形形状であっても良いし、同じ略三角形形状であっても良いし、略同じ略三角形形状であっても良い。つまり、第一フレーム21と第二フレーム22との夫々は、左右の力の伝わり方のバランスが取れていれば、どのような形状であっても良い。
【0102】
(7)ロック機構27は、係止凹部22jに加えて係止凹部22iに対して設けられても良いし、係止凹部22jに代えて係止凹部22iに対して設けられても良い。
【0103】
(8)第一フレーム21は、ユニバーサルジョイント23の後端部及び縦伝達機構24の一部を囲う状態で設けられても良いし、ユニバーサルジョイント23の後端部及び縦伝達機構24の全てを囲う状態で設けられても良い。また、第二フレーム22は、動力取出部25の一部を囲う状態で設けられても良いし、動力取出部25の全てを囲う状態で設けられても良い。
【0104】
(9)上述の実施形態では、ハイクリアランスの構成を有するトラクタに、ハイクリアランス仕様ではない汎用の作業装置を、オートヒッチ機構20を介して装着することを例示したが、この実施形態に限定されない。例えば、中型トラクタや大型トラクタにおけるリンク機構の高さ位置は、小型トラクタにおけるリンク機構の高さ位置よりも高い。このことから、中型トラクタや大型トラクタに、小型トラクタ用の作業装置を装着する場合に、本実施形態のオートヒッチ機構20が用いられても良い。また、小型トラクタに、中型トラクタ用の作業装置や大型トラクタ用の作業装置を装着する場合に、第二連結部が第一連結部よりも高い位置に位置するオートヒッチ機構20が用いられても良い。
【0105】
(10)本発明の変速装置は、静油圧式の無段変速装置であっても良いし、連続可変トランスミッションであっても良い。
【0106】
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、作業装置を連結可能なリンク機構が備えられたトラクタに適用可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 :前輪
2 :後輪
4 :運転部
5 :前部ミッションケース(変速装置)
6 :後部ミッションケース(変速装置)
6A :後走行出力部
10 :エンジン(動力源)
12 :三点リンク機構(リンク機構)
13 :トップリンク
14 :ロアリンク
17 :PTO軸(作業動力出力軸)
18 :後伝動ケース
18A :横内端部(上連結部)
18B :横外端部(下連結部)
20 :オートヒッチ機構
21 :第一フレーム(フレーム体)
21U :第一頂部(第一連結部、第三連結部)
21L :第一底角部(第一連結部、第三連結部)
21R :第一底角部(第一連結部、第三連結部)
21i :係止凹部(第三連結部)
21j :係止凹部(第三連結部)
22 :第二フレーム(フレーム体)
22U :第二頂部(第二連結部)
22L :第二底角部(第二連結部のうち最も低い位置に位置する部分)
22R :第二底角部(第二連結部のうち最も低い位置に位置する部分)
22i :係止凹部(係止部、第二連結部のうち最も低い位置に位置する部分)
22j :係止凹部(係止部、第二連結部のうち最も低い位置に位置する部分)
23 :ユニバーサルジョイント(作業動力出力軸)
24 :縦伝達機構(動力伝達装置)
25 :動力取出部
26 :連結フレーム
26U :頂部フレーム部
26L :左底角フレーム部
26R :右底角フレーム部
27 :ロック機構
28 :操作レバー(操作具)
50 :動力入力軸(作業装置に設けられた動力入力部)